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マティス国防長官が兵士と職員に最後の言葉 [マティス長官]

年末年始のため、12月29日から1月6日の間の更新は、「忘れたころ(不定期)」になります。
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リンカーン大統領の言葉を引用し・・・
 
Lincoln.jpg昨年12月31日午後11時59分で国防長官の任を解かれたマティス前国防長官が、最後に米軍兵士と国防省職員にあてたメッセージが公開されていますのでご紹介します。

非常に短いメッセージですがその中の核心部分では、米国が南北に分かれて独立後の内乱を戦っていた1865年2月に、北軍の総司令官の立場にあったUlysses S. Grant将軍に対し、リンカーン大統領が送った電報メッセージを引用し、その思いを伝えようと試みています

Grant Gen3.jpg1865年2月当時の南北戦争は、大きく戦局を見れば、グラント将軍が率いる北軍が攻勢を強め、リー将軍が率いる南軍の支配地域に攻め込んで行く状況でしたが、南軍も地形等を熟知した自軍支配地域で戦う利を生かし、巧妙に防御陣地を構築したり戦術を駆使したりして頑強に抵抗し、補給線の伸びた北軍をギリギリの状態に追い込んでいました

実際の戦いでは、兵力数で北軍は南軍を上回っていましたが、その時期の戦いでは北軍の犠牲者数が南軍を上回る状況が続いており、グラント将軍が戦い方を巡って大いに苦悩していた時期と考えられています

MEMORANDUM FOR ALL DEPARTMENT OF DEFENSE EMPLOYEES

SUBJECT: Farewell Message

1865年2月1日、時のリンカーン大統領は北軍総司令官であったグラント将軍(前線で指揮を執っていた)に、たった一行だけの電報を送った。

その電報には、「何が起ころうとも、軍の動きや作戦を変更したり、妨げたり、遅らせてはならない」と書かれていた。

Mattis7.jpg我々の国防省のリーダーシップは、軍人であろうと文民であろうと、考えうる最高の人材に託されており、皆が全員、引き続き、それぞれの人生を守りつつ、誓いを立てた米国憲法を守って擁護していくという任務にまい進してくれると確信している。

我が国防省は、最も困難な時にその最善を尽くす事が証明済みである。

だから信念を貫き、決して揺らいではいけない。同盟国等と共に、我々の敵と立ち向かえ。

皆と共に国に使えることができたことが、最も誇りとするところである。

空で、陸で、海で、皆に神のご加護があらんことを

James N. Mattis
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Grant Gen2.jpgグラント将軍は南北戦争を勝利に導いたことで、軍人として最高の評価を得た人物です。

しかし、その勢いをかって当選した第18代米国大統領(1869年~1877年)としては、外交や内政の行政改革では手腕を発揮した分野もあるようですが、「クレディ・モビリエ事件」を始めとする政府と私企業間の不正・腐敗が続出し、歴史家からアメリカ最悪の大統領のうちの一人と考えられているようです。

マティス前長官が、グラント将軍の大統領時代までを臭わせ、トランプ大統領に物申そうとしたとは思いませんが、グラント将軍に短い電報を送ったリンカーン大統領とトランプ大統領を対比したかもしれません・・・考えすぎでしょうか・・・

「男の辞表:マティス長官に学ぶ」
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-22

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男の辞表を日本語訳で(マティス国防長官に学ぶ) [マティス長官]

来るべきものがついに来てしまったか・・・
世界各地で様々な問題が顕在化しそうな気がします
2018年12月20日が世界の負の転換点として記憶されないことを願います

Trump Mattis.jpg以下では、マティス長官がトランプ大統領に提出したと言われる辞表の全文をご紹介します

でもやっぱり英文で読んでくださいね実直な「狂犬」の思いが滲んでいるような気がします

原文PDF
https://partner-mco-archive.s3.amazonaws.com/client_files/1545345409.pdf?fbclid=IwAR3EOSVbkSvUPwgTDZTqAnDFLmxnfgo6pMHf7SY-un-1IQ5pGfAEGtJIdio

日本語(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39229940R21C18A2000000/

2018年12月20日

親愛なる大統領閣下

私は第26代の国防長官として国防総省の職員らとともに米国の国民や理念を守る職務を担当してきました。

Mattis13.jpg2年間で国家防衛戦略に盛り込んだいくつかの重要な目標に向けた進展があったことを誇りに思います。たとえば、国防総省の財政基盤を整えたり、軍の機動力や攻撃力を高めたり、高いパフォーマンスを実現するために省の働き方を変えたりしたことがあります。米軍は紛争で勝利し、世界での強い影響力を維持する能力を提供しています。

国家としての強みは同盟やパートナーシップという唯一無二で包括的な概念と緊密に結びついていると私は固く信じています米国は自由な世界において不可欠な国でありますが、同盟国との強い同盟を維持し敬意を示さなければ、国益を守ったり、国益を追求したりすることはできません

あなたと同じように私も米軍は世界の警察ではないと言ってきました。その代わりに同盟国に効果的な指導力を示すことを含めて(同盟国の)共同防衛に向けて、米国が持つ全ての手段を提供する必要があります。民主主義を重視する北大西洋条約機構(NATO)29カ国は2001年9月の米同時多発テロ後に我々に寄りそって戦うと約束してくれて(同盟の)強みを証明しました。(過激派組織の)イスラム国の壊滅に向けた連合軍ももう一つの同盟の証しです。

NDS3.jpg同様に戦略的利益が我々の利益と衝突することが増えた国に対しては、我々のアプローチを断固かつ明確なものとしておく必要があります。中国やロシアが自国の利益を追求するために経済・外交・安全保障に関する他国の決断を否定し、権威主義的な政治モデルと整合的な世界をつくりだしたいと望んでいるのは明らかです。だからこそ、我々は共同防衛に向けて、あらゆる手段を尽くさなければならないのです。

同盟国に敬意を払い、悪意に満ちた者や戦略的な競争相手に注意を払うべきだという私の考えは、こうした問題に取り組んだ私の40年以上(の経験)に基づき、培われたものです我々の安全保障や繁栄、価値観に最も資する国際秩序を推進するためにできることは全てやるべきです。我々は同盟という結束によって強くなるのです

あなたは、これらの点について、あなたの考えにより近い人物を国防長官に据える権利があります。だから私は身を引く時だと考えています

North Korea2.jpg私の任期の最終日は2019年2月28日とします。この日付にしたのは、次期議会の公聴会や2月のNATO国防相会合で、国防総省の利益を適切に説明し守っていくだけでなく、後任が指名され承認されるために十分な時間を確保するためです。さらに来年9月の米統合参謀本部議長の交代に先立って新しい国防長官に移行し、省内の安定を確かなものにするためでもあります。

私は215万人の軍人や73万2079人の国防総省の文民が職務に集中し、米国民を守るための不眠不休のミッションを遂行できるよう円滑な移行に最善をつくすことを誓います

この国や軍人たちに仕えることができて大変感謝しています。
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マティス国防長官が辞表の中で触れていた、同盟国関係重視の姿勢をしみじみ感じる過去記事特集 本当に残念でなりません・・・

「マティス長官がトルコF-35を擁護」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-24
「ロシア製武器購入を許してあげて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28-1
「断行されたカタールと2+2」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-01
「苦悩:パキスタン援助を切られて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-08
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国防費削減を巡り大統領VS両院軍事委員長&マティス [マティス長官]

11月30日 両院軍事委員長がWSJに「国防予算削るな」投稿
12月1日  国防長官「財政と国防は両立する」
12月2日 トランプ「軍拡競争予算はCrazyだ」
12月4日  国防長官と両院軍事委員長が大統領と議論

Trump-NATO.jpgトランプ大統領が中間選挙前の10月16日に、世論の動向から財政健全化に「突然変身」し、全閣僚に2020年度予算案は前年度5%カットで持ってこいと指示し、国防費についても当初計画の$733 billionから$700 billionだと言い放って1月半。両院軍事委員会の委員長とマティス国防長官が巻き返しに動き始めました

11月30日付WSJ紙に両院の軍事委員長(今はともに共和党議員)が「Don’t cut military spending, Mr. President」とのタイトルの寄稿を行い、「国防予算を少しばかり削減しても財政赤字への影響はわずかだが、軍事力とその装備に与える影響は手痛いものとなる」と訴え、更に「最優先事項は前線兵士たちである。今後の国防費カットは、(過去2年間の国防費の伸びから)意味のない後退である」と主張しました

