B-2ステルス爆撃機がリビアで対IS爆撃 [カーター国防長官]
史上5回目のB-2作戦任務はリビアのISキャンプ攻撃
オバマ&カーター退任直前に意味深なステルス大型爆撃機使用
19日、前日に退任式典を終えていたカーター国防長官が「サプライズ」記者会見を開き、18日に2機のB-2ステルス爆撃機がリビアにあるISIL訓練基地を約100発の精密誘導爆弾で攻撃し、テロリスト約100名を抹殺したと発表しました
オバマ大統領にも「数日前に了承を得た」との説明もアリ、同大統領が最後に承認した軍事作戦となった模様です。
タイミングといい、滅多に使用しない大型ステルス爆撃機の投入といい、中国やロシアへの警告メッセージの意味合いや、米軍の即応態勢への疑問を示しているトランプ氏へのメッセージだとメディアは指摘しているようですが、カーター長官は当然否定しています
攻撃は2機のB-2と、その後の無人機MQ-9のフォローアップ攻撃で構成されていたようですが、他のアセットのオプションもあった中でB-2を使用した理由については、米アフリカ軍司令官の要望で最適なアセットだった等と、それなりに説明しています
B-2が1990年代に運用態勢を確立後、これまで4つの作戦にだけしか投入されておらず、最近では2011年のリビア攻撃が最後の実作戦だったこともあり、様々な憶測を今後呼びそうな貴重なB-2爆撃ですのでご紹介します
20日付Military.com記事によれば
●カーター長官は、他のアセットの選択肢もあったが、米アフリカコマンド司令官がB-2を最適なアセットとして要望してきたため国防長官として承認し、オバマ大統領にも「2~3日前に」承認をもらったと説明した
●大統領の承認を得た理由を、爆撃を行ったリビアの都市Sirte周辺は、長らくISILに支配され、先月米軍や国連の支援を受けたリビア政府軍GNAが奪還したばかりで、空爆を制限していた地域だからだとカーター長官は説明した
●また同長官はB-2を投入した理由についての憶測を否定し、B-2爆撃機は多量の爆弾を搭載して長時間連続して在空出来ることから、作戦指揮官により作戦の柔軟性を与えることが出来ると判断したからと説明した
●ただ付け加えて長官は、B-2爆撃機を使用するときは、常に何らかのメッセージがそこにあると述べ、ISILに対し、世界中のどこに居ようとも米国の手からは逃れられないとのメッセージだと語った
●当該B-2爆撃機は4万ポンドの兵器搭載能力があるが、今回の作戦では500ポンドのJDAM等精密誘導爆弾を2機で合計100発投下した。そしてB-2の後に、1機の無人機MQ-9が「Hellfireミサイル」で更に攻撃を加えた、と米空軍報道官は説明した
●なお2機のB-2爆撃機は、米本土ミズーリ州のWhiteman空軍基地から飛び立ち、往復34時間の連続飛行を15回の空中給油で行ったとのこと。
●カーター長官は攻撃目標となった2つのISIL訓練キャンプについて、先月リビア政府軍が米軍や国連の支援を受け奪還したSirteの町から非難したテロリスト達が、欧州へのテロ攻撃の準備をしていた拠点だと説明し、「ISILを発見したら、何処であろうとこれを撃破する一連の作戦の一部だ」と位置付けた
●なお米空軍報道官は、B-2が計100発もの爆弾を使用したが、精密誘導爆弾を使用したことから「絨毯爆撃:carpet bombing」ではないと強調した
過去4回のB-2爆撃機投入作戦は以下の通り
*March 1999, Operation Allied Force against Serbia;
*September 2001, in the first strikes of Operation Enduring Freedom in Afghanistan;
*March 2003, at the start of Operation Iraqi Freedom; and
*March 2011, Operation Odyssey Dawn in Libya to topple the regime of Gadhafi.
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リビアの「Sirte」という地中海沿岸の都市は、ISILが占拠して以来、テロリストを欧州に送り込む拠点となっていた場所で、その奪還は有志連合の悲願でした
その悲願の奪還が昨年12月に成功し、逃げ延びた残党退治作戦がB-2爆撃機に託された訳です
長時間敵の上空に在空し、敵を発見次第、その都度精密誘導兵器で攻撃する手法は、B-52も行っていますが、今回はなぜステルス機が必要だったのでしょうか?
75機以上保有するB-52部隊が多忙で、20機しか保有しないB-2爆撃機部隊に任務が回ってきたのでしょうか?
邪推ですが、以下の様に想像します
●中東域に現在米空母が存在しないため、中東に展開する米空軍はシリアやイラクでの対ISILに手一杯。またロシアが最新鋭多用途戦闘機Su-35をシリアに持ち込み、地域の緊張が高まる中、リビアでの作戦に投入する余裕が中東展開部隊にはなかった
●ISILテロリストと関連装備品が集中していた攻撃目標を、一度の機会で徹底的に殲滅したかった。敵が分散避難する恐れがあり、複数回に亘る攻撃は避けたかった
●2011年3月にもB-2を投入したように、旧リビア軍の保有していた対空ミサイルで所在不明となっているモノがアリ、念のためステルス機を投入した
B-2爆撃機関連
「B-2の稼働率」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-05
「2058年まで運用予定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-05
「B-2の20周年記念」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-28
「爆撃機による外交」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-04
「グアムに大型B全機種勢揃い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-12
「B-2がCBPでグアム展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-18
「CBP受入の常設部隊設置へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-13-1
「映像5つの視点B-2爆撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-01
「鮮明な飛行映像」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-27-1
オバマ&カーター退任直前に意味深なステルス大型爆撃機使用
19日、前日に退任式典を終えていたカーター国防長官が「サプライズ」記者会見を開き、18日に2機のB-2ステルス爆撃機がリビアにあるISIL訓練基地を約100発の精密誘導爆弾で攻撃し、テロリスト約100名を抹殺したと発表しました
オバマ大統領にも「数日前に了承を得た」との説明もアリ、同大統領が最後に承認した軍事作戦となった模様です。
タイミングといい、滅多に使用しない大型ステルス爆撃機の投入といい、中国やロシアへの警告メッセージの意味合いや、米軍の即応態勢への疑問を示しているトランプ氏へのメッセージだとメディアは指摘しているようですが、カーター長官は当然否定しています
攻撃は2機のB-2と、その後の無人機MQ-9のフォローアップ攻撃で構成されていたようですが、他のアセットのオプションもあった中でB-2を使用した理由については、米アフリカ軍司令官の要望で最適なアセットだった等と、それなりに説明しています
B-2が1990年代に運用態勢を確立後、これまで4つの作戦にだけしか投入されておらず、最近では2011年のリビア攻撃が最後の実作戦だったこともあり、様々な憶測を今後呼びそうな貴重なB-2爆撃ですのでご紹介します
20日付Military.com記事によれば
●カーター長官は、他のアセットの選択肢もあったが、米アフリカコマンド司令官がB-2を最適なアセットとして要望してきたため国防長官として承認し、オバマ大統領にも「2~3日前に」承認をもらったと説明した
●大統領の承認を得た理由を、爆撃を行ったリビアの都市Sirte周辺は、長らくISILに支配され、先月米軍や国連の支援を受けたリビア政府軍GNAが奪還したばかりで、空爆を制限していた地域だからだとカーター長官は説明した
●また同長官はB-2を投入した理由についての憶測を否定し、B-2爆撃機は多量の爆弾を搭載して長時間連続して在空出来ることから、作戦指揮官により作戦の柔軟性を与えることが出来ると判断したからと説明した
●ただ付け加えて長官は、B-2爆撃機を使用するときは、常に何らかのメッセージがそこにあると述べ、ISILに対し、世界中のどこに居ようとも米国の手からは逃れられないとのメッセージだと語った
●当該B-2爆撃機は4万ポンドの兵器搭載能力があるが、今回の作戦では500ポンドのJDAM等精密誘導爆弾を2機で合計100発投下した。そしてB-2の後に、1機の無人機MQ-9が「Hellfireミサイル」で更に攻撃を加えた、と米空軍報道官は説明した
●なお2機のB-2爆撃機は、米本土ミズーリ州のWhiteman空軍基地から飛び立ち、往復34時間の連続飛行を15回の空中給油で行ったとのこと。
●カーター長官は攻撃目標となった2つのISIL訓練キャンプについて、先月リビア政府軍が米軍や国連の支援を受け奪還したSirteの町から非難したテロリスト達が、欧州へのテロ攻撃の準備をしていた拠点だと説明し、「ISILを発見したら、何処であろうとこれを撃破する一連の作戦の一部だ」と位置付けた
●なお米空軍報道官は、B-2が計100発もの爆弾を使用したが、精密誘導爆弾を使用したことから「絨毯爆撃:carpet bombing」ではないと強調した
過去4回のB-2爆撃機投入作戦は以下の通り
*March 1999, Operation Allied Force against Serbia;
*September 2001, in the first strikes of Operation Enduring Freedom in Afghanistan;
*March 2003, at the start of Operation Iraqi Freedom; and
*March 2011, Operation Odyssey Dawn in Libya to topple the regime of Gadhafi.
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リビアの「Sirte」という地中海沿岸の都市は、ISILが占拠して以来、テロリストを欧州に送り込む拠点となっていた場所で、その奪還は有志連合の悲願でした
その悲願の奪還が昨年12月に成功し、逃げ延びた残党退治作戦がB-2爆撃機に託された訳です
長時間敵の上空に在空し、敵を発見次第、その都度精密誘導兵器で攻撃する手法は、B-52も行っていますが、今回はなぜステルス機が必要だったのでしょうか?
75機以上保有するB-52部隊が多忙で、20機しか保有しないB-2爆撃機部隊に任務が回ってきたのでしょうか?
邪推ですが、以下の様に想像します
●中東域に現在米空母が存在しないため、中東に展開する米空軍はシリアやイラクでの対ISILに手一杯。またロシアが最新鋭多用途戦闘機Su-35をシリアに持ち込み、地域の緊張が高まる中、リビアでの作戦に投入する余裕が中東展開部隊にはなかった
●ISILテロリストと関連装備品が集中していた攻撃目標を、一度の機会で徹底的に殲滅したかった。敵が分散避難する恐れがあり、複数回に亘る攻撃は避けたかった
●2011年3月にもB-2を投入したように、旧リビア軍の保有していた対空ミサイルで所在不明となっているモノがアリ、念のためステルス機を投入した
B-2爆撃機関連
「B-2の稼働率」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-05
「2058年まで運用予定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-05
「B-2の20周年記念」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-28
「爆撃機による外交」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-04
「グアムに大型B全機種勢揃い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-12
「B-2がCBPでグアム展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-18
「CBP受入の常設部隊設置へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-13-1
「映像5つの視点B-2爆撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-01
「鮮明な飛行映像」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-27-1
大統領&議会選挙を経て国防省改革(GN法改正)は? [カーター国防長官]
11月30日付Defense-Newsは、大統領&議会選挙を経て、両選挙で勝利を収めた共和党の国防省改革「急先鋒」であるマケイン上院議員(上院軍事委員長)が、5月に素案を公表していた大胆な国防省改革案を、2017年の国防授権法(NDAA)の最終案に盛り込んだと紹介しています
この国防省改革は、米軍の指揮系統やコマンド編制等も含めて定めた「Goldwater-Nichols法」を30年ぶりに改正しようとする動きの一つであり、この動きを強く警戒する国防省側も案を提示して「激突」の様相を呈しているものです。
これまでも様々な論点候補をご紹介(末尾の過去記事参照)してきましたが、本日紹介の記事は、「調達技術兵站次官の権限分割」「将軍ポストの削減」「統合参謀本部議長の任期延長」「NSC国家安全保障会議の定員削減」を論点として紹介しています
なおNDAAは、National Defense Authorization Actの略です
調達技術兵站次官の権限分割
●現在は豪腕Frank Kendall氏が務め、カーター国防長官も経験したことがある「調達Acquisition」「技術Technology」「兵站Logistics」を司る重要ポストであるが、マケイン議員らは装備品開発の遅延と経費高騰を強く問題視し、同時に中露に対する軍事技術優位を維持する重要性等から、3つの任務の分割を考えている
●一案としてマケイン氏ら上院では、調達と技術を新ポスト「研究開発次官USD(research and engineering)」に、兵站を新ポスト「管理支援次官USD(management and support)」が提案されている
●一方で下院は、技術を一人が、調達と兵站を別の一人が束ねる案を温めている。これはどちらかというと、カーター長官が進める「chief innovation officer」指名に近いとも言える
●国防省側は反対しており、調達技術兵站を一人が束ねることによって、迅速な最新技術導入や研究開発、更に効率的な調達につながるとカーター政権下の取り組みを訴えている
●NDAA最終案でも、分割は2018年2月となっており、種々検討の期間はある
将軍ポストの削減
●米軍の規模がイラク・アフガン対処のピークから縮小を続ける中にあって、将軍ポストの削減は継続して議題に上がっている。現状は、大将が37ポスト、中将が138、少将が299、准将が411の計885ポストであるが、5月の案では1/4に当たる221ポストの降格や削減が提案されていた
●NDAA最終案では、妥協が図られて110ポストまで対象ポストが削減提案がなされたが、これを2022年末までに達成する案となっている。例えば大将ポストは5個削減の案となっている。また最終案は、110ポスト削減の後に、更に1割削減の検討が必要だと提案している
●最終案は、「国防省は、膨れあがった司令部組織やスタッフを削減する事で効率性を改善し、部隊訓練や国家のために戦う部隊に必要な階級の必要なポストを設け、総合力を向上させるべきである」と提案している
統合参謀本部議長や副議長の任期延長
●1986年の「Goldwater-Nichols法」で、それまでの任期を短縮し、同議長や副議長の任期は現在2年とされており、大統領が求めれば更に2年延長することとされている。
●しかし大統領の最高軍事アドバイザ-として、長期的な視点で任務を遂行するには、2年は短すぎる。NDAA最終案では、議長や副議長の任期を4年とし、同時期に二人が交代する現状を改め、時期をずらすべきだと提案している
●関係者の一人は、「30年前の時点では人事の新陳代謝の観点で2年に人気を縮小したが、誤りだった。4年にすべきだと統合参謀本部のスタッフも考えている」と語っている
NSC国家安全保障会議の定員削減
●オバマ政権の肥大したNSC国家安全保障会議による、行政サイドへの「執拗な細部介入:micromanagement abundant」の再発を防止するため、NSCスタッフの人員上限を定めようとする動きがある
●5月時点の案では、NSC国家安全保障会議の定員を150名以下にすべきとしていたが、NDAA最終案では200名となっている
●識者の間では、「スタッフの数に上限を設けても、細部介入を防ぐことには直接つながらない」との意見も多く、「問題認識は良いが、実現は夢物語だ」と評価する者もいる
●また報道によれば、トランプ政権はNSCスタッフを40-60名に制限すると伝えられており、この動向にも注目が集まっている
////////////////////////////////////////////////
国防省側が4月に提案していた改革の論点は、「地域コマンドの再編」「サイバーコマンドの格上げ」「装備品や物資調達の権限委譲」「昇任資格と統合職経験の縛り緩和」「統合参謀本部議長の役割再定義」などでした
ちなみにその際マケイン議員は、「サイバーコマンドの格上げや統合参謀本部議長の役割強化など国防省意見と同じ部分もあるが、更に深く改革を進め、国防省が望まない提案も多く考えている」と牽制していたところです。
新政権の動向を見守る一つの視点として、今後の成り行きに注目したいと思います
GN法改正関連の記事
「マケイン議員の意気込み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-30
「階層縮小で人員削減」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-26-1
「先制:国防省がGN法改正案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-06
「国防省がGN法改正検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-05
「国防長官が同法改正に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03
「統合参謀本部の削減検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-16
地域コマンドの再編に関する記事
「地域コマンド改革私案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-24
「情報筋:コマンド再編案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-12
CIO:chief innovation officerの指名へ
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-01
この国防省改革は、米軍の指揮系統やコマンド編制等も含めて定めた「Goldwater-Nichols法」を30年ぶりに改正しようとする動きの一つであり、この動きを強く警戒する国防省側も案を提示して「激突」の様相を呈しているものです。
これまでも様々な論点候補をご紹介(末尾の過去記事参照)してきましたが、本日紹介の記事は、「調達技術兵站次官の権限分割」「将軍ポストの削減」「統合参謀本部議長の任期延長」「NSC国家安全保障会議の定員削減」を論点として紹介しています
なおNDAAは、National Defense Authorization Actの略です
調達技術兵站次官の権限分割
●現在は豪腕Frank Kendall氏が務め、カーター国防長官も経験したことがある「調達Acquisition」「技術Technology」「兵站Logistics」を司る重要ポストであるが、マケイン議員らは装備品開発の遅延と経費高騰を強く問題視し、同時に中露に対する軍事技術優位を維持する重要性等から、3つの任務の分割を考えている
●一案としてマケイン氏ら上院では、調達と技術を新ポスト「研究開発次官USD(research and engineering)」に、兵站を新ポスト「管理支援次官USD(management and support)」が提案されている
●一方で下院は、技術を一人が、調達と兵站を別の一人が束ねる案を温めている。これはどちらかというと、カーター長官が進める「chief innovation officer」指名に近いとも言える
●国防省側は反対しており、調達技術兵站を一人が束ねることによって、迅速な最新技術導入や研究開発、更に効率的な調達につながるとカーター政権下の取り組みを訴えている
●NDAA最終案でも、分割は2018年2月となっており、種々検討の期間はある
将軍ポストの削減
●米軍の規模がイラク・アフガン対処のピークから縮小を続ける中にあって、将軍ポストの削減は継続して議題に上がっている。現状は、大将が37ポスト、中将が138、少将が299、准将が411の計885ポストであるが、5月の案では1/4に当たる221ポストの降格や削減が提案されていた
●NDAA最終案では、妥協が図られて110ポストまで対象ポストが削減提案がなされたが、これを2022年末までに達成する案となっている。例えば大将ポストは5個削減の案となっている。また最終案は、110ポスト削減の後に、更に1割削減の検討が必要だと提案している
●最終案は、「国防省は、膨れあがった司令部組織やスタッフを削減する事で効率性を改善し、部隊訓練や国家のために戦う部隊に必要な階級の必要なポストを設け、総合力を向上させるべきである」と提案している
統合参謀本部議長や副議長の任期延長
●1986年の「Goldwater-Nichols法」で、それまでの任期を短縮し、同議長や副議長の任期は現在2年とされており、大統領が求めれば更に2年延長することとされている。
●しかし大統領の最高軍事アドバイザ-として、長期的な視点で任務を遂行するには、2年は短すぎる。NDAA最終案では、議長や副議長の任期を4年とし、同時期に二人が交代する現状を改め、時期をずらすべきだと提案している
●関係者の一人は、「30年前の時点では人事の新陳代謝の観点で2年に人気を縮小したが、誤りだった。4年にすべきだと統合参謀本部のスタッフも考えている」と語っている
NSC国家安全保障会議の定員削減
●オバマ政権の肥大したNSC国家安全保障会議による、行政サイドへの「執拗な細部介入:micromanagement abundant」の再発を防止するため、NSCスタッフの人員上限を定めようとする動きがある
●5月時点の案では、NSC国家安全保障会議の定員を150名以下にすべきとしていたが、NDAA最終案では200名となっている
●識者の間では、「スタッフの数に上限を設けても、細部介入を防ぐことには直接つながらない」との意見も多く、「問題認識は良いが、実現は夢物語だ」と評価する者もいる
●また報道によれば、トランプ政権はNSCスタッフを40-60名に制限すると伝えられており、この動向にも注目が集まっている
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国防省側が4月に提案していた改革の論点は、「地域コマンドの再編」「サイバーコマンドの格上げ」「装備品や物資調達の権限委譲」「昇任資格と統合職経験の縛り緩和」「統合参謀本部議長の役割再定義」などでした
ちなみにその際マケイン議員は、「サイバーコマンドの格上げや統合参謀本部議長の役割強化など国防省意見と同じ部分もあるが、更に深く改革を進め、国防省が望まない提案も多く考えている」と牽制していたところです。
新政権の動向を見守る一つの視点として、今後の成り行きに注目したいと思います
GN法改正関連の記事
「マケイン議員の意気込み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-30
「階層縮小で人員削減」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-26-1
「先制:国防省がGN法改正案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-06
「国防省がGN法改正検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-05
「国防長官が同法改正に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03
「統合参謀本部の削減検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-16
地域コマンドの再編に関する記事
「地域コマンド改革私案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-24
「情報筋:コマンド再編案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-12
CIO:chief innovation officerの指名へ
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-01
カーター長官:DIB提言から、まず3つに着手へ [カーター国防長官]
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Twitter→https://twitter.com/Mongoose2011
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10月28日、カーター国防長官はCSIS主催の第3の相殺戦略関連イベントで、彼自身が3月に設置した国防革新評議会による10月5日の提案(11項目)の中から、3項目に着手すると語りました。
残りの8項目の扱いについては言及がなく、言及した3項目についても細部は不明ですが、とりあえずスピード感溢れるカーター長官の動きをご紹介しておきます
でも、新政権での新たな国防長官がこれらの諸施策をどう扱うか不明な中、冷ややかな見方も国防省内にはあるようです。
しかしカーター長官自身は、「今私が語っている構想は、将来の国防長官にとっては当たり前のことになる。そして更なるモメンタムや制度的な基礎が確立され、発展しなければならない」、「国防省内にある変革を妨げる部分を取り除き、国防省を改革思考に意識改革し続けねばならない」と語っています
以下では、まず着手する3項目を簡単にご紹介します
Chief Innovation Officer配置
●何時、誰がについては言及しなかったが、「Chief Innovation Officer」の配置を行うと語った
●そして「多くの組織が同様のポストを設け始めており、改革を競って行う環境構築に着手している。例えばIBMやインテルやグーグルである。我々も後に続き、勤務者を動機付け、革新的アイディアを出し合う雰囲気を生み出したい」と表現した
特定技術者の採用制度改革
●コンピュータ科学者やソフト技術者の採用に新たな取り組みを開始する。
●この一連の取り組みでは、国防省のコンピュータ科学分野を中核となる科学分野に育てるため、ROTC制度から奨学金制度等々の様々な取り組みで、国防省における次世代の科学や技術リーダーを確保育成する事を目標にする
●一般に大学生は、時間の経過と共に自動的に昇進するようなエスカレーター式の人事管理を求めておらず、ジャングルジムを上るように、様々な挑戦を通じて高見を目指すようなキャリアを望んでいる
●国防省は、この様な多くの人の望みに答えるような経歴管理を認知すべきである
ディープラーニングの研究所設置
●機械学習への投資を拡大し、研究所「virtual center of excellence」を設置し、「既に本分野で業績を上げている企業や大学等に、我々の目標に参画してもらえるよう」な態勢を整える
●本分野の主担当は(シリコンバレーやボストンで企業の最新技術を取り込む出先機関として活動を開始した)DIUxが行い、機械学習の「prize challenge」を企画させる
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CSISの関連webページ
→https://www.csis.org/events/assessing-third-offset-strategy?block2
政権交代直前の今のタイミングで「Chief Innovation Officer」を引き受けてくれる人がいるのか? 研究所「virtual center of excellence」が短命に終わらないのか等々、突っ込みどころはあるのですが、カーター長官の使命感に免じて、期待して見守ることと致しましょう・・
特定技術者の採用に関しては、結局「金目でしょ・・」との声を多く耳にするので、こちらも頑張って頂きましょう
10月5日のDIB初度会議の様子
「DIBの中間報告から8つ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-11
Facebook→http://www.facebook.com/holylandsonettokyo
Twitter→https://twitter.com/Mongoose2011
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10月28日、カーター国防長官はCSIS主催の第3の相殺戦略関連イベントで、彼自身が3月に設置した国防革新評議会による10月5日の提案(11項目)の中から、3項目に着手すると語りました。
残りの8項目の扱いについては言及がなく、言及した3項目についても細部は不明ですが、とりあえずスピード感溢れるカーター長官の動きをご紹介しておきます
でも、新政権での新たな国防長官がこれらの諸施策をどう扱うか不明な中、冷ややかな見方も国防省内にはあるようです。
しかしカーター長官自身は、「今私が語っている構想は、将来の国防長官にとっては当たり前のことになる。そして更なるモメンタムや制度的な基礎が確立され、発展しなければならない」、「国防省内にある変革を妨げる部分を取り除き、国防省を改革思考に意識改革し続けねばならない」と語っています
以下では、まず着手する3項目を簡単にご紹介します
Chief Innovation Officer配置
●何時、誰がについては言及しなかったが、「Chief Innovation Officer」の配置を行うと語った
●そして「多くの組織が同様のポストを設け始めており、改革を競って行う環境構築に着手している。例えばIBMやインテルやグーグルである。我々も後に続き、勤務者を動機付け、革新的アイディアを出し合う雰囲気を生み出したい」と表現した
特定技術者の採用制度改革
●コンピュータ科学者やソフト技術者の採用に新たな取り組みを開始する。
●この一連の取り組みでは、国防省のコンピュータ科学分野を中核となる科学分野に育てるため、ROTC制度から奨学金制度等々の様々な取り組みで、国防省における次世代の科学や技術リーダーを確保育成する事を目標にする
●一般に大学生は、時間の経過と共に自動的に昇進するようなエスカレーター式の人事管理を求めておらず、ジャングルジムを上るように、様々な挑戦を通じて高見を目指すようなキャリアを望んでいる
●国防省は、この様な多くの人の望みに答えるような経歴管理を認知すべきである
ディープラーニングの研究所設置
●機械学習への投資を拡大し、研究所「virtual center of excellence」を設置し、「既に本分野で業績を上げている企業や大学等に、我々の目標に参画してもらえるよう」な態勢を整える
●本分野の主担当は(シリコンバレーやボストンで企業の最新技術を取り込む出先機関として活動を開始した)DIUxが行い、機械学習の「prize challenge」を企画させる
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CSISの関連webページ
→https://www.csis.org/events/assessing-third-offset-strategy?block2
政権交代直前の今のタイミングで「Chief Innovation Officer」を引き受けてくれる人がいるのか? 研究所「virtual center of excellence」が短命に終わらないのか等々、突っ込みどころはあるのですが、カーター長官の使命感に免じて、期待して見守ることと致しましょう・・
特定技術者の採用に関しては、結局「金目でしょ・・」との声を多く耳にするので、こちらも頑張って頂きましょう
10月5日のDIB初度会議の様子
「DIBの中間報告から8つ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-11
CSISが「第3の相殺戦略」特集イベント [カーター国防長官]
主要な役者がそろい踏み!
