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F-35への戦術核搭載へ第一歩:投下試験終了 [亡国のF-35]

設計承認後は作戦運用態勢承認のため配備基地の態勢整備へ
核搭載改修するF-35の配備先は不明
遠くない将来に配備先等も明らかになるとか

F-35 B61-127.jpg4日、米空軍戦闘コマンドACCが、F-35への戦術核爆弾(B61-12)搭載承認への第一歩として、2機のF-35がネバダ州の試験演習場で、模擬戦術核爆弾の投下試験に成功したと認めました

この模擬弾の投下試験は、戦術核搭載承認の第1段階である「nuclear design certification」の一環で、今後国防省とエネルギー省が試験データを分析して「nuclear designレベル」での承認に向けた審査を行うとのことです

その後の第2段階「nuclear operational certification」では、実際に核搭載型F-35が配備される部隊に対し、必要な訓練が実施され維持整備を含む部隊能力が備わっているかを確認する運びとなります

F-35 B61-126.jpgACC関係者は、今後の承認プロセスの時程や「operational certification」対象となる配備基地について言及を避けましたが、遠くない将来に明らかになろうと述べたようです

またACC関係者は、核搭載型F-35への主要な機体改修内容として、機内兵器庫に設けられる地上で操作が必要な「mission select switch」と、操縦席でパイロットが操作する「nuclear consent switch」があると説明していますが、核爆発で発生する電磁パルス(EMP)からの防御機構も付加する必要があると考えられます

ACC関係者は、現在F-15EとF-16(更に独空軍のトーネード)が戦術核を搭載可能だが、ステルス機であるF-35が自由落下型のB61-12戦術核を搭載可能となることで、攻撃目標により接近して正確な攻撃が可能になると意義を強調しています

F-35 B61-124.jpg一方で戦闘爆撃機に戦術核を搭載する必要性については様々な議論があり、特に対ロシアを巡る西側欧州諸国で議論のあることです。現在、米軍の戦術核兵器がドイツ、ベルギー、オランダ、イタリー、トルコに計200発程度保管され、必要時には各国戦闘爆撃機に搭載して使用できる態勢がとられていますが、対ロシア抑止の手段ではあるものの、各国政府は各国民の理解を今後も得ることは容易でないと考えています

費用面でも戦術核を維持することは大きな負担で、老朽化した旧式B61戦術核を全て「B61-12」に置き換えるには約1兆円必要だとも見積もられており、シンクタンクの中には、「B61-12」への置き換えは限定数にとどめ、戦闘爆撃機への戦術核搭載は止め、B-21次期爆撃機に搭載して使用しては・・・との提言も見られます

この場合、冷戦期から行われているドイツ、ベルギー、オランダ、イタリー、トルコと米国との「核シェアリング」が無くなることを意味し、政治的には大きなインパクトがあると考えられ、なかなか欧州関係国やNATO内で考え方を一本化することが難しいようです

F-35 B61-123.jpg大きくとらえれば、サイバー戦や宇宙戦までも含めた戦いの変化の中で、核抑止や核戦力をどう位置付けるかの議論にも発展する「リトマス試験紙」の意味合いもあり、末尾の過去記事でご覧いただけるようにチマチマとフォローしております。

ご興味のある方は、過去記事もぜひ覗いてみてください。本日はとりあえず、模擬戦術核投下試験に成功したACC関係者の言葉をご紹介しておきます

5日付米空軍協会web記事によれば試験関係者は
F-35 B61-122.jpg●ACC戦略抑止副部長(中佐)は、「潜在的敵対国は、作戦開始前により多くの可能性を想定したゲームプランを考える必要に迫られるだろう」と、F-35への戦術核爆弾(B61-12)搭載承認を得ることの意義を語った
●また「非ステルス機では実現不可能な、より戦闘地域深くへの侵攻攻撃が可能になる」、「重力投下型のB61-12戦術核は、より目標に接近できれば、より正確に目標を攻撃できる」と、模擬弾での試験成功の意義を強調した

●別のACC幹部(中佐)は、「第5世代機が全く新しい戦略的レベルの能力獲得に近づき、米国の核抑止を強化することになる」と述べる一方で、「全てのF-35が戦術核型になるわけではない」と述べた
●更に同中佐は、「それほど遠くない将来、design certificationに加え、配備基地においてoperational certificationを獲得し、地域戦闘コマンド司令官に供することになろう」と説明した
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F-35 B61-125.jpgドイツ空軍は、戦術核運搬機としてトーネード戦闘爆撃機を保有していますが、老朽化に伴う後継機選定を迫られており、戦術核搭載承認を得るのが容易でない欧州製のタイフーンやFA-18にするか、承認を得た高価なF-35を選ぶのか、又は上記3機種混合調達かの選択を迫られています。

戦術核絡みで「F-35を押し売り」されたくないとの思惑がドイツや欧州諸国にはあり、ドイツや欧州国民感情もあり、メルケル政権後のドイツ連合政権の動向もあり・・・、本日ご紹介した米空軍中佐レベルの言葉だけではとても語りきれないF-35戦術核搭載試験のお話でした

戦術核兵器とF-35等
「米空軍に追加の戦術核は不要」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-04
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

ドイツと戦闘機選定関連記事
「独3機種混合案検討を認める」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-23-1
「独トーネード後継を3機種混合で?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-29
「トーネード後継でFA-18優位?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28

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