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元グーグルCEOがAI作成の生物兵器に危機感 [安全保障全般]

国家安全保障評議会の共同議長として訴える
自身で創設の技術動向シンクタンクでの研究など紹介

Eric Schmidt5.jpg9月12日、元グーグルCEOで国家安全保障評議会(National Security Commission)の共同議長を務めるEric Schmidt氏が記者団に、彼が同評議会メンバー有志をメンバーに立ち上げたシンクタンクの研究レポートに言及し、AIが生物学や化学データーベースを利用して生物兵器開発に使用された場合、毒性の高い新たな病原体やウイルスや生み出される懸念が近未来にリスクとして顕在化すると訴えました

レポート「Mid-Decade Challenges to National Competitiveness」では、生物学者も製薬会社も安全保障関係者もあまり意識していないが、最近の生物学とAI技術の発展により、悪意ある者が生物&化学データベースとAIを結び付け、人類を傷つける新たなものを生み出す可能性が高まっていることに警鐘を鳴らしているようです

Eric Schmidt4.jpg一例としてSchmidt氏の発言を紹介した12日付Defense-Newsは、最近製薬会社「Collaborations Pharmaceuticals」が、新薬開発時に毒性を排除するために作成されたAIアルゴリズムを改良し、毒物を生み出すようなアルゴリズムに変更して走らせてみると、製薬会社担当者たちが驚くほど容易に危険物質を生み出すことが可能だと判明したと報じています

実際に担当した製薬会社技術者たちは、病原菌や毒物を生み出す危険性をぼんやりとしか意識していなかったが、化学兵器や生物兵器問題を議論する会議に招待されたことを契機に上記のようなAI「逆利用」を試み、大変危険な悪用の可能性を秘めていることに改めて気づかされたと吐露し、

Eric Schmidt3.jpg「我々はエボラ出血熱など危険なプロジェクトに関与していながら、意識が薄かった」とか、「市販のAIアルゴリズムを少し改良し、公に利用可能な分子データベースと組み合わせ、20世紀最強の神経ガスと呼ばれるVX生成に取り組んだところ、6時間以内に基準レベルの分子40,000 moleculesをサーバー内で生成し、その中には既知の化学兵器物質の他、より毒性の強い可能性が分子も含まれていた」と述べています

別の視点としてSchmidt氏らのレポートは、生物学データベースの強化と同時に、管理を強化することの必要性も訴えています。

Eric Schmidt2.jpg例えば、米国防省の「統合病原菌センター」は、数十年蓄積した世界で最も広範な病理細胞サンプルを保管貯蔵していますが、現在これらをデジタル化し、AIにより診断や治療方針決定に利用するプロジェクトが進められている中で、このデジタルデータベースの強化&活用と同時に、セキュリティー強化も重視されているようです
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新型コロナウイルスの起源については全く議論が煮詰まっていませんが、その影響の大きさについては全人類が身に染みて感じたところです。

Eric Schmidt.jpgそんな中でのAI活用による新たな生物兵器や化学兵器の開発話に、ぞっとする思いがいたしました。なお厳密には、Schmidt氏は「biological warfare」や「biological conflict」との言葉を使っているので、生物兵器「biological weapons」より意味するところが広いのかもしれません。

でも元グーグルCEOのEric Schmidt氏はえらいですね。現在67歳で、ご経歴からすると十二分に悠々自適な暮らしができる余裕のある方でしょうが、今も最前線の課題にリーダーとして挑まれている姿に感心いたします。

生物化学兵器関連
「化学生物兵器を無効化するX線爆弾開発!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-07-08-2
「弾頭7.6万ポンド以上で化学兵器飛散を防止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-04-21
「朝鮮半島の戦いは「汚い戦争」に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-02-10
「NKはB兵器保有か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-16-1

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10月伊空軍トップが来日し次期戦闘機協力協議へ [安全保障全般]

Defense Newsにイタリア空軍参謀総長が語る
英伊スウェーデン開発の将来戦闘機とF-2後継機の協力
微妙な技術協力範囲の調整が重要と示唆
欧州での次期戦闘機開発の一本化の可能性も

Goretti.jpg9月22日付Defense-Newsが、10月に日本の招待で来日予定のLuca Gorettiイタリア空軍参謀総長へのインタビュー記事を掲載し、英伊スウェーデンが共同開発中の次期戦闘機TEMPEST(FCAS:Future Combat Air System)計画と、航空自衛隊のF-2後継機開発における技術シェア可能分野を話し合う機会にもなるとのコメントを紹介しています

欧州の次世代戦闘機開発は、共に2018年頃からスタートした、英伊スウェーデンによるTEMPEST(FCAS)計画と、独仏スペインのFCAS計画がありますが、日本は三菱製の国産F-2支援戦闘機の後継機開発に英国との協力を模索して、日英企業間のエンジンやセンサー開発協力に「のろし」を上げているところです

Tempest3.jpg更に7月の英国Farnborough航空ショーで英国防相が、英国イタリア日本で次期戦闘機に関する「joint concept analysis」を進めており、年内に協力して何が出来るかを取りまとめることになっていると語っていましたが、この協議の一環と考えると、イタリア空軍参謀総長の来日とインタビュー発言が結びつきます

以下では、記事からGorettiイタリア空軍参謀総長の言葉をご紹介しますが、欧州と日本での運用環境や脅威環境の違いや、技術をオープンに出来る範囲など、協力関係の根本にかかわる重い課題が残されていることが示唆されています。

インタビューでイタリア空軍参謀総長は・・・
Goretti2.jpg●10月に航空幕僚長の招待を受け訪日するが、共通のプログラムに関し、ビジョンを共有し、ビジョンの共通しているところを確認する機会になろう。日本は彼らのF-X計画(F-2後継機計画)に導入可能な技術を、TEMPEST計画から得ることが可能になるかもしれないので、我々それぞれの軍需産業が何が何時出来るかについて、理解を深めることになろう
●(日本がTEMPEST計画に参画する可能性もあると示唆しつつ、)仮に日本のような国がTEMPEST計画に加われば、関係国それぞれが持つ(技術の)現実を知る良い機会になるだろう

Tempest2.jpg●(ただし、)我々はNATO諸国として、地中海や欧州がメインの焦点であり、FCAS計画(TEMPEST計画の別称)はNATOの安全保障規定に違反しないよう、技術交換に関し厳格に様々な側面から管理されている。
●NATOと日本はそれぞれに異なった戦略上の関心を持っていることから、専門家により如何に作戦コンセプトを共有して安全に技術情報協力が行えるか協議を進めている

欧州での次期戦闘機開発について
●(英伊スウェーデンとは別に、仏独スペインも次世代戦闘機開発計画を進めているが、仏Dassault社と独Airbus社の主導権争いで紛糾している状況に関連し、)TEMPEST計画と仏独チームの開発計画が合体する可能性はまだ残されていると思う。

Goretti3.jpg●戦闘機開発は巨大な投資を必要とし、単一国では行えない。欧州各国は投資コストを抑えたいと思っており、トーネードやユーロファイターの時と同じようなことが起こる得る。
●仏独は異なる道を進んでいるが、欧州で2つのプラットフォーム開発を同時に進めることは経済的に持続可能ではない。各国が要求事項を取りまとめ、一つのプラットフォームにまとまる可能性は十分あると思う
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9月上旬まで豪州北部で行われた対中国を強く意識したPitch Black演習には、はるばる欧州から英仏独蘭4か国から戦闘機が参加しましたが、戦闘機開発と言う産業政策までを含む大きなお金の動くプロジェクトとなると、欧州とアジアの間には、まだ越えなければならない大きな壁があることを、イタリア空軍参謀総長の発言から感じました(邪推ですが・・・)