翌12月1日、両軍事委員長の主張を引き継ぐ形で、マティス国防長官が主要な国防関係者と軍需産業関係者が集まった「Reagan National Defense Forum」で講演し、「財政的な主権維持と戦略的な主権維持は両立しうる」、また「国防予算カットは我が兵士と米国民を危険にさらすものだ。米国はその生存に必要な予算を支出することが可能な国だと皆が知っている」と大統領の攻防費削減指示を批判的に表現しました

mattis senate2.jpg一方で講演後の質疑でマティス長官は「らしく」、「大統領が議会に提出する予算編成過程における正常なやり取りだ」、「大きな課題だが、必要以上の国防費を使いたいとはだれも考えていない」と述べ、更に「大統領には国防長官からの助言を行う。そして助言を公言する前に、大統領に直接伝える責務を負っている」とその律儀な姿勢を保っています

しかしトランプ大統領はこれらの声に反応したのか、全く関知していないのか定かではありませんが、2日にはツイッターで「軍拡競争による国防費の増大はばかげており、習近平やプーチンと遠くない将来議論したいと思う。今年の軍事予算$716 billionはCrazyだ」とつぶやき、脅威対象と手を組んでも国防費を削減したいとの意気込みを(?)を表現しました

そんなガチンコ対立の中の12月4日両院軍事委員長とマティス国防長官がホワイトハウスを訪問し、トランプ大統領に国防費カットを思いとどまるよう訴えに行きました。国防費を巡るこの協議後の両院軍事委員長や国防長官からの発言をご紹介します

4日付Defense-News記事によれば
Inhofe.jpg●4日に会談が行われることをワシントンポスト紙が最初に報じたが、訪問した3名の戦略は、トランプ大統領がしばしば批判するオバマ大統領を持ち出し、オバマの誤った過去の国防費削減を取り戻すべきだと訴えるものだったようだ
下院軍事委員長の補佐官は会談後、「まずオバマ政権時の予算削減が米軍に与えたダメージをレビューし、一方でトランプ大統領就任後は、選挙時の約束を守ってオバマ時代のダメージ修復と軍事力復活に継続して取り組んできたと確認した」と様子を説明した

●会談後に上院軍事委員長は「国家安全保障目標に関する率直で建設的な意見交換ができた。我々は国家防衛戦略NDSを遂行するため、オバマ時代のダメージを修復し、米軍を再構築する必要があるとの目標を共有した」と述べ
Thornberry4.jpg●更に「会談を通じて大統領は、我が国を強くし米軍に適切に投資し続ける決意をしたと確信している」、「今後もトランプ大統領及びペンス副大統領と協力していくことを楽しみにしている」とのステートメントを発表した

●ただし来年、下院軍事委員長は現在の共和党議員から、民主党の国防費削減を訴えてきたAdam Smith議員に交替する。
●また上院でも、有力な軍事委員会委員であるJack Reed議員が、「国家安全保障は国防費だけで論ずることはできない」と訴え続けており、「国務省も、FBIなどなども含め、効率的に総合的に国家安全保障を考えるべきだ。現状は効率的でも効果的でもない」と述べた
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Smith A2.jpg簡単にトランプ大統領が国防予算だけ例外にするとは考えにくく、財政赤字に敏感な民意を意識しての「方針転換」ですから、国家予算全体の5%カット路線が動くことはないでしょう

更に両院のねじれ状態もありますし・・・

次は日本に何を売り込んでくるのか・・・

米軍への態度豹変 トランプの姿勢
「トランプが閣議で次年度予算5%カット指示」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-2
「前線部隊を激励訪問しない大統領」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-23

トランプに困惑の現場
「相手の核を削減させるのが上策」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-16
「サイバー戦略がもたらすもの」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-02

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主要戦闘機の稼働率を1年で8割に戻せ [マティス長官]

民間機の稼働率は高いから学んで来い・・・とか

Mattis8.jpg9日付Defense-Newsは、独自に入手した9月17日付のマティス長官から海空軍と兵たんと人事管理担当次官宛の指示メモを入手し、国防長官が航空戦力の主力であるF-16、FA-18、F-22そしてF-35の稼働率(mission capable rates)を2019年9月末(2019年度末)までに80%以上にするように命じたと報じました

この報道を国防省は10日に認め、また11日に上院軍事委員会で証言したWilson空軍長官は、米空軍は2020年末に稼働率8割を目標に活動を開始していたが、国防長官の指示はこれを1年以上も前倒しすることを求めるものだと証言しています

マティス長官の指示は第1段階として、9月17日から1か月以内の2018年10月15日までに稼働率達成計画の枠組み(effective implementation frameworks)提出を求めており、相当の危機感を持って「まじで」取り組んでいくようです

ちなみに対象4機種の2017年稼働率は・・・
・ F-16C 786機 70%
・ FA-18 546機 約半分
・ F-22  187機 49%
・ F-35A 119機 54%

Defense-Newsと米空軍協会web記事によれば
Mission capable rate1.jpg●CSISのTodd Harrison研究員は、(第4世代機については、)不可能ではないが、実行とその維持は極めて難しいと述べたうえで、裏技ともいえる手段を提起してくれた。
●その手法は、対象4世代機の中でも特に飛行時間が長く老朽化が激しい機体を早期引退させ、現状で稼働率が高い比較的新しい機体を残して「比率」を稼ぐ手法だ。機体20機保有で稼働率6割と、15機保有で8割稼働の部隊の稼働機数は同じとの考え方である

●しかしこの方法がマティス長官の了解を得られるかは「?」であり、第5世代機であるF-22とF-35には適用が不可能だ。
F-22は空軍保有の航空機の中で最も稼働率が低いが、実戦投入が始まった2014年度末には70%あったものが、活動量が増えるにつれ稼働率が低下して50%を切るまでに低下している。機体表面のステルスコーティングの扱いが難しく、通常の整備に時間が必要なことがネックになっているようだ

F-35Aは維持整備体制全体が大きな問題となっており、会計検査院や国防省内からも改善して経費を落とさないと必要機数の調達が困難だと頻繁に警告を受けている
●まず、鳴り物入りで導入された自動兵たん情報システムALISの誤作動や誤アラームが整備員が苦しめており、ALISの故障を診断する「Mad Hatter」なる装置をロッキード社が作成して投入する笑い話のような状態になっている

●また部品不足や調達の混乱、価格の高騰なども解決の見通しが立たず、 国防省、米軍、ロッキード社幹部が口をそろえて最重要課題として取り組むと発言を繰り返している状況で、明るいニュースがない

Mission capabale rate2.jpgマティス長官は民間航空会社の高い稼働率を念頭に、「私は国防省の能力を信じており、既存航空機がさらなる追加能力を発揮するようになると自信を持っている。民間航空会社のような高い稼働率を目指していくことによって
●「稼働率8割を追求する中で、民間企業の迅速性、コスト意識、維持整備要領などを、国防省全体で学ぶことが出来る」と語って期待を示している
●国防長官は9月17日メモのでは、主要4機種だけでなく、他機種へのこの動きを広めることを具体的目標は上げずに求めており、「他の航空アセットにも野心的な目標を掲げて取り組むことを求める」と指示している
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海軍は定期的に稼働率を公表しておらず、海軍作戦部長が夏にぼんやり語った情報で推測しています

F-15C3.jpgしかし海空軍はどうするつもりでしょうか? 兵たんや人事管理担当次官はどうやってサポートするのでしょうか? 民間航空会社に学んで来いとは、何か具体的なイメージがあるのでしょうか?

