SSブログ
亡国のF-35 ブログトップ
前の15件 | -

事故大破の2機のF-35から1機を生み出す試行 [亡国のF-35]

まずF-35で。他の戦闘機への応用も検討
2020年1月開始で、25年3月完成予定の慎重さ

F-35 Franken-bird.jpg12月12日付米空軍協会web記事が、F-35の生産&調達ペースが上がらない中で、貴重な受領済機体を最大限に活用するため、事故で大破した2機のF-35の再使用可能な部分を組み合わせ、完全に使用可能な1機のF-35を再生産する米国防省F-35計画室とロッキード社等の共同取り組みについて紹介しています

大破した航空機の修理に、他の航空機の部品を活用することはあると思うのですが、記事の書きぶりからは、共に大破して修復が不可能な2機の利活用可能な部分を寄せ集め(不足部品は新品部品を調達して)、使用制限のない新品同様の戦闘機1機を生み出そうとの「前例のない取り組み」らしく、2020年1月開始で25年3月に完成予定の「新品同様の戦闘機1機」が費用対効果面でもクリアできれば、他の戦闘機への展開も考えているようです

今回対象となる大破F-35は・・・
・2014年に大規模エンジン火災を起こしたエグリン基地所属機
 (現在はF-35整備員の機体補修教育訓練用に使用中)
・2020年に全輪が破損して機体前方が大破したヒル基地所属機

F-35 Franken-bird2.jpgこのような大破した2機から生み出される1機をフランケンシュタインになぞらえて、国防省F-35計画室は「Franken-bird」と呼称しているようですが、同プロジェクトには中核となる主にロッキード社の約20名の他、米空軍第338戦闘航空団内のOgden空軍補給処等の空軍兵士と文民職員た契約業者が関わっているとのことです

ロッキード社のプロジェクト主任技術者のScott Taylor氏は、「理論的には、全ての航空機の部品は異常が無い限り、分解して他の正常な部品と組み合わせて、新たな「新品」として利活用可能だが、これを実際に大規模に行って1機を完成させた事例は一度もない」、「本プロジェクトの過程は全て文書化等で記録し、将来の手法活用&確立に向けた資料として編纂したい」、

F-35 Franken-bird4.jpg「このプロジェクトは単に大破した2機から1機を生みだすに留まらず、事故で大破した航空機を、最新の技術や工具や製造装置を駆使して、費用対効果面で受け入れ可能な形で修復する技術確立にもつながる意義のある取り組みだ」と位置付けを表現しています
////////////////////////////////////////////////////

極めて大雑把に表現すれば、「エンジン火災事故を起こした機体の前方部分」と「車輪不具合で着陸時に機体前方部分を失った機体」を合体し、他の不足部品は新規調達して「新品同様の戦闘機1機」を生み出すプロジェクトですが、上記のように、将来のための記録や手法標準化を意識した手順確立検討が含まれるためか、2020年1月開始ながら2025年3月まで時間が必要とのことです

F-35 Franken-bird3.jpgひねくれ者のまんぐーすには、近い将来に米軍はF-35調達予定数を大幅に削減し、例えば米空軍なら現在の約1760機予定を、600~800機前後にまで縮小する可能性が高いため、事故機の利活用可能性を「戦闘機命族」が時間と金を投入して模索している・・・と見えてしまいます

F-35調達機数削減の動き
「デマ流布!? F-35需要増に生産が・・」→https://holylandtokyo.com/2023/07/18/4823/
「F-35削減派が空軍2トップか」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/
「米海軍が調達ペース抑制」→https://holylandtokyo.com/2022/07/07/3420/
「米海兵隊も削減示唆」→https://holylandtokyo.com/2022/01/17/2586/
「米空軍2025年に調達上限設定を」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「英国は調達機数半減か」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

F-35需要増に生産が間に合わない??? [亡国のF-35]

米軍が今の総調達数を維持すれば・・・の話ですが
ただし、米軍は空軍を筆頭に調達減少気味の怪
年間156機でも企業側は精いっぱいの模様

F-35 Greece4.jpg7月3日付米空軍協会web記事が、8月にも通算1000機目のF-35が製造されるタイミングや、2日にイスラエルが追加で25機のF-35A導入を発表した等を受け、編集長自らが筆を執って「世界中でF-35需要が高まっており、このままでは製造企業側の生産能力が追い付かない」との根拠の極めてあいまいな記事を書いています

確かに、最近は欧州を中心にF-35導入を決定する国が増え、Finland, Switzerland, Germany, Czechからの発注が159機となって、当面の年間生産数目標156機(2025年までにこの規模を目指すとのロッキード計画)を超えたとF-35命派が騒いでいるところです

F-35 Romania.jpgその他にも欧州では、Belgium, Denmark, Italy, Norway, U.Kが先行して購入決定又は運用を開始しており、更に経済混乱でアテネの荒廃ぶりが話題のギリシャまでが20機程度の導入を検討していると言われています。北米ではカナダが共同開発国ながら極めて慎重に88機導入に動き始め、アジアでは「赤信号、みんなで渡れば怖くない」方式で日本、韓国、シンガポールが導入数を増やす方向にあります

記事でJohn A. Tirpak編集長は、諸外国の具体的な機体受領年度はほとんど公開されていないが、コロナでサプライチェーンの乱れが残る中、2025年までの目標年間156機生産(2022年は145機、23年と24年は126機)体制確保も容易ではなく、それ以上の製造ペース拡大は胴体など主要構成部品、主要な製造工具類、そして製造ラインに必要な従業員確保の全ての面で容易ではないとの米空軍Hunter計画部長の4月の議会証言を紹介しつつ、国を挙げて対応すべき課題だとのニュアンスで記事を書いています

F-35 Finland3.jpgただここで注意する必要があるのが米軍、特にF-35最大の購入予定機数1763機(既に約350機導入済)の米空軍の動向です。米空軍は当初計画では年間110機ペースで導入する予定でしたが、実際は80機から始まり、60機に低下し、最近は2028年まで48機にまでペースを落とす計画を明らかにしています

米海軍や海兵隊も同様のペースダウンを予定しており、その理由として、本音の「維持費高止まりでなるべき機数を増やしたくない。調達機数削減を発表するまでは最低の調達ペースで」は包み隠して、F-35の「Block 4 upgrade」や関連する「Technology Refresh 3 upgrade」が試験等を経て成熟してからの完成版F-35を手戻りなく受領したいと説明しているようです

F-35 Thai.jpgちなみに、8月に通算1000機目となるF-35がテキサスの工場で製造されるようですが、とりあえずはロッキード社が保管し、上記「Technology Refresh 3 upgrade」が試験等を経て成熟してから、年末か2024年初に空軍に引き渡されるようです

米軍需産業応援団のような米空軍協会や付属のミッチェル研究所などは、戦闘機パイロットOBを巻き込んで、F-35本格フル生産の年間220機体制を支える生産ライン増強を最近メディアで訴えていますが裏では空軍幹部が議会で証言しているように、サプライチェーンの限界を主張して増産を抑え、海外への売込みは懸命に進めて米軍調達機数削減決定のタイミングを模索している・・・と認識しておくべきでしょう

F-35 Germany.jpg米軍の調達削減が公になった段階では西側主要国はF-35導入契約を完了しており、もう後へは引けません。そして米空軍等の総生産指数削減決定を引き金に、更に高騰する既にバカ高い維持整備費にF-35導入国の国防費はますます圧迫され、「亡国のF-35」の現実を痛いほど感じることになるのでしょう・・・

F-35調達機数削減の動き
「F-35削減派が空軍2トップか」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/
「米海軍が調達ペース抑制」→https://holylandtokyo.com/2022/07/07/3420/
「米海兵隊も削減示唆」→https://holylandtokyo.com/2022/01/17/2586/
「米空軍2025年に調達上限設定を」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「英国は調達機数半減か」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米会計検査院:米国防省はF-35の部品管理がでたらめ [亡国のF-35]

