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創設75周年を機に米空軍トップとOB代表メッセージ [米空軍]

Brown空軍参謀総長が米空軍協会会議で
米空軍協会会長の元在日米軍司令官Bruce Wright氏も

Wright4.jpg9月18日に創設75周年を迎えた米空軍(1947年、当時の米陸軍航空部隊が独立)に関し、米空軍協会会長の元在日米軍司令官Bruce Wright氏(退役空軍中将)がDefense-Newsに寄稿を行い、Brown空軍参謀総長による米空軍改革の方向性を紹介するとともに、Brown大将が語った内容から現役が言いにくい部分について、Wright会長が空軍OBとして改めてお願いする形で訴えています

就任時から「変化しなければ敗北する」とのスローガンを掲げて改革に取り組むBrown空軍参謀総長が考える改革の方向性は、75周年当日に開催されていた「米空軍協会Air, Space & Cyber conference」での同大将講演からエッセンスをWright会長が箇条書きしたものですが、Wright会長は特に最後の3点(予算確保、空軍規模の拡大、飛行訓練時間確保)を強調しているように感じました

Wright5.jpg現在の米空軍の目指す方向や課題を、短くまとめたエッセンスとも考えられる内容となっているので、あくまで「米空軍側の主張」で、「舌足らず」な内容であることには承知の上でご紹介いたします

Brown大将が述べた空軍のDNAや文化にすべき事項
●Mission command
 任務目的は明確であるべきで、曖昧であってはならない
●Force generation
 米空軍部隊が、どのようにローテーション派遣され、どのように世界各地に展開するかをより明確に説明することで、地域戦闘コマンド司令官や国防省指導者に、政策や決定への影響をよりよく理解してもらう

Brown.jpg●Agile combat employment
 今後予期される本格的な敵との戦いにおいては、設備の整った大規模基地を拠点として利用可能とは想定しがたいことから、設備不十分で分散された場所からの作戦遂行に備えなければならない
●Multi-capable airmen
 現在の教育訓練モデルは工業化時代に形成されたものであり、訓練時間を短くすべく職務範囲を狭めるものとなっている。残念ながらこの方式は、職務の専門化を極端に進め過ぎている。「より機敏で決定的な部隊」を目指し、より多様な能力を保持する空軍兵士を目指すべきである

●Looking like the joint force
 米空軍は航空団レベルに至るまで、異なる組織編制の米軍他軍種とより一体となって行動できるように対応する

米空軍が国家にお願いしたい事項
Wright.JPG●米空軍が、少なくとも地上軍や海軍と同様のパワーを確保するため、軍全体でバランスの取れた投資配分を確保しなければならないが、現在はそうはなっていない。空軍省に配分された予算の実に2割が、空軍を通過するだけで他省庁に流れているのが現実である

●米空軍はライバルを打ち負かす能力だけでなく、圧倒的数の敵に圧倒されないだけの規模を確保しなければならない。最も性能の良い航空機を保有していても、数が少なければ敗北する。米空軍は能力だけでなく、十分な規模を確保して戦いを抑止しなければならない

●米空軍は実際戦うように訓練する必要があり、例えばパイロットには、最高の操縦者でいられるような飛行時間を与えなくてはならない。ところが最近、飛行時間は削減されており、必要な訓練時間を得ていない
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Wright3.jpg「設備の整った大規模基地を拠点として利用可能とは想定しがたいことから、設備不十分で分散された場所からの作戦遂行に備えなければ」や、「多様な能力を備えた兵士の育成」は、これまでもご紹介してきたところですが、

「どのようにローテーション派遣され、どのように世界各地に展開するかをより明確に説明」に関しては、国務省側と意見の食い違うことが多かったからでしょうか?

航空自衛隊の皆様には、西太平洋に展開基盤を求める米空軍が「設備の整った大規模基地を拠点として利用可能とは想定しがたい」と考えているのですから、「戦闘機命」的な思考を改めて考え直す必要があると思います

「ウクライナで戦闘機による制空の時代は終わる」
https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

くたばれ戦闘機命派
「広中雅之は対領空侵効果に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-18-1
「小野田治も戦闘機に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-05
「織田邦男の戦闘機命論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-06
「F-3開発の動きと日本への提言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
「戦闘機の呪縛から脱せよ」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
「大局を見誤るな:J-20初公開に思う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-02

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F-35エンジン問題にGE社とP&W社が異なる主張 [亡国のF-35]

共に2016年からAETPエンジンを開発するライバル同士
GE社がF-35エンジン換装を強く主張するも
P&W社はAETPへの換装に反対で現F135改修を主張

AETP XA-100 2.jpg9月12日、2016年から次世代戦闘機用エンジン開発計画AETP(Adaptive Engine Transition Program)にそれぞれ取り組んでいる2社(GE社とP&W社:米空軍と契約)の一つGE Aviation社が、テネシー州にある米空軍の開発施設(AEDC)で3月から8月にかけ実施していた同社製XA100エンジンの性能確認試験をクリアし、契約が求める大きな関門を突破し本格的な開発製造段階に向けた大きな一歩を達成したと発表しました

AETP 5.jpgAETPに関しては繰り返しご紹介しているように、現在使用されているF-35用エンジンF135(Pratt & Whitney製)のエンジンブレード耐久性が想定より低く、機体稼働率低迷と維持整備コスト増の大きな要因となっていることから、次期制空機NGAD用に開発中のAETPエンジンをF-35にも応用開発して搭載するか、現F135エンジン改修を行うか、現F135エンジンの維持整備体制等を強化して「しのぐ」か等の選択を迫られている状態にあり、本日もF-35エンジン問題対処関連でご紹介しているものです

AETP XA100.jpgGE社は発表声明で、「わが社はAETPエンジンXA100の設計開発段階に進む準備を完了し、F-35に2020年代末までに同エンジンを提供する準備を確立した」、「この試験は、本格生産AETPエンジン変わらない規模重量の試作エンジンに対して行われ、F-35(Block 4)に対し、現装備エンジンより航続距離3割増し・推力2割推力増しのエンジン提供が可能なことを示した。わが社のXA100は米空軍の目指す性能を満たした唯一の戦闘機エンジンとなった」と自信を示しました

AETP XA-101.jpgこのGE発表に対し、同じくAETPエンジン開発を行っているPratt & Whitney社は、同社のAETPエンジン(XA101)開発は計画通り進んでいるとの声明を発表すると同時に、AETPは開発の本来目的である次世代制空機NGADへの搭載が最適であり、F-35への搭載は推奨できず、F-35のP&W社製F135エンジン問題に対しては安全リスクや価格から、F135改修案(EEP:Enhanced Engine Package)が最適だと主張しています

以下では、GE社とP&W社の主張の違いをご紹介
(論点はかみ合っていませんが、各種報道より)
 
GE社の主張
AETP XA-100.jpg●AETPエンジン(XA100)搭載により、航続距離30%増、推力20%増以上の性能向上得られ、また機体への電力供給余裕も生まれて、対中国等の想定環境に必要な能力提供が可能となる
●単発エンジン機であるF-35のエンジン換装に関し、安全リスクを指摘する意見があるが、同じ単発エンジン機で世界的ベストセラーの戦闘機F-16でも、当初P&W社製だったエンジンを、後のバージョンでGE製に換装した経験もあり、問題がないことを示している

P&W社の主張
f135 EEP.jpeg●F135エンジン改修案(EEP:Enhanced Engine Package)は、最も迅速に、費用対効果良く、低リスクでF-35(Block 4)の要求性能を提供でき、同時にライフサイクルコストを5兆円抑制する案である
●単発エンジン機であるF-35に、今になってエンジン換装を行うのは極めて安全上のリスクが高く、かつ高コストである。また垂直着陸型F-35BにはAETPは搭載できない。(問題はあるが)F135エンジンは既に100万時間の飛行実績を重ねた頼れるエンジンである。
●このようなエンジン換装を持ち出すことは、F-35導入決断した同盟国等との関係にダメージを与えることになる

Kendall SASC3.jpg注・・・AETPコストはKendall空軍長官によれば、AETPをF-35に搭載するには開発費等初期投資とエンジン調達費に約8000億円必要で、F135エンジン改修EEPオプション費用の3倍で、ライフサイクルコスト換算だと4兆3000億円も現エンジン改修より高価
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F-35エンジン問題をしつこく取り上げているのは、米空軍を中心とした米軍予算への影響が極めて大きいこともありますが、P&W社も持ち出している「F-35導入決断した同盟国との関係へのダメージ」が気になるからです。

F-35 Singapore6.jpgこのままだと、F-35導入機数で米国に次ぐ機数になりそうな日本への影響が気になるからです。「もう、F-35のことを取り上げないでくれ・・・」とのコメントを頂くことがありますが、日本の限られた防衛予算を考えると、F-35への投資が極めて大きな負のインパクトを与えることは、コメントされた方ご自身が一番わかっていらっしゃると思います

引き続き生暖かく「亡国のF-35」を見ていきたいと思います。

F-35のエンジン問題
「AETP採用なら調達機数削減!覚悟?」→https://holylandtokyo.com/2022/09/13/3644/
「AETP採用しないと産業基盤崩壊訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/08/24/3562/
「空軍長官:国防省に下駄預ける」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/
「空軍長官:数か月で決着すべき」→https://holylandtokyo.com/2022/05/26/3260/
「上院で議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/

