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米宇宙軍の戦術演習Space Flagに同盟3か国が参加へ [サイバーと宇宙]

統合国家演習に格上げされ、12月に豪加英が参加
今年2月に「7か国宇宙作戦ビジョン2031」を発表した仲間から
「Black」「Red」「Blue」Skies演習も目的を絞って実施へ

Space Flag.jpg11月14日付米空軍協会web記事が、米宇宙軍が主催して12月予定の演習「Space Flag 23-1」に、今年2月に「7か国宇宙作戦ビジョン2031」を米国と共に作成発表した仏、独、英、加、豪、NZの中から、豪加英3か国軍が参加することになったと紹介しています

「Space Flag」演習は、宇宙軍が編成される前から米空軍宇宙コマンドによって2017年から実施されてきた戦術レベルの技量向上を目指す演習ですが、2022年から他軍種を参加させることを条件に「Joint National Training Capability」レベルの演習に格上げされた演習で、担当の宇宙訓練&即応態勢コマンド(STARCOM)が、サイバーと情報関係者がより多く参加するよう準備しているとアピールしている演習です

Space Flag4.jpg「Space Flag」のほか米宇宙軍訓練コマンド(STARCOM)は、「Black Skies」、「Red Skies」、「Blue Skies」との色の名前を冠した訓練分野を絞り込んだSkies演習を開始しており、「Black Skies」演習は実兵器の発射を伴う電子戦演習、「Red Skies」演習は衛星軌道上での戦い、「Blue Skies」演習はサイバー戦と宇宙を扱った訓練に取り組んでいます
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Space Flag2.jpg2010年代には、米宇宙軍の前身の米空軍宇宙コマンドが主催する「Schriever Wargame」との演習をよくご紹介しましたが、国防省以外の米国政府機関や同盟国からも広い分野から参加を受け入れ、宇宙が軍事以外にも社会経済活動とどのようにかかわっているかを「実感」してもらうことが主眼のような演習だったとの印象を持っています。

「Schriever」演習など地道な活動の成果もあり、2021年7月には米宇宙軍No2が同盟国等の姿勢の急変に言及し・・・

Thompson4.jpg・最近数年間で同盟国の宇宙ドメインへの関心が急速に高まったことにより、以前は米国活動への協力に消極的だった同盟国も含め、米宇宙軍活動への協力や資金協力申し出が急増している
・過去数年間の変化はドラマチックで、背景には潜在的敵対国による宇宙活動活発化への危機感があり、効果的な協力が得られなかった国々からも、協力できる分野は無いか? 我々は何をすべきだろうか? などの問い合わせをいただいている・・・・と語っていたところです

対中国最前線の日本も、早く「Space Flag」演習演習に参加できるようになりたいですね。・・・このように言うと、「大っぴらにはできないが、実は・・・」とのコメントを頂戴することもありますが・・・

米宇宙軍と同盟国との連携強化
「7か国で宇宙作戦ビジョン2031」→https://holylandtokyo.com/2022/02/25/2753/
「米宇宙軍に同盟国からの申し出急増中」→https://holylandtokyo.com/2021/08/04/2064/

Schriever Wargame関連記事
「2019年は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-18
「日本初参加の2018年の同演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-25
「米国が日本を誘う・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-3
「日本は不参加:米軍宇宙サイバー演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-14-1
「欧州を主戦場に大規模演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-11
「Schriever Wargame」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19
「サイバーと宇宙演習の教訓1」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「サイバーと宇宙演習の教訓2」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02

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「世界の火薬庫」バルカン半島にも無人機大量流入 [安全保障全般]

コソボと対立のセルビアが無人機大国へ
中国製やイスラエル製や自国製が増殖中とか
イラン製を発注との情報も・・・

CH-92A china2.jpg11月21日付Defense-Newsは、「世界の火薬庫」バルカン半島でコソボとの緊張が再び高まるセルビアが、2019年にバルカン半島国家第1位の軍事費を投入し、輸入無人機と自国製の無人機を組み合わせ、半島最大の無人機保有国になっていると紹介しています

セルビアは元々民間機分野(composite aircraft)で航空機産業基盤があるらしく、自国製のISR無人機Vrabacを運用して展示会に出品したりしているようですが、同時に中国やイスラエル等からの輸入無人機も導入運用し、イラン製にも興味を示しているとイラン政府関係者がメディアに語っているようです

Gavran Serbia.jpg同時にコソボ軍との緊張が高まる中、セルビア大統領が最近、「飛行禁止空域」に進入したり、軍事施設に接近するドローンをすべて撃墜せよと命じるなど、周辺国からの無人機の脅威にもセルビアは直面しており、「脅威の変化を最前線で体感している国」とも言える状態にセルビアは置かれています

2020年秋、アゼルバイジャンとアルメニア軍の戦いにおいて、ロシア製兵器で防御するアルメニア軍を、イスラエルやトルコ製の無人機で圧倒したアゼルバイジャン軍の記憶が生々しい中、今年秋には「遅まきながら」無人機の有用性に気付いたロシア軍が、イラン製無人機を急遽導入してウクライナ発電所などエネルギーインフラに大打撃を与える様子が世界に発信されるなど、安価な無人機の「脅威」が「やばい」と広く認識され始めた中での動きです

同記事からセルビア軍の無人機には
Vrabac Serbia2.jpg●最新無人機としては2020年6月に導入された中型の中国製攻撃無人機CH-92A(行動半径250㎞)
●セルビア製ISR無人機「Vrabac」
●上記「Vrabac」を改良し武装可能にした無人機(40㎜弾薬6発搭載)

●セルビア製空中待機型攻撃無人機「Gavran」(搭載15㎏、30分在空待機可)
●セルビア製偵察無人機Silac 750C
●イスラエル製ISR無人機「Orbiter 1」などなど

Orbiter 1 Israel.jpg(そのほか噂では、ウクライナ軍使用で緒戦で話題になったトルコ製TB2の導入希望を繰り返しセルビアは公言しているが、イラン政府幹部がセルビアはイラン製無人機導入に手を上げている22か国のうちの一つであると発言した以降、TB2の話は立ち消えになった模様)
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いつもにも増して「断片的」な情報でしたが、セルビアのような中小国にとって、「無人機」は軍事作戦に革命・革新をもたらす兵器だとの直感に基づき、無人機活用に邁進する様子をご紹介しました

そしてこんなところから、軍事作戦の大きな変革の波は訪れるのだろうと思います。大国は変化が難しいです。

急速に脚光を浴びる無人機
「イラン製無人兵器がウで猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「アゼルバイジャン大勝利」→https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/
「Asia/Africaへの中国無人機の売込に警鐘」→https://holylandtokyo.com/2022/06/16/3339/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

無人機対処にレーザーや電磁波
「対処用のエネルギー兵器動向」→https://holylandtokyo.com/2022/07/14/3432/
「JCOが小型無人機対処3機種吟味」→https://holylandtokyo.com/2022/05/17/3233/
「2回目:安価で携帯可能な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/10/08/2280/
「カタール配備のC-UASと陸軍のIFPC」→https://holylandtokyo.com/2021/06/02/1708/
「1回目:副次的被害小な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「国防省が小型無人機対処戦略発表」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/

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欧州F-35運用国が集結して機体の相互整備議論 [亡国のF-35]

TornadoやEurofighterで実績のある手法
共同訓練や有事展開の際の相互支援で国境をまたぐ柔軟運用
整備作業の標準化(standardization)で

F-35 Air force chiefs.jpg11月22日、イタリアで実施中の多国間航空演習「Falcon Strike 2022」のタイミングに併せ、欧州でF-35を運用中または導入予定の11か国の空軍トップが一堂に会し、F-35が国境を越えて機動展開した際に、展開先のF-35保有国が燃料補給や弾薬搭載を含む基礎的な整備作業を相互支援(shared maintenanceとかcross servicingと表現)することを話し合った模様です

同空軍トップ会議への欧州からの参加国は、Finland, Poland, Belgium, Israel, Norway, Denmark, the Netherlands, Italy, the U.K.で、これに米国とカナダが加わった11か国と23日付Defense-News記事は紹介していますが、会議場のパネルには、日本の国旗のようなデザインも見られ、気になることろです

