米空軍改革発表受け太平洋空軍演習強化のお話 [米空軍]
2024年10月以降の実戦的な連続大規模演習へ
新太平洋空軍司令官や同参謀長が語る
空自の宇宙作戦群司令:杉山1空佐もご登壇!
2月14日、コロラド州で開催のAFA Warfare Symposiumで新任の太平洋空軍司令官Kevin B. Schneider大将(元在日米軍司令官&第5空軍司令官)と同軍参謀長David Berkland大佐が、12日に同イベントでKendall空軍長官とAllvin空軍参謀総長が発表した米空軍改革アクション項目の目玉の一つ「戦闘・空輸・CSコマンドの実戦能力強化のため、(対中国の)冷戦期仕様の大規模演習実施」について早速発言し、その検討の方向性を語っていますのでご紹介します
12日にAllvin空軍参謀総長は「我々は2025予算年度から、複数の戦闘コマンドの支援を受けた初の大規模演習実施を計画しており、インド太平洋戦域での実施を想定している」と明らかにしましたが、これを受けてSchneider新太平洋空軍司令官は、「米空軍省がその重要性を認識し、資源配分を含めて実現にコミットしてくれていることに力を得ている」、「この規模の演習実施には空軍省や米空軍全体のテコ入れが欠かせないからだ」と語り、
「米軍が直面する危機や緊急事態を考える時、インド太平洋軍や太平洋空軍への期待は巨大であり、他軍種や統合部隊からの要求も、人・物・能力全ての面で驚くほど大きい中、このような必ずしも安価に収まらない大演習を計画出来ることは抑止面でも大変重要だ」と責任の重さと新思考の大演習への期待をにじませています
また、同シンポジウムの太平洋地域の同盟国との連携強化を語る別イベントで、太平洋空軍参謀長David Berkland大佐は航空自衛隊の宇宙防衛群司令杉山キミトシ1空佐と共に登壇し、計画中の大規模空軍演習について以下のように語っています
●我々は、より実戦的でより複雑で、高い緊迫度を想定した演習の計画を開始しており、単一のイベント演習ではなく、年間を通じて数えきれないほどの訓練機会を設ける方向だ
●ハイエンド紛争を大前提に、従来より大規模で、より苛烈で、より効果的なものを想定しており、我々が高いレベルの即応態勢を確立&維持するにふさわしいものとなろう
●この大規模演習では、近年急激に強化されつつある複数の国との協力関係を、他国空軍部隊とのより長期間でより密度高い訓練を通じて深化することも大きな目的となる
ちなみに同参謀長と登壇した空自の宇宙作戦群司令・杉山1空佐(パイロットではない点に胸熱!)は
●「米空軍によるこの種の取り組みは、航空自衛隊にとっても極めて重要であり、我々を正しい方向に導いてくれるものだ」と語ったと報じられています
//////////////////////////////////////////
2月12日に打ち出された米空軍改革の24アクション項目には、兵器開発要求や資源配分など米空軍の将来に関する計画を、戦闘コマンドや輸送コマンド等から事実上取り上げ、新設の中将率いる「Integrated Capabilities Command」に権限を集中させる点などにおいて、「官僚組織抵抗」や「(目に見えない)組織内の流血事案」も予期されますが、
戦闘コマンドや輸送コマンドやGlobal Strike Commandの演習を強化して実戦的&大規模化し、部隊評価点検を強化する点において部隊は正面から取り組む以外に選択肢はなく、兵器開発や資源配分問題への口出し権利はく奪について文句を言う暇もない前向きな忙しさを与える副次的効果も期待されます
ところで、航空自衛隊幹部の本ブログ登場は、2023年7月26日付記事で空幕防衛部長の坂梨弘明空将補(パイロットでない防衛部長!)をご紹介して以来ですが、今日また偶然にも「パイロットでない」宇宙防衛群司令杉山キミトシ1空佐をご紹介することができてうれしいです。戦闘機の編隊飛行写真を公式webサイトやSNS上で拡散して広報活動して喜んでいる時代ではないですからねぇ・・・。高校生の募集活動は別として、実質的な戦力強化の面では・・・
米空軍の大改革アクション項目発表
「2月12日のKendall長官らによる発表」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/5579/
「米空軍総レビュー実施発表」→https://holylandtokyo.com/2023/09/07/5012/
空幕防衛部長の坂梨弘明空将補のご活躍
「日米宇宙部隊の本格協議SETスタート」→https://holylandtokyo.com/2023/07/26/4884/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
新太平洋空軍司令官や同参謀長が語る
空自の宇宙作戦群司令:杉山1空佐もご登壇!
2月14日、コロラド州で開催のAFA Warfare Symposiumで新任の太平洋空軍司令官Kevin B. Schneider大将(元在日米軍司令官&第5空軍司令官)と同軍参謀長David Berkland大佐が、12日に同イベントでKendall空軍長官とAllvin空軍参謀総長が発表した米空軍改革アクション項目の目玉の一つ「戦闘・空輸・CSコマンドの実戦能力強化のため、(対中国の)冷戦期仕様の大規模演習実施」について早速発言し、その検討の方向性を語っていますのでご紹介します
12日にAllvin空軍参謀総長は「我々は2025予算年度から、複数の戦闘コマンドの支援を受けた初の大規模演習実施を計画しており、インド太平洋戦域での実施を想定している」と明らかにしましたが、これを受けてSchneider新太平洋空軍司令官は、「米空軍省がその重要性を認識し、資源配分を含めて実現にコミットしてくれていることに力を得ている」、「この規模の演習実施には空軍省や米空軍全体のテコ入れが欠かせないからだ」と語り、
「米軍が直面する危機や緊急事態を考える時、インド太平洋軍や太平洋空軍への期待は巨大であり、他軍種や統合部隊からの要求も、人・物・能力全ての面で驚くほど大きい中、このような必ずしも安価に収まらない大演習を計画出来ることは抑止面でも大変重要だ」と責任の重さと新思考の大演習への期待をにじませています
また、同シンポジウムの太平洋地域の同盟国との連携強化を語る別イベントで、太平洋空軍参謀長David Berkland大佐は航空自衛隊の宇宙防衛群司令杉山キミトシ1空佐と共に登壇し、計画中の大規模空軍演習について以下のように語っています
●我々は、より実戦的でより複雑で、高い緊迫度を想定した演習の計画を開始しており、単一のイベント演習ではなく、年間を通じて数えきれないほどの訓練機会を設ける方向だ
●ハイエンド紛争を大前提に、従来より大規模で、より苛烈で、より効果的なものを想定しており、我々が高いレベルの即応態勢を確立&維持するにふさわしいものとなろう
●この大規模演習では、近年急激に強化されつつある複数の国との協力関係を、他国空軍部隊とのより長期間でより密度高い訓練を通じて深化することも大きな目的となる
ちなみに同参謀長と登壇した空自の宇宙作戦群司令・杉山1空佐(パイロットではない点に胸熱!)は
●「米空軍によるこの種の取り組みは、航空自衛隊にとっても極めて重要であり、我々を正しい方向に導いてくれるものだ」と語ったと報じられています
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2月12日に打ち出された米空軍改革の24アクション項目には、兵器開発要求や資源配分など米空軍の将来に関する計画を、戦闘コマンドや輸送コマンド等から事実上取り上げ、新設の中将率いる「Integrated Capabilities Command」に権限を集中させる点などにおいて、「官僚組織抵抗」や「(目に見えない)組織内の流血事案」も予期されますが、
戦闘コマンドや輸送コマンドやGlobal Strike Commandの演習を強化して実戦的&大規模化し、部隊評価点検を強化する点において部隊は正面から取り組む以外に選択肢はなく、兵器開発や資源配分問題への口出し権利はく奪について文句を言う暇もない前向きな忙しさを与える副次的効果も期待されます
ところで、航空自衛隊幹部の本ブログ登場は、2023年7月26日付記事で空幕防衛部長の坂梨弘明空将補(パイロットでない防衛部長!)をご紹介して以来ですが、今日また偶然にも「パイロットでない」宇宙防衛群司令杉山キミトシ1空佐をご紹介することができてうれしいです。戦闘機の編隊飛行写真を公式webサイトやSNS上で拡散して広報活動して喜んでいる時代ではないですからねぇ・・・。高校生の募集活動は別として、実質的な戦力強化の面では・・・
米空軍の大改革アクション項目発表
「2月12日のKendall長官らによる発表」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/5579/
「米空軍総レビュー実施発表」→https://holylandtokyo.com/2023/09/07/5012/
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防衛研究所の論考「安全保障としての半導体投資」 [安全保障全般]
半導体不足問題の概要を分かり易く包括的に
さすが「特別研究官」。肩ひじ張らず多忙な一般人向け
1月19日付で防衛省防衛研究所が「NIDSコメンタリー」の枠組みで、小野圭司・特別研究官による7ページの解説論考「安全保障としての半導体投資」を公開し、様々な要因で世界中で不足状態となっている「半導体」について、まんぐーすの勝手な解釈によると、「日本の半導体産業栄枯盛衰」「現代社会における半導体の重要性」「地政学リスク・生産拠点の偏り」「露のウクライナ侵略があぶりだしたもの」「製造装置の視点」「日本の現状や日本の利不利」の視点で解説されています
小野圭司・特別研究官による小論をご紹介するのは2回目で、2020年8月に今は存在しない防衛研究所の「ブリーフィングメモ」の枠組みで公開された 「サイバー傭兵の動向」(←https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/)を取り上げ、非常に多くのアクセスを頂きました。決して文章をこね回して偉そうに語るのではなく、日々の業務に忙殺されている若手自衛官や安全保障を志す若者や、一般社会を支える働き盛り世代が平易に理解できることを意識した「書きぶり」に「特別研究官」の人間性がにじみ出ているように思うのはまんぐーすだけでしょうか
前置きはこれくらいにして、半導体に関する幅広い話題や視点を概説した小野氏による「NIDSコメンタリー」を、まんぐーすの勝手な理解と再構成に基づき、項目建てや記載順序や表現ぶりを変更してご紹介いたします
「日本の半導体産業栄枯盛衰史」
●WW2時から米国がリードし、1960-70年代のアポロ計画で半導体技術を向上させた米国の技術覇権は揺ぎ無きものであったが、1980年代に入り日本が急速に追い上げ、1988年には半導体売上で世界上位3社を日本企業が独占し、10位以内に6社が占める勢いを見せた
●しかし、日本企業が総合電機メーカーの1分野として半導体事業を扱い、変化の激しいい急激な「シリコンサイクル」への対応の意思決定で後れを取り、更にプラザ合意を受けた急激な円高、日米貿易摩擦が生んだ日米半導体協定による米国製購入の強制、日本企業による米国企業買収の政治圧力阻止等で弱体化した日本企業は、「失われた30年」に突入して今日に至っている
「半導体の重要性と需給ひっ迫」
●センサー多用による半導体需要急増→普通自動車1台に500個→電気自動車は1500個に→更にAI自動運転車両となると3000個以上の半導体が必要に。ジェットエンジンや艦艇ガスタービンエンジン制御にも1基につき5000個など需要急増
●5Gやデータセンタ需要の拡大、コロナによる在宅勤務や巣ごもり需要によるPCなど情報家電の需要増、生成AIの開発に必要な画像処理半導体の需要急増、米中対立による中国製半導体の市場からの排除、日本の半導体工場の連続火災、米国半導体工場の停電事故による製造停止などの需給ひっ迫要因
「地政学リスク・生産拠点の偏り」
●今や最も軍事的緊張が高い朝鮮半島や台湾海峡に関連する台湾・韓国・中国が、世界の半導体の60%以上を製造しているという、いびつな生産拠点分布が抱える地政学リスク
●米国は、米国企業による半導体製造占有率は54%あるが、米国内製造はわずか11%で、非常時の半導体確保面で大きなリスクを抱えていると認識し、1980年代の日本企業たたきに見られた「半導体ナショナリズム」ではなく、米国企業でなくてもよいから米国内で製造してくれる企業を求める「半導体の地産地消」を追求しようとしている
●米国は台湾TSMC等に米本土での生産拠点設置を求めているが、台湾は「米軍向け半導体供給」との自国安全保障上の切り札として、簡単には米本土での工場建設を受け入れないだろう
●日本の千歳市に建設中の国家プロジェクト「ラビダス」工場建設も、5兆円以上の投資を計画しているが、日本企業や日本政府による4兆円以上だけでなく、台湾TSMCや米企業など外資系企業からも1兆円以上の投資を受け入れる形態をとっている
「露のウクライナ侵略があぶりだしたもの」
●ロシアは半導体の9割以上を海外に依存しており、露への半導体経済制裁は露の戦争継続能力を削ぐであろうと期待されたが、期待されたほどの成果は上がっていない
●露やウクライナが使用しているハイテク兵器でも、最先端のロジック半導体やメモリーを多数使用しているわけではなく、信号をデジタル変換するアナログ半導体や、電力制御用のパワー半導体が大半を占めている
●また露もウクライナも多数の無人機を投入しており、どんなに単純な小型無人機でも半導体は不可欠だが、これも最先端の半導体が使用されているわけではない
●西側による露への半導体輸出規制は半年で効力を失ったとされている。経済制裁に加わっていない中国香港、トルコ、UAE、カザフスタンなどを経由して、「半導体ロンダリング」されて西側から流出しているのが実態。
●家電製品もロシアに迂回輸出され、「ロシアは冷蔵庫や食洗器から半導体を取り出し、軍装備の修理に充当している」とEU委員長が指摘したケースもある
●半導体製造に重要な役割を果たす露光装置に必要な「ネオンガス」は、ウクライナが世界の供給量の7割を算出しており、価格が一時10倍に跳ね上がった。同じく露光工程に必要なパラジウムもロシアが世界生産の4割を占め価格が2倍に
「製造装置の視点」
●2022年10月にバイデン政権は、先端半導体やその製造装置・技術の中国向け輸出を事実上禁じ、半導体製造装置に強いオランダと日本にも同調を求めた
●ところが多く使用されているパワー半導体は先端品でない為、輸出規制対象外の装置で製造可能で、中国企業が内製化に取り組んでおり、中国の半導体製造大手SMICは輸出規制対象外の装置で先端半導体に当たる7ナノメートルの半導体製造に成功したとも報じられている
「日本の現状や日本にとっての利不利」
●ハイテク兵器でも使用され、需要が大きいパワー半導体は日本企業の得意分野でもあるが、次世代パワー半導体SiC(炭化ケイ素)パワー半導体では日本は劣勢である
●半導体製造装置では、日本が強みを発揮している部分もあるが、市場規模が大きい装置では、米国やオランダ企業が社の大半を抑えている
●半導体製造の全側面を押さえた「純国産」は現実的ではない。日本には強みを有する部分での競争力を維持・拡大して、他の機材・部材の交渉力に結び付ける努力が求められ、そのための人材育成は不可欠。バブル崩壊後のその場凌ぎの対応で、半導体人材や脳を流出させた愚は繰り返してはならない。
●日本は半導体製造に重要な水確保面で優位である。半導体の生産拠点である中国沿岸部・欧州のほぼ全域、米国・韓国の広い範囲で水資源が危機に直面しており、台湾も台湾島中南部では慢性的な水不足である。他方、日本については、概ね水資源のリスクは低い
●半導体製造に大量に必要な電力確保は日本にとってのアキレス腱。TSMC、サムスン電子、SK ハイニックスが消費する電力は、各社が台湾・韓国の総発電量の 5~6%に達する。韓国では政策的に電気料金が抑えられており、これは半導体産業にとっては「見えない補助金」に等しい
●日本では東日本大震災以降、火力発電比率が上昇し電気料金も上がっている。最近では、生成 AI利用が各方面で始まっているが、生成 AI は開発&利用は相当量の電力が必要。日本でも国産生成 AI 開発が進められているが、これは半導体需要を促す一方で、電力消費面で半導体製造業と競合する。
●火力発電の比率を引き下げて、安価で安定した電力供給の体制を整備することは、エネルギー安全保 障や地球温暖化対策だけではなく、「戦略物資」としての半導体確保の上でも重要である。 特にコメントはありませんが、いつものように、まんぐーすによる「つまみ食い」記事ですので、ご興味のある方もない方も、ぜひ一度原文をご覧いただければ・・・と思います
7ページの論考現物
→ https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary293.pdf
小野圭司・特別研究官による解説論考
「サイバー傭兵の動向」→https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
さすが「特別研究官」。肩ひじ張らず多忙な一般人向け
1月19日付で防衛省防衛研究所が「NIDSコメンタリー」の枠組みで、小野圭司・特別研究官による7ページの解説論考「安全保障としての半導体投資」を公開し、様々な要因で世界中で不足状態となっている「半導体」について、まんぐーすの勝手な解釈によると、「日本の半導体産業栄枯盛衰」「現代社会における半導体の重要性」「地政学リスク・生産拠点の偏り」「露のウクライナ侵略があぶりだしたもの」「製造装置の視点」「日本の現状や日本の利不利」の視点で解説されています
小野圭司・特別研究官による小論をご紹介するのは2回目で、2020年8月に今は存在しない防衛研究所の「ブリーフィングメモ」の枠組みで公開された 「サイバー傭兵の動向」(←https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/)を取り上げ、非常に多くのアクセスを頂きました。決して文章をこね回して偉そうに語るのではなく、日々の業務に忙殺されている若手自衛官や安全保障を志す若者や、一般社会を支える働き盛り世代が平易に理解できることを意識した「書きぶり」に「特別研究官」の人間性がにじみ出ているように思うのはまんぐーすだけでしょうか
