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ウ国への軍事支援輸送を支えるECCUをご紹介 [安全保障全般]

ドイツのStuttgartに米欧州コマンドがECCUを設置
ウ国要員も交え約50名規模で24時間支援輸送を采配
ウクライナ国内の輸送網は強靭で効率的

ECCU5.jpg4月29日付米空軍協会web記事が、西側諸国からウクライナへの軍事物資支援輸送をコントロールするドイツのシュツットガルトStuttgartに設置された24時間運用態勢の「米軍欧州コマンド運用センター:ECCU:EUCOM Control Center Ukraine」の様子を紹介しています

ECCU7.jpgロシア侵略に対抗するウクライナを支える重要拠点ながら、これまで報じられることがなかったECCUですが、4月26日にオースチン国防長官とブリンケン国務長官がドイツ訪問して開催された「ウクライナ支援国協議:Ukraine Defense Consultative Workshop」の取材報道陣に対し、ECCU活動紹介ブリーフィングが行われた模様です

ウクライナへの支援は米国やNATO諸国を中心に増えていますが、一方で提供された装備等が本当にウクライナ東部前線に届いているのか?、混乱に乗じて「横流し」されていたりしないのか?、等の疑念の声もSNS]上では見られますが、記事によればウクライナ内の輸送網は多様な形で強靭に維持&再編成されており、外から心配する以上にしっかり機能していると記事は報じています

同記事が紹介するECCUの概要など
ECCU2.jpg●ウクライナへの迅速な軍事装備提供や支援物資輸送を調整するシュツットガルトStuttgart に設置されたECCUは、物流を支えるコールセンターと輸送状況監視センターと各種調整用会議室を組み合わせた施設である
●米海軍少将(欧州米軍J-4)をトップとするECCUには、24時間体制で支援国15か国からのスタッフが常時40-60名が勤務しているが、ウクライナからも数名が加わっている。英軍が准将をトップに運用するIDCC(International Donor Coordination Center)とも緊密に連携しつつ、全ての物流の計画、任務配分、指示、輸送状況モニター、不足事態等への対処を行っている

ECCU.jpg●ECCUは米輸送コマンドと緊密に連携を取り、米国からの物資はC-17輸送機で独Ramstein飛行場に空輸され、その後小型のC-130に積み替えられウクライナ周辺国のウクライナ国境近辺飛行場に空輸される。C-17輸送は当初2日に1回だったが、今やウクライナの要請に迅速対応するため1日10回にまで増加している
●C-130によるウクライナ周辺国への空輸後は、トラックや鉄道網でウクライナ前線へ物資が輸送されていく。当初ECCUは空輸調整中心だったが、地上や鉄道輸送など多様なルートに調整範囲が急速に拡大している。物資が一端ウクライナ国内に入ると、ウクライナは多様な前線への補給ルートを確保しており、困難な情勢下でも極めて効率的な輸送路確保の働きを見せている

ECCU6.jpg●米国防長官と国務長官がキエフに鉄道で移動したことを見たロシアが、ウクライナ鉄道網への攻撃を強化しているが、米国防省高官によれば鉄道網への影響は限定的な模様である。ウクライナへの支援ルートは、ポーランド経由を中心に、ルーマニア、スロバキアなどを経ているが、西側支援物資がどの国をどの程度経由しているかは公開されていない
●ECCU関係者は当初、支援物資が「横流し」されたり、行方不明になる等を危惧していたが、物資の管理や防護は混乱の中でも期待以上にしっかりしており、前線へ確実に輸送されている

155mm Howitzer.jpg●今後はより野戦砲など長射程の攻撃兵器が重視され、携帯型SAMスティンガー等は優先度が下がる方向にあり、ECCUは大型の野戦砲(72門の155mm Howitzerや砲弾)や装甲戦闘車両の輸送に取り組んでいる。多少到着が遅れるかもしれないが、提供した長射程砲が近くロシア側を攻撃開始するだろうとECCU関係者は楽観的である
●輸送支援関係高官は「ロシア軍のパフォーマンスがひどくても、ロシア軍の保有戦力は多量で余剰があり、ウクライナには引き続き我々の支援物資が必要だ」、「防御兵器から長射程攻撃兵器にニーズの変化があるように、今後も先を見越した柔軟な対応がECCUには求められる」と語っている
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バイデン大統領が4月28日に、追加で4兆円近いウクライナ支援パッケージを発表したこともあり、米国からの支援物資がウクライナ前線にしっかり提供され有効活用されていることをアピールするため、ECCU活動ブリーフィングが実施されたのかもしれません

ECCU4.jpgでも、ウクライナが前線の戦いだけでなく、兵站補給路確保と管理においても、国家として極めてしっかり取り組んでいることに疑いはなさそうです。

ロシアのウクライナ侵攻を契機に、国防に関心の薄かった日本国民の間にも、安全保障に関する常識的な危機感や国防への認識が共有されればよいと思います。同時に、左寄りの皆さんの「お花畑思考」の問題点が、自然な形で国民に認識されればよいと思います

ウクライナ関連の記事
「ウ国を守ったSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「スティンガーの後継検討」→https://holylandtokyo.com/2022/04/14/3123/
「米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る」→https://holylandtokyo.com/2022/03/17/2929/
「ウクライナ侵略は日本への警告」→https://holylandtokyo.com/2022/03/28/2949/
「ウクライナのサイバー戦」→https://holylandtokyo.com/2022/03/23/2942/
「台湾への教訓」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/
「台湾への影響PACOM・CIA・DIAトップが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/
「なぜイスラエルが仲介に?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08
「ウ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍」→https://holylandtokyo.com/2022/03/05/2787/
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holylandtokyo.com/2022/03/03/2776/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/28/2763/
「ウ紛争の最初の一撃は宇宙で!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-17
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-08

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豪州KC-30A給油機と空自F-2の給油適合試験完了 [安全保障全般]

KC-30Aは世界ベストセラー給油機A330MRTTのことです
8月からの「Pitch Black 22」演習への参加準備完了

F-2 KC-30A.jpg4月29日、豪州空軍は日本に派遣していたKC-30A空中給油機(A330型MRTTのこと)による、空自F-2への3週間にわたる空中給油適合性確認試験が終了したと発表しました。

この適合試験は、8月から9月にかけ北部豪州で実施される「Exercise Pitch Black 22」に空自機が参加するために必要な準備の一環で、3月28日に小牧基地に展開した豪空軍KC-30Aが、4月4日から27日にかけ、空自F-2機に計9回のフライトで空中給油を行うことで実施されました

F-2 KC-30A 2.jpg参加したF-2はA型とB型各2機で、日本海と太平洋上の訓練空域で試験は実施された模様です。KC-30はブームシステム(ARBS)と3Dディスプレイシステムを活用し、日中・夕暮れ・夜間の様々な条件下で給油試験が行われ、F-2側も様々な搭載形態(最大兵装は4発の対艦ミサイルとAAM-3空対空ミサイル搭載)で適合性を確認したとのことです

空自機は2020年の「Pitch Black」演習に初参加を目指していましたが、コロナの影響で他の参加予定国(米国、カナダ、フランス、ドイツ、ニュージーランド、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア、韓国)との演習機会を逃していましたが、今回は満を持しての準備完了です

自衛隊と豪軍は、最近のトンガ火山爆発への災害対処&人道支援任務や、「Cope North in Guam」演習, 更に2019年に日本で行われた「Bushido Guardian」演習などを通じて関係を強化しています

豪空軍のDarren Goldie准将は本試験の意義について
F-2 KC-30A 4.jpg●今回の適合試験の成功は、日本の飛行開発実験団と豪空軍ARDU(Aircraft Research and Development Unit)の2年間に及ぶ周到な準備の賜物である
●この試験プログラムの成功により、8月から9月に開催される「Exercise Pitch Black 22」への空自機の参加が可能になる

F-2 KC-30A 5.jpg●初の豪給油機から空自機への空中給油及び適合試験終了は、豪日間の相互運用性を飛躍的に向上させるものであり、両国による作戦協力の高度化と複雑化を可能にすることを意味する
●そして更に、このような豪日の取り組みを通じ、我々は安全で包括的に強靭なインド太平洋地域を更に推進強化し続けることが可能になる
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日豪の関係強化面からの意義はもちろん大きいのですが、世界のベストセラー空中給油機であるKC-30A(A330型MRTTのこと)から、F-2だけでも空中受油可能になったことの重要性も忘れてはなりません。

KC-30A F-2 6.jpgKC-30A(A330型MRTTのこと)は、日米イスラエルだけが使用するKC-46より遥かに普及が進んでおり、自動給油システムなども成熟しています

●導入国がKC-46より多い
--- A330 MRTTは、豪州空軍が初導入後、英、サウジ、UAE、仏、シンガポール、韓国など13か国49機が運用中。25万飛行時間で6万回の空中給油実績実績
--- 更に、米軍機で空中給油認可済は10機種以上で、戦闘機ではF-35、F-22、F-16、F-15、A-10、爆撃機ではB-1、輸送機・哨戒機ではC-17、E-3、P-3及びP-8A対潜哨戒機、そのほかE-7にも給油可能
--- ベースとなるA330は世界で1600機以上使用され、部品調達など機体維持上の問題もない

KC-30A F-2 7.jpg●使用可能飛行場が3割増
--- 翼がKC-46より大きく揚力が大きいため、アジア太平洋地域で利用できる飛行場が3割増(現在150が196に増加)になる

