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米軍操縦者は自らの心身不調を隠す傾向大 [米空軍]

飛行停止による収入減やキャリアに傷を恐れ
民間操縦者より隠す傾向が強いとの調査結果

Military Medicine.jpg3月27日付米空軍協会web記事が、米空軍予算で空軍医官と民間医師合同チームが実施した264名の米軍パイロットに対する調査結果(3・4月号のjournal Military Medicineに掲載)を取り上げ、米軍パイロットが飛行停止や自身のキャリアが傷つくことを恐れ、心身の不調を申し出たり医師の診断を受けることを避け、身心に問題を抱えたまま飛行する傾向が民間操縦者に比して高いと報じています

この調査の具体的方法は公開されておらず、264名との小さなサンプル数で、回答者はあくまで匿名であることから検証不可能な調査で、調査対象者の年齢・性別・軍種毎の比率も明らかにされないことから、調査チームも不十分な調査であることは認めつつも、一般的に指摘されてきた軍パイロットが心身の健康状態を隠そうとする傾向に取り組んだ初の公式研究として注目を集めています

flight surgeon.JPG調査では4000名の民間パイロット(職業操縦者と余暇趣味操縦者の両者を含む)への調査も並行して行われ、民間職業操縦者の66%、余暇操縦者の44%が、身心不調があっても飛行できなくなることを恐れて医師の受診を避けたことがあると回答し、民間パイロットにも身心不調を隠す傾向があることを明らかにしていますが、医師から診断が下されるレベルの身心不調を抱えたまま飛行した経験を持つ比率は、軍パイロットが2倍多いと報告されています

同調査ではこの原因を、軍パイロットは民間に比して年齢が若く、将来のキャリアや飛行停止による収入減への懸念が強い、または軍の厳格な飛行資格基準や心身チェック体制にあるのではと推定しているようです

264名対象の調査のデータを見ると
・190名(72%)が、医学的治療を避けたことがあり
・111名(43%)が、健康への筆記質問への正直回答を避けた
・89名(34%)が、医師の診断が出る症状を隠して飛行経験あり
・30名(11%)が、部隊に内緒で医師から治療処方箋を得た
・身体不調よりも、メンタル不調を隠そうとする傾向が特に強い

今回の研究は過去の研究(2019年に軍民計613名操縦者を対象に実施された調査)も参考データとして紹介し
・78%が、飛行資格等への影響を恐れ医師受診を恐れる
・44%のみが、医師に体調懸念について相談することを懸念していない
・74%が、医師から得た飛行資格に影響を与えるレベルの医療診断結果やデータを隠す必要を感じている

flight surgeon4.jpgこのような結果を踏まえ研究レポートは、医学的な診断が出る兆候を隠したまま飛行を継続することは、飛行安全上の大きな問題であり、部隊の戦力発揮上の懸念事項だとし、本研究を端緒としてより精緻な調査等を行うべきだと提言し、軍パイロットの間に、飛行資格を維持するために心身健康リスクを隠す傾向や習慣が一般的に存在することを憂慮すべき文化だと批判しています

また研究を見た軍医が論考を発表し、軍パイロットと部隊所属医官が日常的に接触や共に飛行する機会を増やすことでコミュニケーションを円滑にし、パイロットが身心不調について相談しやすい雰囲気を作ることが重要だ等の提言をしているようです
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flight surgeon3.jpg民間パイロットでも軍パイロットでも、心身の不調を訴えることは「飛行停止」や「飛行資格喪失」につながり、地位や収入に直結することから「隠蔽」に走る傾向があると言うことです

特に空軍においては、戦闘機パイロットを頂点とするピラミッドが過去6~70年で形成されていますので、「心身健康リスクを隠す傾向や習慣が一般的に存在することを憂慮すべき文化」を崩すことは果てしなく困難だと思います。

米軍はパイロット志願者の減少に苦悩しており、問題は根深いです

米空軍パイロット不足関連
「コロナ沈静化で米空軍の離職率増加」→https://holylandtokyo.com/2023/01/10/4125/
「コロナ後の操縦者争奪戦に備え」→https://holylandtokyo.com/2021/10/17/2271/
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holylandtokyo.com/2020/08/26/533/
「米空軍がパイロット身長基準を廃止」→https://holylandtokyo.com/2020/05/27/682/
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-20
「ヘリ操縦者養成から固定翼削除試行」→https://holylandtokyo.com/2020/08/07/517/
「Fly-only管理の募集中止」→https://holylandtokyo.com/2020/03/25/789/
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holylandtokyo.com/2020/02/27/838/
「採用の身長基準を緩和」→https://holylandtokyo.com/2019/11/29/2985/

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米空軍導入決定のE-7とE-3の違いを概観 [米空軍]

既に豪とトルコと韓が運用中で、UK用が製造中
老朽E-3後継に米空軍が喉から手が出るほど早くほしいと

E-7 Wedgetail3.jpg3月23日付Defene-Newsが、2月末に米空軍がボーイングと2027年初号機納入契約を結び、計26機導入すると明らかにしたE-7戦闘管理指揮統制機について、詳細は非公開としながらも老朽化が進む現有E-3早期警戒管制機との比較で紹介していますので、取り上げます

冒頭でご紹介した3か国が既に運用中で、英空軍用に現在中古のB-737型旅客機をE-7に改造中だということですが、既に市場にE-7に改良できる中古のB-737旅客機は存在せず、Kelly戦闘コマンド司令官やWilsbach米太平洋空軍司令官が「すぐにE-7が欲しい」と言っても、ボーイング社によれば機体製造に2年とE-7システム搭載に2年は最低必要とのことで、2032年までに24機納入が最速計画だということです

レーダーについて
E-7 Wedgetail2.jpg・E-3の円盤状のレーダーは1回転するのに約10秒必要だったが、回転しない板状のE-7レーダー(MESA:multirole electronically scanned array)は電子的に捜索ビームを操作し、特定の目標を継続監視したり、一定範囲の捜索頻度を上げたり柔軟な運用が可能である
・B-737のエンジンが提供する大電力により、E-3に比して多くの新規装備が搭載可能となる
・操縦席にもレーダーやネットワーク経由の空中状況が表示され、パイロットが戦闘状況や脅威の存在を、人を介することなく把握できる

搭乗員の省人化
E-7 Wedgetail4.jpg・運用方法にもよるが、E-3は操縦席にパイロットやエンジニアなど4名が搭乗し、レーダー情報を用いてシステムを運用するオペレーターが13~19名必要だったが、E-7は操縦席に2名(操縦者と副操縦者)と10個のレーダー関連ステーションを使用する人員で運用可能
・E-7は21名が搭乗可能で、2名+10名と予備交代要員9名が搭乗可能な設計になっている

その他
・E-3にも備わっていた機能だが、敵の発する電波情報をキャッチし、位置方向やデータベースとの照合で電波発信源の識別能力を持つ
・レーダー能力や電子戦能力を含む自己防御能力については細部に言及できないとしたが、E-7はがチャフやフレアーを搭載可能

E-7 Wedgetail5.jpg・E-7の機体はB-737-700をベースにしているが、翼は737-800のものを使用して揚力を増し、脚もE-7システム重量に耐えられるように強化する
・E-7オペレーターstationsには、機内や機外との意思疎通を容易にする通信装置が配備され、飛行中の航空機や地上の作戦指揮所と衛星通信を含む多様な手段を選択して使用可能

E-7.jpg・E-7はE-3にはない追加装備を備えているが、基本的にE-3オペレーターが容易にE-7操作員として活躍できるような類似性を持たせている
・豪空軍はE-7を「Wedgetail」と呼んでいるが、米空軍がどのような名称にするかは未定