次期制空機NGAD用のAETPエンジン開発
「プロトタイプ開発契約に機体メーカーも」→https://holylandtokyo.com/2022/09/01/3581/

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米海軍と海兵隊が気候変動対処演習を強化 [Joint・統合参謀本部]

今夏に影響大なアジア太平洋対象の机上演習を実施
5月に発表の気候変動対処戦略を検証
米軍の中で海軍海兵隊が最も影響を受けると危機感

Navy Climate Action.JPG9月7日付Defense-Newsは、同日開催のイベントで米海軍施設環境担当次官補が、気候変動がもたらす海面上昇や干ばつや大型台風などの異常気象に対する危機感から、今年5月に発表した米海軍省の気候変動対処戦略「Climate Action 2030 strategy」を検証すべく、今夏に米議会や専門家や(恐らく)同盟国も交えアジア太平洋を対象とした机上演習を実施した教訓などを断片的ながら語ったと紹介しています

米海軍省の「Climate Action 2030 strategy」は、バイデン大統領による大統領令「通称:Tackling the Climate Crisis at Home and Abroad」が示した「気候変動は、我々の時代の最も大きな不安定要因の一つだ」との危機認識を受け、国防省が2021年10月に発表した「気候変動対処プランCAP(Climate Adaptation Plan)」に基づいて作成されたものと位置付けられます

Navy Climate Action2.jpg今夏にDCの「Marine Barracks Washington」で実施された机上演習には、米海軍海兵隊関係者のみならず、米議会、国防省、他政府機関、シンクタンク、産業界、非営利団体等々も参加した模様で、気候変動問題への対応が米軍や国防省の範囲では対応困難であることを示しています

演習で得られた成果や教訓としてMeredith Berger海軍次官補は、関係者間で、気候変動が任務遂行にどのような影響を与え、関係機関の協力により影響がどのように緩和できるかを共有できたことを上げ、更に、全体に影響を与える単一障害点(SPOF:single point of failure)を特定することや、関係する事項の計画段階から気候変動予想を組み込んでおくことの重要性等を上げています

Navy Climate Action3.jpg特に同次官補は、関係者間のパートナーシップの重要性を強調し、関係者の様々な視点を持ち寄ることで、様々な兵站上の懸念事項を浮き彫りにできたと、7日のイベントで語っています

5月に発表した米海軍省の対処戦略では、「我々は気候変動危機に狙われている:are in the crosshairs of the climate crisis」と、米軍の中で最も影響を受けるのが海軍と海兵隊との危機感が強く示され、Norfolk海軍基地やParris Island海兵隊基地などが米本土では海面上昇や風水害の影響を受ける高リスク拠点として挙げられているようです

また記事は、アジア太平洋地域を対象とした夏の机上演習シナリオには、台風に襲われ被害を受ける同盟国対応などが含まれていたと伝えています
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Navy Climate Action4.jpgこの夏にパキスタン国土の1/3が被害を受ける大水害は発生するなど、気候変動の安全保障環境への影響度は目に見えて大きくなっています。

ご紹介できたのは、米海軍と海兵隊が危機感を持ち、広く関係者を集めて夏に机上演習を行い、関係者の協力が重要だとの教訓を得た等々の部分的内容ですが、ここ最近の日本で見られる豪雨等から見ても、「今そこにある危機」になりつつあると考えるべきでしょう

「Climate Action 2030」の現物32ページ
https://www.navy.mil/Portals/1/Documents/Department%20of%20the%20Navy%20Climate%20Action%202030.pdf

2021年10月の国防省対処指針発表
「米国防省が気候変動対処構想発表」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/
「米空軍が世界中の作戦天候予報にAI導入推進」→https://holylandtokyo.com/2022/07/19/3385/ 

排出ゼロや気候変動への取組み関連
「米陸軍が前線での電力消費増に対応戦略検討」→https://holylandtokyo.com/2022/04/25/3138/  
「米空軍が航空燃料消費削減を開始」→https://holylandtokyo.com/2022/02/16/2691/
「米国防省は電気自動車&ハイブリット車導入推進」→https://holylandtokyo.com/2021/11/15/2423/
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holylandtokyo.com/2020/09/25/487/
「英空軍トップが熱く語る」→https://holylandtokyo.com/2021/12/03/2474/
「英空軍が非化石合成燃料でギネス認定初飛行」→https://holylandtokyo.com/2021/11/19/2444/
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07

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10月伊空軍トップが来日し次期戦闘機協力協議へ [安全保障全般]

Defense Newsにイタリア空軍参謀総長が語る
英伊スウェーデン開発の将来戦闘機とF-2後継機の協力
微妙な技術協力範囲の調整が重要と示唆
欧州での次期戦闘機開発の一本化の可能性も

Goretti.jpg9月22日付Defense-Newsが、10月に日本の招待で来日予定のLuca Gorettiイタリア空軍参謀総長へのインタビュー記事を掲載し、英伊スウェーデンが共同開発中の次期戦闘機TEMPEST(FCAS:Future Combat Air System)計画と、航空自衛隊のF-2後継機開発における技術シェア可能分野を話し合う機会にもなるとのコメントを紹介しています

欧州の次世代戦闘機開発は、共に2018年頃からスタートした、英伊スウェーデンによるTEMPEST(FCAS)計画と、独仏スペインのFCAS計画がありますが、日本は三菱製の国産F-2支援戦闘機の後継機開発に英国との協力を模索して、日英企業間のエンジンやセンサー開発協力に「のろし」を上げているところです

Tempest3.jpg更に7月の英国Farnborough航空ショーで英国防相が、英国イタリア日本で次期戦闘機に関する「joint concept analysis」を進めており、年内に協力して何が出来るかを取りまとめることになっていると語っていましたが、この協議の一環と考えると、イタリア空軍参謀総長の来日とインタビュー発言が結びつきます

以下では、記事からGorettiイタリア空軍参謀総長の言葉をご紹介しますが、欧州と日本での運用環境や脅威環境の違いや、技術をオープンに出来る範囲など、協力関係の根本にかかわる重い課題が残されていることが示唆されています。

インタビューでイタリア空軍参謀総長は・・・
Goretti2.jpg●10月に航空幕僚長の招待を受け訪日するが、共通のプログラムに関し、ビジョンを共有し、ビジョンの共通しているところを確認する機会になろう。日本は彼らのF-X計画(F-2後継機計画)に導入可能な技術を、TEMPEST計画から得ることが可能になるかもしれないので、我々それぞれの軍需産業が何が何時出来るかについて、理解を深めることになろう
●(日本がTEMPEST計画に参画する可能性もあると示唆しつつ、)仮に日本のような国がTEMPEST計画に加われば、関係国それぞれが持つ(技術の)現実を知る良い機会になるだろう

Tempest2.jpg●(ただし、)我々はNATO諸国として、地中海や欧州がメインの焦点であり、FCAS計画(TEMPEST計画の別称)はNATOの安全保障規定に違反しないよう、技術交換に関し厳格に様々な側面から管理されている。
●NATOと日本はそれぞれに異なった戦略上の関心を持っていることから、専門家により如何に作戦コンセプトを共有して安全に技術情報協力が行えるか協議を進めている

欧州での次期戦闘機開発について
●(英伊スウェーデンとは別に、仏独スペインも次世代戦闘機開発計画を進めているが、仏Dassault社と独Airbus社の主導権争いで紛糾している状況に関連し、)TEMPEST計画と仏独チームの開発計画が合体する可能性はまだ残されていると思う。

Goretti3.jpg●戦闘機開発は巨大な投資を必要とし、単一国では行えない。欧州各国は投資コストを抑えたいと思っており、トーネードやユーロファイターの時と同じようなことが起こる得る。
●仏独は異なる道を進んでいるが、欧州で2つのプラットフォーム開発を同時に進めることは経済的に持続可能ではない。各国が要求事項を取りまとめ、一つのプラットフォームにまとまる可能性は十分あると思う
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9月上旬まで豪州北部で行われた対中国を強く意識したPitch Black演習には、はるばる欧州から英仏独蘭4か国から戦闘機が参加しましたが、戦闘機開発と言う産業政策までを含む大きなお金の動くプロジェクトとなると、欧州とアジアの間には、まだ越えなければならない大きな壁があることを、イタリア空軍参謀総長の発言から感じました(邪推ですが・・・)

Tempest.jpgウクライナ関連で、欧州諸国は米国との関係も無視できないでしょうから・・・・。考えれば考えるほどハードルが高そうな気がしますが・・・

同参謀総長は1962年5月生まれの60歳で、2021年11月から同職についており、どれだけ任期が残っているのかわかりませんが、自国も参画している戦闘機プロジェクトに関し、他プロジェクトとの「合体」の可能性を示唆するとは、お国柄の違いというか、自由と言うか、日本での発言に注目(期待)したいと思います・・・。誰も注目せず、報道されないでしょうけど・・・。