●3か国が導入決定の自動給油装置アリ
--- 「fly-by-wire boom system」で全自動装置を試験中(既に330回給油試験済で今年中に昼間運用認証予定、夜間認証は2023年)
--- 高解像度高精彩3Dの画像システムを使用し、処理速度や反応速度が速い

KC-30A(A330型MRTTのこと)関連の記事
「A330型MRTT解説とLMXT」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20

米空軍が空中給油機整備方針を大転換
「大転換:KC-YとZはKC-46の改修型へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-04-17

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イスラエルがレーザー防御兵器の試験成功発表 [安全保障全般]

昨年5月にロケット4000発撃ち込まれ対応迫られる
首相は2月「年内配備」、国防相「as soon as possible」と
100kw程度で無人機や短距離ロケット対処から
迎撃ミサイル「Iron Dome」では費用がかさみ過ぎ

Gantz2.jpg4月14日イスラエルのBenny Gantz国防相が、イスラエル製のレーザー防御兵器(名称は「laser wall」か「Iron Beam」)が最近のテストで、迫撃弾やロケット弾や対戦車ミサイルや無人機の迎撃に成功したと発表し、「as soon as possible」で国境周辺に配備したいと語りました

イスラエルは以前から、北部国境でヒズボラから、ガザ地区からはハマスから、イランの支援を受けているとイスラエルが主張する射程数㎞から数十㎞のロケット攻撃を受け、周辺イスラエル国民に被害が出るなど喫緊の安全保障課題となっていましたが、2021年5月にはハマスとの対立が激化し、僅か11日間で4000発もの攻撃を受けイスラエル国民12名が死亡する事態となりました。

laser wall.jpgイスラエルは、このようなロケット攻撃対処に「Iron Dome」との迎撃ミサイルシステムを米国の援助も得て開発導入し、9割の迎撃成功率を誇ると誇示していますが、ハマス等のロケットが1発コスト数万円程度なのに、「Iron Dome」ミサイル1発は数千から数億円とも言われ、イスラエル首相が「経済の方程式が成立しない」と表現する状態です

もちろん、物理的に短期間に数千ものロケット弾に迎撃ミサイルシステムで対処することは難しく、そこでイスラエルが注力してきたのがレーザー迎撃兵器の開発です。

Bennett.jpgイスラエル首相や国防省はその性能細部について言及していませんが、2月にBennett首相は「レーザービーム1回発射は数ドル程度のコスト」「イランが後ろ盾の同時攻撃も無効化できる」「2022年度中に配備する」と語り、首相と国防省はともに、地上だけでなく海上と空中にも配備すると語っています

以下では、発表当日4月14日にイスラエルで放映された関連TVニュース映像と、開発状況に詳しいTV出演専門家の解説から、テスト成功が報じられたレーザー防御兵器(名称は「laser wall」か「Iron Beam」)について断片情報をご紹介します

4月14日ニュース映像等によれば
laser wall2.jpg●試験したレーザー防御兵器は出力100kw程度で、米国が現時点で開発に手を伸ばしている300kwレベルよりは低い。レーザー出力は、イスラエルの限定的な試験環境にも制約を受けている
●開発に関する米国との協力はあるが、細部は説明できない

●イスラエルは、弾道ミサイルに対して「Arrow-1,2,3」やパトリオットミサイル、短距離のロケットに対しては「Iron Dome」など、センサーと迎撃兵器を重層的に配備してきているが、今回のレーザー兵器はこれらを補完するものであり、とってかわるものではない
laser wall5.jpg●例えばイスラエル北部国境では、雲や雨で年間60-80日程度はレーザー兵器使用に適さない気象条件となることから、全てをレーザー兵器で賄うことはできない

●レーザーは電力が確保できれば発射でき、迎撃ミサイルのように「弾切れ」や「ミサイル製造や輸送」の心配がない。また連続発射が可能で、多数同時目標対処にも向いている
laser wall4.jpgただし映画「スターウォーズ」のように、一瞬のレーザー照射で目標が破壊されるわけではなく、敵ミサイルや無人機を無効化するには一定時間レーザーを照射し続ける必要がある

国防省が公開したテスト映像にもあるように、装置自体は比較的小型で、電源部分を合わせてもトラックで輸送可能である
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「laser wall」とか「Iron Beam」と呼ばれるこの装備は、その出力等から世界最先端とまでは言い切れない気がしますが、2021年5月にハマスから4000発もロケットを撃ち込まれて国民から厳しい視線を浴びているイスラエル政府とイスラエル軍ですから、あらゆるアイディアを投入して改良を進めると思います。

laser wall3.jpg弾道及び巡航ミサイル対処、砲弾やロケット弾対処、そして無人機対処まで、「いつまでたっても完成まであと5年」と揶揄されながらも、レーザーに対する期待は非常に大きいので、ハイテク産業で世界有数のイスラエルに大いに期待したいと思います

ちなみに・・・
遅れがちな米国防省「Directed Energy Roadmap」の目標設定

●2022年までに、150-300KW級の兵器化
 100Kwでドローン、小型ボート、ロケット、迫撃砲に対処可能
 300kwで巡航ミサイルに対処可能
●2024年までに、500KW級の兵器化
●2030年までに、1GW級の兵器化 

紹介映像1(6分30秒:2022年4月14日)


紹介映像2(3分:2022年4月14日)


紹介映像3(2分19秒:2022年2月)
  

開発の長い歴史と脅威背景の紹介映像(11分30秒:2022年1月)


エネルギー兵器関連
「陸軍が50KWレーザー装備の装甲車3台導入へ 」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-15
「AC-130用兵器の企業地上試験終了で空軍へ提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-12
「米議会がレーザー兵器開発に懸念で調査要求へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-08
「戦闘機防御用から撤退へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-01
「米空軍が無人機撃退用の電磁波兵器を試験投入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24
「F-15用自己防御レーザー試験」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-04
「エネルギー兵器での国際協力」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-27
「エネルギー兵器とMD」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「レーザーは米海軍が先行」[→]https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24
「無人機に弾道ミサイル追尾レーザー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-17-1
「私は楽観主義だ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23
「レーザーにはまだ長い道が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-18
「AC-130に20年までにレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-06

国防省高官がレーザーに慎重姿勢
「国防次官がレーザー兵器に冷水」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-12
「米空軍大将も慎重」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24

夢見ていた頃
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「米企業30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1

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中国とソロモン諸島の安保協定案リーク [安全保障全般]

2019年に台湾との国交を絶ったソロモン
中国軍の活動や施設使用を認める安保協定案
中国がソロモンに守秘義務を求める条項も

solomon3.jpg3月末、ネット上に中国とソロモン諸島が交渉中と言われる安全保障協定案がリークされ、ウクライナ情勢に世界の注目が集まる間隙を縫い、中国がじわじわと南太平洋に足場を伸ばして、米・豪・日・印による「QUAD」や2021年9月に成立の米・英・豪の「AUKUS」といった中国包囲網に風穴をあける動きに変化がないことを示していると話題です

ソロモン諸島は、ニューギニア島の南東に大小さまざまな島で構成され、岩手県の2倍ほどの総面積に人口70万人弱の国家で、農業と漁業が主要産業で軍隊を持たず、警察が800名規模で存在する程度です

ソロモン諸島2.jpg立憲君主制で議会もありますが、部族支配が根強く中国マネー政治腐敗が年々激しくなり、貧富格差拡大も重なって若者によるデモや暴力行動が頻発しており、昨年11月のソガバレ首相退陣要求暴動の際には、豪州、NZ、フィジー、パプアニューギニアから平和維持部隊200人が派遣され鎮静化した混乱ぶりで、中国からすれは付け入るスキありありな国です。

実際中国はリークされた「安保協定」以前に、既に警察警務協力に関する協定をソロモンと調印しており、11月の暴動鎮圧には関与していませんが、その後に中国式の暴動鎮圧法を訓練する顧問団や武器供与を受け入れ、今年3月には研修講座も開講したようで、今年3月の民主化活動家取り締まり作戦では、催涙弾やゴム弾を使用する「中国式」の警察行動が見られたそうです

4月7日付福島香織氏のJBpress記事によれば
●3月末、ネット上に流布した「安保協定案」のポイント
solomon.jpg・ 中国はソロモン政府の要請に基づき、軍や警察など法執行機関を派遣し、治安維持、生命財産の保護、人道援助、災害救援を行う
・ 中国が求めれば、ソロモンの同意の下、ソロモン側はあらゆる必要施設を提供し、中国艦艇を寄港させ補給を行う。

・ 中国部隊は、ソロモンでの中国人および主要プロジェクトを守るために使用される
・ 中国はその他の任務にも協力し、ソロモンに守秘義務を求めることができ、両国の書面許可がない限り、その情報は第3者に公開できない

・ この枠組みを妨害する議論、争いが発生した場合、当事者同士で相談で解決する

solomon2.jpg●誰が見ても「怪しい」内容だが、この協定が成立すれば、警察教育どころか、ロモン諸島に人民解放軍が駐留することも可能になり、それが南太平洋の安全保障の枠組みを根本的に変える可能性がある
●しかし、ソロモン諸島のソガバレ首相は、3月29日に安保協定案があることを認めたうえで、国際社会がこれに批判的なことを「非常に侮辱的だ」と強い不快感を示し、4月1日には国内での中国軍基地の建設は容認しないと述べたる一方で、「政府は軍事基地の建設を受け入れる派生的な影響を意識している」と表現している

