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フーシ派攻撃でタンカーから原油15万トン流出危機 [安全保障全般]

8月21日フーシ派の無人艇・飛び道具攻撃で炎上
乗員25名は救出も、9月3日にEU 連合が曳航断念

Sunion Houthis4.jpg9月3日付 Mitary.com 記事は、紅海を原油 15万トン(100万バレル)を積んで航行中だったギリシャ船籍のタンカー「スニオン号 Sunion」が、8月21日にイランが支援するイエメンの反政府組織フーシ派による攻撃で火災を起こし、エンジンも停止して自力航行困難となっていたが、同タンカーの曳航を請け負った民間サルベージ企業も、フーシ派による更なる攻撃示唆で作業の安全確保が困難だと曳航作業断念した、とEU 連合が発表しました

EU 連合は米国や西側諸国と協力し、紅海を航行する西側船舶の安全確保作戦「Operation Aspides」を遂行しており、攻撃を受けた同タンカーから乗員 25名を何とか無事救出し、近傍のジブチに避難させたのも仏海軍の駆逐艦でしたが、タンカーの状況とフーシ派の攻撃により、作業継続は難しいと判断した模様です

Sunion Houthis.jpgタンカー「スニオン号」は大量の原油を積載しており、フーシ派による無人艇や追撃弾(projecties)攻撃により発生した火災も収まらず、既に積載原油流出が始まっているとの報道もあり、米国務省は、同タンカーからの流出は「1989年にアラスカで起きたエクソン・バルディーズ号惨事の4倍の規模」になる可能性があると警告しています

フーシ派は、2023年 10月にガザ地区で戦争が始まって以来、イスラエルによるハマスへの軍事行動を阻止するためとの名目で、ミサイルやドローンで 80隻以上の西側船舶を攻撃し、船1隻を拿捕し、2隻を沈没させ、船員4人を殺害していますが、攻撃を受けた船の多くは紛争とは全く関係がなく、イラン行きの商船も含まれているのが実態とのことです

Sunion Houthis2.jpgEU 連合は「民間サルベージ企業による行作業」断念時、「民間企業により代替策が検討されている」とも発表していますが、容易でないことは想像でき、米国務省が懸念を表明している米国勢力も、イスラエルに対するイランの報復に備え急遽中東に展開している米空母ルーズベルトとリンカーンはオマーン湾所在で、紅海に米海軍艦艇は確認されておらず、本件に関するAP通信の取材に米中央軍はノーコメント対応とのことです
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Sunion Houthis3.jfifフーシ派は、9月2日に別の西側船舶への攻撃を実施し、タンカー「スニオン号」の曳行作業を容認する姿勢を示唆しているとの見方もあるようですが、フーシ派は以前にもイエメン沖で、別の石油タンカーを攻撃して「環境へのリスク」だとして悪用したことがあり、懸念が高まっています

紅海は美しいサンゴ礁でダイバー憧れの地となっており、フーシ派による事実上の無差別攻撃と自然を人質にとるような行動は、神が許さないだろうと言じたいです

フーシ派関連の記事
「米海軍がフーシ派とWW2以来の激戦」→https://holylandtokyo.com/2024/07/24/6044/
「イスラエルVS イランを防研が速攻解説」→https://hotylandtokyo.com/2024/04/25/5847/
「フーチ派対処で防御迅速改善」→https://holylandtokyo.com/2024/04/15/5741/

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小型ドローンで軍用攻撃へリ撃墜の衝撃 [安全保障全般]

8月7日ウクライナ軍が露軍Mi-28 攻撃へリを
ウで顕在化しつつあった有人へリの脆弱性を証明
ますます困難になる有人ヘリの前線利用

Mi-28 FPV.jpg8月8日付 Defense-News は、同7日にウクライナ軍が公開した「カメラ付きドローンがロシア軍攻撃ヘリMi-28の回転翼に命中する映像」を取り上げ、ドローンによる航空機迎撃の可能性と、ウクライナで顕在化しつつあった回転機の脆弱性について取り上げています

記事は Sam Bendett米海軍分析官のコメントを紹介し、「高速飛行する軍用ヘリにドローンを操縦して指向するのは容易ではない」とし、「ウクライナのドローンが軍ヘリを追跡する試みは何度も確認されていたが、それら攻撃は全てニアミスに終わっていた」と、ドローンによる大型航空機の撃墜はこれまで成功していないと紹介していますが、

Mi-28 FPV 3.jpg同時に、低コストのFPV (first-person-view)と呼ばれるカメラ付きドローンは日進月歩で進化しており、飛行範囲が当初の平均3~5kmから、現在では15~20kmにまで拡大するなど開発が進んでおり、「ウクライナの戦場上空には、大物を狙って日々進化を続ける高速飛行 FPV が溢れ、仮にヘリの脂弱な後部プロペラ等に誘導できれば、大きな損害を与え得るレベルに達しつつあったことも事実だ」とも述べ、今回の事象を世界の軍事関係者が強い関心をもって注視しているとしています

2022年2月にロシアがウクライナ侵略を開始して以降、ロシア軍は326機のヘリを失った可能性があるとウ軍情報部は見積っており、様々な防空システムの展開により、戦場前線でのヘリの有人飛行が極めて困難になりつつあることが多くの軍事関係者の間で共通認識となりつつあるとも同分析官は語っています

Mi-28 FPV 2.jpg同分析官は更に、ドローンはその威力を増すために「群れやグループ」での飛行能力向上に向けた開発が進んでおり、顕在化しつつあったヘリの脂弱性を無視できなくなりつつあると語っています。

またウクライナ国防省の Serhii Kuzan元顧問は、「戦闘でのヘリコプターの将来使用は、特に無人システムの発展に伴い、再考される可能性があり、またそうすべきだ」、「ロシア・ウクライナ戦争後、攻撃手段としてのヘリコプターの役割が変わる可能性は大いにある。潜在的に、この機能は攻撃ドローンや無人ヘリコプターによっ置き換わる可能性があるからだ」と Defense-Newsに述べています
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Mi-28 FPV 4.jpegウクライナや中東で猛威を振るう無人機の現状を踏まえ、戦闘機が担ってきた「中及び高高度域」を押さえる「航空優勢」の概念を再考し、無人機が支配しつつある「低高度の航空優勢」含めて再定義すべきと訴え、次期制空機NGAD 開発を「再精査すべき」とか「一つのオプションに過ぎない」と米空軍首脳が語り始める中で、同様の大きな変革の流れで、無人機と活動高度帯が重なる「低高度帯域」で生きてきた軍用ヘリコプターの将来が不透明になりつつあるということです。

この迫りくる軍事変革の波を、今でも空を支配していると錯覚している戦闘機命派はどのように見ているのでしょうか? 脅威の変化の最前線に位置しながら、F-35を100機以上も導入する愚行を犯し、更に英国とイタリアに巻き込まれ、泥沼の役立たず次世代戦闘機開発を進める航空自衛隊の戦闘機命派に、天はどのような裁きを下されるのでしょうか・・・

航空優勢を再考する
「重要だが不可能だし必要もない」→https://holylandtokyo.com/2024/06/07/5938/
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→ https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

米空軍は次世代制空機あきらめムード
「数か月保留で再精査」→https://holylandtokyo.com/2024/08/06/6185/
「価格低減が必須」→https://holylandtokyo.com/2024/07/19/6083/
「NGADの将来は不透明」→https://holylandtokyo.com/2024/06/18/6040/

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北朝鮮の核戦略:エスカレーションではなく核で開戦 [安全保障全般]

核による先制攻撃のための偵察衛星
「いまや戦争の脅しは、核戦争の脅しにかわった。北朝鮮が戦争をしていないことは平和を必ずしも意味せず、戦争するとの脅迫が続くことでもあり得る。この強要戦略に必要なドクトリンが、核で戦争を始める先制である。」

