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米大統領:UAEへのF-35輸出は個人的にはOK [安全保障全般]

イスラエルとUAE&バーレーンの国交樹立署名式前に
この発言どうこうではなく、中東の変化を受け止めましょう

US UAE Israel Ba.jpg15日、トランプ大統領がイスラエルとUAE&バーレーンの国交樹立署名式直前にTVインタビューに答え、「個人的には(personally)UAEにF-35を輸出することについて、なんら問題はないと考えている」と述べ、イスラエルの「軍事技術的優位:qualitative military edge」維持の従来原則を主張する上下両院関係者から大反対の声が上がっています

兵器の輸出には米議会の承認が必要で、またイスラエルのネタニアフ首相がUAEなど中東諸国へのF-35輸出に反対を表明している中、中東でイスラエルしか保有していない最新鋭機を他の中東諸国に簡単に輸出するとは思いませんが、イスラエルの首相とUAE&バーレーン外相が笑顔で臨む調印式直前の発言に、「国交合意の細部をよく確認する必要がある」との声が議員や専門家から上がっています

このブログでは軍事の話題から世界の動きをご紹介しており、とりあえずトランプ大統領の発言をご紹介しておきますが、イスラエルとUAE&バーレーンの国交樹立に関しては、日本のメディアや日本の一般的中東研究者の視点とは異なる動きを感じますので、末尾に『イスラム2.0』の著者である飯山陽さんの視点もご紹介して、ご参考に供します

まず15日付Dfense-News記事によれば米大統領は
F-35 Sun-Set.jpg●トランプ大統領は「私はUAEにF-35を売ることに何の問題もないと考えている。全く問題ないと考えている」と調印式直前にFoxニュースのインタビューに答えた
●また「(中東諸国は)大部分UAEのように裕福な国であり、戦闘機を購入したいと考えている。私は個人的には問題ないと考えている」、「戦闘機を売れば戦争になる(と心配する人間もいるが):Some people do, they say maybe they go to war」とも語った

●また大統領は、今後もイスラエルと他中東諸国との外交関係樹立を促し、パレスチナをイスラエルとの和平交渉に臨むよう仕向ける戦略を執ると認めた

US UAE Israel Ba2.jpg14日、調印式の前日にUAE外相は、UAEが長年希望しているF-35購入については、イスラエルとUAEの合意文書に含まれていないと記者団に語っているが、有力共和党上院議員Mitch McConnell氏は、「アラブのパートナーが脅威から身を守ることを米国が支援する中にあっても、米国はイスラエルの軍事技術優位を揺ぎ無く維持しなければならず、米議会は米国の武器輸出を精査する義務を負っている」と警戒感を示した
また下院のNancy Pelosi議長も声明を出し、「UAEやバーレーンとの合意を確認する中でも疑問は残っている」、「米議会は超党派で、イスラエルの軍事技術優位が確保されることを監視していく」と大統領をけん制している
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上でも述べたように、F-35や最新装備の中東諸国への輸出が容易でないのはその通りですが、何か普通でない雰囲気を感じます。今後も注意が必要でしょう

US UAE Israel Ba3.jpgイスラエルと中東諸国の相次ぐ国交樹立について、日本のメディアや中東研究者の中には、トランプ大統領の選挙向けスタンドプレーで、パレスチナ問題を無視した暴挙であるから反対との論調もあります

しかし私は、『イスラム2.0』の著者である飯山陽さんの、「これは単なるイラン包囲網ではなく、イランを代表とするイスラム主義(政治も生活も全部イスラムでやるというイデオロギー)との決別と理解すべき」で、「国交正常化に反対しているのはイスラム主義に固執する主体」との説明に強い説得力を感じます

同じく飯山さんのnote解説にある
Middle east peace.jpg『中東和平というと、通常はパレスチナ問題を指し、「戦争だらけの中東→(パレスチナ問題の)二国家解決→中東和平」というのが描かれてきたシナリオです。そして現在中東で進められているのは、「戦争だらけの中東→中東和平」というプロセスです。真ん中を省略することにしたのです。なぜかというと、真ん中、つまり「二国家解決」は、実は「ニセの中東和平」しかもたらさないのではないかと皆が薄々感じ始めていたところ、これをアラブ諸国が正面から受け止めることにしたからです』との説明も腑に落ちます

飯山さんの言う、イスラム主義(政治も生活も全部イスラムでやるというイデオロギー)に支えられたパレスチナとの「二国家解決」は、中東和平につながらないのでは・・・とのもっともな疑問で、UAEとバーレーンに続く可能性がある国について飯山さんは、「オマーン、スーダン、モロッコ、クウェート、サウジの名が」と紹介しています

Middle east peace3.jpg頑なにコーランの教えを貫く「イスラム主義」、安易にイスラム主義に寛容さを見せたことから社会が混乱・崩壊の危機にある欧州社会の例を見るにつけ、トランプ大統領のパフォーマンスとは別に、イスラエルと中東諸国の相次ぐ国交樹立を大いに歓迎したくなる今日この頃です

中東とF-35
「米大統領:UAEはF-35を欲している」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-21
「中東第2のF-35購入国はUAEか?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-11-05
「湾岸諸国はF-35不売で不満」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-16
「イスラエルと合意後に湾岸諸国へ戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-17

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飯山陽さんの著書『イスラム2.0』を推薦します!


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米空軍トップが戦闘機新調達方式などを語る [米空軍]

戦闘機新調達方式は可能だが大きな変化が必要と
レガシー装備早期退役説明は代わる新装備の説明が難しい

Brown6.jpg22日、軍事メディアのオンラインイベントに出演したBrown空軍参謀総長が、米空軍を巡る様々な課題について言及しています

「今変化しなければ敗れ去る」との衝撃的なタイトルの小冊子を発表し、米空軍の改革に取り組もうとする同大将の考え方や課題へのアプローチ手法について、米空軍が2018年にぶち上げた386飛行隊目標、伝統的装備Legacy capabilityの早期退役への取り組み、Roper次官補が14日に言及した次期制空機のデモ機初飛行や新調達方式への考え方など、今気になる点に触れていますのでご紹介しておきます

どうやら米空軍への風当たりは米議会などで厳しいらしいですが、「米空軍は、これまで要請に応じ実施してきた任務全てを遂行するほど、もはや十分に大きくない」と明確に主張しつつ語るBrown大将の率直な姿勢を、今後いろいろと打ち出されていくであろう米空軍の施策を見ていく上での参考に、22日付米空軍協会web記事から取り上げます

2018年の「The Air Force We Need」での386飛行隊
Brown4.jpg現在の飛行隊数から70個飛行隊以上増強する必要があると2018年の「The Air Force We Need」で打ち出したが、それは宇宙軍創設以前の必要数であり、現在も米空軍として300飛行隊以上は必要だと考えているが、386との数字に今や意味はそれほどない
仮に386飛行隊の体制が確立されたとしても、私にとって問題なのはその能力である

伝統的装備Legacy capabilityの早期退役と新装備導入
かなりの規模の伝統的装備Legacy capabilityを早期退役させ、新たな兵器システムを代わりに導入することを、米議会の理解を得て進めることは大きな挑戦である
難しいのは、伝統装備に代えて導入したい新たな装備が厳しい情報統制下にある「秘密開発プログラム」である点で、他軍種に比べて米空軍の開発装備にはこの非公開装備が多く、旧装備の退役をお願いできても、新たなものについて説明が難しい

Brown nomination.jpgこの問題への対応として、議会の皆さんには「非公開」「秘密」のブリーフィングを行い、同時に選挙区の皆さんへの説明に使用してもらえるような「公開可能版」の資料を準備するなどして、より広い戦略的な視点からご理解いただけるよう取り組みたい
要望が全て聞き入れてもらえるとは思わないが、説明して議論していくことが大事だ。過去の説明より少しでも将来の姿も含めて全体像がご理解いただけるように改善したい

次期制空機NGADと新調達方式
(14日にRoper次官補が発表して大きな話題となったNGADについて、多くの記録を作ったと述べたが、どのような記録を打ち立てたのか?)その点については詳しくお話しできない
Brown7.JPG申し上げられるのは、これまでとは異なるやり方で、過去よりも少し迅速に成し遂げることができた点である。何を組み上げたかではなく、どのように取り組んだかが重要である。目指しているのは、如何に前線兵士のもとへ迅速に戦力を提供するかであり、それがこの取り組みである

(Roper次官補の新調達方式は可能なのか?)可能であるが、そのために米空軍はビジネスモデルを変える必要がある
兵器システムの保有者としてのコスト全体に大きな変化はないが、装備寿命の前半に投資を集めるとの考え方である。Roper次官補の考え方は変化を加速するモデルとなろうし、より脅威環境に適応し、進歩する技術に追随する従来とは異なるプロセスを目指すもの

軍需産業界とともに取り組んでいく事をお約束したい。各企業が利害関係者として種々懸念されていることを承知しているが、国家安全保障上のニーズがあることもご理解いただきたい。米空軍はより良いあり方を目指し、同時に軍需産業にとっても持続可能なビジネスモデルを提示したい
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どうやら戦闘機調達の新方式「Digital Century Series acquisition model」方式について、挑戦するような雰囲気です。F-35やF-15EX調達への影響について注目したいと思います

もう一つの多きな山である「伝統的装備Legacy capabilityの早期退役」についても、武運長久を祈らずにはおれません・・・。

関連する米空軍の取り組みや課題
「大激震:米空軍は次期制空機のデモ機を既に初飛行済」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-16
「今後の米空軍の課題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-12

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海兵隊司令官が在日米海兵隊削減を示唆 [Joint・統合参謀本部]