米国防省一括管理の世界50か所以上に分散保管の部品
各部品の状態や価値を管理把握できていない状態
F-35使用国は米国防省管理の部品を発注するのに

GAO F-35.jpg5月23日に米会計検査院GAOが、価格高騰高止まりが問題となっているF-35の維持整備問題に焦点を当てた特別監察レポートを発表し、世界50か所以上の関連企業や各国軍基地等に分散保管されている数十万から数百万個のF-35部品の保管場所、品質状態、現在価値等の把握不十分で、特に部品状態や現在価値については「現状未把握」で、管理責任を持つ米国防省が説明責任(accountability)を果たせない状態にあり、F-35維持整備に関わる現在の諸問題の根源となっていると厳しく指摘しました

F-35 Greece4.jpg米国防省F-35計画室はこの指摘に対し、「GAOの改善勧告に同意する」、「約15億円をかけ、正確な部品在庫に関する記録を確立するための第一歩を開始している」、「F-35部品の大部分について、米国防省が世界中のサプライチェーンの何処に所在しているかを把握している事を、米国民とF-35使用同盟国には理解いただきたい」、「今後継続して部品管理の説明責任能力と即応体制向上に努めていく」と、ずさんな実態を認める声明をメディアに出しています

F-35では、F-35機体を購入した同盟国等は部品を各国で購入保管するのではなく、米国防省が部品の調達・生産・保管・管理をグローバルサプライチェーンを束ねて一元管理し、迅速に効率的に全世界の使用国をサポートするとの「大宣伝を打って」世界中に売り込んでいますが、

GAO F-35 2.jpgそんな理想とは程遠い「デタラメ状態」で、ロッキード社の持つ部品在庫情報に依存する「業者の言いなり」状態で、維持費高騰高止まり状態を垂れ流している実態を検査員に指摘され、国防省も「改善の第一歩」「大部分の位置は把握」との驚きの言い訳言葉で白状したということです

ここ言う部品とは、エンジン、タイヤ、着陸用脚部などの大型部品から、ボルトやナットなどの細かな部品全てを含み、全世界50か所以上の保管場所には、ロッキー下請け企業の倉庫、米国内や海外購入国軍基地の保管庫など、F-35 supply chainを構成する米国内外の様々な施設が含まれています。

F-35 Hill AFB6.jpg米会計検査院GAOの検査で、米国防省は驚くなかれ5年連続で「不適合」の評価を受けており、今回のF-35部品管理など維持整備分野の問題についてGAOは、「米国防省の連続する検査不適格状態の象徴のような実態であり、責任遂行能力欠如のシンボル的事象である」と酷評し、更に検査官が聞き取りを実施した米国防省職員の言葉をGAOは目立つように報告書で紹介し、海外のF-35購入国からの外圧を期待しているようだと米メディアは報じています。

GAO F-35 3.jpgその国防省員の言葉とは、「F-35維持管理の弱点や課題は、(その量的規模や金額の大きさから)他の装備品の維持管理問題への米国防省の対応を一層困難にするだろう。なぜなら、F-35関連の部品数が途方もない規模で、現在は把握もできていないトータルな部品の現在価値が数千億円とも想定され、その把握掌握が管理責任能力が不足している米国防省に突き付けられているからだ」・・・だとのこと。

注・・・上に掲載した報告書の抜粋図は、とんでもない原始的で無駄が多いF-35部品管理手法を米国防省は世界各地で行っている(行わせている)・・・と説明するためのイラスト部分です
///////////////////////////////////////////

4月にF-35導入を決定したルーマニアを含め、18か国(米国含む)が導入を決定したF-35ですが、最大顧客である1763機導入予定の米空軍は着実に調達数削減方向に向かっており、米海軍海兵隊(260と420機)、英国(138機)、イタリア(90機)も削減必至と予想いたしております

F-35C Carl.jpgこれら削減方向の国の機数の穴埋めは、欧州やアジアの国々では難しく、問題になっているF-35維持費は今後も「高止まり」どころか上昇必至と見るのが自然です。ウクライナとF-16関連に世間の目が向いている中で、「亡国のF-35」はその負の本領を発揮し始めています

米会計検査院GAOの当該報告書35ページ
https://www.gao.gov/assets/gao-23-106098.pdf

Defense-News記事は過去5年間だけで100万個以上の部品の所在が不明と報道
https://www.defensenews.com/air/2023/05/30/auditors-over-1-million-f-35-spare-parts-lost-by-dod-and-lockheed/

F-35調達機数削減の動き
「F-35削減派が空軍2トップか」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/
「米海軍が調達ペース抑制」→https://holylandtokyo.com/2022/07/07/3420/
「米海兵隊も削減示唆」→https://holylandtokyo.com/2022/01/17/2586/
「米空軍2025年に調達上限設定を」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「英国は調達機数半減か」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/
「民間監視団体がF-35改善なしと」→https://holylandtokyo.com/2022/03/25/2933/
「英国防相がF-35企業に不満をぶちまける」→https://holylandtokyo.com/2021/06/25/1949/
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holylandtokyo.com/2021/03/10/157/

最近のF-35購入又は追加購入決定
「小国ルーマニアも」→https://holylandtokyo.com/2023/04/18/4519/
「シンガポール追加」→https://holylandtokyo.com/2023/03/10/4343/
「カナダがやっと決定」→https://holylandtokyo.com/2023/01/12/4134/
「チェコが東欧で2番目」→https://holylandtokyo.com/2022/07/25/3492/
「フィンランドが15番目」→https://holylandtokyo.com/2021/12/14/2520/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米国がタイへのF-35売却拒否 [亡国のF-35]

セキュリティー、インフラ、整備&操縦能力等を理由に
5-10年後の再検討を米が示し、
最新型F-16やF-15をF-35の代替に提案も
タイの中国への接近に対する警鐘との見方アリ

F-35 Thai.jpg5月25日、タイ政府が米国に要請していた、老朽化が進むF-16A/B戦闘機やF-5軽攻撃機の後継機としてのF-35戦闘機導入について、米国政府から時間的制約、技術的要件、作戦運用&整備能力などを理由に断りの連絡があったとタイ空軍報道官が発表しました

タイ空軍は、1980年代から運用している初期型F-16を約50機とF-5を約30機、更に2011年に導入したスウェーデン製JAS-39グリペン戦闘機を12機(1機は事故で喪失)を保有していますが、ロイター報道によればF-16とF-5の後継として8機のF-35戦闘機導入を米国に打診していたとのことです

Gordec.jpg別の5月23日付タイ国内報道では、在バンコクの米国大使が最近タイ空軍司令官を訪問し、タイ空軍基地のセキュリティー状態、飛行場の施設能力、維持整備インフラ施設、作戦運用に必要な操縦者や整備員等の人材確保容易性等の観点から懸念事項があり、これらを改善するには相当な時間と経費が必要になることから、今回のタイ空軍の要望には応じられないと伝達した模様です

ただ完全にタイ側の要望を却下したわけではなく、上記懸念事項の改善を5-10年後に再度確認し、可能な状態となればタイ側の要望に応じることもあり得ると説明し、現時点での代替案として米国大使は、最新型F-16戦闘機(Block 70)やF-15の売却を提案したとのことです

Gripen Thai.jpgタイ側からは、追加でグリペン戦闘機を購入する案が有力との「米側をけん制するような」報道も最近出ていましたが、米側の返答が7月になるだろうと予想していた中で、早々と5月中に米国大使館を通じて連絡があったことを受け、米国側のタイへの迷いがない明確な姿勢が示されたと受け止められるのでしょう

