欧州議会は台湾を中国の一部だとは認めず [安全保障全般]
激論の末、中国が激怒する結論の報告書を議会で採択
(たぶん、中国代表部の採択阻止工作も功を奏せず・・)
極めて重要な中国への世界の動きも、日本メディアは報ぜず
2月28日、欧州議会が欧州連合 EUの「共通外交・安全保障政策」に関する年次実施報告書を議決するタイミングに併せ、台湾の地位と台湾情勢に関する「共通安全保障防衛政策」 との報告書も別途採決し、賛成 350票(得票率 65%)で報告書を決定しました。
本日は、世界の中国に対する姿勢の転換点になるかもしれない(呼び水となってほしい・・・)、この極めて意義深い内容の欧州議会の報告書について、中国研究の大家で中国共産党の崩壊をフォローする渋谷司氏の YouTube チャンネル (渋谷司の中国カフェ)からご紹介します
ズバリこの台湾に関する報告書のエッセンスは、
・中国共産党による台湾に対する領有権主張は根拠がなく、台湾と中国は対等な関係にあり、決して従属関係にはない
・台湾は、インド太平洋地域におけるEUの重要なパートナーであり、民主的な同盟国 である
・EU加盟国は、グローバル・サプライチェーンの強靭化強化に関し、台湾とより緊密 な関係を構築すべき
・欧州議会は、中国共産党が台湾の国際機関への参加を妨害し続けていることを非難し、世界保健機関 WHO や国際民間航空機関 ICADへの台湾の加盟を、EU加盟国やEU 執行理事会が支援するよう求める
もちろん駐EU中国代表部は強く反論し
・この報告は、国際法と国際関係の基本規範に違反する。「一つの中国」原則は、国際 社会が普遍的に持っている国際関係の基本規範である
・「一つの中国」原則に反し、「一つの中国、一つの台湾」を提唱して台湾独立勢力の言い訳の役割を果たす
・中国の主権を侵害し、中国の内政に著しく干渉するものとして、中国は強い衝撃を受け、断固として反対し、強い言葉で非難する
////////////////////////////////////////////////////////////
もともと2月 28 日の欧州議会の中心議題であった欧州連合 EU「共通外交・安全保障 政策」の年次実施報告書に関しても、賛成 338票(62%)、反対86票、棄権 122票との結果が示すように、決して「満場一致」の穏やかな議論ではなく、棄権が多数発生する甲論乙駁の議論だった模様で、台湾に関する報告書への賛成 65%との結果も、中国側ロビイストや工作要員等による報告書否決に向けた裏工作や駆け引きがあった中での、画期的な内容の強行突破採決だったのだろうと邪推しております
今の欧州は、過去 10年に及ぶリベラルの口車に乗った「安易な移民受け入れ」や、耳障りの良い「環境政策重視」の結果、治安も経済も崩壊目前の状態にありますが、遠く離れた中国や台湾に関し、骨のある採決がなされたことに敬意を表したいと思うと同時に、渋谷氏も指摘するように、この重い決定に日本のメディアが「報じない自由」を発動している現状を嘆かわしく思います
台湾関連の記事
「台湾近傍フィリピン北端に米国支援で軍施設増強中」→ https://holylandtokyo.com/2024/02/15/5548/
「中国による台湾への非接触型・情報化戦争」→ https://holylandtokyo.com/2024/01/05/5398/
「中国は大規模な台湾侵攻を考える状態にはない」→ https://holylandtokyo.com/2023/12/08/5330/
「新型潜水艦が西側支援を受け完成」→ https://holylandtokyo.com/2023/10/04/5093/
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(たぶん、中国代表部の採択阻止工作も功を奏せず・・)
極めて重要な中国への世界の動きも、日本メディアは報ぜず
2月28日、欧州議会が欧州連合 EUの「共通外交・安全保障政策」に関する年次実施報告書を議決するタイミングに併せ、台湾の地位と台湾情勢に関する「共通安全保障防衛政策」 との報告書も別途採決し、賛成 350票(得票率 65%)で報告書を決定しました。
本日は、世界の中国に対する姿勢の転換点になるかもしれない(呼び水となってほしい・・・)、この極めて意義深い内容の欧州議会の報告書について、中国研究の大家で中国共産党の崩壊をフォローする渋谷司氏の YouTube チャンネル (渋谷司の中国カフェ)からご紹介します
ズバリこの台湾に関する報告書のエッセンスは、
・中国共産党による台湾に対する領有権主張は根拠がなく、台湾と中国は対等な関係にあり、決して従属関係にはない
・台湾は、インド太平洋地域におけるEUの重要なパートナーであり、民主的な同盟国 である
・EU加盟国は、グローバル・サプライチェーンの強靭化強化に関し、台湾とより緊密 な関係を構築すべき
・欧州議会は、中国共産党が台湾の国際機関への参加を妨害し続けていることを非難し、世界保健機関 WHO や国際民間航空機関 ICADへの台湾の加盟を、EU加盟国やEU 執行理事会が支援するよう求める
もちろん駐EU中国代表部は強く反論し
・この報告は、国際法と国際関係の基本規範に違反する。「一つの中国」原則は、国際 社会が普遍的に持っている国際関係の基本規範である
・「一つの中国」原則に反し、「一つの中国、一つの台湾」を提唱して台湾独立勢力の言い訳の役割を果たす
・中国の主権を侵害し、中国の内政に著しく干渉するものとして、中国は強い衝撃を受け、断固として反対し、強い言葉で非難する
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もともと2月 28 日の欧州議会の中心議題であった欧州連合 EU「共通外交・安全保障 政策」の年次実施報告書に関しても、賛成 338票(62%)、反対86票、棄権 122票との結果が示すように、決して「満場一致」の穏やかな議論ではなく、棄権が多数発生する甲論乙駁の議論だった模様で、台湾に関する報告書への賛成 65%との結果も、中国側ロビイストや工作要員等による報告書否決に向けた裏工作や駆け引きがあった中での、画期的な内容の強行突破採決だったのだろうと邪推しております
今の欧州は、過去 10年に及ぶリベラルの口車に乗った「安易な移民受け入れ」や、耳障りの良い「環境政策重視」の結果、治安も経済も崩壊目前の状態にありますが、遠く離れた中国や台湾に関し、骨のある採決がなされたことに敬意を表したいと思うと同時に、渋谷氏も指摘するように、この重い決定に日本のメディアが「報じない自由」を発動している現状を嘆かわしく思います
台湾関連の記事
「台湾近傍フィリピン北端に米国支援で軍施設増強中」→ https://holylandtokyo.com/2024/02/15/5548/
「中国による台湾への非接触型・情報化戦争」→ https://holylandtokyo.com/2024/01/05/5398/
「中国は大規模な台湾侵攻を考える状態にはない」→ https://holylandtokyo.com/2023/12/08/5330/
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豪州海軍が水上攻撃艦艇規模を2倍強に増強へ [安全保障全般]
有識者諮問会議提言を豪政府が基本採用へ
駆逐艦&フリゲート艦を現 11隻から 26隻体制へ
32 発ミサイル搭載の無人艦艇6隻導入も提言に
2月20日、豪州政府が委託した有識者諮問会議が豪海軍水上攻撃艦艇部隊(駆逐艦&フリゲート艦) の強化提言(Enhanced Lethality Surface Combatant Fleet)を発表し、現在の当該艦艇規模11隻を 26隻体制に拡大すべきとの答申を打ち出しました。またこの海軍部隊提言とは別に、豪州沿岸での水 上警察任務を遂行する艦艇を25隻導入すべきとの提言も含まれたとのことです
本答申に関し 28 日付 Defense-News 記事は、豪州政府が本答申を現有フリゲート艦(Anzac-class) の能力向上改修継続部分を除き受け入れたと報じており、現在の勢力がわずか 11 隻との実態にも驚くばかりですが、これを2倍以上に拡大する方向を打ち出した豪州の決意にも驚かされます
専門家は約1兆円の水上艦艇増強答申を、予算的には今後の議会審議や国民世論の影響を受けることは当然としながらも、達成可能な経費規模だと論評し、人的戦力確保が困難な課題だとして昨今の豪軍の離職率の高さを指摘していますが、本答申の方向に進むことは間違いなさそうです
なお、現在の豪海軍 11隻とはあくまで打撃能力保有の駆逐艦&フリゲートだけの隻数で、そのほかに強襲揚座艦2歳、哨戒艇4隻、掃海艇4 、補給艦2隻等を保有していますのでご注意ください。 それでもあれだけ大きな大陸国家が、この規模の海軍しか保有していないとは驚きですが・・・。以下では28日付 Defense-News 記事から豪海軍2倍以上増強提言の概要をご紹介します
豪水上攻撃艦艇(駆逐艦&フリゲート艦)の2倍強増強提言
●大型の「Tier 1 駆逐艦およびフリゲート艦」を9隻に
・現在は3隻の「Hobart-class」対空駆逐艦のみだが、同艦艇にイージスシステムやトマホーク巡航ミサイル搭載改修を行う
・新しく現在3隻発注中の「Hunter-class」対潜フリゲート艦を、計6隻調達する
●より小型の「Tier 2 フリゲート艦」を11隻に
・現在 8隻保有の「Anzac-class」と同等以上の規模で、陸上及び海上攻撃能力を持ち、防空や援護能力を持つ「general-purpose frigates」を11隻調達する (なお現在8 隻保有のAnzac-class は、1番艦はすでに非稼働状態で、2番艦も 2026 年退役予定の老朽艦)
・豪州海軍はこの最初の?妻の候補を、ドイツの MEKOA-200、日本のモガミ級、韓国のFFX Batch IT/ITI、スペインの Alfa 3000に絞り込み、来年機種選定を行い、初納入は2030年を予定
●有人運用もオプションの大型ミサイル搭載艦6隻
・米国設計で、32 個のミサイルセルを備える 6 隻の大型水上艦艇は、オプションで乗員搭乗可能な従来概念とは全く異なる艦艇を予定。豪州内の建造場所も実質決定しており、2030 年代半ばから就役予定
・豪国防相は同艦艇に乗員を配置すると述べているが、専門家は無人艦艇として将来運用される可能性があると予想している。ただ同専門家は「殺傷兵器を搭載した無人水上艦艇運用には法的環境が整備されていないため、豪政府は現時点でその可能性についてはあまり触れたくなかったはずだ」とコメントしている
●なお提言には、「打撃能力保有の駆逐艦&フリゲート艦」以外に関する提言も盛り込まれ、水上警察任務 (civil maritime security operations)のために 25隻の「小型艦艇」からなる部隊の整備も推奨している
●予算面では ・今後10年間で約1兆円(U.S.$7-3 billion)が必要とされ、今後4年間に約 1600億円(U.S.$1.1 bilion) を政府が割り当てる計画を持っている模様で、専門家は個々のプロジェクトの承認を得ていく必要があり、世論の理解も欠かせないが、支払い可能な範囲だと考えている
●人的資源が懸念材料 ・ただし2倍以上に膨らむ艦艇数を支える人的資源については懸念が強く、例えば豪国防省は2022年から 2023 年に軍人数を2,201人増強する計画を立ててが、増員どころか「1,38g 人」減少させており、この面での対策が最も困難ではないかとの見方が多い
/////////////////////////////////////////
専門家は、「2020年代後半に老朽艦退役に伴う能力低下のリスク増大時期がやってくることを問題視し、豪海軍はこの時期の対策を考える必要があると指摘」しているようですが、時代の要請とはいえ、豪州は大きく軍拡に踏み出し、記事によれば国防費のGDP比を、今の2.1%から2.4%に拡大するようです
米国からの「軍備増強圧力」もあるでしょうが、日本にはどのような要求が来ているのでしょうか? 中国の経済破綻に起因する混乱や国家体制の崩壊具合にもよりますが、様々なファクターが絡み合う、探り合いの今後数年になりそうですねぇ・・・
豪州関連の記事
「北部重要港湾の中国へのリース継続」→https://holylandtokyo.com/2023/10/25/5170/
「却下もB-21購入検討認める」→https://holylandtokyo.com/2023/05/15/4588/
「豪で過去最大の米軍兵站演習」→https://holylandtokyo.com/2023/04/14/4506/
「サイバー能力大拡大の10年計画推進」→https://holylandtokyo.com/2022/11/16/3911/
「米がMQ-9B輸出許可」→https://holylandtokyo.com/2021/04/29/119/
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駆逐艦&フリゲート艦を現 11隻から 26隻体制へ
32 発ミサイル搭載の無人艦艇6隻導入も提言に
2月20日、豪州政府が委託した有識者諮問会議が豪海軍水上攻撃艦艇部隊(駆逐艦&フリゲート艦) の強化提言(Enhanced Lethality Surface Combatant Fleet)を発表し、現在の当該艦艇規模11隻を 26隻体制に拡大すべきとの答申を打ち出しました。またこの海軍部隊提言とは別に、豪州沿岸での水 上警察任務を遂行する艦艇を25隻導入すべきとの提言も含まれたとのことです
本答申に関し 28 日付 Defense-News 記事は、豪州政府が本答申を現有フリゲート艦(Anzac-class) の能力向上改修継続部分を除き受け入れたと報じており、現在の勢力がわずか 11 隻との実態にも驚くばかりですが、これを2倍以上に拡大する方向を打ち出した豪州の決意にも驚かされます
専門家は約1兆円の水上艦艇増強答申を、予算的には今後の議会審議や国民世論の影響を受けることは当然としながらも、達成可能な経費規模だと論評し、人的戦力確保が困難な課題だとして昨今の豪軍の離職率の高さを指摘していますが、本答申の方向に進むことは間違いなさそうです
なお、現在の豪海軍 11隻とはあくまで打撃能力保有の駆逐艦&フリゲートだけの隻数で、そのほかに強襲揚座艦2歳、哨戒艇4隻、掃海艇4 、補給艦2隻等を保有していますのでご注意ください。 それでもあれだけ大きな大陸国家が、この規模の海軍しか保有していないとは驚きですが・・・。以下では28日付 Defense-News 記事から豪海軍2倍以上増強提言の概要をご紹介します
豪水上攻撃艦艇(駆逐艦&フリゲート艦)の2倍強増強提言
●大型の「Tier 1 駆逐艦およびフリゲート艦」を9隻に
・現在は3隻の「Hobart-class」対空駆逐艦のみだが、同艦艇にイージスシステムやトマホーク巡航ミサイル搭載改修を行う
・新しく現在3隻発注中の「Hunter-class」対潜フリゲート艦を、計6隻調達する
●より小型の「Tier 2 フリゲート艦」を11隻に
・現在 8隻保有の「Anzac-class」と同等以上の規模で、陸上及び海上攻撃能力を持ち、防空や援護能力を持つ「general-purpose frigates」を11隻調達する (なお現在8 隻保有のAnzac-class は、1番艦はすでに非稼働状態で、2番艦も 2026 年退役予定の老朽艦)
・豪州海軍はこの最初の?妻の候補を、ドイツの MEKOA-200、日本のモガミ級、韓国のFFX Batch IT/ITI、スペインの Alfa 3000に絞り込み、来年機種選定を行い、初納入は2030年を予定
●有人運用もオプションの大型ミサイル搭載艦6隻
・米国設計で、32 個のミサイルセルを備える 6 隻の大型水上艦艇は、オプションで乗員搭乗可能な従来概念とは全く異なる艦艇を予定。豪州内の建造場所も実質決定しており、2030 年代半ばから就役予定
・豪国防相は同艦艇に乗員を配置すると述べているが、専門家は無人艦艇として将来運用される可能性があると予想している。ただ同専門家は「殺傷兵器を搭載した無人水上艦艇運用には法的環境が整備されていないため、豪政府は現時点でその可能性についてはあまり触れたくなかったはずだ」とコメントしている
●なお提言には、「打撃能力保有の駆逐艦&フリゲート艦」以外に関する提言も盛り込まれ、水上警察任務 (civil maritime security operations)のために 25隻の「小型艦艇」からなる部隊の整備も推奨している
●予算面では ・今後10年間で約1兆円(U.S.$7-3 billion)が必要とされ、今後4年間に約 1600億円(U.S.$1.1 bilion) を政府が割り当てる計画を持っている模様で、専門家は個々のプロジェクトの承認を得ていく必要があり、世論の理解も欠かせないが、支払い可能な範囲だと考えている
●人的資源が懸念材料 ・ただし2倍以上に膨らむ艦艇数を支える人的資源については懸念が強く、例えば豪国防省は2022年から 2023 年に軍人数を2,201人増強する計画を立ててが、増員どころか「1,38g 人」減少させており、この面での対策が最も困難ではないかとの見方が多い
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専門家は、「2020年代後半に老朽艦退役に伴う能力低下のリスク増大時期がやってくることを問題視し、豪海軍はこの時期の対策を考える必要があると指摘」しているようですが、時代の要請とはいえ、豪州は大きく軍拡に踏み出し、記事によれば国防費のGDP比を、今の2.1%から2.4%に拡大するようです
米国からの「軍備増強圧力」もあるでしょうが、日本にはどのような要求が来ているのでしょうか? 中国の経済破綻に起因する混乱や国家体制の崩壊具合にもよりますが、様々なファクターが絡み合う、探り合いの今後数年になりそうですねぇ・・・
豪州関連の記事
「北部重要港湾の中国へのリース継続」→https://holylandtokyo.com/2023/10/25/5170/
「却下もB-21購入検討認める」→https://holylandtokyo.com/2023/05/15/4588/
「豪で過去最大の米軍兵站演習」→https://holylandtokyo.com/2023/04/14/4506/
「サイバー能力大拡大の10年計画推進」→https://holylandtokyo.com/2022/11/16/3911/
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米国で年始から話題の「朝鮮半島有事の蓋然性」議論 [安全保障全般]
年初から米国で話題の2つの論考をご紹介
「金正恩は戦争に出る戦路的な決断を下した」論と
「朝鮮半島有事に至る可能性をシナリオ別に検討」論考
2月27日付で防衛省防衛研究所が「NIDS コメンタリー」枠組みで、30代後半の若手研究者(戦史研究センターの国際紛争史研究室主任研究官 石田智範氏)による、実質2ページの「朝鮮半島有事の蓋然性を巡るアメリカ国内の議論」 との短くも異味深い論考を掲載し、「2024年の年明け早々、朝鮮半島有事の蓋然性というテーマが米国の安保政策コミュニティを賑わせた」として2本の論考(共に1月11日発表)を紹介していますので、つまみ食いでご紹介します
最近関心が薄らいでいた北朝鮮問題ですが、経済的な破綻状態が深刻さを増し、最近では年初の能登半島地震発生時に金正恩から岸田首相に見舞い電報が送られたり、首領様の妹女史から岸田首相訪朝に関する発言が飛び出すなど、何やら動きがありそうな雰囲気もありますので、頭の体操としてご覧いただければと思い取り上げさせていただきます
石田主任研究官が取り上げた最初の論考は、核物理学者の Siegfried S. Hecker氏と1990 年代以降の米朝交渉に米国務省で深く携わったRobert L.Carlin 氏(元CIA 分析官)2名による、情報分析サイト「38 North」に掲載された「金正恩は戦争の準備をしているのか?」との連名寄稿で、「すでに金正恩は戦争に訴えるという戦路的な決断を下した」と主張し、朝鮮半島有事の危険性を真剣に訴え注目を集めたものです
もう一つは、元米国務省の北朝鮮核問題担当特使として「米朝枠組み合意」を主導した Robert Gallucci 氏が発表した論考で、朝鮮半島有事に至る可能性をシナリオ別に検討したもので、少なくとも短期的に不安定化のトレンドにある朝鮮半島情勢を考える上で参考になると石田氏が取り上げています