エスパー長官が進める世界的な米軍再編検討の中
在日米軍基地が中国のミサイルに脆弱なため

Berger3.jpg23日、主要な海兵隊関係者が一堂に会する「Modern Day Marine conference」(今年はバーチャル)でDavid Berger海兵隊司令官が、中国の脅威増大を背景に、WW2や朝鮮戦争後に形成された現在の米海兵隊の西太平洋地域での配置は好ましくなく見直しを行っていると述べ、韓国や日本駐留部隊を分散配備する方向だと述べました

Berger海兵隊司令官や海兵隊計画担当将軍は直接的には述べなかったようですが、この講演をフォローしている各種米軍事メディアは、エスパー長官が命じて(9月末までにまとめると)取り組んでいる世界的な米軍再編検討の中で、沖縄駐留の海兵隊1.8万人は削減され、太平洋諸国やハワイや米本土に「転進」し分散する方向だと強く示唆しています

Esper Palau3.jpg関連の動きとして最近では、8月末にエスパー長官が国防長官として西太平洋のパラオ共和国を初訪問し、パラオとの間で米軍が使用可能な港湾、空港、基地施設に合意したとの動きもあり、軍事的合理性に基づく米軍の動きとはいえ、中国最前線に位置する日本にとっては(韓国も)厳しい現実を突きつけられることになります

まず2020年版米国防省「中国の軍事力」レポートの表現を確認
中国軍の近代化により、中国軍ミサイル部隊は急速に増強変革を遂げており、在日米軍基地は日増しに増強されている中国軍の中射程ミサイルや巡航ミサイルの射程内に置かれている
空中発射巡航ミサイルを搭載可能となったH-6K長距離爆撃機は、西太平洋に進出してグアム島を攻撃可能なことを誇示し、2015年に披露された中距離弾道ミサイルDF-26も、核兵器と通常兵器の両方でグアム島の米軍基地を含む地上目標攻撃が可能な状態にある

Berger海兵隊司令官は講演で
Berger.jpgWW2や朝鮮戦争後、多くの米海兵隊部隊がカリフォルニア、ハワイ、そして日本と、朝鮮半島を指差すように配置されて70年以上経過した。これまではその配置で成功してきたと言えるだろう
しかし今後10年を考える時、統合戦力にとって現在の体制は良い体制(not a great posture)ではない

我々は海兵隊のために体制を再検討する必要がある。米国防省が世界的な米軍再編について検討しているが、太平洋地域において海兵隊は分散しなければならない
グアムにも一部を置かねばならない(We have to factor in Guam)。我々は太平洋地域全体に分散した態勢を取らねばならず、これにより地域の同盟国やパートナー国と協力し、中国のような国際規範を書き換えようとする国々を抑止しなければならない

海兵隊で戦略作戦構想担当のPaul Rock少将は23日
●(司令官の発言を受けた記者団の質問に対し、)米海兵隊は太平洋地域で課題と機会の両方に直面しているが、豪州に続いて、米海兵隊がローテーション派遣や新たな演習を検討している具体的な国名については言及を避けた
米国が豪州や日本や韓国と構築してきた「鉄の同盟:ironclad alliances」は、アジア太平洋で活動する米海兵隊にとって引き続き重要だと述べた

24日付Military.comやDefense-News記事は解説で
Berger2.jpg今日米海軍と海兵隊プレゼンスは、西太平洋で日本に大きく依存している(heavily weighted toward Japan)。空母や駆逐艦を横須賀で、強襲揚陸艦は佐世保を拠点としている
海兵隊もIII Marine Expeditionary Forceの約1.8万人を沖縄においているが、専門家は、中国からのミサイルや爆撃機攻撃に対して脆弱な固定基地に戦力が集中していることに疑問を呈している

米海兵隊は組織全体で、重装備や人員削減などの検討を進め、太平洋上で身軽に飛び石作戦が可能な体制を目指しており、米海軍との融合を再び進めて艦艇から着上陸して機敏に展開する方向への回帰を狙っている
また海兵隊は今後数年(in coming years)で、数千名の兵員と家族を沖縄からグアムに移すことを計画している(The service also plans to shift thousands of personnel and dependents from Okinawa, Japan, to Guam in coming years)
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エアシーバトル・コンセプトが公表された10年ほど前から、在日米軍や極東米軍の中国正面からの「転進」可能性について、軍事的合理性に沿ったものだと予想してきましたが、すぐ目の前に迫ってきたということでしょう

okinawa marine.jpg海兵隊が計画している「今後数年で沖縄グアムへ数千名の移転」が既に発表されているものなのか承知していませんが在日米海軍も米空軍も、そして在日米空軍司令部も少しずつ追随していくことになるのでしょう

繰り返しますが、米軍の動きは軍事的合理性に沿ったものであり、政治的にも受け入れざるを得なくなった現実と認識すべきでしょう

米軍再編関連の記事
「9月末までに米軍再編検討を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-14
「アジア太平洋で基地増設検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-28 
「新統合作戦コンセプトを年末までに」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-18
「ドイツ駐留米軍削減が発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-30
「太平洋軍司令官が議会に要望」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-29

米海兵隊の変革関連
「米海兵隊は戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「前司令官:基本的な防御手段を復習せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-10

在日米軍基地は有事には
「米空軍はアジアで米海兵隊と同じ方向へ!」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-25
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21

米空軍も集中から分散運用へ新コンセプトACE
「三沢でACE訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21
「太平洋空軍がACEに動く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-12
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08

中国軍事脅威の本質は
「脅威の変化を語らせて下さい」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
「中国軍事脅威の本質を考えよう」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-12-30
「A Balanced Strategyを振り返る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2011-11-27

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米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ [Joint・統合参謀本部]

エンジン整備負担軽減で兵站支援減、音も静かに
前線での充電をどうするかが大課題
化石燃料依存体質の見直し

Electrification3.jpg22日付Military.comが、米陸軍Army Futures Commandが配下の将来戦闘車両検討部署に対し、電動モーター使用の戦闘車両導入について検討するよう指示したと報じています

電気自動車は民間部門で技術開発が進みつつありますが、米軍地上部隊の車両にもその技術を応用して導入が可能かや、どのような課題があるかのをきちんと検討整理しようとの指示だと理解しています(to find out what it would take to outfit the service's tactical and combat vehicles with electric engines)

Electrification.jpg背景には地球環境問題への配慮から化石燃料への依存を減らそうとの考えもあるようですが、内燃エンジン維持コストの増大不安や、エンジンのシンプル化による整備負担軽減、更に静粛化による作戦面のでのプラスもあるようです

記事の見出しを見た際は、「米陸軍も環境問題に付き合わされて可哀そうに・・・」と思ったのですが、前線での充電をどうする問題は大きいとしても、最近の民間での技術開発を背景に、導入のメリットもあるような雰囲気であり、今回の公にしての検討指示となったようでもあり、ご紹介しておきます

22日付Military.com記事によれば
Electrification4.jpg米陸軍のArmy Futures Commandは、配下のMCDID(Maneuver Capabilities Development and Integration Directorate)の中の、「Maneuver Requirements Division」に対し、戦術戦闘車両の電動推進化に関する要求文書(requirements document for Tactical and Combat Vehicle Electrification)取りまとめを指示した、とニュースリリースした

同ニュースリリースは、「自動車産業界を中心として、車両の電動化がすさまじい勢いで進んでいることを我々は目にしているが、米陸軍の立場から、戦術&作戦面での利点については十分に明らかになっていない」、「我々が追及している能力と最新技術がマッチしている面もあり、今が電動化を検討するタイミングだと信じている」と表現して検討の重要性を訴えている

今年4月にArmy Futures CommandのEric Wesley副司令官(中将)は、戦闘車両のデザイナーは既に、民間車両の電動モーター技術を軽戦闘車両(Joint Light Tactical Vehicle)にスケールアップして応用可能だと証明していると語っている
Wesley.jpg検討を命ぜられたMCDID関係者は、10月20日にwebで開催予定の「virtual Electrification Industry Day」において、検討の基本的方向性を紹介したいと考えており、米陸軍も「CALSTART」との非営利団体と協力体制を構築して検討姿勢を強化している

同副司令官は同じく4月に、長年続いてきた内燃エンジン中心の世界が存在する中、自動車業界は電動化への移行の動きを見せており、結果として、電動化による内燃エンジン部品製造企業の減少と部品コストの上昇につながるとの見方を示している
また、電動エンジンは戦術面から静かなことが利点で、シンプルな構造で構成部品が少ないことから、維持修理も簡単との長所がある、とも言及している

更に、車両の移動可能距離を伸ばせる可能性もあるが、一つの大きな問題は、辺鄙な前線エリアで確実に如何に車両に充電するかである、と同副司令官は語っていた
同副司令官は、ブラッドレー戦闘車両の後継である「Next Generation Combat Vehicle」のような重量車両に電動技術を搭載するには、まだ時間が必要だろうとも述べている
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「充電」問題解決は容易ではないと思いますが、検討の背景に、電気自動車増加→自動車部品メーカーの淘汰減少→内燃エンジン部品価格の上昇→維持整備費の高騰・・・との観点があるとは知りませんでした

また電動モーターを動力にすることによる軽量化も、「車両の移動可能距離を伸ばせる可能性」を秘めているとの視点も新鮮でした

「充電」問題には、もしかしたら、サイバー攻撃を受けた際の停電対処の記事でご紹介した「輸送可能な小型原子炉発電」も、検討対象かもしれません

関連のありそうな過去記事
「やり直し歩兵戦闘車ブラッドレー後継選定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-19
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07

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中国空軍がグアム島攻撃の模擬映像公開? [中国要人・軍事]

中国空軍H-6Kが搭載ミサイルで攻撃
攻撃対象基地がアンダーセン基地ソックリ
ハリウッド映画からの無断借用映像も?

