米国が恫喝?:核兵器禁止条約 [マティス長官]

国連の「核兵器禁止条約」は、国連本部での交渉会議で7月7日に賛成多数で採択されたもので、交渉会議には国連加盟193カ国中124カ国が出席し、122カ国が賛成しました。
「核兵器のない世界」を目指し、核兵器の使用や開発、実験、生産、製造、保有などを禁止する内容で、最終的に核抑止力の根幹ともされる「使用するとの威嚇」も禁止するものとなっています。
条約は批准国数が50カ国に達した後、90日を経て発効します。ただし、批准しない国には効力がなく、条約推進国側は、核兵器の「非人道性」を強調することで国際世論を喚起し、核兵器の廃絶を後押しする狙いがあります
日本や核保有国である米英仏各国は、条約に加盟しない方針を発表し、日本は「北朝鮮の脅威といった現実の安全保障問題の解決に結びつくとは思えない」と理由を表明しています
米国防省報道官は「恫喝書簡」についてコメントを避けており、真偽のほどは不明とはいえ、米国が単なる働きかけではなく、具体的な材料を持ち出して「脅し」に出る事態は尋常ではなく、注目を集めています。
なおスウェーデン国内も単純ではなく、国としては条約加盟方針ながら、国防省は反対の姿勢を示しており、9月20日を巡る批准や署名手続きが注目されています。
1日付Defense-News記事によれば

●特に、NATOから非加盟国であるスウェーデンに与えられている特権(Gold Card program)が今年10月に更新時期を迎えるが、同書簡はこの更新に影響があると「脅し」、更に将来のNATO加盟オプションの門を閉ざすものだと警告する内容だと報じている
●また同紙は、条約に署名すれば、Saabと米軍需産業との関係を含む、両国軍需産業の協力関係にも影響があるとの記述も書簡に含まれると報じている
●細部に言及はないが、Saabはボーイングと組み、米空軍の次期練習機選定に名乗りを上げているところである
●米国防省報道官は同書簡についてコメントは避けたが、米国は「核兵器禁止条約」に強い懸念を持っており、関係国に批准や署名しないように働きかけていると述べている。また非拡散条約NPTに悪影響を及ぼすと訴えている
●なおスウェーデン外相は同条約に署名の意向を染めしているが、国防相は署名に反対の立場だと報じられている
専門家のコメント

●同専門家も、米国がこの種の条約に署名しないことを求めることは過去にもあるが、脅しを含み様な書簡は誤った手段だと驚きを隠せない
●更に「危険な隣国を持つ友好国に対し、そのような手段を用いることは重要な2国間関係を危うくし、信頼感を損なうものだし、スウェーデン側も良好関係を損なう脅しを信じるだろうか?」と疑問を呈している
●そして一方で、「仮にスウェーデンがNATOに加盟することになれば、NATOは核兵器同盟としてその運用計画策定に関与することから、反核兵器姿勢の見直しを迫られる」とも述べている
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「核兵器禁止条約」を推進する人たちと、北朝鮮による日本上空通過弾道ミサイル発射に対する日本政府の対応や「Jアラート」を非難する人たちに、何か同じ匂いを感じます。

でも、トランプ政権のドタバタと政権内部の混乱が、マティス国防長官を焦らせ、少し乱暴な手段に傾いているとすれば、ちょっと気になります。
NPR(核態勢見直し)関連
「次期ICBMと核巡航ミサイルの企業選定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-27-1
「マティス長官がNPRに言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15-1
「トランプ政権NPRの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09
「2010年NPR発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07
「NPR発表3回目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-02
「バイデンが大幅核削減を公言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-19
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