Tempest.jpgウクライナ関連で、欧州諸国は米国との関係も無視できないでしょうから・・・・。考えれば考えるほどハードルが高そうな気がしますが・・・

同参謀総長は1962年5月生まれの60歳で、2021年11月から同職についており、どれだけ任期が残っているのかわかりませんが、自国も参画している戦闘機プロジェクトに関し、他プロジェクトとの「合体」の可能性を示唆するとは、お国柄の違いというか、自由と言うか、日本での発言に注目(期待)したいと思います・・・。誰も注目せず、報道されないでしょうけど・・・。

英国の戦闘機関連話題
「2027年までにデモ機を作成発表」→https://holylandtokyo.com/2022/07/22/3480/
「英国がTyphoonレーダー換装推進」→https://holylandtokyo.com/2022/06/10/3303/
「英空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2021/05/19/1493/
「英国の138機F-35購入計画は多くて60-72機へ!?」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/

欧州の戦闘機開発
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2

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シンガポールはF-35B導入承認済もA型にも興味 [安全保障全般]

2020年にB型4機導入承認を米政府から得ているが
A型とB型が参加したPitch Black演習でA型も吟味
少佐を長とするチームが機種選定を担当する「若い」組織

F-35 Singapore4.jpg9月6日付Defense-Newsが、2020年に米国防省からF-35B型(短距離離着陸型)の購入承認を得ているシンガポール空軍が、豪州で実施されたPitch Black演習(8/19~9/9)などの機会を利用してA型(通常離着陸型)の情報も収集中で、同国担当幹部が「B型以外を選択するオプションは残されている」と語ったと紹介しています

シンガポールは現在60機の能力向上改修を終えたF-16C/D型を保有していますが、2030年には機体寿命からF-16の退役が始まるようで、少佐(!)をリーダーとする5名のチームで次期戦闘機の選定を進めており、2020年1月に米国製兵器輸出許可の窓口である米国務省から、追加で8機導入オプションが付いた4機のF-35B型機調達許可を得ており、2026年から機体を受領することとなっています

F-35 Singapore5.jpgそんな中ですが、シンガポール機種選定チームリーダーであるZhang Jian Wei少佐が、F-35A型(豪州空軍)とB型(米海兵隊:岩国基地所属)の両方が参加している豪州主催のPitch Black演習を準備段階から精力的に見て回る中で、記者団に具体的な機種選定決定時期については言及を避けつつ「更なる決断は可能になった段階で行う」と述べ、人口570万人ながら「したたかな」小国シンガポールの存在感を示したようです

同国は2020年にF-35B型導入承認を米国から得て、F-35の細部情報へのアクセスが可能になると同時に精力的にF-35細部情報収集を開始し、米軍の他、既に導入を開始している欧州やアジア各国ともコンタクトして、導入準備や「B型以外」のオプション検討を進めて来たようです

F-35 Singapore6.jpg同少佐らはPitch Black演習で、F-35A型とB型がF-15、16、Su-30、Eurofighterなどと共に訓練し、F-35が参加した初の大規模航空作戦演習におけるF-35の「force multiplier」ぶりを豪州空軍や米海兵隊F-35部隊に密着して確認し、併せて維持整備部門ともコンタクトしてF-35導入(型式選定も含め)準備を進めているようです

ちなみに、国土の狭いシンガポールは、米国アリゾナ州Luke空軍基地にシンガポール空軍F-16訓練飛行隊を置いて操縦者等養成していますが、F-35への機種変更に伴い、F-16訓練部隊は2023年にアーカンサス州に移り、Lule基地には機体受領に併せてF-35訓練飛行隊が配置されるとのことです
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F-15SG.jpgシンガポールは東京23区と同程度の面積に約570万人の人口ですが、その国がF-16を60機と最新のF-15を40機、ヘリ70機や輸送機15機、E-2C4機など多様な装備を保有し、空軍13000名程度で運用していることに驚かされます

シンガポール空軍はトップが40代後半で、次期戦闘機選定の実務を少佐がリーダーで行っている「若さ」あふれる国です。

小規模な国で世界最先端を目指すため、社会統制や規律が厳しく、「豊かで明るい北朝鮮」とも表現される国ですが、F-35導入を巡る「身のこなし」からもその「しっかり者感」が伝わってきます

シンガポール関連の記事
「F-35B売却許可」→https://holylandtokyo.com/2020/01/15/866/
「2021年シャングリラ会合中止&過去の同会合」→https://holylandtokyo.com/2021/06/04/1783/

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Pitch Black演習で空中給油機外交が花盛り [安全保障全般]

豪、米、仏、シンガポール、NATO、韓国の給油機参加
韓国以外は他国作戦機に給油して連携強化図る
米KC-130J以外は全てA330 MRTTですが・・・
欧州とアジア諸国の対中国連携の象徴として

A330 Pitch Black.jpg9月8日付Defense-Newsが、8月19日から9月9日の間に豪州北部で実施された大規模空軍演習Pitch Blackに、欧州を含む国から過去最大規模の空中給油機が参加し、他国の参加機に給油を行うなど多国間大規模演習ならでは有意義な訓練が実施されたと報じています

同演習には、主催国である豪州以外に16か国(米英仏独日韓印加蘭NZシンガポール、インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシア、UAE)から約2500名と航空機100機が参加し、うち空中給油機は7か国合計9機(豪2機と英仏NATO韓シンガポールは各1機A330MRTT、米海兵隊2機KC-130)が参加したとのことです

A330 Pitch Black3.jpg7か国から参加した9機の給油機の内、韓国の給油機は自国航空機へのみ給油を行ったということですが、他の6か国給油機は以下に記載するように、他国の参加機に空中給油を行って連携強化を図った模様です。なお給油機は駐機するスペースが不足したことから、北部豪州の豪空軍Darwin基地とTindal基地、更に2000NM離れたAmberley基地に分散して展開したとのことです

参加各国空中給油機による給油訓練実績(記事記載部分)

●NATO給油機A330MRTT(オランダ登録も演習では独が運用)
豪州EA-18G電子戦機とF-35A戦闘機に給油

●シンガポール給油機A330MRTT
豪州F-35Aと米海兵隊F-35B、仏ラファール、英タイフーン、豪州EA-18GとA330給油機へ給油
更にDarwin基地の滑走路一時閉鎖の際に、緊急給油を独ユーロファイターに実施

●仏給油機A330MRTT
シンガポールF-16、インドSu-30、豪州F-35A、豪州C-17輸送機とP-8対潜哨戒機へ給油
●英給油機A330MRTT
仏ラファールと米F-35Bに給油

●米海兵隊給油機KC-130J(岩国所属)
英ユーロファイターに給油

尚記事によると、9機の給油機の内、最大で5機が同時に在空して演習に参加していたとのことです
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A330 Pitch Black2.jpg対中国の戦いでは、第一列島線上や西太平洋の島々にしか西側飛行場がなく、しかも航空戦力を中国のミサイル攻撃に備えて分散運用させる方針であることから、空中給油機の役割は極めて大なるものがあり、本演習での多国間給油訓練は非常に意義深いものであるはずです