タイは最近の総選挙で、2014年のクーデターで誕生した軍事政権が敗北し、今後の政権運営や連立政権の行く末に注目が集まっていますが、2014年以来、中国との軍事協力関係強化が目立っており、例えば中国軍とタイの陸海空軍それぞれが共同演習を行うなど、中国軍と緊密な関係にあるのがタイ軍です

F-16 Thai.jpgまた軍の装備や兵器導入面でも中国とタイは2014年以降緊密で、2017年に中国製潜水艦をタイ海軍が3隻導入したほか、弾薬輸入面でもパイプが太くなってきているところで、今回の米側によるF-35売却拒否は、F-35に関する機密情報がタイから中国に漏洩することを強く懸念したものであり、同時にタイ側に中国との関係を見直すようシグナルを送ったものと多くの専門家が見ているようです
//////////////////////////////////////////////

ASEAN諸国と米国や西側との関係については、フィリピンが中国側の高圧的態度に我慢できずに急速な米側回帰に動いている一方で、カンボジアやインドネシアが依然として中国寄りだと最近ご紹介していますが、タイの動向は気になります

Gripen Thai2.jpg3月の米タイ共同主催の「Cobra Gold演習」は、オブザーバ国含め30か国7400名規模の大演習に復活して、微妙な米タイ関係に改善の兆しか・・・とお伝えしましたが、そう単純ではないようです。

まぁ、米国大使がタイ空軍司令官に説明したように、「タイ空軍基地のセキュリティー状態、飛行場の施設能力、維持整備インフラ施設、作戦運用に必要な操縦者や整備員等の人材確保容易性等の観点の懸念」は否定できないと思いますが、東欧の小国ルーマニアやポーランドやチェコにもF-35売却許可している点からすれば、単純比較はできませんが・・・

タイと米国関係の関連
「Cobra Gold演習がコロナ前規模に」→https://holylandtokyo.com/2023/03/02/4349/
「対中国で分散作戦演習JPMRC」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
「タイが中国戦車追加購入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-04-05
「タイが中国潜水艦購入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2015-07-13

他ASEAN諸国と米国関係
「インドネシアは塩対応」→https://holylandtokyo.com/2023/05/24/4640/
「米比が33年ぶり比で空軍演習」→https://holylandtokyo.com/2023/05/08/4597/
「米比とBalikatan演習」→https://holylandtokyo.com/2023/04/20/4524/
「カンボジアに中国軍施設」→https://holylandtokyo.com/2022/06/15/3354/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

ルーマニアがF-35導入決定東欧3番目 [亡国のF-35]

2023年8月10日付Defense-Newsは、ルーマニア政府が同国議会に対し、2飛行隊分の32機導入を要望する案を提示したと報じ、同案には3飛行隊目の16機を追加で調達要求する可能性もあると記載されていると紹介しました
///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

東欧ではポーランドとチェコに続き3番目

romania iohannis.jpg4月11日、ルーマニアのKlaus Iohannis大統領をトップとする最高国防評議会(Romanian Supreme Council on National Defense (CSAT))が、F-35導入を決定しました。購入機数や価格や受け入れ時程などは明らかにされていません

ルーマニアは現在、ポルトガルから購入した中古のF-16戦闘機を17機保有し、昨年2022年にはノルウェーから同じく中古のF-16戦闘機32機を購入する契約を結んだところであり、F-35を導入するにしても常時最低限の運用機数である4-8機を確保できる12機程度の導入が限界かと勝手に邪推いたしま

F-35 Romania.jpgルーマニア軍は、総兵力7万1500人、(陸軍3万5,500人、海軍6,800人、空軍11,700人、総合軍1万7,500人)ですから、約30機のF-16を維持運用するだけで十分大変だと思いますが、欧州全体で維持整備体制をうまく回して、少数機体の稼働率を確保するつもりでしょうか・・・

同じ東欧では既に2か国が・・・
●2020年1月に、ポーランドが32機のF-35導入を約6200億円で契約と発表
●2022年7月に、チェコが24機のF-35導入を目指し米国と価格交渉を開始すると発表(その後交渉妥結したとの記憶が・・・)

【ご参考】F-35導入を決定した国(カッコ内は購入予定機数)

●共同開発国(8か国)
豪州(100機), Denmark(27), Italy(90), Netherlands(37), Norway(52), 英国(138)、米国(2443)(空軍1763、海兵隊420、海軍260)、そしてカナダ(88機)
トルコも共同開発国ながら、ロシア製SAM購入で排除された

●FMS購入国(10か国)
Belgium(34機), Israel(19), 日本(42+100) , 韓国(40)、シンガポール(当面12機 最終的に約50機) ポーランド(32機 2020年1月)、スイス(32)、そして、フィンランド(64機)、ドイツ(最大35機)、チェコ(24機)、ルーマニア(機数非公開12機程度か?)

最近のF-35購入又は追加購入決定
「シンガポール追加」→https://holylandtokyo.com/2023/03/10/4343/
「カナダがやっと決定」→https://holylandtokyo.com/2023/01/12/4134/
「チェコが東欧で2番目」→https://holylandtokyo.com/2022/07/25/3492/
「ドイツも核任務用に」→https://holylandtokyo.com/2022/03/16/2920/
「フィンランドが15番目」→https://holylandtokyo.com/2021/12/14/2520/
「スイスが14番目の購入国に」→https://holylandtokyo.com/2021/07/02/1976/
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

F-35へのAETPエンジン搭載を断念しF135改修へ [亡国のF-35]

コストとF-35Bへの導入困難が背景に
P&WはF135改修型を2028年から提供開始と

f135 EEP.jpeg3月10日、Kendall空軍長官は2024年度予算案の説明の場で、過去2年間に渡り議論されてきたF-35エンジン問題について、次期制空機NGAD用に開発されてきたAETP(Adaptive Engine Transition Program)エンジンへの換装をコストとF-35B型機への搭載リスクから断念し、現F135エンジンの改修で対応すると明らかにしました。

F-35エンジン問題は、現在使用のF135(Pratt & Whitney製)のエンジンブレード耐久性が想定より低く、機体稼働率低迷と維持整備コスト増の大きな要因となっていることや、F-35「Block 4」がより大きな電源や冷却性能を必要とすることから持ち上がっていました

AETP XA-100.jpg米空軍はKendall空軍長官を先頭に、航続距離30%増で推力20%増以上の性能向上が得られ、機体への電力供給余裕も生まれ、対中国等の想定環境に必要な能力提供が可能となると主張してAETPエンジン(GE社のXA100かP&W社のXA101)搭載の決断を国防省に求めてきましたが、F135改修と比較して3倍のコストがかかり、F-35調達数の70-80機削減を迫られる可能性にも言及して国防省に判断をゆだねていたところです

また、米空軍がAETPで突っ走る中、米海軍や海兵隊やF-35購入同盟国がコスト負担に耐えられるかや、F-35B型やC形にAETPが対応可能かが問題として指摘されてきましたが、Kendall長官や国防省幹部は「コスト負担が難しく、またF-35B型機へのAETP搭載の技術的リスクが高い」とAETP断念の理由を説明した模様です

AETP XA-101.jpgP&W社からF-35エンジン供給を奪還しようとしてAETP搭載を強く推進していたGE社は、F-35B型機への対応問題を解決したと最近発表し、F-35「Block 4」以降へのパワー提供にはAETPが必要だと主張してきましたが、「この判断は大変残念だ」、「しかし2022年12月末に米空軍と締結した(次期制空機NGAD用に向けた)AETP開発予算で、XA100エンジンの更なる成熟に引き続き取り組んでいく」とコメントしています

引き続きF135エンジンの改修を担うことになったP&W社は、既に2023年度予算でF135改修の初期設計に着手しており、2028年から改修F135エンジンを提供可能だとし、既に10年かけて構築され稼働状態にある世界中のF-35エンジン整備施設や装備やサプライチェーンをそのまま使用できる点でも、コスト(AETP導入の1/3)と信頼性面で最も優れた選択だと改めて強調しています
///////////////////////////////////////////////////

