ドイツがトーネード後継を3機種混合で? [安全保障全般]
独経済紙の報道らしいですが
Eurofighters、Super Hornets、EA-18G Growlers混合
3月26日付Defense-Newsは、独ビジネス紙「Handelsblatt」報道を取り上げ、約10年後に退役する80機の独空軍トーネード戦闘爆撃機の後継として、独軍がEurofighter90機、Super Hornet30機(戦術核搭載)、EA-18G Growler15機を混合で購入する方向だと報じ、英国専門家の批判的なコメントと共に紹介しています
数年前からドイツで議論されているこの問題を複雑にしているのは、独空軍トーネードがNATOの任務として、米軍保有の戦術核爆弾B61を運搬して投下する役割を担っていることから、その後継機にも特別な機体仕様や米国防省の審査を通過する必要がある戦術核爆弾B61搭載能力が求められる点です
これまで後継候補になったF-35、F/A-18 Super Hornet、Eurofighter Typhoonは、いずれもこの搭載能力がなく、現在準備が進められているF-35の「Block 4」バージョンで能力付加が計画されている程度です。
独空軍の問い合わせに対し米側は、Eurofighter Typhoonが本能力を認められるには3-5年が必要だと回答し、F/A-18E/F Super Hornet(旧FA-18は搭載能力有り)に関してはボーイング社幹部が、米国防省の協力が得られ独の求める期限までの能力付与が可能と語っている様ですが、具体的な必要期間等に関しては不明です
残るF-35ですが、2017年当時の独空軍トップKarl Muellner中将が強いF-35推進派でしたが、欧州製トーネード後継であることや、独仏が共同開発を始めた第6世代戦闘機(FCA)開発までの間、独英伊共同開発のEurofighter Typhoonの生産ラインを残したい政治的意向等が働き、更迭されると言う「黒歴史」を刻んでいます
2019年秋には、F-35への嫌悪感と、戦術核爆弾B61搭載能力獲得への道のりに配慮し、消去法的な流れの中でF/A-18 Super Hornetに決定された・・・との報道も流れましたが、ここに来てトーネードの電子戦機としての役割の後継も考慮し「3種混合」案が飛び出してきたようです。
最終決定の期限がどれくらい迫っているのか不明ですが、本日はこの「3種混合」案が最悪の案だと批評する英シンクタンクRoyal United Services InstituteのJustin Bronk研究員の視点をご紹介しておきます・・・
3月26日付Defense-News記事によれば
●英シンクタンクのJustin Bronk研究員は、「3種混合」案が、検討されてきた種々の案の中で最悪の案(the worst of all previously mooted outcomes)だとコメントしている
●同研究員は3種混合案の背景として、「EurofighterはFA-18より、パワー、搭載能力、敏捷性など多くの点で優れており、トーネードの後継として総合能力は高いが、戦術核搭載改修や審査の過程で、米側に同機の細部技術情報を提供しなければならないことから、軍需技術面でも政治的にも必要時間の点からも受け入れがたい」と述べ、Super Hornetに戦術核搭載オプションが選択されたのだろうと分析した
●しかし同研究員は「EurofighterもSuper Hornetも、対ロシアで戦術核運搬任務を求められていることを考えれば、ロシア軍の強固な防空網を突破するには脆弱である」と指摘し、本質的な点で選択が間違っていると批判した
●そして「独空軍が(戦略環境を踏まえて)信頼に足るDCA機(通常兵器と戦術核の両方搭載可能な機体)を求めるなら、F-35しか選択肢は無い。F-35は多くのDCA欧州NATO諸国が導入を決めており、訓練や維持整備の上でも負担軽減になるはずだ」と主張した
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欧州における戦術核共同運用は「Nuclear sharing」と呼ばれ、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコが、各国推定20~80発の戦術核爆弾B61を米軍から提供を受け保管し、有事にはNATO加盟国として各国航空アセットに搭載して運用する任務を帯びています
上記5カ国の中では、ベルギー、イタリア、オランダの3カ国がF-35導入を決定しており、トルコが排除された今となっては、ドイツが最後の非F-35国です。
欧州における戦術核の必要性議論も尽きないところですが、次世代の制空機を巡る開発競争や、軍需産業政策を絡めた政治的駆け引き、トランプ政権による欧州への兵器売り込み攻勢もあり、様々な意味でリトマス試験的な機種選定です
戦術核兵器とF-35等
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06
ドイツと戦闘機関連記事
「トーネード後継でFA-18優位?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28
「独戦闘機選定に米圧力?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2
「独レーダーがF-35追尾」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-01
「米独2000名に安保アンケート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-10
