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カナダが次期戦闘機88機にF-35を1番候補に [亡国のF-35]

総予算範囲で交渉決裂なら選定2番のグリペンへ
2025年に一番機導入予定で交渉へ

Tassi canada.jpg3月28日、カナダの調達担当大臣は、カナダ軍保有のCF-18戦闘機の後継として複数の候補機種を比較検討した結果、1番候補としてF-35が選ばれ、サーブ社のグリペン戦闘機が2番候補になったと語り、まず1番候補のF-35がカナダ政府予算の約1兆8000憶円範囲内で購入できるか交渉を開始すると明らかにしました

仮に、上記予算範囲内で1番機を2025年に受領する契約にロッキード社と合意できなければ、2番候補であるグリペンを求めサーブ社と交渉するとも同大臣は語っています

Trudeau.jpgカナダは策士であるトルドー首相の下、F-35共同開発国でありながら同機の開発遅れや価格高騰を理由に購入決定を延期し続け、一時は138機保有の老朽化CF-18を補完する「つなぎ戦闘機」として豪空軍中古F-18購入案まで持ち出して「戦って」いましたが、2018年頃から複数機種を候補に「ゆったりのんびり情勢をしっかり見極める機種選定」を開始していまし

2018年11月の記事からカナダ機種選定模様を
CF-18 canada.jpg●カナダ空軍はCF-18戦闘機を138機所有しているが、30年以上の使用で機体寿命に達しつつあり、ほどなく77機程度まで使用可能機数が減少することになる
●カナダはCF-18後継を想定してF-35共同開発国に加わり、60機購入を計画していたが、2015年にトルドー政権はF-35計画への不信感をあらわにし、F-35購入を少なくとも5年は延期し、白紙的に検討すると発表

●一方で老朽CF-18の穴埋めとして、ボーイング製FA-18の購入を検討し始めたが、ボーイング社がカナダのボンバルディア社を旅客機のダンピングで訴えたことから米カナダ関係が悪化し、FA-18の購入検討を中止し、中古の豪州空軍FA-18を25機購入を協議中。2018年9月、製造元米国も承認することを表明
F-35 canada.jpg●旅客機ダンピング問題は、2018年1月に米国調停機関がボーイングの訴えを却下して決着したが、トランプ政権の強引な米国製品売り込みの失敗例として、またNAFTAを巡り悪化する米カナダ関係を象徴する事象として大きな話題に

●紆余曲折の末、現有CF-18の老朽化もあり、トルドー政権下のカナダ国防省は本格的な後継機選定を、F-35、タイフーン、ラファール、グリペン、FA-18E/Fを対象として2018年から再開したところ
Gripen SAAB.jpg●カナダ政府は、今回の戦闘機選定を「once-in-a-generation opportunity for the Canadian economy」と見なし、産業政策の重要な柱と見ている。カナダはF-35共同開発国として1000億円の投資を行い、110社のカナダ企業が備品供給や維持整備に関与する資格を得ているが、今後の維持関連業務は費用対効果で定期的に見直されることから、いつ除外されてもおかしくない不安定なものである
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「予算範囲内で1番機を2025年に受領する契約にロッキード社と合意できなければ、2番候補であるグリペンで交渉」との戦術が功を奏するのかどうか「?」ですが、交渉がまとまればフィンランドが15番目で、ドイツが16番目、そしてカナダが17か国目のF-35購入国になります

みんなで渡れば怖くないのか? 

F-35導入を決定した国(カッコ内は購入予定機数)

●共同開発国(8か国とその他1国)
F-35 canada2.jpg 豪州(100機), Denmark(27), Italy(90), Netherlands(37), Norway(52), 英国(138)、米国(2443)(空軍1763、海兵隊420、海軍260)、そしてカナダ(交渉がまとまれば88機
 トルコも共同開発国ながら、ロシア製SAM購入で排除された

●FMS購入国(9か国)
Belgium(34機), Israel(19), 日本(42+100) , 韓国(40)、シンガポール(当面12機 最終的に約50機) ポーランド(32機 2020年1月)、スイス(32)、そして、フィンランド(64機)、ドイツ(最大35機)

●欧州だけピックアップすると・・・
Denmark(27), Italy(90), Netherlands(37), Norway(52), 英国(138)、Belgium(34機)、ポーランド(32機 2020年1月)、スイス(32)、そして、フィンランド(64機 2026年から導入)、ドイツ(最大35機)

F-35調達機数削減の動き
「米海兵隊も削減示唆」→https://holylandtokyo.com/2022/01/17/2586/
「米空軍2025年に調達上限設定を」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「英国は調達機数半減か」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/

策士トルドー首相カナダ選定の紆余曲折
「仕切り直し再開か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-03
「カナダが中古の豪州FA-18購入へ!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-10
「痛快:カナダがF-35購入5年延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-23

「カナダに軍配:旅客機紛争」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-28
「米加の航空機貿易戦争に英が参戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-16-1
「第2弾:米カナダ防衛貿易戦争」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-04
「5月18日が開戦日!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-20

最近のF-35購入決定国
「ドイツが戦術核運搬用に16番目」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-15
「フィンランドが15番目」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-11
「スイスが14番目の購入国に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-01
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

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2023年度国防予算案は4%増だが大荒れの予感 [米国防省高官]

22年度より4%増も、ウクライナ危機の物価上昇考慮間に合わず
共和党は予算額773Bドルを875Bにまで増額要求
米議会は2022年も753Bを782Bに増額させた実績あり

Pentagon.jpg3月28日、米国政府が2023年度予算案(2022年10月~23年9月カバー)を公表し、前年予算案から約4%増の773Bドルを要求しました。

バイデン大統領は同予算案公表に合わせ、「安全保障関連予算の歴史の中で、史上最大の投資計画の一つとなる」とその額をアピールし、ホワイトハウス高官も「2022年と23年の予算の伸び合計は9.8%となり、必要な軍事能力強化と維持のための予算額を確保した」とその妥当性を強調しています

2023 Budget.jpgしかし、以前から中国等対処を念頭に最低でも前年比5%の国防費増額を求めてきた共和党議員を中心に「不十分だ」「適切でない」との声が既に上がっており、昨年2022年度予算案753Bを米議会の力で782Bに増額させた実績を踏まえ、今年は875Bドルを目指すとの声が共和党議員から聞こえています

予算案773Bドルの予算案に対し、「875Bドルを目指す」とは少し飛躍が過ぎるとのご意見もありましょうが、この予算案は実質的に今年1月末には既に固まっており、その後のウクライナ危機によるエネルギーや各種原材料費高騰など物価上昇分が全く考慮されていない額であり、国防省幹部も「実質購買力は低下している」「最近の物価上昇への対応は今後の検討課題」と素直に認めているところです

28日付Defense-News記事から全般概要を見ると
hypersonic subm7.jpg軍種別の伸び率は海空宇宙を重視
 陸軍と海兵隊の伸び率1.7%
 海軍は4.8% 空軍は3.4% 宇宙軍はなんと35.4%
●研究開発費は過去最大の9.5%伸び確保
 極超音速兵器開発に4.7Bドル(5600億円)、マイクロ電子と5Gに3.3Bドル(4000億円)、バイオテクノロジーに1.3Bドル(1500億円) 

●米議会の選挙区への配慮で難航の旧式装備早期退役
 旧式装備早期退役で2.7Bドル(3250億円)を他分野へ再投資
 米空軍が140機を早期退役計画、100機のMQ-9を他の政府機関へ移管
 米海軍は艦艇24隻を退役(巡洋艦5隻、LCSを9隻、潜水艦2隻、うちLCSなど16隻は早期退役)
●欧州抑止イニシィアティブに6.2Bドル(7450億円) ウクライナにはこのうち360億円

Columbia-class4.jpg●核抑止3本柱の近代化に34.4Bドル(4兆2000億円)
 6.3Bドル(7500億円)をコロンビア級戦略原潜に、5Bドル(6000億円)をB-21ステルス爆撃機に、3.6Bドル(4300億円)を次期ICBM(GBSD)、4.8Bドル(5200億円)を核抑止指揮統制システムに
●サプライチェーン強化に
 3.3Bドルをマイクロ電子関連に、0.6Bドルを極超音速兵器とエネルギー兵器関連に、0.25Bドルを稀少材料に65億円を溶接や鍛造部門に、52億円をバッテリーや電源貯蔵に


28日付米空軍協会web記事で空軍関連では
 
Kendall air 2.JPG●Kendall空軍長官は「2023年度予算案はtransformationalな予算案だ」「小出しの変化では脅威の変化に対応できない」と述べる中で、「研究開発費が大幅増額となっているが、これは他の分野で大幅カットを受け入れざるを得ないことを意味する。2024年度予算案では、より一層厳しい選択を行うことになる」と表現している
●更に同長官は、「輸送力についてはおおむね固まっているが、transformationは戦術戦力やglobal strike分野に焦点を当てて行う」とも語っている。他の空軍幹部も「深遠なtransformational changesとなる2024年度予算のプレリュードとなる23年度予算案」と語っている

●研究開発費は前年度比で20%増、調達経費は15%増、作戦運用&維持整備費は4%増
F-22 iwakuni2.jpg●航空機の早期退役や他への移管は約240機。 33機のBlock 20 model で近代化改修に経費がかさむF-22を含む。なおF-22の残りの機体には約400億円の近代化改修費が予算化されている

●240機を削減(早期退役140機とMQ-9を100機他機関へ移管)と、新規導入82機で、全体でプラスマイナスで158機減少。早期退役には大部分のE-3 AWACSとE-8 J STARSを含む
(ちなみに、2022年度予算では最終的に、要求した早期退役201機のうち、42機のA-10以外は退役が議会で認められている)

F-35 Germany.jpg●F-35については、2022年に48機が、2023年予算では33機に大幅減少。ロッキード社のBlock 4成熟待ちが理由。同長官は総調達数1763機に依然コミットしていると最近発言も
●F-15EX購入は、22年度12機から23年度は24機に倍増。NGADとB-21用の無人機ウイングマン関連は150億円、NGADは2000億円でF-35Aにも約1200億円

●極超音速兵器は戦闘機用HACMと爆撃機用ARRWに計680億円
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あくまでも「米国防省がまとめた予算案」です。

また、これからウクライナ問題で安全保障環境が激変する中、ウクライナ問題発生前に固まった予算案が、議席数が伯仲する米議会で議論されるわけです。大変です

国防予算関連の最近の記事
「F-35調達機数は減少へ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/25/2933/
「海軍は3大近代化から1つに絞れ」→https://holylandtokyo.com/2021/06/11/1898/
「空軍の戦闘機構想」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「陸軍は2023年で変わる」→https://holylandtokyo.com/2020/09/11/478/
「海兵隊は対中国で戦車部隊廃止へ」→https://holylandtokyo.com/2020/03/26/790/

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米陸軍が軽戦車MPFの選定ほぼ終了 [Joint・統合参謀本部]

MPF:Mobile Protected Firepowerとの歩兵用軽戦車
General DynamicsがBAEに勝利との報道あり

MPF GD3.jpg3月11日付Defense-Newsは、3月のJanes Defense誌が報じた米陸軍軽戦車(正確にはMPF:Mobile Protected Firepower)機種選定で「General DynamicsがBAEに勝利した」との情報をフォローする記事を掲載し、関連米陸軍幹部の「機種選定に満足している」との言葉を紹介しつつ、7月予定の正式発表にサプライズは無いとの感触を伝えています