F-35 Air force chiefs3.jpgこのような基礎的整備作業の相互運用性確立は、既に欧州共同開発の「Tornado」や「Eurofighter」で実績のある手法らしく、当日は「Falcon Strike 2022」に参加中のオランダ空軍兵士がイタリア空軍F-35の再発進準備を行う模様がメディアや各国空軍トップに披露されたそうです

この相互整備の利点について伊空軍トップは、「現在は伊F-35をオランダに展開すると、約100名の伊空軍兵士を派遣する必要があるが、オランダから「shared maintenance」支援を受けることで、派遣要員を30~50人にまで縮小することが可能」とメディアに語っています

F-35 Air force chiefs4.jpg同時に会議に参加のオランダ空軍トップは、「イタリア北部のCameri飛行場に設置されているF-35のFACO(最終組み立て工場)で、整備作業も可能になればよいと思う。同施設の組み立て品質等の能力評価を行って検討すべきだ」、「フェラーリが作れる国なんだから、F-35だって大丈夫だ・・・と皆で話し合っていたところだ」とも語り、欧州内でのF-35維持整備体制の強化にも話が及んでいることを示唆しています

このようなF-35整備作業の標準化(standardization)の機運が高まている背景には、現時点で既に欧州諸国保有F-35が約140機に達し、2034年にはこの数が600機を超える可能性があり、整備作業の標準化が大きな効果を発揮する素地が生まれつつがあるからです

F-35 Bloomberg.jpg更に言うまでもなく、ウクライナを侵略するロシアへの欧州やNATOとしての団結強化をアピールする手段として、非常に重要な役割を果たすと関係国に認識されており、James Hecker欧州アフリカ米空軍司令官は、

「NATOに敵対する者への強いメッセージとなる」、「ウクライナでは誰も航空優勢(air superiority)を確保していないから数十万人もの死傷者が出ている。西側が航空優勢を握っていた20年間のアフガンでの戦いより圧倒的に犠牲者が多い」、「航空優勢の重要性をウクライナは示している」と、整備作業の標準化による基礎的整備作業の相互運用性確立を航空優勢の基礎として重要だと訴えています
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F-35 Air force chiefs2.JPGF-35の基礎的な整備作業の標準化(standardization)により、国境をまたいで展開するF-35の整備作業を国家間で相互支援(shared maintenanceとかcross servicing)するという素晴らしい取り組みで、「Tornado」や「Eurofighter」での実績もある実効性のあるチャレンジです。ぜひ取り組みが成熟することを祈ります

ただ、欧州諸国購入と米国が欧州に展開するF-35が「2034年には600機を超える可能性」については明確に否定しておきます。戦闘機の重要性がテレビの視聴率並みに急激右肩下がりの中で、機体価格が右肩上がりになり、維持費も高止まりなF-35を、計画通りに購入し続ける国など欧州には無いと思います

ウクライナで「誰も航空優勢を確保していない」とのご主張ですが、戦闘機で航空優勢を確保することはもっと難しい時代になっていることに気付くべきだと思います。戦闘機で航空優勢を確保したつもりでも、そんな戦闘機の根拠基地はすぐにミサイルや無人機やサイバー攻撃で安価に無効化されますよ。ウクライナの現実に素直に目を向けるべきです

戦闘機による航空優勢なんて・・・
「イラン製無人機がウで猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「ウ侵略は通信へのサイバー攻撃で開始」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「ウで戦闘機による制空の時代は終焉」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/
「嘉手納F-15撤退を米空軍の構想から見る」→https://holylandtokyo.com/2022/11/09/3904/

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嘉手納米空軍が所属機勢ぞろいで勢力誇示 [米空軍]

「カラ元気」に見えてしまうのは私だけ?
淡々と軍事的合理性で行動(F-15撤収)すればいいのに
脅威の変化を日米国民に学んでもらうチャンスなのに

Kadena elephant walk.jpg11月22日、老朽化で退役のためF-15戦闘機48機が今後数年間で撤退し、代替戦力は未定で、とりあえずアラスカからF-22戦闘機が8機ほど展開してきている米空軍嘉手納基地で、基地所属機5機種28機と展開中の8機のF-22が滑走路に勢ぞろいし、「elephant walk」との戦力誇示滑走路上行進を行いました

代替戦力は良くてF-15EXかドイツから移転するF-16戦闘機で、恐らく時々やってくるローテーション派遣部隊でしょうし、戦力が派遣されていたとしても、中国に近接する紛争初動で無効化される可能性が極めて高い嘉手納基地から、有事直前に戦力が中国大陸から離れた安全な場所に撤退することは「軍事的合理性」から当然であり、ローテーション派遣戦力は「同盟国の世論対策」や「米国のコミットメントの言い訳」と考えるのが自然です

Kadena AFB.jpgそれでも米空軍の応援団体である米空軍協会のwebサイト記事は、この「elephant walk」がオースチン国防長官と中国国防相(政治的力がない軍人国防相)の初会談当日に行われたとか、11月10日から19日まで実施された日米統合演習(Keen Sword 23:自衛隊2.6万人、米軍1万人、艦艇30隻、航空機370機が参加し、今回はオブザーバとして豪州とカナダの対潜哨戒機柿1機も参加)に引き続き実施されたとか、この航空戦力誇示行進をアピールしています

アラスカから展開中の8機のF-22戦闘機以外で、
嘉手納基地所属機約80機からの参加は・・・

・23機のF-15C戦闘機
・2機のHH-60G救難救助機
・各1機のE-3早期警戒管制機、KC-135空中給油機、RC-135電波情報収集機
・・・でした。
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Kadena elephant walk3.jpg冒頭に書いたように、対中国最前線にある日本国民が知り、心構えを作るべきは、今の周辺国の兵器体系で紛争が起こった時に起こり得る事態のイメージをです。

戦闘機による空中戦などは半世紀前の世界の話であって、精密誘導兵器が飛び交い、サイバー戦や電子戦で装備運用が大いに影響を受ける世界のイメージです。前線での戦闘と後方支援の区別のない広域が戦いに巻き込まれる世界です

嘉手納基地からのF-15撤退関連
「米空軍幹部発言や構想から大きな流れを学ぶ」→https://holylandtokyo.com/2022/11/09/3904/
「衝撃、11月1日から段階的撤退」→https://holylandtokyo.com/2022/10/31/3817/

太平洋軍を巡る関係者の発言
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21
「アジア太平洋地域で基地増設を検討中」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-28
「対中国で米軍配置再検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-16-1
「CSBAの海洋プレッシャー戦略」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13
「PACAFが緊急避難訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-27
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「岩田元陸幕長の発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09

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X-37Bが記録更新の908日宇宙滞在後に帰還 [サイバーと宇宙]

従来の780日間をさらに更新
2010年から運用開始の同機の後継は民間企業製か

X-37B 908.jpg11月12日、米宇宙軍が運用する再利用可能な実験無人宇宙船X-37Bが、記録更新の908日間の宇宙飛行を終えフロリダ州Cape Canaveral宇宙センターに無事帰還しました。2020年5月17日に打ち上げられた同機6回目の飛行で、5回目に記録していた780日間の宇宙滞在記録を更新しました

X-37Bは「9m×4.5m×3m」とマイクロバス弱程度の大きさで、ロケットの先端に取り付けて打ち上げられ、帰還時は滑走路に着陸する無人宇宙船です。OTV(Orbital Test Vehicle)が正式名称の実験船ですが、、宇宙でどんな実験を行っているのか非公開部分が多く「謎の宇宙船」とも言われ、追跡マニアが「中露の衛星を追跡している」等々の「噂」や「推測」を流して時に話題になったりしていました

X-37B 908 4.jpg2010年4月に最初の打ち上げられた1回目の宇宙滞在が224日間、2回目が468日間、3回目が675日、そして2017年5月に帰還の4回目は718日間、2019年10月に帰還した5回目は780日で、この記録が今回6回目の飛行で908日に更新されたわけです。