Kelly空軍戦闘コマンド司令官は改めて、米空軍が力を入れて取り組んでいる電磁波分野での能力強化、つまりE-7や電子戦専用機EC-37B Compass Call導入、F-35やF-15EXへの強力な電子戦能力付与など、を勝敗を分ける非常に重要な取り組みだと強調しています
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E-7がとってかわることになるE-3早期警戒管制機は、既に機体年齢が45歳を超えるものがでて維持が難しくなっており、現保有の31機の内15機を今年中に退役させるほど問題化している機体です。E-7の順調な製造&導入を祈ります

E-7関連の最近の記事
「E-7A初号機を2027年納入契約」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/4358/
「E-7導入を正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「E-3は2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/
「後継機検討のRFI」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711/
「急にE-3後継機が大きな話題に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/31/2669/

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州空軍で予備役兵の個人スキル把握の試み [米空軍]

ACE(Agile Combat Employment)で多能兵士確保のため
人事システムに本業や趣味のスキル把握へ

Loh2.jpg3月15日付米空軍協会web記事は、Michael Loh州空軍司令官のAFA Warfare Symposium 講演を引用し、州空軍がサイバーコマンドなどの事例も踏まえ、予備役兵の日常生活での「本業」スキルなどを適切に把握して州空軍での活動に生かせるよう、「Air Force Integrated Personnel and Pay System」の活用を手始めに検討していると報じています

背景には、米空軍が組織を上げて取り組んでいるACE(Agile Combat Employment)構想があり、弾道ミサイルや巡航ミサイルなど精密誘導兵器の拡散に伴い、従来の大規模基地中心の航空作戦運用から、不便で設備不十分な飛行場等にも航空戦力を分散して運用する方向への転換に米空軍は取り組んでいますが、戦力を分散して運用するには、より少人数で部隊運用を支える必要があることから、兵士の「多能化」を追求し始めている現状があります

Loh4.jpgLoh州空軍司令官は、サイバーコマンド司令官(日系のNakasone司令官)から、同コマンド予備役兵が「本業に戻ってスキルを向上させ、驚くべき能力向上を遂げて予備役兵として大きな貢献をしている」との話を聞き、また州空軍予備役兵が海外展開先で、「本業」や「生まれ育った環境」で培った語学力や能力を生かし、「州空軍で与えられた職能」を超えた活躍をしている事例に多く接する中で、予備役兵個人が保有する「技能」把握の重要性を感じたと説明しています

ただ現状では、数十名規模の部隊では各予備役兵が「本業」や「趣味」等の経験から得た個人技能を把握して活用することが可能なもしれないが、数百名~数千名以上の部隊司令部で個々の個人技能を把握して活用可能なシステムは構築されておらず、人材を十分に活用できる態勢にはないと同司令官は見ています

Air National Guard.jpgそして、Loh司令官は「空軍全体でACE構想に取り組んでいるが、少人数チームを派遣して分散運用先で機能させたい時、どの人材をどのように編成すればよいかの最適解を効率的に導くことができれば大いに役立つだろう。最終的には人的リソース把握システムのようなものを構築し、個人の職種以外の能力を入力して活用できるようになれば良い」と講演で語っています

具体的には「Air Force Integrated Personnel and Pay Systemを開始点として、関連システムを構築できないか検討している。同システムにはすぐに活用できる機能があり、必要な各予備役に関する情報を入力し、特定能力を持つ人材を検索することも比較的容易にできると思う」と説明しています

Loh3.jpg更に、「同システムを個人能力把握に活用することに大きな資源や権限問題はなく、どのように関連業務を進めるかを考えればよい」とも語り、「最も柔軟な軍事組織だ」と呼ばれる州空軍の特性を生かし、各予備役兵の才能を部隊指揮官が最大限活用できるようしたい、と語っています
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Loh司令官の提案はごもっともで、自然と話が頭に入ってきますが、職務内容(Job descriptio)を明確に規定して評価や給料と結び付ける米国社会一般の慣習からすると、州空軍の人事担当者の悩みは尽きないようにも思えます

Air National Guard2.jpg輸送機の整備員である予備役兵が、「本業」で会計士や弁護士や電気整備士の資格を持っていたとして、その能力を州軍で活用することに関し、評価や給与体系がマッチするのか、本人が同意するのか? など、いろいろ実務上の問題が出てきそうな気もします。

徴兵制のある韓国やイスラエルでは、海外留学経験のある若い徴兵兵士の語学力を、通訳や情報収集分析部署で活用する例がよく見られますが、これが正規兵や予備役兵となると、入隊時点である程度職務を明確にする必要があるのでは・・・と考えたりもします

米空軍のACE関連記事
「生みの親が現状を語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「ACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「電動ヘリをACEに」→https://holylandtokyo.com/2021/04/13/105/
「ACEの課題」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/
「中東派遣F-35部隊も」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「三沢で訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21

海兵隊も多能化追求
「歩兵の多兵器習熟を試行中」→https://holylandtokyo.com/2021/05/07/1490/

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イージス艦Arleigh Burke級1番艦の5年延命決定 [Joint・統合参謀本部]

71隻保有のDDG-51イージス艦を個別に精査し延命へ
「DDG Modernization program」計画の一環で
次期LSC(large surface combatant)の見通しが暗い中

Arleigh Burke2.jpg3月14日米海軍大西洋水上艦隊司令部は、アーレイバーク級駆逐艦(DDG51:通称イージス艦)の1番艦で、就航1991年の駆逐艦「Arleigh Burke」の船体状況を精査し、「DDG Modernization program」計画の対象とすることを決定したと発表しました。これにより従来2026年には耐用年数の35年を迎え退役予定だった同艦艇を、40歳となる2031年まで延命して使用することになりました

アーレイバーク級駆逐艦(DDG51)は現在71隻が建造され、大西洋水上艦隊司令官(Brendan McLane中将)が「DDG51は史上最高の水上艦艇だ」、「米海軍水上艦艇部隊の屋台骨だ」と呼ぶ空母戦闘群の中核戦力で、現在も11隻が建造中で、全体では18隻の追加建造が契約済の「現役バリバリ」戦力です

Arleigh Burke5.jpg米海軍は2020年に、「DDG Modernization program」を71隻全ての同級イージス艦に適用する計画を見直し、個々の艦艇の状況を確認して判断する方針転換を決定していますが、1番艦で最高齢の「Arleigh Burke」がそのチェックを通過したということです

同近代化プログラムでは、艦艇船体の5年延命だけでなく、最新の長射程兵器の搭載や艦艇防御力の向上も予定されており、もちろん今後建造する全てのDDG51にも搭載予定の内容だそうです

Arleigh Burke4.jpgただ、アーレイバーク級駆逐艦(DDG51)は米海軍の大型水上艦(LSC:large surface combatant)を構成する艦首の中で唯一好調な艦艇で、ステルス駆逐艦として期待されたZumwalt級DDG1000は、開発遅延とコスト超過の末にわずか3隻で建造が中断されています。

また2020年から検討開始した次期イージス艦DDG(X)は、現有イージスシステムをまずはそのまま活用して開発リスクを避けつつ、将来の拡張性余地を最大限にした新しい船体設計を念頭に、将来艦艇に求められる電子戦能力強化やエネルギー兵器搭載を見据えた発電能力強化や、より大型の攻防ミサイルを搭載するためのスペース確保を狙った新たな船体(Hul)設計に重点を置くと言われ、

Arleigh Burke3.jpg米海軍は具体的に、多くのより大型で飛翔速度が速く射程が長いミサイル、艦艇の全周をカバー可能なエネルギー防御兵器、電子戦装備、各種センサー、コンピュータシステム等を将来柔軟に増強したいと考えているようですが、造船産業基盤の弱体化やコロナの影響で、現有艦艇や潜水艦の定期修理も大幅遅延状況であり、予算的にも明るい材料が皆無の現状と言われています。

新型空母フォード級の1番艦もトラブル続きで運用開始が遅れに遅れ中で、AUKUSで合意した豪州への攻撃原潜5隻提供も「現在の造船産業状況で本当に可能なの? 米海軍のバージニア級攻撃原潜でさえ建造が大幅遅延なのに・・(年間2隻計画が実態は1.2隻)」と各方面から「?」の声が上がる中、唯一順調そうに見えるアーレイバーク級駆逐艦(DDG51)1番艦の延命&近代化改修決定の話題でした

