米海軍が募集難を受け「高卒」条件を撤廃へ [Joint・統合参謀本部]
米海軍は2000年に一年間だけ緩和した過去が
陸空海兵宇宙軍はそこまでの緩和を許容せず
「コックや甲板長など」可能な仕事がある・・・と
1月27日付Military.com記事が、米海軍司令部人事計画部長であるRick Cheeseman海軍中将へのAPによるインタビュー記事を引用しつつ、新兵募集難に苦しむ米海軍が、採用学力テストで一定の成績を納めれば、高校卒業資格の無い若者を24年ぶりに採用に踏み切ると報じています。陸空海兵隊宇宙軍が「最後の一線として」原則維持している「高卒以上」採用の原則を断念する決定に、波紋が広がっています
コロナ感染予防対策として、高校や各種イベントでの採用活動自粛を強いられ、コロナ後は一般企業の好条件を武器にした旺盛な採用活動の後塵を拝して人材集めに苦悩する米軍全体にあって、2023年度目標の3万7700名の募集目標数に対し、31800名(目標の84%)しか採用できなかった米海軍は、前線の人手不足を賄うため、2024年度は4万600名の採用目標を掲げています。ちなみに2024年度の米海軍予算定員は33万8000名で、募集目標の占める大きさが衝撃的です
この2024年度採用目標について同中将は、「我々はこれだけの新人が必要で、募集担当官に4万600名かき集めて来いとはっぱをかけている。完全に達成可能な数字だとは考えていないが、この目標に向かっていく」と語っており、単なる悲壮感を超えた、どうしようもない現実へ、底なしの対応を迫られている感さえ漂っています。
ただ昨年の募集目標達成率で米海軍の84%より低い米陸軍(75%)は、「高卒」基準の放棄まで踏み込んでおらず、同じく目標を達成できなかった米空軍も含め、これまでの採用期間を延長したり、採用前に数週間から数か月の準備教育を「高卒以上」の入隊希望者に行い、入隊者の質確保に取り組んだりしているところです
記事によると、米海軍は2023年度に「高卒以上」資格が無い入隊希望者2442名を「門前払い」したということですが、今回の「高卒資格以上」の条件撤廃決定に伴い、決定後72時間以内に2442名全てに当該決定を伝え、改めて米海軍への入隊意思確認の接触を図ったと同中将は語っています
厳密にいえば、例えば米空軍も入隊採用試験で100点満点の65点以上取れば、「高卒以上」の資格が無くても採用しているようですが、その比率は0.5%以下で、例外的に優秀な場合のみに受け入れているようです。
募集目標未達で目標の75%しか採用できなかった米陸軍は、米海軍のように採用学力試験で50点以上取れば「高卒以上」の資格が無くても採用との方針で進むと、採用後の新兵教育部隊で脱落者が増えるだけだ・・・との問題意識から「高卒以上」条件を崩すつもりは無いようです
この懸念に関して米海軍人事部長Cheeseman中将は、「学力が低い新入兵士の初期教育機関での脱落率は11.4%で、学力の高いグループの脱落率6.5%より高いが、それほど大きな差だとは考えていない」、「コックや甲板長(cook or boatswain mate)等の役割を期待する新兵にそれほど高い学力は必要ない。必要な教育を行えば任務を十分果たしてくれる」、
「米海軍は並行して人材確保策を検討しているが、学力レベルを下げて採用する手法もリスクをとって試してみたい。我々は決断した。やってみようと・・・」と、実に正直に語っています
////////////////////////////////////////
2024年度の目標数に関し「完全に達成可能な数字だとは考えていないが、この目標に向かっていく」・・と語る同中将の目には、現在の米海軍最前線部隊の様子はどう映っているのでしょうか?