まぁ、パイロット族に対抗するため、整備員は「外から干渉するなと言わんばかり」の独自世界を作り上げ、長年変わらない整備方式や人員配置に固執し、企業との関係も単純ではない世界だと認識していますが、この指示はどうでしょうか? 予算的な手当の目途があるのでしょうか・・・。それとも危機感か必殺技があるのか・・・

関連の記事
「2Bソフト機は稼働率4割台」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10-1
「2/3が飛行不能FA-18の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-07
「世界中のF-35稼働率は5割」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-3
「F-35の3F機の稼働状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-22
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

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マティス長官:ロシア製武器購入を許してやって [マティス長官]

Mattis CAA.png26日、マティス国防長官は上院軍事委員会の公聴会でロシア製武器を購入した米国の同盟国等に制裁を課す法律CAATSAの施行に例外を認めるよう訴えました。

具体的には、ロシア製で「F-35キラー」との異名を持つ高性能地対空ミサイルS-400を、トルコとインドが輸入しようとしていることに対し、制裁を控えるよう要望しているようです

このCAATSA(Countering America's Adversaries Through Sanctions Act )は、ウクライナの反体制分離派を支援し、シリア政権に加担するロシアに対する制裁措置として議会が提案したもので、トランプ大統領も効果を疑問視して署名を渋っていましたが、昨年8月サインしているようです

インドはともかく、NATOに防空を実質依存しながら、恩を仇で返す様にロシア製S-400購入に突き進むトルコには制裁がふさわしいのでは・・・と人間の未熟なまんぐーすは思うのですが、マティス長官は「そんな短気になってはならぬ」と仰せの様です

27日付Military.com記事によれば
S-400-2.jpg●マティス長官は上院軍事委員会で、長期的な米国の国益を考えて判断できるように、CAATSA法に「国家安全保障の視点からの例外規定」を設けるよう訴えました
●そして、世界の中にはロシア製兵器から西側兵器に切り替えようと取り組んでいる国があるが、そのような国も当面の間は現有のロシア製兵器の維持も行う必要があり、ロシア製品を必要としてるのだ・・・と説明した

●「インドやベトナム、その他の国に対し、厳格にCAATSA法を適用することは、長期的に見て米国自身を罰するようなものだ」と国防長官は訴えた
●そして同長官はインドネシアを例に挙げ、「インドネシアは、航空機やその他のシステムも米国製に切り替えようとしているが、旧式の(ロシア製)兵器を維持するため、なにがしら輸入する必要があるのだ」と説明した

S-400.jpg●4月上旬、プーチン大統領がトルコを訪問し、総額約3300億円のS-400売却交渉を加速させた。NATO諸国はNATO防空システムとの連接が認められないS-400購入に反対し続けている。
●また中国がS-400の購入を決定したことを受けたインドも、総額約5500億円のS-400購入交渉が最終段階にある。
●もちろんマティス長官も、ロシアによるS-400の売り込みを「多くの懸念を生じさせる」と警戒しているが。
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マティス長官の証言は26日ですが、同じ上院軍事委員会で、次期太平洋軍司令官であるPhil Davidson海軍大将も24日に同様の発言をしています。

mattis senate.jpg国家安全保障の視点からの例外規定:national security exceptions」を誰が判断するのかも気になりますが、ボルトン・ポンペイオ体制で、マティス長官のご意向がどこまで反映されるのかも今後気になるところです

シリア攻撃に関しては、マティス長官の慎重姿勢が大統領に理解され、攻撃対象がかなり絞り込まれた様ですが・・

トルコの防空ミサイル購入問題
「連接しないとの言い訳?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-30
「トルコ大統領が言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-14
「ロシア製S-400購入の動き」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-23 

「SAM選定で露に最接近」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-12
「中国製決定を破棄」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-16
「トルコ大統領訪中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-30-2
「NATOと連接しない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-20

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トランプ氏が軍事パレードをご希望とか [マティス長官]

trump paris.jpg6日付ワシントンポスト紙は、トランプ大統領が1月18日に国防省を訪問して情勢ブリーフィングを受けた際、居並ぶ国防長官や統合参謀本部議長や4軍のトップを前に、仏独立記念日にシャンゼリゼ通りで行われるような軍事パレードを、DCのPennsylvania Aveで検討してくれないかと要請したと報じました

7日暫定予算状態の問題を訴える記者会見を行ったマティス国防長官も、大統領のこの要望を認め、大統領の米軍兵士たちを讃えたいとの気持ちから出た話で、国防省としていくつかのオプションを提案する予定だとのみ語り、米軍を取り巻く予算不足や相次ぐ海外派遣などと絡めた質問には直接回答しませんでした

またホワイトハウスの報道官は、パレードが実現するかやどのような形になるか等を語るのはまだ早いとコメントし、「大統領は単に少し異なった方法で軍隊を讃えたいと考えているのだ」と説明しているようです

思い付きのように見える大統領の検討要請に、早くも多くの反対意見がメディアを賑わしていますが、湾岸戦争終了後の1991年6月8日以来の軍事パレードになるのか・・・現在の米国を見る縮図として取り上げます

8日付Military.com記事によれば
trump parade.jpg●8日の会見で国防省報道官は、ホワイトハウスの前を通るPennsylvania Aveではない場所になる可能性があると語った。そして「大統領はシンプルにオプションを求めており、目的は兵士たちを讃えることにある」と表現した
●最終的には大統領が決めるであろうし、国防省も計画を固めたわけではないが、米陸軍が中心となって計画立案を行うことになろうとも同報道官は説明した

軍事パレードの日にちも決まっていないが、「退役軍人記念日」で、「WW1終戦100周年記念」にもあたる11月11日が一つの有力候補と言われている
●ただ、Military Timesが実施しているweb賛否投票では、8日午後の段階で約51000名が投票し、89%が「No」と回答し、予算の無駄遣いや多忙な軍の負担になるとの反対理由が上がっている

●7日には複数の民主党議員が連名でマティス長官宛の書簡を出し、パレードのかかる経費見積もりと、シリア・アフガン・イラクで戦う軍への影響を質問している同書簡では「戦時にあって兵士が命を懸けて作戦に従事している中、このような軍事パレードは不適切で浪費だ」との言葉で計画検討を非難している
●一方で共和党議員の中には、「ソ連式の軍事パレードは良くない」が、兵士を讃え、戦没者を追悼するためのパレード自体は支持するとの意見を表明している者もいる。
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Gulf war Parade.jpg昨年フランスを訪問したトランプ大統領が、仏独立記念日の軍事パレードを見たことがきっかけだといわれていますが、多分、トランプ大統領にあまり深い考えはなく、「兵士を讃えたい」「グレートな米軍と米国を示したい」とのシンプルな思い付きだと思います

湾岸戦争終了時のパレードでは、シュワルツコフ大将を先頭に、紙吹雪の舞う中のパレードだったと思います。

せめて参加した兵士の思い出に残るような、最前線の兵士の士気が上がるような演出にしてほしいと思います。

三浦瑠璃女史による話題沸騰・賛否両論のトランプ政権とK半島分析(1月31日と2月12日)
http://lullymiura.hatenadiary.jp/ 

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断交されたカタールと米が2+2実施 [マティス長官]

Qatar US 2+22.jpg1月30日、ワシントンDCで米国とカタールとの「初めての」2+2会合が開催され、マティス国防長官とティラーソン国務長官が、カタール国 防相と外相を招いて協議が行われ、駐留米軍施設の増設をはじめとする両国関係強化が合意された模様です

カタールは、イランとの親密な関係やイスラム過激派支援を批判され、米国とも比較的親密な中東の主要国サウジ、エジプト、バーレーン、UAEから、2017年6月5日に「国交断絶」を宣言された国です。

この「国交断絶」は解決解除の糸口が見えませんが、ISIS崩壊後のイラク・シリアの混乱やイエメンの崩壊、またイランからの脅威増大など、あちこちで火の手の上がる中東情勢を前に、米国も「四の五の言ってられない」状況なのでしょう

またサウジらの断交国にとっても、「四の五の言ってられない」状況なのでしょう。

1日付米空軍協会web記事によれば
Qatar US 2+23.jpg●会談後にマティス長官は、「長年にわたる」「極めて良好な軍事関係だ」と両国関係を表現した。
●そして、米中央軍と米中央軍空軍の前線展開司令部を含む約1万名の米軍兵が駐留する「Al Udeid」空軍基地を受け入れているカタールを称賛した

●更にマティス長官は、NATOがアフガニスタンで行っている作戦支援のため、1月22日の週にカタール軍が、保有する2機のC-17で物資 al-Udeid輸送を行ったことを讃えた。

1月31日付Defense-News記事によれば
Qatar.jpg●訪米中のカタール国防相は1月31日、駐留米軍兵士の生活環境改善のため、 al-Udeid空軍基地の拡張を行うと語った
●同国防相によれば、拡張されるエリアには兵士用宿舎、家族用施設、娯楽センターなどなどが建設される模様

