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米空軍がE-3後継機にE-7調達に傾く!? [米空軍]

最近数か月で急速に機運が高まっているようです
開催中のRed Flag演習で豪空軍E-7をじっくり吟味するとか

E-7 2.jpg1月27日付米空軍協会web記事が、最近数が月で米空軍内でE-3後継機としてE-7を早期に取得するべきとの機運が高まっていると報じ、1月27日から開始されている「Red Flag演習」で豪空軍E-7をじっくり吟味する等の米空軍幹部の発言を紹介していま

米空軍はE-3を約35機保有していますが、その平均年齢が43歳と老朽化が進んでおり、ペンタゴン勤務経験の無い太平洋空軍司令官は2021年2月に「すぐE-7が欲しい。空軍司令部に要望する」と発言し、Brown空軍参謀総長が「検討中であり。具体的に機種を議論する段階にはない」と即座に声明を出して火消しにかかるなど、投資優先順位が絡んだワシントンDCの世界で、立場が微妙な装備です

E-3.jpg一方、剛腕で知られるKendall空軍長官は昨年12月に「米空軍7つの優先事業」を語り、「E-7などは、宇宙アセットが利用可能になるまでのギャップを埋めるが、空中アセットはE-3やJ-8をはじめ敵攻撃に脆弱で、長期的には使用が難しくなる。敵は我のこれらアセットへの攻撃能力を重視している」と表現し、E-3後継機を当面の「ギャップを埋める」役割と位置付けています

米空軍内に最近数か月で何が起こったのか記事は語っていませんが、米空軍幹部の発言等をご紹介しておきます

1月27日付米空軍協会web記事
E-7.jpg●1月24日から2月11日までネバダ州で開催中の「Red Flag演習」に豪空軍E-7が参加していることに触れ、「Air Warfare Center」司令官Case A. Cunningham少将はオンラインイベントで26日、「我々がインド太平洋地域で対峙している脅威を考える時、同盟国の高い能力を持つアセット(E-7)と共に訓練できることは非常に素晴らしい」と述べ
●「本演習ではF-35やF-22も参加し、強固に防御された戦域での作戦を想定しているが、その環境下でE-7の能力を確認できることは、米空軍アセットへのE-7導入を検討するにあたり、貴重な機会となる」とも表現し、「E-7の米空軍への導入」との言葉を使った

Wilsbach3.jpg●昨年2月には太平洋空軍司令官が「E-7がすぐにでも欲しい」と述べ、その際空軍司令部は慎重姿勢だったが、昨年9月にBrown空軍参謀総長は「E-7は良い機体で、私は何回も搭乗している。一から開発するより迅速で確実だ」と語っています
●また米空軍は昨年10月、E-7製造元のボーイングに対し、現在の形態のE-7を米空軍の規格に適合させるために何をどのくらいの経費で実施する必要があるかの検討を依頼している

Kelly.jpg●空軍戦闘コマンドのMark D. Kelly司令官は同時期に、E-3後継機の導入は「2年前に完了しておくべきだった」と発言し、物議を醸していた
●なおE-7は、欧州のほか、英国、韓国、トルコが導入することになっている
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完全な邪推ですが、空軍長官や空軍参謀総長は長期的な投資優先順位を考えE-7導入に慎重だったが、前線を預かる戦闘機乗り司令官からの目先を見据えた強い要望を受け、「この部分では妥協した」のではないでしょうか・・・

あともう一つ、米空軍がE-7導入に進むことにより、航空自衛隊が保有するE-767の「部品枯渇」や「整備支援停止」につながるのではないかと懸念しています

E-3 AWACSは平均年齢43歳です
「米空軍航空機は依然高齢です」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-27
「空軍長官が7つの優先事項を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-12
「PACAF司令官:E-7ほしい発言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-27

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南シナ海の米空母でF-35着陸失敗等事故5件相次ぐ [Joint・統合参謀本部]

女性艦長の空母リンカーンと連携訓練中にF-35事故
昨年11月末から5件連続、全て調査中
同空母はF-35C型初搭載空母で注目されているが

Carl Vinson.jpg1月25日付Military.com記事は、南シナ海で活動中の空母カールビンソンで1月24日、F-35C型が着陸に失敗し、パイロットは脱出して海上で救出されたものの、乗員7名が負傷、うち3名がマニラの病院に緊急搬送され1名は危険な状態にあると報じています

F-35C Carl.jpg同事故は、同じく南シナ海周辺に展開中の空母リンカーンと空母カールビンソンの連携共同訓練中に発生した模様ですが、空母カールビンソンは昨年9月から太平洋地域に派遣されており、空母リンカーンは初の女性艦長の元、1月3日にサンディエゴを出港したばかりでした

気になるのは、空母カールビンソンで昨年11月末から、小さくない事故が24日の事故も含めて5件連続している点です

同記事は米海軍安全センター(Naval Safety Center)のデータから他の4件を紹介し、
●11月22日、FA-18飛行中エンジン火災(無事着陸)
●11月24日、対潜哨戒へりMH-60R Seahawkが訓練中にソナー喪失
●11月29日、FA-18飛行中エンジン1基トラブル(無事着陸)
●12月31日、オスプレイが甲板上でエンジン火災

Carl Vinson3.jpg以上4件では、いずれも負傷者はなかったものの、異常な連続発生に米海軍も危機感を持って調査を続けているようですが、米海軍報道官は、「5件の事案はいずれも調査中であり、調査完了まではコメントを控えたい」、「いずれも細部を確認中であり、飛行中に発生した事案を含め、調査中である」とのみコメントしています

Carl Vinson2.jpg中東での作戦で酷使され、様々に機体疲労や部品故障が発生しているFA-18事案が2件含まれていますが、それ以外は異なる機種での事故であり、機材面での関連性があるとは考えにくいですが、「事故の連鎖」は、指揮統率、人事管理、整備管理、乗員の士気などなど、様々な要因が想定される「危険な兆候」です

空母カールビンソンは、米海軍として初めて空母艦載型F-35のC型を運用開始した「the air wing of the future」を体現した空母であり、事故の連鎖が止まることを願うばかりです

米空母関連の話題
「女性艦長で空母初出撃!」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-05
「6年遅れで空母フォード完成へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-26
「米空母と潜水艦修理の75%が遅延」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-22
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇推進案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10

その他の米海軍の話題
「3大近代化事業を一つに絞れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-09
「無人システム構想が酷評される」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-22

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熱核推進システムを応援する研究レポート [サイバーと宇宙]

核エネルギー推進技術とか、核熱推進(NTP)とか、DRACO計画との言葉を覚えておきましょう

Stone.JPG1月13日、米空軍協会ミッチェル研究所で「Maneuver Warfare in Space: The Strategic Mandate for Nuclear Propulsion」とのレポート発表が行われ、衛星に対する多様なニーズや衛星の防御力向上のため、米国防省研究機関が様々なアプローチで進めている核エネルギーによる衛星推進装置の開発促進などなどを訴えました

同レポートは「institute’s Spacepower Advantage Center of Excellence」のChristopher Stone氏によるもので、中露による宇宙兵器開発に対抗するには衛星に核エネルギー推進装置を搭載して機動性を強化することが不可欠だと訴えています

DRACO.jpg従来の衛星推進装置は太陽光発電やバッテリーをエネルギー源とした装置で、宇宙ゴミとの衝突を避けるための一時的な軌道修正用の限定的能力しかなく、また技術進歩により衛星の小型化が加速し、「cubesats」との手のひらサイズ衛星の大量打ち上げ方向にある中、従来サイズの衛星推進装置が搭載困難になって核エネルギー推進のニーズが高まっているとも主張しています

米国防省では、DARPAがDRACO(Demonstration Rocket for Agile Cislunar Operations)計画の一環として、「NTP:核熱推進」システムの設計契約を、3企業(General Atomics, Blue Origin and Lockheed Martin)と2021年4月に結んでいます

DRACO2.jpgまた同年9月には、最新民間技術を国防省に取り込むために設けたDIU(Defense Innovation Unit)が、軽量で長期間使用可能な核エネルギー推進技術(nuclear-powered propulsion technology)を持つ企業の募集募集を開始したと報道されました

核エネルギー利用は小型で大きな出力を長期間得ることができる等のメリットがある反面、依然として安全性への懸念が高いハードルになっているようですが、技術進歩によりリスクよりメリットがはるかに大きく、中露に対抗するには不可欠な技術だとChristopher Stone氏は訴えたようです