NK Nuke.jpg8月6日付防衛研究所 NIDS コメンタリーで、渡邊式・地域研究部アジア・アフリカ研究室長が「北朝鮮の先制ドクトリンー核へのエスカレーションではなく、核で始まる戦争」との、やや難解な論考を発表していますで、想像をたくましくしながら、まんぐーすが少しアレンジしながら勝手な理解でご紹介します

NK Nuke3.jpgまず、日本語の「先制」は単に先に攻撃を仕掛ける意味が含まれるが、本稿でいう「先制」は、英語 Preemptionの語意に従い、相手が攻撃に着手するなど差し迫った脅威を除去する行動を指している・・・との脚注1に留意して読む必要がある論考ですが、最近は誰も相手にしない北朝鮮が、通常兵器で米韓に大劣勢である状況や、韓国国民をも核「先制」攻撃の対象として脅迫するまでに追い込まれている現状を、改めて思い知らされる論考ですので取り上げます。

渡邊アジア・アフリカ研究室長によれば
●核兵器使用に関し、ロシアは「先行」使用(First Use、戦時に相手より先に核へのエスカレートをする方針)を 2020年6月にプーチンが署名した文書で明確に示し、ロシアは「国家の存在を危険にある」場合、「通常兵器」による攻撃に対しても核で報復し得るし、政府や軍の重要施設への攻撃があり、それが核戦力の行動を難しくするならば、敵の攻撃手段が核でなくてもロシアの対応は核によるものとなり得る、と表現している

NK Nuke2.jpg●同様に北朝鮮も、2022年9月公式化のドクトリンでは、ほぼ同様な条件での「先行」使用を表明し、「国家指導部と国家核戦力指揮機構」に対する「核および非核攻撃」、あるいは「国家の重要戦略対象」への「軍事的攻撃」には、核兵器で対応すると表現していた。
●ただ北朝鮮がロシアと異なるのは、これら非核攻撃がまだ現実化していなくても、「差し迫った」ならぱ核兵器を使用するという、「先制」も表明している点である。北ドクトリンは、自らに対する「核兵器またはその他大量破壊兵器攻撃が敢行されるか、差し迫ったと判断される場合」に核を使用するとしている

NK Nuke4.jpg●北朝鮮が「先行」だけでなく「先制」にまで踏み込んだのは、北朝鮮は通常戦力で米韓に対し著しく劣勢で、ロシアのように軍事攻撃のエスカレーションとして敵より先に核使用する形は難しく、北朝鮮にとって「先行」使用の有用性は限られる

●また北朝鮮は、開戦を脅迫のオプションとして維持している。プーチンはウクライナとの戦争を始めてしまった結果、ウクライナに戦争を仕掛けると脅迫できなくなった。対照的に金正恩は戦争を保留していることで、戦争すると脅迫し続けられる。
●実際、2023年12月末、金正恩は「核兵器」を含む手段を動員して「南朝鮮全領土を平定する」準備を進めると演説しており、これは、開戦していないから可能な脅迫である。開戦を脅しに核を最大限に活用する手段は、開戦した後で核にエスカレートする先行使用ではなく、開戦が核使用を意味する先制であろう。

●劣勢の通常兵器で開戦すると脅迫しても信ぴょう性は低い。核兵器によって開戦する先制ドクトリンがあれば、金正恩が本当に発言通りに行動するかもしれないとの切迫感を韓国側に抱かせ得るのである。
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渡邊室長は論考の後半で・・・
NK Nuke5.jpg●北朝鮮幹部が、韓国軍を「無慈悲にせん滅」するとか、韓国軍が北朝鮮を「先制打撃」すれば、核攻撃により「南朝鮮軍は壊滅、全滅に近い凄惨な運命」に直面するのであり「核保有国を相手とする軍事的妄想を控えねばならない」との発言をしていること、
●また、危険を招く現政権をなぜ韓国国民がそのままにするのかと述べ、文在政権時には「少なくともソウルは我々の標的ではなかった」と警告していることから、韓国市民への核攻撃を示唆して脅迫することに使用している・・・との見方も紹介しています

最近は特にNK内の食糧事情が厳しく、異常気象による水害多発等もあり、かりあげクンが政権幹部や軍部等による反逆やクーデターを真剣に懸念しているとの噂に接することが多いのですが、核兵器での「開戦」や「先制」カードをちらつかせるほど、内部的には弱みを見せることにつながっているのでは・・・といらぬ心配をしてしまいます

数少ない最近のNK関連記事
「北朝鮮からハマスへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2023/10/24/5166/
「水中核爆発津波兵器をアピール」→https://holylandtokyo.com/2023/03/27/4452/

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紛争地域周辺で発生する民間機等へのGPS妨害 [安全保障全般]

波及効果(スピルオーバー)かハイブリッド攻撃かの判断が必要
ジュネーブ条約に沿った見極めが適当なのか?
東欧や北欧諸国での事例でケーススタディー

Russia GPS jam4.jpg7月13日付共同通信が、世界の紛争地周辺で GPSなど衛星利用測位システムへの妨害が深刻化し、民間機が航路を外れたり、着陸できなかったりする事案や、地図アプリの不具合など近隣国の市民生活にも支障が出ていると取り上げ、トルコの首都アンカラや黒海沿岸、エジプトのシナイ半島、ミャンマーの国境付近では少なくとも過去半年間、GPS が不安定な状態が続いていると報じています。(注・・・中東シリア周辺では10年以上も)

Russia GPS jam.jpgまた、原因は軍事拠点を無人機やミサイル攻撃から守るための紛争当事国による局地的な妨害行為であるが、ロシアのウクライナ侵攻やイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘開始以降に妨害が急増し、例えばFT 紙は今年4月だけで民間機も3万機が誤誘導を狙った妨害電波(スプーフィング)の影響を受けたと報じている模様です。

以下では、7月10日付米空軍協会 web 記事が掲載した、ロシアが発信源のGPS妨害電波により、バルト 3国や北欧・東欧諸国が影響を受けている状況と、その法的な解釈についてご紹介し、本問題への対処の難しさを考える機会としたいと思います

バルト 3国や北欧・東欧諸国が影響を受けている現状
Russia GPS jam3.jpg●ロシア領内の地上から発言されたGPSと同周波数の強力な電波信号により、エストニア第2の規模のタルトゥ空港が閉鎖に追い込まれたり、民間航空機が迂回を余儀なくされる事態が、ラトビアとリトアニアの一部、バルト海を挟んだフィンランドとスウェーデン、さらには遠くはポーランドとドイツにも及んでいる
●分析によれば、妨害電波はラトビアとポーランドに挟まれたバルト海沿岸の港湾飛び地力 リーニングラードを含むロシア領内の地上 3か所から発信されている

●エストニア外相はこの妨害を、同国へのサイバー攻撃、同国内での倉庫や造船所での謎の火災など、NATO軍事行動を発動する第5条の基準にギリギリ抵触しない、ロシアによる「グレーゾーン」なハイブリッド戦争の一部だと非難し、スウェーデンとリトアニアの当局者も同じ立場で主張をしている

ロシアの周辺への GPS妨害は攻撃行為か?
Russia GPS jam5.jpg●欧州の非政府系組織ハイブリッド CoE(ヘルシンキ所在のハイブリッド脅威対策研究センター)は、この妨害は、ロシアが自国軍や発電所など重要施設へのウクライナのGPS 誘導ドローン攻撃を阻止するために発信している妨害電波による波及効果(スピルオーバー)の可能性が高く、周辺の民航機や空港に危害を加える戦略的意図を持ったものではないことから、ハイブリット攻撃とは言えないとの見解を示している
●この見方については、米サイバー軍法務幹部を務めた軍事弁護士のサンガー退役海兵隊中佐など他の専門家も、ロシアの妨害が周辺国の地上に影響を与えていないことや、ロシアにとって GPSを使用するウクライナ軍は合法的な標的であることから、ハイブリット攻撃ではなく波及効果(スピルオーバー)で、ジュネーブ条約違反とは言い難いとみている