●このようなカタールの動きは、米国との関係より緊密にして、サウジやUAEなど湾岸諸国に対するヘッジにすることを狙ったものである。
●一方でサウジなどカタールと断行した国々は、米国に対しカタールとの関係を見直すよう求めている
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カタールと縁を切ったバーレーンには、米海軍第5艦隊や米中央軍陸軍の拠点があり、米軍13500名が所在し、同じくUAEにも米海軍最大の立ち寄り港である「Jebel Ali port」や、米空軍の空中給油機やF-22や無人偵察機が大挙所在する「al-Dhafra Air Base」がある複雑さです

Qatar US 2+24.jpgカタールがサウジ等から断行された当時、トランプ大統領はカタールに批判的なニュアンスのツイートを行い、国防&国務長官との温度差が目立ったようですが、ワシントンDCで「2+2」が開催されたとなれば、風向きの変化があるのかもしれません

いや・・・安全保障について少しは見識を深めたトランプ大統領は、中国やロシアじゃない、米国ホームランドへの脅威はイスラム過激派だと、「米国民目線で」見極めたのかもしれません。

カタールが登場の記事
「断行されたカタールで大記念撮影」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-15
「米軍の弾薬を頼るな!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-21-1
「イスラエルと合意後に湾岸諸国へ戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-17
「日本の銀行がカタールの戦闘機購入に融資?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-22

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国家防衛戦略:対テロから中露対処へ [マティス長官]

公表部分は11ページ足らずですが・・・

NDS.jpg19日、マティス国防長官が国家防衛戦略(NDS:National Defense Strategy)を発表しました。
12月19日に発表された国家安全保障戦略NSSを受け、NSSを遂行するための米国防省としての戦略を語るのがこのNDSであり、統合参謀本部議長がNDSを受け、軍事面での展開を示すのがNMS(国家軍事戦略)で、NMSは今年後半に公表が予期されています

非公開部分を含めて約50ページで全体の分量が大幅に縮小された模様で、少なくとも公開部分には具体的な数値目標はなく、全体としても「まず戦略」の姿勢で作成されたようですが、強制削減法案下で政府機関閉鎖が話題の米国で、具合的な姿を数字で示せない現実が背景にあるとも言われています

「対テロから中露対処へ」、「アジア、欧州、中東を重視」「同盟国等の育成、破壊力強化、国防省の業務要領改革を重視」等々が打ち出されているようですが、背景には「過去の教訓を踏まえ、厳しい選択を行いつつ、生存のために必要な投資を行う」と国防長官が表現する予算制約が重い縛りのNDSとなっているようです

全文を見てはいませんが、コンパクトにまとまっているDefense-News記事でNDSの概要をご紹介します

19日付Defense-News記事によれば
NDSM.jpg●19日にJohns Hopkins大学でマティス長官はNDSの発表会見を行い、 世界における米国の軍事的位置づけを「曇りのない目で評価したものだ」とNDSを表現した。
●そして、「過去の教訓を踏まえ、米国が生存のためになしうることを、厳しい選択をして絞り込むことをもとめる文書である」と語った

●NDS発表に先立ち、Elbridge Colby戦略担当国防次官補代理は、「中心的な国防省の課題は、中露に対しての軍事的優位性が失われつつあること」、「ただし対立のための戦略ではなく、現実を認識し備えるための戦略だ」と語っている
●また「決して対テロから離れるわけではなく、対テロは長いスパンで対応すべき課題である。また費用対効果が重要だとの共通認識が必要だ」と説明した

●マティス長官が打ち出したNDSは、3つの重視事項「同盟国等の育成、破壊力強化、国防省の業務要領改革を重視」を打ち出し、鍵となる地域を「アジア、欧州、中東」の3つと打ち出している。
●当然Colby次官補代理は、アフリカや南米を見捨てるわけではないと事前説明していたが、現実として最も必要としている地域に資源を重点投入することになると語っている。

最善でも暫定予算CR、最悪は政府機関閉鎖の危機の中
NDS3.jpgNDS発表の同日、議会は政府機関閉鎖を回避するため、土壇場の議論が行われていた。それでも、期待できる最善対応でも昨年ベースの暫定予算CR確保で、最悪は政府機関閉鎖の危機である
●こんな予算状況の中でのNDSについてCSISのTodd Harrison研究員は、「資源の裏付がない戦略など実行不可能な戦略だ」と切り捨て、「多くの文字を並べ、全く具体的数字を含まず、何がどれだけできるのかも不明確で、コストにも触れない、疑問が疑問を呼ぶものだ」と厳しく評価している

●一方で同盟国等への要求は増しており、NDSは「共通の防衛責任をシェアするため資源をプールする」よう求めている。
●最近国防省幹部が、同盟国に対して装備品を迅速に提供できるようにとか、優先順位をつけて迅速な事務手続きで米国製品を輸出し、同盟国等の早期軍備近代化に加速しようとも合致している

技術革新や装備導入の迅速化
NDS2.jpg国防省の業務要領改革や、最新技術を前線兵士に迅速に提供する取り組みもNDSに含まれている。
●このため国防長官は、従来のように飛躍的画期的な新装備を長時間かけ高価格で許容する仕組みから脱却し、優先順位をつけ迅速に提供し、頻繁で継続的に能力向上で最新技術を取り込む達への変革を掲げている

●装備品開発の設計段階で、価格と性能のトレードオフを吟味し、前線と情報機関の最新情報を調達過程に生かし、新たな企業参入を歓迎し、プロトタイプや実験で要求性能を洗練し、費用対効果に優れた市販品を活用することも追及するとしている
●また国際的な協力関係を装備開発や投資に生かし、米国製ばかりを売り込むと不満を持っている関係国も協力関係に招き入れる。
技術的な焦点としては、「抗たん性残存性がある強固なネットワーク」、「中央集中型のインフラや弾薬保管ではなく、小型分散強固な兵站システム」、「人工知能への投資」などがうたわれている
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NDS3.jpg非公開部分に何が書かれているのか気になりますが、恐らく具体的な装備数や数値目標ではなく、日本にはこれを要求するとか、この任務は日本に圧力をかけて引き受けさせるとか、外交上の機微な情報も書かれているような気がします

予算的な見通しが全く立たない(夢が描けない)中、米国の負担を各国に振りまくことが唯一の具体的な目標設定になりそうですから・・・

NDSの原文
https://news.usni.org/2018/01/19/2018-department-defense-national-defense-strategy

NDSの上位戦略となるNSS
「国家安全保障政策を概観」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-23-1  

NDSの下位戦略となる
「リーク版NPR」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13 
「露が長射程核魚雷」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13-1

NMS関連記事
「見込み2016年NMS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-06
「2015年版の国家軍事戦略発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-02
(何と2011年以来4年ぶりの発表)



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マティス長官の苦悩:パキスタンを切れるか? [マティス長官]

afgan.jpg5日マティス国防長官は記者団に対し、4日に米国務省が発表したパキスタンへの軍事援助約2200億円をカットに関し発言しアフガンに駐留する米軍への補給ルートが絶たれることはないだろうと希望的観測を述べました

米国とパキスタンの関係は、パキスタン側が米国に対して持つ「恩讐」とも言える不信感に根付く複雑なものです。

1970年代にソ連がアフガニスタンに侵攻し、それへの対処のため米国はパキスタンに接近しましたが、ソ連が撤退後、アフガン国内が混乱してパキスタンが大きな負の影響を受ける中、米国はあっさりパキスタンを見捨てて去っていきます

911事案を受けてアフガンでの軍事行動を始めた米国は、補給ルートの確保や過激派がパキスタンに逃げ込むことを防止するため、再びパキスタンに接近します
しかしソ連のアフガン侵攻がらみで米国に道具として利用され、簡単に見捨てられた根強い恨みを持つパキスタンは、もみ手でやってきた米高官に罵声を浴びせます

gatesmullenclinton.jpgオバマ政権誕生直後の国務長官であったクリントン女史は、関係改善のためパキスタンを訪問しますが、反米感情の激しさに驚かされ、帰国後ゲーツ国防長官にその様子を伝えます

ゲーツ長官は2010年1月にパキスタンを訪問し、パキスタンで大きな力を持つ軍幹部との非公開討論会を設けますが、外交上あり得ないほどの「馬事雑言」を浴び、「例外的な寛容さ」を発揮して対応したと米報道官が説明したほどでした