H-6K.jpg18日、中国空軍政治工作部が作製した2分19秒の爆撃機プロモーション映像が中国版ツイッターと言われる「Weibo」上に公開され、爆撃機による模擬の飛行場攻撃映像を見た西側メディア等から、攻撃された飛行場がグアム島の米空軍アンダーセン基地ソックリだとの声が上がています

プロモーション映像は、中国内陸部の空軍基地を飛び立つ行動半径約4000㎞のH-6爆撃機の最新型「K型」(射程2000㎞以上の巡航ミサイルCJ-10やDJ-10を搭載可能)が、編隊を組んで、また戦闘機にエスコートされて行動する様子を描き、パイロット操作でミサイルを発射し、攻撃目標となった飛行場から大きな爆発に伴う火柱が上がる様子を紹介しています

H-6K3.jpg最後は母機地に戻ったH-6K爆撃機から降り立った搭乗員が、任務の様子を笑顔を交えて語りながら、機体から歩いて戻ってくる様子で締めくくっています

映像にBGMはありますが、特にナレーション説明はなく、中国空軍爆撃機部隊をアピールする広報映像のようですが、2分余りの映像にはハリウッド映画の映像をそのまま「パクった」と思われる部分も見られ、中国らしい映像となっているようです

18日に中国SNS上に公開された映像
 

21日付Military.com記事によれば
18日に「Weibo」上に公開された映像についてロイターは、映像の中で攻撃対象となった滑走路は、そのレイアウト等からグアム島の米空軍基地をイメージしたものだと指摘している
香港の英字紙South China Morning Postも、「グアム島の米軍施設に似ているというより、そのものを表現している」と報じている

ネット上では、中国空軍の映像にはハリウッド映画の映像をそのまま「パクった」部分があるとの指摘が行われており、ミサイルが攻撃目標の飛行場に向かうシーンが、ハリウッド映画「Transformers: Revenge of the Fallen」冒頭で、ミサイルがディエゴガルシア島に向かうシーンと同じだと指摘されている
H-6K2.jpgまた攻撃された飛行場が爆発するシーンは、ニコラス・ケージが主演の映画「The Rock」で、サンフランシスコ湾のアルカトラズ刑務所が爆発するシーンの爆発映像が借用されていると指摘されている

もちろんプロモーション映像を作成した中国空軍政治工作部は、攻撃映像がどこへの攻撃を表現したものかコメントしていない
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米国と中国の対立激化は多方面で進んでいますが、中国空軍政治工作部のクレジット入りの映像公開は、ちょっと大人げなく「中学生のような」行動に思えます

ハリウッド映画の映像そのまま「パクリ」に至っては、中国政府が著作権などまったく気にしていないことを大声で叫んでいるようなもので、その無神経さにも驚きです

2分19秒の何のひねりもない映像ですが、中国軍のそれなりの幹部が確認して公開していることを考えると、議論が通じない相手であることが伺えます

米国防省「中国の軍事力」レポート関連記事
「2020年版」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-02
「2019年版」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-06
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-18
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
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「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1

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中国「第3の空母」は電磁カタパルト搭載か? [中国要人・軍事]

CSISが初めて全体像が確認できた衛星写真から分析
初のカタパルト(電磁式?)搭載本格空母か

China 3rd CV.jpg16日、CSISの「ChinaPower」とのプロジェクトが、2018年後半から衛星写真で継続的にモニターしている中国海軍第3空母の建造状況をレポートし初めて雨露をしのぐカバーがない状態のクリアーな映像が得られ分析したところ、既に部隊配備されている中国空母「遼寧:Liaoning」や「山東:Shandong」よりも大型で、カタパルトを備えた本格空母になる可能性があると分析しています

1日に米国防省が発表したレポート「中国の軍事力」によれば、建造中の第3の空母は2023年に作戦可能体制になると見積もられているようです。

また13日付の中国政府系英語紙Global Timesは、今年後半か来年年初に進水するだろうと報じ、更に中国専門家のコメントとして、新空母は米海軍Ford級空母が開発成熟に苦労している電磁カタパルト(EMALS)を搭載しようとしている可能性があると記載しており、上海市長興島の造船施設に注目が集まっているようです

16日更新のCSIS「ChinaPower」等によれば
China CV.jpg8月18日撮影の商用衛星写真の分析から、上海市長興島の江南造船(集団)有限責任公司(Jiangnan Shipyard)で建造されている中国海軍第3の空母は、幾つかに分割して建造されている船体の長さを合計すると喫水線ラインで297mとなっており、他空母の建造例からすると完成すれば更に10数メートル全長が延び、遼寧の304mや山東の315mより大型となり、Ford級の337mに近づく可能性もある
排水量は「遼寧:Liaoning」の6万トンや、「山東:Shandong」の7万トン級より大きい8万トン級と見られているが、Ford級の10万トンには及ばないと見られている

「遼寧」や「山東」はカタパルトを装備せず、艦載機発進時に自力推進力のみで艦載機をスキージャンプ台で離陸させることから、燃料や兵器を多く搭載した重い機体を離陸させることができず、結果的に艦載機の行動半径や攻撃能力は大きく制限されている
China 3rd aircraft c2.jpgしかしCSIS「ChinaPower」は、「多様な非公式レポート:Various unofficial reports」が第3の空母にカタパルト、しかも米海軍もFord級空母で苦労している電磁カタパルト(EMALS:electromagnetic aircraft launch system)を搭載するため、中国が膨大な開発投資を行っていると紹介し、今後の建造状況を注視すると述べている

またCSIS「ChinaPower」は、第3の空母が建造されている上海市長興島の江南造船施設が急速に拡大されており、空母近傍では世界最大級の原油タンカーやLPG輸送タンカーが既に建造されているほか、350m級の長さの艦艇建造が可能な造船ドックの建設も進められており、将来の更なる大型空母建造の拠点となる可能性があると分析している
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CSIS「ChinaPower」には、「第3の空母」の鮮やかな衛星写真が解説付きで公開されていますので、ご興味のある方はぜひサイトをご覧ください
https://chinapower.csis.org/china-carrier-type-002/ 

China 3rd aircraft c.jpgこれだけ精密誘導兵器が発達拡散している世の中で、有事における空母の活動範囲は著しく限定され、空母が前線(このことばが将来存在するのか不明ながら)近くで活動することは難しいと、米国防省や米海軍も想定し始めており、当然中国も織り込み済のはずです

それでも中国が国産空母建造を着々と進めるのは、平時からの中国のプレゼンスを第一列島線内から第二列島線あたりまでしっかりガッチリ確保し、太平洋の半分は中国の政治経済文化軍事勢力圏に収めようとの狙いでしょうか。更には中東やアフリカ、北極圏にまで勢力圏の拡大を図るということなのでしょうか・・・

「中国軍事」カテゴリー記事約200本
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米国防長官:日本など同盟国に国防費GDP2%以上を要求 [エスパー国防長官]

期限は設けず。駐留経費負担増より筋が良い要求かも
NATOは2014年に2%設定も、達成率1/3以下

Esper RAND.jpg16日、エスパー国防長官が加州サンタモニカのRAND研究所で講演し、日本を含む同盟諸国に対し「防衛費を国内総生産(GDP)比で少なくとも2%に増額するよう要請する」と表明しました。

太平洋に面した西海岸での演説であり、中国を念頭にアジア太平洋諸国への呼びかけであったと考えられます

2014年のロシアのウクライナ侵攻を受け、NATOは当時のオバマ政権の強い働き掛けにより、GDP比2%以上の目標を2014年に設け、10年後の2024年を達成期限に設定しましたが、NATO以外の国に類似の数値目標を示したのは初めてです

RAND講演での関連発言要旨(各種報道より)
Esper RAND2.jpg私たちは今日の安全保障上の懸案に対処しつつ、将来の課題に備える集団的な責任がある。(中国の軍事的脅威の増大などを念頭に、)無関心は許されない。状況の変化を認識しなければ、私たちの価値観や安全が大幅に侵害され、さらなる挑戦を受ける危険が高まる
米国が急速な軍備拡大を進める中国に対抗し、今後も軍事的優位性を維持していくためには産学官一体となった取り組みが必要だ
世界中の同盟・パートナー国に対しては、共通の利益や価値を守り、安全を維持するという目標を達成するため、国防費を少なくともGDP比2%に増やし、軍事力向上に必要な投資を行うよう求める

NATO諸国への2%要求の状況
Obama NATO.jpgオバマ政権時代の2014年、NATOはロシアによるウクライナ南部・クリミア半島の併合を受けて対ロ防衛の増強を決定。2024年までに各国の国防費をGDP比2%以上に引き上げる目標も設け、欧州での平均は14年の1.44%から18年は1.51%へ上昇
トランプ政権は米国の一段の負担軽減に向けて早期の実現を求めているが、2020年時点で達成したのは加盟30カ国のうち米を含む9カ国だけ。今年6月には、ドイツが未だこの目標を達成せず、2030年頃達成との計画でいることに不満を示し、トランプ大統領は在独米軍約3.6万人から1.2万人を削減すると発表

Obama NATO2.jpgNATOの資料によると、2018年にGDP比2%目標を達成したのは7カ国。17年も達成していた米国(3.39%)、ギリシャ(2.22%)、英国(2.15%)、エストニア(2.07%)の4カ国に加え、ロシアの危機に直面するポーランド(2.05%)、ラトビア(2.03%)、リトアニア(2.0%)が伸びた
目標を大幅に下回ったドイツは、2018年で1.23%。2020年には同1.37%に上がるが、23年には1.25%程度に再び下がる見通しで、独政府は「2031年までに2%を達成したい」との態度を示している
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日本の防衛費はGDP比で約0.9%だそうですが、岩屋毅防衛相(当時)はNATOの基準に基づけば最大約1.3%になるとの試算を示したことがあるようです

