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無人機MQ-9が前線再武装&給油基地から初の再発進 [米空軍]

1月4日まで更新は行いません。皆様、良いお年を!

根拠基地に戻ることなく前線展開拠点から再発進
衛星通信で遠隔「SATCOM Launch and Recovery」実施
HC-130J Combat King IIと地上でつないで給油

MQ-9 FARP.jpg12月21日付米空軍webサイトが、ACE構想の一環として12月10日に米中央軍エリアの非公開飛行場で、無人攻撃機MQ-9が根拠基地ではないFARP(前線再武装&燃料補給拠点:Forward Arming and Refueling Point)で、HC-130J Combat King IIから燃料補給を受け、米本土フロリダから衛星通信経由の遠隔操作離発着「SATCOM Launch and Recovery」を実戦エリア内で初めて行ったと公表しました

ACE構想(Agile Combat Employment)は、従来の設備十分な大規模基地からの航空戦力運用では敵攻撃に脆弱であることから、戦力を設備不十分な基地に分散して運用、又は戦力を機敏かつ柔軟に移動させて運用する構想で、対中国の本格紛争を念頭に米空軍全体で習熟に取り組んでいる構想です

MQ-9 FARP3.jpgACE構想推進の一環として考え出されたFARP(前線再武装&燃料補給拠点)は、航空機の再発進準備(弾薬と燃料補給)を支援する空軍兵士や地上支援設備が不十分な場所でも再発進を可能にした場所で、細部は不明ながら、12月10日は米中央軍配下の最低限人数の兵士がHC-130J Combat King IIとMQ-9をホースでつないでの燃料補給や地上支援を行って、再発進を成功させたとのことです

またMQ-9の離発着に関しても、現場の地上要員になるべく依存せず実施できるように新規開発&導入された衛星通信による「SATCOM Launch and Recovery」システムを活用し、これまで不可能だった「ground operations, taxi, takeoff and land」をフロリダ州Hurlburt Field基地から遠隔操作で初めて実施して、空輸支援や兵站支援負担を大幅に軽減したのことです。

MQ-9 FARP4.jpgご紹介している見難い写真からお分かりのように、米空軍は12月10日の夜に同初ミッションを行ったとしており、11日早朝にシリア東部で行われた対ISIS作戦との関係が噂されているようですが、米空軍も中央軍もノーコメントのようです。

このブログでご紹介するのが初めての2つの言葉、FARP(前線再武装&燃料補給拠点:Forward Arming and Refueling Point)と、「SATCOM Launch and Recovery」を、ACE構想や無人攻撃機MQ-9と合わせてご記憶ください。

MQ-9 FARP2.jpg米空軍MQ-9部隊は、鹿児島県の海上自衛隊の鹿屋基地に「Permanent Home」(日本政府発表は1年間の派遣)を今年10月23日に開設しました。

今回は米中央軍作戦エリアでの「FARP」や「SATCOM Launch and Recovery」ですが、対中国最前線の日本でも、この言葉が使われるようになるのでしょう・・・

MQ-9関連の記事
「海自鹿屋基地に米空軍MQ-9部隊設置」→https://holylandtokyo.com/2022/10/27/3811/
「2022年秋に日本に配備!?」→https://holylandtokyo.com/2022/08/08/3538/
「一般公道で離発着訓練」→https://holylandtokyo.com/2022/07/12/3426/
「4大シンクタンクがMQ-9の継続活用要望」→https://holylandtokyo.com/2021/11/29/2464/
「2回目の対中国応用演習」→https://holylandtokyo.com/2021/05/01/211/
「豪州へ12機輸出承認」→https://holylandtokyo.com/2021/04/29/119/
「本格紛争用に約1/4を改修&延命へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/28/118/

ACE関連記事
「生みの親が語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「欧州米空軍がACE構想の確認演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「F-22が岩国展開訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-13
「F-15EにJDAM輸送任務を」→https://holylandtokyo.com/2021/03/09/156/
「GuamでF-35とF-16が不整地離着陸」→https://holylandtokyo.com/2021/01/29/310/
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/
「中東派遣F-35部隊も」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「三沢で訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21

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米空軍が極超音速兵器契約:サプライズな企業と [米空軍]

当初想定のBoeing, Lockheed, Raytheonではなく・・・
戦闘機搭載HAWC型で多様な弾頭やセンサー複数型開発へ
F-15EX胴体下部搭載を当面目標か

Mayhem hyper.jpg12月16日、米空軍は2028年10月までの70か月をかけて取り組む極超音速兵器開発の通称「Mayhem」プロジェクト(正式にはExpendable Hypersonic Air-Breathing Multi-Mission Demonstrator Program)を、新興企業Leidosと約450億円で結ぶことに決定したと発表しました

「Mayhem」プロジェクトは、先日3回連続発射試験成功をご紹介した爆撃機搭載の滑空型ARRW(AGM-183A Air-launched Rapid Response Weapon)とは異なり、戦闘機搭載でロケット加速&スクラムジェット推進方式のHAWC(Hypersonic Air-breathing Weapon Concept)をベースに開発し、ARRWよりは大型ながら戦闘機に搭載可能な規模をイメージし、「弾頭」だけでなく「ISR用センサー」も含む3個程度の複数ペイロードを同時搭載可能なものを目指すということです

Mayhem hyper2.jpg「Mayhem」プロジェクトの担当企業検討が始まった2020年8月時点では、極超音速兵器開発に対応できる企業はBoeing, Lockheed, Raytheonの3社だけだと米空軍は判断し、関連情報を3社のみに原則提供に必要な情報を提供する姿勢でしたが、今回選ばれた企業は大手3社とは異なる「Leidos」との企業が選ばれたことがサプライズだと話題になっているようです

「Leidos」社は、もともとIT、サイバー、デジタル設計技術関連の企業だったようですが、米陸軍の極超音速兵器(Long-Range Hypersonic Weapon programの滑空飛翔体)設計を担った「Dynetics」社を買収して「Mayhem」プロジェクトに名乗りを上げ、競合5提案から選ばれた企業です。(米空軍は3社だけでなく、希望する企業は手を上げろ・・との姿勢だったようです)

Mayhem hyper3.jpg米空軍による「Leidos」社決定を受け同社は声明を発表し、「Calspan、Draper、Kratos社とチームを組み、政府機関、産業界、学界とも協力関係を構築して、プロトタイプ作成のため最新の研究開発能力を提供する」と抱負を語っています

2028年10月15日までの70か月でプロトタイプを完成させる契約の模様ですが、まず「Mayhem」プロジェクト契約の第1段階で「system requirements review and conceptual design review」を約32億円で行い、米空軍は2022年度予算から約11億円を支出し、残りは23年度以降の予算で賄うとのことです
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Mayhem hyper4.jpg「Mayhem」プロジェクトの担当企業決定&契約で、2022年12月の試験で3回連続発射試験に成功した爆撃機搭載の滑空型ARRW(Air-launched Rapid Response Weapon:AGM-183A)の開発がどうなるのか、まんぐーすは全く分かっていません。

「Mayhem」プロジェクトの担当企業検討が始まった2020年8月に、当時のWill Roper担当次官補が、「ARRWの方が有望だと考えていたが、HACWに必要なスクラムジェット技術が十分に成熟していることを最近理解した。嬉しい誤解だった」と述べており、戦闘機搭載型のHACW開発が先行しているのかもしれませんが・・・

Mayhem hyper5.jpg同兵器を搭載する戦闘機クラスの具体的機体について公式なコメント等は出ていませんが、米空軍とボーイング社が、F-15EXの胴体下に7000ポンド程度の兵器を搭載する可能性について議論しているとの報道が2020年にはあったようです

米空軍と国防省の同兵器開発の対立
「3回連続ARRW成功」→https://holylandtokyo.com/2022/12/16/4061/
「空軍:高価な同兵器は少数保有で」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「国防省が空軍に改善提言」→https://holylandtokyo.com/2022/02/10/2670/
「国防次官:同兵器は最優先事項だ」→https://holylandtokyo.com/2022/01/26/2649/
「空軍長官:重要性は中国と米国では異なる」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/

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米軍が宇宙空間で初の生物学的な実験実施 [サイバーと宇宙]

NASAの月面探査計画の「アルテミス」宇宙船を利用し
チェルノブイリ原発跡で発見された放射線に強い真菌の特性調査
将来の宇宙活動に備え放射線防護の仕組みを菌から学ぶため

NRL Artemis3.jpg12月11日、NASAによる50年ぶりの月探査計画の第1弾準備宇宙船「Artemis I」が、25日間の宇宙飛行を終えて大西洋上に帰還しましたが、この宇宙船に国防省として初の生物学的実験用のサンプルが搭載されていたとして話題になっています

「生物学的実験用のサンプル」と聞くと、生物兵器のような印象を与えて身構えますが、チェルノブイリ原発事故現場で見つかった強い放射線環境の中でも繁栄し続けている「Aspergillus Niger」との「黒化した真菌」から、放射線防護の仕組みや放射線から人間を守るヒントを得られないか、米海軍研究所(NRL)が取り組んでいる研究のための実験です