●ただ、NATO幹部は西側専門家の見解に理解を示しつつも、「ロシアの不注意な妨害活動」や「波及効果(スピルオーバー)に対する西側とは全く異なる無責任な判断基準」が、1日平均 350便の民間航空便に影響を与え、安全上のリスクとなっている現状を強く懸念し、米国や西側諸国は一般に、国際法で定められた基準よりも高い基準を自らに課していると主張している

ジュネーブ条約による解釈への疑問
Russia GPS jam6.jpg●ジュネーブ条約は一般的に、戦闘員に対し、軍事攻撃や作戦が非戦闘員に与える影響が、それによって得られる軍事的利益よりも大きいかどうか、比較検討するよう義務付けている。バルト海周辺地域で見られたGPS妨害は、直接的な人命損失や財産の破壊を引き起こしていないため、たとえ経済的損失が深刻であったとしても、ジュネーブ条約に抵触しない可能性が高い
●ただ米国関係者は、エストニアで 2番目に大きな空港が閉鎖に追い込まれた事態を取り上げ、「ポストンやロサンゼルス国際空港が1か月閉鎖に追い込まれて、それを現代社会において波及効果(スピルオーバー)として見過ごすことができるだろうか」と強い疑問を投げかけている

●別の専門家は、サイバー攻撃による被害と反撃強度の判断と同様に、グレーゾーン活動に付随する対応措置列度レベル判断の難しさを示す典型的な例だとし、GPS妨害について、いつ、どのようにハイブリッド活動だと特定するかの問題は、関連の対応も含め政治的リーダーシップの役割が最重要になると述べている。
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Russia GPS jam8.jpgここで議論の土台となっているジュネーブ条約など、戦争や紛争を議論する基礎となってきた基準が、現代の紛争議論に必ずしも適さなくなってきたことを示す、更なる事例ということでしょう

ところで、本題からは離れますが、冒頭でご紹介した共同通信による「世界の紛争地周辺でGPS妨害が深刻化」との記事は、ロシアやイスラム過激派によるGPS妨害活動が原因であることに全く触れておらず、共同通信の「中国や過激派(日本共産党を含む)に寄り添う」姿勢を明確に示している点でも興味深いです

GPS 妨害に備えて
「妨害に強いGPS衛星開発」→https://holylandtokyo.com/2024/02/25/5571/
「米陸軍の妨害対処 GPS機器が高評価」→https://holylandtokyo.com/2024/02/21/5559/
「GPS妨害に備え地磁気航法」→https://holylandtokyo.com/2023/06/13/4731/
「陸軍兵士がGPS なし訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/

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緊縮財政下のギリシャまでF-35購入へ [安全保障全般]

8月15日と16日はお休みします

財政破綻から回復途上で5年もの交渉の末に
まず20機で40機まで増加のオプション付き
米国含め19か国目のF-35契約国に

F-35 Greece5.jpg7月25日、ギリシャ国防省が米国とF-35導入交渉で合意に達したと発表し、具体的には2028年から機体提供開始、少なくとも20機を関連整備機材や初度部品等を含め約5300億円で、また追加オプションとして計40機までを約1兆3000億円で話がまとまったと明らかにしました。これでF-35導入に合意した国は、米国も含め19か国となります

Greece crisis.jpgギリシャは2009年に表面化した財政悪化とポピュリズム政権誕生を受け「国家の破綻処理」まで検討された国で、当時は労働者の1/4が国家公務員で、財政悪化にもかかわらず公務員給与を毎年引き上げる大衆迎合政治が行われ、更に55歳から年金支給開始との甘々な放漫財政運営でした。その後EUからの「強い外圧」で財政改革を迫られ、徐々にその効果が見え始め、2023年9月にギリシャ国債が久しぶりに投資適格レベルの「トリプルB」に回復したところです。

ただ、依然としてギリシャのGDPはピーク時から3割減レベルにあり、またEU「外圧」による厳しい緊縮財政により、例えばごみ回収や様々な公共サービスが混乱状態で、アテネなど重要産業である観光を支える中心都市でも市街地にごみが散乱して治安が悪化する等、悲惨な社会状態にあることが漏れ聞こえてくる状態です

Greece crisis2.jpegそんな中でのギリシャF-35導入合意ですが、ギリシャ政府は長年国境をめぐる係争を続けているトルコが、F-35導入には失敗したものの、F-16能力向上改修を縮小しEurofighter Typhoons戦闘機導入検討を示唆する動きに出ていることもあり、15年以上も事実上放置されてきた国防強化&投資に乗り出そうとしていると、7月25日付米空軍協会web記事は紹介しています

現在ギリシャ空軍は、F-16 Block 52数十機(大部分をF-16Vに改修中)を中心に、仏空軍の中古機を含むMirage 2000やRafaleを30機程度運用していますが、能力向上対象外のF-16や仏製戦闘機の売却を検討中と報じられており、ウクライナを含む国が相手先候補となっている模様です
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F-35 Greece6.jpg今もEU監視下で財政再建中のギリシャがなぜF-35???・・・と不思議な気がしていましたが、なんと同じNATO加盟国のトルコとの対立が背景の一つにあるとのこと。米国もロッキードも産軍複合体もめちゃくちゃですねぇ・・・。アジアのタイには厳しいくせに・・・

なお、2023年9月にF-35導入を政府決定したルーマニアが19か国目だと思っていましたが、まだ価格交渉がまとまっておらず9月まで米国との合意がづれ混む模様で、ギリシャがお先に19か国目になった模様です

Greece crisis3.jpegギリシャ観光を考えておられる方は、十分ご注意ください。相当治安がひどいみたいですから。また米民主党の大統領候補になりそうなカマラ・ハリス女史が司法長官を務めていた米カリフォルニア州も、サンフランシスコやロスを中心に、治安崩壊&企業や商業施設撤退で、相当混乱しているようです。野球の大谷翔平&ドジャース試合観戦目的の方も、警戒を怠りなく

【ご参考】ギリシャ以前のF-35導入合意国(購入予定機数)
●共同開発国(8か国)
豪州(100機), Denmark(27), Italy(90), Netherlands(37), Norway(52), 英国(138)、米国(2443)(空軍1763、海兵隊420、海軍260)、そしてカナダ(88機)
トルコも共同開発国ながら、ロシア製SAM購入で排除された

●FMS購入国(10か国)
Belgium(34機), Israel(19), 日本(42+100) , 韓国(40)、シンガポール(当面12機 最終的に約50機) ポーランド(32機 2020年1月)、スイス(32)、そして、フィンランド(64機)、ドイツ(最大35機)、チェコ(24機)

最近のF-35関連話題の国
「ルーマニアも」→https://holylandtokyo.com/2023/04/18/4519/ 
「シンガポール追加」→https://holylandtokyo.com/2023/03/10/4343/
「カナダがやっと決定」→https://holylandtokyo.com/2023/01/12/4134/
「チェコが東欧で2番目」→https://holylandtokyo.com/2022/07/25/3492/
「フィンランドが15番目」→https://holylandtokyo.com/2021/12/14/2520/
「スイスが14番目の購入国に」→https://holylandtokyo.com/2021/07/02/1976/
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03
「ドイツも核任務用に」→https://holylandtokyo.com/2023/03/10/4343/

購入実質拒否された軍事政権で中国接近のタイ
「タイの購入打診は拒否」→https://holylandtokyo.com/2023/05/30/4702/

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イランの攻撃に備え米軍がイスラエル防衛部隊増強へ [安全保障全般]

