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ロシアによるウクライナ侵攻危機を考える [安全保障全般]

米国の選択肢は? ロシアのレッドラインに変化?
ロシアの戦略的目標は?、ロシアの非在来型介入に注意!
正攻法の軍事侵攻の場合ベラルーシに注目

小泉悠.jpg12月10日付Yahoo-Newsで、小泉悠氏(東大先端科学技術研究センター特任助教)による「ロシアによるウクライナ侵攻の危機」との論考が公開され、その包括的な分析が高く評価されています。

もしロシア軍がウクライナに侵攻するなら、地面が凍結して陸軍車両の進軍が容易になる来年1-2月頃かと言われ、論考が出た12月10日以降もウクライナ国境へのロシア軍増強がさらに進み、プーチン大統領の強気な姿勢がさらに加速している状況であり、論考の分析は依然として情勢を見る貴重な資料ですので、長くなりますが概要をご紹介いたします

米露首脳会談と米国の選択肢
米露首脳会談.jpg●日本時間の12月8日未明、米露首脳会談がオンラインで行われたが、全体的には双方「言いたいことを言った」状態で、会談後にバイデン大統領はヘリコプター搭乗直前に、「ポジティブなニュースは、コンタクトを継続しているということだ」と語った程度である
●ロシアが本当に軍事力行使を行うのかは不明だが、もしもロシアが覚悟を固めているなら、米国がこれを阻止する方法は概ね二つに限定される。
①大胆な妥協:「ウ」の中立化など、ロシアの要求(後述)を呑む
②強硬策:「ウ」への米軍展開など、強い軍事的関与を示すのいずれかだ

●ただ、①のような態度を米国が取るのは難しい。軍事威圧に米国が屈すれば、露だけでなく中国にも誤ったメッセージになる可能性大だからである
●他方、②は更に難しい。既に米国は「ウ」に対して武器提供や軍事顧問派遣を行なっているが、露の侵攻抑止には米正規軍を「ウ」派遣することとなり、露軍との正面衝突を覚悟する必要があるが、正式の同盟国ではないウクライナに対してそこまでやる必要性を同盟国や国内世論に説得するのは容易ではない。実際、バイデン大統領は、前述の「ヘリコプター前会見」で、米軍派遣の可能性を明確に否定している

●とすると、米国に残されたカードは経済制裁だけになるのだが、経済政策の効果はプーチン大統領やその側近の世界観に左右され、2014年のロシアのウクライナ介入に際し、欧米からの激しい経済的報復を覚悟の上で臨んだことを考えれば、今回も制裁が効果的だとする根拠は薄い
●米国は国際決済システムSWIFTからのロシア排除を柱に制裁を考えていると報じられており、実現すればロシアの経済的ダメージは甚大である。だが、同様の制裁下にあるイランや北朝鮮は、国家の崩壊に至っていない。ましてロシアは、エネルギー、食料、武器等々、遥かに高い自給能力を有する。SWIFT関連でロシアの軍事介入を止める可能性は高くない

ロシアは何を? 「レッドライン」の変化?
プーチン大統領.jpg●ロシアの本気度は不明であるが、米や「ウ」情報ではロシア軍は9万人内外の兵力で「ウ」を取り囲んでいる模様である。WP紙は12月3日、ロシア軍は予備役10万を含む計17万人で2022年1-2月で侵攻する計画だと報じたが、現兵力がロシア軍の1/4で、約半分が揃えば侵攻するというのが西側の見立ての模様である

●仮にロシアが「ウ」侵攻を考えているならば、その狙いは何か? 今年7月発表のプーチン論文は、ソ連崩壊後もロシアと「ウ」は深いつながりがあるが、西側や「ウ」政府はミンスク合意の履行を拒否し、NATOは軍事力で「ウ」の天然資源や農業資源を管理しようとしているとの情勢認識を示し、
●ウクライナの主権は不安定な状態に置かれているのであり、真の主権を取り戻すことはロシアとのパートナーシップによってのみ可能であるとプーチンは主張し、ロシアが「レッド・ライン」(越えてはならない一線)を変化させたことを示した。

●ロシアの従来の「レッド・ライン」は、ウクライナが西側の一員にならないことであり、これは、2014年以降のロシアによる軍事介入で概ね達成されたと言ってよい状態にあったはずなのに・・・である
●ただ、2014年以降の軍事介入で達成されたのは、ウクライナを「NATO寄り中立」に留めおくことだけで、このような状況にロシアがもはや満足していないことは前述のプーチン論文からも明らかであろう

「ロシア寄り中立」化の強要か
プーチン ウクライナ.jpg●では、ロシアの引いた新しい「レッド・ライン」はどこにあるのか。それはすなわち同国を「ロシア寄り中立」とすることであり、具体的にはミンスク合意を完全履行させることがロシアの狙いであると考えられる
●ミンスク合意とは、第一次合意ではドンバスの紛争地域に一時的に「特別の地位」を与えることを求め、第二次合意では改正憲法と恒久法に基づいたより固定的な地位とすることが定められた。こうして「ウ」の分裂状態を固定化で、ロシアに逆らえない状態にすることが目的とされ、7月のプーチン論文は、時間的猶予は無いとの「最後通牒」であったと言えよう

●しかも、ロシアは第二次合意に追加議定書を付属させ、ウクライナ憲法に中立条項を盛り込むことを計画していたとされる。今回ロシアが狙っているのは、激しい局地戦で「ウ」に壊滅的な打撃を与えたり、政治的に重要な首都キエフ占拠で、「ウ」の「ロシア寄り中立」化を強要することである可能性が高い。
●つまり、ロシアが軍事力を行使する場合、その戦略目標はロシアにとって都合のよい(しかし通常の条件下ではまずウクライナが受け入れないであろう)合意を呑ませることであろうと考えられそうだ

ロシアの非在来型介入のシナリオにも注意
プーチン レッドライン.jpg●とはいえ、ロシアが正攻法かは別問題である。仮にロシア軍は17万人で地面が凍る2022年1-2月に侵攻する予想されるなら、ウクライナ側も当然これに対して備えを固めるだろう。
●しかしロシア軍事思想では、敵の裏をかくのが戦争の常道であり、戦争の最初期段階では、過去の戦例からは予期し難い状況を侵攻側が作り出して利用する可能性が高い

●ロシアの軍事思想の伝統に立つなら、ウクライナに対する非在来型介入のシナリオを想像できよう。例えば大規模なサイバー攻撃を「ウ」全土のインフラに同時多発的に行い、経済や社会を混乱させ、食糧や暖房を欠く状況にウクライナを陥らせて、「人道援助」名目でロシア軍を送り込むことも一案である。
●ドンバス地方でロシア非常事態省が人道援助を大々的に行い、結果的に分離独立状態の固定化に貢献していることを考えると、この種の非武装介入部隊は「ソフトな占領軍」として機能する可能性がある

●あるいは、麻痺状態に陥った社会で反体制運動を引き起し、情報が不完全な中で混乱を拡大させることも想定できる。実際、これはクリミア半島の占拠作戦でロシアが用いた手法であった
●特殊作戦部隊がメディアやネットを占拠して情報を遮断し、ロシア発の偽情報を現地住民に大量に浴びせかけることで自発的にロシアへの併合を求める空気を作り出したのである。こうした手法は近年ロシア軍事思想で「新型戦争」として定式化されており、これらを駆使して軍事力行使に至らずしてウクライナに要求を呑ませる策をロシアが練っていても不思議ではない。

正攻法の軍事侵攻の場合ベラルーシに注目
プーチン ベラルーシ.jpg●もちろん、真っ正面からロシア軍が侵攻してくるという可能性もある。ここで注目されるのが、ロシアと「同盟以上、連邦未満」の間柄となっているベラルーシの振る舞いである
●現在ベラルーシに、訓練名目等でロシア軍が展開している可能性が高いが、仮にこれらの部隊がウクライナ侵攻に参加する場合、その意義は小さくない

●ロシア領から「ウ」に侵攻する場合、露軍は首都キエフ到達前にドニエプル川で前進を阻まれるが、ベラルーシを作戦発起地とするならばこれを回避できるからだ。しかも、ベラルーシ国境からキエフまでは最短で90km未満に過ぎず、電撃的首都占領の可能性もある
●ロシアが何を狙っているのか不明だが、ロシアが「ウ」周辺に集結している軍規模と配置はかつてない様相で、年末から年初にかけては予断を許さない状況が続きそうだ
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小泉悠2.jpg本当に嫌がらせの上手なロシアです。欧州が移民問題やコロナで内政が不安定で、米国バイデン政権の足元がフラフラなのを見逃さず、したたかです

静かな年末年始を心から祈念申し上げます


ロシアとサイバー戦
「ロシア発:驚愕の大規模サイバー攻撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-18
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宇宙太陽光発電エネルギーの電磁波伝送に大きな一歩 [サイバーと宇宙]

太陽光エネルギーを電波に変換するパネル試作成功
夢は宇宙で太陽光発電して地上の部隊に電力供給
米空軍研究所とNorthrop Grummanが共同研究

beaming solar2.jpg12月22日付Defense-Newsが、米空軍研究所がNorthrop Grummanと契約して共同研究している、宇宙で太陽光発電したエネルギーを地上に電波として送信し、地上で電気エネルギーに戻して使用する「Arachne」プロジェクトに関し、カギとなる太陽光エネルギーを電波に変換するパネルの試作に成功したと発表しました

