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米宇宙軍が兵士の活動サイクルを刷新 [サイバーと宇宙]

創設期の「常に全力」から「リズムと本格紛争準備」重視へ
24週間(5か月)で3つのフェーズをローテーション
休養&基礎訓練→本格紛争訓練&演習→実任務
上記3フェーズを3週間→6週間→15週間で

SPAFORGEN.jfif7月1日米宇宙軍は、2019年12月創設以来の「常に全力で取り組む:all-in, all-the-time」との戦力維持生成モデル(SPAFORGEN:Space Force Generation Model)を改め、「準備、即応、投入:prepare, ready, and commit」の3フェーズのローテーション方式を全部隊でタイミングをそろえる形で導入し、戦力を各地域担当コマンド等に派遣すると発表しました

Space part-time2.jpg米宇宙軍の発表や各種報道を総合すると、「その心」は、宇宙軍草創期には全てのリソースが不足する中で任務を遂行する必要があり、とりあえず全力で目の前の仕事に取り組んできたが、「日々の恒常業務に追われ、本格紛争に備えた高度な訓練や演習が不十分」で、かつ「オン・オフのメリハリがない」状態となっており、この現状を一掃するために宇宙軍独自の戦力維持生成モデル(SPAFORGEN)やサイクル導入を決定したということです

SPAFORGEN2.jfif米空軍も最近、対テロ作戦で疲弊し、本格紛争への備えが懸念される部隊状態を問題視し、AFORGEN(Air Force Generation Model)を改め、4フェーズを各4か月間(16か月で1ローテーション)に設定し、「メリハリと本格紛争への備え」を重視する方針を打ち出していますが、

米宇宙軍部隊は、基本的に大規模な装備輸送を伴う機動展開は行わず、「母基地での業務」や「人員と軽易な装備での展開」が主流なため、1ローテーション期間を5か月間と短く設定し、その中で3フェーズ(準備、即応、投入:prepare, ready, and commit)を以下の要領で回すとのことです

●3フェーズはそれぞれ期間が異なる
・Prepare準備(3週間21日) →休養と一般基礎教育や基礎訓練
・Ready 即応(6週間42日)→本格訓練や演習、任務準備態勢の評価
・Commit 投入(15週間105日)→実任務対応

●8つのチームがあると仮定すると、5チームが「Commit 投入」で、3チームが「Prepare準備又はReady 即応」状態となる

SPAFORGEN3.jfif宇宙軍現場の実態として、実任務対応に従事する「Commit 投入」間は、「地道な恒常業務の繰り返しであることが多く、中露を相手と想定した本格的紛争を想定した能力向上にはつながりにくい」状態にあることから、明確に「Ready 即応」期間を設定することで、各部隊やチームや兵士個々の能力向上を確実に進めたいとの強い思いが宇宙軍首脳陣にあるようです

また、このようなサイクルを宇宙軍内の一部部隊は採用していたようですが、その期間などがバラバラで、各地域担当コマンドや機能コマンドに戦力を派遣した際に、現場の運用がうまくいかなかった反省も背景にあるようです。

SPAFORGEN4.jfifただ、「言うは易し、行うは難し」で、米宇宙軍部隊を構成する様々な部隊(情報収集&分析、サイバー、宇宙システム運用、システム維持、各種装備導入などなど)の現状や任務要求はまちまちで、米宇宙軍トップ(Chief of Space Operations)のSaltzman大将も本変革を「宇宙軍の設立以降で最も劇的な変化となる」と述べ、同時に「背景にある問題点を解決し、改革に必要な資源を確保してローテーションをうまく回転させるまでには時間がかかるだろう」と率直に述べているところです
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2019年12月の米宇宙軍創設から現在までの「戦力維持生成モデル(SPAFORGEN)」と比較してご紹介できれば良いのですが、気力体力の限界で中途半端な説明で終わっています。申し訳ありません

まんぐーすは米宇宙軍の方とお会いしたことやお話したことが無いのですが、どんな雰囲気の部隊なんでしょうか・・・。気になるところです

米宇宙軍の人に関する記事
「パートタイム勤務導入へ」→https://holylandtokyo.com/2024/01/30/5479/
「攻撃部隊を語る」→https://holylandtokyo.com/2024/01/17/5424/
「衛星衝突防止を担う18SDS」→https://holylandtokyo.com/2023/12/07/5292/
「電子戦EW演習拡大」→https://holylandtokyo.com/2023/11/02/5124/
「同盟強化」→https://holylandtokyo.com/2023/10/04/5103/
「Targeting 部隊」→https://holylandtokyo.com/2023/08/23/4970/
「空自との本格協議開始」→https://holylandtokyo.com/2023/07/26/4884/

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英空軍中将が米宇宙軍トップの補佐役に [サイバーと宇宙]

英軍の初代 Space Command 司令官だった人物
既にカタール米軍 CAOC部長や米F-16部隊経験あり
英空軍への Tyhoon やF-35B 導入責任者経験あり

Godfrey3.jpg7月15日付米空軍協会 web記事が、米宇宙軍トップSalzman大将が、将来構想およびパートナーシップ担当補佐役(新設ポスト:正確には Assistant Chief of Space Operations for Future Concepts and Partnerships)として、初代英軍Space Command 司令官を直前まで3年間務めたPaul Godirey 英空軍中将(推定57歳)を任命したと報じています

同記事は、Godfrey 英空軍中将が、現役の英空軍人としての地位・階級を維持したまま米宇宙軍の上記ポストに就任し、約1か月が経過したような書きぶりとなっており、前例として太平洋空軍副司令官として2023年1月から勤務している Carl Newman 豪州空軍少将(同じ副司令官には LauraL. Lenderman 米空軍中将もダブル配置されている)の存在も紹介し、珍しくないと説明していますが、「中将」との階級で外国軍士官を米軍ポストに迎えるのは初めてだとも解説しています

Godfrey.JPG米宇宙軍で Salzman 大将の直属補佐官のような役割を担うGodfrey 中将は、「同盟国やパートナーを米宇宙軍の能力開発戦略に統合することが期待されている」、「インド太平洋、アフリ力、欧州地域全体の同盟国と連携しながら、世界的にパートナーシップを育むことを目的としている」と報道官は説明し、記事は取材から「国際的な連携を通じて米国の宇宙優位性と強靭性確保成に関わるあらゆる問題について宇宙軍トップに助言する任務を負っている」と解説しています

冒頭でご紹介したように、Godfrey中将は、1991年に英空軍士官に任官した後、英空軍戦闘機パイロットの道に進んでハリアー教官やTyhoon&F-35B 戦闘機導入の中核を務め、米軍との接点としては、米国の Shaw 基地で米空軍F-16 飛行隊交換将校経験や、将官として2020年にカタールの CAOC (Combined Air and Space Operations Center)で多国籍軍航空戦力の作戦運用部長を務めた実績も持つ、米軍運用にも精通した実力者です

Godfrey2.jpgSalizman 大将は「米宙軍の成否は、同盟国等とのパートナーシップの強さで決まる」、「我々の人材、政策、プロセスは、同盟国等と意図的に融合されなければならない」と Godfrey 中将を迎える声明で述べ、同中将は「協力関係強化で信頼関係を築き、情報を共有し、作戦を真に統合して強靭性を最大化することにより、敵の攻撃から防御できる体制に構築に協力したい」、「同盟関係を深め、宇宙の安全保障を推進するため、米国の仲間と仕事できることは名誉なことだ」と語っています
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Godfrey4.jpg米国と英国や豪州との関係は、WW1やWW2、最近では中東やアフガンで生死を共にして戦った「血の同盟」ですから、言葉の面も含め、これだけの高い階級でポストを提供しても、違和感がないのかもしれません

もう少し具体的な役割や活躍ぶりの過去事例などをご紹介できれば良いのですが、そこまでの知見がありませんので、とりあえず「米軍史上で最も階級の高い外国軍将官の採用」が「米宇宙軍」で行われたことをご紹介しておきます