AETP6.jpg剛腕のKendal空軍長官が強烈に押していたAETP採用が、あっさり却下されました。また昨年夏には、米空軍次世代エンジン開発担当技術者が、AETPエンジンを採用しないと「米国の先端航空エンジン産業基盤は1企業のみに縮小して崩壊する(collapse)」とまで発言していましたが、不採用となりました。

F-35を導入した同盟国や海軍海兵隊からの反発も大きかったのだろうと推測します。

米空軍はAETP導入コストとして8000億円との数字を上げていましたが、その1/3でも2600億円で、1機あたりの改修費がどの程度になるのかが気になるところです・・・

F-35のエンジン問題
「GE社とP&W社が異なる主張」→https://holylandtokyo.com/2022/09/29/3681/
「AETP採用なら調達機数削減!覚悟?」→https://holylandtokyo.com/2022/09/13/3644/
「AETP採用しないと産業基盤崩壊訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/08/24/3562/
「空軍長官:国防省に下駄預ける」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/
「空軍長官:数か月で決着すべき」→https://holylandtokyo.com/2022/05/26/3260/
「上院で議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

シンガポールが追加で8機F-35B型購入へ [亡国のF-35]

FacebookとTwitterもご活用ください!
Facebook→http://www.facebook.com/holylandsonettokyo
Twitter→https://twitter.com/Mongoose2011
///////////////////////////////////////////////////////////////

2020年同機4機を発注時の追加オプションを行使へ
60機保有のF-16C/D後継機として

F-35 Singapore4.jpg2月27日付Defense-Newsは、シンガポールのNg Eng Hen国防相が同国議会の予算審議で、2020年の4機発注で可能になったF-35シミュレータ使用や電子戦能力確認、更には既に運用を開始している他国への調査等を経て、4機購入時の契約に含まれていた追加購入8機のオプションを行使する決定をした説明したと報じています

同国空軍は、現在60機の能力向上改修を終えたF-16C/D型を3個飛行隊編成で保有していますが、2030年頃から機体寿命によるF-16の退役が始まるようで、その後継機として狭い国土環境等も考慮し、フル装備搭載でも200m程度の離陸滑走で発進でき、垂直着陸が可能なF-35B型を後継機に選定しています

F-35 Singapore8.jpgただし、通常離着陸型のF-35A型の調査も引き続き続けているようで、少佐(!)をリーダーとする5名で特別チームを編成し、2022年夏に豪州主催で実施されたF-35A型(豪州空軍)とB型(米海兵隊:岩国基地所属)の両方が参加したPitch Black演習(8/19~9/9)等の機会を利用して、したたかに柔軟に情報収集する様子を過去記事でご紹介したこともありました。(A型も導入する可能性が現在もあるのかは不明)

シンガポールはマレー半島の先端のマラッカ海峡を望む要衝に位置していますが、国土面積は60余りの島々を合わせても東京23区程度の大きさで、現在狭い国土に5つの飛行場を保有しているものの、都市化の波で内1個を閉鎖する方針が既に決まっているようで、F-35B型のような機体が有事の飛行場被害を想定すれば適しているのでしょう

F-35 Singapore5.jpgなお同国は、F-16C/D型機のパイロットや整備員養成部隊を、米軍との合意に基づきアリゾナ州Luke米空軍基地内に設置していますが、今後この米国駐留部隊をアーカンサス州のEbbing州空軍基地に移設し、2026年からのF-35B型機受け入れに備えると予定だそうです

【ご参考】F-35導入を決定した国(カッコ内は購入予定機数)

●共同開発国(8か国)
豪州(100機), Denmark(27), Italy(90), Netherlands(37), Norway(52), 英国(138)、米国(2443)(空軍1763、海兵隊420、海軍260)、そしてカナダ(88機)
トルコも共同開発国ながら、ロシア製SAM購入で排除された

●FMS購入国(9か国)
Belgium(34機), Israel(19), 日本(42+100) , 韓国(40)、シンガポール(当面12機 最終的に約50機) ポーランド(32機 2020年1月)、スイス(32)、そして、フィンランド(64機)、ドイツ(最大35機)、そして検討中なのがチェコ(24機)

シンガポールとF-35関連記事
「F-35B導入承認済もA型にも興味」→https://holylandtokyo.com/2022/09/15/3638/
「米がF-35B売却許可」→https://holylandtokyo.com/2020/01/15/866/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

全世界のF-35エンジン改修へ:事故から2か月でF-35エンジン供給再開へ [亡国のF-35]

【追記情報!】
3月2日、米国防省F-35計画室は、90日以内に全世界のF-35(890機以上)のエンジンの改修(retrofit)を行うよう「期限付技術指令TCTD:Time Compliance Technical Directive」を発表
改修は「安価で負担少ない inexpensive and non-intrusive」と
改修は各部隊で4-8時間で可能と説明
12月の「共振」は60万時間使用で初の稀ケースと
「誰が」改修費用負担するかJPOは語らず・・・
/////////////////////////////////////////

12月受入試験時の事故原因は「高周波共振」
極めて稀なケースとの判断で注意指示を出し飛行も再開へ

F-35B ejection2.jpg2月24日、米国防省F-35計画室JPOが、12月15日の新造機体受け入れ飛行試験でパイロットが緊急脱出するに至った事故を受け、F135エンジン受け入れと新造機等の受け入れ飛行試験を中止(少数の部隊配備機体飛行を含む)した件について、事故原因が「稀にしか発生しないエンジン内の高周波共振」で対策も見つかったので、近々エンジン供給と関係機体の飛行が再開されると声明を出しました

12月15日の事故は、ロッキード社から提供された新造F-35B型機の完成確認飛行試験をFort Worth工場の飛行場で行った際、低空ホバリング状態から機体が急降下して滑走路でバウンドし、機首と翼を地面にぶつけて機体がスピンし、パイロットが射出座席で脱出して軽傷を負った事故で、その直後から新造機及び一部機体が飛行禁止になり、12月27日からF135エンジン提供停止措置が取られ現在に至っています

偶然民間人が撮影していた事故映像(約90秒)


事故当初は高圧燃料チューブの破損が原因ではとの情報が流れましたが、まもなく同チューブには問題がなかったと明らかになり、その後2月9日頃から、「稀に発生する高周波共振:a rare harmonic resonance problem」が原因との発言がエンジン製造のP&W社等から聞かれるようになっていました

F-35B ejection.jpg2月24日の声明でF-35計画室JPOは、「政府機関と関連企業チームが議論している対策を講じることで、F135エンジンに稀に発生する事象の影響を確実に局限することができ、影響を受けている機体の飛行を再開できるだろう」と明らかにしています。

またF-35計画室JPOは、「現在政府は、飛行停止になっている(一部の少数機を保有する)部隊と(新造機の飛行試験を中断している)ロッキードに対する、安全な飛行再開のための指示事項を取りまとめている」と声明で述べ、関係者は今後1-2週間で関連飛行が再開されるだろうと語っているようです

F-35B ejection4.jpg米空軍報道官は2月中旬に、米空軍の保有F-35で飛行停止指示を受けている機体は無いが、初期型エンジン搭載機体の燃料スロットルバルブの生産に影響があるとのニュアンスで語っていたようですが、主に米空軍部隊用の新造機が出荷停止措置を受け、2月中旬現在で、ロッキード社工場内で21機が出荷待ち状態だそうです。

米空軍はP&W社製F135エンジンの耐久性問題解決やエンジンの能力向上を狙い、次世代エンジンAETPのF-35搭載を決断するよう国防省に要望していますが、AETPエンジンはP&W社とGE社が開発を競っていることもあり、「稀に発生する高周波共振」問題は様々な方面を「揺り動かす」可能性を秘めています。