英国の戦闘機関連話題
「2027年までにデモ機を作成発表」→https://holylandtokyo.com/2022/07/22/3480/
「英国がTyphoonレーダー換装推進」→https://holylandtokyo.com/2022/06/10/3303/
「英空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2021/05/19/1493/
「英国の138機F-35購入計画は多くて60-72機へ!?」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/

欧州の戦闘機開発
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2

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バーチャルでMQ-25がE-2DやP-8とのISR任務連携成功 [Joint・統合参謀本部]

約1年ぶりに米海軍無人給油機MQ-25をご紹介
昨年FA-18、E-2D、F-35Cへの空中給油試験に成功
2025年の初期運用態勢IOC確立めざし

MQ-25 6.jpg米海軍の無人空中給油機MQ-25に関しボーイング開発担当責任者が、今年5月に米海軍や空軍関係者約100名に対し、バーチャル環境でMQ-25がFA-18やP-8やE-2Dからの指示を受けつつ、ISR任務を遂行可能なことを披露していたと明らかにした、と9月16日付Defense-Newsが報じました

MQ-25は米海軍が空母に初めて搭載予定の無人機で、構想検討当初の2014年頃には無人攻撃機が想定されていましたが、2016年には空中給油主任務で開発が始まった機体で、2021年6月にFA-18、8月にはE-2C早期警戒機、そして9月にはF-35Cへの空中給油試験に成功し、12月には空母ブッシュで甲板上取り回し試験の第1弾を行って2025年の初期運用態勢IOCに向けた準備が進んでいます

MQ-25 refuel.jpg米海軍とボーイングは、まず空中給油機としての空母運用を確立することを第一目標としていますが、ボーイング内ではISR任務や更なる任務、他機との連携に向けた技術成熟の試みが並行して行われており、そのアピールの一環として「5月」に実施のデモ披露会の様子が今ごろになって公開されてたようです。なぜ4か月遅れの情報公開なのかは不明です

5月に4日間に渡り約100名の米海空軍関係者に披露された「virtual demonstration」では、ボーイングが製造するFA-18シミュレータ実物を披露会場に持ち込んで、MQ-25との連携や他機とMQ-25の連携飛行の可能性を証明して見せたようです

バーチャルデモの概要
MQ-25 E-2D.jpg●空母から空母管制装置の指示に従って離陸後、指定された地点まで飛行したMQ-25は、その後飛行中のFA-18やE-2D早期警戒機やP-8対潜哨戒機にから飛行指示や任務指示を受ける
●FA-18等からMQ-25への指示には、ISR任務飛行に関する飛行ルートや飛行諸元、飛行制限や禁止区域情報等が含まれた。

MQ-25 F-35C.jpg●指示を受けたMQ-25が収集したISR情報は、リアルタイムで飛行中のFA-18等と共有され、必要に応じてFA-18等から追加の任務指示を受け作戦を遂行した。任務終了後はFA-18等の指示により空母周辺まで飛行し、空母への着艦時は空母管制室からの管制を受けた
●MQ-25と空母や他機との通信には、「周波数形式が特定困難な通信方式:waveform-agnostic communications architecture」が使用可能であることが立証されていることや、対潜哨戒機P-8とMQ-25間の連携は300NM離れていても可能であることなどがデモでは紹介された

ボーイングのBD Gaddis開発担当責任者は・・・
●空中給油機としての運用態勢確立予定の2025年までを見据えた計画を優先して進めているが、同時にISR任務や他の任務へのMQ-25の応用までを視野に入れた技術成熟にも着手している
MQ-25.jpg●例えば、MQ-25操縦権限を空母から他機に移管する際のサーバーセキュリティ確保や、任務遂行プランの自動立案、更には他の米海軍アセットとの連携や相互運用性強化に向けた技術成熟にも取り組んでいる

●我々はこれまでの開発経緯を踏まえつつ、南シナ海での戦略的飛行任務を見据えた、開発要求性能を超えた応用にも目を向けて取り組む必要があると考えている
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MQ-25 F-35C 2.jpg記事は冒頭に「virtual demonstrationでFA-18等との連携ISR任務遂行が可能なことを証明した」と記載されていますが、「P-8と300NM離れていても連携可能」や、「周波数形式が特定困難な通信方式」が機能するとの話など、バーチャルでなさそうな話も含まれており、約100名への披露がFA-18シミュレータを使用した点がバーチャルだったのかもしれません・・・

いずれにしても、MQ-25は米海軍で数少ない順調なプロジェクトそうで、何と言っても空中給油機は対中国に非常に重要なアセットですので、生暖かくフォローしてまいります

MQ-25関連の記事
「F-35Cへの給油に成功」→https://holylandtokyo.com/2021/09/17/2250/
「着艦誘導装置JPALS導入中」→https://holylandtokyo.com/2021/09/10/2210/
「FA-18への給油に初成功」→https://holylandtokyo.com/2021/06/10/1897/
「MQ-25操縦者は准尉で処遇」→https://holylandtokyo.com/2021/01/04/290/
「試験用空母確保難で3年遅れか?」→https://holylandtokyo.com/2020/06/18/626/
「空母艦載機の2/3を無人機に」→https://holylandtokyo.com/2021/04/06/100/
「MQ-25地上から初飛行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-20
「2019年6月の状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-04
「MQ-25もボーイングに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-01-1
「NG社が撤退の衝撃」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-29-1
「提案要求書を発出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-13
「MQ-25でFA-18活動が倍に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-03
「MQ-25のステルス性は後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-27 
「CBARSの名称はMQ-25Aに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-17
「UCLASSはCBARSへ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-02
「UCLASS選定延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-05-1

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B-21爆撃機の初披露は12月第1週に [米空軍]

初飛行は2023年になると米空軍調達担当次官が
1988年11月のB-2初披露以来の新型爆撃機お披露目へ

B-21 5.jpg9月20日、米空軍省のAndrew Hunter調達担当次官が記者団に対し、細部は検討中だがB-21次期爆撃機の初披露を今年12月の第1週に行うと明らかにし、初飛行については2023年予定と語りました。

米空軍発表を受け、開発製造を担当するNorthrop Grumman社(B-2爆撃機も担当)は声明で初飛行時期について、現在実施中の地上テストの結果次第だと述べるにとどめていますが、B-2爆撃機のケースでは初披露が1988年11月で、初飛行は翌年1989年7月だったと記録されています。また同社声明で、現在6機のB-21爆撃機が加州Palmdaleの工場で製造中だとも説明しています

Hunter AF.jpg同社5月のプレスリリースでは、B-21の一番機は振動試験などの機体構造強度を確認する一連の第1段階試験を終了し、エンジン試験、サブシステム試験、ステルス塗装の確認を今後行うと明らかにしていたところです

更に加州Palmdale工場で各種速度で地上滑走テストを行った後、同工場から同じ加州内の各種新装備品テストのメッカEdwards空軍基地に「飛行移動」し、正式な初飛行試験はEdwards空軍基地離陸で行われる予定だと既に明らかにされています

B-21 B-2.jpgB-21の最初の配備基地は、現在B-1B爆撃機の母基地であるサウスダコタ州Ellsworth空軍基地で、その後ミズーリ州のWhiteman空軍基地(B-2配備中)とテキサス州のDyess空軍基地(B-1B配備中)に順次配備される予定だそうです

導入機数については、機種選定時には100機程度と見積もり前提が設定されていましたが、その後米空軍内からは、「最低でも100機」、「170機は必要だ」「最低でも170機だ」等々と年々要求機数が膨らんでいる状況です。
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B-21 8.jpgB-21爆撃機開発は、他の装備品開発と比較して順調に推移しており、2021年6月、当時の爆撃機部隊GSC司令官が「なぜ遅れないのか」と報道陣から問われ、「要求性能の変更を拒否しているからだ」、「必要なことに焦点を当て、ゴールすることに注力している」と答えていたことが思い出されます

2019年7月末に時の空軍副参謀総長が「開発順調なB-21爆撃機の初飛行は、今日から863日後の2021年12月3日予定だ」と豪語したこともありましたが、その後2021年前半には「機体を初披露後、2022年の中頃に初飛行予定」との話になり、更に今年5月20日に米空軍報道官が一切の理由説明なく「B-21爆撃機初飛行の予定は来年2023年となる」と明らかにし、様々な噂が飛び交ったところです

Warden2.jpgそれでも2022年4月末には開発製造企業Northrop Grumman社CEOが、「空軍から(優秀な開発ぶりが評価され)報奨金約80億円を授与されることになった」と自慢していたくらいに安定した道のりを歩んできたB-21ですので、「12月第1週」のお披露目に期待したいと思います

なお、価格については、1機550億円以下が機種選定時の設定でしたが、製造企業が「報奨金」を授与されるくらいですから、物価上昇分の範囲で収まっているのだと推定します