「パキスタン国防大学で罵倒される」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-23

でも同年8月にパキスタン関係についてゲーツ長官は
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-15
gatesMarineUP.jpg我々は、ソ連がアフガニスタンから撤退するのを見届けると、パキスタンに背を向けるように振る舞い、そして課題を抱えたままのパキスタンを置き去りにした。我々は「信頼感の負債」を積み上げた責めを負わなければならない
1989年にアフガンにも背を向け、私がCIA長官であった時期にパキスタンの核開発もあり1992年にパキスタンとの国交を断った

今パキスタン政府は、米国が再びパキスタンを裏切るのではないかと懸念している。我々はこの「信頼感の負債」を減らす努力を続けている
●パキスタンは今、14万の兵士を動員してアフガン国境沿いのテロ組織と戦っている。我々に必要なのは、米国がパキスタンと長期的で安定な戦略的パートナー関係を構築しようとしている点をパキスタンの人々に確信してもらうことである

・・・と語り、アフガン作戦成功のため、両国の関係改善のため取り組みを継続する講演で語っています

その後も米はパキスタンとの関係改善を目指し、対テロ装備の提供や資金援助、両国高官の相互訪問による対話、パキスタン国内自然災害への支援等々を続けたわけですが、ビンラディンはパキスタン国内の隠れ家で発見殺害され、パキスタン北西部がアフガン過激派の温床となっていることも次第に明らかになってきます

trump7.jpgそしてトランプ政権誕生後、昨年8月に包括的なアフガン政策見直しが発表されますが、対パキスタン政策は大きな結節点を迎えます。

8月の新アフガン政策発表会見でトランプ大統領は
米国が戦っているテロリストをパキスタンがかくまう中、我々米国はパキスタンに対し多額の援助を行ってきた。しかし変化の時が来ている。直ちに変えなければならない」と明言し、

そして2018年元日最初のツイートでトランプ大統領は
パキスタンは嘘つきの詐欺師だ。米国がアフガンで追跡しているテロリストに、パキスタンは隠れ家を与え、米国を助けようなどとはほとんど考えていない。もうたくさんだ・・・」と発信し、

gateskayani.jpgその後4日に米国務省がパキスタンへの軍事援助約2200億円をカットを発表したわけです。米政権幹部によれば、カットした約2200億円には約1000億円の軍事援助や、900億円の対テロ作戦支援費が含まれるということです
国務省の声明は、「パキスタン政府に対し、パキスタン領内から活動する過激派(Haqqani Network and the Taliban等に)に断固たる対応をとるように圧力をかけるため」と理由を説明しています。

しかし、アフガンの現場に大規模な兵力を派遣し、パキスタンとの関係悪化が前線への補給やアフガン治安に直結するマティス国防長官の立場は複雑です。

5日付Defense-News記事によれば
mattis senate2.jpg5日パキスタン政府は、これまで同国が大きの犠牲を払って対テロ作戦を行ってきたことを強調し、併せて米国の支援中止決定により、米国の作戦が影響を受ける可能性を排除しなかった
●同日マティス国防長官は記者団に対し、より慎重に対応するとの姿勢を見せ、パキスタンが対テロに取り組んでいることを認めつつ、パキスタンの姿勢に変化があれば米国からの援助を再開する可能性があることも示唆した

●そしてマティス長官は記者団に、「多くの皆さんがご存知のように、パキスタンは全ての多国籍軍の犠牲者よりも多くの犠牲を払って対テロに取り組んでいる。」と表現した
●更に長官は、「国務省声明の文言を見ればわかるように、米国はパキスタンと協議を続けている。米国よりもパキスタンに対する脅威が大きい過激派対策に、パキスタン側の劇的な動きがあれば、援助再開もある」と慎重に語った

Mattis44.jpg●また長官は「アフガン駐留米軍への食糧や物資を輸送する地上ルートGLOCに対し、何らかの影響があるとのサインはパキスタン政府から受け取っていない」、「GLOCの代替ルートも米国は保有しておいる。空輸などで、はるかに高価な輸送手段であるが」とも語った
●そして4日の米国務省の発表は、(昨年8月発表の)新アフガン戦力に沿ったものであることを強調し、「全ては一つの戦略に基づいて総合的に推進されているものである」、「もちろん同時に、相互の協議も継続していく」と補足した
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少しパキスタンよりな書き方になってしまいましたが、パキスタン国内も様々な勢力がうごめき、特に同国北西部は多部族が入り乱れ、中央政府の統治が聞かない地域であることも確かです。 米国の援助中断の「脅し」が、効果的な手段なのかどうかも不明です。

しかし、マティス長官が懸命に「戦略に基づいてやっているのだ」と強調すればするほど、トランプの勢いで決まった方針のような気がしてなりません
そしてその判断が、現場兵士の命を案ずる国防長官に、重い課題を投げかけていると心配せずにはおれません

米国とパキスタン関係を振り返る記事
「パキスタンで罵倒される」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-23
「茂田宏が語る米パを語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-30
「米のパキスタン援助」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-17
「パキスタンとの関係を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-15

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米国防長官と統参議長の韓国訪問 [マティス長官]

空母3隻が西太平洋に集結で騒がしいですが、米軍事2トップの韓国訪問を、落ち着いて見てみましょう。

Dunford k flag.JPG25日に2トップはフィリピンでのASEAN国防相会議に参加しダンフォード統合参謀本部議長は26日に韓国に到着、下で紹介する記者への発言を行い、27日の韓国軍参謀総長の空軍大将と毎年恒例のMCM(Military Committee Meeting)を行い、その結果を28日に予定の米韓国防相会議である「Security Consultative Talks」で報告します。

そしてその後ハワイに戻り、そこで河野統合幕僚長も合流し、日米韓3か国の参謀総長を行う予定です。なかなか良くできたスケジュールです!

マティス国防長官は25日にフィリピンで開催されたASEAN国防相会議に参加後(恐らく韓国防相も)、27日には韓国で38度線非武装地帯を訪問し、28日の「Security Consultative Talks」に臨みました

26日のダンフォード議長発言
Dunford korea.JPG●韓国に到着した同議長は、27日の韓国側とのMCMでは「ミサイル防衛、指揮統制、兵力展開、関連システムの展開等について話し合う」、「将来に向けた幅広い現場の技術的なことを協議する」と記者団に説明した
●また朝鮮半島情勢に関し、「北による前例のないミサイル試験や核実験により、緊張が高まっており、我々は政治的で外国的で経済的な解決を追及するため、あらゆる手段を行うことを強調している。これはティラーソン国務長官の努力への軍事レベルでのサポートである」と同大将は表現した

●MCMの内容について同議長は更に、「これまでの成果を確認し、来年以降のスタッフ業務につながる具体的なマイルストーンを設定する」、また協議項目として「指揮統制、精密誘導兵器、海上能力、対潜水艦作戦能力、サイバーや宇宙戦能力を深く話し合う」と語った
●記者からの空母3隻について問われ、「何か月も前から計画していたことで、ルーティーンのコミットメント意思表示だ」と答え、「同盟国の要請にこたえるコミットメントを示す機会であり、作戦面では、3隻が近い距離で共に行動する良い機会である」と表現した

27日のマティス国防長官発言
Korea DMZ.JPG●非武装地帯の視察を終え国防長官は、「ティラーソン国務長官が明確に述べているように、我々の目的は戦争ではなく、完全で不可逆的な朝鮮半島の非核化である」と語った
●更に視察を案内した韓国国防相に視線を向けつつ、「2日前にフィリピンで開催されたASEANの場で、北朝鮮の向う見ずで非合法的な行為に対し、外交的な解決を追及することを明確に確認してきたところである」、「我々はともに、この問題の解決に真剣に取り組む」と語った

28日の米韓共同会見でマティス長官は
●全世界が目撃してきた北朝鮮の違法行為を前に、米国が核保有国としての北朝鮮を受け入れることはできない
北朝鮮が弾道ミサイルと核兵器開発をこのまま続けるようであれば、それは「counterproductive」であり、米韓同盟により圧倒されるであろう。北朝鮮は自身の安全を脅かすことになろう

Korea 17.JPG●外交努力が引きつづき望まれる方向性だが、繰り返し強調しているように、我が外交は信頼に足る軍事力に支えられてこそ、このような情勢下には最も効果的である
●間違ってはならない。米国やその同盟国に対するいかなる企ても、打ち負かされるであろう。北によるいかなる核兵器使用も、圧倒的で効果的な大規模な軍事的反撃を招くだろう