この「Arachne」プロジェクトは、2018年に約110億円で契約が結ばれ、2025年に打ち上げを目指すものですが、今回の実験室での試作パネルだと思われる成果を関係者は「大きな一つのステップだ」と評価しています

beaming solar4.jpg宇宙空間で太陽光発電した電力を電磁波に変換してビーム化発信し、基地を離れて行動する地上部隊兵士に「宇宙から」直接受信させ、電磁波をエネルギーに再変換して使用可能となれば、地上で活動する部隊が動力源を持ち運ぶ負担から解放できる画期的な手法となります

仮にこの技術が実用化されれば、軍事分野だけでなく、民生分野への応用も無限に考えられ、大きなビジネスになる可能性を秘めていますが、今回の発表では細部が不明で、どの程度の発電効率でどの程度が電磁波で伝送できるのか等々が全く分かりません。それでも重要な話なのでご紹介しておきます

12月22日付Defense-News記事によれば
beaming solar5.jpg●2025年に宇宙への打ち上げを目指す「Arachne」プロジェクトは、正式にはSSPIDR(the Space Solar Power Incremental Demonstrations and Research Project)との名称で、衛星に搭載した太陽光発電パネルで発電した電力を電磁波に変換して地上にビーム化伝送し、地上で電磁波を電力を再変換して使用するプロジェクトである
●地上では、基地から進出して辺鄙な場所で行動する部隊や兵士が、直接宇宙からエネルギー供給を受けて電力に変換使用することが可能となり、活動の自由度を増し、部隊の発電設備運搬労力を軽減することを目指している

●空軍研究所AFRLと企業が試作に成功したのは、2枚のパネルを重ねた「サンドイッチ構造」の太陽光パネルで、高効率の太陽光発電パネルと、電力を電磁波に変換して地上伝送用にビーム化するパネルの2枚で構成されている

Arachne.JPG●米空軍研究所のプロジェクト副責任者は、「SSPIDR担当室は、実験室レベルではあるが今回の基礎技術具現化で大いに盛り上がっている。太陽エネルギーをパネルで電磁波に変換する基礎技術の確立は、宇宙空間の太陽光エネルギーを地上へビーム送信し、大規模に活用することに向けた飛躍的な一歩である」との声明を出している
●Northrop Grummanの担当副社長は、「軽量コンパクトなパネルを用いた、太陽光の電磁波エネルギーへの変換成功は、この技術の実用化に向けた極めて大きい前進である」との声明を出している
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beaming solar6.jpg米空軍&Northrop Grummanチームの他にも、民間企業を含め世界同時進行で開発競争がありそうで、今回の試作がどのレベルに位置づけられるのか不明ですが、夢のあるプロジェクトですのでご紹介しました

宇宙から地上に向け発信されたビーム化された電磁波に接したら、鳥は「焼き鳥」になるのでは??? とのレベルで心配しているまんぐーすですが、今後の情報に期待いたします

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グアム展開MQ-4大型海洋監視無人機の1機が改修へ [Joint・統合参謀本部]

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SIGINT機能力付加し2023年再投入へ
EP-3の代替として電子情報偵察も目指す
他の1機は引き続きグアムで活動継続

MQ-4C Guam.jpg12月16日付Defense-Newsが、グアム島に2機展開していた米海軍の無人大型海洋監視機MQ-4C Tritonの1機が、電波信号収集能力を付加する改修のためフロリダ州の基地に帰国したと報じ、改修後の新型機が2023年に初期運用態勢確立を宣言する予定だとしています

MQ-4Cは、米空軍が運用する高高度無人偵察機RQ-4グローバルホークを海洋監視用に改良した機体で、海洋監視用のセンサーで高高度から広範囲の海面監視も可能ですが、低空で艦艇の状況を把握するため、他航空機との衝突防止システムや翼への着氷対策等々を施され、2013年に初飛行している機体です

MQ-4C Guam2.jpg米海軍は、有人機であるP-8哨戒機とMQ-4Cとを組み合わせた海洋監視を構想しており、広範囲をMQ-4Cに監視させて怪しい目標を絞り込み、P-8が怪しい目標を引き継いで細かな対処を行う方式をイメージしており、68機のMQ-4導入が計画されています

試験中の事故等で配備が遅れましたが、2020年1月に2機がグアム島に展開を開始し、米海軍初のMQ-4飛行隊であるVUP-19無人機運用飛行隊から約40名の兵士がグアム島にローテーション派遣され、第7艦隊隷下で運用に従事していました。

MQ-4C Guam3.jpgなおこの間、2021年5月から10月にかけては、2機が日本の三沢基地に展開して海外展開ノウハウ蓄積と、グアムと異なる厳しい環境への適合を経験(無理やりこじつけた理由のような気がします)しました。

グアム島に展開していた2機はベーシックバージョン(IFP-3)で、360度全周用AESA洋上レーダー、フル・モーションの光学・赤外線ビデオ・ストリーミングや収集情報伝達用のデータリンク能力を備えていますが、今回の改修で「IFP-4」型機となり、EP-3A(SIGINT機)の後継となるべく電波情報収集能力を追加付与されるということです

MQ-4C Guam4.jpg更に2024年には「IFP-5」へのグレードアップも構想されており、P-8A哨戒機を補完する能力と長時間滞空能力などの能力向上を行うようです

引き続き1機をグアム島に残し、「初歩的運用能力:early operational capability」段階で、対中国の海洋監視や操作運用要員の養成に従事するということですので、来年の夏にはまた三沢展開があるかもしれません

グアムでの2年間の2機運用を振り返り、VUP-19飛行隊長の海軍中佐は、「(通常の航空機運用で絶えず気に掛ける)燃料の残量把握や緊急時の着陸飛行場確保も大切な要素だったが、(フロリダの基地から太平洋上のMQ-4を)指揮統制する衛星通信網の状況把握に焦点を当てた運用だった」と振り返っています
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MQ-4C Guam5.jpgP-8A哨戒機とMQ-4を組み合わせて効率的な運用を図るとの「理屈」ですが、P-8A哨戒機を運用する「対潜哨戒機族」を守るための「方便」のような気がしてなりません・「職人芸」の対潜水艦作戦には現場に「人」の存在が欠かせないのでしょうか・・・

三沢にMQ-4が展開して対中国で存在感を示されると、海上自衛隊の「P-1対潜哨戒機族」の皆様は心中穏やかでなく、あれこれ「反論」を準備されているんでしょうねぇ・・・

米軍NO2(当時)が米空軍を痛烈批判
「次期爆撃機に有人型は不要」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2011-07-16-1
「米空軍の誰一人として、私に爆撃機が有人である必要性を教えてくれない」、「核任務に有人型が必要だと言うなら、ICBMに有人型があるのか?」

MQ-4C関連の記事
「米海軍のMQ-4グアム配備」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-29
「ハドソン研:68機体制では不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-23
「2018年末までにグアム配備?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-04-14-2
「MQ-4C飛行隊が編制完結」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-2
「誰が海軍無人機を操縦するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-14-1
「映像:MQ-4初飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-23
「グアム配備MQ-4トライトンは今」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-05

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イブの夜には・今年もやりますサンタ大追跡!  [ちょっとお得な話]

コロナだろうが何だろうが、NORADや応援企業やボランティアの尽力で、今年のイブもサンタ大追跡を敢行!

このサイトで子供心を取り戻そう!!!
http://www.noradsanta.org/

日本時間の24日午後5時頃からサンタが北極で活動開始! 日本列島通過は22-23時頃かな???

NORAD(北米防空司令部)からの予告映像
その1(NORADが準備中!)


その2(どのようにサンタを追跡?)


その3(サンタは何歳なのか?)


その4(サンタどのように家の中に?)


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SantaVillage.jpg既に65年の歴史を持つ行事ですが、ユーモアを解する世界の人々に8カ国語(日本、中国、オランダ、スペイン、伊、英米、仏、ポルトガル)で提供されており、厳しい予算の中でも頑張ってくれています。

皆さん!お子さんのいらっしゃる方はもちろん、意中の方とご一緒の方も、はたまた西洋のしきたりを無視する方も、遊び心で一度サイト(記事の冒頭にアドレス記載)を覗いてみては如何ですか。


サンタ追跡の歴史と最新技術(?)映像で!

サンタ大追跡の歴史と最新技術?・・


なぜ米空軍NORADがサンタを追跡するのか?
NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)とその前身である CONAD(中央防衛航空軍基地)は、50 年以上にわたりサンタの飛行を追跡してきました。

NORADsanta.jpgNORADshaup.jpgこの恒例行事は、1955 年にコロラド州に拠点を置くシアーズ ローバック社が、子供向けに「サンタへの直通電話」を開設した際に、なんと誤って CONAD司令長官への直通電話番号を掲載したポスターを全国に掲示した事に始まりました。

子供たちからの間違い電話を受けた当時の司令官シャウプ大佐(写真)が、ユーモアでサンタの行動を部下に米空軍のレーダーで確認させる振りをして、電話を掛けてきた子供たちにサンタの現在地の最新情報を随時伝えたことに始まりました。

1958 年、カナダと米国の両政府は「NORAD」として知られる両国が共同運営する北米防空組織を創設しましたが、NORADもサンタの追跡という伝統も引き継いだというわけです。

それ以来、NORAD の職員とその家族や友人の献身的なボランティアによって、世界中の子供たちからの電話やメールへの対応が続けられています。また、現在ではサンタの追跡にインターネットも利用しています。サンタの現在地を調べようと「NORAD Tracks Santa」ウェブサイトアクセスする人の数は、何百万人にものぼります。

そして今では、世界中のメディアもサンタの飛行経路に関する信頼できる情報源として、NORAD の情報を採用しているそうです。
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どのようにサンタを追跡?
NORAD・Santaサイト情報。ジョークにご注意を。)