●この発言には、米国との関係が深いミクロネシア連邦のパヌエロ大統領が、この協定が結ばれれば、太平洋地域が「米中戦争」に巻き込まれかねないと重大な憂慮を示した
●周辺国の反対を意識し、4月2日に改めてソロモンのソガバレ政権は、「ソロモン諸島に中国の軍事基地を呼び込めば後々に影響を引き起こすことはわかっている。当局の管理のもと、そういうことにはならない」と、ソロモン諸島の中国軍事拠点を否定した

solomon4.jpg●しかし、ソロモン側が中国の軍事拠点化をどれほど否定したところで、オバマ政権時代の8年の間に南シナ海の軍事拠点化を実現した中国のやり方を世界中が目撃しており、説得力に欠ける
●更に協定案は、ソロモン側が中国が必要とする補給兵站を一切提供することになっているので、豪州が長年ソロモン諸島に安全保障目的で投資・整備したインフラを、中国軍が使用することになる可能性もある

●中国はチャイナマネーの威力で、2019年にソロモンに台湾との断交をさせている。2021年11月の首相退陣要求暴動の背景には、こうした中国との外交戦がソロモン諸島内政に反映した権力闘争があったとされている
●中国は「一帯一路」構想と海底ケーブル敷設事業を建前に浸透工作を続けていたが、近年になって、中国企業がこの事業に関わることの安全保障上のリスクに各国が気づき始め、中国企業を排除する動きも出てはきている

ソロモン諸島.jpg●また、ネット上に草案がリークされたということはソロモン諸島の政府や官僚内部にも、中国依存は良くないと考える勢力があるとも考えられる
●豪州は、パプアニューギニア、フィジーその他の太平洋島嶼国にも豪州の懸念を伝え、ソロモン諸島を説得するように呼び掛けているという
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上記記事の最後の部分は、周辺国の警戒感の高まりや中国に対応する動きを期待する内容となっていますが、どちらに転ぶかは予断を許さないでしょう。本当に中国は油断も隙もありません

china Russia.jpgウクライナ事案で中国へ視線が厳しくなれば良いですが、中国市場や中国マネーの魅力は捨てがたく、裏でうごめく人たちの「欲」は簡単に収まりません

これを機会に、中国やロシアなどに肩入れする日本国内の人物の特定・見極めを致しましょう

米国の南洋諸島への視線
「日本戦前の南洋諸島進出を学び中国を警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-11-1
「アジア太平洋地域で基地増設を検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-28
「対中国で米軍配置再検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-16-1
「アジア認識を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-07

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寄稿「ウクライナ侵略は日本への警告だ!」 [安全保障全般]

日本専門家RAND上級研究員がDefense-Newsに寄稿
3月24日トップ記事で読者アクセス1位記事
台湾有事の日本の課題を4つの視点で

Hornung RAND.jpg3月24日付Defense-Newsが、RAND研究所の日本専門家による「ウクライナ侵略は日本への警鐘だ:Ukraine should provide Japan’s wake-up call」との寄稿を掲載し、「台湾有事に備える日本の課題」を4つの視点「自衛隊の規模・態勢」「軍事対処の法的問題」「不足する軍事能力」「海外からの補給支援体制」から指摘し、当日の読者アクセス1位記事となっています

Hornung RAND2.jpg寄稿者のJeffrey W. Hornung研究員は日本問題の専門家で、George Washington大学で「日本の湾岸戦争とイラク戦争時の意思決定過程」をテーマに博士号、SAISで日本政治で修士号、フルブライト奨学生として東京大学留学、笹川財団の研究員、国防省ハワイ研修センター助教授などを経験し、日本の新聞TVにも多数登場出演の方です

日本人の安全保障専門家でも、日本の台湾有事の際の課題は山のようにあって表現が難しいでしょうが、簡明な説明に挑戦されています。色々なご意見はありましょうが、ご紹介しておきます

自衛隊の態勢は十分か?
Japan’s wake-up.jpg●日本は人口減少の最中にあり、自衛隊の戦力は人的に少なく年齢構成も若くない。またその訓練演習は現実的なシナリオに沿っているとはいえず、政策担当者は自衛隊が十分な戦闘準備態勢を整えるに必要な訓練演習の在り方を吟味する必要がある
●自衛隊には一応予備役のような仕組みはあるが、小規模で技量レベルは未知数だ。徴兵制が憲法上不可能である中、紛争ぼっ発時の人員不足を補う手段を考えておくべきである

軍事有事に対応する法的枠組み
Japan’s wake-up2.jpg●紛争発生時には迅速な政治決断・対応が求められるが、日本の現法制では、日本への直接攻撃がない限りは実質的に具体的な作戦行動がとれない形となっている
●例えば、敵対的行為開始以前に基地外の土地に陣地形成するためには地主の同意が必要だが、このような規制を柔軟に運用できるような枠組みを政治が準備し、対処に時間的余裕がない中国の台湾侵攻に備えることを可能にしておく必要がある

必要な軍事能力の整備
THAAD PAC-32.jpg●中国は、大量の各種ミサイルや海軍や空軍部隊を台湾に投入する準備を進めてきているが、これら戦力は直ちに日本への脅威であり、日本はこれら中国戦力対処を優先した軍事能力整備をすべきである
●優先すべき能力には、例えば多量の防空及び対艦ミサイル、多連装ロケット調達等が考えられる。台湾に比べ、日本は中国から離れていることを利点とすれば、水上及び水中艦隊の整備や、戦闘機部隊維持も考えられる

●中国が緒戦で大量投入する弾道ミサイル対処能力に加え、中国の巡航ミサイルや航空戦力対処のため、移動可能IAMD(mobile integrated air and missile defense)にも注力する必要があろう。既存のPAC-3の他、THAAD、より機動性の高い米陸軍保有の「High Mobility Artillery Rocket System」や「Tactical Missile System」にも着目する必要がある

KC-46A1.jpg●東シナ海での争いを考えると、兵站補給面での体制が日本は脆弱である。自衛隊の補給拠点は日本本土に所在し、東シナ海や台湾から離れており、かつ脆弱である
●更に、日本本土から台湾や東シナ海周辺への海空輸送能力や、空中及び海上給油能力、兵器弾薬の備蓄所も増強が不可欠だ。日本の政策担当者は輸送能力や兵站不足を真摯に見つめなおすべきだ

●おおすみ型輸送艦3隻とC-130やC-2輸送機の現能力で、PAC-3や対艦ミサイルが十分輸送可能か? 今の給油艦や空中給油機でハイエンド紛争を支えることが可能か? 中国による緒戦のミサイル攻撃を防ぐ、隠蔽や掩蔽などの努力が十分か? など謙虚に見つめなおすべきだ

海外からの支援枠組みがあるか
Japan’s wake-up3.JPG●ウクライナが何とか持ちこたえているのは海外からの軍事援助があるからだが、日本の限定的な国内軍事サプライヤーを考えると、有事の兵站補給は多くの問題に直面する
●台湾有事の際には米国も当事者であり、米国も日本に十分な支援が可能とは限らない。平時から日米間で必要な軍事物資の優先調達等について議論しておく必要がある

Japan’s wake-up4.jpg●ウクライナのケースでは、ウクライナはNATO加盟国ではないが、自国への影響や地理的な近さもありNATO諸国がウクライナを軍事物資支援しているが、日本とNATO諸国間には物理的な距離があり、アクセス可能な極東拠点が限定されることもあり、海外から迅速かつ継続的な支援を受けることは容易ではない
●日本は、米国の主要な同盟国と戦略的に緊密になるために大きな努力が必要になるが、同時にこれは米同盟国と同じ網に絡まれる(enmesh itself with these states)ことになる点を考慮すべきである。具体的には共同作戦計画の立案、日本の基地の共同使用、日本の基地への物資事前集積など検討が考えられる
//////////////////////////////////////////

この寄稿は、「ウクライナ危機は、戦争がいつでも起こりうることを示した。日本は、中国の脅威に何時でも対応できるよう、確実に準備しておく必要がある」との一文で結ばれています

Hornung RAND3.jpgHornung研究員は、日米両国の関係者とのつながりが深く、両国関係者の日ごろの地道な努力を知るからこそ、日本の抱える有事の問題点を「オブラートに包むように」指摘しています。でも指摘は極めて的確だと思います

日本の実態のひどさを、その知識を駆使して強烈に米軍事メディアに書きなぐることも可能だったでしょうが、そこは控えて米国関係者による日本への圧力をやんわりと期待しての寄稿かと邪推いたしました

RANDのJeffrey W. Hornung研究員紹介ページ     
https://www.rand.org/about/people/h/hornung_jeffrey_w.html

日米軍事関係の記事
「米空軍輸送機で陸自空挺団540名が降下訓練」→https://holylandtokyo.com/2022/02/15/2720/
「米軍態勢見直し完了発表もほぼ非公開」→https://holylandtokyo.com/2021/12/01/2485/
「米会計検査院による日本駐留評価」→https://holylandtokyo.com/2021/03/23/167/
「在日海兵隊が対中国「飛び石」機動演習」→https://holylandtokyo.com/2020/10/26/441/
「海兵隊司令官が在日米海兵隊削減を示唆」→https://holylandtokyo.com/2020/09/28/488/
「日本など同盟国に国防費GDP2%以上を要求」→https://holylandtokyo.com/2020/09/21/484/
「日米が協力すべき軍事技術分野4つ」→https://holylandtokyo.com/2020/04/30/741/