2月28日にP&W社が会見をやるそうで、追加情報があれば冒頭に追記します。

F-35のエンジン換装問題
「GE社とP&W社が異なる主張」→https://holylandtokyo.com/2022/09/29/3681/
「AETP採用なら調達機数削減!覚悟?」→https://holylandtokyo.com/2022/09/13/3644/
「AETP採用しないと産業基盤崩壊訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/08/24/3562/
「空軍長官:国防省に下駄預ける」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/
「空軍長官:数か月で決着すべき」→https://holylandtokyo.com/2022/05/26/3260/
「上院で議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/
次期制空機NGAD用のAETPエンジン開発
「プロトタイプ開発契約に機体メーカーも」→https://holylandtokyo.com/2022/09/01/3581/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

F-35が太陽の無い氷点下40度の最北基地に初展開 [亡国のF-35]

グリーンランドのThule空軍基地へ4機
太陽の出ない最低零下40度の環境下で2週間
NOBLE DEFENDER作戦の一環で

Thule AB6.jpg1月31日までの約2週間、米空軍の最北端基地であるグリーンランドのThule空軍基地に4機のF-35Aが初めて展開し、太陽の出ない最低気温零下40度の厳しい環境での訓練を行いました。

報道記録によれば、2018年初旬にアラスカのアイルソン基地にF-35数機が展開した際は、機体バッテリーが低温環境に対応できず、離陸後に警報信号が出て緊急着陸に至った事案もあったようですが、バッテリー保温装置の改良等を経て、無事今回の訓練展開を乗り切ったとのことです。

Thule AB7.jpg「訓練」だとご紹介していますが、厳密には北極圏エリアで米軍のプレゼンスを示すため北米防空司令部が行う「Operation NOBLE DEFENDER」との作戦行動の一環で、数か月に1回の頻度で実施されているようですが、今回は米空軍F-35の他にE-3早期警戒管制機、KC-135空中給油機、加えてカナダ空軍からCF-18戦闘機とCC-150輸送機やCH-149輸送ヘリも参加し、厳冬環境での運用能力を示したようです

Thule AB4.jpgなお米空軍最北端基地であるThule空軍基地は、基地司令官を米宇宙軍大佐が務める約150名体制の基地で、普段は弾道ミサイル監視レーダー(AN/FPS-132)を運用して米本土の防空最前線を担う基地で、更に今回の訓練ではグリーンランド各地に設置されている「Forward Operating Location」数か所の展開先も含め計約230名の米軍とカナダ軍兵士が展開したと報道されています

これまでも取り上げたように、地球温暖化を受けた北極圏の氷の減少で、北極航路の開拓等の北極を巡る勢力圏争いが激化の様相を呈しており、ロシアの同地域ので活動活発化の他、中国の砕氷船まで進出するなど、米軍としても見過ごすわけにはいかない状況となっています

Thule AB5.jpgグリーンランドは現在、デンマーク王国を構成する一つの自治政府として自ら統治していますが、デンマークは既にF-35を導入&運用開始しており、北極圏周辺ではノルウェーも領空保全対処(スクランブル待機)をF-35で開始しています。またカナダも先日88機のF-35導入を決定したところで、極圏でのF-35の運用は一つの重要なパーツとして期待されています

北極圏関連の記事
「ノルウェーがF-35を世界初?の領空保全任務に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/12/2598/
「グリーランドに中国企業」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08-4
「北極航路ブームは幻想?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-13

米国防省と米軍の動き
「米唯一の大型稼働砕氷艦が運行不能」→https://holylandtokyo.com/2020/08/28/535/
「大統領が米砕氷艦計画の再評価指示」→https://holylandtokyo.com/2020/07/06/565/
「米空軍2トップの寄稿;北極圏と米空軍」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-13
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02

ロシアの北極圏活動
「ロシアが北極圏の新しい軍基地公開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-30
「露軍が北極に部隊増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04-1
「露が北極基地建設を加速」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-09

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

カナダが正式に88機F-35A導入発表 [亡国のF-35]

初度4機を2026年に、2032年までに全機を
寒冷地での運用実績やサプライチェーン安定を受け

Canada F-35.jpg1月9日、カナダのAnita Anand国防相は、CF-18戦闘機の後継としてF-35を第1候補にすると2022年3月に発表してところ、88機を2032年までに調達する過去30年間でカナダ空軍最大の投資案件になることを正式に決定したと発表し、2026年に4機、27年に6機、28年に6機を当面導入予定だと明らかにしました

また、F-35導入決定が遅れたことで138機保有のCF-18の維持が困難になっていることに関し同女性国防相は、豪州から導入決定している中古FA-18と現有CF-18の延命アップグレードにより、F-35導入完了2032年までの間に戦闘機不足に陥らないよう対応すると説明しています

Canada F-35 3.jpgカナダは8か国の「共同開発国」としてF-35開発開始当初から参画していましたが、策士であるトルドー首相の下、F-35共同開発国ながら同機の開発遅れや価格高騰を理由に購入決定を延期し続け、「つなぎ戦闘機」として豪空軍中古F-18購入まで決断していましたが、2018年頃から複数機種を候補に「情勢をしっかり見極める機種選定」を再開し、2022年3月に「F-35を第1候補、グリペンを第2候補に指定し、F-35で価格交渉がとん挫すればグリペンにする」と「粘り腰」発表していたところです

この「情勢をしっかり見極める機種選定」を振り返り同国防相は、「F-35はこの間に成熟した。サプライチェーン問題も懸念はなく、カナダは同機が期限内に納入されると確信し、CF-18退役を進められると判断した」と述べ、更にカナダ特有の寒冷地運用の懸念に関しても、ノルウェーや米軍アラスカでの運用実績が懸念を払しょくし、北極圏でのドラッグシュート運用や「磁北でなく真北での運用」にも取り組んでいくと説明しています

Canada F-35 2.jpgまた同国防相は具体的なカナダでの運用&訓練拠点基地に関し、ケベック州のBagotville基地とアルバータ州のCold Lake基地を計画していると明らかにしました

F-35導入に関連する国内産業への恩恵について、既に共同開発国としての参画で約4000億円規模を確保し、今後25年間は3300もの雇用を生み出すとし、その数値はさらに拡大するだろうと期待を同国防相は表明しています
//////////////////////////////////////////////

Canada F-35 4.jpg価格交渉も想定内で収まり、サプライチェーン問題にも懸念は無いとの発表ですが、F-35の維持費高止まりやエンジン問題などに改善変化が全くない中ですので、種々の国際情勢を総合的に勘案した「政治的決断」と理解するのが適当でしょう

ロッキード社はカナダの発表に併せ、現時点でF-35戦闘機は既に890機以上が9か国の27基地で運用されているとアピールしています。

F-35導入を決定した国(カッコ内は購入予定機数)

●共同開発国(8か国)
豪州(100機), Denmark(27), Italy(90), Netherlands(37), Norway(52), 英国(138)、米国(2443)(空軍1763、海兵隊420、海軍260)、そしてカナダ(88機)
トルコも共同開発国ながら、ロシア製SAM購入で排除された

●FMS購入国(9か国)
Belgium(34機), Israel(19), 日本(42+100) , 韓国(40)、シンガポール(当面12機 最終的に約50機) ポーランド(32機 2020年1月)、スイス(32)、そして、フィンランド(64機)、ドイツ(最大35機)、そして検討中なのがチェコ(24機)

策士トルドー首相カナダ選定の紆余曲折
「F-35を第1候補に決定」→https://holylandtokyo.com/2022/03/31/3061/
「仕切り直し再開か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-03
「カナダが中古の豪州FA-18購入へ!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-10
「痛快:カナダがF-35購入5年延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-23
「カナダに軍配:旅客機紛争」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-28
「米加の航空機貿易戦争に英が参戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-16-1
「第2弾:米カナダ防衛貿易戦争」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-04
「5月18日が開戦日!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-20

