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米陸軍が来年新ライフルM7と新機関銃M250導入 [Joint・統合参謀本部]

少なくとも、来年1月4日までは定期更新は行いません。
皆さま、良いお年をお迎えください!

近接戦闘職種の歩兵や特殊部隊等にのみ提供
M4ライフルとM249機関銃の後継として
弾薬もM4とM249の5.56㎜から6.8㎜へ大型化

M7 2.jpg12月20日付Defense-Newsは、米陸軍が近接戦闘職種である「歩兵」「特殊部隊」「combat engineers」部隊用に、5.58㎜弾薬使用のM4ライフルとM249機関銃に代わり、より威力を強化した新開発の6.8㎜弾薬を使用するM7ライフルとM250機関銃を9月から米海兵隊も関与して101空挺部隊で試験中で、2024年早々にも上記職種部隊へ提供を開始すると伝えています。

またほぼ全ての陸軍小火器に装着可能で、装着した小火器の機種に応じ、自動的に弾道計算を調整して最適な目標照準を可能とする新型照準スコープM157も併せて導入開始されると紹介しています

M7.jpgなお、広く米陸軍で現在使用されているM4ライフルとM249機関銃は、引き続き上記の近接戦闘部隊「以外」で引き続き使用されるとのことです。

米陸軍は2017年から、将来小火器の在り方を検討する「2017 Small Arms Ammunition Configuration Study」を開始し、近接戦闘職種部隊が保有すべき小銃や機関銃の具備すべき破壊力や射程について再評価を行い、最新の防弾チョッキを貫通可能で、5.56㎜弾薬では対処できない簡易陣地を構築するレンガブロックを破壊可能な威力、更に遠距離での威力や照準性能向上を狙った検討&開発を行い、

M250 2.jpgプロトタイプが製造されてからは、米海兵隊も積極的に関与し、様々なシナリオでの実射テストや評価検討会を重ね、従来の5.56㎜弾が跳ね返されていた標的を貫通可能な威力を持つ、新たな6.8㎜弾を使用可能なM7ライフルとM250機関銃の導入を決定したとのことです

2023年9月に記者団に公開されたデモ射撃では、新型のM250機関銃が連射でレンガブロックを突き破って人型標的に命中させる様子も公開され、従来の5.56㎜弾では不可能だったブロック対処が可能なことを示し、更に旧式の7.62㎜弾薬使用のM240機関銃よりも軽量で強い貫通力や破壊力を持っていると紹介された模様です

M157 2.jpgM7とM250導入のタイミングに併せ、新たに導入されるVortex Optics/Sheltered Wings 製のM157光学照準スコープ(M157 fire control)は、米陸軍が保有するほぼすべての小火器に装着可能で、ミニコンピュータ導入により、装着小火器と使用弾薬のマッチングを素早く自動計算して目標距離等に応じた弾道予測を行い、スコープ表示を瞬時に行って射手が素早く射撃可能な状態になると説明されています
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M250.jpg2017年から検討を開始したということは、アフガンやシリアやイラクなど中東での戦いの教訓を主に反映した小火器再検討が行われたものと推察しますが、ドローンが飛び交うウクライナ戦場での教訓も少しは反映されているのでしょうか。5.56㎜から6.8㎜弾への変更は、吉と出るのでしょうか?

確か、ドローン撃退のための特別なレーザーや電磁パルスや電波妨害や弾薬や捕獲網の様な新たな手法を用いた対処兵器も悪くわないが、現有の小銃に簡易に装着可能な「人工知能活用の手振れ補正機能(YouTube撮影用やスマホカメラに広く普及)」付の照準スコープをすぐに送ってくれ・・・とのウクライナ側からの要請があったと耳にしていますが・・・。

米陸軍ウクライナの教訓
「米陸軍が評価中の様々な教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/10/13/5129/
「22年6月:米陸軍首脳が教訓を」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/

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1年ぶりに米中軍事レベル対話再開 [Joint・統合参謀本部]

Brown統合参謀本部議長が中央軍事委員会統合参謀長と
成果を生む可能性低いも、接触から相手を読む機会

Brown Gen. Liu Zhenli.jpg12月21日、Brown統合参謀本部議長と劉振麗・中央軍事委員会統合参謀部参謀長(彼は中国共産党第 19 期中央委員会メンバー)が米中軍事高官レベル対話をTV会議方式で実施し、前年11月にオースチン国防長官が中国国防相(先日更迭され、今は空席)と会談して以来初めてとなる軍事交流が行われました

ご承知のように米中関係は悪化傾向にありますが、今年11月にサンフランシスコ郊外でバイデン大統領と習近平主席の会談が久々に行われ、軍事レベル対話の再開に合意したを受け実施されたものですが、今後、共に2021年から開始された、米国防省の中国担当次官補代理レベルが行う「Defense Policy Coordination talks」や、米太平洋軍の海空軍トップと中国軍東部&南部軍管区トップが行う「MMCA:Military Maritime Consultative Agreement talks」も再開されるとのことです

Brown Gen. Liu Zhenli2.jpg21日のTV協議を受け米統合豪参謀本部は、「Brown議長は、両国軍関係者がオープンで率直な対話を維持することで誤解や誤算を避け、互いの関係を双方が責任感を持って管理する必要があることを強調した」と声明を出しており、例えば11月には夜間飛行中のB-52爆撃機に中国戦闘機が3mにまで接近する等、過去2年間で180回以上の中国軍機による米軍機への危険で乱暴な嫌がらせ接近飛行事案が発生していることへの対応を協議した模様です

また米統合参謀本部報道官は、「(ほかにも)2名のリーダーは多くの世界及び地域情勢に関わる安全保障上の課題について議論した」とコメントを出しています
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gates-china.jpgこのような軍事レベル対話の再開については、米軍現場レベルでも継続的に中国サイドに呼びかけがなされてきており、例えばJohn Aquilino太平洋軍司令官は11月に、過去2年間に渡り、中国軍東部&南部軍管区トップと行う「MMCA」実施を中国側に要請してきたが、中国側が受け入れることはなかったと明らかにしていました

gates-china2.jpg中国国防相が音信不通の後に逮捕解任され、ロケット軍司令官以下幹部が大量に同時更迭される等の習近平による軍への監視&締め付け強化の中、中国軍幹部が米軍との対話での振る舞いで「内部からの監視」に引っかかることを恐れていた可能性があり、当然、今回の軍事レベル協議再開でも大きな成果は期待できないと考えられます。(まぁ、中国経済崩壊を受け、中国が米国への支援を求める過程で、国として米軍への対応を緩和する可能性はありますが・・・)

でも、このような外国との対話は、直接的な成果は生まなくても、対話から感じ取れる相手の態度や発言内容の変化や反応から、相手国内の動きや変化を感じとる貴重な機会であり、協議への準備が負担にならない範囲で継続することは意義深いことだとまんぐーすは思います

gates-china4.jpgゲーツ国防長官(当時)はよく言ってました。冷戦下のCIA勤務時代に具体的成果は生まなかったがソ連と戦略対話を中断をはさみつつも継続的に行い、例えばソ連側のICBM増強を衛星写真を示して指摘すると、ソ連の政府代表がその事実を全く把握しておらず、どうやらソ連軍独断の可能性が浮上してソ連政府代表から細かな説明を求められた思い出や、

gates-china3.jpg2011年頃の中国訪問では、胡錦濤主席を含め、中国側文民指導層は誰一人として(ゲーツ長官訪中期間に行われた)J-20ステルス戦闘爆撃機の初飛行を事前に把握していなかった模様で、その数年前のインペカブルへの対応、3年前の衛星破壊実験を事前に中国文民リーダーが把握していなかったと同様の状態が続いていることが感じ取れた・・・等と振り返り、間接的な収穫も極めて重要な成果だと強調していたところです

関連のゲーツ長官関連の記事
「慶応大学での講演」→→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-14
「2011年1月の訪中」→→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-09-1

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今年も恒例の米空軍NORADによるサンタ大追跡! [ちょっとお得な話]

NORADや応援企業やボランティアの尽力で、今年のイブもサンタ大追跡を敢行!

このサイトで子供心を取り戻そう!!!
http://www.noradsanta.org/

日本語での解説ページ
→ https://www.noradsanta.org/ja/noradhq

日本時間の24日午後6時頃からサンタが北極で活動開始! 日本列島通過は23時過ぎ頃かな? 約24時間で全世界にプレゼント配達の旅!

NORAD(北米防空司令部)からの予告映像
その1(NORADが準備中!)


その2(どのようにサンタを追跡?)


その3(サンタは何歳なのか?)


その4(サンタどのように家の中に?)


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SantaVillage.jpg既に68年間の歴史を持つ行事ですが、ユーモアを解する世界の人々に9カ国語(日、中、韓、オランダ、スペイン、伊、英米、仏、ポルトガル)で提供されており、厳しい予算の中でも頑張ってくれています。

皆さん!お子さんのいらっしゃる方はもちろん、意中の方とご一緒の方も、はたまた西洋のしきたりを無視する方も、遊び心で一度サイト(記事の冒頭にアドレス記載)を覗いてみては如何ですか。


サンタ追跡の歴史と最新技術(?)映像で!