28日、CSISが「第3の相殺戦略」にテーマを絞ったイベント「Assessing the Third Offset Strategy」を開催し、カーター国防長官やWork副長官、Selva統合参謀副議長らをスピーカーにして様々な視点で議論が行われました
朝8時から午後3時半までの本格イベントで、「第3の相殺戦略」を、カーター長官は技術革新の側面から、Work副長官は軍事戦略全体での位置づけの視点で、そしてSelva副議長は現場の脅威認識の重要性を指摘する形でテーマを掘り下げています
個々の内容は、これまで本ブログで断片的に取り上げてきたものですが、米国防省の大きな取り組みである「第3の相殺戦略」を概観する良い機会ですのでご紹介します。
なおイベント全体は、CSISのwebサイトで映像が公開予定ですので、ご興味のある方は以下のサイトをご活用下さい
CSISの関連webページ
→https://www.csis.org/events/assessing-third-offset-strategy?block2
カーター国防長官は新軍事技術に触れ
●国防省が「第3の相殺戦略:Third Offset Strategy」の一環として追求する無人機の群れ(drone swarming)技術は、今週大きな躍進を遂げた(large step forward just this week)。
●(国防長官は細部への言及を避けつつ、)国防省の戦略能力造成室SCO(Strategic Capabilities Office)が、今後数ヶ月の内に更なる発表を行うだろう
「無人機の群れ:艦艇の攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10
「海軍研究所の滑空無人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-04
●無人機の群れはSCOが取り組んでいる「game-changing」技術の一部に過ぎず、他にも米陸軍の「Tactical Missile System」に「cross-domain」能力を付与する技術開発で、皆さんが想定するよりも早期に、沿岸から射程300kmの水上目標攻撃を可能にする
●また弾薬庫爆撃機(arsenal plane)も新たな戦闘能力を生み出すもので、これも想定より早く、紛争抑止力として有効なことを示すであろう
Work副長官は同戦略の位置づけ再確認
●「第3の相殺戦略:Third Offset Strategy」には一つの焦点がある。その一つの焦点とは、通常兵器による抑止(conventional deterrence)である
●本戦略は、米国の通常戦力抑止力を強化する事により、主要な大国との本格紛争を回避できるよう期待するものである
ご参考(2015年11月の副長官講演)
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
●John Mearsheimerが核兵器時代の大国の定義で示したように、核攻撃に生き残れることによる核抑止力と無敵の通常兵器保有が「great power」には必要である
●「第3の相殺戦略」は一つに目的に焦点を絞っており、それは通常兵器による抑止力を絶対的に強力にし、米国が戦争に巻き込まれる可能性を極限まで低下させることである。他の大国に対する通常兵器による抑止を指すものである
Selva副議長は脅威認識の重要性を指摘し
●「第3の相殺戦略」は、解答ではなく質問である。それは潜在的な敵の能力を凌駕するため、どんな能力が我に必要かを問うものである
●同戦略には決められたゴールはなく、単に目的地に向けてドライブするのでも、各軍種にどんな装備を購入すべきかを示してくれるモノではない
●代わりに同戦略は、国防省が繰り返し継続的に、敵がどのような優れた能力を蓄えつつあるかを監視し、その敵がどんな脅威を友軍にもたらすかを考え、その脅威への対処が通常戦力抑止を強化するかを自身に問うことを求める
●そのためには、机上演習や実演習を通じた作戦実験が重要で、これらを通じて技術やアイディアを、戦術や手順やドクトリンに取り込んでいくことが解答につながる
●正しき認識された戦術や手順やドクトリンを試し、それらを米軍や同盟国にも伝え、敵が戦場に持ち込むであろう通常戦力に対し、優位を確保する手法を考えなければならない
●そして敵が戦場に持ち込むであろう通常戦力とは、単純化すれば、長射程で、精密誘導で、陸海空だけでなく宇宙やサイバードメインで発揮されるものであろう
////////////////////////////////////////////////////
「第3の相殺戦略:Third Offset Strategy」や関連技術については、以下の過去記事でご確認下さい。
国防長官や副長官だけでなく、軍人レベルも含めて米国防省を挙げて取り組んでいる様子が伺えます
一つコメントするとすれば、「通常戦力抑止」が強調して語られているのは、抑止戦略の両輪である「核戦力抑止」分野の維持に巨額の予算が必要な事が明らかになりつつあり、そっちも忘れないでね・・・との思いが詰まっているからだと思います。
Cross-domain能力を追求
「ハリス長官がcross-domainを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-05
「副長官が米空軍の尻を叩く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28
無人機の群れ関連
「無人機の群れ:艦艇の攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10
「海軍研究所の滑空無人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-04
地上部隊にA2AD網を期待
「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14
カーター長官の技術革新促進
「SCOが存続をかけ動く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-10
「ボストンにもDIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27-1
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
「米陸軍もRCO設立」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-01
「次期爆撃機の要求検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-07
「謎のRQ-180」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09
「謎の宇宙船X-37B」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
Work副長官と「第3の相殺戦略」
「相殺戦略を如何に次期政権に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
「慶応神保氏の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26
「第3のOffset Strategy発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-06-1
米軍の核戦力維持は大事業
「戦術核維持に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
28日、CSISが「第3の相殺戦略」にテーマを絞ったイベント「Assessing the Third Offset Strategy」を開催し、カーター国防長官やWork副長官、Selva統合参謀副議長らをスピーカーにして様々な視点で議論が行われました
朝8時から午後3時半までの本格イベントで、「第3の相殺戦略」を、カーター長官は技術革新の側面から、Work副長官は軍事戦略全体での位置づけの視点で、そしてSelva副議長は現場の脅威認識の重要性を指摘する形でテーマを掘り下げています
個々の内容は、これまで本ブログで断片的に取り上げてきたものですが、米国防省の大きな取り組みである「第3の相殺戦略」を概観する良い機会ですのでご紹介します。
なおイベント全体は、CSISのwebサイトで映像が公開予定ですので、ご興味のある方は以下のサイトをご活用下さい
CSISの関連webページ
→https://www.csis.org/events/assessing-third-offset-strategy?block2
カーター国防長官は新軍事技術に触れ
●国防省が「第3の相殺戦略:Third Offset Strategy」の一環として追求する無人機の群れ(drone swarming)技術は、今週大きな躍進を遂げた(large step forward just this week)。
●(国防長官は細部への言及を避けつつ、)国防省の戦略能力造成室SCO(Strategic Capabilities Office)が、今後数ヶ月の内に更なる発表を行うだろう
「無人機の群れ:艦艇の攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10
「海軍研究所の滑空無人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-04
●無人機の群れはSCOが取り組んでいる「game-changing」技術の一部に過ぎず、他にも米陸軍の「Tactical Missile System」に「cross-domain」能力を付与する技術開発で、皆さんが想定するよりも早期に、沿岸から射程300kmの水上目標攻撃を可能にする
●また弾薬庫爆撃機(arsenal plane)も新たな戦闘能力を生み出すもので、これも想定より早く、紛争抑止力として有効なことを示すであろう
Work副長官は同戦略の位置づけ再確認
●「第3の相殺戦略:Third Offset Strategy」には一つの焦点がある。その一つの焦点とは、通常兵器による抑止(conventional deterrence)である
●本戦略は、米国の通常戦力抑止力を強化する事により、主要な大国との本格紛争を回避できるよう期待するものである
ご参考(2015年11月の副長官講演)
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
●John Mearsheimerが核兵器時代の大国の定義で示したように、核攻撃に生き残れることによる核抑止力と無敵の通常兵器保有が「great power」には必要である
●「第3の相殺戦略」は一つに目的に焦点を絞っており、それは通常兵器による抑止力を絶対的に強力にし、米国が戦争に巻き込まれる可能性を極限まで低下させることである。他の大国に対する通常兵器による抑止を指すものである
Selva副議長は脅威認識の重要性を指摘し
●「第3の相殺戦略」は、解答ではなく質問である。それは潜在的な敵の能力を凌駕するため、どんな能力が我に必要かを問うものである
●同戦略には決められたゴールはなく、単に目的地に向けてドライブするのでも、各軍種にどんな装備を購入すべきかを示してくれるモノではない
●代わりに同戦略は、国防省が繰り返し継続的に、敵がどのような優れた能力を蓄えつつあるかを監視し、その敵がどんな脅威を友軍にもたらすかを考え、その脅威への対処が通常戦力抑止を強化するかを自身に問うことを求める
●そのためには、机上演習や実演習を通じた作戦実験が重要で、これらを通じて技術やアイディアを、戦術や手順やドクトリンに取り込んでいくことが解答につながる
●正しき認識された戦術や手順やドクトリンを試し、それらを米軍や同盟国にも伝え、敵が戦場に持ち込むであろう通常戦力に対し、優位を確保する手法を考えなければならない
●そして敵が戦場に持ち込むであろう通常戦力とは、単純化すれば、長射程で、精密誘導で、陸海空だけでなく宇宙やサイバードメインで発揮されるものであろう
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「第3の相殺戦略:Third Offset Strategy」や関連技術については、以下の過去記事でご確認下さい。
国防長官や副長官だけでなく、軍人レベルも含めて米国防省を挙げて取り組んでいる様子が伺えます
一つコメントするとすれば、「通常戦力抑止」が強調して語られているのは、抑止戦略の両輪である「核戦力抑止」分野の維持に巨額の予算が必要な事が明らかになりつつあり、そっちも忘れないでね・・・との思いが詰まっているからだと思います。
Cross-domain能力を追求
「ハリス長官がcross-domainを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-05
「副長官が米空軍の尻を叩く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28
無人機の群れ関連
「無人機の群れ:艦艇の攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10
「海軍研究所の滑空無人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-04
地上部隊にA2AD網を期待
「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14
カーター長官の技術革新促進
「SCOが存続をかけ動く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-10
「ボストンにもDIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27-1
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
「米陸軍もRCO設立」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-01
「次期爆撃機の要求検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-07
「謎のRQ-180」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09
「謎の宇宙船X-37B」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
Work副長官と「第3の相殺戦略」
「相殺戦略を如何に次期政権に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
「慶応神保氏の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26
「第3のOffset Strategy発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-06-1
米軍の核戦力維持は大事業
「戦術核維持に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
リバランス第3の波は日米韓海軍協力強化が狙い? [カーター国防長官]
19日、ワシントンDCで米韓2+2が開催され、それに併せて米韓国防相会談も行われています。
米国防省web記事は「2+2」に関し、北朝鮮の核実験や連続ミサイル発射を重点に議論が行われたように報じており、最近の北朝鮮の動きを見れば「さもありなん」ですが、Defense-Newsが報じる米韓国防相会談では、先日カーター国防長官が言及した「リバランス第3の波」関連のサイバーや海洋安全保障の議論もなされており、とっても気になります
気になる背景には、「米韓2+2」に先立つ14日に、ペンタゴンで「日米韓の軍人トップ会談」が行われ、これまた米国防省web記事は「北朝鮮対応の議論」だけを取り上げているのですが、全く根拠はないものの、本当にそれだけかよ・・・? 南シナ海を日韓に分担させようとしているのでは・・・との疑惑が頭から離れません
何せ、9月29日にカーター長官が「リバランス第3の波」を発表してから、ほとんど音無状態で、特に「第3の波」で実施するとした「3項目のうちの3番目」について気になって仕方ないんです
「第3の波」で実施の3項目のうちの3番目
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-01
(9月29日の発言)
●第3項目について長官は、地域国による新たなサイバー能力の構築であると語り、「日本や韓国やインドやシンガポールではネットワークが充実しており、各国がサイバー能力も高めているので、相互に学んでこの重要度メインで協力することができる」と述べた
●核となる米国のプランは、これらの国がネットワークを使い、技術的にもドクトリン面でも共に作戦することのようである。
●具体な将来のイメージとしてカーター長官は、「将来台風に襲われた後、豪州軍のP-8哨戒機がシンガポール軍人を乗せ、米海軍駆逐艦と連携して捜索救助活動を行う」と語り、「航行の自由作戦においても、実施可能だろう。ネットワーク化された各国の海軍や空軍による飛行や航行により、国際法が許す活動を行って地域の海上交通路が安全でオープンであることを示すのだ」と述べた
10月19日の米韓国防相会談では
(19日付Defense-News記事によれば)
●ペンタゴンでの共同記者会見で、米韓国防相は、海洋安全保障協力、サイバー能力強化、そして日本を含めた3ヶ国演習の強化への投資を約束した。これはオバマ政権によるアジア太平洋リバランスについて、ペンタゴンが「第3の波」と呼ぶ動きと一致している
●米韓両国は、サイバー分野で2国間協力を行う分野を作業部会で探ることに合意し、10月中に作業を開始すると明らかにした
●また両国は、海洋安全保障分野で協力が可能な特定分野を見極めるため、「共同調査チーム:integrated research team」を設置する事で合意した
●特に韓国国防相は、日米韓の3ヶ国協力が2017年には拡大すると発表し、海洋安全保障分野と情報共有分野の両方が対象だと言及した
●そして韓国国防相は「我々は引き続き3ヶ国で、今年のRIMPACで訓練したようなミサイル警報演習、捜索救難訓練、海洋亡命者引き渡し演習(?maritime-extradition)を行っていく」と語った
●カーター国防長官はこれに付け加え、「海洋分野の協力で同盟を強化する方策には複数の方法がアリ、それ故に海軍間の協力強化は重要なのだ。例え陸や空で協力関係が既に存在していても。そしてサイバー分野での協力強化も重要だ」と会見で語った
ご参考:14日の「日米韓の軍人トップ会談」
14日付米国防省web記事
→http://www.defense.gov/News/Article/Article/974006/us-south-korean-japanese-military-leaders-discuss-north-korean-threat
//////////////////////////////////////////////////////
特に具体的な事象はありませんが、「海洋安全保障」と「3ヶ国協力」を強調するところがプンプン臭います。
その個人的懸念の背景には9月29日のカーター長官発言、「航行の自由作戦においても、実施可能だろう。ネットワーク化された各国の海軍や空軍による飛行や航行により、国際法が許す活動を行って地域の海上交通路が安全でオープンであることを示すのだ」があります
Dunford議長はポーカーフェイスですが、先日、米空軍の外国軍訓練への姿勢を厳しく糾弾しているように、とても厳しい人物です。
河野統合幕僚長と韓国軍参謀総長は、14日にDunford議長から何を言われたのでしょうか???
リバランス「第3の波」宣言
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-01
統参議長:米空軍は外国軍訓練をもっと重視せよ
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-29
米国防省web記事は「2+2」に関し、北朝鮮の核実験や連続ミサイル発射を重点に議論が行われたように報じており、最近の北朝鮮の動きを見れば「さもありなん」ですが、Defense-Newsが報じる米韓国防相会談では、先日カーター国防長官が言及した「リバランス第3の波」関連のサイバーや海洋安全保障の議論もなされており、とっても気になります
気になる背景には、「米韓2+2」に先立つ14日に、ペンタゴンで「日米韓の軍人トップ会談」が行われ、これまた米国防省web記事は「北朝鮮対応の議論」だけを取り上げているのですが、全く根拠はないものの、本当にそれだけかよ・・・? 南シナ海を日韓に分担させようとしているのでは・・・との疑惑が頭から離れません
何せ、9月29日にカーター長官が「リバランス第3の波」を発表してから、ほとんど音無状態で、特に「第3の波」で実施するとした「3項目のうちの3番目」について気になって仕方ないんです
「第3の波」で実施の3項目のうちの3番目
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-01
(9月29日の発言)
●第3項目について長官は、地域国による新たなサイバー能力の構築であると語り、「日本や韓国やインドやシンガポールではネットワークが充実しており、各国がサイバー能力も高めているので、相互に学んでこの重要度メインで協力することができる」と述べた
●核となる米国のプランは、これらの国がネットワークを使い、技術的にもドクトリン面でも共に作戦することのようである。
●具体な将来のイメージとしてカーター長官は、「将来台風に襲われた後、豪州軍のP-8哨戒機がシンガポール軍人を乗せ、米海軍駆逐艦と連携して捜索救助活動を行う」と語り、「航行の自由作戦においても、実施可能だろう。ネットワーク化された各国の海軍や空軍による飛行や航行により、国際法が許す活動を行って地域の海上交通路が安全でオープンであることを示すのだ」と述べた
10月19日の米韓国防相会談では
(19日付Defense-News記事によれば)
●ペンタゴンでの共同記者会見で、米韓国防相は、海洋安全保障協力、サイバー能力強化、そして日本を含めた3ヶ国演習の強化への投資を約束した。これはオバマ政権によるアジア太平洋リバランスについて、ペンタゴンが「第3の波」と呼ぶ動きと一致している
●米韓両国は、サイバー分野で2国間協力を行う分野を作業部会で探ることに合意し、10月中に作業を開始すると明らかにした
●また両国は、海洋安全保障分野で協力が可能な特定分野を見極めるため、「共同調査チーム:integrated research team」を設置する事で合意した
●特に韓国国防相は、日米韓の3ヶ国協力が2017年には拡大すると発表し、海洋安全保障分野と情報共有分野の両方が対象だと言及した
●そして韓国国防相は「我々は引き続き3ヶ国で、今年のRIMPACで訓練したようなミサイル警報演習、捜索救難訓練、海洋亡命者引き渡し演習(?maritime-extradition)を行っていく」と語った
●カーター国防長官はこれに付け加え、「海洋分野の協力で同盟を強化する方策には複数の方法がアリ、それ故に海軍間の協力強化は重要なのだ。例え陸や空で協力関係が既に存在していても。そしてサイバー分野での協力強化も重要だ」と会見で語った
ご参考:14日の「日米韓の軍人トップ会談」
14日付米国防省web記事
→http://www.defense.gov/News/Article/Article/974006/us-south-korean-japanese-military-leaders-discuss-north-korean-threat
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特に具体的な事象はありませんが、「海洋安全保障」と「3ヶ国協力」を強調するところがプンプン臭います。
その個人的懸念の背景には9月29日のカーター長官発言、「航行の自由作戦においても、実施可能だろう。ネットワーク化された各国の海軍や空軍による飛行や航行により、国際法が許す活動を行って地域の海上交通路が安全でオープンであることを示すのだ」があります
Dunford議長はポーカーフェイスですが、先日、米空軍の外国軍訓練への姿勢を厳しく糾弾しているように、とても厳しい人物です。
河野統合幕僚長と韓国軍参謀総長は、14日にDunford議長から何を言われたのでしょうか???