「ノルウェーがF-35を領空保全任務に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/12/2598/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

欧州F-35運用国が集結して機体の相互整備議論 [亡国のF-35]

TornadoやEurofighterで実績のある手法
共同訓練や有事展開の際の相互支援で国境をまたぐ柔軟運用
整備作業の標準化(standardization)で

F-35 Air force chiefs.jpg11月22日、イタリアで実施中の多国間航空演習「Falcon Strike 2022」のタイミングに併せ、欧州でF-35を運用中または導入予定の11か国の空軍トップが一堂に会し、F-35が国境を越えて機動展開した際に、展開先のF-35保有国が燃料補給や弾薬搭載を含む基礎的な整備作業を相互支援(shared maintenanceとかcross servicingと表現)することを話し合った模様です

同空軍トップ会議への欧州からの参加国は、Finland, Poland, Belgium, Israel, Norway, Denmark, the Netherlands, Italy, the U.K.で、これに米国とカナダが加わった11か国と23日付Defense-News記事は紹介していますが、会議場のパネルには、日本の国旗のようなデザインも見られ、気になることろです

F-35 Air force chiefs3.jpgこのような基礎的整備作業の相互運用性確立は、既に欧州共同開発の「Tornado」や「Eurofighter」で実績のある手法らしく、当日は「Falcon Strike 2022」に参加中のオランダ空軍兵士がイタリア空軍F-35の再発進準備を行う模様がメディアや各国空軍トップに披露されたそうです

この相互整備の利点について伊空軍トップは、「現在は伊F-35をオランダに展開すると、約100名の伊空軍兵士を派遣する必要があるが、オランダから「shared maintenance」支援を受けることで、派遣要員を30~50人にまで縮小することが可能」とメディアに語っています

F-35 Air force chiefs4.jpg同時に会議に参加のオランダ空軍トップは、「イタリア北部のCameri飛行場に設置されているF-35のFACO(最終組み立て工場)で、整備作業も可能になればよいと思う。同施設の組み立て品質等の能力評価を行って検討すべきだ」、「フェラーリが作れる国なんだから、F-35だって大丈夫だ・・・と皆で話し合っていたところだ」とも語り、欧州内でのF-35維持整備体制の強化にも話が及んでいることを示唆しています

このようなF-35整備作業の標準化(standardization)の機運が高まている背景には、現時点で既に欧州諸国保有F-35が約140機に達し、2034年にはこの数が600機を超える可能性があり、整備作業の標準化が大きな効果を発揮する素地が生まれつつがあるからです

F-35 Bloomberg.jpg更に言うまでもなく、ウクライナを侵略するロシアへの欧州やNATOとしての団結強化をアピールする手段として、非常に重要な役割を果たすと関係国に認識されており、James Hecker欧州アフリカ米空軍司令官は、

「NATOに敵対する者への強いメッセージとなる」、「ウクライナでは誰も航空優勢(air superiority)を確保していないから数十万人もの死傷者が出ている。西側が航空優勢を握っていた20年間のアフガンでの戦いより圧倒的に犠牲者が多い」、「航空優勢の重要性をウクライナは示している」と、整備作業の標準化による基礎的整備作業の相互運用性確立を航空優勢の基礎として重要だと訴えています
////////////////////////////////////////////////////

F-35 Air force chiefs2.JPGF-35の基礎的な整備作業の標準化(standardization)により、国境をまたいで展開するF-35の整備作業を国家間で相互支援(shared maintenanceとかcross servicing)するという素晴らしい取り組みで、「Tornado」や「Eurofighter」での実績もある実効性のあるチャレンジです。ぜひ取り組みが成熟することを祈ります

ただ、欧州諸国購入と米国が欧州に展開するF-35が「2034年には600機を超える可能性」については明確に否定しておきます。戦闘機の重要性がテレビの視聴率並みに急激右肩下がりの中で、機体価格が右肩上がりになり、維持費も高止まりなF-35を、計画通りに購入し続ける国など欧州には無いと思います

ウクライナで「誰も航空優勢を確保していない」とのご主張ですが、戦闘機で航空優勢を確保することはもっと難しい時代になっていることに気付くべきだと思います。戦闘機で航空優勢を確保したつもりでも、そんな戦闘機の根拠基地はすぐにミサイルや無人機やサイバー攻撃で安価に無効化されますよ。ウクライナの現実に素直に目を向けるべきです

戦闘機による航空優勢なんて・・・
「イラン製無人機がウで猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「ウ侵略は通信へのサイバー攻撃で開始」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「ウで戦闘機による制空の時代は終焉」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/
「嘉手納F-15撤退を米空軍の構想から見る」→https://holylandtokyo.com/2022/11/09/3904/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

F-35エンジン問題にGE社とP&W社が異なる主張 [亡国のF-35]

共に2016年からAETPエンジンを開発するライバル同士
GE社がF-35エンジン換装を強く主張するも
P&W社はAETPへの換装に反対で現F135改修を主張

AETP XA-100 2.jpg9月12日、2016年から次世代戦闘機用エンジン開発計画AETP(Adaptive Engine Transition Program)にそれぞれ取り組んでいる2社(GE社とP&W社:米空軍と契約)の一つGE Aviation社が、テネシー州にある米空軍の開発施設(AEDC)で3月から8月にかけ実施していた同社製XA100エンジンの性能確認試験をクリアし、契約が求める大きな関門を突破し本格的な開発製造段階に向けた大きな一歩を達成したと発表しました

AETP 5.jpgAETPに関しては繰り返しご紹介しているように、現在使用されているF-35用エンジンF135(Pratt & Whitney製)のエンジンブレード耐久性が想定より低く、機体稼働率低迷と維持整備コスト増の大きな要因となっていることから、次期制空機NGAD用に開発中のAETPエンジンをF-35にも応用開発して搭載するか、現F135エンジン改修を行うか、現F135エンジンの維持整備体制等を強化して「しのぐ」か等の選択を迫られている状態にあり、本日もF-35エンジン問題対処関連でご紹介しているものです

AETP XA100.jpgGE社は発表声明で、「わが社はAETPエンジンXA100の設計開発段階に進む準備を完了し、F-35に2020年代末までに同エンジンを提供する準備を確立した」、「この試験は、本格生産AETPエンジン変わらない規模重量の試作エンジンに対して行われ、F-35(Block 4)に対し、現装備エンジンより航続距離3割増し・推力2割推力増しのエンジン提供が可能なことを示した。わが社のXA100は米空軍の目指す性能を満たした唯一の戦闘機エンジンとなった」と自信を示しました

AETP XA-101.jpgこのGE発表に対し、同じくAETPエンジン開発を行っているPratt & Whitney社は、同社のAETPエンジン(XA101)開発は計画通り進んでいるとの声明を発表すると同時に、AETPは開発の本来目的である次世代制空機NGADへの搭載が最適であり、F-35への搭載は推奨できず、F-35のP&W社製F135エンジン問題に対しては安全リスクや価格から、F135改修案(EEP:Enhanced Engine Package)が最適だと主張しています

以下では、GE社とP&W社の主張の違いをご紹介
(論点はかみ合っていませんが、各種報道より)
 
GE社の主張
AETP XA-100.jpg●AETPエンジン(XA100)搭載により、航続距離30%増、推力20%増以上の性能向上得られ、また機体への電力供給余裕も生まれて、対中国等の想定環境に必要な能力提供が可能となる
●単発エンジン機であるF-35のエンジン換装に関し、安全リスクを指摘する意見があるが、同じ単発エンジン機で世界的ベストセラーの戦闘機F-16でも、当初P&W社製だったエンジンを、後のバージョンでGE製に換装した経験もあり、問題がないことを示している

