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無人機MQ-9への電子妨害ポッド搭載初期試験 [米空軍]

ALQ-167試験&自軍訓練用のECMポッド
鹿児島の鹿屋基地にも配備されているMQ-9です
鹿屋を離陸し、台湾周辺に12時間程度は在空可能

MQ-9A3.jpg5月13日付で米空軍は、米空軍無人機専用の試験&評価部隊である第556試験評価飛行隊が、電子妨害ECM用ポッドALQ-167の搭載試験を4月にネバダ州で実施したと発表しています。なお偵察&攻撃用無人機MQ-9は、昨年末から海上自衛隊鹿屋基地にも展開配備されています

同飛行隊はWW2当時から試験評価飛行隊として存在しましたが、休眠ののち2008年1月に無人機専門の試験評価部隊として、無人機運用&管制のメッカであるネバダ州Creech空軍基地で再立ち上げされ、今は過去20年間対テロ作戦に活躍したMQ-9を、何とか対中国等の本格紛争に活用すべく、様々な挑戦を試みている部隊です

ALQ-167 2.jpg4月の試験細部は公表されていませんが、米海軍や空軍機の電子戦対処能力を試験&評価したり、海空軍飛行部隊に電子妨害をかけて訓練する役割を担ってきた電子戦ポッドALQ-167のMQ-9への搭載を、「地上及び飛行試験」で確認したと13日に発表しています

同飛行隊運用幹部の少佐は、「MQ-9の遠征能力や長時間在空能力を生かし、従来プラットフォームで生じていた能力ギャップの穴埋めを可能にしたい」と語り、

MQ-9A2.jpg同飛行隊長の中佐は、「MQ-9へのECM装備搭載は、強い作戦要求がある不可欠なタスクであり、これまで仮設敵機部隊アグレッサー等に搭載し、演習や訓練で自軍操縦者に妨害をかけていたALQ-167(Angry Kitten)を活用することになった」、

また「15時間連続で妨害可能な能力を、大規模航空作戦編隊と組み合わせることが可能になれば、相当規模の効果を期待でき、敵の抑止にも貢献できるだろう」と試験の狙いを語っています

ALQ-167.jpgなおALQ-167は1990年代から使用されている装備ですが、過去10年間で最新のエレクトロニクス技術や電子部品、更にAI機械学習技術などを組み合わせ、大幅に能力アップが図られているようです

4月のネバダ州での「地上及び飛行試験」確認を受け、同飛行隊は5月4日からアラスカ州各地で実施されている統合演習「Northern Edge 2023」に、ALQ-167搭載のMQ-9を参加させ、より実践的な能力確認試験を実施しています

MQ-9A.jpg同飛行隊はこの他にも4月上旬に、MQ-9への燃料補給と弾薬搭載(4発のhellfireミサイル)を同時に行うなどの「Cold Integrated Combat Turn」訓練を実施し、従来手順では3時間必要な作業を、わずか25分で可能な手法を確立するなど、様々な挑戦を行っているようです

低速でステルス性もないMQ-9の脆弱性を消すことはできませんが、今でも平均年齢8歳程度の若い機体を300機程度保有するMQ-9を、なんとか活用したいとの米空軍の思いを受け、様々な試みが進んでいます

MQ-9関連の記事
「前線再武装&給油基地から初の再発進」→https://holylandtokyo.com/2022/12/28/4096/
「海自鹿屋基地に米空軍MQ-9部隊設置」→https://holylandtokyo.com/2022/10/27/3811/
「2022年秋に日本に配備!?」→https://holylandtokyo.com/2022/08/08/3538/
「一般公道で離発着訓練」→https://holylandtokyo.com/2022/07/12/3426/
「4大シンクタンクがMQ-9の継続活用要望」→https://holylandtokyo.com/2021/11/29/2464/
「2回目の対中国応用演習」→https://holylandtokyo.com/2021/05/01/211/
「豪州へ12機輸出承認」→https://holylandtokyo.com/2021/04/29/119/
「本格紛争用に約1/4を改修&延命へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/28/118/

関連のDefense-New記事
https://www.defensenews.com/electronic-warfare/2023/05/19/fur-midable-us-air-force-pairs-angry-kitten-jammer-with-reaper-drone/

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米国がタイへのF-35売却拒否 [亡国のF-35]

セキュリティー、インフラ、整備&操縦能力等を理由に
5-10年後の再検討を米が示し、
最新型F-16やF-15をF-35の代替に提案も
タイの中国への接近に対する警鐘との見方アリ

F-35 Thai.jpg5月25日、タイ政府が米国に要請していた、老朽化が進むF-16A/B戦闘機やF-5軽攻撃機の後継機としてのF-35戦闘機導入について、米国政府から時間的制約、技術的要件、作戦運用&整備能力などを理由に断りの連絡があったとタイ空軍報道官が発表しました

タイ空軍は、1980年代から運用している初期型F-16を約50機とF-5を約30機、更に2011年に導入したスウェーデン製JAS-39グリペン戦闘機を12機(1機は事故で喪失)を保有していますが、ロイター報道によればF-16とF-5の後継として8機のF-35戦闘機導入を米国に打診していたとのことです

Gordec.jpg別の5月23日付タイ国内報道では、在バンコクの米国大使が最近タイ空軍司令官を訪問し、タイ空軍基地のセキュリティー状態、飛行場の施設能力、維持整備インフラ施設、作戦運用に必要な操縦者や整備員等の人材確保容易性等の観点から懸念事項があり、これらを改善するには相当な時間と経費が必要になることから、今回のタイ空軍の要望には応じられないと伝達した模様です

ただ完全にタイ側の要望を却下したわけではなく、上記懸念事項の改善を5-10年後に再度確認し、可能な状態となればタイ側の要望に応じることもあり得ると説明し、現時点での代替案として米国大使は、最新型F-16戦闘機(Block 70)やF-15の売却を提案したとのことです

Gripen Thai.jpgタイ側からは、追加でグリペン戦闘機を購入する案が有力との「米側をけん制するような」報道も最近出ていましたが、米側の返答が7月になるだろうと予想していた中で、早々と5月中に米国大使館を通じて連絡があったことを受け、米国側のタイへの迷いがない明確な姿勢が示されたと受け止められるのでしょう

タイは最近の総選挙で、2014年のクーデターで誕生した軍事政権が敗北し、今後の政権運営や連立政権の行く末に注目が集まっていますが、2014年以来、中国との軍事協力関係強化が目立っており、例えば中国軍とタイの陸海空軍それぞれが共同演習を行うなど、中国軍と緊密な関係にあるのがタイ軍です

F-16 Thai.jpgまた軍の装備や兵器導入面でも中国とタイは2014年以降緊密で、2017年に中国製潜水艦をタイ海軍が3隻導入したほか、弾薬輸入面でもパイプが太くなってきているところで、今回の米側によるF-35売却拒否は、F-35に関する機密情報がタイから中国に漏洩することを強く懸念したものであり、同時にタイ側に中国との関係を見直すようシグナルを送ったものと多くの専門家が見ているようです
//////////////////////////////////////////////

ASEAN諸国と米国や西側との関係については、フィリピンが中国側の高圧的態度に我慢できずに急速な米側回帰に動いている一方で、カンボジアやインドネシアが依然として中国寄りだと最近ご紹介していますが、タイの動向は気になります

Gripen Thai2.jpg3月の米タイ共同主催の「Cobra Gold演習」は、オブザーバ国含め30か国7400名規模の大演習に復活して、微妙な米タイ関係に改善の兆しか・・・とお伝えしましたが、そう単純ではないようです。

まぁ、米国大使がタイ空軍司令官に説明したように、「タイ空軍基地のセキュリティー状態、飛行場の施設能力、維持整備インフラ施設、作戦運用に必要な操縦者や整備員等の人材確保容易性等の観点の懸念」は否定できないと思いますが、東欧の小国ルーマニアやポーランドやチェコにもF-35売却許可している点からすれば、単純比較はできませんが・・・

タイと米国関係の関連
「Cobra Gold演習がコロナ前規模に」→https://holylandtokyo.com/2023/03/02/4349/
「対中国で分散作戦演習JPMRC」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
「タイが中国戦車追加購入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-04-05
「タイが中国潜水艦購入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2015-07-13

他ASEAN諸国と米国関係
「インドネシアは塩対応」→https://holylandtokyo.com/2023/05/24/4640/
「米比が33年ぶり比で空軍演習」→https://holylandtokyo.com/2023/05/08/4597/
「米比とBalikatan演習」→https://holylandtokyo.com/2023/04/20/4524/
「カンボジアに中国軍施設」→https://holylandtokyo.com/2022/06/15/3354/

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巨大台風でグアム米空軍基地に相当な損害か [米空軍]

政府機関併せ緊急対処チーム200名以上緊急派遣
空母ニミッツ戦闘群も日本から派遣
風速62mを記録の「Category 4」
グアム国際空港は1週間以上の閉鎖か

Andersen Tyhoon5.jpg5月24日、超大型の台風(Super Typhoon Mawar:日本では台風2号)が、米国基準で5段階の2番目に大きい「Category 4 hurricane」の状態でグアム島を直撃し、気圧905HP・風速62m・降水量650㎜の暴風雨で同島のアンダーセン米空軍基地等に相当の被害を与えた模様で、米政府の連邦緊急事態管理庁(Federal Emergency Management Agency)が事前に約130人の対処組織を派遣し、米空軍も80名規模のNDRT(Natural Disaster Recovery Team)を向かわせている(26日現在)とのことです