この米陸軍軽戦車MPFは、歩兵部隊に「防護プラットフォーム」、「圧倒的な精密火力」、「様々な地形条件での高い機動力」提供を目的とするもので、「現在の欠落能力を補完」するため2026年夏に最初の部隊への配備を予定しています

MPF GD.jpg2018年12月に最終候補をBAE Systems社(緑色)とGeneral Dynamics Land Systems(GDLS:茶色)社の2社に絞り、各社に12両のプロトタイプを製造させ、まず米陸軍で全ての基本性能が要求値を満たしているかを試験し、

その後、MPFの基本運用コンセプトを作成した第82空挺師団の選抜兵士による「ユーザー確認試験」が行われ、現場の様々な角度からの意見が聴取され、製造企業側にもフィードバックされ、現在最終結果取りまとめが行われている段階にあるようです

MPF BAE2.jpg2つの提案は、同じ提案要求書から作成されたものですが、2社の提案は大きく異なっており、GD社は軽量車体に高性能装甲装置と先進サスペンションを搭載し、火器管制装置やタレットにはM1A!戦車の最新型バージョンのシステムを搭載している模様です

一方でBAE社は、コロナの影響でプロトタイプ提供がGD社より1か月遅れたようですが、M8 Buford装甲ガンシステムに新たな能力やサブシステムを搭載したデザインで選定に臨み、2021年8月にはおおむね終了した模様です。「ユーザー確認試験」を経た第82空挺師団兵士からのフィードバックには、両社とも「非常に貴重な現場意見が得られた」と感謝の意を表しています

MPF BAE.jpg機種選定と並行し、米陸軍内では量産に向けた「Requirements Oversight Council による審査」も行われ、具体的な配備先部隊を調達数にまで踏み込んだ議論が複数回行われ、煮詰まってきているようです

正式には今年7月(2022年度第4四半期)と言われる選定結果発表後は、勝者が26両を製造(オプションで26両追加製造)し、更に米陸軍内の様々な意見を踏まえ、量産用最終改良型を8両製造して量産形態を確定する予定となっています
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2018年に2企業に絞られた際、米陸軍担当幹部はMPFについて、「歩兵が徒歩や簡易装甲車両ハンヴィーで移動していた際に、敵の拠点や車両に出くわした場合、今は全て停止を余儀なくされている」、「しかしもしMPFがあれば、米陸軍部隊はそれらを突破することができるだろう」とその必要性を語っています。

MPF GD4.jpg要求性能でMPFは105mm砲と7.62mm同軸機銃で武装し、重量はM1AI戦車より軽量な40トン以下、そして機動力もM!A!戦車を超えることを目指しており、この点で「欠落能力の補完」と言うことなのでしょう

中東での対テロ戦では用途がありそうですし、ウクライナ軍に提供してあげたい装備ですが、対中国で活躍の場があるとは考えにくく、どの程度の数量が調達されるのか気になるところです

米陸軍の話題
「50KW防空レーザー装備の装甲車導入へ」→https://holylandtokyo.com/2022/01/21/2623/
「Project Convergence5つの教訓」→https://holylandtokyo.com/2021/12/21/2514/
「大国との本格紛争で近接戦闘も重視」→https://holylandtokyo.com/2021/11/09/2388/

「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holylandtokyo.com/2021/10/18/2342/
「2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holylandtokyo.com/2020/09/11/478/
「射程1000nmの砲開発に慎重姿勢見せる」→https://holylandtokyo.com/2021/03/17/163/

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寄稿「ウクライナ侵略は日本への警告だ!」 [安全保障全般]

日本専門家RAND上級研究員がDefense-Newsに寄稿
3月24日トップ記事で読者アクセス1位記事
台湾有事の日本の課題を4つの視点で

Hornung RAND.jpg3月24日付Defense-Newsが、RAND研究所の日本専門家による「ウクライナ侵略は日本への警鐘だ:Ukraine should provide Japan’s wake-up call」との寄稿を掲載し、「台湾有事に備える日本の課題」を4つの視点「自衛隊の規模・態勢」「軍事対処の法的問題」「不足する軍事能力」「海外からの補給支援体制」から指摘し、当日の読者アクセス1位記事となっています

Hornung RAND2.jpg寄稿者のJeffrey W. Hornung研究員は日本問題の専門家で、George Washington大学で「日本の湾岸戦争とイラク戦争時の意思決定過程」をテーマに博士号、SAISで日本政治で修士号、フルブライト奨学生として東京大学留学、笹川財団の研究員、国防省ハワイ研修センター助教授などを経験し、日本の新聞TVにも多数登場出演の方です

日本人の安全保障専門家でも、日本の台湾有事の際の課題は山のようにあって表現が難しいでしょうが、簡明な説明に挑戦されています。色々なご意見はありましょうが、ご紹介しておきます

自衛隊の態勢は十分か?
Japan’s wake-up.jpg●日本は人口減少の最中にあり、自衛隊の戦力は人的に少なく年齢構成も若くない。またその訓練演習は現実的なシナリオに沿っているとはいえず、政策担当者は自衛隊が十分な戦闘準備態勢を整えるに必要な訓練演習の在り方を吟味する必要がある
●自衛隊には一応予備役のような仕組みはあるが、小規模で技量レベルは未知数だ。徴兵制が憲法上不可能である中、紛争ぼっ発時の人員不足を補う手段を考えておくべきである

軍事有事に対応する法的枠組み
Japan’s wake-up2.jpg●紛争発生時には迅速な政治決断・対応が求められるが、日本の現法制では、日本への直接攻撃がない限りは実質的に具体的な作戦行動がとれない形となっている
●例えば、敵対的行為開始以前に基地外の土地に陣地形成するためには地主の同意が必要だが、このような規制を柔軟に運用できるような枠組みを政治が準備し、対処に時間的余裕がない中国の台湾侵攻に備えることを可能にしておく必要がある

必要な軍事能力の整備
THAAD PAC-32.jpg●中国は、大量の各種ミサイルや海軍や空軍部隊を台湾に投入する準備を進めてきているが、これら戦力は直ちに日本への脅威であり、日本はこれら中国戦力対処を優先した軍事能力整備をすべきである
●優先すべき能力には、例えば多量の防空及び対艦ミサイル、多連装ロケット調達等が考えられる。台湾に比べ、日本は中国から離れていることを利点とすれば、水上及び水中艦隊の整備や、戦闘機部隊維持も考えられる

●中国が緒戦で大量投入する弾道ミサイル対処能力に加え、中国の巡航ミサイルや航空戦力対処のため、移動可能IAMD(mobile integrated air and missile defense)にも注力する必要があろう。既存のPAC-3の他、THAAD、より機動性の高い米陸軍保有の「High Mobility Artillery Rocket System」や「Tactical Missile System」にも着目する必要がある

KC-46A1.jpg●東シナ海での争いを考えると、兵站補給面での体制が日本は脆弱である。自衛隊の補給拠点は日本本土に所在し、東シナ海や台湾から離れており、かつ脆弱である
●更に、日本本土から台湾や東シナ海周辺への海空輸送能力や、空中及び海上給油能力、兵器弾薬の備蓄所も増強が不可欠だ。日本の政策担当者は輸送能力や兵站不足を真摯に見つめなおすべきだ

●おおすみ型輸送艦3隻とC-130やC-2輸送機の現能力で、PAC-3や対艦ミサイルが十分輸送可能か? 今の給油艦や空中給油機でハイエンド紛争を支えることが可能か? 中国による緒戦のミサイル攻撃を防ぐ、隠蔽や掩蔽などの努力が十分か? など謙虚に見つめなおすべきだ

海外からの支援枠組みがあるか
Japan’s wake-up3.JPG●ウクライナが何とか持ちこたえているのは海外からの軍事援助があるからだが、日本の限定的な国内軍事サプライヤーを考えると、有事の兵站補給は多くの問題に直面する
●台湾有事の際には米国も当事者であり、米国も日本に十分な支援が可能とは限らない。平時から日米間で必要な軍事物資の優先調達等について議論しておく必要がある

Japan’s wake-up4.jpg●ウクライナのケースでは、ウクライナはNATO加盟国ではないが、自国への影響や地理的な近さもありNATO諸国がウクライナを軍事物資支援しているが、日本とNATO諸国間には物理的な距離があり、アクセス可能な極東拠点が限定されることもあり、海外から迅速かつ継続的な支援を受けることは容易ではない
●日本は、米国の主要な同盟国と戦略的に緊密になるために大きな努力が必要になるが、同時にこれは米同盟国と同じ網に絡まれる(enmesh itself with these states)ことになる点を考慮すべきである。具体的には共同作戦計画の立案、日本の基地の共同使用、日本の基地への物資事前集積など検討が考えられる
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この寄稿は、「ウクライナ危機は、戦争がいつでも起こりうることを示した。日本は、中国の脅威に何時でも対応できるよう、確実に準備しておく必要がある」との一文で結ばれています

Hornung RAND3.jpgHornung研究員は、日米両国の関係者とのつながりが深く、両国関係者の日ごろの地道な努力を知るからこそ、日本の抱える有事の問題点を「オブラートに包むように」指摘しています。でも指摘は極めて的確だと思います

日本の実態のひどさを、その知識を駆使して強烈に米軍事メディアに書きなぐることも可能だったでしょうが、そこは控えて米国関係者による日本への圧力をやんわりと期待しての寄稿かと邪推いたしました

RANDのJeffrey W. Hornung研究員紹介ページ     
https://www.rand.org/about/people/h/hornung_jeffrey_w.html

日米軍事関係の記事
「米空軍輸送機で陸自空挺団540名が降下訓練」→https://holylandtokyo.com/2022/02/15/2720/
「米軍態勢見直し完了発表もほぼ非公開」→https://holylandtokyo.com/2021/12/01/2485/
「米会計検査院による日本駐留評価」→https://holylandtokyo.com/2021/03/23/167/
「在日海兵隊が対中国「飛び石」機動演習」→https://holylandtokyo.com/2020/10/26/441/
「海兵隊司令官が在日米海兵隊削減を示唆」→https://holylandtokyo.com/2020/09/28/488/
「日本など同盟国に国防費GDP2%以上を要求」→https://holylandtokyo.com/2020/09/21/484/
「日米が協力すべき軍事技術分野4つ」→https://holylandtokyo.com/2020/04/30/741/

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民間監視団体:F-35問題は改善の兆し見えず [亡国のF-35]

エンジン含む部品調達不足やソフト開発で続くトラブル
欠陥箇所総計は870を超え、むしろ増加傾向

Grazier POGO3.jpg3月16日付Defense-Newsが、1月に米国防省の作戦運用試験&評価局が発表した初めての公開版(限定的内容の)「F-35開発プログラムレポート」について、民間監視団体POGO(Project on Government Oversight)がF-35の実態を正しく伝える内容になっていないと主張し、非公開版を入手&公開して批判している様子を紹介しています