サンタ大追跡の歴史と最新技術?・・


なぜ米空軍NORADがサンタを追跡するのか?
NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)とその前身である CONAD(中央防衛航空軍基地)は、70 年近くにわたりサンタの飛行を追跡してきました。

NORADsanta.jpgNORADshaup.jpgこの恒例行事は、1955 年にコロラド州に拠点を置くシアーズ ローバック社が、子供向けに「サンタへの直通電話」を開設した際に、なんと誤って CONAD司令長官への直通電話番号を掲載したポスターを全国に掲示した事に始まりました。

子供たちからの間違い電話を受けた当時の司令官シャウプ大佐(写真)が、ユーモアでサンタの行動を部下に米空軍のレーダーで確認させる振りをして、電話を掛けてきた子供たちにサンタの現在地の最新情報を随時伝えたことに始まりました。

1958 年、カナダと米国の両政府は「NORAD」として知られる両国が共同運営する北米防空組織を創設しましたが、NORADもサンタの追跡という伝統も引き継いだというわけです。

それ以来、NORAD の職員とその家族や友人の献身的なボランティアによって、世界中の子供たちからの電話やメールへの対応が続けられています。また、現在ではサンタの追跡にインターネットも利用しています。サンタの現在地を調べようと「NORAD Tracks Santa」ウェブサイトアクセスする人の数は、何百万人にものぼります。

そして今では、世界中のメディアもサンタの飛行経路に関する信頼できる情報源として、NORAD の情報を採用しているそうです。
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どのようにサンタを追跡?
NORAD・Santaサイト情報。ジョークにご注意を。)

●NORAD は、レーダー、人工衛星、サンタ カメラ、ジェット戦闘機の 4 つの最新鋭システムでサンタを追跡します。

santa.jpgまず使用するのは、「北米警戒システム」と呼ばれる NORAD のレーダー システムです。この強力なレーダー システムは、北米の北部国境に張り巡らされた 47 の施設で構成されています。NORAD はクリスマス イブにこのレーダーを絶えず監視して、サンタクロースが北極を出発する瞬間をキャッチします。

●サンタが飛び立ったのをレーダーで確認したら、次の検知システムの出番です。地球の上空約 36,000 km の静止軌道上には、赤外線センサーが搭載され熱を感知することのできる人工衛星が複数配置されています。なんと、赤鼻のトナカイ「ルドルフ」の鼻からは赤外線信号が放出されているため、NORAD の人工衛星はルドルフとサンタの位置を検知できるのです。

3 番目の追跡システムは「サンタ カメラ」ネットワークです。「サンタ追跡プログラム」をインターネット上で展開し始めた 1998 年から使用しています。サンタ カメラは超クールなハイテクの高速デジタル カメラで、世界中にあらかじめ設置されています。NORAD では、これらのカメラをクリスマス イブの 1 日だけ使用します。これで世界中を飛び回るサンタとトナカイの画像と動画を捉えます。

santa-coat.jpg●追跡システムの 4 番手はジェット戦闘機です。CF-18 戦闘機を操縦するカナダ NORAD のパイロットがサンタに接近し、北米へと迎え入れます。米国内では、F-15 や F-16 戦闘機を操縦する米国 NORAD のパイロットが、サンタとその有名なトナカイたち(ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクゼン、コメット、キューピッド、ドナー、ブリッチェン、そしてもちろん、ルドルフ)とのスリル満点の共同飛行を実現します。
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サンタに関する米空軍の公式解説

サンタ行動の科学的分析
●サンタは良い子にしていた子供達の長いリストを持っています。毎年子供たちのリストは増え続けています。結果としてサンタは、1 軒あたり 0.0002~0.0003 秒の速さで各家庭を回らなければいけないということになります!
サンタクロースが1600 歳以上だという事実を考えても、また、サンタは子供たちにプレゼントを届ける大切な仕事を慌ててしようとは思わない点からしても、彼が私達の知る「時空間」で作業しているわけではないことが想像できます。
●そう考えると、私達とは異なる時空間で活動しているらしいと考えるのが唯一合理的な結論となります。

サンタの存在と移動手段について
santa-book.jpg多くの歴史的データと 50 年以上に渡る NORAD の追跡資料から導き出される結論は、サンタクロースが世界中の子供達に心の中に実在し心から愛されているということです
●ライト兄弟による最初の飛行機より以前から、サンタは猛スピードで家から家へと飛び回る方法を見つけなければなりませんでした。サンタ・カメラの画像からサンタは素早く移動するために空飛ぶトナカイの群れを選択したことが分かっています。

●このトナカイたちの詳細はまだまだ不明ですが、分かっていることは、サンタが世界中にプレゼントを届けるという任務の手伝いをトナカイ達に要請したということです。その他の詳細は、素敵な謎のベールに包まれています。

イブの24日午後6時頃からサンタが北極で活動開始!
本年も気楽に楽しみましょう!

NORADのサンタ大追跡webサイト
http://www.noradsanta.org/

日本語での解説ページ
→ https://www.noradsanta.org/ja/noradhq

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手作り感アリアリの露軍前線無人輸送車が話題 [ふと考えること]

無人機監視の網をすり抜け塹壕兵士に物資供給
露前線部隊@ウクライナ撮影の映像公開で話題に
ドローン監視で補給輸送部隊が活動不能な現代戦場

Russian UGV4.jpg12月4日、ウクライナ南東部Avdiivka地域で活動中と思われるロシア軍部隊が撮影したと言われる映像がロシア御用メディア「Telegram」から公開され、手作り感満載の小型無人物資輸送車両が、最前線の塹壕を死守するロシア軍兵士に、ウクライナ側の攻撃をかいくぐりつつ補給物資を届ける様子が西側SNS上で話題となっています

手作り感満載の小型無人物資輸送車両は、長さ1.5m、幅1.2m、高さ40㎝程の大きさで、両端のキャタピラで前進する地を這うようなシンプルなもので、車両上面の平らな部分に補給物資を乗せて移動する構造ですが、映像からはロシア兵士がタブレット型端末で操作する様子も少し伺うことができます

Russian UGV2.jpg米国の複数の専門家は「明らかに兵器工場で量産されたものではなく、市販部品や部隊が保有するありあわせの部品を組み合わせた感が漂うシンプルな無人車両であるが、現場のニーズを反映して機能を絞り込んだシンプルな構造と操作性で大きな戦力となっていることが伺える」とコメントしています。

また、「常続的な無人機による上空からの監視と、無人偵察機からの情報を迅速に入手して目標照準に活用する火砲部隊との連携が洗練され、ウクライナの戦場では前線部隊に有人輸送部隊が補給物資を届けることが極めて困難になりつつ事を示している」ともコメントしています

Russian UGV3.jpg公開された映像は、複数のタイプの無人車両が、様々な場所で、様々な部隊と活動する様子を記録していますが、負傷兵を他の兵士が撤退させる映像も無人車両映像の合間に含まれていることから、負傷兵の輸送に活用した証拠映像はないものの、現場で負傷兵後送に活用されている可能性は十分にあると専門家は指摘しています
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第44ライフル旅団撮影と推測の無人輸送車両映像
https://twitter.com/i/status/1731374614071165077

例えば、ウクライナ軍前線部隊から西側への支援要望の中に、小型無人機対処用に、現在前線兵士が装備しているライフル銃に簡単に装着可能な、「人工知能活用の手振れ補正機能」付の照準用スコープが欲しいとの要望が多数上がってきているようで、スマホや家庭用ビデオ撮影カメラで「手振れ補正機能」を使い慣れた世代からの現場の声として注目されています

Russian UGV.jpg小型無人機対処は米国防省が最優先課題として取り組んでおり、レーザー兵器、電磁パルス兵器、機関銃タイプやレーダー照準タイプ、網で無効化する方式など様々な新兵器が企業から提案されていますが、やはり現場の声を聴くことも極めて重要だと考えさせられます。いつの時代にも、現場の様子は異なれど、手っ取り早い&効果的なアイディアは現場の声から生まれるような気がします。この「手作り感満載の」小型無人輸送車両を見て改めてそう感じました

米陸軍ウクライナの教訓
「米陸軍が評価中の様々な教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/10/13/5129/
「22年6月:米陸軍首脳が教訓を」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/

様々な視点からウの教訓
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「イラン製無人機が猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「アジア太平洋への教訓は兵站」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「SpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

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防衛研究所が「中国の影響工作」概要解説 [安全保障全般]

情報を制御して自らに有利な状況生み出す工作
欧米民主主義の正当性を弱めるため習近平が強化指示
西側諸国向けは効果的ではないと分析

NIDS China.jpg防衛研究所webサイトが12月8日、山口信治・中国研究室主任研究官による「中国の影響工作概観——その目標・手段・組織・対象」との5ページの論考を「NIDSコメンタリー」として掲載し、習近平が強化している「情報を制御して自らに有利な状況生み出す行動である影響工作」について、タイトル通り「その目標・手段・組織・対象」との視点から紹介していますのでご紹介いたします

少々乱暴に結論から言うと、山口主任研究官は、中国による影響工作は主たる対象を「台湾、各国の華僑華人、グローバルサウスの国々」に置いており、「西側諸国に対する工作は、必ずしも大きな効果を上げているわけではない」と分析しており、日本のマスゴミが中国の経済崩壊について極めて消極的な報道姿勢を撮り続けていることや、日本の現状や将来に関して悲観論を強調する報道ばかりを垂れ流している現状との大きなギャップを感じる結論レポートとなっています

NIDS China2.jpgマスゴミだけでなく、防衛研究所も11月24日発表の「中国安全保障レポート」で、中国の経済崩壊について一切触れない異様とも言える研究姿勢を示していますが、これが日本政府の検閲のせいなのか、防衛研究所としての政府への「心遣い」なのか、中国軍事脅威の崩壊兆候を「隠したい」防衛省の姿勢を反映したものなのかは不明ですが、以下でご紹介する「NIDSコメンタリー:中国の影響工作概観」を見るにあたり、事前に注意喚起させていただきます