NRL Artemis.JPGこの「Aspergillus Niger」は地球上で身近にある真菌(fungus)ですが、1986年に発生したチェルノブイリ原発事故後の高レベル電離放射線 (紫外線、X、およびガンマ線) が存在する環境でありながら、同原発の損傷した原子炉壁を覆いつくして繁殖を続けており、これまでの国際宇宙ステーション(ISS)での実験でも、宇宙放射線を苦にすることなく、むしろ放射線の恩恵を受けて発芽と成長を続けることが確認されています

海軍研究所の同研究プロジェクト担当Zheng Wang 博士は、将来米軍が巻き込まれる可能性がある「核戦争」や「核降下物:nuclear fallout」から兵士や国民を守る方法を探るため、更に米軍宇宙船の宇宙放射線環境での耐性を高めるために、「Aspergillus Niger」の放射線からの自己防御の仕組みを解明し、人間や宇宙船を保護するためのコーティング材など作りたいと考えています

Artemis NASA2.jpg今回の宇宙船「Artemis I」による25日間の宇宙滞在は、ISSのような地球周回低高度軌道での滞在とは異なり、2回月に接近する宇宙飛行から、同じ期間でも2倍の放射線を浴びる環境が得られることから、海軍研究所の研究者にとって貴重な実験データが得られると期待されています

チェルノブイリのような場所での放射線は宇宙放射線とは異なりますが、どちらも人間に危険をもたらす点で同じ放射線であり、宇宙船「Artemis I」での搭載実験は環境の違いも踏まえつつ10年の準備期間を経て実現したものだそうです

NRL Artemis2.jpg具体的には、「Aspergillus Niger」の自己防御機能の秘密は「メラニン」にあると推定されていることから、同真菌のメラニン欠乏症タイプやDNA 修復メカニズムが欠損したタイプも「Artemis I」で宇宙に送り込んで、通常の「Aspergillus Niger」との影響の出方等を比較観察した模様です

宇宙船「Artemis I」に搭載されたサンプルの分析は今後進められますが、2023年3月にはSpaceXのロケットで異なる同真菌サンプルをISSに持ち込む実験が予定され、翌2024年には南極で寒さ等が同真菌に与える影響の確認実験が計画されているとのことです

また、NASA関連宇宙ミッションの活用だけでなく、拡大を続ける米宇宙軍の宇宙アセットを活用した関連実験も海軍研究所Wang 博士は検討していると語っています
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Artemis NASA.jpgチェルノブイリ原発の残骸でたくましく増殖する「Aspergillus Niger」に自然界の奥深さを感じるとともに、自然の中に放射性物質の半減期を早める力が備わっていないか? そんな研究をやってるところは無いのか?・・・などと妄想してしまいました

このような地道で興味深い研究が、宇宙環境を利用してますます推進されんことを祈るばかりです。きな臭い宇宙兵器のことばかりでなく・・・

ここで実験されているかも・・・
謎の宇宙事件船X-37B関連
「908日宇宙滞在後に帰還」→https://holylandtokyo.com/2022/11/24/3952/
「宇宙滞在記録を更新中」→https://holylandtokyo.com/2022/07/29/3458/
「6回目:少し情報公開?」→https://holylandtokyo.com/2020/05/15/672/
「ちょっと明らかに?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-11

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B-21導入による米空軍爆撃機部隊の今後 [米空軍]

末尾の過去記事でご紹介済も
B-21初披露を機に概要を改めて・・・

b-1b.jpg12月5日付Defense-Newsが、B-21初披露を受け、現在3機種(B-1、B-2、B-52)ある米空軍爆撃機の今後の体制変換について、空軍関係者の説明も含めて紹介していますので、過去にもご紹介した内容ですが、再確認のため取り上げます

結論から申し上げると、
●現在の3機種(B-1、B-2、B-52)から、既に平均の機体年齢が60歳以上で最高齢のB-52のみを残し、B-1とB-2は2031年から32年頃に退役させる。2030年代初頭にはB-21(100機以上)とB-52で米空軍爆撃機部隊を編成する
B-52.jpg●残るB-52(現在76機保有)には、燃費や出力を大幅に向上させるエンジン換装(F130 エンジン導入:Rolls-Royce製:2028年に換装初号機導入)を機体の定期整備に併せて順次行い、2050年代まで使用する方向

●B-1は本来、低空を高速で飛行する運用思想であったが、中東で可変翼を広げて低速で飛行し空中待機する等の任務飛行が重なり、機体に想定以上の負荷がかかって多くのトラブルが発生しており、一時は稼働機数が一けたにまで低下。維持整備コスト等を考慮し、2021年に17機が早期退役し、残る45機も順次退役する
B-2 below.jpg●B-2は高価すぎるため20機程度しか製造できず、軍需産業界のサプライチェーンが元々細く、既に部品の確保が困難で共食い状態に入っており、これも長期の維持は難しく2030年代初頭までに退役する方針

●ただし、B-1やB-2早期退役には米議会に根強い反対論もあり、今後のB-1追加削減は少なくとも2023年9月まで遅らせよとの法案が可決されている。また例えば台湾情勢の緊迫度が高まったり、B-21試験中にトラブルが発生すれば、B-1やB-2早期退役計画が先送りされ、米空軍はその維持費捻出に苦労する可能性がある

B-21爆撃機部隊編成の今後
B-21 B-2 2.jpg●最初のB-21部隊は、South Dakota州(米国の中北部)の現在B-1部隊が所在するEllsworth Air Force Baseに編制される予定で、2020年代半ばに運用開始を見込んでいる。その後ミズーリ州(中中部 B-2所在)Whiteman Air Force Base と、テキサス州Dyess Air Force Base (B-1配備)にも部隊が編成される予定

●最初に配備されるEllsworth 空軍基地には、2022年度予算で施設整備費が計上され、機体のステルス塗装維持に必要な特殊格納庫の建設が2022年から始まってる
●操縦者や整備員の養成はB-21初飛行以降に本格化し、飛行試験を通じて要員養成を進める計画で、B-21配備基地周辺自治体との調整も本格化する
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B-52 2.jpgB-52は機体構造部材の改修が実施済で、翼パイロンに搭載可能な兵器搭載重量を5000ポンドから2万ポンドに増量改修する話も進み、長射程の精密誘導兵器や巨大兵器の搭載に向いたシンプルな機体として重宝しているようです

何と言ってもB-21が無事に試験飛行をクリアし、予定通りに運用態勢を確立することが大前提ですが、対中国の極めて重要なアセットですので、期待して再度ご紹介しておきます

米空軍爆撃機の体制変換
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/
「B-52から重力投下核任務除外」→https://holylandtokyo.com/2020/01/29/877/
「B-1早期引退でB-21推進?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-19
「B-1とB-2の早期引退に変化なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-19
「2018年春時点の爆撃機構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2

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タグ:B-21 B-1 B-2 B-52 F130
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米陸軍兵士がGPS無しの訓練に苦労 [Joint・統合参謀本部]

米陸軍が非戦闘職域にも重視するが合格者半数
GPS使用のスマホナビに浸った若者の意識改革に苦悩
戦闘部隊でも非GFP訓練の必要性浮き彫り

BLC navigation.jpg12月16日付Military.com記事が、米陸軍が非戦闘職域の軍曹昇任レベル若手兵士対象の訓練課程で、妨害を受けやすいGPSを使用しない地上移動や地図判読カリキュラムを試行したところ、914名の受講者の中で半数の兵士が求められるレベルに達しなかったと紹介し、GPSに慣れ切った現代社会の米軍が、本格紛争で直面する電磁波やサイバー妨害の中で部隊活動を遂行する難しさを取り上げています

米陸軍の要請に応じ、GPSを使用しない地上航法訓練を4年ぶりに最近復活させたのは、軍曹に昇任する非戦闘職域兵士を対象とした22日間のBLC(Basic Leader Course)で、背景には陸軍戦闘職種が本格紛争を想定した演習を実施する中で、非戦闘兵隊支援部隊も被害状況下での戦闘部隊支援活動訓練が不可欠だとの認識が広がってきたことがあるようです。

BLC navigation2.jpgそして、被害状況下で必要な代表的スキルとして、部隊移動に欠かせないGPSを使用しない地上航法に注目が集まっているということですが、非GPS訓練は、米陸軍でも最精鋭を養成するレンジャー訓練課程でも6%は不合格になるそうですから、戦闘職種部隊である歩兵や砲兵や戦車部隊でも2-3割の不合格者が出てもおかしくない現状だと推測できます

無人機や衛星などによるISR偵察能力が格段に発達した現在戦では、地上部隊が普通に道路を移動していれば簡単に発見され、精密誘導ミサイルや無人機の攻撃を受けるリスクが高まることから、「道なき道」や「目立たない裏道」を使用する配慮が不可欠ですが、地図など使用せずスマホのナビ機能に慣れ切っている現代人には、「地図とコンパス」を基本とする非GPS地上航法は途方もなく「面倒な作業」で根気が続かないようです