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米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る [安全保障全般]

300機の露軍機がウクライナを行動範囲に
シリアでの残忍な都市破壊の記憶が
ただ大規模航空作戦や航空作戦センター運用経験無し
航空優勢なしでは活動せず、防空部隊は教義通り行動できず
前線との指揮通信も怪しい状況らしく・・・

Russian air force.jpg3月15日付Defense-Newsが、これまでのウクライナ紛争をめぐるロシア空軍への評価について、Kendall空軍長官ほか米空軍制服幹部や、英国RUSIの航空専門家Justin Bronk氏の見方を紹介しています

米空軍幹部はおおむね、ロシア軍の侵攻がロシアの計画通り進んでおらず、様々なロシア軍の問題点も明らかになってきており、最新情報や状況を注視しているが、将来の米空軍の在り方を考える上で大きな修正が必要だとは考えておらず、ロシア軍を今後も当然フォローしていくが、新たに策定される国家安全保障戦略や国家防衛戦略においても、中国が第1の脅威である点に変わりない、との姿勢です

Russian air force2.jpg英国の専門家は、2015年以降のシリアにおけるロシア空軍の残忍な航空攻撃は念頭に置くべきだが、シリアでもロシア空軍は大規模戦力での航空戦力運用を行っておらず、この経験も不足していると見ています

ただし、近年ロシア空軍は350機ほど最新型航空機を導入し、既存機の近代化改修も行っており、活動の前提となる航空優勢確保や防空網の整備は不十分ながら、注意を怠るべきではないとも指摘も現状の兵力配備から無視できない状況です

Kendall空軍長官
Kendall4.jpg●ロシアは“near-peer” competitorではあるが、(中国のような)米国と対等に渡り合うような状態にはない。この点で、ロシア軍への基本的な印象に変化はない
●米空軍はロシア軍活動に対処するため、領空保全措置に従事するF-15CのF-15EXへの更新、衛星偵察機能の更新、北極圏を中心とした通信能力の強化、そして核戦力の近代化に着手しており、これを淡々と進めていく事に変わりない。ウクライナ情勢から、新たな航空機調達や米空軍計画の大幅見直しは生まれていない

●ただし、ロシアは米国と通常戦力では対抗できないと結論づけ、米国と対等な位置に就くため、数年前に核戦力充実の道を選択しており、米国にとってトップレベルの脅威である位置づけは下がっていない
●一方で、ロシア空軍は通常戦力の近代化も怠っておらず、「航空脅威として警戒すべき質と量を維持している」

Kendall22.jpg●ロシアも中国も専制主義国家であるが、基本的に中国の方が、米国との直接対峙に備えた近代化計画を進展させている。核兵器開発においても、米国とロシアの両方に対峙できる増強計画を進めている
●中国を自由にさせないため、2023年度予算案では先進兵器・自立化航空機・宇宙優勢確保を優先した事業を盛り込んでいるが、ロシアを無視してよいわけではなく、引き続き国家安全保障上の懸念である

Brown空軍参謀総長
Brown nomination2.jpg●ロシア空軍の状況を見極めるべく最新の状況を注視しており、兵站や指揮統制に問題があり、制空権の確保も不調のようだが、私個人の印象として、ロシア軍への見方を変えるようなことにはなっていない
●米中央軍空軍司令官だった際、ロシア空軍のシリアにおける残忍な兵力運用や戦術を見てきており、ウクライナにおけるロシア空軍の動向を見る参考にしている

Justin Bronk英国RUSI研究員
●ウクライナを作戦行動範囲に置く約300機のロシア軍作戦機が、侵攻開始に先立ち機動展開してロシア西部や南部に集結しており、2015年の対シリア作戦で特徴的だったこれら固定翼作戦機の「heavy use」を連想させる
Bronk RUSI2.jpg●過去10年間で、ロシア空軍は約350機の新型作戦機を導入しており、戦闘機Su-35S やSu-30SM、戦闘爆撃機Su-34が代表的な高性能機である。また第4世代機のMig-31や対地攻撃機Su-25の近代化改修も行っている

●ただ、シリアで複雑な作戦経験があるとはいえ、ロシア空軍は基本せいぜい2機編隊運用で、異なる機種が行動を共にすることはあまりない。また航空作戦指揮官は、数十機以上の航空戦力を脅威下で運用する計画立案や訓練・実戦の経験がなく、「航空作戦センター」のような指揮所運用も行っていない状態だ

Kelly空軍戦闘コマンド司令官
Kelly.jpg●ロシア製の防空ミサイルSAMは極めて高性能で、運用者が良ければ大きな脅威である。この点、ウクライナ軍が使用すれば性能を発揮しているが、ロシア軍はロシア製兵器と格闘している状態だ。露のドクトリン通りに活動できていない
●ロシア軍は制空権を持っている時には調子が良いが、航空優勢を失うとよくない。またロシア軍の侵略は、いい加減な製造管理のために故障が頻発している地上車両が邪魔しているようで、「製造現場での品質管理問題がロシアの長年の課題であることを、戦場の前線で我々は確認している」

Hinote米空軍司令部計画部長
Hinote.jpg●ロシア軍は、このような侵略作戦で不可欠な前線との通信と指揮統制で困難に直面しており、米国がNATOとの関係で強化すべき事項の反面教師となっている。ロシアはウクライナで通信確保が必要な事態に直面している
●つまり、「仮に宇宙へのアクセスを失えば、統合戦力は(通信手段を失って)一体性を喪失してしまう。友軍部隊が、互いの動きを把握して意思疎通することができなくなれば、上級指揮官との指揮通信を失えば、我々はなすべきことをできなくなる」との教訓である
/////////////////////////////////////////////

Kendall空軍長官が指摘のように、「通常戦力では米国と対抗できないと結論づけ、米国と対等な位置に就くため、数年前に核戦力充実の道を選択」したロシアの軍事戦略はある意味で効果を発揮しています。

SU-35.jpgしかし、指揮通信で問題を抱え、侵略部隊に随伴する(していないか?)防空部隊が機能不全で、「異機種混合運用が稀で」「2機編隊」での運用が限界の空軍では、約350機の最新鋭機も有効活用が容易ではないようです

ただ、Brown参謀総長やRUSI研究員が指摘する「シリアでの残忍な航空攻撃」が再現される可能性は残されており、ウクライナの検討を祈るばかりです

ウクライナ侵略に関する記事
「なぜイスラエルが仲介に?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08
「ウ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍」→https://holylandtokyo.com/2022/03/05/2787/
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holylandtokyo.com/2022/03/03/2776/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/28/2763/
「ウ紛争の最初の一撃は宇宙で!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-17
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-08

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ウクライナ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ [安全保障全般]

中国が迅速に「既成事実:a fait accompli」を確保前に
後れを取っている米軍が迅速になすべきこと9項目
2017年まで太平洋軍作戦部長だった人物の寄稿

montgomery.jpg3月8日付Defense-Newsが、元太平洋軍作戦部長(J3:2017年退役海軍少将)とシンクタンク研究者(陸軍士官学校助教授:Black Hawkパイロット)による「ウ戦争から考える台湾への教訓9個」との寄稿を紹介し、具体的なウクライナ戦争での戦術的な教訓との視点ではなく、中国側が緒戦で「既成事実:a fait accompli」を確保し、米軍等の反撃の余地が無くならないよう今すぐ取り掛かるべき9つの提案を行っています

Bowman3.jpg寄稿者は、大平洋軍や国防省の予算要求をことごとく退けてきた米議会と米政府への不満一杯で、今頃言っても「時既に遅し」かもしれないが、米国が一丸となって取り組めば活路はあるとの姿勢で9個の提言を行っており、実現可能性や別として、台湾有事の際の軍事的課題を考える機会としてご紹介いたします

以下のご紹介する9項目は、まだ現役とのパイプも太い2017年まで太平洋軍J3だった人物(Mark Montgomery)と陸軍予備役ヘリパイロット(Bradley Bowman)による、現場の怒りと危機感あふれる声を反映した提案とまんぐーすは「邪推」しています

1.対艦ミサイルLRASM発射母機と同ミサイルを多数準備せよ
P-8.jpg●中国軍は台湾侵攻に多数の艦艇を使用するが、その撃破が緒戦で極めて重要。現在は、空母発進のFA-18と米空軍が退役させようとしているB-1が長射程対艦ミサイルLRASM(射程約800㎞)の発射母機だが、100機のP-8哨戒機をアジア各地から分散発進させ、またB-52に同ミサイルを多量搭載して大量に投入する必要がある
●このため米海軍と空軍は、それぞれLRASMを毎年50-75発購入して備蓄する必要がある(空軍は2022年に調達計画ゼロだが・・・)

2.米海軍の攻撃潜水艦配備数を増やせ
Virginia-class2.jpg●中国は台湾の海上封鎖を試みるだろうが、西側は潜水艦戦力や戦術で優位な立場にあり、この利点を生かすため西太平洋への攻撃原潜配備数を増やす必要がある
●太平洋軍はグアムに4隻の攻撃原潜を配備しているが、これを6隻に増強するため、ロサンゼルス級の延命を進め、バージニア級の増産(年2隻から3隻へ)体制を構築する必要がある。また豪州に米潜水艦基地を設ける必要がある