前置きはこれくらいにして、半導体に関する幅広い話題や視点を概説した小野氏による「NIDSコメンタリー」を、まんぐーすの勝手な理解と再構成に基づき、項目建てや記載順序や表現ぶりを変更してご紹介いたします
「日本の半導体産業栄枯盛衰史」
●WW2時から米国がリードし、1960-70年代のアポロ計画で半導体技術を向上させた米国の技術覇権は揺ぎ無きものであったが、1980年代に入り日本が急速に追い上げ、1988年には半導体売上で世界上位3社を日本企業が独占し、10位以内に6社が占める勢いを見せた
●しかし、日本企業が総合電機メーカーの1分野として半導体事業を扱い、変化の激しいい急激な「シリコンサイクル」への対応の意思決定で後れを取り、更にプラザ合意を受けた急激な円高、日米貿易摩擦が生んだ日米半導体協定による米国製購入の強制、日本企業による米国企業買収の政治圧力阻止等で弱体化した日本企業は、「失われた30年」に突入して今日に至っている
「半導体の重要性と需給ひっ迫」
●センサー多用による半導体需要急増→普通自動車1台に500個→電気自動車は1500個に→更にAI自動運転車両となると3000個以上の半導体が必要に。ジェットエンジンや艦艇ガスタービンエンジン制御にも1基につき5000個など需要急増
●5Gやデータセンタ需要の拡大、コロナによる在宅勤務や巣ごもり需要によるPCなど情報家電の需要増、生成AIの開発に必要な画像処理半導体の需要急増、米中対立による中国製半導体の市場からの排除、日本の半導体工場の連続火災、米国半導体工場の停電事故による製造停止などの需給ひっ迫要因
「地政学リスク・生産拠点の偏り」
●今や最も軍事的緊張が高い朝鮮半島や台湾海峡に関連する台湾・韓国・中国が、世界の半導体の60%以上を製造しているという、いびつな生産拠点分布が抱える地政学リスク
●米国は、米国企業による半導体製造占有率は54%あるが、米国内製造はわずか11%で、非常時の半導体確保面で大きなリスクを抱えていると認識し、1980年代の日本企業たたきに見られた「半導体ナショナリズム」ではなく、米国企業でなくてもよいから米国内で製造してくれる企業を求める「半導体の地産地消」を追求しようとしている
●米国は台湾TSMC等に米本土での生産拠点設置を求めているが、台湾は「米軍向け半導体供給」との自国安全保障上の切り札として、簡単には米本土での工場建設を受け入れないだろう
●日本の千歳市に建設中の国家プロジェクト「ラビダス」工場建設も、5兆円以上の投資を計画しているが、日本企業や日本政府による4兆円以上だけでなく、台湾TSMCや米企業など外資系企業からも1兆円以上の投資を受け入れる形態をとっている
「露のウクライナ侵略があぶりだしたもの」
●ロシアは半導体の9割以上を海外に依存しており、露への半導体経済制裁は露の戦争継続能力を削ぐであろうと期待されたが、期待されたほどの成果は上がっていない
●露やウクライナが使用しているハイテク兵器でも、最先端のロジック半導体やメモリーを多数使用しているわけではなく、信号をデジタル変換するアナログ半導体や、電力制御用のパワー半導体が大半を占めている
●また露もウクライナも多数の無人機を投入しており、どんなに単純な小型無人機でも半導体は不可欠だが、これも最先端の半導体が使用されているわけではない
●西側による露への半導体輸出規制は半年で効力を失ったとされている。経済制裁に加わっていない中国香港、トルコ、UAE、カザフスタンなどを経由して、「半導体ロンダリング」されて西側から流出しているのが実態。
●家電製品もロシアに迂回輸出され、「ロシアは冷蔵庫や食洗器から半導体を取り出し、軍装備の修理に充当している」とEU委員長が指摘したケースもある
●半導体製造に重要な役割を果たす露光装置に必要な「ネオンガス」は、ウクライナが世界の供給量の7割を算出しており、価格が一時10倍に跳ね上がった。同じく露光工程に必要なパラジウムもロシアが世界生産の4割を占め価格が2倍に
「製造装置の視点」
●2022年10月にバイデン政権は、先端半導体やその製造装置・技術の中国向け輸出を事実上禁じ、半導体製造装置に強いオランダと日本にも同調を求めた
●ところが多く使用されているパワー半導体は先端品でない為、輸出規制対象外の装置で製造可能で、中国企業が内製化に取り組んでおり、中国の半導体製造大手SMICは輸出規制対象外の装置で先端半導体に当たる7ナノメートルの半導体製造に成功したとも報じられている
「日本の現状や日本にとっての利不利」
●ハイテク兵器でも使用され、需要が大きいパワー半導体は日本企業の得意分野でもあるが、次世代パワー半導体SiC(炭化ケイ素)パワー半導体では日本は劣勢である
●半導体製造装置では、日本が強みを発揮している部分もあるが、市場規模が大きい装置では、米国やオランダ企業が社の大半を抑えている
●半導体製造の全側面を押さえた「純国産」は現実的ではない。日本には強みを有する部分での競争力を維持・拡大して、他の機材・部材の交渉力に結び付ける努力が求められ、そのための人材育成は不可欠。バブル崩壊後のその場凌ぎの対応で、半導体人材や脳を流出させた愚は繰り返してはならない。
●日本は半導体製造に重要な水確保面で優位である。半導体の生産拠点である中国沿岸部・欧州のほぼ全域、米国・韓国の広い範囲で水資源が危機に直面しており、台湾も台湾島中南部では慢性的な水不足である。他方、日本については、概ね水資源のリスクは低い
●半導体製造に大量に必要な電力確保は日本にとってのアキレス腱。TSMC、サムスン電子、SK ハイニックスが消費する電力は、各社が台湾・韓国の総発電量の 5~6%に達する。韓国では政策的に電気料金が抑えられており、これは半導体産業にとっては「見えない補助金」に等しい
●日本では東日本大震災以降、火力発電比率が上昇し電気料金も上がっている。最近では、生成 AI利用が各方面で始まっているが、生成 AI は開発&利用は相当量の電力が必要。日本でも国産生成 AI 開発が進められているが、これは半導体需要を促す一方で、電力消費面で半導体製造業と競合する。
●火力発電の比率を引き下げて、安価で安定した電力供給の体制を整備することは、エネルギー安全保 障や地球温暖化対策だけではなく、「戦略物資」としての半導体確保の上でも重要である。 特にコメントはありませんが、いつものように、まんぐーすによる「つまみ食い」記事ですので、ご興味のある方もない方も、ぜひ一度原文をご覧いただければ・・・と思います
7ページの論考現物
→ https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary293.pdf
小野圭司・特別研究官による解説論考
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あと36年、100歳まで頑張るB-52Jを語る [米空軍]
トラブル2-3個が常態の運用&訓練現状
過去10年間で稼働率が2割低下する中
最新機体が1962年製の同機を2060年まで活躍させるために
2月12日付Defense-Newsが、現在保有する76機の機体年齢が60歳を超えているB-52爆撃機部隊の現状と、延命&近代化改修の内容から課題までを紹介しながら、後輩であるB-1及びB-2爆撃機が2030年頃に引退後も、機体年齢が100歳となる2060年代まで、ステルス爆撃機B-21との2機種体制で頑張ることを求められているB-52に「寄り添うような」特集記事を掲載していますので、ご紹介したいと思います
記事は機体年齢が100歳になるまで特定機種が生き残ることの「すごさ」を説明するため、今から100年前の1924年当時の航空機を振り返り、「WW1時代の機体を改良した航空機の時代で、複葉機、操縦者の操作を直にワイヤーで操舵面に伝達、コックピットはまだ閉じた空間ではないBoeing P-26やCurtiss JN-3の時代」と紹介し、計774機が1954-62年まで製造され、その1割程度が「生き残っている」B-52の生命力を紹介しています
ただ一方でB-52生き残りの背景には、やはり「戦闘機が空軍の中心で、爆撃機への投資が2の次の時代背景」や、「べらぼうなコスト高騰や開発遅延で製造機数が100機削減されたB-2」や「低空高速侵入思想から冷戦後の時代に放置されたB-1」の影響を受け、「消去法」で生き残ってきた経緯があるとも記事は示唆しています
以下では同記事からつまみ食いピックアップで、「現在のB-52部隊運用の状況」、「エンジン換装など総額7兆円強の延命&近代化策」、「延命&近代化改修の懸念点」についてご紹介いたします
お馴染みのYouTube番組でも解説
現在のB-52部隊運用の状況
●60年前に製造された機体の部品確保は困難を極め、2012年に稼働率78%だったものが2022年には59%にまで低下し、今後向上する見込みはない。大きな機体は屋外駐機せざるを得ない場合が多く、中東の日差しや太平洋域の潮風や寒冷地の風雪が機体に与える影響は大きい
●Barksdale空軍基地のB-52部隊を取材した1月、とある約6時間の訓練飛行への搭乗機会を得たが、エンジンを駆動させ離陸予定時間を30分以上経過しても整備員は3つの故障と格闘していた。3つは電波高度計、Targetting POD、そしてデジタルMap上で作戦行動や航法をサポートするCONECT(Combat Network Communications Technology)で、機長判断で電波高度計とTargetting PODは故障のまま訓練を行うこととなった
●最後のCONECTは2010年代に導入された装備で、カラーデジタル地図画面上で兵器運用担当や電子戦担当が敵情を把握しながら機体システムを操作する重要なものだが、最終的に機長はCONECTなしで、バックアップのアナログ器材で代替して訓練に臨むことを選択した
●機長は、エンジンと油圧システムと機体そのものに問題があれば飛行を断念するが、それ以外であれば故障を抱えたまま飛行することはよくあることで、機長に判断は任されており、5名の搭乗員は与えられたアセットで任務遂行に全力を尽くすことに慣れていると語っている
エンジン換装など総額7兆円強の延命&近代化策
●100機以上調達する計画のB-21ステルス爆撃機と、現有76機のB-52で米軍の爆撃機需要にこたえるため、エンジン換装(Commercial Engine Replacement Program)、AESAレーダーへの換装、搭載アビオ換装、グラスコックピット化、長射程核搭載ミサイル(Long Range Standoff weapon)搭載改修、通信システム換装、車輪とブレーキ換装等々を、2028年に初号機テスト開始から2030年代にかけ実施し、「B-52J」を導入する
●特にエンジン換装は、商用機エンジンをベースとして部品調達が世界各地で容易なロールスロイス製F130導入により、燃費3割向上や信頼性&静粛性向上の他、機体寿命のある2060年までオーバーホール修理不要となることが期待されている
●レーダとアビオと通信とコックピット換装により、戦術航法、目標照準、自己防御能力の大幅改善と操作性の向上が期待でき、ステルス性がないB-52の本格紛争での任務遂行範囲を拡大することを目指している
延命&近代化改修の懸念点
●60年以上も使用してきた機体に改修を施すことのリスクは当然低くはなく、米空軍は事前にB-52の機体状況を調査した上で延命&近代化計画を推進しているが、2010年代に実施されたC-5輸送機のエンジン換装を伴う近代化改修では、実際の作業過程で次々と機体に想定外の「経年劣化や金属疲労」が見つかって改修経費が増大し、結局計画機数の半分の機体にしか改修を実施できなかった黒歴史もあり不安はぬぐえない
●また、これだけ盛りだくさんの改修を一度に行うスケジュール管理や導入装備間の干渉的なものなど、様々な不安を指摘する声は各所から上がっている。仮に改修スケジュールが遅延することになれば、既に維持が難しくなっているB-2やB-1に加え、B-52Hへの手当ても検討する必要があり、非常にリスクの高い綱渡りとの指摘もある
////////////////////////////////////////
現在運用中の最も新しい機体が1962年製とのことで、同世代のまんぐーすにとっては何とも感傷的な気分にさせてくれるB-52と「B-52J」プロジェクトです
グラスコックピット化されたB-52J型の雄姿を、ぜひこの目で確認したいものです・・・
B-52関連の記事
「B-52Jへの熱い取り組み」→https://holylandtokyo.com/2023/10/19/5134/
「インドネシアにも2機展開」→https://holylandtokyo.com/2023/06/23/4785/
「極超音速兵器ARRW導入を断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「B-21導入による米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/
「重力投下核爆弾の任務除外」→https://holylandtokyo.com/2020/01/29/877/
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過去10年間で稼働率が2割低下する中
最新機体が1962年製の同機を2060年まで活躍させるために
2月12日付Defense-Newsが、現在保有する76機の機体年齢が60歳を超えているB-52爆撃機部隊の現状と、延命&近代化改修の内容から課題までを紹介しながら、後輩であるB-1及びB-2爆撃機が2030年頃に引退後も、機体年齢が100歳となる2060年代まで、ステルス爆撃機B-21との2機種体制で頑張ることを求められているB-52に「寄り添うような」特集記事を掲載していますので、ご紹介したいと思います
記事は機体年齢が100歳になるまで特定機種が生き残ることの「すごさ」を説明するため、今から100年前の1924年当時の航空機を振り返り、「WW1時代の機体を改良した航空機の時代で、複葉機、操縦者の操作を直にワイヤーで操舵面に伝達、コックピットはまだ閉じた空間ではないBoeing P-26やCurtiss JN-3の時代」と紹介し、計774機が1954-62年まで製造され、その1割程度が「生き残っている」B-52の生命力を紹介しています
ただ一方でB-52生き残りの背景には、やはり「戦闘機が空軍の中心で、爆撃機への投資が2の次の時代背景」や、「べらぼうなコスト高騰や開発遅延で製造機数が100機削減されたB-2」や「低空高速侵入思想から冷戦後の時代に放置されたB-1」の影響を受け、「消去法」で生き残ってきた経緯があるとも記事は示唆しています
以下では同記事からつまみ食いピックアップで、「現在のB-52部隊運用の状況」、「エンジン換装など総額7兆円強の延命&近代化策」、「延命&近代化改修の懸念点」についてご紹介いたします
お馴染みのYouTube番組でも解説
現在のB-52部隊運用の状況
●60年前に製造された機体の部品確保は困難を極め、2012年に稼働率78%だったものが2022年には59%にまで低下し、今後向上する見込みはない。大きな機体は屋外駐機せざるを得ない場合が多く、中東の日差しや太平洋域の潮風や寒冷地の風雪が機体に与える影響は大きい
●Barksdale空軍基地のB-52部隊を取材した1月、とある約6時間の訓練飛行への搭乗機会を得たが、エンジンを駆動させ離陸予定時間を30分以上経過しても整備員は3つの故障と格闘していた。3つは電波高度計、Targetting POD、そしてデジタルMap上で作戦行動や航法をサポートするCONECT(Combat Network Communications Technology)で、機長判断で電波高度計とTargetting PODは故障のまま訓練を行うこととなった
●最後のCONECTは2010年代に導入された装備で、カラーデジタル地図画面上で兵器運用担当や電子戦担当が敵情を把握しながら機体システムを操作する重要なものだが、最終的に機長はCONECTなしで、バックアップのアナログ器材で代替して訓練に臨むことを選択した
●機長は、エンジンと油圧システムと機体そのものに問題があれば飛行を断念するが、それ以外であれば故障を抱えたまま飛行することはよくあることで、機長に判断は任されており、5名の搭乗員は与えられたアセットで任務遂行に全力を尽くすことに慣れていると語っている
エンジン換装など総額7兆円強の延命&近代化策
●100機以上調達する計画のB-21ステルス爆撃機と、現有76機のB-52で米軍の爆撃機需要にこたえるため、エンジン換装(Commercial Engine Replacement Program)、AESAレーダーへの換装、搭載アビオ換装、グラスコックピット化、長射程核搭載ミサイル(Long Range Standoff weapon)搭載改修、通信システム換装、車輪とブレーキ換装等々を、2028年に初号機テスト開始から2030年代にかけ実施し、「B-52J」を導入する
●特にエンジン換装は、商用機エンジンをベースとして部品調達が世界各地で容易なロールスロイス製F130導入により、燃費3割向上や信頼性&静粛性向上の他、機体寿命のある2060年までオーバーホール修理不要となることが期待されている
●レーダとアビオと通信とコックピット換装により、戦術航法、目標照準、自己防御能力の大幅改善と操作性の向上が期待でき、ステルス性がないB-52の本格紛争での任務遂行範囲を拡大することを目指している
延命&近代化改修の懸念点
●60年以上も使用してきた機体に改修を施すことのリスクは当然低くはなく、米空軍は事前にB-52の機体状況を調査した上で延命&近代化計画を推進しているが、2010年代に実施されたC-5輸送機のエンジン換装を伴う近代化改修では、実際の作業過程で次々と機体に想定外の「経年劣化や金属疲労」が見つかって改修経費が増大し、結局計画機数の半分の機体にしか改修を実施できなかった黒歴史もあり不安はぬぐえない
●また、これだけ盛りだくさんの改修を一度に行うスケジュール管理や導入装備間の干渉的なものなど、様々な不安を指摘する声は各所から上がっている。仮に改修スケジュールが遅延することになれば、既に維持が難しくなっているB-2やB-1に加え、B-52Hへの手当ても検討する必要があり、非常にリスクの高い綱渡りとの指摘もある
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米宇宙軍による妨害に強いGPS衛星への取組 [サイバーと宇宙]
現在の状況や今後の取り組みを概観
いろんな用語に親しみましょう!