おまけで、米韓共同の捜索救助演習も
●23日から米軍と韓国軍は、過去最大規模の捜索救難演習「Pacific Thunder 18-1」を開始している。
米空軍の20個飛行隊と韓国空軍の9つの航空団(wing)が 参加し、米側は韓国駐留の第25戦闘飛行隊と嘉手納所属の第31と第33救難飛行隊が同演習をリードしている。
●同演習は2009年から開始されているが、当初は第25戦闘飛行隊と第33救難飛行隊間の計画演習だったが、その後太平洋空軍が取り仕切る演習に格上げされて今日に至っている
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空母3隻やB-1やB-2爆撃機の展開、F-35Aの嘉手納への6か月展開発表などはありますが、極東周辺での米軍の態勢には何の変化もありません。引き続き、落ち着いて見ていきましょう。

ちなみに空母3隻(Nimitz、Theodore Roosevelt、Ronald Reagan)はそれぞれ・・・
・Nimitzは中東での任務を終え、ワシントン州の母港に帰還途中
・RooseveltはNimitzの交代で、中東へ向かう途中
・横須賀を拠点のRonald Reaganは韓国海軍との訓練を終了したところ・・・です

米軍と北朝鮮の関連記事
「米空軍がJDAMや精密誘導兵器増産へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-24
「米陸軍が対北朝鮮に緊急準備開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-12
「グアムに弾薬10%増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-21

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マティス長官が情報漏洩に警告文書 [マティス長官]

米国防省までこんなことに・・・
漏洩を見つけた者に通報義務があることも強調

Memo leaks.jpg5日付Defense-Newsが、マティス国防長官が3日付で前国防省職員(もちろん全軍人を含む)に対し発出した情報漏洩に対する警告文書を入手してその概要を伝えています。

本文書発出に至った特定の事案に文書は言及していませんが、トランプ政権誕生以降、ホワイトハウス周辺で大きな問題となっている情報漏洩問題が、ついに最後の砦と期待していた国防省にも波及したのか・・・と人々を驚かせ、そして落胆させています

そして更に、情報漏洩を見つけた者には当局に通報する義務があること文書は強調しており、このあたりにも読者の危機感を更に高める要因があるようです。

記事は、国防長官が秘密情報のみならず「取扱注意」や「部内限り」と言った「グレーゾーン」領域の情報にまで漏洩警告を発していることを問題視し、巷の「知る権利」や「報道の自由」を訴える活動家の視点で書かれており、あまり国益の視点で書かれていませんが、とっても気になる米国防省の内部事情ですので、概要をご紹介します

5日付Defense-News記事によれば
Mattis7.jpg●Military Timesが入手した、3日付のマティス国防長官署名入りの米国防省内部文書である「MEMO」は、「それが秘密情報であろうとなかろうと、任務に必要のない者やセキュリティー資格のない者に、国防省の情報を漏らすことは宣誓への違反である」と警告してる

●そして同MEMOは更に、「全ての国防省勤務者は肝に銘じなければンらない。それが意図的なものであろうともなかろうとも、いかなる理由があろうとも、非公開の情報を許可なく漏洩することは禁じられている」と厳しく指摘している
●更に「誤った行為には厳しく対処せねばならず、漏洩や漏洩が疑われる行為は直ちに通報されなければならない」とも注意喚起している

●同MEMOが言及している「Non-public, but unclassified:秘密情報ではないが非公開の情報」には、内部の業務用メモ、出張日程、行政指針などの、秘密には該当しないが公開を望まない情報が含まれる
●これら情報には「取扱注意:sensitive but unclassified」や「部内限り:for official use only」と言った表示がなされるが、政府職員はこれら情報の公開を禁じられている

Mattis8.jpg●同MEMOの背景について国防省報道官は、2017年5月に英国マンチェスターで発生した銃乱射事件の容疑者リストがリークされ、一時英国が米国との情報共有を停止した事案など一連の漏洩事件が背景にある示唆した
●しかし同報道官も、情報漏洩により前線の米軍兵士らが危険にさらされた事案の有無等については語らず、単一の漏洩事案が同MEMOに繋がったのではないと述べるにとどまった

情報開示を要求する団体はしかし、これら曖昧な定義の取り扱い区分は「グレーエリア」を生むことになり、職員を委縮させ、この情報をどう扱ってよいのかとの疑問を抱かせることになると主張している
●また同団体幹部は、オバマ政権からトランプ政権にかけ、この「Non-public, but unclassified」情報が増加する傾向にあり、より頻繁に定義があいまいなまま使用頻度が増えていると指摘している
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オバマ政権時代から「グレーエリア」情報が増加しているのは、SNSの発達普及であっという間に情報が拡散する時代に、何でもかんでも情報公開すればすべて解決・・・みたいな風潮がはびこる中で、国益を(私益もあるでしょうが・・)を守ろうとした結果の役人の知恵でもあります

Tillerson.jpgなので「・・オンブズマン」みたいな情報開示要求団体の動きには感心がありませんが米国防省内に、政権や上司のやり方に不満を募らせ、または身勝手な面白半分で情報をリークする輩が増えることには危機感を覚えます

ティラーソン国務長官の進退がにわかに話題となり、マティス国防長官が率いる国防省と米軍だけが最後の頼りなんですから・・・

マティス国防長官関連の記事
「インド訪問でアフガンを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-26
「核兵器禁止条約で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-02
「全職員と兵士へのメッセージ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-23
「マティス長官がNPRに言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15-1

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マティス長官がインド訪問でアフガンを [マティス長官]

マティス長官はインドでアフガン問題を主に語る

India2017.JPG24日付Military.comが、トランプ政権の高官として25日から初めてインドを訪問しているマティス国防長官を取り上げ共同訓練から共同装備開発から武器輸出から現地生産などなど、多様な話題を地域の大国と議論する方向ながら、最重要の話題はアフガニスタン支援の話題だと報じています

北朝鮮が大変だとか、ロケットマンだとか、日本ではかりあげクンが話題ですが、世界には米軍の出番が欠かせない問題が山のようにあり、トランプ大統領と北朝鮮の外相や報道官が「口撃」合戦やっている間にも、重ーーーーい課題に国防長官は取り組んでいます

この米印関係は長ーーーい道のりで、3年ぐらいかかって協議の枠組みができ、部隊同士の共同訓練はそれなりに活発化してきたものの、枠組みができて数年たっても、装備品の共同開発や技術移転に関しては本当になかなか進展が見らえません

微妙に思惑が異なる両大国ですが、それでも対中国の思いは重なる部分もあり6月にはインドのモディ首相が訪米し、トランプ大統領も精一杯の厚遇でもてなしたところです。
実際の議論の中身がどうなるかは不明ですが、その雰囲気を記事からご紹介します

24日付Military.com記事によれば
mattis senate2.jpg●25日遅くにインドに到着したマティス国防長官のインド訪問は、モディ首相や就任したばかりの女性国防大臣Nirmala Sitharaman女史との会談等が予定されているが、戦闘機売り込みや無人機輸出問題、そしてアフガン問題で埋め尽くされるだろう
●国防省報道官は「米国はインドを、多様で広範な利害を共有する南アジアにおける重要で影響力のあるパートナーだとみなしている」を表現している

訪問は、ちょうど米国内でインド陸軍が、約2週間に及ぶ対テロや平和維持活動等の治安維持演習を始めたタイミングに当たったが、9月に入って就任したばかりの女性インド国防相との話題では、アフガン支援の問題が第一に取り上げられるだろう
トランプ大統領は、インドに対しアフガン経済への支援を要望し、インドと対立関係にあるパキスタンを、混乱の元凶である過激派に安全地帯を提供していると非難している

●国防省高官は「マティス長官はアフガンの民主主義、安定、繁栄、そして治安確保へインドの貢献を評価する」と述べているが、専門家は、米国がインドに期待するのは戦いへの直接参加ではなく、米軍によるアフガン軍訓練の支援であろうと見ている
●インドはかねてより、パキスタンがアフガン国内で道路やダム建設を行い、昨年1000億円以上の援助をしてることを警戒し、パキスタンをテロ組織の支援やアフガンの混乱助長で非難している

武器輸出に関しては
Sitharaman.jpg●トランプ大統領は、インドが米国製兵器を購入することで地域の安全保障に貢献していると讃えているが、国防長官は最新のロッキード製「F-16 Block 70」を強く進めることになろう
インドが少なくとも100機必要としているとみられる単座戦闘機では、F-16のライバルはサーブのグリペン戦闘機で、6月に初飛行に成功した「Gripen E」と争うことになろう。