Arleigh Burke級イージス艦関連の記事
「3大近代化事業を一つに絞れ」→https://holylandtokyo.com/2021/06/11/1898/
「新型無人機対処レーザー兵器搭載」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-23
「後継イージス艦検討開始5年で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-14
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holylandtokyo.com/2020/01/14/865/

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北朝鮮が水中核爆発「津波」兵器試験をアピールも [安全保障全般]

水中無人艇で60時間水中侵攻し爆発実験と
敵港湾施設や空母攻撃群に「放射性津波」攻撃とか
米韓の専門家は懐疑的な見解・・・

NK Haeil.jpg3月24日北朝鮮の朝鮮中央テレビが、水中無人艇に核兵器を搭載して爆発させ、「放射性津波」を発生させて敵港湾施設や敵空母攻撃群を壊滅させる兵器の試験を、3月21日~23日の間に実施して成功したと報じました。

同テレビは水中無人艇兵器が、海岸から発進するか、艦船で牽引されて沖合から発射可能だと紹介し、「敵の海軍を破壊するために作戦海域に密かに侵入し、水中爆発を通じて超大規模な放射性津波を発生させる」ように設計されていると説明しています

NK Haeil2.jpgまた今回の試験では、水中無人艇兵器が21日火曜日に北朝鮮の東海岸沖から発進し、60 時間近く水中を移動して、敵港湾施設に見立てた標的付近で模擬爆発に成功したと伝え、北朝鮮が2012年から開発を開始し、過去2年間で50回以上テストを行った成果だと強調した模様です

北朝鮮は、この水中無人艇を韓国語で津波を意味する「Haeil:ヘイル」と名付けていますが、金正恩総書記がこの新型兵器の試験を視察したとして、先端が黄色のミサイルのようなものと一緒に写る写真や、無人艇の水中軌道や爆発時の水柱画像も北朝鮮労働新聞で公開しています。

NK Haeil3.jpg24日付Defense-Newsによれば、韓国の李鍾燮国防相は北朝鮮の発表前日に、一般論として国会議員らに対し、北朝鮮はおそらく核兵器技術で大きな進歩を遂げているが、最先端の兵器に核兵器を搭載する技術をまだ習得していないと述べており、ソウルの北朝鮮研究大学のキム教授は、北朝鮮は韓国の全ての港を攻撃可能だとアピールしているが、その主張を検証することは不可能だとコメントしています

カーネギー平和基金のAnkit Panda上席研究員も、兵器用核物質保有量が限定的な北朝鮮で、弾道ミサイル以外に核物質を使用する選択を非効率だと疑問視し、また「この無人潜水艇は西側対潜作戦に対し極めて脆弱で、先制攻撃の目標にもなるだろう」とコメントしています。また、このような水中艇に適合する核弾頭を開発する能力については評価が分かれており、技術向上には核実験が不可欠であることからも、懐疑的な見方を示しています。

まぁ・・・60時間かけて敵港湾や艦隊を攻撃するなら、弾道ミサイルで核攻撃した方が手っ取り早いと思いますが、「将軍様」の思い付きか、西側の対処を複雑化する深い狙いなのか・・・北朝鮮の考えていることはよくわかりません

同期間に実施の北朝鮮巡航ミサイル訓練映像(130秒)


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フィリピンに米空軍F-22が初展開 [安全保障全般]

テニアン島へのF-22初展開に続き
フィリピン4空港への米軍アクセスも合意

F-22 FA-50.jpg3月13日、1951年から米国と軍事同盟を結んでいるフィリピンに初めて第5世代機である米空軍F-22戦闘機が展開し、同14日にかけて展開先のクラーク空軍基地からフィリピン空軍FA-50(韓国製でF-16ベースの攻撃機)と南シナ海上空で訓練を実施しました。

2月にはオースチン国防長官がフィリピンを訪問し、フィリピン軍クラーク空軍基地以外のフィリピン国内4か所の飛行場への米軍アクセスに合意しており、これら4飛行場の利用には今後施設整備等が必要になるとのことですが、対中国最前線であるフィリピンと米国との関係が、2022年6月のMarcos Jr大統領就任後に改善されつつあるようでうれしい限りです

F-22 FA-50 4.jpgフィリピンのクラーク基地に展開したF-22の機数を米空軍リリースや報道は言及していませんが、米空軍が多数公開した写真からすると2機で、フィリピン展開直前までグアム島近傍のテニアン島に初展開していたアラスカ州エレメンドルフ基地所属の第525戦闘飛行隊のF-22だそうです

稼働率の低下から、2030年頃からの退役が予期されているF-22ですが、ここに来て様々な場所に「第5世代機として初展開」し、米国と相手国との対中国団結のシンボルとして活躍しています

F-22 FA-50 5.jpgフィリピン展開中には、フィリピン空軍が保有する最新型機である韓国製FA-50(F-16をベースにロッキードの技術支援も得て製造&輸出している練習機T-50の攻撃機タイプ)と南シナ海上空で共同訓練を実施し、F-22が空中戦をデモしたり、F-22による航空優勢確保の中での対地対艦攻撃訓練をFA-50が行ったようです

また、嘉手納基地所属のKC-135空中給油機が南シナ海に飛来し、展開中のF-22に空中給油を行って、南シナ海で「有事」発生の際は、直ちに駆けつける体制にあることをアピールしたようです。
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F-22 FA-50 3.jpg中国に押されっぱなしだった昨年までとは少し雰囲気に変化が見え始め、米海兵隊の海兵沿岸旅団MLRが2025年までに沖縄に編制され、日本が400発程度のトマホーク巡航ミサイル購入を決断し、豪州に2030年以降に攻撃原潜が提供されることが発表され、気球対処などなど米国による対中国攻勢が強化されつつあります。

ドゥテルテ大統領時代には、枝葉末節なフィリピンの「人権問題」に米国政権がこだわって米比関係がギクシャクしましたが、この面でも米国が柔軟性を示し始めたのか、フィリピン側が対中姿勢を変化させたのか把握していませんが、変化の兆しを感じます

フィリピン関連記事
「米軍のアジア太平洋協力強化」→https://holylandtokyo.com/2023/02/20/4294/
「比の新大統領は中国寄り?」→https://holylandtokyo.com/2022/07/08/3450/
「日本製監視レーダー提供へ」→https://holylandtokyo.com/2020/08/31/536/

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英国も弾薬不足深刻:ウ提供分挽回に10年必要 [安全保障全般]

英議会国防委員会が危機感溢れるレポートも
嘆く声、懸念する声にあふれるも・・・

UK Forces3.jpg3月7日英国議会国防委員会が、大量の弾薬をウクライナ支援に提供したことで生じている英国軍の弾薬不足が危機的な状況になっているとの警告レポートをまとめ、英国防省に至急対応策をまとめて英議会に報告せよと求めています。

英国は露によるウクライナ侵略が始まって以来、米国に次ぐ2番目の武器支援国としてウクライナを支え、NLAW対戦車ミサイル、Javelin対戦車ミサイル、Brimstone空対地ミサイル、Starstreak防空ミサイル AMRAAM空対空ミサイルや10万発の火砲砲弾など総額3000億円の支援を行い、追加で砲弾10万発などの提供を約束しているとのことですが、

UK Forces2.jpg冷戦終了からつい最近までの軍縮の流れの中で、弾薬製造産業基盤を含む軍需産業全体が大きく縮小した結果として、ウクライナへの提供分「穴埋め」には10年以上必要な懸念すべき状態だと同レポートは訴えています

レポート発表に際しTobias Ellwood国防委員会委員長は、「英国やNATOの弾薬備蓄は危険なレベルにまで縮小している」、「信頼に足る軍隊であるために、英国は十分や軍の人員、兵器、弾薬と装備が確保されなければならない」、「英国軍備蓄を補給するのに長期間要する現状を懸念する」、「政府と産業界は行動を起こさねばならない」と訴えています

