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米国務省が露のNew START条約不履行を非難 [安全保障全般]

コロナで2020年3月から両国合意で現地査察中断も
2022年夏に査察再開要望も露が継続拒否
両国による条約協議委員会開催も露が拒否
2011年の同条約発効以降で初の不履行訴え

New START4.jpg1月31日、米国防省が米議会に戦略兵器削減条約(New START treaty:2011年発効、2021年1月に26年までの延長に期限ぎりぎり露が合意)の状況に関すレポートを提出し、同条約締結以来初めて、ロシア側が現地査察に応じず、かつ同条約に関する協議委員会(Bilateral Consultative Commission)開催を拒否し、同条約不履行状態にあると訴えました

現地査察に関しては、2020年3月にコロナ感染を受け、米露両国の合意に基づき当面中断することになっていましたが、米国が2022年夏に査察再開を提案してもロシア側がコロナを理由に引き続き拒否している状態で、米国務省はこれを露のウクライナ侵略に対する西側制裁への反発に過ぎないと非難しています

New START6.jpgまた、米側が査察問題をロシアと協議するため、条約が規定する「Bilateral Consultative Commission」の開催を露に要請したところ、2022年11月には一端同意する姿勢を示したものの、後に拒否して現在に至っており、更なる条約違反だと米国務省は訴えています

米国務省報道官は、「米国は完全に同条約を履行すべく、いつでも建設的にロシアと行動する用意がある」と述べ、ロシアが同条約維持のため、違反状態を解消するよう促しています

New START3.jpgこれを受け米議会では、政権与党の民主党議員である上院軍事委員長、上院会合委員長、上院インテル委員長が「我々はNew START条約の初度締結時からロシアとの軍備管理を支持し、同条約の延長にもトランプ&バイデン両政権下で賛同応援してきた。ただし今般の状況に鑑み、同条約の順守が、将来のロシアとの戦略兵器軍備管理を上院で考察するにあたり極めて重要な意味を持つことを、明確にしておきたい」と訴えています

また共和党の有力議員(下院軍事委員長、同委員会委員2名、下院戦略兵器小委員長)はより厳しい姿勢の声明を出し、「ロシアによる査察拒否は条約のより大きな履行違反につながる可能性が高く、米国は戦略核増強に備えるべきだ」、「バイデン政権は国防省に対し、ロシアが条約上限を大幅に超える核弾頭を展開することに備えるよう、準備指示を出すべきだ」と主張しています
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putin russia.jpgいつものロシアのやり方ですが、2026年の同条約有効期限まで、のらりくらりと米側の核兵器強化の動きを封じつつ、ロシアは時間を稼いでコッソリ核弾頭や核兵器の増強を図る道を探るのでしょう。

ウクライナ侵略に伴う西側の制裁で瀕死状態のロシア経済ですから、核弾頭や核兵器の増強どころか、核兵器の管理事体がしっかりできているのかが心配になりますが、米議会内で温度差は多少あるものの、超党派でロシアに厳しい目が向いていることに安堵しておきましょう

新START期限切れ寸前延長
「露が土壇場再延長合意」→https://holylandtokyo.com/2021/01/23/305/
「ドタキャン後に延長表明?」→https://holylandtokyo.com/2020/10/19/435/
「延長へ米露交渉始まる?」→https://holylandtokyo.com/2020/04/20/730/
「中国は核兵器管理条約を拒否」→https://holylandtokyo.com/2020/07/13/570/

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「2025年に中国と戦う」文書で話題の輸送コマンド司令官 [安全保障全般]

配下部隊に業務指針や指示事項を示す年頭文書
空中給油機の連続運用や少人数運用に挑戦する粘血指揮官
「出る杭は打たれる」で「後ろから撃たれた」か・・・

Minihan7.jpg米国時間の1月27日からSNS上やメディア報道で、米空軍大将が「2025年に中国と戦うことになろう」との見積もりを含む文書を配下部隊に配信する準備をしていた・・・と話題となっています。

文書は、本ブログでも3回取り上げている米空軍輸送コマンドの熱血司令官Mike Minihan大将が新年に当たり、配下部隊に自身の情勢認識や部隊運営方針及び当面(2月と3月)の指示事項を周知するためのもので、2月1日付で配信される予定だったもののようです

Minihan8.jpg「2025年に中国と戦うことになる」・・・との部分は、「2025年」を強調したいというよりも、戦いへの準備に十分な時間が無い可能性が高い事を部下に注意喚起するために、一つの見方を取り上げたものと見るべきで、それ以上のものではないと思いますが、話題になったのでご紹介しておきます

「2025年に中国と・・」は文書冒頭の情勢認識を述べた部分で、
●私が間違っていることを望むが、部下の分析によると、我々は中国と2025年に戦うことになる
●習近平は3期目の任期を確保し、2022年10月に戦争準備委員会(set his war council)を設置した

Minihan2.jpg●台湾は2024年に総統選挙を予定し、これが習近平によい条件(reason)を提供する。米国の大統領選挙も2024年にあり、習近平に混乱した米国をもたらすだろう
●このように全ての情勢が、習近平と戦争準備委員会に良い条件と機会を2025年に提供することになる

●2022年を使って我々は勝利をつかむための基礎設定を行った。前年の基礎を基に、2023年を我々は明確な作戦行動につなげるために活用する
●私が「明確な作戦行動」との言葉で意味するところを知りたければ、1月に「Total Force Team Charleston」が行ったことを確認してくれ

Minihan.jpg国防省報道官は直ちに、「Minihan空軍大将の見解は、米国防省の見解ではない」とコメントを出し、「国家防衛戦略は明確に、中国は国防省にとってのpacing challengeであり、我々の焦点は同盟国等と協調して平和で自由で開かれたインドアジア太平洋地域を維持することだ、と規定している」と述べています。

また中国に関しては常に、「pacing challenge」で、米軍はアジア太平洋に指向する必要があるとの姿勢を明示しながらも、喫緊の衝突が差し迫っているわけではないとのトーンで情勢を説明しています

Davidson3.jpg一方で過去にも軍人司令官は、例えば2021年に当時のPhil Davidson太平洋軍司令官が「中国は2027年までに台湾に対して軍事行動を起こす」と発言したり、米海軍トップのMichael M. Gilday大将が昨年10月に「米軍は2022年や23年に(中国と)戦う準備が無ければならない。私はそれを否定できない。それを言いまわって警告するつもりも、それを望むこともないが」と語ったりしています

今回の話題の発言の主であるMinihan大将は、前職が太平洋軍副司令官で対中国作戦の難しさを知り尽くした高級幹部で、KC-46が不具合を多数抱えたままの状態にもかかわらず、「不具合による運用制限の中でも、乗員や整備員に必要な訓練や各種手順の改善徹底を図ることで、リスクを抑えて実戦運用に提供可能だ。我々には今必要でなんだ。今の戦いに敗北すれば将来は無い」と運用開始を宣言したり

Minihan9.jpg中国作戦での空中給油機ニーズが膨大であることを踏まえた対策検討として、KC-46の最大能力発揮のため、様々な事前訓練やメディカル面での検証や配慮を行いつつ、36時間連続飛行の試みや「操縦者1名・給油操作員1名」での運用などに挑戦を続け、最前線の要求に対応しようと模索を続けている熱血指揮官です

2月1日付で正式通達予定の司令官名の文書が、1月27日時点でSNS上に流布する米軍の悩ましい現状ですが、熱血司令官の熱血ぶりについていけない部下の中に、「リークして司令官を苦しめてやろう」との意図を持った者がいたと解釈するのが自然でしょう・・・。難しい時代になったものです・・・

当該文書は以下の1月30日付米空軍協会web記事に掲載の写真でご確認ください
https://www.airandspaceforces.com/read-full-memo-from-amc-gen-mike-minihan/

Mike Minihan大将関連の記事
「KC-46A空中給油機が36時間連続飛行」→https://holylandtokyo.com/2022/12/12/3974/
「KC-46を操縦者1人で試行運用」→https://holylandtokyo.com/2022/11/02/3881/
「不具合抱えたままKC-46運用開始宣言」→https://holylandtokyo.com/2022/09/21/3688/

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米イスラエルが8500名規模の巨大統合演習 [安全保障全般]

空母にHIMARSに航空機140機などなど
イランがウクライナ混乱に乗じて不穏な動きの中
安全保障担当米大統領補佐官も訪イスラエルして

Juniper Oak.jpg米イスラエル軍が8500名超(米6400名、イスラエル1200名)規模の大規模統合全ドメイン演習「Juniper Oak」を、1月23日から27日の間にイスラエル及び東地中海で実施しました。演習開始直前の18-20日には、サリバン安全保障担当米大統領補佐官がイスラエルを訪問して地域情勢等について協議を行ったと報じられるなど、緊張感が漂う中での演習開始です

両国から航空機約140機、空母を含む艦艇6隻が参加し、宇宙軍や特殊作戦軍も参加する広範な内容を含む演習で、ウクライナ紛争で欧米が足を取られる中、イランが核兵器開発をさらに進め、中東域全体でイランの支援を受けたイスラム過激派が無人機攻撃等を活発化させる情勢を背景に、陸海空宇宙サイバードメインに渡る巨大演習です

Juniper Oak4.jpg2020年9月の歴史的なアブラハム合意でイスラエルとUAE&バーレーンが国交を樹立し、その流れを受け2021年9月にはイスラエルが米欧州軍管轄から米中央軍管轄に移行し、イランに警戒感を持つアラブ諸国とイスラエルの関係が、単なる雪解けから連携フェーズに進展しつつある中での大規模演習に注目が集まっています