13日付米空軍協会web記事によれば
n-powered propu.jpg●Stone氏は、最新の核エネルギーエンジンは少なくとも現在の化学推進エンジンと同等に安全で、より早く移動でき燃費もよいと訴え、「この推進装置を実用化しないことによる国家安全保障への影響は、核の安全性や環境への影響懸念よりはるかに大きい」と述べた
●そして、例えば核熱推進システムは。従来の化学反応推進装置のように排気を伴わず、水素ガスを加熱して推進に用いるのみだと主張した

n-powered propu3.jpg●また核エネルギー推進は、従来の衛星が地球周回軌道上での微修正だったのに対し、その外側の「cislunar space」への出入りを可能にし、その機動性で衛星が防御行動をとることができると利点を主張した
●例えば、地上発射対衛星ミサイルや宇宙配備のレーザー兵器からの回避能力が今後の衛星には必要だが、現在の衛星は防御をほとんど考慮していないと語った

●そしてStone氏は、「中国は既に、地上&宇宙配備の宇宙兵器と組み合わせた、宇宙での機動作戦戦略に切り替え、2040年までに熱核推進衛星を含むアーキテクチャーを構成しようとしている」とも語った

●Stone氏はレポートの中で米国が成すべきこととして、
NTP3.jpg迅速に宇宙での機動的作戦が可能な宇宙戦力構成を導入せよ
NASAやエネルギー省と協力し、核熱推進の開発導入を推進せよ
DARPAのDRACO計画(前述)の実現を加速せよ。DRACOは低濃縮ウラン利用で手続きハードルが低い

中露の宇宙アセットにリスクを与える宇宙や地上配備の対衛星兵器を開発配備せよ。現有のstandard missileやMD用ミサイルの応用を考えよ
衛星延命装置(Mission Extension Vehicle)の開発に注力し、GPSや重要衛星網に限定的でも防御的移動能力を提供して抑止力を強化せよ
米宇宙軍は、米宇宙アセットが直面している脅威や堅強な宇宙戦力を構築する必要性を、国民や議会に教育すべきだ
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実際の技術成熟の程度や、国防省機関が取り組み各種プロジェクトの煮詰まり具合をよく理解していませんが、核エネルギー推進技術(nuclear-powered propulsion technology)とか、核熱推進(NTP:nuclear thermal propulsion)とか、DRACO(Demonstration Rocket for Agile Cislunar Operations)計画との言葉だけでも覚えておきましょう

衛星に機動性を求める米国防省の取り組み
「小型衛星核推進装置を求め企業募集」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-12
「核熱推進システム設計を3企業と」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-14

衛星の延命や機動性付与技術
「衛星延命に企業と連携」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-17
「画期的:衛星が推進力衛星とドッキングで延命へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-27

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技術開発担当女性国防次官が優先事項を語る [米国防省高官]

祖父が台湾空軍副司令官だった女性です
陸軍省での技術&兵站担当次官補を経て
米空軍科学諮問委員会の委員長経験も
空軍との極超音速兵器等を巡る対立も匂わせ 

Shyu.jpg1月19日、昨年7月就任のHeidi Shyu技術開発担当国防次官が講演で技術開発優先事項について語り、オースチン国防長官から「強固に防御されたエリア:contested regions」での作戦遂行能力強化を求められており、人工知能AIや自律的システム、それを支える指揮統制ネットワーク、極超音速兵器やレーザー、量子技術や5Gに続く6G・7G新規格等の対象分野を上げています

一方で、国防省開発体制の問題点を示唆するように、スターアップ等の最新技術を取り込む仕組みが乱立して投資効果確認が難しくなっている点や、国防省内研究機関の施設老朽化問題に対する取り組みの必要性にも触れつつ、また新空軍長官が率いる米空軍との関係が技術開発分野で微妙な雰囲気になることを示唆するような発言もあり、優先事項より気になる内容となっています

Shyu5.JPGHeidi Shyu次官は1953年台湾生まれで、祖父が台湾空軍副司令官との家系で、米国で工学系の大学や大学院を卒業後、軍需産業であるヒューズ、グラマン等を経てレイセオン社で技術者として長く勤務した後、2000年から2010年の間に米空軍科学諮問委員を務め、その間副委員長や委員長を5年間も経験しています

国防省での勤務は、2011年から16年の間に陸軍省の兵站&技術開発担当次官補として経験しており、技術開発担当の国防次官としては、国防省の技術開発事業全般を取り仕切り、DARPA、MDA、SDA宇宙開発庁、DIU(Defense Innovation Unit)等の開発機関を監督することになります

20日付米空軍協会web記事によれば同次官は講演で
Shyu3.jpg●(19日のPotomac Officer’s Clubでの講演で、)オースチン国防長官が「contested regionsやhighly defended areas」で戦う手段追求を重視していることを受け、技術開発で重視する事項をまとめる最終段階にある
●AI、自立化システム、ネットワーク強化や極超音速兵器やmicroelectronics分野が含まれるが、既に市場にある技術・製品を最大限に活用し、効率的に迅速に必要なものを前線に届ける姿勢で臨みたい

●米議会からは半導体製品の7割をアジアからの輸入に依存している点を問題として強く指摘されており、商務省や半導体企業と連携して半導体産業の国内回帰に取り組みたい
●また、複雑化する国防システムを前線兵士が効率的に使いこなせるよう、短時間で兵器やシステムに習熟可能な装備品開発や、システムと兵士のインターフェイス改善にも注力したい

個別開発分野について同次官は
hypersonic subm7.jpg極超音速兵器開発は開発推進と停滞を繰り返して進んできたが、国防長官も高い関心を持っており、今後はアクセル全開で取り組む。陸軍と海軍は今年フルスケールの飛行試験に臨む好ましい状況にある(同兵器の費用対効果から、19日に慎重姿勢を空軍長官表明した米空軍の空中発射型開発には言及せず、会場が微妙な雰囲気に)
レーザー開発でも、30年の長きにわたる取り組みを経て、陸軍と海軍では攻撃的活用にも本格的に踏み込みつつある(ここでも米空軍について語らず、微妙な雰囲気に)

量子技術活用については、量子コンピュータ分野に研究者2000名動員の中国に対し、米国は100社が参入して取り組んでおり、目を離さず取り組む。量子通信や量子センサーにも関心を持っている
Quantum Tech3.jpg通信技術分野では、世界の動きに追随するような形ではなく、5Gに続く次世代の6G・7Gを国防省が率先して切り開いていくような形に関心を持っている。5G通信による軍レーダーや高度計への干渉が問題にならないよう、確実な対応を行う。

●Hicks国防副長官から指示を受け、国防省や各軍種の研究開発インフラの課題や問題点を取りまとめており、1月末にはご説明したい。課題解決には約6000億円の投資が必要と見積もっているが、民間企業、産業界、大学や学界との関係強化を生かしつつ、研究開発インフラのギャップ改善に取り組みたい
Shyu4.jpg●小規模企業やスタートアップ企業から最新技術を取り入れて技術開発を促進する取り組みは、20以上にのぼる国防省内の担当組織(AFWERX, SOFWERX, and the Army’s Rapid Capabilities and Critical Technologies Office.)の存在もあり、投資効果の確認が難しくなりつつある。多様な組織の任務や役割を再確認&整理し、対象企業との連携連絡手段を整備し、更に契約メカニズムもはっきりさせてアイディアが形になるよう、強力に管理していく

●各軍種毎の能力不足分析ではなく、統合レベルでの地域戦闘コマンドの能力不足分野を特定するため、200もの課題から約30の重要テーマに絞り込み、これを各地域に関連する4つのシナリオに落とし込んで分析を進める。「Rapid Defense Experimentation Reserve」との検討枠組みで、2023年度から段階的に取り組みたい
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ABMS4.jpg冒頭で申し上げたように、優先事項そのものよりも、米空軍との不協和音や、優先事項から伺える現状の問題点が興味深いところです。

また、これら分野を統括する国防次官に、100%中国・台湾系の血が流れる女性が就任していることにも注目したいと思います。現場視察の様子を紹介するお写真をご紹介していますが、現場に飛び込んでいくタイプの方のようです

情報共有と漏洩防止のはざまで
「外国製ドローン購入規制」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-14
「軍需産業との情報共有に乗り出す」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-05-1
「半導体での米国巻き返しを討論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-25
「中国製部品排除に時間的猶予を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15

「上院による偽部品レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-23-1
「米国製兵器は偽物だらけ!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-29
「中国製にせ部品との戦い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-10

危機に乗じた中国資本の米軍需産業への浸潤を警戒
「再びLord次官が警戒感」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-02
「米国防次官:中国資本の浸透警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-26

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極超音速兵器の重要性は中国と米国では異なる [米空軍]