「謎の宇宙船」と呼ばれながらも少しずつ情報公開の動きも見られ、6回目のフライトでは以下のような試験・実験を実施していると「ほんの一部分」ながら公開されています

●米空軍士官学校の教授や学生が運用している実験小型衛星「FalconSat-8」の運搬放出
●米海軍研究所の太陽光発電エネルギーを電磁波送信するアンテナ試験
X-37B 908 5.jpg●NASAによる素材研究実験「METIS-2」→耐熱コーティング、放射線シールド素材等の試験と、「植物の種子実験」→宇宙環境が植物の種子に与える影響を、将来の惑星間飛行や他惑星への移住計画に備え確認
●帰還のための大気圏再突入の際、「リング形状」の装置を機体後方に付けて飛行し、着陸前に切り離す空力特性試験を実施

米宇宙軍は、X-37Bが今後あと何回宇宙飛行実験を行うか等について明確にしていませんが、2年前から宇宙軍はX-37Bの後継検討の必要性を発信し始めており、折しも民間企業Sierra Spaceの「Dream Chaser」とのX-37Bとそっくりの宇宙船が、国際宇宙ステーションへの物資輸送を2023年夏に実施する予定となっており、有力後継候補と言われているようです
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X-37B 908 3.jpgこのX-37Bを最初にブログでご紹介したのが2010年4月で、あれから12年・・・。しみじみしております。

あまり深い付き合いはなく、道ですれ違って挨拶する程度ですが、昔から知ってるご近所の方・・・のようなX-37Bでした

X-37B関連の記事
「宇宙滞在記録を更新中」→https://holylandtokyo.com/2022/07/29/3458/ 
「2020年5月打上時:少しソフト路線に?」→https://holylandtokyo.com/2020/05/15/672/
「ちょっと明らかに?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-11
「中国版X-37B?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-15
「中国衛星を追跡?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-07
「Sシャトルの代替?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
「米が宇宙アセット防護計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-16
「関連小ネタ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-04
「X-37Bをご存じですか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-20

「Dream Chaser」解説のwikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%81%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%83%BC_(%E5%AE%87%E5%AE%99%E8%88%B9)

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無人機自立化と群れ技術を作戦機での装備化へ [米空軍]

基礎技術確認を終え、2023年度から本格開発へ
2024年度予算案で具現化の方向をより明確に

XQ-58A Valkyrie.jpg11月10日付米空軍協会web記事は、無人機自立運用の技術開発「Skyborg計画」と無人機の群れ技術開発「Golden Horde計画」が成果を上げ基礎開発段階の終わりを迎えつつあり、2023年から具体的なCCA(Collaborative Combat Aircraft)開発プログラム(program of record)に昇格して具体的な装備化を目指す、とのKirsten J. Baldwin米空軍科学技術開発担当次官補の発言を紹介しています

Baldwin.jpgCCA(Collaborative Combat Aircraft)とは、有人作戦機と無人機が「緩やかな編隊」を構成し、有人機操縦者や地上からの指示を受けつつ、自律的に飛行して任務を遂行する無人僚機(ウイングマン機)を開発しようとのプロジェクトで、対中国作戦で数千とも万とも言われる多数の目標対処に必要な剛撃能力が圧倒的に不足する課題を克服し、かつ敵の強固な防空網での作戦で人的損耗を抑制することが狙いの開発プロジェクトです

「Skyborg計画」と「Golden Horde計画」は、共に2019年に優先投資を受ける重要開発案件「Vanguard program」に選定された3件の中の二つで、良く開発状況がわからないながら、こ断片的にお伝えしてきたところです

2019年12月の記事で、同計画発表時の計画の狙い等を確認すると

「Skyborg計画」は・・・
●無人機が戦闘空域でISRや攻撃を、有人の戦闘機や他の航空機に随伴し、有人機からの任務割り当て指示を基礎に、無人機自身で状況を判断して任務を遂行可能とする人工知能AIの開発

「Golden Horde計画」は・・・
weapon-swarm.jpg●敵を混乱させるために既存兵器を群れとして使用する自立制御(autonomy)の検討。あくまで人が事前に指定した目標群にのみ対処する「交戦規程を徹底させたセミ自立」を狙うもの
●群れがネットワーク化され、共同して機能し、敵をリアルタイムで把握して対応し、敵の反応に応じて最大の効果を発揮して任務遂行を可能にする群れ制御技術開発
●我の状況の変化や攻撃プランが機能しないと判断した場合は、事前リストの中から次善の目標を捜索し、最善の兵器を再選択し、行動を変更して任務を柔軟に遂行する。例えば共に作戦予定の他編隊の離陸が遅れた場合、互いにネットワーク上で連携を取り、先行編隊が遅れた編隊を待って同時攻撃を作為する等の自律的な行動も期待

Baldwin担当次官補代理が今回明らかにしたのは、
XQ-58A ALTIUS.jpg●「Skyborg計画」と「Golden Horde計画」は最終段階を迎えつつあり、各計画で成熟された要素技術を融合させ、2023年には米空軍の戦闘機と先進航空機プログラム開発責任者Dale R. White准将の監督の元、CCA(Collaborative Combat Aircraft)プログラムとして正式開発計画に格上げして進める
●「Skyborg計画」については、これまでXQ-58 ValkyrieやUTAP-22 Mako無人機で自立飛行ソフトのテストを行ってきたが、2023年に別の機体で応用デモ試験を行い、センサー、兵器運用、電子戦攻撃、飛行訓練パターン飛行を確認し、教訓をCCAプログラムに提供したいと考えている

weapon-swarm2.jpg●「Golden Horde計画」についても、例えばSDB(Small Diameter Bomb)の群れ実験を通じ、無人機単独ではなく群れとして、相互に機体が連携して任務を遂行するかを検討し、様々に変化する状況にいかに対応するかを煮詰めてきた
●それら成果を「Golden Horde Colosseum」との仕組みで取りまとめ、テストした以外の兵器や新兵器に成果に取り込むため、設計環境やデジタルモデリング環境を提供している

またBaldwin担当次官補代理は・・
Rocket Cargo.jpg●新たに「Vanguard program」に選ばれた優先投資開発プロジェクトである、ロケットによる物資輸送「Rocket Cargo」構想について言及し、民間企業が実現しているロケットの垂直着陸技術を少しアレンジすることで、大陸間の長距離物資輸送を実現する可能性があり、Kendall空軍長官も推奨するプロジェクトとして推進している
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UTAP-22.jpg関連過去記事でご紹介しているように、「Skyborg計画」については豪州も参加して進められているようですが、「Golden Horde計画」は2020年秋頃に壁にぶつかり、学界や民間企業に関連技術や知見の提供を依頼する状況に追い込まれていたところです。その後、持ち直したのか細部不明ですが・・

無人機や無人機の「群れ」の活用は必要な研究開発事項ですが、対中国正面の活動拠点確保が困難なエリアで、どこからどのように作戦空域に投入するかも大きな課題です。これは有人機にも当てはまる大きな課題で、戦闘機クラスに突き付けられた大問題です。10年以上前から指摘されてきた課題ですが・・・

Skyborg計画関連
「2機種目MQ-20 Avengerで成功」→https://holylandtokyo.com/2021/07/08/1983/
「Skyborg構想の頭脳ACSで初飛行2時間」→https://holylandtokyo.com/2021/05/17/1489/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「無人ウイングマンのデモ機選定開始」→https://holylandtokyo.com/2020/05/24/679/
「豪州もXQ-58に参画」→https://holylandtokyo.com/2020/05/06/664/
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1

Golden Horde計画関連
「優先項目の無人機の群れ苦戦」→https://holylandtokyo.com/2020/10/12/430/
「SkyborgとGolden Horde計画を優先開発に」→https://holylandtokyo.com/2019/12/06/2838/

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ビジネスジェット改良の通信中継機増強中 [米空軍]

現有3機に加え2機増強、最終的には9機体制へ
本格紛争への投入可能性は不明ですが・・・

E-11A BACN4.jpg11月9日付米空軍協会web記事が、米空軍がビジネスジェット機を改良した通信中継機E-11Aを追加で2機Northrop Grumman社(NG社)と契約し、現在運用中の3機と合わせて5機体制に向かっている報じています