2月5日に米宇宙軍が関連企業に対し、GPS衛星の妨害対処能力向上や強靭性向上や能力早期配備やライフサイクルコスト削減を狙い、新興企業も含む多様なソースからの実験&デモ衛星のアイディア募集通知を発出したことを契機に、現在宇宙軍が保有するGPS衛星の状況や近未来の計画を概観し、更に5日に発出された提案募集の狙いを確認することで、まんぐーすが「特に疎い」宇宙分野への理解を深める一助としたいと思います。
現在の宇宙軍GPS衛星の状況と近未来構想
●現在宇宙軍は、新旧入り乱れる形で31機のGPS衛星を配備しており、最新型の「GPSⅢ」衛星は、従来型の約3倍の正確性とより優れた対妨害能力を備えており、加えて軍事ユーザー用により正確で安全(secure)な「M-code」信号を提供可能な能力を備えている
●また宇宙軍は新たな衛星航法技術への取り組みとして、2024年末に米空軍研究所AFRLとL3Harris が協力し、技術実証試験衛星NTS-3(Navigation Technology Satellite-3)を打ち上げ予定で、デジタル信号により軌道上衛星のプログラムを変更更新する技術など、100個以上の試験を同衛星で行う計画である
●更に宇宙軍はロッキード社と組み、「GPSⅢ」を基礎として正確性や妨害対処能力を向上させた「GPS IIIF」を現在開発しており、2027年からの打ち上げを予定している。なお「GPS IIIF」には、アップグレードされた核探知爆発システム(nuclear detection detonation system)と捜索救助ペイロードも搭載される予定
●宇宙軍の商用技術導入専門部署(Commercial Space Office)は、革新技術導入を専門とするSpaceWERXチームと協力し、従来の軍需産業とは異なる技術を有する新興企業に「seed funding」を提供する試みを行っている
5日に発出された提案募集の狙いと方向性
●宇宙軍の開発&調達組織であるSpace Systems Command発出の提案要望は、まだ技術検討段階にある構想に関する情報収集目的で、明確にいつ頃具体的な打ち上げを目指すか等を示さない提案募集であるが、宇宙軍との契約から6か月以内の打ち上げが可能で、3-5年間の耐用年数を持つ低コストのデモ衛星に関する情報を求めるもの
●背景には、米国政府として衛星のライフサイクルコスト低減とGPS衛星開発&配備ペースを上げたいとの思惑があり、より複雑な能力を搭載する衛星ビジョンを煮詰める狙いでの情報収集である
●宇宙軍は、GPS信号受信が容易でない厳しい環境での運用を想定した、安価で製造容易な小型衛星など、現GPS衛星の代替システムを検討しており、提案を募集している実験&デモ衛星は、関連技術の実証や早期配備を助けることを期待されている
●また本検討では、伝統的な宇宙技術提供企業だけでなく、新興企業の開拓も狙っており、現有地上管制システムなど運用装備との相互運用性が高く、現装備の改修を最低限に抑えつつ、迅速な能力向上につながる技術導入を期待している
/////////////////////////////////////////
特に後半の「提案募集の狙いと方向性」部分は、美辞麗句が並ぶ軍事官僚的文書となってしまいましたが、ぼんやりとでも「低コストで良い物を迅速に導入したい。新たなベンダーも開拓したい」との思いをくみ取って頂ければ幸いです
GPS衛星の対妨害能力や信号の正確性安全性向上が、敵の妨害技術にどの程度効果が期待できるのか等、細部は知識不足で語れませんが、この分野に関する理解を深める導入説明となれば幸いです
GPS等の被害を前提に訓練せよ
「米空軍機がGPS代替の地磁気航法で」→https://holylandtokyo.com/2023/06/13/4731/
「米陸軍兵士がGPS無しの訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/
「なぜ露はウでGPS妨害しない?」→https://holylandtokyo.com/2022/07/26/3497/
「米海軍将軍:妨害対処を徹底」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-21
「空軍OBも被害対処重視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23-1
「被害状況下で訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-23
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2月5日に米宇宙軍が関連企業に対し、GPS衛星の妨害対処能力向上や強靭性向上や能力早期配備やライフサイクルコスト削減を狙い、新興企業も含む多様なソースからの実験&デモ衛星のアイディア募集通知を発出したことを契機に、現在宇宙軍が保有するGPS衛星の状況や近未来の計画を概観し、更に5日に発出された提案募集の狙いを確認することで、まんぐーすが「特に疎い」宇宙分野への理解を深める一助としたいと思います。
現在の宇宙軍GPS衛星の状況と近未来構想
●現在宇宙軍は、新旧入り乱れる形で31機のGPS衛星を配備しており、最新型の「GPSⅢ」衛星は、従来型の約3倍の正確性とより優れた対妨害能力を備えており、加えて軍事ユーザー用により正確で安全(secure)な「M-code」信号を提供可能な能力を備えている
●また宇宙軍は新たな衛星航法技術への取り組みとして、2024年末に米空軍研究所AFRLとL3Harris が協力し、技術実証試験衛星NTS-3(Navigation Technology Satellite-3)を打ち上げ予定で、デジタル信号により軌道上衛星のプログラムを変更更新する技術など、100個以上の試験を同衛星で行う計画である
●更に宇宙軍はロッキード社と組み、「GPSⅢ」を基礎として正確性や妨害対処能力を向上させた「GPS IIIF」を現在開発しており、2027年からの打ち上げを予定している。なお「GPS IIIF」には、アップグレードされた核探知爆発システム(nuclear detection detonation system)と捜索救助ペイロードも搭載される予定
●宇宙軍の商用技術導入専門部署(Commercial Space Office)は、革新技術導入を専門とするSpaceWERXチームと協力し、従来の軍需産業とは異なる技術を有する新興企業に「seed funding」を提供する試みを行っている
5日に発出された提案募集の狙いと方向性
●宇宙軍の開発&調達組織であるSpace Systems Command発出の提案要望は、まだ技術検討段階にある構想に関する情報収集目的で、明確にいつ頃具体的な打ち上げを目指すか等を示さない提案募集であるが、宇宙軍との契約から6か月以内の打ち上げが可能で、3-5年間の耐用年数を持つ低コストのデモ衛星に関する情報を求めるもの
●背景には、米国政府として衛星のライフサイクルコスト低減とGPS衛星開発&配備ペースを上げたいとの思惑があり、より複雑な能力を搭載する衛星ビジョンを煮詰める狙いでの情報収集である
●宇宙軍は、GPS信号受信が容易でない厳しい環境での運用を想定した、安価で製造容易な小型衛星など、現GPS衛星の代替システムを検討しており、提案を募集している実験&デモ衛星は、関連技術の実証や早期配備を助けることを期待されている
●また本検討では、伝統的な宇宙技術提供企業だけでなく、新興企業の開拓も狙っており、現有地上管制システムなど運用装備との相互運用性が高く、現装備の改修を最低限に抑えつつ、迅速な能力向上につながる技術導入を期待している
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特に後半の「提案募集の狙いと方向性」部分は、美辞麗句が並ぶ軍事官僚的文書となってしまいましたが、ぼんやりとでも「低コストで良い物を迅速に導入したい。新たなベンダーも開拓したい」との思いをくみ取って頂ければ幸いです
GPS衛星の対妨害能力や信号の正確性安全性向上が、敵の妨害技術にどの程度効果が期待できるのか等、細部は知識不足で語れませんが、この分野に関する理解を深める導入説明となれば幸いです
GPS等の被害を前提に訓練せよ
「米空軍機がGPS代替の地磁気航法で」→https://holylandtokyo.com/2023/06/13/4731/
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米陸軍迷走:3千億円投入済のヘリFARA開発中止 [Joint・統合参謀本部]
今年後半に候補2機種の攻撃&偵察ヘリ飛行評価予定も
もう有人機偵察中心の時代ではない・ウの教訓から
過去10年で最大の開発中止案件に
同時に旧式の現有無人機2機種2万機破棄、新型HH60Vも導入中止
UH-60s, AH-64エンジン更新も停止
現有Black Hawks M型とCH-47F Block II、FLRAAに集中
2月8日、米陸軍がなんと、過去約20年に渡り運用構想や要求性能を練り、2回にわたり企業提案募集やプロトタイプ製造に進みながら計画中断を繰り返し、2018年から3回目のトライとして3000億円を投入して2企業2機種のプロトタイプを製造して今年飛行評価テストを行う予定だった将来偵察攻撃ヘリFARA計画(Future Attack Reconnaissance Aircraft)を、ウクライナの教訓や無人機や宇宙アセットの偵察能力向上を背景に中止すると発表しました
また同時に米陸軍は、現有のUH60やCH47ヘリの能力向上機導入計画や、UH60やAH64アパッチヘリの能力向上エンジン導入計画の中止または停止、更に陳腐化から本格紛争用には不十分として現有の小型無人機ShadowやRavenを計2万機破棄するなど、無人機等の最新技術を生かしつつ、厳しい予算化で実現可能な能力向上策を追求すると明らかにしました
まんぐーすは米陸軍の決定を評価したいと思いますが、2022年12月に機種選定が難産の末に終了した2000機のUH60後継機で「米陸軍で過去40年間で最大のヘリ調達案件」「米陸軍航空部隊の歴史上、最も大規模で複雑な機種選定であった」と陸軍が表現したFLRAA(Future Long-Range Assault Aircraft)選定でも露呈した、「対中国等本格紛争での米陸軍の役割や任務の迷走」問題が再び顕在化したといって良いでしょう
以下では、FARA構想の過去約20年間のグダグダや今回の中止決定に関する米陸軍の説明等を、2月9日付Defense-Newsからご紹介いたします
FARA検討のグダグダ経緯
●ベトナム戦争時に偵察&攻撃任務になっていたOH-58 Kiowaが退役後、陸軍は任務の重要性を強調しつつもその後継機を決められず、性能的にはToo MuchなAH64アパッチに担わせてきた
●この状況を打開するため、21世紀に入って陸軍は「Comanche program」を立ち上げ、1兆円以上を投入して2企業に2つのプロトタイプ製造までさせたが、うまくいかず2004年に計画を中止。更に4年後の2008年にも仕切り直して進めた「Armed Reconnaissance Helicopter」計画を再び中止
●その後陸軍は、既存の商用ヘリから偵察任務ヘリ(commercial off-the-shelf aircraft)から選定することを試み、複数の提案機の飛行評価「fly-off」まで行ったが、最終的に2013年に所望の性能を持つ機体が見つからなかったとして計画をまたも中止
●2018年、陸軍は新設した将来検討専門組織「Army Futures Command」にFARA構想推進を託し、鳴り物入りで「高価装備品の新たな調達モデルの見本を示す」と豪語して2030年までに部隊導入すると宣言してプロジェクトを開始し、これまでに約3000億円を使用し、今後5年間で更に7400億円の予算計画を立て、今年2機種のプロトタイプ(Bell TextronとLockheed Martin Sikorsky)の飛行評価を予定していた
今回のFARA計画中止の理由
●FARA計画の責任者であるJames Rainey陸軍大将は、「この決定は失敗を意味するものではなく、ヘリ近代化計画のオーバーホールを通じて、より大きな進歩を目指すものだ」と語り、「ウクライナの教訓や、無人機や宇宙センサーの技術的成熟や急速な普及に伴い、高性能な装備が安価に導入可能となってきている事などを踏まえ、偵察攻撃任務を有人ヘリだけに頼るのではなく、有人機と無人アセットの融合をどうすべきか考えることが重要」だとFARA中止の背景に言及
●さらに踏み込んで同大将は、「ウクライナでの戦いの様相に米陸軍は影響を受けた。航空偵察は根本的に変化したのだ。無人機搭載のセンサーや兵器、そして軌道上の衛星は、より広範囲をカバーして活用が容易になり、かつてないほど急速にコストも低下している」とも表現
●そして3000億円を投入したFARA計画については、「これまでの成果を他のプログラムで利活用可能にするため、2024年度末までに開発技術等を取りまとめて終結させる」と説明
今後の米陸軍ヘリへの投資方向性
●FARA中止によりどの程度の資源が陸軍ヘリ全体や航空偵察任務に再投資可能かは判然としないが、米陸軍は高性能で残存性が高く、人命への懸念が少ない無人偵察機開発により大きな投資をし、2022年に契約した「Jump20 System」に加え、更に2023年9月には5社の候補提案から2社に絞り、現在は2025年度中に部隊配備開始ができるようにプロトタイプ製造段階にある
●垂直離着陸型の有人機開発がFLRAA1機種のみになった現状から、現有ヘリUH60やCH47への投資方向も大きく変更。UH60L型の後継として開発中のV型については、コストアップでL型更新に15年以上必要な見通しとなっているため、V型開発を中止し、現有で最新型のM型を継続製造してL型の後継とする
●FLRAAやFARA計画推進予算確保のため、2018年にCH-47F Block IIの正規部隊への導入を見送ったが、この決定を見直し正式に量産体制に入る
●また陸軍は、FARAやUH60やAH64用を想定した6種類の次世代エンジンを現在テスト中で、更に5月には追加で2つのエンジンがUH60での試験を予定しているが、既に数年の遅れが出ているこれらエンジンの本格調達は無期限延期する
●以前から性能の陳腐化等から本格紛争での能力発揮が疑問視されていた、約570機保有の小型無人機Shadowと約19000機保有のRavenについてはこれを全廃し、本格紛争を生き延びて任務遂行可能な高性能将来無人機FTUAS導入に注力する
///////////////////////////////////////////
2022年12月、FLRAA(Future Long-Range Assault Aircraft)をBell社のティルロータ型「V-280 Valor」に決定した後から、米陸軍は何度となく、議会やメディアや専門家から、FLRAAとFARAを同時推進は可能なのかと繰り返し問われ続け、そのたびに「可能か否かの問題ではなく、必要不可欠な避けられない調達案件だ」と浪花節説明してきたわけですが、ついにウクライナの現実や予算の現実を直視し、大幅方針転換に踏み切った模様です
これが世界の軍隊における、ウクライナ教訓を反映した各種方針や構想の大転換の「呼び水」になるような気がします。もちろん陸軍だけでなく、空軍戦闘機もそうだと思いますし、対中国最前線の自衛隊への風当たりもつようくなろうと予想いたします
40年間決められなかった米陸軍がやっと・・・
「Black Hawk 2000機の後継FLRAA選定」→https://holylandtokyo.com/2022/12/09/4043/
「陸軍UH-60後継の選定開始」→https://holylandtokyo.com/2021/07/16/2009/
「米陸軍ヘリは無人化でなく自動化推進!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-11
「UH-60後継を意識した候補機開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-06-16
対中国を想定した太平洋陸軍の演習
「対中国で分散作戦演習JPMRC」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
米陸軍ウクライナの教訓
「米陸軍は2024年に部隊の大幅削減含む改編不可避」→https://holylandtokyo.com/2024/01/04/5394/
「米陸軍が評価中の様々な教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/10/13/5129/
「22年6月:米陸軍首脳が教訓を」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
もう有人機偵察中心の時代ではない・ウの教訓から
過去10年で最大の開発中止案件に
同時に旧式の現有無人機2機種2万機破棄、新型HH60Vも導入中止
UH-60s, AH-64エンジン更新も停止
現有Black Hawks M型とCH-47F Block II、FLRAAに集中
2月8日、米陸軍がなんと、過去約20年に渡り運用構想や要求性能を練り、2回にわたり企業提案募集やプロトタイプ製造に進みながら計画中断を繰り返し、2018年から3回目のトライとして3000億円を投入して2企業2機種のプロトタイプを製造して今年飛行評価テストを行う予定だった将来偵察攻撃ヘリFARA計画(Future Attack Reconnaissance Aircraft)を、ウクライナの教訓や無人機や宇宙アセットの偵察能力向上を背景に中止すると発表しました
また同時に米陸軍は、現有のUH60やCH47ヘリの能力向上機導入計画や、UH60やAH64アパッチヘリの能力向上エンジン導入計画の中止または停止、更に陳腐化から本格紛争用には不十分として現有の小型無人機ShadowやRavenを計2万機破棄するなど、無人機等の最新技術を生かしつつ、厳しい予算化で実現可能な能力向上策を追求すると明らかにしました
まんぐーすは米陸軍の決定を評価したいと思いますが、2022年12月に機種選定が難産の末に終了した2000機のUH60後継機で「米陸軍で過去40年間で最大のヘリ調達案件」「米陸軍航空部隊の歴史上、最も大規模で複雑な機種選定であった」と陸軍が表現したFLRAA(Future Long-Range Assault Aircraft)選定でも露呈した、「対中国等本格紛争での米陸軍の役割や任務の迷走」問題が再び顕在化したといって良いでしょう
以下では、FARA構想の過去約20年間のグダグダや今回の中止決定に関する米陸軍の説明等を、2月9日付Defense-Newsからご紹介いたします
FARA検討のグダグダ経緯
●ベトナム戦争時に偵察&攻撃任務になっていたOH-58 Kiowaが退役後、陸軍は任務の重要性を強調しつつもその後継機を決められず、性能的にはToo MuchなAH64アパッチに担わせてきた
●この状況を打開するため、21世紀に入って陸軍は「Comanche program」を立ち上げ、1兆円以上を投入して2企業に2つのプロトタイプ製造までさせたが、うまくいかず2004年に計画を中止。更に4年後の2008年にも仕切り直して進めた「Armed Reconnaissance Helicopter」計画を再び中止
●その後陸軍は、既存の商用ヘリから偵察任務ヘリ(commercial off-the-shelf aircraft)から選定することを試み、複数の提案機の飛行評価「fly-off」まで行ったが、最終的に2013年に所望の性能を持つ機体が見つからなかったとして計画をまたも中止
●2018年、陸軍は新設した将来検討専門組織「Army Futures Command」にFARA構想推進を託し、鳴り物入りで「高価装備品の新たな調達モデルの見本を示す」と豪語して2030年までに部隊導入すると宣言してプロジェクトを開始し、これまでに約3000億円を使用し、今後5年間で更に7400億円の予算計画を立て、今年2機種のプロトタイプ(Bell TextronとLockheed Martin Sikorsky)の飛行評価を予定していた
今回のFARA計画中止の理由
●FARA計画の責任者であるJames Rainey陸軍大将は、「この決定は失敗を意味するものではなく、ヘリ近代化計画のオーバーホールを通じて、より大きな進歩を目指すものだ」と語り、「ウクライナの教訓や、無人機や宇宙センサーの技術的成熟や急速な普及に伴い、高性能な装備が安価に導入可能となってきている事などを踏まえ、偵察攻撃任務を有人ヘリだけに頼るのではなく、有人機と無人アセットの融合をどうすべきか考えることが重要」だとFARA中止の背景に言及
●さらに踏み込んで同大将は、「ウクライナでの戦いの様相に米陸軍は影響を受けた。航空偵察は根本的に変化したのだ。無人機搭載のセンサーや兵器、そして軌道上の衛星は、より広範囲をカバーして活用が容易になり、かつてないほど急速にコストも低下している」とも表現
●そして3000億円を投入したFARA計画については、「これまでの成果を他のプログラムで利活用可能にするため、2024年度末までに開発技術等を取りまとめて終結させる」と説明
今後の米陸軍ヘリへの投資方向性
●FARA中止によりどの程度の資源が陸軍ヘリ全体や航空偵察任務に再投資可能かは判然としないが、米陸軍は高性能で残存性が高く、人命への懸念が少ない無人偵察機開発により大きな投資をし、2022年に契約した「Jump20 System」に加え、更に2023年9月には5社の候補提案から2社に絞り、現在は2025年度中に部隊配備開始ができるようにプロトタイプ製造段階にある
●垂直離着陸型の有人機開発がFLRAA1機種のみになった現状から、現有ヘリUH60やCH47への投資方向も大きく変更。UH60L型の後継として開発中のV型については、コストアップでL型更新に15年以上必要な見通しとなっているため、V型開発を中止し、現有で最新型のM型を継続製造してL型の後継とする
●FLRAAやFARA計画推進予算確保のため、2018年にCH-47F Block IIの正規部隊への導入を見送ったが、この決定を見直し正式に量産体制に入る
●また陸軍は、FARAやUH60やAH64用を想定した6種類の次世代エンジンを現在テスト中で、更に5月には追加で2つのエンジンがUH60での試験を予定しているが、既に数年の遅れが出ているこれらエンジンの本格調達は無期限延期する
●以前から性能の陳腐化等から本格紛争での能力発揮が疑問視されていた、約570機保有の小型無人機Shadowと約19000機保有のRavenについてはこれを全廃し、本格紛争を生き延びて任務遂行可能な高性能将来無人機FTUAS導入に注力する
///////////////////////////////////////////
2022年12月、FLRAA(Future Long-Range Assault Aircraft)をBell社のティルロータ型「V-280 Valor」に決定した後から、米陸軍は何度となく、議会やメディアや専門家から、FLRAAとFARAを同時推進は可能なのかと繰り返し問われ続け、そのたびに「可能か否かの問題ではなく、必要不可欠な避けられない調達案件だ」と浪花節説明してきたわけですが、ついにウクライナの現実や予算の現実を直視し、大幅方針転換に踏み切った模様です
これが世界の軍隊における、ウクライナ教訓を反映した各種方針や構想の大転換の「呼び水」になるような気がします。もちろん陸軍だけでなく、空軍戦闘機もそうだと思いますし、対中国最前線の自衛隊への風当たりもつようくなろうと予想いたします
40年間決められなかった米陸軍がやっと・・・
「Black Hawk 2000機の後継FLRAA選定」→https://holylandtokyo.com/2022/12/09/4043/
「陸軍UH-60後継の選定開始」→https://holylandtokyo.com/2021/07/16/2009/
「米陸軍ヘリは無人化でなく自動化推進!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-11
「UH-60後継を意識した候補機開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-06-16
対中国を想定した太平洋陸軍の演習
「対中国で分散作戦演習JPMRC」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
米陸軍ウクライナの教訓
「米陸軍は2024年に部隊の大幅削減含む改編不可避」→https://holylandtokyo.com/2024/01/04/5394/
「米陸軍が評価中の様々な教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/10/13/5129/
「22年6月:米陸軍首脳が教訓を」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245
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辛口の国防省評価局が陸軍GPS改良品を高評価 [Joint・統合参謀本部]
GPS外情報と妨害下のGPS信号を融合して地上航法に
第1と第1.2世代を改良の第2世代DAPS GEN IIが高評価
先ず700台を米陸軍がTRX Systemsと21億円で契約済
2月7日付Defense-Newsは、米陸軍が妨害電波に脆弱なGPS地上航法装置の代替品(正確には改良&性能強化装置?)として、TRX Systems社(ACR Groupの配下企業)と検討してきた個人携帯型のDAPS(Dismounted Assured Positioning, Navigation and Timing System)に関し、辛口の厳しい評価で知られる米国防省のOT&E局(試験&評価局)が「最新GPS装置よりも優れ効果的だ」と今年1月の報告書で評価していると紹介しています
DAPSの細部仕組みや性能をまんぐーすは把握していませんが、2023年4月12日付Defense-Newsの関連記事は、米陸軍とTRX Systems社との第2世代DAPS GEN II製造契約発表(23年4月11日)に際し、「米陸軍のDAPS開発責任者Mike Trzeciak氏が『(敵の妨害下でも、)軍事GPS信号にアクセスを確保し、更に他の航法技術から得た時刻等の関連情報と融合する技術を活用』」と説明した、と紹介しています
米陸軍とTRX Systems社が何時頃からDAPS開発に着手したのか記事からは不明ですが、今回OT&E局(試験&評価局: Office of the Director of Operational Test and Evaluation)が高く評価した「第2世代DAPS GEN II」の前段階で、DAPSの第1と第1.2世代である「GEN Iや1.2」が2023年9月末までに数百台米陸軍内に試験配布され、現場からの「改善提案」を基に生まれたのが「DAPS GEN II」とのことです
米陸軍は昨年4月11日にTRX Systems社と約590億円の「DAPS GEN II」製造契約を結び、その中で初期納入700台分と関連支援サービスを約21.5億円で調達することになってる模様で、21.5億円を単純に700台で割ると、「DAPS GEN II」1台当たりの価格は約309万円と計算可能です
以前、米陸軍がGPS妨害対処訓練の一環として、スマホを使い慣れた世代の新兵教育の中で、GPSを使用しない「地図とコンパス」による地上航法訓練を取り入れ始めたところ、基本的な「地図とコンパス」航法をマスターできない不合格者が続出して対応に苦慮・・・とご紹介したことがありましたが、「DAPS GEN II」が救世主になれるのでしょうか?