リバランス「第3の波」宣言
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-01
統参議長:米空軍は外国軍訓練をもっと重視せよ
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-29
国防長官肝いり革新評議会DIBが中間報告 [カーター国防長官]
5日、カーター国防長官が3月に立ち上げた国防革新評議会が、来年1月の答申とりまとめに向けた中間報告会を行い、第一印象的な初期のアイディア11項目を報告しています。
カーター長官が自ら登場してShow Upする力の入れようですが、本日は、11項目の中で、米国防省web記事が紹介している「8項目」をご紹介します
この国防革新評議会DIB(Defense Innovation Board)は、アマゾンやグーグルやインスタグラム等の技術先進企業の重役や、ハーバードやアスペン研究所やCITなどの研究者ら15名をカーター長官が集め、
●国防省の組織や人や文化や技術や業務慣行に革新を植え付ける
●ペンタゴンに外部の考え方を持ち込み、米軍をますます力をつけている敵対者に対する優位に保つため、より新たなアイディアや新たなパートナー関係にオープンな組織に変革させる事を目的に設置した組織です
メンバーは米国防省web記事でご確認下さい
→http://www.defense.gov/News/Article/Article/965196/defense-innovation-board-makes-interim-recommendations
国防革新評議会DIBの活動と今後
●メンバーは多忙な中、空軍のネリス基地、海軍のSan Diego基地、陸軍のFort Bragg基地、フロリダの米中央軍と特殊作戦コマンド司令部、米サイバーコマンド司令部等の部隊を訪問し、各評議員の知見と部隊訪問の印象等から中間提言を実施した
●今後メンバーは更に部隊視察等を行い、最終提言を固めていき、来年1月に取りまとめ会議を行う。2017年は、提言に対してどのような施策が執られたかをモニターする
米国防省web記事が紹介の8項目
●国防省内の革新改革活動を統括してシンクロさせる「chief innovation officer」を設ける
●コンピュータ科学の専門家にキャリア管理基準を定め、サイバー専門家を確保するためデジタルROTC制度を設ける
●革新を推進し、創造性発揮を奨励し、多様性を確保し、組織員の声を生かすため、ボーナスや表彰や他インセンティブなどにより、証拠に基づき、挑戦や実験を重んじ、成果を重視する文化を構築する
●米サイバーコマンドに対しNSA(National Security Agency)との連携を命じ、全ての国防省システムのセキュリティー確認を実施させる
●人工知能AIや機械学習を探求する研究所を設置する
●調達プロセスの迅速化。特別措置や手続き免除、迅速な処理にインセンティブを与えることにより達成
●DARPA、国防省戦略能力構築室SOC、DIUx、RCO等の機動力があり革新思考の組織の予算を増やし、相互の連携を促す
●ソフトウェア関連の課題に迅速に対応するため、プログラマーやソフト開発者の「human cloud」を構築する
//////////////////////////////////////////////////////
「DARPA、国防省戦略能力構築室SOC、DIUx、RCO等の予算増額」は、カーター長官が言わせたのでは・・・と思ってしまいますが、シリコンバレーや起業家グループと親交が深いカーター長官の考え方を具現化した組織ですから、DIBメンバーには素晴らしく映ったのでしょう
来年1月に最終提言がまとまったとして、次期政権でどうなるの???・・との疑問を持ちますが、Work副長官が述べているように、目的や狙いを明確にした種々の選択肢を用意し、その内容をしっかり申し送り、次期政権の国防省チームに提供するとのスタンスでしょう。
カーター長官のアジア太平洋リバランス「第3の波」発言は、どのメディアもフォローしない「言うだけ番長」扱いされていますが、組織革新や技術革新に向けた取り組みだけでも、実を結んでほしいものです。
SCO、DIUx、RCOの解説記事
「SCOが存続をかけ動く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-10
「ボストンにもDIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27-1
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
「米陸軍もRCO設立」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-01
「次期爆撃機の要求検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-07
「謎のRQ-180」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09
「謎の宇宙船X-37B」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
「国防長官がMC-12工場激励」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-02
リバランス「第3の波」発言
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-01
カーター長官が自ら登場してShow Upする力の入れようですが、本日は、11項目の中で、米国防省web記事が紹介している「8項目」をご紹介します
この国防革新評議会DIB(Defense Innovation Board)は、アマゾンやグーグルやインスタグラム等の技術先進企業の重役や、ハーバードやアスペン研究所やCITなどの研究者ら15名をカーター長官が集め、
●国防省の組織や人や文化や技術や業務慣行に革新を植え付ける
●ペンタゴンに外部の考え方を持ち込み、米軍をますます力をつけている敵対者に対する優位に保つため、より新たなアイディアや新たなパートナー関係にオープンな組織に変革させる事を目的に設置した組織です
メンバーは米国防省web記事でご確認下さい
→http://www.defense.gov/News/Article/Article/965196/defense-innovation-board-makes-interim-recommendations
国防革新評議会DIBの活動と今後
●メンバーは多忙な中、空軍のネリス基地、海軍のSan Diego基地、陸軍のFort Bragg基地、フロリダの米中央軍と特殊作戦コマンド司令部、米サイバーコマンド司令部等の部隊を訪問し、各評議員の知見と部隊訪問の印象等から中間提言を実施した
●今後メンバーは更に部隊視察等を行い、最終提言を固めていき、来年1月に取りまとめ会議を行う。2017年は、提言に対してどのような施策が執られたかをモニターする
米国防省web記事が紹介の8項目
●国防省内の革新改革活動を統括してシンクロさせる「chief innovation officer」を設ける
●コンピュータ科学の専門家にキャリア管理基準を定め、サイバー専門家を確保するためデジタルROTC制度を設ける
●革新を推進し、創造性発揮を奨励し、多様性を確保し、組織員の声を生かすため、ボーナスや表彰や他インセンティブなどにより、証拠に基づき、挑戦や実験を重んじ、成果を重視する文化を構築する
●米サイバーコマンドに対しNSA(National Security Agency)との連携を命じ、全ての国防省システムのセキュリティー確認を実施させる
●人工知能AIや機械学習を探求する研究所を設置する
●調達プロセスの迅速化。特別措置や手続き免除、迅速な処理にインセンティブを与えることにより達成
●DARPA、国防省戦略能力構築室SOC、DIUx、RCO等の機動力があり革新思考の組織の予算を増やし、相互の連携を促す
●ソフトウェア関連の課題に迅速に対応するため、プログラマーやソフト開発者の「human cloud」を構築する
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「DARPA、国防省戦略能力構築室SOC、DIUx、RCO等の予算増額」は、カーター長官が言わせたのでは・・・と思ってしまいますが、シリコンバレーや起業家グループと親交が深いカーター長官の考え方を具現化した組織ですから、DIBメンバーには素晴らしく映ったのでしょう
来年1月に最終提言がまとまったとして、次期政権でどうなるの???・・との疑問を持ちますが、Work副長官が述べているように、目的や狙いを明確にした種々の選択肢を用意し、その内容をしっかり申し送り、次期政権の国防省チームに提供するとのスタンスでしょう。
カーター長官のアジア太平洋リバランス「第3の波」発言は、どのメディアもフォローしない「言うだけ番長」扱いされていますが、組織革新や技術革新に向けた取り組みだけでも、実を結んでほしいものです。
SCO、DIUx、RCOの解説記事
「SCOが存続をかけ動く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-10
「ボストンにもDIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27-1
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
「米陸軍もRCO設立」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-01
「次期爆撃機の要求検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-07
「謎のRQ-180」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09
「謎の宇宙船X-37B」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
「国防長官がMC-12工場激励」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-02
リバランス「第3の波」発言
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-01
カーター長官がリバランス第3波を語る!? [カーター国防長官]
9月29日、カーター国防長官がサンディエゴ停泊中の空母カールビンソン艦上で講演し、アジア太平洋リバランスの「第3波:third wave」「第3段階:third phase」や、国防省戦略能力造成室SCOによる兵器技術の「a few surprises」発表の可能性に言及しました
カーター長官は、ハワイで開催されるASEAN国防相会議に向かう途中であり、同会議への「手土産」を披露した形ですが、SCOが近々発表を匂わせるサプライズ技術は楽しみなものの、リバランスの「第3波」と言われても、第1と第2の波の実態が何だったのか思い出せないアジア諸国を「しらけさせる」気がしてなりません
中身をご紹介する前に失礼な表現で申し訳ないのですが、今年6月のシャングリラ会合で38回も飛び出した「Principled」 との言葉同様、リバランス「第3波」や「第3段階」との表現が短命なキャッチフレーズになりそうな予感がしてなりません・・・・
29日付Defense-News記事によれば
●米国は中国の南シナ海での攻撃的な姿勢を非難することと、アジアの大国となった中国に手を差し伸べることの間をさまようような姿勢をとってきた。
●カーター長官が「誰もが発言し、誰も排除すべきでない。中国も含まれる」「中国自らが自身を排除することが無いことを願う」と語るのはこのような姿勢の現れである
●しかし「米国は中国の海やサイバー空間等での行動に重大な懸念を抱いており、中国が自らの利益のために必要な原則だけを尊重し、他を無視している見える」と表現して警戒感を示し、リバランスの「第3波」を明らかにし、3項目から構成されると説明した
●また、KC-46やF-35やB-21による戦力近代化に加え、国防省SCOが煮詰めつつあるサプライズな新能力・新兵器の発表が近くあるだろうと示唆し、「詳しく述べることは出来ないが、友好国も潜在的敵対国も全てが、これら新たな能力が、アジア安全保障への米国のコミットメントを強化するのを目にするだろう」と語った
●リバランス「第3波」について長官は3つの項目からなると説明し、第1項目は米軍戦力がより頻繁に同地域に展開して、地域国軍との関係や安全保障強力を強化してきたことを指すと説明した。そして地域での各種演習が「今後も頻度や複雑さを増して高度化する」と語った
●第2項目は、国防省以外の関与の増で相互運用性を高めることで、沿岸警備隊がASEANと協力したり、国務省による安全保障支援プログラムの増加などがあり、昨年シャングリラで表明した約430億円の「Southeast Asia Maritime Security Initiative」が好例である。
●第3項目について長官は、地域国による新たなサイバー能力の構築であると語り、「日本や韓国やインドやシンガポールではネットワークが充実しており、各国がサイバー能力も高めているので、相互に学んでこの重要度メインで協力することができる」と述べた
●核となる米国のプランは、これらの国がネットワークを使い、技術的にもドクトリン面でも共に作戦することのようである。
●具体な将来のイメージとしてカーター長官は、「将来台風に襲われた後、豪州軍のP-8哨戒機がシンガポール軍人を乗せ、米海軍駆逐艦と連携して捜索救助活動を行う」と語り、「航行の自由作戦においても、実施可能だろう。ネットワーク化された各国の海軍や空軍による飛行や航行により、国際法が許す活動を行って地域の海上交通路が安全でオープンであることを示すのだ」と述べた
●カーター長官はまたTTPの重要性に触れ、「アジア太平洋にとってTPPは重要な機会であり、米国はこれを逃すべきではない」と語った
ちなみに米国防省web記事によれば・・・
リバランス「第1波」と「第2波」は
●リバランス「第1波」は、オバマ大統領がリバランスを宣言した5年前にスタートし、アジア太平洋地域での米軍体制を強化したこと
●「第2波」は2015年に始まり、戦力の質的改善に着手したこと
●そして「第3波」は、「第1波」と「第2波」での発展を固めるもの
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まぁ・・繰り返しになりますが、今年6月のシャングリラ会合で38回も飛び出した「Principled」 との言葉同様、リバランス「第3波」との表現が短命なキャッチフレーズになりそうな予感がしてなりません・・・・
米国防省の政策担当部署は、「Principled」や「第3波」とのキャッチコピーが意味を持つと考えているのでしょうか? 米国大統領選挙ではありませんが、次から次へと「新ネタ」を持ち出して票をもぎ取るような、品の無い外交になっているような気がしてなりません。
国防省戦略能力造成室SCOによる「a few surprises」発表には期待ですが・・・
言いたい結論は第3項目で、日本と韓国とインドと豪州とシンガポールが、南シナ海で「航行の自由作戦」を米国の変わりにやれ!・・・なんでしょうか!?
関連のシャングリラ会議記事
「2016年会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-30
「2015年会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-28
そのほかの同会議
「2014年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27
「2013年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-31
「2012年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「2011年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
「2010年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-05
カーター長官は、ハワイで開催されるASEAN国防相会議に向かう途中であり、同会議への「手土産」を披露した形ですが、SCOが近々発表を匂わせるサプライズ技術は楽しみなものの、リバランスの「第3波」と言われても、第1と第2の波の実態が何だったのか思い出せないアジア諸国を「しらけさせる」気がしてなりません
中身をご紹介する前に失礼な表現で申し訳ないのですが、今年6月のシャングリラ会合で38回も飛び出した「Principled」 との言葉同様、リバランス「第3波」や「第3段階」との表現が短命なキャッチフレーズになりそうな予感がしてなりません・・・・
29日付Defense-News記事によれば
●米国は中国の南シナ海での攻撃的な姿勢を非難することと、アジアの大国となった中国に手を差し伸べることの間をさまようような姿勢をとってきた。
●カーター長官が「誰もが発言し、誰も排除すべきでない。中国も含まれる」「中国自らが自身を排除することが無いことを願う」と語るのはこのような姿勢の現れである
●しかし「米国は中国の海やサイバー空間等での行動に重大な懸念を抱いており、中国が自らの利益のために必要な原則だけを尊重し、他を無視している見える」と表現して警戒感を示し、リバランスの「第3波」を明らかにし、3項目から構成されると説明した
●また、KC-46やF-35やB-21による戦力近代化に加え、国防省SCOが煮詰めつつあるサプライズな新能力・新兵器の発表が近くあるだろうと示唆し、「詳しく述べることは出来ないが、友好国も潜在的敵対国も全てが、これら新たな能力が、アジア安全保障への米国のコミットメントを強化するのを目にするだろう」と語った
●リバランス「第3波」について長官は3つの項目からなると説明し、第1項目は米軍戦力がより頻繁に同地域に展開して、地域国軍との関係や安全保障強力を強化してきたことを指すと説明した。そして地域での各種演習が「今後も頻度や複雑さを増して高度化する」と語った
●第2項目は、国防省以外の関与の増で相互運用性を高めることで、沿岸警備隊がASEANと協力したり、国務省による安全保障支援プログラムの増加などがあり、昨年シャングリラで表明した約430億円の「Southeast Asia Maritime Security Initiative」が好例である。
●第3項目について長官は、地域国による新たなサイバー能力の構築であると語り、「日本や韓国やインドやシンガポールではネットワークが充実しており、各国がサイバー能力も高めているので、相互に学んでこの重要度メインで協力することができる」と述べた
●核となる米国のプランは、これらの国がネットワークを使い、技術的にもドクトリン面でも共に作戦することのようである。
●具体な将来のイメージとしてカーター長官は、「将来台風に襲われた後、豪州軍のP-8哨戒機がシンガポール軍人を乗せ、米海軍駆逐艦と連携して捜索救助活動を行う」と語り、「航行の自由作戦においても、実施可能だろう。ネットワーク化された各国の海軍や空軍による飛行や航行により、国際法が許す活動を行って地域の海上交通路が安全でオープンであることを示すのだ」と述べた
●カーター長官はまたTTPの重要性に触れ、「アジア太平洋にとってTPPは重要な機会であり、米国はこれを逃すべきではない」と語った
ちなみに米国防省web記事によれば・・・
リバランス「第1波」と「第2波」は
●リバランス「第1波」は、オバマ大統領がリバランスを宣言した5年前にスタートし、アジア太平洋地域での米軍体制を強化したこと
●「第2波」は2015年に始まり、戦力の質的改善に着手したこと
●そして「第3波」は、「第1波」と「第2波」での発展を固めるもの
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まぁ・・繰り返しになりますが、今年6月のシャングリラ会合で38回も飛び出した「Principled」 との言葉同様、リバランス「第3波」との表現が短命なキャッチフレーズになりそうな予感がしてなりません・・・・
米国防省の政策担当部署は、「Principled」や「第3波」とのキャッチコピーが意味を持つと考えているのでしょうか? 米国大統領選挙ではありませんが、次から次へと「新ネタ」を持ち出して票をもぎ取るような、品の無い外交になっているような気がしてなりません。
国防省戦略能力造成室SCOによる「a few surprises」発表には期待ですが・・・
言いたい結論は第3項目で、日本と韓国とインドと豪州とシンガポールが、南シナ海で「航行の自由作戦」を米国の変わりにやれ!・・・なんでしょうか!?
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そのほかの同会議
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「2011年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
「2010年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-05
カーター長官が議会で議会を大批判 [カーター国防長官]
22日、カーター国防長官とダンフォード統合参謀本部議長が上院軍事委員会で証言し、10月1日から開始の2017年度予算が未成立で、8年連続暫定予算になりそうな状況を嘆き、不毛で行政の混乱を招いているねじれ現象で党派間の妥協が出来ない議会を、皮肉たっぷりに厳しく批判しました
カーター長官も各軍種のリーダー達も繰り返し述べてきたことですが、強制削減を暫定措置(continuing resolution)の繰り返しで凌いでいる予算状況では、長期的な計画が立てられず戦力の維持向上に大きな支障をきたしている点や、議員の選挙区防衛のため基地の統廃合が進まない点等を訴えています
同席のダンフォード議長も厳しい脅威に立ち向かう部隊の人員不足や訓練や装備開発費の不足を訴えましたが、ロシアが一番の脅威とか、ISILが米軍等に対し「化学兵器砲弾」を打ち込んでいる状況も証言しています
カーター長官は3つの問題を指摘
●米軍が「空虚な軍」とならないよう、議会には超党派的な合意により強制削減の問題を解決して欲しい。
●2017年度予算開始まで8日間となった現状では暫定措置にならざるを得ないのが現実だが、暫定措置の繰り返しで対処している現状は、長期計画を妨げ、同盟国等との関係を妨げ、敵を増長させ、軍需産業の非効率を招く。
●議会が我々を助けるために出来ることは3つある。1つはこの予算の不安定さと見通しの無さを解消すること、2つは細部への介入と過剰な規制をなくすこと、3つ目は必要な改革を妨げないことである
●(予算の中で優先する項目は何かとの議員からの質問に対し、皮肉たっぷりに、)強制削減に向かうような措置や超党派の合意を遠ざける予算措置を支持することは出来ない。また、国防省行政の安定性を犠牲にするような措置や前線兵士の必要なものを削減する措置にも賛成できない。更に、優先度の低いことに予算を付けることも困る
●強制削減に突入するようなことは、これら全ての支持できない事を招くと繰り返し繰り返し証言しておく(again and again and again)
ダンフォード議長:ロシアが一番の脅威
●ロシアが最大の問題を提示しており、かつ潜在的にも米国の安全保障にとって最大の脅威である。また、ロシアの核戦力、サイバー戦能力や水中戦能力からそう考える。またウクライナやグルジアでのロシアの作戦形態も我々を懸念させる
●(ロシアのシリアでの活動に関して、)19日にシリア内で国連関係者の車列を爆撃したのは間違いなくロシア軍である。
●(シリア内での活動に関するロシアとの協力について、)我々にはロシア側と情報共有する意志は全くない
ISILが米軍にマスタード化学砲弾を使用
●20日にISILが、イラク北部に所在していた米軍に対し、マスタードガス弾を用いた。びらん剤系のマスタードを砲弾に詰めたものであったが、投射手段が適当でなく、我が方にけが人等はなかった
●ISILがマスタード砲弾を米軍やイラク軍やクルド人に用いたのは初めてではないが、それほど深刻な懸念材料ではない。9月12日には、ISILの化学兵器保管庫を米軍が攻撃して破壊したところである
//////////////////////////////////////////////////
以前オバマ大統領は、「シリアで化学兵器が使用されたら・・」と敷居を設けて米国に対応を変えると発言し、化学兵器が使用されても動かずに非難を浴びましたが、今では米軍に化学兵器が使用されても「対ISIL戦線異状なし」の模様です
お役目とは言え、文民統制下のダンフォード議長は、マスタードガス弾を「moderate level of concern」と評価せざるを得ない辛い立場です。
議会による国防省改革に関する勝手な動きや過剰な規制、ホワイトハウスやNSCによる軍事作戦への細部介入をなくして欲しいと「公言」し、議会には議員の私利私欲や選挙区への利益誘導による「基地の統廃合」や「不要老朽装備の破棄」が進まないストレートに訴えています。
カーター長官の発言は、政権交代が5ヶ月後で、自身の任期もそれまでとの「悟りの境地」とは言え、あまりにも直接的な発言です。最近は、何でもありな米国社会です。
関連の記事
「議員の国防省改革案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-30
「先制攻撃:国防長官の改正案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-06
「長官が2017年度予算案説明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03
カーター長官も各軍種のリーダー達も繰り返し述べてきたことですが、強制削減を暫定措置(continuing resolution)の繰り返しで凌いでいる予算状況では、長期的な計画が立てられず戦力の維持向上に大きな支障をきたしている点や、議員の選挙区防衛のため基地の統廃合が進まない点等を訴えています
同席のダンフォード議長も厳しい脅威に立ち向かう部隊の人員不足や訓練や装備開発費の不足を訴えましたが、ロシアが一番の脅威とか、ISILが米軍等に対し「化学兵器砲弾」を打ち込んでいる状況も証言しています
カーター長官は3つの問題を指摘
●米軍が「空虚な軍」とならないよう、議会には超党派的な合意により強制削減の問題を解決して欲しい。
●2017年度予算開始まで8日間となった現状では暫定措置にならざるを得ないのが現実だが、暫定措置の繰り返しで対処している現状は、長期計画を妨げ、同盟国等との関係を妨げ、敵を増長させ、軍需産業の非効率を招く。
●議会が我々を助けるために出来ることは3つある。1つはこの予算の不安定さと見通しの無さを解消すること、2つは細部への介入と過剰な規制をなくすこと、3つ目は必要な改革を妨げないことである
●(予算の中で優先する項目は何かとの議員からの質問に対し、皮肉たっぷりに、)強制削減に向かうような措置や超党派の合意を遠ざける予算措置を支持することは出来ない。また、国防省行政の安定性を犠牲にするような措置や前線兵士の必要なものを削減する措置にも賛成できない。更に、優先度の低いことに予算を付けることも困る
●強制削減に突入するようなことは、これら全ての支持できない事を招くと繰り返し繰り返し証言しておく(again and again and again)
ダンフォード議長:ロシアが一番の脅威
●ロシアが最大の問題を提示しており、かつ潜在的にも米国の安全保障にとって最大の脅威である。また、ロシアの核戦力、サイバー戦能力や水中戦能力からそう考える。またウクライナやグルジアでのロシアの作戦形態も我々を懸念させる
●(ロシアのシリアでの活動に関して、)19日にシリア内で国連関係者の車列を爆撃したのは間違いなくロシア軍である。
●(シリア内での活動に関するロシアとの協力について、)我々にはロシア側と情報共有する意志は全くない
ISILが米軍にマスタード化学砲弾を使用
●20日にISILが、イラク北部に所在していた米軍に対し、マスタードガス弾を用いた。びらん剤系のマスタードを砲弾に詰めたものであったが、投射手段が適当でなく、我が方にけが人等はなかった
●ISILがマスタード砲弾を米軍やイラク軍やクルド人に用いたのは初めてではないが、それほど深刻な懸念材料ではない。9月12日には、ISILの化学兵器保管庫を米軍が攻撃して破壊したところである
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以前オバマ大統領は、「シリアで化学兵器が使用されたら・・」と敷居を設けて米国に対応を変えると発言し、化学兵器が使用されても動かずに非難を浴びましたが、今では米軍に化学兵器が使用されても「対ISIL戦線異状なし」の模様です
お役目とは言え、文民統制下のダンフォード議長は、マスタードガス弾を「moderate level of concern」と評価せざるを得ない辛い立場です。
議会による国防省改革に関する勝手な動きや過剰な規制、ホワイトハウスやNSCによる軍事作戦への細部介入をなくして欲しいと「公言」し、議会には議員の私利私欲や選挙区への利益誘導による「基地の統廃合」や「不要老朽装備の破棄」が進まないストレートに訴えています。
カーター長官の発言は、政権交代が5ヶ月後で、自身の任期もそれまでとの「悟りの境地」とは言え、あまりにも直接的な発言です。最近は、何でもありな米国社会です。
関連の記事
「議員の国防省改革案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-30
「先制攻撃:国防長官の改正案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-06
「長官が2017年度予算案説明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03
カーター長官:第2のDIUx開設と組織改編 [カーター国防長官]
26日、カーター国防長官が2カ所目の民間技術迅速取り入れ実験事務所(DIUx:Defense Innovation Unit Experimental)をボストンに開設したと発表し、同事務所組織の改革や具体的な成果について語りました
同長官は、予算等が限定される中で中国やロシア等に対処するため、民間企業やベンチャー組織に生まれつつある革新的技術を迅速に国防分野に取り入れ、官僚機構の鈍重な手続きで腐らせず、また民間の有能な人材を国防省と結びつけるため、様々な取り組みを行っています。
その一つがこの「DIUx」であり、シリコンバレーに最初の事務所を立ち上げています
また「これ以上の場所は考えられない」と長官が表現するボストン中心地での事務所開設にあたり、この「DIUx」は実験組織であり、ここでのノウハウが国防省組織に吸収されて内製化し、「DIUx」が発展的に解消されることが目標だと語っています
本日は長官が語った「DIUx」の組織構成と、初期的な成果と試みの幾つかをご紹介します。
26日カーター長官はDIUx組織改編について
●シリコンバレーと並ぶ技術革新ハブであるボストンに、Raj Shah氏を事務所長に迎えて2番目の「DIUx」を開設できて素晴らしい。更に「DIUx」を3つの下部組織Teamに分ける組織改編で運用を発展させたい
●1つ目は「Engagement Team」で、国防省や軍関係者を企業に紹介するだけでなく、民間の起業家達に軍が抱える問題を紹介して解決アイディアを募る役割を持つ
●2つ目は「Foundry Team」で、新しい技術を成熟させ国防省ニーズに適合するよう、企業等と協力していく役割を持つ。兵士を企業に送り込んだり、企業技術者を国防省機関に招いたりして試験やプロトタイプ試作に導く
●最後は「Venture Team」で、3つの中では最も規模が大きく、生まれつつある最新の革新的技術を見極め、国防省の様々なニーズへの適用可能性を精査するチームである
●この「DIUx」に明らかな成果がないと指摘されることがあるが、この点についてCNASのBen FitzGerald研究員は、「彼らは仕事をしており、技術導入や資金の動きが具体的に議論されているが、最終契約が他機関を通じて行われることが多い(ため目立たない)」と指摘している
●また「事業が容易に進むよう、DIUxはお膳立てを整え、陸軍の契約専門機関(Army Contracting Command)が後を引き継ぐ事がモデルケースになっている」と説明し、DIUxの成果を讃えている
様々な特長とアイディア
●また同陸軍機関と「DIUx」が共同で立ち上げた「Commercial Solutions Opening」とのwebサイトは、シリコンバレーのベンチャー企業が慣れ親しんだ投資家を募るような仕組みになっている。
●まず国防省側がある案件の解決法を募集するとの情報を同webサイトにアップし、関心ある企業が同案件に解決法やコメントを送り、国防省側がコメント等を精査して企業等と具体的な話に入る仕組みである
●案件の対処方向を特定したら、「DIUx」は60日以内に事業化や更なる研究開発のための予算獲得に動くことが出来る仕組みになっている。
●カーター長官は「このアプローチは既に熱狂的な支持を集め始めている」「各軍種も戦闘コマンド司令官も国防機関もこの迅速性と柔軟性を好んでおり、また起業家も官僚機構での手続きや知的財産権保護について相談できるDIUxの存在を喜んでいる」とアピールした
●既に15個のプログラムが進行中で、最初に契約に結びついたのは「Halo Neuroscience」との企業で、ヘッドフォーンのような装置で脳に作用し、学習効果を高める研究が進んでおり、特殊作戦部隊チームがその効果確認に協力している
●また関係者は、事業契約という形でなくとも、「DIUx」が民間企業と国防省の人材の橋渡しをする役割も大きいと評価している。
●例えば米海軍の学校が計画した「無人機の群れ」を操作する24日のイベント「Hack the Sky」は、「DIUx」の仲介も有り、320名もの官民の関係者が一同に集まり、かつて無い多様な人材の交流会となった
●前述のFitzGerald研究員は、「この様なイベントこそDIUxが牽引すべきwin-winな試みで、シリコンバレーと国防省の相乗効果を生む切っ掛けとなるものだ」と高く評価している
●カーター長官は発表に際し、「仮にDIUxが成功し、国防省と多様な企業の連携を活性化する触媒となれたなら、その手法を国防省が吸収して国防省自身がその役割を引き継ぐべきだ。DIUxはその道筋を試行しながら検証し、何が正しいかを見極めて国防省の業務要領に生かすべきだ」と狙いを改めて語った
///////////////////////////////////////////////////////
カーター長官は「DIUx」以外にも、「Force of Future」取り組みで人材確保や育成や引き留めを目指しており、これらトップ主導の施策に官僚機構が追随出来ていないとの批判もありますが、進む方向は正しいですし、大いに期待したい真っ当な取り組みだと思います
日本に直ぐ導入できる訳ではありませんし、ベンチャー企業を支える風土が不足している閉塞感が日本の現状かも知れません。また、安全保障や軍事への協力に消極的な企業や研究者も多く存在します。
それでも日本の若手の皆様には、ぜひこの様な試みがある事を知って頂きたいと思いますし、カーター長官が来年1月までの任期と判っていながら、懸命に前進する姿も見て頂きたいと思います
DIUx関連の過去記事
「2つ目の場所とリーダー公表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
カーター長官の種々の取り組み
「CNASが課題を指摘」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-02
「繊維素材開発の官民連合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-05
「人材確保・育成策第2弾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-10
「人材確保・育成策第1弾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19
「FlexTech Alliance創設」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-31
「サイバー戦略事前説明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-19
「スタンフォード講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
次期政権に技術革新をどう引き継ぐか?