米宇宙軍の同盟強化や人材確保
「念願の正規兵Part-Time勤務導入」→https://holylandtokyo.com/2024/01/30/5479/
「AUKUSで宇宙監視レーダー」→https://holylandtokyo.com/2023/12/11/5338/
「同盟関係の強化努力」→https://holylandtokyo.com/2023/10/11/5103/
「Space Flagに同盟3か国」 →https://holylandtokyo.com/2022/11/30/3961/

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論考:国防組織の課題@「商業宇宙戦争」時代 [サイバーと宇宙]

6月25日付 NIDSコメンタリーに掲載
実務的な課題に焦点を当てた論考
広義には他にも色々ありそうな気がするが

com space war5.jfif6月25日付 防衛研究所NIDSコメンタリーが、福島康仁主任研究官による『「商業宇宙戦争」の時代における防衛組織の課題』との簡明な論考を掲載し、ロシア・ウクライナ戦争を通じ急速に注目を浴びる商用宇宙サービスの軍事利用に関する(日本に限らず世界の)国防(防衛)組織としての課題を2つの視点から示し、その課題への対応として(世界の国防組織が)「少なくとも」取り組むべき事項を2つの側面から紹介していますので、ご紹介いたします

米軍が各種宇宙システムを情報面で広く活用したことから、1991年の湾岸戦争が「初の宇宙戦争」と呼ばれることを受け、「商業宇宙能力が実際に重要な役割を果たしている最初の戦争」として2022年2月からのロシア・ウクライナ戦争を「初の商業宇宙戦争(commercial space war)」とその筋では呼ぶようですが、

com space war4.jfif本論考で「国防組織(防衛組織)としての課題」や「国防(防衛)組織として少なくとも取り組むべき事項」と議論の範囲を限定しているように、「宇宙」や「民間企業の軍事作戦協力」との、日本ではいまだに極めてデリーケートであろう話題を考えるにあたり、議論の焦点を明確に絞っていることがポイントであり、「商業宇宙戦争」との言葉にぼんやりと興味を持って読まれた方には、少し肩透かし感があるかもしれません。

でも限られた紙面の中で、広義の「課題」を議論して発散するより、実務面で必要な視点に絞って「商業宇宙戦争」を見ることは大切なことだと思いますので、推定約40歳の福島康仁さんの論考をご紹介いたします

露・ウ戦争が初の「商業宇宙戦争」になった背景
com space war.jpg●2010年代後半から商業地球観測衛星数が急速に増加し、高分解能光学画像から高頻度光学画像、合成開口レーダ画像に至るまで多様な画像を入手できる環境が整った。
●例えば、米国のプラネット社(2010年創業)運用の約200機の小型光学地球観測衛星群や、フィンランドのアイサイ社(2012年創業)運用の型合成開口レーダ衛星群。また、今や「ウ軍」の指揮統制に不可欠な米スペースX社(2002年創業)の高速衛星通信サービス「スターリンク」は、試験的サービスが最初に米加で始まったのは2020年後半

「商業宇宙戦争」時代の国防(防衛)組織の課題2つ
●企業のイノベーションを如何に効果的に活用するか
→宇宙関連技術革新が国家から企業に移行する傾向が顕著な中、民間の技術革新を官の国防組織がどれだけ迅速に取り込めるかが軍事優劣に大きな影
com space war2.jfif→例えば米国は、米宇宙軍は宇宙開発局が「fast follower」を標榜し、2年毎の新しい衛星群打ち上げに着手し、衛星の軌道離脱などに商業サービス活用も検討。また軍内商業宇宙室が有事に商業サービスを迅速&&安定的に利用可能な契約枠組み(Commercial Augmentation Space Reserve)の創設準備も

→更に、2024年4月発表の米国防省「商業宇宙統合戦略」(CSIS)は省全体の意識改革を促し、商業宇宙サービス全体を補助的でなく、不可欠なものとする決意が示され、同時に初発表の米宇宙軍「商業宇宙戦略」(CSS)でも、同盟国に加え企業サービスを統合した能力構築推進を掲げている
→先進的商業サービスへのアクセスレベルは国により様々も、米国とその同盟国は、同盟国や友好国サービスが利用可能な場合が多い。それ以外の国家で注目は、2010年代後半から中国民間企業が宇宙サービスを急拡大している点で、露ウ戦争に関与していた民間軍事会社ワグネルが、中国の新興宇宙企業から光学及びレーダー衛星画像を購入&利用していたとされる

●商用システムへの妨害に如何に備え対応するか
com space war3.jfif→商業システムへの依存度が増すに従い、敵にとって防衛組織が利用する商業宇宙システムは、より重要な攻撃目標になる
→例えばイラクでは2004-5年から米軍使用の商用衛星通信への妨害が確認され始め、2020年以降も妨害源特定作戦が継続されており、妨害が当該区域で常態化している模様。露ウ戦争でも、米ヴァイアサット社の静止衛星通信網へのサイバー攻撃や、スペースX社のスターリンクもサイバー攻撃や電波妨害を受けている模様で、商業システムへの妨害は前提として想定しておくべきものとなっている

防衛組織に「少なくとも」必要な取り組み2つ
●官民の多様なシステムを継ぎ目なく使用可能に
com space war7.jfif→防衛組織が宇宙システムを自ら構築することに増して、商用サービスをどれだけ効果的に利用可能がカギになる
→例えば、ビックデータである衛星画像データを迅速に処理する人工知能使用ソフト(既にウ軍使用)や、官民の衛星間で大容量データを迅速に共有可能な光通信網、官民様々な複数宇宙システムに対応可能な利用者端末の導入などがこれに該当する
→防衛省もこうした観点から、専用通信衛星と商業通信衛星などに対応したマルチバンド受信機の整備を始めている

●妨害対処の課題への官民連携と国際連携
com space war6.jfif→日本では2022年12月の「国家安全保障戦略」で、宇宙安全保障関連取り組みの1つとして「不測の事態における政府の意思決定に関する体制」構築が明記され、官民情報共有の枠組みとして2023年に設置された「宇宙システム安定性強化に関する官民協議会」が鍵となる役割を果たすことを期待されている。
→この際の留意点として、当該国の防衛組織が利用する商用サービス提供元が「自国企業とは限らない」点があり、外国企業との間でも妨害を前提とした情報共有や対応を検討しておく必要がある
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冒頭で失礼にも、「商業宇宙戦争」との言葉にぼんやりと興味を持って読まれた方には、少し肩透かし感があるかも・・・と書いてしまいましたが、実態として日本があまりにも遅れているため、とりあえず進むべき方向を論考として大まかに示すしかない状態なことも、なんとなく伝わってきました

SPACE INDUSTRIAL B.jpgもちろん米宇宙軍においても、「商用サービスをもっと迅速に活用できるように枠組みの変革を!」との強い現場の声が、素早く政策に反映されているわけではなく、米議会などから「本当に民間企業を有事に頼って良いのか?」「企業所属の民間人が軍事作戦における重要判断に関与することにならないか? なって良いのか?」等々の根本的な疑問の声も上がっており、「商業宇宙戦争」の広義の「課題」はとてつもなく大きなものだと再認識しておく必要もありましょう

宇宙分野での企業との連携
「国際&企業協力強化に規格設定を」→https://holylandtokyo.com/2024/05/13/5833/
「国防省有志が迅速民間活用要求」→https://holylandtokyo.com/2022/09/16/3609/
「補給方式異なる2企業と並行連携」→https://holylandtokyo.com/2024/02/20/5554/
「衛星の緊急打ち上げ技術開発」→https://holylandtokyo.com/2024/03/12/5622/
「衛星が地上局との Link-16 通信試験」→https://holylandtokyo.com/2023/11/30/5311/
「海上打ち上げ企業選定」→https://holylandtokyo.com/2024/06/14/5964/

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米5軍と並ぶサイバー軍創立検討求める法案提出 [サイバーと宇宙]