演習参加航空機は末尾に列挙しますが、両国軍からの発表によれば、演習科目は正にオールドメインで、米軍が推進するJADC2を中核に据えた指揮統制協力を意識し、航空侵攻から防空、海上航空阻止、SEAD、戦時救難、電子戦など広範な内容となっており、F-35やFA-18はもちろんのこと、B-52やAH-64アパッチヘリからRC-135特殊作戦機、EA-18G電子戦機、AC-130特殊攻撃機など航空機20機種以上や、低高度衛星、艦艇やウクライナで話題のHIMARSまで参加する戦力構成になっています

Juniper Oak2.jpg同演習についてMichael Kurilla米中央軍司令官は、「(米国とイスラエル以外で、)世界中のどの国も、この地域にこの規模の戦力を、このレベルの機敏さをもって集結することはできない」、「全ドメイン、陸海空宇宙サイバーで訓練を実施し、如何なる緊急事態にも対処しうる能力を強化する」と述べ、米軍事専門家も「(米中央軍司令官の発言はその通りで、)地域の潜在的敵対国や我が同盟国等に、その能力を改めて示した意義は極めて大きい」とコメントしています

米軍からの参加航空機
• Four B-52s
• Four F-35s、Four F-15Es、Four F-16s、45 F/A 18s、
• One AC-130、Two MQ-9s
• Six EA-18Gs、One RC-135
• Two HH-68s、15 MH-60s、Four AH-64s
• Five E-2Ds
• One HC-130
• Two KC-46s

イスラエル軍からの参加航空機
• Six F-35s、18 F-16s、Eight F-15s
• Two AH-64s
• Two unmanned aerial vehicles
• One UH-60、One CH-53
• One Gulfstream G550
• Two 707s
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Juniper Oak5.jpgウクライナ問題と台湾問題が世界中でホットな話題ですが、中東でもイランの核開発が以前の5か国合意の制限レベルを超えて進展しつつあるほか、イランから又はイランの支援を受けた過激派からと推測される無人機攻撃などが最近継続して発生しており、予断を許さない状況です

ちなみに「Juniper Oak」演習では、弾薬18万ポンドが使用されたそうです

アブラハム合意以降の動向関連記事
「B-52をサウジ戦闘機が護衛」→https://holylandtokyo.com/2022/11/17/3957/
「B-52が中東9か国と編隊飛行」→https://holylandtokyo.com/2022/04/06/3105/
「UAEへのF-35輸出協議中」→https://holylandtokyo.com/2021/11/24/2443/
「UAE司令官視察:イで史上最大の多国間空軍演習」→https://holylandtokyo.com/2021/11/12/2408/
「米中央軍で対イランの動き2つ」→https://holylandtokyo.com/2021/09/15/2224/
「イが欧州軍から中央軍管轄に」→https://holylandtokyo.com/2021/01/19/301/

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世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦に直面するウクライナ [安全保障全般]

最新戦車の次はF-16など戦闘機提供ではない
戦闘機での航空優勢狙いは非効率でロシアの思うつぼ
ロシアの航空優勢拒否戦略の継続が追求すべき道
防空弾薬の枯渇がロシアの狙いであり、それを防げ!

Ukraine Air defense3.jpg1月25日付Defense-Newsが、米空軍大佐とシンクタンク研究員の寄稿を掲載し、米国とドイツがウクライナに最新戦車提供に合意したことを受け、世間では次はウクライナに戦闘機を提供すべきとの意見があるがそれは完全な誤りであり、ロシアが戦術転換でミサイルや無人機攻撃によるウクライナ民間インフラ攻撃を激化させる中でも、ウクライナは犠牲を耐え忍んでも防空兵器枯渇を防止する選択的使用に舵を切り、防空兵器によりロシアの航空優勢確保を拒否し続けるべきだと主張しています

Bremer.jpg2名の寄稿者は、過去1年間の露によるウクライナ侵略の教訓は、現代の航空戦には、高価な戦闘機などよりも機動力を備えた地上配備の防空装備が適しているとの一つの現実であり、ウクライナにF-16などの戦闘機を提供して航空優勢を確保しようとする手法は、ロシア軍の航空アセット数量からしても完全な誤りだと指摘しています

しかし同時に筆者は、米軍をはじめ西側諸国が長年にわたり防空ミサイル等の防空システム投資を軽視してきた付けは大きく、ウクライナに提供できる防空ミサイル等の弾薬類は底をつきかけており、厳しい状況に直面しつつあると指摘し、例えば米軍はパトリオット防空ミサイル1個大隊程度しか支援できない状況だとしています

Grieco stimson.jpg弾薬不足に苦しむロシア側も、似た状況にある米軍や西側の状況に気付き始めて作戦を転換し、無人機や長射程ミサイルでウクライナの発電所など社内インフラを攻撃し、厳しい冬を迎えたウクライナ国民の交戦意志を削ぐ作戦を重視すると同時に、ウクライナ軍が貴重な防空兵器を消費せざるを得ない環境を作為して、弾薬枯渇状態による防空無効化で航空優勢を確保しようとしていると筆者は分析しています

従来の航空優勢確保は、敵の防空兵器を味方の戦闘爆撃機などで物理的に破壊するSEAD(suppressing enemy air defense)を通じてでしたが、ウクライナでロシア軍は史上初めて、無人機や長射程ミサイルを敵国民や社会インフラに向けて発射し、「敵の防空兵器を強制的に消耗させることによる航空優勢の獲得」を狙っているとも表現しています

Ukraine Air defense.jpg寄稿者の主張は厳しい選択をウクライナに迫っています。弾薬在庫が限られた西側各国からの防空兵器支援は今後あまり期待できない現状を踏まえ、ロシア軍によるウクライナ国民や重要社会インフラに対する攻撃にも、防雨兵器の使用は選択的に抑制し、少しでも長く防空兵器を温存してロシアの完全な航空優勢確保を拒否する「air-denial strategy」を継続すべきとの提案です

そして、極めて非効率な戦闘機による無人機や長射程ミサイルの要撃などに乗り出し、数量で勝るロシア航空アセットを戦場に駆り出したり、最前線のウクライナ地上部隊の防空能力を犠牲にしてはならないと寄稿者は訴えています
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Ukraine Air defense2.jpg寄稿者は、輸送機パイロットのMaximilian Bremer米空軍大佐(空軍輸送コマンド特殊計画部長)と、スティムソンセンター上級研究員でジョージタウン大学教員のKelly Grieco客員教授の2名です。ウクライナでの戦況や戦闘機提供の狙いを十分把握していませんが、この寄稿の提言はオプションとして議論に値するものだと考えご紹介しました

なお1年前にも、ウクライナに関するご両名の寄稿「ウクライナで戦闘機による制空の時代は終わる」をご紹介しております

Ukraine Air defense4.jpg先日、ウクライナ空軍の戦闘機パイロットがロシアの無人機や巡航ミサイル要撃任務に従事し、厳しい緊張感に苦悩しているとの外国メディアの報道を見ましたが、実態としては、ウ空軍の戦闘機パイロットは戦いにほとんど貢献できず、高価なアセットとこれまでの訓練経費を生かせないまま、軍内で「肩身の狭い」思いをしているということでしょう・・・

これは、「ウクライナ」と言う環境での戦いだからでしょうか? まんぐーすは必ずしもそうだとは思いません。現代の、そして将来の航空戦の厳然とした現実だと思います。

同コンビによる別寄稿
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

CSISやCSBAの台湾への提言:非対称戦略へ
「CSISが台湾軍に非対称戦術を迫る」→https://holylandtokyo.com/2023/01/16/4160/
「CSBAは2014年に同要求」→https://holylandtokyo.com/2020/11/08/381/

嘉手納基地からのF-15撤退関連
「第1陣の8機米へ帰還」→https://holylandtokyo.com/2022/12/06/4021/
「米空軍幹部発言から大きな流れを学ぶ」→https://holylandtokyo.com/2022/11/09/3904/
「衝撃、11月1日から段階的撤退」→https://holylandtokyo.com/2022/10/31/3817/

ウクライナでの戦い
「ウクライナでイラン製無人機が猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「衛星通信へのサイバー攻撃で始まっていた」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「アジア太平洋への教訓は兵站」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「SpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/

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今は不要も韓国への核再配備計画を事前決定しておけ [安全保障全般]

1991年に配備が撤去されて以来の再配備問題
ユン大統領が自開発か米に展開要請を迫られる可能性に言及
CSIS米有識者委員会が提言まとめる

CSIS Korea4.jpg1月19日、CSISが主催した14名の有識者による「朝鮮半島における抑止力強化」に関する検討委員会が報告書を発表し、ユン韓国大統領の発言を引き金に大きなトピックになりつつある「韓国への核兵器再配備」について、現時点では必要なく再配備はむしろ逆効果になりかねないが、

事態の推移によっては考慮せざるを得なくなることから、公には細部計画や手順等について曖昧なままにしつつも、配備や使用要件の他、運搬手段や保管場所や保管場所のセキュリティーなど兵站支援事項などは事前決定し、事前決定したことだけは明確にしておくべきで、そのための机上検討演習を行うべきと提言しました。