BLC navigation5.jpgGPSを使用しない地上航法訓練の合格を、BLC課程卒業の必須要件にすることまで米陸軍教育訓練コマンドは考えていないようですが、今後数年かけてBLC訓練期間を延長し、また他の訓練課程でもGPS無しの基礎地上航法訓練時間を増やす検討に入っているようです。

また、非戦闘職種部隊の訓練計画に、戦闘地域での活動を念頭に置いた訓練科目を増やすことにも取り組み、戦闘行動に関する技能を習得した兵士に「Expert Soldier Badge」を授与して讃える施策も開始しています
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BLC navigation3.JPG2001年の911事案から20年以上続いた「テロとの戦い」によって、20代前半に少尉に任官した士官が大佐になるまで、又は30歳の大尉が主要な指揮官やスタッフ職を経験して将官になるまでの間、つまり軍隊の部隊活動の基本を学び、主要な組織活動を米軍で経験する期間すべてで、敵から空襲を受けたり、電子妨害を受けたり、自身の根拠基地が攻撃を受けるリスクを無視できる環境で米軍は活動してきました

これにより、米軍の電子戦や敵攻撃からの防御技術は組織から事実上失われた状態にあります。以下の過去記事で取り上げたように、数年前からこの問題は米軍内で危機感を持って捉えられ、少しづつ改善が始まっているようですが、誰も肌身で感じて経験したことのない部隊行動が円滑に復活できるはずもなく、「暗中模索」と表現した方が適切かもしれません

BLC navigation4.jpg日本では「戦略3文書」が閣議決定され、その内容は画期的で良くできたものだと聞いていますが、現場が成すべきことができるのか? 真の変革を成し遂げられるのか? まんぐーす的に言えば「戦闘機命派」が変われるのか・・・に注目したいと思います

被害状況下での戦いを想定せよ
「基本的な防御手段を復習せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-10
「米海軍将軍:妨害対処を徹底する」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-21
「空軍OBも被害対処を重視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23-1
「被害状況下で訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-23

本格紛争に向けた地上部隊の備え
「米陸軍が対中国の分散演習」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
「機動性&生存性の高い前線指揮所を」→https://holylandtokyo.com/2022/08/01/3519/
「米海兵隊が歩兵の多兵器習熟を試行中」→https://holylandtokyo.com/2021/05/07/1490/
「歩兵の多能兵士化を推進中」→https://holylandtokyo.com/2021/04/27/117/
「海兵隊で歩兵が砲兵を支援する新形態演習」→https://holylandtokyo.com/2021/04/15/107/
「米陸軍の前線電子戦部隊構想」→https://holylandtokyo.com/2021/03/11/158/
「米海兵隊は戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「無人機に偵察されたら」→https://holylandtokyo.com/2020/08/06/516/

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トルコ企業が無人戦闘機の初飛行披露 [安全保障全般]

Bayraktar TB-2で「ウ」やアゼルバイジャンで名をはせた企業
自社投資開発で自由にどんどん改良予定
兵器搭載量3300ポンドで空対空や空対艦M搭載可

Bayraktar Kizilelma4.jpg12月14日、ウクライナやアゼルバイジャン軍で大活躍した無人機Bayraktar TB-2製造で世界的名声を得たトルコの無人機メーカーBaykar Tech社が、自社開発の自称無人機戦闘機「Bayraktar Kizilelma」の初飛行に成功し、その映像を公開しました。

同機は2021年夏に構想が発表され、2022年9月にプロトタイプ用エンジンの融合試験や地上滑走試験を行い、初飛行を2023年に実施すると同社が発表していましたが、自社投資独自開発である自由度を最大限に生かし、予定を大幅に早めて14日の約18分間の初飛行となった模様です

製造企業発表の初飛行動画(1分20秒:トルコ語)


初飛行したのはプロトタイプ機で、今後エンジンをアップグレードする構想など開発の方向性は様々に検討されており未確定な点が多いのですが、とりあえずBaykar Tech社やネット上で共有されている「Bayraktar Kizilelma」の概要について、ご紹介しておきます

19日付Defense-News記事等によれば
Bayraktar Kizilelma.jpg●プロトタイプ用のアフターバー無しのエンジンを1基搭載した機体は、巡航速度0.6マック、最大速度0.9マック、行動半径500nm、連続飛行時間5時間、上昇高度4万フィートの性能
●完全自動で離着陸が可能で、短距離離着陸性能に優れ、強襲揚陸艦甲板での運用も可能と同社はアピールしている(カタパルトなしでスキージャンプ離陸可能か不明)

●米軍が開発のXQ-58に見られるような、エンジンノズル部分にステルス配慮は無いが、ステルス性を追求しており、ステルス性と相反する機動性確保のためカナード翼を装備(中国のJ-20のようだと下の映像は解説)
●兵器搭載量は3300ポンドで、ステルス維持のため機体内部弾薬庫を保有し、翼下のパイロンも含めると、トルコ国産空対空ミサイルや対艦巡航ミサイルが搭載可能

Bayraktar Kizilelma2.jpg●AESAレーダーを搭載し、他のISR装備も搭載可能と言われており、また衛星通信で操縦すると同社は公表しているが、地上から主に管制するのか、飛行中の有人機から操縦するのか等の運用構想など細部は不明
●今後より強力なエンジンを搭載して超音速飛行可能な形態を目指し、将来的にはエンジン2基搭載型も検討されている模様

●今年夏にはBaykar Tech社長が、コスト面を度外視した開発は行っておらず、安価に大量導入が可能な機体開発を目指している・・・と語っている

軍事YouTubeサイトの同機紹介(8分15秒)

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Bayraktar Kizilelma3.jpg映像で紹介されている同機開発責任者がとても若く(40代か?)、初飛行を前倒しで行う積極性に開発の勢いを感じます。

米空軍が取り組む無人機ウイングマンCCAのような性能レベルなアセットだとは思いませんが、十分に脅威であり、柔軟に色々な用途に改良して発展していきそうな気がします。今後の展開に注目いたしましょう

Baykar Tech社無人機TB-2が大活躍
「ウクライナでも大活躍」→https://holylandtokyo.com/2022/03/05/2787/
「アゼルバイジャン軍の無人機大戦果」→https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/

米空軍の無人ウイングマンCCA開発
「研究機関のACP提言」→https://holylandtokyo.com/2022/12/15/4056/
「自立型や群れ開発格上げ」→https://holylandtokyo.com/2022/11/22/3948/
「Broun参謀総長まだまだやることあり」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/
「空軍長官:1機数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/

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米海兵隊初:遠征軍レベルの先任軍曹に女性就任へ [Joint・統合参謀本部]

2023年7月からKitashima上級曹長が沖縄の司令部に
そうです。第3海兵遠征軍の下士官トップに就任へ
お名前から日系人かな?

Kitashima.jpg11月22日米海兵隊は、2023年7月から第3海兵遠征軍(司令部沖縄うるま市:3rd Marine Expeditionary Force, 3MEF)の最先任軍曹(sergeant major)に、女性として初めてJoy Maria Kitashima上級軍曹が就任すると発表しました。

米海兵隊の主力戦闘単位である海兵遠征軍(指揮官は中将)レベルの下士官最先任に、女性が登用されるのは初めてとなります。

Kitashima2.JPGKitashima上級曹長は1976年生まれの46歳で、大学で法律准学士号を取得し、米軍のことをほとんど知らないままリクルーターの誘いに応じ、軍警察で下士官として勤務するため1996年に海兵隊に入隊しました。入隊当時は1任期で退役するつもりで海兵隊に入隊したそうです

最初の赴任地である沖縄の第1海兵航空隊で1年間最前線勤務を経験した後、MP軍警察でのキャリアをNorth Carolina州の基地でスタートしますが、当時の上官軍曹から「海兵隊の体力テストに合格している女性が、海兵隊歩兵学校の海兵隊戦闘教官として必要なんだ」と説得され、MCT海兵隊戦闘教育コースに入ります

Kitashima3.jpg「手りゅう弾ランチャーとロケットランチャーの違いも知らない全くの素人と同じ」だったという同軍曹でしたが、海兵隊下士官として任期を延長し、「知らないことでもとりあえず挑戦してみよう」との海兵隊勤務を通じての同軍曹のモットーに基づき、目の前の課題をクリアーすることで海兵隊戦闘部隊について学んでいきます

そうするうちに、軍警察兵士としてだけでなく、海兵隊員としての自身を考えるようになり、歩兵部隊や後方支援部隊にも勤務範囲を広げ、その過程でアフガニスタン、イラク、ハイチでの海外派遣も経験していきます。

Kitashima5.jpgKitashima軍曹が初めて部隊の先任軍曹となったのは、40歳になった2016年に第5海上火力リエゾン中隊で、2018年には第2海兵遠征軍情報群にランクアップして再び先任軍曹に就任します。更に2020年4月には太平洋軍海兵隊の先任軍曹、2022年からは第2海兵航空団で先任軍曹を務めている引っ張りだこの人材です。