Grazier POGO2.jpgF-35については、米空軍を中心とした米軍内で調達機数削減の検討が水面下で進む一方で、F-35導入を避け続けていたドイツまでが3月14日にウクライナ情勢を受け35機以内の導入を決定するなど、西側諸国で「地滑り的」な調達決定が相次ぎ、米国政府を挙げての強硬な売込み活動が伺える状況です

民間団体POGOが批判の対象にしているレポートを作成した作戦運用試験&評価局(DOT&E :Office of the Director, Operational Test and Evaluation)は、議員立法で設置された部署で、国防省の各種開発計画を極めて厳しく評価することで知られた部署ですが、国民向けの公開バージョン報告書で指摘されている内容で、特に以下の3点についてPOGOは不誠実だと指摘しています

部品不足やエンジン問題がF-35稼働率向上を阻害
●国防省は2021年1月にF-35稼働率が70%に達したと宣伝しているが、そこをピークに同年9月には53%にまで低下しており、2021年全体では目標の65%を下回り61%となっている
F-35 F135.jpg●非稼働31%の内訳は、定期修理8%、修理中15%、部品待ち16%で、レポートは7月までは修理労力の少ない新型機導入で高稼働率を維持できたとしているが、2021年後半に稼働率が下がったのが部品供給を維持できないサプライチェーンの根本的問題である点を過小評価している

●別のデータでは、2021年12月時点で、25%の機体が部品待ちで非稼働になっていることが明らかになっている。これは短期的に稼働率を上げても、長期的な改善を維持できる状態にないことの証左で、国防省F-35計画室の楽観的な見通しとはかけ離れている
●同様にF135エンジン問題(タービンブレードの耐久性不足)について、F-35計画室長は対処可能で根本原因を解決すると述べ続けているが、非公開バージョンではF135エンジンは修理工場の能力を超えて故障が発生しており、エンジン不足は悪化の一途をたどっている。例えば2021年5月には38機がエンジン待ち非稼働だったが、9月末には52機にエンジン待ち機体が急増している

ソフト導入時の事前チェックが不十分で問題多発
ODIN5.jpg●F-35は「ソフトウェアの塊」とも言え、新ソフト導入時の事前確認が極めて重要だが、ソフト試験予算が十分ではなく様々な問題が発生している。公開レポートでは削除されているが、新しいAMRAAMソフトを導入した際、旧ソフトとの適合確認が不十分で旧ソフトを破壊した事案が非公開レポートでは紹介されている
●上記のようなトラブルを避けるため、F-35「Block 4」導入に向け、F-35計画室はC2D2との半年ごとに細かなバグや修正を継続的に行う手法の導入を試みたが、この手法も「持続的実施不可能」と同計画室が判断するに至っている

●同計画室はC2D2が完全にはうまくいかなかったが、「Block 4」導入に向け多くの役割を果たしたと強調しているが、新ソフト導入時の試験確認予算不足は致命的であり、ALIS後継のODIN開発がソフト開発予算不足で一時中断したように、このソフト導入時のトラブルは今後も続くとPOGOは警鐘を鳴らしている

不具合件数(deficiencies)は増加し続けている
POGO4.jpg●F-35関連の不具合件数(deficiencies)は公開レポートには含まれていないが、非公開版では2020年に871件(最高度のCategory 1不具合10件含む)で、2021年9月末には845件(Category 1不具合6件含む)となって若干の削減を示している

POGO2.jpg●しかし2022年3月時点では873件(Category 1不具合5件含む)となっており、不具合件数は増加傾向を示している。F-35計画室は、F-35使用者から直ちに影響する不具合ではないと確認しているとか、パイロットや整備員の業務マニュアルに明記して注意喚起しているとか言い訳しているが、800以上の不具合とは異常である
●F-35計画室は2021年に不具合171件を解決したとアピールしているが、要求性能を満たすための新たな改修や不具合是正に伴い、新たな不具合を生み出している状態で、終わりが見えない状態が続いている「一歩進んで2-3歩後退」との表現が正しいと感じる
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POGOのwebサイト(スタッフ50名規模)
https://www.pogo.org/

F-35 luke AFB.jpg民間団体に指摘されるまでもなく、非公開の生々しいレポートを少なくとも米軍関係者は見ており、米空軍は高止まりしているF-35維持整備費が確定する2025年に現在の調達予定数1763機を再検討し、米海兵隊も司令官も購入機数見直しを示唆しています。最大の同盟国英国も国防相が維持費高止まりに激怒し、調達機数半減を検討との報道も出ているところです

ドイツで16か国目となるF-35導入国ですが、「みんなで渡れば怖くない」ではなく、各国がそれぞれ、足元の安全を確認しながら進まないと「金食い虫F-35」どころか、「亡国のF-35」が現実になりつつあります
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F-35 Bloomberg.jpg3月16日付Bloombergによれば、米国防省は3月28日公表予定の2023年度予算案で、F-35調達機数を当初予定の「94機」から35%削減して「61機」にする模様です

性能について評価する声は操縦者や作戦運用関係者からあるが、あまりにも維持費や整備費が高価で多く購入しても維持できない・・・のが理由です

結果として米軍のF-35調達機数の経変変化は
2020年度 98機
2021年度 85機
2022年度 85機
2023年度要求 94機→61機へ

米国が「亡国のF-35」から静かに引き始めている中、海外への売り込み攻勢を強めている現実がここにあります

F-35調達機数削減の動き
「米海兵隊も削減示唆」→https://holylandtokyo.com/2022/01/17/2586/
「米空軍2025年に調達上限設定を」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「英国防相がF-35企業に不満をぶちまける」→https://holylandtokyo.com/2021/06/25/1949/
「英国は調達機数半減か」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/
「フィンランドが15か国目に」→https://holylandtokyo.com/2021/12/14/2520/
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holylandtokyo.com/2021/03/10/157/

F-35のエンジン問題
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/

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次期制空機とB-21爆撃機用の無人機随伴機の検討&開発は? [米空軍]

Kendall空軍長官が改めて強い思いを語る
米空軍幹部の発言から同長官の重視姿勢を探る

Kendall air force.JPG3月18日付Defense-Newsが、剛腕Kendall空軍長官が昨年12月の講演で語った「7つの優先事項」の2つを占める「次期制空機NGAD」と「B-21ステルス爆撃機」への「自立型無人随伴」について、3月3日の米空軍協会総会と3月9日のMcAleese conferenceで語った内容を紹介しています

端的に言うと、同長官はこの2つの無人機ウイングマンを非常に重視しており、費用対効果や実現可能性を厳しく精査する姿勢を示しつつも、米空軍司令部幹部や米空軍研究開発部門も驚くほどの熱意で取り組んでおり、さすが2023年度予算への具体的盛り込みは時期尚早なようですが、NGADとB-21にそれぞれ別々の自立型無人ウイングマン機(autonomous combat drones)を開発する方向で突き進んでいる様子です

先ず2021年12月の発言の復習
Kendall air.jpg●今ある検討中のコンセプトでは、F-35と次期制空機NGADは、5機以下の無人ウイングマン機とチームとして運用し、有人機操縦者が無人随伴機を操るイメージである。このイメージは多くのチャンスや機会を我々に与えてくれるが、我々は費用対効果や実現可能性を精緻に見極め、今後の進め方を検討する必要がある
●B-21次期爆撃機は高価なアセットであり、その能力を航続距離や兵器搭載面で「増幅」して投入したい。そして無人随伴アセットに委ねたい。それら無人機はB-21操縦者に管制され、強固な敵と対峙するイメージだが、今研究されている戦闘機やNGAD用の「Skyborg」とは別の新アセットを考えている。2023年度予算に2つの新型機予算を組み込む予定だ

●我々はこの新規開発に当たり従来計画に縛られず大きな変更を行う。ただこの際、リスク低減策を学び、成熟技術利用やプロトタイプ利用や各種デジタル設計技術を最大限活用し、必要なものを見極め前進する。2つの新型機開発は秘密プロジェクトとなるため多くを公開できない

今年3月3日米空軍協会総会の発言
NGAD6.jpg●NGADは、NGAD操縦者が管制する5機までの自律的で損耗覚悟の無人機とチームを組む。F-35も無人機と編隊を組む方向である
●米空軍は以前から説明してきたように、単一システムではなく「family of systems」で任務を遂行する方向性を固める必要があり、開発中のB-21爆撃機にも、NGADと同様にチームを組む自律的無人機開発も含む

XQ-58 Valkyrie.jpg●ただ、昨年述べた2023年度予算に盛り込む件については、より多くの航続距離やセンサーや兵器等の搭載量を確保する必要があること、また価格が有人機の半分程度であって欲しいこと等もあり、まだまだ細部を詰める必要があるため、関連検討研究予算を要求することとしている
●(別の記者懇談の中で)B-21用の無人随伴機についてはNGADに比べ検討が初期段階でコスト検討も「推定レベル」にあるが、NGAD用はより成熟しており確信を深めつつある

3月9日のMcAleese conference発言
B-21 3.jpg●3日の米空軍協会総会の場で、小規模企業を含む複数の企業と意見交換を行い、自立型無人機に関する「極めて興味深い企業の取り組み」について情報を得ることができた。導入する(2機種の)無人機は、常に最新の新技術を取り入れて改善できるような形態である必要がある
●「明らかなのは、前進して大きな一歩を踏み出す準備が出来ていることである。どれだけの期間が必要かわからないが、成し遂げる覚悟である」

米空軍の関係幹部発言
●米空軍司令部計画部長Clint Hinote中将
Hinote2.jpg現時点に必要なアプローチとして、広範な様々なオプションを吟味している。「中には極めて特異な能力を追求した提案や低価格追求のもの、航続距離や速度や搭載能力などの各要素の一分野に優れたタイプなど様々だ」
kendall長官の問題認識として、近年の航空機開発が高額になり過ぎていることから、支えうる低価格で必要な能力を獲得提供する必要がある点を強調し、「やり方を変えなければ、予算的に米空軍を維持できなくなる」

●Darlene Costello空軍技術開発担当次官補代理
Costello.JPGkendall長官が重視する自立型無人機と有人機の編隊運用が、どれほど将来想定される戦闘状況で有効か、また費用対効果面で有効かについて分析を進めている。有効性が証明できれば具体化に進むが、それは2022年ではない
また、NGADより少し遅れているB-21随伴無人機については、NGADと少し異なる分析が必要であり、要求性能も異なるだろう。空軍研究所から広範な情報を得て自立化無人機の分析検討を進めている

●米空軍研究所長Heather Pringle少将
Pringle AFRL.jpg2021年のSkyborg計画(無人ウイングマン計画)関連試験は成功裏に進み、「無人機自立飛行のコア技術が複数の航空機で能力を発揮し、大変興奮した1年だった」
そしてこのコア技術を、GA社のMQ-20 Avenger やKratos社のXQ-58A Valkyrieにも展開し、F-16改良型無人機のX-62A VISTAにも持ち込むことを計画している