Andersen Tyhoon.JPGグアム島では、国際空港(Won Pat International Aiport)が台風被害で少なくとも5月30日までは使用不能になっており、NDRTチームはハワイで民航機から軍用機に乗り換えグアムに向かっているとのことです。また米海軍は、日本近傍に所在していた空母ニミッツ戦闘群をグアムに向かわせており、29日到着見込みで被害復旧や人道支援任務に当たらせるとのことです

Andersen Tyhoon3.jpg米空軍のNDRTは、2018年のハリケーンMichaelで「壊滅的」被害を受けたTyndall基地事案等を受け約1年半前に米空軍施設部隊センター内に編制された組織で、自然災害が発生したり被害発生が予期される場合に対処チームの人員を各所から集めて編成(軍人と文民職員、更に民間契約業者で構成)する権限を持ち、主に被害の長期的&恒久的な復興施設作業をリードする視点から、現地入りから30日以内に被害状況や被害復旧に必要な施設工事の見積もりやコストアセスメントを行い、その後は必要な業者との契約や施工管理までフォローする組織です

NDRTは2021年下旬に設置され、同チームの緊急編成と派遣は2022年10月フロリダMacDill基地へのハリケーン被害対処と、同年12月の竜巻と豪雪被害対処におけるアーカンソー州Little Rock基地派遣の過去2回ですが、被害規模の大きかった2018年のTyndallと2019年のOffut基地復旧関連の工事立案&契約と施工管理も設置後支援してノウハウを大きく蓄積している模様です

Andersen Tyhoon4.jpgアンダーセン空軍基地の被害状況について具体的な情報は27日現在で不明ですが、ハリケーンに慣れているグアム島ではありますが、風速62mと650㎜の降水量により、滑走路や格納庫や基地内施設に被害がある模様で、水道や電量供給網など重要基礎インフラへの影響も少なくない模様です

幸い、事前に米軍航空機は島外に避難するか頑丈な格納庫内に入れられ被害ゼロで、米海軍艦艇も港湾外で難を逃れたようです。基地内施設への被害でけが人は出ているようですが、死亡者はないようです

Andersen Tyhoon6.jpgグアム島は米軍の対中国作戦の最前線基地の一つであり、最重要基地と申し上げても過言ではなく、米太平洋軍はグアム島の弾道&巡航ミサイル防衛防衛能力強化を最優先事業として要望し、米ミサイル防衛庁MDAも地籍確保や原住民聖地との兼ね合い調整に苦労しつつ、2026年頃までの態勢整備を目指して懸命な努力をしているところです(ちなみに、沖縄の嘉手納基地等に対するミサイル防衛強化計画は耳にしたことがなく、有事に期待されていないことの証左と考えられます)

その中でもアンダーセン空軍基地は台湾有事の重要軍事拠点であり、被害が発生していても、「安全保障上の秘密扱い」になる可能性が高いですが、軍事活動への影響が少ないことを祈るばかりです

グアム島関連の記事
「沖縄海兵隊4千名の転進先基地設置式」→https://holylandtokyo.com/2023/02/01/4230/
「米潜水艦が2隻から5隻体制に」→https://holylandtokyo.com/2022/04/26/3166/
「MDA長官がグアム防衛語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/
「グアムMDの困難を語る」→https://holylandtokyo.com/2022/04/05/3082/
「PACM司令官がグアムMD最優先と」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-23

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電磁パルス無人機対処兵器THOR「群れ」試験に成功 [米空軍]

4月5日にAFRLが過去最大の群れ対処試験を実施&成功
引き続き細部性能は非公開ながら2024年デモ機製造へ

THOR AFRL3.jpg5月19日付米空軍協会web記事は、米空軍研究所AFRLが約4年前から具体的開発に着手している、マイクロ波による電磁パルス効果(EMP効果)で無人機の電子回路を破壊する方式の兵器THOR(Tactical High-power Operational Responder)試験を4月5日に実施し、AFRL史上最大規模の「無人機の群れ」対処に成功したと紹介しています

この「無人機の群れ対処に成功」した試験で、何機で構成された「無人機の群れ」だったのか?、群れの全ての無人機が無効化されたのか?・・・に関する質問にAFRLは回答を避けていますが、

THOR AFRL2.JPGAFRLのTHOR開発責任者は「THORは、その広いビーム範囲、高いピークを持つ出力、目標無人機を補足追尾する早い動作のアンテナを生かし、小型無人機の群れ対処に極めて優れた有効性を示した」とし、また副開発責任者の大尉は「THORは初期型のデモ機だが、THOR開発を通じて獲得できた技術が、世界中で無人機防御態勢強化のために活用されるだろう」との声明を出しています

THOR開発は、2019年の小型無人機1機への対処試験から本格化し、2020年からは海外最前線への試験配備で教訓や運用者の意見を聴取して改良を進め、2021年には成果を見た米陸軍も開発投資に参画、2022年2月にはLeido社と装備名「Mjolnir」で2024年デモ機製造で契約締結して今日に至っています

THOR AFRL.JPGTHORや装備名「Mjolnir」の具体的な「有効射程距離」や「対処可能無人機の規模や機数」は不明で、都市部で使用した場合の「副次的被害の恐れ」についても情報が全くありませんが、機関砲やミサイルによる迎撃より単位当たりの対処コストが安価で、電磁波による「光速」対処が可能な点で優れた可能性を秘めた防御兵器ですので期待したいと思います。

以下では、関連過去記事の要旨と関連映像を過去記事からピックアップ紹介します

【2021年7月の記事】
THOR4.jpg●THORは、マイクロ波電磁パルス効果(EMP効果)で機体の電子回路を破壊する兵器で、細部性能は不明ながら、AFRL2021年公開映像のナレーションでは「光速」かつ「long range」で小型無人機の電子回路を静かに破壊でき、数百の小型無人機を同時無効化も可能と説明
●長さ6mコンテナ上にパラボラアンテナを取り付けた形状の装置。C-130輸送機で空輸可能で、2名が3時間で現場設置可能。ニューメキシコ州のKirtland空軍基地がTHOR開発拠点
●レーザーや妨害電波による小型無人機対処兵器は、同時に1機にしか対処できないが、THORは同時に大量の無人機対処が可能。また、防空ミサイル迎撃は高価だが、THORは電気代だけで安価に同時多数に対処可能

【2022年7月の記事】
THOR3.JPG●無人機の群れ攻撃からの防御兵器THOR(Tactical High Power Operational Responder)開発に関し、米空軍研究所AFRLは2022年2月にLeidos社と約32億円の契約を結び、2024年初めに装備名「Mjölnir」でプロトタイプ作成することになっている
●THORは2021年から約1年間の前線試験(場所非公開:中東と推定)を経て5月に帰国も、その間、現地で射程範囲拡大に取り組み出力を5割アップさせ、また現場試験運用した空軍Security Forcesから意見聴取しながら操作性の改善に取り組んできた

●AFRL開発責任者Adrian Lucero氏らは、「無人機対処兵器には、ガンやレーザー方式、捕獲網方式などがあるが、高出力マイクロ波はより広範囲の無人機により短時間で対処可能な点で優れている」と6月24日に説明した
●またLucero氏とHeggemeier氏は、前線派遣先での実績から「THORは94%の信頼性を証明した」と説明し、今後は海外派遣先から持ち帰ったTHORを分解して部品の損耗程度等を確認し、「Mjölnir」プロトタイプ開発時の改良に反映すると述べた

米空軍研究所AFRLの解説映像2021年


Leidos社のTHOR解説映像(約30秒)


THOR関連の記事
「装備名Mjölnirで24年にプロトタイプ作成へ」→https://holylandtokyo.com/2022/07/14/3432/
「強力電磁波で小型無人機の群れ同時無効化狙う」→https://holylandtokyo.com/2021/07/06/1942/

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空軍長官:次期制空機NGAD候補企業が同じ基地内で設計競争中 [米空軍]

F-35の失敗(維持整備費・知的財産・開発製造同時進行)回避
競争各企業の検討状況にアクセス可能体制
書類の束をでなく、デジタル設計データに随時アクセス

Kendall NGAD.jpg5月22日、Kendall空軍長官が軍事記者との朝食懇談会で、18日に関連文書(推定:提案要求書案)が関係企業に配布され、企業選定が開始された次期制空機NGAD開発状況に関して語り、F-35の失敗繰り返さないために知的財産権や維持整備関連データへの国防省の完全アクセスを確保することや、

空軍側と候補企業技術者が開発拠点であるWright-Patterson基地に集まり、まさに「side-by-side」で仕事を進めており、かつデジタル設計の利点を生かし、企業側の開発状況に空軍関係者が何時でもアクセス可能にして確認できる状態で、競争させつつ開発と状況確認を効率的に進めていると驚きの現状を語っています

<NGAD Kendall.jpgstrong>比喩的に表現しているのか、現実を描写しているのか、Kendall長官の発言は理解が難しいところもありますが、オバマ政権時代に技術開発担当次官としてNGAD開発の端緒を担当し、F-35のゴタゴタ処理にも奔走してきたKendall氏の思いが詰まったNGADですので、22日付Defense-News記事から同空軍長官発言を長くなりますがご紹介します。

22日付Defense-News記事によれば空軍長官は
NGAD Kendall2.jpg●F-35計画のような失敗を避けることに焦点を当てNGADに取り組み、導入後の維持整備コストに関わるロッキード社データ入手の権利を確保していなかったF-35の失敗を繰り返さないよう、製造企業保有の全ての関連データへのアクセス権を確保するし
●F-35では当時は好まれた「Total System Performance」との考え方が採用され、企業選定で契約を勝ち取った企業は、兵器のライフサイクル全てで「永続的な独占的地位」を確保することとなり、結果としてこの悪習慣がもたらすものに長年に渡り苦労をさせられている