B-21爆撃機の関連記事
「初飛行は2023年にずれ込み」→https://holylandtokyo.com/2022/05/23/3269/
「製造企業CEOが80億円ゲットと」→https://holylandtokyo.com/2022/05/16/3202/
「無人随伴機も鋭意検討中」→https://holylandtokyo.com/2022/03/24/2938/
「6機製造中」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711/
「B-21を5機製造中」→https://holylandtokyo.com/2021/09/27/2270/
「下院軍事委員長も絶賛」→https://holylandtokyo.com/2021/06/23/1896/
「格納庫写真から大きさを推定する」→https://holylandtokyo.com/2021/04/07/101/
「初飛行は2022年半ばか」→https://holylandtokyo.com/2021/01/20/302/
「開発状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「2021年12月3日初飛行予告」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-29
「初期設計段階終了」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-30
「米空軍の爆撃機体制計画」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2
「2017年3月の状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-20
「B-21に名称決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-27
「敗者の訴え却下」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-17
「敗者がGAOに不服申し立て」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-07
「結果発表と分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-28

米空軍爆撃機の話題
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/
「B-52から重力投下核任務除外」→https://holylandtokyo.com/2020/01/29/877/
「B-1早期引退でB-21推進?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-19
「B-1とB-2の早期引退に変化なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-19
「2018年春時点の爆撃機構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2

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米空軍が「ゴールを動かして」KC-46の運用態勢確立を宣言 [米空軍]

RVSやブーム固着の1級不具合改善が未完のまま
運用制限を課したままでA-10除き給油可能と宣言
ネットワーク中継機としても初任務成功発表

KC-46A3.jpg9月16日米空軍がKC-46A空中給油機に関し、A-10攻撃機への空中給油を除き、RVS運用制限などが残るものの、B-2戦略爆撃機への給油任務など米戦略軍関連の任務を含む全ての任務に関し、全世界で任務遂行可能状態になったと宣言しました。

開催中の米空軍協会主催の航空宇宙サーバー会議で、19日に米空軍輸送コマンド司令官Mike Minihan大将が記者団に明らかにしたもので、RVS(Remote Vision System)とは別の第1級不具合である給油ブームの柔軟性欠如(stiffness)問題でA-10への給油承認が出せていないが、RVSなど他の不具合については運用制限をかけ現場の工夫で対処することとして「運用開始宣言」を行うことにしたと説明ています

KC-46 RVS.jpg運用開始宣言の前兆として、砂漠地域での運用態勢検証のためカタールに派遣されていた4機のKC-46が8月29日に、作戦任務に向かうF-15Eストライクイーグルに空中給油を行い、初の実戦任務機への給油を行ったと9月中旬に発表され、「前のめりだな・・・」と思っていたところでした

まんぐーすは、RVSの新バージョンRVS2.0が完成して改修完了する2024年以降に、戦闘任務への投入を含む「運用態勢確立宣言」を行うものだと関係幹部のこれまでの発言から認識していましたので、「ゴールを動かされた」「キツネにつままれた」ような気分で驚きましたが、米空軍が自ら「リスク」を背負って「運用開始宣言」を行ったのですから、これ以上グジグジいうのは止めておきましょう。

KC-46 RVS2.jpg加えて8月29日のF-15Eへの給油任務時には、KC-46に搭載されたネットワーク中継装置「Military Data Network communications system」が初めて作戦任務に投入され、地上の航空作戦センターと空中の作戦機との間のデータ通信を中継するノードの役割を果たして、戦場参加者の状況認識向上に大きく貢献したとも発表されています

Minihan司令官は記者団に対し
●私はKC-46が現在も抱える問題の解決に関し、ボーイング社と厳しく真正面から向き合っており、課題解決の質・時間管理・コストについて一切妥協していないし、最短で課題を解決するようプッシュし続ける。しかし、能力を備えた給油機が手元にあるなら、その活用をなぜためらう必要があるのか?
Minihan.jpg●仮に明日の戦いに敗北することがあれば、10年後のKC-46部隊はあり得ない。私には今KC-46が必要なのだ。私はKC-46の能力に100%確信を持っている。同機の飛行や修理や支援に当たる者は同機を愛しているし、給油を受けた側も同じであり、訓練のために展開した世界中の地域戦闘コマンド司令官も同機のファンになってくれている。

●(RVSやブーム以外にも、)貨物搭載管理ソフトの不具合で飛行中に貨物固定フックが外れる等の不具合があり制約があるが、運用制限状態でも任務遂行可能宣言を行うことが可能だと考えている。現場部隊は暫定対処手順を編み出しており、現場の手順書TTPに注意書きを加えること等で対応していく
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米空軍や航空自衛隊の対中国作戦環境を考えると、空中給油機が極めて重要であることから、KC-46については延々とフォローしてまいりました。

Minihan3.jpg米空軍は計179機を同機を購入予定で、既に60機以上を受領済とのこともあり、またKC-135やKC-10の老朽化や維持整備費高騰が著しいことから、「ゴールを動かしての運用態勢確立宣言」は正に「苦肉の策」と言えましょう。

それでも管轄する空軍輸送コマンド司令官が、リスクを覚悟の上で前線の兵士に対し、逃げも隠れもせず「私には今KC-46が必要なのだ」と正々堂々と述べることで、部隊運用に勢いも出ると期待しています

ちなみにMinihan司令官は、本来32個の勲章を授与されており胸につけることが可能なようですが、前職の太平洋軍副司令官時代に、個人功績に関するものは装着せず、大規模部隊指揮官として、部隊表彰を受けたことを表す3つのみを着用することにしたそうです。

KC-46などの関連記事
「空軍長官:KC-46の固定価格契約は誤り」→https://holylandtokyo.com/2022/06/06/3323/
「KC-XYZの再検討再整理表明」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/
「RVS改修案に合意」→https://holylandtokyo.com/2022/04/27/3181/
「恒久対策は今も未定」→https://holylandtokyo.com/2022/01/13/2605/
「50機目受領も恒久対策未定」→https://holylandtokyo.com/2021/11/22/2424/
「KC-YもXと同じ対決へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
「KC-46に更に2件の最高度不具合発覚」→https://holylandtokyo.com/2021/06/24/1934/
「F-22とF-35のデータ中継装置を搭載へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/31/1727/
「KC-46空中給油機を一部の任務に投入開始」→https://holylandtokyo.com/2021/03/02/151/
「恒久対策は2023-24年から」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-30
「今度は燃料漏れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-31-1
「やっぱりだめで更に1年遅れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-04
「重大不具合について3月に手打ち!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-21
「空軍トップが新CEOに改善要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

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Pitch Black演習中に6機のF-22も北部豪州基地に [米空軍]

同演習とは別で豪州F-35Aと連携訓練
8月中旬から同演習拠点の豪Tindal基地に約1か月間も
記者団の取材を避け「dynamic force employment」訓練

F-22 RAAF4.jpg9月9日付Defense-Newsは、豪州北部で実施された大規模多国間航空演習Pitch Black期間(8/19-9/8)と重なる約1か月間、ハワイ所属の米空軍F-22戦闘機6機が、同演習とは別枠で同演習拠点基地の一つである豪軍Tindall基地に展開し、豪空軍F-35Aとの連携訓練を行うなど、2018年国家防衛戦略NDSに示されたコンセプト「dynamic force employment」訓練を行ったと紹介しています。

対中国を強く意識したコンセプト「dynamic force employment」は、同盟国や米軍兵士の負担となる米軍戦力の常駐形式ではなく、必要時に緊要なタイミングで大規模戦力を特定地域に投入する戦力運用コンセプトで、敵を抑止することを意識して「戦略的には予測可能だが、作戦運用面では予測不可能な戦力運用:strategically predictable but operationally unpredictable」との「売り文句」で米軍が取り組んでいるものです

F-22 RAAF.JPG米国の対テロから対中国本格紛争対処に向けた体制変換「戦力配置見直し:Force Posture Initiatives又はForce Posture Review」の中で、米国と豪州は「空軍戦力協力強化計画:Enhanced Air Cooperation program」に合意しており、今回のF-22の展開はその大きな協力強化プログラムの一環として、コンセプト「dynamic force employment」を訓練したものと担当の豪州空軍少将が説明しています

8月中旬から9月中旬まで6機のF-22が展開したTindall豪空軍基地は豪F-35Aの配備基地の一つで、Pitch Black演習への参加機約100機の大半が展開したDarwin豪空軍基地から200nm南に位置していますが、同演習用の豪A330空中給油機や米KC-130J給油機もTindallを拠点としたことから、同演習とは別枠で訓練するには好都合だったのかもしれません

F-22 RAAF3.JPGDefense-NewsのPitch Black演習取材チームがF-22派遣部隊への取材を試みたものの実現しなかったようですが、Tindall基地にF-22と豪F-35Aが並んで駐機され、5機のF-22と数機の豪F-35数機が繰り返し離発着していたことから、2機種の相互運用性や連携要領確認を主目的にした訓練が行われたものと記事は推測しています
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2018年に国家防衛戦略NDSが公開された当時は、対中国作戦のキーワードとして、「dynamic force employment」とか「strategically predictable but operationally unpredictable」とのフレーズをよく耳にしましたが、最近はこの言葉をあまり聞きませんねぇ・・・