通信中継機E-11は、Bombardier社製のビジネスジェットGlobal Express 6000/BD-700に、NG社製のBACN機器(Battlefield Airborne Communications Nodeシステム)を搭載した機体で、2021年1月に米空軍とNG社が契約を結んで製造開始したもので、今後毎年1機を調達して合計9機体制を目指しているということです

E-11A BACN2.jpgまた米空軍は、高高度無人偵察機RQ-4 Global HawkにBACN機材を搭載したEQ-4B を2018年頃から運用して4機保有していすが、米空軍RQ-4が退役を開始したのに合わせEQ-4Bも引退させようとしています

NG社は現存する米空軍BACN搭載機をすべて提供していますが、これまでに合計20万時間以上の飛行任務実績を積み重ねており、「近接航空支援CAS軍事作戦任務のほか、空輸物資投下、兵士救出、人道支援のカギとなる指揮統制を提供している」と今回の2機契約に際し声明を出しています

E-11A BACN3.jpg具体的には、アフガニスタン作戦における山岳地域での空地連携で、山にさえぎられて通信が途絶えがちな地形克服に重要な役割を果たしたほか、互いにデータシステムが全く異なるF-22とF-35の空中でのデータ共有を可能にする中継器としても大きな存在感を発揮しているようです

米空軍は2021年に次世代のBACN機器開発をNG社に契約しており、地上拠点との連携強化や個人装備との連接性強化、4世代機と5世代機のデータ共有能力向上、高い脅威下でも機能するGPSシステム、Link-16、最新の航法装置、機器の信頼性や性能向上、更に機体の残存性を高める自己防御能力強化を目指して開発が始まっているとのことです
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E-11A BACN5.jpg科学技術やIT技術が進歩しても、電波が直進する性質を変えることができないことから、各種データを前線兵士や操縦者と指揮所でリアルタイムで共有して戦いを優位に進めようとする米軍にとって、「通信中継」の役割は極めて重要なのでしょう。ご紹介している写真にはレドームが飛び出したような機体と普通のビジネスジェット機タイプの2つがありますが、両タイプがあるようです

E-11Aの他にも、KC-46A空中給油機に通信中継能力を付与する試験が行われていたり、MQ-9に通信中継を担わせる試みがあったりと、「空飛ぶwifi :wifi in the sky」との愛称で呼ばれるE-11Aへの需要は高まるのでしょう。

そうとは認識しつつも、対中国作戦が予期される台湾周辺や西太平洋で、元がビジネスジェット機であるE-11Aの使用は想定されているのでしょうか? アフガンなど大陸とは異なり、海洋作戦が多くを占める西太平洋では、衛星通信が重要視されるような気がします

通信中継機能も期待される機体には
「MQ-25A艦載無人空中給油機」→https://holylandtokyo.com/2021/09/17/2250/
「KC-46A空中給油機」→https://holylandtokyo.com/2020/01/17/868/
「64日間連続飛行の太陽光無人機」→https://holylandtokyo.com/2022/08/30/3585/
「無人ウイングマン機XQ-58」→https://holylandtokyo.com/2021/04/09/103/
「C-17輸送機でも」→https://holylandtokyo.com/2020/07/10/569/

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仰天!米空軍作戦部長に特殊作戦部隊一筋の人物が [米空軍]

代々戦闘機パイロットが占めてきたポストに
特殊作戦ヘリMH-53Jのパイロットが候補に
ACE構想での少人数多機能運用変革に期待か?

Slife.jpg11月16日、バイデン大統領が米軍高級幹部人事案を明らかにし、戦闘機パイロットが代々務めてきた米空軍司令部の作戦部長(deputy chief of staff for operations)に、特殊作戦ヘリMH-53J操縦者でペンタゴン勤務がほとんどない、現在米空軍特殊作戦コマンド司令官であるJames C. “Jim” Slife中将が推薦され大きな話題となっています

末尾にリンク掲載の同中将のご経歴を見て頂ければわかりますが、特殊作戦ヘリ操縦者として部隊経験を積み、その後は米中央軍や米特殊作戦コマンドや空軍特殊作戦コマンドで各種指揮官とスタッフを務め、将官になった2013年夏以降は、2015年から2年間の在韓米軍参謀長を除き、

MH-53J 3.jpg米中央軍計画部長や特殊作戦コマンドの参謀長や副司令官等を歴任しており、米空軍高級幹部の「王道キャリア」である戦闘機パイロットとは全く異なる空軍人生を歩んできた人物です。ちなみに退役予定の現在の空軍作戦部長Joseph T. Guastella中将は、F-16で4000時間(戦闘任務1000時間)の「王道キャリア」の方です

なぜ空軍作戦部長に従来とは全く異なる経歴の人物が推挙されたのか、もちろん国防省や米空軍は説明してくれませんが、11月16日付米空軍協会web記事は、以下のようなSlife中将の仕事ぶりや業績に触れ、Brown空軍参謀総長が推進するACE構想(agile combat employment)推進に不可欠な、多様な能力を備えた少人数での部隊分散運用の態勢づくりを託しての人事ではないかと推測しています

16日付米空軍協会web記事によればSlife中将は
Slife3.jpg●現在の空軍作戦部長が中心となり導入した、6か月単位で空軍部隊の海外派遣や母基地での訓練などを設定し、24か月で一巡するようなローテーション方式に関し、Slife中将は空軍特殊作戦軍の状況からこの改革に大いに賛同し、その利点をアピールしている

●各軍種に分かれている特殊作戦部隊を一元管理すべきとの意見が根強くあるが、Slife中将はこれに大反対の姿勢を明確にしており、一元管理は一見効率的に見えるが、部隊に負荷がかかる場面では細かな管理ができず戦力不足が顕在化すると主張している
●この問題意識は、米空軍参謀総長Brown大将が推進するACE(agile combat employment)構想の鍵となる、分散運用先で少数兵士による航空戦力運用を可能にするための「兵士の多能力化」の実現に重要だと認識されており、Slife中将が特殊作戦軍で推進した「Mission Sustainment Teams」(異なる職種兵士で構成されるチーム)の考え方が有効だと期待されている可能性がある
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MH-53J 2.jpg米空軍協会web記事のSlife中将紹介部分は理解しづらい内容ではありますが、米空軍の「王道キャリア」を積んだ戦闘機パイロットには無いものを米空軍は必要としている・・・・とも解釈できます

この人事は米議会上院の承認が必要ですが、中間選挙後の米議会は多忙だとのことで、正式承認が来年1月にずれ込み可能性があるとのことですが、これは本当に大きな人事だと思います

米空軍だけでなく、世界の空軍が「あれッ???」と驚き、その背景を考え、自らを振り返る貴重な機会となれば・・・と思います

James C. Slife中将のご経歴
→ https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/467467/james-c-jim-slife/ 

現在のGuastella作戦部長が登場する記事
「航空機維持費増で飛行時間削減へ」→https://holylandtokyo.com/2021/07/07/1965/

米空軍の将来作戦コンセプトACE関連記事
「ACE構想生みの親が語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「欧州米空軍がACE構想の確認演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「GuamでF-35とF-16が不整地離着陸」→https://holylandtokyo.com/2021/01/29/310/
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/

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人権や原油価格で緊張感も米B-52をサウジ戦闘機が護衛 [安全保障全般]

イランがサウジ攻撃を計画との警戒情報の中
イスラエル含む13か国がB-52の中東飛行を支援

B-52 Saudi 3.jpg11月10日、飛行ルートなど細部は不明も、2機のB-52爆撃機が「BTF:Bomber task forces」任務で中東地域を示威飛行し、イスラエルやサウジを含む13か国が何らかの形でこの飛行に関与したと米中央軍が明らかにしました。このような飛行は今年4月と9月にも行われています。

米中央軍は具体的に13か国の国名など細部に一切言及していませんが、イスラエル空軍はイスラエル領空内で同空軍F-35I型2機がB-52をエスコート飛行したとTwitterで発表し、サウジアラビアも同じくTwitterで各2機のF-15とTyphoon戦闘機がサウジ上空でB-52と共に飛行する写真を公表しています