国立科学アカデミーでの検討を求める要求
2025年度国防授権法に含める法案
今年度は下院案となるも上院が削除

Cyber Command2.jpg5月14日付DefenseOne が、複数の共和党下院議員が下院軍事委員会が検討中の2025年度国防授権法:(National Defense Authorization Act)の下院案に、現在のサイマーコマンドを陸海空海兵隊&宇宙軍と同レベルの「サイバー軍」として創設する検討を、国立科学アカデミーに命じる案を提出した紹介しています

米下院議員団は、2024年度の同法律案に同様の内容を盛り込み、下院法案として上院に送った模様ですが、最終的に上院での審議では削除されたとのことで、2025年度の同法律案に「サイバー軍創設の独立機関での検討」を求める案が、最終的に盛り込まれるかは極めて微妙ですが、下院議員団が法案を提由した背景や問題認識を記事からご紹介しておきます

5月14日付 DefenseOne 記事によれば
Cyber Command3.jpg●現在のサイバーコマンドがサイバー関連の如何なる行動を起こすにも煩雑な手続きが必要だ、と指摘するサイバーコマンド関係者や外部専門家からの調査報告や苦情が絶えない
●例えば3月にFDD (Foundation for Defense of Democracies)が発表したレポートは、現在の同コマンドの位置づけでは、米国がサイバー空間で敵と戦う最良の機会を逃しているとして、空軍、海軍、その他の軍隊と並ぶ新たなサイバー部門を創設するよう議会に促している

Cyber Command4.jpg●FDDは、国防省による同コマンドへの人員増強計画では、国防省内のサイバー人材を十分活用できず、また兵士の士気を損なう現在の組織文化を改善することは困難だとし、関連要員が多数所属する陸軍兵士などを統合し、約1万人規模で約2兆5千億円の予算規模を持つ新たな車種を創設すべきと提言している
●FDDは一方で、サイバー軍創設の短期的な課題として、例えば、適切なIT人員を新部門に異動させるには時間がかかり、サイバー軍に既に存在する重要な人員が枯渇するリスクがあるとも指摘している
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Cyber Command5.jpg極めて短い記事で、記事が課題だと説明しているサイバーコマンドに求められる「煩雑な手続き」や、FDDが挙げた「不適切な人員増強計画」や「兵士の士気を損なう現在の組織文化」や「IT人材の異動と短期的な人材枯渇」との課題について、もう少し具体的に知りたいところです。補足説明できず申し訳ありません

ただ、軍の高級幹部クラスが、自身が前線部隊勤務だった若手時代に、サーバー戦を身近なものとして経験した世代ではないことから、サイバー人材の特徴や人材育成に必要な体制、その活動に必要な環境について、前線サーバー部隊からの要求が理解できない状態なのだろうと思います

2019年創設の「宇宙軍」が人材確保や育成で苦労しているように、「サイバー軍」として独立するデメリットも多数あると思います。まずは「サイバー」との新ドメインについての理解が広まることだと思います

サイバーコマンド関連記事
「航空機無き州空軍誕生へ」→https://holylandtokyo.com/2024/05/24/5674/
「米大統領選挙で20回以上作戦」→https://holylandtokyo.com/2021/04/01/96/
「過去最大のサイバー演習」→https://holylandtokyo.com/2020/06/24/630/
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holylandtokyo.com/2020/03/11/779/
「ISR部隊と統合で大統領選挙対策に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「初代格上げ司令官は日系3世」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-17
「NATOが選挙妨害サイバー演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-13

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国防省がロケット海上打ち上げ企業選定 [サイバーと宇宙]

混雑する陸上打ち上げ基地を補完
衛星や貨物の緊急打ち上げや宇宙輸送に
海上パッドからロケット4基発射成功済
2023年5月にメキシコ湾で各種認可含むデモ試験

Spaceport Company.jpg5月28日、米国防省の革新的技術導入を担うDIU(Defense Innovation Unit)が、地上ロケット打ち上げ施設のスケジュール混雑が問題化する中、衛星の緊急打ち上げやロケットによる地対地や地対宇宙の貨物輸送などのロケット打ち上げ所要に対応する「海上ロケット発射プラットフォーム:sea-based launch platform」提供企業に、ヴァージニア州に根拠を置く「The Spaceport Company」を選定したと発表しました

DIUは「Novel Responsive Space Delivery」との取り組みの一環で、即応性と精度に優れた衛星打ち上げ能力を提供してくれる企業開拓と試作を目指しており、海上発射プラットフォームには「赤道近傍からの発射能力を向上させるとともに、機敏な発射を可能にし、交通量の多い空域を回避する重要な機能」を期待して、2023年6月に企業募集を開始していたとのとです。

Spaceport Company2.jpgこの企業提案募集に対し、関係企業から多くの関心が寄せられたようですが、2023年5月に既に自社で「Sea-Based Launch Platform」コンセプトを実証し、メキシコ湾上の浮かんだ移動式発射台から4つのペイロード打ち上げに成功するだけでなく、

海上打ち上げに関する連邦航空局や沿岸警備隊への許可申請、立ち入り禁止の周知、打ち上げ時の周辺監視、侵入船舶等への対応、不足事態への対応体制確保などなど、打ち上げに関する様々な付随業務面でも円滑な運用が遂行可能であることを実証済の「The Spaceport Company」が、まず第1弾として選ばれたとのことです

sea-based launch.jpgDIUは他の興味深い提案を出している企業にもチャンスを与え、「The Spaceport Company」との競争環境を設けたい意向で、民間の能力を利用して、ロケット利用の地球上のある地点から別の地点へ、軌道上の 2 つの衛星間、または宇宙のある場所から別の場所へ貨物輸送を可能にして、

「Novel Responsive Space Delivery」の狙いの一環である、世界中に貨物を迅速に輸送し、動的な打ち上げと軌道上での運用を通じて宇宙でのリアルタイムの脅威に対応することを目指す、と5月28日の契約発表声明でDIUは述べています
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sea-based launch2.jpg表面的な記事紹介で恐縮ですが、宇宙分野には次々と新興企業が参入し、様々なアイディア実現に果敢に挑戦している様子が伺え、米国の底力を感じます。

ただ軍事における民間企業の役割の拡大に関しては、有事における民間企業の役割分担を、国家としてどのように整理するかが大きな課題であり、宇宙軍や米国防省の采配に今後も注目して行きたいと思います

衛星緊急打ち上げや宇宙輸送関連
「次のステップVictus Hazeへ」→https://holylandtokyo.com/2024/03/12/5622/
「第1弾Victus Nox成功」→https://holylandtokyo.com/2023/09/22/5057/
「DIUが宇宙輸送企業選定へ」→https://holylandtokyo.com/2023/07/10/4819/
「宇宙物量輸送で世界中に1H以内で」→https://holylandtokyo.com/2020/10/23/439/

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若手研究者による「デジタル権威主義」解説 [サイバーと宇宙]

防研のNIDSコメンタリーが部外者の論考掲載
37歳の上智卒&自治体職員後&防大大学院博士が執筆
超苦手な学術論文風ですが・・・

digital authoritarianism2.jpg4月17日付で公開の防衛研究所「NIDSコメンタリー」に、愛知学院大学准教授 大澤傑氏による実質4ページの論考「デジタル技術が促進する新たなたたかい---流動化する国際秩序とデジタル権威主義」が掲載され、デジタル技術が独裁者に乱用される、いわゆるデジタル権威主義の状況や脅威について解説していますのでご紹介します

失礼ながら、論考の前半部分の多くを割いて記載されている、言葉の定義というか、権威主義国家の捉え方等々についての部分は、若手研究者として致し方ないのでしょうが、結果的に一般の読者を遠ざけるような「学術的色付けのためのこねくり回し」となっており、この部分はバッサリ無視させていただいて、まんぐーすが理解できそうな部分だけ、記載事項の並び替えや解釈も交え、適当につまみ食いで取り上げます