F-22 RAAF5.jpg最近では米軍OBや専門家が、米太平洋軍には対中国用の軍事費が増額投入されているが、肝心の米軍は4軍がそれぞれ「我が道」を進んで相互支援に消極的で、移動艦艇攻撃能力や弾薬備蓄の不足も20年間変化なく、統合作戦能力向上の証拠はどこにもないと酷評https://holylandtokyo.com/2022/07/06/3396/)するなど、米国防省や米軍あるあるの「コンセプト倒れ」様相を呈している感が漂う状況です。残念ながら・・・

話は戻りますが、ネット上の情報によれば、今回のF-22展開期間に豪空軍パイロットがF-22操縦までやったようです。

豪州主催Pitch Black空軍演習の関連
「7か国空中給油機による外交が花盛り」→https://holylandtokyo.com/2022/09/14//3650/
「シンガポールはA型にも興味」→https://holylandtokyo.com/2022/09//3638/
「ドイツ戦闘機が初参加で日本にも」→https://holylandtokyo.com/2022/08/18/3566/
「豪州KC-30A給油機と空自F-2の給油適合試験」→https://holylandtokyo.com/2022/05/10/3211/

対中国軍事作戦準備に大きな懸念
「酷評:対中国の統合強化はどこへ」→https://holylandtokyo.com/2022/07/06/3396/
「生みの親・太平洋空軍司令官がACE構想の現状を語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/

2018国家防衛戦略関連
「CNASが2018NDSに対案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-14
「CSBAの海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13
「国家防衛戦略:対テロから中露対処へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-01-20

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国防省有志が宇宙での大戦略や民間技術迅速活用求める [サイバーと宇宙]

「2022年宇宙産業基盤状況レポート」で
米国政府に官民をまとめる宇宙大戦略作成求める
日進月歩の民間技術を迅速に大規模に導入可能にすべきと

Space Industrial B4.jpg8月25日付Defense-Newsは、米国宇宙産業界約250名の意見も踏まえ、米国防省や空軍研究所や宇宙軍有志が取りまとめた「2022 State of the Space Industrial Base」の概要を取り上げ、同レポートが4年連続で「米国の官民宇宙活動を束ねる大戦略を早急に定めないと、窮迫する中国に戦略的にも技術的にも2032年頃までに追い越される」との危機感を紹介しています

例えば同レポートでは、国防省や米軍や西側同盟国が、規則に縛られ新技術や新手法導入を遅延させられている官僚機構問題を早期に解決し、米国民間企業で日進月歩で進む技術的進歩を、より迅速により大胆に獲得可能なプロセスを確立する必要があると訴え、

Space Industrial B5.jpg具体的に、少なくとも米宇宙軍は年間予算の20%を宇宙産業界から調達するよう規定すべきだとの昨年2021年レポートの要求を再び記載し、2023年度予算において大きな変化が見られなかったことへの宇宙産業界の落胆が示されているようです。

背景には、前述のように2032年頃までに宇宙分野で中国に追い越されるとの危機感があり、同時に宇宙への関心の高まりから、米産業界では2021年の宇宙への投資額が前年比倍増の約2兆円($15.4 billion)に達し、商用宇宙アセトを活用した画像・通信・分析能力が、ウクライナ侵略でもその実力を遺憾なく発揮している現状があります

SPACE INDUSTRIAL B.jpg米国防省の民間技術迅速導入担当部署であるDIU(Defense Innovation Unit)の宇宙担当部長のSteve Butow氏は、「米国政府としての大戦略は、今後10年と言ったスパンではなく、21世紀全体を見据えたものである必要があり、共通の長期ビジョンのもと、(官民が協力して)望ましい宇宙の将来を達成する道筋を描く必要がある」と訴えています
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繰り返しになりますが、このレポートは国防省DIUと空軍研究所と宇宙軍有志が、最近毎年春開催のworkshop(写真下)に参加した米国軍需産業界関係者約250名の意見も踏まえて取りまとめたもので、その狙いは、「大戦略」の必要性や調達改革を米国政府に対し求め、かつ米議会や米国民に現状を説明して改善に理解を求めるためのものと推測しています

SPACE INDUSTRIAL B2.jpg軍需産業基盤の現状レポートには、国防省がまとめて政府や議会や国民に窮状を訴えるものや、有識者によるものなどさまざまあるのですが、「宇宙軍予算の2割を民間からの調達に充てよ」との具体的な要望が、国防省や米軍有志によるレポートに含まれることに、最近注目を集めるこの分野への理解不足を反省しております

宇宙産業基盤レポートの現物(136ページ)
https://assets.ctfassets.net/3nanhbfkr0pc/3wpHArrpttx99gFk5vfymS/873bf925beb44e0cf30a07170927acf5/State_of_the_Space_Industrial_Base_2022_Report.pdf

米国軍需産業の分析レポート
「中国資本の浸透警戒」→https://holylandtokyo.com/2020/03/27/791/
「2019年世界の軍需産業TOP100」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-23
「2019年版 米国防省軍需産業レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-28
「2018年版レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26-1

ウクライナ侵略が示した民間宇宙能力の重要性
「米宇宙軍の能力向上に民間衛星をまず活用」→https://holylandtokyo.com/2022/07/27/3454/
「第一撃は民間衛星通信会社へ」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「ロシアに迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「ウクライナ侵略最初の一撃は宇宙で!?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/18/2732/

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シンガポールはF-35B導入承認済もA型にも興味 [安全保障全般]

2020年にB型4機導入承認を米政府から得ているが
A型とB型が参加したPitch Black演習でA型も吟味
少佐を長とするチームが機種選定を担当する「若い」組織

F-35 Singapore4.jpg9月6日付Defense-Newsが、2020年に米国防省からF-35B型(短距離離着陸型)の購入承認を得ているシンガポール空軍が、豪州で実施されたPitch Black演習(8/19~9/9)などの機会を利用してA型(通常離着陸型)の情報も収集中で、同国担当幹部が「B型以外を選択するオプションは残されている」と語ったと紹介しています

シンガポールは現在60機の能力向上改修を終えたF-16C/D型を保有していますが、2030年には機体寿命からF-16の退役が始まるようで、少佐(!)をリーダーとする5名のチームで次期戦闘機の選定を進めており、2020年1月に米国製兵器輸出許可の窓口である米国務省から、追加で8機導入オプションが付いた4機のF-35B型機調達許可を得ており、2026年から機体を受領することとなっています

F-35 Singapore5.jpgそんな中ですが、シンガポール機種選定チームリーダーであるZhang Jian Wei少佐が、F-35A型(豪州空軍)とB型(米海兵隊:岩国基地所属)の両方が参加している豪州主催のPitch Black演習を準備段階から精力的に見て回る中で、記者団に具体的な機種選定決定時期については言及を避けつつ「更なる決断は可能になった段階で行う」と述べ、人口570万人ながら「したたかな」小国シンガポールの存在感を示したようです

同国は2020年にF-35B型導入承認を米国から得て、F-35の細部情報へのアクセスが可能になると同時に精力的にF-35細部情報収集を開始し、米軍の他、既に導入を開始している欧州やアジア各国ともコンタクトして、導入準備や「B型以外」のオプション検討を進めて来たようです

F-35 Singapore6.jpg同少佐らはPitch Black演習で、F-35A型とB型がF-15、16、Su-30、Eurofighterなどと共に訓練し、F-35が参加した初の大規模航空作戦演習におけるF-35の「force multiplier」ぶりを豪州空軍や米海兵隊F-35部隊に密着して確認し、併せて維持整備部門ともコンタクトしてF-35導入(型式選定も含め)準備を進めているようです

ちなみに、国土の狭いシンガポールは、米国アリゾナ州Luke空軍基地にシンガポール空軍F-16訓練飛行隊を置いて操縦者等養成していますが、F-35への機種変更に伴い、F-16訓練部隊は2023年にアーカンサス州に移り、Lule基地には機体受領に併せてF-35訓練飛行隊が配置されるとのことです
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F-15SG.jpgシンガポールは東京23区と同程度の面積に約570万人の人口ですが、その国がF-16を60機と最新のF-15を40機、ヘリ70機や輸送機15機、E-2C4機など多様な装備を保有し、空軍13000名程度で運用していることに驚かされます

シンガポール空軍はトップが40代後半で、次期戦闘機選定の実務を少佐がリーダーで行っている「若さ」あふれる国です。

小規模な国で世界最先端を目指すため、社会統制や規律が厳しく、「豊かで明るい北朝鮮」とも表現される国ですが、F-35導入を巡る「身のこなし」からもその「しっかり者感」が伝わってきます

シンガポール関連の記事
「F-35B売却許可」→https://holylandtokyo.com/2020/01/15/866/
「2021年シャングリラ会合中止&過去の同会合」→https://holylandtokyo.com/2021/06/04/1783/

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Pitch Black演習で空中給油機外交が花盛り [安全保障全般]

豪、米、仏、シンガポール、NATO、韓国の給油機参加
韓国以外は他国作戦機に給油して連携強化図る
米KC-130J以外は全てA330 MRTTですが・・・
欧州とアジア諸国の対中国連携の象徴として

A330 Pitch Black.jpg9月8日付Defense-Newsが、8月19日から9月9日の間に豪州北部で実施された大規模空軍演習Pitch Blackに、欧州を含む国から過去最大規模の空中給油機が参加し、他国の参加機に給油を行うなど多国間大規模演習ならでは有意義な訓練が実施されたと報じています