UK Forces.jpg同レポートにはRichard Barrons前英国統合軍司令官の証言も掲載され、「1990年から続く重要装備やプラットフォーム投資削減の流れで、弾薬備蓄も予備役も施設インフラも空虚な状態に陥っている」、「ハイエンド紛争に直面した場合、英国軍の弾薬は1週間持たないだろう」と厳しい現状を語っています

現在の政府対応について同レポートは、英国防調達省は昨秋の追加予算で英国軍弾薬備蓄の保管増強予算を確保しているが、この程度の対処では必要な備蓄回復までに10年以上必要であると警鐘を鳴らしています

UK Forces5.jpgまた同レポートはNATO全体でも同様の厳しい状況だとし、「NATO司令部での聞き取りでは、Javelin対戦車ミサイルの調達は5年待ちの状態で、CSISの換算によれば、ウクライナに提供されたスティンガー携帯防空ミサイル数は、過去20年間に米国以外の国が購入した同ミサイル総量と等しいレベル」だと、消耗の激しさと増産の難しさを指摘しています
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米軍の弾薬不足が深刻で、補給のための軍事産業基盤も弱体化している現状を、様々な研究や発言からをご紹介してきましたが、英国やNATOも同じで、冷戦後の大軍縮の後の現状からすれば米国よりもはるかに厳しい状況と考えられます

UK Forces6.jpg英議会国防委員会のレポートは懸念の声に満ちていますが、ウクライナ戦争の影響を強く受け、疲弊した英国やNATO諸国の経済は急激な国防費増を支える余裕はないと思います。残念ながら・・・

弾薬量の圧倒的不足問題
「米空軍は弾薬調達の効率性優先を変更する」→https://holylandtokyo.com/2023/02/24/4304/
「CSISも弾薬調達&提供問題レポート」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/4212/
「上院軍事委員長:弾薬が最大教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/02/10/4288/
「米空軍の弾薬ロードマップ検討」→https://holylandtokyo.com/2023/02/09/4208/
「米軍は弾薬にもっと予算配分を」→https://holylandtokyo.com/2022/12/02/3990/
「賛否交錯:輸送機からミサイル投下」→https://holylandtokyo.com/2022/11/15/3936/
「弾薬不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
「ウ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/

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極超音速兵器の迎撃兵器を日米共同開発で [安全保障全般]

「SM-3 block IIA」共同開発の実績踏まえ
まだ初期段階で分担可能性を協議中
2030年代初頭に初期型配備めざし

GPI MDA3.jpg3月15日、米ミサイル防衛庁MDAのJon Hill長官(海軍中将)が講演で、極超音速兵器の滑空段階での迎撃ミサイル(GPI:Glide Phase Interceptor)開発を目指し、日本との共同開発が可能かどうか日本側と協議を開始していると語り、弾道ミサイル防衛迎撃ミサイル「SM-3 block IIA」開発成功の経験を活かしたいと意欲を示しました

極超音速兵器は滑空段階で、音速の5倍以上のスピードでしかも機動することから、その迎撃は極めてハードルが高いと考えられていますが、GPI開発は「mission solution analysis phase」段階にあり、どのような技術が必要で、どのように協力体制や企業体制を組んで迎撃システムを構築すべきかを検討していると同長官は述べ、2024年度予算案に約270億円の予算要求をしていると記者団に説明しています

GPI MDA4.jpgまた、GPI開発の目標として「a deployment or getting to that first article out there in the early 30s」と表現し、2030年代初頭の初期配備を目指しての構想だと語っています

日本にMDAのGPIチームを派遣し、日本政府の技術、調達、兵站担当幹部を交えた検討会を既に開催し、次回は米国関係企業も含めたメンバーで日本を訪問して議論を深め、「どのような協力分担や体制が良いか煮詰めて行く段階だ」と現状を同長官は説明し、

SM-3 block IIA.jpgサクセスストーリーである弾道ミサイル防衛迎撃ミサイル「SM-3 block IIA」開発(日本が主に2段目と3段目の推進装置等を担当)の流れを踏襲すれば、日本側に今回も推進装置を担ってもらう形だが、今回日本側は弾頭を含む迎撃体部分を含む前方部分の担当にも関心をしているとも述べています

現状での課題として同長官は、GPI開発に競争環境を導入するため、2022年6月にMDAがレイセオンとN-グラマンの2社と同時に契約したことを上げ、今日本側が話を進めるとなれば、最終的には1社が脱落することが分かっていながら、設計思想が異なる2社と並行して業務を進める必要があることだと述べ、2社が1社に絞り込まれる時期等は現時点で未定で、技術成熟の状況を踏まえて判断・・・とのみ示されていると語っています

GPI MDA.jpgまた、米側企業としては、日本企業が下請け契約に回ってくれることを希望しているだろうが、今後の協議結果によって、「SM-3 block IIA」開発の際のように、当初は米企業が日本企業の下請けに回る可能性もある・・・ともHill長官は触れています

申し送れましたが、このGPIはイージス艦の垂直発射管から発射することを想定しており、その点でも「SM-3 block IIA」開発との親和性が高いとのことです
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Hill MDA.jpg日本政府と日本企業のやる気や本気度合いがどの程度かわかりませんが、極めて難しい挑戦ですし、開発費用がどの程度のなるのか気になるところです

ネット情報によると、弾道ミサイル防衛迎撃ミサイル「SM-3 block IIA」1発の価格が26~30億円とされており、極超音速兵器への対処は弾道ミサイルより遥かに難しいとなると、GPIは1発50億円超とかのレベルになるのでしょうか?

迎撃兵器システム開発関連
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/

米軍の極超音速兵器開発
「バカ高い極超音速兵器:米議会が試算」→https://holylandtokyo.com/2023/02/08/4261/
「陸軍はあと2回試験」→https://holylandtokyo.com/2023/01/17/4107/
「高価な兵器は少数保有で」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「空軍長官:重要性は中国と米国では異なる」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
「潜水艦へは2028年」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-19
「米艦艇搭載は2025年頃か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-24

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米空軍が外部有識者に検討委託の4テーマ [米空軍]

2023年の科学諮問会議に提言依頼
米空軍の今の課題を映し出す4テーマを概観
「Scientific Advisory Board」のお話

Scientific Advisory.jpg3月3日付米空軍協会web記事が、米空軍が2023年に「科学諮問会議:Scientific Advisory Board」に提言レポートを委託している4テーマの概要を取り上げているので、4つの中でもKendall空軍長官の肝いりだと記事が表現する2つのテーマを中心にご紹介します

「Scientific Advisory Board」は1944年から始まった外部有識者の諮問組織で、毎年30-40名の外部有識者が選任され、3-5個のテーマにそれぞれ提言リーダーを指名して取りまとめを依頼するもので、7月に中間報告、12月に最終提言レポート提出のスケジュールで進むものです

Scientific Advisory2.JPG記事は4テーマの概要の概要を紹介しているだけですが、米空軍が重視する課題を示すインディケーターですので、簡単にご紹介します。以下の4つがテーマで、最初の2つが空軍長官が就任時に示した重視項目だそうです

Air and Surface Moving Target Indication
Scalable Approaches to Resilient Air Operations
Developmental and Operational Testing
Assessing Advanced Aerospace Mobility Concepts

●Air and Surface Moving Target Indication
E-7 Wedgetail.jpg空中と地上移動目標の探知&追尾に、現在はE-3早期警戒管制やE-8 JSTARSを使用しているが、これら機体は間もなく引退し、「つなぎ」後継を意図しているE-7Aは初号機でも2027年納入まで待つ必要がある。

米空軍はこれら任務を宇宙から監視する衛星群で代替しようとの構想を持っているが、特定エリアを継続的に宇宙から監視するには多数の衛星が必要で、かつ地上の低速移動目標を追尾するには大きなアンテナを持つ高コスト衛星が求められる。空軍として、空中と地上移動目標の探知&追尾を衛星に頼ることが適切なのか、他の手段との適当な組み合わせが考えられるのか等々について提言を期待