●NORAD は、レーダー、人工衛星、サンタ カメラ、ジェット戦闘機の 4 つの最新鋭システムでサンタを追跡します。

santa.jpgまず使用するのは、「北米警戒システム」と呼ばれる NORAD のレーダー システムです。この強力なレーダー システムは、北米の北部国境に張り巡らされた 47 の施設で構成されています。NORAD はクリスマス イブにこのレーダーを絶えず監視して、サンタクロースが北極を出発する瞬間をキャッチします。

●サンタが飛び立ったのをレーダーで確認したら、次の検知システムの出番です。地球の上空約 36,000 km の静止軌道上には、赤外線センサーが搭載され熱を感知することのできる人工衛星が複数配置されています。なんと、赤鼻のトナカイ「ルドルフ」の鼻からは赤外線信号が放出されているため、NORAD の人工衛星はルドルフとサンタの位置を検知できるのです。

3 番目の追跡システムは「サンタ カメラ」ネットワークです。「サンタ追跡プログラム」をインターネット上で展開し始めた 1998 年から使用しています。サンタ カメラは超クールなハイテクの高速デジタル カメラで、世界中にあらかじめ設置されています。NORAD では、これらのカメラをクリスマス イブの 1 日だけ使用します。これで世界中を飛び回るサンタとトナカイの画像と動画を捉えます。

santa-coat.jpg●追跡システムの 4 番手はジェット戦闘機です。CF-18 戦闘機を操縦するカナダ NORAD のパイロットがサンタに接近し、北米へと迎え入れます。米国内では、F-15 や F-16 戦闘機を操縦する米国 NORAD のパイロットが、サンタとその有名なトナカイたち(ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクゼン、コメット、キューピッド、ドナー、ブリッチェン、そしてもちろん、ルドルフ)とのスリル満点の共同飛行を実現します。
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サンタに関する米空軍の公式解説

サンタ行動の科学的分析
●サンタは良い子にしていた子供達の長いリストを持っています。毎年子供たちのリストは増え続けています。結果としてサンタは、1 軒あたり 0.0002~0.0003 秒の速さで各家庭を回らなければいけないということになります!
サンタクロースが1600 歳以上だという事実を考えても、また、サンタは子供たちにプレゼントを届ける大切な仕事を慌ててしようとは思わない点からしても、彼が私達の知る「時空間」で作業しているわけではないことが想像できます。
●そう考えると、私達とは異なる時空間で活動しているらしいと考えるのが唯一合理的な結論となります。

サンタの存在と移動手段について
santa-book.jpg多くの歴史的データと 50 年以上に渡る NORAD の追跡資料から導き出される結論は、サンタクロースが世界中の子供達に心の中に実在し心から愛されているということです
●ライト兄弟による最初の飛行機より以前から、サンタは猛スピードで家から家へと飛び回る方法を見つけなければなりませんでした。サンタ・カメラの画像からサンタは素早く移動するために空飛ぶトナカイの群れを選択したことが分かっています。

●このトナカイたちの詳細はまだまだ不明ですが、分かっていることは、サンタが世界中にプレゼントを届けるという任務の手伝いをトナカイ達に要請したということです。その他の詳細は、素敵な謎のベールに包まれています。

イブの24日午後5時頃からサンタが北極で活動開始!
本年も気楽に楽しみましょう!

NORADのサンタ大追跡webサイト
http://www.noradsanta.org/

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タグ:NORAD Santa Track
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米空軍の飛行中航空機のサイバー対処をMC-130で [サイバーと宇宙]

航空機に関連機材を搭載してのデモ試験は初
飛行中の無人機含むアセットへのサイバー脅威を把握

MC-130 MDT2.jpg米空軍が、特殊作戦機MC-130にサイバー関連機材を初搭載し、飛行中の作戦機や無人機を取り巻くサイバー脅威を分析対応するテスト飛行を12月8日に行い、特殊作戦部隊のMDT(Mission Defense Team)が任務能力を示したと発表しました

第27特殊作戦通信隊(27th Special Operations Communications Squadron)のMDTが、主たる任務が敵地での特殊部隊の潜入・退去・補給、捜索救難活動の支援、心理作戦であるMC-130に初めて試作機器を積み込み、研究室を離れた実環境で実際の兵器システムに連接したということで、このまま装備化するのか等は不明です

MDT.JPGなお今回MDTが行った試みは、重要性は認識されつつも、統合のサイバーコマンドがカバーしきれていなかった新分野で、米空軍が危機感を持って取り組んでいる分野のようです

何せサイバー作戦に関することですので、具体的に搭載機材の狙いが何なのか、何が出来たのか「ぼんやり」とした記事ですが、16日付Defense-News記事からご紹介します

16日付Defense-News記事によれば
MC-130 MDT.jpg●MDT(Mission Defense Team)は、飛行中の航空機や無人機関連の重要なインフラやコンピュータ等の設備や任務遂行を防御する専門とする米空軍組織であり、統合サイバーコマンドに各軍種が差し出しているサイバー防御チームとは別の組織である
●MDTが所属する第27特殊作戦通信隊の先任軍曹は、「MDTはほぼリアルタイムでサイバー環境分析を提供し、任務遂行者が兵器システムに緊要な情報を入力すること等を可能にするとともに、搭乗員の状況把握を強化し、サイバー攻撃への反応対処時間を短縮する能力を提供できる」と説明している

MDT2.JPG●12月8日のテスト飛行では、MDTは新しいMC-130搭載サイバー関連装置の飛行中運用試験に成功し、初めて飛行運用中にリアルタイムでサイバー環境に関するデータ収集を行い、これにより作戦運用を強固にする要求事項を明らかにし、予防整備に役立つ情報を収集することができた
●第27特殊作戦通信隊の隊長Emily Short少佐は、「我が部隊は、将来の競争的な戦略環境における、複雑に込み合い混迷した通信環境の課題を予測し克服するMDTの先駆者であり水先案内人である」と語っている
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MDT3.jpg基礎知識がなく、MC-130に搭載した機材やその役割がサイバー戦の世界でどれだけ重要なのか理解できていませんが、無人機を含む航空アセットがデータリンクで結ばれ使用される中、サイバー戦の対象となることは間違いなく、空軍には強い危機感があるのでしょう

具体的な装備名や耳障りの良いプロジェクト名も明かされない今回の初飛行試験ですが、米空軍がMC-130に搭載したような装置や機体を、サイバーが得意なロシアなんかは保有しているのでしょうか?

色々と気になる報道でした

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「ドキュメント誘導工作」を読む→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1
「サイバー攻撃に即時ミサイル反撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-11-1
「NATOが選挙妨害サイバー演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-13
「サイバーとISR部隊が統合して大統領選挙対策に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「ナカソネ初代司令官が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-17
「大活躍整備員から転換サイバー戦士」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-3

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米海軍がセール(帆)で進む無人水上艇を吟味中 [Joint・統合参謀本部]

風だけで進み、太陽光でセンサー運用
全長約6m、高さ4.5mでウインドサーフィンのような
米沿岸警備隊も試験中

Saildrone.jpg12月13日付Defense-Newsが、米中央軍の海軍がヨルダン南方の紅海で、加州のベンチャー企業「Saildrone社」が製造した「Saildrone Explorer」との「セール(帆)で進む無人水上艇」の試験を、10日から開始したと報じています

「Saildrone Explorer」は、全長約7m(23 feet)、高さ4.5m(16 feet)のウインドサーフィン形状で、波乗り板にセール(帆)が付いたようなシンプルな構造で、自然の風によって進み、搭載センサーや通信系統は太陽光パネル発電エネルギーで動作する仕組みになっています

Saildrone3.jpg既に同社は、サンフランシスコからハワイまでの航海を2013年に34日間で成功させた実績を持ち、搭載した光学カメラや夜間用の赤外線カメラ、艦艇識別装置等などのセンサー等を用い、長期にわたる広範囲の情報収集に活用可能で、ソフトウェアの工夫で運用者が関心のある対象物の情報収集も可能だアピールしています

米海軍がこれら基本性能を踏まえ、具体的にどのような用途に使用を考えているのか不明ですが、記事は「機械学習や人工知能の活用により、見通し線以遠を監視警戒可能な、低コストで温室効果ガス排出ゼロなアセットが確保できることを米海軍は期待している」と説明しています

なお、米沿岸警備隊も2020年秋から、ハワイで「Saildrone社」の製品をテスト開始しているようです
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Saildrone社の関連webページ
https://www.saildrone.com/technology/vehicles

Saildrone2.jpg一般艦艇との比較だと発見されにくいのでしょうが、セールの大きなや形状等から、それなりに発見されやすいとも見えるのですが、海上だと波等に紛れて大丈夫なんでしょうか?