●先進航空機ライフサイクル管理担当Dale White准将
White air force.JPGKendall空軍長官の自立型無人機と有人機の編隊運用重視姿勢により、空軍「Life Cycle Management Center」は、米空軍研究所AFRLや空軍作戦運用部署との連携が一層密になっている
米軍が対テロから本格紛争への大きなシフトに挑む中で、自立型無人機と有人機の編隊運用はますます重要性が高まっており、「前線からの要求の焦点の一つで、開発一歩ごとに連携を図っている」
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Kendall空軍長官の部下である米空軍幹部の皆さんの発言ぶりから、空軍長官の剛腕と2種類の無人ウイングマン開発熱意に振り回されている様子を感じてしまうのですが、邪推が過ぎるでしょうか

Kendall air 2.JPG同空軍長官は、国防省開発調達担当次官としてF-35問題や米海軍空母やLCS開発問題を仕切ってきた苦労人ですから、コスト管理や実現可能性を冷徹に見極め、「引き際」の判断もできる方でしょうから期待いたしましょう

でも思うんですが、対中国の西太平洋で、F-35やNGADやB-21の無人随伴機をどこから発進して運用するのでしょうか? 日本も関係ないとは言えません。机上検討やWar-Game状況が気になります

2021年12月9日の同長官講演
「7つの優先事項を語る」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-12

無人機ウイングマン構想
「無人機自立化の定義を明確にせよ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/10/2716/
「頭脳ACSを2機種目で試験成功」→https://holylandtokyo.com/2021/07/08/1983/
「Skyborg構想の頭脳ACSで初飛行2時間」→https://holylandtokyo.com/2021/05/17/1489/
「多用途ドローン投下試験成功」→https://holylandtokyo.com/2021/04/09/103/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「無人ウイングマンのデモ機選定開始」→https://holylandtokyo.com/2020/05/24/679/
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1

Kendall空軍長官の関連記事
「ロシア空軍の評価」→https://holylandtokyo.com/2022/03/17/2929/
「極超音速兵器は少数で良い」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「極超音速兵器の重要性は?」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
「7つの優先事項を語る」→https://holylandtokyo.com/2021/12/13/2521/
「B-21を5機製造中」→https://holylandtokyo.com/2021/09/27/2270/
「中国が核兵器FOBS開発の可能性」→https://holylandtokyo.com/2021/09/22/2264/
「長官着任時の思い」→https://holylandtokyo.com/2021/09/03/2138/
「上院で所信を語る」→https://holylandtokyo.com/2021/05/28/1786/
「Kendall氏をご紹介」→https://holylandtokyo.com/2021/04/30/120/

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露VSウのサイバー戦風景とFedorov副首相 [サイバーと宇宙]

戦前のロシア側圧倒的有利の予想が今や・・・
31歳の副首相&デジタル大臣Mykhailo Fedorov氏が大活躍
ウ国側の組織化程度は不明も、国際義勇軍が奮闘の模様

hacktivist2.jpeg3月21日付のYahooサイトが、ウクライナ戦争でのサイバー戦状況を解説するため、山田敏弘氏なるMIT出身のジャーナリスト47歳による「NEWSポストセブン」掲載記事を引用していますので、まんぐーすの勉強も兼ねご紹介させていただきます

山田敏弘氏は、ウクライナ軍による必死の抵抗が続く中、SNSを中心とした情報戦においてはウクライナがロシアを圧倒しており、それを指揮するミハイロ・フョードロフ副首相兼デジタル転換相(31歳)の初動対処など、その動向を紹介しています。

Mykhailo Fedorov(フョードロフ)とはどんな人物か
fedorov.jpg●1991年生まれで、ウクライナ南部の大学を卒業、デジタル系のサービスを提供する企業を立ち上げている。ゼレンスキー大統領の選挙戦でSNS関連を彼が仕切っていたこともあり、2019年に28歳の若さで副首相兼デジタル転換相に就任
●フョードロフ副首相が広く知られるようになったのは、露のウクライナ侵攻開始後の2月27日、「われわれはIT軍を立ち上げる。デジタル才能が必要だ」とツイートからだ。そして同副首相はウクライナのサイバー民兵たちを率いてサイバー攻撃を行うと同時に、世界の著名人に直接SNSでメッセージを送る。

イーロン・マスクに直談判・楽天にも
fedorov4.jpg●例えば、イーロン・マスク。テスラ創業者のマスクは、「スターリンク」と呼ばれる衛星利用高速インターネットシステムを立ち上げている。このスターリンクを使うことできれば、従来のインターネット網がロシアに破壊されても、ウクライナでインターネットを継続利用できる
●フョードロフはマスクにツイッターで「ウクライナにスターリンクを送ってほしい」と直談判し、マスクがそれに反応。「スターリンクのサービスをウクライナでスタートさせた。通信機器を送る」──そして48時間以内に、フョードロフはウクライナに届いた多量のスターリンクを写真で公開した。とんでもない時代である。

fedorov7.jpg●更にフョードロフは、ロシアでビジネス展開する欧米企業トップに連絡し、ロシアビジネス停止を要請。要請に際しては公式文書を公開し、国際世論を後ろ盾にする手法を執った
●例えば日本の楽天も無料通信アプリのViberのサービス停止を要請された。楽天は要請に応じなかったが、その代わりに、ウクライナに10億円を寄付することになり、資金は対ロシア戦に投入されている

更にSNS等を通じて様々な情報戦を
fedorov2.jpg●さらにフョードロフは、無料メッセージングアプリであるTelegramチャンネルを開設し、チャンネル登録の30万人以上のハッカーやプログラマーなどにサイバー工作を実施するよう指示を出している
●例えばTelegramで、ロシアに進出しているドイツ卸売店「メトロ」を撤退させる作戦を行ない、IT軍の兵士らに、同社のFacebookページに批判メッセージを送るよう英語の文面まで掲載している

●またある投稿では、ロシアのニュース機関のYouTubeチャンネルを凍結させるべく、YouTubeに「不適切なコンテンツ」であると通報する方法を指南している
fedorov3.jpg●ツイッターでは、破壊された街の様子や、住民を助けるウクライナ兵の写真を掲載したり、世界に向けて現場の惨状を伝えている。フェイスブックでも同様の投稿が掲載されているが、それ以外にも、ロシアのプーチン大統領とショイグ国防相の電話の会話を盗聴したと思われる音声も公開されている

●また、ロシア在住ロシア人にウクライナの実態を知らせるため、SMSや電子メール、無料通信アプリのメッセージをランダムにロシア人に送信し、直接、ロシア人にアクセスしようする試みも行われている。こうしたSNSの投稿などと合わせて、ウクライナがロシアに抵抗を続けるための資金の寄付も募っている

義勇軍的なウクライナIT軍
Fedorov8.jpg●ウクライナには米軍のようなサイバー軍は存在しない。そこで、サイバー攻撃やネットでの反ロシア活動をできる「民兵」を募集したのである。実は、ウクライナは他国に比べてIT技術の高い人が多い。またこうしたSNS発進で世界中から寄付なども集まり、対ロシア情報戦が成立している様相になっている
●ちなみに2014年にその精強さを「ハイブリッド戦」遂行能力で世界に見せつけたロシアサイバー部隊は、今回、ほとんど目立った活動をしていないように見える。その理由の一つは、ロシア侵攻数か月前の2021年10月に、米軍サイバー軍の関係者がウクライナ入りし、さまざまな対策を実施していたからだ

どんなサイバー「民兵」たちが動いているのか
hacktivist.jpeg●ウ紛争では多くのサイバー攻撃集団が立ち上がっている。有名なのは、「Anonymous」や「IT Army of Ukraine」。主な戦術は、ロシアの政府機関や団体などへのDDoS攻撃(大量のデータを送付でシステムダウン企図)や、ウェブサイトの改ざんである

●「Anonymous」は、以前からハクティビスト(ハッカーとアクティビストを足した言葉)として知られるハッカーの集合体で、今回は、反ロシアの平和主義活動を行なっている。リーダーもおらず、各自が攻撃を行なう。ロシアの政府系機関や国営メディアを攻撃して、一瞬であるが、DDoS攻撃で公式サイトをダウンさせたと主張している
hacktivist5.jpeg●「IT Army of Ukraine」は、ツイッターなどで世界にメッセージを発信している。IT軍に参加したいハッカーたちはオンライン上のフォームに得意分野や経歴を記載して登録し、電力網や水供給システムなど重要インフラのセキュリティを担当したり、ウクライナ軍による偵察活動などを支援している

●また、ある裕福なウ人が、ロシア政府機関のサイバー攻撃「脆弱性」通報を10万ドルで募集していたり、DDoS攻撃用のマルウェア提供している人もいる。ロシア国内の鉄道のチケットシステムを一時的に停止させた例も報告されている
●海外を拠点とするベラルーシの「Belarusian Cyber Partisans」、フランスに拠点を置く「AgainstTheWest」、フィンランドの「NB65-Finland」、トルコの「Monarch Turkish Hacktivists」とのハクティビストが参加している

ロシア側のサイバー正規兵と「民兵」
hacktivist6.jpeg●KGBはソ連崩壊後も事実上生き残り、主に国内担当のFSB(ロシア連邦保安庁)と、国外諜報担当のSVR(ロシア対外情報庁)として任務を続けている。こうした組織が政府系サイバー攻撃を担当。また、軍スパイ機関であるGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)もサイバー攻撃を実施している
●更にウクライナ侵攻では、ロシアでもサイバー「民兵」が活発に動いている。有名なのは捏造記事や偽記事などをばら撒く「UNC1151(Ghostwriter)」で、ウクライナを貶めるために確認されている。ロシア拠点のランサムウェア攻撃を世界中で行なってきた「Conti」も参戦を宣言している(この「Conti」は最近、ウクライナ側からのサイバー攻撃を受けて、内部情報を暴露される失態が話題に)

●そのほか、「SandWorm」「Zatoichi」といった組織は偽情報などを拡散させる活動を、CoomingProject」はフランスに拠点を置き、「ロシア政府をサイバー攻撃するものは報復する」と表明している
民間のこうした争いは紛争が長期化するにつれて、激化していく可能性がある。今後に注目したい
//////////////////////////////////////

fedorov5.jpg「サイバー民兵」と言われる人達は、政府間や国際機関の仲介による物理的戦闘の「停戦」や「休戦」や「終戦」や「講和」が成立し場合、その枠組みに従うのでしょうか?