CSIS Korea6.jpgこの14名の検討委員には、Vincent K. Brooks元在韓米軍司令官、アーミテージ元国務副長官、Randall G. Schriverアジア太平洋担当国防次官補、Katrin F. Katz元NSC日韓担当補佐官などが含まれていますが、折しも1月11日に韓国大統領が「韓国はいずれ、米国に核兵器の再配備を要請するか、自国開発することを迫られるだろう」と発言し、北朝鮮の挑発行為がエスカレートする中、韓国世論が核兵器自国開発支持に大きく傾きつつある状況下でレポートが公開されました

同委員会は前提として、現時点では核兵器の再配備が必要な状況ではなく、核拡散抑止に重きを置くべきとBrooks元司令官が代表して説明しつつも、報告書では情勢に応じて必要なオプションとして再配備を残したとレポートについて語っています

CSIS Korea.jpgそして報告書は、「米韓両国は可能性がある核兵器再配備を具体的に検討する机上検討演習実施を考慮すべきで、再配備の兵器の種類や配備時程やロジ的なことを事前決定していると公に明確にしておく一方で、細部計画については曖昧さを維持しておく手法を取るべき」と提言しているようです

また再配備検討演習では、「具体的な運用法や保管セキュリティ―を考慮した具体的な保管場所や、運搬手段をF-16やその後継の可能性があるF-35にするのか等も含めて煮詰める必要がある」とまとめているようです。

CSIS Korea2.jpg更に検討委員会のKatz元NSC担当補佐官は、「具体的な兵站支援面などを煮詰めることなく、この問題を抽象的に議論するのは無責任だ」、「これらの議論を恐れる必要はなく、今が議論に適したタイミングだ」と主張しています

具体的な運搬手段としては、「継続的に半島周辺に展開する核搭載巡航ミサイル攻撃原潜や戦略爆撃機、また韓国南部に拠点を持つ核と通常兵器の両方が使用可能な航空機の配備準備も意味ある選択肢だ」と提案しています

CSIS Korea3.jpgまた同有識者委員会は、宇宙からの北朝鮮の動向把握が非常に重要なことから、最近日本と米国が宇宙分野における協力拡大に合意したように、韓国がミサイル警戒用の米国早期警戒赤外線監視衛星の情報に直接アクセスできるような体制整備のため、米韓両国も協力を強化すべきと提言しているようです
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CSISの同検討委員会関連webページ
https://www.csis.org/news/csis-commission-korean-peninsula-releases-landmark-report-enhancing-extended-deterrence-south

CSIS Korea7.jpg北朝鮮を対象にした「再配備」検討になっていますが、米韓両国に於かれましては、中国からの「嫌がらせ」にめげることなく、「細部手順の事前決定」に向けた諸検討と、「細部合意に関する曖昧さの維持」に協力して取り組んでいただきたいと思います

核アレルギーの強すぎる日本は、米韓の「再配備」検討の様々な紆余曲折を横目で見ながら、核へのアレルギーに邪魔されない純軍事的で、かつ視野の広い国家戦略を見据えた落ち着いた議論を踏まえつつ、政治的な決断に備える姿勢が望まれるのでしょう。

核兵器に関連する記事
「バイデンsole purpose断念」→https://holylandtokyo.com/2022/11/04/3888/
「ドイツの核シェアリングと戦闘機」→https://holylandtokyo.com/2022/01/19/2614/
「核兵器禁止条約でごたごた言うな」→https://holylandtokyo.com/2021/01/26/307/
「中国は核兵器管理条約を拒否」→https://holylandtokyo.com/2020/07/13/570/

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ロシアの大改良新型TU-160M2爆撃機開発前進!? [安全保障全般]

初飛行1981年TU-160の8割を更新の新造機M2型開発
2024-25年に運用開始し、27年までに10機体制
現有16機のTU-160も近代化改修してM2型へ
ほとんど実戦活躍が無かった同機の再生はあるのか?

TU-160M2.jpg1月10日付Defense-Newsは、プーチン大統領の強い押しで2015年から開発が始まった、TU-160の骨格をほぼそのまま活用しつつ、8割のシステムを新しくする新造機TU-160M2が、ツポレフ社傘下のMAC工場での2回目の試験飛行を終え、12月末にロシア国防省に引き渡され、今後更なる本格的な試験を経て2024-25年の運用開始と、2027年までの10機製造(当面の契約規模)に向けて前進していると報じました

ウクライナ侵略の当初計画が崩壊し、軍事面でも経済面でも苦境にあるロシアにおいて、今後の試験や部隊配備が順調に進むとは考えにくく、ロシア軍需産業とロシア国防計画が順調なことを示す「カラ元気」の可能性大ですが、隣国ロシアが極超音速兵器や核兵器を搭載する戦略爆撃機の動向ですので、ご紹介しておきます

TU-160M2 2.jpg初代TU-160はNATOで「ブラックジャック」と呼ばれ、米空軍B-1爆撃機を模倣したと言われる低空侵攻が可能な可変後退翼を持った超音速爆撃機ですが、B-1Bより一回り大きい機体と2倍弱のエンジン出力により、最大速度はB-1Bのマッハ1.25に対してマッハ2.05、航続距離はB-1Bを16%上回る14,000 km、最大搭載量はB-1Bの34tを17%上回る40tを誇った機体でした

試作機が1981年に初飛行し、1987年5月には2個飛行隊で運用開始しましたが、製造途中でソ連が崩壊し、試作機8機を含む35機しか生産されませんでした。特にウクライナは19機を保有していましたが、極めて複雑な構造から運用困難で放置され、後にロシアが8機買い戻した以外は使用されないまま廃棄される運命をたどっています

TU-160M2 3.jpgその後音沙汰がな途絶えていましたが、2005年頃からプーチン大統領が突然搭乗した映像が公開されたり、2007年に15年間中断されていた海外への遠距離偵察飛行に登場するなど、プレゼンスを再び示し始めました

それでも1987年の運用開始から実戦投入はありませんでしたが、2015年11月にシリアのアサド政権支援のため、他の戦略爆撃機とともに対ISの巡航ミサイル攻撃を行い実戦デビューを果たし、ロシア軍のウクライナ侵攻においても巡航ミサイル攻撃を行う様子が目撃されていたところです

TU-160M2 4.jpgTU-160の骨格を基にしたTU-160M2の開発は、2015年頃より表面化し、既存16機の近代化改修と合わせ50機程度の新造機Tu-160M2を開発製造する構想をロシア国防相が同年発表し、2018年1月に10機の新造TU-160M2製造契約をツポレフ社傘下のUACと締結していました。

開発UACで2022年1月と12月に試験飛行を行い、報道された露国防省への引き渡しとなっていますが、今後は企業が確認した基本性能を露空軍部隊で確認し、更に作戦運用を想定した北米や諸外国周辺空域への長距離飛行や低空での作戦行動試験、更には極超音速兵器などの兵器発射試験も行われる予定だそうです

M2型機は現有16機のTU-160の8割の搭載システムや装備を更新するほか、エンジンも新しいNK-32-02にして飛行試験で引き続き確認していくとのことです
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TU-160M2 5.jpg2024-25年には運用開始し、2027年までに10機を新造し、既存機16機のアップグレード改修機も含め50機体制を目指すとのことですが、ロシア経済大混乱の中、今後忘れた頃に報道されると予想されるTU-160M2運用開始の知らせを待つことといたしましょう。

プーチンが好みそうな威圧感ある機体ですが、長射程ミサイルを搭載するとは言え、BWB(blended wing body aircraft)形状に近い機体とは言え、ステルス性がB-1Bよりはるかに劣る大きな機体であり、今後の運用法にも注目したいところです

TU-160やM2型機に関するウィキペディア情報
https://ja.wikipedia.org/wiki/Tu-160_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F) 

TU-160登場の記事
「ロシアTU-160爆撃機が南アフリカ展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-22
2018年にも南米ベネズエラへ飛行

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CSISが台湾軍に非対称戦術を迫る [安全保障全般]

戦闘機VS戦闘機や艦艇VS艦艇の戦いはあきらめよ!
台湾海空軍は対称戦を捨てろ。小さな米軍を目指すな
非対称な戦い「ヤマアラシ戦略:porcupine strategy」を
高価で豪華だが脆弱な装備追及を止めろ!

taiwan defense4.jpg先日ご紹介したCSISによる台湾有事Wargameレポート(1月9日発表:中国による台湾侵攻)は、台湾が早期に降伏しないとの前提で、日米が協力して精力的に支援すれば、中国の侵略企図は破砕できるが、台湾経済は壊滅的な被害を受け、米軍は空母2隻と数十隻の艦艇や数百機の航空機を数千人の兵と共に喪失し、長期にわたり世界の指導的役割を果たせなくなるとの厳しい現実を突きつけ話題となりました。

本日は同レポートの中から、CSISが台湾軍に求めた軍装備体系の大改革に関する部分(123-125ページ)を取り上げ、陸軍を最優先せよ、弾薬や装備品は紛争開始前に台湾に備蓄しておけ(ウクライナ方式の侵略後提供は不可能)、そして台湾海軍や空軍は高価ながら有事に役に立ちそうもない艦艇や戦闘機調達を止め、移動式の対艦ミサイルや対戦車ミサイルや防空ミサイルや地雷などを最優先し、非対称な戦いで長期持久を図れるような装備体制変革を直ちに推進せよと訴えた部分をご紹介します

taiwan defense.jpgCSISは、以前から多数の研究が台湾に非対称戦体制への変革を迫っているにもかかわらず、台湾政府や台湾軍により変革がとん挫している現状を踏まえ、米国に対し「アメとムチ」を駆使して台湾軍改革を進めるよう強く迫っていますが、日本の自衛隊にも程度の差はあれ台湾軍と同方向の変革が必要なことは、2010年5月のCSBA「エアシーバトル」レポート当時から明確ですので、「喉元に刃を突きつける」気持ちでご紹介いたします