山口主任研究官による分析概要
●影響工作とは、情報を制御し、相手国の認識や判断を操作したり混乱させることで、自分たちに有利な状況を作り出す行動を指すが、本稿では中国の影響工作の背景や影響工作の手段と目標、実施に関わる組織、その対象、それがもたらす問題を概観
●習近平は、西側諸国が中国の軍事的封じ込めだけでなく、民主主義や人権イデオロギー浸透により、中国共産党を内部から変質させたり、政権を崩壊させようとしているとの認識を強く持っている。西側は中国におけるカラー革命を画策しているので、西側による中国を「妖魔化」する情報発信や、政権への信頼を揺るがせる言説を排撃し、さらに米欧の民主主義の国際的な正当性を弱め、中国の見方考え方を内外に拡散浸透させなければならないと、習近平は考えている

Hua Chunying4.jpg●上記認識を基に中国は、①中国のイメージを向上して中国政策に対する支持を広げ ②中国に不利な外国の主張や情報に反駁し、中国に不利な情報を遮断し、③相手国の社会の分断を拡大し、政治社会に混乱を生み出す・・・事を推進している

●具体的には、第一にプロパガンダ・宣伝分野で、中国国営メディア情報発信を拡大し、 外国メディアへの中国外交官の寄稿や新華社記事の配信で中国の主張を世界に伝え、外国のプロパガンダへ反駁する。第二のディスインフォメーションでは、偽情報をソーシャルメディアなどに流し、相手国の主張への信用を毀損し、相手の社会や政治に混乱をもたらす
●第三の統一戦線工作は習近平が特に重視して強化している手段であるが、主要敵を内部分裂させたり、友好勢力を増やそうとする策略を意味する。対象として重要なのが華僑・ 華人や外国における友好人士で、習近平は工作を統一的な指揮下で再活性化させようとしており、党の部門である中央統一戦線工作部のみに任せるのではなく、党全体の重要事業と位置付け、関連部門間の連携強化を推進している。

NIDS China3.jpg●ただし、これら中国の手法は、ロシアのような直接的に相手の政治・社会の混乱を狙うアプローチに比べてより間接的で、言説空間において優位に立ち、相手の掲げる価値を引き下げることを狙ったもので、中国は伝統的に相手国のエリート層への働きかけが得意な一方で、ディスインフォメーションは中国にとって比較的新しい手法である
●本工作実施に関連する組織は非常に多く、その指揮関係は非常に複雑。大方針に基づくとは言え、その実施が関係機関の緊密な調整下で実施されているというよりは、バラバラな行動の集合と見る方が適切

●中国の影響工作にかかわる組織は、大きく分けて、宣伝、統一戦線、人民解放軍の3つの系統。宣伝系統は、宣伝に関わる組織からなり、「中央宣伝思想工作領導小組 (組長)」が工作の全般的指導と調整実施。三つ目の人民解放軍は、軍の影響工作を実施する。新たに設立された戦略支援部隊は、 サイバー、電磁スペクトラム、宇宙という情報に関わる機能を統括しており、関連の深い心理・認知領域もその任務に含まれている模様
●二つ目の統一戦線工作系統は、習近平により組織的な強化が図られており、党内に中央統一戦線工作領導小組を設立し、中央統一戦線工作部の機能が大幅に強化され、政府内の独立部門だった国務院僑務弁公室、国務院国家民族事務委員会、国務院国家宗教 事務局が中共中央統一戦線部の指揮下に置かれるなど、一元的統制が強化されてきた

Wenbin2.jpg●主要な対象は、台湾、グローバルサウスの国々、そして各国の華僑華人である。西側諸国に対する中国の影響工作は、必ずしも大きな効果を上げているわけではない。
●まず、台湾の独立傾向を防ぎ、さらに統一を促進することは、中国共産党にとって長年の大目標。次のグローバルサウスの国々については、「一帯一路」等でグローバルサウスの国家と経済・政治・安全保障上の関係を深めようとの姿勢の表れ。世界中に拡大する華僑華人コミュニティを中国共産党の政策のためにまとめ上げ、動員することも狙いとしてるが、華僑華人は実際には多様で、すべてが中国共産党の影響下にあるわけではない

●何が問題か。中国の影響力工作が民主主義国にもたらす可能性があるのは、社会の分断と混乱、政策課題について中国有利な世論誘導、人権や民主との普遍的価値の相対化、選挙介入による政治体制への影響力行使、価値・イデオロギー面から現在の国際秩序を揺さぶり不安定化すること・・・などである
NIDS China4.jpg●中国の手法は、それほど洗練されているとは言えない部分がある。とくにディスインフォメーションはかなり粗い。工作を担当する組織間調整が綿密とは考えにくいく、洗練された連携が取れない状態かも

●影響工作の効果の検証は一般的に難しいが、中国のアプローチは間接的であることから更に難しくなっている。中国の限界、弱さを正しく把握することも重要。
●日本は、中国による様々なタイプの行動に対し、価値や原則を守るために全政府的アプローチで対処が必要。影響工作は技術発展と密接な関係にあり、特に人工知能の発展は、影響工作の実施側と対抗側の双方に今後欠かせないものとなる。グローバルサウスへの工作への対処には、広い国際的協調による対策が欠かせない
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最近の地上波放送や新聞雑誌が、視聴率を下げ発行部数を減らしている原因は、「テレビ放送や新聞雑誌がつまらないだけでなく、目にすると気分が悪くなるからだ」とのSNS上での声が大きな賛同を集めています。

習近平 愛される国.jpg中国の影響力工作がもたらすものを、山口分析官は「社会の分断と混乱、政策課題について中国有利な世論誘導、人権や民主との普遍的価値の相対化、選挙介入による政治体制への影響力行使、価値・イデオロギー面から現在の国際秩序を揺さぶり不安定化」だと端的に指摘していますが、日本のマスゴミが日々垂れ流しているのは、これらを狙った操作された情報ばかりで、普通の日本国民が「目にすると気分が悪くなる」レベル情報のオンパレードです

それなのに山口分析官が「西側諸国に対する工作は、必ずしも大きな効果を上げているわけではない」と論評している評価の根拠が良くわかりませんし、日本への影響工作(日本の政治家や報道機関へのハニートラップ工作等々)に言及が一切ない点なども含め、論考全体を読んでみて話の流れに不自然さが感じられ、誰かによって初期原稿が大きく修正された可能性を強く感じました。

中国経済崩壊に言及ゼロ
「異様な中国安全保障レポート2024」→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/

防衛研究所による各種論考紹介記事
「サイバー傭兵の世界」→https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/
「ミャンマーと露の接近を恐れるASEAN」→https://holylandtokyo.com/2023/05/02/4545/
「量子技術の軍事への応用」→https://holylandtokyo.com/2022/01/14/2577/
「「先の大戦」「あの戦争」を何と呼ぶべきか」→https://holylandtokyo.com/2021/08/13/2103/

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https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

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3機目の核実験監視用WC-135Rを受領 [米空軍]

1964年製造のKC-135を改造して
念願のWC-135R 3機体制で核兵器拡散に備え
「後継機は検討せず」のRC/WC-135だが2050年代まで

WC-135R2.jpg12月4日、米空軍Offutt空軍基地の第55航空団第45偵察飛行隊が、大気中の核物質を探知&検知するWC-135「R型」の3機目を受領し、2020年10月から始まった、旧式WC-135「C/W型」の2機体制から新型WC-135「R型」3機体制への転換が完了しました。

大気中の核物質を探知検知して核実験実施の有無を確認するWC-135は、核兵器保有を狙う潜在的国家が増加傾向にある中で非常に貴重で、2機体制から3機体制への移行は、航空機の定期整備や故障発生を考えると、同航空機運用の柔軟性や即応態勢維持に極めて大きな意味を持ち、運用部隊長が「史上初めて、任務遂行の質低下なく、同時に複数場所で活動が可能になる」と表現しているところです

WC-135R3.jpg旧式WC-135「C/W型」の2機体制から新型WC-135「R型」3機体制への転換は、まず2機の旧式WC-135「C/W型」を順次「R型」へ改修することで2機の「R型」を確保し、次に1964年にKC-135として導入され2019年まで空中給油機として運用されていた機体を、約4年かけ新しいWC-135「R型」に改修して3機目として受領し完結したとのことです。

ちなみに、2機の旧式WC-135「C/W型」を順次「R型」へ改修した2020年10月から2023年5月の31か月間には、1機しか運用可能なWC-135が存在しない期間が29か月間もあり、北朝鮮やイランがコロナ下のどさくさに紛れて核開発を進めた可能性があった中、監視の目が脆弱な状態を甘受していたことになります

WC-135R.jpg特殊情報収集機であるRC(各種電波情報収集機)やWC-135については9月の記事で取り上げた通り、機体は50歳以上で老朽化が進んでいるものの、搭載観測機器は様々な手法を用いて数年に1回「近代化改修や更新」が図られており、最新技術を反映した観測機材を操作する搭乗員は「勉強することが多数あり、飽きることが無い環境」に置かれているとのことです

今回受領した3機目は、KC-135を改修してWC-135として必要な観測装置を搭載し、核汚染されたエリアを飛行しても搭乗員に影響がない措置を施すだけでなく、WC-135用の最新型コックピットへの改修や、他のWC-135「R型」と同じCFM-56 turbofanエンジンへの換装を行って、機体維持整備の容易性にも配慮したとのことです