「金正恩は戦争に出る戦路的な決断を下した」論
●まず両氏は前提として、北にとって対話は「核開発の隠れ義に過ぎない」とする定型的な議論を退け、米国との国交正常化が過去30 年の北朝鮮外交の中心的な政策目標であったことを強調。
●いわく、金日成、正日、正恩の三代にわたり北朝鮮は「中と露に対する緩衝材」として米国との国交正常化を真剣に追求してきており、2019年2月のトランプとの米朝首脳会談(@ハノイ)は、金正恩にとり先代達の渇望した偉業を成し、国内的権威確立に向けた乾坤一擲の大勝負だった。
●そのため、ハノイ会談の決裂を受けて「トラウマ的な面目の失壁」を味わった金正恩は、過去 30年の政策方針を破棄し、中露との関係強化へと外交の舵を切り直した
●アフガンからの米軍撤退等の情勢変化を受け、北は米国が世界から勢力を後退させていると認識し、「朝鮮問題の軍事的な解決」を図る好機が到来したと判断するに至った。韓国に対する統一政策の放棄は、軍事力行使の対象として韓国を明確に位置づけ直したものであり、全般的な戦路転換の結果である。
●そして両氏はこの流れから、抑止力強化での戦争防止で十分と考えるのは危険だと主張。ただし両氏の議論は、北問題に十分政策資源を配分していない近年の米国に再考を促すことを求めているが、既存の政策枠組みに対する代替案でも提示してはいない。
●「金正恩は戦争に訴える戦路的決断を下した」との核心部分についても、両氏も認めているようにあくまで状況証拠に基づく推論の域を出ず、反論の余地は多分に残されている。両氏の論考が米国の対北政策に及ぼす影響は限定的で、米国は引き続き日米協力の推進を基軸とした 朝鮮半島政策を展開すると考えられる。
●ただ、少なくとも短期的に、北が低烈度の軍事行動を活発化させると予想する点で専門家の見方は概ね一致してい 最近の日米韓による連携強化の動きを受け、金正恩は自らの「強さ」を内外に示す必要に迫られているはずで、また仮に金正恩がトランプ前大統領の再選に米朝交渉再開の望み持つならば、その布石として予め対外的な緊張を高めておくことはむしろ合理的だろう。
「半島有事の可能性を3つのシナリオ別に検討」論考
●ガルーチが提示するのは大きく3 つのシナリオである。
●第一に、台湾有事が朝鮮半島に波及するシナリオ。台湾をめぐって米中が事を構えれば、北は核保有国として中国支援の役回りを買って出るはずであるから、北朝鮮による核の威嚇を前にして、日本や韓国といった地域の同盟国が機会主義的な行動に走る可能性を米国として懸念。
●第二に、北が自らの核抑止力で米国同盟の信頼性が低下したと誤認し、核の威嚇で韓国に政治的意思を強要するシナリオ。ここで事の帰趨を決定的に左右するのは、抑止をめぐる北朝鮮指導者の主観的な計算であり、客観的には非合理的な決断が下される可能性があり懸念。
●第三に、偶発的事態が戦争へエスカレーションするシナリオ。特に核兵器運用に経験の浅い北が、現場レベルで想定外の行動をとる可能性を懸念。
////////////////////////////////////////////
石田主任研究官は、地震関連の金正恩から岸田首相への見舞いの電報や、首領様の妹女帝による岸田総理の訪朝に関する発言から、現時点では日本に対し北朝鮮は、米国や韓国とは一線を画した対応をとっているとし、日本として日米韓連携を深め北朝鮮の抑止に万全を期すことは無論だが、その先の北朝鮮との関わり方についても、広い視野をもつ必要があるだろう・・・と結んでいます。
日本の地上波や新聞の報道を見ると、「つまらない」を遥かに通り越し、「怒りがわいてくる」方が激増中だと聞き及びましたが、本当ならきわめて健全なことで素晴らしいことだと思います。ご興味のある方は、実質2ページの論考原文を是非ご覧ください
現物「半島有事の蓋然性をめぐる米国内の議論」
→ https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary301.pdf
防衛研究所「NIDS コメンタリー」
「安全保障としての半導体投資」→https://holylandtokyo.com/2024/02/28/5534/
「サイバー傭兵の動向」→https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/
「真の注目は台湾立法院長選出」→https://holylandtokyo.com/2024/01/23/5460/
防衛研究所の「異様な」対中国姿勢がわかる公刊物
「中国による台湾への非接触型・情報化戦争」→https://holylandtokyo.com/2024/01/05/5398/
「中国の影響工作/概要解説」→https://holylandtokyo.com/2023/12/21/5362/
「異様な中国安全保障レポート2024」→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/
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→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
「金正恩は戦争に出る戦路的な決断を下した」論と
「朝鮮半島有事に至る可能性をシナリオ別に検討」論考
2月27日付で防衛省防衛研究所が「NIDS コメンタリー」枠組みで、30代後半の若手研究者(戦史研究センターの国際紛争史研究室主任研究官 石田智範氏)による、実質2ページの「朝鮮半島有事の蓋然性を巡るアメリカ国内の議論」 との短くも異味深い論考を掲載し、「2024年の年明け早々、朝鮮半島有事の蓋然性というテーマが米国の安保政策コミュニティを賑わせた」として2本の論考(共に1月11日発表)を紹介していますので、つまみ食いでご紹介します
最近関心が薄らいでいた北朝鮮問題ですが、経済的な破綻状態が深刻さを増し、最近では年初の能登半島地震発生時に金正恩から岸田首相に見舞い電報が送られたり、首領様の妹女史から岸田首相訪朝に関する発言が飛び出すなど、何やら動きがありそうな雰囲気もありますので、頭の体操としてご覧いただければと思い取り上げさせていただきます
石田主任研究官が取り上げた最初の論考は、核物理学者の Siegfried S. Hecker氏と1990 年代以降の米朝交渉に米国務省で深く携わったRobert L.Carlin 氏(元CIA 分析官)2名による、情報分析サイト「38 North」に掲載された「金正恩は戦争の準備をしているのか?」との連名寄稿で、「すでに金正恩は戦争に訴えるという戦路的な決断を下した」と主張し、朝鮮半島有事の危険性を真剣に訴え注目を集めたものです
もう一つは、元米国務省の北朝鮮核問題担当特使として「米朝枠組み合意」を主導した Robert Gallucci 氏が発表した論考で、朝鮮半島有事に至る可能性をシナリオ別に検討したもので、少なくとも短期的に不安定化のトレンドにある朝鮮半島情勢を考える上で参考になると石田氏が取り上げています
「金正恩は戦争に出る戦路的な決断を下した」論
●まず両氏は前提として、北にとって対話は「核開発の隠れ義に過ぎない」とする定型的な議論を退け、米国との国交正常化が過去30 年の北朝鮮外交の中心的な政策目標であったことを強調。
●いわく、金日成、正日、正恩の三代にわたり北朝鮮は「中と露に対する緩衝材」として米国との国交正常化を真剣に追求してきており、2019年2月のトランプとの米朝首脳会談(@ハノイ)は、金正恩にとり先代達の渇望した偉業を成し、国内的権威確立に向けた乾坤一擲の大勝負だった。
●そのため、ハノイ会談の決裂を受けて「トラウマ的な面目の失壁」を味わった金正恩は、過去 30年の政策方針を破棄し、中露との関係強化へと外交の舵を切り直した
●アフガンからの米軍撤退等の情勢変化を受け、北は米国が世界から勢力を後退させていると認識し、「朝鮮問題の軍事的な解決」を図る好機が到来したと判断するに至った。韓国に対する統一政策の放棄は、軍事力行使の対象として韓国を明確に位置づけ直したものであり、全般的な戦路転換の結果である。
●そして両氏はこの流れから、抑止力強化での戦争防止で十分と考えるのは危険だと主張。ただし両氏の議論は、北問題に十分政策資源を配分していない近年の米国に再考を促すことを求めているが、既存の政策枠組みに対する代替案でも提示してはいない。
●「金正恩は戦争に訴える戦路的決断を下した」との核心部分についても、両氏も認めているようにあくまで状況証拠に基づく推論の域を出ず、反論の余地は多分に残されている。両氏の論考が米国の対北政策に及ぼす影響は限定的で、米国は引き続き日米協力の推進を基軸とした 朝鮮半島政策を展開すると考えられる。
●ただ、少なくとも短期的に、北が低烈度の軍事行動を活発化させると予想する点で専門家の見方は概ね一致してい 最近の日米韓による連携強化の動きを受け、金正恩は自らの「強さ」を内外に示す必要に迫られているはずで、また仮に金正恩がトランプ前大統領の再選に米朝交渉再開の望み持つならば、その布石として予め対外的な緊張を高めておくことはむしろ合理的だろう。
「半島有事の可能性を3つのシナリオ別に検討」論考
●ガルーチが提示するのは大きく3 つのシナリオである。
●第一に、台湾有事が朝鮮半島に波及するシナリオ。台湾をめぐって米中が事を構えれば、北は核保有国として中国支援の役回りを買って出るはずであるから、北朝鮮による核の威嚇を前にして、日本や韓国といった地域の同盟国が機会主義的な行動に走る可能性を米国として懸念。
●第二に、北が自らの核抑止力で米国同盟の信頼性が低下したと誤認し、核の威嚇で韓国に政治的意思を強要するシナリオ。ここで事の帰趨を決定的に左右するのは、抑止をめぐる北朝鮮指導者の主観的な計算であり、客観的には非合理的な決断が下される可能性があり懸念。
●第三に、偶発的事態が戦争へエスカレーションするシナリオ。特に核兵器運用に経験の浅い北が、現場レベルで想定外の行動をとる可能性を懸念。
////////////////////////////////////////////
石田主任研究官は、地震関連の金正恩から岸田首相への見舞いの電報や、首領様の妹女帝による岸田総理の訪朝に関する発言から、現時点では日本に対し北朝鮮は、米国や韓国とは一線を画した対応をとっているとし、日本として日米韓連携を深め北朝鮮の抑止に万全を期すことは無論だが、その先の北朝鮮との関わり方についても、広い視野をもつ必要があるだろう・・・と結んでいます。
日本の地上波や新聞の報道を見ると、「つまらない」を遥かに通り越し、「怒りがわいてくる」方が激増中だと聞き及びましたが、本当ならきわめて健全なことで素晴らしいことだと思います。ご興味のある方は、実質2ページの論考原文を是非ご覧ください
現物「半島有事の蓋然性をめぐる米国内の議論」
→ https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary301.pdf
防衛研究所「NIDS コメンタリー」
「安全保障としての半導体投資」→https://holylandtokyo.com/2024/02/28/5534/
「サイバー傭兵の動向」→https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/
「真の注目は台湾立法院長選出」→https://holylandtokyo.com/2024/01/23/5460/
防衛研究所の「異様な」対中国姿勢がわかる公刊物
「中国による台湾への非接触型・情報化戦争」→https://holylandtokyo.com/2024/01/05/5398/
「中国の影響工作/概要解説」→https://holylandtokyo.com/2023/12/21/5362/
「異様な中国安全保障レポート2024」→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/
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ミクロネシア3国と米の協定COFAピンチ [安全保障全般]
人口20万ながら米本土や日本より広いEEZ
対中国に不可欠な米国の独占的軍事アクセスが予算問題で
政府間の協定延長交渉は合意も、米議会が予算未承認
2月23日付Defense-Newsが、西太平洋で日本より35%も広いEEZ(排他的経済水域)を擁し、現在は米国との自由連合協定(COFA:Compacts of Free Association)により米国から種々の援助を受ける代わりに、米国の独占的な軍事アクセスを許可しているミクロネシア3国(パラオ共和国、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国)とのCOFA協定延長に関し、
2024年9月末で完全失効するCOFA協定の米国と3国政府間の延長交渉は、今後20年間に渡り米国が合計約1兆円の支援を3国に行うことで2023年中に合意しているが、その資金を裏付ける法案を米議会が未だ承認しておらず、この間に、3国の内の2か国との現行協定が失効し、2023年末から現在は臨時支出法案により何とかギリギリ資金を捻出している綱渡り状態にあると報じ、このすき間に中国が進出する可能性等を懸念しています。
国防省のJedidiah Royalアジア太平洋政策担当次官補代理は、パラオ政府が既に予算不足に陥っており、3か国政府関係者からの「米国は本当にこの地域に留まるつもりがあるのか?」との疑念と戦っていると述べ、2019年に3か国近隣のソロモン諸島が外交承認を台湾から中国に切り替え、後に実質的に中国軍や治安部隊を受け入れる協定を結んだことや、2024年1月に島国ナウルも中国との国交を回復している点を例に懸念を表明しています
Defense-News記事は3つの視点で懸念を整理し、
●まずはソロモン諸島やナウルの例から明白なように、中国との勢力争い。米国にとって、ミクロネシア3国は、米国領土のグアムと北マリアナ諸島、およびパプアニューギニアや豪州などの米国の同盟国等と近接し、米安全保障や国防関係者にとって不可欠な領域である
●朝鮮半島や台湾での不測事態の際、ミクロネシア3国やその近接国は、アクセス確保の点から全ての計画の「大前提」になっている存在で、ミクロネシア3国に関してCOFAで米国は、領土への独占的アクセス権を持ち、米国船舶の領海侵入や、米航空機の領空飛行が可能な状態を確保し、同時に、米国は敵対者、特に中国の同様のアクセスを拒否することが可能となっている
●2つ目の懸念は、3か国の島々に現存する米国既存の軍事施設の存在で、マーシャル諸島の「Ronald Reagan Ballistic Missile Defense Test Site」実験場や、パラオに米国が建設中のレーダー施設がこれに当たる
●仮にこれら施設の移設を迫られた場合の必要経費をRoyal次官補代理を把握していないとしているが、外部専門家には「hundreds of billions of dollars(数十兆円)」と見積もる者もいる
●3つ目は、アジア太平洋地域全体における米国政府への信頼度低下の懸念である。ミクロネシア3国との協定延長が円滑に進んでいない現実をアジア太平洋諸国は目にしており、西太平洋地域での対中国作戦で「分散運用」を掲げ、分散拠点を切望している米軍や米国防省にとっては、他国との交渉上の大きなブレーキとなっている
なぜ米議会は予算承認していないのか?
●COFA協定延長に必要な約1兆円($7 billion)は、2024年度国防授権法案に含まれていたが、米下院指導部が約3400億円($2.3 billion)分は他の国防省予算を削減して拠出するよう要求し、2月の期限までに政府と妥協できず、法案に盛り込めなかった経緯がある
●Royal次官補代理は事の重要性に鑑み、事態打開に向け議会への説明を頻繁に行い「立法に向け24時間体制で取り組んでいる」と説明しており、約50人の下院議員からなる超党派のグループも下院議長に書簡を送り、合意形成に努力するよう要請しているが、合意案作成は2月20日時点では行き詰っている
//////////////////////////////////////////
この分野に関し全く基礎知識が欠落しているので「ググって」見つけたのが、ご紹介している外務省など作成の地域のEEZ地図と、以下にURLをご紹介する「日本財団」のミクロネシア3国解説web記事です。
太平洋戦争時の悲惨な記憶を乗り越え、親日的な国も多いことから、日本国民としても関心を持ち、関係強化に努力したいものです
外務省作成の「太平洋の島々」解説スライド
→https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ps_summit/palm_06/pdfs/map.pdf
「日本財団」の解説web記事
→ ここをクリック
太平洋の島々関連の記事
「中国とソロモン諸島の安保協定案リーク」→https://holylandtokyo.com/2022/04/11/3119/
「日本戦前の南洋諸島進出を学ぶ」→https://holylandtokyo.com/2020/08/14/523/
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対中国に不可欠な米国の独占的軍事アクセスが予算問題で
政府間の協定延長交渉は合意も、米議会が予算未承認
2月23日付Defense-Newsが、西太平洋で日本より35%も広いEEZ(排他的経済水域)を擁し、現在は米国との自由連合協定(COFA:Compacts of Free Association)により米国から種々の援助を受ける代わりに、米国の独占的な軍事アクセスを許可しているミクロネシア3国(パラオ共和国、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国)とのCOFA協定延長に関し、
2024年9月末で完全失効するCOFA協定の米国と3国政府間の延長交渉は、今後20年間に渡り米国が合計約1兆円の支援を3国に行うことで2023年中に合意しているが、その資金を裏付ける法案を米議会が未だ承認しておらず、この間に、3国の内の2か国との現行協定が失効し、2023年末から現在は臨時支出法案により何とかギリギリ資金を捻出している綱渡り状態にあると報じ、このすき間に中国が進出する可能性等を懸念しています。
国防省のJedidiah Royalアジア太平洋政策担当次官補代理は、パラオ政府が既に予算不足に陥っており、3か国政府関係者からの「米国は本当にこの地域に留まるつもりがあるのか?」との疑念と戦っていると述べ、2019年に3か国近隣のソロモン諸島が外交承認を台湾から中国に切り替え、後に実質的に中国軍や治安部隊を受け入れる協定を結んだことや、2024年1月に島国ナウルも中国との国交を回復している点を例に懸念を表明しています
Defense-News記事は3つの視点で懸念を整理し、
●まずはソロモン諸島やナウルの例から明白なように、中国との勢力争い。米国にとって、ミクロネシア3国は、米国領土のグアムと北マリアナ諸島、およびパプアニューギニアや豪州などの米国の同盟国等と近接し、米安全保障や国防関係者にとって不可欠な領域である
●朝鮮半島や台湾での不測事態の際、ミクロネシア3国やその近接国は、アクセス確保の点から全ての計画の「大前提」になっている存在で、ミクロネシア3国に関してCOFAで米国は、領土への独占的アクセス権を持ち、米国船舶の領海侵入や、米航空機の領空飛行が可能な状態を確保し、同時に、米国は敵対者、特に中国の同様のアクセスを拒否することが可能となっている
●2つ目の懸念は、3か国の島々に現存する米国既存の軍事施設の存在で、マーシャル諸島の「Ronald Reagan Ballistic Missile Defense Test Site」実験場や、パラオに米国が建設中のレーダー施設がこれに当たる
●仮にこれら施設の移設を迫られた場合の必要経費をRoyal次官補代理を把握していないとしているが、外部専門家には「hundreds of billions of dollars(数十兆円)」と見積もる者もいる
●3つ目は、アジア太平洋地域全体における米国政府への信頼度低下の懸念である。ミクロネシア3国との協定延長が円滑に進んでいない現実をアジア太平洋諸国は目にしており、西太平洋地域での対中国作戦で「分散運用」を掲げ、分散拠点を切望している米軍や米国防省にとっては、他国との交渉上の大きなブレーキとなっている
なぜ米議会は予算承認していないのか?