●F-35で多くの問題を生んだ製造と開発の過度な同時進行(excessive concurrency)も極力避けなければならない。同時進行方式では、開発や試験中に判明した不具合に対処するのが極めて複雑で困難になる。NGADやB-21でも多少の同時進行は起こるが、空軍はリスク最小化に合理的な判断を行う
NGAD Kendall3.jpg●開発に伴う知的財産「intellectual property」への政府側の必要なアクセス権もしっかり確保する必要がある。またNGADでは、主担当から下請け企業に至るまで「モジュラーオープンシステム設計」思想導入を徹底し、機体の能力向上時に開発時と異なる新たな企業が参入可能な形を確保する

●NGAD拠点はオハイオ州Wright-Patterson空軍基地に置き、開発担当責任者には,現在米空軍の戦闘機や先進航空機担当幹部を務めるDale White,准将が就任することになる。
●NGADは高価な装備品であり(2022年4月に同空軍長官は1機数百億円と発言)、複数の契約企業で遂行する余裕はなく、単一の主担当企業を2024年のいずれかの時期に選定する
●NGADと行動を共にする無人ウイングマン機CCAも同時並行的に開発することになるが、潜在的な複数の企業と検討を進めており、最終的に何個の企業が携わるかを述べるのは時期尚早である

NGAD Kendall4.jpg●NGAD開発の端緒は、オバマ政権時に開発担当次官を務めていた際に実施した「Aerospace Innovation Initiative」で、同取り組みから生まれた6世代機用の要素技術が実験的なプロトタイプ機「X-planes」に結び付き、それらの要素技術が機能することを証明することになる
●デジタル設計技術やモデリング技術の発展により、国防省や政府側と、関連企業設計チームとの連携は以前より効率的に進められており、空軍側と応札するであろう複数企業(bidding companies)は「essentially working side-by-side at Wright-Patterson」であり、空軍側設計関係者は各企業NGAD設計チームのデータベースに直接アクセスできる体制になっている(have direct access to the databases companies are using to design their pitches for NGAD)

●関係者で希望するものは皆が基本的に同じWright-Patterson基地に住んでおり、我々は競争している企業がどのような設計を行っているかについて詳細な知識(intimate knowledge)を得ている
NGAD Kendall5.jpg●我々は関係企業と一体となって、設計や契約プロセスが可能な限り融合されたものとなるよう取り組んでおり(We’re very involved with them. … We’re going to have as integrated and as fully integrated a design process and contracting process as possible)、過去に行われたどの調達案件より効率的なアプローチを執っている。

●関係企業が大量の束の文書を空軍側に提出し、その文書を時間をかけて確認する従来イメージではなく、文書の束を待つことなく、設計状況をいつでも直接直ちに確認できる体制が構築されている
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Kendall NGAD2.jpgKendall空軍長官は、物事を多少誇張して先行発言することが過去にあり、多少は割り引いて聞く必要はあるでしょうが、NGAD開発拠点が置かれた米空軍研究所AFRL所在のWright-Patterson基地に、ボーイングやロッキードやNorthrop Grumman等のNGAD担当技術者が集結し、空軍側とガラス張りの態勢を構築して受注1社を目指してしのぎを削っている・・・点は間違いなさそうです

NGADに向け、2020年9月に「既に初飛行済」と空軍省幹部(Roper次官補:当時)が言及したデモ機は、空軍長官が今回言及した「実験的なプロトタイプ機X-planes」だと思いますが、予算獲得に向け、少しずつ明らかになって行く次世代制空機NGADに注目してまいりましょう。過去記事でこれまでの経緯も是非ご確認ください

NGAD関連の記事
「企業選定開始を発表」→https://holylandtokyo.com/2023/05/22/4656/ 
「欧州型とアジア太平洋型の2タイプ追求」→https://holylandtokyo.com/2023/05/10/4604/
「NGADは1機が数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/
「NGADの無人随伴機開発は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-20
「無人機の群れ前線投入が課題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/28/3474/
「デモ機が既に初飛行済」→https://holylandtokyo.com/2020/09/17/482/
無人ウイングマンCCA関連
「CCAを2020年代後半導入へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「空軍長官:NGADが200機、CCAは1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
米空軍の戦闘機構成議論
「戦闘機の近未来体制は」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/

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引き続きインドネシアは米国に塩対応 [安全保障全般]

米陸軍トップが訪問も「全てのmajor powers国と仲良く」と
米比関係が急速に改善進展するのとは対照的

McConville Indonesia.jpg5月12日付ABCNEWS電子版は、同日James McConville米陸軍参謀総長がインドネシアを訪問し、インドネシア国防相など同国安全保障関係者と、両国間の軍事協力関係強化について協議したと報じています

ただ、米国との関係が急速に進展し、ホワイトハウス高官が「驚くべき:stunning」と表現する程のフィリピン関係とは対照的に、 中国との関係を強く意識して「中立的な立場」だと強調するインドネシア側との話し合いはあまり進展がなかった雰囲気で、会談後の報道も具体的な合意事項等の発表が全く含まれていません。

5月12日付ABCNEWS電子版によれば
McConville Indonesia2.jpg●11日までフィリピンを訪問していた米陸軍参謀総長は同日夜インドネシアに到着し、12日にインドネシアのPrabowo Subianto国防相と会談した。同大将はインドネシアとの軍事演習強化を含む両国関係の深化方法について議論したと語った
●また同大将は、「この地域に我々は多くの友人を持ち、緊密に連携している。地域の平和、安全、安定に関し、我々は利害を共有している。だからこそ我々は、皆にとって自由で開かれたインドアジア太平洋を維持するために協力しているのだ」と表現した

●ただしPrabowo Subiantoインドネシア国防相は、「地域の平和と安定の推進と維持は我々共通の関心事だ」と述べる一方で、「インドネシアは全ての国、特に全てのmajor powers国との関係維持を望んでいる」と強調して発言し、McConville大将がインドネシア訪問直前に訪問したフィリピンとは異なり、中国との関係を引き続き重視している事を示唆した

McConville Indonesia4.jpg●11日には、インドネシアでASEAN首脳会合が開催され、中国との距離感が加盟国内で異なるASEAN内の複雑な思惑に配慮する形で、従来のASEAN会合と変わらない表現である「地域での誤算や衝突を避けるため、地域での対立事案については自制した姿勢で対応すべき:call for self-restraint in the disputes to avoid miscalculations and confrontations」との声明が採択されている
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McConville Philippines.jpg米フィリピン関係は、今年2月の米国防長官訪比時の米軍の比軍基地へのアクセス数倍増(4個基地から8個)合意、3月の米軍第5世代機(F-22)初訪比と南シナ海上での訓練、4月11日の「2+2」会合での国防支援調整協議(レーダー、無人機、軍用輸送機、防空装備、F-16輸出)と、

米海兵隊が新部隊MLR(Marine Littoral Regiment)まで投入してフィリピン側と連携を深めた大規模演習「Balikatan」(4月)など、「驚くべき:stunning」進展を見せていますが、中国経済大減速の中でもASEAN諸国の動きは様々です

McConville Indonesia3.jpgフィリピンの変化の背景を米国の専門家(AEIのZack Cooper氏)は、「比は過去5年間に渡り、中国との関係改善アプローチを試みたが、中国側がその高圧的な態度を変えなかったことで比国民の反感を買い、フィリピンは国益保護&追求のため、米国との協力強化の道を選択するに至った」と分析しているところです。

タイの総選挙結果を受け、タイ軍事政権に変化がありそうですが、米国との関係がどうなるのか、中国に配慮を見せていたタイ政権に変化があるのかにも注目したいと思います

インドネシア関連の記事
「戦闘機の機種選定」→https://holylandtokyo.com/2022/01/06/2581/
「オーストリアに中古戦闘機購入打診」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-21
「米軍が活動拠点求め」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-16-1

フィリピン関連の記事
「米比が33年ぶりに比で空軍演習」→https://holylandtokyo.com/2023/05/08/4597/
「米比2+2とBalikatan演習」→https://holylandtokyo.com/2023/04/20/4524/
「5世代機初展開F-22」→https://holylandtokyo.com/2023/03/24/4442/
「第3MLRの編成」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
「前政権時の米とのギクシャク」→https://holylandtokyo.com/2021/08/02/2065/
「三菱製レーダーを提供へ」→https://holylandtokyo.com/2020/08/31/536/

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米空軍の対中国救難救助検討は引き続き迷走中 [米空軍]

欧州や中東でのみ有用なHH-60Wヘリ調達削減決定後も
米陸軍がFLRAA候補にした2機種も検討対象と
当面はCV-22オスプレイとHH-60Wでしのぐのか
中国の強固な防空網下で活動可能なアセットは夢か

FLRAA3.jpg4月27日付米空軍協会web記事が、最近の米空軍幹部による米議会軍事委員会での2024年度予算案説明の中なら、遠方CSAR(遠方の戦闘捜索救助:combat search and rescue)アセット検討状況について証言する様子を紹介していますが、2023年度予算で2021年導入開始直後のHH-60Wヘリ調達機数を、対中国脅威下で活用困難との判断から当初計画108機から85機に削減した「後の体制検討」について、実質進展がない模様です