DAPSの細部仕組みや性能細部が不明ですが、チマチマとフォローしていきたいと思います
敵のGPS電波妨害対処訓練は若者には高いハードル
「米陸軍兵士がGPS無しの訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/
被害状況下での戦いを想定せよ
「陸軍兵士がGPS無し訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/
「基本的な防御手段を復習せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-10
「米海軍将軍:妨害対処を徹底する」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-21
「空軍OBも被害対処を重視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23-1
「被害状況下で訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-23
本格紛争に向けた地上部隊の備え
「米陸軍が対中国の分散演習」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
「機動性&生存性の高い前線指揮所を」→https://holylandtokyo.com/2022/08/01/3519/
「米海兵隊が歩兵の多兵器習熟を試行中」→https://holylandtokyo.com/2021/05/07/1490/
「歩兵の多能兵士化を推進中」→https://holylandtokyo.com/2021/04/27/117/
「海兵隊で歩兵が砲兵を支援する新形態演習」→https://holylandtokyo.com/2021/04/15/107/
「米陸軍の前線電子戦部隊構想」→https://holylandtokyo.com/2021/03/11/158/
「米海兵隊は戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「無人機に偵察されたら」→https://holylandtokyo.com/2020/08/06/516/
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第1と第1.2世代を改良の第2世代DAPS GEN IIが高評価
先ず700台を米陸軍がTRX Systemsと21億円で契約済
2月7日付Defense-Newsは、米陸軍が妨害電波に脆弱なGPS地上航法装置の代替品(正確には改良&性能強化装置?)として、TRX Systems社(ACR Groupの配下企業)と検討してきた個人携帯型のDAPS(Dismounted Assured Positioning, Navigation and Timing System)に関し、辛口の厳しい評価で知られる米国防省のOT&E局(試験&評価局)が「最新GPS装置よりも優れ効果的だ」と今年1月の報告書で評価していると紹介しています
DAPSの細部仕組みや性能をまんぐーすは把握していませんが、2023年4月12日付Defense-Newsの関連記事は、米陸軍とTRX Systems社との第2世代DAPS GEN II製造契約発表(23年4月11日)に際し、「米陸軍のDAPS開発責任者Mike Trzeciak氏が『(敵の妨害下でも、)軍事GPS信号にアクセスを確保し、更に他の航法技術から得た時刻等の関連情報と融合する技術を活用』」と説明した、と紹介しています
米陸軍とTRX Systems社が何時頃からDAPS開発に着手したのか記事からは不明ですが、今回OT&E局(試験&評価局: Office of the Director of Operational Test and Evaluation)が高く評価した「第2世代DAPS GEN II」の前段階で、DAPSの第1と第1.2世代である「GEN Iや1.2」が2023年9月末までに数百台米陸軍内に試験配布され、現場からの「改善提案」を基に生まれたのが「DAPS GEN II」とのことです
米陸軍は昨年4月11日にTRX Systems社と約590億円の「DAPS GEN II」製造契約を結び、その中で初期納入700台分と関連支援サービスを約21.5億円で調達することになってる模様で、21.5億円を単純に700台で割ると、「DAPS GEN II」1台当たりの価格は約309万円と計算可能です
以前、米陸軍がGPS妨害対処訓練の一環として、スマホを使い慣れた世代の新兵教育の中で、GPSを使用しない「地図とコンパス」による地上航法訓練を取り入れ始めたところ、基本的な「地図とコンパス」航法をマスターできない不合格者が続出して対応に苦慮・・・とご紹介したことがありましたが、「DAPS GEN II」が救世主になれるのでしょうか?
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敵のGPS電波妨害対処訓練は若者には高いハードル
「米陸軍兵士がGPS無しの訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/
被害状況下での戦いを想定せよ
「陸軍兵士がGPS無し訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/
「基本的な防御手段を復習せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-10
「米海軍将軍:妨害対処を徹底する」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-21
「空軍OBも被害対処を重視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23-1
「被害状況下で訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-23
本格紛争に向けた地上部隊の備え
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米宇宙軍が衛星への燃料補給方式異なる2企業と並行連携 [サイバーと宇宙]
NG社がまず認証:大型給油衛星方式
ベンチャー企業は他衛星サービス企業と連携し
2025-6年のサービス開始を目指す迅速さ
2月5日付米空軍協会web記事は、1月29日にNorthrop Grumman社が米宇宙軍から、衛星が他の衛星から「宇宙給油」を受ける際に受け側衛星が装備すべき「ガスタンクへの注入口」「ガスタンクの蓋」仕様について、同社開発のPassive Refueling Module (PRM)が宇宙受油用インターフェースとして初の認証を得たと発表し、2025年までにPRM搭載衛星を打ち上げる予定だと報じるとともに、
米宇宙軍はNG社だけでなく、スタートアップ企業Orbit Fab社が開発したRapidly Attachable Fluid Transfer Interface (RAFTI)を8個ほど空軍研究所AFRLが既に入手し、2024年から確認を行うとともに、Orbit Fab社は「宇宙給油」の早期実用化に向け、他スタートアップ企業「ClearSpace(宇宙でのAAAを目指す企業)」や「Astroscale」と連携し、宇宙軍の「Prototype Servicer for Refueling (APS-R)」プロジェクト推進に取り組んでいる伝えています
いきなり複数企業名が飛び交って恐縮ですが、従来は軌道上の衛星機器がまだ使用可能でも、姿勢制御や軌道維持&修正のための燃料枯渇により、衛星が役割を終える事を受け入れてきましたが、宇宙アセットの脆弱性重要性やコスト意識が高まる中、軌道上の衛星に燃料補給して延命したり、故障した衛星部品を「宇宙軌道上で修理」して長く活用する技術開発に注目が集まり、技術成熟もあり、宇宙軍は2020年代半ばに「衛星への宇宙での燃料補給」を実現したい意向です
Northrop Grumman社の構想は
●同社が宇宙軍から認証を受けたPRM方式の「燃料タンクへの注入口」を生かすため、宇宙軍とNG社は宇宙給油衛星GAS-T(Geosynchronous Auxiliary Support Tanker)の開発契約を既に締結。GAS-Tは十分な燃料を搭載して、燃料補給を求める衛星に自ら移動&接近し給油する方式
●GAS-T自身の搭載燃料が少なくなった場合には、宇宙燃料補給所(Depot)に立ち寄り、GAS-T自身が給油を受けて他衛星への給油を続ける構想もNG社は持っているが、まずは複数の衛星への給油可能な燃料搭載量を持つ、技術的にも十分に成熟しているGAS-Tの実現に取り組む。その後の判断は宇宙軍に委ねる
●なお、NG社はPRM方式の特許を既に確保済だが、開発費を宇宙軍から支援されており、宇宙軍が他衛星企業にPRM方式「燃料タンクへの注入口」搭載を要望する場合、当該衛星企業は特許使用料を支払う必要はない
Orbit Fab社の構想は
●同社は3万ドルの使用料でRAFTIを他企業に提供する事業形態を想定している
●同社は宇宙での給油を迅速に実現するため、今後数年以内に「宇宙ガスステーション:Gas Stations in Space」を宇宙空間に配備する計画だが、当該「宇宙ガスステーション」と給油を受けたい衛星の間を行き来するサービスは、他のベンチャー企業「ClearSpace(宇宙でのAAAを目指す企業)」や「Astroscale」に委託する方式を想定している
●例えば「ClearSpace社」は宇宙でのAAA(日本のJAFに相当)を目指す企業で、地上で故障して道路わきに停車した自動車にレッカー車を派遣して修理工場までけん引したり、故障現場で修理作業を提供する総合衛星サービス提供企業を目指しており、そのサービスの一つとしてOrbit Fab社のガソリンスタンドから燃料切れ衛星への燃料輸送担当を期待されている
●またOrbit Fab社は、別のベンチャー企業Astroscaleとも連携協議を進めている
////////////////////////////////////////////
引き続きこの分野で「ど素人」状態のまんぐーすは、衛星に給油する燃料ってどんな燃料(Fuel)? 「Gas Stations in Space」はどれくらいの規模の宇宙船になるの? どうやって燃料を運ぶの? どのくらいの頻度で? 等々の疑問が次々に浮かんできますが、少しづつ学んでいく事といたしましょう
それにしても、日本は戦闘機開発に人材や資金や時間を費やしている場合なんでしょうか?
衛星の機動性SM&ロジL重視
「衛星への軌道上補給に企業活用へ」→https://holylandtokyo.com/2023/03/01/4320/
「宇宙軍は衛星のSM&L重視」→https://holylandtokyo.com/2023/01/18/4130/
「衛星延命に企業と連携」→https://holylandtokyo.com/2021/11/10/2350/
「推進力衛星とドッキングで延命」→https://holylandtokyo.com/2020/02/28/839/
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ベンチャー企業は他衛星サービス企業と連携し
2025-6年のサービス開始を目指す迅速さ
2月5日付米空軍協会web記事は、1月29日にNorthrop Grumman社が米宇宙軍から、衛星が他の衛星から「宇宙給油」を受ける際に受け側衛星が装備すべき「ガスタンクへの注入口」「ガスタンクの蓋」仕様について、同社開発のPassive Refueling Module (PRM)が宇宙受油用インターフェースとして初の認証を得たと発表し、2025年までにPRM搭載衛星を打ち上げる予定だと報じるとともに、
米宇宙軍はNG社だけでなく、スタートアップ企業Orbit Fab社が開発したRapidly Attachable Fluid Transfer Interface (RAFTI)を8個ほど空軍研究所AFRLが既に入手し、2024年から確認を行うとともに、Orbit Fab社は「宇宙給油」の早期実用化に向け、他スタートアップ企業「ClearSpace(宇宙でのAAAを目指す企業)」や「Astroscale」と連携し、宇宙軍の「Prototype Servicer for Refueling (APS-R)」プロジェクト推進に取り組んでいる伝えています
いきなり複数企業名が飛び交って恐縮ですが、従来は軌道上の衛星機器がまだ使用可能でも、姿勢制御や軌道維持&修正のための燃料枯渇により、衛星が役割を終える事を受け入れてきましたが、宇宙アセットの脆弱性重要性やコスト意識が高まる中、軌道上の衛星に燃料補給して延命したり、故障した衛星部品を「宇宙軌道上で修理」して長く活用する技術開発に注目が集まり、技術成熟もあり、宇宙軍は2020年代半ばに「衛星への宇宙での燃料補給」を実現したい意向です
Northrop Grumman社の構想は
●同社が宇宙軍から認証を受けたPRM方式の「燃料タンクへの注入口」を生かすため、宇宙軍とNG社は宇宙給油衛星GAS-T(Geosynchronous Auxiliary Support Tanker)の開発契約を既に締結。GAS-Tは十分な燃料を搭載して、燃料補給を求める衛星に自ら移動&接近し給油する方式
●GAS-T自身の搭載燃料が少なくなった場合には、宇宙燃料補給所(Depot)に立ち寄り、GAS-T自身が給油を受けて他衛星への給油を続ける構想もNG社は持っているが、まずは複数の衛星への給油可能な燃料搭載量を持つ、技術的にも十分に成熟しているGAS-Tの実現に取り組む。その後の判断は宇宙軍に委ねる
●なお、NG社はPRM方式の特許を既に確保済だが、開発費を宇宙軍から支援されており、宇宙軍が他衛星企業にPRM方式「燃料タンクへの注入口」搭載を要望する場合、当該衛星企業は特許使用料を支払う必要はない
Orbit Fab社の構想は
●同社は3万ドルの使用料でRAFTIを他企業に提供する事業形態を想定している
●同社は宇宙での給油を迅速に実現するため、今後数年以内に「宇宙ガスステーション:Gas Stations in Space」を宇宙空間に配備する計画だが、当該「宇宙ガスステーション」と給油を受けたい衛星の間を行き来するサービスは、他のベンチャー企業「ClearSpace(宇宙でのAAAを目指す企業)」や「Astroscale」に委託する方式を想定している
●例えば「ClearSpace社」は宇宙でのAAA(日本のJAFに相当)を目指す企業で、地上で故障して道路わきに停車した自動車にレッカー車を派遣して修理工場までけん引したり、故障現場で修理作業を提供する総合衛星サービス提供企業を目指しており、そのサービスの一つとしてOrbit Fab社のガソリンスタンドから燃料切れ衛星への燃料輸送担当を期待されている
●またOrbit Fab社は、別のベンチャー企業Astroscaleとも連携協議を進めている
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引き続きこの分野で「ど素人」状態のまんぐーすは、衛星に給油する燃料ってどんな燃料(Fuel)? 「Gas Stations in Space」はどれくらいの規模の宇宙船になるの? どうやって燃料を運ぶの? どのくらいの頻度で? 等々の疑問が次々に浮かんできますが、少しづつ学んでいく事といたしましょう
それにしても、日本は戦闘機開発に人材や資金や時間を費やしている場合なんでしょうか?
衛星の機動性SM&ロジL重視
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米国政府:露が核使用の対衛星兵器開発中 [安全保障全般]
米議員の問題提起を契機に米大統領府報道官が認める
ロシアによる「宇宙条約」違反のやりたい放題
2月14日の米下院情報委員会(House Intelligence Committee)委員長Mike Turner議員(共和党)による米国政府への情報開示請求に端を発し、メディアを巻き込んで話題となっている「ロシアによる核を用いた宇宙配備の対衛星兵器開発」に関し、15日にはJohn Kirbyホワイトハウス報道官が記者会見で自ら冒頭から本件を切り出して、「この場で説明できる範囲は限定されるが、米国情報機関は以前から本件を察知してフォローしており、大統領にも報告されている」と説明しました
まずTurner委員長は米国時間14日に、「深刻な国家安全保障上の脅威に関する懸念事項が生起しつつあり、同盟国を含めてどう対処すべきかを議論するため、バイデン大統領に関連の情報を秘密制限解除して説明するように求めた」と米下院のXアカウントを通じて明らかにし、そこから「ロシアによる核を用いた対衛星兵器開発」に関する件だとメディアや専門家が発信してこのような事態になっている模様です
15日の定例記者会見でのKirby報道官の説明
●Turner委員長が言及した脅威については、その秘密レベルからこの場で共有できることは限られるが、ロシアが開発中の対衛星兵器に関するものである
●同兵器はまだ完成しておらず使用可能な状態にはないが、ロシアが開発中の同兵器は宇宙に配備することを想定したもので、仮に同兵器をロシアが打ち上げられるようなことになれば、露を含む130国以上の国が批准(1967年発効で、日本は同年に批准)している宇宙条約(Outer Space Treaty)が定めた、核兵器の宇宙への展開を禁じた条項に違反することとなる
●ロシアはこの種の兵器開発に、何年も前からではないが、何か月も前から取り組んでいたが、米国情報機関がここ数週間で、ロシアが本兵器開発をどのように進めているかに関しより確度の高い情報を入手できた
●(記者から、ウクライナ支援に対する共和党の反対姿勢に対抗するための議会対策として、このようなロシア関連情報を利用しているのでは、との憶測も報じられているがとの質問に対し、一言で回答、) Bollocksだ(たわごとに過ぎない!)
Avril Haines国家情報長官(Director of National Intelligence:講道館へ1年間柔道修行留学したこともある異色の女性長官です!)による2023年脅威分析報告書では
●ロシアは引き続き、宇宙関連ロシア軍部隊の強化と、米国やその同盟国の宇宙活動能力を破砕し低下させる兵器の配備に努めており、破壊と非破壊手段の両方で、地上発射と宇宙配備型の電磁波、サイバー、エネルギーを利用した兵器を含む開発に取り組んでいる・・・と記述されています
更にまた米宇宙軍トップのSaltzman大将は13日に、
●我々は、ロシアや中国による「nefarious:極悪非道」な宇宙兵器開発を目の当たりにしている。他に適切な形容詞があればぜひ教えてほしいが、とても、極めて憂慮すべきレベルである
////////////////////////////////////////////
2月16日には、ロシアで反政府・反プーチン活動を行って逮捕拘留されていたナワヌルイ氏が、北極圏内にある刑務所で死亡したとのニュースが世界を駆け巡りましたが、プーチンの「nefarious:極悪非道」ぶりは留まるところを知りません。
具体的にどのような対衛星兵器なのかわかりませんが、人類共通の公共財である宇宙空間を、核爆発による強烈な電磁波やそれによって生じる宇宙ゴミで無差別に破壊しかねない試みに、心の底から怒りを覚えます
Mike Turner下院情報委員長の声明文(Xへの投稿)
→https://twitter.com/houseintel/status/1757805804885823775?s=46&t=pYNJFAcMl-cz2vCabuai5g
Haines国家情報長官の関連記事
「ロシアの弾薬不足」→https://holylandtokyo.com/2022/12/08/4032/
「中国の宇宙兵器開発」→https://holylandtokyo.com/2021/04/27/116/
宇宙条約(Outer Space Treaty)等に関する外務省の解説
→https://www.disarm.emb-japan.go.jp/itpr_ja/chap12.html
John Kirby大統領府報道官の会見トランスクリプト
→https://www.whitehouse.gov/briefing-room/press-briefings/2024/02/15/press-briefing-by-press-secretary-karine-jean-pierre-and-white-house-national-security-communications-advisor-john-kirby-3/
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ロシアによる「宇宙条約」違反のやりたい放題
2月14日の米下院情報委員会(House Intelligence Committee)委員長Mike Turner議員(共和党)による米国政府への情報開示請求に端を発し、メディアを巻き込んで話題となっている「ロシアによる核を用いた宇宙配備の対衛星兵器開発」に関し、15日にはJohn Kirbyホワイトハウス報道官が記者会見で自ら冒頭から本件を切り出して、「この場で説明できる範囲は限定されるが、米国情報機関は以前から本件を察知してフォローしており、大統領にも報告されている」と説明しました
まずTurner委員長は米国時間14日に、「深刻な国家安全保障上の脅威に関する懸念事項が生起しつつあり、同盟国を含めてどう対処すべきかを議論するため、バイデン大統領に関連の情報を秘密制限解除して説明するように求めた」と米下院のXアカウントを通じて明らかにし、そこから「ロシアによる核を用いた対衛星兵器開発」に関する件だとメディアや専門家が発信してこのような事態になっている模様です
15日の定例記者会見でのKirby報道官の説明
●Turner委員長が言及した脅威については、その秘密レベルからこの場で共有できることは限られるが、ロシアが開発中の対衛星兵器に関するものである
●同兵器はまだ完成しておらず使用可能な状態にはないが、ロシアが開発中の同兵器は宇宙に配備することを想定したもので、仮に同兵器をロシアが打ち上げられるようなことになれば、露を含む130国以上の国が批准(1967年発効で、日本は同年に批准)している宇宙条約(Outer Space Treaty)が定めた、核兵器の宇宙への展開を禁じた条項に違反することとなる
●ロシアはこの種の兵器開発に、何年も前からではないが、何か月も前から取り組んでいたが、米国情報機関がここ数週間で、ロシアが本兵器開発をどのように進めているかに関しより確度の高い情報を入手できた
●(記者から、ウクライナ支援に対する共和党の反対姿勢に対抗するための議会対策として、このようなロシア関連情報を利用しているのでは、との憶測も報じられているがとの質問に対し、一言で回答、) Bollocksだ(たわごとに過ぎない!)