●COFA協定延長に必要な約1兆円($7 billion)は、2024年度国防授権法案に含まれていたが、米下院指導部が約3400億円($2.3 billion)分は他の国防省予算を削減して拠出するよう要求し、2月の期限までに政府と妥協できず、法案に盛り込めなかった経緯がある
●Royal次官補代理は事の重要性に鑑み、事態打開に向け議会への説明を頻繁に行い「立法に向け24時間体制で取り組んでいる」と説明しており、約50人の下院議員からなる超党派のグループも下院議長に書簡を送り、合意形成に努力するよう要請しているが、合意案作成は2月20日時点では行き詰っている
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この分野に関し全く基礎知識が欠落しているので「ググって」見つけたのが、ご紹介している外務省など作成の地域のEEZ地図と、以下にURLをご紹介する「日本財団」のミクロネシア3国解説web記事です。
太平洋戦争時の悲惨な記憶を乗り越え、親日的な国も多いことから、日本国民としても関心を持ち、関係強化に努力したいものです
外務省作成の「太平洋の島々」解説スライド
→https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ps_summit/palm_06/pdfs/map.pdf
「日本財団」の解説web記事
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太平洋の島々関連の記事
「中国とソロモン諸島の安保協定案リーク」→https://holylandtokyo.com/2022/04/11/3119/
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防衛研究所の論考「安全保障としての半導体投資」 [安全保障全般]
半導体不足問題の概要を分かり易く包括的に
さすが「特別研究官」。肩ひじ張らず多忙な一般人向け
1月19日付で防衛省防衛研究所が「NIDSコメンタリー」の枠組みで、小野圭司・特別研究官による7ページの解説論考「安全保障としての半導体投資」を公開し、様々な要因で世界中で不足状態となっている「半導体」について、まんぐーすの勝手な解釈によると、「日本の半導体産業栄枯盛衰」「現代社会における半導体の重要性」「地政学リスク・生産拠点の偏り」「露のウクライナ侵略があぶりだしたもの」「製造装置の視点」「日本の現状や日本の利不利」の視点で解説されています
小野圭司・特別研究官による小論をご紹介するのは2回目で、2020年8月に今は存在しない防衛研究所の「ブリーフィングメモ」の枠組みで公開された 「サイバー傭兵の動向」(←https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/)を取り上げ、非常に多くのアクセスを頂きました。決して文章をこね回して偉そうに語るのではなく、日々の業務に忙殺されている若手自衛官や安全保障を志す若者や、一般社会を支える働き盛り世代が平易に理解できることを意識した「書きぶり」に「特別研究官」の人間性がにじみ出ているように思うのはまんぐーすだけでしょうか
前置きはこれくらいにして、半導体に関する幅広い話題や視点を概説した小野氏による「NIDSコメンタリー」を、まんぐーすの勝手な理解と再構成に基づき、項目建てや記載順序や表現ぶりを変更してご紹介いたします
「日本の半導体産業栄枯盛衰史」
●WW2時から米国がリードし、1960-70年代のアポロ計画で半導体技術を向上させた米国の技術覇権は揺ぎ無きものであったが、1980年代に入り日本が急速に追い上げ、1988年には半導体売上で世界上位3社を日本企業が独占し、10位以内に6社が占める勢いを見せた
●しかし、日本企業が総合電機メーカーの1分野として半導体事業を扱い、変化の激しいい急激な「シリコンサイクル」への対応の意思決定で後れを取り、更にプラザ合意を受けた急激な円高、日米貿易摩擦が生んだ日米半導体協定による米国製購入の強制、日本企業による米国企業買収の政治圧力阻止等で弱体化した日本企業は、「失われた30年」に突入して今日に至っている
「半導体の重要性と需給ひっ迫」
●センサー多用による半導体需要急増→普通自動車1台に500個→電気自動車は1500個に→更にAI自動運転車両となると3000個以上の半導体が必要に。ジェットエンジンや艦艇ガスタービンエンジン制御にも1基につき5000個など需要急増
●5Gやデータセンタ需要の拡大、コロナによる在宅勤務や巣ごもり需要によるPCなど情報家電の需要増、生成AIの開発に必要な画像処理半導体の需要急増、米中対立による中国製半導体の市場からの排除、日本の半導体工場の連続火災、米国半導体工場の停電事故による製造停止などの需給ひっ迫要因
「地政学リスク・生産拠点の偏り」
●今や最も軍事的緊張が高い朝鮮半島や台湾海峡に関連する台湾・韓国・中国が、世界の半導体の60%以上を製造しているという、いびつな生産拠点分布が抱える地政学リスク
●米国は、米国企業による半導体製造占有率は54%あるが、米国内製造はわずか11%で、非常時の半導体確保面で大きなリスクを抱えていると認識し、1980年代の日本企業たたきに見られた「半導体ナショナリズム」ではなく、米国企業でなくてもよいから米国内で製造してくれる企業を求める「半導体の地産地消」を追求しようとしている
●米国は台湾TSMC等に米本土での生産拠点設置を求めているが、台湾は「米軍向け半導体供給」との自国安全保障上の切り札として、簡単には米本土での工場建設を受け入れないだろう
●日本の千歳市に建設中の国家プロジェクト「ラビダス」工場建設も、5兆円以上の投資を計画しているが、日本企業や日本政府による4兆円以上だけでなく、台湾TSMCや米企業など外資系企業からも1兆円以上の投資を受け入れる形態をとっている
「露のウクライナ侵略があぶりだしたもの」
●ロシアは半導体の9割以上を海外に依存しており、露への半導体経済制裁は露の戦争継続能力を削ぐであろうと期待されたが、期待されたほどの成果は上がっていない
●露やウクライナが使用しているハイテク兵器でも、最先端のロジック半導体やメモリーを多数使用しているわけではなく、信号をデジタル変換するアナログ半導体や、電力制御用のパワー半導体が大半を占めている
●また露もウクライナも多数の無人機を投入しており、どんなに単純な小型無人機でも半導体は不可欠だが、これも最先端の半導体が使用されているわけではない
●西側による露への半導体輸出規制は半年で効力を失ったとされている。経済制裁に加わっていない中国香港、トルコ、UAE、カザフスタンなどを経由して、「半導体ロンダリング」されて西側から流出しているのが実態。
●家電製品もロシアに迂回輸出され、「ロシアは冷蔵庫や食洗器から半導体を取り出し、軍装備の修理に充当している」とEU委員長が指摘したケースもある
●半導体製造に重要な役割を果たす露光装置に必要な「ネオンガス」は、ウクライナが世界の供給量の7割を算出しており、価格が一時10倍に跳ね上がった。同じく露光工程に必要なパラジウムもロシアが世界生産の4割を占め価格が2倍に
「製造装置の視点」
●2022年10月にバイデン政権は、先端半導体やその製造装置・技術の中国向け輸出を事実上禁じ、半導体製造装置に強いオランダと日本にも同調を求めた
●ところが多く使用されているパワー半導体は先端品でない為、輸出規制対象外の装置で製造可能で、中国企業が内製化に取り組んでおり、中国の半導体製造大手SMICは輸出規制対象外の装置で先端半導体に当たる7ナノメートルの半導体製造に成功したとも報じられている
「日本の現状や日本にとっての利不利」
●ハイテク兵器でも使用され、需要が大きいパワー半導体は日本企業の得意分野でもあるが、次世代パワー半導体SiC(炭化ケイ素)パワー半導体では日本は劣勢である
●半導体製造装置では、日本が強みを発揮している部分もあるが、市場規模が大きい装置では、米国やオランダ企業が社の大半を抑えている
●半導体製造の全側面を押さえた「純国産」は現実的ではない。日本には強みを有する部分での競争力を維持・拡大して、他の機材・部材の交渉力に結び付ける努力が求められ、そのための人材育成は不可欠。バブル崩壊後のその場凌ぎの対応で、半導体人材や脳を流出させた愚は繰り返してはならない。
●日本は半導体製造に重要な水確保面で優位である。半導体の生産拠点である中国沿岸部・欧州のほぼ全域、米国・韓国の広い範囲で水資源が危機に直面しており、台湾も台湾島中南部では慢性的な水不足である。他方、日本については、概ね水資源のリスクは低い
●半導体製造に大量に必要な電力確保は日本にとってのアキレス腱。TSMC、サムスン電子、SK ハイニックスが消費する電力は、各社が台湾・韓国の総発電量の 5~6%に達する。韓国では政策的に電気料金が抑えられており、これは半導体産業にとっては「見えない補助金」に等しい
●日本では東日本大震災以降、火力発電比率が上昇し電気料金も上がっている。最近では、生成 AI利用が各方面で始まっているが、生成 AI は開発&利用は相当量の電力が必要。日本でも国産生成 AI 開発が進められているが、これは半導体需要を促す一方で、電力消費面で半導体製造業と競合する。
●火力発電の比率を引き下げて、安価で安定した電力供給の体制を整備することは、エネルギー安全保 障や地球温暖化対策だけではなく、「戦略物資」としての半導体確保の上でも重要である。 特にコメントはありませんが、いつものように、まんぐーすによる「つまみ食い」記事ですので、ご興味のある方もない方も、ぜひ一度原文をご覧いただければ・・・と思います
7ページの論考現物
→ https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary293.pdf
小野圭司・特別研究官による解説論考
「サイバー傭兵の動向」→https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
さすが「特別研究官」。肩ひじ張らず多忙な一般人向け
1月19日付で防衛省防衛研究所が「NIDSコメンタリー」の枠組みで、小野圭司・特別研究官による7ページの解説論考「安全保障としての半導体投資」を公開し、様々な要因で世界中で不足状態となっている「半導体」について、まんぐーすの勝手な解釈によると、「日本の半導体産業栄枯盛衰」「現代社会における半導体の重要性」「地政学リスク・生産拠点の偏り」「露のウクライナ侵略があぶりだしたもの」「製造装置の視点」「日本の現状や日本の利不利」の視点で解説されています
小野圭司・特別研究官による小論をご紹介するのは2回目で、2020年8月に今は存在しない防衛研究所の「ブリーフィングメモ」の枠組みで公開された 「サイバー傭兵の動向」(←https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/)を取り上げ、非常に多くのアクセスを頂きました。決して文章をこね回して偉そうに語るのではなく、日々の業務に忙殺されている若手自衛官や安全保障を志す若者や、一般社会を支える働き盛り世代が平易に理解できることを意識した「書きぶり」に「特別研究官」の人間性がにじみ出ているように思うのはまんぐーすだけでしょうか
前置きはこれくらいにして、半導体に関する幅広い話題や視点を概説した小野氏による「NIDSコメンタリー」を、まんぐーすの勝手な理解と再構成に基づき、項目建てや記載順序や表現ぶりを変更してご紹介いたします
「日本の半導体産業栄枯盛衰史」
●WW2時から米国がリードし、1960-70年代のアポロ計画で半導体技術を向上させた米国の技術覇権は揺ぎ無きものであったが、1980年代に入り日本が急速に追い上げ、1988年には半導体売上で世界上位3社を日本企業が独占し、10位以内に6社が占める勢いを見せた
●しかし、日本企業が総合電機メーカーの1分野として半導体事業を扱い、変化の激しいい急激な「シリコンサイクル」への対応の意思決定で後れを取り、更にプラザ合意を受けた急激な円高、日米貿易摩擦が生んだ日米半導体協定による米国製購入の強制、日本企業による米国企業買収の政治圧力阻止等で弱体化した日本企業は、「失われた30年」に突入して今日に至っている
「半導体の重要性と需給ひっ迫」
●センサー多用による半導体需要急増→普通自動車1台に500個→電気自動車は1500個に→更にAI自動運転車両となると3000個以上の半導体が必要に。ジェットエンジンや艦艇ガスタービンエンジン制御にも1基につき5000個など需要急増
●5Gやデータセンタ需要の拡大、コロナによる在宅勤務や巣ごもり需要によるPCなど情報家電の需要増、生成AIの開発に必要な画像処理半導体の需要急増、米中対立による中国製半導体の市場からの排除、日本の半導体工場の連続火災、米国半導体工場の停電事故による製造停止などの需給ひっ迫要因
「地政学リスク・生産拠点の偏り」
●今や最も軍事的緊張が高い朝鮮半島や台湾海峡に関連する台湾・韓国・中国が、世界の半導体の60%以上を製造しているという、いびつな生産拠点分布が抱える地政学リスク
●米国は、米国企業による半導体製造占有率は54%あるが、米国内製造はわずか11%で、非常時の半導体確保面で大きなリスクを抱えていると認識し、1980年代の日本企業たたきに見られた「半導体ナショナリズム」ではなく、米国企業でなくてもよいから米国内で製造してくれる企業を求める「半導体の地産地消」を追求しようとしている
●米国は台湾TSMC等に米本土での生産拠点設置を求めているが、台湾は「米軍向け半導体供給」との自国安全保障上の切り札として、簡単には米本土での工場建設を受け入れないだろう
●日本の千歳市に建設中の国家プロジェクト「ラビダス」工場建設も、5兆円以上の投資を計画しているが、日本企業や日本政府による4兆円以上だけでなく、台湾TSMCや米企業など外資系企業からも1兆円以上の投資を受け入れる形態をとっている
「露のウクライナ侵略があぶりだしたもの」
●ロシアは半導体の9割以上を海外に依存しており、露への半導体経済制裁は露の戦争継続能力を削ぐであろうと期待されたが、期待されたほどの成果は上がっていない
●露やウクライナが使用しているハイテク兵器でも、最先端のロジック半導体やメモリーを多数使用しているわけではなく、信号をデジタル変換するアナログ半導体や、電力制御用のパワー半導体が大半を占めている
●また露もウクライナも多数の無人機を投入しており、どんなに単純な小型無人機でも半導体は不可欠だが、これも最先端の半導体が使用されているわけではない
●西側による露への半導体輸出規制は半年で効力を失ったとされている。経済制裁に加わっていない中国香港、トルコ、UAE、カザフスタンなどを経由して、「半導体ロンダリング」されて西側から流出しているのが実態。
●家電製品もロシアに迂回輸出され、「ロシアは冷蔵庫や食洗器から半導体を取り出し、軍装備の修理に充当している」とEU委員長が指摘したケースもある
●半導体製造に重要な役割を果たす露光装置に必要な「ネオンガス」は、ウクライナが世界の供給量の7割を算出しており、価格が一時10倍に跳ね上がった。同じく露光工程に必要なパラジウムもロシアが世界生産の4割を占め価格が2倍に
「製造装置の視点」
●2022年10月にバイデン政権は、先端半導体やその製造装置・技術の中国向け輸出を事実上禁じ、半導体製造装置に強いオランダと日本にも同調を求めた
●ところが多く使用されているパワー半導体は先端品でない為、輸出規制対象外の装置で製造可能で、中国企業が内製化に取り組んでおり、中国の半導体製造大手SMICは輸出規制対象外の装置で先端半導体に当たる7ナノメートルの半導体製造に成功したとも報じられている
「日本の現状や日本にとっての利不利」
●ハイテク兵器でも使用され、需要が大きいパワー半導体は日本企業の得意分野でもあるが、次世代パワー半導体SiC(炭化ケイ素)パワー半導体では日本は劣勢である
●半導体製造装置では、日本が強みを発揮している部分もあるが、市場規模が大きい装置では、米国やオランダ企業が社の大半を抑えている
●半導体製造の全側面を押さえた「純国産」は現実的ではない。日本には強みを有する部分での競争力を維持・拡大して、他の機材・部材の交渉力に結び付ける努力が求められ、そのための人材育成は不可欠。バブル崩壊後のその場凌ぎの対応で、半導体人材や脳を流出させた愚は繰り返してはならない。
●日本は半導体製造に重要な水確保面で優位である。半導体の生産拠点である中国沿岸部・欧州のほぼ全域、米国・韓国の広い範囲で水資源が危機に直面しており、台湾も台湾島中南部では慢性的な水不足である。他方、日本については、概ね水資源のリスクは低い
●半導体製造に大量に必要な電力確保は日本にとってのアキレス腱。TSMC、サムスン電子、SK ハイニックスが消費する電力は、各社が台湾・韓国の総発電量の 5~6%に達する。韓国では政策的に電気料金が抑えられており、これは半導体産業にとっては「見えない補助金」に等しい
●日本では東日本大震災以降、火力発電比率が上昇し電気料金も上がっている。最近では、生成 AI利用が各方面で始まっているが、生成 AI は開発&利用は相当量の電力が必要。日本でも国産生成 AI 開発が進められているが、これは半導体需要を促す一方で、電力消費面で半導体製造業と競合する。
●火力発電の比率を引き下げて、安価で安定した電力供給の体制を整備することは、エネルギー安全保 障や地球温暖化対策だけではなく、「戦略物資」としての半導体確保の上でも重要である。 特にコメントはありませんが、いつものように、まんぐーすによる「つまみ食い」記事ですので、ご興味のある方もない方も、ぜひ一度原文をご覧いただければ・・・と思います
7ページの論考現物
→ https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary293.pdf
小野圭司・特別研究官による解説論考
「サイバー傭兵の動向」→https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/
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米国政府:露が核使用の対衛星兵器開発中 [安全保障全般]
米議員の問題提起を契機に米大統領府報道官が認める
ロシアによる「宇宙条約」違反のやりたい放題
2月14日の米下院情報委員会(House Intelligence Committee)委員長Mike Turner議員(共和党)による米国政府への情報開示請求に端を発し、メディアを巻き込んで話題となっている「ロシアによる核を用いた宇宙配備の対衛星兵器開発」に関し、15日にはJohn Kirbyホワイトハウス報道官が記者会見で自ら冒頭から本件を切り出して、「この場で説明できる範囲は限定されるが、米国情報機関は以前から本件を察知してフォローしており、大統領にも報告されている」と説明しました
まずTurner委員長は米国時間14日に、「深刻な国家安全保障上の脅威に関する懸念事項が生起しつつあり、同盟国を含めてどう対処すべきかを議論するため、バイデン大統領に関連の情報を秘密制限解除して説明するように求めた」と米下院のXアカウントを通じて明らかにし、そこから「ロシアによる核を用いた対衛星兵器開発」に関する件だとメディアや専門家が発信してこのような事態になっている模様です
15日の定例記者会見でのKirby報道官の説明
●Turner委員長が言及した脅威については、その秘密レベルからこの場で共有できることは限られるが、ロシアが開発中の対衛星兵器に関するものである
●同兵器はまだ完成しておらず使用可能な状態にはないが、ロシアが開発中の同兵器は宇宙に配備することを想定したもので、仮に同兵器をロシアが打ち上げられるようなことになれば、露を含む130国以上の国が批准(1967年発効で、日本は同年に批准)している宇宙条約(Outer Space Treaty)が定めた、核兵器の宇宙への展開を禁じた条項に違反することとなる
●ロシアはこの種の兵器開発に、何年も前からではないが、何か月も前から取り組んでいたが、米国情報機関がここ数週間で、ロシアが本兵器開発をどのように進めているかに関しより確度の高い情報を入手できた
●(記者から、ウクライナ支援に対する共和党の反対姿勢に対抗するための議会対策として、このようなロシア関連情報を利用しているのでは、との憶測も報じられているがとの質問に対し、一言で回答、) Bollocksだ(たわごとに過ぎない!)