両企業ともインド国内での製造を提案しており、モディ首相の「Make-in-India」方針に答えようとしている。本件ではボーイングもFA-18を提案している
インド海軍への無人機の売り込みも、中国がインド洋での活動を活発化する中、トランプ政権はインドへの早急な無人機提供に向いている
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カーター前長官時代には、インド側からジェットエンジンの共同開発や空母カタパルト技術の移転話など、そう簡単に折り合えそうもない話題がメディアを賑わせていましたが、どうなったんでしょうか?
会談結果で、目ぼしいものがありましたら、追記したいと思います。

Sitharaman2.jpgインドは攻撃可能な無人機を求めていますが、主要同盟国だけに輸出している攻撃無人機をインドに輸出するかは微妙な問題です。そしてインドがイスラエルと無人機の件で協議を進めているとも伝えられています

長い目で見て関係を深めていただきたい米印関係です。マティス長官の人柄に期待いたしましょう
でもマティス国防長官に置かれては、この大事な時期におなかを壊すようなことがないよう、十分に注意していただきたいものです。

米印関係の関連記事
「インド首相のトランプ米国訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-28
「インド首相のオバマ訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-08
「4月カーター長官の訪印」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-15

「DCでJエンジンやカタパルト議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-12
「印検査院がロシア製戦闘機を酷評」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11-1
「やっと3カ国 Malabar」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-14

「カーター長官インド訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-04
「米印の国防協力合意」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-26-1
「インド首相の米国訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-30

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米国が恫喝?:核兵器禁止条約 [マティス長官]

核兵器禁止条約.jpg1日付Defense-Newsがスウェーデン地元紙の記事を取り上げマティス国防長官がスウェーデンのNATO準加盟国の地位や両国軍需産業の協力関係を「脅し:Threat」材料に、同国が国連の「核兵器禁止条約」に署名しないよう恫喝する書簡を送ったと報じています

国連の「核兵器禁止条約」は、国連本部での交渉会議で7月7日に賛成多数で採択されたもので、交渉会議には国連加盟193カ国中124カ国が出席し、122カ国が賛成しました。
「核兵器のない世界」を目指し、核兵器の使用や開発、実験、生産、製造、保有などを禁止する内容で、最終的に核抑止力の根幹ともされる「使用するとの威嚇」も禁止するものとなっています。

条約は批准国数が50カ国に達した後、90日を経て発効します。ただし、批准しない国には効力がなく、条約推進国側は、核兵器の「非人道性」を強調することで国際世論を喚起し、核兵器の廃絶を後押しする狙いがあります

日本や核保有国である米英仏各国は、条約に加盟しない方針を発表し、日本は「北朝鮮の脅威といった現実の安全保障問題の解決に結びつくとは思えない」と理由を表明しています

米国防省報道官は「恫喝書簡」についてコメントを避けており、真偽のほどは不明とはいえ、米国が単なる働きかけではなく、具体的な材料を持ち出して「脅し」に出る事態は尋常ではなく、注目を集めています。

なおスウェーデン国内も単純ではなく、国としては条約加盟方針ながら、国防省は反対の姿勢を示しており、9月20日を巡る批准や署名手続きが注目されています。

1日付Defense-News記事によれば
Nuclear W-Ban.jpg●スウェーデンの代表的新聞「Dagens Nyheterin」は、マティス国防長官からスウェーデン国防相に書簡が届き、仮にスウェーデンが「核兵器禁止条約」に署名したなら2国間関係を悪化させると記載されていたことでスウェーデン政府関係者が驚いていると報じた
●特に、NATOから非加盟国であるスウェーデンに与えられている特権(Gold Card program)が今年10月に更新時期を迎えるが、同書簡はこの更新に影響があると「脅し」、更に将来のNATO加盟オプションの門を閉ざすものだと警告する内容だと報じている

●また同紙は、条約に署名すれば、Saabと米軍需産業との関係を含む、両国軍需産業の協力関係にも影響があるとの記述も書簡に含まれると報じている
●細部に言及はないが、Saabはボーイングと組み、米空軍の次期練習機選定に名乗りを上げているところである

●米国防省報道官は同書簡についてコメントは避けたが、米国は「核兵器禁止条約」に強い懸念を持っており、関係国に批准や署名しないように働きかけていると述べている。また非拡散条約NPTに悪影響を及ぼすと訴えている
●なおスウェーデン外相は同条約に署名の意向を染めしているが、国防相は署名に反対の立場だと報じられている

専門家のコメント
Nuclear W-Ban2.jpg●かつて6年間国防省で欧州担当次官補代理を務めたシンクタンクCNASの研究員は「脅し」報道に驚き、「2国間関係で軽々に脅しなど行わないし、国家安全保障全体から見てそのような手段は負の影響しかない」とコメントしている
●同専門家も、米国がこの種の条約に署名しないことを求めることは過去にもあるが、脅しを含み様な書簡は誤った手段だと驚きを隠せない

●更に「危険な隣国を持つ友好国に対し、そのような手段を用いることは重要な2国間関係を危うくし、信頼感を損なうものだし、スウェーデン側も良好関係を損なう脅しを信じるだろうか?」と疑問を呈している
●そして一方で、「仮にスウェーデンがNATOに加盟することになれば、NATOは核兵器同盟としてその運用計画策定に関与することから、反核兵器姿勢の見直しを迫られる」とも述べている
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「核兵器禁止条約」を推進する人たちと、北朝鮮による日本上空通過弾道ミサイル発射に対する日本政府の対応や「Jアラート」を非難する人たちに、何か同じ匂いを感じます。

North Korea2.jpgスウェーデン紙とDefense-News記事の取り上げ方が極端な気もしますし、外交交渉には直接間接の「あの手この手」や、いろいろな心理戦が働くでしょうから、とらえ方によっては「脅し」となるのでしょう

でも、トランプ政権のドタバタと政権内部の混乱が、マティス国防長官を焦らせ、少し乱暴な手段に傾いているとすれば、ちょっと気になります

NPR(核態勢見直し)関連
「次期ICBMと核巡航ミサイルの企業選定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-27-1
「マティス長官がNPRに言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15-1
「トランプ政権NPRの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09

「2010年NPR発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07
「NPR発表3回目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-02
「バイデンが大幅核削減を公言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-19

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カーター前副長官の遺産DIUxとSCOに新権限 [マティス長官]

Mattis DIUx.jpg9日、マティス国防長官が就任後初めて西海岸のDIUx事務所を訪問し、カーター前長官の肝いりで立ち上がった最新技術取り込み事務所の試みを「熱狂的に支持する」「カーター長官の先見性は素晴らしい」と語り、国防省内のSCOと共に今後も有効に活用する姿勢を明らかにしました

この長官のDIUx初訪問を契機に、Work前副長官が退任直前の7月14日に許可したDIUxとSCOの特別権限についてご紹介し、両組織が民間分野の最新技術を柔軟に迅速に効率的に国防省に取り込めるよう、人事面や予算運用面で配慮された様子をご紹介します

前回DIUxとSCOをご紹介してから時間が空きましたので改めて簡単に説明すると、DIUx(Defense Innovation Unit Experimental)は、民間ハイテク技術の宝庫であるシリコンバレー、ボストン、テキサス州オースチンに設置された事務所で、ハイテクベンチャー企業や伝統的軍需作業でない中小企業の最新技術を掘り起こして国防省との窓口となる組織です

Mattis DIUx2.jpgまたSCO(Strategic Capabilities Office)は国防長官直属の位置づけ組織で、DIUxなどが見つけてきた技術の装備化や前線部隊から迅速な装備化要求が高い事業を、官僚機構の鈍重な手続きをすっ飛ばして実現する組織であり、これもカーター前長官が設けたものです

ただ一方で、このような急進的な改革には反発もあるもので、有力国防族である議員が、「既存組織との違いがあるのか?」「本当に軍事力向上につながるのか?」と疑問を呈していますので、そんな声も紹介しておきます

10日付Defense-News記事によれば
DIUx.jpg●9日、シリコンバレーのDIUx事務所を訪問したマティス長官は記者団に対し、「私はこのDIUxを熱狂的に支持し育てていく。カーター前長官が先見性を発揮し、この地に国防省の碇を下ろしておいてくれたことをとても嬉しく思う」と語った
Work前副長官がDIUxとSCOの人事や予算面での改善措置を承認した7月14日のメモは、「2つの組織のニーズは、最新の技術に精通して企業と連携して新たな関係を構築でき、国防省が必要とする技術を導入して前線に投入できる経験豊富な人材を採用することでのみ満たすことが出来る」と措置の必要性を強調している