Avril Haines国家情報長官(Director of National Intelligence:講道館へ1年間柔道修行留学したこともある異色の女性長官です!)による2023年脅威分析報告書では
●ロシアは引き続き、宇宙関連ロシア軍部隊の強化と、米国やその同盟国の宇宙活動能力を破砕し低下させる兵器の配備に努めており、破壊と非破壊手段の両方で、地上発射と宇宙配備型の電磁波、サイバー、エネルギーを利用した兵器を含む開発に取り組んでいる・・・と記述されています
更にまた米宇宙軍トップのSaltzman大将は13日に、
●我々は、ロシアや中国による「nefarious:極悪非道」な宇宙兵器開発を目の当たりにしている。他に適切な形容詞があればぜひ教えてほしいが、とても、極めて憂慮すべきレベルである
////////////////////////////////////////////
2月16日には、ロシアで反政府・反プーチン活動を行って逮捕拘留されていたナワヌルイ氏が、北極圏内にある刑務所で死亡したとのニュースが世界を駆け巡りましたが、プーチンの「nefarious:極悪非道」ぶりは留まるところを知りません。
具体的にどのような対衛星兵器なのかわかりませんが、人類共通の公共財である宇宙空間を、核爆発による強烈な電磁波やそれによって生じる宇宙ゴミで無差別に破壊しかねない試みに、心の底から怒りを覚えます
Mike Turner下院情報委員長の声明文(Xへの投稿)
→https://twitter.com/houseintel/status/1757805804885823775?s=46&t=pYNJFAcMl-cz2vCabuai5g
Haines国家情報長官の関連記事
「ロシアの弾薬不足」→https://holylandtokyo.com/2022/12/08/4032/
「中国の宇宙兵器開発」→https://holylandtokyo.com/2021/04/27/116/
宇宙条約(Outer Space Treaty)等に関する外務省の解説
→https://www.disarm.emb-japan.go.jp/itpr_ja/chap12.html
John Kirby大統領府報道官の会見トランスクリプト
→https://www.whitehouse.gov/briefing-room/press-briefings/2024/02/15/press-briefing-by-press-secretary-karine-jean-pierre-and-white-house-national-security-communications-advisor-john-kirby-3/
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米空軍が大規模改革アクションを発表 [米空軍]
具体的な実施スケジュールには触れず
将来装備検討や開発専従の新コマンド創設
戦闘・空輸・CSコマンドは戦いと態勢維持に集中
ACE構想を全ての基準として一貫した教育体系を
Kendall長官の任期切れまでに間に合うか・・・
2月12日、米航空宇宙協会Warfare SymposiumでKendall空軍長官とAllvin空軍参謀総長と宇宙軍トップのSaltzman宇宙作戦部長が登壇し、昨年秋から空軍省が検討してきた間近に迫った本格紛争で任務遂行可能な体制を早急に整備するための、冷戦後最大級の組織的改革24アクションが発表されました
基本的には既存の予算内で実施可能なコストで、新規事業に必要な予算措置は予算作成サイクルに組み込み可能な2026年度予算案からと説明されたアクションについて、大きな組織改革を含めてその具体的実施時期が明らかにされない「迅速に検討中」状態での発表ながら、Kendall長官がプレゼンで「We are out of time」「do so with a sense of urgency」と繰り返し言及する勢いだった模様です。まんぐーすの考える重要ポイントは・・・
●装備品の導入構想や要求性能や開発管理専従の「将来体制を検討する専門コマンド」を中将トップで創設し、戦闘・輸送・CSコマンドは日々の作戦運用とそのための即応態勢維持に集中させ、戦闘機や輸送機や爆撃機の将来構想検討の中心から距離を置く
●戦闘・輸送・CSコマンドの戦闘能力強化のため、冷戦期の手引きを復活させ、コマンドの枠を超えた大規模演習や事前通告なしの戦闘能力点検を復活させるなどに取り組み、部隊航空団を前方展開即応部隊や基地機能維持部隊等に明確に区分してその求めるところを明確に区分し態勢維持状態を確認する
●教育訓練では、ACE構想遂行可能な多能力を備えた兵士育成に空軍全体の基準として取り組み、新兵教育から上級教育までを含めた一貫した体系で実現する・・・との方向に整理できると考えましたが、理解不十分な点はご容赦いただき、12日付Defense-News記事からアクションの細部についてご紹介いたします
中将司令官のIntegrated Capabilities Command創設
●今回発表された空軍改革の中で、他の改革と比較して格段に大きな変革は、Kendall空軍長官の2年半に渡る長官経験と50年近くの国防省での装備要求構想作成や兵器開発管理経験を踏まえた集大成的改革であり、兵器開発における要求性能取りまとめと開発管理を戦闘・空輸・CSコマンドから切り離し、長期的視点から専従で行う新設の「Integrated Capabilities Command」に権限を集中して実施させる決断である
●同コマンドは、例えば従来空軍戦闘コマンドACCが担ってきた戦闘機開発性能要求策定任務や、輸送コマンドの輸送機要求性能作成任務を引き継ぎ、ACCや輸送コマンドの意見聞き取りや議論はともに行うものの、空軍省内の全ての能力開発計画や要求性能取りまとめ、資源配分を中央集権的に采配する役割を担う
●Kendall長官は「前線部隊の兵士や運用者(ACCや輸送コマンド等)には部隊の即応態勢獲得や維持に集中してもらい、空軍の将来像を考えることは別の組織に専従で行わせたい」と表現
戦闘・輸送・CSコマンドの戦闘能力強化
●米空軍の中心的戦力発揮組織である「Air Combat Command」、「Air Mobility Command」、「Global Strike Command」は、配下部隊の即応態勢維持により焦点を当てた取り組みを強化するため、空軍長官と参謀総長が自ら冷戦時代の「playbook:手引書」に立ち返り、過去30年間の中東での作戦支援の継続で記憶から失われた、大規模作戦演習や事前通告なしの戦闘能力点検や査察を再び導入する
●空軍長官は本件に関し、「前線派遣態勢が整っているはずの航空団が、本当に必要な全ての任務遂行能力を具備していることを確実にする。きちんと訓練する機会を設け、その上で部隊の能力を評価していく」とインタビューで語っている
●作戦運用を担う航空団「Wing」は、その役割に応じて3つに区分され、作戦遂行部隊と作戦運用航空団を支えたり基地運営を担う航空団との違いを明確に表現した名称を付与し、「Deployable Combat Wing」、「In-Place Combat Wing」、「Combat Generation Wing」とする
●現在空軍戦闘コマンドACCの配下にあり、情報戦と電子戦を担当する第16空軍は、空軍長官と参謀総長に直属する「Air Forces Cyber」に格上げされる。指揮官は現在と同じ少将
●宇宙軍も新たに現代の厳しい脅威下を踏まえた部隊即応態勢の基準を設定し、新たな体系の演習を導入して部隊能力を強化する。宇宙軍トップのSaltzman大将は「現在の宇宙軍は商船運用会社のようなものであり、その組織を米海軍のように鍛える必要がある」と厳しい表現を用い、「我々が成し遂げるべき改革革新を理解する必要がある」と現実を直視した
●ローテーションで統合の宇宙コマンドを支援する新たな「Space Force Combat Squadrons」を立ち上げる。また統合の地域コマンド(インド太平洋軍や中央軍など)や機能コマンド(サイバーコマンドや輸送コマンドなど)を支援する役割を、既存の宇宙軍組織を再整理して「Space Force component commands」として立ち上げる
教育訓練体系の再整理
●教育訓練コマンド(Air Education and Training Command)を「Airman Development Command」に改編し、ACE構想(Agile Combat Development)を作戦運用の基準として掲げ、これまでの「多能力兵士Multi-Capable Airmen」養成との認識でなく、多能力兵士が標準との認識を表現する「Mission-Ready Airmen」養成を目指し、新兵教育から上級者レベル教育まで一貫して取り組み体制を構築する
●IT分野とサイバー分野にとりあえず限定し、空軍内で最初に上級レベルの高い練度を保有する兵士に「Warrant Officer:准尉」の階級を創設して、能力相応の給与水準向上を目指すだけでなく、専門技能分野に特化した高い技量を伴う専門家のキャリアパスを、通常の士官養成とは異なるルートで設定可能にする
●Air Force Materiel Commandは内部再編し、以下の3つのセンターとオフィスに役割を再整理して業務の円滑推進を目指す
・Information Dominance Centerは、C3BM(Battle Management)とサイバー、電子戦、空軍全体の情報システム&インフラの側面から、空軍と宇宙軍を支援
・Air Force Nuclear Systems Centerは、現存のNuclear Weapons Centerを拡充して核兵器管理の改善を担い、ICBM計画担当少将のICBM再構築を監督する
・Air Dominance Systems Centerは、Life Cycle Management Centerを改編し、航空機と兵器開発の同期を図ることに焦点を絞る
・•Integration Development Officeは、新たな運用構想や技術導入が、技術的成熟度や全体のバランスから見て適切かどうかを見積もり評価する役割を担う
///////////////////////////////////////
5 か月の集中検討の成果として公開された内容ですが、Kendall長官は様々な提案を審議する中で、例えば陸軍や海軍のように複数の 主要コマンドをを単一の軍司令部に統合する等のより劇的な提案のいくつかは破棄され、洗練されたと説明しています
また発表した内容は空軍長官の権限で実施可能だが、事前に国防長官や副長官、更に他軍種の長官にも事前説明し、改革の方向性について一切の疑念なく「正しい道を歩んでいる」との評価を頂いているとも語った上で、今後について、「方向性を決定したので、その詳細に取り組む」、「詰めるべき詳細が多数あり、大変な作業になるが、やり遂げる準備は出来ている。私たちは官僚的な抵抗を克服するアプローチを採用している」と会場に列席の空軍主要幹部と空軍OBや軍需産業関係者と専門家ににらみを利かせたようです
政治任用者であるKendall空軍長官の任期は、11月の大統領選挙に伴う新政権誕生までと考えるのが普通で、時間が限られた中での本改革が可能なのか、様々な議論を既に巻き起こしていますが、まんぐーすはその意気込みに素直に感動しましたし、その使命感と熱意を学びたいと思いました。今後に注目したいと思います
Kendall空軍長官が宣言
「米空軍総レビュー実施」→https://holylandtokyo.com/2023/09/07/5012/
この改革に向けたAllvin参謀総長の推薦図書など
「米空軍制服トップが推薦図書等を公表」→https://holylandtokyo.com/2024/01/31/5473/
「Kendall空軍長官の推薦図書19冊」→https://holylandtokyo.com/2023/06/19/4736/
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将来装備検討や開発専従の新コマンド創設
戦闘・空輸・CSコマンドは戦いと態勢維持に集中
ACE構想を全ての基準として一貫した教育体系を
Kendall長官の任期切れまでに間に合うか・・・
2月12日、米航空宇宙協会Warfare SymposiumでKendall空軍長官とAllvin空軍参謀総長と宇宙軍トップのSaltzman宇宙作戦部長が登壇し、昨年秋から空軍省が検討してきた間近に迫った本格紛争で任務遂行可能な体制を早急に整備するための、冷戦後最大級の組織的改革24アクションが発表されました
基本的には既存の予算内で実施可能なコストで、新規事業に必要な予算措置は予算作成サイクルに組み込み可能な2026年度予算案からと説明されたアクションについて、大きな組織改革を含めてその具体的実施時期が明らかにされない「迅速に検討中」状態での発表ながら、Kendall長官がプレゼンで「We are out of time」「do so with a sense of urgency」と繰り返し言及する勢いだった模様です。まんぐーすの考える重要ポイントは・・・
●装備品の導入構想や要求性能や開発管理専従の「将来体制を検討する専門コマンド」を中将トップで創設し、戦闘・輸送・CSコマンドは日々の作戦運用とそのための即応態勢維持に集中させ、戦闘機や輸送機や爆撃機の将来構想検討の中心から距離を置く
●戦闘・輸送・CSコマンドの戦闘能力強化のため、冷戦期の手引きを復活させ、コマンドの枠を超えた大規模演習や事前通告なしの戦闘能力点検を復活させるなどに取り組み、部隊航空団を前方展開即応部隊や基地機能維持部隊等に明確に区分してその求めるところを明確に区分し態勢維持状態を確認する
●教育訓練では、ACE構想遂行可能な多能力を備えた兵士育成に空軍全体の基準として取り組み、新兵教育から上級教育までを含めた一貫した体系で実現する・・・との方向に整理できると考えましたが、理解不十分な点はご容赦いただき、12日付Defense-News記事からアクションの細部についてご紹介いたします
中将司令官のIntegrated Capabilities Command創設
●今回発表された空軍改革の中で、他の改革と比較して格段に大きな変革は、Kendall空軍長官の2年半に渡る長官経験と50年近くの国防省での装備要求構想作成や兵器開発管理経験を踏まえた集大成的改革であり、兵器開発における要求性能取りまとめと開発管理を戦闘・空輸・CSコマンドから切り離し、長期的視点から専従で行う新設の「Integrated Capabilities Command」に権限を集中して実施させる決断である
●同コマンドは、例えば従来空軍戦闘コマンドACCが担ってきた戦闘機開発性能要求策定任務や、輸送コマンドの輸送機要求性能作成任務を引き継ぎ、ACCや輸送コマンドの意見聞き取りや議論はともに行うものの、空軍省内の全ての能力開発計画や要求性能取りまとめ、資源配分を中央集権的に采配する役割を担う
●Kendall長官は「前線部隊の兵士や運用者(ACCや輸送コマンド等)には部隊の即応態勢獲得や維持に集中してもらい、空軍の将来像を考えることは別の組織に専従で行わせたい」と表現
戦闘・輸送・CSコマンドの戦闘能力強化
●米空軍の中心的戦力発揮組織である「Air Combat Command」、「Air Mobility Command」、「Global Strike Command」は、配下部隊の即応態勢維持により焦点を当てた取り組みを強化するため、空軍長官と参謀総長が自ら冷戦時代の「playbook:手引書」に立ち返り、過去30年間の中東での作戦支援の継続で記憶から失われた、大規模作戦演習や事前通告なしの戦闘能力点検や査察を再び導入する
●空軍長官は本件に関し、「前線派遣態勢が整っているはずの航空団が、本当に必要な全ての任務遂行能力を具備していることを確実にする。きちんと訓練する機会を設け、その上で部隊の能力を評価していく」とインタビューで語っている
●作戦運用を担う航空団「Wing」は、その役割に応じて3つに区分され、作戦遂行部隊と作戦運用航空団を支えたり基地運営を担う航空団との違いを明確に表現した名称を付与し、「Deployable Combat Wing」、「In-Place Combat Wing」、「Combat Generation Wing」とする
●現在空軍戦闘コマンドACCの配下にあり、情報戦と電子戦を担当する第16空軍は、空軍長官と参謀総長に直属する「Air Forces Cyber」に格上げされる。指揮官は現在と同じ少将
●宇宙軍も新たに現代の厳しい脅威下を踏まえた部隊即応態勢の基準を設定し、新たな体系の演習を導入して部隊能力を強化する。宇宙軍トップのSaltzman大将は「現在の宇宙軍は商船運用会社のようなものであり、その組織を米海軍のように鍛える必要がある」と厳しい表現を用い、「我々が成し遂げるべき改革革新を理解する必要がある」と現実を直視した
●ローテーションで統合の宇宙コマンドを支援する新たな「Space Force Combat Squadrons」を立ち上げる。また統合の地域コマンド(インド太平洋軍や中央軍など)や機能コマンド(サイバーコマンドや輸送コマンドなど)を支援する役割を、既存の宇宙軍組織を再整理して「Space Force component commands」として立ち上げる
教育訓練体系の再整理
●教育訓練コマンド(Air Education and Training Command)を「Airman Development Command」に改編し、ACE構想(Agile Combat Development)を作戦運用の基準として掲げ、これまでの「多能力兵士Multi-Capable Airmen」養成との認識でなく、多能力兵士が標準との認識を表現する「Mission-Ready Airmen」養成を目指し、新兵教育から上級者レベル教育まで一貫して取り組み体制を構築する
●IT分野とサイバー分野にとりあえず限定し、空軍内で最初に上級レベルの高い練度を保有する兵士に「Warrant Officer:准尉」の階級を創設して、能力相応の給与水準向上を目指すだけでなく、専門技能分野に特化した高い技量を伴う専門家のキャリアパスを、通常の士官養成とは異なるルートで設定可能にする
●Air Force Materiel Commandは内部再編し、以下の3つのセンターとオフィスに役割を再整理して業務の円滑推進を目指す
・Information Dominance Centerは、C3BM(Battle Management)とサイバー、電子戦、空軍全体の情報システム&インフラの側面から、空軍と宇宙軍を支援
・Air Force Nuclear Systems Centerは、現存のNuclear Weapons Centerを拡充して核兵器管理の改善を担い、ICBM計画担当少将のICBM再構築を監督する
・Air Dominance Systems Centerは、Life Cycle Management Centerを改編し、航空機と兵器開発の同期を図ることに焦点を絞る
・•Integration Development Officeは、新たな運用構想や技術導入が、技術的成熟度や全体のバランスから見て適切かどうかを見積もり評価する役割を担う
///////////////////////////////////////
5 か月の集中検討の成果として公開された内容ですが、Kendall長官は様々な提案を審議する中で、例えば陸軍や海軍のように複数の 主要コマンドをを単一の軍司令部に統合する等のより劇的な提案のいくつかは破棄され、洗練されたと説明しています
また発表した内容は空軍長官の権限で実施可能だが、事前に国防長官や副長官、更に他軍種の長官にも事前説明し、改革の方向性について一切の疑念なく「正しい道を歩んでいる」との評価を頂いているとも語った上で、今後について、「方向性を決定したので、その詳細に取り組む」、「詰めるべき詳細が多数あり、大変な作業になるが、やり遂げる準備は出来ている。私たちは官僚的な抵抗を克服するアプローチを採用している」と会場に列席の空軍主要幹部と空軍OBや軍需産業関係者と専門家ににらみを利かせたようです
政治任用者であるKendall空軍長官の任期は、11月の大統領選挙に伴う新政権誕生までと考えるのが普通で、時間が限られた中での本改革が可能なのか、様々な議論を既に巻き起こしていますが、まんぐーすはその意気込みに素直に感動しましたし、その使命感と熱意を学びたいと思いました。今後に注目したいと思います
Kendall空軍長官が宣言
「米空軍総レビュー実施」→https://holylandtokyo.com/2023/09/07/5012/
この改革に向けたAllvin参謀総長の推薦図書など
「米空軍制服トップが推薦図書等を公表」→https://holylandtokyo.com/2024/01/31/5473/
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台湾近傍フィリピン北端に米国支援で軍施設増強中 [安全保障全般]
バシー海峡の真ん中の島にも港湾施設増強
フィリピン北端エリアの空港や港湾再整備
2月5日付Defense-Newsは、対中国を念頭に置いたフィリピンと米国間の防衛協力合意(2014年締結:EDCA:Enhanced Defense Cooperation Agreement)に基づき、米国支援によりフィリピン国内で進む港湾や空港や倉庫や兵舎等整備について取り上げ、特に台湾とフィリピン間の国境となるバシー海峡に面するフィリピン北端地域や、バシー海峡中間にあるフィリピン領の島での施設整備など、中国が発狂して「力でねじ伏せる」とわめきちらす取り組みをご紹介します
特にフィリピンは、2022年7月に就任したマルコスJr大統領が対中国を意識して米国との連携強化に大きくかじを取り、米軍が対中国で「戦力の分散運用」を目指す中で、分散展開先や物資集積場所等になりそうな場所提供を積極的に進め始めており、2014年のEDCA締結後に5か所、2023年には追加で4か所の計9か所で港湾や空港や倉庫や兵舎等のプロジェクトが進んでおり、最近もオースチン国防長官がマルコス大統領と米軍プレゼンス拡大に合意したところです
当然フィリピン側にも中国の「息のかかった」と推測される、某沖縄知事の様な反米親中政治家がおり、「米軍基地が整備されると中国の攻撃目標になり、戦争に巻き込まれる」と叫んでおり、米国もフィリピン政府側も9か所でのプロジェクトについては「ロープロファイル」の説明ぶりで、
例えば2014年から23年までのプロジェクト数について、米国報道官が14プロジェクト約84億円と言えば、元フィリピン側関係者は実際には21プロジェクト約120億円相当と語るなど細部不明な状態ですが、2024年度はフィリピン政府発表が14プロジェクトで、米側関係者は34プロジェクトと語る共同プロジェクト花盛りの急激右肩上がり状態で米比関係が加速推進されています
注目すべきプロジェクトは、台湾との国境となるフィリピン北端「Cagayan province」で進む、比「Naval Base Camilo Osias」やその約60㎞西側で具体的検討が進む比「Lal-Lo Airport」での燃料貯蔵施設や指揮統制センター建設プロジェクト、更にバシー海峡中間点付近の島々で構成される比「Batanes province」で進む港湾施設計画で、比海軍が昨年10月から先行展開して着々と準備が進むプロジェクトなどです
まんぐーす自作の見づらい地図を1つ添付していますが、中国政府が「米国はこれらプロジェクトが災害対処や地域経済振興の一環だと主張し、フィリピン政府関係者は難民対策にもなる等と意味不明の言い訳をしているが、単純にして明確に、米国が先導する米同盟国をそそのかした中国囲い込み政策だ」、「フィリピン政府の協力姿勢は、極めて深刻にフィリピンの国益を損なうことになり、地域の安定も危険にさらすことになる」とわめき叫ぶのも納得の大胆さです
感心するのはフィリピンの元比政府外交関係者で現在政府系コンサルタント会社を率いるフィリピン識者が、「米国側関係者と面談すると、台湾有事への備えが最優先事項だと鼻息荒いが、我々はその際は当てにしないでくれ・・・と米側には言っている」、「でもフィリピンでは、米国が比を去ることをだれも望んでいない、なぜなら、米が去れば、中国がもっと攻撃的になると知っているからだ」と達観した現実的な視点を根っこに持っている点です
////////////////////////////////////////
ドゥテルテ大統領時代に、米国が同大統領の麻薬撲滅作戦を「人道的に問題」などと非難しなければ、5年以上前から米比関係は右肩上がりの改善を見せたと思いますが、フィリピンの動きは日本も是非学びたいものです
中国経済の限界が不動産バブル崩壊によって顕在化し、金融崩壊に至る今となっては中国共産党支配体制の崩壊まで見えてきそうな様相となっていますが、今がチャンスです。中国包囲網を強化いたしましょう!!!