2010年5月のCSBA報告書の解説
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「2CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20
「3CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20-1
「4CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21
「5CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21-1
「6CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
「最後CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-30

元祖ASB:CSBAの報告書
「ASBの背景:対中国シナリオ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-30

CSISの台湾軍への提言部分(123-125ページ)より

ウクライナ方式は通用しない
taiwan defense2.jpg●ウクライナでは、ロシアの侵略開始後に、西側からウクライナへの兵器や装備品提供が始まり、現在も継続して可能であるが、台湾ではこのウクライナ方式は通じない。ロシア軍と異なり、中国軍は台湾への補給物資輸送を阻止する能力があることから、侵略開始前に必要な装備や弾薬を台湾が保有している必要がある
●米国は、遅れている台湾へのFMS装備提供を加速前倒しし、台湾も自身で製造可能な多様な弾薬調達を急ぎ、中国による侵略開始前に必要量を確保しておく必要がある

台湾陸軍に対して
taiwan defense3.jpg●台湾陸軍が必要な質や能力を保有しているか不明確(怪しい)であるが、戦力差からして中国軍を台湾上陸前に撃破することは不可能であり、中国軍上陸部隊に台湾沿岸部で粘り強く抵抗することが不可欠であることから、これが可能なように、急いで台湾陸軍の効率性や残存性を高める必要がある。台湾軍は陸軍強化を最優先すべきである
●台湾は山脈や河川により地形が複雑であり、これを最大限に活用して戦いを長引かせ、中国軍に消耗戦を挑むべきである。台湾主要都市の防衛は大きな被害を生むが、都市を失うことは中国側の作戦を容易にしてしまう

台湾海軍や空軍に対して
taiwan defense5.jpg●歴史的に台湾軍は、米軍の小型版を目指すように多様な装備を導入し、大型水上艦艇や最新戦闘機、更には潜水艦や地上装備を現在も追求し、戦闘機470機、水上艦艇26隻、潜水艦4隻等を保有している。
●このような装備は、まだ中国軍が弱体であった当時には、台湾の能力を誇示して中国侵略を抑止するには意味があったかもしれないが、中国軍が急速にミサイル部隊や海空軍戦力を増強した今となっては、現在の対称戦を想定した戦力構成(symmetrical capabilities)は不適切である

●有事になれば、台湾海軍水上艦艇は中国艦艇部隊にほとんどダメージを与えることなく壊滅するであろうし、残存性の高い潜水艦もわずか4隻では継続的な海洋戦力とはならない
●台湾空軍も、中国軍のミサイル部隊を前に台湾海軍と同様に極めて脆弱であり、強固な地下シェルターに格納されて中国ミサイル攻撃を生き残る可能性のある僅かな戦力では、ほとんど戦い全般に貢献できないだろう

taiwan defense7.jpg●我々のWargame結果が有効性を示した非対称な戦いを追求する「ヤマアラシ戦略:porcupine strategy」では、台湾軍が「艦艇VS艦艇」や「戦闘機VS戦闘機」の戦いでは中国軍に対抗できない現実を踏まえ、台湾軍が高価で脆弱な通常兵器よりも、機動性や隠密性を備えたJavelin対戦車ミサイルやStinger携帯防空ミサイルなどへの重点投資を求めている
●このような結論は他の多くの台湾軍事戦略への研究提言と方向を同じくするもので、最新の軍事バランスに当てはめても一貫している。この非対称戦略では、台湾海軍に大型艦艇よりも安価な、沿岸防衛用の移動式対艦巡航ミサイル、機雷、小型対艦ミサイル搭載ボート、機雷敷設能力強化に投資するよう強く求めている。空軍には移動式防空ミサイルの充実など。

●特に、例えば台湾に提供予定で未到着の地上発射ハプーン対艦ミサイル400発などは、今回のWargameで死活的に重要であることが示されており、200発追加することで政治的リスクや兵站補給の課題などを局限しながら極めて大きな追加効果を上げることが示されている。MLR or MDTFシステム等と同様で高い効果を上げる。

taiwan defense8.jpg●ただし、このような非対称戦型への変革、つまり「ヤマアラシ戦略:porcupine strategy」追求は、当時のLee Hsi-Min台湾軍参謀総長により2017年にまとめられているが、その後の台湾軍幹部はこの構想導入に消極的なままである
●今日の脅威環境を踏まえれば、「アメとムチ」の組み合わせで台湾軍改革を推進させることに、強い決意をもって米国は望むことが不可欠である
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CSISレポートの台湾軍への提言部分(123-125ページ)は分かり易い英語で書かれており、116ページからの他の提言部分と合わせ、一度目を通してはいかがでしょうか。

taiwan defense6.jpg2014年12月にCSBAが発表した台湾軍戦略への提言レポートと共通する部分が多く、「古くて新しい」指摘です。繰り返しになりますが、2010年5月にCSBAが提案した「エアシーバトル構想」で示された日本への提言も、未だに「古いが新しい」提言であると認識すべきです。特に依然として戦闘機命派が牛耳る航空自衛隊にあっては・・・

CSISの同レポート紹介webページ
https://www.csis.org/analysis/first-battle-next-war-wargaming-chinese-invasion-taiwan
CSISレポートの現物(165ページ!)
https://csis-website-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/publication/230109_Cancian_FirstBattle_NextWar.pdf?WdEUwJYWIySMPIr3ivhFolxC_gZQuSOQ

インパクト強烈なCSISレポート・台湾有事で日本も・・・
空母2隻・数10隻の艦艇と数百機の航空機喪失、台湾経済大打撃・米軍の影響力当面喪失危機
「台湾有事のWargame結果を異例公開」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/

旧態然とした台湾軍の問題は根深く、対中国に向けた政府主導の軍改革も、国防省や軍幹部や軍OBの抵抗で進まず、時間的余裕もない現状。日本にも通じる米国専門家指摘の問題点を確認
https://holylandtokyo.com/2023/01/04/4103/

CSBA提言の台湾新軍事戦略に学ぶ
まとめ→https://holylandtokyo.com/2020/11/08/381/
その1:総論→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27
その2:各論:海軍と空軍へ→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27-1
その3:各論:陸軍と新分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27

2010年5月のCSBA報告書の解説
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「2CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20
「3CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20-1
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「5CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21-1
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沖縄海兵隊の主力旅団が縮小改編MLRへ [安全保障全般]

2+2で合意:3200名規模から2000名規模へ
海兵旅団から軽快な「海兵沿岸旅団MLR」へ
宇宙分野での連携強化も合意し岸田首相訪米準備

MLR4.jpg1月11日、ワシントンDCで日米2+2が開催され、13日の岸田首相とバイデン大統領との会談を前に、宇宙分野での協力強化に加え、在沖縄海兵隊で3200名規模の「第12海兵旅団」を縮小しつつも対中国作戦により適合した「第12海兵沿岸旅団:MLR:Marine littoral regiment」に2025年までに改編することに等に合意したと発表されました

「海兵沿岸旅団:MLR:Marine littoral regiment」の創設は、対中国など本格紛争に対処可能な将来米海兵隊への変革方針を示した2020年3月米海兵隊発表の「Force Design 2030構想」で明らにされ、アジア太平洋地域に3個設けることとなっています。

MLR3.jpgMLRを生み出した同構想は、戦車部隊の廃止、歩兵部隊や回転翼部隊の削減、総兵数の削減、ロケット部隊や対艦部隊や無人システムの増加や電子戦の強化などを柱に、小規模だが軽快な部隊に再編し、海軍と連携し制海に力点を置く将来海兵隊の姿を描いたもので、他軍種にも大きなインパクトを与える大きな方向転換を明確にしたものでした

同構想発表時には、日本に最初のMLR設置とDavid Berger海兵隊司令官が述べていましたが、地元調整のむつかしさ等から(推測)、まずハワイに第3MLRが最初に創設され、2023年9月の態勢確立に向け訓練中です

MLR5.jpgMLRは、従来の海兵旅団が歩兵や戦車や火砲中心だったのに対し、中国などのミサイル射程内の厳しい環境下「contested maritime spaces」で自己防御を図りつつ、機敏に移動しつつ敵艦艇や敵上陸部隊を攻撃するより軽快な部隊編成を目指し、対艦ミサイル部隊や防空部隊やISR部隊や兵站支援部隊を中心に構成される模様で、ハワイの第3MLRが試行錯誤を行っています

またMLRに関する報道では、「戦闘が始まれば中国が海空で優勢になる可能性が高いが。戦力を追加で投入できるようになるまでの間、最前線の部隊がいかに相手の侵攻を食い止めるかがカギを握ることになり、MLRにはその中心的な役割が期待される」とか、「小規模なチームに分散して各離島へ展開し、敵からの攻撃をかわしながら相手の艦艇や航空機の進出を食い止め、制海権の確保を目指す」と紹介されています

MLR2.jpgただ各種報道はあまり触れていませんが、現在の3000名以上規模から2000名弱規模に縮小されることは事実で、「軽快さや分散行動や機動展開の容易さ」を追求するとは言え、中国のミサイル射程内の危険な地域に戦力を置いておけないとの軍事的合理性に基づく判断とも言えます。在沖縄海兵隊の総兵力は変わらないとの、思慮深い配慮に基づくよくわからない説明は日米両政府からなされていますが・・・