対中国で、母国から遠い中国大陸近傍での戦いを強いられる米軍兵士にとって、敵の勢力下で航空機や艦艇が撃墜撃沈されたり、敵影響下での地上活動を命ぜられた場合に、味方が救出してくれるとの「安心感」「信頼感」は士気に直結しますし、米国世論を踏まえれば、救助作戦が遂行不可能なエリアでの活動実施は、米政権や米軍指揮官にとって命令不可能と言っても過言ではない極めて判断困難なものとなります

HH-60W2.jpgそんな軍事作戦遂行の基盤中の基盤である「CSAR:捜索救助任務」構想が、今頃になって根本的見直しを迫られていること自体が驚くべきことですが、どうしようもなく、手を付けられないから今まで放置せざるを得なかった感もあり、弾薬確保や前線への輸送能力欠如と相まって、対中国作戦の基礎崩壊とも見ることができます

同時に、仮に東シナ海や台湾近傍で米軍機や米艦艇が撃墜や撃沈され、近傍の同盟国である日本が米軍兵士に有効な救助活動を提供できなかった場合(努力する姿勢を見せなかった場合も含め)、米国民感情からも、米軍兵士から見ても許容できるものではなく、日米同盟の根幹を揺さぶるものとなりえることを、日本は認識しておくべきと考えます。

このように、中国正面での「CSAR:捜索救助任務」が極めて重い問題であることを最初に再確認しておき、実質進展がない米空軍内での検討状況を米議会証言から以下でご紹介しておきます。

4月27日付米空軍協会web記事によれば
Brown nomination.jpg●27日の下院軍事委員会でBrown米空軍参謀総長は、議員からアジア太平洋戦域における遠方CSARに関してHH-60Wでは能力不足だからCV-22オスプレイ活用を検討しているかと問われ、オスプレイを追加導入してCSARに活用するつもりは無く、一旦停止した製造ラインを再立ち上げるにはコストが掛かりすぎると理由の一端を説明した
●そしてBrown大将は、米陸軍が最近FLRAA(将来長距離攻撃ヘリ)に選定したティルローター型機「Bell V-280」も候補として検討すると述べ、更に他の候補機として空軍現有のCV-22オスプレイや同陸軍機種選定に敗れたSikorsky-Boeing社製の「Difiant X」へりのほか、具体的機種には言及せず他の企業製品も見ていると語った

(なお、米空軍現有のCV-22に関しては、同機を保有する空軍特殊作戦軍司令官が最近繰り返し、CV-22が遠方CSAR任務を遂行する計画はないと強調している)

Slife2.JPG●26日に上院軍事委員会で証言したJames Slife空軍作戦部長は、ベトナム戦での歴史が示すように、米空軍にとって撃墜された兵士を救出することは「道徳的義務:moral imperative」だと表現し、この義務を果たすため非伝統的な手法を含め検討中だとし、唯一確かなことは速度270㎞程度でC-130から空中給油を受ける必要があるアセット(HH-60Wのこと)では厳しい環境での答えにはならない点である、と述べている
Moore.JPG●また同委員会でRichard Moore空軍計画部長は、HH-60Wの85機要求は十分な機数であり、同機が担う救命救助任務と人員回収(personnel recovery)の内、人員回収(personnel recovery)任務については、米軍内に同任務可能な機種が多数現存する点を指摘し、加えてHH-60Wはイラクやアフガン用に購入されたものであり、対中国戦域では有用ではない、と明言している
///////////////////////////////////////////

V-280 Bell2.jpgちなみに、米陸軍が2022年12月に機種結果を発表したティルローター型機「Bell V-280」導入は、2025年に陸軍の細部要求を体現したプロトタイプ機が完成し、部隊運用開始が2030年頃との導入計画となっており、仮に米空軍が活用を決定しても使用開始は10年後になります

またHH-60W選定時に、ティルローター型機はダウンウォッシュ(ホバリング時の下方への風量)が強すぎて、救難員がロープで遭難者を収容する作業が不可能との理由で排除した経緯があるのに、なぜ今になって簡単に復活可能なのか理解に苦しみます

Hexa.jpg米空軍内では、電動無人ヘリ「eVTOL」を前線での極地輸送や救難救助に活用する検討「Agility Prime」計画も始まっていますが、2021年に「100nm先に、3~8名を速度100マイル程度で輸送可能」を目標に定め、「2023年までに実用可能なオプションに煮詰めたい」としたものの、その後進展があったとの報に接していません

冒頭に述べたように、対中国作戦遂行上の目立たない「肝」である遠方CSARは、米軍だけでなく自衛隊にとっても極めて重要な任務ですが、全く目途が立たないように思えます。兵站輸送能力確保や弾薬確保と並んで・・・

救難救助体制の再検討
「対中国の救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/
「米空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/

米陸軍のFLRAA選定結果
「米陸軍が過去40年で最大のヘリ機種選定」→https://holylandtokyo.com/2022/12/09/4043/

電動ヘリ導入検討「Agility Prime」計画の状況
「米空軍が電動ヘリeVTOL導入検討に本格始動」→https://holylandtokyo.com/2022/06/29/3370/
「電動ヘリeVTOLでACE構想推進へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/13/105/

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次期制空6世代機の企業選定開始! [米空軍]

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提案要求書の原案を関連企業に提示し質疑開始の模様
米空軍は2024年に(a contract by or in 2024)契約と
内容についてはほとんど非公開

CCA NGAD4.jpg5月18日、米空軍が次期制空機NGAD(Next Generation Air Dominance)の要求性能に関する文書(solicitation:非公開)を、関連企業(対象企業非公開)に配布し、2024年の契約締結に向けた選定業務を開始したと発表しました

どのような位置づけの文書かも明らかではありませんが、一般的には、正式な提案要求書(RFP)を発出する前の原案を企業側に提示し、内容が不明確な部分などに関する質疑期間を設けて文書を精査し、数か月後に正式な提案要求書として企業に提示し、3か月程度の期限で企業提案を受け付け、受け取った各企業の提案を数か月かけて評価するのがスケジュール感ですが、この流れだと2024年末の決定となる概算できます

NGAD9.jpgNGADに関しては、2020年9月にRoper調達次官補(当時)が、「NGADは既にプロトタイプの初飛行を実施した」と明らかにして世界中が仰天したのですが、18日の発表では「プロトタイプ機初飛行」に関連した企業のみが対象なのか、新規参入希望企業も対象なのか、対象企業は何社か・・・等々の質問には米空軍は答えない姿勢だったようです

ただし、2022年8月に行われたNGAD用の次世代エンジンAETP契約に、エンジン開発企業「以外」で含まれていたボーイング、ロッキード、Northrop Grummanがその実績からも企業選定の対象だろうと一般的には考えられています

NGAD7.jpgなお、前出のRoper次官補が当時ぶち上げた「以後の戦闘機は50-100機程度しか製造せず、8-12年サイクルで最新技術を取り入れた新型戦闘機を導入して陳腐化を避ける」との構想は、現在のKendall空軍長官が「制空機はそんな短周期で入れ替わり可能な単純なシステムではない」とバッサリ切り捨てています

またNGADには、NGADに随伴することを想定している無人ウイングマン機CCA開発と併せて、2024年度予算案に約2700億円が計上され、今後は年々増額されて5年間で約2兆2000億円を研究開発費として投入するとの構想案を米空軍は示しているところです。

以下では米軍事メディアが報じた米空軍18日発表から、NGADへの要求事項概要を紹介します
NGAD6.jpg●(family of systemsとして)融合した兵器システムとしてのsolicitation(直訳:情報などの要望書)を発出した。企業選定の段階であり、設計や製造に関するsolicitation細部には現時点で言及しない

●NGADへの要求性能には、破壊力強化、生存性・相互運用性・全ドメインとの連携性などが求められ、かつ強固に防御された厳しい環境下でこれらが遂行可能なことが含まれている。これらをより適切に可能なのは米空軍だけであり、この分野で前進しなければ、敗北が待っている
●NGADは、制空任務(counter-air missions)と対地攻撃任務(to strike ground targets)を担う。また空軍発表は敵防空能力制圧・破壊(Suppression/Destruction of Enemy Air Defenses (SEAD/DEAD) mission)の任務を担うことも示唆している(seemingly suggested)

NGAD5.jpg●NGAD計画を通じ、米空軍は軍需産業基盤の拡大と刺激を狙っており、オープンアーキテクチャーを追求し、NGADの能力向上時に競争原理を働かせると同時に、機体維持整備費の縮減を図る
●F-35で維持整備費が大きな問題となっていることを受け、長期的に維持整備収入が見込めることも踏まえ、維持整備費を低く抑える誘因が働くようなインセンティブを設定する
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次期制空機NGADに関しては、Kendall空軍長官から以下のような情報が出ています
・NGADは1機数百億円(空軍長官22年5月)
・NGAD調達機数を200機と仮置きし、無人ウイングマン機CCA必要数1000機を導いて2024年度予算を立案(空軍長官23年3月)
・NGADは航続距離短めの欧州型と長いアジア太平洋型になろう(空軍長官23年5月)

NGAD 2023AFA.jpgF-22後継機の位置づけにある次期制空機NGADは、F-22が退役予定の2030年頃以降の導入予定と認識していますが、別計画で進む無人ウイングマン機CCA計画は、2020年代後半導入開始を目指して先行的に進むと4月に空軍幹部が突然明らかにし、「必要だろうけど、なぜ突然そんなに慌ててるの?」との疑問が界隈から聞かれたところです。