フィリピン関連の記事
「米空軍F-22が初展開」→https://holylandtokyo.com/2023/03/24/4442/
「米軍のアジア太平洋協力強化」→https://holylandtokyo.com/2023/02/20/4294/
「比の新大統領は中国寄り?」→https://holylandtokyo.com/2022/07/08/3450/
「日本製監視レーダー提供へ」→https://holylandtokyo.com/2020/08/31/536/
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フィリピン北端エリアの空港や港湾再整備
2月5日付Defense-Newsは、対中国を念頭に置いたフィリピンと米国間の防衛協力合意(2014年締結:EDCA:Enhanced Defense Cooperation Agreement)に基づき、米国支援によりフィリピン国内で進む港湾や空港や倉庫や兵舎等整備について取り上げ、特に台湾とフィリピン間の国境となるバシー海峡に面するフィリピン北端地域や、バシー海峡中間にあるフィリピン領の島での施設整備など、中国が発狂して「力でねじ伏せる」とわめきちらす取り組みをご紹介します
特にフィリピンは、2022年7月に就任したマルコスJr大統領が対中国を意識して米国との連携強化に大きくかじを取り、米軍が対中国で「戦力の分散運用」を目指す中で、分散展開先や物資集積場所等になりそうな場所提供を積極的に進め始めており、2014年のEDCA締結後に5か所、2023年には追加で4か所の計9か所で港湾や空港や倉庫や兵舎等のプロジェクトが進んでおり、最近もオースチン国防長官がマルコス大統領と米軍プレゼンス拡大に合意したところです
当然フィリピン側にも中国の「息のかかった」と推測される、某沖縄知事の様な反米親中政治家がおり、「米軍基地が整備されると中国の攻撃目標になり、戦争に巻き込まれる」と叫んでおり、米国もフィリピン政府側も9か所でのプロジェクトについては「ロープロファイル」の説明ぶりで、
例えば2014年から23年までのプロジェクト数について、米国報道官が14プロジェクト約84億円と言えば、元フィリピン側関係者は実際には21プロジェクト約120億円相当と語るなど細部不明な状態ですが、2024年度はフィリピン政府発表が14プロジェクトで、米側関係者は34プロジェクトと語る共同プロジェクト花盛りの急激右肩上がり状態で米比関係が加速推進されています
注目すべきプロジェクトは、台湾との国境となるフィリピン北端「Cagayan province」で進む、比「Naval Base Camilo Osias」やその約60㎞西側で具体的検討が進む比「Lal-Lo Airport」での燃料貯蔵施設や指揮統制センター建設プロジェクト、更にバシー海峡中間点付近の島々で構成される比「Batanes province」で進む港湾施設計画で、比海軍が昨年10月から先行展開して着々と準備が進むプロジェクトなどです
まんぐーす自作の見づらい地図を1つ添付していますが、中国政府が「米国はこれらプロジェクトが災害対処や地域経済振興の一環だと主張し、フィリピン政府関係者は難民対策にもなる等と意味不明の言い訳をしているが、単純にして明確に、米国が先導する米同盟国をそそのかした中国囲い込み政策だ」、「フィリピン政府の協力姿勢は、極めて深刻にフィリピンの国益を損なうことになり、地域の安定も危険にさらすことになる」とわめき叫ぶのも納得の大胆さです
感心するのはフィリピンの元比政府外交関係者で現在政府系コンサルタント会社を率いるフィリピン識者が、「米国側関係者と面談すると、台湾有事への備えが最優先事項だと鼻息荒いが、我々はその際は当てにしないでくれ・・・と米側には言っている」、「でもフィリピンでは、米国が比を去ることをだれも望んでいない、なぜなら、米が去れば、中国がもっと攻撃的になると知っているからだ」と達観した現実的な視点を根っこに持っている点です
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ドゥテルテ大統領時代に、米国が同大統領の麻薬撲滅作戦を「人道的に問題」などと非難しなければ、5年以上前から米比関係は右肩上がりの改善を見せたと思いますが、フィリピンの動きは日本も是非学びたいものです
中国経済の限界が不動産バブル崩壊によって顕在化し、金融崩壊に至る今となっては中国共産党支配体制の崩壊まで見えてきそうな様相となっていますが、今がチャンスです。中国包囲網を強化いたしましょう!!!
フィリピン関連の記事
「米空軍F-22が初展開」→https://holylandtokyo.com/2023/03/24/4442/
「米軍のアジア太平洋協力強化」→https://holylandtokyo.com/2023/02/20/4294/
「比の新大統領は中国寄り?」→https://holylandtokyo.com/2022/07/08/3450/
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太平洋軍司令官候補が議会で燃料と兵站の重要性を [Joint・統合参謀本部]
議会承認を得るため上院軍事委員会で所信を語る
空中給油や輸送コマンドとの連携兵站重視と
昨年6月には一時次の米海軍制服トップと報じられた方
2月1日、現在の米太平洋海軍司令官で、次のアジア太平洋軍司令官(正確にIndo-Pacific Command司令官)候補にノミネートされているSamuel J. Paparo Jr海軍大将が、上院軍事委員会で承認を得るための質疑に臨み、中国の台湾侵攻に関しては慎重な回答をしつつ、対中国作戦に向けては「more forward, more distributed posture:より前方に、より分散した戦力配備態勢で」との基本方針を語り、
更に脅威情勢に対応し、兵站支援面で「効率」より「効力効果:effectiveness」を重視した準備の必要性を主張し、具体的に西太平洋での燃料不足を取り上げ、空中給油能力の不足や無人空中給油機の開発の必要性を示唆するような発言までしています。また太平洋軍と輸送コマンドとのメジャーコマンド連携が極めて重要になるとも語っています
まずはPaparo海軍大将のご経歴概要を
●1964年生まれ。米海軍士官学校出身「ではない」空母艦載戦闘機パイロットで、F-14やFA-18やF-15Cで飛行時間6千時間以上・着艦1100回以上のトップガンスクール出身者。
●海軍パイロットながら、米空軍戦闘機部隊への交換操縦者として空軍F-15C部隊に配属され、サウジに展開して実任務を遂行した経験もあるほか、米空軍指揮幕僚大学ACSCやAWCコースも履修し、空軍との人的つながりも太い
●横須賀配属空母のF-14操縦者として勤務を開始し、艦載機飛行隊長や空母航空団司令官や空母戦闘群司令官を歴任し、中東担当の第5艦隊司令官も務め、米中央軍海軍と米太平洋軍海軍司令官(現在ポスト)を経験している
●統合職として、米中央軍の作戦部長(J3)経験のほか、珍しい職歴として、アフガニスタンの「Nuristan Province」復興担当指揮官として、米陸軍第10山岳師団第3旅団や第173空挺旅団と共に活動した経歴アリ
●何と言っても最近では、昨年6月12日に全米各種メディアが「次の米海軍制服トップ候補に国防長官がPaparo海軍大将を推薦」と複数の匿名海軍や国防省幹部の証言付きで報じながら、同7月21日には当初から大本命とされてきた女性のLisa Franchetti大将の正式候補推薦がバイデン大統領から発表されるとのドタバタに巻き込まれた人物
(太平洋海軍司令官が、一段上の太平洋軍司令官に就任するのは、現在のJohn Aquilino司令官など多くの実績があるルートであり、米空軍とのパイプもある点からも、順当で適切な人事だと上院でも全く反対意見はないようです)
Paparo海軍大将は議会で証言し・・・
●(中国による台湾侵攻の可能性について問われ、)習近平主席の考え方や行動予測は語れないが、中国が軍事力を背景に国境を再設定を狙い、復興主義者、修正主義者、拡張主義国家として侵略を拡大する大胆な動きを目にしており、ますます無秩序&混沌に向かう世界情勢を体感している
●このような情勢を受け米太平洋軍は、「more forward, more distributed posture:より前方により分散した戦力配備態勢」に転換する必要がある
●またこのような体制と作戦運用を支えるため、「効率性efficiency」の原則を基に構築されてきた兵站態勢を、「効力効果effectiveness」の原則で再検討すべきと考えている
●(未だ要求性能を満たせない状態で正式運用を開始したKC-46空中給油機に対する評価と問われ、)統合戦闘力を発揮するうえで、ダイナミックに機動する必要がある航空作戦構想から、空中給油能力を懸念している。統合戦力として(空中給油のために)足の長い、無人の、multi-domain platformsが、作戦機と輸送機用に必要だ
●また(分散運用を支えるだけの)地域全体への燃料供給も極めて重要だ。抑止面で、競争面で、危機紛争対処面で、米輸送コマンドとのメジャーコマンド間協力(COCOM-to-COCOM relationship)が最も重要だ。2つのコマンドが常続的に顔を突き合わせるように作戦計画を煮詰め、有事に備えている
(ご参考:昨年夏に、米本土とハワイ・グアム、豪州、日本の拠点を巻き込み、航空機70機と3000名以上が参加し、空軍輸送コマンドと米輸送コマンドが連携して史上最大のMobility Guardian演習が実施され、「more forward, more distributed posture」体制を支える準備が実施されている)
Samuel Paparo海軍大将の公式経歴
祖父・父も米海軍勤務の筋金入りです
→ https://www.cpf.navy.mil/Leaders/Article/2628260/admiral-samuel-j-paparo/
Paparo大将も巻き込まれた人事ゴタゴタ
「大統領は初の女性トップ指名」→https://holylandtokyo.com/2023/07/24/4888/
「Paparo大将を国防長官が推薦報道」→https://holylandtokyo.com/2023/06/13/4747/
2023年の史上最大の空輸演習@西太平洋
「Mobility Guardian演習が初めて海外で」→https://holylandtokyo.com/2023/07/13/4852/
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空中給油や輸送コマンドとの連携兵站重視と
昨年6月には一時次の米海軍制服トップと報じられた方
2月1日、現在の米太平洋海軍司令官で、次のアジア太平洋軍司令官(正確にIndo-Pacific Command司令官)候補にノミネートされているSamuel J. Paparo Jr海軍大将が、上院軍事委員会で承認を得るための質疑に臨み、中国の台湾侵攻に関しては慎重な回答をしつつ、対中国作戦に向けては「more forward, more distributed posture:より前方に、より分散した戦力配備態勢で」との基本方針を語り、
更に脅威情勢に対応し、兵站支援面で「効率」より「効力効果:effectiveness」を重視した準備の必要性を主張し、具体的に西太平洋での燃料不足を取り上げ、空中給油能力の不足や無人空中給油機の開発の必要性を示唆するような発言までしています。また太平洋軍と輸送コマンドとのメジャーコマンド連携が極めて重要になるとも語っています
まずはPaparo海軍大将のご経歴概要を
●1964年生まれ。米海軍士官学校出身「ではない」空母艦載戦闘機パイロットで、F-14やFA-18やF-15Cで飛行時間6千時間以上・着艦1100回以上のトップガンスクール出身者。
●海軍パイロットながら、米空軍戦闘機部隊への交換操縦者として空軍F-15C部隊に配属され、サウジに展開して実任務を遂行した経験もあるほか、米空軍指揮幕僚大学ACSCやAWCコースも履修し、空軍との人的つながりも太い
●横須賀配属空母のF-14操縦者として勤務を開始し、艦載機飛行隊長や空母航空団司令官や空母戦闘群司令官を歴任し、中東担当の第5艦隊司令官も務め、米中央軍海軍と米太平洋軍海軍司令官(現在ポスト)を経験している
●統合職として、米中央軍の作戦部長(J3)経験のほか、珍しい職歴として、アフガニスタンの「Nuristan Province」復興担当指揮官として、米陸軍第10山岳師団第3旅団や第173空挺旅団と共に活動した経歴アリ
●何と言っても最近では、昨年6月12日に全米各種メディアが「次の米海軍制服トップ候補に国防長官がPaparo海軍大将を推薦」と複数の匿名海軍や国防省幹部の証言付きで報じながら、同7月21日には当初から大本命とされてきた女性のLisa Franchetti大将の正式候補推薦がバイデン大統領から発表されるとのドタバタに巻き込まれた人物
(太平洋海軍司令官が、一段上の太平洋軍司令官に就任するのは、現在のJohn Aquilino司令官など多くの実績があるルートであり、米空軍とのパイプもある点からも、順当で適切な人事だと上院でも全く反対意見はないようです)
Paparo海軍大将は議会で証言し・・・
●(中国による台湾侵攻の可能性について問われ、)習近平主席の考え方や行動予測は語れないが、中国が軍事力を背景に国境を再設定を狙い、復興主義者、修正主義者、拡張主義国家として侵略を拡大する大胆な動きを目にしており、ますます無秩序&混沌に向かう世界情勢を体感している
●このような情勢を受け米太平洋軍は、「more forward, more distributed posture:より前方により分散した戦力配備態勢」に転換する必要がある
●またこのような体制と作戦運用を支えるため、「効率性efficiency」の原則を基に構築されてきた兵站態勢を、「効力効果effectiveness」の原則で再検討すべきと考えている
●(未だ要求性能を満たせない状態で正式運用を開始したKC-46空中給油機に対する評価と問われ、)統合戦闘力を発揮するうえで、ダイナミックに機動する必要がある航空作戦構想から、空中給油能力を懸念している。統合戦力として(空中給油のために)足の長い、無人の、multi-domain platformsが、作戦機と輸送機用に必要だ
●また(分散運用を支えるだけの)地域全体への燃料供給も極めて重要だ。抑止面で、競争面で、危機紛争対処面で、米輸送コマンドとのメジャーコマンド間協力(COCOM-to-COCOM relationship)が最も重要だ。2つのコマンドが常続的に顔を突き合わせるように作戦計画を煮詰め、有事に備えている
(ご参考:昨年夏に、米本土とハワイ・グアム、豪州、日本の拠点を巻き込み、航空機70機と3000名以上が参加し、空軍輸送コマンドと米輸送コマンドが連携して史上最大のMobility Guardian演習が実施され、「more forward, more distributed posture」体制を支える準備が実施されている)
Samuel Paparo海軍大将の公式経歴
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Paparo大将も巻き込まれた人事ゴタゴタ
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2023年の史上最大の空輸演習@西太平洋
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Bamboo Eagle:初のACE構想統合&多国間演習 [Joint・統合参謀本部]
Red Flag 24-1演習(1月15-26日)に引き続き26日から8日間
米空軍主催で英豪空軍、米海軍海兵隊航空機も参加し
加州の5基地での分散運用で対中国ACE作戦訓練
1月30日付米空軍協会web記事が、初めてのACE構想に基づく分散基地運用(practicing the hub-and-spoke concept along with Agile Combat Employment)演習「Bamboo Eagle」が、「Red Flag 24-1演習」最終日1月26日とオーバーラップする日程で2月2日まで(推定)実施されると紹介しています。
なお、「Red Flag 24-1」がラスベガス近傍のネリス空軍基地で行われたので、「Red Flag 24-1」参加機の大部分が、「Bamboo Eagle」参加のため、ネリスから加州5つの(想定)分散運用基地への機動展開を含むACE構想の実戦的演習に取り組んでいるということです
ACE構想(Agile Combat Employment)は米空軍が対中国を強く意識し、米空軍全体で運用能力向上を図っている構想で、従来のように設備充実の大規模根拠飛行場を中心とした航空作戦では、中国の弾道&巡航ミサイル攻撃により運用不能に陥る懸念があることから、不便で設備不十分でも残存性が少しでも高い基地に戦力を分散しつつも、指揮統制や兵站面をしっかりやって強靭で生存性の高い戦力運用を目指す構想です
初の本格的統合&多国間ACE構想演習となっている「Bamboo Eagle」では、米空軍航空戦術(空対空や空対地航空作戦が主体)演習「Red Flag 24-1」の演習項目に加え、(台湾有事をたぶんに想定した)対艦攻撃訓練や、ACE構想の重要要素となる不便な分散基地への迅速な展開と現地での兵站や指揮統制を含む態勢確立が、実戦とバーチャル訓練を交えて実施されるとのことです
参加者は米軍全軍種から兵員3000名と航空機約150機、そして英空軍と豪州空軍から300名が参加する大規模なものとなった模様で、その内訳は・・・
●米空軍→B-2爆撃機、F-35、F-22, F-15E, and F-16 戦闘機、 C-130 and C-17 輸送機、KC-135 and KC-46空中給油機、EC-130電子戦機、HC-130特殊作戦機(兵員投入回収機)、HH-60救難ヘリ
●米海兵隊→F-35B、MQ-9無人偵察攻撃機
●米海軍→EA-18電子戦攻撃機
●英空軍→ユーロファイターとA330空中給油機
●豪州空軍→F-35A ・・・・です。
初の「Bamboo Eagle」演習で、分散運用基地(practicing the hub-and-spoke concept)に設定された5基地は全て加州の5基地
●米海軍のNaval Air Station North Island,
●米空軍のBeale Air Force Base, Travis Air Force Base, Edwards Air Force Base
●海兵隊のCamp Pendleton
Bamboo Eagle演習を計画運用する米空軍Warfare Centerの公式発表は演習を・・・
「東太平洋の海洋と空域を作戦空域に見立て、海洋ドメイン作戦も組み入れた実戦的な全ドメイン訓練環境を設定し、訓練参加者が米本土西部の複数の(分散運用)基地から作戦行動を開始し、分散基地の指揮統制や兵站運用や空中給油等も含めた訓練を行った」と紹介しています
/////////////////////////////////////////
台湾有事の対中国作戦では、西太平洋の島々や第1&第2列島線上の同盟国等の分散運用基地に展開し、指揮統制や兵站支援体制も確立して作戦運用することを前提とし、その実行力獲得を狙った初の「Bamboo Eagle」演習ですが、陸続きの加州の5つの基地と、環境が整わない西太平洋に分散する島や国々の基地とでは大きな違いがあります。
それでもこれだけの米空軍の参加規模で、海軍や海兵隊も主旨に賛同し、英軍や豪州軍も馳せ参じての演習は大きな一歩だと思います。「Bamboo Eagle」との演習名は、竹(Bamboo)の「しなやかさ」や外部からの力への「対応力や強靭性」を期待しての表現かな・・・
米空軍のACE構想関連記事
「PACAFはACE運用態勢未確立」→https://holylandtokyo.com/2023/09/19/5048/
「生みの親が現状語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「欧州米空軍がACE確認演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「GuamでF-35等が不整地離着陸訓練」→https://holylandtokyo.com/2021/01/29/310/
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/
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米空軍主催で英豪空軍、米海軍海兵隊航空機も参加し
加州の5基地での分散運用で対中国ACE作戦訓練
1月30日付米空軍協会web記事が、初めてのACE構想に基づく分散基地運用(practicing the hub-and-spoke concept along with Agile Combat Employment)演習「Bamboo Eagle」が、「Red Flag 24-1演習」最終日1月26日とオーバーラップする日程で2月2日まで(推定)実施されると紹介しています。