Kendall空軍長官:米国にとっては必ずしも最適では・・
中国と同じ視点では「mirror-imaging」の過ちを

Kendall 7.jpg1月19日、剛腕Kendall空軍長官がCNASのイベントで講演し、極超音速兵器は重要だが中国にとっての重要性と米国にとっての重要性は異なると表現し、何が費用対効果で優れているかを熟考して兵器体系を考える必要ありと強調し、これまで米国防省の一貫した方針だった3軍が共同して「何が何でも極超音速兵器実現」モードからの変更を匂わせる発言をしています

同長官は2021年12月9日のDefense Oneのイベントで講演した際にも、無人ウイングマン機の開発コンセプト見直しを示唆したり、B-21爆撃機の無人随伴機新規開発を「that’s a major change」と表現したり、「移動目標の発見・識別・追尾」に宇宙センサーの導入を明らかにしたりと、「剛腕」が発揮されそうな予感を感じさせていたところですが、その第2段かもしれません

ACE8.jpg19日は極超音速兵器以外に、空軍の運用構想ACEはぜひと実現する必要があり、基地強化のほか、中国を騙して目標攻撃を困難にする手段の追求など多様な施策実施の重要性を訴え、また次世代指揮統制ABMSは一朝一夕には実現せず、段階的にできるところから推進する必要があるとも説明しています

本日は最も注目される「極超音速兵器」に関する19日の発言をご紹介します

19日付米空軍協会web記事によれば同長官は
hypersonic6.jpg●中国が極超音速兵器で攻撃したいと思う、つまり中国が脅威に感じている米軍施設には、空軍基地や海軍拠点などがあるだろう。しかし米軍にとっても極超音速兵器で攻撃したいような目標が中国にあるかと言えばそう単純ではない。「mirror-imaging」で中国と同様に極超音速兵器が米軍にとって重要かは熟考の必要がある
●トランプ政権時代には全力で極超音速兵器開発に邁進したが、同兵器は極めて高価であり、必ずしも費用対効果が最適とは限らない。そのトレードオフを慎重に吟味し、弾薬庫にどのような兵器をどれだけ備えるかを考えなくてはならない

hypersonic subm7.jpg米国の目標は敵の侵攻を抑止することであり、それは例えばウクライナでも台湾でもそうだ。しかし中国のような国にとっては、その目標は米国を近づけないことであったり、米国に介入させないことであり、作戦運用目的が米国とは相当異なる点にも留意すべきだ
●どのような兵器体系を将来構成するかは未決の検討課題で、極超音速兵器がその一角を占めることは間違いないが、何のためにどの程度保有するかはよく考える必要がある

●(ただし同長官は、米軍にとって、どのような攻撃目標がより速度の遅い巡航ミサイルに適した攻撃対象で、何が極超音速兵器に適した攻撃対象か等については一切言及しなかったが、) 引き続き同兵器の開発と配備に取り組むべきと考えている
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Skyborg3.jpgそのほか同長官は無人ウイングマンについて、多くの検討がなされてきたが価格が適当でなければ推進できないと表現し、また全ての優先計画を遂行するには、必要性が低下した装備の早期退役が不可欠で、2022年度予算ではいくつかの提案が米議会の賛同を得られたと語っています

なかなか踏み込んで具体的な計画の内容まで明らかにしない同長官ですが、米空軍内も含めた多様な方面に牽制球を投げ込みながら、中国にもにらみを利かせながら、予算獲得策も練りながら・・・進んでいるのでしょう。多分

しかし、米国と中国の作戦目的は異なる・・・仰せの通りかもしれません。原点に立ち返り、「mirror-imaging」の過ちを犯さないようしなければ・・・

2021年12月9日の同長官講演
「7つの優先事項を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-12

Kendall空軍長官の関連記事
「B-21を5機製造中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-22
「中国が核兵器FOBS開発の可能性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-21
「長官着任時の思い」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-18
「上院で所信を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-26-1
「Kendall氏をご紹介」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-28

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UAEでTHAADが世界初の実戦迎撃成功も・・・ [安全保障全般]

イラン支援のイエメン反政府勢力からのミサイル迎撃
UAEへの初のミサイル&無人機攻撃で緊張高まる
UAEは米国に更なる支援要請中

UAE Houthi.jpg1月21日付Defense-Newsは、匿名の情報筋2名からの情報として、1月10日月曜日にUAEの石油関連施設がイエメンの反政府勢力「Houthi」から弾道&巡航ミサイル&無人機攻撃を受け、UAEで市民3名が死亡し、6名負傷者が出た模様ですが、飛来した弾道ミサイルのいくつかをTHAADにより迎撃したと報じました。この報道が正しければ、THHADが実戦で使用されたのも、実戦で迎撃に成功したのも世界初となります

THAADは中距離弾道ミサイル等を大気圏再突入後の終末段階で高高度で迎撃するもので、パトリオットPAC-3が同じ終末段階要撃を低高度で行うことによる地上への被害を避け、PAC-3より広範囲の防御を担えることが特徴のミサイル防衛システムです。低高度を飛来するミサイルや航空機対処を担うパトリオットPAC-3と組み合わせて、ミサイル防衛能力強化が図られます

THAAD3.jpgUAEはTHAADを米国以外では初めて2011年に契約し、2個部隊の運用訓練を2015年と2016年に米国で終えTHHADを保有運用している模様で、パトリオットPAC-3との連携演習も過去行われているようです

THAADの初実戦について米中央軍報道官はなにも言及せず、UAE展開の米軍部隊が16日日曜の夜から脅威飛来警報を受け24時間の高度警戒態勢に入っていたが、米軍の運用には影響はなかったとコメントを出した程度のようです

UAE Houthi 3.jpg一方で、在米UAE大使はユダヤ系研究機関のイベントで、「複数の弾道&巡航ミサイル&無人機攻撃を受け、幾つかは迎撃したが、UAE国民に犠牲が出た」と訴えたようですが、在米UAE大使館としてのコメントは出ておらず、THAAD使用についても言及していません

「Houthi」はイランの支援を受け、イエメン政府を排除して2014年から首都Sannaを支配し、サウジが中心の多国籍勢力と過去8年間の内戦状態に入っており、サウジはこれまでにもミサイル攻撃を受け市民に死傷者が出ていましたが、部隊派遣は止め兵器支援のみ行っているUAEが「Houthi」からの攻撃を確認したのは初めてで、中東情勢は風雲急を告げています。THAADの世界初実戦投入のニュースも吹き飛びそうな勢いです

UAE Houthi 5.jpgバイデン大統領は19日、UAEへの攻撃事案を受け、米国として「Houthi」を再び国際テロ組織リストに含めて制裁等を課すと発表し、在米UAE大使はこれを歓迎すると述べています

また、19日にUAE皇太子とオースチン国防長官が緊急電話会談を行い、UAEから各種支援要請を米国に行った模様で、米国防長官は「UAEへの全ての脅威に対し、変わらぬ支援を行うことを確認した」と声明を出しています

UAE Houthi 4.jpg更に在米UAE大使は、19日に米下院軍事委員長と面談し、同委員長は「UAEからの要請を聞き、彼らの問題を把握した」と面談後に語っています

UAEと米国間の武器輸出問題は、UAEと中国の接近を懸念する声等で停滞していますが、仮に今回の要請にPAC-3ミサイルの緊急提供が含まれていても、同ミサイルの生産数やサウジからの要請もあることから、直ちに対応することは難しいと言われているようです
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THAAD4.jpgウクライナ情勢が緊迫度を増す中、イランの支援を受けた「Houthi」が新たな戦線を開きました。遠い中東のことですが、中国が南シナ海や極東で何か動き始めないか気になるところです

オミクロン株が猛威を振るっていますが、世界情勢も混迷の度を深めています

UAEと米国の関係
「UAEが米国との武器交渉停止」→https://holylandtokyo.com/2022/01/04/2533/
「UAEへの武器輸出を国務省次官補が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-17
「UAE空軍司令官視察:イスラエル最大の多国間空軍演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-04
「米国防省の武器輸出担当DSCA長官が怒りの辞任」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-15

「米中央軍で対イランの動き2つ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-09
「イスラエルが欧州軍から中央軍管轄に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-16
「政権交代前にUAEへのF-35契約署名へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-11
「イスラエルがUAEへのF-35に事実上合意」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-26

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タグ:UAE THAAD Houthi USA
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米陸軍が50KW防空レーザー装備の装甲車3台導入へ [Joint・統合参謀本部]

1個小隊用Stryker戦闘車両3両を手始めに
現在もプロトタイプで各種試験&微修正継続中
小型の無人機を撃退可能な出力レベルですが

Stryker 50KW.jpg1月12日、CSIS主催のイベントで米陸軍のNeil Thurgood中将が、プロトタイプ試作や試験を続けている50KWレベルの陸軍車両レーザー自己防御兵器SHORAD(Short Range Air Defense)システムに関し、9月末までにStryker戦闘車両に搭載し、オクラホマ州の陸軍部隊に小隊規模3両を配備すると明らかにしました