WC-135W.jpg米空軍は2019年頃に「RC,WC,OC-135の後継機は調達せず」、「空中・宇宙・地上に配備された多様なアセットに搭載されているセンサーをネットワーク化して活用し、そこから得られる情報全体で代替する」との方針を固めていますが、単純に見積もっても代替体制が確立しそうなのは2050年代以降であり、計28機保有のWCやRC-135はまだまだ活躍の機会が豊富にありそうです

【ご参考:Offutt基地所属RCやWC-135】
●RC-135U Combat Sent 2機 シグナル情報収集機
●RC-135V/W Rivet Joint 17機 U型を改良した同情報収集機
(敵のレーダー、ミサイル等のレーダー電波情報や位置等を収集分析し、敵の戦力分布や新兵器の配備を把握。また味方機の自己防御用警報装置に敵電波情報をアップデート)

●RC-135S Cobra Ball 3機 弾道ミサイル光学電子情報収集(北朝鮮の弾道ミサイル試験が迫ると日本周辺に飛来)
●WC-135 Constant Phoenik 2機 大気収集機(北朝鮮の核実験報道があると日本海で待機を収集し、核実験の真偽を判定)

※OC-135B Open Skies機 2機 米露のオープンスカイズ条約遂行のための機体だが、トランプ政権が露の姿勢に反発し、2020年に条約破棄を通告。2021年に機体も破棄

米空軍ISR関連の記事
「久々にRC,WC-135部隊ご紹介」→https://holylandtokyo.com/2023/09/27/5066/
「RC,WC,OC,NC-135は後継機なしの方向」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-28-1
「米空軍が新ISRロードマップ決定」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-04-3
「情報部長が中露のAI脅威を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-28
「RC-135シリーズがピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-08-1

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事故大破の2機のF-35から1機を生み出す試行 [亡国のF-35]

まずF-35で。他の戦闘機への応用も検討
2020年1月開始で、25年3月完成予定の慎重さ

F-35 Franken-bird.jpg12月12日付米空軍協会web記事が、F-35の生産&調達ペースが上がらない中で、貴重な受領済機体を最大限に活用するため、事故で大破した2機のF-35の再使用可能な部分を組み合わせ、完全に使用可能な1機のF-35を再生産する米国防省F-35計画室とロッキード社等の共同取り組みについて紹介しています

大破した航空機の修理に、他の航空機の部品を活用することはあると思うのですが、記事の書きぶりからは、共に大破して修復が不可能な2機の利活用可能な部分を寄せ集め(不足部品は新品部品を調達して)、使用制限のない新品同様の戦闘機1機を生み出そうとの「前例のない取り組み」らしく、2020年1月開始で25年3月に完成予定の「新品同様の戦闘機1機」が費用対効果面でもクリアできれば、他の戦闘機への展開も考えているようです

今回対象となる大破F-35は・・・
・2014年に大規模エンジン火災を起こしたエグリン基地所属機
 (現在はF-35整備員の機体補修教育訓練用に使用中)
・2020年に全輪が破損して機体前方が大破したヒル基地所属機

F-35 Franken-bird2.jpgこのような大破した2機から生み出される1機をフランケンシュタインになぞらえて、国防省F-35計画室は「Franken-bird」と呼称しているようですが、同プロジェクトには中核となる主にロッキード社の約20名の他、米空軍第338戦闘航空団内のOgden空軍補給処等の空軍兵士と文民職員た契約業者が関わっているとのことです

ロッキード社のプロジェクト主任技術者のScott Taylor氏は、「理論的には、全ての航空機の部品は異常が無い限り、分解して他の正常な部品と組み合わせて、新たな「新品」として利活用可能だが、これを実際に大規模に行って1機を完成させた事例は一度もない」、「本プロジェクトの過程は全て文書化等で記録し、将来の手法活用&確立に向けた資料として編纂したい」、

F-35 Franken-bird4.jpg「このプロジェクトは単に大破した2機から1機を生みだすに留まらず、事故で大破した航空機を、最新の技術や工具や製造装置を駆使して、費用対効果面で受け入れ可能な形で修復する技術確立にもつながる意義のある取り組みだ」と位置付けを表現しています
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極めて大雑把に表現すれば、「エンジン火災事故を起こした機体の前方部分」と「車輪不具合で着陸時に機体前方部分を失った機体」を合体し、他の不足部品は新規調達して「新品同様の戦闘機1機」を生み出すプロジェクトですが、上記のように、将来のための記録や手法標準化を意識した手順確立検討が含まれるためか、2020年1月開始ながら2025年3月まで時間が必要とのことです

F-35 Franken-bird3.jpgひねくれ者のまんぐーすには、近い将来に米軍はF-35調達予定数を大幅に削減し、例えば米空軍なら現在の約1760機予定を、600~800機前後にまで縮小する可能性が高いため、事故機の利活用可能性を「戦闘機命族」が時間と金を投入して模索している・・・と見えてしまいます

F-35調達機数削減の動き
「デマ流布!? F-35需要増に生産が・・」→https://holylandtokyo.com/2023/07/18/4823/
「F-35削減派が空軍2トップか」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/
「米海軍が調達ペース抑制」→https://holylandtokyo.com/2022/07/07/3420/
「米海兵隊も削減示唆」→https://holylandtokyo.com/2022/01/17/2586/
「米空軍2025年に調達上限設定を」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「英国は調達機数半減か」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/

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(やっと)日英伊戦闘機GCAP開発の管理体制に合意 [安全保障全般]

2022年12月の3か国共同開発合意から1年かけ決定
本部を英国に設置、CEO2名(政府代表と企業代表)が並立リード
政府代表CEOに日本人、企業代表CEOを伊から

GIGO.jpg12月14日、2022年12月に日英伊3か国が共同開発で基本合意した次世代戦闘機GCAP(Global Combat Air Program)に関し、1年間の長きにわたる協議を経て、プロジェクト組織の大枠となる「GIGO:GCAP International Government Organization」を規定した合意文書に、3か国国防相が東京で署名しました

プロジェクト組織を示したGIGOの細部は報道からは不明ですが、英国に置かれるGIGOの2つの本部(headquarters)は2名のCEOによって率いられ、2名のCEOはそれぞれ「政府組織:governments’ GCAP organization」と「軍需産業組織:industrials’ GCAP organization」を並列の関係で統括するとのことです

GIGO2.jpgそして「政府組織CEO」は日本が差し出し、「軍需産業CEO」はイタリアが差し出すことに決定したとの声明文が出された模様です。ただし、具体的に英国の何処に2つの本部(headquarters)が置かれるのか(別々の場所なのか、同居なのか)、誰が2名のCEOに就任するかなどは発表に一切触れておらず、戦闘機と言う大きな金が動き軍需産業界への広がりも大きい共同開発プロジェクトが、一筋縄では進まない重いプロジェクトであることを伺わせます

2022年12月に基本合意し、2035年までに次世代戦闘機GCAP(以前は英伊スウェーデンによるTEMPEST計画と呼称も、スウェーデンは2023年初に脱退し、現在はGCAPと呼称)を開発配備する予定の本プロジェクトですが、2023年3月の3か国協議前には、英と伊国防相が日本に対し、「一度決めた以上、やり通せ」「開始後におじけ付いて逃げるな」「政治的にも、誰かが抜けることはできない」等々と記者団の前で語るなど、やくざ世界の様相を呈しています

GCAP Industry.jpg今回の組織(GIGO)合意では、「政府組織」に関する発表はほとんどないようですが、「軍需産業組織」については、英BAE Systems, 伊Leonardo と日本の三菱重工が中核企業となってリードすることが規定され、9月に決定された企業協力合意に基づき「将来のGCAP開発製造にかかわる企業連合に関する協議は継続中」「MHIとBAEが東京で最近協議を行った」と発表された様ですが、既に約1000社&9000名以上が関与することが現時点で判明しているようです。

また不確かながら、日英伊の3か国以外にも共同開発国を広げる可能性もささやかれており、2023年初にはサウジ加入の可能性が報道された様ですが、これに対しては日本が拒否反応を示していると当該記事は伝えていたようです
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GCAP2.jpg今回のGIGO合意に関し英国防省は、「共同開発フェーズ:joint development phaseは2025年に開始する予定だ」との声明を出しており、プロジェクトが本格稼働するまでに、2024年1年間かけてまだまだ詰めるべき点が「山積み」であることが伺えますが、このような「海千山千」のロビイストやコンサルタントや政治屋や政治家が暗躍しそうな「魑魅魍魎」の世界に日本が首を突っ込み、貴重な人材を投入する意味が戦闘機にはあるのでしょうか?