そんな重要な訓練にも関わらず、米空軍と日本のみが使用するKC-46A空中給油機が参加していない点が気になり、同時に、改めて西側主要国の大半(米日イスラエルを除く。サウジとUAEも採用)がA330MRTT給油機を採用している現実に気付かされます

KC-46 RVS.jpg米軍戦力依存ではなく、同盟国の力を示す機会なのかもしれませんが、KC-46の重大不具合が未解決で作戦投入許可が出ていない影響かもしれません。日本から参加のF-2戦闘機は、本演習に参加するため豪州A330MRTT給油機にわざわざ日本へ来てもらい、同給油機から給油する訓練までしてもらってやっと本演習に参加している次第ですから。

別の視点で、シンガポール給油機が存在感を発揮している点に注目です。小国ではありますが、国家の柔軟性と現場の努力により、「きらりと光る」ものを見せています

豪州主催Pitch Black空軍演習の関連
「シンガポールはA型にも興味」→https://holylandtokyo.com/2022/09//3638/
「ドイツ戦闘機が初参加で日本にも飛来」→https://holylandtokyo.com/2022/08/18/3566/
「豪州KC-30A給油機と空自F-2の給油適合試験」→https://holylandtokyo.com/2022/05/10/3211/

KC-46のゴタゴタ具合
「空軍長官:KC-46の固定価格契約は誤り」→https://holylandtokyo.com/2022/06/06/3323/
「RVS改修案にやっと合意:完了は2024年以降」→https://holylandtokyo.com/2022/04/27/3181/
「50機目受領も恒久対策未定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-11

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イスラエルが4機のKC-46購入契約間近と発表 [安全保障全般]

米国以外では日本に続きやっと2か国目
米国からの軍事支援で購入するボーイング支援の側面も
イラン核合意再興に大反対のイスラエルをなだめる側面も

Gantz KC-46.jpg9月1日付Defense-Newsが、イスラエルが2年前に導入を発表していた4機のKC-46空中給油機について、イスラエル国内政治や米国との価格交渉等のゴタゴタを経て、2025年と26年に受領する計画でまもなく契約可能になったとイスラエル国防相が発表したと報じています。

何度もご紹介してきたように、KC-46空中給油機は米空軍の最優先事業の一つとして期待された事業ですが、2017年に1番期納入予定が開発が不調で2019年まで遅れ、その後も様々な不具合や要求性能を満たせない状態が続き、米空軍が導入予定の計179機の1/3に当たる60機以上を既に受領済なのに、給油を遠隔操作する確認する映像システムRVSの不具合(最高度レベルの重大不具合)解消が2024年以降になるとのグダグダ状態にあります

Gantz KC-46 4.jpg「固定価格契約」でボーイングが受注したKC-46ですが、この開発トラブルでボーイングの自腹開発費が膨らみ、コロナで航空機産業絶不調の中で7000億円もの「自社持ち出し」が発生している惨状に、kendall空軍長官が「ボーイングの言い分を信じて固定価格契約にしたのは誤りだった」と率直に吐露(6月1日)して物議を醸しているところです

世界の空中給油機市場を見れば、KC-46のライバルであるエアバス社A330型給油機が、豪州6、英国14、UAE3、サウジ6、シンガポール1、韓国2、フランス1機が既に納入済みで、他にチェコ、インドネシア、インド、カタール、スペイン、スウェーデン等が興味を示している状況で、「勝負あった」感が漂っていますが、なぜか日本は受け入れ空港施設等の状況等を理由に、米国以外で唯一KC-46を導入している国になっています

Gantz KC-46 3.jpgそんな孤立無援なKC-46運用国仲間に、イスラエルが加わってくれたのは日本として嬉しいことなのでしょうが、イスラエルは米国から提供される年数千億円にも及ぶ軍事支援費を利用してKC-46を4機購入することになっており、実質的には米国政府による「ボーイング支援」とも見なせる契約です。

更に契約文書には、イスラエルが追加で4機購入するオプションも記載されているようで、ボーイングを支援する米国政府による「カンフル剤注射」の仕組みが組み込まれている・・・ともまんぐーすは考えています。

Gantz KC-46 2.jpegもう一つの視点として、トランプ前政権が破棄した「イランとの核合意」の再構築を目指すバイデン政権は、この合意再締結に大反対のイスラエルをなだめる為、イスラエルがイラン攻撃準備のために導入を急ぐ新型空中給油機導入に便宜を図っているとの見方もでき、国際政治のドロドロな裏側の一側面とも考えられます

航空自衛隊の無人高高度偵察機RQ-4や、陸上自衛隊のオスプレイなど、日米関係の大きな枠組みの中で導入せざるを得なかった装備が日本の防衛予算を圧迫するのは「見るに忍びない」のですが、導入したからにはしっかり使うしかないので、数少ないKC-46仲間イスラエルと航空自衛隊は仲良くして、運用ノウハウを共有してほしいです

KC-46などの関連記事
「空軍長官:KC-46の固定価格契約は誤りだった」→https://holylandtokyo.com/2022/06/06/3323/
「KC-XYZの再検討再整理表明」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/
「グローバルホーク日本導入の悲劇」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-22

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独タイフーン戦闘機6機がアジア豪星日韓へ展開訓練 [安全保障全般]

2021年8月の独海軍フリゲート艦アジア派遣に続き
欧州諸国の対中国への姿勢を示す1か月以上の長期派遣
A400M輸送機4機とA330空中給油機3機と共に展開

Rapid Pacific 2022.jpg8月15日午後、ドイツ空軍のタイフーン戦闘機6機が独空軍基地(Neuburg)を飛び立ち、中東アブダビ経由で24時間かけA400M輸送機4機とA330空中給油機3機と共にシンガポールに展開しました。今後更に豪州北部のダーウィンに移動し、8月19日から9月9日の間で実施される多国間空軍演習「Pitch Black 2022」に参加します

Rapid Pacific 2022 2.jpgこのドイツ空軍戦闘機初のアジア太平洋地域への展開は、昨年8月の独海軍フリゲート艦「バイエルン」の派遣(6か月間に12港に寄港)に続く独軍のアジア太平洋関与姿勢を強調するもので、2020年にドイツ政府が発表したアジア太平洋戦略文書や、今年NATOが発表した「Strategic Compass document」に基づき、「欧州とアジア太平洋を結ぶサプライチェーンルートへの障害は、ドイツに大きな問題をもたらす」との危機感を背景に、遠く離れたアジアへの関与を深める姿勢を改めて明確にするものです

A400M germany.jpg多国間空軍演習「Pitch Black 2022」は、インドを含む周辺アジア諸国のほか、米英独仏蘭加やUAEも参加し、日本と韓国とドイツが初参加で大きな注目を集めている大規模演習で、ドイツ空軍は空対空や空対地作戦や防空訓練に参加を予定していると発表されています

空軍演習「Pitch Black 2022」に参加後は、豪海軍との艦艇防御演習「Kakadu exercise」に9月12日から26日の間参加し、その後はシンガポール空軍との航空作戦訓練を行い、更に後には派遣部隊を分割して日本と韓国を訪問して訓練を実施するとのことです

