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米国防長官が第2のDIUx設置を発表 [カーター国防長官]

DIUx-6.jpg11日、カーター国防長官がシリコンバレー近郊で講演し、民間企業の先進技術を迅速に取り込む「出先機関&出張所」の役割を果たすDIUx(実験的な国防革新事務所)を、昨年開設したシリコンバレーに続き、ボストンにも設置すると発表しました

また、DIUxを国防省の官僚機構を経ず、国防長官直轄にしての迅速な先端技術導入を促進すると決断し、関連人事配置にかなり大胆な采配を振るっています。
まんぐーすから見ると、国防省官僚の闇と改革派カーター長官の対決構図ですが、来年1月には新政権誕生で切える運命にあるカーター長官の頑張りを応援します

11日付米国防省web記事によれば
Raj Shah.jpg新たなDIUx(Defense Innovation Unit Experimental)の中核に指名されたRaj Shah氏は、イラクとイランの国境付近を現役時に任務飛行した当時を振り返り、「F-16にはGPSが装備されていたが、地図上に国境を示してくれる装置はなかった。夜間に高速で国境付近を飛行する操縦者にとって、どの位置を飛行しているのかは極めて重要な情報にもかかわらずだ」と述べ、
●「F-16が装備していない一方で、民間のセスナ操縦者はiPADにアプリをダウンロードして簡単に利用しているのに・・・」と問題点を例示して語った

●そしてShah氏は、「このような民間技術を国防省内に導入する場合、前線に配備するまでに何年もかけ、多額の費用が必要となることが常であった」と述べ、このような課題を解決したいと意気込みを語った
カーター国防長官は、新たな前線の要望と新たな技術を結び付け、具体化するのは人であり、それなくして技術は意味を持たないと述べ、人材の交流にも投資すると説明した

カーター長官は民間能力活用の意義を語り
DIUx.jpg国防省と民間の技術開発現場の双方から人材交流を行う考えを示し、新たな「Defense Digital Service」では、民間技術者を1~2年間国防省で一つのプロジェクトで勤務してもらい、国防省での大きな取り組みを体験してもらって長期にわたる関係を築くことにつなげたい
●既に彼らは退役軍人省と国防省のデータ共有を支援してくれ、次世代GPSの保全強化に関与してくれているチームもある

●また、性的襲撃(sexual assaults)の追跡システムの改善に当たってくれているグループは、国防省約300万人の出張事務を円滑にするため、民間クラウド技術の大規模導入に今月末から取り組んでくれる
●一般のハッカーに国防省システムの脆弱箇所を指摘してもらう試み「Hack the Pentagon」計画では、既に80個もの「バグ」が発見され、システム強化に生かすことが可能になっている

●今回、2つ目のDIUxを設置することになっているが、昨年DIUxを創設以来、その有効性がより明確になった。米国内には最新技術をリードする地域が多数あり、2つ目のDIUxを開設することとした
●これら施策のための予算として、来年度予算に約33億円を要求している。その中には、これまで国防省事業とは関係の薄かった企業の技術を生かすための予算も含まれている。この規模の予算は出発点に過ぎないが
DIUxは国防長官に直接報告する仕組みにしている迅速な意思決定を重視することから、この任務に私が直接当たることにした

しかし11日付Defense-News記事は・・・
DIUx-5.jpg今回カーター長官が発表した「DIUx 2.0.」と呼ばれるDIUx強化推進策は、同施策に冷淡で動きの鈍いペンタゴン官僚組織を切り離し、DIUxから直接国防長官に報告させる機構に再編成するものだと紹介し、カーター長官の「苛立ち」が伺える発言を取り上げています

●「国防省を強制的に先端技術企業と仕事させることにより、国防省自身の姿を鏡に映して見せる事が出来ると信じているし、組織の健康を保つために必要なことだ」
●「この試みは国防省に成功の道を示してくれるだけでなく、近道を教えてくれる。先端技術企業と如何に付き合っていくかとの視点と、最先端技術を国防省に迅速に取り込むという視点においてである」

●「シリコンバレーのやり方と技術を直接導入するためのDIUxだが、経験を基礎にこれを更に改善し、世界の情勢により機敏になるためDIUx 2.0.を開始する
●「DIUxに命じ、国防省内にある迅速調達専門部署や研究開発部門との連携強化を図る」、「DIUxは迅速性が鍵となる調達執行を行わせ、企業ビジネスのスピードで仕事をさせる」

また現在のDIUx責任者を更迭し・・
DIUx-3.jpg●DIUx運用組織を改め、現責任者を交代(更迭)させて「partnership-style leadership構造」を採ると説明し、国防長官室に属し、最近まで企業の戦略分野を率いていた予備役F-16操縦者Raj Shah氏を「DIUXのmanaging partner」に就任させると発表
また指導的役割を果たす3名を紹介
退役軍人でソフト会社創設者
NSCや統合参謀本部議長の元補佐官
Google Xの元執行役員
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米国防省webサイトの記事と、Defense-News記事の温度差を強烈に感じます

来年1月に新政権が誕生するまでにDIUxを軌道に乗せよう、官僚制の弊害から隔離しよう、成果を確実なものにしよう・・・とのカーター長官の強い思いが伝わってきます。
と同時に、カーター長官の発言を素直に報じない米国防省公式webサイトの「思惑」を図りかねます・・・。報道機関を前にした発言なのに・・・。

DIUx-4.jpgRaj Shah氏を中心とする、複数の指導層の役割は細部不明ですし、予備役で構成されるDIUxの創設とDoug Beck氏(退役軍人でAppleの北東アジア担当副社長)のリーダー就任も発表されましたが、これの役割も説明がなかったようです。しかし急速に陣容を強化している様子が窺えます

議会からは、カーター長官が主導する先端技術迅速導入のための取り組みの有効性と要求予算額について疑問の声(33億円以外の、精子や卵子の冷凍保存などを含む人的支援施策予算全体への疑問)も上がっていますし、今後の予算審議で精査される可能性もあります

またCNASのレポートが指摘するように、ペンタゴンの官僚機構が、トップダウンの改革に追随できていない状況も聞こえてきます。
更には、大統領選挙を経て来年誕生する新政権の国防長官が、これら取り組みをどのように扱うかも「不透明感」に包まれています

でも・・・そんなことは最初から十分理解しつつ、昨年から全力で関連改革に取り組むカーター長官とWork副長官に対し、東京の郊外よりエールを送ります

技術優位確保の各種施策と課題
「CNASが課題を指摘」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-02
「繊維素材開発の官民連合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-05
「人材確保・育成策第1弾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19
「FlexTech Alliance創設」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-31

「サイバー戦略事前説明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-19
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
「スタンフォード講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25

次期政権に技術革新をどう引き継ぐか?
「Work副長官が仕込みを語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04

タグ:DIUx Raj Shah
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