米空軍参謀総長人事と併せ、注目してまいりましょう

AETPエンジン開発と米空軍
「AETP開発を機体メーカー含め契約」→https://holylandtokyo.com/2022/09/01/3581/

NGAD関連の記事
「欧州型とアジア太平洋型の2タイプ追求」→https://holylandtokyo.com/2023/05/10/4604/
「NGADは1機が数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/
「NGADの無人随伴機開発は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-20
「無人機の群れ前線投入が課題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/28/3474/
「デモ機が既に初飛行済」→https://holylandtokyo.com/2020/09/17/482/

無人ウイングマンCCA関連
「CCAを2020年代後半導入へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「空軍長官:NGADが200機、CCAは1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/

米空軍の戦闘機構成議論
「戦闘機の近未来体制は」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/

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次の米空軍人トップは現在の副参謀総長か? [米空軍]

現職Brown大将の推薦で空軍内評価も高いが
副参謀総長には現作戦部長で特殊作戦のプロが候補
バイデン大統領が女性大将を押す可能性も

Allvin12.jpg5月17日付Defense-Newsが、複数の現職及び退役空軍高官(匿名)からの情報として、Brown空軍参謀総長が統合参謀本部議長に就任した後の後任空軍人トップに、現在の副参謀総長であるDavid Allvin大将(輸送機パイロット)が就き、その後任に現作戦部長のJim Slife中将が就任する案が米空軍案だが、「多様性」を重んじるバイデン大統領等が米輸送コマンド司令官である女性のJacqueline Van Ovost大将を押す可能性があると報じています

米軍高官人事は現在、一人の上院議員が妊娠中絶希望女性兵士への帰国旅費拠出問題を持ち出して動きがストップしており、債務上限問題に隠れて米軍全体で大問題となっており、今後の動きが全く読めませんが、記事は現在のBrown参謀総長も強く推している「輸送機と特殊作戦ヘリパイロットの空軍ツートップ」の主役Allvin大将の人物像とその頭にある米空軍の将来像(F-35調達大幅削減と先進ドローン調達増など)の一端を紹介しているので取り上げます

空軍参謀総長候補と噂のDavid Allvin副参謀総長
Allvin10.jpg●1986年空軍士官学校卒業後、C-141輸送機パイロットとしてキャリアを開始し、後にテストパイロットとなりC-17輸送機の導入試験に参画。その後テストパイロット経験から宇宙飛行士への道を志すも、時期尚早との周囲の勧めもあり空軍に残り、1999年ACSCを優秀学生で卒業し、隣接する上級エアパワー研究所で航空戦力運用分野で修士号
●中佐から大佐にかけ、飛行教育分野や輸送機部隊の指揮官等を歴任し、その間にテストパイロットとして素養もありF-15,やF-16戦闘機を含む12機種以上を操縦し、大将としては異例の4600時間以上の飛行時間を誇る

●2010年9月に准将に就任し、アフガニスタンでの飛行教育担当をNATO職務として遂行し、その後2012-13年の間、空軍輸送コマンド作戦運用センター長として世界中で運行する空軍輸送機や空中給油機の作戦運用や航空機取り回しを仕切る
●以後の(最近)10年間の経歴が、Allvin大将の「完璧なインサイダー:consummate insider」との評価を確立する。つまりこの間、国防省、空軍司令部、米欧州軍、国連(J-5から派遣の米国連大使の上級軍事補佐官)で複数の戦略および計画担当将官の任務を果たして昇進し、空軍の利益をより強力に推進擁護し、複雑な米国政府官僚機能の中でのナビゲーターとして「完璧なインサイダー」の地位を確立した、と関係者は評価している。

Allvin7.jpg●2020年11月に空軍副参謀総長に就任し、主に予算編成や新事業推進管理に中心的役割を果たしているが、「完璧なインサイダー」としての実力を遺憾なく発揮し、「ワシントン流のノウハウを備えた教授的なリーダー」として、更に「人とは異なる大きいビジョン」を持ちつつ、熱心に勉強し、自制心を持ち、他者に敬意をもって政府内外の見識を集めて議論を進める高い能力を発揮した
●特に副参謀総長として参加した国防省の新規事業計画の評価を行う「Joint Requirements Oversight Council」の指導的メンバーとして、また戦略的計画ペーパーの取りまとめで能力を発揮し、米空軍の優先事項が従来より確実に国防省予算案に組み込まれて「空軍に莫大な勝利をもたらした」と空軍司令部や空軍OBから評価されている

●また、厳しい現実に直面している新兵募集や操縦者・整備員・サイバー専門兵士等の確保についても、彼はその経験から兵士の職域管理に柔軟性を持たせることなど独自のアイディアを持って推進しており、Brown現参謀総長が推進するACE構想に関しても、空軍全体から草の根のアイディアを募って積極的に具現化するなど手腕を発揮しBrown大将も評価している
●空軍予算の拡大獲得等を通じてKendall空軍長官とも緊密な関係を築き、特殊作戦ヘリ操縦者ながら空軍作戦部長に2022年12月から就任(史上初)している行動派の副参謀総長候補Jim Slife中将とも良好で緊密な関係を構築しており、関係者は「Allvin参謀総長がアイディアを出し、Slife副参謀総長が実行を担う」形になるのでは・・と早くも予想している。ちなみに空軍人ツートップが共に非戦闘機パイロットなれば10年ぶりとなる

Allvin11.jpg●現在のBrown参謀総長・Allvin副参謀総長・Slife作戦部長体制は、維持費のかさむF-15やA-10の早期退役を加速し、F-35の調達機数も計画よりも削減し、先端無人機や指揮統制能力強化への投資を推進する案を練って推進し始めているが、「Allvin参謀総長とSlife副参謀総長」体制に加え、同じ方向の在韓米軍副司令官Scott Pleus中将を空軍司令部スタッフのまとめ役に配置する人事案も進めてモメンタムの維持を追求している
●Allvin大将の作戦運用面での経験不足を懸念する声もあるが、対中国の専門家でACE構想発案者である太平洋空軍司令官Kenneth Wilsbach大将を「戦闘機族のボス」と言われる空軍戦闘コマンド司令官にする「異例の人事案」も進められており、後任の太平洋空軍司令官にもペンタゴンとのパイプが太くかつ地域専門家の即戦力Schneider中将を推薦しており、大きな問題とはなっていない
////////////////////////////////////////////////

あくまで米空軍内での「皮算用」であり、オースチン国防長官やバイデン大統領が、上記記事のような人事案を認めるのか全く定かではありません。

まんぐーすの個人的感想を申し上げれば、今の時代だからこそ、改革推進派の「Allvin参謀総長とSlife副参謀総長」体制を実現してほしいですし、10年ぶりの非戦闘機パイロット2トップに大いに期待したいです

参謀総長候補のAllvin副参謀総長公式経歴
https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/108725/david-w-allvin/

関連する米空軍人事案
「Brown参謀総長は米軍人トップ候補」→https://holylandtokyo.com/2023/05/09/4618/
「ACCトップ候補が極めて異例」→https://holylandtokyo.com/2023/05/11/4614/
「太平洋空軍司令官候補は元在日米軍司令官」→https://holylandtokyo.com/2023/04/26/4567/

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DARPAが「動翼」の無い航空機X-65イメージ公開 [米国防省高官]

試験飛行を2025年開始予定
「動翼」なく「Active Flow Control」で機体制御
機体の軽量化・耐久性強化・ステルス性向上など狙い

X-65 2.jpg5月16日付TheDeBreifなど複数の米航空メディアが、同15日にDARPAが公開した、「動翼」の無い航空機開発計画「CRANE:Control of Revolutionary Aircraft with Novel Effecters」の試験開発機体X-65イメージ図を報じています

航空機の「動翼」とは、エルロン、エレベーター、およびラダーからなる操縦翼面(いわゆる舵面)で、3つはそれぞれ航空機の回転(ロール)、上下(ピッチ)、左右(ヨー)方向の動きを制御するものですが、「CRANE」計画ではこの動翼(traditional, exterior-moving flight controls)を、AFC技術(Active Flow Control)に置き換えようとしています

X-65.jpgそしてDARPAはこのAFC技術を用いて、機体周辺の空気の流れを制御して機体を動かす実験的な無人機(X-65:experimental uncrewed aircraft that maneuvers by controlling the air flow around it)を製造し、2025年からの試験飛行開始を「CRANE」計画で目指しています。

DARPAの「CRANE」計画は数年前から開始されていたらしいですが、本格的に表面化したのはDARPAが2023年1月に「Aurora Flight Sciences社」と契約し、Phase 1「基本コンセプト成熟」、Phase 2「飛行制御ソフト開発と制御技術開発」、Phase 3「機体重量7000ポンド(3トン強)のX-65試験飛行」の3段階で進めることを明らかにしてからで、その後わずか5か月でイメージ図が公表されたことで話題となっています

X-65 3.jpgこの「動翼」をAFC技術(Active Flow Control)に置き換えることのメリットは、部品の可動部分や接続部分を無くすことで、機械的複雑さを無くして信頼性向上や軽量化が図られ、関連部品の摩耗等による交換不要で維持整備負担が軽減され、更にステルス性向上にもつながる等とされているようです

またDARPAは実験機X-65に、「モジュラー構造の翼:modular wing configurations」を要求しており、今後民間機への応用も期待されるAFC技術(Active Flow Control)が官民挙げての研究で日進月歩で進化することも想定し、最新技術を開発途中でも容易に取り込める配慮もしています

Aurora Flight.jpgこのAFC技術が確立されると、航空機産業界への影響が少なくないと思われますので、折に触れ今後もフォローしていきたいと思いますし、以下の過去記事で「AI空中戦ソフト技術」や「小型無人機対処兵器」開発にも関わっているボーイング傘下の企業「Aurora Flight Sciences社」にも、引き続き注目したいと思います

Aurora Flight Sciences社案は以下のDARPA計画候補機にも
「大型水上離着陸機の候補」→https://holylandtokyo.com/2023/02/15/4268/

同社の名前が出てくる記事
「小型無人機対処装備を求めオプション試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「8企業がAI空中戦でF-16人間操縦者に挑む」→https://holylandtokyo.com/2020/08/19/528/

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AMRAAM最新型の大増産で謎の後継JATMは? [米空軍]

【追加情報】
AIM-120後継のAIM-260今年hopefully量産開始
5月2日の上院軍事委員会で空軍長官と空軍参謀総長が
最初はF-22に搭載し、無人ウイングマンCCAにも搭載
ただし(今年の?)生産目標数は掲げず・・・と
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新型AMRAAMのAIM-120D-3(輸出型はC-8)が今年部隊へ
2026年製造終了予定だったAIM-120が大増産&26年以降も
謎のAIM-120後継ミサイルAIM-260(JATM)は順調?