Rapid Pacific 2022 5.jpgご紹介している写真のタイフーン戦闘機の特別塗装や訓練参加者用のワッペンをご覧ください。日本や韓国やシンガポールや豪州やUAE等の国旗をあしらった特別塗装やパッチから、「Rapid Pacific 2022」と名付けられた今回の派遣訓練に対するドイツ軍の意気込みが伺えます。

Rapid Pacific 2022 6.jpg航空自衛隊も今回の「Pitch Black 2022」参加のため、豪空軍A330から空中給油特別訓練を受けて臨む力の入れようですので、対中国の包囲網が強固であることを示すため成果大なることを期待しつつ、独タイフーン戦闘機来日の際には大歓迎したいと思います

ドイツ空軍から航空自衛隊は、現在ドイツ空軍ではトーネード戦闘爆撃機が担っている「戦術核共有運用」について是非学んでほしいものです

ドイツやPB演習関連の記事
「独が戦術核共有にF-35導入へ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/16/2920/
「豪州KC-30A給油機と空自F-2の給油適合試験」→https://holylandtokyo.com/2022/05/10/3211/
「独海軍艦艇バイエルンのアジア派遣」→https://holylandtokyo.com/2021/08/05/2076/

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英空軍が敵防空無効化用の無人機の群れ試験成功発表も [安全保障全般]

敵の防空システムを飽和させる無人機の群れ開発
「ウ」侵略の大教訓:防空強固で両軍航空戦力が活躍できない
ただ「無人機の群れ」を如何に敵防空網に投入するかが大課題

Global Air4.jpg7月13日頃、ロンドンで世界の空軍&宇宙軍トップ会議が開催され、英空軍のMike Wigston参謀総長が「過去3年間、5種類のドローンに様々な搭載物を乗せ、無人機の群れとして敵防空網を飽和させる試験を13回実施し、作戦運用上有効な能力を獲得した」と明らかにしました

しかし一方で、「無人機の群れを攻撃対象となる敵防空網内に運搬&投入する能力開発は、現在も継続中」と語り、安価で使い捨てで損耗が負担にならないと一般に考えられている小型ドローンを、遠方に存在する最前線の敵防空網に如何に投入するかが課題だと語っています

Global Air 2.jpg本発表を紹介している7月14日付Defense-News記事は、英国の王立軍研究所(Royal United Services Institute)のJustin Bronk氏の見方を紹介し、露にウクライナ侵略において、両国の防空網が互いに相当強固なため、両国空軍戦力が十分能力を発揮できずに地上軍によるドロドロとした戦いに持ち込まれているが、

このような戦況は、死傷者が多数発生する可能性が高い地上戦闘をなるべく避け、空軍戦力による早期の軍事紛争決着を図りたいNATOなど西側諸国軍にとっては大きな衝撃であり、ここに来て強固な敵防空網を無効化する手段として「無人機の群れ」が注目を集めていると背景を解説しています

Global Air 5.jpg具体的にWigston英空軍参謀総長は、英空軍の第216試験評価飛行隊と英空軍RCO(Rapid Capabilities Office)が、「3Dプリンターを活用して作成した双発ジェットトエンジンの無人機Pizookieから、市場で調達可能な多様な装備搭載可能な大型ドローン、4発式の大型ヘリ型ドローンについて、増産と新たなモデルの投入手法(new models of capability delivery)の開発に取り組んでいる」と現状を説明していますが、

これに対しJustin Bronk氏は、敵の防空レーダーや迎撃ミサイル等を、大量の安価なドローンの群れで飽和させて無効化するアイディアは有効だが、小型で安価なドローンには航続距離や速度が不足しており、これを補うためにジェット推進のドローン投入を考えるとコスト面で大きな負担となり、何らかの安価小型ドローンの大量輸送投入手段導入もコスト負担を伴うものになると指摘しています
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UK Pizookie.jpg非常に断片的な記事で、英空軍の「無人機の群れ」実験や「We are exploring new models of capability delivery」の内容が全く分かりませんが、この記事が示唆する重要ポイントは、世界に普通に出回っている防空システムに直面すると、各国指導者や軍幹部は高価な4世代機や5世代機であっても有人機の作戦投入に躊躇する・・・と言うことです

先日もご紹介したように、特に対中国作戦の場合、敵領域内やその近傍での味方操縦者の救難救助体制が極めて不十分であり、有人アセットの投入のハードルが高くなるということです。

Global Air 3.jpg基本的にドローンは安価で取り組みやすい装置ですから、英国でも「無人機の群れ」開発が可能なようで期待するところ大ですが、敵も同じことに挑戦するでしょうから、「脅威」としても考えておく必要があるということです

この戦前の予想と現状は異なりますが・・・
「ウクライナで戦闘機による制空の時代は終わる」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

無人機に関する関連話題
「中国による無人機売込みに警告」→https://holylandtokyo.com/2022/06/16/3339/
「無人機の分類定義を明確にせよ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/10/2716/
「C-130による無人機の空中投下と改修」→https://holylandtokyo.com/2021/11/18/2422/

「優先項目の無人機の群れ苦戦」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-30
「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26
「無人機の群れに空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-3

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英国が2027年までに次世代戦闘機デモ機を作成発表 [安全保障全般]

2035年導入予定の次世代戦闘機TEMPESTの技術実証に
TEMPEST連合のイタリア&スウェーデンほか日本との連携示唆

Tempest3.jpg7月18日、ファーンボロー航空ショーで英国のBen Wallace国防相が、今後5年以内(2027年まで)にステルス性を持つ超音速戦闘機のデモ機を飛行させると発表し、2035年からの導入を目指しイタリアとスウェーデンと開発プロジェクトを組む将来戦闘機システム「TEMPEST」実現に向けた要素技術の基礎確認の機会にしたいと説明しました

Wallace6.jpg同国防相は具体的な目標性能や必要予算などには一切言及せず、「TEMPEST」プロジェクトを組むイタリアやスウェーデンや、将来戦闘機開発で協力する方向を打ち出している日本との協力体制についても協議中と述べるに留めましたが、既に英国Prestonにある「TEMPEST」計画の拠点で、同計画の中核4企業(BAE Systems, Leonardo UK, Rolls-Royce and MBDA UK)と開発を開始していると明言しました

「TEMPEST」プロジェクトとは別に、英国と日本とイタリアは、将来戦闘機に関する「joint concept analysis」を実施中で、協力して何が実施できるかを今年中にまとめる予定ですが、この検討との関係も良くわかりません。

18日付Defense-News記事によれば
Wallace4.jpg●Wallace国防相は、「デモ機作成は、我々の技術、技能、産業基盤が将来計画を進めるレベルにあるかを確認するために不可欠である」、「デモ機の設計や製造は、関連技術の融合や試験技量を実証することになり、2035年導入予定の将来戦闘機システム開発に関係する英国産業界に貴重なデータと教訓を提供することにもなる」と意義を説明した

●また同国防相は、イタリア企業との協力体制固めを精力的に進めていると述べるとともに、スウェーデンとの協力に加え「世界中の友好国との協力の利点を示すことになる」と述べ、日本との戦闘機開発協議が進む中での日本との連携についても示唆した