P&W社の主張
f135 EEP.jpeg●F135エンジン改修案(EEP:Enhanced Engine Package)は、最も迅速に、費用対効果良く、低リスクでF-35(Block 4)の要求性能を提供でき、同時にライフサイクルコストを5兆円抑制する案である
●単発エンジン機であるF-35に、今になってエンジン換装を行うのは極めて安全上のリスクが高く、かつ高コストである。また垂直着陸型F-35BにはAETPは搭載できない。(問題はあるが)F135エンジンは既に100万時間の飛行実績を重ねた頼れるエンジンである。
●このようなエンジン換装を持ち出すことは、F-35導入決断した同盟国等との関係にダメージを与えることになる

Kendall SASC3.jpg注・・・AETPコストはKendall空軍長官によれば、AETPをF-35に搭載するには開発費等初期投資とエンジン調達費に約8000億円必要で、F135エンジン改修EEPオプション費用の3倍で、ライフサイクルコスト換算だと4兆3000億円も現エンジン改修より高価
//////////////////////////////////////////////////////

F-35エンジン問題をしつこく取り上げているのは、米空軍を中心とした米軍予算への影響が極めて大きいこともありますが、P&W社も持ち出している「F-35導入決断した同盟国との関係へのダメージ」が気になるからです。

F-35 Singapore6.jpgこのままだと、F-35導入機数で米国に次ぐ機数になりそうな日本への影響が気になるからです。「もう、F-35のことを取り上げないでくれ・・・」とのコメントを頂くことがありますが、日本の限られた防衛予算を考えると、F-35への投資が極めて大きな負のインパクトを与えることは、コメントされた方ご自身が一番わかっていらっしゃると思います

引き続き生暖かく「亡国のF-35」を見ていきたいと思います。

F-35のエンジン問題
「AETP採用なら調達機数削減!覚悟?」→https://holylandtokyo.com/2022/09/13/3644/
「AETP採用しないと産業基盤崩壊訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/08/24/3562/
「空軍長官:国防省に下駄預ける」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/
「空軍長官:数か月で決着すべき」→https://holylandtokyo.com/2022/05/26/3260/
「上院で議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/

次期制空機NGAD用のAETPエンジン開発
「プロトタイプ開発契約に機体メーカーも」→https://holylandtokyo.com/2022/09/01/3581/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

F-35エンジン換装なら調達機数削減示唆 [亡国のF-35]

空軍長官がAETPエンジン導入主張しつつ意味深発言
「AETPは高価なエンジン」「概算で70機分削減だ」
AETP採用しないと軍需産業崩壊発言には「言い過ぎ」

Kendall SASC3.jpg9月7日、Kendall空軍長官がDefense-News主催のパネル討議でF-35エンジン問題について国防省レベルでの早期決断を促すとともに、自身が希望する新エンジンAETPへの換装を選択した場合、F-35用への開発だけで8000億円以上必要なことから、米空軍は概算でF-35調達機数を70機削減する厳しい選択を迫られると語りました

繰り返しご紹介してきたようにこの問題は、現在使用されているF-35用エンジンF135(Pratt & Whitney)のエンジンブレードの耐久性が想定より低く、機体稼働率低迷と維持整備コスト増の大きな要因となっていることから、次期制空機用に開発中のAETPエンジンをF-35に適応開発して搭載するか、現F135エンジン改修を行うか、現F135エンジンの維持整備体制等を強化して「しのぐ」か等の選択を迫られている件です

AETP XA-100.jpg空軍長官はかねてより、高価(F135改修の3倍)だが出力や燃料消費効率が3割近く改善するAETP採用を希望していますが、一方でF-35が米海軍海兵隊や同盟国でも広く採用されていることから、国防省レベルで2024年度予算議論の中で早期決断すべきであり、「いつまでもAETPのF-35適応開発検討に予算を注ぎ込んでいられない」と国防副長官や調達担当国防次官に訴えてきたところです

7日のパネル討議で空軍長官は、「既に数百機のF-35を保有している我々は、高価な開発費が必要なAETPエンジンをどのようにどの程度導入するかを考えねばならない。概算で開発費は70機分のF-35に相当し、新エンジンを導入するには70機少ないF-35で我慢することが求められる」と具体的に語っています

AETP XA-101.jpgAETPのF-35用適応開発費は8000億円強で70機相当なのかもしれませんが、AETP導入でライフサイクルコストが4兆3000億円に膨らむとも報道されており、F135改修案よりも遥かに高額で、これを米空軍内で納めようとすると70機の削減では済まないとも考えられます

また同空軍長官はパネル討議で、8月11日に空軍エンジン開発担当幹部が「AETPへの換装を選択しないと、エンジン関連の軍需産業基盤が崩壊する」と発言して物議を醸している件については、「言い過ぎだ:overstatement」と述べ、軍需産業界に健全な競争環境を維持することは関係者が常々考えていることで、引き続き念頭に置いておく必要がある課題だと述べるにとどめています

AETP XA100.jpg更に次期制空機NGAD用のエンジンAETPプロトタイプ製造契約に関し、それぞれにエンジン試作中のGE 社(XA100エンジン)とPratt & Whitney社(XA101エンジン)に加え、競い合っているはずの機体開発3企業ボーイング、ロッキード、N-グラマンも含むことを8月19日に米空軍が発表して話題になりましたが、この件についてKendall長官は「製造されるエンジン数は、F-35と比較するとmodestだ」と語り、1期数百億円だと同長官が表現したNGADの調達機数が少なくなることを示唆しています
//////////////////////////////////////////////

7日のパネル討議で「70機」という数字を出したKendall空軍長官の意図はよくわかりません。

AETP XA100 2.jpg単に、8000億円以上と言われる高価な開発費のイメージを表現したのか、空軍は70機調達機数を削減してでもAETPを希望すると主張したかったのか、ライフサイクルコストまで含めると跳ね上がる経費を飲み込むため、現在の1763機調達予定数を350-400機削減することへの前振りなのか、同盟国等への迷惑な強制情報提供なのか・・・

益々「亡国のF-35」との表現がふさわしい戦闘機となってきたF-35について、今後とも生暖かく見守っていきますが、世界各国の空軍でF-35を担当させられている有能な働き盛りの皆様が直面する苦悩を思うと、本当に胸が痛みます

F-35のエンジン問題
「AETP採用しないと産業基盤崩壊訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/08/24/3562/
「空軍長官:国防省に下駄預ける」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/
「空軍長官:数か月で決着すべき」→https://holylandtokyo.com/2022/05/26/3260/
「上院で議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/

次期制空機NGAD用のAETPエンジン開発
「プロトタイプ開発契約に機体メーカーも」→https://holylandtokyo.com/2022/09/01/3581/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

F-35データを僻地展開先から伝送する試験に成功 [亡国のF-35]

4-5月にアラスカで予備試験し、6月にパラオでの演習で検証
大尉以下5名のチームがPACAFの命を受け挑戦し成功
7日間で100ソーティー分50ギガバイト情報を伝送

644th Combat 3.jpg8月19日付米空軍協会web記事が、F-35運用開始以来の課題とされてきた、「AFNet:Air Force Network」に接続できない設備不十分な基地をF-35が拠点にした場合の膨大な蓄積データの伝送に関し、前線通信部隊の提案を太平洋空軍が予算を付けて検証させ、様々な許認可や組織の壁を乗り越えて世界中で使用可能な手法を生み出し、ACE構想(agile combat employment)推進に大きく貢献していると紹介しています