●Scalable Approaches to Resilient Air Operations
laser high energy5.jpg対中国を念頭に、米空軍は大規模根拠基地が敵攻撃で被害を受けることを前提とし、施設不十分でも不便でも、戦力を機敏に移動させ分散して運用することで戦力の被害を局限する戦い方ACE(Agile Combat Employment)構想を追求しているが、そこでの大きな課題の一つが展開先基地の防御

このテーマは基地防御の手段や組み合わせについての提言を諮問会議に求めるもので、「レーザーなどエネルギー兵器:DEW:Directed Energy Weapons」や「高出力マイクロ波:High-Power Microwave:HPM」「非物理的破壊及び低コストの物理的破壊能力による防御技術」、更に毛色は違うが「(不便な飛行場で)航空機の離着陸場所を増やす技術」などの提言を期待

●Developmental and Operational Testing
T-7A 7.jpg航空アセットを中心とした新規開発装備の試験を迅速化する手法の提言を委託。デジタル設計やモデリングやシミュレーション技術が日進月歩の中で、有効で効率的で迅速な試験技術を、AI等々を活用して導入したいとの狙い

●Assessing Advanced Aerospace Mobility Concepts
blended wing.jpg遠くて広大で、敵からの脅威が高いアジア太平洋地域での兵站支援能力不足に対処し、より効率的で迅速な輸送能力確保のため、米空軍は「blended-wing body (BWB)航空機」や「Rocket Cargo」構想を検討しているが、同諮問会議に「AI自立航空機」「電動やハイブリッド航空機」などなど、様々な最新技術を投入した新たな輸送能力の提言も含めた提言を期待
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Scientific AB.jpg「科学諮問会議:Scientific Advisory Board」の位置づけや提言の重さ程度をご説明できませんが、米空軍の課題の一端をご理解いただく一助としてご紹介しました

過去記事に「2015年」と「2016年」の検討テーマをご紹介した記事がありますので、「時の流れ」を感じる機会としてご活用ください

Scientific Advisory Boardのwebサイト
https://www.scientificadvisoryboard.af.mil/

Scientific Advisory Board関連の記事
「サイバー戦時代の核兵器管理を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-05-02
「2016年の4テーマ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2015-10-13
「現存無人機のA2AD域での生残り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-06
「2015年の3テーマ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-01

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F-35へのAETPエンジン搭載を断念しF135改修へ [亡国のF-35]

コストとF-35Bへの導入困難が背景に
P&WはF135改修型を2028年から提供開始と

f135 EEP.jpeg3月10日、Kendall空軍長官は2024年度予算案の説明の場で、過去2年間に渡り議論されてきたF-35エンジン問題について、次期制空機NGAD用に開発されてきたAETP(Adaptive Engine Transition Program)エンジンへの換装をコストとF-35B型機への搭載リスクから断念し、現F135エンジンの改修で対応すると明らかにしました。

F-35エンジン問題は、現在使用のF135(Pratt & Whitney製)のエンジンブレード耐久性が想定より低く、機体稼働率低迷と維持整備コスト増の大きな要因となっていることや、F-35「Block 4」がより大きな電源や冷却性能を必要とすることから持ち上がっていました

AETP XA-100.jpg米空軍はKendall空軍長官を先頭に、航続距離30%増で推力20%増以上の性能向上が得られ、機体への電力供給余裕も生まれ、対中国等の想定環境に必要な能力提供が可能となると主張してAETPエンジン(GE社のXA100かP&W社のXA101)搭載の決断を国防省に求めてきましたが、F135改修と比較して3倍のコストがかかり、F-35調達数の70-80機削減を迫られる可能性にも言及して国防省に判断をゆだねていたところです

また、米空軍がAETPで突っ走る中、米海軍や海兵隊やF-35購入同盟国がコスト負担に耐えられるかや、F-35B型やC形にAETPが対応可能かが問題として指摘されてきましたが、Kendall長官や国防省幹部は「コスト負担が難しく、またF-35B型機へのAETP搭載の技術的リスクが高い」とAETP断念の理由を説明した模様です

AETP XA-101.jpgP&W社からF-35エンジン供給を奪還しようとしてAETP搭載を強く推進していたGE社は、F-35B型機への対応問題を解決したと最近発表し、F-35「Block 4」以降へのパワー提供にはAETPが必要だと主張してきましたが、「この判断は大変残念だ」、「しかし2022年12月末に米空軍と締結した(次期制空機NGAD用に向けた)AETP開発予算で、XA100エンジンの更なる成熟に引き続き取り組んでいく」とコメントしています

引き続きF135エンジンの改修を担うことになったP&W社は、既に2023年度予算でF135改修の初期設計に着手しており、2028年から改修F135エンジンを提供可能だとし、既に10年かけて構築され稼働状態にある世界中のF-35エンジン整備施設や装備やサプライチェーンをそのまま使用できる点でも、コスト(AETP導入の1/3)と信頼性面で最も優れた選択だと改めて強調しています
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AETP6.jpg剛腕のKendal空軍長官が強烈に押していたAETP採用が、あっさり却下されました。また昨年夏には、米空軍次世代エンジン開発担当技術者が、AETPエンジンを採用しないと「米国の先端航空エンジン産業基盤は1企業のみに縮小して崩壊する(collapse)」とまで発言していましたが、不採用となりました。

F-35を導入した同盟国や海軍海兵隊からの反発も大きかったのだろうと推測します。

米空軍はAETP導入コストとして8000億円との数字を上げていましたが、その1/3でも2600億円で、1機あたりの改修費がどの程度になるのかが気になるところです・・・

F-35のエンジン問題
「GE社とP&W社が異なる主張」→https://holylandtokyo.com/2022/09/29/3681/
「AETP採用なら調達機数削減!覚悟?」→https://holylandtokyo.com/2022/09/13/3644/
「AETP採用しないと産業基盤崩壊訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/08/24/3562/
「空軍長官:国防省に下駄預ける」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/
「空軍長官:数か月で決着すべき」→https://holylandtokyo.com/2022/05/26/3260/
「上院で議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/

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露による3月9日のミサイル飽和攻撃を概観 [安全保障全般]

兵器不足で飽和攻撃間隔が長くなる傾向
極超音速兵器から旧式ミサイルまで多様な兵器混合で81発
イラン製ドローンや地対空ミサイルで地上攻撃も

Zaluzhnyi.jpg3月10日付Military.com記事が、ウクライナ軍のValerii Zaluzhnyi参謀総長のインタビュー等を交え、昨年10月から定期的に露軍が実施している3月9日の各種ミサイル混合の大規模同時飽和攻撃の状況を紹介し、ロシアとウクライナの対応を取り上げています

ウクライナ国内のどの施設が、ロシアのどの兵器で攻撃されたか、またウクライナ側の被害がどの程度かについて等、多くの関連情報が軍事上の秘密事項となっているため、またウクライナ側は西側からの兵器支援を強く要請している点からも、出てくる情報や表現ぶりに偏りがある可能性もありますが、ウクライナVSロシアのミサイルを巡る戦いの数少ない情報ですのでご紹介することにしました

3月10日付Military.com記事によれば
Kinzhal.jpg●ロシアはウクライナ国民の抗戦意志を弱めるため、昨年10月から多様なミサイルや攻撃ドローン等を交えた飽和攻撃を定期的に繰り返しているが、英国防省は、その攻撃間隔は長くなる傾向にあり、飽和攻撃に必要なミサイル数確保が困難になっているためと分析している
●9日の大量のミサイル飽和攻撃には、極超音速兵器Kinzhal(Mig-31から発射)や旧式の超音速兵器Kh-22(TU-22Mから発射)、最新のKh-101巡航ミサイル(爆撃機から発射)や艦艇発射のKalibr巡航ミサイル、その他の短射程の航空機発射のミサイルやイラン製攻撃ドローンShahedが使用されたほか、本来防空用ミサイルであるS-300まで近距離地上目標攻撃に使用している