2月に当時の英国防相が「政治家と、軍人と、軍需産業関係者が共に協力して取り組むことが不可欠である。あらゆる機会をとらえて3者が一堂に会して協議することが不可欠」と日本に釘を刺していましたが、公明党が今ごろになって共同開発に反対姿勢を露わにし、早くも国内体制の足元が揺らぎ始めているグダグダですが、「政府組織」を束ねる日本人CEOのご苦労を生暖かく見守らさせていただきます。

英伊+日本のGCAS開発
2023年3月:日本で3か国協議
「英伊が日本恫喝:逃げるなよ!」→https://holylandtokyo.com/2023/02/14/4299/
2022年12月:英伊日3か国でGCAP(Global Combat Air Program)合意
「伊が訪日し協議」→https://holylandtokyo.com/2022/09/27/3699/
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11

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研究者投稿:極超音速兵器を過大評価するな [安全保障全般]

「Masaoさん」による極超音速兵器探知センサー検討
CSIS研究員が12月18日発表の同兵器対処宇宙センサー検討

極超音速物体の表面が高温の空気流と反応し放出される「イオン、ガス、粒子、その他の化学副産物の航跡」を検出する高周波電磁波センサーや紫外線センサー
https://www.airandspaceforces.com/hypersonic-missiles-tracking-space-sensor/
レポート現物→https://www.csis.org/analysis/getting-track
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終末の大幅減速でPAC-3やSM-6で迎撃可能性大
同兵器の迎撃回避機動は大減速と射程減を伴う
技術未成熟&開発製造高価で費用対効果を要再考

Hypersonic Glide B3.jpg12月8日付Defense-Newsが、極超音速兵器に関するMITとスタンフォード大学研究者2名の意見投稿を掲載し、同兵器装備化のための開発や同兵器迎撃システム開発に多額の経費が投入され、今後も更なる投資が予期されているが、シミュレーション分析では同兵器終末段階の大幅減速でPAC-3やSM-3で迎撃可能性が高く、迎撃を難しくする同兵器の機動性も速度や射程の大きな代償を伴うものであると、世間一般の「過剰評価」を戒める投稿内容を紹介しています

更に2名の投稿者は、同兵器の飛翔速度維持し射程距離を延ばすためのスクラムジェット技術には未成熟部分が多く、同推進装置に必要なエンジンと燃料は同兵器全体を大型にして重量を増やし、発射時のブースターを更に大型化する必要があるなど、兵器全体の信頼性確保を困難にする要素にあふれており、また更なる高速化は兵器の耐熱性向上の課題も抱えることになることから開発費高騰も予期され、同兵器関連の費用対効果を再検討する必要があると主張しています

Army hypersonic4.jpg寄稿者の一人であるMITのDavid Wright客員研究員(物理学博士)による意見投稿は、5月末にもDefense-Newsに掲載され末尾の記事でご紹介していますが、今回はスタンフォード大学のCameron Tracy研究員(材料工学博士)も加わって、シミュレーション試験や各種分析を加え、巨額投資の費用対効果を疑問視し、MaRVs弾道ミサイルが多くのシナリオ下で費用対効果で上回ると訴えています

8日付Defense-News掲載の寄稿の概要
●音速の 5 倍以上で大気中を滑空する極超音速兵器開発推進の主な動機は、相手のミサイル防衛装備システムへの対応である。国防省高官の中には「南シナ海で活動する米海軍艦艇は中国の同兵器に対し無防備に等しい」と警鐘を鳴らしている一方で、3月には国防省が「最新装備のイージス艦は同兵器に一定程度対処可能だ」とも発言している。我々は、何が真実で現実なのか、何が可能で不可能なのか理解する必要がある

HAWC3.jpg●例えば我々の最近の分析によれば、一般に流布する情報とは異なり、同兵器が飛翔途中でMach 10-12に加速しても、最終段階で地上目標に大気中をダイブする際の空気との摩擦で大幅に減速し、最新の米軍PAC-3やSM-3で十分に迎撃可能な状態になる。この点はウクライナに提供されたPAC-3が、露製の極超音速兵器Kinzhalの迎撃に多数成功している結果からも証明されている。
●南シナ海上の米海軍艦艇も、最新のイージスシステムを装備していればウクライナ軍と同様の発見・追尾・迎撃対処が可能であり、米ミサイル防衛庁が公開している艦艇MDシステム解説アニメ映像(https://www.dvidshub.net/video/801628/mda-hypersonic-concept)でも、SM-6で迎撃可能なことを説明している

ARRW.jpg●同兵器の迎撃を困難にするためには、更に同兵器の飛翔速度を上げる必要があるが、これ以上の飛翔速度アップは同兵器の大気との摩擦熱を増大させることになり、同兵器製造上の大きなネックとなる可能性が高い
●また同兵器は、飛翔途中に大気中で柔軟に飛翔コースを変更可能で、敵の迎撃を困難にすると吹聴されているが、我々の分析では、仮にマック10の同兵器が30度進路を変更するだけで、速度がマック6まで大気摩擦で減速し、射程距離も4割以上ダウンすることが計算で示されている。つまり、軌道上の進路変更は、迎撃側に有利に働く可能性が高い

HAWC5.jpg●最終段階での同兵器の飛翔速度を確保するため、同兵器にスクラムジェットを搭載したタイプの開発も進められているが、スクラムジェットは未成熟な技術である。また、同兵器の弾頭部に付加するスクラムジェット(エンジンと燃料タンクで構成)は兵器重量を増やし構造を複雑化させ、また発射時にスクラムジェット点火に必要な初速を稼ぐブースター部の大型化も必要なことから、同兵器全体の信頼性リスクも増え、開発費用も含め高リスクな開発案件となる

●極超音速兵器と弾道ミサイルを比較すると、弾道ミサイルは極超音速兵器と同等かより早く発射準備が可能で、弾頭に終末段階で機動可能なMaRVs(maneuverable reentry vehicles)を用いれば、大気圏突入後に数百キロ単位の目標修正も可能で、極超音速兵器と同程度の誘導精度も確保できる
GPI MDA2.jpg●我々は、多くのシナリオにおいて、また多くの評価側面で、極超音速兵器よりMaRVs弾道ミサイルが優れていると評価している。最近の米議会Budget Officeの分析でも、MaRVs弾道ミサイルは1/3の予算で極超音速兵器の効果を確保できるとの結果が示されている

●極超音速兵器を巡り、中露等との軍拡競争の緊張が高まったり、同兵器開発や迎撃システム開発予算が膨らむ傾向にあるが、一般に吹聴されているような性能・能力・効果を同兵器がもたらさず、国家安全保障や国益確保につながらないと我々は考える。米国は同兵器への多額の投資の費用対効果について、事実と現実に目を向け、再考すべきである
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GPI MDA3.jpg今年3月15日に、米ミサイル防衛庁MDAのJon Hill長官が講演で、極超音速兵器の滑空段階での迎撃ミサイル(GPI:Glide Phase Interceptor)開発のため、日米共同開発に成功した弾道ミサイル防衛迎撃ミサイル「SM-3 block IIA」の経験を活かし、日本との共同開発が可能かどうか日本側と協議を開始していると語っており、その後どうなったか把握していませんが、とっても心配です

グローバルホークRQ-4やオスプレイ、そして日本の戦闘機族の下支えもあって引き受けたF-35も含め、日米同盟の負の側面となっている装備に続くことが無いよう、中露の脅威の動向も冷徹ににらみつつ、極超音速兵器の滑空段階での迎撃ミサイル開発には対応して頂きたいと思います

同筆者による5月末の寄稿紹介記事
「被撃墜事例相次ぐ極超音速兵器を過信するな」→https://holylandtokyo.com/2023/06/01/4695/

米軍の極超音速兵器開発
「米陸軍の最終確認試験&配備は来年に持ち越し」→https://holylandtokyo.com/2023/11/15/5224/
「空軍がARRW配備断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「バカ高い極超音速兵器」→https://holylandtokyo.com/2023/02/08/4261/

迎撃兵器システム開発関連
「迎撃兵器を日米共同開発で」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/

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NGAD前に1500億円の海空共同「X-plane」実証研究存在 [米空軍]

2015年から「NGAD X-plane」プログラム実施
海空軍とDARPAが費用3分割で複数技術デモ機成功
Skyborg/ Air Combat Evolution/MQ-28研究の成果も

NGAD10.jpg11月14日、Kendall空軍長官がPOLITICO Defense Summitで講演し、今年5月から開始し2024年に企業選定結果発表を行う次期制空機NGAD(Next-Generation Air Dominance)計画の前段階として、次世代制空機に必要な新技術実証を目的とした「NGAD X-plane」プログラムを、2015年から国防省研究機関DARPAと米海軍と米空軍が1500億円規模($1 billion)の予算を等配分負担する形で実施していたと初めて公表しました。

同長官は、「複数のプロトタイプ機が、我々3者が求める複数の先端技術実証に成功した」と語り、複数の異なるデザインのデモ機が競い合い、理論段階や要素段階の新技術を実際の航空機で実証確認して、米空軍が現在進めているNGAD計画の基礎となっていると説明しました。

Kendall POLITICO.jpg更に同長官は「NGAD X-plane」の前段階として、2014年から1年余りをかけ、当時調達&技術開発担当だった自身も関与してDARPA主導の「The Dominance Initiative」との基礎研究を行い、その研究に基づく提言として、将来の制空には、CCAにつながる無人ウイングマン機、次世代空対空戦闘ミサイル(AIM-260 JATM:Joint Advanced Tactical Missile)、「offboard sensors」などの「family of systems」構成要素が必要だと提言していたとも説明しています

なお「NGAD X-plane」との関連について同長官は触れなかったようですが、2020年9月に当時のRoper米空軍調達&開発担当次官補が、「最新のバーチャル設計開発と製造技術を駆使し、要求性能設定から1年足らずで、NGADデモ機の初飛行を既に終えている」と語って専門家や関連メディアが大騒ぎになりましたが、この「NGAD X-planeプログラム」関連の実証飛行だろうと推測できます

Kendall POLITICO2.jpg同長官は14日に、米空軍NGADは有人機と無人機が融合してコンビを組んで運用し、「NGAD X-plane」で実証したいくつかの技術を組み込むことになると細部には言及せず説明したようですが、例えば以前から国防省関係者は「NGADのステルス性能は、F-35やF-22から桁が異なる進歩を遂げている」と表現しているところです