なお、「Red Flag 24-1」がラスベガス近傍のネリス空軍基地で行われたので、「Red Flag 24-1」参加機の大部分が、「Bamboo Eagle」参加のため、ネリスから加州5つの(想定)分散運用基地への機動展開を含むACE構想の実戦的演習に取り組んでいるということです
ACE構想(Agile Combat Employment)は米空軍が対中国を強く意識し、米空軍全体で運用能力向上を図っている構想で、従来のように設備充実の大規模根拠飛行場を中心とした航空作戦では、中国の弾道&巡航ミサイル攻撃により運用不能に陥る懸念があることから、不便で設備不十分でも残存性が少しでも高い基地に戦力を分散しつつも、指揮統制や兵站面をしっかりやって強靭で生存性の高い戦力運用を目指す構想です
初の本格的統合&多国間ACE構想演習となっている「Bamboo Eagle」では、米空軍航空戦術(空対空や空対地航空作戦が主体)演習「Red Flag 24-1」の演習項目に加え、(台湾有事をたぶんに想定した)対艦攻撃訓練や、ACE構想の重要要素となる不便な分散基地への迅速な展開と現地での兵站や指揮統制を含む態勢確立が、実戦とバーチャル訓練を交えて実施されるとのことです
参加者は米軍全軍種から兵員3000名と航空機約150機、そして英空軍と豪州空軍から300名が参加する大規模なものとなった模様で、その内訳は・・・
●米空軍→B-2爆撃機、F-35、F-22, F-15E, and F-16 戦闘機、 C-130 and C-17 輸送機、KC-135 and KC-46空中給油機、EC-130電子戦機、HC-130特殊作戦機(兵員投入回収機)、HH-60救難ヘリ
●米海兵隊→F-35B、MQ-9無人偵察攻撃機
●米海軍→EA-18電子戦攻撃機
●英空軍→ユーロファイターとA330空中給油機
●豪州空軍→F-35A ・・・・です。
初の「Bamboo Eagle」演習で、分散運用基地(practicing the hub-and-spoke concept)に設定された5基地は全て加州の5基地
●米海軍のNaval Air Station North Island,
●米空軍のBeale Air Force Base, Travis Air Force Base, Edwards Air Force Base
●海兵隊のCamp Pendleton
Bamboo Eagle演習を計画運用する米空軍Warfare Centerの公式発表は演習を・・・
「東太平洋の海洋と空域を作戦空域に見立て、海洋ドメイン作戦も組み入れた実戦的な全ドメイン訓練環境を設定し、訓練参加者が米本土西部の複数の(分散運用)基地から作戦行動を開始し、分散基地の指揮統制や兵站運用や空中給油等も含めた訓練を行った」と紹介しています
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台湾有事の対中国作戦では、西太平洋の島々や第1&第2列島線上の同盟国等の分散運用基地に展開し、指揮統制や兵站支援体制も確立して作戦運用することを前提とし、その実行力獲得を狙った初の「Bamboo Eagle」演習ですが、陸続きの加州の5つの基地と、環境が整わない西太平洋に分散する島や国々の基地とでは大きな違いがあります。
それでもこれだけの米空軍の参加規模で、海軍や海兵隊も主旨に賛同し、英軍や豪州軍も馳せ参じての演習は大きな一歩だと思います。「Bamboo Eagle」との演習名は、竹(Bamboo)の「しなやかさ」や外部からの力への「対応力や強靭性」を期待しての表現かな・・・
米空軍のACE構想関連記事
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「欧州米空軍がACE確認演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「GuamでF-35等が不整地離着陸訓練」→https://holylandtokyo.com/2021/01/29/310/
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映画「トップガン」の第3弾にパラマウントが着手 [ちょっとお得な話]
『トップガン マーベリック』の製作陣/キャストが再集結か
ただクルーズの予定は2025年又は26年まで余裕なしとか
現在61歳(1962年生)のクルーズはどんな役割を?
1月11日付米映画情報専門サイト「Puck」によれば、大ヒット映画「トップガン」の第3弾にパラマウントが着手した模様です。主演のトム・クルーズ(Tom Cruise)は先日、米ワーナー・ブラザースとパートナー契約を締結したのですが、独占的な契約ではないため、今後も『トップガン』『ミッション:インポッシブル』シリーズでパラマウントと連携していくとのことです。
1986年公開「トップガン」の続編である2022年公開「トップガン マーヴェリック」は、トム・クルーズのキャリア史上最高となる14億9000万ドル(約2160億円)の世界興行収入を記録。作品賞を含むアカデミー賞6部門にノミネートされ、音響賞を受賞しています。
大ヒットの「トップガン マーヴェリック」の脚本を共同執筆したアーレン・クルーガーが、同人気シリーズの最新作に向けて脚本の草稿に取り掛かっているとも報じられています。
「Puck」によれば、3作目では主演のトム・クルーズをはじめ、ルースター役のマイルズ・テラー(Miles Teller)やハングマン役のグレン・パウエル(Glen Powell)といったキャストの復帰も見込まれているとのこと。またジェリー・ブラッカイマーとデヴィッド・エリソンも引き続きプロデューサーを務める見込みだという。
更に、前作でメガホンをとったジョセフ・コシンスキーが、監督もしくは次作に戻ってくる可能性もあるという。
ただ、トム・クルーズには現在、『ミッション:インポッシブル』シリーズ第8弾や、ダグ・ライマン監督と共に宇宙で撮影する新作映画が控えているとも言われており、「Puck」は「クルーズの予定は2025年又は26年まで余裕がないのでは?」とも報じています
「トップガン マーヴェリック」の監督で、3作目でもメガホンを握る、又はプロデューサーとして関わる可能性があるらしいコシンスキー氏は、第2弾が大成功を収めた理由をハリウッド記者団に以下のように語っていました。
●我々はこの映画が可能な限り最上の大きなスクリーンで楽しんでもらえるように製作しました。最新設備の映画館ならば、(コロナ下の)ここ数年皆が待ち望んでいた経験を観客の皆さんが劇場で再発見できると感じたから。成功の理由はそこに関係していると思う。
●ストーリーが人々の心に響いたことも大きいだろう。人々は35年ぶりにトムがマーヴェリックを再演するのを観ずにはいられなかったし、それは本当にスリリングなことであった。だから昔流の映画を作りたかったんだ」「昔流のやり方に最新のハイテク装置を装備して撮影した。観客はその実践的な映画の撮影につぎ込まれた我々のすべての努力を感じてくれたんだと思う
●座席の端をつかむような手に汗握る映画だったという感想が絶えないよ。ストーリーが語られる中での、実践的な映画製作の力が本当に評価されたんだと実感している
////////////////////////////////////////
SNS上では3作目の場面設定を、「海軍を定年退官したマーベリックは、タイのリゾート地近くで小型機での遊覧飛行や操縦体験を提供する暮らしを始めていた。地元の人達とも馴染み、かつての緊張の日々から解放されたそんな一日が終わりを告げる夕暮れ時、仕事を終えシャワーを浴びたマーベリックがビール片手に南国の風に吹かれていると・・・。かつての同僚が突然訪ねてきた。マーベリック、頼みを聞いてくれないか・・・」と語る人まで現れています
以上の出だしが、嘘か誠か全く分かりませんが、既にファンの期待や妄想は「千里を駆け巡る」レベルになっているのでしょう。まんぐーすは「トップガン マーヴェリック」見る前、突拍子もない場面設定や、現実とかけ離れた作戦任務が描かれて白けるのでは・・・と一抹の懸念を抱いていましたが、大迫力の音響と映像で、コロナ下で縮んでいた心を開放してもらいました。3作目にも期待いたしましょう
映画トップガン関連の記事
「太平洋軍トップはトップガン出身」→https://holylandtokyo.com/2020/12/07/337/
「コロナで第2弾公開延期」→https://holylandtokyo.com/2020/04/12/722/
「第2弾の予告編2」→https://holylandtokyo.com/2019/12/19/2847/
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ただクルーズの予定は2025年又は26年まで余裕なしとか
現在61歳(1962年生)のクルーズはどんな役割を?
1月11日付米映画情報専門サイト「Puck」によれば、大ヒット映画「トップガン」の第3弾にパラマウントが着手した模様です。主演のトム・クルーズ(Tom Cruise)は先日、米ワーナー・ブラザースとパートナー契約を締結したのですが、独占的な契約ではないため、今後も『トップガン』『ミッション:インポッシブル』シリーズでパラマウントと連携していくとのことです。
1986年公開「トップガン」の続編である2022年公開「トップガン マーヴェリック」は、トム・クルーズのキャリア史上最高となる14億9000万ドル(約2160億円)の世界興行収入を記録。作品賞を含むアカデミー賞6部門にノミネートされ、音響賞を受賞しています。
大ヒットの「トップガン マーヴェリック」の脚本を共同執筆したアーレン・クルーガーが、同人気シリーズの最新作に向けて脚本の草稿に取り掛かっているとも報じられています。
「Puck」によれば、3作目では主演のトム・クルーズをはじめ、ルースター役のマイルズ・テラー(Miles Teller)やハングマン役のグレン・パウエル(Glen Powell)といったキャストの復帰も見込まれているとのこと。またジェリー・ブラッカイマーとデヴィッド・エリソンも引き続きプロデューサーを務める見込みだという。
更に、前作でメガホンをとったジョセフ・コシンスキーが、監督もしくは次作に戻ってくる可能性もあるという。
ただ、トム・クルーズには現在、『ミッション:インポッシブル』シリーズ第8弾や、ダグ・ライマン監督と共に宇宙で撮影する新作映画が控えているとも言われており、「Puck」は「クルーズの予定は2025年又は26年まで余裕がないのでは?」とも報じています
「トップガン マーヴェリック」の監督で、3作目でもメガホンを握る、又はプロデューサーとして関わる可能性があるらしいコシンスキー氏は、第2弾が大成功を収めた理由をハリウッド記者団に以下のように語っていました。
●我々はこの映画が可能な限り最上の大きなスクリーンで楽しんでもらえるように製作しました。最新設備の映画館ならば、(コロナ下の)ここ数年皆が待ち望んでいた経験を観客の皆さんが劇場で再発見できると感じたから。成功の理由はそこに関係していると思う。
●ストーリーが人々の心に響いたことも大きいだろう。人々は35年ぶりにトムがマーヴェリックを再演するのを観ずにはいられなかったし、それは本当にスリリングなことであった。だから昔流の映画を作りたかったんだ」「昔流のやり方に最新のハイテク装置を装備して撮影した。観客はその実践的な映画の撮影につぎ込まれた我々のすべての努力を感じてくれたんだと思う
●座席の端をつかむような手に汗握る映画だったという感想が絶えないよ。ストーリーが語られる中での、実践的な映画製作の力が本当に評価されたんだと実感している
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SNS上では3作目の場面設定を、「海軍を定年退官したマーベリックは、タイのリゾート地近くで小型機での遊覧飛行や操縦体験を提供する暮らしを始めていた。地元の人達とも馴染み、かつての緊張の日々から解放されたそんな一日が終わりを告げる夕暮れ時、仕事を終えシャワーを浴びたマーベリックがビール片手に南国の風に吹かれていると・・・。かつての同僚が突然訪ねてきた。マーベリック、頼みを聞いてくれないか・・・」と語る人まで現れています
以上の出だしが、嘘か誠か全く分かりませんが、既にファンの期待や妄想は「千里を駆け巡る」レベルになっているのでしょう。まんぐーすは「トップガン マーヴェリック」見る前、突拍子もない場面設定や、現実とかけ離れた作戦任務が描かれて白けるのでは・・・と一抹の懸念を抱いていましたが、大迫力の音響と映像で、コロナ下で縮んでいた心を開放してもらいました。3作目にも期待いたしましょう
映画トップガン関連の記事
「太平洋軍トップはトップガン出身」→https://holylandtokyo.com/2020/12/07/337/
「コロナで第2弾公開延期」→https://holylandtokyo.com/2020/04/12/722/
「第2弾の予告編2」→https://holylandtokyo.com/2019/12/19/2847/
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米空軍が電動固定翼機の3か月間のお試し試験終了 [米空軍]
Joby Aviation社電動ヘリ試験に続き固定翼Aliaでも
負傷者搬送やF-35部品輸送の低コスト運用
トラック車両輸送より「早くて安い」とアピール
1月28日、電動固定翼機「Alia」を開発したBETA Technologies社が、米空軍と共に10月末からフロリダ州Duke飛行場(Tyndall空軍基地から約120㎞)を拠点として取り組んできた同機(機体はBETA社保有)の3か月間に及ぶお試し試行運用を終了し、従来C-130輸送機が行ってきた負傷者の高度医療機関近傍への空輸や、設備不十分な飛行場に着陸したF-35に修理用部品を空輸する試験飛行などを行ったと発表しました
米空軍は2020年2月から、日進月歩の民生電動ヘリ&航空機を活用するプロジェクト「Agility Prime」を本格的に立ち上げ、空軍研究所のAFWERXチームが主導で10社以上の企業と様々なレベルの契約を締結して「民間活力活用」を図っており、2023年年9月には「電動ヘリeVTOL」として、トヨタ自動車も600億円出資しているJoby Aviation社から初号機を入手し、加州エドワーズ空軍基地で同じく3か月間のお試し使用試験を行ったところです
電動ヘリ&電動固定翼機の用途を空軍は多様な側面から検討中ですが、従来型ヘリでは危険な特殊部隊員の侵入・帰還輸送や敵領域での救難救助、静粛性を活用した偵察、最前線の分散運用基地での輸送任務、広大な演習や試験場での移動用など、66項目の将来想定任務がアイディアとして米空軍プロジェクトチーム内で検討されているとのことです。
また「無人機」開発の教訓から、民間主導の競争に任せすぎると価格競争になり、結果として中国製部品や中国企業がサプライチェーンに大きく絡んで米国防省が採用できなくなる問題の再発を防ぐため、民間企業の競争や柔軟な発想を妨げない「ほどほど」の米国防省による関与で、米国内の電動ヘリ&航空機産業を成長させつつ、米国内サプライチェーンも育成する姿勢で取り組んでいるようです。
電動固定翼機「Alia」の3か月お試し試験では
●まず「Alia」は、幅約50フィート(15m)、航続距離250マイル(450㎞)、最大速度138ノット(時速250㎞)でペイロードは1000ポンド(約450㎏)、騒音レベルは通常ヘリの10%程度レベル。
●「Alia」には、垂直離着陸可能なティルローター形式の型もあるが、空軍は通常離着陸型をお試し。機体の受け入れ前に、3基のシュミレータ(うち1台は移動可能型)と2機の充電設備を入手済で、2023年10月に米国防省初の充電設備としてDuke飛行場に設置
●1月11日実施の患者輸送試験の概要
・救難救助ヘリHH-60Wが、患者を最前線基地想定のジョージア州Moody空軍基地から、安全な後方基地を想定したフロリダ州Eglin基地に空輸。その後Eglin基地に待機していた「Alia」機内にストレッチャー毎患者を移し、高度医療施設近傍をイメージした約120㎞先のDuke飛行場へ、従来のC-130輸送機ではなくAliaで移送
・BETA Technologies社は、「僅か10分でのHH-60ヘリからAliaへの乗り換えは、一刻を争う患者輸送にとって重要なポイント」(C-130の場合、機体への患者の固定、エンジン始動から離陸までの時間もより多く必要)、「この120㎞飛行にC-130は乗員3名と燃料費約1600ドルが必要だが、Aliaは乗員2名と燃料費わずか5ドルで可能」(エンジン推進航空機と比較し、単純な構造の電動航空機は、維持整備費も安価)とアピール
・米空軍の試験飛行担当部隊指揮官は、「Aliaの様な低コスト輸送アセットを導入することで、前線での空輸任務に必要なC-130の負担軽減が可能」と電動航空機の利点をアピール
●F-35部品の輸送試験
・「Maintenance Recovery Team (MRT) mission」として、Duke飛行場に緊急着陸したF-35の修理に必要な部品を、Eglin基地との間を往復してAliaが空輸
・BETA Technologies社は、「この任務を車両による陸上輸送で行うと、4時間とガソリン代45ドルが必要だが、Aliaだと1時間と燃料代25ドルで可能」とアピール
///////////////////////////////////////////
米空軍は上記でご紹介したJoby社とBETA Technologies社製の電動ヘリや航空機の「お試し試験」の他に、既にArcher Aviation社と約210億円で6機の電動eVTOL機購入契約を結んでいるとのことで、「まず電動ヘリや電動固定翼機の特性を米空軍内に周知する」フェーズから、徐々に「本格的な任務アサインと部隊戦力化」フェーズに進んでいる模様です
どの機体もデザインが洗練されており、既存の軍需産業が生み出す航空機とは一味違いますねぇ・・・・。完全に素人目線ですが・・・
米空軍の「Agility Prime」計画
「電動固定翼機Aliaの試験開始」→https://holylandtokyo.com/2023/12/05/5267/
「Joby社電動ヘリで本格試験開始」→https://holylandtokyo.com/2023/10/05/5076/
「米空軍が電動ヘリ導入検討開始」→https://holylandtokyo.com/2022/06/29/3370/
「電動ヘリeVTOLでACE構想推進へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/13/105/
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負傷者搬送やF-35部品輸送の低コスト運用
トラック車両輸送より「早くて安い」とアピール
1月28日、電動固定翼機「Alia」を開発したBETA Technologies社が、米空軍と共に10月末からフロリダ州Duke飛行場(Tyndall空軍基地から約120㎞)を拠点として取り組んできた同機(機体はBETA社保有)の3か月間に及ぶお試し試行運用を終了し、従来C-130輸送機が行ってきた負傷者の高度医療機関近傍への空輸や、設備不十分な飛行場に着陸したF-35に修理用部品を空輸する試験飛行などを行ったと発表しました
米空軍は2020年2月から、日進月歩の民生電動ヘリ&航空機を活用するプロジェクト「Agility Prime」を本格的に立ち上げ、空軍研究所のAFWERXチームが主導で10社以上の企業と様々なレベルの契約を締結して「民間活力活用」を図っており、2023年年9月には「電動ヘリeVTOL」として、トヨタ自動車も600億円出資しているJoby Aviation社から初号機を入手し、加州エドワーズ空軍基地で同じく3か月間のお試し使用試験を行ったところです
電動ヘリ&電動固定翼機の用途を空軍は多様な側面から検討中ですが、従来型ヘリでは危険な特殊部隊員の侵入・帰還輸送や敵領域での救難救助、静粛性を活用した偵察、最前線の分散運用基地での輸送任務、広大な演習や試験場での移動用など、66項目の将来想定任務がアイディアとして米空軍プロジェクトチーム内で検討されているとのことです。
また「無人機」開発の教訓から、民間主導の競争に任せすぎると価格競争になり、結果として中国製部品や中国企業がサプライチェーンに大きく絡んで米国防省が採用できなくなる問題の再発を防ぐため、民間企業の競争や柔軟な発想を妨げない「ほどほど」の米国防省による関与で、米国内の電動ヘリ&航空機産業を成長させつつ、米国内サプライチェーンも育成する姿勢で取り組んでいるようです。
電動固定翼機「Alia」の3か月お試し試験では
●まず「Alia」は、幅約50フィート(15m)、航続距離250マイル(450㎞)、最大速度138ノット(時速250㎞)でペイロードは1000ポンド(約450㎏)、騒音レベルは通常ヘリの10%程度レベル。
●「Alia」には、垂直離着陸可能なティルローター形式の型もあるが、空軍は通常離着陸型をお試し。機体の受け入れ前に、3基のシュミレータ(うち1台は移動可能型)と2機の充電設備を入手済で、2023年10月に米国防省初の充電設備としてDuke飛行場に設置
●1月11日実施の患者輸送試験の概要