Kord Technologiesとレイセオン社がチームとなって取り組むこの防御SHORADシステムは、小型無人機やロケット弾や迫撃砲から戦闘車両を防御することを狙うもので、2019年に主契約企業をKord社に、2021年にレイセオンをサブ契約企業に決定し、米陸軍初のレーザー兵器として開発を進めているものです

米国防省「Directed Energy Roadmap」での目標設定は
●2022年までに、150-300KW級の兵器化
 100Kwでドローン、小型ボート、ロケット、迫撃砲に対処可能
 300kwで巡航ミサイルに対処可能
●2024年までに、500KW級の兵器化
●2030年までに、1GW級の兵器化 

Stryker 50KW2.jpg・・・となっており、50KWは本当の初期段階でその威力も僅かですが、SHORADのサブ契約企業を決める際、レイセオンのライバルだったNorthrop Grummanが試作段階でシステム心臓部の火災事故を2回起こして開発を断念&事業から撤退し、この事業の難しさを改めて知らしめることになりました

しかし、既に米陸軍は50KW級を超える出力レベルの開発にも着手しており、100KW級は2019年の選定でレイセオン社を破った「Dynetics and Lockheed Martin team」チームに託し、300KW級もDynetics社をが担当企業に決定してHeavy Expanded Mobility Tactical Truckへの搭載を目指して開発を開始しているようです

Stryker 50KW3.jpg9月末までの3両導入に向け、陸軍と関係企業は現場運用者も交えた試験と改修を現在も精力的に行っており、2月上旬まで実射やバーチャル試験が続くようですが、レイセオンが量産を担当するわけではなく、量産担当は改めて企業選定を行う予定で、ロッキードが対抗馬に名乗りを既に上げているようです

「いつまでたっても完成まであと5年」と揶揄され続けているレーザー兵器やエネルギー兵器ですが、2021年10月にはロッキードがAC-130搭載用の60KW出力のレーザー兵器で米空軍による地上受領試験を突破したと発表したり、低出力での動きが伝えられています

Stryker 50KW4.jpgただ、米国防省「Directed Energy Roadmap」が掲げる第一弾目標の「2022年までに、150-300KW級の兵器化」も、現状からすれば容易とは言えない状況で、試行錯誤が続く予想されます

それでもレーザー兵器は、連続発射が可能(弾薬の運搬&保管不要)で、光速で目標に到達(同時多数目標に対処可能)などの利点から、今後の脅威の中心となる無人機から地上火器対処、更には巡航&弾道ミサイルや極超音速兵器対処にまで大きな期待を集める兵器ですので、「生暖かく」ですが今後も見ていきたいと思います

世界の軍事関係者に衝撃
「攻撃無人機でアゼルバイジャン圧勝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-21

エネルギー兵器関連
「AC-130用レーザー兵器の企業地上試験終了で空軍へ提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-12
「米議会がレーザー兵器開発に懸念で調査要求へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-08
「戦闘機防御用から撤退へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-01
「米空軍が無人機撃退用の電磁波兵器を試験投入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24
「F-15用自己防御レーザー試験」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-04
「エネルギー兵器での国際協力」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-27
「エネルギー兵器とMD」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「レーザーは米海軍が先行」[→]https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24
「無人機に弾道ミサイル追尾レーザー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-17-1
「私は楽観主義だ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23
「レーザーにはまだ長い道が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-18

国防省高官がレーザーに慎重姿勢
「国防次官がレーザー兵器に冷水」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-12
「米空軍大将も慎重」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24

夢見ていた頃
「AC-130に20年までにレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-06
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「米企業、30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1

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民航機の欠航相次ぐ:5Gと電波高度計干渉 [安全保障全般]

ボーイング777型機で「電波高度計」干渉懸念

Ligado5.jpg日本でも1月19日のNHKニュースが取り上げた米国での5G通信電波と電波高度計の干渉問題ですが、この問題は数年前から5G推進のために電波を割り当てる中で、「軍事レーダー」や「GPS信号」、そして「航空機の電波高度計」への干渉が起きると関係団体や政府機関が反対してきたにもかかわらず、明確な反対根拠がないと米政府が5G優先で「電波の切り売り」を進めたことが背景にあります

今炎上中の電波高度計への干渉については、2020年12月に米連邦通信委員会FCCが、「5G」企業への「Cバンド:3.7–3.98 GHz」の電波オークションに踏み切り、8兆円規模の応募を集めたことで今日の結果に至っています

Boeing777.jpgオークション対象の周波数帯に近い「4.2〜4.4 GHz」帯を長年使用する電波高度計に狂いが生じる恐れがあると民間航空関係団体で構成するRTCAが2019年10月の報告書で指摘したにもかかわらず、FCCが強行したことで大問題となり、米国防省も2020年12月21日にFAAや国土安全保障省や電波高度計メーカーを集めて検討会を開くなど対応を協議していました。

当時の電波オークションには、5G進出を狙う通信企業が殺到し、2021年1月現在で電波オークション史上最高の8兆円以上の応募があり、これをひっくり返すのは事実上困難な状況になったようです

軍用機への影響については「試験環境が整っていない」等の理由で整理されておらず、FCCに反論するにも明確な根拠がないのが国防省の当時の現状でした

各種報道より:今回の民航機欠航への対処
Boeing777-2.jpg●1月18日夜、米連邦航空局FAAは、承認された電波高度計を搭載した航空機が利用できる空港のリストを更新し、ニューヨークのジョン・F・ケネディやラガーディア、ロサンゼルス、シカゴのオヘアやミッドウェイー、サンフランシスコ、シアトルといった主要空港が含まれる
●米連邦航空局FAAは、承認された電波高度計を搭載したエアバスとボーイング機のリストの更新も進めており、影響は大幅に緩和される見込みだ

●米連邦航空局は2021年以降、複数回にわたりCバンドの電波と電波高度計の干渉について警告を出しており、AT&TとVerizonはCバンドでの5Gサービスインを延期してきた。2社は19日の全面サービス開始を断念し、空港周辺などでのサービスを再度延期した
FCC 5G.jpg●AT&Tは18日、Cバンドでの5Gサービス開始の延期について「引き続き航空業界と協力していくつもり」とした。一方、米連邦航空局に対しては「民航機運航と5G通信の両立という、約40カ国ですでにできていることをFAAができないことに不満を感じている」と表明している

●ANAとJALは米Boeingからの運行制限を受け、777型機を787型機に変更できない米国便を欠航すると決定した。米国以外の国際線や国内線の運行に影響はない
●日本においても3.7GHz帯の電波が5G通信に使われるが、NTTドコモなどが電波高度計との干渉について検討済みで、影響については「大きな問題にならない」と結論づけている
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FCC 5G3.jpg米連邦航空局FAAの問題なのか、米国社会の協調性の無さなのか、5Gへの割り当て電波の範囲の問題なのか・・・米国以外の「約40カ国」との違いが良くわかりませんが、米国だけの話であってほしいと願うばかりです

一般国民は、一度享受した「便利さ」を奪われることに、強い不満を感じますから・・・

それから、「軍事レーダー」や「GPS信号」への影響についてもよく確認してほしいと思います。「GPS信号」は米国だけが提供できる「公共財」ですから

5Gと干渉問題
「電波高度計への5G干渉問題:まず影響確認」→https://holylandtokyo.com/2021/02/02/253/
「5G企業へのCバンド売却で電波高度計に懸念」→https://holylandtokyo.com/2020/12/25/351/
「炎上中:5G企業へのGPS近傍電波使用許可」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-14
「5G企業に国防省大反対の周波数使用許可へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-11
「米議会でも国防省使用の周波数議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-05
「軍事レーダーの干渉確認」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-05
「5G企業とGPS関係者がLバンド電波巡り激突中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22-2
「戦略コマンドが5Gとの電波争奪に懸念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-27

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核兵器シェアリング担う独トーネード後継問題 [安全保障全般]

民航機の欠航が相次ぐ米国での5Gと電波高度計問題
「電波高度計への5G干渉問題:まず影響確認」https://holylandtokyo.com/2021/02/02/253/
「5G企業へのCバンド売却で電波高度計に懸念」https://holylandtokyo.com/2020/12/25/351/
「炎上中:5G企業へのGPS近傍電波使用許可」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-14
「軍事レーダーの干渉確認」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-05
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ドイツの新政権誕生後のドロドロ具合は・・・

ドイツ連立政権.jpgメルケル首相が率いるドイツ政権が退任し、新たな連立政権が米国から提供される戦術核兵器シェアリングを続け、ベルギー、オランダ、イタリー、トルコと並んで、米国から預かった重量投下戦術核を各国戦闘爆撃機で投下するNATO任務を継続すると2021年末に決断&発表し話題になりました