8月1日の米イ首脳電話会談受け2日国防長官指示
細部は検討中も、派道元も派遣先も派遣情報公開に慎重
空母を維持し、4月と同様に戦闘機とミサイル防衛装備増派へ

israel iran2.jpg8月2日付各種メディアは、7月30日のベイルートでのヒズボラ幹部フアード・シュクルの暗殺や、同31日のテヘランでのハマス指導者イスマイル・ハニヤの暗殺への対応として、イランがイスラエルへの報復を明らかにしたことを受け、1日の米イスラエル首脳電話会談での合意を踏まえ、2日に米国防長官がイスラエル防衛のための戦闘機や艦艇の追加増強を発表したと伝えています

具体的には、4月の150発以上の弾道&巡航ミサイルや、130機以上の無人機によるイランによるイスラエル攻撃時にも緊急追加派遣した、弾道ミサイル迎撃能力がある巡洋艦・駆逐艦や地上配備迎撃ミサイル部隊の周辺地域追加派遣や、戦闘機部隊の派遣など、防空能力強化のための幅広い選択肢を検討中と国防省報道官が説明しています。

israel iran3.jpg匿名の米国当局者は、現在中東にいる米海軍の駆逐艦2隻が紅海を北上し地中海に向かう予定で、必要なら、少なくとも 1隻は地中海に留まる可能性があると語った模様ですが、受け入れ国が米軍の増派に非常に敏感で動きを公表したくないと要望しているらしく、どこまで派遣部隊の詳細が明らかになるかは不透明です

ただ、太平洋から中東に再展開して過去 2か月間この地域を担当していた空母「セオドア・ルーズベルト」打撃群に代わり、空母「エイブラハム・リンカーン」打撃群を派遣することは同報道官が明らかにしています
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israel iran4.jpg4月13日のイランによるイスラエル攻撃時は、防衛研究所・西野主任研究官によれば・・・・

●イランは攻撃による事態エスカレーションを望まず、イランのイスラエルに対する強い姿勢を自国民に見せるため、攻撃を大規模に見せかけつつ、攻撃による大きな被害を出さないよう対策した。
●イスラエル側の被害発生を防ぐため、イランは攻撃の実施時期や概要を、事前にトルコ、サウジアラビア、UAE など中東諸国に事前通告することで、情報を間接的に米国やイスラエルへ届けて、イスラエル側が十分な防衛体制を準備できるようにした。
israel iran5.jpg●イスラエル軍は米英軍などと連携・協力し、情報を生かしてイラン攻撃に対処した。

・・・らしいですが、今回は果たして・・・・。   五輪開催中ではありますが、緊張感高まる 中東情勢です。

4月のイラン攻撃とイスラエル対応
「西野主任研究官によれば」→https://holylandtokyo.com/2024/04/25/5847/
「出来すぎのイラン攻撃への迎撃作戦概要」→https://holylandtokyo.com/2024/04/16/5812

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NATO首脳会議で露の汚い戦い対処を議論 [安全保障全般]

汚い戦いとは「ハイブリッド攻撃」のことです

hybrid.jpg7月9日から11日に米ワシントンCDで開催されたNATO首脳会議で、ロシアが欧州のウクライナ支援国を相手にコソコソ陰湿に進めている、一般的な軍事力ではない手段で相手国に混乱などを引き起こそうとする汚い行為、つまり2014年の露によるウクライナ侵略以降「ハイブリッド攻撃」と呼ばれる行動が激化して脅威となっている点が議論され、NATO加盟国が連携対処することが確認されました。

hybrid6.JPG具体的にこのケースでの「ハイブリッド攻撃」とは、破壊工作、暴力行為、不自然な移民や難民の増加、サイバー攻撃などなどを指し、「西側の社会を分裂させ、国家や国家機関、さらにはNATOやEUに対する国民の信頼を失墜させ、ウクライナ支援を弱体化させること」を狙いとしたものと解釈されており、NATO加盟国の認識をそろえて対応を強化することが首脳宣言として採択された模様です

以下では7月14日付のNHK報道記事から、露による欧州諸国への「ハイブリッド攻撃」の事例や最近の新たな展開について概観し、仮に日本が「ハイブリッド攻撃」対象になったら・・・を考えるベースとしてご提供したいと思います

最近の様々な「ハイブリッド攻撃」事例
【難民や移民の武器化】→約3年前、ロシアの同盟国ベラルーシのポーランド国境付近に突如、多数の中東やアフリカの移民らが集まり、ポーランド側へ越境しようとしてポーランド国境管理や治安部隊に混乱を生じさせた

hybrid2.jpg【放火など破壊工作1】→欧州諸国では最近数か月、商業施設や公共施設などで不審な火災が相次いでいる。5月にはリトアニアの首都のショッピングセンターで火事が起き、その直後には、ポーランドの首都ワルシャワで 1400以上の店が入る大規模なショッピングセンターが全焼。ポーランド治安当局が、露の指示を受け破壊工作を行ったとして9名を拘束(リトアニア事案の容疑者でもあると推定)

【放火など破壊工作2】→ウクライナ支援に積極的なチェコでは、6月のヨーロッパ議会選挙の直前、首都プラハの路線バスの車庫で何者かがバスに放火未遂する事件が発生。 警察がコロンビア国籍の 26歳の男を拘束。チェコ公安情報局は「ロシアのつながり示す明らかな証拠がある」とし、チェコ首相はロシアによる「ハイブリッド攻撃」だと主張。放火が成功していれば、「ウクライナを支援しているからチェコが狙われるんだ」との主張が拡散されていたであろうと警鐘鳴らす

チェコ事例とチェコ公安情報局の分析
hybrid4.jpg→地元警察は、男のスマホ等を捜査し、男はテロ組織や犯罪集団とのつながりはなく、約50万円の報酬目当ての犯行だったと説明。チェコ公安情報局のトップは「露との関連を示す非常に明らかな証拠があり、ロシアの情報機関が今回の攻撃の背後にいる重大な疑いを持っている。ロシアはウクライナへの支援に積極的な国を狙っている」と取材に述べている

→ただし、犯人はSNSで日常的に多数がやりとりをするグループの中から選ばれ、多くの人物を介して間接的に露情報機関から指示を受けており、犯人本人には露から指示を受けた認識はない模様
hybrid3.jpg→同チェコ公安トップはまた、イスラム過激派組織 IS等が、テロ実行犯となる人物をネット上で勧誘し、「ローン・ウルフ:一匹オオカミ」として欧州に送り込んだ手法に似ているとして、露の新たな「ハイブリッド攻撃」手段との認識を示し、「攻撃実行者の事前特定が困難で、阻止は極めて難しい。露はプロを使っていないが、一般市民の恐怖心をあおる狙いのハイブリッド攻撃では、十分役割を果たせる」として危機感をあらわにしている
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中国は、海外在住の中国人も対象に含める2つの法律、つまり、有事に軍事動員する「国防動員法」と、有事・平時を問わず中国政府の情報工作活動への協力を義務づける「国家情報法」を制定しており、在日中国人は中国本国からの指示が出れば、すぐさま日本に対する「ハイブリッド攻撃」実行者になり得る状態にあります。

hybrid7.jpg日本のマスゴミやいくつかの政党は、今でも既に中国など海外勢力の出先機関のような動きを見せていますが、「国防動員法」や「国家情報法」を根拠に、中国政府が在日中国人に行動指示を出したなら、それはそれは恐ろしい脅威になります。頭に置いておきましょう

後日、東欧や北欧諸国を飛行する民間航空機や民間飛行場への影響が最近ひどく成っているロシアによるGPS妨害を、「ハイブリッド攻撃」と扱うことが可能かに関する論考をご紹介する予定です。ジュネーブ条約の枠組みでは、現実世界の動きに対処することが難しくなっている事例としてご覧いただければ幸いです

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イタリアはKC-46給油機から A330 MRTTへ変更か [安全保障全般]