ハワイで準備中の先輩部隊第3MLRの状況
(2022年8月の記事より)
●同年2月に対空監視から味方部隊の航空管制までも担当する「対空大隊」を編成し、6月には攻撃能力を担う「第3沿岸戦闘チーム」や文字通りの「戦闘兵站大隊」が再編成され、RIMPACでも訓練に参加
MLR.jpg●2023年9月の態勢確立に向け、軽着上陸用艦艇の「stern landing vessel」や、長距離運航が可能な「unmanned surface vessel」導入がカギとなるが、無人艦艇導入チームが同年夏から検討を開始。
●同年秋には、打撃力強化の柱「Medium Missile部隊」が編成予定で、「stand-in force」の準備が進んでいる
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宇宙分野での協力強化については、米国の日本に対する防衛義務を定めた「日米安全保障条約第5条」が宇宙空間も適用対象になりうることを2+2で確認しています。これは露のウクライナ侵略が宇宙ドメインで始まっていた最近の事例を踏まえると重要な一歩だと思います

「反撃能力」「敵基地攻撃」に関しても協力強化へ・・・。どこを攻撃すればよいのか、日本のISR能力では特定できないでしょうから・・・

CSISの強烈インパクトのレポート発表が1月9日で、日米2+2が11日で、日米首脳会談が13日との美しい流れになっています

米海兵隊の主力海兵旅団の改革
「ハワイで創設のMLR部隊」→https://holylandtokyo.com/2022/08/19/3546/
「米海兵隊のstand-in force構想」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「MLRを日本にも」→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/726/
「Force Design 2030構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25

CSISの強烈インパクトのレポート発表
「台湾有事のWargame結果を異例公開」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/

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CSISが台湾有事のWargame結果を異例公開 [安全保障全般]

24回様々な想定や参加者で実施した結果
莫大な被害想定を国民にも知らせ心の準備と抑止を
数千名の損失と莫大な装備被害で米軍は当面弱体化
無論早期に日本も巻き込まれ損害

CSIS Taiwan 2023.jpg1月9日、CSISが台湾有事(2026年に中国が台湾に着上陸侵攻)を想定した24回ものWargame結果を集約した168ページものレポート(The First Battle of the Next War:Wargaming a Chinese Invasion of Taiwan)として公開し、台湾が早期に降伏せず、日米が緊密に連携して対応すれば、中国の企図を早期に破砕することができるが、数千名の損失の他、数十の艦艇や数百の航空機を喪失し、米国の世界的立場は多年にわたり打撃を受けるとの分析結果を明らかにしました

通常このような影響の大きいシミュレーション結果は、秘匿度の高い情報を利用して実施されることから概要のみ公開や非公開となることが大半ですが、CSISはそのような手法では蓋然性が高まる台湾有事に関する国民的議論が不十分なまま事態を迎え、結果として生じる大きな損害を前に世論が思わぬ方向に大転換する恐れもあるとして、結果の公開を前提としてWargameを検討し実行したとのことです

CSIS Taiwan 2023-5.jpg24回のWargameは「Smith Richardson Foundation」が資金を提供し、米軍の退役将軍・海軍士官、元国防総省当局者らが参加して、想定や参加者を入れ替えて行われ、CSIS関係者は、過去使用されたデータや研究分析結果、理論的に導かれた兵器性能を基礎など、秘密情報を利用しない公開情報による公開フォーマットで実施されたことが最も重要だ・・と強調しています

各種報道から「つまみ食い」した情報で以下に同レポート概要の概要をご紹介しますが、「米軍の潜水艦や爆撃機、戦闘機は日本の自衛隊に頻繁に補強され」とか「自衛隊は平均122機の航空機、26隻の艦船を損失。米軍は空母2隻を喪失」とか、生々しい結果となっており、CSISが結果公開を前提として研究を進めた問題意識に強く共感した次第です

同レポート紹介YouTube映像・約140秒
 

10日付毎日新聞報道等によるとCSISレポートは・・・
CSIS Taiwan 2023-2.jpg●机上演習は22年夏から行われ、「米国が台湾防衛に加わる」「核兵器は使用されない」との前提で、数週間の軍事衝突をシミュレーション。米軍の参戦時期、台湾軍の即応体制、米軍の空対地ミサイルの対艦攻撃力の有無などの前提条件を変え、計24のシナリオを試した。
●中国が日本の基地や米軍の水上艦を攻撃したとしても結論を変えることはできないが、「台湾が反撃に出て降伏しない」というのが大前提。米軍の参戦前に台湾が降伏すれば、全てが終わるとの前提

●最も蓋然性が高い条件の3つのシナリオの内の2つでは、中国側が台湾の主要都市を制圧できないまま、10日以内に補給困難に陥り、「敗北」と判定された。残る1回では南部・台南の港を一時制圧したが、米軍の空爆で港は使用不能となり、「こう着状態だが中国に不利」と判定された。
●中国による大規模攻撃下でも、台湾地上部隊は敵の上陸拠点に展開して反撃、米軍の潜水艦や爆撃機、戦闘機は日本の自衛隊に頻繁に補強され、中国軍の水陸両用艦隊を迅速に無力化し、侵攻中国軍は補給の増強や上陸に苦戦

CSIS Taiwan 2023-4.jpg●ただし、この防衛には多大な代償が伴うことを指摘し、米国と日本は「何十もの艦船や何百もの航空機、何千もの兵士を失う」とともに、このレベルの損失を被れば米国の世界的立場は多年にわたり打撃を受けると分析
●自衛隊は在日米軍や自衛隊の基地が攻撃された場合に参戦し、中国の攻撃で平均122機の航空機、26隻の艦船を損失。米軍も毎回空母2隻を失うほか、168~372機の航空機、7~20隻の艦船を失った。台湾軍も平均約3500人の犠牲者を出した。

●台湾や米国にやや不利な条件で行われた17回のうち3回では「こう着状態だが中国に有利」と分析されたが、中国「勝利」と判定された例はなかった。
●だが、台湾が単独で防戦した場合や、日本が中立を保って紛争に参加する米軍部隊の在日米軍基地の使用を認めなかった場合には、中国が「勝利」した。

CSIS Taiwan 2023-3.jpg●上記を含む分析結果としてCSISレポートは、台湾が中国の侵攻に屈しない条件として「台湾陸軍の強化」「在日米軍基地の使用」「初期段階からの米軍の直接的関与」「米軍の長射程対艦巡航ミサイルAGM-158C(LRASM)等の増強」「戦力分散型の作戦運用」「戦力防護用シェルター整備」「爆撃機の増強」が「非常に重要だ」と指摘し、台湾への武器供与や日本との緊密な連携などを米国政府に提言した。
●CSISの担当研究者は、「中国は多くのシナリオで在日米軍や自衛隊の基地を攻撃した。日本は九州・沖縄の航空自衛隊基地の強靱化など備えを進めるべきだ」と指摘した。
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CSIS Taiwan 2023-6.jpgCSISと日本の研究機関が相談し、日本語訳を出してはどうでしょうか? そのくらいのインパクトがあると思いますし、レポートで導かれたシミュレーション結果が独り歩きしないように、又は左翼勢力に「切り取り曲解解釈報道」されないように備えておく点からも、日本で広く読まれるべき性質のものだと思います

空母2隻を喪失したら、1万名の米海軍兵士と装備品価値数兆円が失われるリスクに直結しているわけですから、それは恐ろしいまでのインパクトであることを肝に銘じるべきです

CSISの同レポート紹介webページ
https://www.csis.org/analysis/first-battle-next-war-wargaming-chinese-invasion-taiwan

CSISレポートの現物(165ページ!)
https://csis-website-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/publication/230109_Cancian_FirstBattle_NextWar.pdf?WdEUwJYWIySMPIr3ivhFolxC_gZQuSOQ

弾薬量の圧倒的不足
「CNAS:弾薬にもっと予算配分を」→https://holylandtokyo.com/2022/12/02/3990/ 
「賛否交錯:輸送機からミサイル投下」→https://holylandtokyo.com/2022/11/15/3936/
「弾薬不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
「ウ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/
「Stand-inとoffのバランス不可欠」→https://holylandtokyo.com/2020/07/01/562/

台湾関連の記事
「台湾軍の抱える根深い問題」→https://holylandtokyo.com/2023/01/04/4103/
「ウクライナ侵略は日本への警告だ!」→https://holylandtokyo.com/2022/03/28/2949/

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台湾が徴兵期間を4か月から再び1年間に [安全保障全般]

2018年に1年から4か月に短縮も情勢緊迫を受け
台湾国民の7割以上が徴兵延長を支持
ただ台湾軍が抱える旧態然とした軍課題は根深く

蔡英文 徴兵.jpg12月27日、台湾の蔡英文総統は国家安全会議を招集し、18歳以上の男子に義務づけている兵役の期間を現在の4か月間から1年間に再延長することを決定し、記者会見で決断に至った思いを「誰も戦争など望んでいない。台湾国民も台湾政府も、国際社会もそうだろう。しかし、平和は空から降ってくるものではない。台湾は専制主義拡大の最前線に存在しているのだ」と国民に語りました。

現在は4か月間の兵役を義務づけていますが、これを2024年からは1年間に延ばし、2005年1月1日以降に生まれた男子に適用するとしています。27日の発表に際して総統府報道官は、兵役期間の再延長は約2年前から検討していたと説明しており、台湾国内では2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻を機に、一層その機運が高まった模様です。