このように6年間も各部隊レベルで先任軍曹経験を積み、満を持して米海兵隊最大の戦闘単位である海兵遠征軍、しかも沖縄と言う地元との関係が複雑で、かつ中国正面で緊張感も高い部隊の下士官トップに、日系(お名前から推測)の女性が就任するのは誇らしい限りです。

Bass5.jpg米軍の下士官女性としては、2022年8月14付で米空軍の下士官トップ(Chief Master Sgt. of the Air Force)に、アジア系女性のJoAnne S. Bass最上級軍曹が就任されていますが、より泥臭い男社会のイメージが強い海兵隊で、メジャーコマンド級最先任軍曹に女性が就任とのニュースであり、「ガラスの天井が打ち破られた」との表現がふさわしい抜擢だと思います

来年夏には、沖縄の町でお見掛けするかもしれないKitashima軍曹の武運長久を祈念申し上げます

軍での女性を考える記事
「米潜水艦の最先任軍曹に初の女性」→https://holylandtokyo.com/2022/09/02/3619/
「米海軍Blue Angelsに初の女性パイロット」→https://holylandtokyo.com/2022/07/21/3484/
「沿岸警備隊司令官に女性が」→https://holylandtokyo.com/2022/04/07/3112/
「初の女性空母艦長が出撃」→https://holylandtokyo.com/2022/01/07/2587/
「技術開発担当国防次官に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/26/2649/
「初の女性月面着陸目指す」→https://holylandtokyo.com/2021/07/05/1935/
「黒人女性が初の海軍戦闘操縦コース卒業」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
「初の米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「上院議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19
「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11

女性徴兵制度がある国
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等目指し:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉業務選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

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デジタル設計の旗手T-7練習機開発が1年遅れへ [米空軍]

部隊提供は2023年予定から2024年夏に延期か
飛行制御ソフトと射出座席等の問題が障害に
事故多発の60年経過T-38練習機の後継遅れが・・・

T-7A 4.jpg12月12日米空軍報道官は、デジタル設計技術を駆使した迅速な開発&部隊配備をアピールし、2023年中に量産型の提供を開始するとしていたT-7A練習機について、飛行制御ソフト開発や射出座席開発のトラブルにより、量産型提供開始が1年程度遅れて2024年夏頃になる見積もりだと明らかにしました

2018年に5つの提案から「ボーイングとSaab」チーム提案が選定された次期練習機T-7Aは、使用開始から60年以上が経過して最近事故が多発している約400機のT-38練習機後継として早期配備を求められ、既存成熟技術を総動員した迅速開発の期待に相当程度答えてきましたが、完全に計画通りにはいかないようです

T-7A 5.JPG遅れの主原因とされた2つの問題の内、「飛行制御ソフト問題」はこれまでの原因究明とソフト改修で対処を終え、2023年第一四半期から飛行試験を再開する予定で、2021年末の試験で発覚したもう一つの「射出座席問題」も、一応の改善対策を行って2023年第一四半期から試験を再開するとのことです

T-7A練習機の射出座席は、従来の米空軍機の射出座席が60-70年代のパイロットの平均体格(結果として男性の体格)データから設計されていたところ、パイロット不足もあり、女性も含む空軍入隊資格基準を満たす者が搭乗できるように大幅な設計見直しを行っていた装備で、米会計検査院GAO等から「リスクの高い困難な開発」と以前から指摘されていた案件です

T-7A.jpg米空軍としては、1年程度の遅れであれば、これまで順調だったこともあり「誤差の範囲」としたいところでしょうが、機体平均年齢60歳以上のT-38練習機に最近4年間だけでも10件の重大事故が発生し、今年11月には胴体着陸と離陸直後の制御不能事案が2件連続する状況に余裕がないのが現状です。また稼働時間より整備修理時間が長い、維持整備面での部隊負担が重い点も重くのしかかっているようです。

T-7A 7.jpgデジタル設計技術は、実機による飛行試験や各種確認&開発期間の短縮とコスト削減、また開発段階における設計審査等のペーパーワークの削減面で大いに期待されており、T-7Aの遅れを持って「傷がつく」とは思いたくありませんし、B-21新型爆撃機もデジタル設計を大いに活用していることから、デジタル設計の発展応用には今後も楽しみに注目していきたいと思います(詳しいことを全く理解していませんが・・・)

まぁ・・・B-787や大統領専用機やKC-46Aで散々な目にあい、加えてコロナウイルスで瀕死の状態にあるボーイング社にこれ以上の負担は酷な気がすることもあり、T-7A練習機のトラブル早期解決と武運長久を祈念申し上げます

T-7A練習機(T-X計画)関連の記事
「デジタル設計技術で審査短縮や新規参入促進」→https://holylandtokyo.com/2022/08/23/3550/
「T-7に中東諸国も関心」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-20
「ボーイング提案をT-Xに採用」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-28

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米空軍が3回連続ARRW極超音速兵器試験に成功 [米空軍]

初期の連続失敗を克服し、実用兵器のプロトタイプで初成功
米国防省は最優先指定も、空軍は生暖かく取り組み中

ARRW.jpg12月9日、米空軍が取り組む2種類の極超音速兵器(爆撃機発射型ARRWと戦闘機発射型HACM)の一つであるARRWが、実戦配備を意識したプロトタイプの発射試験に加州沖合で初成功しました。これで今年5月と7月に続く、3回連続の発射試験成功となり、2021年の3回連続失敗の汚名を返上しつつあります

ロッキード社とのプロトタイプ開発契約で進むARRW(Air-Launched Rapid Response Weapon)は、爆撃機B-52に搭載して発射され、ロケットブースターで加速して音速の5倍以上に達した後、エンジンの無い弾頭のみが分離され滑空して目標に向かう極超音速兵器で、比較的射程が短いことから、固定の高価値目標を比較的近距離から攻撃することを想定した兵器と言われています

AGM-183A.jpgもう一方のHACM(Hypersonic Attack Cruise Missile)は、弾頭と極超音速飛行用スクラムジェットが一体化しており、戦闘機に搭載され発射する方式で、爆撃機を他の戦略目標に対して指向させ、戦闘機で一刻を争う高価値の標的を狙うオプションを提供して戦術的柔軟性を作戦司令官に提供することを狙いとしており、2021年9月に3度目の正直で基礎試験に成功し、2022年11月末にレイセオン社とプロトタイプ開発契約を約180億円で締結しています

ARRWは、2021年に4月7月12月に3回連続して発射母機であるB-52から分離しなかったりエンジン点火に失敗していましたが、今年5月からは3回連続で成功し、12月5日の週にはルイジアナ州Barksdale空軍基地で、ARRWをB-52爆撃機に搭載する手順を固める地上確認も行われ、装備化の可否を判断する確認を確実に進めているところです

Kendall air 2.JPGただKendall空軍長官は、航空機から発射する極超音速兵器には慎重姿勢を見せており、完成してもその高価格や役割から保有兵器数は「small」になると2022年2月末に発言し、その理由として・・・

●米国を遠ざけたい中国と、中国抑止用に同兵器を考えている米国とでは、同兵器の位置づけは異なり、中国と同様に米国が追求する必要は必ずしもない。
AGM-183A4.jpg●空軍の空中発射型は航空機で発射地点まで運搬する必要があり、前方基地や前方配備艦艇から発射可能な他軍種の同兵器より不利な位置にある

●極超音速兵器は有効だが、米空軍が攻撃すべき目標を攻撃する唯一の手段ではない。高価で費用対効果や他の要素からも、慎重に投資を検討する必要あり。低速度の巡航ミサイルは安価で、ステルス性や敵防空網への妨害と組み合わせれば有効で、総合的に将来の兵器体系を考える必要がある
AGM-183A7.jpg●少なくとも初期型の同兵器は固定目標対処用になるが、米国は多数の移動目標に対処する必要があり、同兵器の必要程度を点も注意を要する

・・・等と訴えており、極超音速兵器を最優先事項だとする国防省との温度差が厳然と存在しています
///////////////////////////////////////////

「●」でご紹介したKendall空軍長官の主著には一理あり、今後の米陸海軍の極超音速兵器開発も含めて眺めていきたいと思います。

米軍の極超音速兵器開発
「空軍長官:高価な同兵器は少数保有で」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「国防省が空軍に改善提言」→https://holylandtokyo.com/2022/02/10/2670/
「国防次官:同兵器は最優先事項だ」→https://holylandtokyo.com/2022/01/26/2649/
「空軍長官:重要性は中国と米国では異なる」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
「空軍開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-16
「米海軍潜水艦への極超音速兵器は2028年」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-19
「米陸軍の極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-14
「米空軍が3度目の正直でHAWC成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-28
「最近の状況整理&米海軍が2段目ロケット試験成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-27
「米艦艇搭載は2025年頃か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-24
「豪州とも協力」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-01
「今頃学会と情報収集枠組み」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-28
「3月の極超音速兵器テストは誤差20㎝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-14
「3軍協力で極超音速兵器開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「ボディー試験に成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-22
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1
「宇宙センサー整備が急務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31