「Work副長官が仕込みを語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
同長官は、予算等が限定される中で中国やロシア等に対処するため、民間企業やベンチャー組織に生まれつつある革新的技術を迅速に国防分野に取り入れ、官僚機構の鈍重な手続きで腐らせず、また民間の有能な人材を国防省と結びつけるため、様々な取り組みを行っています。
その一つがこの「DIUx」であり、シリコンバレーに最初の事務所を立ち上げています
また「これ以上の場所は考えられない」と長官が表現するボストン中心地での事務所開設にあたり、この「DIUx」は実験組織であり、ここでのノウハウが国防省組織に吸収されて内製化し、「DIUx」が発展的に解消されることが目標だと語っています
本日は長官が語った「DIUx」の組織構成と、初期的な成果と試みの幾つかをご紹介します。
26日カーター長官はDIUx組織改編について
●シリコンバレーと並ぶ技術革新ハブであるボストンに、Raj Shah氏を事務所長に迎えて2番目の「DIUx」を開設できて素晴らしい。更に「DIUx」を3つの下部組織Teamに分ける組織改編で運用を発展させたい
●1つ目は「Engagement Team」で、国防省や軍関係者を企業に紹介するだけでなく、民間の起業家達に軍が抱える問題を紹介して解決アイディアを募る役割を持つ
●2つ目は「Foundry Team」で、新しい技術を成熟させ国防省ニーズに適合するよう、企業等と協力していく役割を持つ。兵士を企業に送り込んだり、企業技術者を国防省機関に招いたりして試験やプロトタイプ試作に導く
●最後は「Venture Team」で、3つの中では最も規模が大きく、生まれつつある最新の革新的技術を見極め、国防省の様々なニーズへの適用可能性を精査するチームである
●この「DIUx」に明らかな成果がないと指摘されることがあるが、この点についてCNASのBen FitzGerald研究員は、「彼らは仕事をしており、技術導入や資金の動きが具体的に議論されているが、最終契約が他機関を通じて行われることが多い(ため目立たない)」と指摘している
●また「事業が容易に進むよう、DIUxはお膳立てを整え、陸軍の契約専門機関(Army Contracting Command)が後を引き継ぐ事がモデルケースになっている」と説明し、DIUxの成果を讃えている
様々な特長とアイディア
●また同陸軍機関と「DIUx」が共同で立ち上げた「Commercial Solutions Opening」とのwebサイトは、シリコンバレーのベンチャー企業が慣れ親しんだ投資家を募るような仕組みになっている。
●まず国防省側がある案件の解決法を募集するとの情報を同webサイトにアップし、関心ある企業が同案件に解決法やコメントを送り、国防省側がコメント等を精査して企業等と具体的な話に入る仕組みである
●案件の対処方向を特定したら、「DIUx」は60日以内に事業化や更なる研究開発のための予算獲得に動くことが出来る仕組みになっている。
●カーター長官は「このアプローチは既に熱狂的な支持を集め始めている」「各軍種も戦闘コマンド司令官も国防機関もこの迅速性と柔軟性を好んでおり、また起業家も官僚機構での手続きや知的財産権保護について相談できるDIUxの存在を喜んでいる」とアピールした
●既に15個のプログラムが進行中で、最初に契約に結びついたのは「Halo Neuroscience」との企業で、ヘッドフォーンのような装置で脳に作用し、学習効果を高める研究が進んでおり、特殊作戦部隊チームがその効果確認に協力している
●また関係者は、事業契約という形でなくとも、「DIUx」が民間企業と国防省の人材の橋渡しをする役割も大きいと評価している。
●例えば米海軍の学校が計画した「無人機の群れ」を操作する24日のイベント「Hack the Sky」は、「DIUx」の仲介も有り、320名もの官民の関係者が一同に集まり、かつて無い多様な人材の交流会となった
●前述のFitzGerald研究員は、「この様なイベントこそDIUxが牽引すべきwin-winな試みで、シリコンバレーと国防省の相乗効果を生む切っ掛けとなるものだ」と高く評価している
●カーター長官は発表に際し、「仮にDIUxが成功し、国防省と多様な企業の連携を活性化する触媒となれたなら、その手法を国防省が吸収して国防省自身がその役割を引き継ぐべきだ。DIUxはその道筋を試行しながら検証し、何が正しいかを見極めて国防省の業務要領に生かすべきだ」と狙いを改めて語った
///////////////////////////////////////////////////////
カーター長官は「DIUx」以外にも、「Force of Future」取り組みで人材確保や育成や引き留めを目指しており、これらトップ主導の施策に官僚機構が追随出来ていないとの批判もありますが、進む方向は正しいですし、大いに期待したい真っ当な取り組みだと思います
日本に直ぐ導入できる訳ではありませんし、ベンチャー企業を支える風土が不足している閉塞感が日本の現状かも知れません。また、安全保障や軍事への協力に消極的な企業や研究者も多く存在します。
それでも日本の若手の皆様には、ぜひこの様な試みがある事を知って頂きたいと思いますし、カーター長官が来年1月までの任期と判っていながら、懸命に前進する姿も見て頂きたいと思います
DIUx関連の過去記事
「2つ目の場所とリーダー公表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
カーター長官の種々の取り組み
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「人材確保・育成策第2弾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-10
「人材確保・育成策第1弾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19
「FlexTech Alliance創設」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-31
「サイバー戦略事前説明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-19
「スタンフォード講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
次期政権に技術革新をどう引き継ぐか?
「Work副長官が仕込みを語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
マケイン議員:フラットで機敏な国防省に改編を [カーター国防長官]
6月29日、マケイン上院軍事委員長が講演で、米国防省が今日の複雑な紛争や地域緊張に十分対応できていないとの見方を示した上で、2017年度予算関連法案で国防省や米軍組織改革を含む検討チーム設置等を提案し、フラットで機動的で柔軟な国防組織を追求したいと述べました
また、この動きに対しカーター国防長官が「micromanagement」だと批判的なコメントをしたことについて、「想定内」だと言及し、協力して意思決定に繋げたいと語りつつも、国防省と議会との関係については微妙な表現で語っています
政権交代を見据える中で、また米軍の指揮系統やコマンド編制等を定めた「Goldwater-Nichols法」の30年ぶり改正議論もある中、議会と国防省の関係が今後どうなるのか・・・そんな議論の実況中継です
30日付米空軍協会web記事によれば
●29日、マケイン上院議員は「Bipartisan Policy Center」で講演し、今の米国防省は、米国が直面している世界的で戦略的な課題に対処するような組織構造になっていないと訴えた
●そして、国防省は機能毎に縦割りだったり、地域毎に担当を分割しており、それぞれが別々に個々に戦っている。「単純に言えば国防省は、組織の戦略的な融合や、機能別組織を束ねて課題に立ち向かうのに四苦八苦しており、またその中で効率性を追求するのに窮している」とも表現した
●更にマケイン氏は、「現在の戦略環境で成功を収めるには、機能別や地域別の壁を除去し、戦略的な融合を進め、フラットで機敏で柔軟な組織が求められる」とも語った
●そして同氏は、2017年度の予算関連法案(defense authorization bill)に、これら問題を議論する6つの組織横断検討チームの設置を国防長官に求め、地域戦闘コマンドの一つを統合タスクフォース司令部のように改編すること等を提案していると説明した
●なお、この様なマケイン委員長の取り組みに対しカーター国防長官が「micromanagement」だと批判的なコメントをしたことについて、「予想できたヒステリックな反応で、西洋文明社会の終焉を思わせる」、「既得権益を守るための抵抗は、如何なる改革にも付きものだ」と切り捨てた
●またマケイン議員は、より不安定に向かいつつある世界情勢の諸問題に対処するため、政府と共に協力的な意思決定過程を望むと語り、イスタンブール空港でのテロ事件等の事案に言及した
●しかし議会と国防省との現在の関係については、「あるべき姿だとは思わない」と表現した
//////////////////////////////////////////////
「西洋文明社会の終焉を思わせる」とか、「既得権益の守るための抵抗」とか、結構辛辣な言葉が並んでおり心配にもなりますが、この様に軍事や国防問題に精通した議員や政治家や閣僚にいることをうらやましく思います
「人殺し予算」発言とその発言に反論しなかった野党第一党の政調会長、東シナ海上空での中国軍機と自衛隊機の接触を「特別な行動ではないと判断をしている」と述べた政府高官、政治的手腕や政策を問わず世論調査の人気度で都知事候補を選ぶ各政党などなど、梅雨空以上に気持ちが滅入る「日本の政治屋情勢」です
ペンタゴンのプラット組織検討
「階層縮小で人員削減」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-26-1
Goldwater-Nichols法関連の記事
「先制攻撃:国防長官の改正案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-06
「国防省がGN法改正検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-05
「国防長官が同法改正に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03
「統合参謀本部の削減検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-16
また、この動きに対しカーター国防長官が「micromanagement」だと批判的なコメントをしたことについて、「想定内」だと言及し、協力して意思決定に繋げたいと語りつつも、国防省と議会との関係については微妙な表現で語っています
政権交代を見据える中で、また米軍の指揮系統やコマンド編制等を定めた「Goldwater-Nichols法」の30年ぶり改正議論もある中、議会と国防省の関係が今後どうなるのか・・・そんな議論の実況中継です
30日付米空軍協会web記事によれば
●29日、マケイン上院議員は「Bipartisan Policy Center」で講演し、今の米国防省は、米国が直面している世界的で戦略的な課題に対処するような組織構造になっていないと訴えた
●そして、国防省は機能毎に縦割りだったり、地域毎に担当を分割しており、それぞれが別々に個々に戦っている。「単純に言えば国防省は、組織の戦略的な融合や、機能別組織を束ねて課題に立ち向かうのに四苦八苦しており、またその中で効率性を追求するのに窮している」とも表現した
●更にマケイン氏は、「現在の戦略環境で成功を収めるには、機能別や地域別の壁を除去し、戦略的な融合を進め、フラットで機敏で柔軟な組織が求められる」とも語った
●そして同氏は、2017年度の予算関連法案(defense authorization bill)に、これら問題を議論する6つの組織横断検討チームの設置を国防長官に求め、地域戦闘コマンドの一つを統合タスクフォース司令部のように改編すること等を提案していると説明した
●なお、この様なマケイン委員長の取り組みに対しカーター国防長官が「micromanagement」だと批判的なコメントをしたことについて、「予想できたヒステリックな反応で、西洋文明社会の終焉を思わせる」、「既得権益を守るための抵抗は、如何なる改革にも付きものだ」と切り捨てた
●またマケイン議員は、より不安定に向かいつつある世界情勢の諸問題に対処するため、政府と共に協力的な意思決定過程を望むと語り、イスタンブール空港でのテロ事件等の事案に言及した
●しかし議会と国防省との現在の関係については、「あるべき姿だとは思わない」と表現した
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「西洋文明社会の終焉を思わせる」とか、「既得権益の守るための抵抗」とか、結構辛辣な言葉が並んでおり心配にもなりますが、この様に軍事や国防問題に精通した議員や政治家や閣僚にいることをうらやましく思います
「人殺し予算」発言とその発言に反論しなかった野党第一党の政調会長、東シナ海上空での中国軍機と自衛隊機の接触を「特別な行動ではないと判断をしている」と述べた政府高官、政治的手腕や政策を問わず世論調査の人気度で都知事候補を選ぶ各政党などなど、梅雨空以上に気持ちが滅入る「日本の政治屋情勢」です
ペンタゴンのプラット組織検討
「階層縮小で人員削減」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-26-1
Goldwater-Nichols法関連の記事
「先制攻撃:国防長官の改正案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-06
「国防省がGN法改正検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-05
「国防長官が同法改正に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03
「統合参謀本部の削減検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-16
米国防省が「Force of the Future」追加策発表 [カーター国防長官]
9日、カーター国防長官はペンタゴンで講演し、就任直後から優先的に取り組んでいた「Force of the Future」施策、つまり優秀な人材を確保育成して将来の国防省・米軍の人的基盤を強化しようとの施策の追加対策案を発表しました。
ただしこれはあくまでも国防省の案で有り、予算的措置や議会の了解や法律改正が必要な事項を多数含んでいます
これまでも同長官は本施策の方向性として、「国防省の人材優位性維持」や「家族も含む福利厚生の強化」を掲げ、民間との人材交流やそのための職員兵士への休暇制度から、危険業務に従事する兵士の精子や卵子の凍結保存補助金制度まで、多様な施策を打ち出してきていますが、それらに続く施策案です
Force of the Future関連の過去記事
「追加策:体外受精支援まで」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-29
「全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「企業等との連携や魅力化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19
「施策への思いを長官が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
そして今回は「40年近く前の制定の士官昇任制度の改革」や「優秀な文民職員の獲得と勤務意欲向上」を目指した施策案が打ち出されています
米議会からの反応は様々で、予算増につながる部分には懐疑的な声も多く聞かれ、来年1月の政権交代向けて流動的な側面ありありですが、「やれることはやっておきたい」とのカーター長官の強い思いで就任1週間後から推進している施策です。
少子化やマスゴミの偏向報道で人材確保が難しくなりつつある日本にも、参考になる部分もあろうかと思いますので、項目列挙でご紹介します
9日付米国防省web記事によれば
士官の昇任制度等に関する改革案
(38年前制定の士官人事管理法DOPMA等の改革)
●昇任枠の中で先任順でなく能力順で昇任を
現在は、例えば中佐に昇任する際、定められた中佐の数の枠に空きが出来た場合、承認資格を認められた者の待ち行列のなかから、名簿先任順で昇任させるが、これでは真に能力の高い者の昇任が遅れる。
名簿先任順での昇任枠配分を修正し、よりパフォーマンスの高い者が認知される制度に
●昇任資格の基準柔軟化
現在の昇任資格要件では、現階級で必要な職務経験を積むことが厳格に規定されているが、視野拡大や能力拡大のため通常の勤務経験を積めなかった者に対しては、現要件を満たさない場合でも昇任資格を柔軟に判断するよう制度見直し
●民間高度技術者の相応階級での柔軟採用
高度な技術を有している民間人を、相応の階級で軍や国防省に直接雇用できる制度の制定。従来は有能な民間人でも最下級の階級からスタートさせざるを得なかったが、サイバーや通信技術の専門家や医師などを相応の処遇で迎え入れる
●士官人事管理法DOPMAの柔軟運用を可能に
上記の施策だけでなく、今後緊急に柔軟に必要な人材を確保する必要が生じた場合、国防省がDOPMAを柔軟に運用していけるような権限の付与を要望
●人材募集データベースに最新情報技術を
現在でも国防省の募集機関では、優秀な人材を確保するため、どの地域でどのような募集活動を行えば効果的かを分析しているが、これに最新情報処理技術を導入し、米国全体の人口分析や募集戦略策定に活用する
優秀な文民職員の確保
●リクルーターによる直接採用方式の導入
現状ではリクルーターが大学や大学院等で優れた希望者や人材を見つけても、「USAJOBS website」を通じ、90日以上の手続きや更にセキュリティー確認を行う必要があるが、リクルーターがより直接的に採用活動を行えるよう制度を変更
●民間企業と国防省職員の人材相互交流強化
現在はIT分野に限定されている民間企業との人材相互交流を、例えば米輸送コマンドや兵站管理庁から、アマゾンやフェデックスと人材相互交流が出来る様に制度拡大
●国防省の文民職員にも産休制度を
軍人には認められている有給産休制度を、現在は対象となっていない文民職員(本当かよ!)にも拡大。民間企業にある産休制度を求め、国防省の人材が流出することを防止
●特別な文民有識者ポストの5割増
現在は国防省全体で90ポスト程度しかない特別な有識者ポスト(国防省デジタル技術部長、国防省戦略能力検討室長、米空軍の首席科学監など)を、今後5年間、毎年1割づつ増加する
また文民職員の視野拡大プログラムへの参加者枠を今後5年間、毎年1割づつ増加。更に国防省に必要な科学技術分野を研究する大学生等の人材を呼び込むため、奨学金を今後5年間、毎年1割づつ増加
//////////////////////////////////////////////////////
本日の写真は、「Force of the Future」推進のため、人材確保のため、全米の大学や企業等で精力的に講演するカーター国防長官の様子です
米国防省だけが人材確保に苦労している訳ではないでしょうから、米国の他の政府機関から横やりが入ることは十分予想できますし、族議員が大いに騒ぎ立てることもあり得るでしょう
カーター長官が今後どのように各方面に説明し、説得していくかに注目です
今までなかったの?・・と思うような文民産休制度の話などありますが、情報処理技術の導入による募集活動のてこ入れや、有能な民間人の柔軟採用やポスト増加は、日本にも上手い形で導入できないものかと思います。
日本が住民登録データを防衛省が活用して募集採用活動に大々的に動いたりすると、「軍靴の足音が」とか「徴兵制を準備か」とか、とんでもないマスゴミ偏向報道につながりそうですが、日本でも重要な検討課題のはずです
Force of the Future関連
「追加策:体外受精支援まで」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-29
「全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「企業等との連携や魅力化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19
「施策への思いを長官が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
米国防省「force of the future」特設webページ
→http://www.defense.gov/News/Special-Reports/0315_Force-of-the-Future
米国防省発表のFact Sheet
→http://www.defense.gov/Portals/1/features/2015/0315_force-of-the-future/Fact-Sheet-The-Next-Two-Links-to-the-Force-of-the-Future.pdf
米国防省内への発表Memo
→http://www.defense.gov/Portals/1/features/2015/0315_force-of-the-future/Memorandum-The-Next-Two-Links-to-the-Force-of-the-Future.pdf
ただしこれはあくまでも国防省の案で有り、予算的措置や議会の了解や法律改正が必要な事項を多数含んでいます
これまでも同長官は本施策の方向性として、「国防省の人材優位性維持」や「家族も含む福利厚生の強化」を掲げ、民間との人材交流やそのための職員兵士への休暇制度から、危険業務に従事する兵士の精子や卵子の凍結保存補助金制度まで、多様な施策を打ち出してきていますが、それらに続く施策案です
Force of the Future関連の過去記事
「追加策:体外受精支援まで」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-29
「全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
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「施策への思いを長官が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
そして今回は「40年近く前の制定の士官昇任制度の改革」や「優秀な文民職員の獲得と勤務意欲向上」を目指した施策案が打ち出されています
米議会からの反応は様々で、予算増につながる部分には懐疑的な声も多く聞かれ、来年1月の政権交代向けて流動的な側面ありありですが、「やれることはやっておきたい」とのカーター長官の強い思いで就任1週間後から推進している施策です。
少子化やマスゴミの偏向報道で人材確保が難しくなりつつある日本にも、参考になる部分もあろうかと思いますので、項目列挙でご紹介します
9日付米国防省web記事によれば
士官の昇任制度等に関する改革案
(38年前制定の士官人事管理法DOPMA等の改革)
●昇任枠の中で先任順でなく能力順で昇任を
現在は、例えば中佐に昇任する際、定められた中佐の数の枠に空きが出来た場合、承認資格を認められた者の待ち行列のなかから、名簿先任順で昇任させるが、これでは真に能力の高い者の昇任が遅れる。
名簿先任順での昇任枠配分を修正し、よりパフォーマンスの高い者が認知される制度に
●昇任資格の基準柔軟化
現在の昇任資格要件では、現階級で必要な職務経験を積むことが厳格に規定されているが、視野拡大や能力拡大のため通常の勤務経験を積めなかった者に対しては、現要件を満たさない場合でも昇任資格を柔軟に判断するよう制度見直し
●民間高度技術者の相応階級での柔軟採用
高度な技術を有している民間人を、相応の階級で軍や国防省に直接雇用できる制度の制定。従来は有能な民間人でも最下級の階級からスタートさせざるを得なかったが、サイバーや通信技術の専門家や医師などを相応の処遇で迎え入れる
●士官人事管理法DOPMAの柔軟運用を可能に
上記の施策だけでなく、今後緊急に柔軟に必要な人材を確保する必要が生じた場合、国防省がDOPMAを柔軟に運用していけるような権限の付与を要望
●人材募集データベースに最新情報技術を
現在でも国防省の募集機関では、優秀な人材を確保するため、どの地域でどのような募集活動を行えば効果的かを分析しているが、これに最新情報処理技術を導入し、米国全体の人口分析や募集戦略策定に活用する
優秀な文民職員の確保
●リクルーターによる直接採用方式の導入
現状ではリクルーターが大学や大学院等で優れた希望者や人材を見つけても、「USAJOBS website」を通じ、90日以上の手続きや更にセキュリティー確認を行う必要があるが、リクルーターがより直接的に採用活動を行えるよう制度を変更
●民間企業と国防省職員の人材相互交流強化
現在はIT分野に限定されている民間企業との人材相互交流を、例えば米輸送コマンドや兵站管理庁から、アマゾンやフェデックスと人材相互交流が出来る様に制度拡大
●国防省の文民職員にも産休制度を
軍人には認められている有給産休制度を、現在は対象となっていない文民職員(本当かよ!)にも拡大。民間企業にある産休制度を求め、国防省の人材が流出することを防止
●特別な文民有識者ポストの5割増
現在は国防省全体で90ポスト程度しかない特別な有識者ポスト(国防省デジタル技術部長、国防省戦略能力検討室長、米空軍の首席科学監など)を、今後5年間、毎年1割づつ増加する
また文民職員の視野拡大プログラムへの参加者枠を今後5年間、毎年1割づつ増加。更に国防省に必要な科学技術分野を研究する大学生等の人材を呼び込むため、奨学金を今後5年間、毎年1割づつ増加
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本日の写真は、「Force of the Future」推進のため、人材確保のため、全米の大学や企業等で精力的に講演するカーター国防長官の様子です
米国防省だけが人材確保に苦労している訳ではないでしょうから、米国の他の政府機関から横やりが入ることは十分予想できますし、族議員が大いに騒ぎ立てることもあり得るでしょう
カーター長官が今後どのように各方面に説明し、説得していくかに注目です
今までなかったの?・・と思うような文民産休制度の話などありますが、情報処理技術の導入による募集活動のてこ入れや、有能な民間人の柔軟採用やポスト増加は、日本にも上手い形で導入できないものかと思います。
日本が住民登録データを防衛省が活用して募集採用活動に大々的に動いたりすると、「軍靴の足音が」とか「徴兵制を準備か」とか、とんでもないマスゴミ偏向報道につながりそうですが、日本でも重要な検討課題のはずです
Force of the Future関連
「追加策:体外受精支援まで」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-29
「全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「企業等との連携や魅力化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19