2011年から使用のB767 ベース給油機後継めぐり
2022年に6機のKC 46導入を決定していたが・・
2024年6月に突然KC-46 導入中止(halt)発表
関係者は数か月以内に再選定示唆

A330 MRTT5.jpg7月12日付 Defense-News は、イタリア空軍が2022年に決定したボーイングKC-46空中給油機6機の導入計画を中止し、現在使用するB767 ベースのポーイング製給油機4機の増強と後継機選定をやり直す模様で、世界のベストセラー給油機エアバス A330 MRTT 空中給油機が有力候補だと報じています

イタリア空軍は2011年にB767 ベースの給油機4機を導入し、その戦力増強と後継給油機として、2021年に現有B767 ベース給油機のアップグレード改修と追加で2機購入方針を決定しましたが、翌 2022年には同じくボーイング製のKC-46給油機6機導入に変更していたところでした

A330 Pitch Black2.jpgそれが2024年6月になって伊国防省が突然、約 1900億円相当のKC-46給油機6機の購入を「変化した予期しないニーズにより:due to changed and unforeseen needs」中止すると具体的な理由説明なく発表し、軍事メディアはコストと納入時期をめぐる問題に関連している可能性を報じていたところです

KC-46 RVS.jpgちなみに米空軍は今年3月、未だに開発時の要求性能を満たさないKC-46 給油ブーム遠隔操作システム RVSの改修バージョンRVS2.0の納入が、更に2026年まで延期されると発表していました

イタリア国防省のKC-46購入中止(Halt)発表に関し匿名の国防関係者は、「数か月以内に再度の機種選定が行われるであろう」と Defense-News に語った模様です
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KC-46 Flight2.jpgB767 ベースの空中給油機からKC-46 に機種更新中の航空自衛隊とは、別の道を進むことを決断しそうなイタリア空軍のお話でした

軍用機分野だけでなく、民航機分野でも「ボロボロ」状態のポーイング社や、同社の悪評を象徴するようなKC-46給油機について繰り返し言及することは避けますが、エアバス A330 MRTT 給油機とKC-46 給油機の比較を以下でご紹介しておきます

結論として A330MRTT は、日米イスラエルだけが使用するKC-46より遥かに多くの国で使用されており、自動給油システムなども成熟しているということです

●A330MRTT導入国はKC-46よりはるかに多い
A330 Pitch Black3.jpg- A330 MRTTは、豪州空軍が初導入後、英、サウジ、UAE、仏、シンガポール、韓国、スペインなど2022年時点で13か国 49機が運用中。
- 更に、米国製航空機にも広く空中給油認可済で、2022年時点で戦闘機ではF-35、F-22、F-16、F-15、A-10、爆撃機ではB-1、輸送機・哨戒機では C-17、E-3、P-3及びP-8A対潜哨 戒機、そのほかE-7にも給油可能
-ベースとなるA330は世界で1600機以上使用され、部品調達など機体維持上の問題もない

A330 MRTT4.jpg●使用可能飛行場が3割増
-翼がKC-46 より大きく揚力が大きいため、アジア太平洋地域で利用できる飛行場が3割増

●3か国が導入決定の自動給油装置アリ
-「fly-by-wire boom system」で全自動装置を試験中(既に330 回給油試験済で今年中に昼間運用認証予定、夜間認証は 2023年) 高解像度高精彩3Dの画像システムを使用し、処理速度や反応速度が速い

A330MRTT 給油機関連の記事
「豪州 L A330MRTT 給油機と空自F-2適合試験完ア」 →https://holylandtokyo.com/2022/05/10/3211/
「A330MRTT & LMXT」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20

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「欧州空の盾構想」への中立国参加を巡る考察 [安全保障全般]

ESSI : European Sky Shield Initiatve 構想を巡り
中立国スイスも参加意思表明済
改めて中立性との関連議論を確認

ESSI5.jpg7月11日付 Derense-News が、ロシアの脅威に対抗する防空&ミサイル防衛システムの共同迅速購入等を目的とし、ドイツが中心となって 2022年 10 月に開始された「欧州空の盾構想:ESSI: European Sky Shield Initiative」に、中立国スイスが参加意思表明していることに関する、スイス国防省や専門家の見解を紹介しています

ESSIは、既存のNATO 防空システムを強化する基本方向で、防空&ミサイル防衛システムを加盟国が相互運用性を備えた形で導入することを狙った構想で、市場にある装備品を有効に迅速に効率的に導入することを目指しており、調達においては NATO の「Modular Ground-Based Air Defence High Visibility Project」枠組みを活用して、加盟国の負担軽減につなげるものです

ESSI7.jpgESSI立ち上げ当初の加盟15か国は全てNATO加盟国 (Belgium, Bulgaria, the Czech Republic, Estonia, Finland, Germany, Hungary, Latvia, Lithuania, the Netherlands, Norway, Slovakia, Slovenia, Romania, the United Kingdom)で、2023年2月にDenmark and Sweden 加盟で17か国となり、2024年2月に Greece and Turkey も加盟意思を示しています。

2023年7月に中立国スイスとオーストリアも参加意思を示しましたが、スイスの加盟についとは「中立性」との整理について、2024年夏に他加盟国間で議論されるとのことです。仮にスイスが加盟すれば ESSIは21か国参加となります

このような状態にある ESSIですが、スイス国防省やチューリッヒエ科大学の Marcel Berni 講師は、「中立国」スイスの加盟に問題はないと以下のように説明しています

ESSI66.jpg●スイスは現時点で、弾道ミサイル攻撃を受けた場合に防衛する手段を保有しておらず、ESSI 加盟は自国防衛のための手段である
●スイスはESSIへの参加範囲や程度を自ら決定できる。スイスの主な加盟の狙いは調達調整と訓練および兵站面協力である。防空ネットワークへの統合は想定されていない
●ESSI 枠組み合意には「国家間の武力紛争への参加や関与を排除する条項」が含まれている
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スイス以外の ESSI 加盟国が、どのような理由でスイス加盟を慎重に議論するのか説明できませんが、日本で左系の方が時節持ち出してくる平和の象徴のような「中立国」も、きちんと脅威の変化に応じ適切に柔軟に対処し、国防努力を怠っていないことをご紹介しておきます

ESSI3.jpgただ、欧州諸国でESSIに反対する国もあります。ESSI内で共同で効率的調達を検討する具体的装備として、イスラエル製の「AITOW 3」や米国製の「パトリオット」と言った装備名が上がっていることから、仏伊共同開発の「SAMP-T system」が不当に排除されているとして、仏伊スペインがESSIに反対し、2023年6月に仏が代替構想討を提案して欧州一丸になっていない現実もあります

ESSI 関連の記事
「欧州空の盾計画に中立国スイス参加意思表明」→ https://holylandtokyo.com/2023/07/12/4828/

ウクライナに学ぶ防空の重要性
「ウクライナで露が制空権で優位に!?」→https://holylandtokyo.com/2023/06/28/4795/
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「イラン製無人機が猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/37871
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→ https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

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独仏西の戦闘機が大挙アジアツアーの概要 [安全保障全般]

3か国戦闘機28機が給油機8機と1800名体制で
アラスカ→豪州→日本→ハワイ→インド
7月8日から8月の印空軍初の多国間空軍演習まで

Pacific Skies 24.jpg7月5日付米空軍協会web記事が、ドイツ・フランス・スペイン空軍(次世代戦闘機Future Combat Air System開発でチームを組む3か国。英伊日本のGCAP:Global Combat Air Programとはライバル関係ですが・・・)が7月から8月にかけ、戦闘機28機を含む、総計50機と人員約1800名を伴って開始している、大規模アジア訓練演習ツアー「Pacific Skies 24」について紹介していますので取り上げます。