B-52 Saudi11.jpg中東でも定期的になりつつある米空軍大型爆撃機による「BTF」飛行ですが、今回は米国とサウジ情報機関がイランによるサウジ攻撃計画の可能性をつかんでいるとのメディア報道が出たばかりのタイミングであり、注目を集めています

4月にB-52による中東「BTF」飛行をご紹介した際は、9か国が戦闘機で護衛したと表明していますが、今回はそれを上回った可能性もあり、ウクライナ情勢や中国情勢に隠れて日本で話題にならない中東情勢ですが、アラブ中東諸国のイランとイラン親派組織への警戒感は相当に高まっているものと推測されます

B-52 F-35I.jpgまた、2020年9月に成立した「アブラハム合意」(イスラエルとUAE&バーレーンの国交樹立)を受け、イスラエルとアラブ諸国との壁が急速に低下し、対イラン姿勢で協力気運が少しづつ高まる方向に変化がないことも伺えます

日本で報道を見る限り、米国とサウジの関係は、人権重視のバイデン政権と原油高を支えるサウジの姿勢もあり停滞もしくは悪化方向との印象ですが、サウジ国防省がSNSで大々的に米空軍爆撃機とサウジ戦闘機の編隊飛行写真をアピールし、「両国軍の協力は地域の安定と安全保障に貢献する」との声明を出す辺りは、「底堅い両国関係」を伺わせます

B-52 Israel F-35.jpg10日のB-52周回飛行に先立ち、11月7日までの約1週間、米国とサウジは「Nautical Defender」との海軍演習を英国も交えてアラビア海で実施しており、まさに西側とサウジの軍事協力を11月に入って強力にイランや世界に向け発信している状況です。
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イスラエル軍の護衛飛行ツイッター発表
→ https://twitter.com/idf/status/1590739568797835264?s=61&t=G4ZZEsquqC2rIgO2xopxAw

サウジ軍の護衛飛行ツイッター発表
→ https://twitter.com/modgovksa/status/1591736910908723201?s=61&t=G4ZZEsquqC2rIgO2xopxAw

世界は動いています。日本のTVや日本語報道を見ていると、頭が世界から遠ざかっていきますよ・・・皆様、ご注意を!

B-52による中東関係国と連携した示威飛行
「4月9か国戦闘機とアラビア半島周回」→https://holylandtokyo.com/2022/04/06/3105/

アブラハム合意の関連記事
「イスラエルが欧州軍から中央軍管轄に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-16
「イスラエルがUAEへのF-35に事実上合意」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-26

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豪州がサイバー能力大拡大の10年計画推進中 [サイバーと宇宙]

Australia China.jpg11月7日付Defense-Newsは、豪国防省の内部組織ASD(Australian Signals Directorate)が今後10年をかけ取り組むサーバー能力大増強計画Redspice(Resilience, Effects, Defence, Space, Intelligence, Cyber, Enablers)の概要文書を紹介し、約1兆円の予算で挑戦する計画の当初4年間で、予算を優先確保に動くなど豪州政府の動きを紹介しています

事柄の性質上から細部は不明な部分が多いのですが、10年計画で「サイバー攻撃能力」を3倍に、「継続的なデジタル界の捜索探知能力」を2倍に、「世界的な拠点数」を4倍にし、先進人工知能や機械学習能力開発に取り組み、そのために新たに1900名の人員を増強する意欲的な計画が、Scott Morrison前首相時の今年3月に発表され既に開始されているとのことです

Redspice2.jpg背景には、中国との対立姿勢を明確にする豪州の姿勢からか、豪州社会へのサイバー攻撃が激増していることがあり、9月には豪州2位の携帯電話会社から豪州国民の1/3に相当する個人情報が大量に流出し、10月26日には豪州最大手の医療保険会社から400万人の病歴や治療歴を流出されると恫喝する事件が発生して社会的な不安が高まっていることもあるようです

1900人の人員増も、2023-24年に400名、24-25年に600名、25-26年に500名、26-27年に200名と前のめりに行われる計画で、10年で約1兆円の予算の内、スターダッシュの4年間に4200億円を投入する計画で、うち3600億円は政府の国防優先予算(Integrated Investment Program)に割り当てられ優先扱いとなっているようです

Redspice.jpgそれでも経費ねん出のため、現国防装備計画からの削減が求められると言われており、無人偵察攻撃機機MQ-9を海上活動に改修したMQ-9B SkyGuardianを導入する約1300億円の計画がキャンセルされたり、450両導入が計画され機種選定が進んでいた歩兵戦闘車両の調達数が300両程度の圧縮されるとの報道が出たりしているようです。

同時に、豪州の国力に比し大規模過ぎとも言われるRedspice計画を精査すべきとの声もあるようですが、ASDトップのRachel Noble長官は、3本柱であるサイバー攻撃強化、情報収集分析能力強化、情勢認識&対応能力強化のどれもあきらめるつもりは無いと明言し、同国専門家もデジタル社会の変化速度を考えれば、極めて緊急性の高い課題だと本計画の推進に期待しているようです
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Redspice4.jpg日本のサイバー体制強化の現状は、先進国の中でも「極めて寂しい」状況にあると言われており、喫緊の最重要課題のはずです・・・

Twitterが少しは見られるようになって嬉しいのですが、「検討する」から「検討を加速する」に進歩したと言われる日本のリーダーは大丈夫なんでしょうか。

豪州国防省ASDによるRedspice計画説明文書13ページ
https://www.asd.gov.au/sites/default/files/2022-05/ASD-REDSPICE-Blueprint.pdf

最近のサイバー関連記事
「なぜ露は大規模サイバー攻撃やGPS妨害をしない」→https://holylandtokyo.com/2022/07/26/3497/
「ウ侵略は衛星通信へのサイバー攻撃で開始」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「ロシアに迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「ウのサイバー副首相」→https://holylandtokyo.com/2022/03/23/2942/

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欧州演習で初披露:輸送機からミサイル投下攻撃 [米空軍]

2021年12月の@メキシコ湾以来の実発射試験
輸送機のミサイル投下母機使用に賛否渦巻く中
米空軍は様々なオプション求め推進中

MC-130 Rapid Dragon3.jpg11月9日、米特殊作戦軍所属のMC-130J Commando II特殊作戦機が、貨物庫からパレットに乗せられたJASSM-ER空対地スタンドオフミサイルを投下して攻撃する試験をノルウェーの演習場で実施し、海外で初めて成功したと欧州米特殊作戦軍がTwitter発表(発表は10日)しました

輸送機からのミサイル投下は、「Rapid Dragon計画」とのプロジェクト名で2年前に開始されたばかりの取り組みですが、極めて順調だとプロジェクト責任者の米空軍研究所AFRLのDean Evans氏はアピールし、2021年12月のメキシコ湾での試験以来の実射成功に自信を深めているようです

MC-130 Rapid Dragon.jpg試験は、米軍と欧州諸国が参加する恒例の演習「Atreus」(今回は英、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア参加)内で実施され、ノルウェーの演習場「Andøya Space Defense Range」で行われました。

欧州米空軍がTwitter公開した映像が示すように、MC-130貨物室からパラシュートで引っ張り出されて投下されたJASSM-ER(最大射程1000㎞)は、海面に向いて垂直にぶら下げられた状態でパレットから真下に射出され、翼を広げると同時にエンジンに点火し、海面を這うよう飛翔した後、投下から約2分間に予定通り着弾しました

欧州米特殊作戦軍のTwitter発表
https://twitter.com/i/status/1590382685410582528
https://twitter.com/US_SOCEUR/status/1590382685410582528

10日付Defense-News報道はここまでですが、本日は輸送機から精密誘導兵器を投下する「Rapid Dragon計画」に関する、米空軍側の主張と米空軍OBの反対意見をご紹介します

米空軍の考え方
MC-130 Rapid Dragon2.jpg●対中国作戦は、米本土から遠く離れた西太平洋で実施され、作戦根拠基地が乏しい中、中国軍からの攻撃による被害も想定する必要があり、分散した小さな拠点からの作戦実施が求められ、従来の作戦運用の枠にとらわれない柔軟な発想が必要
●このような戦場環境下、大量の攻撃目標に対応するには従来の爆撃機や攻撃機だけでは不足するので、無人機や無人機ウイングマン機の活用が検討されているが、既存のアセットである輸送機の攻撃活用もオプションの一つである