大澤准教授の論考によれば
Oosawa2.jpg●米国同時多発テロや世界金融危機、新型コロナの広がりなど、連続する危機との直面で各国の政治体制は動揺し、民主主義国家の体制に対する信頼が低下する一方、(中国やロシアなどの)権威主義はデジタル技術を用いてそれを乗り切った。むしろ権威主義国家では、その危機を梃子として体制を強化する傾向が見られる。かつては民主主義を促進させると考えられたデジタル技術も、今となっては権威主義との相性の良さが浮き彫りとなありつつある

●権威主義の至上命題は体制維持で、その手段として3つの要素「抑圧」、「懐柔」、「正統化」を用いる(抑圧を除けば、民主主義においても一定程度見られる統治手法)

digital authoritarianism3.jpg抑圧→反対派や体制の脅威になる者を排除して体制の安定化を図る「ムチ」。デジタル技術抑圧とは、ネットのシャットダウンや、監視による反対派の補足などが好例

懐柔→親体制派が体制から離反しないよう、また人々が体制を支持するように特権や利益を与える「アメ」。独裁者はアメとムチを利用した統治を行う。デジタル技術による便利で安心安全な社会の構築が一例

正統化→体制の正統性を担保し、人々が自発的に体制を支持するように仕向ける方法。個人崇拝化や業績のアピールなど。デジタル技術懐柔による生活環境の改善だけでなく、体制を賛美する言説の流布や、フェイクニュースやディスインフォメーションを用いた認知の誘導などが該当

●中国の統治手法が一例
digital authoritarianism.jpg人々の様々な特性を指標化した「社会信用スコア」は抑圧のツールにもなるが、行儀が良い人々が様々な特権を得られることから懐柔のツールにもなる一方、それによって構成された便利な社会は体制を支持する人にとっての正統化の手段ともなる。

中国のデジタル権威主義の抑圧的な側面を強調する論調がある一方で、これまで与信を得ることができなかった人々が「社会信用スコア」の導入によって権利を獲得することができたとの指摘もある。

中国では「五毛党」200 万人以上がネット上に共産党政権の正統性を高める書き込みを行っている模様。デジタル技術を利用し、独裁者は権威主義的な統治を効果的に行うことが可能となったといえる。 一方、民主主義国家においても同様にデジタル化によって便利な社会構築が進められたが、それに伴う情報集積はハイブリッド戦での脆弱性につながった

●ただ、デジタル権威主義の未来は明るくない
digital authoritarianism4.jpgロシア→政治体制の個人化を進め、高い抑圧で難局突破を狙うが、それを維持できるかは軍や警察にいかに懐柔できるかに依存し、先行きは不透明

中国→少子高齢化や新型コロナ蔓延などに伴う経済停滞で、懐柔、正統性がともに低下しつつある。戦狼外交や野心的対外政策で国民のナショナリズムを喚起して体制を維持しているが、この先は不透明

●そこで中露が陰の「たたかい」ハイブリッド戦に注力
Oosawa.jpg両国はサイバー攻撃や影響力工作や選挙介入を通じ、自国に有利な国際環境を「戦わずして」構築すべく企図
抑圧や懐柔維持が困難になりつつある両国は、「西側諸国による覇権主義的な国際秩序への対抗」という言説で、「民主主義対権威主義」を語り、外部批判で自国の正統性を際立たせる正統化に力を

他方、両国は民主主義的価値の流入や西側諸国の影響力が高まることによって体制が転覆する可能性を恐れている 

中国はグレート・ファイアウォールを構築し、ロシアは独立系メディアを締め出している 北朝鮮やクーデタ後のミャンマーでも同様の動きアリ。軍事的コストが低く、正統化を図ることができるハイブリッド戦は有効な選択肢である。
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Oosawa3.jpg防衛研究所の研究者のアピールの場である「NIDSコメンタリー」に、なぜ部外者である大澤傑氏の論考が掲載されたかは「?」ですが、上智大学院から一度は地方自治体に就職した大澤氏が、どのような経緯かは不明ながら防衛大学校総合安全保障研究科博士課程修了して博士(安全保障学)を取得した経緯か、または大澤氏の研究分野が、防衛研究所の研究者だけではカバーできない重要分野だったため、依頼して論考掲載の運びとなったものと推察いたします

省略した論考前半部分については、ご興味のある方はじっくり原文https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary310.pdfでご確認ください  

防衛研究所の最近の研究
「安全保障としての半導体投資」→https://holylandtokyo.com/2024/02/28/5534/
「サイバー傭兵の動向」→https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/
「台湾への非接触型「情報化戦争」」→https://holylandtokyo.com/2024/01/05/5398/
「中国の影響工作/概要解説」→https://holylandtokyo.com/2023/12/21/5362/
「異様な中国安全保障レポート2024」→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/
「量子技術の軍事への応用」→https://holylandtokyo.com/2022/01/14/2577/
「先の大戦・あの戦争の呼称は」→https://holylandtokyo.com/2021/08/13/2103/

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宇宙技術開発の国際&企業協力強化に規格設定を [サイバーと宇宙]

米国防省の国防革新ボードによる聞き取り調査結果
装置の規格や基準がないと同盟国も企業も投資躊躇
共通のインターフェースやデータ形式なども
企業との連携や国際協力追求の宇宙分野で顕著な課題

PRM NG2.jpg4月17 日付 Defense-News は、同日開催された国防革新評議会(Defense Innovation Board)で、日進月歩の宇宙分野技術開発において、リーダーである米国が部品やインターフェイスの規格や基準を明確にしないことが、同盟国や関係企業群の開発投資や協力意欲を削ぎ、連携強化を阻害しているとの指摘がなされたと報じています

同評議会には国防、ビジネス、教育分野等々のリーダーが含まれ、今年のテーマである同盟国や企業とのイノベーション推進に関する「障壁」について取りまとめているようですが、昨年 12月から同評議会が数十回にわたり実施した同盟国や産業界への聞き取り調査結果から、上記が明らかになったようです

GPS IIIF 2.jpg例えば、宇宙空間での人工衛星への「燃料補給」に、米国防省と宇宙軍は複数企業や同盟国と連携して取り組んでいますが、企業各社は、自社が投資して開発するの給油インターフェースやポート機器が将来採用される製品と互換性があることを確保するため、事前に規格や基準を知りたがっており、早期に開発の方向性を明確にすることで投資を促進して同盟国や企業からの協力を得やすくすべき、との提言があるようです。

Victus Haze3.jpg同様に米国の同盟国も、米国がこれらインターフェースやポート機器の基準や規格を明確にするまでは、自国規格の決定を遅らせたり、国家予算投入を控える傾向があり、結果として企業も同盟国も「足踏み」期間が延び、人材や資金の投入が遅れて技術革新の阻害要因やブレーキになっていると、17日の評議会では指摘が相次いだようです

また評議会は、「米国防省が、知的財産権により生じる技術利用の制約が無い標準規格や基準を採用すべく、迅速に取り組むべき」との勧告案も提議され、「これにより、米国内イノベーションが促進されるだけでなく、同盟国の能力も強化されるだろう」との指摘がなされた様で、最終報告書で勧告される模様です
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PRM NG.jpg国防革新評議会(Defense Innovation Board)から勧告を受け取る国防省や米軍研究開発部門からすれば、よりよい規格や基準を早期に定めるために、最新の技術動向や開発状況を、企業や同盟国と早い段階から共有したいのだ・・・との声が聞こえてきそうですが、「開発最前線あるある」の悩みなのかもしれません

「卵が先か、鶏が先か?」を明確にする議論はあるとしても、このような課題をリーダーとフォロワーが共有することで、折り合いつけつつ前進していくのでしょう・・・期待しています

宇宙分野での企業との連携
「妨害に強い GPS衛星への取組」→https://holylandtokyo.com/2024/02/25/55711
「補給方式異なる2企業と並行連携」→https://holylandtokyo.com/2024/02/20/55541
「衛星の緊急打ち上げ技術開発」→https://holylandtokyo.com/2024/03/12/5622/
「衛星が地上局との Link-16 通信試験」→https://holylandtokyo.com/2023/11/30/53111

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事前告知:米海兵隊巡回サイバー部隊が日本部隊確認 [サイバーと宇宙]