644th Combat 2.JPG提案したのはグアムのアンダーセン基地に拠点を置く第644戦闘通信隊で、同部隊の大尉以下5名のチームが今年4月から5月にかけての30日間、西太平洋の離島に見立てたアラスカのアイルソン基地に展開し、F-35を開発したロッキード社や国防省ネットワークシステム庁、更に各地の戦闘通信部隊と連携しつつ、同部隊が保有する約250㎏の機動展開用通信キットを少し改良し、各種ネットワーク連接許可を「官僚制の壁」を乗り越えて獲得し、衛星通信利用許可も得て成功したということです

アラスカでの30日間の検証の成果は、直ちに6月に実施された「Valiant Shield」演習でも試され、パラオに展開したF-35データの伝送利用に成功した模様で、F-35が世界中のどの辺鄙な場所を拠点として活動しても、「空飛ぶ計算機」とか「空飛ぶデータセンター」と呼ばれるF-35集積蓄積したデータを迅速に共有して有効活用可能にする基礎技術が確立された模様です

644th Combat 5.jpg具体的に第644戦闘通信隊の大尉以下5名のチームが、どのような手法を用いて長年の課題を克服したかまんぐーすは記事から理解できませんでしたが、5名のチームを率いた大尉は、12年の空軍キャリアのうちの9年間も各地に展開してネットワーク構築する業務に従事し、陸海海兵隊のほか同盟国との現地調整に当たってきた経験を持つ「現場を熟知した」人材で、現場目線で温めてきたアイディアをチャンスを生かして実現したようです

644th Combat.jpg記事には、通常辺鄙な展開先に確立される通信速度や通信容量の細い戦術ネットワークを組み合わせ、少し大きい衛星通信用のアンテナを用い、太平洋空軍司令部の「お墨付き」を背景に各種のネットワーク接続許可や衛星通信使用許可も得て実現に至ったと説明されています。また、F-35展開先に必ずしも通信ネットワーク装備を展開させなくても、「hub-and-spoke concept」で実現可能なシステム構成になっているようです

様々な試行錯誤を経てネットワークを構築し、最終的にアラスカのアイルソン基地で、「7日間でF-35が蓄積した100ソーティー分の情報50ギガバイト分を伝送」できたことがどれほどの意味を持つのかまんぐーすは説明できませんが、同チームの軍曹は「これで世界中のどこにF-35が降り立っても、データを共有できる」と語っています
//////////////////////////////////////////////////

644th Combat 6.JPGF-35が「空飛ぶ計算機」とか「空飛ぶデータセンター」と呼ばれる意味をよく理解しておらず、記事が伝えようとしているこの試験の意義を十分に把握できていないまんぐーすですが、通信ネットーク構築と言う極めて重要ながら一部の専門家しか理解していない事項が、「軍事組織の官僚機構」の中で「最適化」されずに放置されている様子が伺えるような気がします

記事の中には「官僚機構」「許可申請」との言葉が何回か使用され、太平洋空軍司令部の「お墨付き」で壁を乗り越えていった様子が示唆されており、現場の意見やアイディアが改善に結び付きにくい現状を暴露した事例のような気がしてなりません

644th Combat 4.jpgSpaceXがロシアの妨害に負けず、「Starlink」を生かしてウクライナのネット接続を守った迅速適切な対応を、国防省電子戦担当幹部が「涙が出るほど素晴らしい」「国防省ではこれほど迅速な対応はできない」と吐露した教訓も生々しいところですが、なかなが巨大な軍事組織が変われない事例が一つF-35関連で明らかになったと理解しています

SpaceXがウクライナへのネット接続を死守
「ロシアの電子戦に迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/

最近のF-35関連記事
「エンジン換装問題の早期決着を要求」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/
「射出座席問題で飛行停止」→https://holylandtokyo.com/2022/08/04/3531/
「チェコが18番目の導入候補国に」→https://holylandtokyo.com/2022/07/25/3492/
「米海軍が調達ペース抑制へ」→https://holylandtokyo.com/2022/07/07/3420/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

恫喝:F-35に新エンジン搭載しないと産業基盤崩壊と [亡国のF-35]

AETPをF-35に搭載しないと1企業のみ生存と訴え
現装備F135エンジン改修より3倍高コストのAETP推進
燃費25%・航続距離30%・推力倍増とアピールの亡国ぶり

AETP XA100.jpg8月11日、米空軍主催の「Life Cycle Industry Day」で米空軍次世代戦闘機エンジン開発担当John Sneden氏が記者団に、耐久性不足で稼働率が低迷するF-35エンジン問題に対し、仮に米国防省が新型次世代エンジンAETP(Adaptive Engine Transition Program)への換装を選択せず、現F135エンジンの継続使用や同エンジンの改修案を採用したなら、米国の先端航空エンジン産業基盤は1企業のみに縮小して「崩壊する:collapse」と恫喝しました

この問題は、F-35のF135エンジンのエンジンブレード耐久性が不足し、当初予想より修理整備作業が頻発してF-35稼働率を低迷させている件で、現F135エンジンを改修するオプションか、新エンジンAETPへの換装を進めるかの選択を2024年度予算案取りまとめ課程で決断を迫られているものです。

AETP XA100 2.jpgただでさえ維持整備費が第4世代機の2倍近くに高止まりして英国等のF-35購入国から非難の声が上がり、米軍内で調達機数削減の検討が行われている中、傷口に塩を刷り込むように米空軍長官らが国防省調達担当次官やF-35計画室に高価な新エンジンAETPへの換装決断を迫っているものです

8月16日付Defense-News記事によれば、F-35導入中の他軍種や同盟国等との関係があるので国防省がどのオプションを採用するか最終決定を行うべきだと米空軍が「下駄を預けた」形になっている本件に関し、新エンジンAETP採用なら開発費等を含めて生産に約8000億円の見積もりで、F135エンジン改修オプションの費用3倍で、ライフサイクルコスト換算だと4兆3000億円も現エンジン改修より高価だそうです

AETP XA-100 3.jpgただGE 社(XA100)とPratt & Whitney社(XA101)がそれぞれ独自開発しているAETPはデモ段階で、燃費25%改善・航続距離30%増・推力倍増の結果を示しているそうで、対中国作戦には不可欠だと米空軍は主張しているようです

同時に同エンジン開発担当John Sneden氏は記者団に、恫喝とも泣き落としとも思われる作戦を繰り出し、国防省がAETPをF-35新エンジンに採用してくれたなら、2024年から本格開発フェーズに入って2030年までに提供可能となり、NGADのエンジン選定が予定される2024年のタイミングとも合致して丁度良いが、仮に採用されないと米国先進エンジン開発産業基盤は1社体制になって競争環境を失い「崩壊する:collapse」との論を展開していま

AETP XA-100 2.jpg各オプションのコストやスケジュールやエンジン性能改善貢献度を、米海空海兵隊の協力を得て国防省F-35計画室が今年夏に取りまとめる予定で、更に米空軍は別途、各オプションが実際の作戦運用場面でのどのようなインパクトを与えるのかを検討して9月にまとめるようです
/////////////////////////////////////////////////////////

足元では、7月末にチェコ共和国が18番目のF-35購入候補国に名乗りを上げたところですが、皆さん懐具合は大丈夫なんでしょうか? 現時点で1760機を購入予定としている米空軍は、恐らくエンジン問題対処へのコストも含めて総調達機数の削減案を検討するでしょうし、1000機を切ることは確実でしょう。

AETP XA100 3.jpg規模の縮小は更なる維持整備コストのアップにつながり、他軍種や同盟国等の購入機数削減縮小を導きます。そしてこの「負のスパイラル」が「亡国のF-35」の本質であり、意思決定に時間が必要な日本は負の影響をたっぷり受けることになるでしょう・・・残念ながら。本当にこの件に関係する人材は気の毒です・・・

F-35のエンジン問題
「空軍長官:国防省に下駄預ける」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/
「空軍長官:数か月で決着すべき」→https://holylandtokyo.com/2022/05/26/3260/
「上院で議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース
前の15件 | - 亡国のF-35 ブログトップ