本件については2023年11月末に構想が発表されましたが、超積極的なドイツ空軍司令官(なんと2018年から継続して同ポストを務める超異例の長期政権)Ingo Gerhartz独空軍中将(記事の写真でご紹介)がリードしてまとめられた構想で、世界中から目を付けられている中国軍の横暴に欧州軍としての姿勢を示す目的をもって計画されたとのことです。

Gerhartz2.jpegなお同独中将はウクライナ情勢厳しい欧州にあっても、2023年6月に24か国から航空機220機と1万名を集め「欧州における冷戦後最大の航空演習」となった「Air Defender 23」を主導&実現させたことで世界から注目を集めた独軍人です。ちなみに同演習には米空軍から約100機のF-35s, F-16s, F-15s, A-10sが参加しましたが、全てが州空軍からの参加で、州空軍にACE構想を浸透させることに多大な貢献をしたとして米空軍からも称賛されているドイツ軍人です

ちなみに、独空軍は本訓練ツアーに12機のトーネード戦闘爆撃機を参加させるのですが、1980年代から広く欧州の空軍で採用され、1992年の湾岸戦争で大活躍した同機も、ドイツ空軍に残るのみとなっており、2025年から独空軍でも退役開始するようで、これが海外展開の最後の機会となるようです

先ず独仏西からの「Pacific Skies 24」参加機は
Pacific Skies 24 2.jpg●ドイツ→トーネード12機、タイフーン8機、H145Mヘリ4機、A400輸送機4機
●フランス→ラファール4機、A400輸送機3機、A330MRTT空中給油機8機
●スペイン→タイフーン4機、A400輸送機2機

「Pacific Skies 24」のスケジュール概要
●米アラスカで→7月8日から18日に、ドイツ空軍主計画の演習「Arctic Defender」を実施。航空機60機と人員500名で、米軍からはF-22と米海兵隊機が参加し、広大なアラスカ上空演習空域を使用した航空作戦演習を展開
Gerhartz.jpg●豪州で→7月12日から8月2日の間に、豪州主導の多国間統合演習「Pitch Black」に参加し、米、シンガポール、伊、印、英国、フィリピンなど総計20か国140機とともに、様々なシナリオ設定で航空戦力活動を訓練

●日本で→7月19から25日の間に、航空自衛隊のF-15やF-2と訓練
●ハワイで→開催中の世界最大の海洋演習RIMPAC後半部分に独タイフーンが参
●インドで→8月にインド空軍が初めて実施する多国間空軍演習「Tarang Shakti」に参加
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Pacific Skies 24 3.jpgドイツは、左翼政権が原発廃止など極端な自然エネルギー政策を推し進め、今や電力などエネルギー価格が高騰して産業崩壊状態となっています。併せて極端な移民受け入れ優遇政策で社会秩序も崩壊し、欧州の凋落を象徴する国家となりつつあります。

ドイツの国防政策も、冷戦終了後の極端な「軍縮」&「国防費削減」政策で軍の根幹を崩壊させながら、2014年の露のウクライナ侵略以降、再び手のひら返しで軍事力増強に取り組んでいますが、「覆水盆に返らず」で、一度社会で地位を失った軍隊に人を呼び戻すことは難しく、空虚な軍事増強と揶揄される現状です。そんな苦しいドイツ軍の歴史を経験してきたIngo Gerhartz独空軍中将が、独陸軍に押されて存在感が薄い独空軍の存在をアピールする姿に「胸熱」の「Pacific Skies 24」です

2023年11月に計画発表時の記事
「独仏西の戦闘機が大挙アジア訓練ツアー」→https://holylandtokyo.com/2023/11/29/5307/

ドイツ空軍トップはイケイケ積極派!
「23年6月に独でで冷戦後最大の航空演習」→https://holylandtokyo.com/2023/05/01/4515/

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米議会が核兵器搭載可能B-52増加法案提出へ [安全保障全般]

新START条約で2015年に削減した30機に再び搭載改修か
露が新START後継条約拒否で2026年2月失効に向け
一部議員が反対も多数が30機のB-52に搭載能力復活に前向き

AGM-86B.jfif6月18日付Defense-News記事は、2021年に何とか5年延長で合意したものの、ロシアの状況から再延長の可能性が極めて低い新START条約の2026年2月失効を予期し、米下院と上院がそれぞれ2025年度国防予算関連法案に、核兵器搭載可能なB-52爆撃機の機数を30機増加(現在B-52保有数は76機)させることを米空軍に命じる条項を加える方向だと報じています

2010年に米国が批准した新START条約は、「2018年までに、戦略核弾頭を1550発まで、大陸間弾道ミサイル(ICBM)・潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)・戦略爆撃機等の配備数を700基まで削減する」ことを求めており、米国はこの条約履行のため、2015年から保有B-52爆撃機中の30機から、核搭載巡航ミサイルAGM-86B搭載機能を除去する措置を取りました

AGM-86B 3.jfifしかし2021年に難産を経て5年延長に米露が同意した本条約に関し、ウクライナ戦争等を背景に2023年3月にロシアが一方的に「同条約の履行停止」を決定し、更に今年6月の会議で米が露に新START後継協定交渉を申し入れたところ、ロシアが明確に交渉する意思がないことを示したとのことで、米議会が一気にこの動きに出た模様です

6月14日に、下院本会議で賛成217票、反対199票で可決し、上院でも軍事委員会で同日22対3で可決しており、例えば下院法案は米空軍に「条約の失効後1か月以内に爆撃機の再改造を開始し、2029年まで30機のB-52改修を完了するよう義務付ける」内容となっているようです

AGM-86B 2.jfif議員の中には、「新START後継条約に関するロシアとの困難な協議を、更に難しくする」とか、「今後10年間をかけ、B-52に新エンジン、新レーダー、新電子機器、新型コックピット、新車輪&ブレーキ等を導入するB-52近代化計画をさらに複雑にしてリスクを高める」、「B-21導入に集中したい国防省も米空軍も望んでいない」と主張して反対する議員もいるようですが、大きな勢力ではなさそうです

米国が核戦力面で対処するのはロシアだけでなく、近年核戦力増強が著しい中国、更にはイランや北朝鮮からの潜在的核脅威もあることからも、B-52の能力復活は理にかなっていると考える意見には抗しがたそうな雰囲気です。

AGM-86B 4.jfif元B-52操縦者で、米空軍協会ミッチェル研究所のMark Gunzinger将来コンセプト研究部長も、「(核兵器搭載能力回復の)改修は恐らくそれほど困難なく行えるだろう。必要な配線はおそらくまだ残っているし、取り外された物理的な部品も再設置可能だろう」と述べています

新START条約の2021年再延長ゴタゴタ
「露の条約不履行を米が非難」→https://holylandtokyo.com/2023/02/02/4251/
「露が土壇場再延長合意」→https://holylandtokyo.com/2021/01/23/305/
「ドタキャン後に延長表明?」→https://holylandtokyo.com/2020/10/19/435/
「延長へ米露交渉始まる?」→https://holylandtokyo.com/2020/04/20/730/

B-52を大改修して「B-52J」へ
「2060年代まで現役に向け」→https://holylandtokyo.com/2024/02/27/5575/
「B-52Jへの熱い取り組み」→https://holylandtokyo.com/2023/10/19/5134/
「米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/

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OpenAI 社が中露の生成型AI悪用に関する報告書 [安全保障全般]

現時点では大きな影響を与える悪用は未確認
英語能力に劣る悪者利用による情報拡散が一番の懸念
Al 生成物「ラベル付け」法律制定と識別技術が必要と

OpenAI ChatGPT.jpg5月31日付 DefenseOne が、ChatGPTを提供する生成型AIの先駆者企業「OpenAI社」が発表した「ロシアや中国関連アクターによるOpenAI 生成AI活用の Disinformation 情報拡散」とのレポートの概要の概要を紹介していますので、更につまみ食いして取り上げます

