空軍長官が7つの優先事項を語る [米空軍]
新たにB-21爆撃機の無人随伴機を2機種開発
戦闘機の無人ウイングマン構想を精査示唆
宇宙アセットによる移動目標の探知識別追尾など
12月9日、Frank Kendall空軍長官がDefense Oneのイベントで講演し、米空軍省として重視する7つの優先事項を示し、2023年度予算から新たに2種のB-21随伴用無人機の新規開発に着手すること、無人ウイングマン構想の精査示唆、宇宙アセットによる地上移動目標識別追尾など、これまでの新開発事業や方向性変更を匂わす発言をしています
また、B-21の初飛行が2022年であることや、NGAD開発も進捗していることにも触れましたが、中露への情報漏洩を警戒し、B-21随伴用無人機の新規開発とあわせ、今後の情報公開が限定的になるとも語っています
本当に断片的な「匂わせ」発言ですが、今後の米空軍の様々な動きを読み解く「道しるべ」となる発言ですので、ご紹介しておきます
1.宇宙能力の強化
●全ての宇宙アセット能力を一体化して情報コミュニティーとつなぎ、JADC2(統合指揮統制)への融合を図る
●宇宙開発庁をまもなく空軍省に組み込むほか、商用技術への投資も進めて能力強化を図り、同時に強靭性を追求する
2.空軍基地の強靭化
●戦術航空アセットが展開時に依存する前線基地は、中露の攻撃力強化により脆弱性が増している
●米空軍は、施設強化、欺まん、分散のほか、ACE(Agile Combat Employment)構想などを推進し、この弱点を克服する
3.ABMS(先進戦闘指揮統制システム)の構築推進
●これまでにも増して、投資の有効性に着意してABMS構築を推進する必要がある。実際の作戦運用場面で効果が得られる点を重視し、関係性が明確になるようにすべきである
4.移動目標の探知識別能力強化
●多数の目標に多数の戦力で対処する将来作戦環境では、目標の識別と個別把握が不可欠であり、より遠方から出来ることが望ましい。ABMSやJADC2を支えるには宇宙アセットと航空アセットの強固な組み合わせが求められる
●E-3早期警戒管制機の後継候補の一つであるE-7などは、宇宙アセットが利用可能になるまでのギャップを埋めるが、空中アセットはE-3やJ-8をはじめ敵攻撃に脆弱で、長期的には使用が難しくなる。最近の敵能力分析では、敵は我のこれら能力への攻撃を重視していることが明らかになっている
5.軍需産業基盤を含めた兵站強化
●サプライチェーンや軍需産業基盤の脆弱性を見極める取り組みを行っている。
●兵站システム、人的戦力育成管理システム、輸送システムなどを詳細に分析し、どの部分に弱さがあるのか、どの部分に許容できない弱点があるのかを見極め、対処していく
6.無人戦闘機ウイングマン
●今あるコンセプトは、5機以下程度の無人ウイングマン機を、1機の5世代機やNGADとチームとして運用し、有人機操縦者が無人随伴機を操るイメージである
●このイメージは多くのチャンスや機会を我々に与えてくれるが、我々は今後どう進めていくのかしっかり見極める必要がある
7.B-21次期爆撃機に随伴する無人機開発
●B-21次期爆撃機は非常に高価なアセットであり、その能力を航続距離や兵器搭載面で「増幅」して投入したいと考えており、呼び名が適切か吟味する必要があるが、エスコートや随伴無人機と言ったイメージのアセットに委ねたい
●それら無人機はB-21操縦者に管制され、強固な敵と対峙するイメージだが、今研究されている「Skyborg」よりも、新たな調達計画によるアセットを考えており、2023年度予算に2つの新型機予算を組み込んでいる
●我々は新規開発に当たり従来の取り組みに縛られず、大きな変更を行う。ただこの際、リスク低減策を学び、成熟技術利用やプロトタイプ利用や各種デジタル設計技術を最大限活用して取り組み、必要なものを見極めて前進したい
●2つの新型機開発は非公開の秘密プロジェクトとなるため、皆さんに多くを公開することができないだろう。秘密保持のためご理解いただきたい
●これら新規開発に当たっては種々の分析が必要であり、空軍と宇宙軍の両方を支えるため、分析部署のトップをA9から格上げして取り組む
●B-21爆撃機は2022年に初飛行するだろうが、これについても多くを公開できないだろう
●NGAD開発は順調に進捗しており、技術実証段階を超えて進んでいる。NGADは次世代の制空機だが、航空アセットシステムの一部として、第4世代機などとも併存して能力を発揮するよう考えられている
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宇宙能力の強化、基地強靭性のアップ、ABMSのより効率的な推進、軍需産業基盤を含めた兵站強化は、従来から取り組んできた事項の仕切り直しとの印象を持ちましたが、
無人ウイングマン機の開発コンセプト見直しを示唆したり、B-21爆撃機の無人随伴機の新規開発を「that’s a major change」と表現したり、「移動目標の発見・識別・追尾」に宇宙センサーの導入を明らかにしたりと、何やらKendall長官の「剛腕」が発揮されそうな予感が感じられます
今回の発言だけではよくわかりませんが、今後の関連情報を見る参考にいたしましょう
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「B-21を5機製造中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-22
「中国が核兵器FOBS開発の可能性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-21