Kalibr.jpg●ロシアは9日の攻撃で、これまで1回の飽和攻撃で2発しか使用してこなかった極超音速兵器Kinzhal(Mig-31から発射、音速の10倍速度、射程2000㎞)を6発も使用したが、増加の狙いは不明。ウクライナ軍参謀総長は、露は様々なミサイルの組み合わせを試してウクライナの弱点を探っており、露の攻撃は改善されつつ部分もある、と語っている
●ウクライナ空軍報道官は、極超音速兵器Kinzhalと旧式の超音速兵器Kh-22(飛翔速度音速の3倍も誘導装置が旧式で攻撃精度低い)に対する防御兵器が無いと、西側に支援を求めている。極超音速兵器Kinzhalは特に高価であることから、ロシア軍も当初から慎重に同兵器を使用しているが、6発を使用した効果や攻撃対象は不明

SHAHED-136.jpg●露はウクライナ国民の意志を弱体化するためにエネルギーインフラを攻撃しているが、ウクライナ側の施設普及体制も整備されつつあり、攻撃を受けた施設の復旧は早まっている
●9日の81発の飽和攻撃に対し、ウクライナ軍は34発の迎撃に成功したと発表しており、特に亜音速のKh-101巡航ミサイル(爆撃機から発射)や艦艇発射のKalibr巡航ミサイルへの対処には成功しており、攻撃ドローン迎撃技量も向上して大部分を迎撃していると参謀総長は語っている
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Kh-101.jpg「ウクライナは、世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦に直面しており、余談を許さない」との米空軍大佐と専門家チームの分析を過去記事でご紹介しましたが、弾薬不足はロシアだけでなく西側全体が直面する共通の問題であり、どこまで過去1年間の戦いを継続できるのか、ギリギリの段階にあると認識しておくべきです

どちらの弾薬庫が先に空っぽになるか・・・互いの探り合いが続いているのでしょう・・・

それから、日本も中国からのミサイル飽和攻撃の最前線に立たされていることをお忘れなく!

米空軍大佐の提言が話題
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

ウクライナでの戦い
「ウクライナでイラン製無人機が猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「衛星通信へのサイバー攻撃で始まっていた」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「アジア太平洋への教訓は兵站」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「SpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/

弾薬枯渇の危機に直面し
「英国もNATOも弾薬不足深刻化」→
「米空軍は弾薬調達の効率性優先を変更する」→https://holylandtokyo.com/2023/02/24/4304/
「CSISも弾薬調達&提供問題レポート」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/4212/
「上院軍事委員長:弾薬が最大教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/02/10/4288/
「米空軍の弾薬ロードマップ検討」→https://holylandtokyo.com/2023/02/09/4208/
「米軍は弾薬にもっと予算配分を」→https://holylandtokyo.com/2022/12/02/3990/

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米空軍の改善提案最優秀賞は横田基地チーム [米空軍]

土木作業チーム提案の地中探査レーダーと可視化ゴーグル
地中パイプ等埋設物の位置確認迅速化で経費節減へ
会場投票1位は嘉手納基地チームの空輸効率化提案

2023 Spark Tank.JPG3月8日、米空軍主要幹部や主要軍需産業関係者や専門家が一堂に会する空軍協会Warfare Symposiumで、米空軍改善提案コンテスト「Spark Tank Championship」の最終候補6提案のプレゼン&質疑応答(3分と4分)と、表彰式が行われました。

横田基地施設整備担当部署チームの「地中探査レーダーとゴーグルによる地中埋没物の効率的把握」が審査員選出の最優秀賞を獲得し、嘉手納基地空輸支援チームの「空輸搭載物の重量サイズ等々把握をデジタル手法で迅速効率化」が会場参加者2000名以上による投票で最多得票賞を獲得しました

2023 Spark Tank2.jpg毎年恒例のコンテストには前空軍から約250の提案が提出され、審査を通過した最終6候補が最終プレゼンとQ&Aに臨む例年同様の形式で行われ、優秀提案には提案実現や空軍(国防省内も)横展開のための予算が割り当てられることとなっており、今年の審査員はKendall空軍長官、空軍参謀総長、空軍最先任軍曹、宇宙軍作戦部長、宇宙軍最先任軍曹に加え、シリコンバレーのスタートアップ投資家と米国野球協会審判部長が務めたということです

ちなみに昨年の最優秀賞は以下の記事でご紹介
辺鄙な前線基地運用への改善提言が最優秀賞
「軍曹2名の燃料と水輸送負担を軽減する提案」→https://holylandtokyo.com/2022/05/06/2781/

最優秀賞:横田基地施設整備部隊チームの提案
●軍曹2名の提案「ground-penetrating radar and Augmented Reality goggles」
2023 Spark Tank4.jpg●基地内の地下には通信、燃料、水パイプ等々が埋まっているが、往々にしてその位置は正確に記録されておらず、図面と20mずれているケースもあり、基地内工事には細心の注意が必要で、施設工事のコストアップにつながっている

●基地の立地によっては石灰地質地帯に地下空洞が存在する場合もあり、某基地では地下空洞を確認して進めるために2年と85億円を要した記録が2020年にある
●また、基地によっては天然ガスや電源ケーブルが複雑に埋設されている場合もあり、誤って配管を傷つけた場合は兵士の生命に直結する
●開発した地下探査レーダーとARゴーグルを組み合わせた装置を使用すれば、地下の状況をより迅速に正確に把握でき、各基地の施設工事予算を押しなべて各9000万円程度削減できる可能性を持っている

会場投票最多賞:嘉手納基地空輸支援チームの提案
●軍曹2名の提案「Project Kinetic Cargo Sustainment」
2023 Spark Tank6.JPG●新たなデジタルプロセスを導入することで、搭載物の重量やサイズやパレットサイズ、車種など必要な搭載物諸元を迅速処理するシステム提案
●これまで車両ごとに20分程度かかっていた処理時間を数秒にまで短縮可能になった

その他の提案には
●特殊作戦に関する多様な職能を備えた兵士を効率的かつ迅速に教育育成するプロジェクトで、既に国防省内の多数の組織から問い合わせ等が来ている「Accelerated Development of Multi-Capable Airmen and Guardians」
2023 Spark Tank3.jpg●現在空軍が使用している各所バラバラの資産管理データベースをインターフェースで結び付け、業務の無駄を5万時間短縮する「Real-time Asset Management System (RAMS).」

●トラブル箇所探知を迅速化するデータベース構築「Advanced Maintenance & Troubleshooting Suite (A-MATS)」
●フォークリフトを使用せず、パレットや装備をあらゆる地形の野外で運搬するシンプルな技術「Project Oregon Trail.」
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2023 Spark Tank5.JPG教育効率化プロジェクトには少佐と大尉が関わっていますが、その他は軍曹主体で、もちろん所属部隊士官がサポートしているでしょうが、軍曹レベルのボトムアップの提案であることがわかります。

昨年の同コンテストの最終候補6提案をご紹介した記事を末尾に掲載しますので、米空軍の底力をご確認ください

2023 Spark Tankの最終プレゼン6提案の説明
https://www.innovatedaf.com/

2022年の同コンテスト最終6候補
最優秀「燃料と水輸送負担を軽減する提案」→https://holylandtokyo.com/2022/05/06/2781/
「無人機で血液輸送&操縦者酸素マスク改善」→https://holylandtokyo.com/2022/05/02/2759/
「Gameでリーダー教育&戦闘機にスマホ」→https://holylandtokyo.com/2022/05/04/2768/

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台湾製のドローン探知レーダーに引き合い殺到 [安全保障全般]

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台湾上空で大量発見される中国偵察ドローン対処に需要急拡大
小型軽量・安価・都市環境でも優れた探知識別能力
ソフト&ハードキル防御システムとのセット販売も
中東やアジア諸国でも需要急増