「施策への思いを長官が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
米国防省「force of the future」特設webページ
→http://www.defense.gov/News/Special-Reports/0315_Force-of-the-Future
米国防省発表のFact Sheet
→http://www.defense.gov/Portals/1/features/2015/0315_force-of-the-future/Fact-Sheet-The-Next-Two-Links-to-the-Force-of-the-Future.pdf
米国防省内への発表Memo
→http://www.defense.gov/Portals/1/features/2015/0315_force-of-the-future/Memorandum-The-Next-Two-Links-to-the-Force-of-the-Future.pdf
インド首相が米国訪問で関係進展!? [カーター国防長官]
第15回アジア安全保障会議
シャングリラ・ダイアログ特集
米国防長官や中国のプレゼンを中心にアジア最大の安全保障イベントを多角的にフォロー
注目点の数々→38回も飛び出した「Principled」 との言葉、謎の韓国冷遇、RIMPACでグアムからハワイまで米中海軍演習、日韓での南シナ海共同演習を期待?・・・等々
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-30
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7日、インド首相が訪米してオバマ大統領と会談し、気候変動対応や原子力発電、更に10年協議を続けてきた兵站相互支援合意(LEMOA:Logistics Exchange Memorandum of Agreement)や、インド国産空母への技術協力合意の交渉が完了した模様です
依然として、国防面では米国との関係を柱に据えることには極めて慎重で、いろんな国と幅広くやりたい意向のようですが、モディ首相は8日に米議会で演説するなど、良好な米印関係をアピールします
インドのモディ首相にとっては、難しい内政を離れ、何とか外交でアピールしたい思惑があるようです。アフガン、カタール、スイス、米国、メキシコの5カ国を5日間で駆け回る強行外交日程です
7日付Defense-News記事によれば
●両国首脳会談後のホワイトハウスの声明によれば、米印国防関係は「安定の錨(いかり)となる可能性を備え」、技術共有レベルは「最も親密な同盟国並みに近づいた」ようで、インドを「主要な国防パートナー」と新たに表現するに至っている
●また両首脳は、インドが多方面に亘るdual-use技術へ無償でアクセスできることで合意し、一方でインドが不明確ながら輸出管理に関する事項で進展を図ることでも合意した模様
●更に両首脳は、10年協議を続けてきた兵站相互支援合意(LEMOA)や、インド国産空母への技術協力合意の交渉が完結したとの認識を明らかにした
●その他、海洋安全保障での協力強化、国連海洋法条約の尊重、領土問題の平和的解決の面でも合意したと発表した
別の7日付Defense-News記事によれば
●上院外交委員会の主要メンバーであるBen Cardin議員は、「インド首相は短期間の間に米国を2度訪問したとアピールしたがっており、この訪問自体が内外にとって大きなメッセージである」と意義を表現した
●(今回まとまったLEMOAについて)象徴的な意味合いが大きい合意だが、(印核実験に対する)米国の制裁解除から10年しか経過しておらず、米国との同盟関係入りを拒んできたこれまでのインドとの関係経緯を考えれば、潜在的に大きな技術移転の可能性を含んだ合意であると、同議員は語った
●(今回のインド首相訪問で進展があったかは不明だが、)他に両国の国防関係上で重要な交渉案件が2つ有り、1つは通信分野の暗号通信技術提供に関するCISMOA(Communications and Information Security Memorandum of Agreement)交渉で、もう一つは地理空間情報の交換共有に関するBECA(Basic Exchange and Cooperation Agreement)交渉である
●CISMOAは指揮所の指揮官と航空機や艦艇の暗号通信技術に関する事で、BECAは航法や目標照準情報に関する地理空間的なデータをインドが得やすくするものである
●同議員は、全ての国と協力関係を維持できる立場で有り続けたいというインドの慎重な姿勢があり、米国との同盟関係には引き続き消極的だが、将来には期待が持てると語った
●国防関係も、経済関係も、環境問題に対しても共に協力できる道が見えていると、同議員は語った
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「全ての国と協力関係を維持できる立場で有り続けたい、というインドの慎重な構え」・・・インドの地政学的な位置取りを考えればよく分かる気がします。
ちょっと意地悪な見方ですが、4月にカーター国防長官が訪印した際、LEMOA交渉は「クローズした」と表現されましたが、今回は「finalization of the agreements」と表現されています
なぜ「サインした」との表現でないのかちょっと気になります。国防省が公開したモディ&カーター会談の写真も、単なる会談模様です。今度、インド国防相が訪米して署名するのかも知れませんが・・・
いずれにせよ、米印関係の進展は大いに歓迎ですので、近々日本近海で実施される日米印海軍共同訓練に期待致しましょう!
米印関係の関連記事
「4月カーター長官の訪印」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-15
「DCでJエンジンやカタパルト議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-12
「やっと3カ国 Malabar」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-14
「カーター長官インド訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-04
「米印の国防協力合意」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-26-1
「インド首相の米国訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-30
「ヘーゲル長官の訪印」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-12
「米印関係ランクアップ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-01-1
「米軍がインド対応特別チームを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08
シャングリラ・ダイアログ特集
米国防長官や中国のプレゼンを中心にアジア最大の安全保障イベントを多角的にフォロー
注目点の数々→38回も飛び出した「Principled」 との言葉、謎の韓国冷遇、RIMPACでグアムからハワイまで米中海軍演習、日韓での南シナ海共同演習を期待?・・・等々
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-30
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7日、インド首相が訪米してオバマ大統領と会談し、気候変動対応や原子力発電、更に10年協議を続けてきた兵站相互支援合意(LEMOA:Logistics Exchange Memorandum of Agreement)や、インド国産空母への技術協力合意の交渉が完了した模様です
依然として、国防面では米国との関係を柱に据えることには極めて慎重で、いろんな国と幅広くやりたい意向のようですが、モディ首相は8日に米議会で演説するなど、良好な米印関係をアピールします
インドのモディ首相にとっては、難しい内政を離れ、何とか外交でアピールしたい思惑があるようです。アフガン、カタール、スイス、米国、メキシコの5カ国を5日間で駆け回る強行外交日程です
7日付Defense-News記事によれば
●両国首脳会談後のホワイトハウスの声明によれば、米印国防関係は「安定の錨(いかり)となる可能性を備え」、技術共有レベルは「最も親密な同盟国並みに近づいた」ようで、インドを「主要な国防パートナー」と新たに表現するに至っている
●また両首脳は、インドが多方面に亘るdual-use技術へ無償でアクセスできることで合意し、一方でインドが不明確ながら輸出管理に関する事項で進展を図ることでも合意した模様
●更に両首脳は、10年協議を続けてきた兵站相互支援合意(LEMOA)や、インド国産空母への技術協力合意の交渉が完結したとの認識を明らかにした
●その他、海洋安全保障での協力強化、国連海洋法条約の尊重、領土問題の平和的解決の面でも合意したと発表した
別の7日付Defense-News記事によれば
●上院外交委員会の主要メンバーであるBen Cardin議員は、「インド首相は短期間の間に米国を2度訪問したとアピールしたがっており、この訪問自体が内外にとって大きなメッセージである」と意義を表現した
●(今回まとまったLEMOAについて)象徴的な意味合いが大きい合意だが、(印核実験に対する)米国の制裁解除から10年しか経過しておらず、米国との同盟関係入りを拒んできたこれまでのインドとの関係経緯を考えれば、潜在的に大きな技術移転の可能性を含んだ合意であると、同議員は語った
●(今回のインド首相訪問で進展があったかは不明だが、)他に両国の国防関係上で重要な交渉案件が2つ有り、1つは通信分野の暗号通信技術提供に関するCISMOA(Communications and Information Security Memorandum of Agreement)交渉で、もう一つは地理空間情報の交換共有に関するBECA(Basic Exchange and Cooperation Agreement)交渉である
●CISMOAは指揮所の指揮官と航空機や艦艇の暗号通信技術に関する事で、BECAは航法や目標照準情報に関する地理空間的なデータをインドが得やすくするものである
●同議員は、全ての国と協力関係を維持できる立場で有り続けたいというインドの慎重な姿勢があり、米国との同盟関係には引き続き消極的だが、将来には期待が持てると語った
●国防関係も、経済関係も、環境問題に対しても共に協力できる道が見えていると、同議員は語った
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「全ての国と協力関係を維持できる立場で有り続けたい、というインドの慎重な構え」・・・インドの地政学的な位置取りを考えればよく分かる気がします。
ちょっと意地悪な見方ですが、4月にカーター国防長官が訪印した際、LEMOA交渉は「クローズした」と表現されましたが、今回は「finalization of the agreements」と表現されています
なぜ「サインした」との表現でないのかちょっと気になります。国防省が公開したモディ&カーター会談の写真も、単なる会談模様です。今度、インド国防相が訪米して署名するのかも知れませんが・・・
いずれにせよ、米印関係の進展は大いに歓迎ですので、近々日本近海で実施される日米印海軍共同訓練に期待致しましょう!
米印関係の関連記事
「4月カーター長官の訪印」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-15
「DCでJエンジンやカタパルト議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-12
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「カーター長官インド訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-04
「米印の国防協力合意」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-26-1
「インド首相の米国訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-30
「ヘーゲル長官の訪印」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-12
「米印関係ランクアップ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-01-1
「米軍がインド対応特別チームを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08
第15回アジア安全保障会議(2016年シャングリラダイアログ)特集 [カーター国防長官]
この記事に随時追記していきます!
追記1:中谷防衛大臣の行動概要
追記2:中国からの参加者が明らかに・・・昨年と同じこの人
追記3:会議全体の詳細日程と各セッションへの参加者一覧へのリンク
追記4:カーター国防長官の移動機内での記者ブリ概要
追記5:中谷大臣とインド国防相のバイ会談概要。「マラバール」確認
追記6:カーター長官の3日の行動概要。P-8にこの人と同乗、バイ会談、中国人と2ショットなど
追記7:カーター国防長官のプレゼン(映像付で内容を速報!)
プレゼン原稿へのリンクも追加
追記8:日米国防相会談で、日本製品の米国輸出規制撤廃
追記9:日米韓3ヶ国会談で、3ヶ国BMD演習を6月末ハワイ周辺で実施で合意
追記10:カーター長官講演原稿を読みとり、追記7の概要紹介に補足追加。日韓が南シナ海で共同演習することを夢みているような発言も
追記11:中国団長の孫建国(副参謀長:国際問題担当)の講演概要紹介 会場内の雰囲気は「中国孤立化の万里の長城」完成!
追記12:カーター長官講演に分析を「追記7」に追加→同盟強化のくだりで「韓国に言及がない異常事態」を考察。THAAD配備等で、原則や価値を共有できない国と見なされたか?
追記13で最後:慶応大学の神保先生の同会議の総括(へのリンク)を追加掲載
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追記13
慶応の神保先生による同会議総括コラム
「南シナ海を主戦場とする米中関係:シャングリラ・ダイアローグの論点」
→SLDは定点観測としての意義が大きいのですが、今回はやや米中双方ともに空回りという印象があります。(神保謙)
→http://www.canon-igs.org/column/security/20160609_3843.html
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追記11
孫建国(副参謀長:国際問題担当)の講演
神保謙:慶応准教授によるTwitter実況
→https://mobile.twitter.com/kenj0126?p=s
たっぷり準備して練りに練った「へりくつ」大展開
●アジアには多層的・多面的な安全保障協力と機会が形成されている。しかし古い同盟と兵力の展開はアジアの安全保障にリスクをもたらしている。
●平和・繁栄・安定は平和的発展の基礎であり、ウインウインの関係を目指すべきである。アジア太平洋は平和と相互依存を共有する運命にある。中国は地域の平和と発展のために「一帯一路」・AIIB・シルクロード基金を推進している。
●習近平主席はCICA総会で地域に即した安全保障ガバナンスが必要だと述べた。1)安全保障ガバナンスが今日の地域の問題に即したものであること、2)時代遅れのゼロサム思考は排するべきであり、3)一国主義を排して他国の利益を尊重するべき、であり中国は平和にコミットしている。
中国軍も世界平和にコミットしている
●中国は世界中の平和維持部隊(PKO)にコミットしている。中国は8000人の待機部隊の創設を目指している。中国の工兵はテロリズムの犠牲にもなった。政治的考慮を超えた人道支援活動にも力を入れている
●人民解放軍は30万人の削減を含む本格的な改革に着している。中国軍は今後も改革・効率化・能力構築を進めていく必要がある。中国には覇権的野望はない。防衛的能力の強化を進め、地域・世界の安全に貢献していく。
●中国国防部・解放軍は国際的関与を進め、協力プログラムを進める。米中の「新型軍事関係」を推進する。信頼醸成、HA/DR、Counter-Piracyの協力が進んでいる。中日の軍・軍との関係も回復の機運がある。
●アジアにおける係争について関係国は自制心を保つべきだ。ステップバイステップで政治的解決を目指すべきだ。関係国との係争解決メカニズム、軍事活動の事前通報、各軍種の連絡メカニズムの設置・運用を進める。
●中国はASEANとの海上の合同訓練の実施を目指し、CUESの確認と運用を柱として信頼醸成を進めていく。
米国やアジア諸国の動きは平和に逆行だ
●韓国におけるTHAADの配備は、地域の安全を害するものであり、強く反対する。地域諸国はこうした冷戦思考を排するべきである。
●中国はASEAN国防相との非公式会合を最初に持った国である。2017年に中国・タイは対テロWGの議長を務める。ADMMプラスにおける協力を進めていく。
●南シナ海における航行自由の原則は脅かされていない。中国は常に問題の平和的解決を提唱している。ルールとメカニズムを通じた解決が重要だ。同海域の問題はASEAN諸国と二国間の対話と協議を通じて解決してく。
●米国のFON-opは中国に対する軍事的威嚇であり、こうした無責任な行動に強く反対する。中国はしかしこうした行動をなんら恐れない。中国は知恵と自制心によって平和の維持を目指している
●南シナ海は身勝手な主張をする国のせいで問題が拡大している。フィリピンは南シナ海で不法な占拠を続けている。仲裁裁判は中国とフィリピンの問題の解決に役立たない。中国・フィリピンとの二国間の対話、COC、UNCLOSによって問題解決を追求すべきだ。フィリピンは二国協議を軽視
●仲裁裁判の結果はなんら法的効力をもたず、中国は受け入れない。
恐らく質疑応答にて
(質問には全く回答せず、一方的に紙を読み上げる)
●昨年は13個の質問に答えた(笑)。今年も予想していたとおり質問が多い。
●南シナ海は古代より中国のterritoryだった。南シナ海の係争で多くの見解の統合で正当は結論を導くことはできない。歴史的事実に基づくことが重要だ。1940年代に九段線(11段線)はすでに引かれていた
●1970年代に中国が政治的困難に直面している時に、フィリピンが南シナ海の一部を侵略した。一部の国は中国の共同開発提案や合意を無視し、一方的な占拠と開発を進めている。中国が大国として小国をいじめているという構図は間違いだ。中国の7箇所での埋め立ては必要な対応だ。
●南シナ海で多くの船を航行させているのは中国だ。航行の自由は中国が必要とするものだ。南シナ海における多国間の軍事演習や威嚇は航行の自由に対する挑戦だ(よく言うわ。。)。
●米・カーター長官は「中国が自ら孤立化している」と言った。そんなことはない。多くの地域の国防相は昨年よりも私たちに尊敬を示している。今中国は孤立などしていないし、今後も孤立化しない。冷戦思考でこの地域に関わる国こそ、自らを孤立化させるだろう。
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追記8
4日の日米国防相会談:
→http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2016/06/171183.php
日本製品輸入規制撤廃
●日本製の装備品部品の輸入規制を米側が撤廃で合意。米国軍需産業が、特殊素材や合金などの日本製製品を使用しやすくなる
●同様の合意はNATO諸国(23カ国)と既に結ばれているが、アジア諸国の中では日本とが初めて
追記9
→http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160604-00050118-yom-pol
4日、日米韓の3カ国国防相会議が開催
●会談後に共同声明を発表し、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を強く非難し、挑発行動を直ちに控えるよう要求
●北朝鮮の弾道ミサイル発射を想定した3カ国ミサイル防衛訓練を、6月下旬にハワイ沖で実施することも決めた。韓国の参加は初めて。ミサイルの探知・追跡情報を共有する訓練を行う
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追記7
カーター長官講演の映像(7分から63分)
神保謙:慶応准教授によるTwitter実況
(ご本人は前半部分が不十分だとご謙遜ですが・・)
→https://mobile.twitter.com/kenj0126?p=s
神保先生の速報ツイートに、まんぐーすの講演原稿読みとり補足を加え、以下でカーター講演概要をご紹介します
講演原稿&質疑が公開されました
→https://www.iiss.org/en/events/shangri%20la%20dialogue/archive/shangri-la-dialogue-2016-4a4b/plenary1-ab09/carter-1610
米国防省webサイトも原稿公開
→http://www.defense.gov/News/Speeches/Speech-View/Article/791213/remarks-on-asia-pacifics-principled-security-network-at-2016-iiss-shangri-la-di
当地域の現状認識と米国の基本姿勢
●15年間のSLD開催に祝意。地域での建設的な議論を慫慂してきた。この地域の全体が建設的とはいえない。南シナ海、北朝鮮、テロは安定と繁栄に影を投げかけている
●昨年のこの会合での講演の最後で、将来の夢を描いてみた。米中印が多国間海軍演習を議論したり、日韓が南シナ海で災害対処訓練を実施したり、ASEAN包括の安全保障ネットワークが出来ればと語った事を思い出す
●それに向かい、インドと中国はRIMPACに参加し、日韓は新たな方法で関わりを始めた。ASEANを中心とした安全保障ネットワークが構築され始めている
●このような取り組みを通じ、将来、どの国も恫喝や脅しが無く、自由に政治的、経済的、軍事的選択がとれるようでありたい。国際法で確保された航行の自由や飛行の自由があり、紛争が平和に解決されることが望ましい状態だ
●これを実現する責任を皆が担っている
●アジアにおける安全保障ネットワークの重要性の確認。NATOのような軍事的な同盟はこの地域はない。過去の歴史、地理的な状況を考えると必要なかった。しかしこの地域は発展がすすみ、軍事協力も新しい方法で進化し、効率良くすすんでいる
●Principled Security Networkこそがアジアの将来を導く。欧州でロシアのassertiveness があろうとも、米国はアジアに関与しつづけ、その原則はコミットメント・強靭性・包含性に基づく
●オバマ大統領が米ASEANサミットを主催、CIA長官も多数の議員もこの会場にいる。米中戦略経済対話に複数の閣僚が参加予定で、インド首相の訪米も計画され、シンガポール首相もだ。関与は永遠だ
●米国がアジアに関与する価値に疑問の余地はない。米国政府全体がアジアにおける価値にコミットしている。TPPによって域内の経済連携はさらに進む。米国は今後何十年にもわたり、安全保障の提供者でありつづける。
●Security is like oxygenという言葉に言及。米国はOxygenの提供者だった。Principled Security Networkでは全ての国々がより多くのOxygenの提供者にならなければならない。
軍事技術優位維持への努力と同盟関係強化
●F-22やF-35、B-2やB-52、最新艦艇を配備展開させ、将来投資では新型バージニア級攻撃原潜、水中無人艦、次期爆撃機B-21、サイバー・宇宙・電子戦分野にも
●革新的戦略開発や作戦コンセプト開発に努力し、投資額だけでは計れない最新技術を取り込む取り組みも。15年にも及ぶ過去の経験も蓄積
●演習にも新アイディアを。夏のRIMPACは27カ国が参加する比類無き演習に
●America's defense relationships with allies and partners are the foundation of US engagement in the Asia-Pacific
●同盟関係では、日米(最初に言及!)が新ガイドラインに昨年署名してこれまでになく強固になり、米豪はより世界的になり、航行や飛行の自由を掲げ、中東でも協力強化
●オバマ大統領のベトナム訪問は米越関係の新しい展開を生み出すものだ。武器禁輸解除によって、ベトナムは多くの軍事技術にアクセスができるようになった。
●Principled Security Network は同盟国とパートーナ国の努力の継続が必要だ。約450億円投資を昨年発表したMaritime Security Networkの重視。フィリピンのCWC、ベトナムのMDA、タイのFusion Centerなど
●安全保障のネットワークに三ヶ国協力の拡大は重要だ。日米韓(BM warning exercise)、日米豪(海上安全保障協力)、日米印(マラバール等)、米タイラオス関係など。
●能力構築支援の重要性。日本とベトナムが2国で海軍共同訓練を行い、日本はフィリピンとも能力構築に取り組んでいる。インドとベトナムの2国、インドネシア・マレーシア・比の3国も。米国はPrincipled Networkの一環としてのアジア域内の能力構築を支援する。
●アジア域内の安全保障協力枠組みの強化。ADMM PlusはASEANがリードする重要な枠組み。
中国への言及:懸念と期待部分
●こうしたPrincipled Security Networkは特定の第三国を対象としたものではない。米国は中国の平和的台頭を歓迎する。またこうした安全保障とのインターフェースをもつことも歓迎する。
●しかし中国の海域・空域・サイバーに対するassertivenessには懸念。中国の南シナ海における行動は、中国を孤立化に向かわせている。これはGreat Wall of Self Isolationである。
●米国はこれまでFONを行ってきたが、今後も国際法の認める区域において航行の自由原則を維持しこれらの活動を継続する。多くの国が参加することを期待。
●米中の危機管理体制にも進展がみられる。信頼醸成措置、リムパックなどの合同訓練への参加。米中の安全保障協力は今後も深化させなければならない。危険軽減だけでなく、具体的な安全保障協力(対テロ・HADR)などを進めていく必要がある。
●今年のRIMPACでは、グアムからハワイまで米韓の艦艇が行動を共にし、捜索救助演習を含む複数の訓練を実施する計画だ
●米中はグローバルな問題を解決していくことができる。これらの機会を有効に生かさなければならない。変化する地域を、全ての国々の平和と繁栄の機会としていかなければならない。
●中国からの招待を受け、今年後半に中国を訪問するが、軍事協力の合意を拡大し、リスク回避策だけでなく、よりより実効的な協力関係を強化したい
質疑応答の部分
Q:中国がスカボロー礁に建造物を建設したらどうするか?