なお、このOpenAI作成レポートを同記事は、AI 生成作成コンテンツが明確に「ラベル付け」されるような法律制定を目指す同社の姿勢をアピールし、そのために同社が開発する「AI 生成作成コンテンツ検出技術」を検証する一環として作成されたものだと指摘し、

OpenAI ChatGPT5 .jpg(←100万人登録に要した日数比較)「現時点では大きな影響を与える悪用は未確認」だが、悪意ある人物が、同社のような「AI 生成作成コンテンツ検出技術」開発者よりはるかに早く、コンテンツを生成し、拡散できる可能性があることを警告していると解説しています。

同レポートが「一つの主な発見:Acentral finding」として指摘しているのは、生成 AIにより (偽情報拡散に最も活用される)英語(または他の言語)の能力が劣る悪者でも、従来よりも遥かに本物らしく見える投稿やコメントを作成可能となり、ネイティブスピーカーが投稿したように見せることができるという点です

OpenAI ChatGPT4.jpgこの点は、不自然な言語表現が現時点におけるネットコンテンツの真備を判断する数少ない有効な手段であることから、非常に重要な意味を持つと同レポートは普鐘を鳴らしています。

まぁ・・・、自社の生成型AI「ChatGPT」の悪用事例を、どこまで「OpenAI社」が正直に披露するのか、同レポートにある「現時点では大きな影響を与える悪用は未確認」との説明を信じてよいのか、まんぐーすにコメントできる知見がありませんが、6月中旬開催の「G7首脳会議」でも重要な話題になっているテーマですので、まずは勉強させていただきます

同レポートが挙げた事例には・・・
OpenAI ChatGPT3.jpg●親ロシア派の団体「Bad Grammar」は、OpenAI ツールを使って「ウクライナとモルドバの大統領は汚職に手を染めている」、「米国がウクライナを支援すべきではない」等と主張する生成AI作成コメントを大規模に拡散していた
●ロシア拠点のグループ「ドッペルゲンガー」は、OpenAIツールを使って英語、仏語、独語、伊語、ポーランド語のコンテンツを投稿し、実際よりもはるかに人気があるように見せかけた。ただしその発言があまりンもパターン化し、一般ネットユーザーの多くからから「ボット」だと批判されていた

OpenAI ChatGPT6.jpg●中国の「Spamouflage」と呼ばれるグループは、情報の拡散手法ではなく、生成 AIを活用し「SNS 分析に関するアドバイスを求め、ニュースや時事問題を調査し、ブログやSNSに公開するコンテンツを生成した」、「生成 AIを活用し、多数のSNS投稿、特に中国語の投稿の感情を要約および分析した」、「(意味理解できず→) The people acting on behalf of IUVM used our models to create website tags, which then appear to have been automatically added to the group's website J
●生成 AIを使用し、Telegram、X、Instagram などのサイトや投稿への大量の短いコメント投稿を行い、アクセス数を水増しすることも広く行われている
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OpenAI ChatGPT2.jpgイタリアで6月13~15日に開催されたG7サミットの共同声明に、AIに関し「軍事分野での責任ある開発と使用を推進する枠組みの必要性」が明記された模様で、日本でも大規模な開発事業者などを対象に法規制の検討が始まっているようです。

サイバーや宇宙だけでも手に負えないのに、生成AIですか・・・。頭が痛い時代になってきましたが、健全な常識を備えた国民の存在こそが、国家安全保障の一番の守護神だ・・・との一念で、ちまちまと今後も投稿を続けたいと思います。後しばらくは・・・

安全保障全般カテゴリー最近の記事 250本
https://holylandtokyo.com/category/%e5%ae%89%e5%85%a8%e4%bf%9d%e9%9a%9c%e5%85%a8%e8%88%ac/

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中国の台湾侵略を米軍は無人兵器で1か月間阻止 [安全保障全般]

Washington-Post 紙が太平洋軍司令官にインタビュー
「多数の秘密兵器で台湾海峡を地獄絵図に」と
「それは現実的で、調達可能だ」とも語る

Paparo9.jpg6月10日付Washington-Post 紙が、5月3日に就任したばかりの米太平洋軍司令官Samuel J.Paparo Jr 海軍大将へのインタビュー記事を掲載し、同司令官が「中国が台湾に侵攻した場合、米軍が数千の無人機や無人艦を配備し、無人の地獄絵図(Hellscape)を作り出す」と語ったと報じています

米国防省では、2023年8月にHicks 国防副長官が突然「Replicator 計画(Replicator Initiative)」を打ち出し、多量の艦艇やミサイルやマンパワー等で脅威となっている中国軍に対抗し、米国防省は今後2年間に集中して「小型&安価であってもスマートな無人システムを大量に導入する」と明らかにし、

Paparo.jpg「統合参謀副議長と共に同計画を監督」、「米軍の軍事革新を、損耗覚悟の自立無人システムを大量導入することで促進」、「中国軍に対し、対処の事前計画が困難で、各個撃破がより厄介な対処法で臨む」と基本的考え方を表明していますが、

米国大統領の命令を直接受け、対中国軍事作戦の指揮を執る立場の軍人司令官が、具体的にこのような作戦構想について明らかにするのは極めて異例で、特に中国を刺激しそうな「地獄絵図 (Hellscape)を作り出す」との表現や、米側の弱点に言及したとも言える「1カ月の間、時間を稼ぐ」とまで語ったことに驚きました

有料登録者限定のWP 紙記事の概要を紹介した朝日新聞記事(Yahooサイト掲載)から内容を紹介すると・
Paparo4.jpg●Paparo 司令官は、中国の艦船が台湾侵攻のために台湾海峡の航行を始めた直後に、米軍の無人兵器を展開するとの作戦構想に言及した
●同大将は「多数の無人秘密装備を用い、台湾海峡を無人の地獄絵図にしたい。1カ月の間、(中国側を)惨めな状況にし、これにより、我々が各種対処のための時間を稼ぐことができる」と述べた。
●同司令官は、「多数の秘密装備」について細部への言及を避けたが、「それは現実的で、調達可能だ」とも語った
///////////////////////////////////////

WP紙の6月10日付元記事
https://www.washingtonpost.com/opinions/2024/06/10/taiwan-china-hellscape-military-plan/

china taiwan9.jpg「Replicator 計画」の他にも、米軍内では各軍種が様々な無人兵器構想や開発を進めており、先日も国防省 DIUと空軍が共同でKTV(Enterprise Test Vehicles)との無人兵器関連テストプラットフォーム開発を発表し、その位置づけや狙いがよくわからず、軍事ニュースサイトも公式発表をただ報じて、推測コメントを短く添えるだけの「良くわかりません」状態でした

ただ、5月3日に就任したばかりの Paparo 司令官が、つい口を滑らせて作戦構想やその狙い (米軍が数千の無人機や無人艦を配備し、台湾海峡で中国軍を約1カ月の聞くぎ付けにして。 米側の各種対処のための時間を稼ぐ)を漏らしてしまったとは思えず、「それは現実的で、調達可能だ」とまで述べていることから、中国側を抑止する効果ありと見積もって「手の内を明かした」と考えるべきでしょう

china taiwan Japan.jpgそれにしても・・・「多数の無人兵器で約 30日間時間を稼ぐ作戦」は理にかなっているとも言えますし、相当ウォーゲームをやったんだろうな・・・とも思いますが、台湾の人々はどう思うでしょうか?