ハワイ(沿岸警備隊)や中東の紅海(米中央軍の海軍)でテストしているのは、太陽光発電が利用しやすいためだと思われますが、米海軍としてどのような用途を考えているのか興味津々です

対中国での劣勢を跳ね返すため、あらゆる手段を排除せず、検討するという基本姿勢だと思います

米海軍の無人システム関連
「無人システム構想が酷評される」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-22
「21年初に本格無人システム演習を太平洋で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-10-1
「潜水艦も無人化を強力推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-03
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇推進案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10

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米陸軍の将来C2「Project Convergence」5つの教訓 [Joint・統合参謀本部]

国防省&統合レベルのJADC2実現に
海は「Project Overmatch」、空は「ABMS」
そして陸は「Project Convergence」

Project Convergence4.jpg12月2日、米国防省が目指す次世代指揮統制JADC2(Joint All-Domain Command and Control)の一環として、米陸軍が取り組む「Project Convergence」の状況について担当陸軍准将が講演し、2021年に実施した各種実験演習を通じて得た「5つの教訓」について語りました

米国防省が目指す次世代指揮統制JADC2は単純化すると、全ドメイン全軍種のセンサーデータや部隊状況を強靭なネットワークで迅速に共有&融合し、人工知能AIで処理して作戦運用&意思決定を支援し、中国との本格紛争で少しでも優位に立とうとの構想です

Project Convergence3.jpg米空軍がその戦い方から先陣を切って2018年頃から「ABMS:先進戦闘管理システム」構想を打ち出し突っ走って国防省や統合のJADC2を引っ張り、2020年頃から海も「Project Overmatch」構想を負けじと打ち出し、陸も「Project Convergence」との名の下にJADC2の流れに乗ろうとしているところです

ABMSやJADC2をけん引していた米空軍省のRoper次官補が政権交代で退任して沈滞ムードでしたが、新政権のHicks国防副長官が6月に、各メジャーコマンドに施策促進チームを派遣して演習訓練を同構想に沿って支援し、教訓を束ねて全米軍にフィードバックするAIDAイニシアチブ(Artificial Intelligence and Data Acceleration Initiative)開始を発表しましたが、すっかり報道も少なくなり、今は何がどうなっているのかよくわかりません

そんな中での米陸軍の動きですので、極めて断片的ながら、12月8日付Defense-News記事から「5つの教訓」をご紹介しておきます

教訓1
Project Convergence7.jpg●「data fabric:データを共有するネットワークの意味か?」の必要性。これなしでは分散したセンサーと兵器発射システムを切れ目なくリンクさせることができない
●「Project Convergence」関係者に、必要な「data fabric」の構築をより一層加速するよう求めている

教訓2
●強靭な広帯域衛星通信確保の重要性。官民両方の衛星通信網を活用し、高性能で待機時間が少ない衛星通信を利用することの重要性を再認識した
●ただし上級指揮官レベルには、有事にこの衛星通信が無傷で継続利用可能だとみなしてほしくない。敵も我のネットワーク粉砕を狙っているから

教訓3
Project Convergence8.jpg●「Project Convergence」における空中中継アセットの重要性。上空で20-26時間連続在空する航空アセットが提供するネットワークの拡大が、どれだけ重要かを認識した
●将来的には48時間連続哨戒する空中アセット確保を狙いたい。また、陸軍の「Future Vertical Lift team」が、発見されにくく撃墜されにくい機体を獲得できるよう支援する必要がある

教訓4
●現在は旅団レベル以下で実験演習を行っているが、師団レベルにまで能力を付与して取り組まないと、適切な作戦指揮統制を目指すのは難しい
●旅団レベル以下が作戦するには、師団レベルに配分されているセンサーなどのアセットが不可欠であり、全体を把握していない師団司令部の下で、旅団以下が能力を発揮することが難しいとの基本事項を再認識した

教訓5
Project Convergence2.jpg●統合作戦運用での軍種間の作戦状況共有の重要性。2021年には「Project Convergence」構想演習を、全ての軍種を交えて初めて行ったが、海軍機や海兵隊F-35との演習でも、米陸軍が構築してきたCPCE(Command Post Computing Environment)を活用して作戦ピクチャーを提供することができた
●ただ今後も、CPCEに様々な陸軍作戦システムやプログラムを融合し、データやセンサー情報融合が可能な態勢を強化していかなければならない
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断片的な情報であれこれ言うのも気が引けますが、ネットワークや衛星通信や空中中継アセットの重要性を改めて認識したとか、旅団レベルではだめだとか、統合運用に向け要改善事項アリとか、知識として知っていたが、実際やってみて身に染みて分かったとのご感想です

重要な一歩ではありますが、「道遠し」の印象を持ちました

Project Convergenceについて
「陸軍と海兵隊F-35が情報共有演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-13

全ドメイン指揮統制連接実験演習:ABMS関連
「国防副長官がAIDA開始発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-23
「具現化第1弾でKC-46に中継ポッド」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-22
「3回目はアジア太平洋設定で」→https://holylandtokyo.com/2020/10/05/425/
「2回目のJADC2又はABMS試験演習」→https://holylandtokyo.com/2020/09/09/476/
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「今後の統合連接C2演習は」→https://holylandtokyo.com/2020/05/14/671/
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28

米海軍と海兵隊は我が道なのか
「米海軍の戦術ネットワークProject Overmatch」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-15
「米空軍の課題:他軍種はABMSに懐疑的」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-12
「統合にデータフォーマットの壁」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-12

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輸送機貨物庫から巡航ミサイル投下&攻撃試験 [米空軍]

まずMC-130で実弾試験、来年春にC-17輸送機でも
今後パレタイズ搭載する弾種や数量増へ
輸送機内で最新の攻撃目標情報を更新し

Rapid Dragon5.jpg12月16日米空軍研究所が、輸送機の後方貨物ドアからパレット搭載された兵器を投下するプロジェクト「Rapid Dragon program」の一環で、MC-130J特殊作戦輸送機から実弾搭載巡航ミサイルを投下して模擬目標攻撃に成功したと発表しました

本プロジェクトに関しては、2020年10月に米空軍がロッキード社と契約し、プロトタイプ試験を2021年にも射程1000㎞の長射程空対地ミサイルJASSM-ERを使用して行うとロッキードが発表していましたが、今回の実弾試験がJASSM-ERだったかは不明です

Rapid Dragon.jpg今回の実弾試験までには、過去5か月間に計5回の模擬弾試験をMC-130J,、EC-130SJ、C-17A輸送機を使用して行っており、今後は2022年春にC-17から実弾投下発射試験を行う予定だということです

また、MC-130Jからの実弾投下発射試験では、1発の実弾巡航ミサイルと3発の模擬弾を同時に投下して試験したようですが、今後はパレット投下する兵器の弾種や数量を増やしていく計画があるようです。

Rapid Dragon2.jpgこの「Rapid Dragon program」では、有事に輸送所用が激増する輸送機への負荷を下げるため、輸送機内の仕様変更なしで軽易に兵器搭載・投下可能なように検討され、攻撃任務に不慣れな搭乗員への負担軽減のため極力データリンクで目標情報を自動的に搭載兵器に伝え、投下後も兵器が自律的に攻撃目標に向かうよう設計されているようです

ただし、輸送機を兵器投下母機として使用する構想には、米空軍の応援団体であるはずの米空軍協会ミッチェル研究所が2020年6月に「反対」レポートを出し、その理由として、「輸送任務を阻害する」、「長射程兵器偏重は予算的自殺だ」、「防御能力のない輸送機に搭載する兵器は長射程で大型になり数量を準備できず高価になり運搬も大変」、「最も費用対効果の高いB-21爆撃機調達を阻害する」等を挙げています

米空軍は約2年後に本プロジェクトを、プロトタイプ開発段階から作戦運用プロトタイプ製造レベルに引き上げる計画ですが、今後も「一山ふた山」ありそうな予感です

12月17日付Defense-News記事によれば
Rapid Dragon3.jpg●メキシコ湾(Gulf of Mexico)実弾試験を行った米空軍特殊作戦コマンドのMC-130J Commandoは、同機の戦闘管理システムBMSを通じて飛行中に攻撃目標情報を入手して巡航ミサイルにインプットした。このような飛行中の目標情報更新入力は初実施であった

●試験では1発の実弾と3発の模擬弾を1つにまとめてパレタイズ搭載していたが、MC-130からパレットを投下後、4発が衝突しないように順番に梱包が解けて、通常と異なりまず垂直落下して距離間隔を確保後、巡航ミサイルの翼や尾翼が展開され、エンジンに点火して自立飛行に移る方式が採用されていた

●米空軍研究所の所長であるHeather Pringle少将はまた、「Rapid Dragon program」をその名の通り、迅速な兵器開発&実戦投入のモデルケースだと語り、従来の長時間を要する従来の調達案件との相違をアピールしている
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Rapid Dragon4.JPG米空軍の輸送機部隊や「輸送機族」には、対中国での作戦で「山のように膨大な」輸送任務が課せられるはずですが、その中で自ら進んで「攻撃任務」を引き受けようとしているのか、誰かの指示で「渋々」協力しているのかよくわかりません

高価な長射程兵器偏重を訴えたミッチェル研究所の懸念事項は、米空軍が繰り返し訴えている米海軍・海兵隊の長射程兵器への「入れ込みすぎ懸念」と重なるものがあり、米空軍内で本プロジェクトを誰が推進応援しているのかが気になります

輸送機からの兵器投下検討
「輸送機から長射程ミサイル投下を本格検証へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-01
「ミッチェル研究所は輸送機からの兵器投下に反対」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「MC-130からパレタイズ兵器投下試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-01

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「空軍大将が批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-03
「米空軍トップが批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「米陸軍トップが長射程攻撃やSEADに意欲満々」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-12
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06

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米空軍がACEドクトリン発表 [米空軍]

Curtis E. LeMayドクトリンセンターが起草
13ページのAgile Combat Employmentドクトリン

ACE9.jpg12月14日、米空軍が対中国を意識したACE(Agile Combat Employment)構想のドクトリンを発表しました

ACE(Agile Combat Employment)構想は、対中国を念頭に置いて当時の司令官が現空軍参謀総長のBrown大将だった太平洋空軍が検討を開始したものですが、対露作戦を検討する欧州米空軍も巻き込んで米空軍主力部隊が取り組んでいるものです

Fighter mix2.JPGACEでは、従来のように設備の整った基盤航空基地は安全だとの前提や、大戦力を集中して効率的運用を志向するのではなく、大規模な基盤基地は敵攻撃に脆弱だとの大前提を置き、戦力を分散して我が戦力の残存性を高め、同時に敵が対処すべき目標を増やし、また我の機動展開により敵の作戦行動を複雑にさせ負担を強いることを狙っています