Tornado-b61.jpg今後の注目は、ドイツ空軍で現在当該任務を担うトーネード戦闘爆撃機90機が退役開始する2030年以降の後継機を、2023-24年までにどう決断するかに集まっています

2019年頃は最新型FA-18(電子戦機EA-18G含む。FA-18が戦術核搭載任務担う)とユーロファイターを同数程度購入する案で検討中との発言もありましたが、2020年春には「この2機種に加え、F-35も含めた3機種混合案も検討中(F-35を戦術核任務に)」との報道出ていたところです

まず前提として、この機種選定が複雑な背景は・・・
F-35.jpg●後継機は戦術核投下のため米国の承認を受けた機体である必要があり、F-35は承認に向けた試験等が進められているが、FA-18もユーロファイターも承認の可能性は未知数
●FA-18は初期型FA-18が同承認を得ていることから、ボーイングは最新FA-18承認に楽観的な見通しを根拠不明ながら述べている一方で、米国機を売り込む米国が、欧州製のユーロファイター承認には消極的と言われている

Eurofighters.jpg●一方で、欧州各国は次世代戦闘機開発を2つのグループ(独仏と英伊)で進めており、戦術核使用承認が近くても次世代戦闘機と重なるF-35導入への抵抗感が強い。ただし、戦術核は強固な防空兵器を保有するロシア相手の使用が想定されるので、戦術核運搬機にはステルス機が必要なはず・・との主張はドイツ空軍内に根強くあり、軍事専門家にもF-35を推す声も強い
●英独仏共同開発のユーロファイターには、欧州次世代戦闘機開発まで製造ラインや技術者を維持するために新規需要が必要だが、西側戦闘機市場での機種選定でF-35に連敗続きである

そんな中、1月10日と12日付でDefense-Newsが、本件を巡るドロドロ具合を報じていますのでご紹介します
ドイツ連立政権2.jpg●新政権誕生で仕切り直しになっているトーネード後継機選定であるが、仏独共同開発の次世代戦闘機を阻害するとして2019年当時の国防相が葬り去ったF-35が、再び議論のテーブルに戻ってきた可能性がある
●新政権の首相と国防相が10日に本件を協議したと報道されたが、独国防省は政府内協議であるとノーコメントとしている。昨年12月には独国防相が欧州製機体を核任務に就けたい意向を示していると伝えられたが、米国は米国製機しか核承認しないとも言われていることから、「全てのオプションを検討している」と独国防相は述べていた

EA-18G-Aust.jpg●一方で、次世代戦闘機(FCAS:Future Combat Air System)の共同開発を目指す仏独チーム内は一枚岩ではなく、中心となる仏Dassault社がエアバス社と同等レベルの開発パートナーとなることを拒み、主要アビオ部分の独占や情報非開示を主張して協議が難航していると伝えられている
●また全く別の動きとして、電子戦機に関しては、エアバス社等を筆頭とするドイツ軍需産業界が強力に欧州製電子戦機材導入を求めており、FA-18の電子戦型機EA-18G導入に反対している

FA-18.jpg●1月11日ボーイング社ドイツ支局は、仮にドイツがFA-18をトーネード後継に選定したら、ドイツ企業の部品等供給ネットワークを拡大すると発表し、具体的企業名は伏せたが、10社以上が新たにFA-18とEA-18Gの部品供給企業に仲間入りして4500億円ビジネスになるとアピールした
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1月10日と12日付Defense-News記事は結論めいたことは述べず、「魑魅魍魎」の世界を断片的ニュースで紹介しているにすぎません

上記で紹介した部分だけから無理やり推論すれば、次期戦闘機FCASでの仏Dassault社の「我がまま」をけん制するため独政府がF-35にも興味を示しつつ、同時にボーイングにも秋風を送って機種選定全体の環境を整えようとしているようにも見えます

明らかなことは、コロナで傷んだ経済や産業界を背負い、欧州各国政府と米国が、戦闘機にながれる大金を狙ってドロドロの争いを今後2-3年続けると言うことです

戦術核兵器とF-35等
「F-35への戦術核搭載へ第一歩」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-06
「米空軍に追加の戦術核は不要」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-04
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

ドイツと戦闘機選定関連記事
「独3機種混合案検討を認める」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-23-1
「独トーネード後継を3機種混合で?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-29
「トーネード後継でFA-18優位?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28

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現在も約2万名のアフガン避難民が米軍基地に [安全保障全般]

昨年9月から約7.5万人を米本土に受け入れ
5万人以上が既に米社会で再スタートか

Afghan evacuees4.jpg1月10日付Military.comが、昨年9月から米本土の米軍基地8か所で受け入れてた米国に協力してきたアフガン避難民計約7.5万人の状況について、現状を紹介しています。経費に焦点を当てた短い記事で、米国社会への影響には触れていませんが、軍隊の海外活動絡みで重い案件ですのでフォローしておきます

米軍はアフガンでの活動を昨年夏混乱の中で終了し、8月30日を最後に部隊がアフガンから撤収しましたが、約20年間にわたる米軍活動を現地で支えたアフガン人協力者とその家族をタリバンの迫害から守るため、米国への移住を認め、報道等からすると約7.5万人を受け入れているようです

Afghan evacuees2.jpg昨年9月上旬時点で、北米8基地に設置した臨時テント村に約2万人を受け入れ、10月下旬時点では米軍基地内に5.3万人、基地経由で既に約7000名が米国社会に移住を済ませたと報じられていました

米国防省はこの避難民受け入れ作戦を「Operation Allies Welcome」と名付け、国防省報道官などは「この任務を誇りに思う」との姿勢を公式には示していますが、既に米軍基地内で避難民が女性兵士に乱暴したり、コソボの収容キャンプ(1年間の限定開設)送りになった者も出るほか、基地から米国社会に出た者が女性を襲う事件が発生したりと、長く重い課題となりつつあります

1月10日付Military.com記事によれば
Afghan evacuees3.jpg●国土安全保障省の集計によると、現時点で米本土5基地に滞在するアフガン避難民は19500名で、最も多いのがNew Jersey州のJoint Base McGuire-Dix-Lakehurst基地の9700名、Fort McCoy(Wisconsin州)に4,400名、Fort Pickett(Virginia州)に2,700名、Camp Atterbury(Indiana州)に1,100名、Holloman空軍基地(New Mexico州)に1,600名となっている

afghan re2.jpg●昨年8月末から避難民を受け入れてきた8基地の内、3つの基地は既に受け入れ任務を終了しており、例えばバージニア州の海兵隊Quantico基地は、12月までの間に約200億円を投入し、居住テント・食事・医療・教育などの生活基礎支援から、子供の遊び場・サッカー大会・居住者間のトラブル対応に当たる「shura councils」の設置などを行った

●これまで議会承認を得ている約1.5兆円の避難民受け入れ経費の適切性については米議会でも議論となっており、支援を終了した基地から国防省監察官が監査を開始している
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afghan re.jpg昨年10月、「何名かの避難民に懸念が生じ、コソボのCamp Bondsteelへ家族を含め移送された」との報道に関し、国防省報道官は米国政府機関から必要な追加要員をコソボに派遣し対応していると説明していましたが、コソボとはアフガン避難民を365日以内にコソボ国外に出す条件で一時的に合意しているにすぎません

繰り返しになりますが、一事が万事、海外で軍隊が活動することの難しさを感じざるを得ません。避難民の安寧を祈念いたします

アフガン避難民関連の記事
「米本土米軍基地にアフガン避難民5.3万人」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-26
「アフガン避難者輸送作戦最初の10日」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-24
「C-17輸送機1機に823名も」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-22
「アフガン語通訳1.8万人を特別移民認定へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-26
「タリバンに渡った米国製兵器」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-30

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2022年を占う:米海兵隊F-35調達削減の予兆 [亡国のF-35]

米海軍273機に対し、海兵隊は420機調達予定も
米海兵隊司令官は2020年当時から機数削減示唆

F-35C VMFA 314.jpg1月3日付Defense-Newsは、「2022年を占う:New in 2022」シリーズ記事の一つとして、「海兵隊はF-35を必要としているが、その将来は複雑だ」との論点記事を掲載し、米海軍よりも多い420機のF-35調達予定の米海兵隊は、その調達機数削減を検討していると示唆しています

米海兵隊F-35は、全ての米軍F-35の先陣を切り、海兵隊F-35B型が2015年に初期運用態勢を最初に宣言し、2018年9月にアフガンで初実戦投入されたほか、海兵隊F-35C型も2021年7月に完全運用態勢確立を宣言し、2022年に空母搭載任務が予定されています