事前告知で敵のサイバー攻撃抑止狙いか
以前も海兵隊チームの艦艇初展開をアピール
派遣人数や派遣期間などは非公開で

marine cyber rotational.jpg3月22日米海兵隊が、沖縄に司令部を置く対中国主要戦力である「第3海兵遠征軍:III Marine Expeditionary Force」(規模約1万7千名)に対し、海兵隊サイバーコマンドの「サイバーローテーション部隊:cyber rotational force」を派遣すると発表しました

米海兵隊は発表声明で、Ryan Heritage海兵隊サイバーコマンド司令官の「米海兵隊の全てのレベルでの迅速な意思決定を支えるため、強靭で信頼に足るネットワークを維持する技量と必要な資源を有することを確認することが派遣の狙いだ」「サイバー関連の様々な取り組みの一つのステップ」との言葉を掲載し、

marine cyber rotational3.jpgアジア太平洋海兵隊司令官であるWilliam Jurney中将の「いくつかの地域敵対国の兵器射程圏内に位置する我が部隊は、物理的側面とヴァーチャル側面の両面から、緊要なネットワーク防御を確実にすることが極めて重要だ」とのコメントに加え、2023年発表「国防省サイバー戦略」の一節「中国やロシアが洗練されたサイバー兵器を継続的に開発蓄積し、有事に際しカオスを巻き起こそうとしている」を引用し、サイバー部隊派遣の重要性を説明しています
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marine cyber rotational2.jpg米海兵隊は、海兵隊サイバーコマンドの「ローテーション部隊:cyber rotational force」派遣を定期的にアピールしており、本ブログでもコロナ感染拡大で世界で大騒ぎになり始めた2020年3月に「海兵隊サイバー防御チームが艦艇初展開」との記事で、米海軍艦艇での感染者爆発的発生の中でも、ローテーション派遣部隊の活動のアナウンスメント効果で「悪者」のサーバー攻撃を抑止しようとする試みをご紹介しています

規模の面から、陸海空軍に比して「サイバー部門」が不十分だと考えられる海兵隊の「苦肉の策」かもしれませんが、地道な努力としてTake Noteさせていただきます

米海兵隊のサイバー強化対策
「海兵隊サイバー防御チームが艦艇初展開」→https://holylandtokyo.com/2020/04/09/720/

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緊急衛星打上げの次のステップ「Victus Haze」へ [サイバーと宇宙]

昨年9月成功の「Victus Nox」計画を終了し
2025年打上予定で数週間後に「Victus Haze」契約発表へ
ご認識や誤訳にはご容赦を・・・・

Victus Haze3.jpg2月20日付で米宇宙軍が声明を発表し、対衛星兵器の導入に向け中露が国際規範無視の兵器開発に突き進む中、仮に友軍衛星が被害を受けた際の代替衛星を迅速に補填するための「緊急衛星打ち上げ」能力開発に関し、2023年9月に第1弾「Victus Nox」計画で発射命令から27時間での打ち上げに成功したとご紹介しましたが、宇宙軍が同計画を終了し、第2弾計画「Victus Haze」の企業との契約を数週間後には発表予定だと明らかにしました

Saltzman2.jpg2月13日に宇宙軍トップのSaltzman大将が、「(Victus Noxで成し遂げた、)衛星やロケットを格納庫から持ち出して、5日目に打ち上げできたことは画期的だったが、地球が秒速30㎞で回転している事を考えれば、5日はまだ長く、5日間で多くのことが起こる可能性があり、私は関係者に何日単位ではなく、時間を縮めて数時間単位に短縮するよう強く求めるつもりだ」と空軍宇宙軍幹部やOB、軍需産業界や専門家の前で宣言しているところです

第2弾計画「Victus Haze」の企業選定については、2023年8月中旬に提案要求書類を9月4日回答期限で発行し、その後応募企業からの聞き取りや提出提案の中身を精査してきた模様ですが、その結果を数週間後に発表して2025年の同計画による緊急打ち上げに挑む予定です

「Victus Nox」と第2弾「Victus Haze」計画の違いは・・
Victus Haze2.jpg●(第2弾Hazeから要求追加)衛星準備は、要請から1~1.5年以内に実施。同サイズで異なる任務用装置を搭載する衛星を準備
●(第1弾Noxから要求アップ)宇宙軍からの「hot standby態勢」指示で、ロケット提供者と衛星製造企業と地上管制施設(地上施設はHazeで追加)は、まず48時間(Noxでは60時間以内要求で57時間で打上げ)で打ち上げ可能な待機態勢に入る。

●(第2弾Hazeから要求追加)続く「alert態勢」指示で、「hot standby態勢」を30日間維持できる態勢に入る
●(第1弾Noxと同レベル要求)その後に出される「notice to launch」指示で、24時間以内に打上げ可能な態勢を確立する

Victus Haze4.jpg●(第1弾Noxと同レベル要求)軌道上に到着後48時間以内に任務遂行可能態勢を確立(Noxでは37時間で確立)
●(第2弾Hazeから要求追加)他衛星に接近して当該衛星を査察&分析(rendezvous and proximity operations)する能力要求

●(第2弾Hazeから要求追加)第1弾では2022年9月に2社選定(衛星担当Millennium Space Systemsと打ち上げ担当Firefly Aerospace)したが、Hazeでは一企業として一体的な活動が可能な体制を要求
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Victus Haze5.jpg宇宙軍トップのSaltzman大将が理想として掲げた「数時間」は、まだ遠い夢物語かもしれませんが、これが衛星緊急打ち上げ技術確立の「現在位置」であることを理解しておきましょう。

第1弾「Victus Nox」と第2弾「Victus Haze」計画に関してや、昨年9月14日の「Victus Nox」計画の打ち上げについては、以下の過去記事でもご紹介していますので、ご興味のある方はご覧ください。小さなことからコツコツやっております

衛星バックアップ用に緊急打ち上げ能力
「第1弾Victus Nox打ち上げ成功」→https://holylandtokyo.com/2023/09/22/5057/
「第2弾Victus Haze計画の企業募集」→https://holylandtokyo.com/2023/08/30/4992/
「2019年頃の検討状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-01

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米宇宙軍による妨害に強いGPS衛星への取組 [サイバーと宇宙]

現在の状況や今後の取り組みを概観
いろんな用語に親しみましょう!

GPS IIIF 2.jpg2月5日に米宇宙軍が関連企業に対し、GPS衛星の妨害対処能力向上や強靭性向上や能力早期配備やライフサイクルコスト削減を狙い、新興企業も含む多様なソースからの実験&デモ衛星のアイディア募集通知を発出したことを契機に、現在宇宙軍が保有するGPS衛星の状況や近未来の計画を概観し、更に5日に発出された提案募集の狙いを確認することで、まんぐーすが「特に疎い」宇宙分野への理解を深める一助としたいと思います。

現在の宇宙軍GPS衛星の状況と近未来構想
●現在宇宙軍は、新旧入り乱れる形で31機のGPS衛星を配備しており、最新型の「GPSⅢ」衛星は、従来型の約3倍の正確性とより優れた対妨害能力を備えており、加えて軍事ユーザー用により正確で安全(secure)な「M-code」信号を提供可能な能力を備えている
NTS-3 3.jpg●また宇宙軍は新たな衛星航法技術への取り組みとして、2024年末に米空軍研究所AFRLとL3Harris が協力し、技術実証試験衛星NTS-3(Navigation Technology Satellite-3)を打ち上げ予定で、デジタル信号により軌道上衛星のプログラムを変更更新する技術など、100個以上の試験を同衛星で行う計画である

●更に宇宙軍はロッキード社と組み、「GPSⅢ」を基礎として正確性や妨害対処能力を向上させた「GPS IIIF」を現在開発しており、2027年からの打ち上げを予定している。なお「GPS IIIF」には、アップグレードされた核探知爆発システム(nuclear detection detonation system)と捜索救助ペイロードも搭載される予定
●宇宙軍の商用技術導入専門部署(Commercial Space Office)は、革新技術導入を専門とするSpaceWERXチームと協力し、従来の軍需産業とは異なる技術を有する新興企業に「seed funding」を提供する試みを行っている