Esper RAND3.JPGエスパー国防長官の発言が、2021年3月で現協定が期限を迎える在日米軍駐留経費の日本側負担「思いやり予算」交渉に、どのように関連してくるのかよくわかりませんが、「思いやり予算」増より、日本が使用できる国防費が増えた方が日本にとって意味があると思います

アジア周辺国のGDP比は、韓国2.6%、インド2.4%らしいです。台湾や東南アジア諸国と比較しても日本は低い可能性がありますから目立つでしょうね・・・。増やすならば、無理やり米国製兵器を交わされるのではなく、実質的な国防力・抑止力向上につなげてほしいと思います

ドイツ駐留米軍削減の関連
「国防長官が1.2万名削減計画を発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-30
「独駐留米軍を1万人削減へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-16
「移動先ポーランド大統領と会談」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-25
「米独2000名に安保アンケート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-10
「9月末までに米軍再編検討を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-14 

在韓米軍関連の記事
「基地勤務の韓国人5千名レイオフ開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-01
「在韓米軍司令部が70㎞南へ移動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-07-08
「韓国の米軍再編は順調」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-27
「在韓米軍は兵士に不人気?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-10-02

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米海軍が2021年初に本格無人システム演習を太平洋で [Joint・統合参謀本部]

無人の艦艇、水中艇、航空機全てを組み合わせ
従来空母戦闘群中心だった同種演習を方向転換

Sea Train.jpg8日、米太平洋海軍の海上作戦部長Robert Gaucher海軍少将が講演で、従来は空母戦闘群を対象に行ってきた本格紛争対処の実験演習を、方向転換して2021年初に多様な無人システムを組み合わせた作戦行動を対象に行うと発表しました

また同発表の紹介に合わせて9日付Military.comは、9月4日に米海軍が大型無人艦艇の検討案作成契約を6つの企業と結んだと件と、米海軍が様々な無人システム試験運用の実績を積み上げている様子を紹介すると同時に、一方で米議会から無人艦艇の運用コンセプトが不明確だと反対されている様子も取り上げています

米議会からの反対はあれ、久しぶりにご紹介する米海軍の前向きなお話ですので、取り上げた次第です。ちなみに、大火災を起こしたF-35受け入れ改修中の強襲揚陸艦「Bonhomme Richard」は、引き続き修復可能か、どれくらいかかるか等を調査中ということです

9日付Military.com記事によれば
Sea Hunter.jpg8日、Gaucher海軍少将は「Unmanned Vehicle Systems International's annual defense show」での講演で、「我々は2021年年初に、無人システムに焦点を当てた試験演習の計画を進めている」、「海上で、水中で、上空で、太平洋軍から示された運用構想を、どのように具現化して戦力発揮するかをデモ検証したいと考えている」と述べた
この試験演習は「fleet battle problem」と呼ばれ、定期的に米海軍が太平洋や大西洋で行ってきたが、従来の空母戦闘群中心から今回は大きく方針転換し、「無人システム」を中心に据えることになった

この演習計画発表とタイミングを合わせるかのように、先週4日には、米海軍は約45億円で6つの企業と、大型無人艦艇の開発検討案作成契約を結んだと発表した。同契約では2022年5月までに開発計画案を提出することを求めている
MQ-4C 1.jpg海軍は今後五年間で、約2200億円の予算を獲得して10隻の大型無人艦艇を建造したいと考えているが、米議会には米海軍の無人艦艇構想が十分に煮詰まっていないと懐疑的な勢力があり、下院の海洋戦力小委員会は米海軍による来年の無人艦艇購入を阻止しようとしている

一方で米海軍主要幹部は、8日に無人システムの試験運用実績が良好であることを強調し、担当のEric Austin海兵隊少将は記者団に、「統合戦力全体で、進捗具合に多少差はあるが、技術に裏付けられた無人システム成熟発展は著しいものがある」と述べた

この発言の裏には、全長40mの無人潜水艇「Sea Hunter」が、昨年サンディエゴとハワイ間の往復に成功したことや、航続距離が長い無人水上艦艇がノーフォークからノースカロライナまで航行し、途中の海上射撃場で目標攻撃試験にも成功したのち、さらに南方のCamp Lejeuneまで移動したことなどの実績がある
fire scout.jpgまた無人機では、無人ヘリFire Scout導入が始まり、無人大型偵察機MQ-4C Tritonのグアム配備も行われ、更に対潜水艦作戦のためのハイテク無人水中艇の開発も進んでいる

●Gaucher少将は、実験演習「fleet battle problem」を計画中であるが、指揮統制やセンサーの活用もポイントになっていると述べ、無人システムは陸上や艦艇からも投入され、敵の優位に立たなければならないと語っている
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変化は着々と進んでいます。陸軍でも空軍でも

米議会の理解が得られないのは、米海軍のフォード級空母や次期SSBNコロンビア級の価格高騰と開発遅延、LCSのズッコケなどなどが背景にありますが、無人システムでズッコケると後がありません

期待いたしましょう。ところで・・・かつては米空母機動部隊と海上自衛隊との鉄壁の連携が自慢でしたが、今後はどうなるのでしょうか???

米海軍への無人システム導入
「潜水艦も無人化を強力推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-03
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇推進案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10

「米海軍が半年で空母再検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-12
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「5年計画で新型大型艦艇設計」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-14
「海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-13

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大激震:米空軍は次期制空機のデモ機を既に初飛行済 [米空軍]

次世代制空機NGADの製造開始は「pretty fast」と
バーチャル設計と最新製造技術の組み合わせ
単一機種長年使用から、短サイクル機種転換可能性追求か

Roper.jpg14日、米空軍調達開発担当次官補Will Roper氏が、検討は行われているが先送り状態とご紹介してきた「次期制空機:NGAD:Next Generation Air Dominance」について、最新のバーチャル設計開発技術と最新製造技術を駆使し、要求性能設定から1年足らずで既にデモ機の初飛行を終えているとDefense-Newsに明らかにし、15日の講演でも大々的にアピールしました

Roper氏は、初飛行の時期やデモ機の特徴、何機デモ機を製造したかや関与した企業の有無、有人機か無人運用可能か、ステルス性や航続距離や搭載兵器等々の具体的事項への質問に一切答えずいつごろ本格生産可能かとの問いにも「pretty fast」とだけ答えています

しかし同氏は、この機体は同じくバーチャル設計技術を駆使しているT-7練習機のようなシンプルな機体ではなく、「我々がこれまで製造した中でもっとも複雑なシステムだ」と強調しつつ、デジタル上でのチェックをクリアーしただけでなく、わずかな時間で既にデモ機が飛行している点を強調しています

NGAD6.jpgこれは単に次期制空機NGADを秘密裏に開発していたとの衝撃に留まらず、以前からRoper氏が主張してきた「Digital Century Series acquisition model」方式により、1機種の戦闘機を大量購入して30年使用する従来の方式を抜本的に改め、約8年毎に最新技術を投入した新機種導入し、1機種を16年程度で退役させることで、開発費や機体製造費は高くなっても、真に経費がかかかる30年寿命後半の維持費や改修費用を半分以下にしてトータル経費を削減し、多くの軍需産業の生存と競争を確保しつつ、時世にあった最新機を使用できる方式への転換の可能性を示すものとして各方面に大衝撃を与えています

この方式への転換は米議会の理解が必要で、米議会からの逆風の中にいる米空軍とRoper氏にとっては、14日以降の「デモ機初飛行済」発表は2022年度予算に向けたアピールと理解されていますが、この方式への転換で既存のF-35やF-15EXへの影響は避けられないとも見られており、軍需産業界は大騒ぎのようです

NGAD5.jpgまた具体的な名前は出しませんでしたが、Roper氏はこの新たな開発製造方式により、SpaceXのElon Musk氏のような投資家が参入できる可能性が広がると示唆し、過去10社で争っていた軍事航空機産業界が、現在は3社程度の狭い世界となり、健全な競争体制にないことへの対応であることも軍需産業界を大いに揺さぶっています

更に戦略的な対中国の視点からRoper氏は、最新機を短いサイクルで投入することで、中国を受け身の位置に追いやり、米国が主導して相手に対応コスト負担を強いることにも有効だとアピールし、新方式への転換に幅広いい支持を得ようと工夫しています

15日付Defense-News記事によれば
「Digital Century Series acquisition」をRoper氏は
Roper NGAD.jpgこれまで戦闘機など作戦機は、開発費や機体価格に焦点が当たってきたが、使用開始後15年後以降(つまり機体寿命後半)に維持費が毎年3-7%毎年上昇することや、15年以上使用することによる近代化改修費が大きく、トータルのコストが莫大なものになっていることが無視されがちだった

今年8月に米空軍の先進航空機計画室がまとめた「Digital Century Series model」分析によれば、1機種を大量調達して30年使用する従来方式と比較し、8年毎に新機種を導入し、その機種を飛行時間が3500時間を超えない約16年使用する前提で、毎年50-80機を継続調達していくことで、
開発費は25%増、機体製造費も18%の増となるが、長期間1機種を使用することで必要となる寿命後半での近代化改修費が79%削減でき、期待維持費も50%削減可能となることから、トータルで従来と比較して10%の費用削減につながることが明らかになった

このようにも短いサイクルで新しい戦闘機を設計し続ければ、複数の企業に開発を競わせて最もよいものを選択でき、結果的に複数の企業が生き残って健全な軍需産業基盤の維持につながる
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NGAD8.jpgDefense-News記事は今後の展開について、軍需産業調整を事前に完了し、2022年度予算で米空軍がこの新方式をどこまで具体化して予算案として打ち出し、米議会を説得して実現するかにかかっている、と分析しています

新しいBrown空軍参謀総長が「今変化しなければ勝てない」と訴え、エスパー長官も大統領選挙の結果に左右される前の年末までに米軍再編や新たなな戦い方をまとめようとしているこのタイミングでこの打ち出しです