Taiwan Forces4.jpg台湾では、1950年代から80年代に2~3年間の徴兵制が敷かれていましたが、その後の国際情勢の変化や少子化などを背景に、90年代以降兵役期間は段階的に短縮され、2008年からは1年間になっていました。また、装備品の高度化等もあり、併せて徴兵制から志願兵制中心の態勢への移行も進められ、兵役1年間は2018年で最後となり、その後は現在の4か月間に短縮されていました。

台湾の世論調査でも1年間への再延長への支持は高く、台湾国民の73%が賛成で、中国寄りの政策を掲げる国民党支持者からも広く支持を受けているとのことです。ただ、さすがに若者の支持を得るのは容易でなく、20-24歳の賛成者は35%で、反対が37%との調査結果が出ていたようです

Taiwan Forces3.jpg現在、台湾軍約18万8000名の9割は正規兵で、徴兵兵士の占める割合は1割程度ですが、台湾が徴兵制から志願兵制度への移行で生じた欠員で、陸海空軍全般で兵員充足率は約8割で、若手が必要な前線部隊では6割程度にまで落ちているようすが、徴兵1年間に戻して充足率がどの程度回復するのかは不明です

ただ、具体的に4か月から1年に戻すための現場の対応は単純ではなく、細部は国防相が今後細部を詰めるようで、蔡英文総統の後継選挙が行われた後の2024年から新制度導入には、「責任の先送り」との声も聞かれるようです

蔡英文 徴兵3.jpg徴兵期間の延長は台湾の決意を示す兆候ですが、台湾軍の抱える体制全体の問題は根深く、その一端を2021年2月に米中経済安保評議会で証言を求められた米国専門家(Michael Hunzeker, assistant professor at George Mason University’s School of Policy and Government)の指摘からレビューしたいと思います

2021年3月の記事
「台湾軍改革を阻む組織的抵抗勢力」からご紹介

蔡英文 徴兵4.jpg●台湾軍は、人的、訓練面、装備面、動機づけの面で中国軍と対峙するに適した態勢になっていない。また台湾政府が主導する国防改革への国防省や軍上級幹部の抵抗で改善が進まず、時間的余裕もない
●(徴兵制から志願制への移行で生じた、充足率の低下については前述のとおり。また徴兵兵士への訓練期間が4か月では短すぎる)

●装備面では、中国軍の台湾周辺での軍事活動活発化に伴い、台湾海空軍の艦艇や航空機による緊急対処行動が増加する中、装備品の更新が進まないことで、装備品の維持が困難に直面しており、稼働率が低下している
●軍事ドクトリン面では、依然として中国と対称な戦い(symmetric response)を追求し、実際想定される有事に、限定的な機能しか発揮できない高価なアセットを中心とした装備体系を未だに追求している

Taiwan Forces2.jpg●これら台湾軍の課題に対し、蔡英文政権は「ODC:Overall Defense Concept」を掲げ、「多層的で非対称:multilayered asymmetric force」な軍構築を目指そうとしており、その方向性は台湾の脅威環境を考えればより良い方向だ

●ただし、ODCは軍や軍人OBや国防省高官からの反対に直面し、反対の理由は極めて非論理的な「俗人的な反対、官僚組織的な抵抗、原理主義的ともいえる不同意」から来ている
●同時に政権自体も、徴兵制の復活等を含む政治的に微妙な内容にも触れているODCを、積極的に推進する意欲に欠けているように見える

Taiwan Forces.jpg●仮に、ODCが完全実施の方向に向かったとしても、対処時間は限られており、装備品の転換だけでも大変だが、更に時間の必要な作戦ドクトリン、訓練、兵站、文化などの変革を考えると、厳しい状態に置かれている
/////////////////////////////////////////////////

2021年3月の記事「台湾軍改革を阻む組織的抵抗勢力」からご紹介した内容は、そのまま日本にも向けられるべき「正論」であり、「厳然たる事実」です。ご紹介した「実際想定される有事に、限定的な機能しか発揮できない高価なアセットを中心とした装備体系を未だに追求」との指摘が、日本のF-35等にぴったり当てはまると思いますが・・・

蔡英文 徴兵5.jpg最近発表された「防衛3文書」が素晴らしい出来栄えでも、蔡英文政権の「ODC:Overall Defense Concept」と同様の運命をたどる可能性を否定できません。残念ですが・・・

2014年にCSBAが台湾に提言した「非対称な戦力構成の勧め」や、台湾と同様の問題を抱える自衛隊(特に航空自衛隊の戦闘機命派)に関する過去記事も併せてご覧ください

台湾軍の根深い問題と改革
「台湾が統合強化と権限分散の軍改革へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/26/1705/
「台湾軍の対中国体制に危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/08/155/

CSBA提言の台湾新軍事戦略に学ぶ
まとめ→https://holylandtokyo.com/2020/11/08/381/
その1:総論→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27
その2:各論:海軍と空軍へ→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27-1
その3:各論:陸軍と新分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27

10年前からチマチマ訴えてきたのですが・・・
「脅威の変化を語らせて下さい」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
「中国軍事脅威の本質を考えよう」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-12-30

くたばれ戦闘機命派
「織田邦男の戦闘機命論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-06
「F-3開発の動きと日本への提言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
「戦闘機の呪縛から脱せよ」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
「大局を見誤るな:J-20初公開に思う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-02

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トルコ企業が無人戦闘機の初飛行披露 [安全保障全般]

Bayraktar TB-2で「ウ」やアゼルバイジャンで名をはせた企業
自社投資開発で自由にどんどん改良予定
兵器搭載量3300ポンドで空対空や空対艦M搭載可

Bayraktar Kizilelma4.jpg12月14日、ウクライナやアゼルバイジャン軍で大活躍した無人機Bayraktar TB-2製造で世界的名声を得たトルコの無人機メーカーBaykar Tech社が、自社開発の自称無人機戦闘機「Bayraktar Kizilelma」の初飛行に成功し、その映像を公開しました。

同機は2021年夏に構想が発表され、2022年9月にプロトタイプ用エンジンの融合試験や地上滑走試験を行い、初飛行を2023年に実施すると同社が発表していましたが、自社投資独自開発である自由度を最大限に生かし、予定を大幅に早めて14日の約18分間の初飛行となった模様です

製造企業発表の初飛行動画(1分20秒:トルコ語)


初飛行したのはプロトタイプ機で、今後エンジンをアップグレードする構想など開発の方向性は様々に検討されており未確定な点が多いのですが、とりあえずBaykar Tech社やネット上で共有されている「Bayraktar Kizilelma」の概要について、ご紹介しておきます

19日付Defense-News記事等によれば
Bayraktar Kizilelma.jpg●プロトタイプ用のアフターバー無しのエンジンを1基搭載した機体は、巡航速度0.6マック、最大速度0.9マック、行動半径500nm、連続飛行時間5時間、上昇高度4万フィートの性能
●完全自動で離着陸が可能で、短距離離着陸性能に優れ、強襲揚陸艦甲板での運用も可能と同社はアピールしている(カタパルトなしでスキージャンプ離陸可能か不明)

●米軍が開発のXQ-58に見られるような、エンジンノズル部分にステルス配慮は無いが、ステルス性を追求しており、ステルス性と相反する機動性確保のためカナード翼を装備(中国のJ-20のようだと下の映像は解説)
●兵器搭載量は3300ポンドで、ステルス維持のため機体内部弾薬庫を保有し、翼下のパイロンも含めると、トルコ国産空対空ミサイルや対艦巡航ミサイルが搭載可能

Bayraktar Kizilelma2.jpg●AESAレーダーを搭載し、他のISR装備も搭載可能と言われており、また衛星通信で操縦すると同社は公表しているが、地上から主に管制するのか、飛行中の有人機から操縦するのか等の運用構想など細部は不明
●今後より強力なエンジンを搭載して超音速飛行可能な形態を目指し、将来的にはエンジン2基搭載型も検討されている模様

●今年夏にはBaykar Tech社長が、コスト面を度外視した開発は行っておらず、安価に大量導入が可能な機体開発を目指している・・・と語っている

軍事YouTubeサイトの同機紹介(8分15秒)

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Bayraktar Kizilelma3.jpg映像で紹介されている同機開発責任者がとても若く(40代か?)、初飛行を前倒しで行う積極性に開発の勢いを感じます。

米空軍が取り組む無人機ウイングマンCCAのような性能レベルなアセットだとは思いませんが、十分に脅威であり、柔軟に色々な用途に改良して発展していきそうな気がします。今後の展開に注目いたしましょう

Baykar Tech社無人機TB-2が大活躍
「ウクライナでも大活躍」→https://holylandtokyo.com/2022/03/05/2787/
「アゼルバイジャン軍の無人機大戦果」→https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/

米空軍の無人ウイングマンCCA開発
「研究機関のACP提言」→https://holylandtokyo.com/2022/12/15/4056/
「自立型や群れ開発格上げ」→https://holylandtokyo.com/2022/11/22/3948/
「Broun参謀総長まだまだやることあり」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/
「空軍長官:1機数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/

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最新型F-16 Block 70初号機完成:既に受注130機 [安全保障全般]

既存F-16のBlock 70への改修受注も400機越え
Block 70完成機は300-500機との需要予想も

F-16 Block 70 5.jpg11月21日、ロッキード社SC州Greenville工場で、F-16戦闘機の最新型Block 70/72初号機の完成式典が行われ、2023年に米空軍のエドワーズ空軍基地での初飛行など一連の試験を行うと同社が発表しました。