また同長官は、「NGAD X-plane」以降の検討である米空軍によるSkyBorg研究、DARPAによるAI空中戦研究「Air Combat Evolution」、更に豪州とボーイング社が行った「MQ-28 Ghost Bat」などの検討成果を総合し、米空軍としてNGAD開発の機が熟したと判断したと語っています
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NGAD11.jpgNGADを支える「family of systems」構成要素に関し、CCA検討については16日に担当空軍次官補代理が語った「試験運用部隊の創設」などの内容を別記事でご紹介し、空中戦用ミサイルAIM-120の後継ミサイル「AIM-260 JATM」について同長官は、あと2-3年で本格生産に入り次世代の制空確保に貢献すると述べていますが、上記で触れた「offboard sensors」については何を指し示すのかまんぐーす把握していません

NGADは、今の時代における戦闘機の限界や矛盾点をあぶりだすプロジェクトになろうと考えています。以下の過去記事にある「欧州型とアジア太平洋型の2種類が必要」と言っている時点で、米空軍自らその矛盾に気付くべきだと思いますが、今後F-35経費膨張と共に、嫌と言うほど思い知らさせることになるのでしょう。日本もその矢面になっています・・・

超極秘開発の空中戦ミサイルAIM-260 JATM
「断片情報ですが・・・」→https://holylandtokyo.com/2022/04/04/3088/
「前任のAIM-120を大増産の謎」→https://holylandtokyo.com/2023/05/17/4556/
「2017年から開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-21

DARPAの「Air Combat Evolution」研究
「AIで人間の空中戦闘を補完」→https://holylandtokyo.com/2023/02/27/4326/
「米空軍研究所AFRLは2021年に実機で」→https://holylandtokyo.com/2020/06/10/620/
「無人機含む空中戦を支えるAI開発本格化」→https://holylandtokyo.com/2020/05/22/678/

Skyborg計画関連
「2機種目MQ-20 Avengerで成功」→https://holylandtokyo.com/2021/07/08/1983/
「Skyborg構想の頭脳ACSで初飛行2時間」→https://holylandtokyo.com/2021/05/17/1489/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「無人ウイングマンのデモ機選定開始」→https://holylandtokyo.com/2020/05/24/679/
「豪州もXQ-58に参画」→https://holylandtokyo.com/2020/05/06/664/

NGAD関連の記事
「複数企業が同基地内で競って検討中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/25/4678/
「企業選定開始」→https://holylandtokyo.com/2023/05/22/4656/ 
「欧州型とアジア太平洋型の2種類」→https://holylandtokyo.com/2023/05/10/4604/
「NGADは1機が数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/
「NGADの無人随伴機開発は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-20
「無人機の群れ前線投入が課題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/28/3474/
「デモ機が既に初飛行済」→https://holylandtokyo.com/2020/09/17/482/

米空軍の戦闘機構成議論
「戦闘機の近未来体制は」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
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地熱発電所を米空軍基地にデモ建設へ [米空軍]

化石燃料に依存しない態勢強化に向けた取り組み
気候変動対処へのC02排出量削減にも貢献
テキサス州とアイダホ州の基地で

geothermal.jpg11月20日米空軍が、テキサス州のSan Antonio統合軍基地で、政情不安の影響を受けやすい石油や天然ガス等の化石燃料依存度を削減し、かつ気候変動の原因とされているCO2排出量削減のための再生エネルギー利用拡大のため、地熱発電所が運用可能かの調査及びデモ発電所建設に着手すると発表しました。

2021年10月発表の米国防省気候変動対処構想や、2022年11月発表の米空軍の気候変動対処計画を受けた取り組みの一環ですが、既に今年9月には、San Antonio統合軍基地に関しEavor Inc.社と、アイダホ州Mountain Home空軍基地についてanskar Geothermal & Minerals, Inc.社と、それぞれ3-5年後に地熱発電所を稼働させる想定での「2年間の調査」契約を締結しており、今回はSan Antonio統合軍基地プロジェクトに関し正式な発表を行ったものです

geothermal2.jpg空軍省エネルギー確保室による発表では、「San Antonio基地は、地熱発電に関し必ずしも最適な場所ではないが、ここで地熱発電の基地内運用がうまくできれば、他の米空軍基地への導入可能性を証明することになる」との面白い説明がなされており、恐らく米国防省の基地では最も面積が広いSan Antonio基地の使いやすさや、テキサス州で盛んな原油や天然ガス採掘産業の知見やノウハウ活用を狙ったデモプロジェクト場所選定では・・・と邪推しております

「San Antonio基地は、地熱発電に関し必ずしも最適な場所ではない」との空軍省の発表ですが、2023年発表のテキサス州5大学共同研究によれば、同州のメキシコ湾沿岸地域を中心としたエリアは地熱資源が豊富で、実際州都ヒューストンは地熱を暖房用に活用していたこともあり、San Antonio基地周辺でも106度の温泉を利用したスパが開業していたこともあるとのことです

geothermal4.jpgただ、実際に発電所として地熱を活用するには石油や天然ガス開発と同レベルの深さのボーリングが必要で、テキサス州平均で7㎞程度の採掘が必要なところ、San Antonio基地周辺では5㎞程度で熱源地層に到達可能と見積もられているようですが、安定的な地熱確保可能な場所特定などに2年間をかけた調査が必要で、3-5年後の発電所稼働を目指すことになるとのことです

空軍発表を紹介する28日付米空軍協会web記事は、完成時のSan Antonio基地発電施設の想定発電量等について触れていませんが、前述の「米空軍気候変動対処計画CAP:Climate Action Plan」では、2046年までにゼロ・エミッション目指し、途中の2033年までに5割削減との中間目標も設定しており、ネット上に公開されている同基地の将来図には、地熱だけでなく、太陽光や風力や(恐らく)ミニ原発施設も含めた姿も描かれています
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geothermal3.jpg他の再生可能エネルギー(renewable energy)である太陽光や風力発電等と比較して、地熱発電は天候の影響を受けずに24時間発電可能な点で優れていますが、地熱を活用するためのインフラ初期投資や腐食対応など維持整備コストがかさむ点でハードルの高さも指摘されており、米軍としては「取り組む姿勢」を見せることがまず重要なのでしょう

日本でも地熱を活用したいところですが、地熱発電施設の候補となるような場所は山間部の辺鄙な場所が多く、送電施設を含む建設投資が膨らんで人件費を含む維持費もばかにならないことや、熱源確保の継続性も不安が残り、全く普及しないのが実情です。地場産業である石油や天然ガス業の力も活用した、平地かつ基地内での米空軍の取り組みを、「生暖かく」見守りたいと思います

米軍の気候変動対処あれこれ
「Microgridで海外基地をエネルギー独立へ」→https://holylandtokyo.com/2023/11/17/5199/
「米空軍のCAP:気候変動対処計画」」→https://holylandtokyo.com/2022/11/07/3747/
「海軍と海兵隊が対処演習強化」→https://holylandtokyo.com/2022/09/28/3666/
「米陸軍が前線での電力消費増に対応検討」→https://holylandtokyo.com/2022/04/25/3138/
「米空軍が航空燃料消費削減を開始」→https://holylandtokyo.com/2022/02/16/2691/
「電気&ハイブリット車導入推進」→https://holylandtokyo.com/2021/11/15/2423/
「米国防省が気候変動対処構想発表」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/

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米軍将官人事がやっと動くも空軍重要人事3件はまだ [米空軍]

3月から議会承認停滞の455ポストから425やっと承認
ただ空軍副参謀総長、ACC司令官、太平洋空軍司令官まだ
共和党Tuberville議員ようやく折れる

Tuberville.jpg12月5日、米議会上院が3月から停滞していた新たな米軍将官人事(昇任および異動)の議会承認を再開し、承認保留されていた455ポストの内、同日425ポストにやっと議会承認がおりました。これだけ大量の高官人事が10か月近く停滞したことで、実際の「指揮官交代」等が急に可能なわけではありませんが、なんとか動き出したということです

「米本土での妊娠中絶を希望する海外派遣中の女性兵士への旅費や休暇付与」への反対を理由に人事承認停滞を招いたTommy Tuberville上院議員(共和党:アラバマ州選出)関連のゴタゴタについてはここでは触れず、とばっちりの激務で心臓発作を起こし、10月29日に倒れた海兵隊司令官をご紹介した末尾の記事をご参照頂くこととし、

本日は、細部理由が不明ながら米軍全体で依然未承認の30ポスト案件(大将ポスト関連11を含む:今後一括審議&承認方式ではなく、個別に時期未確定のスケジュールで審議の模様)のうち、全体の人数比率からするとアンバランスに割合が高くなっている空軍と宇宙軍が11ポストから、まんぐーすが過去に大統領ノミネート時点でご紹介した以下の重要3ポスト案件について、再度ご紹介いたします

●副参謀総長へJim Slife現空軍作戦部長
Slife4.JPG---特殊作戦ヘリ操縦者ながら史上初めて空軍作戦部長に2022年12月から就任している行動派。新空軍参謀総長のDavid Allvin大将とも良好な関係で、関係者は「Allvin参謀総長がアイディアを出し、Slife副参謀総長が実行を担う」形になるのでは・・と予想。ちなみに空軍人ツートップが共に非戦闘機パイロットなれば10年ぶり。
---Brown空軍参謀総長・Allvin副参謀総長・Slife作戦部長体制時代に煮詰めた、維持費のかさむF-15やA-10の早期退役加速、F-35調達計画機数の削減、これらの裏返しとして先端無人機や指揮統制能力強化への投資を推進する案をさらに強力に推進を予期