Avril Haines国家情報長官(Director of National Intelligence:講道館へ1年間柔道修行留学したこともある異色の女性長官です!)による2023年脅威分析報告書では
●ロシアは引き続き、宇宙関連ロシア軍部隊の強化と、米国やその同盟国の宇宙活動能力を破砕し低下させる兵器の配備に努めており、破壊と非破壊手段の両方で、地上発射と宇宙配備型の電磁波、サイバー、エネルギーを利用した兵器を含む開発に取り組んでいる・・・と記述されています
更にまた米宇宙軍トップのSaltzman大将は13日に、
●我々は、ロシアや中国による「nefarious:極悪非道」な宇宙兵器開発を目の当たりにしている。他に適切な形容詞があればぜひ教えてほしいが、とても、極めて憂慮すべきレベルである
////////////////////////////////////////////
2月16日には、ロシアで反政府・反プーチン活動を行って逮捕拘留されていたナワヌルイ氏が、北極圏内にある刑務所で死亡したとのニュースが世界を駆け巡りましたが、プーチンの「nefarious:極悪非道」ぶりは留まるところを知りません。
具体的にどのような対衛星兵器なのかわかりませんが、人類共通の公共財である宇宙空間を、核爆発による強烈な電磁波やそれによって生じる宇宙ゴミで無差別に破壊しかねない試みに、心の底から怒りを覚えます
Mike Turner下院情報委員長の声明文(Xへの投稿)
→https://twitter.com/houseintel/status/1757805804885823775?s=46&t=pYNJFAcMl-cz2vCabuai5g
Haines国家情報長官の関連記事
「ロシアの弾薬不足」→https://holylandtokyo.com/2022/12/08/4032/
「中国の宇宙兵器開発」→https://holylandtokyo.com/2021/04/27/116/
宇宙条約(Outer Space Treaty)等に関する外務省の解説
→https://www.disarm.emb-japan.go.jp/itpr_ja/chap12.html
John Kirby大統領府報道官の会見トランスクリプト
→https://www.whitehouse.gov/briefing-room/press-briefings/2024/02/15/press-briefing-by-press-secretary-karine-jean-pierre-and-white-house-national-security-communications-advisor-john-kirby-3/
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ロシアによる「宇宙条約」違反のやりたい放題
2月14日の米下院情報委員会(House Intelligence Committee)委員長Mike Turner議員(共和党)による米国政府への情報開示請求に端を発し、メディアを巻き込んで話題となっている「ロシアによる核を用いた宇宙配備の対衛星兵器開発」に関し、15日にはJohn Kirbyホワイトハウス報道官が記者会見で自ら冒頭から本件を切り出して、「この場で説明できる範囲は限定されるが、米国情報機関は以前から本件を察知してフォローしており、大統領にも報告されている」と説明しました
まずTurner委員長は米国時間14日に、「深刻な国家安全保障上の脅威に関する懸念事項が生起しつつあり、同盟国を含めてどう対処すべきかを議論するため、バイデン大統領に関連の情報を秘密制限解除して説明するように求めた」と米下院のXアカウントを通じて明らかにし、そこから「ロシアによる核を用いた対衛星兵器開発」に関する件だとメディアや専門家が発信してこのような事態になっている模様です
15日の定例記者会見でのKirby報道官の説明
●Turner委員長が言及した脅威については、その秘密レベルからこの場で共有できることは限られるが、ロシアが開発中の対衛星兵器に関するものである
●同兵器はまだ完成しておらず使用可能な状態にはないが、ロシアが開発中の同兵器は宇宙に配備することを想定したもので、仮に同兵器をロシアが打ち上げられるようなことになれば、露を含む130国以上の国が批准(1967年発効で、日本は同年に批准)している宇宙条約(Outer Space Treaty)が定めた、核兵器の宇宙への展開を禁じた条項に違反することとなる
●ロシアはこの種の兵器開発に、何年も前からではないが、何か月も前から取り組んでいたが、米国情報機関がここ数週間で、ロシアが本兵器開発をどのように進めているかに関しより確度の高い情報を入手できた
●(記者から、ウクライナ支援に対する共和党の反対姿勢に対抗するための議会対策として、このようなロシア関連情報を利用しているのでは、との憶測も報じられているがとの質問に対し、一言で回答、) Bollocksだ(たわごとに過ぎない!)
Avril Haines国家情報長官(Director of National Intelligence:講道館へ1年間柔道修行留学したこともある異色の女性長官です!)による2023年脅威分析報告書では
●ロシアは引き続き、宇宙関連ロシア軍部隊の強化と、米国やその同盟国の宇宙活動能力を破砕し低下させる兵器の配備に努めており、破壊と非破壊手段の両方で、地上発射と宇宙配備型の電磁波、サイバー、エネルギーを利用した兵器を含む開発に取り組んでいる・・・と記述されています
更にまた米宇宙軍トップのSaltzman大将は13日に、
●我々は、ロシアや中国による「nefarious:極悪非道」な宇宙兵器開発を目の当たりにしている。他に適切な形容詞があればぜひ教えてほしいが、とても、極めて憂慮すべきレベルである
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2月16日には、ロシアで反政府・反プーチン活動を行って逮捕拘留されていたナワヌルイ氏が、北極圏内にある刑務所で死亡したとのニュースが世界を駆け巡りましたが、プーチンの「nefarious:極悪非道」ぶりは留まるところを知りません。
具体的にどのような対衛星兵器なのかわかりませんが、人類共通の公共財である宇宙空間を、核爆発による強烈な電磁波やそれによって生じる宇宙ゴミで無差別に破壊しかねない試みに、心の底から怒りを覚えます
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John Kirby大統領府報道官の会見トランスクリプト
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台湾近傍フィリピン北端に米国支援で軍施設増強中 [安全保障全般]
バシー海峡の真ん中の島にも港湾施設増強
フィリピン北端エリアの空港や港湾再整備
2月5日付Defense-Newsは、対中国を念頭に置いたフィリピンと米国間の防衛協力合意(2014年締結:EDCA:Enhanced Defense Cooperation Agreement)に基づき、米国支援によりフィリピン国内で進む港湾や空港や倉庫や兵舎等整備について取り上げ、特に台湾とフィリピン間の国境となるバシー海峡に面するフィリピン北端地域や、バシー海峡中間にあるフィリピン領の島での施設整備など、中国が発狂して「力でねじ伏せる」とわめきちらす取り組みをご紹介します
特にフィリピンは、2022年7月に就任したマルコスJr大統領が対中国を意識して米国との連携強化に大きくかじを取り、米軍が対中国で「戦力の分散運用」を目指す中で、分散展開先や物資集積場所等になりそうな場所提供を積極的に進め始めており、2014年のEDCA締結後に5か所、2023年には追加で4か所の計9か所で港湾や空港や倉庫や兵舎等のプロジェクトが進んでおり、最近もオースチン国防長官がマルコス大統領と米軍プレゼンス拡大に合意したところです
当然フィリピン側にも中国の「息のかかった」と推測される、某沖縄知事の様な反米親中政治家がおり、「米軍基地が整備されると中国の攻撃目標になり、戦争に巻き込まれる」と叫んでおり、米国もフィリピン政府側も9か所でのプロジェクトについては「ロープロファイル」の説明ぶりで、
例えば2014年から23年までのプロジェクト数について、米国報道官が14プロジェクト約84億円と言えば、元フィリピン側関係者は実際には21プロジェクト約120億円相当と語るなど細部不明な状態ですが、2024年度はフィリピン政府発表が14プロジェクトで、米側関係者は34プロジェクトと語る共同プロジェクト花盛りの急激右肩上がり状態で米比関係が加速推進されています
注目すべきプロジェクトは、台湾との国境となるフィリピン北端「Cagayan province」で進む、比「Naval Base Camilo Osias」やその約60㎞西側で具体的検討が進む比「Lal-Lo Airport」での燃料貯蔵施設や指揮統制センター建設プロジェクト、更にバシー海峡中間点付近の島々で構成される比「Batanes province」で進む港湾施設計画で、比海軍が昨年10月から先行展開して着々と準備が進むプロジェクトなどです
まんぐーす自作の見づらい地図を1つ添付していますが、中国政府が「米国はこれらプロジェクトが災害対処や地域経済振興の一環だと主張し、フィリピン政府関係者は難民対策にもなる等と意味不明の言い訳をしているが、単純にして明確に、米国が先導する米同盟国をそそのかした中国囲い込み政策だ」、「フィリピン政府の協力姿勢は、極めて深刻にフィリピンの国益を損なうことになり、地域の安定も危険にさらすことになる」とわめき叫ぶのも納得の大胆さです
感心するのはフィリピンの元比政府外交関係者で現在政府系コンサルタント会社を率いるフィリピン識者が、「米国側関係者と面談すると、台湾有事への備えが最優先事項だと鼻息荒いが、我々はその際は当てにしないでくれ・・・と米側には言っている」、「でもフィリピンでは、米国が比を去ることをだれも望んでいない、なぜなら、米が去れば、中国がもっと攻撃的になると知っているからだ」と達観した現実的な視点を根っこに持っている点です
////////////////////////////////////////
ドゥテルテ大統領時代に、米国が同大統領の麻薬撲滅作戦を「人道的に問題」などと非難しなければ、5年以上前から米比関係は右肩上がりの改善を見せたと思いますが、フィリピンの動きは日本も是非学びたいものです
中国経済の限界が不動産バブル崩壊によって顕在化し、金融崩壊に至る今となっては中国共産党支配体制の崩壊まで見えてきそうな様相となっていますが、今がチャンスです。中国包囲網を強化いたしましょう!!!
フィリピン関連の記事
「米空軍F-22が初展開」→https://holylandtokyo.com/2023/03/24/4442/
「米軍のアジア太平洋協力強化」→https://holylandtokyo.com/2023/02/20/4294/
「比の新大統領は中国寄り?」→https://holylandtokyo.com/2022/07/08/3450/
「日本製監視レーダー提供へ」→https://holylandtokyo.com/2020/08/31/536/
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フィリピン北端エリアの空港や港湾再整備
2月5日付Defense-Newsは、対中国を念頭に置いたフィリピンと米国間の防衛協力合意(2014年締結:EDCA:Enhanced Defense Cooperation Agreement)に基づき、米国支援によりフィリピン国内で進む港湾や空港や倉庫や兵舎等整備について取り上げ、特に台湾とフィリピン間の国境となるバシー海峡に面するフィリピン北端地域や、バシー海峡中間にあるフィリピン領の島での施設整備など、中国が発狂して「力でねじ伏せる」とわめきちらす取り組みをご紹介します
特にフィリピンは、2022年7月に就任したマルコスJr大統領が対中国を意識して米国との連携強化に大きくかじを取り、米軍が対中国で「戦力の分散運用」を目指す中で、分散展開先や物資集積場所等になりそうな場所提供を積極的に進め始めており、2014年のEDCA締結後に5か所、2023年には追加で4か所の計9か所で港湾や空港や倉庫や兵舎等のプロジェクトが進んでおり、最近もオースチン国防長官がマルコス大統領と米軍プレゼンス拡大に合意したところです
当然フィリピン側にも中国の「息のかかった」と推測される、某沖縄知事の様な反米親中政治家がおり、「米軍基地が整備されると中国の攻撃目標になり、戦争に巻き込まれる」と叫んでおり、米国もフィリピン政府側も9か所でのプロジェクトについては「ロープロファイル」の説明ぶりで、
例えば2014年から23年までのプロジェクト数について、米国報道官が14プロジェクト約84億円と言えば、元フィリピン側関係者は実際には21プロジェクト約120億円相当と語るなど細部不明な状態ですが、2024年度はフィリピン政府発表が14プロジェクトで、米側関係者は34プロジェクトと語る共同プロジェクト花盛りの急激右肩上がり状態で米比関係が加速推進されています
注目すべきプロジェクトは、台湾との国境となるフィリピン北端「Cagayan province」で進む、比「Naval Base Camilo Osias」やその約60㎞西側で具体的検討が進む比「Lal-Lo Airport」での燃料貯蔵施設や指揮統制センター建設プロジェクト、更にバシー海峡中間点付近の島々で構成される比「Batanes province」で進む港湾施設計画で、比海軍が昨年10月から先行展開して着々と準備が進むプロジェクトなどです
まんぐーす自作の見づらい地図を1つ添付していますが、中国政府が「米国はこれらプロジェクトが災害対処や地域経済振興の一環だと主張し、フィリピン政府関係者は難民対策にもなる等と意味不明の言い訳をしているが、単純にして明確に、米国が先導する米同盟国をそそのかした中国囲い込み政策だ」、「フィリピン政府の協力姿勢は、極めて深刻にフィリピンの国益を損なうことになり、地域の安定も危険にさらすことになる」とわめき叫ぶのも納得の大胆さです
感心するのはフィリピンの元比政府外交関係者で現在政府系コンサルタント会社を率いるフィリピン識者が、「米国側関係者と面談すると、台湾有事への備えが最優先事項だと鼻息荒いが、我々はその際は当てにしないでくれ・・・と米側には言っている」、「でもフィリピンでは、米国が比を去ることをだれも望んでいない、なぜなら、米が去れば、中国がもっと攻撃的になると知っているからだ」と達観した現実的な視点を根っこに持っている点です
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ドゥテルテ大統領時代に、米国が同大統領の麻薬撲滅作戦を「人道的に問題」などと非難しなければ、5年以上前から米比関係は右肩上がりの改善を見せたと思いますが、フィリピンの動きは日本も是非学びたいものです
中国経済の限界が不動産バブル崩壊によって顕在化し、金融崩壊に至る今となっては中国共産党支配体制の崩壊まで見えてきそうな様相となっていますが、今がチャンスです。中国包囲網を強化いたしましょう!!!