F-35を大量に購入することにした日本をはじめとする世界の国々は、Will Roper氏の発言を必死でフォローする必要がありましょう

Roper氏が新調達方式を語った過去記事
「次世代航空機はギャンブル」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-05

意思決定先延ばしだと思っていた空軍次期制空機
「戦闘機族ボス:中国正面で戦闘機のニーズは?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-28
「CSBAの米空軍将来提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「連接重視で航空アセット削減へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「次期制空機検討は急がない、急げない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-19
「米空軍が次期戦闘機検討でギャンブル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-05

「戦闘機族のボスがNGAD予算を危惧」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-21
「PCA価格はF-35の3倍?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-15
「秋に戦闘機ロードマップを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-22
「PCA検討状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-12
「次期制空機検討は2017年が山!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-12
「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08

中国正面で戦闘機に出番はあるのか?
「戦闘機族ボス:中国正面で戦闘機のニーズは・・・」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-28
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21

中国軍事脅威の本質は
「脅威の変化を語らせて下さい」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
「中国軍事脅威の本質を考えよう」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-12-30
「A Balanced Strategyを振り返る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2011-11-27

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米軍の「誘導工作:influence operations」の拠点完成 [サイバーと宇宙]

米陸軍の部隊ですが統合戦力として機能すると理解
海外の対象者を米国の国益に沿うように行動させる作戦

Army Cyber.JPG3日、南部ジョージア州の米陸軍Fort Gordon基地に、北部バージニア州から移転してきた米陸軍サイバーコマンドの新しい司令部施設が完成し、約400億円をかけた約32400平方m(縦横180m換算)の新施設では「攻撃的活動」や「誘導工作:influence operations」に重点を置くと、Stephen Fogarty米陸軍サイバーコマンド司令官(中将)がセレモニーで語りました

米陸軍の同基地内には既に「NSA Georgia支所」や米サイバーコマンド配下の「Army’s Joint Force Headquarters-Cyber」が所在していることや、同司令官は「今後はより直接的に攻撃的な任務や誘導工作関連任務を担っていくと」記者団に語り、米陸軍はここ数年でこの分野に勢力を注ぎ習熟・成熟してきたとも述べて自信を示していることから、米軍にとどまらず米国のその方面の任務を大きく担っていくものと勝手に推定しています

Army Cyber 3.jpgこの種の話はガードが固く、勤務者の数や部隊の能力に関する話は一切報道に出てきていませんが、ジョージア州の米陸軍Fort Gordon基地に重要な「誘導工作」の新たな拠点ができたということをお知らせしておきます

忘れてました・・・。「誘導工作:influence operations」の定義は、RAND研究所の「Foundations of Effective Influence Operations」との研究レポートによれば、「外国の対象者が、米国の国益や目的に資する態度や行動や決定を行うように、外交、情報、軍事、経済その他の手段を巧みに組み合わせて働きかける作戦」(かなり短縮して紹介)となっています

また「誘導工作」との訳は、末尾に紹介する読売新聞・飯塚恵子さんの著書から拝借いたしました。米軍の定義は確認していませんが、そんな雰囲気の作戦だとご理解ください

4日付C4isrnet記事によれば
Army Cyber 2.jpg同司令官は、「我々は、より進んだ活動や防御を行い、状況のモニターを行い、毎分ごとにネットワーク環境の変化を把握することができる状態になった」、「我々は、情報戦や電子戦の全ての要素の融合により焦点を当てることが可能になり、更に商用のデータや情報が全て使用可能になったことが極めて重要である」と述べ
更に、「今回の司令部の移転で可能になった部分もあるが、活動の柔軟性が非常に増したという面も大きい」と変化を強調した

また、(新施設内に新たに完成した)新たなInformation Warfare Operations Centerは、かつてなかったレベルで、米陸軍部隊が接続している世界中の情報環境(information environment)をリアルタイムで把握する能力を提供することになる
同センターはまた、伝統的な軍情報機関による商用メディア情報の提供任務も併せて担うことになる。最近陸軍サイバーコマンドは商用インテリジェンス(commercial intelligence)を最大限に活用することを追求している

Army Cyber 4.jpg同司令官はかつて、「米陸軍サイバーコマンド」との名称を、「米陸軍Information Warfare Command」との名称に変更するだろうと述べていたが、3日記者団に、名称変更の正式なタイミングは流動的だが、手続きは進めていると説明している
ただ同司令官は、名称の変更のあるなしにかかわらず、米陸軍サイバーコマンドの10年ビジョンに沿い、より「情報戦:information warfare」に焦点を当てるべくシャープにシフトしていく方向にあり、戦術サイバー戦、電子戦、情報戦の専門部隊の立ち上げや融合を行う計画だと説明した
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「情報戦:information warfare」と「誘導工作:influence operations」の関係や、「サイバー戦」や「電子戦」と「情報戦:information warfare」との関係を整理せずにご紹介して頭が混乱されていると思いますが、「情報戦:information warfare」が、「サイバー戦」や「電子戦」を広く包含し、「誘導工作:influence operations」は「情報戦」より大きな概念だと思います
以下の新書の66ページ参照

iiduka.jpgちなみに以前ご紹介した、読売新聞の飯塚恵子さんによる新書「ドキュメント誘導工作 情報操作の巧妙な罠」の48ページに、「influence operations」は米軍の中でよく使用される用語で、訳として確立されていないが、「一番しっくりくる」のが新書のタイトルでもある「誘導工作」だと紹介し、前述のRANDの定義を厳密に引用されています

また同新書は「情報戦:information warfare」との言葉について、ロシアや中国でよく使用される用語で、ロシアの軍事ドクトリンから大雑把にまとめると、「コンピュータネットワーク上の作戦や、電子戦、心理作戦、情報作戦、などを含む包括的な行動で、軍事力を使わずに政治的目的を達成する戦い」となり、「軍事力を使わず」との点が注目だと説明しています

なお同新書は、「自分の意見が、知らずに誰かに操られている。それが情報工作だ」と記しています

「ドキュメント誘導工作」を読む
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1

関連がありそうな記事
「ハイブリッド情報戦に備えて」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-05
「NATOが選挙妨害サイバー演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-13
「サイバーとISR部隊が統合して大統領選挙対策に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「ナカソネ初代司令官が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-17

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国防長官:実機で人間とAI操縦者対決を2024年に [エスパー国防長官]

8月20日のバーチャル環境でのAI操縦者圧勝を受け
9日エスパー長官が大々的に発表

Esper on line.jpg9日、エスパー国防長官が国防省主催の「Artificial Intelligence Symposium」で講演し、2024年に実際の作戦機に人工知能を搭載し、人間パイロットが操縦する航空機と対戦させると発表しました

人工知能AIと人間操縦者の対決は、国防省最高の研究機関DARPAが8月20日に開催したバーチャル環境下での「AlphaDogfight Trials」で実現し、5回戦ってAI側が5勝との「完勝」で終わりましたが、この結果を受け更に発展させようとエスパー長官は語っています

ただ「AlphaDogfight Trials」の結果があまりにも衝撃的であったこともあり、主催者側から、AI側の問題点や対戦条件がAIに有利だったかもしれない等の発言も出はじめており、更に「実機」へのAI搭載には安全面等で様々なハードルが予想されることから、今後の対戦準備や場の設定は単純ではないと想像いたします

9日付C4isrnet記事によれば
AlphaDogfight2.jpegエスパー長官は講演で、「(8月20日の)AI側の圧倒的勝利は、バーチャル環境下での模擬空中戦において、AIの最新アルゴリズムが人間を上回る能力であることを示した。このシミュレーション対決を、2024年には現実世界におけるフルスケールの作戦機勝負へと発展させることにする」と宣言した

「AlphaDogfight Trials」で参加8企業チームの戦いを勝ち抜け、Weapon Schoolを卒業したばかりの人間操縦者に挑戦した「Heron Systems」のAIは、その攻撃的な戦いぶりと射撃の正確さで会場に名を轟かせた(gained notorietyとの表現です。悪評か?)
●(まんぐーす注→敗れた人間操縦者が大会後、飛行の安全を考えて米空軍が普段遵守している、敵との最低限の高度差を確保するとか、真正面に近い方向からの接敵を避ける配慮は、AIにはなかったと初対戦時に気づいて戦い方を修正したと語っており、この点も今後の要考慮点で悪評の原因か)

AlphaDogfight4.jpegただし、Heron Systems社のソフトも完全ではなく、基本的な戦闘行動パターンの途中で、敵の在空また飛行する方向の認識を誤り、逆方向に旋回する誤ちをしばしば起こしており、大会中改善されなかった
DARPAの担当責任者Dan Javorsek空軍大佐も大会後に、「付け加えるべき多くの警告事項や前提条件が明らかになった」と述べ、またAI側に実際の戦闘場面では入手不可能な多くの事前データを与えていたかもしれないと、対決の場の設定に再考の余地があるような発言をしてい
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原点に立ち返ると、このプロジェクトは、人間の「AIへの信頼性を高め、「AIは使い方によっては使える」と有人操縦者に信じてもらえるようにすることを目的に始まっています

ですから、AIがかった、人間が勝った・・・との話ではなく、無人機ウイングマンにAIを搭載した場合、どのような判断をAIに任せ、人間操縦者はどの部分を担当すれば全体の戦闘力アップにつながるかを見極めるための研究です。また無人機を地上から操作する場合には、どこまでAIゆだね、どの部分を地上からサポートすべきか、を見極める研究でもあります

Esper5.jpegまんぐーすも、「速報、AI側の圧勝」とツイートしてあおった側の人間ですが、AIの発展には大いに期待しつつ、今後の展開を見守りたいと思います

補足、下記の過去記事で、米空軍研究所が2021年7月に無人戦闘機と有人戦闘機のが空中戦対決を準備しているとご紹介していますが、この取り組みとエスパー長官発言の関係は不明です