Queen Elizabeth2.jpgまた、英海軍の新型空母エリザベスにも米海兵隊F-35Bが派遣され、米英F-35が同空母で共同運用態勢に入るなど、米海兵隊はF-35活用に積極的で、C型の運用では米海軍よりも数歩前を進んでいます

しかし同記事は、米海兵隊司令官の発言や操縦者不足や育成状況、更には米海兵隊が無人機重視に向かいつつある様子から、米海兵隊による420機のF-35調達(B型350機、C型70機)計画は縮小される方向で検討されていると示唆しています

1月3日付Defense-News記事等々によれば
Berger2.jpg●David Berger海兵隊司令官自らが指揮し、「No. 1 priority」と呼んでまとめた米海兵隊の2030年のあるべき姿を描いた構想「Force Design 2030」(2020年3月23日発表)では、対中国を強く意識し、戦車部隊の廃止、歩兵部隊や回転翼部隊の削減、総兵数の削減、ロケット部隊や対艦部隊や無人システムの増加や電子戦の強化などが柱になっている
●また同構想は、「米海兵隊を強固に防御された戦域への遠征部隊、海軍と連携した戦力に再設計するもの」で、「現下の資源制約の下で、最新技術や変革を取り込むため、旧来装備を取り除き、現在より小ぶりで軽快な態勢に再編する」方向を目指すものとなっている

F-35B.jpg●2021年7月、米海兵隊は米海軍に先立ち、空母でのカタパルト運用を想定したF-35C型の完全運用態勢確立を宣言し、2022年に空母での運用開始を予定しているが、その飛行隊VMFA 314)は限定的なF-35C操縦者しか養成しておらず、米海兵隊内での操縦者不足も米空軍等と同様に解決の目途が立っていない

●2020年の米議会証言でDavid Berger海兵隊司令官は、F-35の優れた能力の必要性と重要性をアピールしつつも、種々の環境の変化を踏まえた現実的な可能性として、「私は軍事産業界に、米軍が作戦環境に適応していくように、我々も修正に備える必要があるとシグナルを発している」、「現時点では調達計画に変更はないが、我々は作戦環境や敵の動向に応じて適応していく必要がある」と語って調達数削減を匂わせている
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Smith2.jpg米議会は、2025年にF-35の維持整備経費の削減可能度合いが確定する時点で、総調達機数(現在は1763機)の削減を判断する条項を国防授権法に盛り込んだとされており、Brown空軍参謀総長も同様の考え方だと発言しています

軍需産業政策全体にも関わることでもあり、米海兵隊だけで先行して調達数削減を打ち出すことは容易ではないでしょうが、何事も先陣を切る海兵隊だからこそ、言い出しやすい面があるかもしれません

過去にピューリッツアー賞最終候補にも残ったこともある元海兵隊員Todd South記者の執筆記事からご紹介しました

関連のF-35記事
「2025年に調達上限設定を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-01
「海兵隊C型が完全運用態勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-08
「スイスが14番目の購入国に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-01
「英国防相がF-35企業に不満をぶちまける」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-24-1
「英国は調達機数半減か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-06
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13

F-35のエンジン問題
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-15
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
「F-35エンジン改良検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-01-2
「AETPの開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-07-02-1

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
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量子技術の軍事への応用 [安全保障全般]

既に半導体等で利用されている「量子技術1.0」から
量子特有の性質を最大限活かす「量子技術2.0」利用へ
センサー、コンピュータ、通信の視点から

Quantum Tech.jpg12月21日付防衛研究所ブリーフィングメモとして、理論研究部の有江浩一2等陸佐による「量子技術の軍事への応用」との記事がアップされ、なかなか理解が難しい「量子技術」解説が試みられていますのでご紹介いたします

有江2佐は、米国防省の諮問機関である国防科学技術委員会(DSB)が2019 年の報告書が取り上げた、軍事応用が最も期待される量子技術「量子センサー」、「量子コンピュータ」、「量子通信」の3つについて、原理と開発の現状と課題を紹介しています。

Quantum Tech4.jpg読んだ感想として、まだまだ軍事分野での利用には高い壁があり、基礎的な理論研究段階との印象ですが、軍事に限らず、民生分野でもパラダイムシフトになりそうな「量子技術」分野ですので、首を突っ込んでおきましょう。

有江2佐のブリーフィングメモによれば

基礎となる量子力学の基本
Quantum Tech5.jpg●量子は「重ね合わせ」(superposition)と「量子もつれ」(entanglement)という2 つの性質(量子性)を持っている。「重ね合わせ」とは量子が同時に複数の状態を維持することができる性質であり、「量子もつれ」とは、複数の量子の間に相関関係を持たせ得る性質のことである
●ただし、これらの性質は量子を取り巻く環境との相互作用によって崩れてしまうため、維持することが難しい

●このような量子性は様々な技術に応用可能で、例えば「重ね合わせ」の性質利用で、従来型コンピュータの「0 か1 か」の世界から、「0 と 1の情報を同時に表現可能」な世界になる。この性質利用で大量のパターンの情報を同時に処理しようというのが「量子コンピュータ」である
●また、「量子もつれ」状態の複数の量子に情報を乗せ、遠く離れた地点間での高速通信目指すのが「量子通信」で、さらに、量子性利用で、傍受や盗聴が原理的に不可能な量子暗号通信の研究開発も進められている

量子センサー
Quantum Tech6.jpg●量子技術で最も軍事応用の可能性が近いと考えられているのが量子センサーである。量子センサーは上記「量子性」を利用して物理量を計測する超高感度のセンサーであり、軍事レーダー等への応用が期待されている。
●量子レーダーは、「量子もつれ」状態にある一対の光子の片方をレーダーから射出し、それが目標に反射して戻ってきた際にもう一方の光子との相関関係を検出し、目標との距離などを計測する仕組みである

●ただし、「量子もつれ」状態を維持することが困難で、量子レーダーの開発には課題も多く、もっとも応用可能性が高いと言われる量子レーダーの軍事応用にも依然として懐疑的な見方もある

●仮に測位・航法・調時(PNT)に量子センサーを用い、GPS 衛星など外部PNT 信号への依存なしに、高精度の自己位置測定や航法が可能になれば、潜水艦にとっては非常に有益な航法手段となり、また、軍用 GPS のバックアップとして量子センサーを搭載することで、脆弱性が指摘されているGPSの 代替手段としても期待される
●量子センサーによるISR能力向上も期待される。例えば、潜航中の 戦略原潜SSBN によって引き起こされる磁場や重力などの変化を量子センサーで計測し、探知することも考えられている。実現すれば隠密性がカギのSSBNにとって致命的だが、現時点では量子センサーの開発は未成熟だと言われている

量子コンピュータ
Quantum Tech3.jpg●1980 年に理論的に示され、1994 年に基礎的アルゴリズムを開発された量子コンピュータが実用化されれば、現在一般的な暗号化システムである RSA 暗号(公開鍵暗号)が解読されてしまう可能性が明らかになり、量子コンピュータへの関心が急速に高まった。以後の様々な研究開発を経て、現在は米グーグル社や IBM 社などが「数十量子ビット」の量子コンピュータの開発に成功している
●軍事応用では、暗号解読能力を利用して敵のネットワークから重要情報を窃取する「量子攻撃」が考えられる。ただし、実際の暗号解読には「2,000 万量子ビット」の量子コンピュータが必要になるとされており、その実現は早くとも 2030~40年頃と見込まれている

●量子コンピュータによる暗号解読は米国からの技術流出が懸念され、米商務省は、米国製の量子コンピュータを入手して中国軍を支援しているとして、2021 年 11 月に中国の企業 8 社を安全保障上の懸念がある企業のリスト(エンティティ・リスト)に追加した

量子通信
Quantum Tech2.jpg●量子通信では、傍受やサイバー攻撃による情報漏えいを回避できる次世代の通信技術として、量子性を利用して情報を暗号化する量子鍵配送(QKD)方式が注目されている。そしてその実用化に精力的に取り組んでいるのが中国である
●中国は、2016 年に世界初の量子科学実験衛星「墨子号」を打ち上げ、2017 年に北京と上海を結ぶ量子鍵配送通信幹線を完成させ、1月後には「墨子号」を介して北京・ウィーン間の量子鍵配送方式による画像暗号化伝送を行いビデオ会議を実現させた。また、2021 年 1 月には、「墨子号」を介した総延長 4,600キロの衛星・地上間量子通信に成功したと発表している

●ただ、中国の量子通信はあくまでも商用ベースの事業であり、先述した 国防科学技術委員会(DSB)報告書は、量子鍵配送は米軍が任務遂行に使用し得るだけの十分な保全性をまだ達成していないと評価している
●他方、量子鍵配送が軍事実用可能なレベルに至った暁には、艦船や航空機などとの間の無線通信や、地上の司令部と基地間など固定施設間の光ファイバ通信にも使わると考えられる