フィリピン関連の記事
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米がトルコへの最新F-16と改修キット売却承認 [安全保障全般]
トルコのスウェーデンNATO加盟承認を受け
F-35計画から排除されたトルコに代替戦闘機として
トルコの「米国戦術核兵器シェアリング」にも貢献か
1月27日付Defense-Newsが、スウェーデンのNATO加盟に反対していたトルコが賛成すると米国政府に約束したことを受け、米国務省が40機の最新F-16と79機分のF-16近代化改修キットを$23 billion(約3兆4000億円)で売却することを承認(正確には米議会に通知)したと報じています。米議会内にはトルコの人権問題を理由にF-16売却に反対する有力議員も存在するようですが、トルコが人権問題を改善すると一応コミットしたことで、この話は進むようです
トルコがスウェーデンのNATO加盟に反対している表面上の理由は、トルコに対し反政府活動をしているクルド人等へのスウェーデンの姿勢が不適切との説明ですが、一般にはトルコが「駆け引き材料」としてスウェーデンのNATO加盟承認を利用している見られていました
一方でトルコの戦闘機問題の経緯は・・・
●トルコは約200機のF-16戦闘機を保有運用しているが、その中の旧式F-16約100機をF-35に更新し、残り約100機(現在は79機)を能力向上するとの構想の下、F-35共同開発メンバー(部品の製造分担を含む)に当初から参加していたが、2019年にトルコが防空ミサイル選定でロシア製S-400の導入決定したことでトルコ防空を実質支えてきた西側諸国が猛反発、トルコをF-35計画から排除することを米国トランプ政権が2019年9月に決定
●F-35導入の道を断たれたトルコには、ロシアがSU-35やステルス機SU-57E売り込んだり、トルコ自身が国産ステルス戦闘機TF-X開発に本腰との動きもあったが、有効性や実行可能性の問題から話は進まず、また100機のF-16能力向上についてもとん挫。ただ、NATO唯一のイスラム国であるトルコとの関係も米には重要で、F-35部品調達のトルコ完全脱却も時間が必要等の点から、2021年10月に「米がトルコにF-16売却提案」との報道が。
●別の視点として、欧州NATO諸国(ドイツ、ベルギー、オランダ、イタリア、トルコ)による「米国戦術核兵器シェアリング」任務で、有事必要時には、5か国の戦闘爆撃機によりB61戦術核爆弾が運搬&投下する約束がなされていますが、この役割をトルコに継続させるため、長く使用可能な最新F-16をトルコに提供する意味も多少はあると思料
2022年2月からのロシアによるウクライナ侵略を受けた「中立国スウェーデンやフィンランドのNATO加盟の動き」は、2023年4月に露と長い国境線を持つフィンランドの加盟が実現して大きく前進しましたが、スウェーデンの加盟については、トルコとハンガリーの反対で1年以上ごたごたしています。
残るはハンガリーだけですが、トルコの態度変更を受け、ハンガリー首相が反対姿勢転換の方向性を示すも、翌1月25日には同じ政党所属の議会議長が「判断を急ぐ必要はない」と発言しており、「露骨にロシアに肩入れし、ウクライナ支援や北欧国の新規加盟を妨害し続けている」ハンガリーに対し、NATOや西側諸国からは「NATOはハンガリーに対する安全保障の部分的停止も視野に入れるべき」、「ハンガリーをEUから蹴り出せ」との声も高まっています
忘れてました・・・同記事はギリシャが40機のF-35を購入することも、米国務省が承認したと報じています。諸経費を含め1.26兆円とか・・破綻国家に売却して大丈夫なのでしょうか・・・?
スウェーデン関連の記事
「欧州戦闘機計画とス」→https://holylandtokyo.com/2023/12/18/5352/
「欧州空の盾計画にスが参加」→https://holylandtokyo.com/2023/07/12/4828/
「B-1爆撃機が初展開」→https://holylandtokyo.com/2023/06/22/4780/
トルコへのF-35提供停止などの経緯
「F-35代替でF-16提案か?」→https://holylandtokyo.com/2021/10/20/2357/
「トルコへのF-35部品依存」→https://holylandtokyo.com/2020/10/14/432/
「トルコ代替で米で部品製造」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-27
「トルコをF-35計画から除外」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14
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F-35計画から排除されたトルコに代替戦闘機として
トルコの「米国戦術核兵器シェアリング」にも貢献か
1月27日付Defense-Newsが、スウェーデンのNATO加盟に反対していたトルコが賛成すると米国政府に約束したことを受け、米国務省が40機の最新F-16と79機分のF-16近代化改修キットを$23 billion(約3兆4000億円)で売却することを承認(正確には米議会に通知)したと報じています。米議会内にはトルコの人権問題を理由にF-16売却に反対する有力議員も存在するようですが、トルコが人権問題を改善すると一応コミットしたことで、この話は進むようです
トルコがスウェーデンのNATO加盟に反対している表面上の理由は、トルコに対し反政府活動をしているクルド人等へのスウェーデンの姿勢が不適切との説明ですが、一般にはトルコが「駆け引き材料」としてスウェーデンのNATO加盟承認を利用している見られていました
一方でトルコの戦闘機問題の経緯は・・・
●トルコは約200機のF-16戦闘機を保有運用しているが、その中の旧式F-16約100機をF-35に更新し、残り約100機(現在は79機)を能力向上するとの構想の下、F-35共同開発メンバー(部品の製造分担を含む)に当初から参加していたが、2019年にトルコが防空ミサイル選定でロシア製S-400の導入決定したことでトルコ防空を実質支えてきた西側諸国が猛反発、トルコをF-35計画から排除することを米国トランプ政権が2019年9月に決定
●F-35導入の道を断たれたトルコには、ロシアがSU-35やステルス機SU-57E売り込んだり、トルコ自身が国産ステルス戦闘機TF-X開発に本腰との動きもあったが、有効性や実行可能性の問題から話は進まず、また100機のF-16能力向上についてもとん挫。ただ、NATO唯一のイスラム国であるトルコとの関係も米には重要で、F-35部品調達のトルコ完全脱却も時間が必要等の点から、2021年10月に「米がトルコにF-16売却提案」との報道が。
●別の視点として、欧州NATO諸国(ドイツ、ベルギー、オランダ、イタリア、トルコ)による「米国戦術核兵器シェアリング」任務で、有事必要時には、5か国の戦闘爆撃機によりB61戦術核爆弾が運搬&投下する約束がなされていますが、この役割をトルコに継続させるため、長く使用可能な最新F-16をトルコに提供する意味も多少はあると思料
2022年2月からのロシアによるウクライナ侵略を受けた「中立国スウェーデンやフィンランドのNATO加盟の動き」は、2023年4月に露と長い国境線を持つフィンランドの加盟が実現して大きく前進しましたが、スウェーデンの加盟については、トルコとハンガリーの反対で1年以上ごたごたしています。
残るはハンガリーだけですが、トルコの態度変更を受け、ハンガリー首相が反対姿勢転換の方向性を示すも、翌1月25日には同じ政党所属の議会議長が「判断を急ぐ必要はない」と発言しており、「露骨にロシアに肩入れし、ウクライナ支援や北欧国の新規加盟を妨害し続けている」ハンガリーに対し、NATOや西側諸国からは「NATOはハンガリーに対する安全保障の部分的停止も視野に入れるべき」、「ハンガリーをEUから蹴り出せ」との声も高まっています
忘れてました・・・同記事はギリシャが40機のF-35を購入することも、米国務省が承認したと報じています。諸経費を含め1.26兆円とか・・破綻国家に売却して大丈夫なのでしょうか・・・?
スウェーデン関連の記事
「欧州戦闘機計画とス」→https://holylandtokyo.com/2023/12/18/5352/
「欧州空の盾計画にスが参加」→https://holylandtokyo.com/2023/07/12/4828/
「B-1爆撃機が初展開」→https://holylandtokyo.com/2023/06/22/4780/
トルコへのF-35提供停止などの経緯
「F-35代替でF-16提案か?」→https://holylandtokyo.com/2021/10/20/2357/
「トルコへのF-35部品依存」→https://holylandtokyo.com/2020/10/14/432/
「トルコ代替で米で部品製造」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-27
「トルコをF-35計画から除外」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14
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「ウ」への米国支援兵器約2400億円分が記録不十分も [安全保障全般]
22年2月開戦から23年6月までの国防省監察官調査
23年末で総額6兆6000億円の援助物資の4%以下
「汚職による横流し等の形跡は一切ない」「記録は改善中」
1月11日付DefenseOne記事が、米国防省監察官が米国からウクライナへの支援供給武器の管理追跡状況(2022年2月の開戦から2023年6月までの記録を監査)について調査&監査した結果、開戦時の各種混乱、米国監視担当官の開戦時不在やその後の要員不足、安全確保面からの前線状況確認不足、ウクライナ及び米国側双方の事務作業の遅れ等々から、
開戦後から大量に援助された携帯防空兵器Stingerや対戦車ミサイルJavelins等々の追跡記録が、約1.67Billiomドル(約2400億円)相当分(2023年末時点で援助装備品総額は約6兆6000億円で、その3.7%に相当)に関し不明確だと指摘している、と報じています
ただ、記録不十分な責任が米側の事務処理不備に起因する部分も相当部分含まれ、また米国からの援助装備品の追跡管理は時間が経過するほど改善されており、かつ援助品がウクライナ側担当者の汚職により横流し転売されたりした形跡は全くなく、
むしろ貴重な援助兵器をウクライナ兵士が死守しようとして落命したケースも多数あり、現在もウクライナ兵約8000名の生死や所在が不明な全面戦争の混乱の中、教訓とすべき点はあるが致し方ない側面が多い、との論調のDefenseOne記事となっています
記録不備の原因等として報告書は
●在ウクライナ米国大使館が、開戦の2022年2月から同年5月まで閉鎖されており、この5か月間に現地で支援物資をフォローする人員が不在だった
●同大使館再開後も、監査を担う国防協力室の職員配置がウクライナ各地のオフィスに一か所1名で、かつ米国政府が危険な前線地域への米職員の立ち入りを制限したことから、2022年春頃から大量に提供された支援兵器を前線で十分に追跡記録&確認できなかった
●米本土側でも、通常の支援物資の流れとは異なる多様なルートで、短期間に大量の兵器が提供されたことから、事務スタッフのデータ処理が追い付かず、入力漏れ等の事態が多発した
●それでも、2023年2月時点では総データの87%が規定で定められた期限までに把握&データベース入力されなかったが、2023年6月時点でデータベース更新不備率が56%にまで低下している
ウクライナ議会の支援物資監視担当議員のコメント
●(開戦当初の混乱はあったかもしれないが、)現時点で米側監査官は24時間いつでもどこでも監査することができ、午前2時に対戦車ミサイルの保管状況確認を受け入れることもある。
●我が国はロシアの侵略を受けた全面戦争下にあり、現在約8000名のウクライナ軍兵士が生死不明の状態だが、そのような混乱の中でも、物質追跡が出来なくなったものについては「追跡不能」や「所在不明」として報告している
●わが軍兵士は援助兵器を大切に使用しており、貴重な兵器を守るために犠牲となった兵士が多数いることも忘れないでほしい
在ウクライナ米国大使経験者のJohn Herbst氏は、
●支援物資追跡に関しては、支援対象国の管理要員が不足しているケースが多いのだから、米国がリーダーシップを発揮して監視要員を増員すべき
CSISのMark Cancian研究員
●支援物資の追跡管理に関しては、米国主導で民間業者の人員を投入することで、米国政府職員のオーバープレゼンスを避けつつ、管理レベルを向上させることが得策
●ロシアの戦車を目の前にして、援助兵器使用記録を適時に入力することが困難なのは当然であり、ウクライナ側の状況は致し方ない
//////////////////////////////////////
この監査は、武器援助を担当する米国防省自身が行っている点で不十分だとのご意見もありましょうし、2400億円との不明援助装備等の規模に関しても決して小さいとは言えません。
DefenseOne記事の英文タイトルは如何にもですが、記事の内容は冷静な視点を維持していると感じますし、まんぐーすも致し方ないと思います。今後の教訓とすればよいと思います。
様々な視点から「ウ」の教訓
「23106月:米陸軍首脳「ウ」の教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/10/13/5129/
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「イラン製無人機が猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「アジア太平洋への教訓は兵站」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「22年6月:米陸軍首脳のウの教訓」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/
「SpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/
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23年末で総額6兆6000億円の援助物資の4%以下
「汚職による横流し等の形跡は一切ない」「記録は改善中」
1月11日付DefenseOne記事が、米国防省監察官が米国からウクライナへの支援供給武器の管理追跡状況(2022年2月の開戦から2023年6月までの記録を監査)について調査&監査した結果、開戦時の各種混乱、米国監視担当官の開戦時不在やその後の要員不足、安全確保面からの前線状況確認不足、ウクライナ及び米国側双方の事務作業の遅れ等々から、
開戦後から大量に援助された携帯防空兵器Stingerや対戦車ミサイルJavelins等々の追跡記録が、約1.67Billiomドル(約2400億円)相当分(2023年末時点で援助装備品総額は約6兆6000億円で、その3.7%に相当)に関し不明確だと指摘している、と報じています
ただ、記録不十分な責任が米側の事務処理不備に起因する部分も相当部分含まれ、また米国からの援助装備品の追跡管理は時間が経過するほど改善されており、かつ援助品がウクライナ側担当者の汚職により横流し転売されたりした形跡は全くなく、
むしろ貴重な援助兵器をウクライナ兵士が死守しようとして落命したケースも多数あり、現在もウクライナ兵約8000名の生死や所在が不明な全面戦争の混乱の中、教訓とすべき点はあるが致し方ない側面が多い、との論調のDefenseOne記事となっています
記録不備の原因等として報告書は
●在ウクライナ米国大使館が、開戦の2022年2月から同年5月まで閉鎖されており、この5か月間に現地で支援物資をフォローする人員が不在だった
●同大使館再開後も、監査を担う国防協力室の職員配置がウクライナ各地のオフィスに一か所1名で、かつ米国政府が危険な前線地域への米職員の立ち入りを制限したことから、2022年春頃から大量に提供された支援兵器を前線で十分に追跡記録&確認できなかった
●米本土側でも、通常の支援物資の流れとは異なる多様なルートで、短期間に大量の兵器が提供されたことから、事務スタッフのデータ処理が追い付かず、入力漏れ等の事態が多発した
●それでも、2023年2月時点では総データの87%が規定で定められた期限までに把握&データベース入力されなかったが、2023年6月時点でデータベース更新不備率が56%にまで低下している
ウクライナ議会の支援物資監視担当議員のコメント
●(開戦当初の混乱はあったかもしれないが、)現時点で米側監査官は24時間いつでもどこでも監査することができ、午前2時に対戦車ミサイルの保管状況確認を受け入れることもある。
●我が国はロシアの侵略を受けた全面戦争下にあり、現在約8000名のウクライナ軍兵士が生死不明の状態だが、そのような混乱の中でも、物質追跡が出来なくなったものについては「追跡不能」や「所在不明」として報告している
●わが軍兵士は援助兵器を大切に使用しており、貴重な兵器を守るために犠牲となった兵士が多数いることも忘れないでほしい
在ウクライナ米国大使経験者のJohn Herbst氏は、
●支援物資追跡に関しては、支援対象国の管理要員が不足しているケースが多いのだから、米国がリーダーシップを発揮して監視要員を増員すべき
CSISのMark Cancian研究員
●支援物資の追跡管理に関しては、米国主導で民間業者の人員を投入することで、米国政府職員のオーバープレゼンスを避けつつ、管理レベルを向上させることが得策
●ロシアの戦車を目の前にして、援助兵器使用記録を適時に入力することが困難なのは当然であり、ウクライナ側の状況は致し方ない
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この監査は、武器援助を担当する米国防省自身が行っている点で不十分だとのご意見もありましょうし、2400億円との不明援助装備等の規模に関しても決して小さいとは言えません。
DefenseOne記事の英文タイトルは如何にもですが、記事の内容は冷静な視点を維持していると感じますし、まんぐーすも致し方ないと思います。今後の教訓とすればよいと思います。
様々な視点から「ウ」の教訓
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バルカン緊張:米がコソボに対戦車ミサイル輸出許可 [安全保障全般]
コソボとセルビア(ロシアと同盟関係)対立が昨秋から先鋭化
両国国境付近にセルビア部隊が近年にない増強
NATOがコソボの治安部隊を増派中
1月11日、米国安全保障協力庁(U.S. Defense Security Cooperation Agency)が、コソボ共和国から購入要望が出ていた246発の携帯型対戦車ミサイルJavelinと関連装置に関し、米国政府として売却を承認すると発表しました
同ミサイルはウクライナ紛争で大量に米国など西側諸国からウクライナに提供されたため、その在庫が急減し、穴埋めに長期間要すると懸念されていた兵器ですが、増産体制が確保できたのか、バルカン半島地域の緊張を受け、2022年にアルバニアも購入許可を米国から得、2023年12月にはロシアの脅威に直面するルーマニアも263発の購入承認を受けたところです
本日はこの武器売却を契機に、「イスラエルVSハマス戦争」以降に世界の安全保障環境が流動化する中で、「西側VSイエメンのフーチ派反政府組織」が最近クローズアップされていますが、この戦火が昨年春頃からにわかに緊張感が高まってきた「コソボ(NATO側)VSセルビア(ロシアの同盟国)」に拡大しそうな不穏な状態についてご紹介いたします
2023年春以降の動向(各種報道より)
●1990年代に激しい民族紛争が起こった旧ユーゴスラビアのコソボで、コソボ住民(多数派のアルバニア系住民)と少数派のセルビア系住民の対立が再び先鋭化
●コソボは2008年に(ロシアと同盟関係にある)セルビアから一方的に独立し、住民の多くはアルバニア系だが、北部ではセルビア系が多数を占め政府との対立が継続
●セルビア側は2023年秋からコソボとの国境地帯への部隊の増強を続けており、北大西洋条約機構(NATO)は2023年10月1日、コソボに駐留する治安部隊の増派を決め、コソボのゲルバラ外相が「近年、これほど国境地帯にセルビア軍部隊が集まったことはなかった」と危機感を表明
●この状態に至るまでには、2023年5月にコソボ北部で、セルビア系住民のデモ隊がNATO主導の平和維持部隊と激しく衝突して多数のけが人が出る事態が発生し、2023年9月末には同じくコソボ北部で、コソボ警察官が襲撃され、1人が死亡、1人がけがをする事態が発生
●この際にコソボのクルティ首相は、セルビアが支援する部隊の仕業だと主張し、「セルビアの暴力とテロへの支援は、われわれの国家安全保障や国際法などに対するひどい侵害だ」とセルビア側を非難する声明をSNS投稿
●一方、この襲撃を行ったセルビア系住民のメンバー3名が死亡したことに関しセルビアのブチッチ大統領は、襲撃したのはセルビア系住民だと認めた上で、コソボ政府に責任があると主張し、双方の緊張状態が続き現在に至っている
/////////////////////////////////////////////
上記のような状況でのコソボへの携帯型対戦車ミサイルJavelin売却承認ですから、早々にセルビア大統領はこれを非難する声明を出しています。背後で世界の混乱期に乗じ、ロシアがセルビアを煽っているような気がしてなりませんが、かつての「世界の弾薬庫」は、今再びきな臭いにおいを漂わせています
なお、以前から航空機産業基盤があるセルビアは、自国製と中国製等の無人機を大量に導入しており、その保有数からバルカン半島内で1番の無人機大国となっており、仮に本格武力衝突となれば、NATO平和維持部隊は相当のリスクを負う可能性があります
小国の対立で際立つ無人機の威力
「コソボと対立のセルビアが無人機大国へ」→https://holylandtokyo.com/2022/11/29/3970/
「無人機でアゼルバイジャン大勝利」→https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/
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両国国境付近にセルビア部隊が近年にない増強
NATOがコソボの治安部隊を増派中
1月11日、米国安全保障協力庁(U.S. Defense Security Cooperation Agency)が、コソボ共和国から購入要望が出ていた246発の携帯型対戦車ミサイルJavelinと関連装置に関し、米国政府として売却を承認すると発表しました
同ミサイルはウクライナ紛争で大量に米国など西側諸国からウクライナに提供されたため、その在庫が急減し、穴埋めに長期間要すると懸念されていた兵器ですが、増産体制が確保できたのか、バルカン半島地域の緊張を受け、2022年にアルバニアも購入許可を米国から得、2023年12月にはロシアの脅威に直面するルーマニアも263発の購入承認を受けたところです
本日はこの武器売却を契機に、「イスラエルVSハマス戦争」以降に世界の安全保障環境が流動化する中で、「西側VSイエメンのフーチ派反政府組織」が最近クローズアップされていますが、この戦火が昨年春頃からにわかに緊張感が高まってきた「コソボ(NATO側)VSセルビア(ロシアの同盟国)」に拡大しそうな不穏な状態についてご紹介いたします
2023年春以降の動向(各種報道より)
●1990年代に激しい民族紛争が起こった旧ユーゴスラビアのコソボで、コソボ住民(多数派のアルバニア系住民)と少数派のセルビア系住民の対立が再び先鋭化
●コソボは2008年に(ロシアと同盟関係にある)セルビアから一方的に独立し、住民の多くはアルバニア系だが、北部ではセルビア系が多数を占め政府との対立が継続
●セルビア側は2023年秋からコソボとの国境地帯への部隊の増強を続けており、北大西洋条約機構(NATO)は2023年10月1日、コソボに駐留する治安部隊の増派を決め、コソボのゲルバラ外相が「近年、これほど国境地帯にセルビア軍部隊が集まったことはなかった」と危機感を表明
●この状態に至るまでには、2023年5月にコソボ北部で、セルビア系住民のデモ隊がNATO主導の平和維持部隊と激しく衝突して多数のけが人が出る事態が発生し、2023年9月末には同じくコソボ北部で、コソボ警察官が襲撃され、1人が死亡、1人がけがをする事態が発生
●この際にコソボのクルティ首相は、セルビアが支援する部隊の仕業だと主張し、「セルビアの暴力とテロへの支援は、われわれの国家安全保障や国際法などに対するひどい侵害だ」とセルビア側を非難する声明をSNS投稿
●一方、この襲撃を行ったセルビア系住民のメンバー3名が死亡したことに関しセルビアのブチッチ大統領は、襲撃したのはセルビア系住民だと認めた上で、コソボ政府に責任があると主張し、双方の緊張状態が続き現在に至っている
/////////////////////////////////////////////
上記のような状況でのコソボへの携帯型対戦車ミサイルJavelin売却承認ですから、早々にセルビア大統領はこれを非難する声明を出しています。背後で世界の混乱期に乗じ、ロシアがセルビアを煽っているような気がしてなりませんが、かつての「世界の弾薬庫」は、今再びきな臭いにおいを漂わせています
なお、以前から航空機産業基盤があるセルビアは、自国製と中国製等の無人機を大量に導入しており、その保有数からバルカン半島内で1番の無人機大国となっており、仮に本格武力衝突となれば、NATO平和維持部隊は相当のリスクを負う可能性があります
小国の対立で際立つ無人機の威力
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台湾:真の注目は2月1日の台湾議会議長(立法院長)選出 [安全保障全般]
国民党52、民進党51、民衆党8 過半数は57議席
民衆党がキャスティングボードを握るのか?