●新たな措置は、まず第1に2組織が民間企業との競争の中で優秀な人材を雇用するため、18ヶ月までの期間であれば柔軟かつ迅速に必要な人材を雇用できる権限を延長した
第2に長期雇用ポストについても2組織がより迅速かつ柔軟に人材を雇用できるような新たな権限を、来年度の予算関連法案に盛り込んだ。実際にDIUxと協力関係にある企業関係者は、これまでは少なくとも数ヶ月雇用に必要だったが、これで1日あれば有能な人材を採用できると評価している

第3に従来は1案件で約30万円を上限で官僚手続きを経ないで契約が出来たが、この上限を事業運用と維持整備用に5億円まで引き上げる措置である。そしてこの措置に伴う事務手続きを迅速化するため、DIUxに契約担当官を配置することも措置された
●この措置を同企業関係者は、「契約が飛躍的に迅速化するだろうし、試験の現場で必要部品を補充するのに6ヶ月も待つ必要がなくなるだろう。この措置には興奮している」と語っている

第4に、鈍重な官僚手続きを経ないで、5000万円を上限として、関連事業の広告宣伝や会議開催予算を使用することが出来ることになる。これにより、より広範に技術保有企業にアプローチでき、新たな技術シーズを発見できる
●国防省外部へ措置だけでなく、内部の人材を集める措置も加え、軍人がDIUxに勤務した場合、この勤務を「統合職勤務」として経歴上扱うことにした。統合職経験が階級昇任の要件となっている米軍において、人材を集める策である

●これらの措置は、2018年度予算関連法案で裏づけされる必要があるが、議会からも2つの組織に対する支持があるので問題ないだろうと見られている

議会が必ずしも支持一色ではないとの記事も
Thornberry4.jpgDIUxが開設されて以来、これまでに45のプロジェクトと合計約110億円の契約を結んでいる。この額が小規模なのは、他に約2200億円が民間部門からDIUx関連プロジェクトに投資されているからである
●同組織はAI、情報技術、無人システム、宇宙、生命化学の5つの分野を重点にしているが、以下の3つのプロジェクトが高額なトップ3プロジェクトで、全体予算の1/3を割り当てられている

Tanium社が約140億円でIT及びサイバー作戦管理の効率化、Composite Engineering社が約13億円で高速無人機の開発、オンラインゲーム企業のImprobable社が7億円でシミュレーション開発がこのトップ3である
既に実用化されているプロジェクトには、Pivotal Labs社が担当した約3億円のソフト開発で、米空軍ジェット機への給油効率化に応用されている

●しかし2つの組織は、共和党指導者たちから、その効果や必要性について疑問の目で見られている。下院軍事委員会の委員長であるMac Thornberry議員は、「これら組織がやっていることは、他の既存組織がやっていることと違うのか?」とその存在意義を認めていない
●DIUxの組織運営予算は、2016年度は初年度立ち上げで約20億円だったが、2017年度は約10億円に削減されている。そして2018年度は国防省が30億円を要求したが、議会はこれを半分の15億円にする案を検討している
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work AFA.jpgまだまだ紆余曲折や栄枯盛衰がありそうですが、「政争の具」にならないことを心から祈ります。

特に、巨大軍需産業による事業独占の弊害がますます叫ばれる中、多くのスタートアップ企業が国防分野でその力を発揮できるような環境育成に期待しています。

Thornberry議員の指摘も、もっともな部分があるのでしょうが、ここは新興勢力にやらせてみる気持ちの余裕が大切だと思いますよ・・

DIUx関連の記事
「ボストンにもDIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27-1
「2つ目の場所とリーダー公表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25

SCO関連の記事
「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26
「SCOの頑張り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-10
「カーター長官のアピール」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03


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マティス長官:北朝鮮ICBMも米国の姿勢に変化無し [マティス長官]

North Korea2.jpg6日、マティス国防長官が急遽記者会見を開き、北朝鮮が4日に実施したICBM発射試験に関連し、米国の姿勢に変化はないと語りました。

米軍は対ISISやアフガン対処だけで軍事力をフル稼働しており、加えて欧州方面で活発化するロシア軍への対抗措置として頻繁に部隊のローテーション派遣や演習を行うなど、限られた予算の中で四苦八苦の綱渡りが続いています

またトランプ政権は、ロシアンゲート問題関連で勢力を裂かれ、政権内部の足並みの乱れも指摘されています。また国務省や国防省の主要政治任用ポストも未定が多く、各分野での具体的な政策展開に着手できていない「スカスカ状態」が続いています。

North Korea.jpg更に韓国は、政経中枢であり人口密集地域(約2000万人)でもある首都ソウルやその近郊地域が北朝鮮との停戦ラインにほど近く、北朝鮮軍火力の射程圏内にあるなど、極めて有事に弱い地理的特性をもており、マティス長官も朝鮮半島有事に勝利する事は確実だが、その被害は甚大なものになるだろうと軍事オプションが現実的なモノではない事を示唆しています

要するに、北朝鮮に対して外科手術的なオプションは極めて選択困難で、時既に遅しとの見方が識者の共通認識になりつつあるように感じます。
まぁでも、水面下では様々な動きがあるのでしょうし、様々なプレーヤーの思惑でどちらに転ぶか不透明には違いありませんから、とりあえず事実関係として、国防長官の発言を記録しておきます

おまけで拓殖大学の川上高司・海外事情研究所所長が、「米国が北朝鮮の核保有を認める可能性が高まっている」との論考を発表していますので、ご紹介しておきます

6日のマティス長官発言
North Korea3.jpg●北朝鮮のICBM発射は、米国と北朝鮮の間の戦争の可能性を高めたわけではなく、当該地域での核戦争を避けるための外向的努力に米国は引き続き注力していく
●本件に関する米国のスタンスは変わりなく、地域の同盟国である日本や韓国と協調しながら、軍事態勢も併せて維持する。

これが挑発的な行動の中にあっても戦争を防止してきた、我が国の自制(self-restraint)である。我々の自制が続く限り、ご説明した外向的な努力が引き続き続けられる
●米国は前述の同盟国や中国と協力している。しかし北朝鮮が戦争を始めようとするなら、甚大な結果を招くことを承知すべきだろう

川上高司所長の「核保有容認の恐れ高まる」との見方
(6日付日経新聞朝刊9面)
Kawakam2i.jpg●米国が北朝鮮の核兵器保有を認める可能性は高まっている。次の焦点は6回目の核実験で、中国を刺激しないように共産党大会後に実施する可能性が高い。
ICBMに加え、核実験まで試みられれば、米国の軍事行動のレッドラインはなくなってしまう。米国は先制攻撃の機を逃した。4月に空母2隻を派遣した際、可能性は高まったが、トランプ政権は中国の圧力に期待して行動を見送り、ここで北朝鮮に足元を見られてしまった

●今、先制攻撃するのは難しい。北のICBM保有で米本土が反撃される可能性が高まった。ロシアンゲート等の問題で政権がごたつく中、大統領が大きな犠牲を払ってまで踏み切るとは考えにくい
最終的に好ましくないシナリオが浮上しそうだ。米政権が北の核兵器保有を認め、対話に動くケースだ。朝鮮半島(韓国が?)が統一に向けた南北対話に動き出す。

●金正恩体制の維持は中国にとっても望ましい
日本にとっては、国際社会が公認する核保有国が隣に生まれるという最悪の結果になる恐れがある
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槍ヶ岳と高山植物.jpgだいぶ省略しながらも整理していくと、川上所長の見方もさもありなん・・・と思えてきます。さすがに「統一に向けた南北対話」が実を結ぶとは思えませんが、今の韓国大統領はそんなアピールを始めるのでしょう・・・

そんなことすれば、第2、第3の北朝鮮が出現し、国際社会にとって由々しき事態だと日本は訴えるのでしょうが、決められない日本は米国からも足元を見られ、米国が売りたい兵器だけ押しつけられるのかも知れません・・・

朝鮮半島関連の記事
「韓国大統領の母親は米軍のお陰で脱出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-06
「韓国の混乱を大東亜戦争後の哀史に学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-25
「ルトワックの日韓関係分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-17

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