AIM-120 D-3.jpg4月18日、米空軍と海軍の戦闘機が搭載している空対空ミサイルAIM-120(AMRAAM)の最新D-3型を開発製造するレイセオン社が、米空軍による審査(Functional Configuration Audit)を無事通過し、2023年後半には米空軍や海軍部隊に提供を開始すると発表しました

「D-3」型は15の搭載回路カードが更新され、最新ソフトを搭載することで、GPS利用航法能力やデータリンク能力向上、ネットワーク能力や誘導装置能力も向上するということですが、「D-3」型の輸出版である「C-8」に対する審査も今年後半には完了し、現在42か国(14機種)に搭載されている空対空ミサイルの西側スタンダードであるAIM-120最新型が、対ロシアや対中国で世界の空を守るだろうと報道されています

AIM-120 D-3 2.jpgロシアのウクライナ侵略とウクライナへの兵器提供で弾薬庫が「空っぽ」になる危機に直面している米国やNATO諸国は、各種兵器の増産体制確保と調達予算確保に奔走し始めていますが、AIM-120も今後の生産は「D-3」と「C-8」型に絞られ増産体制強化と予算確保が進行中ですが、

2022年に317発、23年に271発であった調達数が、2024年度の米空軍予算案資料では、2024年度に457発、25年に462発、26年に664発と調達増を図り、後継ミサイルJATM(AIM-260)導入で26年にAIM-120製造中止計画だったものが、2027年にも118発、28年以降にも30発以上を調達して生産ラインを残すことになっています

AIM-120 D-3 3.jpgこのAIM-120の2026年以降の製造継続についてRichard G. Moore米空軍計画部長は、ウクライナでの教訓を理由とした増産だと説明しましたが、記者団からはすぐさま後継ミサイルJATM(AIM-260)導入の遅れがあるのかと質問が飛び、「現時点では遅れはない」とMoore中将が回答したようです

ただ更に同中将は、「JATMは現在前進中(is still progressing)のミサイルで、2024年度予算案のAIM-120関連経費にも、JATM(AIM-260)導入加速に資する事業が含まれている」とも発言しており、「2022年度中にIOC予定」だと2022年4月に空軍幹部が発言していたJATM(AIM-260)の極秘開発の進捗状況に疑念を呼ぶ結果となっています

AIM-260(JATM:Joint Advanced Tactical Missile)とは
AIM-260 JATM2.jpg●現在も超極秘プレジェクトながら、2019年夏に米空軍担当のGenatempo空軍准将(当時)によって明らかにされたAIM-120後継ミサイル
●同准将は当時、2021年度に発射試験を開始し、2022年度IOCを目指す計画を明らかにし、AIM-120より射程距離を延伸し、中国のPL-15空対空ミサイルとの空中戦でも対抗可能な能力獲得を目指すと語っていた。
●また2019年に米空軍は、JATM保管場所として、ユタ州のHill空軍基地に厳重なセキュリティーを確保できる「Special Access Program Facility」を設置すると明らかにしている

AIM-260 JATM.jpg●性能等は全く不明ながら、AIM-120射程が初期型(A/B型70㎞)、C型100㎞、D型150㎞程度のところ、AIM-260は200㎞越えで、飛翔速度も「120」のマッハ4からマッハ5に向上すると噂されている
●無人標的機QF-16使用の様々な試験が、Tyndall空軍基地を周辺で実施されているとの報道もあったが、写真が一枚も出回らない極秘開発案件である
////////////////////////////////////////////

まぁ必要ないとは言いませんが、台湾有事の際に、どの程度米軍の戦闘機クラスに搭載した空対空ミサイルに活躍の場があるのか、台湾有事をシミュレーションしたCSISやCNASのレポートを確認したいものです。

最もニーズが高いとされる対艦巡航ミサイルLRASM(空対艦ミサイル)の射程が1000㎞超ですからねぇ・・・

AMRAAM(AIM-120)後継のAIM-260開発関連
「超極秘開発の新型空対空ミサイルAIM-260 JATM」→https://holylandtokyo.com/2022/04/04/3088/

インパクト強烈なCSISレポート・台湾有事で日本も・・・
空母2隻・数10隻の艦艇と数百機の航空機喪失、台湾経済大打撃・米軍の影響力当面喪失危機
「台湾有事のWargame結果を異例公開」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/

弾薬不足警鐘レポート
「CSISも弾薬調達&提供問題レポート」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/4212/
「米軍は弾薬にもっと予算配分を」→https://holylandtokyo.com/2022/12/02/3990/

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CSIS:露のウへのミサイル攻撃を総括分析 [安全保障全般]

ロシアの失敗を将来の戦いで期待すべきではないし
ウクライナ経済の復興は極めて厳しいが
防空&ミサイル防衛システムと分散運用の効果確認

CSIS Williams.jpg5月11日付Defense-Newsが、CSISのミサイル防衛プロジェクト副責任者であるIan Williams研究員の寄稿を掲載し、ロシアによるウクライナ侵略当初からの巡航ミサイルや無人機による攻撃は、ロシア軍ミサイル部隊等の低パフォーマンスや、目標情報の入手分析や情報伝達能力の低さにより、ウクライナの指揮統制能力や防空能力を破砕するに至らないままミサイル等を消費し、低調になりつつあるとの指摘を紹介しています

この間、ロシアミサイル部隊や無人機攻撃部隊は、攻撃目標重点をウクライナ軍からウクライナのエネルギーインフラに移し電力供給網等に打撃を与えたが、春に現地を訪問して確認した限りでは最低限の電力網は維持されており、また西側の支援も得たウクライナ防空能力向上により、弾薬不足は影を落としているものの、2022年春のミサイル撃墜率10%程度から、同年年末には5割程度になり、最近では7-8割にまで向上していると同研究員は指摘しています

CSIS Williams2.jpg同研究員は、このロシア軍のミサイル攻撃作戦事例は、ロシア軍の自軍への過信やウクライナ軍能力過小評価が重なったケースであり、将来のミサイル防衛を考える上では注意を要するものの、ミサイル攻撃に不可欠な敵目標の継続的かつ迅速な把握、指揮統制系統維持の重要性、更に防御側の分散、機動、隠蔽、カモフラージュなどの基本的な自軍防御努力の重要性が改めて確認されていると主張しています

同研究員は5月5日に本件に関する約70ページのレポート「Putin’s Missile War」を発表しており、Defense-Newsへの寄港はその概要の概要ですが、細部の作戦状況に関する情報入手が難しい中で、公開情報や現地調査を踏まえ、将来の軍事作戦の中核になるミサイル攻撃や無人機攻撃についてアプローチを試みるもので貴重であり、概要の概要を更につまみ食いしてご紹介しておきます

5月11日付Defense-News記事によれば
Williams CSIS.jpg●2022年2月以来、ロシア軍は数千発のミサイルや片道無人機よるウクライナ攻撃を行っており、これによりウクライナ国民や社会インフラは大きな損害を受け、戦後のウクライナ経済回復は大変厳しく、海外からの大きな支援を持ってして長期間を要することになろう
●しかし軍事的にロシア軍は戦略目標を達したとは言えず、作戦の細部は依然不明部分が多いが、ロシア軍の作戦遂行能力の低さ(ミサイル部隊等の低能力や、目標情報の入手分析や情報伝達能力の低さ)とウクライナ軍の西側支援を活用した粘り強い戦いにより、ウクライナは指揮統制系統を維持し、ウクライナ国民の士気は大きな低下を見せていない。またウクライナの兵站能力も、低下はしているがロシアの狙いほどはダメージを受けていない

CSIS Williams3.jpg●このようなロシア軍の状況は、湾岸戦争やイラク戦争時の米主導多国籍軍による巡航ミサイルや精密誘導兵器を巧みに使用した作戦結果と対照的で、イラク国家指導層とイラク軍の指揮系統を絶ち、イラク防空能力を短期間で破砕して航空優勢を獲得した戦史とは対極の結果となっている
●現在のロシア軍は既にミサイル在庫が大幅に減少し、ウクライナへの攻撃数は減少しており、国内で新規に製造した少数のミサイル等で時折攻撃を再開する程度にまで攻撃は低下している。逆にウクライナは世界的な防空兵器弾薬枯渇に直面してはいるが、西側からの防空兵器提供を受け、ロシア側ミサイルの迎撃率を飛躍的に(前述のように)向上させている