とても収まらない気がしますし、表面上の「終戦」や「講和」が成立した後の油断をついて、更なる果実を求めてうごめく気がします

完全に関連インフラを破壊しつくすまで、延々と「仁義なき戦い」が続きそうで怖いです・・・

仁義なきサイバー戦争の一端
「サイバー傭兵の動向」→https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/
「ハイブリッド情報戦に備えて」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-05
「ドキュメント誘導工作」を読む→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1

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宇宙状況把握のため衛星を地上観測から宇宙観測用へ [サイバーと宇宙]

地面を向いていたものを、宇宙空間観測に
民間衛星に地上観測を任せ、軍用をspace awareness向上に

Dickinson3.jpg3月10日、米宇宙コマンド司令官James H. Dickinson陸軍大将が講演し、昨年11月15日にロシアが行って国際的な非難を浴びた衛星破壊兵器試験に関連し、国際宇宙ステーションにまで危険が及んだ宇宙デブリ拡散は極めて憂慮すべき事態だったが、宇宙コマンドが過去2年間努力してきた「宇宙状況把握能力:space domain awareness」向上の成果を示すことができた出来事だったと語りました

同司令官は当時を振り返り、「宇宙コマンドの対応状況を非常にうれしく感じた」、「極めて短時間で、宇宙空間で何が起こっているかを探知分析して整理することができ、国家レベルの指導者に必要な情報を迅速に提供できた」と語っています

そして同司令官は、「宇宙軍創設以来の2年間のハードワークと、関係者が取り組んできた人材確保と育成の成果」を確認することができたとも表現し、宇宙ドメイン状況把握能力向上のための取り組みについて、地上監視用の衛星を宇宙監視用に任務転換したり、そのために民間衛星を活用したり等の手法を語っています

10日付米空軍協会web記事によれば同司令官は
Dickinson.JPG●「宇宙状況把握能力:space domain awareness」向上は私の最重要優先任務であったが、我がコマンドはまず、我々の担当領域である宇宙戦域において、何を把握できているのかについて信じがたいほどの時間をかけて掌握した
●この過程で改めて問題となったのは、我々の保有センサーの大部分が「space domain awareness」用には設計されておらず、弾道ミサイル発射監視用や地上偵察用であったことである

●これら地球方向を向いているセンサーの「極めて特異な」能力を生かすことが大きな課題となったが、NASAや民間企業でも月や火星を目指す動きが活発化する中、宇宙コマンドとして「深宇宙」の「domain awareness」向上の重要性が強く認識され、その解決に全力を挙げた
space awareness.jpg●単純に言えば、地球表面を、つまり下を向いているセンサー群の監視方向を、宇宙方向に、上向き監視に変える取り組みである

●もう一つの解決法は民間セクター宇宙アセットを活用することで、我がコマンドの商用アセット融合を推進する部署が窓口となり、我々の関心のある民間アセット能力の融合に取り組んだ
●民間アセットを利用することで、宇宙コマンドのアセットを必要な分野に振り向ける場合もあるし、民間セクターのアセットを我がコマンドの緊要な能力補完に活用することもある
///////////////////////////////////////////

space awareness4.JPG「深宇宙:deep space」や「月までの空間:deep space」への関心が高まっている話と、衛星への攻撃や妨害作戦が行われる地球周回軌道の話が混ざっているような気がしますが、地球を向いていたセンサーを宇宙に向けるとの課題を初めて聞いて、単純に面白いと思いました

「宇宙」に関する知識の無さを、改めて思い知らされた宇宙コマンド司令官の講演でした。

ロシアの宇宙活動
「衛星破壊兵器でデブリばらまく」→https://holylandtokyo.com/2021/11/17/2435/
「ロシア衛星が謎の物体射出」→https://holylandtokyo.com/2020/07/30/584/
「4月中旬のロシア衛星破壊兵器試験を批判」→https://holylandtokyo.com/2020/04/22/732/

最近の宇宙関連記事
「7か国で宇宙作戦ビジョン制定」→https://holylandtokyo.com/2022/02/25/2753/
「ウクライナ紛争の最初の一撃は宇宙で!?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/18/2732/
「熱核推進システムを応援」→https://holylandtokyo.com/2022/01/27/2622/
「小型衛星核推進装置を求め企業募集」→https://holylandtokyo.com/2021/09/28/2233/
「同盟国から協力申し出急増中」→https://holylandtokyo.com/2021/08/04/2064/
「核熱推進システム設計を3企業と」→https://holylandtokyo.com/2021/04/20/111/
「衛星延命に企業と連携」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-17
「画期的:衛星が推進力衛星とドッキングで延命へ」→https://holylandtokyo.com/2020/02/28/839/

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THAADシステムに最新型PAC-3発射機連接し迎撃成功 [Joint・統合参謀本部]

THAAD高性能レーダー情報でPAC-3使用可
PAC-3の指揮統制システム不要、発射機のみ連接
きっかけは朝鮮半島の移動部隊からの緊急要請

THAAD PAC-3.jpg3月9日ロッキード社が声明を発表し、2月24日に米ミサイル防衛庁MDAがTHAADシステムに最新型PAC-3のMSE(Missile Segment Enhanced)を連接した射撃試験をホワイトサンズ射撃場で実施し、THAADシステムのレーダーで捕捉した目標を、PAC-3MSE発射機から発射されたミサイルで迎撃に成功(実際はヒット直前で迎撃体を自爆措置)したと明らかにしました

この試験は、THAADのレーダーと指揮等統制装置にPAC-3MSE発射機を繋いで行われ、PAC-3システムより捜索範囲の広いTHAADレーダーで捕捉した目標に対し、THAAD指揮統制装置から出された指示に従ってPAC-3MSE発射機から迎撃ミサイルを発射する形で行われました

THAAD PAC-34.jpgつまり、THAADシステムに、THAADミサイル発射機とPAC-3MSE発射機を同時に接続し、目標の飛行諸元や脅威度や友軍の応戦状況に応じて、迎撃手段を前線の指揮統制装置内で高高度広範囲対応のTHAADミサイルと低高度拠点対応のPAC-3MSEから選択可能になるということです

米陸軍とミサイル防衛庁MDAは、朝鮮半島展開の移動部隊からの差し迫った要求に応えるため、数年前から重層的なミサイル防衛網構築を目指してTHAADとPAC-3融合に急いで取り組んできた模様で

THAAD PAC-35.jpg融合試験当初は、THAADシステムにPAC-3指揮統制装置を含む全システムを連接していたようですが、よりシンプルな形を追求し、2月24日のPAC-3発射機のみを連接する形にまで深化させた様です

米軍内でPAC-3を運用する陸軍は、将来的にPAC-3を「new integrated air and missile defense system」に置き換える計画を進めているようですが、残ったPAC-3発射機と迎撃ミサイルを、THAADシステムに連接して重層的な防御網構築をオプションとして持つ方向なのかもしれません(邪推です)

9日、発表同日にワシントンDCで講演したMDA長官のJon Hill海軍中将は、「作戦運用上の緊急要請に応え、間もなく成果を前線に届けることができることに喜びを感じ興奮している」と語っています
/////////////////////////////////////////

Hill MDA.jpgTHAADシステムとPAC-3発射機との連接要領がよくわかりませんが、THAADレーダーとPAC-3システムの連接組み合わせは可能なのでしょうか?

ニーズはともかくとして、日本にあるTHAADレーダーとPAC-3システムが遠隔連接できれば、青森県や京都府の日本海側になる米軍のTHAADレーダー情報を、日本各地に展開するPAC-3部隊に提供できれば、広範囲の戦況を把握できて良いことがあるかもしれません(ないかな? JADGEシステムとの連接で十分かな?)

THAAD関連の記事
「UAEでTHAADが初実戦迎撃成功」→https://holylandtokyo.com/2022/01/24/2640/
「グアムには陸上配備イージスアショアが必要」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-23
「CSISが時代遅れの米国IAMDに提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-01-27-2

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米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る [安全保障全般]

300機の露軍機がウクライナを行動範囲に
シリアでの残忍な都市破壊の記憶が
ただ大規模航空作戦や航空作戦センター運用経験無し
航空優勢なしでは活動せず、防空部隊は教義通り行動できず
前線との指揮通信も怪しい状況らしく・・・

Russian air force.jpg3月15日付Defense-Newsが、これまでのウクライナ紛争をめぐるロシア空軍への評価について、Kendall空軍長官ほか米空軍制服幹部や、英国RUSIの航空専門家Justin Bronk氏の見方を紹介しています

米空軍幹部はおおむね、ロシア軍の侵攻がロシアの計画通り進んでおらず、様々なロシア軍の問題点も明らかになってきており、最新情報や状況を注視しているが、将来の米空軍の在り方を考える上で大きな修正が必要だとは考えておらず、ロシア軍を今後も当然フォローしていくが、新たに策定される国家安全保障戦略や国家防衛戦略においても、中国が第1の脅威である点に変わりない、との姿勢です

Russian air force2.jpg英国の専門家は、2015年以降のシリアにおけるロシア空軍の残忍な航空攻撃は念頭に置くべきだが、シリアでもロシア空軍は大規模戦力での航空戦力運用を行っておらず、この経験も不足していると見ています

ただし、近年ロシア空軍は350機ほど最新型航空機を導入し、既存機の近代化改修も行っており、活動の前提となる航空優勢確保や防空網の整備は不十分ながら、注意を怠るべきではないとも指摘も現状の兵力配備から無視できない状況です

Kendall空軍長官
Kendall4.jpg●ロシアは“near-peer” competitorではあるが、(中国のような)米国と対等に渡り合うような状態にはない。この点で、ロシア軍への基本的な印象に変化はない
●米空軍はロシア軍活動に対処するため、領空保全措置に従事するF-15CのF-15EXへの更新、衛星偵察機能の更新、北極圏を中心とした通信能力の強化、そして核戦力の近代化に着手しており、これを淡々と進めていく事に変わりない。ウクライナ情勢から、新たな航空機調達や米空軍計画の大幅見直しは生まれていない

●ただし、ロシアは米国と通常戦力では対抗できないと結論づけ、米国と対等な位置に就くため、数年前に核戦力充実の道を選択しており、米国にとってトップレベルの脅威である位置づけは下がっていない
●一方で、ロシア空軍は通常戦力の近代化も怠っておらず、「航空脅威として警戒すべき質と量を維持している」

Kendall22.jpg●ロシアも中国も専制主義国家であるが、基本的に中国の方が、米国との直接対峙に備えた近代化計画を進展させている。核兵器開発においても、米国とロシアの両方に対峙できる増強計画を進めている
●中国を自由にさせないため、2023年度予算案では先進兵器・自立化航空機・宇宙優勢確保を優先した事業を盛り込んでいるが、ロシアを無視してよいわけではなく、引き続き国家安全保障上の懸念である

Brown空軍参謀総長
Brown nomination2.jpg●ロシア空軍の状況を見極めるべく最新の状況を注視しており、兵站や指揮統制に問題があり、制空権の確保も不調のようだが、私個人の印象として、ロシア軍への見方を変えるようなことにはなっていない
●米中央軍空軍司令官だった際、ロシア空軍のシリアにおける残忍な兵力運用や戦術を見てきており、ウクライナにおけるロシア空軍の動向を見る参考にしている

Justin Bronk英国RUSI研究員
●ウクライナを作戦行動範囲に置く約300機のロシア軍作戦機が、侵攻開始に先立ち機動展開してロシア西部や南部に集結しており、2015年の対シリア作戦で特徴的だったこれら固定翼作戦機の「heavy use」を連想させる
Bronk RUSI2.jpg●過去10年間で、ロシア空軍は約350機の新型作戦機を導入しており、戦闘機Su-35S やSu-30SM、戦闘爆撃機Su-34が代表的な高性能機である。また第4世代機のMig-31や対地攻撃機Su-25の近代化改修も行っている

●ただ、シリアで複雑な作戦経験があるとはいえ、ロシア空軍は基本せいぜい2機編隊運用で、異なる機種が行動を共にすることはあまりない。また航空作戦指揮官は、数十機以上の航空戦力を脅威下で運用する計画立案や訓練・実戦の経験がなく、「航空作戦センター」のような指揮所運用も行っていない状態だ