Tempest2.jpg●デモ機開発を主導するBAE社CEOのCharles Woodburn氏は、現在運用されているTyphoon戦闘機(英独伊西共同開発)が数千の雇用を生み出し、「TEMPEST」プロジェクトにつながる技術基盤を育成したことに言及しつつ、このデモ機開発を「once-in-a-generation」のチャンスだと喜んでいる
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先日は、英国防省がTyphoon戦闘機のレーダー換装に追加予算を投入するとの話題を紹介し、日本のF-2後継機開発との関係を邪推しましたが、日本が米国一辺倒ではなく、戦闘機開発で英国との協力に乗り出そうとするときですので、英国の関連動向をチマチマとご紹介しておきます

Tempest.jpg英国は決して経済的に余裕があるとは言えませんが、欧州諸国と競ったり連携したりしながら、航空機開発技術&人的基盤を維持している点で、日本も参考にすべき点があるのでしょう。これだけの記事では、今回のデモ機開発の意味するところが良くわかりませんが、少しづつ学んでまいりましょう

英国の戦闘機関連話題
「英国がTyphoonレーダー換装推進」→https://holylandtokyo.com/2022/06/10/3303/
「英空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2021/05/19/1493/
「英国の138機F-35購入計画は多くて60-72機へ!?」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/

欧州の戦闘機開発
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2

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米本土の巡航ミサイル対処をCSIS提案で議論 [安全保障全般]

従来の大量戦闘機投入による追尾・識別・対処から決別
「Five Layers of Defense」方式で経費を従来案の半分に
AI活用の敵の動向分析、OTHレーダー、管制機関レーダー活用
地域限定の集中監視網、高リスクエリアにのみ戦闘機とAEW

Russia cruise2.jpg7月14日、CSISが米本土の巡航ミサイル防衛に関するレポート発表会&パネル討議を行い、従来の戦闘機大量投入や特殊センサー導入による対処ではなく、Tom Karako研究員らが煮詰めた、より多様な手法を組み合わせつつ対処エリアを絞る「5段階の防衛:Five Layers of Defense」方式を提案しました

同提案は北米軍や北米防空司令部(NORTHCOM/NORAD)の過去の検討を基礎に発展させたもので、現在のNORTHCOM/NORADの検討方向と同じだと7月14日付米空軍協会web記事は紹介しており、少し前まで巡航ミサイル攻撃は核攻撃レベルに至った場合にのみ行われるので核抑止で十分との思考が主流だったが、巡航ミサイルの発達&多様化により、米本土を360度全周から襲う脅威の同ミサイルへの警戒感が高まっている模様です

Russia cruise3.jpg具体的な脅威として、ロシア製の空中発射型ステルス巡航ミサイルAS-23(通常弾頭Kh-101、核搭載Kh-102)が部隊配備され、米国の早期警戒レーダー網の外側やロシア領空内から発射して米本土攻撃が可能になったことや、2030年頃までには中国軍も同様の兵器を保有するとの見積もりがあるようで、CSISのレポート発表会は複数のパネル討議を含む約4時間の大型イベントとなっています

Tom Karako研究員らが提案する「5段階の防衛:Five Layers of Defense」レポートでは、①AI活用の敵の動向分析、②OTHレーダー、③公的管制機関レーダー、④地域限定の集中監視網、⑤高リスクエリアにのみ戦闘機とAEWとの「5段階」で構成され、戦闘機と特殊センサー中心で20年間に総額9兆円から60兆円必要だと言われてきた従来対処構想の半額の、20年間で4兆円で体制構築可能だとの主張が展開されているようです

7月14日付米空軍協会web記事によれば「5段階の防衛」は
Russia cruise.jpg第1段階(first layer)では、人工知能を活用して多様なセンサー情報を総合分析し、「敵の行動の日常パターンの変化:a change in pattern of life」を見極め、敵の巡航ミサイル攻撃の兆候を察知する
●爆撃機や潜水艦基地の通常の動きからの変化をとらえるため、通常の状態や変化のパターン情報を蓄積してAIに学習させ、通常からの離脱の兆候を見出すような分析をAIに実施させ、米本土の準備体制強化のトリガーとして活用する

第2段階(second layer)では、オゾン層で探知波を反射させて遠方監視可能なOTHレーダーで「21世紀版のDEWライン」を構築し、数千km先で敵の侵攻をとらえる
●OTHレーダーには従来防空レーダーのような分解能は期待できないが、より遠方で敵攻撃の兆候を把握でき、他の詳細情報入手可能な宇宙センサーなどをOTHレーダー情報を基に指向して情報制度を高めることが可能となり、対処アセットを効率的に指向可能となる

Russia cruise4.jpg第3段階(third layer)では、連邦航空局FAA保有の航空路管制レーダーや他の官民センサー情報も取り込んで融合し、米軍保有のレーダー等センサー情報補完に活用する

第4段階(fourth layer)は、米本土の全体全てを防御エリアとする従来の考え方を捨て、優先防御エリアPAD(Prioritized Area Defense)を絞り込んで対処する選択である。パネル討議では、どこを重視防御エリアにするかの議論が数十年行われてきたと紹介されている

Kh101 as-23.jpg●CSISレポートでは、以下の3地域の沿岸エリアをPADに選定する提案がなされており、一つは大西洋岸の北東部から中部沿岸、次に太平洋沿岸の大部分、最後に一部の南部地域、となっている
●当該PADエリアには、塔の上に設置されたレーダーや光学センサー19種類で500㎞範囲をカバーするセンサネットワークを構築し、迎撃用アセットとして中射程と長射程の地対空ミサイルを配備する(戦闘機を配備する従来構想とは異なる)

第5段階(fifth layer)では、「Risk-Based Mobile Defense」と呼ぶ脅威が飛来しそうな方向に移動式の防御アセットを展開させる対処である。例えば北極圏飛来シナリオでは、戦闘機とE-7早期警戒管制機を前方展開して重点待ち受け態勢を整える手法である

CSIS Cruise2.jpg●以上の「5段階の防衛」は、従来の単にキャッチャーミットを持って待ち構えるだけでなく、より能動的に敵の発射準備段階から、時間の縦深性を持って対応しようとする考え方である
●これまでの大量の戦闘機とセンサーで対処する方式では、大量の戦闘機を拘束し、かつ多額の費用が必要となるが、「5段階の防衛」は約半分の予算で実現可能で、余った資源を他の重点分野に振り向けることができる

CSIS Cruise3.jpg●更にこの「5段階の防衛」は極超音速兵器や無人機対処にも発展活用の可能性があり、また極超音速兵器用に開発が始まっている「hypersonic Glide Phase Interceptor」用のMK41 Vertical Launching Systemを、長射程迎撃兵器として利用する案もCSISは提起している
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第1~第3段階部分は、日本の自衛隊も大いに参考にしてはどうでしょうか? もちろん第4段階のPADも第5の「Risk-Based Mobile Defense」も頭の体操の材料になると思います。以下のCSISイベントの映像でも見て、頭をリフレッシュして頂きたいものです

CSIS Cruise.jpg特に航空自衛隊は、最近サイバーや宇宙に手を出し始めていますが、対中国の最前線にありながら、従来の防空体制には全く変化がありません。実質的に「座して死を待つ」体制で、信じ難いながら「あぐら」をかいている状態ともいえましょう

なお、ロシアのステルス巡航ミサイルAS-23はウクライナ紛争に既に投入され、残骸から米国製半導体や電子デバイスが32個以上見つかって話題になっていました。ロシアが弾薬切れらしく、無駄に近距離攻撃に使用していたようですが・・・