Russia cruise3.jpg●言い換えればロシアは、自らがウクライナ侵略後にウクライナ内で確立したかったA2AD網構築に失敗し、逆に西側の支援を受けたウクライナ軍のA2AD網に阻止され、被害が拡大している状況にも見える
●ロシア側の失敗の原因は、侵略の目標目的達成に必要な作戦規模を低く見積もりすぎていたこと、ロシア軍の能力を過信していたこと、特にウクライナ軍の機動・分散による部隊配備の変化を迅速に捕え、攻撃サイクルに反映する仕組みの機能不全が際立った印象がある

Russia cruise5.jpg●ロシアによるウクライナ侵攻で観察された事象が、他の地域で今後再現されるとの前提を置くべきではないが、巡航ミサイル等による攻撃は非常に危険だが、完全に阻止不可能ではないことをウクライナは示したと言える。
●高性能の防空システムと指揮統制システムを訓練した兵士に運用させ、ローテクではあるが重要な装備の分散、機動展開による位置秘匿、装備品のカモフラージュによる隠蔽、おとりによる敵監視網情報網のかく乱などを組み合わせる事で、防空&ミサイル防衛システムを機能させ、被害を緩和することが可能なことを示したとは言える
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「戦った経験がない」中国軍とウクライナでのロシア軍を比較することは困難ですが、通所兵器での西側との対峙を事実上あきらめ、核戦力による抑止や対応に軸足を移しつつあったロシア軍と、台湾有事を例に考えれば、通常兵器でも十二分に米軍に対応可能なレベルの中国軍の現状での違いは明らかだと思います

Russia cruise4.jpgCSISのIan Williams研究員ご指摘のように、「高性能の防空システムと指揮統制システムを訓練した兵士に運用させ、ローテクではあるが重要な装備の分散、機動展開による位置秘匿、装備品のカモフラージュによる隠蔽、おとりによる敵監視網情報網のかく乱などを組み合わせる事」の重要性を再確認しておきましょう。

そして、日本の環境で有事に機能しそうもない戦闘機に過剰投資している日本の現状への警鐘と理解しておけば良いと思います

CSISのレポート「Putin’s Missile War」紹介ページ
https://www.csis.org/analysis/putins-missile-war

ウクライナでの戦いに学ぶ
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦に直面するウ」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/
「アジア太平洋への教訓は兵站」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「SpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/

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現時点では却下も豪州がB-21購入検討認める [安全保障全般]

B-21製造企業CEOは「may still be on the table」と
豪州公開のDefense Strategic ReviewでB-21に言及

Australia B-21.jpeg4月24日に豪州政府が発表した「Defense Strategic Review 2023」の中で、米空軍とNorthrop Grumman(以下NG社)が開発中の新型ステルス爆撃機B-21に関し、「豪州と米国でB-21の豪州導入に関し議論を行ったが、現下の情勢を踏まえ適当なオプションとは考えなかった」と明記し、同爆撃機導入検討が行われたことが明らかになりました

同27日に定期決算発表を行ったNG社CEOのKathy Warden氏は本件に関し、「B-21が(まだ初飛行も行っていない)開発段階にあり、同機開発契約を結んでいる米国以外の政府とB-21について議論することは時期尚早だと思うが、両国間で議論が行われ、継続していること(there were discussions—ongoing ones)が重要である」、「まだ議論の俎上にある(such a move may still be on the table.)」と言及しています

Warden CEO.jpg2021年9月15日に米英豪が協力枠組み「AUKUS」を創設し、柱として米英の原子力潜水艦技術を豪に提供して豪が8隻以上の原潜建造を目指すことや、AIやサイバーや量子技術でも連携する方針を明らかにしており、その後AUKUSを航空宇宙分野にも拡大する様子が報道される中、同CEOは27日に「2-3年前であればサプライズだっただろうが・・」とも発言し、どこまで両国協議に関与しているのか(いないのか)謎ですが、「匂う」発言をしています

NG社の剛腕女性CEOはまた同時に、現時点で豪州がB-21導入を追求しなかったとしても、同国は2月に大規模なFMS要求を米国に提出し、長射程対レーダーミサイルAARGM-ER (Advanced Anti-Radar Guided Missile, Extended Range)や、空中発射対艦攻撃巡航ミサイルLRASMと同対地攻撃版JASSM-ERを求めているとも発言もし、米豪間の強い関係を示唆しています

Australia B-21 2.jpgなお、24日の豪州「・・・Review 2023」発表に寄せ、オースチン米国防長官が声明を出し、B-21関連記述には直接言及しないながらも、「豪州が新技術の導入の先頭に立って関与を継続している点を高く評価したい」、「自由で開かれたIndo-Pacificの維持に、豪州がAUKUS やQuad参加を含め重要な役割を果たしていることの証左である」、

更に「2024年には豪が初めてNational Defense Strategyを発表する予定だ」と述べており、想像を勝手にたくましくすると、2024年の「・・Strategy」文書での進展を米国として期待しているのかもしれません。

B-21 B-2.jpgただ、豪州方面からの報道では、更に投資するならF-35導入機数を増やしたいとの豪州の意向が米国に伝えられたとの記事もあり、1機700億とか800億円で、周辺機材や格納施設等を含めると莫大な初期投資が必要なステルス爆撃機の導入はハードルが高いのかもしれません

4月24日発表の豪州Defense Strategic Reviewのwebサイト
https://www.defence.gov.au/about/reviews-inquiries/defence-strategic-review

2021年9月AUKUS創設発表時の関連記事
「AUKUS発表と米豪2+2」→https://holylandtokyo.com/2021/09/20/2255/

最近のB-21関連記事
「米軍事メディアの観察」→https://holylandtokyo.com/2022/12/14/4027/
「映像で紹介:B-21初披露式典」→https://holylandtokyo.com/2022/12/05/4015/
「10の視点でご紹介:NG社事前リリース」→https://holylandtokyo.com/2022/12/01/4004/

米海軍の艦艇潜水艦建造や修理能力がピンチ
「強度不足で米海軍の4ドック使用停止」→https://holylandtokyo.com/2023/02/03/4234/
「米空母と潜水艦修理の75%が遅延」→https://holylandtokyo.com/2020/08/27/534/
「空母故障で空母なしで出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-16
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24

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米空軍が兵士慰留に職種変更容易化へ [米空軍]

入れ墨、肥満、マリファナ検査緩和に続く募集難対策
空きポストが10%以上ある職域へ1任期終了時
対象職域3千ポストがリークされ「なるほど」感

Bass6.JPG4月28日、米空軍のJoAnne S. Bass最先任軍曹(女性)が、米空軍新人兵士が1任期終了時(最初の4年契約又は6年契約終了時点)に、定員の10%以上空きポストがある他職種への転職であれば、今年6月1日から早いもの順で許可すると発表しました。

これまで空軍新人兵士の職種転換は極めて限定的な場合にのみ認められてきましたが、コロナ対策緩和後の米国社会全体での雇用急増で過去50年間で最低レベルの失業率と、肥満・犯罪歴・麻薬等の理由から対象年齢人口の僅か23%しか米軍採用基準を満たさない現状、更に対象年齢人口の僅か10%未満しか米軍への入隊に関心がない魅力低下から、

recruiting crisis3.jpg今年の新兵募集が目標数を10%以上も下回る可能性が高い状況から、一旦入隊した兵士の離職を抑えるための策として導入が決定されました

新兵募集目標が10%以上未達成になるということは、一般的な空軍基地1個分相当の5000名以上の兵士不足が発生することになり、対テロ紛争対処から対中国や台湾有事の本格紛争対処への転換を迫られ、戦力の分散運用ACE(Agile Combat Employment)構想実現を目指す米空軍にとって、極めて頭の痛い問題です

recruiting crisis.jpgこのため2022年に米空軍と宇宙軍は、優秀で他のチェック事項に問題の無い入隊希望者に関し、マリファナ使用歴検査THC陽性でも、期間を開けての再検査を認める制度試行を発表し、2023年3月には首や手に入れ墨のある者を認める緩和策を打ち出し、4月にも入隊者の肥満度条件を緩和(勤務継続のための肥満条件は現状維持)するなど、「なりふり構わぬ」姿勢を見せているところです

ただし、6月1日から導入される「充足率90%以下の空きポストがある他職種への転職」を認めることでの「入隊者引き止め効果」は微妙な気がします。

recruiting crisis2.JPG米空軍はこの制度検討段階で、「どの職域の充足率が90%以下で、1任期終了者の転職対象になるか」に関するメディアからの問い合わせに回答を控えてきましたが、米空軍募集機関トップのEd Thomas少将の転職可能対象職域と約3000ポストの概要が記された関連mailが4月4日にリークされ、米空軍が内容を認めざるを得ない状況となりました

そして明らかになった転職先候補は、いかにも現代の若者に人気が無さそうな厳しい現場仕事で、航空機などの整備職域1800ポスト、警備職700、弾薬担当職300、燃料担当職100ポスト等となっており、この制度の「引き止め効果」について、まんぐーす的には「?」と言わざるを得ません

recruiting crisis4.JPG新兵の募集難は米空軍に限ったことではなく、米陸海海兵隊も苦悩し、軍隊への入隊希望者減少傾向は世界的な傾向です。もちろん中国も同様であり、一人っ子政策の中で何らかの理由で中国軍に入隊した者も、有事には親がコネを使って前線派遣を妨害するのでは・・・と冗談とは思えぬ懸念がささやかれるほどです。当然、少子化先進国である日本でも「今、そこにある危機」だと申し上げておきましょう

第22代国防長官ロバート・ゲーツ語録100選より
https://holylandtokyo.com/2022/03/26/2046/
「米軍と社会の遊離を懸念」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-10

米空軍のなりふり構わぬ募集対策
「新兵募集難に米空軍が体脂肪基準緩和へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/07/4494/