3.グアム島の防空・ミサイル防衛を強化せよ
THAAD3.jpg●台湾事案を考えた場合、グアム島は海空海兵隊部隊の極めて重要な作戦基盤基地や兵站支援基地になる。多くの作戦機や爆撃機や輸送機の拠点となるほか、海軍や海兵隊にとっての後方支援拠点ともなる
●中国もグアムの重要性を認識し、各種弾道&巡航ミサイルや極超音速兵器での攻撃を計画するであろうから、米軍はミサイル防衛を強化する必要がある。複数の監視レーダーや迎撃用ミサイル発射機、関連指揮統制システム等は、その気になれば3年で完備できる。今すぐ取り掛かるべき

4.E-7早期警戒管制機の導入
E-7 2.jpg●米空軍は過去30年に渡り航空優勢を全世界で維持してきたが、今の中国を考えると困難であろうことから、当初米空軍は老朽化著しいE-3後継を宇宙アセットと地上戦闘管理システムの組み合わせで構想していたが、技術進歩が追い付いていない
●この現状に鑑み、第5世代戦闘機の能力の最大発揮等の観点からも、米空軍は早期にE-7を調達すべきである

5.台湾への軍事予算援助(米国最新兵器購入支援)
Taiwan1.jpg●中国は台湾の約15倍の国防費を支出している。台湾はそのGDPの2.4%を国防費としており、他の民主主義国の中では最上位クラスであるが、この比率を3%程度のまで引き上げたい
●米国は年間2200~3500億円程度の安全保障援助資金を提供し、台湾国防費不足をカバーし、中国からの攻撃の抑止や撃破に必要な米国製最新兵器購入を支援すべきである

6.台湾への武器提供を他国より優先すべき
Taiwan4.jpg●米国は過去6年間に約2兆2000億円の武器売却を約束しているが、その実際の提供は他国への武器売却と同じ待ち行列に並ぶことになって迅速ではない
●特に中国の侵攻戦力を撃破する主要兵器であるハプーン対艦ミサイルや空中発射対地攻撃長射程ミサイルなどは、台湾に最優先して提供できるよう米議会が枠組みを整備すべき

7.米国と台湾の共同軍事演習を
Taiwan2.jpg●政治的な制約から、米軍と台湾軍が共に戦う準備ができておらず、この弱点を中国はよく認識しており、実際いま中国が侵攻を始めれば、米台の共同作戦遂行は非効率にしか進まないだろう
●米軍が台湾国土に展開しなくても、海軍や空軍間の訓練は実施可能であるし、両国共同の机上演習も相当の効果を得られる。これら共同訓練やゲームを通じ、米軍による台湾軍支援の要領や、両国それぞれの作戦計画の弱点把握や、兵站支援の課題を明らかにでき、相当のメリットが期待できる

8.両国の連合サイバー能力
●米サイバーコマンドは欧州において、ロシアの悪意に満ちた行為に対抗する「前方捕捉作戦:hunt forward」を行っていると認めている
●同様のサイバー作戦を台湾のサイバー関係者と協力して推進し、台湾の緊要インフラの脆弱性を見つけ出し、中国の仕組んだマルウェアを発見し、台湾のサイバー強靭性を強化すべきである

9.他の同盟国を上記の取り組みに巻き込め
Taiwan-China.jpg●上記のような米国の台湾支援取り組みに、有志ある他の同盟国を巻き込み、特に日本や豪州には、有事の際に米軍のアクセスを認めされるとともに、両国戦力を中国侵攻阻止に投入するよう「press」すべき
●さらに米国は、シンガポールやフィリピン、その他の近隣同盟国等に、中国による侵略は台湾に留まらないことを理解させ、協力させるべきである
///////////////////////////////////////////

潜水艦戦で西側が有利との話は専門家の間で広く共有されており、豪州への原潜技術提供も対中国の重要なピースとして話が進んでいます。ただ脆弱なP-8とB-52を発射母機として、射程800㎞程度はあるとはいえLRASMを大量投入というのは議論を呼びそうな提案かと思います

ウクライナでは、米国やNATOは直接ロシアとの交戦状態にならないよう配慮していますが、台湾の場合は米国は中国と交戦することになります

Montgomery2.jpgその場合、米軍兵士に犠牲が出ることとなりますが、その事態に至って日本が後方支援だけで済まそうとすれば、米国のみならず世界の世論が許さないでしょう

この問いは、岸田政権にだけでなく、日本国民に突き付けられる問であり、米国の退役少将による「特に日本や豪州には、有事の際に米軍のアクセスを認めされるとともに、両国戦力を中国侵攻阻止に投入するよう「press」すべき」との要求に、答えを準備しておくべきでしょう

台湾関連の記事
「台湾へ軍事支援する米企業に制裁発動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-23
「対中国専属米空母の苦悩」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15
「米中では極超音速兵器の意味が異なる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-21
「台湾が統合強化と権限分散の軍改革へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-18
「DIA長官の中国脅威認識」→https://holylandtokyo.com/2021/05/02/212/
「米空軍の台湾シナリオWar Game」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/109/
「台湾軍の対中国体制に危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/08/155/
「中国は6年以内に台湾併合」→https://holylandtokyo.com/2021/03/19/165/
「フロノイ氏が今こそ語る中国抑止策」→https://holylandtokyo.com/2021/04/05/99/

CSBA提言の台湾新軍事戦略に学ぶ
まとめ→https://holylandtokyo.com/2020/11/08/381/
その1:総論→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27
その2:各論:海軍と空軍へ→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27-1
その3:各論:陸軍と新分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27

中国の優位性を誇示する心理戦映像か!?
「グアムの米空軍基地攻撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23
「米空母キラーDF-21発射映像」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-01-31
「無人小型ボートの群れ行動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-06-02

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台湾への影響は?PACOM・CIA・DIAトップが語る [安全保障全般]

3月10日の米議会ヒヤリングより
国際世論と経済制裁の激しさ
ロシア軍戦死者4000名の多さ
中国情報機関の見積り失敗とロシアの変貌ぶり

Taiwan China.jpg3月11日付Military.comは、3月10日に米議会で行われた「ウクライナ侵略が中国の台湾行動に与える影響」に関する公聴会から、Aquilino太平洋軍司令官、William Burns /CIA長官、そしてScott Berrier/DIA長官の発言を紹介し、現時点で観察できる点について紹介しています。

このような分析は「ミラーイメージ」を排除することが重要で、その受け止め方には注意が必要ですが、多くの人の関心事項ですのでご紹介いたします

3名は共通して、国際法的にも違法で残忍なロシアによるウクライナ侵攻に対する国際世論の反発の強さと経済制裁の厳しさに、北京政府は「驚いている」「落ち着きを無くしている」と見ているようですが、これによって台湾の統一というNo1優先大目標の遂行を躊躇するかは不明としているようです

Scott Berrier/DIA長官(Defense Intelligence Agency)
Berrier DIA2.png●ウクライナの予想以上の激しい抵抗とロシア軍兵站補給の失敗による燃料弾薬不足もあり、ロシアは短期間での首都キエフを制圧支配に失敗し、DIAの推計によればロシア軍は既に4000名の戦死者を出している
●ウクライナと台湾では状況が異なり、米軍の体制も違っているので単純な比較は難しく、中国はウクライナ情勢の波及影響がどうなるかを極めて慎重に見極めている

Aquilino太平洋軍司令官
●違法な戦争を仕掛けたことで生じたロシア軍の戦死者の多さは第1の教訓であり、確実にプーチンと習近平へ共通して届いている
Aquilino7.jpg●また中国は、ロシアの行為に対する国際社会からの広範な厳しい非難を目の当たりにしているだろうし、西側諸国が持ち出せる経済制裁のインパクトの大きさにも目を見張っているだろう

●一般に習近平は、戦争に至らない継続的な嫌がらせやサラミスライス戦法による台湾統一を志向するだろうと考えられているが、彼は軍幹部に対し、2027年までに近代化を完成させよ指示しており、米軍が準備するために残された時間は少ない可能性があると恐れている。香港や南シナ海、更にインド国境地域での中国の活動を見てもそう感じさせる

William Burns /CIA長官
Burns CIA.jpg●中国当局者は、過去12日間のウクライナ侵略に対する西側諸国の反応の強さ厳しさ、ウクライナ国民の抵抗の強さ、そしてロシア軍の鈍い動きに驚いており、落ち着かない様子が感じられる
●ただ、習近平や中国指導部の台湾統一に関する決意を低く見積もるつもりは無い

●露のウクライナ侵略に関し、中国が落ち着かない原因の一つは、中国情報機関によるウクライナ情勢予想の失敗にもある。事前に習近平は、今のようなウクライナの状況になろうとは全く予想していなかったであろう
●ロシアによる侵攻の1週間間前、習近平とプーチンは「両国の協力分野には制限がない」との共同宣言文書に署名しているが、そのインクが乾かないうちにこの状態であり、中ロ関係が根底から変わるとは考えにくいが、中国からすると、ロシアとの関係維持が中国の評価を下げることを恐れることになろう
///////////////////////////////////////