Tron Future2.jpg2月24日付Defense-Newsが、ドバイで開催中の軍事見本市IDEXで話題の、台湾企業(創業4年前のTron Future)製の小型ドローン探知レーダー「T.Radar」を紹介し、台湾上空に多数確認されている中国偵察ドローン対処に台湾内で需要が急拡大し、中東やアジアからの引き合いも増えており、月産100台ペースで製造を続けているが、更なる増産のため2つ目の工場建設を予定していると報じています

台湾と中国間の緊張は急速に高まる中、最近では同探知レーダーが1週間で100機以上も台湾上空で中国偵察小型ドローンを探知するほど中国のドローン活動が活発化しており、当初は台湾陸軍が台湾海峡などの島に設置用に導入していた同レーダーへの需要が爆発的に拡大しているとのことです。されていたが、その、台湾全体で需要が急拡大しているようです

Tron Future3.jpgまたこのAESA(active electronically scanned array)レーダーは、重量15㎏の軽量小型で低価格ながら、最大5㎞の探知距離を誇り、海面からのレーダー反射ノイズ処理能力に優れ、「4D micro-doppler機能」で小型ドローンと鳥との分別能力も良く、また市街地で低空を飛行する小型ドローンの探知追尾能力も優れていることから、開催中のドバイ軍事見本市IDEXでも世界中の顧客から注目を集めていると記事は紹介しています

中国の軍事雑誌が2023年1月号で、台湾海峡で有事の際は、無人機が極めて重要な「精密誘導攻撃:targeted strikes」の役割を担うと強調したこともあり、この250ワットで30MHzの周波数帯を使用する「T.Radar」は、ソフトキルやハードキル装備や画像認証ソフトとも連接可能に設計されており、見本市でもドローン妨害装置や迎撃システムとのセット販売も行っており人気を集めていたようです

Tron Future4.jpgまたTron Future社CEOのYu-Jiu Wang氏は、台湾は中国との全面戦争の引き金を自ら引かないとの大原則のもと、対中国で最初にハードキル攻撃を実施することを避けたいと考えており、 「T.Radar」に連接可能な防御システムは、様々な状況に応じて弾頭を選択できるように、非破壊型やジャミング型など多様な選択肢を準備していると、複雑な台湾の立場にも配慮した装備だとアピールしています
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当然、他国でも同種の軽量小型レーダーや防御システムを開発していると思いますが、それらとTron Future製の小型ドローン探知レーダー「T.Radar」との能力差や特徴までご紹介する知識はありません。悪しからず。

Tron Future.jpgでも、写真でご覧いただけるように、構造的にもシンプルそうな小型アンテナですので、台湾のIT産業や半導体産業など知恵とアイディアで他国より優れたレーダーが完成している可能性は十分にあると思います。

それから、当然日本でも大量に必要な装備品だと思いますので、ご検討された方が良いと思います

無人機対処にレーザーや電磁波
「米軍拠点への無人機襲撃をCoyoteで撃墜」→https://holylandtokyo.com/2023/02/06/4201/
「対処用のエネルギー兵器動向」→https://holylandtokyo.com/2022/07/14/3432/
「JCOが小型無人機対処3機種吟味」→https://holylandtokyo.com/2022/05/17/3233/
「2回目:安価で携帯可能な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/10/08/2280/
「カタール配備のC-UASと陸軍のIFPC」→https://holylandtokyo.com/2021/06/02/1708/
「1回目:副次的被害小な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「国防省が小型無人機対処戦略発表」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/
「小型ドローン対策に最新技術情報収集」→https://holylandtokyo.com/2020/10/30/445/
「米海兵隊の非公式マニュアル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-31
「ドローン対処を3-5種類に絞り込む」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-14

急速に脚光を浴びる無人機
「世界の火薬庫バルカン半島にも無人機大量流入」→https://holylandtokyo.com/2022/11/29/3970/
「イラン製無人兵器がウで猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「アゼルバイジャン大勝利」→https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/

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シンガポールが追加で8機F-35B型購入へ [亡国のF-35]

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2020年同機4機を発注時の追加オプションを行使へ
60機保有のF-16C/D後継機として

F-35 Singapore4.jpg2月27日付Defense-Newsは、シンガポールのNg Eng Hen国防相が同国議会の予算審議で、2020年の4機発注で可能になったF-35シミュレータ使用や電子戦能力確認、更には既に運用を開始している他国への調査等を経て、4機購入時の契約に含まれていた追加購入8機のオプションを行使する決定をした説明したと報じています

同国空軍は、現在60機の能力向上改修を終えたF-16C/D型を3個飛行隊編成で保有していますが、2030年頃から機体寿命によるF-16の退役が始まるようで、その後継機として狭い国土環境等も考慮し、フル装備搭載でも200m程度の離陸滑走で発進でき、垂直着陸が可能なF-35B型を後継機に選定しています

F-35 Singapore8.jpgただし、通常離着陸型のF-35A型の調査も引き続き続けているようで、少佐(!)をリーダーとする5名で特別チームを編成し、2022年夏に豪州主催で実施されたF-35A型(豪州空軍)とB型(米海兵隊:岩国基地所属)の両方が参加したPitch Black演習(8/19~9/9)等の機会を利用して、したたかに柔軟に情報収集する様子を過去記事でご紹介したこともありました。(A型も導入する可能性が現在もあるのかは不明)

シンガポールはマレー半島の先端のマラッカ海峡を望む要衝に位置していますが、国土面積は60余りの島々を合わせても東京23区程度の大きさで、現在狭い国土に5つの飛行場を保有しているものの、都市化の波で内1個を閉鎖する方針が既に決まっているようで、F-35B型のような機体が有事の飛行場被害を想定すれば適しているのでしょう

F-35 Singapore5.jpgなお同国は、F-16C/D型機のパイロットや整備員養成部隊を、米軍との合意に基づきアリゾナ州Luke米空軍基地内に設置していますが、今後この米国駐留部隊をアーカンサス州のEbbing州空軍基地に移設し、2026年からのF-35B型機受け入れに備えると予定だそうです

【ご参考】F-35導入を決定した国(カッコ内は購入予定機数)

●共同開発国(8か国)
豪州(100機), Denmark(27), Italy(90), Netherlands(37), Norway(52), 英国(138)、米国(2443)(空軍1763、海兵隊420、海軍260)、そしてカナダ(88機)
トルコも共同開発国ながら、ロシア製SAM購入で排除された

●FMS購入国(9か国)
Belgium(34機), Israel(19), 日本(42+100) , 韓国(40)、シンガポール(当面12機 最終的に約50機) ポーランド(32機 2020年1月)、スイス(32)、そして、フィンランド(64機)、ドイツ(最大35機)、そして検討中なのがチェコ(24機)

シンガポールとF-35関連記事
「F-35B導入承認済もA型にも興味」→https://holylandtokyo.com/2022/09/15/3638/
「米がF-35B売却許可」→https://holylandtokyo.com/2020/01/15/866/

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空軍長官:次期制空機200機と無人僚機1000機 [米空軍]

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調達目標ではなく、種々検討の前提として想定と
近日公開2024年度予算で打ち出すと表明
他に20個近い新プログラムも予算提案すると

Kendall AFA8.JPG3月7日、Kendall空軍長官が米空軍協会シンポジウムで講演し、近日議会提出する2024年度予算案に、200機の次期制空機NGAD(Next-Generation Air Dominance)と1000機の無人戦闘僚機CCA(Collaborative Combat Aircraft)導入を種々検討の前提とした予算を盛り込んでいると語りました

「種々検討の前提:notional」としての200機のNGADと1000機のCCAとの表現は、この機数が最終的な調達予定数ではなく、あくまで仮置きの前提数で、この仮置き前提数で部隊組織編制や訓練体制や訓練空域割り当てや維持整備体制構築の基礎検討を行うための数字とのことです