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「上院で所信を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-26-1
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戦闘機の無人ウイングマン構想を精査示唆
宇宙アセットによる移動目標の探知識別追尾など
12月9日、Frank Kendall空軍長官がDefense Oneのイベントで講演し、米空軍省として重視する7つの優先事項を示し、2023年度予算から新たに2種のB-21随伴用無人機の新規開発に着手すること、無人ウイングマン構想の精査示唆、宇宙アセットによる地上移動目標識別追尾など、これまでの新開発事業や方向性変更を匂わす発言をしています
また、B-21の初飛行が2022年であることや、NGAD開発も進捗していることにも触れましたが、中露への情報漏洩を警戒し、B-21随伴用無人機の新規開発とあわせ、今後の情報公開が限定的になるとも語っています
本当に断片的な「匂わせ」発言ですが、今後の米空軍の様々な動きを読み解く「道しるべ」となる発言ですので、ご紹介しておきます
1.宇宙能力の強化
●全ての宇宙アセット能力を一体化して情報コミュニティーとつなぎ、JADC2(統合指揮統制)への融合を図る
●宇宙開発庁をまもなく空軍省に組み込むほか、商用技術への投資も進めて能力強化を図り、同時に強靭性を追求する
2.空軍基地の強靭化
●戦術航空アセットが展開時に依存する前線基地は、中露の攻撃力強化により脆弱性が増している
●米空軍は、施設強化、欺まん、分散のほか、ACE(Agile Combat Employment)構想などを推進し、この弱点を克服する
3.ABMS(先進戦闘指揮統制システム)の構築推進
●これまでにも増して、投資の有効性に着意してABMS構築を推進する必要がある。実際の作戦運用場面で効果が得られる点を重視し、関係性が明確になるようにすべきである
4.移動目標の探知識別能力強化
●多数の目標に多数の戦力で対処する将来作戦環境では、目標の識別と個別把握が不可欠であり、より遠方から出来ることが望ましい。ABMSやJADC2を支えるには宇宙アセットと航空アセットの強固な組み合わせが求められる
●E-3早期警戒管制機の後継候補の一つであるE-7などは、宇宙アセットが利用可能になるまでのギャップを埋めるが、空中アセットはE-3やJ-8をはじめ敵攻撃に脆弱で、長期的には使用が難しくなる。最近の敵能力分析では、敵は我のこれら能力への攻撃を重視していることが明らかになっている
5.軍需産業基盤を含めた兵站強化
●サプライチェーンや軍需産業基盤の脆弱性を見極める取り組みを行っている。
●兵站システム、人的戦力育成管理システム、輸送システムなどを詳細に分析し、どの部分に弱さがあるのか、どの部分に許容できない弱点があるのかを見極め、対処していく
6.無人戦闘機ウイングマン
●今あるコンセプトは、5機以下程度の無人ウイングマン機を、1機の5世代機やNGADとチームとして運用し、有人機操縦者が無人随伴機を操るイメージである
●このイメージは多くのチャンスや機会を我々に与えてくれるが、我々は今後どう進めていくのかしっかり見極める必要がある
7.B-21次期爆撃機に随伴する無人機開発
●B-21次期爆撃機は非常に高価なアセットであり、その能力を航続距離や兵器搭載面で「増幅」して投入したいと考えており、呼び名が適切か吟味する必要があるが、エスコートや随伴無人機と言ったイメージのアセットに委ねたい
●それら無人機はB-21操縦者に管制され、強固な敵と対峙するイメージだが、今研究されている「Skyborg」よりも、新たな調達計画によるアセットを考えており、2023年度予算に2つの新型機予算を組み込んでいる
●我々は新規開発に当たり従来の取り組みに縛られず、大きな変更を行う。ただこの際、リスク低減策を学び、成熟技術利用やプロトタイプ利用や各種デジタル設計技術を最大限活用して取り組み、必要なものを見極めて前進したい
●2つの新型機開発は非公開の秘密プロジェクトとなるため、皆さんに多くを公開することができないだろう。秘密保持のためご理解いただきたい
●これら新規開発に当たっては種々の分析が必要であり、空軍と宇宙軍の両方を支えるため、分析部署のトップをA9から格上げして取り組む
●B-21爆撃機は2022年に初飛行するだろうが、これについても多くを公開できないだろう
●NGAD開発は順調に進捗しており、技術実証段階を超えて進んでいる。NGADは次世代の制空機だが、航空アセットシステムの一部として、第4世代機などとも併存して能力を発揮するよう考えられている
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宇宙能力の強化、基地強靭性のアップ、ABMSのより効率的な推進、軍需産業基盤を含めた兵站強化は、従来から取り組んできた事項の仕切り直しとの印象を持ちましたが、
無人ウイングマン機の開発コンセプト見直しを示唆したり、B-21爆撃機の無人随伴機の新規開発を「that’s a major change」と表現したり、「移動目標の発見・識別・追尾」に宇宙センサーの導入を明らかにしたりと、何やらKendall長官の「剛腕」が発揮されそうな予感が感じられます
今回の発言だけではよくわかりませんが、今後の関連情報を見る参考にいたしましょう
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