●爆撃機や戦闘爆撃機だけでなく、輸送機を攻撃に活用することで、敵の攻撃や迎撃計画を複雑化させ負荷をかけることも狙う効果の一つであり、逆にB-52爆撃機を物資空輸に活用することも検討している

空軍OBの反対意見
(空軍協会ミッチェル研究所長や研究員)
JASSM Rapid Dragon.jpg●対中国作戦での輸送要求は膨大で、民間輸送力の活用が不可欠な状態なのに、軍用輸送機を攻撃に活用する余裕など全くないはず
●自己防御能力が低く脆弱な輸送機は敵の防空圏内に近づけず、少なくとも1発1億円以上する長射程精密誘導兵器を搭載する必要があるが、数千から万単位の攻撃目標に対処するためには、長射程兵器依存では米国は破産する

●長射程精密誘導兵器による「Stand-off」攻撃オプション重視が米空軍だけでなく、陸海海兵隊部隊の将来構想の中心になりつつあるが、ウォーゲームや各種机上シミュレーション結果に謙虚に向き合えば、1発500万円以下のJDAM等をより有効活用する「Stand-in」攻撃が不可欠なはず。現実を見て統合レベルでよく考えろ!
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MC-130J Commando II 2.jpgオプションの一つとして研究開発する米空軍の姿勢にも一理ありますが、空軍OBの反対意見「Stand-off攻撃だけでは破産するし、兵器も足りない」との主張は極めて重く、対中国作戦の根本的問題をついています。

指揮統制C2改革しかり、作戦拠点の確保問題(同盟国の理解)しかり、輸送力不足問題しかり、弾薬補含む攻撃力不足しかり、中国によるミサイル攻撃に対する脆弱性問題しかり、台湾有事の足音が聞こえてきそうな今日この頃、課題は山積しています

輸送機からの兵器投下検討
「巡航ミサイル投下&攻撃試験」→https://holylandtokyo.com/2021/12/20/2550/
「Rapid Dragonを本格検証へ」→https://holylandtokyo.com/2020/11/06/380/
「反対Stand-inとoffのバランス不可欠」→https://holylandtokyo.com/2020/07/01/562/
「空軍計画部長が語る」→https://holylandtokyo.com/2020/06/09/619/
「MC-130からパレタイズ兵器投下試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-01

輸送能力や弾薬量の圧倒的不足
「民間海空輸送力活用のための取組」→https://holylandtokyo.com/2022/10/21/3780/
「弾薬不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
「ウ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/

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米陸軍も対中国で分散作戦演習JPMRC [Joint・統合参謀本部]

ハワイの8つの島に分散&機動展開を想定
地域パートナー国も参加して6000名規模で
これまで太平洋地域で大規模陸軍演習がほぼなく

JPMRC Army.jpg10月28日付Defense-Newsが、米太平洋陸軍がハワイの8つの島を使った演習JPMRC(Joint Pacific Multinational Readiness Center)を10月末から11月9日の間で実施し、フィリピン、インドネシア、タイ陸軍や米海空海兵隊も交え、総勢約6000名規模で対中国作戦の訓練を行っていると報じています

従来米陸軍は多くの場合、米本土の広大な演習場を用いて大規模訓練を行ってきたようですが、対中国を想定した環境設定には米本土の演習場は不向きであることから、ハワイの島々を活用し、演習部隊が対中国で分散して協力しながら作戦遂行するイメージを、シミュレーション機材も使用したバーチャル環境も含めた設定で具現化しているとのことです

JPMRC Army5.jpg演習部隊の主力は第25歩兵師団の第2旅団ですが、前述東南アジア3か国からも中隊レベル規模の部隊も参加し、試験的に各種商用通信機器なども使用して8つの島に分散した作戦運用に取り組み、「水上ボート:watercraft」など西太平洋を想定した機材も使用して現実味を持たせる企画となっているようです

中国軍を演じる第196歩兵旅団の2個大隊も、小型ドローンや通信妨害装置など中国軍部隊を想定した活動で、作戦運用面だけでなく兵站ロジ面でも演習部隊にストレスを強いる行動をとり、海を隔てながらも協力した作戦行動を目指す演習部隊の企図を破砕すべく練った対抗行動を行っているようです

JPMRC Army3.jpg米太平洋陸軍は、同様の演習設定JPMRCを今年3月にアラスカでも行い、寒冷地での作戦行動に特化した訓練したようで、Charles Flynn太平洋陸軍司令官は演習開始に当たり10月27日記者団に、このような形式の演習をハワイとアラスカと他所で毎年1回は実施し、米本土の演習場への移動負担を無くして地域の同盟国軍が参加を容易にしつつ、米本土では設定できない実践的な環境下で効果的な演習を行っていくと説明しています
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整理すると、太平洋陸軍が広大な演習場を確保できない地理的環境を克服し、バーチャル環境やハワイの島々での分散運用をも用した米陸軍数十年ぶりの新たな「combat training center」設定演習を、対中国を意識したJPMRC(Joint Pacific Multinational Readiness Center)として立ち上げ、地域同盟国パートナー国を交えて演習を開始しているとのニュースです

JPMRC Army4.jpg対中国で米陸軍の話題としては、射程1000マイルの大砲開発を断念したとか、極超音速兵器の受け入れ部隊を立ち上げたとか、遠方攻撃部隊の話題ばかりでしたが、「Boots on the Ground」部隊の中核部隊も対中国に動き始めているとの話題をお伝えしました。

それでも実際、米陸軍は対中国で何を期待されているんでしょうか???

米陸軍の最近の話題
「機動性&生存性の高い前線指揮所を」→https://holylandtokyo.com/2022/08/01/3519/
「ウクライナの教訓」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/
「射程1000nm巨砲断念」→https://holylandtokyo.com/2022/05/30/3281/
「Project Convergence5つの教訓」→https://holylandtokyo.com/2021/12/21/2514/

米陸軍関連の記事
https://holylandtokyo.com/?s=%E7%B1%B3%E9%99%B8%E8%BB%8D

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C-130Hプロペラ亀裂の原因は整備作業の電気放電か [米空軍]

整備作業終了時に使用した「放電エッチングペン」が
10年ほど前からの習慣で使用も半年前に使用停止

electric arc pen2.jpg11月8日付米空軍協会web記事が米空軍輸送コマンド報道官からの情報として、米空軍C-130H型機で「54H60プロペラ」を使用している機体のプロペラに亀裂が見つかり、9月27日から同型機で同プロペラを使用している116機が飛行停止になった件について、これまでの調査で整備作業終了時に「電気放電エッチングペン」でプロペラに整備完了を示す数字を記入したことが原因らしいと報じました

C-130H propeller3.jpg「電気放電エッチングペン:electric arc etching pens」を使用し、整備が完了したことを示す数字をプロペラに記録する方式は10年前ほどから導入され、6か月前まで行われていたと同報道官は文書で説明したようですが、時には「酸性の液体で数字を記入:acid wash」することもあったとのことで、正式に手順化された手順だったかは不明です

報道官は「一連番号をプロペラに記載するプロセスが、C-130Hで見つかった亀裂を引き起こした。亀裂を引き起こした根本原因や仕組みを理解するには、更なる分析が必要である」、「我々の焦点は、安全にかつ迅速に飛行停止状態にある機体を飛行可能にすることである」と声明で述べていますが、飛行停止になった116機のうち、何機がこれまでに飛行を再開したかについては、作戦運用上の非公開事項だとして明らかにしませんでした

C-130H propeller.jpg米空軍が保有しているC-130H型機は、2021年9月末時点で141機で、内116機が問題の古いプロペラを使用していたわけですが、全てが州空軍か予備役部隊に配属されている機体です。ただしC-130H型機の改良型である、特殊作戦軍のMC-130H Combat Talon IIと EC-130H Compass Callも影響を受け飛行停止になったようです