A:こうしたActionはprovocative/destabilizingである。中国は自らを孤立させるだろう。米国は国際法の下で飛行・航行を続けるだろう。こうした中国の行動が起こらないことを期待する。
Q:Principled Security Networkをどう実行するのか?中国の戦略的計算をどのように変更させるのか?
A:私は中国を代弁することはできないが。。。しかし南シナ海の仲裁裁判の結果を尊重することは法の支配を徹底させるうえで重要だ。
Q:2006年にあなたはPerry元長官とともに北朝鮮へのStrike Optionを提唱した。10年が経過して北朝鮮に対する政策をどう評価するか
A:我々は北朝鮮に対する態勢を日々強化している。米国・同盟国との関係による抑止は強靭である。BMに対する抑止・防衛も強化。
Q:中国参加者の指摘→南シナ海は大袈裟に扱われており、米中関係の一部に過ぎない。南シナ海の埋め立てはベトナム・フィリピンも実施している。なぜ中国が焦点となるのか。米中は公海における航行の自由原則にもコミットしている。公海・EEZにおける軍事行動については見解の相違がある
A:米国は法の支配とコモンズにおける自由の原則に依ってたつ。中国を対象としたものではなく、原則を対象とした行動である。中国に焦点があたるは、南シナ海の埋め立てや軍事化が、他の国よりはるかに大きなスケールで実施されているからだ
Q:Principledという言葉を37回つかった笑。米大統領候補・トランプについてコメントできるか
A:さらなるPrincipleとして(笑)国防長官として、また軍事当局を代表するものとして、現況の米大統領選挙の状況にはコメントできない。
まんぐーす的な口語訳理解
●「Principled Security Network」との新たな安全保障用語を持ち出したが、言葉だけが「踊って」よくわからない。1月のCSISレポートが指摘した、形容詞が飛び交っては消える戦略無き状態は今後も継続模様
●「原則はコミットメント・強靭性・包含性」と通り、米国は対ISILや対ロシアで多忙だしお金も不足しているが「関与」に頑張っている。技術優位を確保するため、懸命に駆け回って取り組んでいると説明
●しかし「関与しています」とこれだけ時間を割いて説明しなければならないこと自体が、関与に関する疑念を証明する形になってしまっている
「CSISがリバランスの実態に苦言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-20
●ベトナム等複数の国との関係も具体的に強化している。だからより高度な3カ国演習などで能力や実戦的力を蓄えてくれ。日本などは他国の能力構築支援に更に頑張ってくれ。これまでは米国が提供してきた「酸素」を、当地域の全ての国が「酸素」を提供せよと訴え
●アジア諸国に国防努力を期待するのは当然だとしても、「日本と韓国が南シナ海での共同災害対処訓練を議論する場面を将来期待する」との主旨の発言をされると「ドン引き」もの
●驚きは「韓国」への言及がほとんど無いこと! THAAD配備問題でこじれ、わざと言及を避けたとしか考えられない。同盟国との関係強化成果を列挙しながら語る下りでは、日本を一番に持ち上げ、次に豪州、フィリピン、インド、ベトナム、そしてシンガポールで終わり・・・何があったんだ??
●3ヶ国関係の強化では、日米韓のBMD演習が取り上げられたが、あとはラオス並みの軽い扱い。KF-XやTHAAD問題で、韓国が「principled」を共有できない仲間だと見なされたか???
●中国の南シナ海における行動は、中国を孤立化に向かわせている。航行の自由を示す行動を続けるから、変なちょっかいは出すな。エスカレートさせるな。スカボロー礁に中国が建造物を建設したら・・・どうするか苦慮中
●ちなみに、今年のRIMPACでは、グアムからハワイまで米韓の艦艇が行動を共にするようです。中国艦艇がスパイ活動しないように監視するようなイメージを持ちましたが・・・
●中国への言及や中国関係者との質疑は、なぜか「出来レース」の様な印象。暗黙の了解が生まれつつあるのか???
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追記6
3日、カーター国防長官の行動
シンガポール到着後、シンガポールの首相や国防相と会談。その後、同国防相を米海軍P-8での飛行に招待し、シンガポール周辺海域の監視活動を通じて同機体の性能をアピール。
最高機密の一つである最新対潜哨戒機P-8の内部を、監視活動中に見せるとは、売り込みに掛ける熱意が伝わってきます
その後、インドネシア国防相とバイ会談。軍事協力や南シナ海問題について意見交換し認識を共有。今年9月にハワイで開催される「非公式」ASEAN国防相会議での再開と更なる議論進化を約束
→米国防省web記事有→http://www.defense.gov/News-Article-View/Article/790604/carter-indonesian-counterpart-discuss-regional-cooperation-at-singapore-confere
そして、ついに中国団長である孫建国・副参謀総長とご対面。バイ会談は、国防長官と副参謀総長では「格」が違いすぎるので成立しません。日本は防衛審議官レベルがバイ会談したみたいです
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追記5
3日、中谷防衛大臣がインド国防相と会談
→http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160603-00050102-yom-pol
●6月に日本近海で行われる米印海軍共同訓練「マラバール」に海上自衛隊が3年連続で参加することも確認
●会談で両氏は、南シナ海の軍事拠点化を進める中国を念頭に、航行の自由を守る必要性で一致
●インド国防相は「日米印の関係をさらに強化するためマラバールが実施される」と述べた
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追記4
2日、カーター長官が移動機内で記者団に語る
「対ISIL」も重要なテーマと語っています。そうでしょうが・・ちょっと肩すかし感が
→http://www.defense.gov/News-Article-View/Article/789722/carter-to-speak-at-singapore-conference-says-us-presence-in-region-is-significa
●国防長官就任後5回目のアジア太平洋訪問であり、当地域への関与の重要性を示している
●米国の当地域における軍事プレゼンスの強さは、日本や韓国や台湾や東南アジア諸国の進歩発展を導き、今日では中国とインドもこの流れにある
●中国とは強力な協力側面もあるし、対立する側面もある。北朝鮮の弾道ミサイル発射活動に対しては、ここ数年間、協力が出来ている
●一部にある海洋での領土主張に関し、米国はどちらの立場を取るものでも無いが、国際法や国際規範を支持する立場にある。
●また、挑発的で不安定化を招くような行為に対して、我々の行動は影響を受けない
●ISILを巡る情勢は、シンガポールでも論点になるだろう。なぜなら東南アジアの多くの国が、当地域へのISILの進入を懸念しているからだ
●米国は当地域の国々と協力し、対ISILの考えを共有していく。各国も関心を持っており、進入の兆候があれば、はじき出して撲滅させる必要がある
///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
追記3
会議の時程表と各セッション参加者の一覧表
→http://www.iiss.org/-/media//documents/events/shangri-la%20dialogue/sld16/sld%202016%20speaker%20agenda.pdf?la=en
●カーター長官は4日9時単独セッション
●中谷大臣は4日10時「アジアでの軍事競争」セッション
(インドとマレーシア国防相と共に)
●杉山外務事務次官が4日15時「北朝鮮脅威の封じ込め」
(韓国国防次官、中国国防大学の大佐、英国の大学研究者と)
●中国団長の孫建国・副参謀総長は5日9時半「紛争解決の課題」
(仏国防相、ベトナム副国防相と)
その他、中国は多数のセッションに参加
4日15時「新技術、厳しい予算と選択」に国際戦略研究所の副理事長
4日15時「不法移民問題」に国防大学の上級大佐
4日17時「サイバードメインの利害」に中国サイバー行政局の次官
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追記1
防衛省の煮え切らない同会議出席発表:6月2日夜時点
(米側が日米国防相会議を発表しているのに言及無し)
→http://www.mod.go.jp/j/press/news/2016/05/31a.html
追記2
中国代表団長は、昨年と同様、孫建国・中国軍副参謀総長(国際問題担当)
笑うしかない中国の主張を真面目に語り、昨年の同会議で見せた、中国を主張する完璧な質疑対応が伝説化しているこの方
→http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2016-06/02/content_38588462.htm
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5月27日、米国防省は6月3~5日に開催される第15回アジア安全保障会議(Shangri-La Dialogue)にカーター国防長官が参加し、4日に講演を行うと発表しました。恐らく現地時間午前9時からの第1セッション「MEETING ASIA’S COMPLEX SECURITY CHALLENGES」になると思われます。
同会議は、英国の民間研究機関IISSが主催する非公式の会議ですが、アジア太平洋のほぼ全てと、欧州主要国の国防大臣が一堂に会する点で、「アジア最大の安全保障イベント」と考えられています。
中国側の参加者は。昨年と同様国際問題担当の孫建国・軍副参謀総長(一応大将ですが)です。
今回は、ハーグの国際司法裁判所で間もなく出される判決、つまりフィリピンが中国を南シナ海の領土問題で訴えている件への中国の先制攻撃模様や、南シナ海でも中国が「防空識別区」設定を持ち出すかなどが特に注目されています
またいつものように、中国側参加者(副参謀長への随行者クラスが)が、民間主催会議である事もあり、カーター長官の講演に対し辛辣な質問を投げかけるのが通例となっており、今年もそんな流れかも知れません
会議の期間中、バイや3カ国会談も多数セットされます。既に日米国防相会談は発表されていますが、2014年には日米韓の3ヶ国国防相会議が設定され、2015年は4年ぶりの日韓国防相会談が設定され話題になりました。
色々な視点がありますが、豪州の新政権代表も交えた日米豪や日米印の3カ国会議にも期待したいものです。まあ、日米韓もあるかもですが・・・
また昨年は、河野統合幕僚長がセッションに参加し、自衛官として初デビューを果たしました。国際感覚溢れる河野統幕長に今年も期待致しましょう
5月31日にDCを出発してから、アリゾナを訪問した後のカーター長官の予定は明らかになっていません。また、6月8~9日のNATO首脳会議(@ポーランド)までの予定も不明です。例年、この期間を利用し、日本や韓国を訪問する事もありますし、中東に立ち寄ることも多いですので、この辺りも注目です
27日付米国防省発表によれば
●カーター国防長官は、6月4日に第15回Shangri-La Dialogueで講演を行う。同会議に長官は、米海軍トップのRichardson海軍作戦部長と太平洋軍司令官ハリス海軍大将を同行させる
●(3~5日に開催される)会議期間に、複数の2国間国防相会談を予定しており、シンガポール国防相と日本の中谷防衛大臣との会談も含まれている
●シンガポールに向かう途中、5月31日に長官はアリゾナ州のFort Huachuca陸軍基地に立ち寄り、米陸軍のサイバー戦と無人機運用の拠点である部隊や機関を訪問し、状況説明を受ける予定
今年も注目点は同じ
●ここ数年度同様、なんと言っても、カーター国防長官が「名ばかり太平洋リバランス」と揶揄されるアジア太平洋政策を、どのようにアピールするかに注目です。
●しかし最近のカーター長官は、リバランスは軍事だけでなく、外交、経済、文化等々の総合的アプローチで行うもので、特に「TPP」が重要だと盛んに発信しており、軍事面でのアピール「ネタ不足」を懸命に埋めようとしています
●対中国の姿勢も微妙です。安全保障上の課題を5つの視点で語る最近の講演でも、ロシア、北朝鮮、イラン、ISILには具体的言及があるものの、中国との国名を出さず「アジア太平洋地域における歴史的変化」と表現する姿勢を示しています。伊勢志摩サミットの共同宣言で、「中国」と名指ししなかったのと同じです
●5月13日発表の米国防省「中国の軍事力」レポートでも、「長期的な中国軍の軍近代化は・・・新たなフェーズに入った」、「中国はまた、米国との直接的で明確な紛争を避けようとしている」と言及し、中国への見方や姿勢に変化の兆しのようなものを感じないではありません
●ここ数年続いている、「最新の装備をまずアジア太平洋に配備する」とか、「これを配備完了した」とか、各国との関係強化にこれだけ進展があったと列挙とかに加え、「航行の自由作戦」をしっかりやってます発言が予想されます
●目新しいとすれば、対中国や対ロシアが目的だと明言している「Third Offset Strategy」や「ハイテク企業との連携強化」をアピールするかも知れません
●更に言えば、トランプ旋風を意識した発言にも注目です。オバマ大統領の最近の発言にもチラホラですが、理論物理学者であるカーター長官からも発言を期待したいものです。
関連の記事
「安全保障5つの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-25
「2016年版:中国の軍事力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
スポンサーにB-21受注の米NG社が追加
●会議主催者であるIISSのチップマン所長は、研究者と言うよりは「商売人」としての「がめつさ」で有名。シャングリラ会合のミニ版を東アジアで開催しようと、日本をはじめ各国に打診し、お金を出させてIISSが儲けようと画策しているとか
●スポンサー企業は、2014年の10社から中華系のメディア資本2社(鳳凰網とフェニックスTV)が撤退し、2015年には8社に。今年は米空軍の次期爆撃機を受注して活き上がる「Northrop Grumman」が加わり9社体制に
●なお、日本からは継続して三菱商事と朝日新聞社がスポンサーになっています。恐らくスポンサー特権でしょうが、朝日新聞の加藤洋一記者は、米国防長官への質問者に毎年指名されています。
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今後、可能な範囲で少しづつ、このページに追記していきます
もう一つ個人的には、本会議のシンボルカラーが、従来の「エンジ」から「濃紺」に変化したことに注目です。文化面でこの色の変化の意味するところは不明ですが理由が気になります
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IISSアジア安全保障会議 webサイト
→http://www.iiss.org/en/events/shangri-s-la-s-dialogue
関連の記事
「安全保障5つの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-25
「2016年版:中国の軍事力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
過去のアジア安全保障会議の記事は・・
「2015年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-28
「2014年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27
「2013年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-31
「2012年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「2011年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
「2010年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-05
追記1:中谷防衛大臣の行動概要
追記2:中国からの参加者が明らかに・・・昨年と同じこの人
追記3:会議全体の詳細日程と各セッションへの参加者一覧へのリンク
追記4:カーター国防長官の移動機内での記者ブリ概要
追記5:中谷大臣とインド国防相のバイ会談概要。「マラバール」確認
追記6:カーター長官の3日の行動概要。P-8にこの人と同乗、バイ会談、中国人と2ショットなど
追記7:カーター国防長官のプレゼン(映像付で内容を速報!)
プレゼン原稿へのリンクも追加
追記8:日米国防相会談で、日本製品の米国輸出規制撤廃
追記9:日米韓3ヶ国会談で、3ヶ国BMD演習を6月末ハワイ周辺で実施で合意
追記10:カーター長官講演原稿を読みとり、追記7の概要紹介に補足追加。日韓が南シナ海で共同演習することを夢みているような発言も
追記11:中国団長の孫建国(副参謀長:国際問題担当)の講演概要紹介 会場内の雰囲気は「中国孤立化の万里の長城」完成!
追記12:カーター長官講演に分析を「追記7」に追加→同盟強化のくだりで「韓国に言及がない異常事態」を考察。THAAD配備等で、原則や価値を共有できない国と見なされたか?