Kelly空軍戦闘コマンド司令官
Kelly.jpg●ロシア製の防空ミサイルSAMは極めて高性能で、運用者が良ければ大きな脅威である。この点、ウクライナ軍が使用すれば性能を発揮しているが、ロシア軍はロシア製兵器と格闘している状態だ。露のドクトリン通りに活動できていない
●ロシア軍は制空権を持っている時には調子が良いが、航空優勢を失うとよくない。またロシア軍の侵略は、いい加減な製造管理のために故障が頻発している地上車両が邪魔しているようで、「製造現場での品質管理問題がロシアの長年の課題であることを、戦場の前線で我々は確認している」

Hinote米空軍司令部計画部長
Hinote.jpg●ロシア軍は、このような侵略作戦で不可欠な前線との通信と指揮統制で困難に直面しており、米国がNATOとの関係で強化すべき事項の反面教師となっている。ロシアはウクライナで通信確保が必要な事態に直面している
●つまり、「仮に宇宙へのアクセスを失えば、統合戦力は(通信手段を失って)一体性を喪失してしまう。友軍部隊が、互いの動きを把握して意思疎通することができなくなれば、上級指揮官との指揮通信を失えば、我々はなすべきことをできなくなる」との教訓である
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Kendall空軍長官が指摘のように、「通常戦力では米国と対抗できないと結論づけ、米国と対等な位置に就くため、数年前に核戦力充実の道を選択」したロシアの軍事戦略はある意味で効果を発揮しています。

SU-35.jpgしかし、指揮通信で問題を抱え、侵略部隊に随伴する(していないか?)防空部隊が機能不全で、「異機種混合運用が稀で」「2機編隊」での運用が限界の空軍では、約350機の最新鋭機も有効活用が容易ではないようです

ただ、Brown参謀総長やRUSI研究員が指摘する「シリアでの残忍な航空攻撃」が再現される可能性は残されており、ウクライナの検討を祈るばかりです

ウクライナ侵略に関する記事
「なぜイスラエルが仲介に?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08
「ウ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍」→https://holylandtokyo.com/2022/03/05/2787/
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holylandtokyo.com/2022/03/03/2776/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/28/2763/
「ウ紛争の最初の一撃は宇宙で!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-17
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-08

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ドイツが戦術核共有任務にF-35導入発表 [亡国のF-35]

仏との第6世代戦闘機開発の障害と拒否してきたが
ウクライナ情勢受けNATOや米国との関係重視
「最大35機」との微妙な表現で、タイフーン15機と共に

F-35 Germany3.jpg3月14日、ドイツ国防相がドイツ空軍参謀総長を従えて会見を行い、現在トーネード戦闘機が担っているNATO任務の戦術核運用を、トーネード戦闘機の老朽退役が始まる2030年までに引き継ぐため、F-35を35機導入すると発表しました

また併せて、ユーロファイターを15機、トーネードが担っていた電子戦や随伴任務の後継機として導入すると明らかにしました

トーネード後継の最終決定は2023-24年までに行えばよいものと考えていましたが、以前から続いていた米国からドイツへの国防支出増額要求に加え、今次のウクライナ侵攻を受けたドイツの政策大転換もあり、このような発表に至ったものと推測しています

German Lambrecht.jpg今回の決定に際しドイツのChristine Lambrecht国防相は、「プーチンのウクライナ侵略に対する唯一の対応である。NATOの一体性と信頼にたる抑止のため、F-35以外の選択肢はない」と表現し、Ingo Gerhartzドイツ空軍参謀総長は、既にF-35を購入している欧州諸国との協力体制も選択の背景だと語り、英国、オランダ、ベルギー、イタリア、デンマーク、ノルウェーに加え、最近スイスとフィンランドもF-35導入を決定したいることを利点として説明しています

ドイツはメルケル政権が退陣した後、「信号機政権(主張の異なる多様な政党の連立政権)」とも揶揄される複雑な連立政権が誕生しましたが、今年1月に大きな一つの安全保障政策の試金石であった「戦術核兵器シェアリング」継続を表明し、次の段階として複雑な要因が絡むトーネード後継戦闘機選定に注目が集まっていました

トーネード後継選定に絡む複雑な背景は・・・
Tornado-b61.jpg●戦術核運搬対応機は、トーネードのほかF-16があるが、将来オプションとしては現在核対応改修中のF-35のみで、FA-18の改修可能性は未定で、ユーロファイターとなると米側の協力が期待薄
●欧州は次世代戦闘機開発を2つのグループ(独仏と英伊)で進めており、次世代戦闘機と重なるF-35導入に政治的抵抗感が強い
●独仏チームの次世代戦闘機開発は、仏ダッソー社(ラファール製造)が役割分担交渉で強気姿勢を崩さず、独との共同開発協議が暗礁に乗り上げ状態

FA-18 block Ⅲ.jpg上記の状況下、最新型FA-18(電子戦機EA-18G含む。FA-18が戦術核搭載任務担う)とユーロファイターを同数程度購入する案で検討中との独高官発言が2018年にはありましたが、ドイツ政治の混乱の中でFA-18を除外してユーロファイター1本で検討するとの話が出たこともありまし

2020年春には独仏の戦闘機開発協議が停滞する中で、「上の2機種に加え、F-35も含めた3機種混合案も検討中(F-35を戦術核任務に)」との報道出て、同ドイツ政府高官が3機種混合案の議論を認める発言をしたりしていたところでした

Parly France.jpg14日付Defense-Newsによれば、3月9日にドイツ国防相がフランスを訪問し、仏のFlorence Parly国防相(両名とも女性)と会談してF-35導入決定について仏側に説明すると同時に、独仏の戦闘機開発計画「FCAS program」への継続コミットも確認しています。ただし14日のF-35購入独発表に関し、仏国防省報道官はノーコメント状態だそうです

一方で、ドイツはトーネード戦闘爆撃機80機を戦術核運搬任務の他にも電子戦やSEAD任務でも使用しており、「最高35機」のF-35調達だけではトーネードの穴埋めには不十分であることから、ユーロファイター15機も電子戦用等として購入を決定した模様です

typhoon3.jpgDefense-Newsの記事はF-35調達(「will buy up to 35 F-35」との微妙な発表表現もあり)だけを伝え、ユーロファイター15機の話を報じておらず、まんぐーすは混乱しましたが、トーネード80機を「F-35X35機 + ユーロファイターX15機」でカバーするのであればあり得る話であり、ドイツ国防省とドイツ空軍には悩ましい課題は一挙に解決です

ついでに、F-35を最大35機に抑えたことで、独仏の次世代戦闘機開発「FCAS program」への継続コミットも維持する形を残したということでしょう

独仏の次期戦闘機開発に関わる仏側企業ダッソー社CEOは3月上旬、ドイツは欧州製機体にも関心を示す姿勢を見せつつも、米国から核任務用にF-35を購入するよう圧力をかけられていると吐き捨てるように語っており、まだまだ次期戦闘機を巡るドロドロはまだまだ続きますが・・・
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F-35 Germany.jpgいろんな話が絡み合っており、どのような流れでご説明するか混乱したまま記事にしてしまいました

とりあえず、ドイツがF-35を「最大で35機」購入すると発表し、2030年までに導入してNATOドクトリンに示された戦術核運搬に使用するということす。ついでにユーロファイター15機導入も決め、退役するトーネード80機の穴埋め問題にも回答したということです。

欧州の戦闘機開発
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2

「独仏が混合C-130飛行隊を発足」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-03

ドイツの核兵器共有の後継機問題
「問題の整理:独新政権が核兵器共有継続」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-13
「独3機種混合案検討を認める」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-23-1
「独トーネード後継を3機種混合で?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-29
「トーネード後継でFA-18優位?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28

戦術核兵器とF-35等
「F-35への戦術核搭載へ第一歩」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-06
「米空軍に追加の戦術核は不要」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-04
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

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ウクライナ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ [安全保障全般]

中国が迅速に「既成事実:a fait accompli」を確保前に
後れを取っている米軍が迅速になすべきこと9項目
2017年まで太平洋軍作戦部長だった人物の寄稿

montgomery.jpg3月8日付Defense-Newsが、元太平洋軍作戦部長(J3:2017年退役海軍少将)とシンクタンク研究者(陸軍士官学校助教授:Black Hawkパイロット)による「ウ戦争から考える台湾への教訓9個」との寄稿を紹介し、具体的なウクライナ戦争での戦術的な教訓との視点ではなく、中国側が緒戦で「既成事実:a fait accompli」を確保し、米軍等の反撃の余地が無くならないよう今すぐ取り掛かるべき9つの提案を行っています

Bowman3.jpg寄稿者は、大平洋軍や国防省の予算要求をことごとく退けてきた米議会と米政府への不満一杯で、今頃言っても「時既に遅し」かもしれないが、米国が一丸となって取り組めば活路はあるとの姿勢で9個の提言を行っており、実現可能性や別として、台湾有事の際の軍事的課題を考える機会としてご紹介いたします

以下のご紹介する9項目は、まだ現役とのパイプも太い2017年まで太平洋軍J3だった人物(Mark Montgomery)と陸軍予備役ヘリパイロット(Bradley Bowman)による、現場の怒りと危機感あふれる声を反映した提案とまんぐーすは「邪推」しています

1.対艦ミサイルLRASM発射母機と同ミサイルを多数準備せよ
P-8.jpg●中国軍は台湾侵攻に多数の艦艇を使用するが、その撃破が緒戦で極めて重要。現在は、空母発進のFA-18と米空軍が退役させようとしているB-1が長射程対艦ミサイルLRASM(射程約800㎞)の発射母機だが、100機のP-8哨戒機をアジア各地から分散発進させ、またB-52に同ミサイルを多量搭載して大量に投入する必要がある
●このため米海軍と空軍は、それぞれLRASMを毎年50-75発購入して備蓄する必要がある(空軍は2022年に調達計画ゼロだが・・・)

2.米海軍の攻撃潜水艦配備数を増やせ
Virginia-class2.jpg●中国は台湾の海上封鎖を試みるだろうが、西側は潜水艦戦力や戦術で優位な立場にあり、この利点を生かすため西太平洋への攻撃原潜配備数を増やす必要がある
●太平洋軍はグアムに4隻の攻撃原潜を配備しているが、これを6隻に増強するため、ロサンゼルス級の延命を進め、バージニア級の増産(年2隻から3隻へ)体制を構築する必要がある。また豪州に米潜水艦基地を設ける必要がある

3.グアム島の防空・ミサイル防衛を強化せよ
THAAD3.jpg●台湾事案を考えた場合、グアム島は海空海兵隊部隊の極めて重要な作戦基盤基地や兵站支援基地になる。多くの作戦機や爆撃機や輸送機の拠点となるほか、海軍や海兵隊にとっての後方支援拠点ともなる
●中国もグアムの重要性を認識し、各種弾道&巡航ミサイルや極超音速兵器での攻撃を計画するであろうから、米軍はミサイル防衛を強化する必要がある。複数の監視レーダーや迎撃用ミサイル発射機、関連指揮統制システム等は、その気になれば3年で完備できる。今すぐ取り掛かるべき