そんなACEのドクトリンを14日付米空軍協会web記事が、コアとなる5つの要素「posture」「command and control」「movement and maneuver」「protection」「sustainment」などから紹介しているので取り上げます

14日付米空軍協会web記事によれば
●Brown空軍参謀総長の署名が入ったドクトリンは、ACEを「戦闘力を生み出しつつも、機動展開により部隊戦力の生存性を高める、能動的かつ受動的な作戦運用枠組み」と定義している
ACE8.jpg●またドクトリンは、多様な能力を有する空軍兵士が、設備不十分な展開先へ迅速に機動展開可能な態勢にあることを前提に、「敵の目標選定プロセスを複雑にして負荷を与え、政治的や作戦面でのジレンマを敵に生じさせる一方で、友軍に柔軟性を与える」ことを狙いとしている

●「light, lean, and agile」などのスローガンと共に太平洋空軍で生まれたACE構想だが、現在では欧州米空軍も演習にACE構想を取り込み、具体的な現場手順の試行錯誤を行っている
●「Air Force Doctrine Note 1-21:Agile Combat Employment」として発表されたドクトリンは、以下の5つのコンセプトをカギとして構成されている

Posture(態勢)
●戦略的には予言可能も、作戦運用面では予測不能であるべき。これにより、敵が考慮・対処すべき事項を増加させる一方で、米軍内や同盟国等との連携や協力をしっかりやる必要がある

Command and Control(指揮統制)
ACE7.jpg●分散配置された部隊の運用は、中央集権的な指揮と、円滑に提供配信される統制指示、中央集権でない実行からなる。JADC2の開発普及は、ACE構想に必要な部隊連携と部隊間調整の大きな力となる
●一方でACE実行時には、敵の攻撃を受け作戦指揮統制を失う可能性が高く、米空軍全兵士は指揮官の意図をよく把握理解し、それに沿って作戦遂行可能なように訓練されるべきである

Movement(機動)
●部隊の機動展開は、部隊態勢に関する注意深い計画と関係各所との調整を基礎とし、必要時には、迅速にかつ大規模に移動できるよう実施すべきである

Protection(部隊防護)
●「航空基地は、もはや敵攻撃から逃れられず、聖域ではない」との大前提を念頭に置き、部隊が作戦活動を行う基地や展開拠点を強化する必要がある。また能動および受動的防衛の双方を追求すべき

Sustainment(兵站&補給)
ACE3.jpg●ACEは部隊態勢の分散を基本としており、兵站補給は従来と異なる多様な形で柔軟に行う必要がある。そこでは、多様な資源を活用し、兵站や補給路や施設への負担軽減を意識する必要がある
●ACEの兵站補給では航空機の発進回数確保に重点を置くが、同時に空輸や海上輸送による補給物資の受け入れ&配分も重視し、この際、地域の契約者からのサービス・物資・装備利用も考慮する
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米空軍ドクトリン(ACE:13ページ)の現物
https://www.airforcemag.com/app/uploads/2021/12/AFDN-1-21-ACE.pdf

ACE5.jpgドクトリンにふさわしく美辞麗句が並んでおり、昼食後に目を通すと睡魔に襲われるのですが、上記記事を理解するのに悩んだ「Agile」「Proactive Maneuver:」「Reactive Maneuver」などなどの用語の定義や、コアとなる5つの要素について説明されていますので、ご興味のある方は13ページの現物をご覧ください

併せて、ACEの課題をまとめた空軍若手幹部の論考もご覧いただくと、ACEへの理解が深まると思います
「米空軍若手がACEの課題を語る」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-13

米空軍のACE構想関連
「欧州米空軍がACE構想の確認演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-07
「F-22が岩国展開訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-13
「電動ヘリeVTOLで構想推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-02
「F-15EにJDAM輸送任務を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-04
「GuamでF-35とF-16が不整地離着陸」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-28
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-13
「中東派遣F-35部隊も」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「三沢で訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21
「太平洋空軍がACEに動く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-12
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08

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米空軍&宇宙軍で歩きスマホやポケットハンドOKに [米空軍]

2021年12月3日付の服装規則変更で
飲み物の持ち歩き飲みもOK

Airman USAF2.jpg12月3日付で、米空軍長官から米空軍と宇宙軍に服装規則の改正指示が出され、2020年8月公開の内容が公式となり、タイトルに掲げたような、ちょっと驚きの改正となったようです。邪推ですが、10月に正式指示が出る予定が12月まで伸びたのは、空軍省内部で最後まで反対意見があったのかもしれません

全部で26項目が変更されたということですが、歩行間の行動規制、運動用ユニフォーム着こなし、頭髪の長さ、アクセサリー、部隊作成ワッペン規制等などの改正が行われた様です

Airman USAF.JPG個々の改正の背景やねらいまで説明できませんが、米空軍と宇宙軍の「組織文化」を示すものだと思いますので、12月9日付米空軍協会web記事が取り上げた改正概要をご紹介しておきます

●制服(戦闘服等を含む)着用時における歩行中の規制を緩和し、スマホなどITデバイス使用や飲み物の摂取を許可する。また、歩行中及び停止中にポケットハンドすることを許可する
●昨年8月の公開案段階では含まれていなかったが、女性兵士のまつ毛「エクステ」を、自然な色で「長さ14㎜」以内であれば許可

Airman USAF4.JPG●新たな運動用Tシャツ等(PT uniforms)は2022年10月から使用開始となるが、それ以降4年間は旧式との併用期間とする
●運動用Tシャツの裾を短パンやジャージズボンから出さないよう規定されていたが、これを改め、短パン等のポケットの位置までの高さに垂らして着用することを認める。ただし、短パン等の光反射素材を隠してはいけない

●髪染めの規制を緩和し、地毛の色に関わらず「natural なhair color」への髪染めを許可する。ただし「unnatural appearance」にならぬよう、例えば、「salt and pepper dyed hair」は許可も、「“ombre” or highlights」は不許可

Airman USAF5.jpg●あごひげは引き続き申請許可制とするが、許可権者を部隊指揮官から部隊医官とする
●男性兵士の頭髪の長さは、従来の2インチ上限から2.5インチ上限に

●女性兵士は、従来1インチの長さまで許可されていたヘアアクセサリーの長さを、2インチまで許可される
●航空団レベル指揮官は、部隊士気高揚のためのワッペンを、金曜日や特別な行事等において着用許可できる権限を付与されたる
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空軍長官による服装規則変更指示(155ページ)
https://static.e-publishing.af.mil/production/1/af_a1/publication/dafi36-2903/dafi36-2903.pdf

Airman USAF3.jpgまつ毛「エクステ」も、髪染めも、アクセサリーも、頭髪の長さも、新兵募集の厳しさ等などを考えると時代の流れかと思いますが、「ポケットハンド」は???です

スマホの歩行中のながら見も、既に常態化しているので「規則の有名無実」を避けるための「実態追認型の規則改正」な気がしますが、安全上の観点から問題あるような気がします

「ポケットハンド」や「スマホのながら見」は、子供たちのお手本にならないと思うのですが!!!

服装など関連記事
「上下別の飛行服検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-20
「新兵教育改革」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-02-11
「新兵確保に空軍が入れ墨緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-01-12
「追加策:体外受精支援まで」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-29 

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アラスカにBMD用の巨大新型レーダーLRDR完成 [米空軍]

LRDRはイージスアショア用AN/SPY-7(V)1の原型
宇宙監視への活用も可能
将来的にはソフト更新で極超音速兵器の探知追尾の可能性も

LRDR MDA.jpg12月6日、米ミサイル防衛庁MDAは、アラスカのクリアー空軍基地で行われていた地上配備型弾道ミサイル探知追尾レーダーLRDR(Long Range Discrimination Radar、長距離識別レーダー)の工事が完成し、今後2023年の米空軍による正式運用開始に向け、指揮統制システムとの連接等を来年行うと発表しました

2022年に行われる指揮統制システムとの連接とは、GMD(Ground-Based Midcourse Defense system)及びC2BMC(Command and Control, Battle Management and Communications)との連接を指します

LRDR MDA2.jpg声明の中でMDAは、「LRDRが完全運用を開始すれば、全てのクラスの弾道ミサイルをより遠方で探知可能で、維持整備のための中断もほどんど生じない」、「LRDRの分解能は、敵の真の弾頭とデコイ弾頭を区別を可能とするだろう」とアピールしています

またMDAは、LRDRが宇宙ドメイン監視にも貢献し、衛星だけでなく、宇宙デブリなどの監視にも貢献できる能力があると説明しています

LRDR MDA3.jpg更に、現時点では弾道ミサイルの探知追尾に集中しており、公式に具体的計画が固まっているわけではないが、LRDRはソフトのアップグレードにより、極超音速兵器の探知追尾能力を獲得できる可能性を持っているとその拡張可能性をアピールしています

本来であれば2021年7-9月の間で、模擬飛翔体を使用した探知追尾テストを実施している計画でしたが、コロナ感染の影響で建設が遅れ、地上試験の初期段階が開始されたばかりの状態で、今後地上での開発テストと運用テストが行われ、その後飛翔体を使ったテストに進むことになるようです

2018年の過去記事「LRDR開発が順調」によれば
LRDR MDA4.jpg●LRDRは、イージス艦用弾道ミサイル対処レーダー(AN/SPY-1)の25倍のアンテナ面積を持つ
●LRDR技術は小型化することが可能で、例えばイージスアショア用に日本に配備予定のレーダーや、ハワイ配備のHRD-H(homeland defense radar in Hawaii)も、LRDRの小型版である