●戦闘コマンドACC司令官へ異例の年上大将
Wilsbach9.jpg---空軍戦闘コマンド(ACC)は、全ての戦闘機や攻撃機を維持管理&訓練する米空軍最大のコマンドで、87000名の兵士と1100機を配下にする巨大組織で、その司令官は米空軍内で「戦闘機パイロット族のボス」と認識されている。そのポストに現司令官であるKelly大将より年上で、普通なら退役する年齢の、ペンタゴン勤務経験もない大将(現太平洋空軍司令官:これ自体が既に異例)が推挙される異例の人事

---この異例のWilsbach大将は、アジア太平洋戦域に勤務経験が偏る地域専門家であり、対中国有事への備えを最優先事項とする米空軍にとって「余人をもって代えがたい」人材であることや、米空軍全体で対中国作戦用に取り組むACE(Agile Combat Employment)構想の発案者として、その推進普及をPACAF司令官として2020年7月から最前線で推進してきた功績があるものと推測
---また各種改革推進派である同大将を「戦闘機パイロット族のボス」にすることで、F-35調達数の削減や、NGADやCCA導入に向けた戦闘機体系変更への組織的抵抗を抑え込む役割も期待されていると思われる

●太平洋空軍司令官へ在日米軍司令官経験者
Schneider3.jpg---候補となっている現在米空軍司令部のスタッフ長であるSchneider中将は、ワシントンDCの空軍司令部で数百人の空軍司令部スタッフ間の政策方針や業務分担や諸計画や人事などなどについて「synchronizes and integrates」する任務に就いており、空軍司令部や空軍全体に「顔が利く」存在
---また、2019年2月から21年8月まで在日米軍司令官を務め、PACAF参謀長やIndo-PACOM参謀長経験もある地域専門家で、更に年齢や期別は防衛大学校でいうと32期相当の空軍士官学校卒業生で、現在の自衛隊の幕僚長や主要コマンド司令官と同期レベルでもあり、その点でも航空自衛隊をはじめとする自衛隊幹部とも円滑な意思疎通が期待できる
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Tuberville2.jpg米大学フットボールの監督(ヘッドコーチ)としてアラバマ州の大学で好成績を残し、その人気で同州の上院議員に当選した人物によって保留されていた「455ポスト」の大半は、本来であれば夏には議会承認が終了し、10月からの新予算年度開始から各部隊で活躍が期待されていた人事です

中国の共産党独裁とその裏返しで蔓延していた腐敗体質が招いた「中国経済の崩壊」を見れば、民主主義がやっぱり良いな・・・と思いますが、Tuberville上院議員一人がもたらした米軍全体への影響を考える時、民主主義が持つまどろっこしさをしみじみ感じます

未承認の米空軍重要人事3件の関連人物紹介
「特殊作戦ヘリ操縦者が作戦部長に」→https://holylandtokyo.com/2022/11/18/3965/
「異例、次のACC司令官人事」→https://holylandtokyo.com/2023/05/11/4614/
「PACAFに在日米軍司令官経験者が」→https://holylandtokyo.com/2023/04/26/4567/

Tuberville上院議員を巡るゴタゴタ情報もご紹介
「米海兵隊司令官が倒れNo2も空席の3日間」→https://holylandtokyo.com/2023/11/06/5205/

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AUKUS第2弾で3か国宇宙監視レーダー設置へ [サイバーと宇宙]

他に非公開もAIや量子計算機やドメイン認識でも協力
12月1日にシリコンバレーで3か国国防相が合意

DARC3.jpg12月1日、AUKUSを構成する米英豪の3か国国防相がシリコンバレーの国防省革新推進機関DIU本部に集まり、2021年9月に豪州への攻撃原潜提供を狙いとして結成されたAUKUSの更なる協力分野拡大を企図し、第2弾協力合意「Pillar II」として、細部非公開の人工知能AIや量子コンピュータやドメイン認識技術に加え、3か国に静止軌道等を監視する地上設置レーダーDARCを2029年末までに設置することに合意したと発表しました

DARC4.jpg現在米軍が衛星やデブリ監視に使用している冷戦時代のミサイル追尾用レーダーや10年以上前に設置された光学望遠鏡などは、大量の衛星やデブリが地球周回軌道に漂う現代の宇宙環境を前提とした装置ではなく、観測追尾能力や制度に限界がありますが、

2026年までに豪州西部に設置予定の初号機を皮切りに、2029年末までに英国と米国にも各1個建設されるDARC(Deep Space Advanced Radar Capability :Northrop Grummanが開発製造担当)は、最新の技術を取り込んだ静止軌道衛星やデブリ観測地上設置型レーダーで、米英豪の地球上の3か所に分散配置することで、地球周辺の宇宙軌道をくまなく継続監視するための「最適配置」が可能になるとのことです

DARC.jpg更にこれら新設のDARCから得られる情報を、既存の地上レーダーや光学望遠鏡監視装置、宇宙配備の衛星監視衛星からの情報と融合処理することで、静止軌道上にある衛星やデブリの状態やその変化を、より正確に精密に迅速に観測できるようになるとのことで、宇宙ドメインでの出来事にありがちな、「いつ、どこで、誰が、何を」したのか不明な状態を減らすための情報精度が高まることが期待されています
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DARC2.jpg今回のAUKUS国防相会合で「Pillar II」合意されたと言われている、「人工知能AI」や「量子コンピューティング」や「ドメイン認識」については、「ドメイン認識」の一部をなすDARCのみが公表事項として発表されており、「人工知能AI」関連では無人ウイングマンCCA開発、「ドメイン認識」では水中ISR技術も含めた協力にAUKUSが発展していると推測いたします

「中国経済崩壊」が、習近平の時代錯誤も甚だしい国家運営により、「中国全体の崩壊」まで至りそうな予測不可能な雲行きですが、中国脅威論による国防強化が可能なうちに、世論が「デタント風潮」にならないうちに、進める事が適切な分野はどんどん先取り決定しておくことが寛容かもしれません。当然、戦闘機開発は後送りで・・・

現状の米軍の宇宙監視体制関連
「衛星の衝突防止を担う第18宇宙防衛隊(18SDS)」→https://holylandtokyo.com/2023/12/07/5292/

AUKUSとの関連も感じる記事
「3か国空軍でE-7の能力強化」→https://holylandtokyo.com/2023/07/21/4871/
「豪がB-21爆撃機購入も一時検討」→https://holylandtokyo.com/2023/05/15/4588/
「量子技術の軍事への応用」→https://holylandtokyo.com/2022/01/14/2577/
「AUKUS 締結発表」→https://holylandtokyo.com/2021/09/20/2255/

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台湾総統「中国は大規模な台湾侵攻を考える状態にはない」 [安全保障全般]

中国の課題を「国内の経済と金融、それに政治的なもの」と分析

Taiwan Sai.jpg11月29日、台湾の蔡英文総統がNYT紙主催のイベントにリモート参加し、参加者からの「中国の台湾侵攻可能性についてどう考えられるか」と問われ、「現在、中国の指導部は内部の課題への対応に追われている。大規模な台湾侵攻を考える時ではないだろう」と述べました

イベント参加者の質問に対し蔡英文総統はまず、「(中国による台湾侵攻の)可能性に関するタイムスケジュールを、議論したり話題にしたがる人が多いことは知っているが、習氏は、最近のバイデン大統領との会談で答えを出している」と表現し、11月15日にバイデン・習近平会談で「2027年や2035年に中国が軍事作戦を行う計画はない」と習氏が発言したとされている事を示唆しました

Taiwan Sai2.jpgそして蔡英文総統は中国情勢について、「現在、中国の指導部は内部の課題への対応に追われている。大規模な台湾侵攻を考える時ではないだろう」と述べ、中国の指導部が直面している課題として「主に国内の経済と金融、それに政治的なものだ」と指摘ました。

この発言を聞いて、2022年2月のロシア侵略直前にウクライナのゼレンスキー大統領が「ロシアによるウクライナ侵攻可能性は低い」と発言していたことを持ち出し、有事や有事への備えに関する蔡英文総統の考えの甘さを指摘する人もいるでしょうが、蔡英文総統がその程度の指導者だとはまんぐーすは思いません

Biden.jpg中国との軍事力の圧倒的な差、中国からの絶え間ないサイバー攻撃や情報戦、中国海空戦力による示威活動のエスカレート傾向等々を十分に把握しつつ、限界がある中で可能な範囲の有事体制強化を水面下で全力で進めつつ、一方で「中国による台湾侵攻の恐れ」による外国資本の台湾から国外への流出や外国から台湾への投資の減少を抑えるため、あえて誤解を恐れず正直に、現時点までに収集した情報から自然と導かれる情勢判断を披露したものと考えます

繰り返しになりますが、可能性が低下しつつある有事に備えた準備は淡々と進めつつ、一方で台湾経済維持の重要性を踏まえ、国家指導者として必要だと考える客観的な情報に基づく情勢認識を披露したものだと考えます

Biden2.jpg米国は、米国内のインフレ抑制だけでなく、中国通貨の暴落を狙った「利上げ状態維持」政策を継続しており、中国への貿易規制などと併せて、超党派の態勢で「中国潰し」に全力投球しており、ある意味で中国に「戦わずして勝つ(軍事的な戦いに至る前に、経済的に破綻させる)」ことに光明を見出しつつあると思います

「中国の不動産バブル崩壊」は「中国金融制度崩壊」を導きつつあり、中国経済や中国の国家としての形が今後どのような道をたどるのか、その影響が世界にどう及ぶのか不安で仕方ありませんが、軍事的脅威だけを声高に叫んでいては、片手落ちだと思う今日この頃です

大変残念な防衛研究所の『中国安保レポ2024』
「中国経済崩壊に言及ゼロの」→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/

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衛星の衝突防止を担う米宇宙軍18宇宙防衛隊(18SDS) [サイバーと宇宙]