4.E-7早期警戒管制機の導入
E-7 2.jpg●米空軍は過去30年に渡り航空優勢を全世界で維持してきたが、今の中国を考えると困難であろうことから、当初米空軍は老朽化著しいE-3後継を宇宙アセットと地上戦闘管理システムの組み合わせで構想していたが、技術進歩が追い付いていない
●この現状に鑑み、第5世代戦闘機の能力の最大発揮等の観点からも、米空軍は早期にE-7を調達すべきである

5.台湾への軍事予算援助(米国最新兵器購入支援)
Taiwan1.jpg●中国は台湾の約15倍の国防費を支出している。台湾はそのGDPの2.4%を国防費としており、他の民主主義国の中では最上位クラスであるが、この比率を3%程度のまで引き上げたい
●米国は年間2200~3500億円程度の安全保障援助資金を提供し、台湾国防費不足をカバーし、中国からの攻撃の抑止や撃破に必要な米国製最新兵器購入を支援すべきである

6.台湾への武器提供を他国より優先すべき
Taiwan4.jpg●米国は過去6年間に約2兆2000億円の武器売却を約束しているが、その実際の提供は他国への武器売却と同じ待ち行列に並ぶことになって迅速ではない
●特に中国の侵攻戦力を撃破する主要兵器であるハプーン対艦ミサイルや空中発射対地攻撃長射程ミサイルなどは、台湾に最優先して提供できるよう米議会が枠組みを整備すべき

7.米国と台湾の共同軍事演習を
Taiwan2.jpg●政治的な制約から、米軍と台湾軍が共に戦う準備ができておらず、この弱点を中国はよく認識しており、実際いま中国が侵攻を始めれば、米台の共同作戦遂行は非効率にしか進まないだろう
●米軍が台湾国土に展開しなくても、海軍や空軍間の訓練は実施可能であるし、両国共同の机上演習も相当の効果を得られる。これら共同訓練やゲームを通じ、米軍による台湾軍支援の要領や、両国それぞれの作戦計画の弱点把握や、兵站支援の課題を明らかにでき、相当のメリットが期待できる

8.両国の連合サイバー能力
●米サイバーコマンドは欧州において、ロシアの悪意に満ちた行為に対抗する「前方捕捉作戦:hunt forward」を行っていると認めている
●同様のサイバー作戦を台湾のサイバー関係者と協力して推進し、台湾の緊要インフラの脆弱性を見つけ出し、中国の仕組んだマルウェアを発見し、台湾のサイバー強靭性を強化すべきである

9.他の同盟国を上記の取り組みに巻き込め
Taiwan-China.jpg●上記のような米国の台湾支援取り組みに、有志ある他の同盟国を巻き込み、特に日本や豪州には、有事の際に米軍のアクセスを認めされるとともに、両国戦力を中国侵攻阻止に投入するよう「press」すべき
●さらに米国は、シンガポールやフィリピン、その他の近隣同盟国等に、中国による侵略は台湾に留まらないことを理解させ、協力させるべきである
///////////////////////////////////////////

潜水艦戦で西側が有利との話は専門家の間で広く共有されており、豪州への原潜技術提供も対中国の重要なピースとして話が進んでいます。ただ脆弱なP-8とB-52を発射母機として、射程800㎞程度はあるとはいえLRASMを大量投入というのは議論を呼びそうな提案かと思います

ウクライナでは、米国やNATOは直接ロシアとの交戦状態にならないよう配慮していますが、台湾の場合は米国は中国と交戦することになります

Montgomery2.jpgその場合、米軍兵士に犠牲が出ることとなりますが、その事態に至って日本が後方支援だけで済まそうとすれば、米国のみならず世界の世論が許さないでしょう

この問いは、岸田政権にだけでなく、日本国民に突き付けられる問であり、米国の退役少将による「特に日本や豪州には、有事の際に米軍のアクセスを認めされるとともに、両国戦力を中国侵攻阻止に投入するよう「press」すべき」との要求に、答えを準備しておくべきでしょう

台湾関連の記事
「台湾へ軍事支援する米企業に制裁発動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-23
「対中国専属米空母の苦悩」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15
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「台湾が統合強化と権限分散の軍改革へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-18
「DIA長官の中国脅威認識」→https://holylandtokyo.com/2021/05/02/212/
「米空軍の台湾シナリオWar Game」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/109/
「台湾軍の対中国体制に危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/08/155/
「中国は6年以内に台湾併合」→https://holylandtokyo.com/2021/03/19/165/
「フロノイ氏が今こそ語る中国抑止策」→https://holylandtokyo.com/2021/04/05/99/

CSBA提言の台湾新軍事戦略に学ぶ
まとめ→https://holylandtokyo.com/2020/11/08/381/
その1:総論→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27
その2:各論:海軍と空軍へ→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27-1
その3:各論:陸軍と新分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27

中国の優位性を誇示する心理戦映像か!?
「グアムの米空軍基地攻撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23
「米空母キラーDF-21発射映像」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-01-31
「無人小型ボートの群れ行動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-06-02

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台湾への影響は?PACOM・CIA・DIAトップが語る [安全保障全般]

3月10日の米議会ヒヤリングより
国際世論と経済制裁の激しさ
ロシア軍戦死者4000名の多さ
中国情報機関の見積り失敗とロシアの変貌ぶり

Taiwan China.jpg3月11日付Military.comは、3月10日に米議会で行われた「ウクライナ侵略が中国の台湾行動に与える影響」に関する公聴会から、Aquilino太平洋軍司令官、William Burns /CIA長官、そしてScott Berrier/DIA長官の発言を紹介し、現時点で観察できる点について紹介しています。

このような分析は「ミラーイメージ」を排除することが重要で、その受け止め方には注意が必要ですが、多くの人の関心事項ですのでご紹介いたします

3名は共通して、国際法的にも違法で残忍なロシアによるウクライナ侵攻に対する国際世論の反発の強さと経済制裁の厳しさに、北京政府は「驚いている」「落ち着きを無くしている」と見ているようですが、これによって台湾の統一というNo1優先大目標の遂行を躊躇するかは不明としているようです

Scott Berrier/DIA長官(Defense Intelligence Agency)
Berrier DIA2.png●ウクライナの予想以上の激しい抵抗とロシア軍兵站補給の失敗による燃料弾薬不足もあり、ロシアは短期間での首都キエフを制圧支配に失敗し、DIAの推計によればロシア軍は既に4000名の戦死者を出している
●ウクライナと台湾では状況が異なり、米軍の体制も違っているので単純な比較は難しく、中国はウクライナ情勢の波及影響がどうなるかを極めて慎重に見極めている

Aquilino太平洋軍司令官
●違法な戦争を仕掛けたことで生じたロシア軍の戦死者の多さは第1の教訓であり、確実にプーチンと習近平へ共通して届いている
Aquilino7.jpg●また中国は、ロシアの行為に対する国際社会からの広範な厳しい非難を目の当たりにしているだろうし、西側諸国が持ち出せる経済制裁のインパクトの大きさにも目を見張っているだろう

●一般に習近平は、戦争に至らない継続的な嫌がらせやサラミスライス戦法による台湾統一を志向するだろうと考えられているが、彼は軍幹部に対し、2027年までに近代化を完成させよ指示しており、米軍が準備するために残された時間は少ない可能性があると恐れている。香港や南シナ海、更にインド国境地域での中国の活動を見てもそう感じさせる

William Burns /CIA長官
Burns CIA.jpg●中国当局者は、過去12日間のウクライナ侵略に対する西側諸国の反応の強さ厳しさ、ウクライナ国民の抵抗の強さ、そしてロシア軍の鈍い動きに驚いており、落ち着かない様子が感じられる
●ただ、習近平や中国指導部の台湾統一に関する決意を低く見積もるつもりは無い

●露のウクライナ侵略に関し、中国が落ち着かない原因の一つは、中国情報機関によるウクライナ情勢予想の失敗にもある。事前に習近平は、今のようなウクライナの状況になろうとは全く予想していなかったであろう
●ロシアによる侵攻の1週間間前、習近平とプーチンは「両国の協力分野には制限がない」との共同宣言文書に署名しているが、そのインクが乾かないうちにこの状態であり、中ロ関係が根底から変わるとは考えにくいが、中国からすると、ロシアとの関係維持が中国の評価を下げることを恐れることになろう
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Taiwan China2.jpg戦況は日々変化しており、キエフへの総攻撃間近との報道もあり、この記事を掲載する頃には情報が陳腐化しているかもしれません・・・

ロシアが直ちに攻撃を止め、部隊を撤退させたとしても、政治的にも経済的にも、ロシアが国際社会で以前のような状態で存在できるとは考えにくく、色々と落ち着かない日々になりそうです

ウクライナ侵略に関する記事
「なぜイスラエルが仲介に?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08
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「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
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イスラエルF-35が無人機初撃墜と発表 [安全保障全般]

昨年3月の事案をなぜか今公表
イラン製ステルス形状無人機がパレスチナ自治区に兵器輸送中か
F-35は低速度低高度目標にも有効だとアピール
イラン核合意再構築協議が終盤で混乱する中

F-35 IDF3.jpg3月7日イスラエル軍は、昨年2021年3月に、イラン製のステルス形状無人機がガザ地区のハマスに武器輸送を企て飛行していると推定されるところを、イスラエル空軍F-35I戦闘機で撃墜したと発表しました。

イスラエル軍は撃墜場所や無人機の飛行諸元について会見で触れず、なぜ1年後の今になって公表したのかについても説明しませんでしたが、撃墜状況等について以下のように説明しています

Shahad 197.jpg●隣国との情報交換もあり、地上レーダー情報で当該無人機の飛行状況は良く捕捉&把握されおり、イスラエ領空に侵入以前の他国上空の最適な作戦遂行地点で撃墜した
●撃墜した無人機は、残骸からイラン製の「Shahad 197」無人機と推定される。

●当該無人機は飛行ルートと残骸の分析から、イスラエル国内のパレスチナ自治区である西岸地区かガザ地区の過激派武装組織ハマスへの兵器輸送(munition transfer)に従事していたと推定される
●ちなみに、2018年2月にはイランがシリア領内からイスラエルに向けて武装無人機「Shahad 141」を飛行させ兵器密輸を試み、2021年5月には同じくイランがイラクから無人機をイスラエル領内に向け飛行させた事案が発生している

F-35 IDF.jpg●撃墜した無人機は低空を低速で飛行しており、また小型であることから一般には探知が困難であるが、F-35のレーダーが巡航ミサイルのような低高度目標探知追尾にも適していることを証明して見せた
●また、F-35操縦者用の最新型ヘルメットは、その赤外線追尾装置と光学ターゲティングシステムを融合して操縦者に目標情報を提供し、当該無人機の迎撃に貢献した

●イスラエル空軍は既に発注した50機のF-35を順次受領しており、更に25機を追加でオーダーする方向で検討を進めていると報じられている
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第一印象として、安価な無人機や巡航ミサイル迎撃にF-35を持ち出すコスパの悪さは、相手にコスト負担を押し付けたい敵からすれば、「飛んで火にいる夏の虫」状態だと思うのですが・・・

IDF.jpgイスラエルが、なぜ今昨年3月の事象を記者ブリーフィングまで開いて公表したかと言えば、恐らく「イランとの核合意再構築」に向けた米英仏独ロとイランとの協議が大詰めを迎え、複数の外交筋が「大筋合意し最終段階に入った」と述べている中、イランは危険な国だとアピールしたかったからでしょう