5日に発出された提案募集の狙いと方向性
GPS IIIF.jpg●宇宙軍の開発&調達組織であるSpace Systems Command発出の提案要望は、まだ技術検討段階にある構想に関する情報収集目的で、明確にいつ頃具体的な打ち上げを目指すか等を示さない提案募集であるが、宇宙軍との契約から6か月以内の打ち上げが可能で、3-5年間の耐用年数を持つ低コストのデモ衛星に関する情報を求めるもの
●背景には、米国政府として衛星のライフサイクルコスト低減とGPS衛星開発&配備ペースを上げたいとの思惑があり、より複雑な能力を搭載する衛星ビジョンを煮詰める狙いでの情報収集である

NTS-3 2.jpg●宇宙軍は、GPS信号受信が容易でない厳しい環境での運用を想定した、安価で製造容易な小型衛星など、現GPS衛星の代替システムを検討しており、提案を募集している実験&デモ衛星は、関連技術の実証や早期配備を助けることを期待されている
●また本検討では、伝統的な宇宙技術提供企業だけでなく、新興企業の開拓も狙っており、現有地上管制システムなど運用装備との相互運用性が高く、現装備の改修を最低限に抑えつつ、迅速な能力向上につながる技術導入を期待している
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NTS-3.jpg特に後半の「提案募集の狙いと方向性」部分は、美辞麗句が並ぶ軍事官僚的文書となってしまいましたが、ぼんやりとでも「低コストで良い物を迅速に導入したい。新たなベンダーも開拓したい」との思いをくみ取って頂ければ幸いです

GPS衛星の対妨害能力や信号の正確性安全性向上が、敵の妨害技術にどの程度効果が期待できるのか等、細部は知識不足で語れませんが、この分野に関する理解を深める導入説明となれば幸いです

GPS等の被害を前提に訓練せよ
「米空軍機がGPS代替の地磁気航法で」→https://holylandtokyo.com/2023/06/13/4731/
「米陸軍兵士がGPS無しの訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/
「なぜ露はウでGPS妨害しない?」→https://holylandtokyo.com/2022/07/26/3497/
「米海軍将軍:妨害対処を徹底」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-21
「空軍OBも被害対処重視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23-1
「被害状況下で訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-23

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米宇宙軍が衛星への燃料補給方式異なる2企業と並行連携 [サイバーと宇宙]

NG社がまず認証:大型給油衛星方式
ベンチャー企業は他衛星サービス企業と連携し
2025-6年のサービス開始を目指す迅速さ

orbit fab rafti2.jpg2月5日付米空軍協会web記事は、1月29日にNorthrop Grumman社が米宇宙軍から、衛星が他の衛星から「宇宙給油」を受ける際に受け側衛星が装備すべき「ガスタンクへの注入口」「ガスタンクの蓋」仕様について、同社開発のPassive Refueling Module (PRM)が宇宙受油用インターフェースとして初の認証を得たと発表し、2025年までにPRM搭載衛星を打ち上げる予定だと報じるとともに、

米宇宙軍はNG社だけでなく、スタートアップ企業Orbit Fab社が開発したRapidly Attachable Fluid Transfer Interface (RAFTI)を8個ほど空軍研究所AFRLが既に入手し、2024年から確認を行うとともに、Orbit Fab社は「宇宙給油」の早期実用化に向け、他スタートアップ企業「ClearSpace(宇宙でのAAAを目指す企業)」や「Astroscale」と連携し、宇宙軍の「Prototype Servicer for Refueling (APS-R)」プロジェクト推進に取り組んでいる伝えています

PRM NG.jpgいきなり複数企業名が飛び交って恐縮ですが、従来は軌道上の衛星機器がまだ使用可能でも、姿勢制御や軌道維持&修正のための燃料枯渇により、衛星が役割を終える事を受け入れてきましたが、宇宙アセットの脆弱性重要性やコスト意識が高まる中、軌道上の衛星に燃料補給して延命したり、故障した衛星部品を「宇宙軌道上で修理」して長く活用する技術開発に注目が集まり、技術成熟もあり、宇宙軍は2020年代半ばに「衛星への宇宙での燃料補給」を実現したい意向です

Northrop Grumman社の構想は
●同社が宇宙軍から認証を受けたPRM方式の「燃料タンクへの注入口」を生かすため、宇宙軍とNG社は宇宙給油衛星GAS-T(Geosynchronous Auxiliary Support Tanker)の開発契約を既に締結。GAS-Tは十分な燃料を搭載して、燃料補給を求める衛星に自ら移動&接近し給油する方式
PRM NG3.jpg●GAS-T自身の搭載燃料が少なくなった場合には、宇宙燃料補給所(Depot)に立ち寄り、GAS-T自身が給油を受けて他衛星への給油を続ける構想もNG社は持っているが、まずは複数の衛星への給油可能な燃料搭載量を持つ、技術的にも十分に成熟しているGAS-Tの実現に取り組む。その後の判断は宇宙軍に委ねる
●なお、NG社はPRM方式の特許を既に確保済だが、開発費を宇宙軍から支援されており、宇宙軍が他衛星企業にPRM方式「燃料タンクへの注入口」搭載を要望する場合、当該衛星企業は特許使用料を支払う必要はない

Orbit Fab社の構想は
orbit fab rafti.jpg●同社は3万ドルの使用料でRAFTIを他企業に提供する事業形態を想定している
●同社は宇宙での給油を迅速に実現するため、今後数年以内に「宇宙ガスステーション:Gas Stations in Space」を宇宙空間に配備する計画だが、当該「宇宙ガスステーション」と給油を受けたい衛星の間を行き来するサービスは、他のベンチャー企業「ClearSpace(宇宙でのAAAを目指す企業)」や「Astroscale」に委託する方式を想定している

●例えば「ClearSpace社」は宇宙でのAAA(日本のJAFに相当)を目指す企業で、地上で故障して道路わきに停車した自動車にレッカー車を派遣して修理工場までけん引したり、故障現場で修理作業を提供する総合衛星サービス提供企業を目指しており、そのサービスの一つとしてOrbit Fab社のガソリンスタンドから燃料切れ衛星への燃料輸送担当を期待されている
●またOrbit Fab社は、別のベンチャー企業Astroscaleとも連携協議を進めている
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PRM NG2.jpg引き続きこの分野で「ど素人」状態のまんぐーすは、衛星に給油する燃料ってどんな燃料(Fuel)? 「Gas Stations in Space」はどれくらいの規模の宇宙船になるの? どうやって燃料を運ぶの? どのくらいの頻度で? 等々の疑問が次々に浮かんできますが、少しづつ学んでいく事といたしましょう

それにしても、日本は戦闘機開発に人材や資金や時間を費やしている場合なんでしょうか? 