・救難救助ヘリHH-60Wが、患者を最前線基地想定のジョージア州Moody空軍基地から、安全な後方基地を想定したフロリダ州Eglin基地に空輸。その後Eglin基地に待機していた「Alia」機内にストレッチャー毎患者を移し、高度医療施設近傍をイメージした約120㎞先のDuke飛行場へ、従来のC-130輸送機ではなくAliaで移送
・BETA Technologies社は、「僅か10分でのHH-60ヘリからAliaへの乗り換えは、一刻を争う患者輸送にとって重要なポイント」(C-130の場合、機体への患者の固定、エンジン始動から離陸までの時間もより多く必要)、「この120㎞飛行にC-130は乗員3名と燃料費約1600ドルが必要だが、Aliaは乗員2名と燃料費わずか5ドルで可能」(エンジン推進航空機と比較し、単純な構造の電動航空機は、維持整備費も安価)とアピール
・米空軍の試験飛行担当部隊指揮官は、「Aliaの様な低コスト輸送アセットを導入することで、前線での空輸任務に必要なC-130の負担軽減が可能」と電動航空機の利点をアピール
●F-35部品の輸送試験
・「Maintenance Recovery Team (MRT) mission」として、Duke飛行場に緊急着陸したF-35の修理に必要な部品を、Eglin基地との間を往復してAliaが空輸
・BETA Technologies社は、「この任務を車両による陸上輸送で行うと、4時間とガソリン代45ドルが必要だが、Aliaだと1時間と燃料代25ドルで可能」とアピール
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米空軍は上記でご紹介したJoby社とBETA Technologies社製の電動ヘリや航空機の「お試し試験」の他に、既にArcher Aviation社と約210億円で6機の電動eVTOL機購入契約を結んでいるとのことで、「まず電動ヘリや電動固定翼機の特性を米空軍内に周知する」フェーズから、徐々に「本格的な任務アサインと部隊戦力化」フェーズに進んでいる模様です
どの機体もデザインが洗練されており、既存の軍需産業が生み出す航空機とは一味違いますねぇ・・・・。完全に素人目線ですが・・・
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米海軍が募集難を受け「高卒」条件を撤廃へ [Joint・統合参謀本部]
米海軍は2000年に一年間だけ緩和した過去が
陸空海兵宇宙軍はそこまでの緩和を許容せず
「コックや甲板長など」可能な仕事がある・・・と
1月27日付Military.com記事が、米海軍司令部人事計画部長であるRick Cheeseman海軍中将へのAPによるインタビュー記事を引用しつつ、新兵募集難に苦しむ米海軍が、採用学力テストで一定の成績を納めれば、高校卒業資格の無い若者を24年ぶりに採用に踏み切ると報じています。陸空海兵隊宇宙軍が「最後の一線として」原則維持している「高卒以上」採用の原則を断念する決定に、波紋が広がっています
コロナ感染予防対策として、高校や各種イベントでの採用活動自粛を強いられ、コロナ後は一般企業の好条件を武器にした旺盛な採用活動の後塵を拝して人材集めに苦悩する米軍全体にあって、2023年度目標の3万7700名の募集目標数に対し、31800名(目標の84%)しか採用できなかった米海軍は、前線の人手不足を賄うため、2024年度は4万600名の採用目標を掲げています。ちなみに2024年度の米海軍予算定員は33万8000名で、募集目標の占める大きさが衝撃的です
この2024年度採用目標について同中将は、「我々はこれだけの新人が必要で、募集担当官に4万600名かき集めて来いとはっぱをかけている。完全に達成可能な数字だとは考えていないが、この目標に向かっていく」と語っており、単なる悲壮感を超えた、どうしようもない現実へ、底なしの対応を迫られている感さえ漂っています。
ただ昨年の募集目標達成率で米海軍の84%より低い米陸軍(75%)は、「高卒」基準の放棄まで踏み込んでおらず、同じく目標を達成できなかった米空軍も含め、これまでの採用期間を延長したり、採用前に数週間から数か月の準備教育を「高卒以上」の入隊希望者に行い、入隊者の質確保に取り組んだりしているところです
記事によると、米海軍は2023年度に「高卒以上」資格が無い入隊希望者2442名を「門前払い」したということですが、今回の「高卒資格以上」の条件撤廃決定に伴い、決定後72時間以内に2442名全てに当該決定を伝え、改めて米海軍への入隊意思確認の接触を図ったと同中将は語っています
厳密にいえば、例えば米空軍も入隊採用試験で100点満点の65点以上取れば、「高卒以上」の資格が無くても採用しているようですが、その比率は0.5%以下で、例外的に優秀な場合のみに受け入れているようです。
募集目標未達で目標の75%しか採用できなかった米陸軍は、米海軍のように採用学力試験で50点以上取れば「高卒以上」の資格が無くても採用との方針で進むと、採用後の新兵教育部隊で脱落者が増えるだけだ・・・との問題意識から「高卒以上」条件を崩すつもりは無いようです
この懸念に関して米海軍人事部長Cheeseman中将は、「学力が低い新入兵士の初期教育機関での脱落率は11.4%で、学力の高いグループの脱落率6.5%より高いが、それほど大きな差だとは考えていない」、「コックや甲板長(cook or boatswain mate)等の役割を期待する新兵にそれほど高い学力は必要ない。必要な教育を行えば任務を十分果たしてくれる」、
「米海軍は並行して人材確保策を検討しているが、学力レベルを下げて採用する手法もリスクをとって試してみたい。我々は決断した。やってみようと・・・」と、実に正直に語っています
////////////////////////////////////////
2024年度の目標数に関し「完全に達成可能な数字だとは考えていないが、この目標に向かっていく」・・と語る同中将の目には、現在の米海軍最前線部隊の様子はどう映っているのでしょうか?
一昔前では考えられなかったような、様々な問題や異常事態が前線部隊では起こっているのでしょうが、日本にとっても、決して「対岸の火事」ではないはずです。
新兵募集難&離職者増への対応
「空軍が募集年齢上限を42歳に」→https://holylandtokyo.com/2023/10/31/5184/
「空軍が24年ぶりに募集10%未達へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/25/5035/
「入隊学力試験に電卓持ち込み可へ」→https://holylandtokyo.com/2023/08/29/4976/
「募集難に合法移民へ猛烈アプローチ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/16/4743/
「兵士慰留に職種変更容易化へ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/12/4608/
「米空軍が体脂肪基準緩和へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/07/4494/
「歩きスマホやポケットハンドOK」→https://holylandtokyo.com/2021/12/16/2519/
米空軍パイロット不足関連
「コロナ後の操縦者争奪戦に備え」→https://holylandtokyo.com/2021/10/17/2271/
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-20
「ヘリ操縦者養成から固定翼削除試行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-06
「米空軍がパイロット募集の身長基準を廃止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-23
「Fly-only管理の募集中止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-15
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-19
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18
「操縦者不足緩和?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-12
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3
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陸空海兵宇宙軍はそこまでの緩和を許容せず
「コックや甲板長など」可能な仕事がある・・・と
1月27日付Military.com記事が、米海軍司令部人事計画部長であるRick Cheeseman海軍中将へのAPによるインタビュー記事を引用しつつ、新兵募集難に苦しむ米海軍が、採用学力テストで一定の成績を納めれば、高校卒業資格の無い若者を24年ぶりに採用に踏み切ると報じています。陸空海兵隊宇宙軍が「最後の一線として」原則維持している「高卒以上」採用の原則を断念する決定に、波紋が広がっています
コロナ感染予防対策として、高校や各種イベントでの採用活動自粛を強いられ、コロナ後は一般企業の好条件を武器にした旺盛な採用活動の後塵を拝して人材集めに苦悩する米軍全体にあって、2023年度目標の3万7700名の募集目標数に対し、31800名(目標の84%)しか採用できなかった米海軍は、前線の人手不足を賄うため、2024年度は4万600名の採用目標を掲げています。ちなみに2024年度の米海軍予算定員は33万8000名で、募集目標の占める大きさが衝撃的です
この2024年度採用目標について同中将は、「我々はこれだけの新人が必要で、募集担当官に4万600名かき集めて来いとはっぱをかけている。完全に達成可能な数字だとは考えていないが、この目標に向かっていく」と語っており、単なる悲壮感を超えた、どうしようもない現実へ、底なしの対応を迫られている感さえ漂っています。
ただ昨年の募集目標達成率で米海軍の84%より低い米陸軍(75%)は、「高卒」基準の放棄まで踏み込んでおらず、同じく目標を達成できなかった米空軍も含め、これまでの採用期間を延長したり、採用前に数週間から数か月の準備教育を「高卒以上」の入隊希望者に行い、入隊者の質確保に取り組んだりしているところです
記事によると、米海軍は2023年度に「高卒以上」資格が無い入隊希望者2442名を「門前払い」したということですが、今回の「高卒資格以上」の条件撤廃決定に伴い、決定後72時間以内に2442名全てに当該決定を伝え、改めて米海軍への入隊意思確認の接触を図ったと同中将は語っています
厳密にいえば、例えば米空軍も入隊採用試験で100点満点の65点以上取れば、「高卒以上」の資格が無くても採用しているようですが、その比率は0.5%以下で、例外的に優秀な場合のみに受け入れているようです。
募集目標未達で目標の75%しか採用できなかった米陸軍は、米海軍のように採用学力試験で50点以上取れば「高卒以上」の資格が無くても採用との方針で進むと、採用後の新兵教育部隊で脱落者が増えるだけだ・・・との問題意識から「高卒以上」条件を崩すつもりは無いようです
この懸念に関して米海軍人事部長Cheeseman中将は、「学力が低い新入兵士の初期教育機関での脱落率は11.4%で、学力の高いグループの脱落率6.5%より高いが、それほど大きな差だとは考えていない」、「コックや甲板長(cook or boatswain mate)等の役割を期待する新兵にそれほど高い学力は必要ない。必要な教育を行えば任務を十分果たしてくれる」、
「米海軍は並行して人材確保策を検討しているが、学力レベルを下げて採用する手法もリスクをとって試してみたい。我々は決断した。やってみようと・・・」と、実に正直に語っています
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2024年度の目標数に関し「完全に達成可能な数字だとは考えていないが、この目標に向かっていく」・・と語る同中将の目には、現在の米海軍最前線部隊の様子はどう映っているのでしょうか?
一昔前では考えられなかったような、様々な問題や異常事態が前線部隊では起こっているのでしょうが、日本にとっても、決して「対岸の火事」ではないはずです。
新兵募集難&離職者増への対応
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「米空軍がパイロット募集の身長基準を廃止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-23
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「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
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女性陸軍大佐が男性部下への性的襲撃で解任 [Joint・統合参謀本部]
アジア太平洋同盟国への支援協力担当部隊長
女性が加害者の性的襲撃は約6%との米国防省統計
襲撃複数回のほか、あそこを握るとかも・・
1月23日付Military.comが、昨年10月13日に第5安全保障支援旅団(5th SFAB : 5th Security Force Assistance Brigade)の第5工兵大隊長(5th Brigade Engineer Battalion)だったMeghann Sullivan大佐(女性)を、男性部下に性的襲撃(sexual assault)で同ポストから解任していたことを、米陸軍報道官が最近になって公表したと報じました
解任されたSullivan大佐はまだ米陸軍に所属しているものの、現在は異なる基地(5th SFABはワシントン州のLewis-McChord統合基地所在)の第1軍団隷下部隊に異動しており、弁護士を付けて係争中なのか等、それ以上の細部は明らかになっていませんが、5th SFSBに対しては電子メールや音声記録等々を含む部隊調査が行われ、結果として解任されたSullivan大佐の上司たる5th SFSB司令官Jonathan Chun大佐も解任され、後に米陸軍を離職しているとのことです
同事案に関与した一人の匿名情報源によれば、解任されたSullivan大佐は、少なくとも2名の男性部下を性的襲撃し、他に数名の男性隊員にセクハラ行為を行い、右事案のいくつかは飲酒強要などアルコールにも絡むもので、中には男性部下に無理やりキスしたり、相手の同意なく男性兵士のベルトの下部分を手でつかんだりしたとの容疑がかけられていたとのことです。
なお、第5安全保障支援旅団のようなSFAB(Security Force Assistance Brigade)は、2017年から2020年にかけ、同盟国軍の訓練や能力向上を支援するために新設された部隊で、5th SFABはアジア太平洋地域の中でも豪州、日本、モンゴルなど対中国で重要な同盟国を主担当にしており、Sullivan大佐は同旅団で最初の女性大隊長だったとのことです
性的襲撃関連の米国防省2022年対象調査によれば
●性的襲撃被害者の中で、男性兵士の占める割合は約10%であるが、被害者が恥ずかしくて上司等への報告を控えているケースが相当数あるのではないか、と国防省は考えている
●また性的襲撃の中で、女性が加害者である件数は約6%であるが、この場合も同じく被害者が訴え出ていないケースが多数あるのではないか、と国防省は見ている
●男性の上級士官が加害者であるケースは8%を占めているが、女性上級士官が加害者のケースは極めて稀で、国防省の統計の中でほとんど確認できない(加害者を性別で区分していない報告も多い)
////////////////////////////////////////
以前、華やかな経歴の米空軍女性戦闘機パイロット少将が、「部下を罵倒する」「会議で不規則発言を繰り返す」「電話で喚き散らす」などの行為を繰り返し、職務を解任され退職したケースをご紹介したことがありましたが、男性の部下をレイプする大佐のケースは初めて見聞きしました。米軍のような大きな組織は社会の縮図ですから、中にはそんな人が紛れ込んでいるのでしょう・・・
ただ2022年を対象とした米国防省の性的襲撃関連調査で、「男性兵士の被害者は約10%」「女性が加害者である件数は約6%」との部分について、国防省が「周囲からの偏見を恐れ、未報告の事案が(相当数)存在している:is seen by the Pentagon as underreported due to societal stigma」と分析している点は興味深いところです
女性士官に関するいろいろ案件
「超優秀なはずの女性少将Pがクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「女性上院議員が空軍P時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
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女性が加害者の性的襲撃は約6%との米国防省統計
襲撃複数回のほか、あそこを握るとかも・・
1月23日付Military.comが、昨年10月13日に第5安全保障支援旅団(5th SFAB : 5th Security Force Assistance Brigade)の第5工兵大隊長(5th Brigade Engineer Battalion)だったMeghann Sullivan大佐(女性)を、男性部下に性的襲撃(sexual assault)で同ポストから解任していたことを、米陸軍報道官が最近になって公表したと報じました
解任されたSullivan大佐はまだ米陸軍に所属しているものの、現在は異なる基地(5th SFABはワシントン州のLewis-McChord統合基地所在)の第1軍団隷下部隊に異動しており、弁護士を付けて係争中なのか等、それ以上の細部は明らかになっていませんが、5th SFSBに対しては電子メールや音声記録等々を含む部隊調査が行われ、結果として解任されたSullivan大佐の上司たる5th SFSB司令官Jonathan Chun大佐も解任され、後に米陸軍を離職しているとのことです
同事案に関与した一人の匿名情報源によれば、解任されたSullivan大佐は、少なくとも2名の男性部下を性的襲撃し、他に数名の男性隊員にセクハラ行為を行い、右事案のいくつかは飲酒強要などアルコールにも絡むもので、中には男性部下に無理やりキスしたり、相手の同意なく男性兵士のベルトの下部分を手でつかんだりしたとの容疑がかけられていたとのことです。
なお、第5安全保障支援旅団のようなSFAB(Security Force Assistance Brigade)は、2017年から2020年にかけ、同盟国軍の訓練や能力向上を支援するために新設された部隊で、5th SFABはアジア太平洋地域の中でも豪州、日本、モンゴルなど対中国で重要な同盟国を主担当にしており、Sullivan大佐は同旅団で最初の女性大隊長だったとのことです
性的襲撃関連の米国防省2022年対象調査によれば
●性的襲撃被害者の中で、男性兵士の占める割合は約10%であるが、被害者が恥ずかしくて上司等への報告を控えているケースが相当数あるのではないか、と国防省は考えている
●また性的襲撃の中で、女性が加害者である件数は約6%であるが、この場合も同じく被害者が訴え出ていないケースが多数あるのではないか、と国防省は見ている
●男性の上級士官が加害者であるケースは8%を占めているが、女性上級士官が加害者のケースは極めて稀で、国防省の統計の中でほとんど確認できない(加害者を性別で区分していない報告も多い)
////////////////////////////////////////
以前、華やかな経歴の米空軍女性戦闘機パイロット少将が、「部下を罵倒する」「会議で不規則発言を繰り返す」「電話で喚き散らす」などの行為を繰り返し、職務を解任され退職したケースをご紹介したことがありましたが、男性の部下をレイプする大佐のケースは初めて見聞きしました。米軍のような大きな組織は社会の縮図ですから、中にはそんな人が紛れ込んでいるのでしょう・・・
ただ2022年を対象とした米国防省の性的襲撃関連調査で、「男性兵士の被害者は約10%」「女性が加害者である件数は約6%」との部分について、国防省が「周囲からの偏見を恐れ、未報告の事案が(相当数)存在している:is seen by the Pentagon as underreported due to societal stigma」と分析している点は興味深いところです
女性士官に関するいろいろ案件
「超優秀なはずの女性少将Pがクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「女性上院議員が空軍P時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
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