完成(roll out)したBlock 70/72型機はバーレーンに提供される予定の機体だそうですが、現時点でバーレーンを含む5か国(Slovakia, Bulgaria, Taiwan、他非公開1国)からの128機の受注契約が締結済で2020年代末までに製造予定で、他にヨルダン8機が手続き中で、ブルガリアとも協議中と同社報道官は語っています

F-16 Block 70 4.jpgBlock 70/72新造機の他に、既存の旧バージョンF-16のBlock 70/72への近代化改修受注は現時点で既に「405機」に達しており、2022年1月時点でロッキードはBlock 70/72型機関連で約9兆円の契約を既に締結していると関係者が語っているようです

米空軍が最後にF-16を購入したのは2005年のBlock 50型機で、その後はF-22を経てF-35の調達に資金を投入していますが、その米空軍が2021年春に、2030年代になっても600機程度のF-16を維持しているだろうとの「戦闘機ロードマップ」を明らかにしたことから、現在でも25か国で運用されているF-16維持整備体制が当面確保されたとの「安堵感」は世界に広がり、「F-16」ブームが再燃している状況です

F-16 Block 70 3.jpgちなみに、2021年春の近未来「戦闘機ロードマップ」(2023年度予算案の背景説明資料)では、2027年から29年頃にF-16後継検討を具体化し、2035年頃からハイエンド紛争での使用を想定しない5世代機以下程度の性能のMR-X(malti-role Fighter)導入構想も示されていますが、現時点ではどうなることやら全く見えていない状態で、F-16の地位が揺らぐことは当面なさそうです

また更に、Block 70/72型機は機体構造部材が強化され、機体寿命が12000時間と従来型の1.5倍に延伸されており、少なくとも2060年までは現時点でも運用される見通しで、今後受注が続けば2070年代にも雄姿を見せている可能性が十分あります

申し送れましたが、Block 70/72型機の改善点は・・・
F-16 Block 70 2.jpgAPG-83 active electronically-scanned array (AESA) radar,
electronic warfare 「Viper Shield」,
powerful mission computer,
cockpit with larger color displays—including zoom and the ability to rearrange displayed information
uprated engine,
capability for most modern weapons,
conformal overwing fuel tanks
infrared search-and-track system
targeting pod capability,
improved data links,
precision GPS navigation
/////////////////////////////////////////////////////

F-16 Block 70.jpg米空軍が初期型F-16Aを運用開始した1978年から45年が経過しようとしていますが、その間に30か国へ計4550機が提供されたF-16シリーズは現在でも25か国で運用されており、Block 70/72型新造機の市場ニーズが300-500機あるとの見積もりは決して大げさではないともいます

なおF-16運用国はABC順で
Bahrain, Bulgaria, Chile, Columbia, Croatia, Egypt, Greece, India, Indonesia, Jordan, Morocco, Korea, Oman, Pakistan, the Philippines, Poland, Romania, Singapore, Slovakia, Slovenia, Taiwan, Thailand, Turkey, UAE, USA the United Arab Emirates ・・・ です

日本は「亡国のF-35」ではなく、F-15Jの仲間でもあるF-15EXや、F-16最新型を導入しておけばよかったと思います。日本のような環境では、有事に戦闘機が活躍する場面は極めて限定されると思うからです

F-16関連の記事
「F-16後継検討は進展なし」→https://holylandtokyo.com/2022/08/25/3554/
「トルコに最新F-16提供要請」→https://holylandtokyo.com/2022/07/05/3437/
「F-16は2070年代まで運用へ」→https://holylandtokyo.com/2021/06/01/1784/
「米海軍が中古空軍F-16購入へ」→https://holylandtokyo.com/2021/06/17/1873/
「F-16人気にロッキードニンマリ」→https://holylandtokyo.com/2020/04/29/739/
「F-16生産移設であと200機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21-3
「米軍F-16延命へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13
「稼働率8割はF-16だけが達成見込み」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-06
「インド選定に特別仕様F-16で挑む」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-22
「台湾F-16V型ようやく納入」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-27-2

米空軍の戦闘機構成議論
「戦闘機の近未来体制は」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
「戦闘機混合比や5世代マイナス機検討」→https://holylandtokyo.com/2021/02/22/266/

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DNI長官:露は弾薬不足に対処できそうもない [安全保障全般]

来春の露の大規模反転攻勢はありそうもない
プーチンが戦闘の実態を把握しているか疑問
ウクライナ支配を一旦諦め、長期的目標に転換か

Haines Reagan5.jpg12月3日、毎年恒例の「Reagan Defense Forum」で公開インタビューを受けた米国情報機関トップのAvril Haines 国家情報長官(DNI:Director of National Intelligence)が、不活発になりつつあるロシア軍のウクライナ侵略活動やプーチン大統領の状況について断片的ながら見解を披露し、ロシア軍の弾薬枯渇が急速に進んで国内補給調達見込みが厳しいことや、プーチン大統領が戦況実態を十分報告されていない疑念に言及しました

厳しい冬を迎えウクライナでのロシア軍活動が低下し、ウクライナ東部からのロシア軍撤退の動きが確認される状況ですが、ロシア軍が態勢を立て直して来春に反撃の機会をうかがっているのではとの見方もある中、米国情報機関を取りまとめる立場の国家情報長官DNIが、慎重に言葉を選びつつながらも相当に確信をもって踏み込んだ発言をしている印象なのでご紹介いたします

12月6日付米空軍協会web記事によれば、
NBC放送のAndrea Mitchel女史にからのインタビューを受ける形式で語ったAvril Haines 国家情報長官は・・・

ロシアの弾薬備蓄量
Haines Reagan.jpg●厳しい冬を迎え、ロシアとウクライナ両国は軍の再編・物資装備の補給モードに入っていると見られ、反転攻勢の準備とも言えるが、春を迎える頃にロシア軍が反転攻勢に出られるかついて情報機関は相当レベルで懐疑的であり、ウクライナ側についてはかなり楽観的である
●特にロシア軍の兵器や弾薬の在庫量が問題で、具体的な数量はこの場で言及できないが、ロシアの精密誘導兵器消費ペースはウクライナよりかなり早く厳しい状況で、ロシア軍需産業では消費分を補填できない状態にあると見ている

●このためロシアは他国からの弾薬調達に動いており、ロシア軍装備で使用できる弾薬を保有している北朝鮮、中国、イランに対し提供を求めたことが知られている。ただし多くの補給を得られた訳ではない模様だ
●同盟国とも協力して分析を進めている我々の関心事項の一つは、ロシアの弾薬備蓄量から、ウクライナ以外の紛争にどの程度弾薬を使用できる状態にあるかであり、通常兵器でのウクライナ以外での軍事オプションは大きく制限されるだろうとの見方もある

●イランはロシアへの無人機提供を否定していたが、最近では「戦争前に提供したものだ」と言い訳を始めている。ロシアはイランから別の精密誘導兵器を導入しようとしており、極めて憂慮すべき事態で注視している

プーチンはロシア軍の苦戦や窮状を把握しているか
Putin Haines Reagan.jpg●プーチン大統領がロシア軍の状況や戦況の実態を把握しているのか、プーチンの怒りを恐れた部下からの虚飾に満ちたロシア軍に都合の良い報告しか受けていないのではないかとの疑問は、我々の関心事項であり、様々に議論されている。私が言えるのは、侵略後のロシア軍の苦戦にプーチンが驚いているということである
●プーチンはロシア軍の直面する問題を次第に認識する様になっていると考えるが、どの程度正確に全体像を把握しているかはよくわからない。弾薬の枯渇、士気低下、補給物資不足、兵站支援全般などなどの直面する課題についてだ

Haines Reagan4.jpg●ただ、ロシア軍の厳しい現状を把握し始めていても、プーチンは「ウクライナ支配の奪還(retake control of Ukraine)」との目的を変えていないし、少なくとも我々は変化の証拠をつかんでいない。
●「ウクライナ支配の奪還」の意味するところは様々に解釈でき、プーチンは「ウクライナはロシアの主権エリアである」と言い続けているが、それが短期的な軍事作戦にどうつながっていくのか不明である。侵略開始当初の勢いがなく当初の目的達成が困難なことを認識する時が来て、目的縮小を受け入れることができるかわからない
●一時的に目標縮小をプーチンが受け入れても、時間を置いて、再び彼は当初の目的達成に挑むだろうと米国情報機関は考えている

中国の動きについて
Xi Haines Reagan.jpg●中国の動きは2面性を持っている。引き続き中国はロシアを支援するための会議を催したり参加したり、国際社会でロシアの主張を拡散したり、様々な形での支援を行っている。
●しかし中国は、決定的な影響を与えうる軍事支援は行っておらず、支援はわずかなレベルである。我々は注意深く中国の動きを見ているが、プーチンによる核兵器使用を匂わせる発言の背景に中国がいるとの証拠は得ていない。ただ習近平の発言はプーチンに最も強く作用するだろうとも考えている

ウクライナのインフラ攻撃の影響
●ロシアによるエネルギーインフラ攻撃により、ウクライナは大きな打撃を受けているが、ウクライナ国民の士気を低下させるまでには至っていないし、ロシアと戦う意志に変化は見られない。
●ただし、ウクライナ経済は長期的に大きな打撃を受けることは間違いない
/////////////////////////////////////////////