女性初の米空軍下士官トップJoAnne S. Bass最先任軍曹
「米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20

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次の空軍戦闘コマンド司令官に現PACAF司令官 [米空軍]

ペンタゴン勤務無き異例の空軍大将が戦闘機族のボスに
失礼ながらPACAF司令官を最後に退役と予想していました
なにせ前任者より年上の異例人事ですから・・・

Wilsbach9.jpg5月2日、現在の太平洋空軍司令官(PACAF司令官)であるKenneth S. Wilsbach大将が、次の米空軍戦闘コマンド(ACC)司令官に推挙されました。米空軍協会が4日に米空軍幹部に確認したということです。

なお空軍戦闘コマンド(ACC)は、全ての戦闘機や攻撃機を維持管理&訓練する米空軍最大のコマンドで、87000名の兵士と航空機1100機を配下にする大規模組織で、その司令官は米空軍内で「戦闘機パイロット族のボス」と認識されています

Wilsbach8.jpgWilsbach大将が現在勤める太平洋空軍司令官ポストには、4月24日に空軍司令部スタッフ長を務める前在日米軍司令官のSchneider中将が大将昇任と共に推挙されたところでしたが、Wilsbach司令官の今後については特段の発表がなく、まもなく61歳との年齢から、まんぐーすはてっきり「勇退」されるものと考えておりました(お詫び申し上げます)

お詫びついでに、まんぐーすはWilsbach司令官がPACAF司令官に推挙された2020年5月にも、58歳との当時の年齢と、ペンタゴン勤務が一度もなく、ハワイ韓国嘉手納アラスカと中東に偏った経歴(米本土勤務はフロリダのエグリン基地のみ)から、PACAF司令官がおそらく最後のポストだろうとの、失礼な紹介記事を書いたことについても、併せてここに謝罪させていただきます

Kelly AFA.JPG言い訳させていただくと、現在の米空軍戦闘コマンド(ACC)司令官Mark D. Kelly大将は現在60歳で、後任候補Wilsbach大将が年上の61歳となる極めて異例の人事だということです。現在のACC司令官Kelly大将がACC司令官就任時の年齢が57歳で、夏に交代するとすると60歳で退任となり、後継者のWilsbach大将が61歳で就任するという年齢逆転の異常さです

このような異例の人事案となった背景には、以下で詳しく経歴をご紹介するように、Wilsbach大将がアジア太平洋戦域勤務に偏る地域専門家であり、対中国有事への備えを最優先事項とする米空軍にとって「余人をもって代えがたい」人材であることや、米空軍全体で対中国作戦用に取り組むACE(Agile Combat Employment)構想の発案者がWilsbach大将で、その推進普及をPACAF司令官として2020年7月から最前線で推進してきた功績があるものと推測します

Wilsbach7.jpgWilsbach大将は飛行時間5000時間越え(将官としては異常に多い)のF-15C, F-16, F-22戦闘機パイロットで、対イラクや対アフガン(対アルカイダ)作戦である「Northern Watch」「Southern Watch」「Enduring Freedom」作戦で71回もの実戦出撃がある珍しい空軍高級幹部です。また2020年7月から務める太平洋空軍司令官として、第5世代機F-22を初めてフィリピンとテニアン島に展開させたことで知られています

以下では、同中将の経歴がアジア太平洋地域に集中する様子を、勤務地毎、階級毎にご紹介いたします

●1985年、フロリダ大学で土木工学を学び、ROTCコース学生として卒業、米空軍で戦闘機パイロットコースに進む

●嘉手納基地勤務
—大尉から少佐にかけ3年間、F-15C飛行隊の作戦運用幹部
—准将として、嘉手納基地司令官&第18航空団司令官
●ハワイでは
—少佐として、太平洋軍司令官の副官
—大佐として、太平洋空軍副作戦部長
—准将として、太平洋軍副作戦部長
ー大将として、太平洋空軍司令官(兼ねて太平洋軍JFACC~現在まで)

●アラスカでは
—少佐として、F-16飛行隊作戦担当幹部
—中佐として、F-16飛行隊長
—中将として、アラスカ地域司令官&第11空軍司令官(エレメンドルフ基地)
●韓国では
—2018年8月から中将として、第7空軍司令官&Osan基地司令官&在韓米軍副司令官

●中東では
—中佐として、中東航空作戦センター司令官
—少将として、米中央軍作戦部長や第9空軍司令官

●米海軍では
—少佐として、米海軍指揮幕僚大学卒業
●米本土では
—大佐として、フロリダ州エグリン基地の飛行群司令官
—大佐として、同基地司令官&第56航空団司令
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Kenneth Wilsbach大将の公式経歴表
https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/108478/kenneth-s-wilsbach/ 

Wilsbach12.jpg繰り返しになりますが、ペンタゴン勤務経験がありません。米空軍司令部や統合参謀本部や国防省での勤務経験がない、つまりワシントンDCの「政治力学」を現地で肌で感じることなく「大将」になった極めて特異な人物です。ウクライナで戦いが続く欧州にも全く関与していませんし・・・

学生としてのDC滞在はあります。中佐後半に「Industrial College of the Armed Forces」を、准将として太平洋空軍副作戦部長勤務間に「CAPSTONE Executive Development Course」を、それぞれ履修していますが・・・

ペンタゴン勤務が無いアジア太平洋の専門家Wilsbach大将
「ACE構想の生みの親が語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「今すぐE-7ほしい発言」→https://holylandtokyo.com/2021/03/01/150/
「F-35はF-35らしく:F-22の失敗に学べ」→https://holylandtokyo.com/2020/11/05/379/
「Wilsbach太平洋空軍司令官の紹介」→https://holylandtokyo.com/2020/05/18/674/

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次期制空機NGADは欧州型とアジア太平洋型に [米空軍]

航続距離短い欧州型、長いアジア太平洋型
また戦闘機と爆撃機数比率(15:1)を見直すべきだが
当面は爆撃機数増が困難で難しい・・・

Kendall SASC5.jpg5月2日、Kendall空軍長官とBrown米空軍参謀総長が上院軍事委員会で証言し、議員の質問に対応する中で、現在15:1の比率で保有する戦闘機と爆撃機の機数比率について、近未来には爆撃機の製造能力等から難しいが、将来的には作戦行動半径の短い戦闘機を減らし、活動範囲の広い爆撃機を増やす方向で、機数バランス見直し議論があるだろうと述べました

ただKendall長官は極めて慎重な言い回しに終始し、B-21が初飛行前の開発段階であること、コストが現在の物価水準で1機1000億円強になっていること、毎年10-12期程度の生産で100機程度との調達機数が機種選定の前提であること等を暗に踏まえ(←左記3点の理由付けはまんぐーすの邪推です)、

Kendall SASC4.jpg自身が判断する事項ではない・・・的な他人事のような表現で語っており、想像をたくましくするまでもなく「俺はそう思うけど、そんなこと言いだしたら戦闘機命族が大騒ぎして米空軍内の収拾がつかなくなるから、俺は言い出せない・・・」との臭いがプンプンしています

空軍長官はB-21増強派と思われる共和党Joni Ernst上院議員の質問に応え、「私は(現在Scientific Advisory Boardに検討を依頼している)将来の米空軍がどのような体制であるべきか確信を持って語れないが、一つ考えるべき点は、航続距離の短い戦闘機と長い爆撃機の保有機数バランスだと考えている」と慎重に自説を語り始めるも・・・、

Kendall SASC6.jpg「米空軍は将来いつかのタイミングで、現在15:1である戦闘機と爆撃機の保有機数バランスを調整する議論を開始するであろうが、現時点ではその保有比率を変更するオプションがほとんどなく、爆撃機数を維持するのに精一杯な状態である」、「B-52はその頑丈な機体を活用し、エンジンやレーダー等々の換装を行い、多様な兵器を搭載可能なアセットとして長く使用する予定だが、B-2は維持するのが難しくなっている」と現状を説明しています

そしてB-21について、「現状では100機調達予定だが、最終的に何機導入するかは分からない。100機より多くなろうが、そうなっても私は驚かない」、「ただし、現在は試験開発用のラインで5-6機が製造中で、量産に入っても同生産ラインを使用して控えめなレートで製造することになろう」、「急激な増産を行うなら、様々な設備など再検討が必要になり、近未来にその予定はない(not a near-term decision)」と現段階での増産の可能性を否定しています

NGAD9.jpgなお、2日の上院軍事委員会証言を取り上げた2日付米空軍協会web記事は最後に、戦闘機と爆撃機比率議論の歯切れの悪さを補足説明するかのように短く、「米空軍のリーダーたちは次期制空機体系(NGAD family of systems)に関し、NGADは2つのタイプの機体、つまり欧州戦域用には航続距離の短いタイプ、そしてアジア太平洋戦域用には航続距離の長いタイプを準備することになろうと証言した」と報じており、

剛腕で知られるKendall空軍長官も議論を避けたくなるほど、戦闘機命族がその一派の生き残りのため、軍事的合理性を排除して将来戦闘機の機数確保に暗躍する様子の一端を紹介しています。アジア太平洋にはステルス爆撃機B-21増産が必要じゃないかと、Kendall長官は言いたいんでしょうが・・・

NGAD関連の記事
「NGADは1機が数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/
「NGADの無人随伴機開発は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-20
「無人機の群れ前線投入が課題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/28/3474/

無人ウイングマンCCA関連
「CCAを2020年代後半導入へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「空軍長官:NGADが200機、CCAは1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
「研究機関がCCAに関する提言」→https://holylandtokyo.com/2022/12/15/4056/

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