ただ、この「イラン核合意の再構築協議」ですが、8日になってロシアが「ウクライナ侵攻を巡る西側の制裁が、露とイランとの貿易に影響を与えないことを書面で保証せよ」、「イランの核プロジェクトの実施や、貿易・経済関係に打撃を与えないと明確にする必要がある」と強く米国に求めたことで、土壇場になって混迷が深まっているということです

F-35 IDF4.jpgこの核合意再構築に反対するイスラエルが、露とウクライナとの仲介に乗り出し、イスラエル首相がプーチンとの3時間会談で「イラン核合意」の話題を持ち出したことも容易に想像できますし、平和ボケ日本人の思考の枠組みを超えた、複雑怪奇な裏の裏を想像させるイスラエル軍の発表だったということです

イスラエルとロシア
「なぜイスラエルが露とウクライナ仲介?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08

アブラハム合意関連
「イスラエルが欧州軍から中央軍管轄に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-16
「政権交代前にUAEへのF-35契約署名へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-11
「イスラエルがUAEへのF-35に事実上合意」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-26

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「自立化autonomous」無人機の分類定義を明確にせよ [安全保障全般]

自動車の自動運転レベル定義が5段階あるように
技術者と運用者と政策決定者と議会の共通理解のためにも
国防省の無人機の現有定義は大きさ重量飛行高度でのみ分類

Penney5.jpg2月10日、米空軍協会ミッチェル研究所のHeather Penney研究員が、レポート「Beyond Pixie Dust: A Framework for Understanding and Developing Autonomy in Unmanned Aircraft」の概要プレゼンを行い、無人機導入が急速に進む中、「自立化autonomous」との言葉の定義が曖昧なため、技術者と運用者と政策決定者の間の意思疎通に誤解や誤認識が生まれ、無人機の普及や運用に支障をきたしていると警鐘を鳴らしています

Penney研究員は、国防省は無人機の大きさや重量、又は飛行高度によってのみ無人機をクラス分類しているが、自動車業界が自動運転レベルを5段階で定義し、技術者と新車構想者と消費者の自動運転レベルの共通認識を構築している好事例を取り上げつつ、無人機の「自立化autonomous」議論にも明確な共通定義を設けて円滑な議論の基礎を提供すべきだと提言しています

XQ-58A Valkyrie2.jpg例えば同研究員は、現在の無人機の議論では、単に無人機の行動をプログラムによって事前規定しその通りに飛行させる「自動化automation」と、状況を機械学習させ、環境に応じて無人機に行動を判断させる「自立化autonomous」も区別も曖昧なまま技術者と運用者側の議論が進んで途中でプロジェクトが振出しに戻ったり、予算要求時点で議会との意思疎通が混乱しているケースが散見されると問題を指摘しています

このプレゼンを紹介する米空軍協会web記事は、具体的にPenney研究員が提案する「自立化autonomous」議論用の「共通の用語common lexicon」や「自立化程度の分類法」について言及していませんが、実際のレポート発表まで秘密なのかもしれません

2月10日付米空軍協会web記事によればPenney研究員は
Penney6.jpg●来る本格紛争では、強固に防御された空域での戦いが予想され、味方戦力に経験したことのないレベルの多くの損耗が予想されることから、無人機に対する需要は急拡大を続けている。また高度に組織化された敵を混乱させる手段としても、無人機への期待は高まっている
●このように需要が拡大する無人機であるが、様々なレベルの「自立度」の無人機が混在していることから、自律的な無人機とは何なのか、自動化なのか自立化なのか等々、議論の土台となる言葉や用語の曖昧さから、技術者と無人システムを要求する現場運用者間の意志疎通に混乱が生じている

●また、無人機の急速な増加は作戦コンセプトやドクトリンの見直しを迫るものであるが、議論の土台となる用語の定義や言葉の意味の混乱から、現場運用者と司令部勤務者、更には意思決定者間での議論の深化を阻害している
●無人機への関心は米議会でも高まっているが、国防省や各軍種の無人機関連予算要求を議員に伝える際にも、自動化なのか自立化なのか、自立化のレベルは・・・と言った極めて基礎的なレベルの基礎的性能に関する意思疎通が円滑に進まず、相互の不信感につながっている現状もある

Skyborg2.jpg●このような問題意識はペンタゴン内にもあるが、依然として無人機に関する議論はその大きさや重量、又は飛行高度で区分されるカテゴリー分類のみで、現場のニーズに対応できておらず、我々のこのレポートがより優れた視点を提供できると確信している
●まず、事前に規定された行動を厳格に繰り返すようなプリプログラムされた「自動化automation」と、独立して自ら環境や状況を機械学習して状況適応型の行動をとる「自立化autonomous」が明確に異なることを理解して議論すべきである

●また「自立化autonomous」に関しては、自動車工業会が設定したような、自立化程度に応じた5段階のレベル設定が参考になる。自動車では、0-2レベルは人間が必ず制御しながら自立化を利用するレベル、3-4レベルは自立化システムが大部分の場面で制御するが、人間が時に介入するレベル、5レベルは全ての環境で自立化システムが人間の介入なしに安全運転を確保できるレベルと規定されており参考になる

Penney4.jpg●自立化レベルの明確な定義は、有人機と無人機の編隊編成成功にも欠かせない。有人機操縦者の自立化無人機への不信感や懐疑感を払しょくし、有効な作戦運用法確立に結び付けるかは、自立化無人機の性能や能力への理解程度にかかっているが、その基礎が確立されていないのが現状である
●敵対的な国では無人機の導入が急速に進んでおり、これへの対処を考える上でも議論の基礎となるのは、「自立化」の明確な定義と関連する用語の設定である
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流行の言葉やキャッチフレーズが独り歩きし、その言葉の定義が曖昧なまま議論が発散する・・・。

軍事の世界ではよくあることで、最近はあまり耳にしなくなった「A2AD」との言葉も、定義が曖昧なことから米海軍が使用を制限して以降、急速に見聞きすることが少なくなりました

Penney.jpg無人機は急速に増加しており、戦い方を大きく変える可能性がありますが、戦闘機パイロットをはじめとする組織的抵抗から、「いい加減に」「なし崩し的に」導入が進む可能性が高く、特に注意が必要でしょう

ちなみにHeather Penney研究員は、元米空軍F-16パイロットです

最近の無人機の話題
「ウクライナで戦闘機による制空の時代は終わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-08
「UAEに無人機&弾道巡航ミサイル複合攻撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-22
「50KW防空レーザー装備の装甲車に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-15 
「攻撃無人機でアゼルバイジャン圧勝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-21 
「MQ-4を電子偵察用に改修へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-18
「無人機をC-130輸送機が空中発進&回収成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-09
「優先項目の無人機の群れ苦戦」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-30
「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26

無人機ウイングマン構想
「頭脳ACSを2機種目で試験成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-02
「Skyborg構想の頭脳ACSで初飛行2時間」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-06
「多用途ドローン投下試験成功」→https://holylandtokyo.com/2021/04/09/103/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「無人ウイングマンのデモ機選定開始」→https://holylandtokyo.com/2020/05/24/679/
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1

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なぜイスラエルが露とウクライナ仲介? [安全保障全般]

交渉期待値は高くないが、背景から学ぶ
西側で唯一ロシア非難を避け、浮いた存在
イラン核問題やシリア問題でロシア関係が重要で

Bennett.jpg3月6日付Military.comがAPの記事を配信し、イスラエルのベネット首相が露ウクライナ間の仲介のため5日にロシアを訪問し、西側首脳で唯一プーチン大統領との3時間もの会談を成立させ、ウクライナ大統領とも数回協議している背景について様々な角度から紹介しています

ベネット首相自身が国内向けTV演説で、「たとえ可能性が低くても、要請があれば支援を続ける」、「あらゆる試みをすることが道徳的義務だと考えている」と述べるほど難しく期待値の高くない試みですが、世界秩序に大きな影響を与える出来事が、世界の姿を浮き彫りにする一つの事例としてご紹介いたします

イスラエルの国内事情
Bennett5.jpg●ネタニアフ前政権を倒すため、イデオロギーが全く異なる8個政党が協力し、その結果として生まれた8つの政党による連立政権の運営は複雑で、ハイテク分野で巨万の富を気付いたベネット氏にとっても容易ではない。国民や野党からは連立政権誕生の過程にまで疑問を呈されており、「カリスマ無き指導者」は国内で求心力を持たない
●イスラエルには、ロシアのユダヤ人コミュニティーから数10万人とも言われる知的レベルの高い移民がおり、政治的にも力を持っている。同時にウクライナにもユダヤ人が約20万人存在しており、その保護はユダヤ人国家であるイスラエルの国是であり、既に数百人のユダヤ人避難民を受け入れている

ロシアとイスラエル関係
Bennett4.jpg●イスラエルの存在さえを認めないイランが、核の平和利用に名を借りた核兵器開発を進めることを断固阻止する姿勢のイスラエルは、イランとの核合意が復活することにも危機感を持っており、その阻止のためにロシアの役割が極めて重要との認識の下、ロシアとの関係を重視している
●また、北の隣国シリアの情勢はイスラエルの安全保障上の大きな関心事項であり、シリア内の危険な軍事拠点や施設にたびたび空爆を行っているイスラエルにとって、内戦で混乱するシリアに軍事拠点を置き影響力を持つロシアとの関係は、極めて微妙である

●もちろん、イスラエルにとって最大の同盟国は米国であり、米国内のユダヤ人社会の強力な後押しを得て毎年多額の軍事援助を受けているとはいえ、米国の意向を無視して独自路線を進める範囲は限られており、今回のロシア&ウクライナ仲介も米国と相談しつつの動きだと報じられている

イスラエル専門家の見方
Bennett2.jpg●テルアビブ大学のヨーロッパ問題の専門家であるEstherLopatinは、「世論調査で苦しんでいて、世論の批判に直面しているベネットが、自分自身を引き上げるチャンスを得たと動き出した」と表現し、
●イスラエルの著名な評論家は、「ベネットは一夜にして国際的な地位を高め、イスラエル国内で多くの政治的ポイントを獲得した。他方、彼は政治家となった彼自身のためだけでなく、イスラエルの国家と世界におけるその地位を大きなリスクにさらしている」と表現し、「ベネット首相は、ウクライナの泥の深さを十分知らずに、ウクライナの泥の中に入ってしまった」と批判的に語っている
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Bennett3.jpg上記の記事は、イスラエルはイランやシリア関係からプーチンを怒らせる余裕がなく、制裁を強化している西側諸国から完全に浮き上がっているとも表現しています。

一方で、世界が注目するこのような紛争への関与が、基盤が弱いベネット首相の政治的財産に命を吹き込む可能性はある・・・とも記しています

それでも、某コメンテーターの「ベネット首相は、ウクライナの泥の深さを十分知らずに、ウクライナの泥の中に入ってしまった」との言葉が頭に残ります・・

ウクライナ侵略に関する記事
「ウ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-04
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-02
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-01
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-27
「ウ紛争の最初の一撃は宇宙で!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-17
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-08

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