また、日本への影響は? 更に自衛隊はどのような役割を約30日間期待されるのでしょうか? これまでの防衛力整備の方向が正しかったと言えるでしょうか?(戦闘機とか、こじつけるんでしょうが・・・) 厳しい現実を突きつけられているように思いますが・・・

米国防者の Replicator Initiative など
「DIU と空軍のKTV」 →https://holylandtokyo.com/2024/06/21/5988/
「再びRep構想を説明」→https://holylandtokyo.com/2023/09/08/5016/
「国防副長官がRep構想発表」→https://holylandtokyo.com/2023/08/31/4997/

米議員団「米軍航空機の9割は地上で損壊」の引用元
「CSIS 台湾有事の War Game 結果」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/

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中国が米軍等の現役退役操縦者を積極隠密リクルート [安全保障全般]

米DNIと英豪加NZ情報機関が自国軍人やOBへ警告
中国との関係を隠し民間会社を装って軍人やOBに接近
パイロットを始め、作戦機搭乗員や作戦指揮所経験者に狙い

Five Eyes.jpg6月5日、米国情報機関の元締めDNIや米国と緊密な情報共有を行っている英豪加NZ情報機関がそれぞれのwebサイト等で、米軍やNATO軍の現役や退役したパイロット及び主要作戦運用職種経験者に対し、中国が民間会社を装って接近し、高額な報酬と甘い言葉で西側軍人やOBに専門知識を生かせる仕事をオファーし、西側軍の戦術や技術や作戦運用ノウハウを盗み取ろうとして、少なくとも数百人単位の人間にアプローチしているとの警告文書を一斉に掲載開始したようです

米国情報機関を束ねるDNI(Director of National Intelligence)配下で、いわゆるスパイ対処(Counterintelligence)を担う部門のトップ(Director of the National Counterintelligence and Security Center (NCSC).)は警告文書で

TFASA.jpg●中国は軍事作戦の知見不足を補い、中国軍人の教育や作戦立案に役立てるため、世界中で西側企業に見せかけた偽装企業による西側作戦機搭乗員や同OBのリクルートを、高額な報酬などの誘い文句で極めて活発に行っている
●中国は南アフリカ企業所在の企業等と連携し、軍用機パイロット、作戦機搭乗員、作戦指揮センター勤務経験者などに狙いを定めており、具体的企業名としては「Test Flying Academy of South Africa (TFASA)」「Beijing China Aviation Technology Co. (BCAT)」「Stratos」等々がある

●中国の動きを察知した米国政府は、問題のある関連企業活動に制限を課す対応を行っている。また退役米軍人がそのような企業と関係を持つことを禁じる規則改正も既に行っている。このような米国の対処で中国側の企みが最近(負の)影響を受けているが、それでも中国は手法を変えながら引き続き米軍パイロットや同OBリクルートに注力している

米空軍幹部も昨年9月のAFA総会で
Stratos flight2.jpg●少なくとも数百名の米空軍やNATO軍現役兵士や軍OBが中国関連企業のターゲットになっている。表面的には安全で無害に見えるような職務提案や技術顧問的なオファーで始まるが、次第に中国側の関心が高い情報提供に巻き込まれる巧みな「やり口」が確認されている
●また、リクルートは一般的な求人募集webサイトやヘッドハンティング企業サイトを通じた形でも行われており、もし怪しい誘いを受けた場合や過去に経験がある場合は、軍の捜査局やFBI窓口に相談してほしい
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Stratos flight.jpg中国企業が外国企業の技術を盗むように、中国軍も西側諸国軍の軍事的ノウハウを狙っているということで、もちろん西側諸国軍は脇を締め、変な誘惑に乗らないように軍内教育やOBへの注意喚起に力を入れるべきです

ただ、中国軍人への給与支払いも滞っていると言われる昨今、「金の切れ目が、縁の切れ目」の世界でしょうから、中国側もそう簡単に前進は難しいでしょう。もしかしたら、中国や中国軍内での変化の兆候をつかんだ今のタイミングで、西側「Five Eyes intelligence alliance」を構成する、英、加、豪州、NZが攻勢反転の機会と見て、このような注意喚起情報を積極的に一斉発表したとも考えられます

米国情報機関の元締めDNI関連
女性初の国家情報長官は講道館で1年柔道修行
「中国宇宙脅威を語る」→https://holylandtokyo.com/2021/04/27/116/
「露は弾薬不足に対処できそうもない」→https://holylandtokyo.com/2022/12/08/4032/
「年次報告書を語る」→https://holylandtokyo.com/2021/04/27/116/

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日米が極超音速兵器迎撃システムGPI開発 PAに合意 [安全保障全般]

5月15日に日米がそれぞれ発表も
日本側発表には何故か分担に関する記述なし・・・

GPI MDA.jpg2023年8月の日米首脳会談で基本合意された極超音速兵器の迎撃ミサイル開発(厳密には同ミサイルを滑空段階で迎撃するミサイル GPI (Glide Phase Interceptor:滑空段階迎撃用誘導弾))について、昨年から「両国間の作業範囲や意思決定体制などの取決めについて、政府間で調整を行ってきたところ」、5月15日に日本の防衛省と米ミサイル防衛庁MDAが、GPIの日米共同開発に関するプロジェクト取決め(PA:Project Arrangement)に署名し、

GPI MDA2.jpg「GPIの日米共同開発は2030年代の完了を予定。GPIは統合防空ミサイル防衛能力の向上に資するアセットであり、また、日米同盟の抑止力・対処力向上に寄与する。防衛省と米MDA は成功に向け緊密に連携し、共同開発を通じた同盟の強化に尽力する」との主旨の声明を出しています

以上が15日の防衛省発表内容の実質全てですが、以下では同日付 Defense-New 記事が紹介する米MDA 発表の声明と記事の関連補足説明から、少しだけ詳しくつまみ食い紹介いたします

GPI MDA4.jpg●米MDA声明は、「合意協定PAは、研究、開発、試験、評価プロジェクトに関する日米二国間覚書に該当する」、「日本は、GPIのロケットモーターと推進部品の開発を主導する:Japan will lead the development of rocket motors and propulsion components of GPI」と述べている

●GPIは、イージスミサイル防衛システムを装備した海軍艦艇に適合するように設計され、垂直発射システム VLSから発射され、極超音速の脅威を探知、追跡、制御し、交戦する改良型ベースライン9イージスシステムと統合される
GPI MDA3.jpg●GPIの設計は、2022年6月に設計案作成契約を獲得した Raytheon Technologies と Northrop Grumman の2社が競い合っている状況

●米議会はGPIに強い期待を寄せており、昨年2024年度国防授権法の中で、MDA が 2029年末までの初期作戦能力IOCを提供、2032年末までにFull作戦能力の確立、更に2040年までに少なくとも 24個のGPI提供を期待すると記している。
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GPI MDA5.jpg日本メディアは、17日(金)の木原防衛相の関連内容を含む記者会見を受け、「日本側はミサイルのロケットモーターや、キルビークルと呼ばれる弾頭部分の推進装置を担う」と報じており、米MDA 声明でも関連の記述があるのですから、防衛省発表でも開発分担について少し触れれば良いのにと思います。

巨大な予算が動く共同開発でもあり、何か押し付けられたの??? 何か触れたくない理由があるのか??? 問題があるのかな???と邪推してしまいます

ご興味のある方は、是非以下の17日付 JSF氏による Yahoo 寄稿記事「日米共同開発の極超音速兵器迎撃ミサイル GPI で日本が開発分担範囲は・・・」をお勧めします。めちゃクチャ詳しい情報です・・・

JSF氏による非常詳細な解説
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9e1df2ef6373738ed7b1bf4b89e6641455d86f2a

防衛省のシンプルな発表
https://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/2024/0515a_usa-j.html

迎擊兵器 GPI開発関連
「米国は予算削減し日本が負担か」→https://holylandtokyo.com/2024/04/11/5732/
「迎撃兵器を日米共同開発で」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/

極超音速兵器はそんなに脅威か?
「突然グアムでARRW講習会」→https://holylandtokyo.com/2024/03/08/5662/
「同兵器を過大評価するな」→https://holylandtokyo.com/2023/12/15/5343/
「ウで次々撃墜:同兵器を過信するな」→https://halylandtokyo.com/2023/06/01/4695/

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