無人機空中戦の検討プロジェクト
「AI操縦者が5-0で圧勝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-11
「無人機含む空中戦を支えるAI開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-19
「米空軍研究所AFRLは2021年に実機で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-05

米空軍の計画
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1
「空母搭載の小型無人機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-03
「空軍研究所が関連映像公開」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-31-3

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専門家が新米空軍トップに迫る課題を語る [米空軍]

Willson前長官、Carlile元司令官、Todd Harrison氏(CSIS)
そして美人のMackenzie Eaglen女史(AEI)などの声をご紹介

Brown4.jpg11日付Defense-Newsが、14日の米空軍協会航空宇宙サイバー会議で、初めて大々的に公の場で所信を語ることになる8月6日就任のCharles Brown空軍参謀総長の人柄と、その前に立ちはだかる課題を、信頼できる専門家へのインタビューから紹介しています

まんぐーすが「信頼のおける専門家」と申し上げたのは、米空軍士官学校卒業生として初めて空軍長官となったWillson前長官(女性)と、Brown大将の上司などで30年以上の付き合いがあるCarlile元大将(太平洋軍司令官やACC司令官経験者)、そしてシンクタンクからは米軍予算の専門家Todd Harrison(CSIS)と日本でもおなじみAEIのMackenzie Eaglen女史(美人!)の4人です

Brown.jpg黒人への差別が厳然として存在する米国社会、そしてその縮図でもある米空軍の中で、地道に実績を積み上げて来たBrown大将の人柄について異論をはさむ人はなくWillson前長官は「その広く深い経験に裏付けられた思慮深さ」と「決して会議で最初に発言する人ではないが、彼が発言すると皆が注目し、尊敬されているのがすぐわかる」と表現しています

またCarlile元大将は、Brown大将が「静かな巨人」「戦略的思考家」「見たことがない大きな名刺ホルダーを持つ人物」で、同様に「彼が話始めると、皆が注目して話に耳を傾ける人物」と表現し、また「彼が何か支援を願い出るときは、本当にそれが必要な時」だと信頼感を語っています

そんな実直で実力を備えたBrown大将ですが、本日は上記4名の専門家の声から、「老朽装備早期退役に対する議会調整」、「宇宙軍への支援」、「核抑止関連予算の別枠化」、「他軍種との遠方攻撃や指揮統制近代化を巡る争い」の視点で、同大将の前に立ちはだかる課題をご紹介いたします

11日付Defense-News記事によれば
Harrison.jpg厳しい予算見通しについてTodd Harrison氏は、「Goldfein前参謀総長時代には、まだわずかでも予算の伸びに対する期待があり、飛行隊数を現状の312から386個に2030年までに増強すべきと打ち出して米議会に危機感を訴える作戦に出ていたが・・・」と述べ
「今は386個飛行隊など可能性ゼロである。そんな夢物語は過去の話だ」と切り捨て、「成長を語る余裕などない。トレードオフの時代だ」と述べ、「今の米空軍は今の予算枠の中でどのように資源配分するかを考えているだろう」と状況を説明した

このような情勢を受けWillson前長官は、「Brown大将の課題は米空軍内よりもワシントンDCにあり、国防長官や空軍長官や統合参謀本部のメンバーと連携し、最も難しい米議会対応にあたる必要がある」と述べ、米空軍が何度も議会に拒否されてきた「旧式アセットの早期退役」問題が重要と語った
Wilson2.jpgWillson前長官は、A-10、U-2、RQ-4を早期退役させようとした米空軍の動きをことごとく米議会が阻止してきたことを振り返り、選挙区の基地アセットが削減されて経済面で打撃を受ける議員が中心となる反対運動は根強いが、最近のKC-135やKC-10、B-1の一部早期退役案には比較的反対が少ないことに触れつつ、何としても大きな国益を議員や選挙民に理解させ、米空軍の計画を進める必要があると語った

一方で米空軍と議会の関係についてMackenzie Eaglen女史は、「議会で米空軍は厄介な話ばかり持ち込む問題児と見られており、話の進め方が下手で議会に応援者がいない」と現状を述べつつ、「Brown大将はこれまでとは異なる風を持ち込み、利害関係者との関係改善を図る期待がもたれている」と述べた
Carlisle-FB3.jpg部下として各種予算編成を担当していたBrown大将を見ていたCarlile元大将は、困難な事業の説明を説得力あるプレゼンで進めていたBrown大将の能力に期待を寄せつつ、米議会やワシントンDC政界の魑魅魍魎の世界で、如何に立ち回るかにかかっているとコメントしている

Willson前長官は宇宙軍についても触れ、「誕生したばかりの宇宙軍は当面今のように小さく、組織的にも制度面でも強くない。私が恐れるのは、今は新生で輝いて見えるが、遠くない将来に各方面に支援を得るために奔走する可能性があることだ」と述べ、米空軍にその負担が重くのしかかる可能性を示唆した
また前長官はBroun参謀総長任期中に重くのしかかる課題として、核抑止にかかわるB-21爆撃機と新型ICBM(Ground Based Strategic Deterrent)の事業推進予算確保だと述べ、米空軍予算枠でこれを収めるには無理があることから、米海軍戦略原潜コロンビア級建造を「National Sea-Based Deterrence Fund」として別枠扱いにしたような措置が不可欠で、議会には理解者もいることから、協力を得て実現してほしいと語った

Eaglen AEI3.jpgMackenzie Eaglen女史は米空軍と他軍種の「つばぜり合い」ポイントとなっている「遠方攻撃」と「将来指揮統制」について述べ、Brown大将は前任者の方向を引き継ぐ姿勢を見せているが、「遠方攻撃」に関し、近い将来に米空軍は米陸軍などと予算争いをすることになろうと見ている
また積極的に米空軍がJADC2追求でABMSを推進し、統合の「将来指揮統制」をけん引する姿勢を見せている一方で、他軍種はこれを冷ややかに見ており、「お手並み拝見します。関与はしておいて成功したら便乗させてもらうが、失敗した時に備えて自前で検討も進めさせてもらうから」との斜に構えた姿勢だと現状を表現している。しかし現実として、米空軍が失敗したら、別の選択肢の予算はないのが現実だとも同女史は付け加えた

Brown大将は先日発表した小冊子「今変化しなければ勝てない」の中で、4軍の任務と役割の見直しを希望すると明言しており、今後これに関して国防省を巻き込んで議論の口火を切る可能性があるが、CSISのHarrison氏は「各軍種でスクラップ&ビルドを決断するためには、率直な任務分担に関する4軍間の議論が前提として不可欠だ」と述べている
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Brown2.jpg米空軍協会航空宇宙サイバー会議での「初の公の場での所信表明」(14日)をお伝えする気力が残っていないのですが、先日ご紹介したBrown大将の所信を明示した8ページの小冊子「今変化しなければ勝てない」と、本日の「Brown参謀総長を取り巻く課題」記事で、米空軍の今後を見る参考にしていただければと思います 14日の講演は小冊子の内容を改めて語るものと予想します

地元への利益誘導を図る議員の説得や、他軍種との戦いという、かつての日本の「英米と戦う前に、海軍(陸軍)と戦う」状態に暗い気分になりますが、Carlile元大将が「静かな巨人」と呼んだBrown大将に期待いたしましょう

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米陸軍は長射程兵器で2023年から変わる [Joint・統合参謀本部]

2023年にアジアと欧州の両正面ですべてが変わると
射程1000nmの方に加え、中射程の対艦・対地兵器を

PrSM.jpg4日、Defense-Newsのインタビューに答えた米陸軍長射程精密火砲近代化担当のJohn Rafferty准将は、2023年には米陸軍の中国やロシア対処のパラダイムシフトにつながる、長射程から短射程までの様々な兵器を提供開始すると語り、年初に終えた分析の結果、特に中射程(500-2000㎞)部分に米陸軍の弱点があるとも述べました

同准将は対中国を例に、射程が重なる様々な兵器を保有することで、それら様々な射程の兵器を中国正面の様々な場所に機動的に配備することができ、中国A2ADの目標選定を混乱させ効果を減衰させることができると説明し、多様なミサイルや砲の追求背景を説明しました。対ロシアには「縦深性をもってリスクを与える:risk in depth」と語っています

PrSM4.jpg以前ご紹介した「射程1000nm」の砲開発をはじめ、国防省のSCO(Strategic Capabilities Office)が進める移動目標対処ミサイル(Cross-Domain ATACMS:陸軍戦術ミサイルシステム)など様々な兵器名が登場し、頭が混乱するのですが、米空軍幹部が地上部隊の長射程兵器偏重は誤りだと訴える中でも、地上部隊の「長射程兵器追及」の動きは海兵隊も含め加速度的に進んでいます

米空軍幹部が懸念する「本格紛争では2~4万個の攻撃目標が想定されるが、それらに高価な長射程兵器だけで対処すると破産する」との主張にも一理あり、何が正しいのか、だれが米軍全体を統制しているのか見えない状況ですが、とりあえず米陸軍の取り組みを紹介しておきます

8日付Defense-News記事によれば
●極超音速兵器(hypersonic missiles:射程不明)
3軍共有の飛翔体ボディー試験を2回実施し成功。2023年配備開始を目標に、米陸軍はランチャーとの適合を図る等の取り組み中

●PrSM(Precision Strike Missile:射程500㎞)
PrSM3.jpg2023年配備開始を目標に開発中
---現在は海上を移動する艦艇攻撃能力付与や、破壊力アップのための研究開発を近未来の焦点に取り組んでおり、後に射程延伸に取り組もうとしている。またIADS(融合防空システム)の拡張(emitting Integrated Air Defense Systems)と合わせ、米陸軍研究機関が取り組んでいる「シーカー」試験とともに良いスタートを切っている
---米陸軍首脳、産業界、議会関係者は、2025年までにPrSMに「Land-Based Anti-Ship Missile」の「シーカー」を導入し、既存のランチャーから発射が可能になれば、米陸軍の中心装備になりえるとして、検討を加速するよう議論している