CCA.jpgF-22戦闘機(2030年頃から退役開始)の後継機と位置付けられているNGADの200機要求は、F-22の現在保有数180機を少し膨らませた似た規模となっていますが、200機の根拠について同長官は全く触れませんでした

また無人僚機CCA は、高性能有人機(NGADやF-35を想定)に随伴して有人機からの指示や自律的飛行により、電子戦やSEADや空対地&空対空戦闘や通信を担う無人機ですが、1000機の無人僚機CCAの内訳は、200機の各NGADにCCAを2機づつ割り当て、300機の各F-35に2機づつ・・・とのざっくり計算から来ていると同長官は説明しています。

NGAD 2023AFA.jpg以前同長官は、「5機以内のCCAが有人機に随伴」との検討方向を示唆していましたが、なぜ各有人機に2機随伴する算定なのか、また米空軍が1763機導入予定のF-35の中の、なぜ300機だけにCCAが各2機割り当てられるのかについても、言及しなかったようです

Kendall長官はNGADとCCAに関して以外にも、長期的視点で取り組む「約20個の新しく大きく能力向上につながる取り組み:close to 20 new or significantly enhanced efforts」の端緒を2024年度予算案に含めて打ち出すと説明しています

Kendall AFA9.jpgそして同長官は米議会に対して迅速な予算案議論や検討を求め、「最も恐れているのは、米議会が迅速に予算案を議論や予算配分を行わず、新たな取り組みの開始を妨げ、中国にギフトを送るような行動をとることだ。これには耐えられない」と述べ、更にマッカーサーの言葉を引用し「軍事的失敗の原因はこの言葉に集約できる。その言葉はToo lateだ」と議会に強いメッセージを送っています
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「種々検討の前提:notional」については「this isn’t an inventory objective, but a planning assumption to use for analysis of things such as basic organizational structures, training and range requirements, and sustainment concepts」との説明ですが、まんぐーす的には「観測気球」でしょうか。

NGAD9.jpg同長官は昨年4月末にNGADの推定価格について、「1機数百億円:multiple hundreds of millions of dollars」と発言して物議を醸しており、今後の予算案と米議会等での関連説明ぶりにも注目して行きたいと思います

NGAD関連記事
「空軍長官: NGADは1機が数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/
「NGADの無人随伴機開発は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-20
「NGADに発言相次ぐ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-27
「戦闘機族ボスが少し語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-07
「戦闘機族ボスがNGADへの危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/05/154/
「SCIF使用困難で戦闘機開発危機」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-12
「次期制空機のデモ機を既に初飛行済」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-16

無人ウイングマンCCA関連
「研究機関がCCAに関する提言」→https://holylandtokyo.com/2022/12/15/4056/
「2機種目MQ-20 Avengerで成功」→https://holylandtokyo.com/2021/07/08/1983/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「豪州もXQ-58に参画」→https://holylandtokyo.com/2020/05/06/664/
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27

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CO2から航空燃料を:夢のような企業と国防省が契約 [米国防省高官]

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既に水空気太陽光のみからウォッカ製造の企業と
展開先の不便な場所での航空燃料製造を目指し
「Air Company」社とDIUが85億円契約

Air Company3.jpg3月3日付Defense-Newsは、米国防省の革新技術導入を担う組織DIU(Defense Innovation Unit)の、戦時の厳しい環境にある最前線基地に迅速展開可能な小型の合成燃料装置(Synthetic Fuels for the Contested Environment)開発を目指す「Project SynCE」チームが、NY市に拠点を置く「Air Company」社と約85億円の契約を締結し、CO2から航空燃料を最前線で製造する装置開発を行うと報じました

Air Company.jpgこの「Air Company」社は、既に水と空気中のCO2と太陽光だけから、世界初のカーボン・ネガティブ(排出よりも除去する二酸化炭素が多い)な「AIR Vodka(エアウォッカ)」との高純度「アルコール度数40度」の上質蒸留酒ウォッカを製造可能な技術を確立しており、敵が強固に防御している危険な最前線での燃料製造との極めてハードルの高い開発に挑むに相応しい夢のような企業です

記事は、同社がウォッカを製造するプロセスと似通った手法で、「AIRMADE」と呼ばれるジェット燃料をカーボン・ネガティブに製造する技術に挑戦と紹介しており、その基本原理は「光合成」と同様だとも紹介しています。

Air Company2.jpg末尾にご紹介している日本語メディア記事では「AIR Vodka」製造プロセスについて、「二酸化炭素の収支が完全ゼロの独自開発工程を採用している。ボトル1本あたり空気中から二酸化炭素をおよそ1ポンド(約450グラム)取り出し、太陽光を基本とする再生可能エネルギーを使って水と混合し、純粋なエタノールを生産する」と解説しており、ウォッカの容器も100%リサイクル・リユース可能との筋金入りの取り組みのようです

「AIR Vodka」を紹介する以下のYouTube映像に登場する同社経営者で、開発リーダーでもある技術者のStafford Sheehan氏は本契約に際し、「サステナビリティに加え、我が社の技術は、燃料供給や確保能力をパートナーに提供するものである」、「DIUとの協力により、我が社の技術に更なるmodularityや信頼性や現場での製造効率性面での前進をもたらすことが可能になる」と意義を語っています

CO2から作るウォッカ「AIR Vodka」紹介映像110秒


米国防省は米国政府機関の中で最大の燃料消費機関であり、その金額は2022年に1兆4千億円に上り、軍用航空機が最大の燃料消費者である点から米空軍航空アセットの対応に注目が集まっていますが、DIUの「Project SynCE」リーダーである米空軍Nicole Pearl中佐は、

Air company4.jpg「我々は、世界的な燃料サプライチェーンの負担軽減に役立つ信じられないほどのチャンスを獲得し、同時に任務遂行効率を犠牲にすることなくCO2削減にも貢献できる機会を得た」、「オンサイトでの燃料製造技術開発により、米軍統合戦力に更なる強靭性と持続可能性を提供できる」と興奮気味に本契約について語っています
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世界中で日本だけが変に盛り上がっている「SDG’s」の話題や、温室効果ガス削減を極端に訴える活動家の声を耳にすると、その「左巻きプンプン」の香ばしい香りに対し、途端に「斜に構えて」しまう最近のまんぐーすですが、「Air Company」社や「AIR Vodka」の技術や「Project SynCE」チームの頑張りには驚き&感心いたしました。

Air Company5.jpgなおこのプロジェクトにはDIUと共に、米空軍、エネルギー省、米陸軍開発室、Operational Energy Capability Improvement Fundが参加しているとのことです

コストとか、様々な応用可能性とか、商用ベースでの可能性とか、色々楽しみな「AIRMADE」開発の話題でした

Air Company 社のサイトhttps://aircompany.com/
「Air Vodka(エアウォッカ)」の日本語解説https://chizaizukan.com/property/426/

辺鄙な前線基地運用への改善提言が最優秀賞
「軍曹2名の燃料と水輸送負担を軽減する提案」→https://holylandtokyo.com/2022/05/06/2781/

2021年10月の国防省対処指針発表
「米国防省が気候変動対処構想発表」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/
「米空軍の気候変動対処計画CAP」→https://holylandtokyo.com/2022/11/07/3747/

排出ゼロや気候変動への取組み関連
「海軍と海兵隊が対処演習強化」→https://holylandtokyo.com/2022/09/28/3666/
「米陸軍が前線での電力消費増に対応検討」→https://holylandtokyo.com/2022/04/25/3138/
「米空軍が航空燃料消費削減を開始」→https://holylandtokyo.com/2022/02/16/2691/
「米国防省は電気&ハイブリット車導入推進」→https://holylandtokyo.com/2021/11/15/2423/
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holylandtokyo.com/2020/09/25/487/
「英空軍トップが熱く語る」→https://holylandtokyo.com/2021/12/03/2474/
「英空軍が合成燃料でギネス認定初飛行」→https://holylandtokyo.com/2021/11/19/2444/
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

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