同演習には、主催国である豪州以外に16か国(米英仏独日韓印加蘭NZシンガポール、インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシア、UAE)から約2500名と航空機100機が参加し、うち空中給油機は7か国合計9機(豪2機と英仏NATO韓シンガポールは各1機A330MRTT、米海兵隊2機KC-130)が参加したとのことです

A330 Pitch Black3.jpg7か国から参加した9機の給油機の内、韓国の給油機は自国航空機へのみ給油を行ったということですが、他の6か国給油機は以下に記載するように、他国の参加機に空中給油を行って連携強化を図った模様です。なお給油機は駐機するスペースが不足したことから、北部豪州の豪空軍Darwin基地とTindal基地、更に2000NM離れたAmberley基地に分散して展開したとのことです

参加各国空中給油機による給油訓練実績(記事記載部分)

●NATO給油機A330MRTT(オランダ登録も演習では独が運用)
豪州EA-18G電子戦機とF-35A戦闘機に給油

●シンガポール給油機A330MRTT
豪州F-35Aと米海兵隊F-35B、仏ラファール、英タイフーン、豪州EA-18GとA330給油機へ給油
更にDarwin基地の滑走路一時閉鎖の際に、緊急給油を独ユーロファイターに実施

●仏給油機A330MRTT
シンガポールF-16、インドSu-30、豪州F-35A、豪州C-17輸送機とP-8対潜哨戒機へ給油
●英給油機A330MRTT
仏ラファールと米F-35Bに給油

●米海兵隊給油機KC-130J(岩国所属)
英ユーロファイターに給油

尚記事によると、9機の給油機の内、最大で5機が同時に在空して演習に参加していたとのことです
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A330 Pitch Black2.jpg対中国の戦いでは、第一列島線上や西太平洋の島々にしか西側飛行場がなく、しかも航空戦力を中国のミサイル攻撃に備えて分散運用させる方針であることから、空中給油機の役割は極めて大なるものがあり、本演習での多国間給油訓練は非常に意義深いものであるはずです

そんな重要な訓練にも関わらず、米空軍と日本のみが使用するKC-46A空中給油機が参加していない点が気になり、同時に、改めて西側主要国の大半(米日イスラエルを除く。サウジとUAEも採用)がA330MRTT給油機を採用している現実に気付かされます

KC-46 RVS.jpg米軍戦力依存ではなく、同盟国の力を示す機会なのかもしれませんが、KC-46の重大不具合が未解決で作戦投入許可が出ていない影響かもしれません。日本から参加のF-2戦闘機は、本演習に参加するため豪州A330MRTT給油機にわざわざ日本へ来てもらい、同給油機から給油する訓練までしてもらってやっと本演習に参加している次第ですから。

別の視点で、シンガポール給油機が存在感を発揮している点に注目です。小国ではありますが、国家の柔軟性と現場の努力により、「きらりと光る」ものを見せています

豪州主催Pitch Black空軍演習の関連
「シンガポールはA型にも興味」→https://holylandtokyo.com/2022/09//3638/
「ドイツ戦闘機が初参加で日本にも飛来」→https://holylandtokyo.com/2022/08/18/3566/
「豪州KC-30A給油機と空自F-2の給油適合試験」→https://holylandtokyo.com/2022/05/10/3211/

KC-46のゴタゴタ具合
「空軍長官:KC-46の固定価格契約は誤り」→https://holylandtokyo.com/2022/06/06/3323/
「RVS改修案にやっと合意:完了は2024年以降」→https://holylandtokyo.com/2022/04/27/3181/
「50機目受領も恒久対策未定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-11

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F-35エンジン換装なら調達機数削減示唆 [亡国のF-35]

空軍長官がAETPエンジン導入主張しつつ意味深発言
「AETPは高価なエンジン」「概算で70機分削減だ」
AETP採用しないと軍需産業崩壊発言には「言い過ぎ」

Kendall SASC3.jpg9月7日、Kendall空軍長官がDefense-News主催のパネル討議でF-35エンジン問題について国防省レベルでの早期決断を促すとともに、自身が希望する新エンジンAETPへの換装を選択した場合、F-35用への開発だけで8000億円以上必要なことから、米空軍は概算でF-35調達機数を70機削減する厳しい選択を迫られると語りました

繰り返しご紹介してきたようにこの問題は、現在使用されているF-35用エンジンF135(Pratt & Whitney)のエンジンブレードの耐久性が想定より低く、機体稼働率低迷と維持整備コスト増の大きな要因となっていることから、次期制空機用に開発中のAETPエンジンをF-35に適応開発して搭載するか、現F135エンジン改修を行うか、現F135エンジンの維持整備体制等を強化して「しのぐ」か等の選択を迫られている件です

AETP XA-100.jpg空軍長官はかねてより、高価(F135改修の3倍)だが出力や燃料消費効率が3割近く改善するAETP採用を希望していますが、一方でF-35が米海軍海兵隊や同盟国でも広く採用されていることから、国防省レベルで2024年度予算議論の中で早期決断すべきであり、「いつまでもAETPのF-35適応開発検討に予算を注ぎ込んでいられない」と国防副長官や調達担当国防次官に訴えてきたところです

7日のパネル討議で空軍長官は、「既に数百機のF-35を保有している我々は、高価な開発費が必要なAETPエンジンをどのようにどの程度導入するかを考えねばならない。概算で開発費は70機分のF-35に相当し、新エンジンを導入するには70機少ないF-35で我慢することが求められる」と具体的に語っています

AETP XA-101.jpgAETPのF-35用適応開発費は8000億円強で70機相当なのかもしれませんが、AETP導入でライフサイクルコストが4兆3000億円に膨らむとも報道されており、F135改修案よりも遥かに高額で、これを米空軍内で納めようとすると70機の削減では済まないとも考えられます

また同空軍長官はパネル討議で、8月11日に空軍エンジン開発担当幹部が「AETPへの換装を選択しないと、エンジン関連の軍需産業基盤が崩壊する」と発言して物議を醸している件については、「言い過ぎだ:overstatement」と述べ、軍需産業界に健全な競争環境を維持することは関係者が常々考えていることで、引き続き念頭に置いておく必要がある課題だと述べるにとどめています

AETP XA100.jpg更に次期制空機NGAD用のエンジンAETPプロトタイプ製造契約に関し、それぞれにエンジン試作中のGE 社(XA100エンジン)とPratt & Whitney社(XA101エンジン)に加え、競い合っているはずの機体開発3企業ボーイング、ロッキード、N-グラマンも含むことを8月19日に米空軍が発表して話題になりましたが、この件についてKendall長官は「製造されるエンジン数は、F-35と比較するとmodestだ」と語り、1期数百億円だと同長官が表現したNGADの調達機数が少なくなることを示唆しています
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7日のパネル討議で「70機」という数字を出したKendall空軍長官の意図はよくわかりません。

AETP XA100 2.jpg単に、8000億円以上と言われる高価な開発費のイメージを表現したのか、空軍は70機調達機数を削減してでもAETPを希望すると主張したかったのか、ライフサイクルコストまで含めると跳ね上がる経費を飲み込むため、現在の1763機調達予定数を350-400機削減することへの前振りなのか、同盟国等への迷惑な強制情報提供なのか・・・

益々「亡国のF-35」との表現がふさわしい戦闘機となってきたF-35について、今後とも生暖かく見守っていきますが、世界各国の空軍でF-35を担当させられている有能な働き盛りの皆様が直面する苦悩を思うと、本当に胸が痛みます

F-35のエンジン問題
「AETP採用しないと産業基盤崩壊訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/08/24/3562/
「空軍長官:国防省に下駄預ける」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/
「空軍長官:数か月で決着すべき」→https://holylandtokyo.com/2022/05/26/3260/
「上院で議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/

次期制空機NGAD用のAETPエンジン開発
「プロトタイプ開発契約に機体メーカーも」→https://holylandtokyo.com/2022/09/01/3581/

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エリザベス女王と軍隊を5つの話題で [ふと考えること]

約71年間に渡り英国軍の最高指揮官
WW2中は車両整備員&運転手として従軍
英国王室の女性で唯一の軍隊経験者

Queen Elizabeth5.jpg英国時間の9月8日、英国のエリザベス女王がお亡くなりになりました。1926年4月生まれの96歳で、25歳(1952年2月)で英国女王に即位され、70年に渡り国家元首として、そして英国軍最高司令官としての務めを果たされてのご逝去でした。謹んでお悔やみ申し上げます。

9日付Military.comが「皆さんが知らないだろうエリザベス女王と軍隊にまつわる5つの話」との記事を掲載し、エリザベス女王と軍隊との関りについて取り上げていますので、国家の象徴的な立場にある「ロイヤルファミリー」と国家の基本機能(外交、警察、国防)の一つであるでる国防を担う軍隊との関係を考える機会としてご紹介します。