CSISの当該イベントwebサイト
https://www.csis.org/events/new-time-homeland-cruise-missile-defense 

関連しそうな記事
「米太平洋軍の統合運用進まず」→https://holylandtokyo.com/2022/07/06/3396/
「ACE構想の現状」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「宇宙軍が地上移動目標追尾能力を求め」→https://holylandtokyo.com/2022/06/09/3309/
「E-7導入決定」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/

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フィリピン新大統領が中国との軍事関係強化示唆 [安全保障全般]

7月6日からの中国外相訪比を前に前向き姿勢を
地域専門家も米軍もMarcos Jr新大統領に不安隠せず
ソロモン諸島に続く中国の西太平洋外交攻勢

Marcos Jr.jpg7月5日、フィリピンの新大統領に就任したばかりのFerdinand Marcos Jr氏が、6日からの中国外相フィリピン訪問を前に、「中国との関係は一次元ではなく、もしそれが役立つのなら、文化交流や教育交流、更には軍事交流にも広げていこう」と語った模様で、米国の対中国戦略の重要ピースであるはずのフィリピンの動静が注目を集めています

折しも中国は、米国や西側諸国がウクライナ問題で足を取られている隙に乗じ、西太平洋の島国国家に外交攻勢をかけており、今年に入りソロモン諸島と、ソロモン側の要請があれば中国警察や中国軍を同島に派遣可能となる「安保協定」を結ぶことに成功するなど、着実に侵食を続けています

Philippine China.jpeg2022年6月末まで比大統領を6年間務めたドゥテルテ前大統領時代も、米国とフィリピンの同盟関係は不安定で、例えば2020年6月、ドゥテルテ前大統領は米軍の比訪問協定(visiting forces agreement)を破棄すると宣言し、約1年後に破棄宣言を撤回して継続意思を明確にするまで米国は大騒ぎだったと記憶しています

6月9日に米空軍協会が行ったインタビューでWilsbach太平洋空軍司令官は、マルコス新大統領の下でフィリピンとの関係強化を望むと述べつつも、「これまでは極めて限定的な訓練しかフィリピンでは行っていない」と吐露し、「ACE構想に向けた訓練を幾らか実施したが、もっと訓練ができればと考えていたところだ」と期待を示していたようです

Cooper 2.jpgしかしAEIのZack Cooper研究員は今後の米比関係について、「Bongbong(マルコス新大統領の通称)の就任で、フィリピンはtricky(狡猾で、扱いにくく、油断ならない)国になるだろう。それでも比は極めて重要な国である」、「他の東南アジア諸国と共にできることもあるだろうが、恐らく極めて限定的だ」、「西太平洋の島々を利用するオプションは極めて重要だが、中国が猛烈な勢いで同地域に進出する様子を我々は目撃しているところだ」と懸念を示しています

Marcos Jr3.jpg太平洋空軍司令官は「政権移行期にあり、これからどのような方向にフィリピンが向かっていくか、変化があるかどうかを見極めていく事になる」とも述べていますが、米国関係者で明るい見通しを持っている人は少ない模様です

米空軍のACE構想も、米海兵隊の「飛び石作戦」も、少しでも多くの西太平洋の拠点を確保することが大前提ですが、「そうは問屋が卸さない」と中国が猛烈な勢いで経済・外交・軍事攻勢をかけており、その最前線フィリピンの動向から目を離せません

フィリピンや西太平洋と米軍関連記事
「PACAF指揮官がACEの現状を語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「極東米海兵隊は「stand-in force」作戦を検討中」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「中国とソロモンの安保協定関連」→https://holylandtokyo.com/2022/04/11/3119/
「比がVFA維持をやっと表明」→https://holylandtokyo.com/2021/08/02/2065/
「米軍アジア太平洋地域で基地増設を検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-28
「米軍対中国で米軍配置再検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-16-1

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米大統領が米議会にトルコへの最新F-16提供の許可要請 [安全保障全般]

フィンラドとスウェーデンのNATO加盟承認への見返り?
上院外交委員長はこれまでトルコへの強硬姿勢で知られるが

Biden NATO Madrid.jpg6月30日、マドリッドでのNATO首脳会議を終えたバイデン大統領は、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟にトルコが条件付合意した件とは全く関係ないとしつつ、トルコに対しNATO能力強化の一環として、最新型F-16とF-16能力向上キット売却を認めるよう米議会に要請しました

バイデン大統領や米国防省や国務省はFMS案件の細部に言及しませんでしたが、米メディアは40機の最新型F-16 Viper Block 70と80セットの既保有F-16能力向上キットのFMS購入(計約6700億円)にトルコが興味を示していると報じています

F-16 Viper4.jpgバイデン大統領は、トルコが北欧2国のNATO加盟を承認することへの「対価・見返り:quid pro quo」ではないと否定し、米国防省のCeleste Wallander国際安全保障担当次官補も6月29日に、「NATO加盟国の能力を高め、米国の安全保障能力を向上させることにつながる案件であり、米国はトルコ戦闘機の近代化を支援する。現在協議中で、トルコ側にも所定のプロセスを踏んでもらう必要がある」と述べているところです

F-16 Viper.jpgF-16を製造するロッキード社によれば、最新型F-16 Viper Block 70売却や能力向上改修キット提供により、トルコ空軍F-16には、最新アビオ装備のAESAレーダー、機体構造強化による機体寿命5割増、先進データリンク、最新型目標照準POD、最新ソフトと対応兵器等々が提供されることとなるようです

本件に関し、FMS契約を担当する米国務省FMS室はコメントを避けつつも、「正式に議会に通知するまではコメントしない」としていますが、一般論として「米トルコ関係は長期にわたる同盟関係であり、トルコのNATOとの相互運用性向上は引き続き優先度の高い事項である」としています

Menendez2.jpg米議会に可否が委ねられた場合の反応は見えないところですが、昨年2021年11月にBob Menendez上院外交委員長(民主党)はトルコへのF-16売却に反対姿勢を示し、「トルコのエルドワン大統領の人権問題への姿勢が問題だ。彼による法律家やジャーナリストの投獄や、米国のリビアやシリアへの関与に対する反対姿勢を変えてもらう必要がある」と主張していたところです
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トルコが「手のひら返し」でスウェーデンとフィンランドのNATO加盟を承認する姿勢を打ち出したのには驚きましたが、このタイミングでトルコへのF-16最新型や改修キット売却を持ち出されると、「対価・見返り:quid pro quo」ではないかと邪推するのが当然でしょう

F-16 Viper5.jpgご紹介したMenendez上院外交委員長(民主党)の発言はあくまで昨年11月のもので、ロシアのウクライナ侵略事態を受け態度が変化している可能性は十分にありますし、「民主党」の重鎮として、表面上は反対姿勢を見せる必要があるのかものかもしれません。

様々に激しく、世界情勢は動いているということです。

米トルコのF-35やS-400 巡る関係
「米国がトルコにF-35代替に最新F-16提案か!?」→https://holylandtokyo.com/2021/10/20/2357/
「トルコへのF-35部品依存は2023年まで」→https://holylandtokyo.com/2020/10/14/432/
「トルコの代わりに米で部品製造」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-27
「トルコをF-35計画から除外」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14
「米がトルコに最後通牒」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-09