総統選で候補統一失敗の国民党と民衆党が協力可能か
総統選に勝利の民進党は、民衆党との協力関係なしでは・・・
1月16日付で防衛研究所が、13日の台湾総統選挙結果を踏まえ、速攻で中国研究室の五十嵐隆幸・研究員による「台湾・総統選挙の結果と今後の展望」とのクイックレビューを「NIDSコメンタリー」枠組みで発表しました
中国によるSNS等を巧みにフル活用した統一戦線工作「情報化作戦」にもかかわらず、13日の選挙では民進党の頼清徳が当選し、1996 年以降初めて同一政党が3期以上続けて政権を握ることとなりましたが、立法委員選挙では 10 議席を減らし、14 議席を増やした国民党に1議席及ばず、第二党に転落しました
このため、議会では第一党である国民党でも過半数に5議席足りず、第三党の民衆党の協力関係を、民進党と国民党がどのように構築するかが国政を占うことになり、第三党の民衆党が言わば「キャスティングボード」を握る形になっています
過去を振り返れば、民進党は 2000 年に初めて政権交代を選挙で成し遂げましたが、陳水扁政権の 2 期 8 年は「ねじれ」状態が続き、政局が混乱して低迷を続けた苦い過去を経験しています。
一方で2016 年からの蔡英文政権は、2 期 8 年を通じて立法院の過半数を維持し、多くの政策を推し進めてきましたが、その反面、滲み出る「驕りと慢心」に有権者は不満を募らせ、これを利用した(中国と)国民党が、立法院での選挙で逆転した形となりました
今後台湾では、5月20日に新総統就任式が行われる前に、当選した立法議員が2月1日に初登院し、新たに議長である立法院長が選出されますが、これがある意味「民進党・頼清徳政権」の命運を左右すると言っても過言ではありません。
言い換えれば、1996 年以降初めて同一政党が3期以上続けて政権を握ることになりましたが、「民進党・頼清徳政権」は初めて 1 期 4 年で終わる政権になる可能性も少なくない状態です。総統選挙は1月13日に終わりましたが、「民主党の取り込み」を狙う二大政党の争いが、2月1日の立法院長選出に向け激しさを増していく事になります
五十嵐隆幸氏による「立法院長」選出の解説をご紹介
●野党である民衆党が国民党と組むことで、民進党を少数与党に追い込む可能性がはあるが、民衆党主席の柯文哲は、2014 年の台北市長選挙では民進党の支持を受け、国民党の候補を破って当選した過去がある。
●また今回の総統選挙では、一時は国民党と候補者一本化で合意したが、それを反故にして民衆党トップとして出馬しており、両党関係の悪化は否めない
●一方で、立法院の副院長や閣僚ポストと引き換えに、民衆党は立法院で民進党との協力に合意する可能性はあり、民進党が民衆党と政策協定を結ぶことができない限り、頼清徳は厳しい政権運営を迫られることになる。
●例えば国防政策面では、米国が台湾に対し武器売却を決定したとしても、立法院で予算案が通過しなければ実際の購入は困難になる。議会で予算案や重要法案が通過せずに政策が停滞すれば、蔡英文政権のように高い支持率を維持することは難しくなり、「ねじれ状態下」の陳水扁政権の二の舞になりかねない
●「民進党・頼清徳政権」の「陳水扁政権化」を見越して、民衆党の柯文哲が 4 年後の総統選挙に再チャレンジを狙っているのであれば、国民党とも民進党とも距離を置き、是々非々の路線を取るであろう
●台湾では、これまでにも「第三極の誕生」と期待される現象が起きたが、その度に二大政党のどちらかに吸収されるか、議席を失っている。
●どちらかと組むことを決めれば、民衆党はキャスティングボートを握るどころか、衰退の道を辿ることになるかもしれない。 民衆党は、チェック・アンド・バランス機能を果たすことで、存在感を示す道を選ぶことも可能だろう
/////////////////////////////////////////////
中国の経済崩壊に伴う国力低下が影響し、大半はもう大丈夫だ・・・との雰囲気が日本に漂っていますが、中国によるなりふり構わぬ「情報化作戦」は、ボディーブローのように民進党政権にダメージを与えており、「頼清徳政権が初めて 1 期 4 年で終わる政権になる可能性」は決して低くない模様です
台湾の状況は「対岸の火事」ではありません。日本では岸田政権がフラフラ状態ですが、この隙に・・・と考えるのが大陸の赤い星国でしょう。
7ページの同コメンタリーPDF現物
→https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary292.pdf
台湾関連の記事
「中国による台湾への非接触型「情報化戦争」」→https://holylandtokyo.com/2024/01/05/5398/
「中国は台湾侵攻どころではない」→https://holylandtokyo.com/2023/12/08/5330/
「中国の影響工作/概要解説」→https://holylandtokyo.com/2023/12/21/5362/
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民衆党がキャスティングボードを握るのか?
総統選で候補統一失敗の国民党と民衆党が協力可能か
総統選に勝利の民進党は、民衆党との協力関係なしでは・・・
1月16日付で防衛研究所が、13日の台湾総統選挙結果を踏まえ、速攻で中国研究室の五十嵐隆幸・研究員による「台湾・総統選挙の結果と今後の展望」とのクイックレビューを「NIDSコメンタリー」枠組みで発表しました
中国によるSNS等を巧みにフル活用した統一戦線工作「情報化作戦」にもかかわらず、13日の選挙では民進党の頼清徳が当選し、1996 年以降初めて同一政党が3期以上続けて政権を握ることとなりましたが、立法委員選挙では 10 議席を減らし、14 議席を増やした国民党に1議席及ばず、第二党に転落しました
このため、議会では第一党である国民党でも過半数に5議席足りず、第三党の民衆党の協力関係を、民進党と国民党がどのように構築するかが国政を占うことになり、第三党の民衆党が言わば「キャスティングボード」を握る形になっています
過去を振り返れば、民進党は 2000 年に初めて政権交代を選挙で成し遂げましたが、陳水扁政権の 2 期 8 年は「ねじれ」状態が続き、政局が混乱して低迷を続けた苦い過去を経験しています。
一方で2016 年からの蔡英文政権は、2 期 8 年を通じて立法院の過半数を維持し、多くの政策を推し進めてきましたが、その反面、滲み出る「驕りと慢心」に有権者は不満を募らせ、これを利用した(中国と)国民党が、立法院での選挙で逆転した形となりました
今後台湾では、5月20日に新総統就任式が行われる前に、当選した立法議員が2月1日に初登院し、新たに議長である立法院長が選出されますが、これがある意味「民進党・頼清徳政権」の命運を左右すると言っても過言ではありません。
言い換えれば、1996 年以降初めて同一政党が3期以上続けて政権を握ることになりましたが、「民進党・頼清徳政権」は初めて 1 期 4 年で終わる政権になる可能性も少なくない状態です。総統選挙は1月13日に終わりましたが、「民主党の取り込み」を狙う二大政党の争いが、2月1日の立法院長選出に向け激しさを増していく事になります
五十嵐隆幸氏による「立法院長」選出の解説をご紹介
●野党である民衆党が国民党と組むことで、民進党を少数与党に追い込む可能性がはあるが、民衆党主席の柯文哲は、2014 年の台北市長選挙では民進党の支持を受け、国民党の候補を破って当選した過去がある。
●また今回の総統選挙では、一時は国民党と候補者一本化で合意したが、それを反故にして民衆党トップとして出馬しており、両党関係の悪化は否めない
●一方で、立法院の副院長や閣僚ポストと引き換えに、民衆党は立法院で民進党との協力に合意する可能性はあり、民進党が民衆党と政策協定を結ぶことができない限り、頼清徳は厳しい政権運営を迫られることになる。
●例えば国防政策面では、米国が台湾に対し武器売却を決定したとしても、立法院で予算案が通過しなければ実際の購入は困難になる。議会で予算案や重要法案が通過せずに政策が停滞すれば、蔡英文政権のように高い支持率を維持することは難しくなり、「ねじれ状態下」の陳水扁政権の二の舞になりかねない
●「民進党・頼清徳政権」の「陳水扁政権化」を見越して、民衆党の柯文哲が 4 年後の総統選挙に再チャレンジを狙っているのであれば、国民党とも民進党とも距離を置き、是々非々の路線を取るであろう
●台湾では、これまでにも「第三極の誕生」と期待される現象が起きたが、その度に二大政党のどちらかに吸収されるか、議席を失っている。
●どちらかと組むことを決めれば、民衆党はキャスティングボートを握るどころか、衰退の道を辿ることになるかもしれない。 民衆党は、チェック・アンド・バランス機能を果たすことで、存在感を示す道を選ぶことも可能だろう
/////////////////////////////////////////////
中国の経済崩壊に伴う国力低下が影響し、大半はもう大丈夫だ・・・との雰囲気が日本に漂っていますが、中国によるなりふり構わぬ「情報化作戦」は、ボディーブローのように民進党政権にダメージを与えており、「頼清徳政権が初めて 1 期 4 年で終わる政権になる可能性」は決して低くない模様です
台湾の状況は「対岸の火事」ではありません。日本では岸田政権がフラフラ状態ですが、この隙に・・・と考えるのが大陸の赤い星国でしょう。
7ページの同コメンタリーPDF現物
→https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary292.pdf
台湾関連の記事
「中国による台湾への非接触型「情報化戦争」」→https://holylandtokyo.com/2024/01/05/5398/
「中国は台湾侵攻どころではない」→https://holylandtokyo.com/2023/12/08/5330/
「中国の影響工作/概要解説」→https://holylandtokyo.com/2023/12/21/5362/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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グアムにシンガポール空軍受け入れ施設増設へ [安全保障全般]
2019年の両国間覚書に基づくとか・・・
東京ドーム18個分の土地を新たに開拓して
何故グアムに今?覚書から5年経過し・・
1月3日付米空軍協会web記事は、2019年に米シンガポール間で結ばれた覚書(MOU)に基づき、米空軍が12機のシンガポール空軍版F-15EやF-16等を受け入れて長期訓練可能な施設の建設を今後3-7年間かけて計画しており、そのための事前準備として環境影響調査報告(EIS:Environmental Impact Statement)を2024年中旬に中間報告、2025年初旬に最終報告の予定で進めると報じています
グアム島は対中国の最前線基地として重視され、米ミサイル防衛庁が中国からの弾道&巡航ミサイル防衛体制確立を最優先課題と取り組み中の拠点で、サンゴで形成された施設建設が困難な限られた地籍と原住民にとっての宗教的聖地への配慮等から、ミサイル防衛施設の配置や確保が大きな課題となっている難しい場所ですが、そこに空軍機受け入れ用に追加で200エーカー(東京ドーム18個分)のスペースを新たに確保する施設の建設計画です
両国間の2019年覚書では、シンガポール空軍版F-15Eストライクイーグルの最新型であるF-15SGのほか、同空軍F-16とE-2C早期警戒機も受け入れ可能な施設をアンダーセン空軍基地内に設けることが合意されており、新たな格納庫、機体整備施設、燃料施設、駐機場、道路や駐車場や関係者の施設等が建設計画に含まれているようです
シンガポール空軍は同国周辺空域が非常に混雑して大規模な飛行訓練が難しいことから、これまでにも同様の展開施設が設けられ、F-16用施設がアリゾナ州Luke空軍基地に、 F-15用がアイダホ州Mountain Home空軍基地に、AH-64 Apacheヘリ用はアリゾナ州Marana基地に、それぞれ設けられているようですが、今回はF-15SGを主対象とした受け入れ施設です。
もちろん米空軍省はこの受け入れ施設が、重要な同盟国であり、毎年様々な形で共同訓練を行っているシンガポール空軍だけでなく、米空軍機のほか、米軍他軍種の航空機や同盟国等のグアム島での受け入れ施設としても将来に渡り利用可能で、対中国の態勢整備を進める米軍全体にとっても重要な意味を持つと説明しているところです
米空軍協会ミッチェル研究所のMichael Dahm研究員も、「対中国のカウンターバランス面でも意味深く、シンガポール空軍が米空軍戦闘機と継続的に訓練でき、同時に機体の維持整備施設にもアクセス可能となる点でも利点が多い」と、シンガポールから遠くないグアム島での新拠点確保の意義を強調しています
///////////////////////////////////////
2019年のMOU締結から5年越しでの200エーカー施設建設の動きです。上でもご紹介したように、グアムの限られた地籍を考えると、諸調整が今後も大変だと思いますが、シンガポール空軍は40機のF-15SGと70機のF-16を擁し、F-35A型購入も進める一大戦力ですので、有事には中国に近いシンガポールから避難し、グアム島からの作戦遂行を考えているのかもしれません。
同空軍は西側(日米を除く)スタンダードであるA330MRTT空中給油機の導入を進めており、グアム島からの遠距離作戦にも対応可能な体制整備を進めつつあり、そんな「思惑」のアンダーセン基地におけるF-15SG受け入れ施設計画だと理解しました
シンガポール空軍関連記事
「シンガポール空軍との演習を利用し」→https://holylandtokyo.com/2023/11/16/5245/
「F-35A型にも興味」→https://holylandtokyo.com/2022/09/15/3638/
「F-35B売却許可」→https://holylandtokyo.com/2020/01/15/866/
グアムのミサイル防衛関連
「本格試験を2024年開始」→https://holylandtokyo.com/2023/08/22/4937/
「グアムMDを再び語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/
「整備の状況と困難」→https://holylandtokyo.com/2022/04/05/3082/
「分散&機動展開可能型へ」→https://holylandtokyo.com/2021/08/23/2146/
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東京ドーム18個分の土地を新たに開拓して
何故グアムに今?覚書から5年経過し・・
1月3日付米空軍協会web記事は、2019年に米シンガポール間で結ばれた覚書(MOU)に基づき、米空軍が12機のシンガポール空軍版F-15EやF-16等を受け入れて長期訓練可能な施設の建設を今後3-7年間かけて計画しており、そのための事前準備として環境影響調査報告(EIS:Environmental Impact Statement)を2024年中旬に中間報告、2025年初旬に最終報告の予定で進めると報じています
グアム島は対中国の最前線基地として重視され、米ミサイル防衛庁が中国からの弾道&巡航ミサイル防衛体制確立を最優先課題と取り組み中の拠点で、サンゴで形成された施設建設が困難な限られた地籍と原住民にとっての宗教的聖地への配慮等から、ミサイル防衛施設の配置や確保が大きな課題となっている難しい場所ですが、そこに空軍機受け入れ用に追加で200エーカー(東京ドーム18個分)のスペースを新たに確保する施設の建設計画です
両国間の2019年覚書では、シンガポール空軍版F-15Eストライクイーグルの最新型であるF-15SGのほか、同空軍F-16とE-2C早期警戒機も受け入れ可能な施設をアンダーセン空軍基地内に設けることが合意されており、新たな格納庫、機体整備施設、燃料施設、駐機場、道路や駐車場や関係者の施設等が建設計画に含まれているようです
シンガポール空軍は同国周辺空域が非常に混雑して大規模な飛行訓練が難しいことから、これまでにも同様の展開施設が設けられ、F-16用施設がアリゾナ州Luke空軍基地に、 F-15用がアイダホ州Mountain Home空軍基地に、AH-64 Apacheヘリ用はアリゾナ州Marana基地に、それぞれ設けられているようですが、今回はF-15SGを主対象とした受け入れ施設です。
もちろん米空軍省はこの受け入れ施設が、重要な同盟国であり、毎年様々な形で共同訓練を行っているシンガポール空軍だけでなく、米空軍機のほか、米軍他軍種の航空機や同盟国等のグアム島での受け入れ施設としても将来に渡り利用可能で、対中国の態勢整備を進める米軍全体にとっても重要な意味を持つと説明しているところです
米空軍協会ミッチェル研究所のMichael Dahm研究員も、「対中国のカウンターバランス面でも意味深く、シンガポール空軍が米空軍戦闘機と継続的に訓練でき、同時に機体の維持整備施設にもアクセス可能となる点でも利点が多い」と、シンガポールから遠くないグアム島での新拠点確保の意義を強調しています
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2019年のMOU締結から5年越しでの200エーカー施設建設の動きです。上でもご紹介したように、グアムの限られた地籍を考えると、諸調整が今後も大変だと思いますが、シンガポール空軍は40機のF-15SGと70機のF-16を擁し、F-35A型購入も進める一大戦力ですので、有事には中国に近いシンガポールから避難し、グアム島からの作戦遂行を考えているのかもしれません。
同空軍は西側(日米を除く)スタンダードであるA330MRTT空中給油機の導入を進めており、グアム島からの遠距離作戦にも対応可能な体制整備を進めつつあり、そんな「思惑」のアンダーセン基地におけるF-15SG受け入れ施設計画だと理解しました
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中国による台湾への非接触型「情報化戦争」 [安全保障全般]
防衛研究所が日本台湾交流協会と共同研究
ペロシ下院議長の台湾訪問時を分析し「失敗」と