1.英国軍最高司令官を最も長く務めた人物
Queen Elizabeth6.jpg●英国を統治する最高責任者(The sovereign of the United Kingdom)である女王を約71年間勤められたエリザベス女王は、同時に英国軍最高司令官の任務を同期間果たされたこととなり、英国史上最長期間の最高指揮官在位となった。
●もちろんこの間、英国首相に実質的な采配を委ねながらも、重要な政策や人事の承認を行った

2.英国王室の女性で唯一軍隊経験のあった人物
●第2次世界大戦が激化し、ドイツ軍によるロンドン空襲が激しくなった頃、王室ではエリザベス王女(Princess)をカナダに避難させる案も浮上したが、国王の特別扱いはしないとの方針の下、英国軍組織で市民生活を支援するATS(Auxiliary Territorial Service)に19歳で加わり、車両整備士&運転手として勤務した

3.連合国がドイツに勝利した日は群衆と共に
Queen Elizabeth4.jpg●1945年5月8日、連合国がドイツに勝利した日に、英国民は皆が通りに出て勝利を祝うことになっていたが、エリザベス王女とマーガレット王女はコッソリ宮殿を抜け出し、群衆と共に勝利を祝った
●一応、王女は両親に許可を得ようとしたが、群衆に見つかって騒ぎになることを恐れた両親に反対された。しかし反対を押し切り、コッソリ宮殿から抜け出した

4.軍隊時代の運転手経験でサウジ皇太子とドライブ
●2003年(女王が77歳当時)にサウジのアブドラ皇太子が訪英した際、スコットランドのBalmoral宮殿を女王が案内することとなったが、宮殿の広大な敷地を女王自ら運転して案内した
●当時サウジでは女性の運転が許可されていなかったが、女王は案内や運転間、サウジ皇太子に女性でもしっかり運転できるとの主張を語り続けた・・・と伝えられている

5.米軍の英国統治グレナダ侵攻には激怒した
Queen Elizabeth2.jpg●女王(50代後半当時)とレーガン大統領は極めて親密な関係で、ナンシー大統領夫人も交えてカリフォルニアの牧場に滞在したこともあるぐらいだった
●しかし、1983年に英国が統治する(女王が統治する)カリブ海の島国グレナダに、米軍が米国人学生保護のため介入した「Urgent Fury作戦」に女王が激怒した・・と伝えられている
●作戦は4日間で終了したが、その2年後に同島を訪問した女王は、当時の米国による作戦を指示する声明を発表している
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Queen Elizabeth9.jpg英国王室では伝統的に男子は英軍に勤務することとなっており、ウィリアム王子は陸軍士官学校卒業後、海軍と空軍士官学校でも教育を受け陸海空3軍の階級を保持して、英軍の戦闘ヘリパイロットとして勤務しています。インド洋の沿岸地域パトロール飛行の際、麻薬密輸船を発見して拿捕に貢献したこともあります。

王室から抜けたヘンリー王子も陸軍士官学校卒業後に騎兵連隊に配属され、極秘で2007年末頃からアフガニスタンで相当に危険な前線航空統制官(航空攻撃機や爆弾を最前線の目標に誘導する任務)に従事していたと米メディアにスクープ報道されたことがありました

Queen Elizabeth7.jpgその他、フォークランド紛争にアンドリュー王子が参戦したこともあり、ノブレス・オブリージュ(仏語: noblesse oblige:高貴さには義務を伴う)との言葉が意味する、財産、権力、社会的地位の保持には義務が伴う・・・ことを伝統的に受け継いでいるのが英国王室だということです。ご参考まで

ところで・・・英国国歌「神よ女王陛下を守り給え(God Save the Queen)」は、Queenが「King」に変わったそうです・・・。

日本人なら一度は訪れて頂きたい・・・
「皇室の菩提寺である泉涌寺」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2014-02-27-1

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米空軍が新たなStand-off兵器開発に情報収集 [米空軍]

企業に提案依頼し、9月27日の軍事産業デイに質疑&面談
要求射程距離は非公開で、2030年頃からの調達を目途に
専門家は中射程のJASSM-ERより安価なものと推定

SoAW3.jpg9月1日付米空軍協会web記事が、米空軍が2030年以降からの調達を想定した新たなスタンドオフ兵器導入を目指し、8月23日に企業に対し提案依頼文書を発刊し、9月27日にエグリン空軍基地で実施される軍需産業が集まるイベントで提案企業と議論する計画だと報じました

米空軍が求める射程距離が「非公開」となっている新スタンドオフ兵器は、SoAW(Stand-off Attack Weapon)との名称で、「一つのデザインで多様な作戦運用コンセプトに対応可能で、デジタル設計技術を活用して開発され、仕様が定まった後は複数企業がベンダーとして製造を担当する」との考え方で開発&製造が進められる構想になっています

SoAW.jpg提案依頼文書では、2025予算年度からプロトタイプ製造やデモ試験等を開始し、開発進捗状況を確認しながら2030年から33年ごろに初期調達が行われる予定と記されているようです

提案を希望する企業は、提案SoAWの大きさ、使用するセンサー、推進装置、弾頭、管制装置、飛行制御装置、データリンクとセンサー等の使用周波数帯、機動性、機体とのインターフェイス、更に実証済技術部分と今後要開発部分の区別を提案に含めることが求められ、デジタル設計とオープンアーキテクチャーであることが前提とされています

SiAW.jpg新スタンドオフ兵器開発の背景として、米空軍は対中国を念頭に、様々なWar-Gameやシミュレーションを通じて作戦運用や必要な兵器の分析を進めていますが、膨大な数の攻撃目標を強固な防空網を突破して攻撃する兵器の確保に苦慮していることがあります

スタンドオフ兵器としては、既に配備されている射程1000㎞超の対地攻撃用JASSM-ERや対艦攻撃型のLRASMがありますが、高価であるため大量の目標をスタンドオフ兵器だけで攻撃する数量確保は困難であり、米空軍はステルス機に搭載して「スタンドイン攻撃」する新たな兵器SiAW(Stand-in Attack Weapon)導入検討を5月から3社(L3 Harris, Lockheed Martin, and Northrop Grumman)と開始しているところです

Gunzinger2.jpgこのような状況下での新スタンドオフ兵器開発開始に専門家も「?」な状態で、陸海軍がスタンドオフ兵器導入や開発ばかりに注力していることや、空軍の輸送機からの長射程兵器の投下発射検討を非難して、スタンドオフとイン兵器数の適度なバランスを主張しているMark Gunzinger(ミッチェル研究所・元空軍大佐)氏も、「ミステリアスな計画だ」とコメントしています

それでもGunzinger氏は米空軍のこれまでの動きから、「SoAWは、ステルス機が多数搭載可能な、生存性の高い中射程兵器のニーズを満たすものではないか」、「米空軍は多数存在する目標を攻撃可能な手頃な価格の兵器を求めており、JASSM-ERより(射程は短くても)安価な兵器を追求しているのではないか」とSoAWについて推測しています

米空軍は9月27日の「industry day」において、SoAWに関して公開の場で質疑応答を参加企業と行って情報を産業界と共有し、更に各提案企業と個別面談も行って疑問点を可能な限り解消し、企業側が協力しやすい環境を提供したいと説明しています
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SoAW2.jpgスタンドイン兵器のSiAW検討を5月から8月25日まで実施していたと思ったら、8月23日から今度はスタンドオフ兵器SoAWの検討開始です。様々な検討を行う過程での検討でしょうが、搭乗員の救難救助態勢が不十分な中、安価と言えども「スタンドイン」兵器依存度を下げなければ作戦目的達成は困難との方向でしょうか

鳴り物入りで米海兵隊が出した「スタンドイン戦力で頑張る構想」も、よく読めば、遠方攻撃部隊に敵の位置を知らせる事が主任務になりそうな偵察部隊の色が濃く、対中国における西太平洋地域の現実を突きつけられた気分です

Brown2.jpgそういえばBrown空軍参謀総長が先日インタビューで、「同盟国が我々にとってのスタンドイン戦力であり、そのような状態で米軍がスタンドオフ戦略を追求するとは言えない。我々はスタンドwithだ」との趣旨の発言をしていますが、本音だと思います

スタンドインとスタンドオフ関連の記事
「米海兵隊スタンドイン部隊準備」→https://holylandtokyo.com/2022/08/19/3546/
「米海兵隊のstand-in force構想」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holylandtokyo.com/2020/09/11/478/
「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「Stand-inとStand-offの適切バランスが不可欠」→https://holylandtokyo.com/2020/07/01/562/
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06

Brown空軍参謀総長は言葉を選びつつ
「スタンドwithだ」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/

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無人機ウイングマン機CCAは多様な任務に [米空軍]

NGAD随伴だけでなく、F-35、E-7、KC-46、地上から操縦も
Brown参謀総長が米空軍の話題を広範に語る
同盟国軍は「我のstand-in F」で「我はstand with」と表現
F-35の維持費削減見通しに慎重な表現
対中国での救難救助態勢を再検討中と

Brown4.jpg8月29日付米空軍協会web記事が、シンクタンクAEIによるBrown空軍参謀総長へのwebインタビュを紹介し、「無人ウイングマン機」「ACE構想」「救難体制の再検討」「F-35維持費見積もり」などなど広範囲の話題についてついて断片的ながら語っています

