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統合作戦に隠れた大きな壁:Data Formatsの相違 [Joint・統合参謀本部]

陸軍と空軍の2年計画の検討は壁突破の先陣
「これは技術の問題ではなく、文化の問題だ」

ABMS.jpg9日付C4ISRnetは、中露に対抗して行くため米軍各軍種が重要と強調している統合ネットワークによるリアルタイムの情報共有や指揮統制において、その進展を阻んでいるのは各軍種の「データのフォーマットや基準や構成」の相違であり、技術の問題ではなく文化の問題だと指摘しています

そしてこの軍種間の文化の壁を打破するためには、各軍種のリーダーや意思決定者が、過去の経緯へのこだわりを捨て、現在利用可能な最新技術を生かせるような「data standards:テータ基準」の受入れに踏み込むことだと主張しています

Project Convergence3.jpg「データのフォーマや基準や構成: common data format ,standards, and architectures」との言葉が、具体的にどのようなものを指しているのか基礎知識がなく、記事にも説明がないので抽象的にしか書けませんが、複数の責任ある関係者が「最も難しい部分」、「過去の失敗の原因」と指摘していますので捨て置けません

なお、まんぐーすが斜に構え、冷ややかにご紹介した10月の米陸軍と空軍の「JADC2コンセプト共同開発2年計画」合意は、この問題に正面から立ち向かう米軍の中では画期的な第一歩で、この問題に苦悩していた関係者には大きなニュースだった模様です。まんぐーすは反省しております

ただ、米陸軍による長射程攻撃兵器への重点投資について、米空軍が反対の意向を持っていることに変化はなく、次期政権の国防長官にはこの辺りの調整も期待されています

9日付C4ISRnet記事によれば
米空軍が主導して進める全ドメイン統合指揮統制(JADC2)や先進戦闘管理システムABMSは、全ての軍種のセンサー情報を最新AIやIT技術を用いて融合し、各級指揮所や指揮官がリアルタイムで情報を共有し、強靭なネットワークで全軍種の最適な兵器に遅滞なく提供して戦いの主導を握ることを目指している
Project Convergence.jpgここで重要なのは、各種センサー情報や指揮統制指示が、切れ目なくリアルタイムに共有されることだが、そのためには関連データが、合意された基準に基づいた共通の形式であることが不可欠である

しかし複数の専門家は、現在の米軍では、組織文化の壁から、非常に難しい課題となっていると指摘している
軍需産業幹部は「共通のデータ基準を定めることは、生きるか死ぬかの問題だ」とその重要性を強調し、その難しさを元米海軍副CIOの退役少将は「この問題克服は各軍種の文化の壁を乗り越えることで、データ共通基準を追求する過程で、多くの努力がこれまで無駄になってきた経緯がある」と振り返っている

しかし10月に米陸軍と空軍が合意した「Combined Joint All-Domain Command and Control」を目指す2年間の検討合意は画期的で、データ共有の基準やインターフェース検討から開始することになっている
担当する陸軍准将は、「米軍の軍種間にはデータに関して異なった考え方が存在するが、陸軍と空軍は統合作戦遂行の優位性を確保するため、同じ道を歩み始めている」、「両軍はデータのフォーマや基準や構成について緊密な協議を開始している」とこの合意について語っている

Project Convergence4.jpgそして「来年米陸軍は、米空軍のABMSを米陸軍のProject Convergenceと融合させたいと考えている」とのスピード感で取り組んでいると力説した
この動きに関して、元米海軍副CIOは「組織のリーダー同士がオープンに透明性をもって対話することが必要」、「現在利用可能な最新技術を生かせるようなテータ基準の受入れに踏み込むことが必要」とコメントしている

10月上旬に発表された「国防省データ戦略」はこの文化の壁打破を図る必要性を示唆しており、産業界が導入している「open-data architectures」の基準導入を促している。またこの戦略に関し民間コンサルタントは「open-data architectureや基準化は、他では得られない能力獲得への道である」と強調している
国防省のCDO(chief data officer)Dave Spirk氏は10月末に講演で、過去には各軍種のデータ管理に関する担当部署や担当者を、相互に把握していないレベルの状態だったが、今では相互に人的関係を築き、定期的にコミュニケーションをとるまでに至っており、文化の壁を超えつつあると語っている

ABMS2.jpg現存するデータ基準の相違を乗り越えるため、米空軍戦略計画部長のClinton Hinote中将は「翻訳機(translators)」のような機能を構築する事を考えている」と10月中旬に発言しているが、これに対して専門家は「データ間の翻訳はデータ共有に遅れを生じさせる。AIや機械学習の最大活用を考えるとデータ基準の統一が最善のはず」と懸念している
一方で米軍各軍種は、既存のレガシーアセットを今後数十年使用していく必要もあり、新たなデータ基準を導入に踏み切る場合の対応を考える必要がある
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このような問題が存在することを、頭において今後の報道を見守りたいと思います

それ以上、何もコメントできませんが、「技術の問題ではなく、(軍種間の)文化の壁が問題だ」との言葉に「さもありなん」と腹落ちいたしました

ここにも、中露と戦う前に、陸海空軍海兵隊が相互に戦う様子が見え隠れしています・・・

実は米陸軍と空軍の2年計画は画期的だった
「米陸軍と空軍がJADC2コンセプト共同開発にゆるく合意」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-06

米海軍と海兵隊は我が道なのか
「米海軍の戦術ネットワークProject Overmatch」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-15
「米空軍の課題:他軍種はABMSに懐疑的」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-12

全ドメイン指揮統制連接実験演習:ABMSとJADC2関連
「突然前倒し?第3回目は太平洋で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-29
「2回目のJADC2又はABMS試験演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-05
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28

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