---また最近技術的課題で開発の遅れが報じられたが、国防省のSCO(Strategic Capabilities Office)が進める移動目標対処ミサイル(Cross-Domain ATACMS:陸軍戦術ミサイルシステム)の「シーカー」にも、米陸軍は関心を持っている

●中止の「Mobile Intermediate Range Missile」射程500㎞以上
2020年度予算に計上されたが、開発に長期間必要だとの理由で2021年度予算で中止された「Mobile Intermediate Range Missile program」であるが、米陸軍の緊急能力技術獲得質(RCCTO)は、より迅速に進め2023年までにプロトタイプを如何に完成させるかを再検討している

●射程1000nmの長射程砲(strategic long-range cannon)
strategic long-range.jpg---(2023年に技術的な可能性を見極めるとされている本兵器は、)年初に終えた分析でもその必要性が導かれている。分析は射程距離だけでなく、移動容易性、残存性、破壊力等々についても包括的に検討した結果である
---この砲開発は、依然として米陸軍の近代化検討の中で、科学技術面で第一優先である。これまでにない挑戦だが、まだ時間はある
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米空軍は、ウォーゲームやシュミレーション結果を踏まえ、長射程兵器だけでは勝てないと主張し、地上部隊の動きに警鐘を鳴らしつつ、安価な爆弾を目標に運搬可能なステルス爆撃機等の突破型装備への予算獲得を狙っているのですが、高価な長射程兵器だけでは弾が不足することも確かです。そのあたりの考え方に今後注目したいです

一方、このような方向に米軍が進むとき、日本はどうなるの???・・との疑問がわきますが2019年5月にCSBAが発表した「「海洋プレッシャー戦略」に沿うならば

PrSM2.jpg長射程攻撃能力を備えた米軍の「アウトサイド部隊」の反撃攻撃態勢が整うまで「インサイド部隊」主力となりそうな日本など同盟国軍が、中国の緒戦での侵略「既成事実化」を防ぐため、カモフラージュ・隠蔽・欺瞞などの自己防御手段と強靭さを備えたミサイル部隊と電子戦闘で粘り強く持久することが求められます・・・。まんぐーすはこのレポートに、未だに唖然、茫然自失の気分ですが、どうやらこの考え方が主流のようです

「海洋プレッシャー戦略に唖然」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-13

米陸軍の射程1000nm砲と極超音速兵器開発
「射程1000nmの砲開発の第一関門間近」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
「射程1000nmの砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「極超音速兵器の開発状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25

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米空軍がクラスター爆弾の代替爆弾試験 [米空軍]

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子爆弾ではない破片で同様の効果を狙う兵器
JDAMの誘導キットを装着して検証

BLU-136.jpg2日付Military.com記事は、米空軍がクラスター爆弾の代替をめざす子爆弾を使用しない「BLU-136」爆弾の効果を検証する一連の試験をネバダ州で7月に行い、その結果を現在分析中で、クラスター爆弾の代替となるかの判断に提供されると報じています

クラスター爆弾は、親爆弾から多数の子爆弾を放出する爆弾で、子爆弾1個の破壊能力は限定的ですが、上空で親爆弾から子爆弾を放出することで広範囲の地域全体を制圧する事を狙う兵器です

ただ、広範に散布される子爆弾の不発率が高く、20-40%以上とのデータもあり、紛争中は友軍の活動も制約し、紛争終了後にも投下地域の一般市民や子供への被害が大きいことから、ノルウェーの提案で2008年5月に、無力化機能を有する一部の型を除いてクラスター爆弾禁止する「クラスター弾に関する条約」が成立しました

Cluster bomb.jpgただし、大部分のクラスター爆弾保有国はこの条約に参加せず、具体的には米、露、中、印、韓、台湾、北朝鮮、ベトナム、タイ、インド、ミャンマー、パキスタン、中東諸国、ロシア正面の東欧諸国や中央アジア諸国等などが加わらない「意味不明な正直者が馬鹿を見る条約」となっています

英国やドイツは、子爆弾の無効化機能を付加した新たなクラスター爆弾を保有する道を選びましたが、お人よしの日本は条約に署名し、代替にならない代替兵器を購入するだけで、2015年には全てのクラスター爆弾の廃棄を完了しています

米国は条約に署名せず、北朝鮮の脅威を理由にクラスター爆弾保有を継続することとし、同時に当時の子ブッシュ大統領が子爆弾の不発率1%以下のクラスター爆弾開発を命じました。ただし、開発は成功しなかったと報道されています

BLU Cluster bomb.jpg当時のゲーツ国防長官も、不発率1%以上のクラスター爆弾を米軍は2018年末まで使用しないとの指示を出しましたが、2018年に当時のShanahan国防副長官はゲーツ指示を廃止しています

その理由をShanahan副長官は、代替手段開発に十分尽力したが現時点でなしえず、その開発に時間が必要と予期される中、北朝鮮の脅威を前にしてクラスター爆弾を放棄できないと説明しています

まぁ・・・欧州の平和ボケ国家による「偽善的条約」のような気がしますが、様々な世論がある米国は知恵を絞ってクラスタ爆弾延命を図り、まじめに代替手段の開発に取り組んでいるわけです

2日付Military.com記事は代替兵器の開発について
米空軍戦闘コマンドは、7月にネバダ州の試験場で、クラスター爆弾の代替候補である「BLU-136 Next Generation Area Attack Weapon」の一連の試験を行った
BLU-136 2.jpg担当の中佐は「BLU-136のパフォーマンスを評価するデータ収集のための運用試験を実施し、特に爆発状況や破片飛散状況の確認を重視している」、「収集されたデータは、BLU-136がクラスター爆弾の代替となるかを判断する材料となる」とコメントを出している

また、2000ポンド爆弾であるBLU-136は、「人員、軽車両、軽易な構築物を対象としており、JDAMの誘導尾部キットを装着したGBU-31v11として使用されることを想定している」と同中佐は説明している
試験担当の報道官は「試験の結果、着弾目標地点から約65m以上に破片が飛散したことが確認でき、50m以内では大きな被害を及ぼすだろうと推定できる」とする一方で、「破片自体は子爆弾のように爆発するものではなく、不発の問題もないことからクラスター爆弾に比して害は低い」と説明している
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尖閣の不法占拠を企図する大陸国家の上陸部隊に対し使用すれば、効果抜群だったと思うのですが・・・・

中国はクラスター爆弾製造国で、保有国でもあります。もちろん「クラスター弾に関する条約」には一切関心を示していません・・・

条約でのクラスター弾の定義(第2条)
「それぞれが20キログラムを超えない爆発性子弾を散布または放出するよう設計された通常弾で、それらの爆発性子弾が含まれるもの」

「禁止対象とならないクラスター弾」の要件(第2条2項c)
周囲に対する無差別的な影響ならびに不発弾による危険性を回避するために次の特性を備える弾薬。
1.10個未満の爆発性子弾しか含まない。
2.それぞれの爆発性子弾の重量が4キログラム以上である。
3.単一の目標を察知して攻撃できるよう設計されている。
4.電気式の自己破壊装置を備えている。
5.電気式の自己不活性機能を備えている。

ご参考:条約に参加しなかった主要な国
米国、イスラエル、イラン、サウジアラビア、トルコ、シリア、イラク、ウクライナ、ギリシャ、アラブ首長国連邦、エジプト、ヨルダン、イエメン、グルジア、アゼルバイジャン、コソボ、カザフスタン、ポーランド、ルーマニア、アルメニア、ベラルーシ、ラトビア、ロシア、ブータン、ベトナム、タイ、インド、ミャンマー、パキスタン、中国、北朝鮮、韓国、台湾

クラスター爆弾が登場の記事
「軍事的評価:露空軍のシリア作戦」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2015-10-19
「なぜ今?防研が湾岸戦争航空作戦メモ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-08

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2回目のJADC2又はABMS試験演習 [米空軍]

昨年12月の1回目からコロナの影響で間隔があいたが
極めて断片的な情報ですが重要な取り組みなので

ABMS.jpg4日付C4ISRnetが、3日に実施された第2回目のJADC2(統合全ドメイン指揮統制)又はABMS(Advanced Battle Management System)試験演習を取り上げ、首謀者である米空軍Will Roper氏の「成功と失敗がバランスよく組み合わさった期待した演習になった」との言葉を引用しつつ、非公開部分が多く関係者も多くを語らない同演習の紹介を試みています

ABMS試験とか、JADC2(統合全ドメイン指揮統制)、時には「連接マラソン」とも呼ばれるこの実験演習は、米空軍の各種シミュレーションやウォーゲームの結果から、クラウド技術やAI技術を活用し、4軍の装備を有機的に連接して情報や指示を迅速に共有することが大きな戦闘能力向上につながることが判明したことを受け本格化した演習です

演習では宇宙、上空、地上、水上、水中の多様なセンサーやアセットを連接して指揮統制を迅速に行う各種検証を行っており、昨年12月の1回目は「米本土への巡航ミサイル攻撃対処」をテーマに大きな成果を上げ、その後も4か月に一度実施の方向で準備されていました

コロナの影響で4月に予定されていた第2回目の宇宙主体の実験演習は9月に延期されましたが、この期間を利用して演習内容の充実拡大を図ると米空軍省Preston Dunlap氏(Will Roper氏の部下)が5月に語っていたところです。なお第3回目については、アジア太平洋を対象に現地に出向いて12月頃実施予定とされています