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米国がウクライナへ提供する兵器を仏軍も緊急購入へ [安全保障全般]

「Switchblade」との滞空型無人攻撃機
最新型であれば40分在空可能でカメラ探知の目標に突入

Switchblade3002.jpg6月22日付Defense-Newsは、3月に米国がウクライナに100セット提供すると表明したAeroVironment社製「Switchblade」との滞空型無人攻撃機を、フランス陸軍省がFMS契約で6か月以内に米国から調達すると報じています

同兵器は、約10年前から米軍地上部隊に提供され、アフガニスタンやイラクやシリアで使用されてきたようですが、今年4月に米国がウクライナ支援で提供すると発表するまで、その存在は公表されてきませんでした。

Switchblade600.jpg下で紹介する解説映像が示すように、人ひとりが担いで持ち運べる大きさ重量のタイプもあり、迫撃砲の様に射出すると翼を広げ電動モーターで推進力を得て飛行し、GPSで指定の位置に向かい、最終的には先端のカメラ映像で地上から人が操縦して目標に指向します。

速度は時速100~180㎞程度で、ウクライナに提供される2020年に完成した最新型の「Switchblade 600」は、射出用ランチャー含め約23㎏、飛び出す飛翔体重量は15㎏で、連続飛行時間約40分(約40㎞飛行可能)と紹介されています

最新型「600」は対戦車弾頭である「タンデム成形炸薬弾頭」を搭載し、戦車や装甲車両を破壊する映像がネット上では公開され、ソフトターゲット(レーダーアンテナ、通信装備等々)用だった初期型「300」から大幅に能力アップしている模様で

米からウクライナへの提供表明時の解説映像(8分)


フランス陸軍や関係者は調達数量や価格を公表していませんが、仏メディアの中には82セット導入予定と仏国防筋情報を伝えるものもあるようです。「Switchblade」シリーズを製造するAeroVironment社も個々の交渉については言及を避けていますが、4月に米からウクライナへの提供が公表されて以降、複数の国から問い合わせがあると明らかにしていま

フランス国防省関係者は、射程5㎞から50㎞の範囲の戦闘車両を破壊するオプションを検討しており、他に2つのプロジェクトを開始し、2024年にデモ試験を行う予定となっているようです
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Switchblade300.jpg「6か月以内に調達」とのスピード感に、欧州大陸の大国であるフランスの脅威感と言うか緊迫感を感じましたのでご紹介しました。ナポレオン時代からロシアと対峙してきた歴史を持つフランスは、ウクライナ侵攻の長期化と揺るがないロシアの姿勢に、底知れない恐怖を感じているのでしょう。

それと・・・中国企業もあっという間にコピー兵器を開発製造するということをお忘れなく。初期型「300」は、ランチャーと運搬袋含めて僅か2500gで全長50㎝、リュックサックに収まり、数個セットあれば飛行場を数時間無効化するには十分な兵器です。

仏軍宇宙コマンド司令官が語る
「ウクライナ侵略は衛星通信へのサイバー攻撃で始まっていた」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/

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露がベラルーシに核ミサイルや航空機核搭載改修提供へ [安全保障全般]

昨年2月にベラルーシが憲法改正して着々準備
露の飛び地Kaliningrad地上輸送路閉鎖への報復的措置か
ベラルーシ利用のウクライナ空爆開始にあわせ

Belarus Russia3.JPG6月25日、ロシアのプーチン大統領はベラルーシ大統領とロシア第2の都市サンクトペテルブルクで会談後、ロシアがベラルーシに射程500㎞以下程度の短距離弾道&巡航ミサイル「Iskander-M」を提供し、更にベラルーシ軍保有のSu-25戦闘爆撃機を核兵器搭載可能に改修すると発表しました

ベラルーシは2021年2月、同国憲法の「nuclear-free zone:核保有しない国家」及び「中立的立場で」との表現を修正し、ロシア寄りの立場を鮮明にし、ロシアの核兵器受け入れ準備を進めていたと理解されていますが、ロシア飛び地領土「Kaliningrad」に続いて、NATOとの最前線にロシアの核を配備することになります

Kaliningrad.jpg先日ご紹介したように、ロシアは本土と「Kaliningrad」を結ぶ鉄道貨物輸送や石油パイプラインが隣国リトアニアによって制限されたことに反発を強めており、欧州NATO諸国に接するベラルーシへの各ミサイル配備等によって、欧米各国をけん制するねらいがあるとみられます

プーチン大統領は25日、「この決定はロシアによってなされたものだ。今後数か月以内に核弾頭と通常弾頭の両方が搭載可能なIskander-M戦術ミサイルをベラルーシに移送する」と明言し、

Belarus Russia.jpgベラルーシのLukashenko大統領は、同国Su-25に核兵器搭載可能となるような改修をロシアに要請し、露大統領から露国内で改修を請け負うとの回答を得たと述べ、「我々は米国やNATOによる核兵器訓練を見せつけられ懸念しており、ロシアに対し同様の対応が可能なよう検討を依頼した。過剰な対応をするつもりは無い(without overdoing it)」と会談後に語っています
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ベラルーシが67機保有するSU-25は、旧ソ連が米国製A-10の影響を受けて1970年代後半に開発した対地攻撃機で、戦車狩りなど最前線の敵軍を直接攻撃することを狙った低速ジェット攻撃機で、1300機以上が製造されたベストセラー機です。ですが、「フロッグフット」のNATO名のように航続距離が短く低速であることから、戦術核兵器搭載機として「適当」なのか「?」ではあります。

SU-25 Belarus.jpgSU-25は、攻撃精度が良く、搭載量が多く、強力な30mm機関砲を搭載し、安価で頑丈で整備性がよいことを特長とし、高価な戦闘爆撃機に手が出ない中小国や発展途上国にとって好都合で、ソ連崩壊後、ロシアから世界中に中古売却され、アジア、欧州、アフリカ、中東、南米等々、世界中の戦争(特に対テロ)で「常連」で「実戦で証明された機体」として評価をさらに高めた古い機体です。

ウクライナ軍によれば、6月26日にはロシア軍TU-22爆撃機がベラルーシから出撃してウクライナ首都などを攻撃しており、ロシア軍の態勢を立て直しをベラルーシが支援する形が強化され、西側に「ウクライナ疲れ」が見え始める中で、ロシアの陰鬱な粘りが世界全体に影を落としつつあります

ウクライナ関連
「露の飛び地Kaliningradへの陸路遮断」→https://holylandtokyo.com/2022/06/28/3410/
「ロシア侵略の第一撃は衛星通信に」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「アジア太平洋への教訓は兵站能力」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/

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ロシアの飛び地「Kaliningrad」への陸路遮断 [安全保障全般]

露の同盟国ベラルーシからリトアニア経由の陸路封鎖
NATO加盟国リトアニアがEU加盟国義務として淡々と
ロシアは猛反発でリトアニアに報復示唆も

Kaliningrad 4.jpg6月21日付Defense-Newは、EUが定めたロシアのウクライナ侵略に対する制裁措置に従う形で、リトアニアがリトアニア領土を通過するロシアの飛び地領土「Kaliningrad」へのロシア製品の移動を禁止する措置をとったと報じています