Taiwan China2.jpg戦況は日々変化しており、キエフへの総攻撃間近との報道もあり、この記事を掲載する頃には情報が陳腐化しているかもしれません・・・

ロシアが直ちに攻撃を止め、部隊を撤退させたとしても、政治的にも経済的にも、ロシアが国際社会で以前のような状態で存在できるとは考えにくく、色々と落ち着かない日々になりそうです

ウクライナ侵略に関する記事
「なぜイスラエルが仲介に?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08
「ウ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍」→https://holylandtokyo.com/2022/03/05/2787/
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holylandtokyo.com/2022/03/03/2776/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/28/2763/
「ウ紛争の最初の一撃は宇宙で!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-17
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-08

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イスラエルF-35が無人機初撃墜と発表 [安全保障全般]

昨年3月の事案をなぜか今公表
イラン製ステルス形状無人機がパレスチナ自治区に兵器輸送中か
F-35は低速度低高度目標にも有効だとアピール
イラン核合意再構築協議が終盤で混乱する中

F-35 IDF3.jpg3月7日イスラエル軍は、昨年2021年3月に、イラン製のステルス形状無人機がガザ地区のハマスに武器輸送を企て飛行していると推定されるところを、イスラエル空軍F-35I戦闘機で撃墜したと発表しました。

イスラエル軍は撃墜場所や無人機の飛行諸元について会見で触れず、なぜ1年後の今になって公表したのかについても説明しませんでしたが、撃墜状況等について以下のように説明しています

Shahad 197.jpg●隣国との情報交換もあり、地上レーダー情報で当該無人機の飛行状況は良く捕捉&把握されおり、イスラエ領空に侵入以前の他国上空の最適な作戦遂行地点で撃墜した
●撃墜した無人機は、残骸からイラン製の「Shahad 197」無人機と推定される。

●当該無人機は飛行ルートと残骸の分析から、イスラエル国内のパレスチナ自治区である西岸地区かガザ地区の過激派武装組織ハマスへの兵器輸送(munition transfer)に従事していたと推定される
●ちなみに、2018年2月にはイランがシリア領内からイスラエルに向けて武装無人機「Shahad 141」を飛行させ兵器密輸を試み、2021年5月には同じくイランがイラクから無人機をイスラエル領内に向け飛行させた事案が発生している

F-35 IDF.jpg●撃墜した無人機は低空を低速で飛行しており、また小型であることから一般には探知が困難であるが、F-35のレーダーが巡航ミサイルのような低高度目標探知追尾にも適していることを証明して見せた
●また、F-35操縦者用の最新型ヘルメットは、その赤外線追尾装置と光学ターゲティングシステムを融合して操縦者に目標情報を提供し、当該無人機の迎撃に貢献した

●イスラエル空軍は既に発注した50機のF-35を順次受領しており、更に25機を追加でオーダーする方向で検討を進めていると報じられている
////////////////////////////////////////////

第一印象として、安価な無人機や巡航ミサイル迎撃にF-35を持ち出すコスパの悪さは、相手にコスト負担を押し付けたい敵からすれば、「飛んで火にいる夏の虫」状態だと思うのですが・・・

IDF.jpgイスラエルが、なぜ今昨年3月の事象を記者ブリーフィングまで開いて公表したかと言えば、恐らく「イランとの核合意再構築」に向けた米英仏独ロとイランとの協議が大詰めを迎え、複数の外交筋が「大筋合意し最終段階に入った」と述べている中、イランは危険な国だとアピールしたかったからでしょう

ただ、この「イラン核合意の再構築協議」ですが、8日になってロシアが「ウクライナ侵攻を巡る西側の制裁が、露とイランとの貿易に影響を与えないことを書面で保証せよ」、「イランの核プロジェクトの実施や、貿易・経済関係に打撃を与えないと明確にする必要がある」と強く米国に求めたことで、土壇場になって混迷が深まっているということです

F-35 IDF4.jpgこの核合意再構築に反対するイスラエルが、露とウクライナとの仲介に乗り出し、イスラエル首相がプーチンとの3時間会談で「イラン核合意」の話題を持ち出したことも容易に想像できますし、平和ボケ日本人の思考の枠組みを超えた、複雑怪奇な裏の裏を想像させるイスラエル軍の発表だったということです

イスラエルとロシア
「なぜイスラエルが露とウクライナ仲介?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08

アブラハム合意関連
「イスラエルが欧州軍から中央軍管轄に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-16
「政権交代前にUAEへのF-35契約署名へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-11
「イスラエルがUAEへのF-35に事実上合意」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-26

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「自立化autonomous」無人機の分類定義を明確にせよ [安全保障全般]

自動車の自動運転レベル定義が5段階あるように
技術者と運用者と政策決定者と議会の共通理解のためにも
国防省の無人機の現有定義は大きさ重量飛行高度でのみ分類

Penney5.jpg2月10日、米空軍協会ミッチェル研究所のHeather Penney研究員が、レポート「Beyond Pixie Dust: A Framework for Understanding and Developing Autonomy in Unmanned Aircraft」の概要プレゼンを行い、無人機導入が急速に進む中、「自立化autonomous」との言葉の定義が曖昧なため、技術者と運用者と政策決定者の間の意思疎通に誤解や誤認識が生まれ、無人機の普及や運用に支障をきたしていると警鐘を鳴らしています

Penney研究員は、国防省は無人機の大きさや重量、又は飛行高度によってのみ無人機をクラス分類しているが、自動車業界が自動運転レベルを5段階で定義し、技術者と新車構想者と消費者の自動運転レベルの共通認識を構築している好事例を取り上げつつ、無人機の「自立化autonomous」議論にも明確な共通定義を設けて円滑な議論の基礎を提供すべきだと提言しています

XQ-58A Valkyrie2.jpg例えば同研究員は、現在の無人機の議論では、単に無人機の行動をプログラムによって事前規定しその通りに飛行させる「自動化automation」と、状況を機械学習させ、環境に応じて無人機に行動を判断させる「自立化autonomous」も区別も曖昧なまま技術者と運用者側の議論が進んで途中でプロジェクトが振出しに戻ったり、予算要求時点で議会との意思疎通が混乱しているケースが散見されると問題を指摘しています

このプレゼンを紹介する米空軍協会web記事は、具体的にPenney研究員が提案する「自立化autonomous」議論用の「共通の用語common lexicon」や「自立化程度の分類法」について言及していませんが、実際のレポート発表まで秘密なのかもしれません

2月10日付米空軍協会web記事によればPenney研究員は
Penney6.jpg●来る本格紛争では、強固に防御された空域での戦いが予想され、味方戦力に経験したことのないレベルの多くの損耗が予想されることから、無人機に対する需要は急拡大を続けている。また高度に組織化された敵を混乱させる手段としても、無人機への期待は高まっている
●このように需要が拡大する無人機であるが、様々なレベルの「自立度」の無人機が混在していることから、自律的な無人機とは何なのか、自動化なのか自立化なのか等々、議論の土台となる言葉や用語の曖昧さから、技術者と無人システムを要求する現場運用者間の意志疎通に混乱が生じている

●また、無人機の急速な増加は作戦コンセプトやドクトリンの見直しを迫るものであるが、議論の土台となる用語の定義や言葉の意味の混乱から、現場運用者と司令部勤務者、更には意思決定者間での議論の深化を阻害している
●無人機への関心は米議会でも高まっているが、国防省や各軍種の無人機関連予算要求を議員に伝える際にも、自動化なのか自立化なのか、自立化のレベルは・・・と言った極めて基礎的なレベルの基礎的性能に関する意思疎通が円滑に進まず、相互の不信感につながっている現状もある

Skyborg2.jpg●このような問題意識はペンタゴン内にもあるが、依然として無人機に関する議論はその大きさや重量、又は飛行高度で区分されるカテゴリー分類のみで、現場のニーズに対応できておらず、我々のこのレポートがより優れた視点を提供できると確信している
●まず、事前に規定された行動を厳格に繰り返すようなプリプログラムされた「自動化automation」と、独立して自ら環境や状況を機械学習して状況適応型の行動をとる「自立化autonomous」が明確に異なることを理解して議論すべきである

●また「自立化autonomous」に関しては、自動車工業会が設定したような、自立化程度に応じた5段階のレベル設定が参考になる。自動車では、0-2レベルは人間が必ず制御しながら自立化を利用するレベル、3-4レベルは自立化システムが大部分の場面で制御するが、人間が時に介入するレベル、5レベルは全ての環境で自立化システムが人間の介入なしに安全運転を確保できるレベルと規定されており参考になる

Penney4.jpg●自立化レベルの明確な定義は、有人機と無人機の編隊編成成功にも欠かせない。有人機操縦者の自立化無人機への不信感や懐疑感を払しょくし、有効な作戦運用法確立に結び付けるかは、自立化無人機の性能や能力への理解程度にかかっているが、その基礎が確立されていないのが現状である
●敵対的な国では無人機の導入が急速に進んでおり、これへの対処を考える上でも議論の基礎となるのは、「自立化」の明確な定義と関連する用語の設定である
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流行の言葉やキャッチフレーズが独り歩きし、その言葉の定義が曖昧なまま議論が発散する・・・。

軍事の世界ではよくあることで、最近はあまり耳にしなくなった「A2AD」との言葉も、定義が曖昧なことから米海軍が使用を制限して以降、急速に見聞きすることが少なくなりました