極超音速兵器からの防御検討
「迎撃技術開発に2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/ 

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米空軍「family of systems」の自立無人機CCAを提言 [米空軍]

ミッチェル研究所が空軍、産業界等から意見を聴取して
謎の「family of systems」をB-21絡みで検討提言
第1弾「突破型攻撃3パターン」に必要な自立無人機提言

ACP Mitchell 2.jpg米空軍協会ミッテル研究所が、将来の本格紛争で必要不可欠な要素として米空軍が細部非公開のまま検討中としている自律型無人機(ACP:autonomous collaborative platforms)について、台湾有事など対中国を念頭に必要な同無人機のタイプや必要数を検討分析するレポートをまとめて段階的に発表する模様で、第1弾が「突破型攻撃:Penetrating Strike」をテーマに12月14日にプレゼンが行われる予定です

ACP Mitchell 3.jpgこのレポート作成に当たり同研究所は、夏に米空軍幹部や作戦運用関係者や軍需産業界関係者など40名以上を集めた3日間の集中検討会を行い、その結果を研究所のMark Gunzinger退役大佐らがまとめたとのことですが、米空軍が非公開で進める有人戦闘機や爆撃機と一体となって作戦遂行する「family of systems」の一部をなす無人機について、空軍応援団体とは言え民間研究機関と空軍関係者が共に缶詰検討会「unclassified workshop」を行ってまとめる構図やレポートの位置づけが意味深なところです(世論や専門家の反応を見る「のろし」かな?)

有人戦闘機や爆撃機と一体となって作戦遂行する「family of systems」には有人支援機も含まれるでしょうが、有人戦闘機とチームを組む無人機ウイングマンのイメージでご紹介してきたXQ-58等のCCA(collaborative combat aircraft)などを含む、より広い概念の自立型無人機ACPにはどんなタイプが何機必要かを考えるのがレポートのテーマです

ACP Mitchell _Lee_Caitlin-.jpg今回は検討レポート発表の第1弾として、B-21新型爆撃機による「突破型攻撃:Penetrating Strike」を支える「family of systems」に含まれるべき自立型無人機ACPのタイプや必要機数を、3つの目標攻撃ケース「air base」「maritime threat」「transporter erector launcher:移動式弾道ミサイルなど発射機」に分けて検討したとのことです

検討の前提として、無人機ACPの能力や必要機数について制限は設けなかったとのことですが、40名の専門家議論の結果として、「極端に高性能な無人戦闘機や無人爆撃機」を求める声は上がらなかったと8日付米空軍協会web記事は伝えており、

ACP Mitchell MG-.jpg3つの攻撃目標ケースに応じ多少意見は異なるものの、大きく3つのタイプ、攻撃パッケージを防御する「Defensive counterair ACP」、移動する敵アセットを追尾する「ISR ACP」、敵防空システムを無効化する「SEAD、Jamming、 offensive counterair ACP」が必要とされ、攻撃目標に応じた必要機数を算出しています


上記web記事によれば結論の機数は以下の通り

Air base attack
• ACP 1: Escort, 8
• ACP 2: SEAD, 16 initially, increased to 32
• ACP 3: Jamming, 8

Maritime threat
• ACP 1: Defensive counterair, 40
• ACP 2: ISR, communications relay, 10
• ACP 3: Strike, 20

Transporter erector launcher
• ACP 1: Escort, suppression of enemy air defenses, 10
• ACP 2: ISR, Suppression of enemy air defenses (SEAD), offensive counterair, 144 (24 per bomber)
• ACP 3: ISR, SEAD, offensive counterair, 120 (20 per bomber)

更に第1弾レポートは以下を主張の模様
ACP Mitchell 5.jpg●提案された自立型無人機ACPは、大部分が航続距離が数千マイルで、爆撃機等から発進するタイプ
●自立型無人機ACPの数を確保する必要から、個々のACPの性能についてはそれほど高いものは求めない

●特に「敵の航空基地攻撃」の場合、敵の防空能力が高いことから、最新の爆撃機でも目標近傍まで接近して精密誘導兵器を発射する必要があり、ACPを多数投入しても爆撃機のリスクをあまり下げられない
●在空型で目標に突入攻撃を行う「loitering munitions」タイプのACPの重要性もレポートは訴え
//////////////////////////////////////////////

第一弾レポート発表会(12月14日)案内ページ
https://mitchellaerospacepower.org/event/research-paper-release-the-next-frontier-uavs-for-great-power-conflict-part-i-penetrating-strike/

ACP Mitchell 4.jpg米空軍の非公開検討との関係がどうしても気になりますが、12月14日の第1弾発表会には、米空軍戦闘コマンドACCの計画部長や米空軍開発担当コマンドの戦闘機等担当准将が参加するそうです。

ミッチェル研究所によるレポートが、第1弾の「突破型攻撃:Penetrating Strike」以降、どのようなテーマを掲げて発表されていくのか未公開のようで気になりますが、まずは14日の第1弾注目です

米空軍の無人機検討格上げへ
「無人機自立化と群れ技術を作戦機で装備化へ」→https://holylandtokyo.com/2022/11/22/3948/

無人機僚機Skyborg計画関連
「2機種目MQ-20 Avengerで成功」→https://holylandtokyo.com/2021/07/08/1983/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「豪州もXQ-58に参画」→https://holylandtokyo.com/2020/05/06/664/
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27

無人機の群れGolden Horde計画関連
「優先項目の無人機の群れ苦戦」→https://holylandtokyo.com/2020/10/12/430/
「SkyborgとGolden Horde計画を優先に」→https://holylandtokyo.com/2019/12/06/2838/

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B-21爆撃機を米軍事メディアはどう報じたか [米空軍]

唯一突っ込んだ観察記事を書いた某編集長の記事より
この道30年John A. Tirpak氏の見方

B-21 Calf.jpg12月2日の夕刻に初披露されたB-21爆撃機に関し、あまりに新たな情報の公開が無かったので、米軍事メディアもこれまでの情報をまとめて改めて紹介する程度の記事しか出ていませんが、まんぐーすの知る限りで、唯一少しは突っ込んだ観察記事を書いているのが米空軍協会機関誌「Air & Space Force Magazine」編集長のJohn A. Tirpak氏ですので、「つまみ食い」紹介いたします

12月2日付で初披露会場周辺等で聞き取りした内容を、そして5日付で正面からのみ遠目で観察した結果から「B-2爆撃機との8つの違い」との記事を米空軍協会webサイトに発表していますので、取り上げます

12月2日付記事によれば 
B-21 Cerem4.jpg●オースチン国防長官はスピーチで、「B-21は他の爆撃機より長い航続距離を誇り、作戦遂行地域に拠点を構えて整備支援を受ける必要がなく、(世界中の)どの目標にも対応可能である。最先端の防空システムであってもB-21を探知することに苦労するだろう」

●Andrew Hunter空軍調達担当次官補は、「デジタル設計技術を駆使して、デジタル空間内で既に完成度を高めており、試験用の6機を製造中だが、6機すべてが量産用機体とほぼ同じと考えており、テスト後6機すべてが作戦投入用に部隊配備される」
●国防省高官「『中国の軍事力レポート2022版』発表とB-21の初披露がほぼ同時期に行われたのは、偶然ではないと考えられるだろう」

B-21 Cerem5.jpg●NG社幹部は会場で、「B-2よりステルス性に優れ、ステルス塗装の維持整備性や信頼性でもB-2より優れており、毎日でも完全ステルスモードで飛行できるだろう」、「B-2で機体の継ぎ目等を隠すために使用していた特別なテープが、B-21では不要になった」
●Brown空軍参謀総長は式典前に記者団に、「B-21はhigh cycle aircraftであり、at great frequencyで任務飛行可能だ」

12月5日付記事「B-2爆撃機との8つの違い」によれば

1 Intake(空気取り入れ口)
B-21 B-2 2.jpg●B-2に比較し、エンジンへの空気取り入れ口が細く、機体からの盛り上がりも小さい。十分な空気取り込みが可能か素人は懸念するが、大気の流れを乱さない小さな取り込み口は、大気の流れを乱さず十分な空気取り込みを可能にする
●2018年にRob Wittman下院議員が、B-21は空気取り入れ口からエンジンまでの空気の流れで課題に直面しており、エンジン製造のP&W社とステルス形状確保を優先する設計側で議論が行われていると、極秘の情報に言及して物議を醸した
2 機体の大きさ
●B-21の機体サイズが非公開で、初披露時も正面からしか確認できなかったので正確なB-2との比較は難しいが、B-21がB-2より小さい。翼部分の長さがB-2の150フィートに対し、22フィートは短い