最近は米空軍全体の動きに関し、活発に発言するKendall空軍長官の発言をご紹介する機会が多いのですが、検討途中の段階でも発言してしまう同長官に対し、慎重にワシントンDC勤務者らしく言葉を選んで発言するBrown大将の方が全体像に近いとの見方もできますので、以下では項目ごとにご紹介します

無人ウイングマン(CCA:collaborative combat aircraft)関連
XQ-58A Valkyrie2.jpg●(NGADと共に2030年代の何時ごろ飛行可能になるか?との質問に、時期については語らず、)CCAに関しては、センサー、シューター、兵器運搬機など多様な役割を期待し、作戦機運用コスト削減も狙いの一つである
●NGADから操縦され共に飛行するだけではなく、CCAはF-35やE-7やKC-46や地上から操縦され飛行することも検討している。(注:KC-46は空中給油機として以外にも通信ノードとしての役割を期待され、また最近では戦闘管理に役割を期待する声も出てきている)

●(Kendall長官がCCA関連技術は十分成熟していると今年発言しているが、Brown大将は何時作戦投入されるかに関しては答えず、関連でCCA等を活用して米空軍は5年以内に「stand-in force」体制になるかとの質問に対し、)やるべき仕事がまだ残っている。米空軍は近未来の間はstand-inとstand-offのハイブリットであり、同盟国が我々のstand-in戦力で、我々がstand-offになるとの戦略は立てられない。米空軍は「stand-with」だ

作戦運用の大きな変化ACE構想
ACE3.jpg●部隊視察で兵士たちに会うと、過去30年の戦い方とは異なるACE構想(agile combat employment)の必要性について理解してくれており、分散した拠点からの作戦や、兵士が複数の能力を持つことの重要性をわかってくれていることがわかる。また多くの努力が投入されていることも明らかだ
●また分散運用を促進するACE構想推進のために、権限の下部組織や前線への委任を一層進めるドクトリン変更にも理解を示してくれている

救難救助態勢の見直し
HH-60W2.jpg●アジア太平洋地域の特性(距離の克服)や救難救助を担ってきた回転翼機の脆弱性増加に伴い、米空軍は2023年度のHH-60W救難ヘリ調達数を削減することとし、べトラム戦時から継続してきた救難救助作戦コンセプトの見直しを行っている
●今や脅威のレベルは変化しており、従来救難任務に従事してきた回転翼機やオスプレイが撃墜されることを恐れており、考え方を変える必要に迫られている。無人機の活用などに焦点を当て、様々な検討を行っている

F-35の維持整備費高止まり問題について
F-35 Gilmore.jpg●初期に見積もられている「F-35の飛行時間当たりのコスト」は「楽観的過ぎる:overly optimistic」見積もりとなっており、米空軍は従来の「飛行時間当たりのコスト」見積もりから、「1機あたりの年間維持コスト」見積もりモデルに変更し、米空軍全体の負担の「見える化」推進に資する方向で進めている
///////////////////////////////////////////

その他にもBroun参謀総長は、インフレによる物価高騰の影響が勤務地によって異なり、諸手当の見直し等が追い付いていない問題について米軍兵士向けに説明していたり、パイロット不足に対して養成期間の短縮や民間航空会社との定期協議を行っていることを説明しています

Brown2.jpgまた、ウクライナの教訓から同盟国等との継続的な訓練が重要であることや、同盟国の能力向上に取り組むことの重要性についても強調しています

「飛行時間当たりのコスト」見積もりから、「1機あたりの年間維持コスト」見積もりへのシフトは、航空自衛隊にも影響を与えるのでしょうか???

無人機ウイングマン構想
「空軍長官:B-21用にも新規開発」→https://holylandtokyo.com/2022/03/24/2938/
「まず5世代機の仮設敵機役から!?」→https://holylandtokyo.com/2021/08/18/2084/
「頭脳ACSを2機種目で試験成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-02
「Skyborg構想の頭脳ACSで初飛行2時間」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-06

救難救助体制の再検討
「対中国作戦での救難救助任務が今ごろ大問題に」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/

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米空軍バーチャル訓練センターの現在位置 [米空軍]

2020年8月に開設したVTTCの現状と方向性
改めてバーチャル訓練の必要性や重要性を確認

VTTC.jpg8月23日付米空軍協会web記事が、2020年8月に開所して2027年の運用態勢確立に向けた設備や各種連接機能の充実過程にあるた米空軍VTTC(バーチャル試験&訓練センター:Virtual Test and Training Center)の現状を紹介しています

ネバダ州ネリス空軍基地内に建設されたVTTCは、米空軍戦闘コマンドACCの配下にある「Air Force Warfare Center」(指揮官少将)の一部をなす施設で、フロリダ州エグリン基地に司令部を置く第53航空団(同Warfare Centerの配下部隊:各種兵器&戦法開発や電子戦やISR等の技術戦術開発を担い提案する専門部隊)が管理する施設です

VTTC2.jpg縦横80m四方の規模イメージのVTTCは、2020年8月開所時に「世界中で発生しうる如何なる紛争もこのセンターで再現や提示ができる体制を目指す」、「最終的に、米空軍のみならず、米軍他軍種や同盟国が世界中からバーチャル演習に参加可能な態勢に」、「今後F-15Eシム装置を建設するほか、既にネリス基地内所在のF-35、F-22、F-16戦闘機のシミュレーターを、同センターと連接してバーチャル環境に組み込む予定」等々と構想が紹介されていたところです

23日付の記事はVTTCの現状について、「2028年まで毎年25億円規模の予算を付け、ソフトやシム装置の充実に取り組んでいく」、「(米空軍の研究開発を担う)マテリアルコマンドや米海軍システムコマンドの協力も得て先行的にVTTC充実を図る」とのVTTC担当幹部のコメントを紹介しています

VTTC3.jpgまた2023年度予算で、米国政府保有のモデル検証やシミュレーション実験環境であるJSE(Joint Simulation Environment)への連接も計画されており、VTTC指揮官の中佐は「JSEとの連接機材搬入のため、古い機材を運び出す等の準備作業を行っている」と説明しているほか、

米空軍の主要な作戦用航空機全てをVTCCと連接できるよう、機種毎にバラバラなシム装置を連接できるような検討や、ネリス空軍基地近傍の演習場で実施される実機飛行をVTTCと合成できるような技術開発にも取り組んでいると語っています。

VTTCが重要性を増す3つの理由
(VTCC運用管理部隊指揮官の説明より)

●敵及び味方の進歩が早く実環境で十分な訓練が困難
VTTC4.jpg・中国やロシアは急速に新兵器の導入や陸海空宇宙ドメインを融合した運用法導入を進めており、実環境で米軍の仮設敵部隊が敵を模擬することが困難。例えば中国のJ-20ステルス戦闘爆撃機の模擬は、米軍の仮設敵機部隊では困難
・また、米軍の装備も格段に進歩しており、例えばF-35のような優れたセンサーとAI分析能力を装備する機体は、敵のSAMを模擬した地上装備を見破ることが可能で、そのような能力を含めた最大発揮を訓練させる環境の作為が実環境では不可能に

●演習場の広さや電磁環境の制限下では訓練が困難
・保有兵器の射程が延伸される方向にあり、演習場内では戦闘環境が設定できない
・また、宇宙も含めた複雑な電磁スペクトラムへの妨害が想定される中、実環境でそのような妨害を模擬することは困難

●機種毎に各企業が作成したシム装置を連接するのは大仕事
VTTC USAF2.jpg・5年ほど前からバーチャル環境訓練の重要性が認識され始めたが、バーチャル訓練や他機種シム装置との連接を念頭に開発された各機種シム装置は少なく、本格紛争を模擬するレベルの連接には高度なシム連接合成環境(synthetic environment)の創設が必要
・更に、同盟国やパートナ国等にも参加しやすい環境を提供するにも、米国製アセットだけではなく、広く対応可能なシム環境を準備する必要がある
////////////////////////////////////////////////

VTTCが2020年8月に開設された際にもコメントいたしましたが、日本は広大な国土を持つ米国よりも遥かに実機による実動訓練や演習が難しい環境にありますから、最新装備を導入すればするほど、このようなバーチャル訓練環境が必要になると思います

VTTC5.jpg例えば航空自衛隊であれば、F-35機体購入費だけで財布が空になり、訓練費も維持整備費も、バーチャル訓練環境も置き去りにされ、・・・ついでにネットワーク環境整備も不十分なので、ネリス基地との連接も困難・・・との状態でないことを祈ります

米空軍シム訓練センターVTTC関連記事
「ネリス基地で開所式」→https://holylandtokyo.com/2020/09/08/475/

5世代機とバーチャル訓練
「F-35用廉価版SIM装置」→https://holylandtokyo.com/2021/12/09/2496/
「米空軍がAIシム訓練アイディア募集」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-26
「5世代機用に訓練空域拡大要望」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-12-09-1
「5世代機訓練は実&シム併用で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-11-24-1
「シム訓練でF-22飛行時間削減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-11-1
「F-35SIM連接の課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-05
「移動簡易F-35用シミュレーター」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-02
「5世代機はバーチャル訓練で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-28-1
「DMT構想について」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-06

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