●現在運用中のレーダーとは異なり、LRDRは運用しながら維持整備が可能である。つまり、空中線部が多数のブロックに分かれており、ブロック内の送受信素子を交換する場合でも、当該ブロックのみを取り外せばよく、レーダー全てを停止させる必要がない

以下ではググった情報からLRDRをご紹介
LRDR MDA5.jpg●LRDRの正式名称はAN/SPY-7で、窒化ガリウム(GaN)をベースとした固体化アクティブ電子走査アレイ(AESA)早期警戒レーダー
●ロッキード社によれば、LRDRの試作版に使用されるGaNデバイスは、日本の富士通製

●2015年10月にMDAと7.8億円の契約
●2019年にクリアー空軍基地で建設開始
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もう少し具体的な性能や特徴をご紹介できれば良いのですが、年末の多忙さに飲み込まれ、ここまでといたします

ウクライナ情勢も気になるのですが、来年なればもう少しはっきりするだろうと眺めております

関連の記事
「LRDRレーダー開発が順調」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-10

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フィンランドが15番目のF-35購入国に [亡国のF-35]

欧州で9番目の購入国に
64機を2026年から導入開始予定

F-35 Finland.jpg12月10日、フィンランド国防省がF-18戦闘機の後継機種選定に関し、F-35、F-18 Super Hornet、Dassault’s Rafale、Eurofighter Typhoon とSaab’s Gripenを比較した結果、F-35に決定したと発表しました

フィンランド空軍は、64機のF-35を約6000億円で購入し、併せて空対空ミサイル(AMRAAM and Sidewinder)を約960億円で購入する予算を組んでいるとのことです。また、2030年までの維持整備パッケージとして、約3700億円を計上するそうです

F-35 Finland2.jpgフィンランドは選定理由として、F-35の軍事的能力の他、部品を含めた供給の安定性、製造過程へのフィンランド軍需産業への参画度、費用対価格の優位性の他、多くの購入国が形成するコミュニティーの存在を上げています

この結果、F-35購入国は15か国となり、欧州だけで9か国となりました。

今後、購入決定の可能性があるのは、共同開発国でありながら購入決断を先送りして計画の落ち着きを待っている策士カナダと、トーネード後継と戦術核運用が新連立政権の課題となっているドイツといわれています

F-35導入を決定した国(カッコ内は購入予定機数)

●共同開発国(7か国とその他2国)
 豪州(100機), Denmark(27), Italy(90), Netherlands(37), Norway(52), 英国(138)、米国(2443)(空軍1763、海兵隊420、海軍260)
 カナダは共同開発国ながら選定を延々と実施中で、今年結果発表予定
 トルコも共同開発国ながら、ロシア製SAM購入で排除された

●FMS購入国(8か国)
Belgium(34機), Israel(19), 日本(42+100) , 韓国(40)、シンガポール(当面12機 最終的に約50機) ポーランド(32機 2020年1月)、スイス(32)、そして、フィンランド(64機)

●欧州だけピックアップすると・・・
Denmark(27), Italy(90), Netherlands(37), Norway(52), 英国(138)、Belgium(34機)、ポーランド(32機 2020年1月)、スイス(32)、そして、フィンランド(64機 2026年から導入)
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F-35 Finland3.jpg兵站情報システムODIN開発がとん挫したままのF-35は、維持整備費が高止まり状態にあり、米議会や英国等から不満の声が上がっていますが、今後も低下する見通しはありません。

また、米空軍が1763機の調達予定機数を削減することは「ほぼ暗黙の了解」(2025年の維持費状態を見て決断予定)状態にあり、機体や部品価格の高騰は避けがたく、「亡国のF-35」の道まっしぐらです

最近のF-35
「安価版シム装置発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-03
「欧州最初の米飛行隊編成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-04
「新型戦術核B61-12投下試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-06
「2025年に調達上限設定を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-01
「酸素生成装置問題を解決せよ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-03
「海兵隊C型が完全運用態勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-08
「スイスが14番目の購入国に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-01
「英国防相がF-35企業に不満をぶちまける」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-24-1
「英国は調達機数半減か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
「伊軽空母に海兵隊F-35B展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-14-1
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-06
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「F-35稼働率の状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「新型戦術核搭載飛行試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-28
「5月の事故対策改修は秘密」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-24
「中東でかく戦えり」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「機種別機数が第3位に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-07
「B型とC型が超音速飛行制限甘受」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-27
「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

これどうなった?ALISの後継システムODIN
「ODINの開発中断」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-24
「ODIN提供開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-24
「元凶:ALISとその後継ODINの現在位置」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-17
「ALISを断念しODINへ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-22
「ALIS問題を議会で証言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-15
「ALISは依然大きな障害」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-02

F-35維持費削減は極めて困難
「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

エンジンブレードの耐熱性不足
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-15
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21

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空軍長官が7つの優先事項を語る [米空軍]

新たにB-21爆撃機の無人随伴機を2機種開発
戦闘機の無人ウイングマン構想を精査示唆
宇宙アセットによる移動目標の探知識別追尾など

Kendall SASC3.jpg12月9日、Frank Kendall空軍長官がDefense Oneのイベントで講演し、米空軍省として重視する7つの優先事項を示し、2023年度予算から新たに2種のB-21随伴用無人機の新規開発に着手すること、無人ウイングマン構想の精査示唆、宇宙アセットによる地上移動目標識別追尾など、これまでの新開発事業や方向性変更を匂わす発言をしています

また、B-21の初飛行が2022年であることや、NGAD開発も進捗していることにも触れましたが、中露への情報漏洩を警戒し、B-21随伴用無人機の新規開発とあわせ、今後の情報公開が限定的になるとも語っています

本当に断片的な「匂わせ」発言ですが、今後の米空軍の様々な動きを読み解く「道しるべ」となる発言ですので、ご紹介しておきます

1.宇宙能力の強化
ABMS4.jpg●全ての宇宙アセット能力を一体化して情報コミュニティーとつなぎ、JADC2(統合指揮統制)への融合を図る
●宇宙開発庁をまもなく空軍省に組み込むほか、商用技術への投資も進めて能力強化を図り、同時に強靭性を追求する

2.空軍基地の強靭化
●戦術航空アセットが展開時に依存する前線基地は、中露の攻撃力強化により脆弱性が増している
●米空軍は、施設強化、欺まん、分散のほか、ACE(Agile Combat Employment)構想などを推進し、この弱点を克服する

3.ABMS(先進戦闘指揮統制システム)の構築推進
ABMS.jpg●これまでにも増して、投資の有効性に着意してABMS構築を推進する必要がある。実際の作戦運用場面で効果が得られる点を重視し、関係性が明確になるようにすべきである


4.移動目標の探知識別能力強化
●多数の目標に多数の戦力で対処する将来作戦環境では、目標の識別と個別把握が不可欠であり、より遠方から出来ることが望ましい。ABMSやJADC2を支えるには宇宙アセットと航空アセットの強固な組み合わせが求められる
E-7 2.jpg●E-3早期警戒管制機の後継候補の一つであるE-7などは、宇宙アセットが利用可能になるまでのギャップを埋めるが、空中アセットはE-3やJ-8をはじめ敵攻撃に脆弱で、長期的には使用が難しくなる。最近の敵能力分析では、敵は我のこれら能力への攻撃を重視していることが明らかになっている

5.軍需産業基盤を含めた兵站強化
●サプライチェーンや軍需産業基盤の脆弱性を見極める取り組みを行っている
●兵站システム、人的戦力育成管理システム、輸送システムなどを詳細に分析し、どの部分に弱さがあるのか、どの部分に許容できない弱点があるのかを見極め、対処してい

6.無人戦闘機ウイングマン
Skyborg2.jpg●今あるコンセプトは、5機以下程度の無人ウイングマン機を、1機の5世代機やNGADとチームとして運用し、有人機操縦者が無人随伴機を操るイメージである
●このイメージは多くのチャンスや機会を我々に与えてくれるが、我々は今後どう進めていくのかしっかり見極める必要がある

7.B-21次期爆撃機に随伴する無人機開発
●B-21次期爆撃機は非常に高価なアセットであり、その能力を航続距離や兵器搭載面で「増幅」して投入したいと考えており、呼び名が適切か吟味する必要があるが、エスコートや随伴無人機と言ったイメージのアセットに委ねたい
B-21 bomber.jpg●それら無人機はB-21操縦者に管制され、強固な敵と対峙するイメージだが、今研究されている「Skyborg」よりも、新たな調達計画によるアセットを考えており、2023年度予算に2つの新型機予算を組み込んでいる

●我々は新規開発に当たり従来の取り組みに縛られず、大きな変更を行う。ただこの際、リスク低減策を学び、成熟技術利用やプロトタイプ利用や各種デジタル設計技術を最大限活用して取り組み、必要なものを見極めて前進したい
●2つの新型機開発は非公開の秘密プロジェクトとなるため、皆さんに多くを公開することができないだろう。秘密保持のためご理解いただきたい

XQ-58 Valkyrie2.jpg●これら新規開発に当たっては種々の分析が必要であり、空軍と宇宙軍の両方を支えるため、分析部署のトップをA9から格上げして取り組む

●B-21爆撃機は2022年に初飛行するだろうが、これについても多くを公開できないだろう
●NGAD開発は順調に進捗しており、技術実証段階を超えて進んでいる。NGADは次世代の制空機だが、航空アセットシステムの一部として、第4世代機などとも併存して能力を発揮するよう考えられている
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Kendall4.jpg宇宙能力の強化、基地強靭性のアップ、ABMSのより効率的な推進、軍需産業基盤を含めた兵站強化は、従来から取り組んできた事項の仕切り直しとの印象を持ちましたが