台湾は中国にとっての「試験場」
防衛研究所が、所属研究者による論文集である安全保障戦略研究(2023年12月号)を発表し、日本台湾交流協会との共同研究事業としてまとめられた論文『中国が目指す非接触型「情報化戦争」 ―物理領域・サイバー領域・認知領域を横断した「戦わずして勝つ」戦い―』を掲載しています
防衛研究所の中国研究室・五十嵐隆幸研究員と日本台湾交流協会・荊元宙氏による同論文は、「サイバー領域と認知領域の定義を確認し、中国の活動を整理したうえで、それに物理領域を加えた全ての領域で横断的に繰り広げられる非接触型の「情報化戦争」について、台湾を事例にその実態を理解する手がかりを考察」することを狙いとし、
事例として、2022年8月2日から3日のペロシ米下院議長による台湾電撃訪問時に、台湾社会が見舞われたサイバー攻撃と、ペロシ離台後の人民解放軍による軍事演習を取り上げ、
「中国は台湾に対して領域横断的な非接触型「情報化戦争」を仕掛けたのだが、それは失敗に終わった。現時点で中国が台湾に対して繰り広げる領域横断的な非接触型「情報化戦争」の形態を見る限り、平素より対策を講じ、過剰に反応しなければ、その効果を無効化もしくは低減可能であることを台湾は証明した」と結んでいます
更に同論文は、「また、2014 年から始まったロシアとウクライナの間の紛争を見ても、サイバー領域や認知領域での戦いが戦争全体の帰趨を左右したとは言い難く、むしろその限界が示され、それだけでは戦争に勝てないことが証明されている」と分析しています
同論文は、ペロシ米下院議長の台湾訪問から8月10日の中国による台湾周辺での軍事演習終了までの間の、中国による猛烈な「サイバー領域と認知領域」での非接触型「情報化戦争」の事例を細かく紹介し、4日以降の軍事演習についても概要をフォロー&紹介していますが、
『日本や欧米などのメディアは「第四次台湾海峡危機」として動向を注視したが、中国による台湾対岸で軍事演習に台湾の人々は「慣れ」てしまっており、「強要」の効果を失いつつあった。実際、台湾の人々は、圧倒的多数がその軍事演習を「怖くなかった」と語り、軍事演習下でも普通の生活を送っていた。台湾がパニックになっていたら中国の思うつぼだったが、威嚇で屈服させようとする中国の思惑は台湾に通じなかった』と結んでいます
ただし論文は、『「人海戦術」で自国民の命を顧みなかった中国でも、今は少子高齢化で軍隊は募集難に苦しみ、「兵士の命」の重要性が増している。ゆえに中国は「戦わずして勝つ」との究極の目標を目指し、領域横断的な非接触型「情報化戦争」の能力構築に努力を継続する』とし、『中国にとって台湾は、中国が領域横断的な非接触型「情報化戦争」の能力を国家総動員で構築していくための「試験場」になっている』と記し、西側の油断を戒めています
また、今後の本分野へのAI技術の活用の可能性に注目し、『最先端の AI 技術で言語や文化の壁を克服し、認知領域での優勢を獲得することで、物理領域と情報領域における優勢をより確保することへと繋がり、それが領域横断的な非接触型「情報化戦争」の到達点になる』とコメントしています
/////////////////////////////////////
なお、中国の「情報化局地戦争」の範囲に関して同論文は、以下のように説明しています。
『「領域」についての認識は、米国や NATO 諸国のみならず、中国でもほぼ共通しており、本稿では(米国防省が示している) CDS(領域横断的な相乗作用(Cross Domain Synergy) の区分を準用し、物理次元に存在する陸、海、空、宇宙の 4 領域は「物理領域」、情報次元は Information と Intelligence との混同を避け、かつ、実態にそぐわせて「サイバー領域」、人間の心の中を「認知領域」として議論を進めていく』
その他にも同論文は、学術的論文として、中国の「情報化局地戦争」概念をその経緯も含めて詳しく説明しており、ご興味のある方は論文をご覧ください
日本に対する中国の「情報化局地戦争」について、防衛研究所が分析&対外発信しない徹底した姿勢は、「中国安全保障レポート2024」や「NIDSコメンタリー」や今回の「安全保障戦略研究(2023年12月号)」から、よぉーーーーく理解できました。
安全保障戦略研究(2023年12月号)の全体
https://www.nids.mod.go.jp/publication/security/security_202312.html
論文「中国が目指す非接触型「情報化戦争」」
https://www.nids.mod.go.jp/publication/security/pdf/2023/202312_02.pdf
防衛研究所の対中国姿勢がわかる公刊物
「「中国の影響工作」概要解説」→https://holylandtokyo.com/2023/12/21/5362/
「異様な中国安全保障レポート2024」→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/
防衛研究所による各種論考紹介記事
「サイバー傭兵の世界」→https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/
「量子技術の軍事への応用」→https://holylandtokyo.com/2022/01/14/2577/
「先の大戦・あの戦争の呼称は」→https://holylandtokyo.com/2021/08/13/2103/
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ペロシ下院議長の台湾訪問時を分析し「失敗」と
台湾は中国にとっての「試験場」
防衛研究所が、所属研究者による論文集である安全保障戦略研究(2023年12月号)を発表し、日本台湾交流協会との共同研究事業としてまとめられた論文『中国が目指す非接触型「情報化戦争」 ―物理領域・サイバー領域・認知領域を横断した「戦わずして勝つ」戦い―』を掲載しています
防衛研究所の中国研究室・五十嵐隆幸研究員と日本台湾交流協会・荊元宙氏による同論文は、「サイバー領域と認知領域の定義を確認し、中国の活動を整理したうえで、それに物理領域を加えた全ての領域で横断的に繰り広げられる非接触型の「情報化戦争」について、台湾を事例にその実態を理解する手がかりを考察」することを狙いとし、
事例として、2022年8月2日から3日のペロシ米下院議長による台湾電撃訪問時に、台湾社会が見舞われたサイバー攻撃と、ペロシ離台後の人民解放軍による軍事演習を取り上げ、
「中国は台湾に対して領域横断的な非接触型「情報化戦争」を仕掛けたのだが、それは失敗に終わった。現時点で中国が台湾に対して繰り広げる領域横断的な非接触型「情報化戦争」の形態を見る限り、平素より対策を講じ、過剰に反応しなければ、その効果を無効化もしくは低減可能であることを台湾は証明した」と結んでいます
更に同論文は、「また、2014 年から始まったロシアとウクライナの間の紛争を見ても、サイバー領域や認知領域での戦いが戦争全体の帰趨を左右したとは言い難く、むしろその限界が示され、それだけでは戦争に勝てないことが証明されている」と分析しています
同論文は、ペロシ米下院議長の台湾訪問から8月10日の中国による台湾周辺での軍事演習終了までの間の、中国による猛烈な「サイバー領域と認知領域」での非接触型「情報化戦争」の事例を細かく紹介し、4日以降の軍事演習についても概要をフォロー&紹介していますが、
『日本や欧米などのメディアは「第四次台湾海峡危機」として動向を注視したが、中国による台湾対岸で軍事演習に台湾の人々は「慣れ」てしまっており、「強要」の効果を失いつつあった。実際、台湾の人々は、圧倒的多数がその軍事演習を「怖くなかった」と語り、軍事演習下でも普通の生活を送っていた。台湾がパニックになっていたら中国の思うつぼだったが、威嚇で屈服させようとする中国の思惑は台湾に通じなかった』と結んでいます
ただし論文は、『「人海戦術」で自国民の命を顧みなかった中国でも、今は少子高齢化で軍隊は募集難に苦しみ、「兵士の命」の重要性が増している。ゆえに中国は「戦わずして勝つ」との究極の目標を目指し、領域横断的な非接触型「情報化戦争」の能力構築に努力を継続する』とし、『中国にとって台湾は、中国が領域横断的な非接触型「情報化戦争」の能力を国家総動員で構築していくための「試験場」になっている』と記し、西側の油断を戒めています
また、今後の本分野へのAI技術の活用の可能性に注目し、『最先端の AI 技術で言語や文化の壁を克服し、認知領域での優勢を獲得することで、物理領域と情報領域における優勢をより確保することへと繋がり、それが領域横断的な非接触型「情報化戦争」の到達点になる』とコメントしています
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なお、中国の「情報化局地戦争」の範囲に関して同論文は、以下のように説明しています。
『「領域」についての認識は、米国や NATO 諸国のみならず、中国でもほぼ共通しており、本稿では(米国防省が示している) CDS(領域横断的な相乗作用(Cross Domain Synergy) の区分を準用し、物理次元に存在する陸、海、空、宇宙の 4 領域は「物理領域」、情報次元は Information と Intelligence との混同を避け、かつ、実態にそぐわせて「サイバー領域」、人間の心の中を「認知領域」として議論を進めていく』
その他にも同論文は、学術的論文として、中国の「情報化局地戦争」概念をその経緯も含めて詳しく説明しており、ご興味のある方は論文をご覧ください
日本に対する中国の「情報化局地戦争」について、防衛研究所が分析&対外発信しない徹底した姿勢は、「中国安全保障レポート2024」や「NIDSコメンタリー」や今回の「安全保障戦略研究(2023年12月号)」から、よぉーーーーく理解できました。
安全保障戦略研究(2023年12月号)の全体
https://www.nids.mod.go.jp/publication/security/security_202312.html
論文「中国が目指す非接触型「情報化戦争」」
https://www.nids.mod.go.jp/publication/security/pdf/2023/202312_02.pdf
防衛研究所の対中国姿勢がわかる公刊物
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防衛研究所が「中国の影響工作」概要解説 [安全保障全般]
情報を制御して自らに有利な状況生み出す工作
欧米民主主義の正当性を弱めるため習近平が強化指示
西側諸国向けは効果的ではないと分析
防衛研究所webサイトが12月8日、山口信治・中国研究室主任研究官による「中国の影響工作概観——その目標・手段・組織・対象」との5ページの論考を「NIDSコメンタリー」として掲載し、習近平が強化している「情報を制御して自らに有利な状況生み出す行動である影響工作」について、タイトル通り「その目標・手段・組織・対象」との視点から紹介していますのでご紹介いたします
少々乱暴に結論から言うと、山口主任研究官は、中国による影響工作は主たる対象を「台湾、各国の華僑華人、グローバルサウスの国々」に置いており、「西側諸国に対する工作は、必ずしも大きな効果を上げているわけではない」と分析しており、日本のマスゴミが中国の経済崩壊について極めて消極的な報道姿勢を撮り続けていることや、日本の現状や将来に関して悲観論を強調する報道ばかりを垂れ流している現状との大きなギャップを感じる結論レポートとなっています
マスゴミだけでなく、防衛研究所も11月24日発表の「中国安全保障レポート」で、中国の経済崩壊について一切触れない異様とも言える研究姿勢を示していますが、これが日本政府の検閲のせいなのか、防衛研究所としての政府への「心遣い」なのか、中国軍事脅威の崩壊兆候を「隠したい」防衛省の姿勢を反映したものなのかは不明ですが、以下でご紹介する「NIDSコメンタリー:中国の影響工作概観」を見るにあたり、事前に注意喚起させていただきます
山口主任研究官による分析概要
●影響工作とは、情報を制御し、相手国の認識や判断を操作したり混乱させることで、自分たちに有利な状況を作り出す行動を指すが、本稿では中国の影響工作の背景や影響工作の手段と目標、実施に関わる組織、その対象、それがもたらす問題を概観
●習近平は、西側諸国が中国の軍事的封じ込めだけでなく、民主主義や人権イデオロギー浸透により、中国共産党を内部から変質させたり、政権を崩壊させようとしているとの認識を強く持っている。西側は中国におけるカラー革命を画策しているので、西側による中国を「妖魔化」する情報発信や、政権への信頼を揺るがせる言説を排撃し、さらに米欧の民主主義の国際的な正当性を弱め、中国の見方考え方を内外に拡散浸透させなければならないと、習近平は考えている
●上記認識を基に中国は、①中国のイメージを向上して中国政策に対する支持を広げ ②中国に不利な外国の主張や情報に反駁し、中国に不利な情報を遮断し、③相手国の社会の分断を拡大し、政治社会に混乱を生み出す・・・事を推進している
●具体的には、第一にプロパガンダ・宣伝分野で、中国国営メディア情報発信を拡大し、 外国メディアへの中国外交官の寄稿や新華社記事の配信で中国の主張を世界に伝え、外国のプロパガンダへ反駁する。第二のディスインフォメーションでは、偽情報をソーシャルメディアなどに流し、相手国の主張への信用を毀損し、相手の社会や政治に混乱をもたらす
●第三の統一戦線工作は習近平が特に重視して強化している手段であるが、主要敵を内部分裂させたり、友好勢力を増やそうとする策略を意味する。対象として重要なのが華僑・ 華人や外国における友好人士で、習近平は工作を統一的な指揮下で再活性化させようとしており、党の部門である中央統一戦線工作部のみに任せるのではなく、党全体の重要事業と位置付け、関連部門間の連携強化を推進している。
●ただし、これら中国の手法は、ロシアのような直接的に相手の政治・社会の混乱を狙うアプローチに比べてより間接的で、言説空間において優位に立ち、相手の掲げる価値を引き下げることを狙ったもので、中国は伝統的に相手国のエリート層への働きかけが得意な一方で、ディスインフォメーションは中国にとって比較的新しい手法である
●本工作実施に関連する組織は非常に多く、その指揮関係は非常に複雑。大方針に基づくとは言え、その実施が関係機関の緊密な調整下で実施されているというよりは、バラバラな行動の集合と見る方が適切
●中国の影響工作にかかわる組織は、大きく分けて、宣伝、統一戦線、人民解放軍の3つの系統。宣伝系統は、宣伝に関わる組織からなり、「中央宣伝思想工作領導小組 (組長)」が工作の全般的指導と調整実施。三つ目の人民解放軍は、軍の影響工作を実施する。新たに設立された戦略支援部隊は、 サイバー、電磁スペクトラム、宇宙という情報に関わる機能を統括しており、関連の深い心理・認知領域もその任務に含まれている模様
●二つ目の統一戦線工作系統は、習近平により組織的な強化が図られており、党内に中央統一戦線工作領導小組を設立し、中央統一戦線工作部の機能が大幅に強化され、政府内の独立部門だった国務院僑務弁公室、国務院国家民族事務委員会、国務院国家宗教 事務局が中共中央統一戦線部の指揮下に置かれるなど、一元的統制が強化されてきた
●主要な対象は、台湾、グローバルサウスの国々、そして各国の華僑華人である。西側諸国に対する中国の影響工作は、必ずしも大きな効果を上げているわけではない。
●まず、台湾の独立傾向を防ぎ、さらに統一を促進することは、中国共産党にとって長年の大目標。次のグローバルサウスの国々については、「一帯一路」等でグローバルサウスの国家と経済・政治・安全保障上の関係を深めようとの姿勢の表れ。世界中に拡大する華僑華人コミュニティを中国共産党の政策のためにまとめ上げ、動員することも狙いとしてるが、華僑華人は実際には多様で、すべてが中国共産党の影響下にあるわけではない
●何が問題か。中国の影響力工作が民主主義国にもたらす可能性があるのは、社会の分断と混乱、政策課題について中国有利な世論誘導、人権や民主との普遍的価値の相対化、選挙介入による政治体制への影響力行使、価値・イデオロギー面から現在の国際秩序を揺さぶり不安定化すること・・・などである
●中国の手法は、それほど洗練されているとは言えない部分がある。とくにディスインフォメーションはかなり粗い。工作を担当する組織間調整が綿密とは考えにくいく、洗練された連携が取れない状態かも
●影響工作の効果の検証は一般的に難しいが、中国のアプローチは間接的であることから更に難しくなっている。中国の限界、弱さを正しく把握することも重要。
●日本は、中国による様々なタイプの行動に対し、価値や原則を守るために全政府的アプローチで対処が必要。影響工作は技術発展と密接な関係にあり、特に人工知能の発展は、影響工作の実施側と対抗側の双方に今後欠かせないものとなる。グローバルサウスへの工作への対処には、広い国際的協調による対策が欠かせない
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最近の地上波放送や新聞雑誌が、視聴率を下げ発行部数を減らしている原因は、「テレビ放送や新聞雑誌がつまらないだけでなく、目にすると気分が悪くなるからだ」とのSNS上での声が大きな賛同を集めています。
中国の影響力工作がもたらすものを、山口分析官は「社会の分断と混乱、政策課題について中国有利な世論誘導、人権や民主との普遍的価値の相対化、選挙介入による政治体制への影響力行使、価値・イデオロギー面から現在の国際秩序を揺さぶり不安定化」だと端的に指摘していますが、日本のマスゴミが日々垂れ流しているのは、これらを狙った操作された情報ばかりで、普通の日本国民が「目にすると気分が悪くなる」レベル情報のオンパレードです
それなのに山口分析官が「西側諸国に対する工作は、必ずしも大きな効果を上げているわけではない」と論評している評価の根拠が良くわかりませんし、日本への影響工作(日本の政治家や報道機関へのハニートラップ工作等々)に言及が一切ない点なども含め、論考全体を読んでみて話の流れに不自然さが感じられ、誰かによって初期原稿が大きく修正された可能性を強く感じました。
中国経済崩壊に言及ゼロ
「異様な中国安全保障レポート2024」→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/