米空軍は2021年から、C-130H型の83機に8枚羽の新型「NP2000プロペラ」を導入するよう進めてきましたが、今その動きを加速しようと製造企業Collins Aerospaceと協議をしている模様です
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electric arc pen3.jpgなぜ「電気放電エッチングペン」を使用して番号をプロペラに記載する必要があったのか? なぜ6か月前にその方法を止めたのか? 「酸性の液体」で記録する手法とどちらが正規の手順なのか? そもそも整備終了時に数字を記載することが正式な手順だったのか?・・・等々、多数の「?」が頭の中に浮かびます・・・

世界のベストセラー機であるC-130ですが、他国で同様の亀裂が見つかったとの話は聞きませんし、航空力学の粋を集めたプロペラ表面に「電気放電」を行う米空軍兵士の大胆さに驚かされるばかりです。でもこれが米空軍整備部隊なのかもしれません・・・

それにしても、飛行停止から40日以上経過していますが、飛行再開になった機体数は少なそうですねぇ・・・

「米空軍C-130H輸送機の飛行停止解除見通し不明」
https://holylandtokyo.com/2022/10/11/3736/

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米宇宙軍が少佐&大佐級の教育課程をSAIS内に設置へ [サイバーと宇宙]

中上級クラスの高等教育をJohns Hopkins大学と協力し
陸海空軍が軍内に教育機関を保有する中
DCに設置して卒業後の引っ越し負担の軽減も
たぶん他軍種の士官クラスは羨望のまなざしを・・・

SAIS Space forces.jpg10月26日、米宇宙軍とJohns Hopkins大学が、少佐&大佐クラス上級幹部の教育課程を、同大学内の著名なSAIS(School of Advanced International Studies:ワシントンDC)内に宇宙軍用に新設し、2023年夏から開講すると発表しました

米軍の各軍種は、中上級クラス幹部の教育課程を各軍種の大学内に設置しており、宇宙軍も現在は、米空軍がアラバマ州マックスウェル空軍基地「Air University」内で行っている教育課程で、米空軍少佐&大佐クラスらとカリキュラムを一部共有する形で教育を行っていますが、この宇宙軍課程と教官をSAISに移し、SAIS教授陣からの支援も受けて「ワシントンDC」で行うとのことです

SAIS Space.JPG宇宙軍が他軍種と異なる形で中上級クラス教育機関を軍外に独立して立ち上げるのは、宇宙軍の規模が他軍種に比して小さく独自の課程運営が難しいことが大きな理由の一つですが、同課程卒業生の多くがペンタゴン勤務になる現状から、家族も含めた引っ越し負担を軽減することも、結果として意味が大きいと宇宙軍の教育担当Shawn N. Bratton少将は正直に語っています

本件を報じる米空軍協会web記事は、例えば米空軍の同課程は前述のようにアラバマ州マックスウェル基地に所在するが、基地周辺の子弟用学校のレベルが低く、配偶者の就職口も限定されることから、課程を履修する大佐クラスから批判的な声が上がっており、また10か月の課程履修後に再び引っ越しをすることへの負担感も人事上の課題となっているようです

Bratton Space.jpgまた同課程履修で得られる上級ポスト昇進にも重要なJPME資格(Joint Professional Military Education)取得に関し、陸海空軍の場合、選抜され著名一般大学院で高等教育を受ける者は、各軍種の軍事知識を各軍種の教育課程の「通信教育」で並行履修する苦行を強いられますが、SAIS内新課程に配置される宇宙軍人教官からも教育を受ける宇宙軍課程卒業者は、「通信教育」なしでJPME資格を得ることができる点でも軍人学生のメリットが大きいようです

細かな「引っ越し負担」や「卒業時の資格」を最初に説明しましたが、何と言っても大きいのは、宇宙ドメイン問題が単に軍事だけに留まらず、国の経済や社会生活を支える基盤としてクローズアップされる中で、宇宙軍の近未来にリードする人材を、国際関係教育で世界第3位に位置づけられるSAIS教授陣の力も得て、ワシントンDCで行えることのメリットは計り知れないと思います

Space guardian.JPG同時にJohns Hopkins大学のSAISにとっても、今ホットな宇宙問題に現場で立ち向かってきた優秀な30代前半と40代前半の米軍人を学内に毎年60~80名受け入れ、学界での理論研究と結び付ける機会を得ることは、「実践的な政策提案能力獲得」を目指すSAISにとっても大きなメリットと考えられます

現在少佐&大佐クラスの教育機関を、陸軍はペンシルバニア州に、海軍はロードアイランド州に、空軍はアラバマ州に設置していますが、陸海軍の今後同課程で教育を受ける可能性のあるエリートクラスは、宇宙軍のアイディアを「羨望のまなざし」で見ていることでしょう。

宇宙軍を取り巻く環境は、トランプ政権による強引な創設時の熱気が薄れかけており、陸海空軍との予算争いや人材面や政治力等々の側面から厳しさを増すと考えられ、決して明るい見通しはないと思いますが、本件に関しては「逆境をチャンスに変えた」好例としてご紹介しておきます

米宇宙軍関連の記事
「宇宙軍武官の派遣」→https://holylandtokyo.com/2022/08/10/3530/
「地上移動目標の情報を求め」→https://holylandtokyo.com/2022/06/09/3309/
「衛星を地上観測から宇宙監視用へ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/22/2825/
「7か国で宇宙作戦ビジョン制定」→https://holylandtokyo.com/2022/02/25/2753/
「熱核推進システムを応援」→https://holylandtokyo.com/2022/01/27/2622/
「小型衛星核推進装置を求め企業募集」→https://holylandtokyo.com/2021/09/28/2233/
「同盟国から協力申し出急増中」→https://holylandtokyo.com/2021/08/04/2064/
「核熱推進システム設計を3企業と」→https://holylandtokyo.com/2021/04/20/111/
「衛星延命に企業と連携」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-17

最近の宇宙関連記事
「早急な能力向上に民間衛星企業をまず活用」→https://holylandtokyo.com/2022/07/27/3454/
「露はなぜ大サイバー攻撃やGPS妨害しない?」https://holylandtokyo.com/2022/07/26/3497/
「第一撃は民間衛星通信会社へ」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「ロシアに迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「ウクライナ侵略最初の一撃は宇宙で!?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/18/2732/

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嘉手納からの米空軍F-15撤退を軍事的合理性から考える [安全保障全般]

11月4日と5日に、嘉手納基地へ計8機のF-22戦闘機がアラスカの米空軍基地から展開しました。 今回のローテーション派遣の期間は不明ですが、稼働率5割(2021年度実績)で米軍戦闘機最低のF-22の今後の活動に注目!
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日本の有識者の皆さんの楽観論にあえて言う
米軍は嘉手納基地に有事期待していない
日本はいつまで戦闘機に期待し続けるの?(ため息100回)

F-15C Kadena2.JPG11月3日付米空軍協会webは、「Air Force magazine」編集長でこの道35年の著名な航空宇宙ジャーナリストJohn A. Tirpak氏による、嘉手納F-15撤退後の穴埋め戦力に関する記事を掲載し、アラスカ配備のF-22によるローテーション派遣をとりあえず行うだろうが、その後の長期的な対応として国防省高官は、ドイツやイタリア配備の米空軍F-16を展開させる案も検討していると紹介しています

ただ、ドイツのSpangdahlem基地とイタリアのAviano基地のF-16部隊を合併し、極東アジアに移転させる「欧州F-16転用案」は2021年には存在していたものの、国際情勢を受け国防省の「米軍態勢見直し:Global Posture Review」で廃案になった経緯があり、ウクライナ危機で欧州がロシア脅威に直面する中、欧州F-16の極東への移転は感覚的に難しいだろうと示唆しています

F-15EX 4.jpgまた世間で噂の新型第4世代機F-15EXを嘉手納に展開させる案についてもTirpak氏は、導入機数が当初計画の144機から80機にまで削減され、2022年から24年まで毎年24機程度しか予算要求されず、米本土防空用F-15C退役後を支えるのに精いっぱいだろうから、短期的なローテーション派遣がないことはないだろうが、嘉手納への恒常的な展開は考えにくいとコメントしています