●ただし、量子性が崩れやすいことから、自由空間を介した量子無線通信は、伝送路上に障害物のない見通し線内に限定されるなどの課題もある。
●可能性として、SSBN との通信に量子暗号技術を導入し、傍受不可能な秘匿通信を構成するアイディアも示されている。ただ、海中を伝送中に量子性が崩れないよう保護する困難な課題克服が必要である。

おわりに
●困難な基礎的課題も多いが、量子技術が多様な分野に応用可能となり、「量子戦」(quantum warfare)との新たな戦いの場が出現するとの予想もある
●ただし、その課題の大きさから、将来の軍事に及ぼす影響を過大に評価することは現時点では避けるべきであろう。今後の量子技術の発展動向や軍事への応用に関する議論を継続的にフォローすることが求められる
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有江2佐の解説をご覧いただいて、量子の持つ「重ね合わせ」(superposition)と「量子もつれ」(entanglement)という2 つの性質(量子性)への理解が極めて重要だと感じられた方のために、以下のYouTuberの投稿をご紹介しておきます

数式なしでもしっかり学ぶ量子力学
(YouTube:「予備校のノリで学ぶ数学と物理)より)
https://www.youtube.com/watch?v=s3uQk3pF3wo

量子技術に触れた過去記事
「AUKUSで量子技術連携を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-17
「国防省がデジタル近代化戦略を発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-16
「中露のAIでの野望を語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-28
「米空軍科学技術諮問委員会2015年テーマ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2015-10-13

防研のブリーフィングメモwebページ
http://www.nids.mod.go.jp/publication/briefing/briefing_index.html

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KC-46給油機の恒久改善策が未だ未定 [米空軍]

既に導入機数の約3割受領済も
イスラエルも2機導入を決定したが

KC-46A3.jpg1月10日付Defense-Newsは、導入予定177機の内、既に50機をボーイング社から受領しているKC-46空中給油機に関し、戦闘地域での使用ができない原因となっているRVS(Remote Vision System)の「第一級不具合:category 1 deficiencies」について、昨年2021年秋には不具合改修方針を固める予定がまだ決まらない状態だと報じています

KC-46を運用する米空軍輸送コマンド報道官からのメールを引用し、RVSを根本的に設計からやり直し、「RVS 2.0」として2023~24年から投入する予定の新設計審査について、本来は2021年5月に空軍とボーイング社で中間レビューを行い、2021年秋に決定するはずが予定通り進んでいないとDefense-Newsは伝えています

KC-46 RVS.jpgこの「第一級不具合」は、操縦席後方の給油操作員が使用する給油操作表示装置(RVS:remote vision system)が、給油対象機を必要な精度や視認性で表示できず、受け手側のステルス機の機体表面を傷つけステルス性を害したり、太陽の位置関係によっては受け手側機体が良く見えない不具合ですが、現状はとりあえずの「当面のソフト改修」でしのいでいる状況で、恒久対策(RVS2.0)を検討している状態です

そんな中でも既存空中給油機KC-135やKC-10の老朽化が進み、維持整備費の高騰と整備員への負荷増大で部隊運用を圧迫しており、作戦地域以外での低リスク任務にKC-46を投入可能とすることで「その場をしのぐ」苦肉の策に米空軍は出ています

KC-46 RVS2.jpg具体的には、2021年7月に米海軍機に多いセンターラインdrogueシステム使用の給油を許可し、8月にはB-52とC-17輸送機、更にKC-46に対する給油任務を許可しました。そして10月には対象機の多いF-15とF-16への給油を許可し、12月6日にはAC-130、HC-130、MC-130、C-5、E-3Gにも給油許可を出し、空中給油可能な機体の70%に給油許可を出す「なし崩し」状態となっています

こんな状態ですからKC-46の海外輸出は困難を極め、米空軍以外では日本が4機と2022年に入ってイスラエルが2機導入を決定しただけです。一方でライバルであるエアバスA330型給油機は、豪州6、英国14、UAE3、サウジ6、シンガポール1、韓国2、フランス1機が既に納入済みで、他にチェコ、インドネシア、インド、カタール、スペイン、スウェーデン等が興味を示している状況です

1月10日付Defense-News記事によれば
KC-46A1.jpg●10日、米空軍輸送コマンドのHope Cronin報道官はe-mailで、RVSを更新する「RVS2.0」の設計受け入れに至っていないと述べ、本来なら2021年5月に空軍とボーイング社で中間レビューを行い、2021年秋に決定するはずが、予定通り進んでいないと明らかにした
●米空軍とボーイング社は、当時のGoldfein空軍参謀総長がボーイングCEOと2020年4月に直談判までしてRVSの根本設計変更による2023年「RVS2.0」導入に合意したが、予定通りには進んでいない実態が明らかになった

●それでも同報道官は、「RVS2.0」全体のスケジュールに変更はないと述べ、「設計審査の遅れはあるが、空軍とボーイングチームが協力して問題の解決に当たり、KC-46に求められる主要任務を安全に遂行できることに自信を持っている」とメールに記している
●そして、設計審査を終えた内容は正式な政府計画となって契約内容に反映されるだろうと説明している
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KC-46 Boom3.jpg2022年に入り、イスラエルがKC-46を2機導入すると発表して驚きましたが、米国からの軍事費援助を活用して購入するものと考えられ、A330のオプションは最初からなかったものと思われます

2021年11月に日本導入の最初の1機が美保基地に到着し、いよいよ航空自衛隊もKC-46とお付き合いすることになりました。改修前の「RVS」の見え具合がどうなのか? 航空自衛隊は運用体制準備完了を何時宣言するのかが気になるところで

KC-46関連の記事
「50機目受領も恒久対策未定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-11
「KC-YもXと同じ対決へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
「KC-46空中給油機に更に2件の最高度不具合発覚」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-18
「F-22とF-35のデータ中継装置を搭載へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-22
「KC-46空中給油機を一部の任務に投入開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-25
「恒久対策は2023-24年から」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-30
「今度は燃料漏れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-31-1
「やっぱりだめで更に1年遅れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-04
「重大不具合について3月に手打ち!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-21
「空軍トップが新CEOに改善要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03
「ついに空中給油の民間委託検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-15
「貨物ロックに新たな重大不具合」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-12
「海外売り込みに必死なボーイング」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-22-1
「米空軍2度目の受領拒否」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-1
「機体受領再開も不信感・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-1
「米空軍がKC-46受け入れ中断」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-3
「不具合付きの初号機受領」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-12-2
「初号機納入が更に遅れ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20
「10月納入直前に不具合2つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19
「10月に初号機納入を発表」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-22
「開発が更に遅れ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-11-1

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ノルウェーがF-35を世界初(?)の領空保全任務に [亡国のF-35]

北緯68度39分の厳しい環境の基地で
42年任務を果たしたF-16と交代で

Norway F-35.jpg1月6日、ノルウェー空軍がF-35を領空保全任務(NATO quick-reaction alert mission:日本でいう対領空侵犯措置任務)に就けたと発表し、42年間同任務を果たしてきたF-16と交代することになりました。

同国F-35が緊急発進態勢をとったのは、北緯68度39分にあるEvenes空軍基地で、従来F-16が待機していたBodø空軍基地より180㎞も北に位置し、緯度でいうとロシアとアラスカに挟まれたベーリング海峡の最狭部と同じ緯度の北極エリアです

F-35 Norway3.jpgEvenes空軍基地で15分以内に緊急発進できる態勢をとったのは3機のF-35で、これまで任務を担ってきたF-16の同任務飛行時に随伴し、対処要領等の学んで任務に備えてきたということです。なお、F-35部隊の主力は同国南部のØrland空軍基地に配備されるようで、Evenes基地は任務用前線展開基地の位置づけのようです

同国空軍は52機のF-35導入を予定しており、2025年には全機が揃って同機運用態勢を確立する予定だそうですが、暖流の影響で緯度のイメージよりは気温が上がるとはいえ、この場所での戦闘機運用は容易ならざるものがあると思われます

F-35 Norway4.jpg一例として、ノルウェー空軍F-35は世界で唯一ドラッグシュートを装備し、凍結した滑走路でもスリップなく既定の範囲内で制動できるよう改修されています

なおノルウェーはEvenes空軍基地を拡大しつつあり、P-8対潜・海洋哨戒機の北方配備基地としても準備しているようです。

米空軍戦力のロシア正面での展開先は、スカンジナビア半島と欧州大陸に囲まれたバルチック海エリアににらみを利かすポーランドで、1月6日に米空軍F-16が展開配備され、ポーランドやベルギー空軍F-16とともに任務に臨むとNATO声明が出されています
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F-35 Norway2.jpgF-35がいわゆるスクランブル待機態勢に入ったということですが、F-35をロシアの各種偵察機や情報収集機にも接近対処させ、ロシアの情報収集網に飛び込んで任務させる覚悟が米国で固まったということでしょうか?