防衛研究所による各種論考紹介記事
「サイバー傭兵の世界」→https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/
「ミャンマーと露の接近を恐れるASEAN」→https://holylandtokyo.com/2023/05/02/4545/
「量子技術の軍事への応用」→https://holylandtokyo.com/2022/01/14/2577/
「「先の大戦」「あの戦争」を何と呼ぶべきか」→https://holylandtokyo.com/2021/08/13/2103/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
欧米民主主義の正当性を弱めるため習近平が強化指示
西側諸国向けは効果的ではないと分析
防衛研究所webサイトが12月8日、山口信治・中国研究室主任研究官による「中国の影響工作概観——その目標・手段・組織・対象」との5ページの論考を「NIDSコメンタリー」として掲載し、習近平が強化している「情報を制御して自らに有利な状況生み出す行動である影響工作」について、タイトル通り「その目標・手段・組織・対象」との視点から紹介していますのでご紹介いたします
少々乱暴に結論から言うと、山口主任研究官は、中国による影響工作は主たる対象を「台湾、各国の華僑華人、グローバルサウスの国々」に置いており、「西側諸国に対する工作は、必ずしも大きな効果を上げているわけではない」と分析しており、日本のマスゴミが中国の経済崩壊について極めて消極的な報道姿勢を撮り続けていることや、日本の現状や将来に関して悲観論を強調する報道ばかりを垂れ流している現状との大きなギャップを感じる結論レポートとなっています
マスゴミだけでなく、防衛研究所も11月24日発表の「中国安全保障レポート」で、中国の経済崩壊について一切触れない異様とも言える研究姿勢を示していますが、これが日本政府の検閲のせいなのか、防衛研究所としての政府への「心遣い」なのか、中国軍事脅威の崩壊兆候を「隠したい」防衛省の姿勢を反映したものなのかは不明ですが、以下でご紹介する「NIDSコメンタリー:中国の影響工作概観」を見るにあたり、事前に注意喚起させていただきます
山口主任研究官による分析概要
●影響工作とは、情報を制御し、相手国の認識や判断を操作したり混乱させることで、自分たちに有利な状況を作り出す行動を指すが、本稿では中国の影響工作の背景や影響工作の手段と目標、実施に関わる組織、その対象、それがもたらす問題を概観
●習近平は、西側諸国が中国の軍事的封じ込めだけでなく、民主主義や人権イデオロギー浸透により、中国共産党を内部から変質させたり、政権を崩壊させようとしているとの認識を強く持っている。西側は中国におけるカラー革命を画策しているので、西側による中国を「妖魔化」する情報発信や、政権への信頼を揺るがせる言説を排撃し、さらに米欧の民主主義の国際的な正当性を弱め、中国の見方考え方を内外に拡散浸透させなければならないと、習近平は考えている
●上記認識を基に中国は、①中国のイメージを向上して中国政策に対する支持を広げ ②中国に不利な外国の主張や情報に反駁し、中国に不利な情報を遮断し、③相手国の社会の分断を拡大し、政治社会に混乱を生み出す・・・事を推進している
●具体的には、第一にプロパガンダ・宣伝分野で、中国国営メディア情報発信を拡大し、 外国メディアへの中国外交官の寄稿や新華社記事の配信で中国の主張を世界に伝え、外国のプロパガンダへ反駁する。第二のディスインフォメーションでは、偽情報をソーシャルメディアなどに流し、相手国の主張への信用を毀損し、相手の社会や政治に混乱をもたらす
●第三の統一戦線工作は習近平が特に重視して強化している手段であるが、主要敵を内部分裂させたり、友好勢力を増やそうとする策略を意味する。対象として重要なのが華僑・ 華人や外国における友好人士で、習近平は工作を統一的な指揮下で再活性化させようとしており、党の部門である中央統一戦線工作部のみに任せるのではなく、党全体の重要事業と位置付け、関連部門間の連携強化を推進している。
●ただし、これら中国の手法は、ロシアのような直接的に相手の政治・社会の混乱を狙うアプローチに比べてより間接的で、言説空間において優位に立ち、相手の掲げる価値を引き下げることを狙ったもので、中国は伝統的に相手国のエリート層への働きかけが得意な一方で、ディスインフォメーションは中国にとって比較的新しい手法である
●本工作実施に関連する組織は非常に多く、その指揮関係は非常に複雑。大方針に基づくとは言え、その実施が関係機関の緊密な調整下で実施されているというよりは、バラバラな行動の集合と見る方が適切
●中国の影響工作にかかわる組織は、大きく分けて、宣伝、統一戦線、人民解放軍の3つの系統。宣伝系統は、宣伝に関わる組織からなり、「中央宣伝思想工作領導小組 (組長)」が工作の全般的指導と調整実施。三つ目の人民解放軍は、軍の影響工作を実施する。新たに設立された戦略支援部隊は、 サイバー、電磁スペクトラム、宇宙という情報に関わる機能を統括しており、関連の深い心理・認知領域もその任務に含まれている模様
●二つ目の統一戦線工作系統は、習近平により組織的な強化が図られており、党内に中央統一戦線工作領導小組を設立し、中央統一戦線工作部の機能が大幅に強化され、政府内の独立部門だった国務院僑務弁公室、国務院国家民族事務委員会、国務院国家宗教 事務局が中共中央統一戦線部の指揮下に置かれるなど、一元的統制が強化されてきた
●主要な対象は、台湾、グローバルサウスの国々、そして各国の華僑華人である。西側諸国に対する中国の影響工作は、必ずしも大きな効果を上げているわけではない。
●まず、台湾の独立傾向を防ぎ、さらに統一を促進することは、中国共産党にとって長年の大目標。次のグローバルサウスの国々については、「一帯一路」等でグローバルサウスの国家と経済・政治・安全保障上の関係を深めようとの姿勢の表れ。世界中に拡大する華僑華人コミュニティを中国共産党の政策のためにまとめ上げ、動員することも狙いとしてるが、華僑華人は実際には多様で、すべてが中国共産党の影響下にあるわけではない
●何が問題か。中国の影響力工作が民主主義国にもたらす可能性があるのは、社会の分断と混乱、政策課題について中国有利な世論誘導、人権や民主との普遍的価値の相対化、選挙介入による政治体制への影響力行使、価値・イデオロギー面から現在の国際秩序を揺さぶり不安定化すること・・・などである
●中国の手法は、それほど洗練されているとは言えない部分がある。とくにディスインフォメーションはかなり粗い。工作を担当する組織間調整が綿密とは考えにくいく、洗練された連携が取れない状態かも
●影響工作の効果の検証は一般的に難しいが、中国のアプローチは間接的であることから更に難しくなっている。中国の限界、弱さを正しく把握することも重要。
●日本は、中国による様々なタイプの行動に対し、価値や原則を守るために全政府的アプローチで対処が必要。影響工作は技術発展と密接な関係にあり、特に人工知能の発展は、影響工作の実施側と対抗側の双方に今後欠かせないものとなる。グローバルサウスへの工作への対処には、広い国際的協調による対策が欠かせない
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最近の地上波放送や新聞雑誌が、視聴率を下げ発行部数を減らしている原因は、「テレビ放送や新聞雑誌がつまらないだけでなく、目にすると気分が悪くなるからだ」とのSNS上での声が大きな賛同を集めています。
中国の影響力工作がもたらすものを、山口分析官は「社会の分断と混乱、政策課題について中国有利な世論誘導、人権や民主との普遍的価値の相対化、選挙介入による政治体制への影響力行使、価値・イデオロギー面から現在の国際秩序を揺さぶり不安定化」だと端的に指摘していますが、日本のマスゴミが日々垂れ流しているのは、これらを狙った操作された情報ばかりで、普通の日本国民が「目にすると気分が悪くなる」レベル情報のオンパレードです
それなのに山口分析官が「西側諸国に対する工作は、必ずしも大きな効果を上げているわけではない」と論評している評価の根拠が良くわかりませんし、日本への影響工作(日本の政治家や報道機関へのハニートラップ工作等々)に言及が一切ない点なども含め、論考全体を読んでみて話の流れに不自然さが感じられ、誰かによって初期原稿が大きく修正された可能性を強く感じました。
中国経済崩壊に言及ゼロ
「異様な中国安全保障レポート2024」→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/
防衛研究所による各種論考紹介記事
「サイバー傭兵の世界」→https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/
「ミャンマーと露の接近を恐れるASEAN」→https://holylandtokyo.com/2023/05/02/4545/
「量子技術の軍事への応用」→https://holylandtokyo.com/2022/01/14/2577/
「「先の大戦」「あの戦争」を何と呼ぶべきか」→https://holylandtokyo.com/2021/08/13/2103/
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(やっと)日英伊戦闘機GCAP開発の管理体制に合意 [安全保障全般]
2022年12月の3か国共同開発合意から1年かけ決定
本部を英国に設置、CEO2名(政府代表と企業代表)が並立リード
政府代表CEOに日本人、企業代表CEOを伊から
12月14日、2022年12月に日英伊3か国が共同開発で基本合意した次世代戦闘機GCAP(Global Combat Air Program)に関し、1年間の長きにわたる協議を経て、プロジェクト組織の大枠となる「GIGO:GCAP International Government Organization」を規定した合意文書に、3か国国防相が東京で署名しました
プロジェクト組織を示したGIGOの細部は報道からは不明ですが、英国に置かれるGIGOの2つの本部(headquarters)は2名のCEOによって率いられ、2名のCEOはそれぞれ「政府組織:governments’ GCAP organization」と「軍需産業組織:industrials’ GCAP organization」を並列の関係で統括するとのことです
そして「政府組織CEO」は日本が差し出し、「軍需産業CEO」はイタリアが差し出すことに決定したとの声明文が出された模様です。ただし、具体的に英国の何処に2つの本部(headquarters)が置かれるのか(別々の場所なのか、同居なのか)、誰が2名のCEOに就任するかなどは発表に一切触れておらず、戦闘機と言う大きな金が動き軍需産業界への広がりも大きい共同開発プロジェクトが、一筋縄では進まない重いプロジェクトであることを伺わせます
2022年12月に基本合意し、2035年までに次世代戦闘機GCAP(以前は英伊スウェーデンによるTEMPEST計画と呼称も、スウェーデンは2023年初に脱退し、現在はGCAPと呼称)を開発配備する予定の本プロジェクトですが、2023年3月の3か国協議前には、英と伊国防相が日本に対し、「一度決めた以上、やり通せ」「開始後におじけ付いて逃げるな」「政治的にも、誰かが抜けることはできない」等々と記者団の前で語るなど、やくざ世界の様相を呈しています
今回の組織(GIGO)合意では、「政府組織」に関する発表はほとんどないようですが、「軍需産業組織」については、英BAE Systems, 伊Leonardo と日本の三菱重工が中核企業となってリードすることが規定され、9月に決定された企業協力合意に基づき「将来のGCAP開発製造にかかわる企業連合に関する協議は継続中」「MHIとBAEが東京で最近協議を行った」と発表された様ですが、既に約1000社&9000名以上が関与することが現時点で判明しているようです。
また不確かながら、日英伊の3か国以外にも共同開発国を広げる可能性もささやかれており、2023年初にはサウジ加入の可能性が報道された様ですが、これに対しては日本が拒否反応を示していると当該記事は伝えていたようです
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今回のGIGO合意に関し英国防省は、「共同開発フェーズ:joint development phaseは2025年に開始する予定だ」との声明を出しており、プロジェクトが本格稼働するまでに、2024年1年間かけてまだまだ詰めるべき点が「山積み」であることが伺えますが、このような「海千山千」のロビイストやコンサルタントや政治屋や政治家が暗躍しそうな「魑魅魍魎」の世界に日本が首を突っ込み、貴重な人材を投入する意味が戦闘機にはあるのでしょうか?
2月に当時の英国防相が「政治家と、軍人と、軍需産業関係者が共に協力して取り組むことが不可欠である。あらゆる機会をとらえて3者が一堂に会して協議することが不可欠」と日本に釘を刺していましたが、公明党が今ごろになって共同開発に反対姿勢を露わにし、早くも国内体制の足元が揺らぎ始めているグダグダですが、「政府組織」を束ねる日本人CEOのご苦労を生暖かく見守らさせていただきます。
英伊+日本のGCAS開発
2023年3月:日本で3か国協議
「英伊が日本恫喝:逃げるなよ!」→https://holylandtokyo.com/2023/02/14/4299/
2022年12月:英伊日3か国でGCAP(Global Combat Air Program)合意
「伊が訪日し協議」→https://holylandtokyo.com/2022/09/27/3699/
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11
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本部を英国に設置、CEO2名(政府代表と企業代表)が並立リード
政府代表CEOに日本人、企業代表CEOを伊から
12月14日、2022年12月に日英伊3か国が共同開発で基本合意した次世代戦闘機GCAP(Global Combat Air Program)に関し、1年間の長きにわたる協議を経て、プロジェクト組織の大枠となる「GIGO:GCAP International Government Organization」を規定した合意文書に、3か国国防相が東京で署名しました
プロジェクト組織を示したGIGOの細部は報道からは不明ですが、英国に置かれるGIGOの2つの本部(headquarters)は2名のCEOによって率いられ、2名のCEOはそれぞれ「政府組織:governments’ GCAP organization」と「軍需産業組織:industrials’ GCAP organization」を並列の関係で統括するとのことです
そして「政府組織CEO」は日本が差し出し、「軍需産業CEO」はイタリアが差し出すことに決定したとの声明文が出された模様です。ただし、具体的に英国の何処に2つの本部(headquarters)が置かれるのか(別々の場所なのか、同居なのか)、誰が2名のCEOに就任するかなどは発表に一切触れておらず、戦闘機と言う大きな金が動き軍需産業界への広がりも大きい共同開発プロジェクトが、一筋縄では進まない重いプロジェクトであることを伺わせます
2022年12月に基本合意し、2035年までに次世代戦闘機GCAP(以前は英伊スウェーデンによるTEMPEST計画と呼称も、スウェーデンは2023年初に脱退し、現在はGCAPと呼称)を開発配備する予定の本プロジェクトですが、2023年3月の3か国協議前には、英と伊国防相が日本に対し、「一度決めた以上、やり通せ」「開始後におじけ付いて逃げるな」「政治的にも、誰かが抜けることはできない」等々と記者団の前で語るなど、やくざ世界の様相を呈しています
今回の組織(GIGO)合意では、「政府組織」に関する発表はほとんどないようですが、「軍需産業組織」については、英BAE Systems, 伊Leonardo と日本の三菱重工が中核企業となってリードすることが規定され、9月に決定された企業協力合意に基づき「将来のGCAP開発製造にかかわる企業連合に関する協議は継続中」「MHIとBAEが東京で最近協議を行った」と発表された様ですが、既に約1000社&9000名以上が関与することが現時点で判明しているようです。
また不確かながら、日英伊の3か国以外にも共同開発国を広げる可能性もささやかれており、2023年初にはサウジ加入の可能性が報道された様ですが、これに対しては日本が拒否反応を示していると当該記事は伝えていたようです
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今回のGIGO合意に関し英国防省は、「共同開発フェーズ:joint development phaseは2025年に開始する予定だ」との声明を出しており、プロジェクトが本格稼働するまでに、2024年1年間かけてまだまだ詰めるべき点が「山積み」であることが伺えますが、このような「海千山千」のロビイストやコンサルタントや政治屋や政治家が暗躍しそうな「魑魅魍魎」の世界に日本が首を突っ込み、貴重な人材を投入する意味が戦闘機にはあるのでしょうか?
2月に当時の英国防相が「政治家と、軍人と、軍需産業関係者が共に協力して取り組むことが不可欠である。あらゆる機会をとらえて3者が一堂に会して協議することが不可欠」と日本に釘を刺していましたが、公明党が今ごろになって共同開発に反対姿勢を露わにし、早くも国内体制の足元が揺らぎ始めているグダグダですが、「政府組織」を束ねる日本人CEOのご苦労を生暖かく見守らさせていただきます。
英伊+日本のGCAS開発
2023年3月:日本で3か国協議
「英伊が日本恫喝:逃げるなよ!」→https://holylandtokyo.com/2023/02/14/4299/
2022年12月:英伊日3か国でGCAP(Global Combat Air Program)合意
「伊が訪日し協議」→https://holylandtokyo.com/2022/09/27/3699/
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/