Eurofighters、Super Hornets、EA-18G Growlers混合
3月26日付Defense-Newsは、独ビジネス紙「Handelsblatt」報道を取り上げ、約10年後に退役する80機の独空軍トーネード戦闘爆撃機の後継として、独軍がEurofighter90機、Super Hornet30機(戦術核搭載)、EA-18G Growler15機を混合で購入する方向だと報じ、英国専門家の批判的なコメントと共に紹介しています
数年前からドイツで議論されているこの問題を複雑にしているのは、独空軍トーネードがNATOの任務として、米軍保有の戦術核爆弾B61を運搬して投下する役割を担っていることから、その後継機にも特別な機体仕様や米国防省の審査を通過する必要がある戦術核爆弾B61搭載能力が求められる点です
これまで後継候補になったF-35、F/A-18 Super Hornet、Eurofighter Typhoonは、いずれもこの搭載能力がなく、現在準備が進められているF-35の「Block 4」バージョンで能力付加が計画されている程度です。
独空軍の問い合わせに対し米側は、Eurofighter Typhoonが本能力を認められるには3-5年が必要だと回答し、F/A-18E/F Super Hornet(旧FA-18は搭載能力有り)に関してはボーイング社幹部が、米国防省の協力が得られ独の求める期限までの能力付与が可能と語っている様ですが、具体的な必要期間等に関しては不明です
残るF-35ですが、2017年当時の独空軍トップKarl Muellner中将が強いF-35推進派でしたが、欧州製トーネード後継であることや、独仏が共同開発を始めた第6世代戦闘機(FCA)開発までの間、独英伊共同開発のEurofighter Typhoonの生産ラインを残したい政治的意向等が働き、更迭されると言う「黒歴史」を刻んでいます
2019年秋には、F-35への嫌悪感と、戦術核爆弾B61搭載能力獲得への道のりに配慮し、消去法的な流れの中でF/A-18 Super Hornetに決定された・・・との報道も流れましたが、ここに来てトーネードの電子戦機としての役割の後継も考慮し「3種混合」案が飛び出してきたようです。
最終決定の期限がどれくらい迫っているのか不明ですが、本日はこの「3種混合」案が最悪の案だと批評する英シンクタンクRoyal United Services InstituteのJustin Bronk研究員の視点をご紹介しておきます・・・
3月26日付Defense-News記事によれば
●英シンクタンクのJustin Bronk研究員は、「3種混合」案が、検討されてきた種々の案の中で最悪の案(the worst of all previously mooted outcomes)だとコメントしている
●同研究員は3種混合案の背景として、「EurofighterはFA-18より、パワー、搭載能力、敏捷性など多くの点で優れており、トーネードの後継として総合能力は高いが、戦術核搭載改修や審査の過程で、米側に同機の細部技術情報を提供しなければならないことから、軍需技術面でも政治的にも必要時間の点からも受け入れがたい」と述べ、Super Hornetに戦術核搭載オプションが選択されたのだろうと分析した
●しかし同研究員は「EurofighterもSuper Hornetも、対ロシアで戦術核運搬任務を求められていることを考えれば、ロシア軍の強固な防空網を突破するには脆弱である」と指摘し、本質的な点で選択が間違っていると批判した
●そして「独空軍が(戦略環境を踏まえて)信頼に足るDCA機(通常兵器と戦術核の両方搭載可能な機体)を求めるなら、F-35しか選択肢は無い。F-35は多くのDCA欧州NATO諸国が導入を決めており、訓練や維持整備の上でも負担軽減になるはずだ」と主張した
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欧州における戦術核共同運用は「Nuclear sharing」と呼ばれ、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコが、各国推定20~80発の戦術核爆弾B61を米軍から提供を受け保管し、有事にはNATO加盟国として各国航空アセットに搭載して運用する任務を帯びています
上記5カ国の中では、ベルギー、イタリア、オランダの3カ国がF-35導入を決定しており、トルコが排除された今となっては、ドイツが最後の非F-35国です。
欧州における戦術核の必要性議論も尽きないところですが、次世代の制空機を巡る開発競争や、軍需産業政策を絡めた政治的駆け引き、トランプ政権による欧州への兵器売り込み攻勢もあり、様々な意味でリトマス試験的な機種選定です
戦術核兵器とF-35等
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06
ドイツと戦闘機関連記事
「トーネード後継でFA-18優位?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28
「独戦闘機選定に米圧力?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2
「独レーダーがF-35追尾」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-01
「米独2000名に安保アンケート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-10
2020-04-08 05:00
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