無人ウイングマン機の開発コンセプト見直しを示唆したり、B-21爆撃機の無人随伴機の新規開発を「that’s a major change」と表現したり、「移動目標の発見・識別・追尾」に宇宙センサーの導入を明らかにしたりと、何やらKendall長官の「剛腕」が発揮されそうな予感が感じられます

今回の発言だけではよくわかりませんが、今後の関連情報を見る参考にいたしましょう

Kendall空軍長官の関連記事
「B-21を5機製造中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-22
「中国が核兵器FOBS開発の可能性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-21
「長官着任時の思い」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-18
「上院で所信を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-26-1
「Kendall氏をご紹介」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-28

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80年前の真珠湾を振り返る季節に [ふと考えること]

80年前の真珠湾を振り返る季節に
5年前の記事ですが
今も米軍歴史教材である日系人部隊442連隊を学ぶ
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Abe-Obama2.jpg2016年12月28日朝、安倍首相とオバマ大統領がそろって真珠湾を訪れ、それぞれの所信を語って同盟関係の発展を期す契機としました。

私が約10年前に戦艦アリゾナメモリアルを訪れた際も多くの人が訪れており、船で慰霊施設に渡るのに時間によっては2~3時間待ちが普通だと伺いました
陸地側の施設には真珠湾攻撃の展示資料館が設置されていましたが、淡々と史実を伝え、攻撃した日本軍側の事も驚くほど丁寧に紹介していたことが印象に残っています

今回の安倍総理の訪問を通じ、当時のハワイ在住日系人が遭遇した運命や厳しい現実を伝える報道も行われましたが、同時に現在のハワイ州知事が日系人であることなど、日系人の活躍が紹介されたのは良い相乗効果と言えましょう

Abe-Obama.jpgただ、既に両国首脳の真珠湾訪問への思いは大きく報じられていますが、オバマ大統領が政治の道を志すに至った過程で、少なからぬ影響を与えたのが日系人であったことはほとんど知られていないと思います

本日は真珠湾攻撃や太平洋戦争が生んだ米国内「日系人」社会の現実と日系人だけで編制された伝説の442連隊、そして同連隊に所属して片腕を失いながらも日系人の上院議員を50年以上務め、多くの米国人から尊敬を集め、オバマ大統領に多大な影響を与えた「ダニエル・イノウエ氏」を振り返りつつ、「伝説の日系人部隊」第442連隊を再び学びます
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過去記事
故イノウエ上院議員を偲び、442連隊を学ぶ
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-19

442Inoue2.jpg2012年12月17日、ハワイ選出の上院議員、ダニエル・イノウエ氏が88歳で亡くなりました
第2次世界大戦時には、日系人のみで編成された「伝説」の第442連隊員で欧州を転戦し、片腕を失った人物でもあります。

その後今日まで50年間上院議員を務め、日米関係の発展に尽力し、米国防省の退役軍人施策にも心血を注いだ、日米双方の安全保障関係者に取って忘れ難い存在でした。

訃報が伝えられて以来、各方面からその死を悼むメッセージが出されていますが本日はオバマ大統領(涙ぐみながら)、パネッタ国防長官とデンプシー参謀総長の追悼の言葉を紹介したいと思います。
そしてまた、442連隊について語らせて下さい・・

パネッタ国防長官は・・
Panettatexas.jpgアメリカンドリームと偉大なる時代のヒーローの姿を体現した人である。
伝説の第442連隊員として壮絶な打ち合いの中で彼が見せたリーダーシップと熱情は、彼の片腕を奪い、名誉勲章を与えた。しかしその後の彼のリハビリへの取り組みと彼の職歴は、現在の負傷兵をも勇気づけている

●上院議員として、彼は最も頼りになる国防省の応援者のひとりであり、いつの時代にも前線兵士を勇気づけてきた。私はクリントン及びオバマ政権下で彼と緊密に連携を取りながら仕事ができたことを誇りに感じている
●彼のお陰で成し得た米軍兵士やその家族、更にハワイの人々の生活の向上は永遠に語り継がれるだろう

デンプシー統合参謀本部議長は・・
DempseyCapstone.jpg●偉大なる世代の一員として、彼は人生で最も良い時期を欧州の専制政治に立ち向かうため捧げた名声轟く第442連隊の一員として。
●彼は戦いで片腕を失い、国家への奉仕を十分に努めたが、国家への貢献はそれだけに止まらなかった
●(上院議員として)彼が行ってきた退役軍人への絶え間ない支援、特に教育や医療分野への努力は、無数の兵士やその家族に今後も多大なる貢献をするだろう

23日、ハワイでの葬儀にオバマ大統領も F-22初の追悼飛行も
Obama Inoue2.jpgF-22 Missing Formation2.jpg








21日、ワシントンDCの教会でオバマ大統領は・・
●私が初めてイノウエ上院議員を見たのは11歳の時、ウォーターゲート事件の審議をテレビで見ていた時です。
●白人の母と黒人の父の間に生まれた私は、インドネシアとハワイで育ち、この世で生きていくことがそう単純でないことに気づき始めていました

obama-inoue.jpgそんな時です、彼を見たのは。この上院議員は力強く、業績を積んだ人物でしたが、当時一般的に考えられていた上院議員像とは異なりました
●そして彼が全米から尊敬を集める様子から、私は私の人生で何が成し得るかのヒントを与えてくれました

●この人物は10代で自ら志願して国に命を捧げる覚悟をしました。それも仲間である日系米国人が敵性外国人扱いされる中で・・・。この人物は米国を信じました。米国政府が必ずしも彼を信頼していない時にさえ・・。
●このことは私に何かを伝えてくれました。力強い何か・・当時は言葉に出来なかった・・強い希望の感覚です。イノウエ氏こそが、私に初めて政治的なインスピレーションを与えた人物と言って間違いありません。
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イノウエ議員を語るに欠くことができない史実・
「第442連隊」について語らせて下さい

442Battle.jpg第442連隊は「Nisei(二世)」と呼ばれる日系人で構成されていた部隊です。第2次対大戦中、米本土内では差別的な扱いを受け強制収容所に送られていた日系人ですが、彼らは「米国人たる日本人」の存在を示すため志願して戦時下の米軍に入隊しました。

当初は米軍幹部も扱いに迷ったようですが、その優秀さから欧州戦線で大活躍し、トルーマン大統領自らが7枚目となる「大統領感状」を授与に赴くまでに至った伝説の部隊です。
その戦いの激しさは死傷率314%、つまり定員約3千人の部隊で述べ9500人の死傷者を記録したほどで、米軍内では抜き出た部隊でした。

442連隊の奮闘が米国中に知られ、同時に米国内での日系人に対する差別的処遇が明らかになり、ルーズベルト大統領が過ちを公式スピーチで謝罪して442連隊の奮闘を讃えました。442連隊は、まさに「体を張って」日系人の名誉回復に大いに寄与しました。
しつこいですが・・・死傷率312%・・米国陸軍史上最大の勲章数を誇る部隊です。
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映画「442 日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍」紹介文より
2010年11月に日本公開の映画)
442F.jpg第2次世界大戦時に日系人で編成された部隊・アメリカ陸軍442連隊に迫るドキュメンタリー。人種差別と戦いながら、父母の祖国・日本と戦う苦悩と葛藤(かっとう)を抱えた兵士たちの揺れる心を、当事者たちの証言でつづっていく。名誉のために命を懸け、偏見と戦った兵士たちの真実に注目だ。

本作は、2010年マウイ・フィルム・フェスティバル<観客特別賞>を受賞した。7月末ロサンゼルスでの公開以来驚異的な動員数を記録し、現在も全米各地で上映が続いている。

映画の予告編(約2分)


紹介サイトhttp://navicon.jp/news/9842/
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第2次大戦後、60年以上が経過したある日・
2011年11月2日、442連隊へ米国民最高の「議会勲章」授与

442Mullen.jpg2011年11月2日、第2次大戦中の10大戦闘に数えられる「失われた大隊(Lost Battalion)救出作戦」の65周年記念行事がヒューストンで行われ、救出された141連隊の兵士と救出した「米国陸軍史上最大の勲章数」を誇る442連隊戦闘団の面々が集いました。
写真のようにマレン統合参謀本部長議長(当時)も参加し、その栄誉をたたえました。

「失われた大隊救出作戦」とは・・
1944年10月25日、ドイツ軍に包囲されて孤立した約230名の141連隊を救出せよとの命令が時のルーズベルト大統領から出され、これに応じた442連隊戦闘団がフランス東部ボージュの森で800名余りの犠牲者を出しながらも、同30日に任務を達成したとの話です。

442smile.jpg救出後の歓喜の中で、救出された側の少佐が軽い気持ちで「ジャップ部隊なのか」と言ったため、442部隊の少尉が「俺たちはアメリカ陸軍442部隊だ。言い直せ」と掴みかかり、少佐は謝罪して敬礼したという逸話が残されています。
なおこの作戦は、第2次大戦の10大戦闘として米陸軍で今も教育されています。

他にも、イタリア戦線で数カ月かかっても他部隊が攻略できなかった山岳要塞を僅か20時間余りで攻略した逸話、激闘と活躍を聞いた将軍が442連隊を訪問して激励の言葉を述べようとしたが、負傷者が多くて中隊規模の兵士しか整列できず将軍が絶句した話、60年以上が経過して今もなお、解放してもらったフランスの町が毎年兵士を読んで記念行事を行っていること等々・・・話は尽きません