一昔前では考えられなかったような、様々な問題や異常事態が前線部隊では起こっているのでしょうが、日本にとっても、決して「対岸の火事」ではないはずです。
新兵募集難&離職者増への対応
「空軍が募集年齢上限を42歳に」→https://holylandtokyo.com/2023/10/31/5184/
「空軍が24年ぶりに募集10%未達へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/25/5035/
「入隊学力試験に電卓持ち込み可へ」→https://holylandtokyo.com/2023/08/29/4976/
「募集難に合法移民へ猛烈アプローチ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/16/4743/
「兵士慰留に職種変更容易化へ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/12/4608/
「米空軍が体脂肪基準緩和へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/07/4494/
「歩きスマホやポケットハンドOK」→https://holylandtokyo.com/2021/12/16/2519/
米空軍パイロット不足関連
「コロナ後の操縦者争奪戦に備え」→https://holylandtokyo.com/2021/10/17/2271/
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-20
「ヘリ操縦者養成から固定翼削除試行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-06
「米空軍がパイロット募集の身長基準を廃止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-23
「Fly-only管理の募集中止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-15
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-19
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18
「操縦者不足緩和?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-12
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
陸空海兵宇宙軍はそこまでの緩和を許容せず
「コックや甲板長など」可能な仕事がある・・・と
1月27日付Military.com記事が、米海軍司令部人事計画部長であるRick Cheeseman海軍中将へのAPによるインタビュー記事を引用しつつ、新兵募集難に苦しむ米海軍が、採用学力テストで一定の成績を納めれば、高校卒業資格の無い若者を24年ぶりに採用に踏み切ると報じています。陸空海兵隊宇宙軍が「最後の一線として」原則維持している「高卒以上」採用の原則を断念する決定に、波紋が広がっています
コロナ感染予防対策として、高校や各種イベントでの採用活動自粛を強いられ、コロナ後は一般企業の好条件を武器にした旺盛な採用活動の後塵を拝して人材集めに苦悩する米軍全体にあって、2023年度目標の3万7700名の募集目標数に対し、31800名(目標の84%)しか採用できなかった米海軍は、前線の人手不足を賄うため、2024年度は4万600名の採用目標を掲げています。ちなみに2024年度の米海軍予算定員は33万8000名で、募集目標の占める大きさが衝撃的です
この2024年度採用目標について同中将は、「我々はこれだけの新人が必要で、募集担当官に4万600名かき集めて来いとはっぱをかけている。完全に達成可能な数字だとは考えていないが、この目標に向かっていく」と語っており、単なる悲壮感を超えた、どうしようもない現実へ、底なしの対応を迫られている感さえ漂っています。
ただ昨年の募集目標達成率で米海軍の84%より低い米陸軍(75%)は、「高卒」基準の放棄まで踏み込んでおらず、同じく目標を達成できなかった米空軍も含め、これまでの採用期間を延長したり、採用前に数週間から数か月の準備教育を「高卒以上」の入隊希望者に行い、入隊者の質確保に取り組んだりしているところです
記事によると、米海軍は2023年度に「高卒以上」資格が無い入隊希望者2442名を「門前払い」したということですが、今回の「高卒資格以上」の条件撤廃決定に伴い、決定後72時間以内に2442名全てに当該決定を伝え、改めて米海軍への入隊意思確認の接触を図ったと同中将は語っています
厳密にいえば、例えば米空軍も入隊採用試験で100点満点の65点以上取れば、「高卒以上」の資格が無くても採用しているようですが、その比率は0.5%以下で、例外的に優秀な場合のみに受け入れているようです。
募集目標未達で目標の75%しか採用できなかった米陸軍は、米海軍のように採用学力試験で50点以上取れば「高卒以上」の資格が無くても採用との方針で進むと、採用後の新兵教育部隊で脱落者が増えるだけだ・・・との問題意識から「高卒以上」条件を崩すつもりは無いようです
この懸念に関して米海軍人事部長Cheeseman中将は、「学力が低い新入兵士の初期教育機関での脱落率は11.4%で、学力の高いグループの脱落率6.5%より高いが、それほど大きな差だとは考えていない」、「コックや甲板長(cook or boatswain mate)等の役割を期待する新兵にそれほど高い学力は必要ない。必要な教育を行えば任務を十分果たしてくれる」、
「米海軍は並行して人材確保策を検討しているが、学力レベルを下げて採用する手法もリスクをとって試してみたい。我々は決断した。やってみようと・・・」と、実に正直に語っています
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2024年度の目標数に関し「完全に達成可能な数字だとは考えていないが、この目標に向かっていく」・・と語る同中将の目には、現在の米海軍最前線部隊の様子はどう映っているのでしょうか?
一昔前では考えられなかったような、様々な問題や異常事態が前線部隊では起こっているのでしょうが、日本にとっても、決して「対岸の火事」ではないはずです。
新兵募集難&離職者増への対応
「空軍が募集年齢上限を42歳に」→https://holylandtokyo.com/2023/10/31/5184/
「空軍が24年ぶりに募集10%未達へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/25/5035/
「入隊学力試験に電卓持ち込み可へ」→https://holylandtokyo.com/2023/08/29/4976/
「募集難に合法移民へ猛烈アプローチ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/16/4743/
「兵士慰留に職種変更容易化へ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/12/4608/
「米空軍が体脂肪基準緩和へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/07/4494/
「歩きスマホやポケットハンドOK」→https://holylandtokyo.com/2021/12/16/2519/
米空軍パイロット不足関連
「コロナ後の操縦者争奪戦に備え」→https://holylandtokyo.com/2021/10/17/2271/
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-20
「ヘリ操縦者養成から固定翼削除試行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-06
「米空軍がパイロット募集の身長基準を廃止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-23
「Fly-only管理の募集中止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-15
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-19
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18
「操縦者不足緩和?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-12
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
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ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
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