3 機体の厚み
B-21 Cerem.jpg●B-21はB-2より機体の厚さがあり、より大きな兵器搭載庫や燃料タンクが搭載できると推測できる
●期待を支える足が長く、B-2より機体の高さが高い。ちなみに車輪のタイヤは、B-2が4個だったが、B-21は2個である
4 機体表面の滑らかさ
●B-2はステルス性を上げるため、機体表面の滑らかさ確保に苦労して継ぎ目にテープ等を貼る等の対策を行っていたが、B-21表面はキャノピー部分も含め、テープなど使用することなく極めて滑らかに仕上がっている

5 操縦席の窓
●B-21操縦席の窓は、特殊な形状の2枚の台形型と横長の2枚の窓からできており、機体との段差が全く確認できないような一体化が図られている
6 着陸用足を格納するドア
●B-2のようなギザギザ形状のドアではなく、B-21はシンプルな形状のドアとなっている

7 機体先端のくちばし
B-21 B-2.jpg●B-2には機体の先端にくちばしのように見える形状が見られたが、B-21でも同様な形状が確認でき、B-2より長く平らな印象を受けた
8 機体の色
●B-2爆撃機は夜間作戦を想定して「FS 36118 Gunship Gray」色を機体に採用していたが、B-21はそれよりも少し明るい色で、恐らく「FS36375 Light Compass Ghost Gray」色を採用し、昼間の可視光や赤外線放射の低下を狙っているように見える

B-21 N.jpg機体の後方が確認できず、「エンジンを何機搭載しているか?」さえ明らかになっていないが、開発関係者によれば、出来る限り長く隠せるものは隠す方針の様である。

ただし、屋外でのエンジンテストや地上滑走、更に初飛行を行えば高性能レンズで待ち構えるメディアやマニアにより、様々な角度から機体が撮影されることは時間も問題であり、様々な更なる分析が行われるであろう
//////////////////////////////////////////////////

クリスマス前の「記事枯れ」の時期で、しつこくB-21爆撃機をご紹介しています。

B-21に関する過去記事も含め、ご覧ください

最近のB-21関連記事
「映像で紹介:B-21初披露式典」→https://holylandtokyo.com/2022/12/05/4015/
「B-21を10の視点でご紹介:NG社事前リリースより」→https://holylandtokyo.com/2022/12/01/4004/
「12月2日に初披露」→https://holylandtokyo.com/2022/10/24/3796/
「初披露は12月第1週に」→https://holylandtokyo.com/2022/09/22/3695/
「初飛行は2023年にずれ込み」→https://holylandtokyo.com/2022/05/23/3269/
「製造企業CEOが80億円ゲットと」→https://holylandtokyo.com/2022/05/16/3202/

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最新型F-16 Block 70初号機完成:既に受注130機 [安全保障全般]

既存F-16のBlock 70への改修受注も400機越え
Block 70完成機は300-500機との需要予想も

F-16 Block 70 5.jpg11月21日、ロッキード社SC州Greenville工場で、F-16戦闘機の最新型Block 70/72初号機の完成式典が行われ、2023年に米空軍のエドワーズ空軍基地での初飛行など一連の試験を行うと同社が発表しました。

完成(roll out)したBlock 70/72型機はバーレーンに提供される予定の機体だそうですが、現時点でバーレーンを含む5か国(Slovakia, Bulgaria, Taiwan、他非公開1国)からの128機の受注契約が締結済で2020年代末までに製造予定で、他にヨルダン8機が手続き中で、ブルガリアとも協議中と同社報道官は語っています

F-16 Block 70 4.jpgBlock 70/72新造機の他に、既存の旧バージョンF-16のBlock 70/72への近代化改修受注は現時点で既に「405機」に達しており、2022年1月時点でロッキードはBlock 70/72型機関連で約9兆円の契約を既に締結していると関係者が語っているようです

米空軍が最後にF-16を購入したのは2005年のBlock 50型機で、その後はF-22を経てF-35の調達に資金を投入していますが、その米空軍が2021年春に、2030年代になっても600機程度のF-16を維持しているだろうとの「戦闘機ロードマップ」を明らかにしたことから、現在でも25か国で運用されているF-16維持整備体制が当面確保されたとの「安堵感」は世界に広がり、「F-16」ブームが再燃している状況です

F-16 Block 70 3.jpgちなみに、2021年春の近未来「戦闘機ロードマップ」(2023年度予算案の背景説明資料)では、2027年から29年頃にF-16後継検討を具体化し、2035年頃からハイエンド紛争での使用を想定しない5世代機以下程度の性能のMR-X(malti-role Fighter)導入構想も示されていますが、現時点ではどうなることやら全く見えていない状態で、F-16の地位が揺らぐことは当面なさそうです

また更に、Block 70/72型機は機体構造部材が強化され、機体寿命が12000時間と従来型の1.5倍に延伸されており、少なくとも2060年までは現時点でも運用される見通しで、今後受注が続けば2070年代にも雄姿を見せている可能性が十分あります

申し送れましたが、Block 70/72型機の改善点は・・・
F-16 Block 70 2.jpgAPG-83 active electronically-scanned array (AESA) radar,
electronic warfare 「Viper Shield」,
powerful mission computer,
cockpit with larger color displays—including zoom and the ability to rearrange displayed information
uprated engine,
capability for most modern weapons,
conformal overwing fuel tanks
infrared search-and-track system
targeting pod capability,
improved data links,
precision GPS navigation
/////////////////////////////////////////////////////

F-16 Block 70.jpg米空軍が初期型F-16Aを運用開始した1978年から45年が経過しようとしていますが、その間に30か国へ計4550機が提供されたF-16シリーズは現在でも25か国で運用されており、Block 70/72型新造機の市場ニーズが300-500機あるとの見積もりは決して大げさではないともいます

なおF-16運用国はABC順で
Bahrain, Bulgaria, Chile, Columbia, Croatia, Egypt, Greece, India, Indonesia, Jordan, Morocco, Korea, Oman, Pakistan, the Philippines, Poland, Romania, Singapore, Slovakia, Slovenia, Taiwan, Thailand, Turkey, UAE, USA the United Arab Emirates ・・・ です

日本は「亡国のF-35」ではなく、F-15Jの仲間でもあるF-15EXや、F-16最新型を導入しておけばよかったと思います。日本のような環境では、有事に戦闘機が活躍する場面は極めて限定されると思うからです

F-16関連の記事
「F-16後継検討は進展なし」→https://holylandtokyo.com/2022/08/25/3554/
「トルコに最新F-16提供要請」→https://holylandtokyo.com/2022/07/05/3437/
「F-16は2070年代まで運用へ」→https://holylandtokyo.com/2021/06/01/1784/
「米海軍が中古空軍F-16購入へ」→https://holylandtokyo.com/2021/06/17/1873/
「F-16人気にロッキードニンマリ」→https://holylandtokyo.com/2020/04/29/739/
「F-16生産移設であと200機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21-3
「米軍F-16延命へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13
「稼働率8割はF-16だけが達成見込み」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-06
「インド選定に特別仕様F-16で挑む」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-22
「台湾F-16V型ようやく納入」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-27-2

米空軍の戦闘機構成議論
「戦闘機の近未来体制は」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
「戦闘機混合比や5世代マイナス機検討」→https://holylandtokyo.com/2021/02/22/266/

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KC-46A空中給油機が36時間連続飛行 [米空軍]

米本土北部大西洋岸からグアム往復
搭乗3クルーが16回交代で2回空中給油受け
有事生じる膨大な空中給油要求に応えるための模索
RVSやBoom問題は2025-26年まで解決しないが・・・

KC-46 36hours.JPG11月18日、米空軍輸送コマンドは米北東部大西洋沿岸の基地を離陸したKC-46A空中給油機が、11月16~17日にかけ米本土を横断してハワイやグアム上空まで飛行し、途中でF-22に空中給油するなど36時間・16000NM以上の連続飛行で離陸基地に戻ることに成功したと発表しました。

米空軍輸送コマンド(AMC)はMike Minihan大将が2021年10月に司令官に就任以来、今年5月には同機で24時間連続飛行を行い、9月には「第1級不具合」であるRVSと給油ブーム問題を抱えつつも世界中での作戦投入にゴーサインを出し、更に10月25日にはパイロット1名によるKC-46運用試験飛行を行い、様々な意見がある中で膨大な対中国での空中給油要求に応えるための限界を探る挑戦を続けています

KC-46 cockpit.jpg何度もしつこくご紹介しているように、KC-46空中給油機は国防省や米軍にとって理想的な「固定価格契約」(契約時の設定価格を上回って生じたコストは企業負担になる)でスタートしましたが、エアバス社のA330原型給油機との泥沼の機種選定3回を繰り返す中でボーイングが無理な企業提案を行い、結果として3年遅れの2020年に機体提供開始後も、上記問題以外も含めた多数のトラブルに見舞われて、改善措置完了が2026年にまでずれ込む問題プロジェクトになっています