未だ宇宙交通管理システムが構築できない状態の中
追尾可能な4万以上の衛星や宇宙ゴミを日夜監視
地道な活動の一端をご紹介

SDS.jpg11月22日付米空軍協会web記事が、米宇宙軍第18宇宙防衛隊(18SDS :18th Space Defense Squadron)を取り上げ、兄弟部隊である第19宇宙防衛隊と共に、地球周回軌道上に存在する探知追尾可能な10㎝以上の衛星や宇宙デブリ45000個以上を、地上配備の宇宙監視観測装置や衛星監視衛星等を活用して常時モニターし、軌道や状態の変化を察知して「その場その場でinformalにad hocな」宇宙物体の衝突回避活動を行う様子を紹介しています

記事は、新しく創設されて米国民からなじみの薄い米宇宙軍や宇宙コマンドが、自己紹介のため公表し始めている部隊概要や活動報告説明資料を基に、「感謝祭休暇」期間の紙面穴埋め記事として作成されたと思われる「部隊紹介記事」ですが、まんぐーすの様な宇宙初心者には貴重な情報ですのでご紹介させていただきます

11月22日付米空軍協会web記事によれば
SDS3.jpg●米宇宙軍第18宇宙防衛隊(18SDS)は、兄弟部隊の19SDSと共に、地球周回軌道に存在する観測可能な人工物体の全てを監視追尾し、これらの衝突や異常接近を回避することで、衛星や宇宙飛行士や宇宙開発の取り組みの安全を確保する任務を負っている

●18SDSは加州のVandenberg宇宙軍基地に拠点を置き、45000以上の物体を「U.S. Space Surveillance Network (SSN)」を使用して監視追尾しており、SSNは以下のセンサーで構成される。

AN FPS-85.jpg--- 地上から夜空の光学写真を撮影し、コンピュータ画像情報処理で衛星やデブリの位置や動きを把握する「Ground-Based Electro-Optical Deep Space Surveillance System」
--- 地上設置のレーダーで宇宙物体を観測して数百の物体をリアルタイム探知追尾する「AN/FPS-85とAN/FYS-3 Phased Array Radars」

Space fense.jpg--- 太平洋上のマーシャル諸島に設置され、特定周波数の電波でフェンスを宇宙空間に向け設け、そのフェンスを通過する物体を把握する「Space Fence」
--- 大気圏の気象や太陽光に観測を妨げられない、軌道上に配置された「Space-Based Space Surveillance satellite」による監視

●宇宙デブリ(ゴミ)発生原因の4分類
--- Corrosion, Fatigue:人工衛星の機材劣化・金属疲労等により人工衛星が分解等して部品がデブリ化(飛散度小)
--- Breakups:意図的な衛星破壊兵器実験による破片の爆発的飛散や、意図せぬ衛星の爆発(気体や化学薬品タンクの事故破裂など)によるデブリ発生(飛散度大)

--- Collisions:例:2009年発生のロシア軍事衛星とイリジウム通信衛星の衝突破壊によるデブリ飛散(飛散度大)
--- Mission-related:意図に関わらず衛星から放出や分離した部品や物体(飛散度小)

SSN.jpg●宇宙軍18SDSは、各種センサーや監視装置からのデータを、特別なソフトウェアを使用して分析し、軌道上物体からのガス噴出や状態の変化、それに伴う軌道の変化、新たな浮遊物体の発生を監視し、その発生原因や起源、更に将来の影響を予測する。ただ大きさ10㎝以下の物体については、大きな破壊力を持つが小さすぎて探知追尾不可能であり、大きな脅威となっている
●衝突の危険を察知した際は関係者に警報を発することになるが、この要領は関係する国や機関や対象物等々により様々であり、しっかりした枠組みが無いのが現状である。

SDS2.jpg●2023年年初にRAND研究所は、「国際的な宇宙交通管理システム:STM:international space traffic management system」構築により、国際的な各種宇宙物体運用者の連携を円滑にし、直面している課題に対応すべきと訴えるレポートを発表し、現状の宇宙物体管理を「非公式で、その場しのぎで、場当たり的で、連携不十分な」状態だと非難し、
●「過去40年以上に渡り、10を超える各種会議やレポートや報告書がSTMの必要性を訴え続けているが、未だに実のある成果が生まれておらず、危機的な事案が発生するまで待っているかのような現状が続いており、世界の宇宙関係者は、直ちに重要な宇宙アセットの安全性確保のために立ち上がるべきだ」と訴えているところ
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18SDS.jpg記事は、このような国際的枠組みやSTMが存在しない難しい環境下で、事態は日々困難度を増しているが、米宇宙軍第18宇宙防衛隊(18SDS)は、今日も日夜その活動を全力で続けていると結んでいます。

頭の下がる思いです。18SDSの皆様の取り組みに感謝申し上げます。また、航空自衛隊の「宇宙作戦隊」との更なる連携に期待いたします

宇宙物体の監視網構築関連
「宇宙監視望遠鏡SSTの米から豪への移設」→https://holylandtokyo.com/2022/10/05/3724/
「衛星を地上観測から宇宙観測用へ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/22/2825/
「国防宇宙戦略の発表」→https://holylandtokyo.com/2020/06/23/629/
「Space Fence1号機が試験運用」→https://holylandtokyo.com/2019/12/17/2845/

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米空軍がパイロットの目を狙うレーダー光線対処 [米空軍]

年間1万件のインシデントが米国の航空関係全体で
米空軍は2017年に対処開始し、第3弾防護装備提供開始
8種類の様々な特殊サングラスや暗視装置を

Laser Eye5.jpg12月1日付米空軍協会web記事が、年々増加する航空機パイロットへのレーザー光線による視覚妨害行為に対処するため、2017年から米空軍マテリアルコマンド内の「Life Cycle Management Center」が「航空機搭乗員の視覚保護プログラム:Aircrew Laser Eye Protection Program」を立ち上げ、8種類の特殊素材のサングラスや暗視装置を「第3弾:Block 3」として提供開始している様子を紹介しています

レーザー光線が社会の様々な分野で利用される中、会議室でのプレゼン用レーザーポインターからコンサート会場での演出を担うレーザー光線装置まで、様々な形態のレーザー光線発生装置が出回る中、飛行場に離着陸する航空機を中心としたレーザー光線での操縦者妨害件数は急増しており、2022年には連邦航空局と空軍捜査局(OSI)集計で9500件もの妨害事案が発生し、飛行安全確保や搭乗員の視力への大きな懸念となっています

Laser Eye3.jpg市販のレーザー発生装置を使用した「いたずら」的な妨害行為でも、特に離着陸時の操縦者への影響は甚大で重大事故につながる可能性があり、更に最近は市販品でも高出力のレーザー光装置が出回り、搭乗員の眼球そのものを傷つけて視力に恒久的なダメージを与えうる懸念も高まっている状況です

軍事的にも、特に中国軍(その実質的配下を含む)が米軍パイロットに対してレーザー光線を照射する事案がかねてから報じられており、2022年には中国軍艦艇から豪州海軍P-8対潜哨戒機に対するレーザー光照射事案も報告されていますが、最近ではフィリピン船舶乗員に中国海軍の下請け組織の様な「海警」(一応は中国沿岸警備隊ですが)艦艇から軍事レベル出力のレーザー光が発射され、フィリピン船舶乗員の視力がしばらく回復しなかった事案も発生しています

Laser Eye4.jpgこのような状況下、「航空機搭乗員の視覚保護プログラム:Aircrew Laser Eye Protection Program」では、「第3弾:Block 3」として8種類のレーザー光から視覚を守る眼鏡や搭乗員用ヘルメットの一部であるバイザー、夜間暗視装置用の特殊ゴーグル、更に敵攻撃時に目を保護する防弾眼鏡など8種類の新装備を提供開始し、2020年代中に42000セットを部隊に提供する計画となっているようです

Laser Eye2.jpgまた空軍「Life Cycle Management Center」で「第3弾:Block 3」装置の開発に携わる関係者は、最新のレーザー技術を情報機関等と連携して収集し、搭乗員の脅威となるレーザー光の変化&進歩を防護具の要求性能に付加するとともに、使用する搭乗員の声を防護具仕様に反映するように努力していると語っています

また同開発担当者は、「我々は高性能サングラス業界に身を置いているようなものであり、新たな脅威源を見聞きすれば、眼鏡面に新たな塗料や色彩薬を配合して防御力向上に努めているが、専門的知識を持つ者は限られており、少数精鋭で米軍を支えている気概で取り組んでいる」

Laser Eye7.jpgまた「最近はレーザー光線だけでなく、地表面近くを飛行する作戦機やヘリコプター搭乗員用に、敵攻撃による弾丸や破片からの視力の防御(ballistic protection)や、スポーツ用サングラスのように目全体をカバーする滑らかな曲線を描く曲面サングラス形状を追求しつつ、素材や加工法を見直してコスト低減にも力を入れている」と説明しています
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日本でも、レーザ光による空港周辺や離着陸経路上での航空機への妨害行為のニュースを見聞きしますが、思い付きのいたずら行為の場合もありましょうが、既に日本国内で活動している不法分子や活動家の仕業とも考えられましょう。

Laser Eye6.jpgハイテク装備である航空機(水上艦艇を含む)の脆弱性を突く手法で、身近な脅威として認識する必要がありますし、搭乗員の視力防護具開発に「cheaper, lighter, work better, more comfortable to the aircrew」の精神で取り組む部署も必要でしょう。こういった分野は民生用にも需要があると思うので、西側全体で取り組めばよいと思いますが・・・

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