Penney.jpg無人機は急速に増加しており、戦い方を大きく変える可能性がありますが、戦闘機パイロットをはじめとする組織的抵抗から、「いい加減に」「なし崩し的に」導入が進む可能性が高く、特に注意が必要でしょう

ちなみにHeather Penney研究員は、元米空軍F-16パイロットです

最近の無人機の話題
「ウクライナで戦闘機による制空の時代は終わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-08
「UAEに無人機&弾道巡航ミサイル複合攻撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-22
「50KW防空レーザー装備の装甲車に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-15 
「攻撃無人機でアゼルバイジャン圧勝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-21 
「MQ-4を電子偵察用に改修へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-18
「無人機をC-130輸送機が空中発進&回収成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-09
「優先項目の無人機の群れ苦戦」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-30
「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26

無人機ウイングマン構想
「頭脳ACSを2機種目で試験成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-02
「Skyborg構想の頭脳ACSで初飛行2時間」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-06
「多用途ドローン投下試験成功」→https://holylandtokyo.com/2021/04/09/103/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「無人ウイングマンのデモ機選定開始」→https://holylandtokyo.com/2020/05/24/679/
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1

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なぜイスラエルが露とウクライナ仲介? [安全保障全般]

交渉期待値は高くないが、背景から学ぶ
西側で唯一ロシア非難を避け、浮いた存在
イラン核問題やシリア問題でロシア関係が重要で

Bennett.jpg3月6日付Military.comがAPの記事を配信し、イスラエルのベネット首相が露ウクライナ間の仲介のため5日にロシアを訪問し、西側首脳で唯一プーチン大統領との3時間もの会談を成立させ、ウクライナ大統領とも数回協議している背景について様々な角度から紹介しています

ベネット首相自身が国内向けTV演説で、「たとえ可能性が低くても、要請があれば支援を続ける」、「あらゆる試みをすることが道徳的義務だと考えている」と述べるほど難しく期待値の高くない試みですが、世界秩序に大きな影響を与える出来事が、世界の姿を浮き彫りにする一つの事例としてご紹介いたします

イスラエルの国内事情
Bennett5.jpg●ネタニアフ前政権を倒すため、イデオロギーが全く異なる8個政党が協力し、その結果として生まれた8つの政党による連立政権の運営は複雑で、ハイテク分野で巨万の富を気付いたベネット氏にとっても容易ではない。国民や野党からは連立政権誕生の過程にまで疑問を呈されており、「カリスマ無き指導者」は国内で求心力を持たない
●イスラエルには、ロシアのユダヤ人コミュニティーから数10万人とも言われる知的レベルの高い移民がおり、政治的にも力を持っている。同時にウクライナにもユダヤ人が約20万人存在しており、その保護はユダヤ人国家であるイスラエルの国是であり、既に数百人のユダヤ人避難民を受け入れている

ロシアとイスラエル関係
Bennett4.jpg●イスラエルの存在さえを認めないイランが、核の平和利用に名を借りた核兵器開発を進めることを断固阻止する姿勢のイスラエルは、イランとの核合意が復活することにも危機感を持っており、その阻止のためにロシアの役割が極めて重要との認識の下、ロシアとの関係を重視している
●また、北の隣国シリアの情勢はイスラエルの安全保障上の大きな関心事項であり、シリア内の危険な軍事拠点や施設にたびたび空爆を行っているイスラエルにとって、内戦で混乱するシリアに軍事拠点を置き影響力を持つロシアとの関係は、極めて微妙である

●もちろん、イスラエルにとって最大の同盟国は米国であり、米国内のユダヤ人社会の強力な後押しを得て毎年多額の軍事援助を受けているとはいえ、米国の意向を無視して独自路線を進める範囲は限られており、今回のロシア&ウクライナ仲介も米国と相談しつつの動きだと報じられている

イスラエル専門家の見方
Bennett2.jpg●テルアビブ大学のヨーロッパ問題の専門家であるEstherLopatinは、「世論調査で苦しんでいて、世論の批判に直面しているベネットが、自分自身を引き上げるチャンスを得たと動き出した」と表現し、
●イスラエルの著名な評論家は、「ベネットは一夜にして国際的な地位を高め、イスラエル国内で多くの政治的ポイントを獲得した。他方、彼は政治家となった彼自身のためだけでなく、イスラエルの国家と世界におけるその地位を大きなリスクにさらしている」と表現し、「ベネット首相は、ウクライナの泥の深さを十分知らずに、ウクライナの泥の中に入ってしまった」と批判的に語っている
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Bennett3.jpg上記の記事は、イスラエルはイランやシリア関係からプーチンを怒らせる余裕がなく、制裁を強化している西側諸国から完全に浮き上がっているとも表現しています。

一方で、世界が注目するこのような紛争への関与が、基盤が弱いベネット首相の政治的財産に命を吹き込む可能性はある・・・とも記しています

それでも、某コメンテーターの「ベネット首相は、ウクライナの泥の深さを十分知らずに、ウクライナの泥の中に入ってしまった」との言葉が頭に残ります・・

ウクライナ侵略に関する記事
「ウ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-04
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-02
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-01
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-27
「ウ紛争の最初の一撃は宇宙で!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-17
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-08

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ウクライナ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍 [安全保障全般]

シリアで見られたロシア軍の強固な防空網は存在せず?
ロシアはアルメニアでの大敗北を忘れたか?
緒戦でのウクライナ軍航空基地破壊を過信か?
ただロシアがその気になれば脆弱な小規模戦力

TB2.jpg3月1日付Defense-Newsはツイッター映像を紹介しつつ、ウクライナ軍保有のトルコ製無人攻撃機(Bayraktar TB2)がわずか20機程度の戦力ながら、ロシア軍の戦闘車両や地対空ミサイルや補給列車への攻撃で成果を上げる一方で、ロシア軍部隊の防空部隊が全く機能していない状況を「信じられない説明不能なレベル」と報じています

TB2 5.jpg同記事は、ロシアが支援するアルメニア軍が、2020年秋にアゼルバイジャン軍の同型無人機から大打撃を受けた戦訓が生かされず、シリア展開ロシア軍が通常戦闘単位である防空ミサイルや無人機対処兵器や電子戦部隊を備えた「BTG:battalion tactical groups」で強固な防空網を構築しているのとは全く対照的だと、ウクライナ侵攻ロシア軍の混乱ぶりを米専門家の意見として紹介しています

ドローン使用作戦の一里塚
「アゼルバイジャン軍大勝利」https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/

TB2 2.jpgただ、公開情報で確認できる範囲で、トルコ製TB2無人攻撃機によりロシア軍車両32両が先週(2月28日の週)破壊されたと記事は伝えていますが、ロシア軍もウクライナ軍飛行場への攻撃や「TB2狩り」作戦を遂行するであろうから、TB2による攻撃がその後も有効かは予断を許さないようです

専門家は約20機のTB2だけでは戦果は限定的だろうと示唆し、「ロシア軍はTB2の脅威を明確に認識したはずで、仮にロシア軍が態勢を再構築し、BTG編成の基本構成を整え、適切な防空装備を展開し、電子戦部隊と共に運用すれば、TB2の運用は困難になろう」と述べています

TB2 3.jpgまた、ウクライナ領内に不思議とロシア軍戦闘機や爆撃機の姿が見えない点から、ロシア軍のミサイル攻撃による制空権確保への過信があったのでは・・・と示唆しつつ、ロシア軍による「TB2狩り」が本格化する可能性に言及しています

一方で米国の専門家は、この動画が100万回再生を超えている状況から、情報戦に自信を持つロシアを上回って、「ウクライナは情報戦で勝利しつつある」ともコメントしています
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これだけの情報化社会で、相当程度近代化が進んでいるウクライナでの紛争に関わらず、戦況についてまとまった報道が出てこないことに報道の限界を感じるとともに、「にわか軍事専門家」がいい加減な情報をばらまいている日本の状況を危惧します

TB2 Turkey.JPGそんな中でも、女性や子供を国外に避難させつつも、60歳以下の男性は国内にとどまってロシアに対抗するよう命じたウクライナ政府と、それにこたえるウクライナ国民の姿勢があればこそ、国際社会の支援が集まるのだとしみじみ思います

日本政府が、日本国民が、そして日本のメディアが「その時」どう対応するかによって、国際社会の風向きが変わることを肝に銘じる必要がありましょう

ウクライナ軍のトルコ製無人機で攻撃される侵攻ロシア軍部
ツイッターで100万回再生。“バイラクタル”との無人機名が頭に残る
https://twitter.com/i/status/1498692841526251526

トルコ製ドローン大活躍でロシア大恥
「アゼルバイジャン軍大勝利」https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/

ウクライナ侵略に関する記事
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-02
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-01
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ウクライナによるロシア兵捕虜への「両親作戦」 [安全保障全般]

以前から準備していたのか?
あまりにもタイムリーな別名「お父さん、お母さん作戦」

ukraine UN.jpgウクライナに侵攻しているロシア兵の士気の低さを指摘する報道が相次ぎ、ウクライナ国連大使が国連総会の緊急特別会合で紹介した、戦死直前の若いロシア兵士が母親に送ったSNSメッセージが世の涙を誘っています。