ボーイング社のKC-46関連「自腹超過負担額」も7000億円を上回る規模に膨れ上がっており、民間機部門期待のB-787墜落事故やコロナ航空不況、加えて大統領専用機の「背伸びしすぎ受注」もあり、大変厳しい企業運営を迫られており、11月中旬に同社軍事部門の大規模組織再編を打ち出しているところです

KC-46 RVS.jpg米空軍にとっても、米本土から遠く離れた西太平洋地域での対中国作戦を見据え、KC-135やKC-10給油機の老朽化で維持費が高騰する中、KC-46の早期運用態勢確立は作戦運用上の最優先課題の一つでしたが、当初2018年には運用開始予定が2022年9月まで4年以上遅れ、その上「第1級不具合」を抱えたままの「見切り発車」状態を受け入れた形となっています。

しかしそんな中でもMike Minihan司令官は、「不具合による運用制限の中でも、乗員や整備員に必要な訓練や各種手順の改善徹底を図ることで、リスクを抑えて実戦運用に提供可能だ。我々には今必要でなんだ。今の戦いに敗北すれば将来は無い」と悲壮な決意を隠すことなく堂々と語り、今年9月に作戦投入宣言を行ったところです

Minihan.jpg同時に前職が太平洋軍副司令官で対中国作戦の難しさを知り尽くしたMinihan司令官は、KC-46の最大能力発揮のため、様々な事前訓練やメディカル面での検証や配慮を行いつつ、連続飛行時間延伸の試みや「操縦者1名・給油操作員1名」での運用などに挑戦を続け、最前線の要求に対応しようと模索を続けています

今回の36時間連続飛行の概要は
Minihan2.jpg●ニューハンプシャー州Pease州空軍基地を離陸し、米本土を横断してハワイ沖でF-22への空中給油を行い、日付変更線を超えグアム島近海に進出した後に引き返してPease基地に帰還
●3組の乗員(パイロット、給油操作員、机上整備員)が搭乗し、36時間の中で16回交代しつつ連続飛行を継続

●36時間の中で、別のハワイを離陸したKC-46給油機から2回の空中給油を受けて連続飛行を継続
●機体には航空医官(flight surgeon)が同乗し、飛行中の操縦者等の身体データをNASAも採用しているアプリを用いて継続測定し、身体反応速度や疲労度などの結果分析から、現在の連続飛行制限などの見直しや必要な対策検討に利用する
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Minihan5.JPGC-130輸送機やKC-10空中給油機パイロットである米空軍輸送コマンド(AMC)Mike Minihan司令官には、今後も注目していきたいと思います。

特に、同司令官は輸送機や給油機だけでなく、他の作戦機にも搭乗員を減らしてローテーション交代での連続運用検討を提案しており、これが米空軍の保守本流である戦闘機族や爆撃機族にどのように対応するのかに興味津々です

Minihan6.jpgなおMinihan司令官は、部隊指揮官ポストについている間は、過去の部隊として又は部隊指揮官として授与された勲章しか制服に着用しない(規則上問題なし)との信念の持ち主として、米空軍内や軍事メディアでも良く知られた人物だそうです

Mike Minihan大将関連の記事
「KC-46を操縦者1人で試行運用」→https://holylandtokyo.com/2022/11/02/3881/
「不具合抱えたままKC-46運用開始宣言」→ https://holylandtokyo.com/2022/09/21/3688/

その他KC-46などの関連記事
「空軍長官:KC-46の固定価格契約は誤り」→https://holylandtokyo.com/2022/06/06/3323/
「KC-XYZの再検討再整理表明」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/
「RVS改修案に合意」→https://holylandtokyo.com/2022/04/27/3181/
「恒久対策は今も未定」→https://holylandtokyo.com/2022/01/13/2605/
「50機目受領も恒久対策未定」→https://holylandtokyo.com/2021/11/22/2424/

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米陸軍が過去40年で最大のヘリ機種選定に結論 [Joint・統合参謀本部]

UH-60 Black Hawk 2000機の後継ヘリFLRAA選定
Bell社の「V-280 Valor」に決定
1980年代から計画と中止を繰り返したヘリ選定の末に
もう一つのヘリFARA機種選定は継続実施中

V-280 Bell.jpg12月5日、米陸軍が2021年夏から実施してきた将来長距離攻撃ヘリ(FLRAA:Future Long-Range Assault Aircraft)機種選定において、争った2機種「Bell社のV-280 Valor」と「SikorskyとBoeingのDefiant X」から、オスプレイのようなティルローター式のV-280 Valorを選定しました。

FLRAAは、UH-60 Black Hawk約2000機の後継ヘリと見なされており、1対1で後継機が導入されるわけではないようですが、「米陸軍で過去40年間で最大のヘリ調達案件」と言われる大きなプロジェクトで、海外需要も含めると10兆円近くの巨大プロジェクトになる可能性があると言われている選定でした

V-280 Bell3.jpg2021年夏からのFLRAA機種選定だと冒頭で申しましたが、2つの候補機種は2017年と2019年に初飛行を行い、その後米陸軍による段階的な様々な検証やフライト試験を経て、2021年夏からの最終評価段階を迎えており、米陸軍担当の少将は「米陸軍航空部隊の歴史上、最も大規模で複雑な機種選定であった」と結果発表会見で述べています。

そのようなコメントが米陸軍幹部から出るのも当然で、米陸軍は1980年代から新規ヘリ導入プロジェクトにことごとく失敗しており、最近では約9000億円の開発費を投じた「Boeing-Sikorsky RAH-66 Comanche」ヘリ導入を、最終段階の2004年に断念するなど、退役済みヘリ2機種の後継機を決められないまま、現有機種と無人機で代替してきた「黒歴史」を刻んでいるところだからです

FLRAA2.jpg今回の選定も、全くタイプが異なる、ティルローター型の「V-280」とステルス形状の従来型ヘリ「Defiant X」が候補機で、目指すところがわかりにくい選定となっており、「米陸軍の対中国等の本格紛争での役割の迷走」と陰口をたたかれる事態となっている選定です

敗れたSikorskyとBoeing側は、米陸軍からの選定結果フィードバックを待って「next steps」を考慮すると意味深な声明を出しており、米陸軍航空関係者は気が気ではないところでしょう。

加えて、FLRAAと同じく2030年部隊配備を目指す将来攻撃偵察ヘリFARA(Future Attack Reconnaissance Aircraft)候補機2機種が2023年末までに初飛行を行い、機種選定の山場を迎える予定となっており、1200機保有のApacheヘリの後継検討も絡んで、米陸軍航空関係者の悩みは尽きないところです

ところで今回FLRAAに選ばれた「V-280」は、
V-280 Bell2.jpg●兵装した12~14名の陸軍や海兵隊兵士を輸送できるティルローター機で、UH-60の約2倍の速度「280」ノットを目指して命名され、テスト飛行では300ノットも記録している
●UH-60の航続距離が320nmであったのに対し、400nmの航続距離を目指している・・・との特徴を持つ機体です

一方の「DefiantX」は、初飛行がBell社製より2年遅れ、その後も開発トラブル続きで素人的には印象は良くありませんでした。最高速度247ノットですが、低高度高速で機動性をアピールしていたところでした
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FARA2.jpg強固に防御された戦域での戦いを米軍が追求し、米陸軍も、部隊が分散し、機動的に移動して戦う演習に取り組む様子を先日ご紹介しましたが、その構想に「Bell V-280」が合致したのでしょう。でも、米陸軍がどこを目指すのか、対中国でどのような戦い方を追求するのか、未だによくわかりません

順調に機種選定結果が受け入れられ、FARA(Future Attack Reconnaissance Aircraft)の選定も順調に進むことを祈念申し上げます

UH-60後継検討について
「米陸軍UH-60後継の長距離攻撃ヘリの選定開始」→https://holylandtokyo.com/2021/07/16/2009/
「米陸軍ヘリは無人化でなく自動化推進の方向か!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-11
「UH-60後継を意識した候補機開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-06-16

対中国を想定した太平洋陸軍の演習
「対中国で分散作戦演習JPMRC」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/

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DNI長官:露は弾薬不足に対処できそうもない [安全保障全般]

来春の露の大規模反転攻勢はありそうもない
プーチンが戦闘の実態を把握しているか疑問
ウクライナ支配を一旦諦め、長期的目標に転換か

Haines Reagan5.jpg12月3日、毎年恒例の「Reagan Defense Forum」で公開インタビューを受けた米国情報機関トップのAvril Haines 国家情報長官(DNI:Director of National Intelligence)が、不活発になりつつあるロシア軍のウクライナ侵略活動やプーチン大統領の状況について断片的ながら見解を披露し、ロシア軍の弾薬枯渇が急速に進んで国内補給調達見込みが厳しいことや、プーチン大統領が戦況実態を十分報告されていない疑念に言及しました