この措置に先立ち、EUは4月に空路によるロシア航空会社のEU通過を禁止して、「Kaliningrad」へのロシア製品の空路を絶ちましたが、今回は「Kaliningrad」への物資輸送の半分を担う陸路(露の同盟国ベラルーシと飛び地を結ぶ「Suwalki Gap」を通る鉄道が地上輸送の大部分を担う)を絶ち、更にロシアから石油を輸送する唯一のパイプライン(「Suwalki Gap」近傍を通過)も今回の措置で封鎖されます

Kaliningrad.jpgこの結果、ロシアから約680マイル(約1100㎞)、露の同盟国ベラルーシから約90㎞離れた「飛び地:Kaliningrad」へロシア製品を輸送する手段は、公海を使用する「海路」だけとなり、ロシアにとっては痛烈な一撃となります

リトアニアはNATOメンバーであり、ロシアがリトアニアに手を出せば、「NATO憲章5条」によりNATOとしてロシアに反撃するトリガーとなります。バイデン大統領も年頭教書で「一インチでもNATO領内に入ったら・・・」と明言しており、約1000名の米軍兵士を3月に同国へ派遣して覚悟を示しているところです

リトアニア外務省は、EUの一員として、EUの定めたロシアへの制裁措置を実行しただけ・・・との淡々したスタンスですが、地図でご覧いただく「Kaliningrad」の位置や、以下の紹介するその重要性からすると、NATOや西側の「かなり大きな一手」ですのでご紹介しておきます

ロシアと同飛地Kaliningradの歴史と重要性
Kaliningrad 2.jpg●WW2終結時にソ連が占領していた同地域を、ポスダム会談においてソ連領と承認。1991年のソ連崩壊時も、同地域の周辺国は独立して西側との関係を深めていくが、同地域は飛び地としてロシア領として引き継がれる。
●同飛び地の南部で国境を接するポーランド、及び東部と北部で国境を接する今回封鎖を宣言したリトアニアは、共にその後NATOに加盟した

●Kaliningradはバルト海に面するロシア唯一の港を有し、同港は不凍港である点でロシア艦隊の重要拠点。またNATO最前線に位置する海軍拠点としての意味を持つ
●ロシア本土から約680マイル(約1100㎞)NATOに食い込んだ位置にあることから、ロシアは核弾頭搭載可能な短&中距離弾道ミサイルを核弾頭と共にKaliningradに配備しているとリトアニアは主張しており、ウクライナ侵攻開始当初に核部隊の即応態勢を高めた際にも、西側はKaliningradを配備戦力を警戒している

リトアニアの地上ルート封鎖へのロシアの反応
Kaliningrad 3.jpg●リトアニアは今回の措置を、単にEUの一員として露のウクライナ侵略に対する制裁を実行したまでだと淡々と主張し、「リトアニアを経由する人や制裁対象外の物資の往来は問題なく継続されている」、「EU決定の制裁を実施しているだけで、リトアニア独自の措置は一切ない」とリトアニア外務省は主張している
●しかしロシアは強く反発し、国際法違反の「blockade」だと主張し、リトアニアが痛みを感じる装置を講ずると訴えている(効果ある具体策を提示することに失敗しているが・・・
//////////////////////////////////////////////

6月21日付Defense-News記事は、リトアニアの措置(EUの措置)にロシアが有効な「痛みを感じる報復措置」を執れないでいると紹介していますが、決して油断はできませんし、年月を経て報復を企てることも十分に考えられます。

Kaliningrad33.jpgウクライナ東部や北部で、ロシア軍がじわじわと態勢を立て直して反転攻勢に転じ、ウクライナ軍を過去数か月間支えたドローンや通信傍受を基にした攻撃も効果が低下し始めているところですが、今回の飛び地「Kaliningrad」を巡る西側の動きが、ロシアをどのように刺激してどのような影響を与えるのかが注目されるところです

ウクライナ関連の記事
「ロシア侵略の第一撃は衛星通信に」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「アジア太平洋への教訓は兵站能力」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「ロシアに迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「陸軍訓練センターに教訓反映」→https://holylandtokyo.com/2022/05/12/3156/

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米議会が希少金属アンチモン国防備蓄増に動く [安全保障全般]

太平洋戦争時に日本が中国産を米に禁輸した悪夢再び
レアメタル一時は5兆円備蓄も、今や1千億円程度に
米国が国家備蓄や国内リサイクル強化に乗り出すも
2025年には備蓄が破産状態の危機感

antimony.jpg6月8日付Defense-Newsは、米国製兵器や国防装備品に不可欠な希少金属を中国やロシアからの輸入に大きく依存している現状に、米議会や国防省がウクライナ侵略を契機に動き始めた状況を報じ、特に太平洋戦争時に日本も中国産の米国への禁輸措置を行ったアンチモン(antimony)に危機感が高まっていると紹介しています

もちろん、チタンやタングステンやコバルトやリチウムにも危機感が高いようですが、貫通弾や爆弾から暗視眼鏡や核兵器まで、多様な国防装備品に不可欠なアンチモンへの危機感が高い模様で、下院軍事委員会が6月8日に関連法案を提出し、政府担当部署に対し、10月までに米議会に国防装備関連のアンチモン備蓄状況と、今後5年間の希少金属やレアアース(希土類)調達先に関する見通し説明会開催を要求したようです

antimony2.jpgまた米国防省に対しても、使用済み装備品やバッテーリーからの希少金属やレアアース(希土類)をリサイクルする政策立案を要求する法案になっている模様で、法案は6月末には国防授権法に組み込まれる予定となっているようです

法案提出に際し下院軍事委員会は、「委員会は、最近のロシアや中国を巡る地政学的な動向から、アンチモンの調達ルートが混乱・断然することをを懸念している」と記載したレポートを添付し、国防関連に不可欠な希少金属やレアアーズがこのままだと2025年度までに「破産状態」に陥ると危機感を訴えているようです

antimony5.jpgこのようなアンチモンへの危機感の背景には、太平洋戦争時に日本が中国産アンチモンの米国輸出を閉ざした歴史があり、米国がその当時はアイダホ州の鉱山からアンチモン抽出を行ったものの、同鉱山が1997年に閉鎖されて米国内で産出ゼロの現実もあるようです

また米国は、冷戦期にも希少金属やレアアース不測の危機感を持ち、1952年時点では合計5兆円規模の戦略備蓄を確保していたようですが、その後危機感が薄れるにつれ関連備蓄予算は削減され、2021年時点では備蓄総額が1千億円規模に大幅縮小している現実も危機感を増長しています

antimony6.jpg過去記事でもご紹介していますが、米議会が動く以前から、米国防省は5月に300億円規模の関連備蓄増強予算を要求し、超党派の議員グループが国防省の動きを支援する活動を議会内で開始しています。

ご参考まで、2020年の米政府機関報告書によると、アンチモン市場は中国が供給量一位で、ロシアとタジキスタンが2位と3位で続いているが、ロシアとタジクの追い上げで中国が車を奪われつつある状況にあるようです

ロシアによるウクライナ侵攻は、改めて様々な方面に潜む「国家の脆弱性」をあぶりだす形になっていますが、日本でも当然、このような問題がいくつもあるはずです・・・

希少金属レアアース関連記事
「中国依存脱却に米国企業への投資強化」→https://holylandtokyo.com/2021/02/25/269/ 
「レアアース確保に米国が大統領令:中国依存脱却へ」→https://holylandtokyo.com/2020/10/07/427/
「中国がレアアース輸出規制へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-06

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