442GoForB.jpg戦争中に442連隊は18000個もの勲章を授与されており、その数自体が他を圧倒しているのですが、戦後日本への感情を廃して見直しがなされ、多くの勲章格上げがなされたとのことです。
連隊ワッペンに記されたGo for brokeは「当たって砕けろ」の意味だそうです。まさにそのとおりの働きでした。
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マレン統参議長は授与式スピーチで・・
442MullenSp.jpg●442連隊の逸話は、聞く人全てを奮い立たせ、私に多くのことを教えてくれる。
●彼ら日系米国人兵士は、その家族を米国により収容所送りにされながら、愛国心を示し、証明しようとしたのである。
激烈な肉弾戦は塹壕一つ一つを奪いあう熾烈なもので、それが最終的な敵の混乱散乱に繋がっている。

●私は、これらを可能にした442連隊兵士の心中を察するとき、真に謙虚になって皆さんとこの教訓を学び、共にしたいと思う。
●あらゆる側面に置いて、我々は米国建国の理念である、豊かで多様性に溢れた国作りを追求していかなければならない。
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442Inoue.jpgイノウエ議員は上で紹介した映画に、主要な語り部として登場しています
淡々と当時を振り返りつつ、聞き手の質問に丁寧に答えるのですが、インタビューの最後にスタッフを見送る際、イノウエ議員をよく知らない観客は「片腕がない」ことにはじめて気づきます

劇場内に「あっ・・」と言う悲鳴にならない声が上がったことを覚えています。合掌

第442歩兵連隊を描いた70分のドキュメンタリー映像
https://www.youtube.com/watch?v=IpjaQ8lJqmY

日系人と442連隊
「イノウエ議員と442連隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-19
「映画公開と442部隊の魂」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-03
「米軍トップが最敬礼」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-04
「空軍輸送機にイノウエ議員の名を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-28-2

米国防省で日系人が活躍
「女性カトウ大佐が核戦争下の通信装置を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-29
「日系女性が国防省ITを統括」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-30
「普天間担当:日系ナツハラ氏」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-13-1

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ロッキードがF-35用廉価版シム訓練装置開発 [亡国のF-35]

豪華版と同じソフトでハード削減も75%の訓練可能
豪華版の1/8のスペースで使用可、分解持ち運び容易
価格非公表も豪華版の数分の一の模様

F-35 MRT LITE.jpg11月30日、ロッキード社が全世界のF-35使用者の要望に応え、現在100台余りが使用されている豪華版F-35訓練シミュレータの小型簡易版を開発したと発表し、9割部品を削減して小型で分解持ち運び容易性を高め、かつ訓練可能科目も豪華版の75%をカバーする装置を実現したと説明しました

第5世代機は能力が高すぎ、実環境で性能を最大発揮する訓練が難しいことや、飛行時間当たりの維持整備費が高価なことから、バーチャル訓練と呼ばれるシミュレーターでの訓練の重要性が叫ばれ、F-35用には360度の映像を映し出すMRT(Mission Rehearsal Trainer)との豪華版シム装置が提要され、DMT(Distributed Mission Training)とのシステムで世界中のシム装置と連接し、異機種混合の大規模バーチャル訓練体制構築を目指しています

F-35 MRT LITE2.jpgそのような豪華版MRTが約100台米軍を中心に世界で使用されているようですが、価格非公開ながら高価格と想定され、F-35運用者からは安価版や小規模版を求める声が相次いでいたようで、ロッキードは発表で、F-35使用者の要望やニーズを基に設計開発したので、宣伝や売込みの必要なく商談が成立するだろうと語っています

以下では2日付Defense-News記事から、安価小型版MRT LITEの概要をご紹介します

MRT LITE(Mission Rehearsal Trainer Lightning Integrated Training Environment)の概要
豪華版より9割ハードを削減し、豪華版1台のスペースに、8台を設置可能
豪華版1台の価格で、“a number of these(MRT LITE)”を購入可能

F-35 3-type.jpg豪華版が360度映像投影だが、廉価版は前方スクリーン3枚
豪華版から緊急事態対処用のみに関連する操作スイッチ等を無くしたが、5世代機に重要な目視範囲外(beyond-visual-range)任務など、豪華版の75%の任務訓練が可能

廉価版は数時間で分解・組み立てが可能で、空母内での使用も可能
18か月間の開発とF-35使用者へのデモと意見聴取で現在に至る

現在は公開ソフトのみ使用可能で、秘匿ソフトの導入を今後実施。他の部分も含め、具体的な開発完了時期やコストには発表会見で言及せず
ロッキード社は、国防省F-35計画室やF-35使用者と具体的な導入・提供に向けた協議を並行して進めている
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F-35 Gilmore.jpg豪華版だけでなく、最初から廉価版も作れよ!・・・とロッキードに突っ込みたくなりますが、F-35の維持整備費が高止まり状態で、米軍や米国議会のみならず、英国からも辛らつな批判を浴びているロッキードが、ようやく重い腰を少し上げたのでしょう

日本が豪華版を導入しているのか把握していませんが、飛行時間削減及び維持整備費削減のため、この廉価版導入を検討してはいかがでしょうか

世界中で100台使用のF-35豪華版シム訓練装置
「F-35新型シム装置DMTで他基地他機種ともシム訓練可」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-02
「DMT構想について」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-06

5世代機とバーチャル訓練
「米空軍が人工知能シム訓練アイディア募集」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-26
「5世代機のため訓練エリア拡大要望」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-12-09-1
「5世代機の訓練はシムと実機併用で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-11-24-1
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米空軍航空機の平均年齢若干改善も依然高齢 [米空軍]

2020年30.55歳から、 2021年29.1歳へ若干改善
ただ、米陸軍は15.3歳、海軍は14.4歳
豪空軍は8.9歳、英空軍は16.6歳と比べれば・・・

B-52.jpg11月23日付米空軍協会web記事が、米空軍航空機の「機種別平均年齢データ」を紹介し、米空軍全体では2020年時点より2021年時点の数値が若干改善したと紹介し、新型機のF-35(約300機)やKC-46(50機)導入効果によるものとしつつも、他軍種や同盟国空軍に比し2倍以上の高齢であり、早急なテコ入れが不可欠と訴えています

こうした高齢化を招いた原因は様々で、冷戦後の1990年代に「平和の配当」を求め装備更新が疎かになったこと、2001年以降の対テロ戦争が従来装備で対処可能だった事、B-2やF-35など最新装備の開発が長期化&価格高騰で導入が遅延したこと等々が考えられますが、予算見通しからすれば解決は容易でなく、米空軍の在り方そのものに問題を投げかけています

KC-135 3.jpg冒頭でご紹介した陸海軍や豪英空軍の平均機体年齢とは、保有機体の多様さや任務カバー範囲の違いから単純な比較が難しい面もあり、老齢機体を延命措置しつつ上手く活用しているとの見方もできますが、とりあえず記事からいくつかの機種の平均年齢と関連情報をご紹介します。全機種のデータが揃った記事ではありません

23日付米空軍協会web記事によれば

●50歳以上(8機種)
・KC-135,NC-135, RC-135, TC-135, WC-135 60.35歳
  C-135輸送機を様々な特殊用途機に改造した機体は、いずれも部品枯渇で維持費が高騰し、稼働率も低下して後継機検討が大きな課題となっている
・B-52 59.8歳
  エンジンやレーダー換装を経て2050年代まで運用され100歳到達見込み
・AT-38、T-38ジェット練習機  60歳近い
  T-7A RedHawk への転換に2030年代前半まで必要 70歳到達確実

●40歳以上(13機種)
・E-4B指揮統制機 47.38歳 
・E-3 AWACS 42.99歳

●30歳以上(22機種)
・F-15C 37.69歳、F-15E 30.99歳
  共に導入当初は12-15年の使用が想定されていた
・B-1 37.69歳
・C-5M 35.14歳
  60~70年代製造のC-5Aや、80年代製のC-5Bを改修、実際は高齢

●20歳以上(31機種)
・E-8 JSTARS 20.8歳
 ただし、原型のB-707として使用されていた期間はカウントされていない
・B-2が27.29歳

●20歳以下
・MQ-9(約320機) 6.05歳
・F-35(約300機) 4.34歳
・HC-130捜索救難機 4歳
・KC-46(50機) 1.48歳
・F-15EX 0.5歳

●ミッチェル研究所のDeptula航空研究部長(退役空軍中将)は
Deptula AFA2.jpg・「30年に渡る航空戦力の放置が、この戦力高齢化を招いた」、「近視眼的な投資優先の決定により、老朽機への改善投資は阻害されてきた」、「過去27年間、米空軍省は、陸軍省や海軍省より予算配分が少なかった」
・「現状の問題は慢性的で迅速な措置が必要。国防省は問題をこれ以上先送りしてはならないし、空軍は戦力近代化に優先投資すべきである。さもなければ国家防衛戦略遂行の妨げになる」と訴えた
///////////////////////////////////////////////

記事にはありませんが、老朽化&維持費高騰の話題で欠かせないKC-10空中給油機も50歳代でしょうし、空軍一番の保有機数F-16や早期退役が議論されるA-10も30代後半でしょう

F-35 Gilmore.jpg戦闘機の世代別&機種別構成の将来体制議論を中心に、爆撃機や空中給油機の将来構想はときどき取り上げてきましたが、輸送機やへり、多用途機についても機会があれば取り上げたいと思います

しかし、予算の見通しと老朽化状況を考えると、アセットの絞り込みや多用途化が必要かもしれませんねぇ・・・

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「近未来の戦闘機構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-16
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「RC,WC,OC,NC-135は後継機なし?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-28-1
「2018年の爆撃機構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2
「F-16延命へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13

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