ABMS2.jpg米国防省はエスパー長官をはじめとして米空軍のこの演習を強く推進しており、従来型のアセット予算を後送りし、老朽装備を早期退役させてまで「連接性向上」に投資する方向性が、米国防省2021年度予算案で打ち出されています。詳しくは末尾の過去記事でご確認ください

記事によれば、第2回目の本演習は北米コマンドと宇宙コマンドが中心となって準備と訓練をが行われましたが、アセットは沿岸警備隊を含む全米軍から参加し、F-16、MQ-9、駆逐艦、沿岸警備艇、陸軍の榴弾砲などなど伝統的アセットから、ロボット犬や5G通信タワーや巡航ミサイル探知センサータワーなどが、約1500名の米軍兵士のほか、60もの企業チームにより運用されたようです

宇宙軍をメインにとの事前情報でしたが、関係者のガードは固く、同演習取材ツアーに参加した記者による4日付C4ISRnet記事からは「宇宙軍がメイン」な様子がよくわかりませんが、今後の米軍の戦い方を左右する実験演習ですので、断片的な記事の概要をつまみ食いしておきます

4日付C4ISRnet記事によれば同演習は
ABMS3.JPG仮想敵国が米国に対して敵対的な行動をはじめ、最初はサイバー攻撃を、次に宇宙アセットへの敵対行動、そして米本土への巡航ミサイル攻撃にまでエスカレートするとのシナリオで演習は実施された
米本土に対する巡航ミサイル攻撃は、ヴァーチャル空間上の飛来ミサイル情報と共に、ニューメキシコ州ホワイトサンズ演習場で実際に6発のBQM-167無人標的機によって模擬された

理想的には、各軍種の様々な現有センサーや、Anduril Industries社が試験的に投入した巡航ミサイル探知センサータワーなどからの情報をネットワーク空間で融合し、その位置や脅威の度合いを全ての演習参加者がリアルタイムで共有し、脅威度を基に人工知能AIが即座に判断し提示した対処オプションの中から、北米コマンド司令官が最終判断を下して指示をABMS上で即座に伝達することが期待されている
これまでの司令部活動では、様々な情報をスタッフが各軍種のバラバラな情報ネットワークや電話から入手し、指揮官用のデータベースに入力しなおし、時にはパワポスライドにまとめて意思決定をサポートする・・・等の非常に時間のかかる幕僚活動で指揮統制を支援していた

ABMS4.JPG2回目の実験演習終了後、本演習の発案者で推進者である米空軍のWill Roper氏は、「成功と失敗がバランスよく発現した期待通りの演習だった」と振り返り、様々なアイディアを積極的に試す場としての本演習の意義を再度強調した
例えばRoper氏は、模擬巡航ミサイルを陸軍のM109榴弾砲から発射した「高密度のhigh-velocity projectile」または「“smart” bullet」によって撃墜できたことを大きな成果と紹介し、安価な迎撃体への道を開いたと紹介した

また様々な軍種や組織のネットワーク情報処理に関し、情報の融合処理や伝達や前線への配信、AI支援でオプション提示法を検討する「deviceONE」「OmniaONE」「FuseONE」「SmartONE」「CommandONE」「CloudONE」などのプロジェクトに精力的に取りくみ、改良が進められている点もRoper氏は紹介した
一方でRoper氏は多様なネットワーク連接について、通信プロトコルや周波数帯などの相違による課題が残っており、例えば秘密情報を扱うSIPR(ecret Internet Protocol Router Network)に他のネットワーク情報を取り込むことへの挑戦が続いていると表現している

ABMS5.jpg様々なアセットとの連接に関しても単純には事は進んでおらず、匿名の北米コマンド関係者は、演習の数日前から連接の予行練習を開始したがなかなかうまくいかず、部隊の通信技術者や企業関係者と悪戦苦闘しながら演習当日を迎えた様子などを語ってくれた

それでも演習部隊の指揮官として米本土の防御にあたったGlen VanHerck北米コマンド司令官は、人工知能AIの能力に感銘を受け、巡航ミサイルなど対処に時間的余裕のない状況におけるAIによる対処案提示が有効だと述べている
人口知能の活用についてRoper氏は、「人間が人工知能などに対し懐疑的であることは大切だと思う。一方で今回の試験演習を経て私は懐疑的でなくなったと申し上げられる」と語った
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12月に予定の3回目は、アジア太平洋を対象とし、実際にハワイのPACOM司令部が主な舞台になりそうな事前情報で、同盟国の参加も示唆されたいたように思います

豪州やシンガポールがまず手始めに・・・との推測ですが、日本も早く絡めるようになると良いですね

この記事の雰囲気からも感じていただけるように、12月の第1回目の同演習の時と比較しても、中国やロシアの対抗措置を警戒した米軍の情報管理は急速に厳しくなっています

全ドメイン指揮統制連接実験演習:ABMSとJADC2関連
「今後の統合連接C2演習は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-08-1
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「米空軍の夢をCSBAが応援!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「空軍資源再配分の焦点は連接性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-08
「マルチドメイン指揮統制MDC2に必要なのは?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-24

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戦術のメッカNellisに新バーチャル訓練センター [米空軍]

実機訓練に同センターから高度なバーチャル敵を提供可
将来は他軍種や世界各地からの参加も可能に

VTTC USAF.JPG8月24日付Military.comが、約40億円をかけて米空軍がネリス空軍基地に建設し、17日の週に開所式が行われたばかりの「VTTC:Virtual Test and Training Center」について取り上げ、実環境では戦場環境を再現できない中国やロシアの強固な防空圏での訓練や、第5世代機の最大能力を発揮させる状況設定での訓練を、バーチャル環境で実施可能な設備が出来上がったと紹介しています

第5世代機、高度な電子戦装備、高性能地対空ミサイル等の高性能兵器や、サイバーや宇宙ドメインでの発生状況を、一般国民生活に影響を与えず限られた演習場エリアで再現することが困難となる中、各種・各基地のシミュレーターを連接して、実環境では不可能な訓練環境を設定する試みが米軍内で進んでいますが、そんな取り組みの大きな柱となる施設が米空軍にオープンした模様です

今後、機能付加する必要がある部分がまだまだ残っているようですが、このような訓練施設は使いながら機能を拡充していくのも重要なことですから、今後の発展に期待してご紹介いたします

8月24日付Military.com記事によれば
VTTC USAF2.jpg約6000平方メートルの広さを持つ「Virtual Test and Training Center」の稼働により、例えば、実機でRed-Flag演習に参加しているパイロットに、実環境では準備できないレベルの脅威を追加でバーチャル脅威として提示し、対処訓練をさせることも可能になる。実環境とバーチャル環境の融合を狙っているのだ
同センターを配下に持つ「Air Force Warfare Center」長のChuck Corcoran少将は、「中国やロシアと対峙した際に米軍が直面する脅威を訓練で提示できる演習場は、米軍の統合レベルに存在しなかったし、米空軍にももちろんなかった。だから我々は各種データを集め、バーチャル環境でこれを必要な規模と視野で実現することに取り組んだ」と説明した

同センター内に、今後F-15Eシミュレーターを建設するほか、既にネリス基地内に所在するF-35、F-22、F-16戦闘機のシミュレーターを、同センターと連接してバーチャル環境に組み込む予定もある
VTTC USAF3.jpg「世界中で発生しうる如何なる紛争もこのセンターで再現や提示ができる」と同センターのDuncan中佐と述べ、「米軍他軍種や同盟国の航空機をRed-Flag演習に提示することができ、同じ空間を飛行して訓練しているかのように訓練可能となる。最終的には世界中から演習に(バーチャル空間で)参加可能になろう」と同センターの能力を説明した

米空軍としては同センターを、政府が保有する第5世代機以上のアセットの試験評価が可能な「Joint Simulation Environment」と連接したいと考えており、同中佐は「これにより、訓練手法を一世代飛躍させることになり、実空間では困難な新戦術や技術・手順の検証が可能となる」と胸を張った
同中佐はまた、同センター建設に費やした初期投資は大きいかもしれないが、今後はネットワーク通信費のみで、現実環境では不可能な規模やレベルの訓練を実施でき、新たな戦術戦法の開発検証が可能になるとその効果を説明した
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VTTC USAF4.jpg「Air Force Warfare Center」との組織の内部に、縦横80mぐらいの敷地の「The Virtual Test and Training Center」が新たに開設されたと言うことです。ご紹介している写真は、開所式のテープカット模様とラスベガスの近傍基地らしいバーチャル訓練センター開設のポスターです

航空自衛隊はバーチャル訓練環境面ではどの程度のレベルにあるのでしょうか? F-35機体購入費だけで財布が空になり、訓練費も維持整備費も、バーチャル訓練環境も置き去り・・・、ついでにネットワーク環境整備も不十分なので、ネリス基地との連接も困難・・・との状態でないことを祈ります

余計な話ですが、「Air Force Warfare Center」長のChuck Corcoran少将は2019年7月から現職ですが、その前任者が女性問題で更迭・退役となったことから急遽就任した方です。ブログ読者の皆様、気を付けてくださいね

5世代機とバーチャル訓練
「F-35新型シム装置で他基地他機種とも」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-02
「DMT構想について」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-06
「米空軍が人工知能シム訓練アイディア募集」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-26
「5世代機のため訓練エリア拡大要望」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-12-09-1
「5世代機の訓練はシムと実機併用で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-11-24-1
「シム訓練でF-22飛行時間削減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-11-1
「F-35SIM連接の課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-05
「移動簡易F-35用シミュレーター」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-02
「5世代機はバーチャル訓練で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-28-1

演習環境に関する記事
「過去最大のサイバー演習を完全リモート環境で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-22
「太平洋軍の演習場が不十分」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-29-1
「太平洋軍司令官が議会に要望」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-29

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

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