追記13で最後:慶応大学の神保先生の同会議の総括(へのリンク)を追加掲載
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追記13
慶応の神保先生による同会議総括コラム
「南シナ海を主戦場とする米中関係:シャングリラ・ダイアローグの論点」
→SLDは定点観測としての意義が大きいのですが、今回はやや米中双方ともに空回りという印象があります。(神保謙)
→http://www.canon-igs.org/column/security/20160609_3843.html
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追記11
孫建国(副参謀長:国際問題担当)の講演
神保謙:慶応准教授によるTwitter実況
→https://mobile.twitter.com/kenj0126?p=s
たっぷり準備して練りに練った「へりくつ」大展開
●アジアには多層的・多面的な安全保障協力と機会が形成されている。しかし古い同盟と兵力の展開はアジアの安全保障にリスクをもたらしている。
●平和・繁栄・安定は平和的発展の基礎であり、ウインウインの関係を目指すべきである。アジア太平洋は平和と相互依存を共有する運命にある。中国は地域の平和と発展のために「一帯一路」・AIIB・シルクロード基金を推進している。
●習近平主席はCICA総会で地域に即した安全保障ガバナンスが必要だと述べた。1)安全保障ガバナンスが今日の地域の問題に即したものであること、2)時代遅れのゼロサム思考は排するべきであり、3)一国主義を排して他国の利益を尊重するべき、であり中国は平和にコミットしている。
中国軍も世界平和にコミットしている
●中国は世界中の平和維持部隊(PKO)にコミットしている。中国は8000人の待機部隊の創設を目指している。中国の工兵はテロリズムの犠牲にもなった。政治的考慮を超えた人道支援活動にも力を入れている
●人民解放軍は30万人の削減を含む本格的な改革に着している。中国軍は今後も改革・効率化・能力構築を進めていく必要がある。中国には覇権的野望はない。防衛的能力の強化を進め、地域・世界の安全に貢献していく。
●中国国防部・解放軍は国際的関与を進め、協力プログラムを進める。米中の「新型軍事関係」を推進する。信頼醸成、HA/DR、Counter-Piracyの協力が進んでいる。中日の軍・軍との関係も回復の機運がある。
●アジアにおける係争について関係国は自制心を保つべきだ。ステップバイステップで政治的解決を目指すべきだ。関係国との係争解決メカニズム、軍事活動の事前通報、各軍種の連絡メカニズムの設置・運用を進める。
●中国はASEANとの海上の合同訓練の実施を目指し、CUESの確認と運用を柱として信頼醸成を進めていく。
米国やアジア諸国の動きは平和に逆行だ
●韓国におけるTHAADの配備は、地域の安全を害するものであり、強く反対する。地域諸国はこうした冷戦思考を排するべきである。
●中国はASEAN国防相との非公式会合を最初に持った国である。2017年に中国・タイは対テロWGの議長を務める。ADMMプラスにおける協力を進めていく。
●南シナ海における航行自由の原則は脅かされていない。中国は常に問題の平和的解決を提唱している。ルールとメカニズムを通じた解決が重要だ。同海域の問題はASEAN諸国と二国間の対話と協議を通じて解決してく。
●米国のFON-opは中国に対する軍事的威嚇であり、こうした無責任な行動に強く反対する。中国はしかしこうした行動をなんら恐れない。中国は知恵と自制心によって平和の維持を目指している
●南シナ海は身勝手な主張をする国のせいで問題が拡大している。フィリピンは南シナ海で不法な占拠を続けている。仲裁裁判は中国とフィリピンの問題の解決に役立たない。中国・フィリピンとの二国間の対話、COC、UNCLOSによって問題解決を追求すべきだ。フィリピンは二国協議を軽視
●仲裁裁判の結果はなんら法的効力をもたず、中国は受け入れない。
恐らく質疑応答にて
(質問には全く回答せず、一方的に紙を読み上げる)
●昨年は13個の質問に答えた(笑)。今年も予想していたとおり質問が多い。
●南シナ海は古代より中国のterritoryだった。南シナ海の係争で多くの見解の統合で正当は結論を導くことはできない。歴史的事実に基づくことが重要だ。1940年代に九段線(11段線)はすでに引かれていた
●1970年代に中国が政治的困難に直面している時に、フィリピンが南シナ海の一部を侵略した。一部の国は中国の共同開発提案や合意を無視し、一方的な占拠と開発を進めている。中国が大国として小国をいじめているという構図は間違いだ。中国の7箇所での埋め立ては必要な対応だ。
●南シナ海で多くの船を航行させているのは中国だ。航行の自由は中国が必要とするものだ。南シナ海における多国間の軍事演習や威嚇は航行の自由に対する挑戦だ(よく言うわ。。)。
●米・カーター長官は「中国が自ら孤立化している」と言った。そんなことはない。多くの地域の国防相は昨年よりも私たちに尊敬を示している。今中国は孤立などしていないし、今後も孤立化しない。冷戦思考でこの地域に関わる国こそ、自らを孤立化させるだろう。
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追記8
4日の日米国防相会談:
→http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2016/06/171183.php
日本製品輸入規制撤廃
●日本製の装備品部品の輸入規制を米側が撤廃で合意。米国軍需産業が、特殊素材や合金などの日本製製品を使用しやすくなる
●同様の合意はNATO諸国(23カ国)と既に結ばれているが、アジア諸国の中では日本とが初めて
追記9
→http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160604-00050118-yom-pol
4日、日米韓の3カ国国防相会議が開催
●会談後に共同声明を発表し、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を強く非難し、挑発行動を直ちに控えるよう要求
●北朝鮮の弾道ミサイル発射を想定した3カ国ミサイル防衛訓練を、6月下旬にハワイ沖で実施することも決めた。韓国の参加は初めて。ミサイルの探知・追跡情報を共有する訓練を行う
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追記7
カーター長官講演の映像(7分から63分)
神保謙:慶応准教授によるTwitter実況
(ご本人は前半部分が不十分だとご謙遜ですが・・)
→https://mobile.twitter.com/kenj0126?p=s
神保先生の速報ツイートに、まんぐーすの講演原稿読みとり補足を加え、以下でカーター講演概要をご紹介します
講演原稿&質疑が公開されました
→https://www.iiss.org/en/events/shangri%20la%20dialogue/archive/shangri-la-dialogue-2016-4a4b/plenary1-ab09/carter-1610
米国防省webサイトも原稿公開
→http://www.defense.gov/News/Speeches/Speech-View/Article/791213/remarks-on-asia-pacifics-principled-security-network-at-2016-iiss-shangri-la-di
当地域の現状認識と米国の基本姿勢
●15年間のSLD開催に祝意。地域での建設的な議論を慫慂してきた。この地域の全体が建設的とはいえない。南シナ海、北朝鮮、テロは安定と繁栄に影を投げかけている
●昨年のこの会合での講演の最後で、将来の夢を描いてみた。米中印が多国間海軍演習を議論したり、日韓が南シナ海で災害対処訓練を実施したり、ASEAN包括の安全保障ネットワークが出来ればと語った事を思い出す
●それに向かい、インドと中国はRIMPACに参加し、日韓は新たな方法で関わりを始めた。ASEANを中心とした安全保障ネットワークが構築され始めている
●このような取り組みを通じ、将来、どの国も恫喝や脅しが無く、自由に政治的、経済的、軍事的選択がとれるようでありたい。国際法で確保された航行の自由や飛行の自由があり、紛争が平和に解決されることが望ましい状態だ
●これを実現する責任を皆が担っている
●アジアにおける安全保障ネットワークの重要性の確認。NATOのような軍事的な同盟はこの地域はない。過去の歴史、地理的な状況を考えると必要なかった。しかしこの地域は発展がすすみ、軍事協力も新しい方法で進化し、効率良くすすんでいる
●Principled Security Networkこそがアジアの将来を導く。欧州でロシアのassertiveness があろうとも、米国はアジアに関与しつづけ、その原則はコミットメント・強靭性・包含性に基づく
●オバマ大統領が米ASEANサミットを主催、CIA長官も多数の議員もこの会場にいる。米中戦略経済対話に複数の閣僚が参加予定で、インド首相の訪米も計画され、シンガポール首相もだ。関与は永遠だ
●米国がアジアに関与する価値に疑問の余地はない。米国政府全体がアジアにおける価値にコミットしている。TPPによって域内の経済連携はさらに進む。米国は今後何十年にもわたり、安全保障の提供者でありつづける。
●Security is like oxygenという言葉に言及。米国はOxygenの提供者だった。Principled Security Networkでは全ての国々がより多くのOxygenの提供者にならなければならない。
軍事技術優位維持への努力と同盟関係強化
●F-22やF-35、B-2やB-52、最新艦艇を配備展開させ、将来投資では新型バージニア級攻撃原潜、水中無人艦、次期爆撃機B-21、サイバー・宇宙・電子戦分野にも
●革新的戦略開発や作戦コンセプト開発に努力し、投資額だけでは計れない最新技術を取り込む取り組みも。15年にも及ぶ過去の経験も蓄積
●演習にも新アイディアを。夏のRIMPACは27カ国が参加する比類無き演習に
●America's defense relationships with allies and partners are the foundation of US engagement in the Asia-Pacific
●同盟関係では、日米(最初に言及!)が新ガイドラインに昨年署名してこれまでになく強固になり、米豪はより世界的になり、航行や飛行の自由を掲げ、中東でも協力強化
●オバマ大統領のベトナム訪問は米越関係の新しい展開を生み出すものだ。武器禁輸解除によって、ベトナムは多くの軍事技術にアクセスができるようになった。
●Principled Security Network は同盟国とパートーナ国の努力の継続が必要だ。約450億円投資を昨年発表したMaritime Security Networkの重視。フィリピンのCWC、ベトナムのMDA、タイのFusion Centerなど
●安全保障のネットワークに三ヶ国協力の拡大は重要だ。日米韓(BM warning exercise)、日米豪(海上安全保障協力)、日米印(マラバール等)、米タイラオス関係など。
●能力構築支援の重要性。日本とベトナムが2国で海軍共同訓練を行い、日本はフィリピンとも能力構築に取り組んでいる。インドとベトナムの2国、インドネシア・マレーシア・比の3国も。米国はPrincipled Networkの一環としてのアジア域内の能力構築を支援する。
●アジア域内の安全保障協力枠組みの強化。ADMM PlusはASEANがリードする重要な枠組み。
中国への言及:懸念と期待部分
●こうしたPrincipled Security Networkは特定の第三国を対象としたものではない。米国は中国の平和的台頭を歓迎する。またこうした安全保障とのインターフェースをもつことも歓迎する。
●しかし中国の海域・空域・サイバーに対するassertivenessには懸念。中国の南シナ海における行動は、中国を孤立化に向かわせている。これはGreat Wall of Self Isolationである。
●米国はこれまでFONを行ってきたが、今後も国際法の認める区域において航行の自由原則を維持しこれらの活動を継続する。多くの国が参加することを期待。
●米中の危機管理体制にも進展がみられる。信頼醸成措置、リムパックなどの合同訓練への参加。米中の安全保障協力は今後も深化させなければならない。危険軽減だけでなく、具体的な安全保障協力(対テロ・HADR)などを進めていく必要がある。
●今年のRIMPACでは、グアムからハワイまで米韓の艦艇が行動を共にし、捜索救助演習を含む複数の訓練を実施する計画だ
●米中はグローバルな問題を解決していくことができる。これらの機会を有効に生かさなければならない。変化する地域を、全ての国々の平和と繁栄の機会としていかなければならない。
●中国からの招待を受け、今年後半に中国を訪問するが、軍事協力の合意を拡大し、リスク回避策だけでなく、よりより実効的な協力関係を強化したい
質疑応答の部分
Q:中国がスカボロー礁に建造物を建設したらどうするか?
A:こうしたActionはprovocative/destabilizingである。中国は自らを孤立させるだろう。米国は国際法の下で飛行・航行を続けるだろう。こうした中国の行動が起こらないことを期待する。
Q:Principled Security Networkをどう実行するのか?中国の戦略的計算をどのように変更させるのか?
A:私は中国を代弁することはできないが。。。しかし南シナ海の仲裁裁判の結果を尊重することは法の支配を徹底させるうえで重要だ。
Q:2006年にあなたはPerry元長官とともに北朝鮮へのStrike Optionを提唱した。10年が経過して北朝鮮に対する政策をどう評価するか
A:我々は北朝鮮に対する態勢を日々強化している。米国・同盟国との関係による抑止は強靭である。BMに対する抑止・防衛も強化。
Q:中国参加者の指摘→南シナ海は大袈裟に扱われており、米中関係の一部に過ぎない。南シナ海の埋め立てはベトナム・フィリピンも実施している。なぜ中国が焦点となるのか。米中は公海における航行の自由原則にもコミットしている。公海・EEZにおける軍事行動については見解の相違がある
A:米国は法の支配とコモンズにおける自由の原則に依ってたつ。中国を対象としたものではなく、原則を対象とした行動である。中国に焦点があたるは、南シナ海の埋め立てや軍事化が、他の国よりはるかに大きなスケールで実施されているからだ
Q:Principledという言葉を37回つかった笑。米大統領候補・トランプについてコメントできるか
A:さらなるPrincipleとして(笑)国防長官として、また軍事当局を代表するものとして、現況の米大統領選挙の状況にはコメントできない。
まんぐーす的な口語訳理解
●「Principled Security Network」との新たな安全保障用語を持ち出したが、言葉だけが「踊って」よくわからない。1月のCSISレポートが指摘した、形容詞が飛び交っては消える戦略無き状態は今後も継続模様
●「原則はコミットメント・強靭性・包含性」と通り、米国は対ISILや対ロシアで多忙だしお金も不足しているが「関与」に頑張っている。技術優位を確保するため、懸命に駆け回って取り組んでいると説明
●しかし「関与しています」とこれだけ時間を割いて説明しなければならないこと自体が、関与に関する疑念を証明する形になってしまっている
「CSISがリバランスの実態に苦言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-20
●ベトナム等複数の国との関係も具体的に強化している。だからより高度な3カ国演習などで能力や実戦的力を蓄えてくれ。日本などは他国の能力構築支援に更に頑張ってくれ。これまでは米国が提供してきた「酸素」を、当地域の全ての国が「酸素」を提供せよと訴え
●アジア諸国に国防努力を期待するのは当然だとしても、「日本と韓国が南シナ海での共同災害対処訓練を議論する場面を将来期待する」との主旨の発言をされると「ドン引き」もの
●驚きは「韓国」への言及がほとんど無いこと! THAAD配備問題でこじれ、わざと言及を避けたとしか考えられない。同盟国との関係強化成果を列挙しながら語る下りでは、日本を一番に持ち上げ、次に豪州、フィリピン、インド、ベトナム、そしてシンガポールで終わり・・・何があったんだ??
●3ヶ国関係の強化では、日米韓のBMD演習が取り上げられたが、あとはラオス並みの軽い扱い。KF-XやTHAAD問題で、韓国が「principled」を共有できない仲間だと見なされたか???
●中国の南シナ海における行動は、中国を孤立化に向かわせている。航行の自由を示す行動を続けるから、変なちょっかいは出すな。エスカレートさせるな。スカボロー礁に中国が建造物を建設したら・・・どうするか苦慮中
●ちなみに、今年のRIMPACでは、グアムからハワイまで米韓の艦艇が行動を共にするようです。中国艦艇がスパイ活動しないように監視するようなイメージを持ちましたが・・・
●中国への言及や中国関係者との質疑は、なぜか「出来レース」の様な印象。暗黙の了解が生まれつつあるのか???
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追記6
3日、カーター国防長官の行動
シンガポール到着後、シンガポールの首相や国防相と会談。その後、同国防相を米海軍P-8での飛行に招待し、シンガポール周辺海域の監視活動を通じて同機体の性能をアピール。
最高機密の一つである最新対潜哨戒機P-8の内部を、監視活動中に見せるとは、売り込みに掛ける熱意が伝わってきます
その後、インドネシア国防相とバイ会談。軍事協力や南シナ海問題について意見交換し認識を共有。今年9月にハワイで開催される「非公式」ASEAN国防相会議での再開と更なる議論進化を約束
→米国防省web記事有→http://www.defense.gov/News-Article-View/Article/790604/carter-indonesian-counterpart-discuss-regional-cooperation-at-singapore-confere
そして、ついに中国団長である孫建国・副参謀総長とご対面。バイ会談は、国防長官と副参謀総長では「格」が違いすぎるので成立しません。日本は防衛審議官レベルがバイ会談したみたいです
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追記5
3日、中谷防衛大臣がインド国防相と会談
→http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160603-00050102-yom-pol
●6月に日本近海で行われる米印海軍共同訓練「マラバール」に海上自衛隊が3年連続で参加することも確認
●会談で両氏は、南シナ海の軍事拠点化を進める中国を念頭に、航行の自由を守る必要性で一致
●インド国防相は「日米印の関係をさらに強化するためマラバールが実施される」と述べた
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追記4
2日、カーター長官が移動機内で記者団に語る
「対ISIL」も重要なテーマと語っています。そうでしょうが・・ちょっと肩すかし感が
→http://www.defense.gov/News-Article-View/Article/789722/carter-to-speak-at-singapore-conference-says-us-presence-in-region-is-significa
●国防長官就任後5回目のアジア太平洋訪問であり、当地域への関与の重要性を示している
●米国の当地域における軍事プレゼンスの強さは、日本や韓国や台湾や東南アジア諸国の進歩発展を導き、今日では中国とインドもこの流れにある
●中国とは強力な協力側面もあるし、対立する側面もある。北朝鮮の弾道ミサイル発射活動に対しては、ここ数年間、協力が出来ている
●一部にある海洋での領土主張に関し、米国はどちらの立場を取るものでも無いが、国際法や国際規範を支持する立場にある。
●また、挑発的で不安定化を招くような行為に対して、我々の行動は影響を受けない
●ISILを巡る情勢は、シンガポールでも論点になるだろう。なぜなら東南アジアの多くの国が、当地域へのISILの進入を懸念しているからだ
●米国は当地域の国々と協力し、対ISILの考えを共有していく。各国も関心を持っており、進入の兆候があれば、はじき出して撲滅させる必要がある
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追記3
会議の時程表と各セッション参加者の一覧表
→http://www.iiss.org/-/media//documents/events/shangri-la%20dialogue/sld16/sld%202016%20speaker%20agenda.pdf?la=en
●カーター長官は4日9時単独セッション
●中谷大臣は4日10時「アジアでの軍事競争」セッション
(インドとマレーシア国防相と共に)
●杉山外務事務次官が4日15時「北朝鮮脅威の封じ込め」
(韓国国防次官、中国国防大学の大佐、英国の大学研究者と)
●中国団長の孫建国・副参謀総長は5日9時半「紛争解決の課題」
(仏国防相、ベトナム副国防相と)
その他、中国は多数のセッションに参加
4日15時「新技術、厳しい予算と選択」に国際戦略研究所の副理事長
4日15時「不法移民問題」に国防大学の上級大佐
4日17時「サイバードメインの利害」に中国サイバー行政局の次官
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追記1
防衛省の煮え切らない同会議出席発表:6月2日夜時点
(米側が日米国防相会議を発表しているのに言及無し)
→http://www.mod.go.jp/j/press/news/2016/05/31a.html
追記2
中国代表団長は、昨年と同様、孫建国・中国軍副参謀総長(国際問題担当)
笑うしかない中国の主張を真面目に語り、昨年の同会議で見せた、中国を主張する完璧な質疑対応が伝説化しているこの方
→http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2016-06/02/content_38588462.htm
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5月27日、米国防省は6月3~5日に開催される第15回アジア安全保障会議(Shangri-La Dialogue)にカーター国防長官が参加し、4日に講演を行うと発表しました。恐らく現地時間午前9時からの第1セッション「MEETING ASIA’S COMPLEX SECURITY CHALLENGES」になると思われます。
同会議は、英国の民間研究機関IISSが主催する非公式の会議ですが、アジア太平洋のほぼ全てと、欧州主要国の国防大臣が一堂に会する点で、「アジア最大の安全保障イベント」と考えられています。
中国側の参加者は。昨年と同様国際問題担当の孫建国・軍副参謀総長(一応大将ですが)です。
今回は、ハーグの国際司法裁判所で間もなく出される判決、つまりフィリピンが中国を南シナ海の領土問題で訴えている件への中国の先制攻撃模様や、南シナ海でも中国が「防空識別区」設定を持ち出すかなどが特に注目されています
またいつものように、中国側参加者(副参謀長への随行者クラスが)が、民間主催会議である事もあり、カーター長官の講演に対し辛辣な質問を投げかけるのが通例となっており、今年もそんな流れかも知れません
会議の期間中、バイや3カ国会談も多数セットされます。既に日米国防相会談は発表されていますが、2014年には日米韓の3ヶ国国防相会議が設定され、2015年は4年ぶりの日韓国防相会談が設定され話題になりました。
色々な視点がありますが、豪州の新政権代表も交えた日米豪や日米印の3カ国会議にも期待したいものです。まあ、日米韓もあるかもですが・・・
また昨年は、河野統合幕僚長がセッションに参加し、自衛官として初デビューを果たしました。国際感覚溢れる河野統幕長に今年も期待致しましょう
5月31日にDCを出発してから、アリゾナを訪問した後のカーター長官の予定は明らかになっていません。また、6月8~9日のNATO首脳会議(@ポーランド)までの予定も不明です。例年、この期間を利用し、日本や韓国を訪問する事もありますし、中東に立ち寄ることも多いですので、この辺りも注目です
27日付米国防省発表によれば
●カーター国防長官は、6月4日に第15回Shangri-La Dialogueで講演を行う。同会議に長官は、米海軍トップのRichardson海軍作戦部長と太平洋軍司令官ハリス海軍大将を同行させる
●(3~5日に開催される)会議期間に、複数の2国間国防相会談を予定しており、シンガポール国防相と日本の中谷防衛大臣との会談も含まれている
●シンガポールに向かう途中、5月31日に長官はアリゾナ州のFort Huachuca陸軍基地に立ち寄り、米陸軍のサイバー戦と無人機運用の拠点である部隊や機関を訪問し、状況説明を受ける予定
今年も注目点は同じ
●ここ数年度同様、なんと言っても、カーター国防長官が「名ばかり太平洋リバランス」と揶揄されるアジア太平洋政策を、どのようにアピールするかに注目です。
●しかし最近のカーター長官は、リバランスは軍事だけでなく、外交、経済、文化等々の総合的アプローチで行うもので、特に「TPP」が重要だと盛んに発信しており、軍事面でのアピール「ネタ不足」を懸命に埋めようとしています
●対中国の姿勢も微妙です。安全保障上の課題を5つの視点で語る最近の講演でも、ロシア、北朝鮮、イラン、ISILには具体的言及があるものの、中国との国名を出さず「アジア太平洋地域における歴史的変化」と表現する姿勢を示しています。伊勢志摩サミットの共同宣言で、「中国」と名指ししなかったのと同じです
●5月13日発表の米国防省「中国の軍事力」レポートでも、「長期的な中国軍の軍近代化は・・・新たなフェーズに入った」、「中国はまた、米国との直接的で明確な紛争を避けようとしている」と言及し、中国への見方や姿勢に変化の兆しのようなものを感じないではありません
●ここ数年続いている、「最新の装備をまずアジア太平洋に配備する」とか、「これを配備完了した」とか、各国との関係強化にこれだけ進展があったと列挙とかに加え、「航行の自由作戦」をしっかりやってます発言が予想されます
●目新しいとすれば、対中国や対ロシアが目的だと明言している「Third Offset Strategy」や「ハイテク企業との連携強化」をアピールするかも知れません
●更に言えば、トランプ旋風を意識した発言にも注目です。オバマ大統領の最近の発言にもチラホラですが、理論物理学者であるカーター長官からも発言を期待したいものです。
関連の記事
「安全保障5つの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-25
「2016年版:中国の軍事力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
スポンサーにB-21受注の米NG社が追加
●会議主催者であるIISSのチップマン所長は、研究者と言うよりは「商売人」としての「がめつさ」で有名。シャングリラ会合のミニ版を東アジアで開催しようと、日本をはじめ各国に打診し、お金を出させてIISSが儲けようと画策しているとか
●スポンサー企業は、2014年の10社から中華系のメディア資本2社(鳳凰網とフェニックスTV)が撤退し、2015年には8社に。今年は米空軍の次期爆撃機を受注して活き上がる「Northrop Grumman」が加わり9社体制に
●なお、日本からは継続して三菱商事と朝日新聞社がスポンサーになっています。恐らくスポンサー特権でしょうが、朝日新聞の加藤洋一記者は、米国防長官への質問者に毎年指名されています。
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今後、可能な範囲で少しづつ、このページに追記していきます