厳しい冬を迎えウクライナでのロシア軍活動が低下し、ウクライナ東部からのロシア軍撤退の動きが確認される状況ですが、ロシア軍が態勢を立て直して来春に反撃の機会をうかがっているのではとの見方もある中、米国情報機関を取りまとめる立場の国家情報長官DNIが、慎重に言葉を選びつつながらも相当に確信をもって踏み込んだ発言をしている印象なのでご紹介いたします

12月6日付米空軍協会web記事によれば、
NBC放送のAndrea Mitchel女史にからのインタビューを受ける形式で語ったAvril Haines 国家情報長官は・・・

ロシアの弾薬備蓄量
Haines Reagan.jpg●厳しい冬を迎え、ロシアとウクライナ両国は軍の再編・物資装備の補給モードに入っていると見られ、反転攻勢の準備とも言えるが、春を迎える頃にロシア軍が反転攻勢に出られるかついて情報機関は相当レベルで懐疑的であり、ウクライナ側についてはかなり楽観的である
●特にロシア軍の兵器や弾薬の在庫量が問題で、具体的な数量はこの場で言及できないが、ロシアの精密誘導兵器消費ペースはウクライナよりかなり早く厳しい状況で、ロシア軍需産業では消費分を補填できない状態にあると見ている

●このためロシアは他国からの弾薬調達に動いており、ロシア軍装備で使用できる弾薬を保有している北朝鮮、中国、イランに対し提供を求めたことが知られている。ただし多くの補給を得られた訳ではない模様だ
●同盟国とも協力して分析を進めている我々の関心事項の一つは、ロシアの弾薬備蓄量から、ウクライナ以外の紛争にどの程度弾薬を使用できる状態にあるかであり、通常兵器でのウクライナ以外での軍事オプションは大きく制限されるだろうとの見方もある

●イランはロシアへの無人機提供を否定していたが、最近では「戦争前に提供したものだ」と言い訳を始めている。ロシアはイランから別の精密誘導兵器を導入しようとしており、極めて憂慮すべき事態で注視している

プーチンはロシア軍の苦戦や窮状を把握しているか
Putin Haines Reagan.jpg●プーチン大統領がロシア軍の状況や戦況の実態を把握しているのか、プーチンの怒りを恐れた部下からの虚飾に満ちたロシア軍に都合の良い報告しか受けていないのではないかとの疑問は、我々の関心事項であり、様々に議論されている。私が言えるのは、侵略後のロシア軍の苦戦にプーチンが驚いているということである
●プーチンはロシア軍の直面する問題を次第に認識する様になっていると考えるが、どの程度正確に全体像を把握しているかはよくわからない。弾薬の枯渇、士気低下、補給物資不足、兵站支援全般などなどの直面する課題についてだ

Haines Reagan4.jpg●ただ、ロシア軍の厳しい現状を把握し始めていても、プーチンは「ウクライナ支配の奪還(retake control of Ukraine)」との目的を変えていないし、少なくとも我々は変化の証拠をつかんでいない。
●「ウクライナ支配の奪還」の意味するところは様々に解釈でき、プーチンは「ウクライナはロシアの主権エリアである」と言い続けているが、それが短期的な軍事作戦にどうつながっていくのか不明である。侵略開始当初の勢いがなく当初の目的達成が困難なことを認識する時が来て、目的縮小を受け入れることができるかわからない
●一時的に目標縮小をプーチンが受け入れても、時間を置いて、再び彼は当初の目的達成に挑むだろうと米国情報機関は考えている

中国の動きについて
Xi Haines Reagan.jpg●中国の動きは2面性を持っている。引き続き中国はロシアを支援するための会議を催したり参加したり、国際社会でロシアの主張を拡散したり、様々な形での支援を行っている。
●しかし中国は、決定的な影響を与えうる軍事支援は行っておらず、支援はわずかなレベルである。我々は注意深く中国の動きを見ているが、プーチンによる核兵器使用を匂わせる発言の背景に中国がいるとの証拠は得ていない。ただ習近平の発言はプーチンに最も強く作用するだろうとも考えている

ウクライナのインフラ攻撃の影響
●ロシアによるエネルギーインフラ攻撃により、ウクライナは大きな打撃を受けているが、ウクライナ国民の士気を低下させるまでには至っていないし、ロシアと戦う意志に変化は見られない。
●ただし、ウクライナ経済は長期的に大きな打撃を受けることは間違いない
/////////////////////////////////////////////

会見の公式映像(約37分)


Haines Reagan3.jpg言葉を選んでの国家情報長官DNIの発言ですが、ロシア軍が今ウクライナ侵略を止めても、ロシア軍は当面何もできない状態にまでダメージを受けていると考えてよいレベルなのかもしれません。核兵器を除いては・・・

結果として、米軍や西側諸国が対中国により勢力を集中する事が出来ればよいのですが・・・

女性初の国家情報長官をご紹介
高校卒業後に来日し、1年間講道館で柔道を習ったつわものデス!
「DNIが年次報告書を語る」→https://holylandtokyo.com/2021/04/27/116/

ウクライナ関連の記事
「第1撃は宇宙やサイバー攻撃だった」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「対中国への教訓は兵站の重要性」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「米陸軍の教訓」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/
「ロシアに迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「日本への警告」→https://holylandtokyo.com/2022/03/28/2949/
「台湾事案への教訓」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/
「戦闘機での制空の時代は終わる」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/
「ウクライナ侵略最初の一撃は宇宙で!?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/18/2732/

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中国国産エンジンを空母艦載機J-15に搭載か [中国要人・軍事]

徐々に双発機から単発機に搭載機種拡大の中
ついに国産WS-10エンジンを高リスクの空母艦載機に?
中国国営テレビCCTVがちらりと放映の模様

J-15 WS-10.jpg11月17日中国国営テレビCCTVが、製造工場でテスト飛行準備を行う中国製空母艦載機J-15の映像を放映し、これを受け28日付米軍事メディアが、運用リスクが高く安全性が厳しく精査される空母艦載機J-15に、中国産エンジンWS-10が搭載される模様だと取り上げています

28日付Defense-Newsは、CCTVがどのような目的でJ-15空母艦載戦闘機の映像(画像?)を放映したのか説明していませんが、「エンジン尾部のアフターバーナーノズルの形状等から、WS-10と思われるエンジンが、テスト飛行に向けて調整作業を受けている」と紹介しています。

J-15 WS-10 5.jpgJ-15中国産空母艦載機は、機体の開発段階でWS-10エンジン搭載の試みがなされたと記録されていますが、製造段階に入ってからはロシア製のAL-31Fを搭載しており、エンジンの不調がそのまま操縦者の命に係わる空母艦載機のJ-15への国産エンジン搭載は、J-10で約10年の実績を積んだ中国製エンジンの成熟度を示すリトマス試験紙と考えられてきました

そもそもジェットエンジンは、「その国の総合工業力レベル」を示すバロメーターと言われ、中国軍は中国製エンジンの作戦機への搭載を数十年前から追求してきましたが、その試みはなかなか実を結びませんでした。結果としてロシア製エンジンを中国製コピー機体に搭載する形が長く続き、国産と呼ばれるJ-15空母艦載機も、ロシアの空母艦載機Su-33 Flankerのコピーと言われてきました

J-15 WS-10 2.jpg少なくとも10年位前までは、○○戦闘機に国産エンジンが試験搭載されたが、量産型にはロシア製エンジンが搭載された・・との報道ばかりでしたが、10年くらい前から中国製WS-10エンジンが陸上基地配備で双発のJ-11b要撃機やJ-16攻撃機やJ-20ステルス形状戦闘機(攻撃機)の量産型に搭載開始とのニュースが伝えられるようになってきました

より最近では、例えば2018年のZhuhai航空ショーでJ-10B試験機にステルス性の高いWS-10Bを搭載して披露したり、双発のステルス形状攻撃機J-20に国産WS-15エンジンを、また4発のY-20輸送機にWS-10ターボファンエンジンを搭載開始したことが確認されていたところです

J-15 WS-10 3.jpgまた2021年5月には、中国国営ラジオwebサイトが、中国空軍部隊に配備されている単発J-10C戦闘機にWS-10Bエンジンが搭載されていると確認できる映像を公開し、Defense-Newsらが「ついに中国製エンジンが信頼性を高め、量産型単発戦闘機に搭載された」と配信したところでした

そして今回、中国国産エンジンの最後の挑戦とも言われる「空母艦載機」J-15への搭載が、本格的に試験されることが確認されたということです。
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J-15 WS-10 4.jpg中国情勢は、厳しすぎるコロナ対策に対する反対運動が中国各地で発生し、経済の急収縮も背景として「風雲急」を告げています。

そんな中で「最新技術の窃盗」で急速なキャッチアップに成功した中国軍事技術が、今後どこまで「追いつけ・追い越せ」を継続できるのか、とっても気になります

WS-10エンジンが登場する過去記事
「単発J-10CにWS-10B搭載」→https://holylandtokyo.com/2021/05/14/1497/
「中国航空ショーでのJ-20を評価する」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-10-1
「J-20が初の海上行動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-05-12-1
「報道官が戦闘能力発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-1

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