衛星の機動性SM&ロジL重視
「衛星への軌道上補給に企業活用へ」→https://holylandtokyo.com/2023/03/01/4320/
「宇宙軍は衛星のSM&L重視」→https://holylandtokyo.com/2023/01/18/4130/
「衛星延命に企業と連携」→https://holylandtokyo.com/2021/11/10/2350/
「推進力衛星とドッキングで延命」→https://holylandtokyo.com/2020/02/28/839/

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米宇宙軍が念願の正規兵パートタイム勤務導入へ [サイバーと宇宙]

政府や議会を2年越しで説得し法制化
現役兵士引き留めと有能部外者募集のため
柔軟性ある勤務オプション提供で人材確保

Space part-time4.jpg1月18日付Military.com記事が、2024年国防授権法の採択により、2019年に発足したばかりで人材確保に苦労している米宇宙軍が、現役兵士引き留めと有能部外者募集のため、最優先事項として過去2年間に渡り政府や議会に強く要望していた、正規兵によるフルタイム勤務とパートタイム勤務の選択制が可能になったと報じています

また一方で同記事は、陸海空海兵隊が保有しているが宇宙軍には認められていない「州軍」や「予備役」に関し、正規兵のパートタイム勤務と並行して宇宙軍が要望し続けているものの、政府や議会からの強い反対に直面して実現の可能性が見えていないと紹介しています

Space part-time.jpg今回宇宙軍が実現にこぎつけた「正規兵のパートタイム勤務制度」は、民間企業での宇宙ビジネスと発展を受け、関連スキルを持つ米軍兵士が高い報酬等で引き抜かれる事例が増えていることから、せめて限定した時間内でも引き続き空軍に貢献してもらえる「働き方」を提供し、人材を引き留めたいとの願いが込められたものです

また同時に、民間企業で活躍する有能な人材に、その能力を国家安全保障分野で発揮してもらうオプションを用意し、「有志の人材」が応募しやすい環境を整備したいとの思いから生まれたものです

Space part-time3.jpg正式には、フルタイム勤務を「sustained duty」、パートタイムを「not on sustained duty」と呼称し、パートタイム製選択を希望する兵士は、以下の2つの基準のいづれか一つを満たす必要があるとのことです

●少なくとも年間に48回の演習や訓練に参加し、かつ年間で15日間以上正規兵として勤務する(participate in at least 48 scheduled drills or training periods during each year and serve on active duty for not less than 14 days (exclusive of travel time) during each year)
●正規兵として年間30日を超えない範囲で勤務する(serve on active duty for not more than 30 days during each year)

Space part-time6.jpgまたパートタイム制選択者は、給与を受け取らない代わりに、未給与期間は、訓練召集されたり、自ら志願する以外は勤務を免除される「inactive status:勤務免除状態?」を選択することも可能と規定された様です

なお、米政府や議会が宇宙軍に「州軍」や「予備役」制度を導入することに反対なのは、1万名以下規模の宇宙軍が、組織運営や維持管理を複雑にする両制度を持つことは、コスト増につながるだけで非効率だとの理由でから、逆に政府や議会は、現在の宇宙軍と宇宙コマンドが並立している状態も非効率だから、2025年1月までに全てを宇宙コマンド隷下に配属する案について、実行可能性や問題点を報告するよう、パートタイム制導入承認と同時に国防省に要求しています
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Space part-time5.jpgトランプ大統領が国防省や米空軍の反対を押し切って強引に創設した「宇宙軍」ですが、軍事の宇宙空間への広がりは急速に進み、陸海空やサイバードメインと並んで重要性を増しており、専門家の養成も急務であることから、独立した「宇宙軍」の存在感が増していることは疑いなく、国防省や米軍の皆様に、トランプ氏の「強引な宇宙軍創設」についての現在の「本音」を是非伺ってみたいものです

民間企業力の活用を渇望する米宇宙軍
「緊急打ち上げへの提案募集」→https://holylandtokyo.com/2023/08/30/4992/
「衛星への軌道上補給に企業活用へ」→https://holylandtokyo.com/2023/03/01/4320/
「宇宙軍有志が民間企業大量導入訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/09/16/3609/
「小型衛星核推進装置を求め企業募集」→https://holylandtokyo.com/2021/09/28/2233/
「核熱推進システム設計を3企業と」→https://holylandtokyo.com/2021/04/20/111/
「衛星延命に企業と連携」→https://holylandtokyo.com/2021/11/10/2350/

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宇宙軍幹部が宇宙攻撃Counterspace部隊を語る [サイバーと宇宙]

Counterspaceの訳が「宇宙攻撃」で適切かは疑問ながら
昨年創設の第75及び第76 ISR Squadronを語る

Burt5.jpg1月5日、米宇宙軍の作戦部長であるDeAnna M. Burt中将がミッチェル研究所で講演し、米国にとっての「Counterspace:宇宙攻撃」任務の重要性について力説し、全ドメインからの情報収集を基に、敵宇宙アセットの想定攻撃目標や敵宇宙脅威を常続的に分析してファイリングしている、宇宙軍が昨年立ち上げた「第75及び第76 ISR Squadron」の任務をアピールしていますのでご紹介します

75 ISR.jpg背景には、例えば中国は既に地上に物理的衛星破壊兵器、レーザー兵器、サイバー能力や電子戦兵器を配備し、今はさらに宇宙空間に電子妨害機能やレーザー兵器のほか、ロボットアームを備えた衛星を配備する準備を進めている現状への強い危機感があり、

このような宇宙脅威の中で、米国はもちろん「宇宙における国際行動規範確立」、「敵の攻撃に対処可能な強靭な宇宙システムの開発」、「宇宙状況把握能力の向上」にも取り組む必要があるが、現状で限定された「Counterspace」能力しかない米国にとって、「強力なCounterspace能力確保」が欠くことができない重要要素だとの米宇宙軍関係者の信念があります

75 ISR2.jpg一般に「Counterspace:宇宙攻撃」任務は、単に敵の衛星を無効化するだけではなく、敵の宇宙アセットを構成する3要素(衛星と地上の管制装置とその2つを結ぶ信号)に作用しての友軍に有利な状況を生み出すことを指し、そのためには普段から常続的に、敵の宇宙アセットのどの部分に作用すれば、政治・経済・安全保障等の総合安全保障の観点から最適かを分析し、リストとして準備しておくことが望まれます

Burt中将(女性)は2つの部隊について
●2023年8月11日に編成完結した75th ISR Squadronは「space target」に焦点を当て、その直後に立ち上げられた75th ISR Squadronは「space threats」を重視する部隊である

Burt4.jpg●「space target」重点の75th部隊は、「宇宙空間の衛星だけでなく、地上管制施設、通信送受信施設、電磁波による通信信号、光ファイバー施設などなど」の攻撃対象オプションを常続的情報収集から分析検討し、オプションとして何時でも統合任務部隊に提供できるように準備することが任務
●「space threats」重視の76th部隊は、信号情報に限らず、人的情報や他の収集手段もフルに活用した「all-source intelligence部隊」で、75th部隊の準備する「space target」情報も情報ソースとして活用し、様々な視点で友軍への宇宙関連脅威情報を分析&提供する

●なお、第75と第76 ISR Squadronは「Delta 7」に所属しているが、作戦時に「Delta 7」の情報を活用して指揮統制を行う「National Space Defense Center」は、「Delta 15」部隊によって運用されている
///////////////////////////////////////////////

75 ISR3.jpg例えば中国が相手のケースを想定すると、中国大陸内部の衛星管制施設を爆撃やミサイル攻撃で物理的破壊することがエスカレーションの危険等から総合的に難しい場合は、サイバー攻撃もオプションになるでしょうし、それが困難であれば衛星との通信を妨害したり、衛星に直接作用する手段を最適オプションに推薦することも考えられます

なお、宇宙空間での衛星無効化手法としては、「衛星への物体衝突」「通信電波妨害」「レーザー光線」「化学物質吹き付け」「高出力マイクロ波照射」「ロボットアームでの破壊」などが考えられている模様です

米宇宙軍のCounterspace部隊と活動
「初の攻撃オプション検討部隊」→https://holylandtokyo.com/2023/08/23/4970/
「米宇宙軍初の攻撃兵器CCS」→https://holylandtokyo.com/2020/04/14/725/

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AUKUS第2弾で3か国宇宙監視レーダー設置へ [サイバーと宇宙]

他に非公開もAIや量子計算機やドメイン認識でも協力
12月1日にシリコンバレーで3か国国防相が合意

DARC3.jpg12月1日、AUKUSを構成する米英豪の3か国国防相がシリコンバレーの国防省革新推進機関DIU本部に集まり、2021年9月に豪州への攻撃原潜提供を狙いとして結成されたAUKUSの更なる協力分野拡大を企図し、第2弾協力合意「Pillar II」として、細部非公開の人工知能AIや量子コンピュータやドメイン認識技術に加え、3か国に静止軌道等を監視する地上設置レーダーDARCを2029年末までに設置することに合意したと発表しました