もう一つ個人的には、本会議のシンボルカラーが、従来の「エンジ」から「濃紺」に変化したことに注目です。文化面でこの色の変化の意味するところは不明ですが理由が気になります
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IISSアジア安全保障会議 webサイト
→http://www.iiss.org/en/events/shangri-s-la-s-dialogue
関連の記事
「安全保障5つの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-25
「2016年版:中国の軍事力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
過去のアジア安全保障会議の記事は・・
「2015年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-28
「2014年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27
「2013年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-31
「2012年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「2011年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
「2010年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-05
Yale大学で40年ぶりROTC卒業 [カーター国防長官]
23日、カーター国防長官の母校であるYale大学で、ベトナム戦闘時に廃止され、2012年に復活したROTC制度で学び訓練した学生18名の士官任官式が行われました。
ROTC制度は、一般大学卒業後に軍幹部へ任官することを条件に、学生生活間に奨学金を支給する制度で、学生は大学在学中も一定の基礎訓練への参加が義務付けられるものです
ベトナム戦の反戦ムードの中でROTC制度を中止する大学が相次ぎ、その後は同性愛者に対する「聞かない、言わない原則:Don’t Ask, Don’t Tell」の存在を理由に、一流大学と目されるアイビーリーグの大学はROTC復活を拒んできました。
しかし2012年に「聞かない、言わない原則」が撤廃されたことを受け、一流大学でもROTC復活の流れが生まれつつ有り、ハーバード大学でも今年4月に同制度が復活したところです
1950年代にはハーバード大学に約700名のROTC学生が在籍しており、冷戦終了時には全米学生の約4割が両親や身近な親戚に軍務経験者を有していたとの統計も有り、軍事や安全保障を身近に考える環境にあったと考えられます。
2010年時点で、身近に軍務経験者がいる学生は18%に低下、近い将来1割以下になるのは確実と見られ、「軍と社会の乖離」や優秀な学生の確保が難しくなっています
母校での式典に参加したカーター長官も「軍と社会の分離」を憂慮し、ROTC復活が周りの学生の意識に働きかける効果を期待する旨の発言をしています。
他のアイビーリーグや一流大学の動向は承知していませんが、ハーバードでの復活の影響は大きい様ですし、大いに期待したいと思います
式典でカーター国防長官は
●国家として非常に重要な制度が戻ってきた。新たに士官となった18名(海軍10名、空軍8名)は、長い間に固定化されつつあった分断に橋を架ける役割を支援してくれる
●大学の同級生に潜水艦の原子力推進装置に携わる者が居いたり、同じ化学を専攻した同窓生に救難救助部隊員がいれば、又はプログラムの学生のクラスメイトがサイ
バー安全保障に関わっていることは、他の同級生や同窓生の考え方に新たなものをもたらすだろう
●米国が直面している課題を大きく捕らえれば5つである。ロシアの攻勢的姿勢、アジア太平洋の歴史的変化、北朝鮮による核の恫喝、イランによる侵攻、テロやISIL撲滅である
●複雑で変化し続ける世界に対応してくれる決意をしてくれた君たちに、米国はプロ意識、革新を追求する意識、リーダーシップを期待する
2010年9月にゲーツ国防長官(当時)は本件について
●米軍は、徴兵制により冷戦時には世界最大規模となっていた。そしてこの規模拡大により、当時は多くの有望な若者が軍務の経験をした。
●例えば、1957年にはプリンストン大出身者が4万人軍務に付いており、ハーバード大にも700人規模のROTC制度が設けられていた。そして彼らは軍務を追えた後社会の中心的役割を果たし、議会や民間企業や地域社会から軍を支えた。
●このため、冷戦終了時で全米の学生の約4割が両親や身近な親戚に軍務経験者を有していたが、現在ではその比率は18%に低下、近い将来1割以下になるのは確実である。
志願者の地域的偏りが・・・
●一般的に言えば、米国の北西部、西海岸や大都市近郊は志願者が減少している。これら地域で大きな基地の閉鎖再編が進んでいることも一因であるが、同時に軍務のような国家の仕事が他人事にと考えられる風潮が背景にある。
●ROTC制度を受け入れている大学の数からもこの傾向が見て取れる。人口が5百万人以下のアラバマ州で10個の大学が同制度を設けているのに対し、人口1200万人以上のロス周辺では4大学、シカゴ近郊の人口9百万エリアで僅か3大学である。
●アイビーリーグと呼ばれる入学に高い学力を要求される大学は、このDuke大学を除き、ベトナム戦争時にROTC制度の廃止を決め、同性愛者への「問わない、言わない」方針を理由として現在もROTC制度を拒んでいる。
なおこのゲーツ講演(Duke大学ROTC学生対象)はリーダーとしてのあり方を語った印象深い講演です
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02
例えば・・・
●「高い適応性こそが、君たちのような若い士官候補生が軍に持ち込むことを期待される特性である。私はペンタゴンでこんな風に言って制服高級幹部をたしなめている。陸軍は未だにフルダ・ギャップでの戦いを望んでいるのか? 海軍はまだミッドウェー海戦を夢見ているのか? 海兵隊は仁川上陸作戦をもう一度が合い言葉なのか? 空軍は単に飛んでいたいのか?(Air Force just wants to keep flying?)」
●「私は君達に、常識的に上品で礼儀正しく(decency)、かつ部下に対しての敬意(respect)を持つ意識を持って組織をリードしてほしいと考えている。これらは単純で基本的なことであるが、しばしば忘れられており、私はペンタゴンで会う新しい将軍や上級スタッフにいつも言い聞かせている。」
●「上司や同僚の中で、君たち一人だけが真に正しいと思うことを主張し続けることは大変なことだ。しかしそれが、単に人気のある前例があるやりやすいではなく、真に正しいならばその方向を追求しなければならない」
ロバート・ゲーツ語録100選
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19
2010年9月のゲーツ長官Duke大学講演(2分割)
「リーダー像」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02
「軍と社会の乖離」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-10
ROTC制度は、一般大学卒業後に軍幹部へ任官することを条件に、学生生活間に奨学金を支給する制度で、学生は大学在学中も一定の基礎訓練への参加が義務付けられるものです
ベトナム戦の反戦ムードの中でROTC制度を中止する大学が相次ぎ、その後は同性愛者に対する「聞かない、言わない原則:Don’t Ask, Don’t Tell」の存在を理由に、一流大学と目されるアイビーリーグの大学はROTC復活を拒んできました。
しかし2012年に「聞かない、言わない原則」が撤廃されたことを受け、一流大学でもROTC復活の流れが生まれつつ有り、ハーバード大学でも今年4月に同制度が復活したところです
1950年代にはハーバード大学に約700名のROTC学生が在籍しており、冷戦終了時には全米学生の約4割が両親や身近な親戚に軍務経験者を有していたとの統計も有り、軍事や安全保障を身近に考える環境にあったと考えられます。
2010年時点で、身近に軍務経験者がいる学生は18%に低下、近い将来1割以下になるのは確実と見られ、「軍と社会の乖離」や優秀な学生の確保が難しくなっています
母校での式典に参加したカーター長官も「軍と社会の分離」を憂慮し、ROTC復活が周りの学生の意識に働きかける効果を期待する旨の発言をしています。
他のアイビーリーグや一流大学の動向は承知していませんが、ハーバードでの復活の影響は大きい様ですし、大いに期待したいと思います
式典でカーター国防長官は
●国家として非常に重要な制度が戻ってきた。新たに士官となった18名(海軍10名、空軍8名)は、長い間に固定化されつつあった分断に橋を架ける役割を支援してくれる
●大学の同級生に潜水艦の原子力推進装置に携わる者が居いたり、同じ化学を専攻した同窓生に救難救助部隊員がいれば、又はプログラムの学生のクラスメイトがサイ
バー安全保障に関わっていることは、他の同級生や同窓生の考え方に新たなものをもたらすだろう
●米国が直面している課題を大きく捕らえれば5つである。ロシアの攻勢的姿勢、アジア太平洋の歴史的変化、北朝鮮による核の恫喝、イランによる侵攻、テロやISIL撲滅である
●複雑で変化し続ける世界に対応してくれる決意をしてくれた君たちに、米国はプロ意識、革新を追求する意識、リーダーシップを期待する
2010年9月にゲーツ国防長官(当時)は本件について
●米軍は、徴兵制により冷戦時には世界最大規模となっていた。そしてこの規模拡大により、当時は多くの有望な若者が軍務の経験をした。
●例えば、1957年にはプリンストン大出身者が4万人軍務に付いており、ハーバード大にも700人規模のROTC制度が設けられていた。そして彼らは軍務を追えた後社会の中心的役割を果たし、議会や民間企業や地域社会から軍を支えた。
●このため、冷戦終了時で全米の学生の約4割が両親や身近な親戚に軍務経験者を有していたが、現在ではその比率は18%に低下、近い将来1割以下になるのは確実である。
志願者の地域的偏りが・・・
●一般的に言えば、米国の北西部、西海岸や大都市近郊は志願者が減少している。これら地域で大きな基地の閉鎖再編が進んでいることも一因であるが、同時に軍務のような国家の仕事が他人事にと考えられる風潮が背景にある。
●ROTC制度を受け入れている大学の数からもこの傾向が見て取れる。人口が5百万人以下のアラバマ州で10個の大学が同制度を設けているのに対し、人口1200万人以上のロス周辺では4大学、シカゴ近郊の人口9百万エリアで僅か3大学である。
●アイビーリーグと呼ばれる入学に高い学力を要求される大学は、このDuke大学を除き、ベトナム戦争時にROTC制度の廃止を決め、同性愛者への「問わない、言わない」方針を理由として現在もROTC制度を拒んでいる。
なおこのゲーツ講演(Duke大学ROTC学生対象)はリーダーとしてのあり方を語った印象深い講演です
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02
例えば・・・
●「高い適応性こそが、君たちのような若い士官候補生が軍に持ち込むことを期待される特性である。私はペンタゴンでこんな風に言って制服高級幹部をたしなめている。陸軍は未だにフルダ・ギャップでの戦いを望んでいるのか? 海軍はまだミッドウェー海戦を夢見ているのか? 海兵隊は仁川上陸作戦をもう一度が合い言葉なのか? 空軍は単に飛んでいたいのか?(Air Force just wants to keep flying?)」
●「私は君達に、常識的に上品で礼儀正しく(decency)、かつ部下に対しての敬意(respect)を持つ意識を持って組織をリードしてほしいと考えている。これらは単純で基本的なことであるが、しばしば忘れられており、私はペンタゴンで会う新しい将軍や上級スタッフにいつも言い聞かせている。」
●「上司や同僚の中で、君たち一人だけが真に正しいと思うことを主張し続けることは大変なことだ。しかしそれが、単に人気のある前例があるやりやすいではなく、真に正しいならばその方向を追求しなければならない」
ロバート・ゲーツ語録100選
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19
2010年9月のゲーツ長官Duke大学講演(2分割)
「リーダー像」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02
「軍と社会の乖離」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-10
米国防長官が第2のDIUx設置を発表 [カーター国防長官]
11日、カーター国防長官がシリコンバレー近郊で講演し、民間企業の先進技術を迅速に取り込む「出先機関&出張所」の役割を果たすDIUx(実験的な国防革新事務所)を、昨年開設したシリコンバレーに続き、ボストンにも設置すると発表しました
また、DIUxを国防省の官僚機構を経ず、国防長官直轄にしての迅速な先端技術導入を促進すると決断し、関連人事配置にかなり大胆な采配を振るっています。
まんぐーすから見ると、国防省官僚の闇と改革派カーター長官の対決構図ですが、来年1月には新政権誕生で切える運命にあるカーター長官の頑張りを応援します
11日付米国防省web記事によれば
●新たなDIUx(Defense Innovation Unit Experimental)の中核に指名されたRaj Shah氏は、イラクとイランの国境付近を現役時に任務飛行した当時を振り返り、「F-16にはGPSが装備されていたが、地図上に国境を示してくれる装置はなかった。夜間に高速で国境付近を飛行する操縦者にとって、どの位置を飛行しているのかは極めて重要な情報にもかかわらずだ」と述べ、
●「F-16が装備していない一方で、民間のセスナ操縦者はiPADにアプリをダウンロードして簡単に利用しているのに・・・」と問題点を例示して語った
●そしてShah氏は、「このような民間技術を国防省内に導入する場合、前線に配備するまでに何年もかけ、多額の費用が必要となることが常であった」と述べ、このような課題を解決したいと意気込みを語った
●カーター国防長官は、新たな前線の要望と新たな技術を結び付け、具体化するのは人であり、それなくして技術は意味を持たないと述べ、人材の交流にも投資すると説明した
カーター長官は民間能力活用の意義を語り
●国防省と民間の技術開発現場の双方から人材交流を行う考えを示し、新たな「Defense Digital Service」では、民間技術者を1~2年間国防省で一つのプロジェクトで勤務してもらい、国防省での大きな取り組みを体験してもらって長期にわたる関係を築くことにつなげたい
●既に彼らは退役軍人省と国防省のデータ共有を支援してくれ、次世代GPSの保全強化に関与してくれているチームもある
●また、性的襲撃(sexual assaults)の追跡システムの改善に当たってくれているグループは、国防省約300万人の出張事務を円滑にするため、民間クラウド技術の大規模導入に今月末から取り組んでくれる
●一般のハッカーに国防省システムの脆弱箇所を指摘してもらう試み「Hack the Pentagon」計画では、既に80個もの「バグ」が発見され、システム強化に生かすことが可能になっている
●今回、2つ目のDIUxを設置することになっているが、昨年DIUxを創設以来、その有効性がより明確になった。米国内には最新技術をリードする地域が多数あり、2つ目のDIUxを開設することとした
●これら施策のための予算として、来年度予算に約33億円を要求している。その中には、これまで国防省事業とは関係の薄かった企業の技術を生かすための予算も含まれている。この規模の予算は出発点に過ぎないが。
●DIUxは国防長官に直接報告する仕組みにしている。迅速な意思決定を重視することから、この任務に私が直接当たることにした
しかし11日付Defense-News記事は・・・
今回カーター長官が発表した「DIUx 2.0.」と呼ばれるDIUx強化推進策は、同施策に冷淡で動きの鈍いペンタゴン官僚組織を切り離し、DIUxから直接国防長官に報告させる機構に再編成するものだと紹介し、カーター長官の「苛立ち」が伺える発言を取り上げています
●「国防省を強制的に先端技術企業と仕事させることにより、国防省自身の姿を鏡に映して見せる事が出来ると信じているし、組織の健康を保つために必要なことだ」
●「この試みは国防省に成功の道を示してくれるだけでなく、近道を教えてくれる。先端技術企業と如何に付き合っていくかとの視点と、最先端技術を国防省に迅速に取り込むという視点においてである」
●「シリコンバレーのやり方と技術を直接導入するためのDIUxだが、経験を基礎にこれを更に改善し、世界の情勢により機敏になるためDIUx 2.0.を開始する」
●「DIUxに命じ、国防省内にある迅速調達専門部署や研究開発部門との連携強化を図る」、「DIUxは迅速性が鍵となる調達執行を行わせ、企業ビジネスのスピードで仕事をさせる」
また現在のDIUx責任者を更迭し・・・
●DIUx運用組織を改め、現責任者を交代(更迭)させて「partnership-style leadership構造」を採ると説明し、国防長官室に属し、最近まで企業の戦略分野を率いていた予備役F-16操縦者Raj Shah氏を「DIUXのmanaging partner」に就任させると発表
●また指導的役割を果たす3名を紹介
退役軍人でソフト会社創設者
NSCや統合参謀本部議長の元補佐官
Google Xの元執行役員
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米国防省webサイトの記事と、Defense-News記事の温度差を強烈に感じます。
来年1月に新政権が誕生するまでにDIUxを軌道に乗せよう、官僚制の弊害から隔離しよう、成果を確実なものにしよう・・・とのカーター長官の強い思いが伝わってきます。
と同時に、カーター長官の発言を素直に報じない米国防省公式webサイトの「思惑」を図りかねます・・・。報道機関を前にした発言なのに・・・。
Raj Shah氏を中心とする、複数の指導層の役割は細部不明ですし、予備役で構成されるDIUxの創設とDoug Beck氏(退役軍人でAppleの北東アジア担当副社長)のリーダー就任も発表されましたが、これの役割も説明がなかったようです。しかし急速に陣容を強化している様子が窺えます
議会からは、カーター長官が主導する先端技術迅速導入のための取り組みの有効性と要求予算額について疑問の声(33億円以外の、精子や卵子の冷凍保存などを含む人的支援施策予算全体への疑問)も上がっていますし、今後の予算審議で精査される可能性もあります
またCNASのレポートが指摘するように、ペンタゴンの官僚機構が、トップダウンの改革に追随できていない状況も聞こえてきます。
更には、大統領選挙を経て来年誕生する新政権の国防長官が、これら取り組みをどのように扱うかも「不透明感」に包まれています
でも・・・そんなことは最初から十分理解しつつ、昨年から全力で関連改革に取り組むカーター長官とWork副長官に対し、東京の郊外よりエールを送ります
技術優位確保の各種施策と課題
「CNASが課題を指摘」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-02
「繊維素材開発の官民連合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-05
「人材確保・育成策第1弾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19
「FlexTech Alliance創設」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-31
「サイバー戦略事前説明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-19
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
「スタンフォード講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
次期政権に技術革新をどう引き継ぐか?
「Work副長官が仕込みを語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
また、DIUxを国防省の官僚機構を経ず、国防長官直轄にしての迅速な先端技術導入を促進すると決断し、関連人事配置にかなり大胆な采配を振るっています。
まんぐーすから見ると、国防省官僚の闇と改革派カーター長官の対決構図ですが、来年1月には新政権誕生で切える運命にあるカーター長官の頑張りを応援します
11日付米国防省web記事によれば
●新たなDIUx(Defense Innovation Unit Experimental)の中核に指名されたRaj Shah氏は、イラクとイランの国境付近を現役時に任務飛行した当時を振り返り、「F-16にはGPSが装備されていたが、地図上に国境を示してくれる装置はなかった。夜間に高速で国境付近を飛行する操縦者にとって、どの位置を飛行しているのかは極めて重要な情報にもかかわらずだ」と述べ、
●「F-16が装備していない一方で、民間のセスナ操縦者はiPADにアプリをダウンロードして簡単に利用しているのに・・・」と問題点を例示して語った
●そしてShah氏は、「このような民間技術を国防省内に導入する場合、前線に配備するまでに何年もかけ、多額の費用が必要となることが常であった」と述べ、このような課題を解決したいと意気込みを語った
●カーター国防長官は、新たな前線の要望と新たな技術を結び付け、具体化するのは人であり、それなくして技術は意味を持たないと述べ、人材の交流にも投資すると説明した
カーター長官は民間能力活用の意義を語り
●国防省と民間の技術開発現場の双方から人材交流を行う考えを示し、新たな「Defense Digital Service」では、民間技術者を1~2年間国防省で一つのプロジェクトで勤務してもらい、国防省での大きな取り組みを体験してもらって長期にわたる関係を築くことにつなげたい
●既に彼らは退役軍人省と国防省のデータ共有を支援してくれ、次世代GPSの保全強化に関与してくれているチームもある
●また、性的襲撃(sexual assaults)の追跡システムの改善に当たってくれているグループは、国防省約300万人の出張事務を円滑にするため、民間クラウド技術の大規模導入に今月末から取り組んでくれる
●一般のハッカーに国防省システムの脆弱箇所を指摘してもらう試み「Hack the Pentagon」計画では、既に80個もの「バグ」が発見され、システム強化に生かすことが可能になっている
●今回、2つ目のDIUxを設置することになっているが、昨年DIUxを創設以来、その有効性がより明確になった。米国内には最新技術をリードする地域が多数あり、2つ目のDIUxを開設することとした
●これら施策のための予算として、来年度予算に約33億円を要求している。その中には、これまで国防省事業とは関係の薄かった企業の技術を生かすための予算も含まれている。この規模の予算は出発点に過ぎないが。
●DIUxは国防長官に直接報告する仕組みにしている。迅速な意思決定を重視することから、この任務に私が直接当たることにした
しかし11日付Defense-News記事は・・・
今回カーター長官が発表した「DIUx 2.0.」と呼ばれるDIUx強化推進策は、同施策に冷淡で動きの鈍いペンタゴン官僚組織を切り離し、DIUxから直接国防長官に報告させる機構に再編成するものだと紹介し、カーター長官の「苛立ち」が伺える発言を取り上げています
●「国防省を強制的に先端技術企業と仕事させることにより、国防省自身の姿を鏡に映して見せる事が出来ると信じているし、組織の健康を保つために必要なことだ」
●「この試みは国防省に成功の道を示してくれるだけでなく、近道を教えてくれる。先端技術企業と如何に付き合っていくかとの視点と、最先端技術を国防省に迅速に取り込むという視点においてである」
●「シリコンバレーのやり方と技術を直接導入するためのDIUxだが、経験を基礎にこれを更に改善し、世界の情勢により機敏になるためDIUx 2.0.を開始する」
●「DIUxに命じ、国防省内にある迅速調達専門部署や研究開発部門との連携強化を図る」、「DIUxは迅速性が鍵となる調達執行を行わせ、企業ビジネスのスピードで仕事をさせる」
また現在のDIUx責任者を更迭し・・・
●DIUx運用組織を改め、現責任者を交代(更迭)させて「partnership-style leadership構造」を採ると説明し、国防長官室に属し、最近まで企業の戦略分野を率いていた予備役F-16操縦者Raj Shah氏を「DIUXのmanaging partner」に就任させると発表
●また指導的役割を果たす3名を紹介
退役軍人でソフト会社創設者
NSCや統合参謀本部議長の元補佐官
Google Xの元執行役員
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米国防省webサイトの記事と、Defense-News記事の温度差を強烈に感じます。
来年1月に新政権が誕生するまでにDIUxを軌道に乗せよう、官僚制の弊害から隔離しよう、成果を確実なものにしよう・・・とのカーター長官の強い思いが伝わってきます。
と同時に、カーター長官の発言を素直に報じない米国防省公式webサイトの「思惑」を図りかねます・・・。報道機関を前にした発言なのに・・・。
Raj Shah氏を中心とする、複数の指導層の役割は細部不明ですし、予備役で構成されるDIUxの創設とDoug Beck氏(退役軍人でAppleの北東アジア担当副社長)のリーダー就任も発表されましたが、これの役割も説明がなかったようです。しかし急速に陣容を強化している様子が窺えます
議会からは、カーター長官が主導する先端技術迅速導入のための取り組みの有効性と要求予算額について疑問の声(33億円以外の、精子や卵子の冷凍保存などを含む人的支援施策予算全体への疑問)も上がっていますし、今後の予算審議で精査される可能性もあります
またCNASのレポートが指摘するように、ペンタゴンの官僚機構が、トップダウンの改革に追随できていない状況も聞こえてきます。
更には、大統領選挙を経て来年誕生する新政権の国防長官が、これら取り組みをどのように扱うかも「不透明感」に包まれています
でも・・・そんなことは最初から十分理解しつつ、昨年から全力で関連改革に取り組むカーター長官とWork副長官に対し、東京の郊外よりエールを送ります
技術優位確保の各種施策と課題
「CNASが課題を指摘」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-02
「繊維素材開発の官民連合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-05
「人材確保・育成策第1弾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19
「FlexTech Alliance創設」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-31
「サイバー戦略事前説明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-19
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
「スタンフォード講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
次期政権に技術革新をどう引き継ぐか?
「Work副長官が仕込みを語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04