会見の公式映像(約37分)


Haines Reagan3.jpg言葉を選んでの国家情報長官DNIの発言ですが、ロシア軍が今ウクライナ侵略を止めても、ロシア軍は当面何もできない状態にまでダメージを受けていると考えてよいレベルなのかもしれません。核兵器を除いては・・・

結果として、米軍や西側諸国が対中国により勢力を集中する事が出来ればよいのですが・・・

女性初の国家情報長官をご紹介
高校卒業後に来日し、1年間講道館で柔道を習ったつわものデス!
「DNIが年次報告書を語る」→https://holylandtokyo.com/2021/04/27/116/

ウクライナ関連の記事
「第1撃は宇宙やサイバー攻撃だった」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「対中国への教訓は兵站の重要性」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「米陸軍の教訓」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/
「ロシアに迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「日本への警告」→https://holylandtokyo.com/2022/03/28/2949/
「台湾事案への教訓」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/
「戦闘機での制空の時代は終わる」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/
「ウクライナ侵略最初の一撃は宇宙で!?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/18/2732/

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CNAS:米軍は弾薬にもっと予算を配分せよ [安全保障全般]

最近の紛争事例から急激な弾薬ミサイル消耗に着目
目立つ装備ばかりでなく、いつも後回しの弾薬備蓄に警鐘

CNAS weapon 2.jpg11月17日、シンクタンクCNASの女性研究者2名が「Precision and Posture」とのレポートを発表し、対中国作戦の予想様相やウクライナなど近年の紛争の事例も踏まえ、米国防省2023年度予算や5か年計画における弾薬調達予算配分が不十分だと警鐘を鳴らしています

弾薬の備蓄や製造にかかわる軍需産業基盤の弱体化問題は、長引く露によるウクライナ侵略への米国の兵器支援によって顕在化し、例えばJavelin対戦車ミサイルの米国備蓄の半分以上8500発をウクライナに提供した結果、その穴埋めには現状だと12年が必要との衝撃的数字が明らかになるなどして問題化し、対中国でも対艦精密誘導ミサイル「LRASM」の深刻な備蓄状態などを複数回取り上げてきたところです

そんな中でのCNASレポートは、より広範な事例から米国の弾薬事情について取り上げ、紛争のたびに問題が顕在化しているのに、一向に改善が進まない状況を指摘していますので、レポートの断片的な「つまみ食い」説明を試みたいと思います

レポート「Precision and Posture」は・・・
CNAS weapon 2022.jpg●対中国では中国による迅速な勝利を阻止し、米国や同盟国は粘りづよく反撃して膨大な攻撃目標に対処する必要があり、同時に中国の強固な防空網に我の兵器の一部が迎撃されることも考慮して弾薬の確保を今から準備する必要がある。ただ現在でも緊急にやるべきことが米国防省には多く残されており、現状の予算計画では不十分だ
●2023年度予算におけるICBMやSLBMを含めたミサイル予算は3兆5千億円程度にまで伸びているが、対中国で不足が叫ばれている対艦精密誘導ミサイルなどの予算は8000億円程度で増えていないのが現状である

JDAM-Empty.jpg●過去においても同様の問題が発生し、例えば2014年から17年に遂行された対ISIS作戦では、連合国の空爆で11万5千発の精密誘導兵器を多数含む弾薬が消費され現代戦の様相を呈したが、JDAMとレーザー誘導ミサイルの備蓄が枯渇して、需要に対応する軍需産業基盤の重要性が叫ばれた
●しかしウクライナ支援でも弾薬備蓄や製造能力不足が露呈し、米国は例えば韓国から155mm砲弾を購入してウクライナ支援に充てようとしている。ただこの窮状は米国に限らず、ウクライナを侵略しているロシアも、北朝鮮にまで弾薬補充を頼る状況に至っていると米国関係者は分析している

LRASM4.jpg●対中国作戦で考えてみると、例えば中国海軍艦艇は高度な地対空ミサイルを装備し、同時に「おとり艦艇」等で欺まんする可能性が高く、米軍の対艦ミサイルLRASM(Long Range Air to Ship Missile)の一部が迎撃されたり、誤目標攻撃に消耗させられる可能性を予期する必要があり、余分にLRASMを保有しておく必要がある

(LRASMは対中国作戦で800~1200発必要と言われているが、現有200発のみで、毎年の調達数はここ数年は38発たらず。2023年予算は88発導入を計画も、このペースでも1000発確保に10年は必要)

LRASM-B1-2.jpg●重要な弾薬備蓄と弾薬製造基盤育成への投資不足に関してはこのCNASレポート以外にも、9月のForeign Affairs誌で、フロノイ元政策担当国防次官とMichael Brown前国防省DIU局長が、対中国で必要な弾薬種と必要な数量見積もりを踏まえ、厳しい現実を改善するために必要な措置が緊急に望まれると主張している
////////////////////////////////////////////////////

CNASレポートをうまく紹介できていませんが、レポート内では重要な弾薬が「戦闘機や艦艇や戦闘車両など主要装備に予算が割り当てられた後、残予算で言い訳程度に調達されてきた経緯」なども説明されており、軍組織と軍人の硬直性を厳しく指摘しているようです

日本の自衛隊も同じような状況だと考えられ、「たまに撃つ、弾が無いのが、たまにきず」と自虐的に笑っている状況ではないのが今現在です。

レポート現物45ページ
→ https://s3.us-east-1.amazonaws.com/files.cnas.org/documents/Budget2022_Final.pdf?mtime=20221116160642&focal=none

弾薬量の圧倒的不足
「賛否交錯:輸送機からミサイル投下」→https://holylandtokyo.com/2022/11/15/3936/
「弾薬不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
「ウ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/
「Stand-inとoffのバランス不可欠」→https://holylandtokyo.com/2020/07/01/562/

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「世界の火薬庫」バルカン半島にも無人機大量流入 [安全保障全般]

コソボと対立のセルビアが無人機大国へ
中国製やイスラエル製や自国製が増殖中とか
イラン製を発注との情報も・・・

CH-92A china2.jpg11月21日付Defense-Newsは、「世界の火薬庫」バルカン半島でコソボとの緊張が再び高まるセルビアが、2019年にバルカン半島国家第1位の軍事費を投入し、輸入無人機と自国製の無人機を組み合わせ、半島最大の無人機保有国になっていると紹介しています

セルビアは元々民間機分野(composite aircraft)で航空機産業基盤があるらしく、自国製のISR無人機Vrabacを運用して展示会に出品したりしているようですが、同時に中国やイスラエル等からの輸入無人機も導入運用し、イラン製にも興味を示しているとイラン政府関係者がメディアに語っているようです

Gavran Serbia.jpg同時にコソボ軍との緊張が高まる中、セルビア大統領が最近、「飛行禁止空域」に進入したり、軍事施設に接近するドローンをすべて撃墜せよと命じるなど、周辺国からの無人機の脅威にもセルビアは直面しており、「脅威の変化を最前線で体感している国」とも言える状態にセルビアは置かれています

2020年秋、アゼルバイジャンとアルメニア軍の戦いにおいて、ロシア製兵器で防御するアルメニア軍を、イスラエルやトルコ製の無人機で圧倒したアゼルバイジャン軍の記憶が生々しい中、今年秋には「遅まきながら」無人機の有用性に気付いたロシア軍が、イラン製無人機を急遽導入してウクライナ発電所などエネルギーインフラに大打撃を与える様子が世界に発信されるなど、安価な無人機の「脅威」が「やばい」と広く認識され始めた中での動きです

同記事からセルビア軍の無人機には
Vrabac Serbia2.jpg●最新無人機としては2020年6月に導入された中型の中国製攻撃無人機CH-92A(行動半径250㎞)
●セルビア製ISR無人機「Vrabac」
●上記「Vrabac」を改良し武装可能にした無人機(40㎜弾薬6発搭載)

●セルビア製空中待機型攻撃無人機「Gavran」(搭載15㎏、30分在空待機可)
●セルビア製偵察無人機Silac 750C
●イスラエル製ISR無人機「Orbiter 1」などなど

Orbiter 1 Israel.jpg(そのほか噂では、ウクライナ軍使用で緒戦で話題になったトルコ製TB2の導入希望を繰り返しセルビアは公言しているが、イラン政府幹部がセルビアはイラン製無人機導入に手を上げている22か国のうちの一つであると発言した以降、TB2の話は立ち消えになった模様)
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いつもにも増して「断片的」な情報でしたが、セルビアのような中小国にとって、「無人機」は軍事作戦に革命・革新をもたらす兵器だとの直感に基づき、無人機活用に邁進する様子をご紹介しました

そしてこんなところから、軍事作戦の大きな変革の波は訪れるのだろうと思います。大国は変化が難しいです。

急速に脚光を浴びる無人機
「イラン製無人兵器がウで猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「アゼルバイジャン大勝利」→https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/
「Asia/Africaへの中国無人機の売込に警鐘」→https://holylandtokyo.com/2022/06/16/3339/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

無人機対処にレーザーや電磁波
「対処用のエネルギー兵器動向」→https://holylandtokyo.com/2022/07/14/3432/
「JCOが小型無人機対処3機種吟味」→https://holylandtokyo.com/2022/05/17/3233/
「2回目:安価で携帯可能な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/10/08/2280/
「カタール配備のC-UASと陸軍のIFPC」→https://holylandtokyo.com/2021/06/02/1708/
「1回目:副次的被害小な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「国防省が小型無人機対処戦略発表」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/

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