DARC4.jpg現在米軍が衛星やデブリ監視に使用している冷戦時代のミサイル追尾用レーダーや10年以上前に設置された光学望遠鏡などは、大量の衛星やデブリが地球周回軌道に漂う現代の宇宙環境を前提とした装置ではなく、観測追尾能力や制度に限界がありますが、

2026年までに豪州西部に設置予定の初号機を皮切りに、2029年末までに英国と米国にも各1個建設されるDARC(Deep Space Advanced Radar Capability :Northrop Grummanが開発製造担当)は、最新の技術を取り込んだ静止軌道衛星やデブリ観測地上設置型レーダーで、米英豪の地球上の3か所に分散配置することで、地球周辺の宇宙軌道をくまなく継続監視するための「最適配置」が可能になるとのことです

DARC.jpg更にこれら新設のDARCから得られる情報を、既存の地上レーダーや光学望遠鏡監視装置、宇宙配備の衛星監視衛星からの情報と融合処理することで、静止軌道上にある衛星やデブリの状態やその変化を、より正確に精密に迅速に観測できるようになるとのことで、宇宙ドメインでの出来事にありがちな、「いつ、どこで、誰が、何を」したのか不明な状態を減らすための情報精度が高まることが期待されています
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DARC2.jpg今回のAUKUS国防相会合で「Pillar II」合意されたと言われている、「人工知能AI」や「量子コンピューティング」や「ドメイン認識」については、「ドメイン認識」の一部をなすDARCのみが公表事項として発表されており、「人工知能AI」関連では無人ウイングマンCCA開発、「ドメイン認識」では水中ISR技術も含めた協力にAUKUSが発展していると推測いたします

「中国経済崩壊」が、習近平の時代錯誤も甚だしい国家運営により、「中国全体の崩壊」まで至りそうな予測不可能な雲行きですが、中国脅威論による国防強化が可能なうちに、世論が「デタント風潮」にならないうちに、進める事が適切な分野はどんどん先取り決定しておくことが寛容かもしれません。当然、戦闘機開発は後送りで・・・

現状の米軍の宇宙監視体制関連
「衛星の衝突防止を担う第18宇宙防衛隊(18SDS)」→https://holylandtokyo.com/2023/12/07/5292/

AUKUSとの関連も感じる記事
「3か国空軍でE-7の能力強化」→https://holylandtokyo.com/2023/07/21/4871/
「豪がB-21爆撃機購入も一時検討」→https://holylandtokyo.com/2023/05/15/4588/
「量子技術の軍事への応用」→https://holylandtokyo.com/2022/01/14/2577/
「AUKUS 締結発表」→https://holylandtokyo.com/2021/09/20/2255/

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衛星の衝突防止を担う米宇宙軍18宇宙防衛隊(18SDS) [サイバーと宇宙]

未だ宇宙交通管理システムが構築できない状態の中
追尾可能な4万以上の衛星や宇宙ゴミを日夜監視
地道な活動の一端をご紹介

SDS.jpg11月22日付米空軍協会web記事が、米宇宙軍第18宇宙防衛隊(18SDS :18th Space Defense Squadron)を取り上げ、兄弟部隊である第19宇宙防衛隊と共に、地球周回軌道上に存在する探知追尾可能な10㎝以上の衛星や宇宙デブリ45000個以上を、地上配備の宇宙監視観測装置や衛星監視衛星等を活用して常時モニターし、軌道や状態の変化を察知して「その場その場でinformalにad hocな」宇宙物体の衝突回避活動を行う様子を紹介しています

記事は、新しく創設されて米国民からなじみの薄い米宇宙軍や宇宙コマンドが、自己紹介のため公表し始めている部隊概要や活動報告説明資料を基に、「感謝祭休暇」期間の紙面穴埋め記事として作成されたと思われる「部隊紹介記事」ですが、まんぐーすの様な宇宙初心者には貴重な情報ですのでご紹介させていただきます

11月22日付米空軍協会web記事によれば
SDS3.jpg●米宇宙軍第18宇宙防衛隊(18SDS)は、兄弟部隊の19SDSと共に、地球周回軌道に存在する観測可能な人工物体の全てを監視追尾し、これらの衝突や異常接近を回避することで、衛星や宇宙飛行士や宇宙開発の取り組みの安全を確保する任務を負っている

●18SDSは加州のVandenberg宇宙軍基地に拠点を置き、45000以上の物体を「U.S. Space Surveillance Network (SSN)」を使用して監視追尾しており、SSNは以下のセンサーで構成される。

AN FPS-85.jpg--- 地上から夜空の光学写真を撮影し、コンピュータ画像情報処理で衛星やデブリの位置や動きを把握する「Ground-Based Electro-Optical Deep Space Surveillance System」
--- 地上設置のレーダーで宇宙物体を観測して数百の物体をリアルタイム探知追尾する「AN/FPS-85とAN/FYS-3 Phased Array Radars」

Space fense.jpg--- 太平洋上のマーシャル諸島に設置され、特定周波数の電波でフェンスを宇宙空間に向け設け、そのフェンスを通過する物体を把握する「Space Fence」
--- 大気圏の気象や太陽光に観測を妨げられない、軌道上に配置された「Space-Based Space Surveillance satellite」による監視

●宇宙デブリ(ゴミ)発生原因の4分類
--- Corrosion, Fatigue:人工衛星の機材劣化・金属疲労等により人工衛星が分解等して部品がデブリ化(飛散度小)
--- Breakups:意図的な衛星破壊兵器実験による破片の爆発的飛散や、意図せぬ衛星の爆発(気体や化学薬品タンクの事故破裂など)によるデブリ発生(飛散度大)

--- Collisions:例:2009年発生のロシア軍事衛星とイリジウム通信衛星の衝突破壊によるデブリ飛散(飛散度大)
--- Mission-related:意図に関わらず衛星から放出や分離した部品や物体(飛散度小)

SSN.jpg●宇宙軍18SDSは、各種センサーや監視装置からのデータを、特別なソフトウェアを使用して分析し、軌道上物体からのガス噴出や状態の変化、それに伴う軌道の変化、新たな浮遊物体の発生を監視し、その発生原因や起源、更に将来の影響を予測する。ただ大きさ10㎝以下の物体については、大きな破壊力を持つが小さすぎて探知追尾不可能であり、大きな脅威となっている
●衝突の危険を察知した際は関係者に警報を発することになるが、この要領は関係する国や機関や対象物等々により様々であり、しっかりした枠組みが無いのが現状である。

SDS2.jpg●2023年年初にRAND研究所は、「国際的な宇宙交通管理システム:STM:international space traffic management system」構築により、国際的な各種宇宙物体運用者の連携を円滑にし、直面している課題に対応すべきと訴えるレポートを発表し、現状の宇宙物体管理を「非公式で、その場しのぎで、場当たり的で、連携不十分な」状態だと非難し、
●「過去40年以上に渡り、10を超える各種会議やレポートや報告書がSTMの必要性を訴え続けているが、未だに実のある成果が生まれておらず、危機的な事案が発生するまで待っているかのような現状が続いており、世界の宇宙関係者は、直ちに重要な宇宙アセットの安全性確保のために立ち上がるべきだ」と訴えているところ
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18SDS.jpg記事は、このような国際的枠組みやSTMが存在しない難しい環境下で、事態は日々困難度を増しているが、米宇宙軍第18宇宙防衛隊(18SDS)は、今日も日夜その活動を全力で続けていると結んでいます。

頭の下がる思いです。18SDSの皆様の取り組みに感謝申し上げます。また、航空自衛隊の「宇宙作戦隊」との更なる連携に期待いたします

宇宙物体の監視網構築関連
「宇宙監視望遠鏡SSTの米から豪への移設」→https://holylandtokyo.com/2022/10/05/3724/
「衛星を地上観測から宇宙観測用へ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/22/2825/
「国防宇宙戦略の発表」→https://holylandtokyo.com/2020/06/23/629/
「Space Fence1号機が試験運用」→https://holylandtokyo.com/2019/12/17/2845/

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