更にTirpak氏は、米空軍報道官の「米空軍は嘉手納F-15の穴埋め(backfill)の責任を負っているが、計画についてはコメントしないし、戦力の展開計画についても、機体が展開先に到着するまで触れないのが米空軍のスタンスだ」との発言に合わせ、「他軍種の戦闘機を嘉手納F-15の補填にすることはない」との公式発言を伝えています

F-16 Spangdahlem2.jpgそして記事はDavid A. Deptula米空軍協会ミッチェル研究所長による本件に関する以下のコメントを取り上げ・・・

「これは米空軍が予算不足で国家安全保障戦略や国家防衛戦略を適切に遂行できない状態にあることを示す兆候だ。前方展開戦力は両戦略の基礎だが、戦力が無ければ実行できないのだ」、「状況は悪化する。米空軍は2027年までに数百機から千機を退役させようとしている(240機F-15、120機F-16、70機A-10など)」

F-22 iwakuni2.jpg更に「嘉手納は対中国有事の際、疑いなく数百の中国軍の精密誘導ミサイル攻撃を受けるので、嘉手納基地の航空機は危機が迫れば他基地に避難する可能性が高いが、前方プレゼンス維持、同盟国への関与維持、ISR活動の必要性等から嘉手納を捨てることはないだろうが・・」・・・を紹介しています

また併せて記事は、地上移動目標を探知追尾する専門機E-8C Joint STARSが9月に嘉手納から撤退し、この後継機に相当する機体の配備予定はないとも伝え、嘉手納F-15の段階的撤退に関し、米議員が特別ブリーフィングを米空軍に求めていると伝えています
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Hinote2.jpgF-22に期待する声もありますが、所詮平時のプレゼンスであり、稼働率が米空軍戦闘機の中でずば抜けて低い5割程度で、2030年頃から退役が始まる維持運用が難しい機体です。米空軍司令部Hinote計画部長の言葉(2021年5月)を借りれば「F-22は1991年に開発が始まった機体で、中国脅威から台湾や日本やフィリピン等を守るには適切な装備ではなくなるだろう」とのアセットです

前述のようにF-16にもF-15EXにも期待できませんし、F-35は噂にもならない点からすると、性能等が中国に知られないよう、米空軍は中国正面に平時から置きたくないのかもしれません

Brown2.jpgDeptulaミッチェル研究所長の言葉を引用するまでもなく、嘉手納航空戦力は危機が迫れば、座して死を待つことなく、遠方に退避します。沖縄より中国から遠いグアム配備戦力でも、サイパンやテニアンや南洋諸島の島自前へ避難し、そこからの「分散運用」を追求します。これが米空軍が全世界で取り組むACE(agile combat employment)構想で、太平洋空軍司令官から現在の空軍参謀総長に就任したBrown大将の信念です

中国正面の第一列島線上はもちろんのこと、第2列島線上の航空基地も有事には破壊される恐れが高いことから、米空軍は次世代の戦闘機検討で発想の大転換を迫られています。

Holmes3.jpg例えば2021年2月27日に米空軍主要幹部や軍需産業関係者を前に、米空軍戦闘機族のボスである空軍戦闘コマンド司令官Mike Holmes大将は、「今現在の戦闘機に関する考え方は、例えば航続距離、搭載兵器、展開距離などについては、欧州線域ではそのまま将来も通用するが、太平洋線域では距離の問題が克服できない」と課題の本質に触れ、

「太平洋戦域では、次世代制空機(NGAD)検討において従来の戦闘機のような装備のニーズは必ずしも生まれない。距離と搭載量のトレードオフを迫るような機体は求められない」と明確に述べています。
 
Kadena AFB.jpg米軍や米空軍は、同盟国日本への配慮から嘉手納の脆弱性や嘉手納の有事の役割減少について対外的には発言しませんが、嘉手納基地から有事に戦闘機や作戦機が発進するイメージなど持ち合わせていません。

日本の防衛省や航空自衛隊幹部はこのことを明確に認識しているはずです。恐らく日米で実施するウォーゲームや机上演習で、その現実を以前から突き付けられているはずです

Gates5.jpg2009年1&2月号のForeign Affairs誌に掲載された「A Balanced Strategy」との論文で、当時のゲーツ国防長官は、中国やロシアや新興脅威国の台頭を念頭に「足の短い戦闘機の役割は小さくなる」喝破しました。そしてそのころからチマチマと「戦闘機命派」を批判してきたのですが、力及ばず今日に至るまんぐーすです。

10年前からチマチマ訴えてきたのですが・・・
「脅威の変化を語らせて下さい」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
「中国軍事脅威の本質を考えよう」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-12-30

米空軍の戦闘機構成検討関連
「近未来の米空軍戦闘機構想」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
「戦闘機混合比や5世代マイナス機検討」→https://holylandtokyo.com/2021/02/22/266/
「米空軍戦闘機の稼働率2021年」→https://holylandtokyo.com/2021/12/07/2465/

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海南島近くのSuixi中国空軍基地が大増強中 [中国要人・軍事]

南海艦隊拠点とバシー海峡をにらむ
新滑走路に大型機受け入れ用の巨大エプロン

Suixi AB.jpg11月2日付Defense-Newsが衛星画像会社Planet Labsから提供された9月中旬撮影の画像を紹介し、台湾侵略や南シナ海の「海洋要塞化」の拠点となる海南島の南海艦隊基地近傍の、広東省湛江市の北約30kmに位置する「Suixi空軍基地」の大増強ぶりを解説しています

海南島の南海艦隊基地は中国海軍戦略原潜の一大拠点であり、空母山東の母港化も予定され中国海軍が着上陸戦力の拠点化も狙う優先増強基地ですが、ふ頭の増設や修理ドックの増強の様子を先日の記事でご紹介したところです

Suixi AB2.jpgその海軍拠点をカバーする北方近傍に位置する広東省Suixiの空軍基地は、これまで中国空軍南方方面軍第6航空旅団の基地で、ロシア製のSU-30MKKや中国製SU-35、更にRQ-4そっくりの中国製高高度無人機WZ-7が配備されていた基地ですが、衛星画像の分析によると・・・(冒頭写真は9月18日撮影、直上写真は新旧比較)

●既存の北側滑走路が3500mに延長され、追加で南側に2800mの滑走路が新設
●滑走路への誘導路が、従来の幅18mから34mに大幅拡大され大型機使用を想定している模様

SU-35 China.jpg●南北2本の滑走路の間に、2つの大きな駐機場が新設され、北側駐機場上のペイントされた駐機位置を示すマークから、小型機41機と大型機4機の駐機を想定していることが判明
●2本の滑走路の南には、ミサイルや爆弾などの弾薬組立&点検用の施設が建設中であることが伺える。また滑走路南側には、以前から存在した長射程地対空ミサイルHQ-9部隊が運用中であることが確認できる

●画像からは新たな航空機の配備や、新たな航空機用シェルターは確認できないが、従来からある航空機掩体はそのまま残されており、滑走路の東西2箇所に建設用コンクリ―製造施設が稼働しており、今後も増強工事が続くと予期される

WZ-7 China.jpg新設や延長された滑走路や拡張された駐機場から推定すると、大型爆撃機H-6やY-20空中給油機・輸送機の配備や展開拠点になることも予想され、南シナ海やバシー海峡(台湾とフィリピンの間)などの戦略的な要衝ににらみを利かせる航空拠点の増強と見られています。
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中国経済の急速な減速が伝えられ、併せて習近平の独裁体制が強化されたことを受け、中国による台湾侵攻時期が早まるのではないかとの懸念が高まっていますが、そんな懸念を裏付ける施設の増強ぶりです。

10月上旬にご紹介した海南島での中国海軍施設大増強のご紹介記事も合わせ、ご覧ください

「南シナ海の海南島で中国海軍基地増殖中」
https://holylandtokyo.com/2022/10/06/3720/

南シナ海関連の中国記事
「Shang級の新型巡航ミサイル原潜か?」→https://holylandtokyo.com/2022/05/19/3254/
「カンボジア海軍基地へ進出」→https://holylandtokyo.com/2022/06/15/3354/
「海没のF-35Cを37日で回収」→https://holylandtokyo.com/2022/03/07/2794/
「中国の軍事力レポート2021年版」→https://holylandtokyo.com/2021/11/08/2409/

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