ご存じの方も多いかと思いますがその内容は、

兵士:「ママ、もうクリミアにはいないんだ。演習はしていないんだ」
母親:「それならどこにいるの?パパが荷物の送り先を知りたがっているの」

兵士:「ママ、ウクライナにいるんだよ。本当の戦争が起きている。怖いよ。僕らは町中を爆撃している。市民でさえ標的にしている」
  「歓迎されるって聞かされていたのに、皆、自分を装甲車の下に身を投げ出して僕らを通さないようにしている。僕らのことをファシストと呼んでいる。ママ、本当にきついよ・・・」

そんな中、ウクライナ当局による「作戦」が注目を集めていると1日付雑誌Friday電子版が紹介しています。

Russian soldiers.jpgその作戦名は『お父さん、お母さん作戦(両親作戦)』
●ウクライナ当局によると、多くのロシア兵の装備は劣悪で、まともな訓練も受けていない兵士もいるそうだ。中には10代の若者もいたと発表している
●ウクライナ軍は捕虜となったロシア兵に、食事や水を与え極力丁重に接している。おびえる兵士に、優しい言葉をかけることもあるとか

●更に、ウクライナが徹底しようとしているのが、「お父さん、お母さん作戦(両親作戦)』。ロシア兵に対し、故郷の両親へ電話することも勧めている。
Russian soldiers2.jpg●戦地で父親や母親と話せば、自分たちがいかにツラい状況にあるかを伝え、早く帰りたい、会いたいと訴える。兵士たちとロシア国民に厭戦気分が広がるのも当然

●ウクライナ当局は、捕虜となったロシア兵を、ロシアの家族が検索できる特別なサイトも作っているという。
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「捕虜となったロシア兵をロシアの家族が検索できる特別なサイト」開設のような迅速な行動がとれるのは、2014年以降ロシアの「ハイブリット戦」と戦ってきたウクライナ当局の逞しさでしょうか

Ukrainian forces5.jpg上記のような報道が増えていますが、米国のシンクタンクは、ロシア軍側に立て直しの動きが見られることや、「制空権」がロシア側に完全に落ちる可能性も指摘もしており、ウクライナ側の補給路も先細りな中、油断を許さない状況のようです

例えば日本のメディアが2日付で、米国防省が「5日以内に首都・キエフが陥落する可能性が高い」と分析していると報じるなど、現実は甘くないようです。

ウクライナに関する軍事的な視点
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-01
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-27
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ロシアの電子戦に驚愕の米軍
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02

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欧州諸国からウクライナへの武器提供 [安全保障全般]

携帯型SAMスティンガーが多数ウクライナへ
対戦車ミサイル、機関銃、迫撃砲、ロケット弾等
ハイブリッド戦とは異なる20世紀的戦いの様相

Stinger SAM.jpg2月28日付(3月1日更新)Defense-Newsが、欧州諸国からウクライナへの軍事援助(武器供与)についてまとめていますので、戦況を見る視点の一つとして、また欧州諸国の姿勢を見る意味でご紹介いたします

ちなみに、米国は約380億円相当の武器供与を2月最終週に表明し、その一環で初めて携帯型SAMスティンガー(射程4㎞)やJavelin対戦車ミサイル(射程2-4㎞)を直接供与することを決定しています

なおEUは、ウクライナへの武器提供を行った国に、計約550億円の資金を援助すると表明しています

●ドイツ(紛争参加国に武器を供与しないとの国是を破り)
・1000セットの対戦車兵器
・500セットの携帯型SAMスティンガー

●スウェーデン
・5000セットの対戦車兵器

Stinger SAM3.jpg●フィンランド
・1500セットのロケットランチャ
・2500丁の狙撃銃

●ノルウェー(武器禁輸を国是としてきたが、ウクライナ情勢を受け方針転換)
・2000セットのM72対戦車兵器

●オランダ
・200セットの携帯型SAMスティンガー

●イタリア
・携帯型SAMスティンガー、迫撃砲、機関銃2種類
・対戦車ミサイル(イスラエル製Spikeはイスラエルとの関係で困難)
・仕掛け爆弾対処装備
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Stinger SAM2.jpgイタリアは、ポーランドやルーマニアに持ち込み、そこからウクライナとの国境でウクライナ側に提供するルートのようです

ロシアが「航空優勢」を握っているが、「制空権」確保には至っておらず・・・と言われていますが、脆弱な飛行場インフラが大きな被害を受けているようですので、ウクライナ西部国境付近からウクライナの主要都市への輸送ルートが課題でしょうか

ウクライナに関する軍事的な視点
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-27
「ウクライナ紛争の最初の一撃は宇宙で!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-17
「ウクライナで戦闘機による制空の時代は終わる?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-08

小泉悠氏によるウクライナ情勢分析
2月2日→https://holylandtokyo.com/2022/02/07/2698/
12月中旬→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-22

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ウクライナ軍のレジスタンス戦は功を奏するか? [安全保障全般]

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戦況は予断を許しませんが・・・
プーチンのあまりの暴挙に欧米がSWIFT制裁に早々合意の中で 

Ukrainian forces5.jpg2月26日付Defense-Newsが、RAND研究所専門家の寄稿を取り上げ、圧倒的な軍事力差によって劣勢に立たされているウクライナ軍の態勢と動員状況を紹介しつつ、ウクライナ側が重きを置くであろうレジスタンス組織による不正規戦の可能性と難しさを考察しています

ロシア軍が米国など西側の予想をはるかに上回る大規模本格侵攻を開始し、2月27日時点で首都キエフ陥落間近と言われる状況で、予想以上にウクライナ軍が抵抗し、ロシア軍の侵略スピードが鈍っているとの報道もありますが、基礎となる軍事力で圧倒的にロシアに有利であり、その点で「不正規戦・レジスタンツ活動」はウクライナ軍の主要戦術となる可能性が高く、一般論に近い寄稿ですがご紹介いたします

2月26日付Defense-News記事によれば
Ukrainian forces6.jpg●ウクライナ軍は約21万名の正規軍を保有し、2014年以降は西側の訓練支援や軍事援助を受け、能力は上がっている。加えて2月22日にウクライナ大統領は予備役招集を開始ししている
●WW2時にウクライナ人はナチに抵抗し、2014年以降はロシア軍とウクライナ東部地域で志願兵力による抵抗を行っており、歴史的な経験を保有している

●ウクライナは2022年1月に法律で「国家レジスタンス戦略:national resistance strategy」を制定したが、まだ動き出したばかりである
●同戦略は、ウクライナをいくつかの地域に区分した地域防衛軍TDF(Territorial Defense Forces)と、レジスタンス活動を総括する特殊作戦軍(Special Operations Forces)で戦略を推進する体制を規定している

Ukrainian forces2.jpg●2015年以降、米国や西側諸国は、ウクライナ西部の「Yavoriv Combat Training Center」でウクライナ軍の訓練支援を行ってきた。ウクライナ正規軍や予備役兵、レジスタンスを担う特殊作戦軍もその対象であった
●ウクライナ大統領が2月22日に発令した90日間の予備役招集に、何名が応じるかは不透明であるが、世論調査は国民の1/3が応じると回答している状況にある

●ただ、実際のレジスタンス活動遂行は様々なリスクや課題を抱えている。例えば、レジスタンス活動の情報漏洩や内部かく乱を防止するための参加者の慎重な選定、一般国民からのレジスタンス活動への継続的な賛同と支援の確保、レジスタンス要員への継続的なしっかりとした教育訓練の提供などなどである
Ukrainian forces3.jpg●ロシア側はウクライナ側のレジスタンス抵抗を当然予想しており、レジスタンス活動組織への浸透と内部からのかく乱&妨害を図るであろう。またウクライナ国民間に内部通報を促進して国民の分断を図ったり、レジスタンス支援者の処分を行うなどレジスタンス封じを徹底的に動くであろう

●別の視点で、レジスタンス活動をウクライナとして組織化して統制することも容易ではない。実際、ウクライナ東部における2015年以降の活動においては、極端な政治姿勢を持った団体や極右ナショナリスト団体がレジスタンス活動を行い、米国から支援停止対象に指定されるなど足並みの乱れも見られる

Ukrainian forces4.jpg●戦争の今後の展開は予測困難だが、RAND研究所の歴史的なレジスタンス活動の評価は、圧倒的に戦力優位な敵に対しては限定的な効果しか生まないとの結論になっている。
●ウクライナは特に2014年以降、対ロシアの様々な経験と能力構築を行ってきた、しかし外部からの支援なしにレジスタンス活動を効果的に継続することは不可能である。政治的、経済的、そして兵器やISR情報や通信インフラな提供等による軍事的支援がウクライナには不可欠である
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まだ日本のメディアは、今回のプーチンの歴史的な暴挙を、米国やNATO側にも問題があるとの姿勢で報じ、世界の常識から外れた「左旋回」状態です。

Ukrainian forces.jpgしかし日本時間の27日には、ロシアへのエネルギー依存度等から欧州諸国の足並が揃わないのでは・・・と言われていた、SWIFT(国際銀行間通信協会)からのロシア排除であっさりと米英加と欧州が合意しました。

あまりにひどいロシアの姿勢に、ドイツに代表されるロシアより姿勢を示していた欧州諸国も、ロシアへの厳しい姿勢に舵を切ったことを肝の銘じるべきです

ウクライナに関する軍事的な視点
「ウクライナ紛争の最初の一撃は宇宙で!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-17
「ウクライナで戦闘機による制空の時代は終わる?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-08

小泉悠氏によるウクライナ情勢分析
2月2日→https://holylandtokyo.com/2022/02/07/2698/
12月中旬→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-22

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