先日、UAEへのF-35輸出交渉が難航しており、そのネックの一つが米国がUAEに要求している「F-35の運用制限」だとご紹介し、中露に近接する日本のF-35にも何らかの制約が課せられているのでは・・・・と邪推しましたが、その辺りはどうなのでしょうか?

米国との関係において、ノルウェーと日本とUAEにどのような差があるのか・・・気になるところです

中東と米国の関係
「UAEが米国との武器購入交渉停止表明」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-16
「UAEへの武器輸出を国務省次官補が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-17
「UAE空軍司令官視察:イスラエル最大の多国間空軍演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-04
「米国防省の武器輸出担当DSCA長官が怒りの辞任」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-15

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中国高官が中国の核戦力急速増強を否定 [中国要人・軍事]

中国外務省の兵器管理局長が語る
米英仏中による核兵器共同声明の翌日ですから

Fu Cong.jpg1月4日、中国外務省の兵器管理局長(director general of the Foreign Ministry's arms control department)が、米国防省が2021年11月発表の「中国の軍事力」レポートで、前年見積もりを約2.5倍規模に上方修正した中国による核戦力大増強に関し、「米国の主張は事実と異なる。近代化を進めているだけだ」と主張しました

米国防省は同レポートで中国核戦力の増強を、2020年レポートでは2030年までに400弾頭と予想していたのに、2021年レポートでは1000弾頭以上と大幅上方修正しました

China ICBM silo.jpgそして具体的に、衛星写真で新しいICBMサイロが中国3か所で数百個建設中であることや新型ICBMが開発されていること、空中発射及び潜水艦発射開発型でも新兵器開発が着実に進められていること等を、同レポートで主張していたところです

以下で紹介する担当局長のコメントは、米英仏中が、NPT会合の代わりに発表した共同声明の翌日のもので、同声明のラインに沿った官僚の発言かもしれませんが、一応の公式スタンスですから確認しておきましょう

4日付Military.com記事によれば同局長は
Fu Cong2.jpg●Fu Cong中国外務省兵器管理局長は、中国は国家安全保障のために必要な最低限レベルの核抑止を確実なものにするため取り組んでいると主張し、「中国が核戦力を劇的に拡充していると米側は主張しているが、まず一番に、その主張は正しくないと言わせてもらう」と語った
●米側がICBMサイロ建設の衛星写真を証拠に中国の核戦力増強を主張している点に関し同局長は、ICBMサイロには言及せず、中国の核戦力を衛星写真で見積もるべきではないと反論した

●また同局長は、中国はアジアの安全保障環境の変化に対応するため、必要な措置をとる必要があると主張し、米国による中距離ミサイルのアジア配備計画や印パキスタンによる核兵器開発を事例として挙げた

DF-26B.jpg●米国が米露の戦略核削減条約に中国も加わるよう呼び掛けていることについて同局長は、世界の中でずば抜けた数の核弾頭を保有する米露両国が、まず大幅に核戦力を削減すべきだと主張した
●そして「もし米露が中国レベルにまで核弾頭数を削減したら、中国も喜んで同条約の枠組みに加わる準備がある」、「そして英国やフランスレベルにまで更に米露が削減すれば、他の核保有国も同条約に加わることができるだろう」と述べた

H-6N 3.jpg●バイデン政権は核体制見直しを検討中だが、中国が同局長の主張とは真逆の核増強に突き進む中で、米国として大きな方向転換は考えにくい
●同局長はイラン核合意について、米国にはイランへの制裁を解除、イランには核合意枠組みに復帰を要望した。イラン核合意については、米中英仏独がイランと同合意枠組み復活に向けた協議を続けている
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「中国の核戦力を衛星写真で見積もるべきではない」と堂々と主張する中国は、南シナ海を軍事基地にしないと主張し、ウイグル地区での人権侵害がないと言い続ける中国と同じです

JL-3.jpg中国外務省の兵器管理局長に事態を変える力はないのでしょうが、共産党指導層の意向を受け、ヘリクツを考え、主張を続ける役割を担っているのでしょうからご紹介しておきます

中国の核戦力大増強を指摘した米国防省レポート
「2021年版・中国の軍事力レポート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-06

中国空軍のH-6大型爆撃機
「中国空軍H-6Nが極超音速兵器試験?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-20
「H-6Kのグアム島ミサイル攻撃模擬映像」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23

新START期限切れ関連
「新STARTはとりあえず5年延長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-22-1
「ドタキャン後にまた受け入れ表明」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-17
「延長へ米露交渉始まる!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-18-1
「Esper新長官アジアへ中距離弾導入発言と新STARTの運命」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-04
「IISS:対中国軍備管理とミサイル導入は難しい」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-09

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初の女性空母艦長で出撃:空母リンカーン [Joint・統合参謀本部]

Bauernschmidt6.jpg1月3日、空母リンカーンが米海軍史上初めて、女性艦長の指揮下で作戦航海にサンディエゴから出港しました。同空母の展開先は非公開ですが、第3艦隊の第3空母戦闘群の主力として、ミサイル巡洋艦Mobile Bay、ミサイル駆逐艦Fitzgerald, USS Gridley, USS Sampson ,USS Spruance等と共に作戦展開任務に就くようです

初の女性空母艦長となったのは1994年に米海軍士官学校卒のAmy Bauernschmidt海軍大佐で、艦載ヘリパイロットとして3000時間の飛行時間経験を持ち、2021年8月から同空母艦長に就任し、今回の展開任務に備えて来たようです

同大佐は、2016年に同空母の日々の活動細部を取り仕切るXO(executive officer:空母艦長に次ぐNo2ポスト)に女性として初めて就任して大きな注目を集めた方で、空母リンカーンを知り尽くしたうえで、今回より大局的な視点で空母を指揮する艦長としての航海に臨んでいます

1月4日付Military.com記事によれば
Bauernschmidt5.jpg●1月3日付米第3艦隊のプレスリリースによれば、女性として初めて8月から空母リンカーンの指揮を執っているBauernschmidt大佐は、米海軍の展開ローテーション任務に向け、他の空母戦闘群を構成する艦艇と共に同日サンディエゴ港を出港した
●同大佐は「空母リンカーンの乗員は、我々の任務遂行のため厳しい訓練を乗り越えてきたプロ集団である。わが国の国益を守るため、彼らは今日に備えて周到な準備をしてきており、国を代表する姿に何の疑いもない」と出港に当たりコメントをだしている

Bauernschmidt.jpg●空母リンカーン戦闘群には、米海軍の中で「最新の航空団」と言われる空母第9航空団が属しており、FA-18やEA-18Gに加え、2021年7月に完全運用態勢確立を宣言したF-35C型を有する海兵隊VMFA 314飛行隊も戦力に含まれている
●なお空母リンカーンは前回、2019年当時の母港であったノーフォークを出港後、欧州周辺海域で活動した後に中東に展開し、アラビア海やオマーン湾で任務に就いている

●Bauernschmidt大佐は、米海軍士官学校で海洋工学を学び、米議会で女性兵士の戦闘機や戦闘艦艇への搭乗が許可された1994年に卒業した人物で、卒業後はヘリ操縦者として複数のヘリコプター飛行隊で艦艇運用を経験し、空母艦長への登竜門とみなされている強襲揚陸艦San Diegoの艦長も経験している
Bauernschmidt3.jpg●空母リンカーン「XO」ポストについていた2018年11月、CBSのインタビューに答えた同大佐は、士官学校卒業した年に米議会で、海軍戦闘艦艇や艦載作戦機への女性搭乗に門戸が開く決定をしたことが人生を大きく変えたと語っていた

同大佐のXO勤務を紹介するCBSインタビュー映像
https://www.cbsnews.com/video/navys-1st-female-executive-officer-leads-with-unique-leadership-style/#x
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サンディエゴ出港後の任務先は公式には非公開のようですが、米西海岸から出港すれば、西太平洋から南シナ海を通って中東で活動の可能性も高いと思います

日本との連係プレーもありそうですので、ご活躍を期待したいと思います

Bauernschmidt海軍大佐の公式経歴
https://www.airpac.navy.mil/Organization/USS-Abraham-Lincoln-CVN-72/Leaders/Commanding-Officer/

空母艦長候補に選ばれた当時の記事
「初の女性空母艦長誕生へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-10

軍での女性を考える記事
「初の女性月面着陸目指す」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-20
「初の女性空母艦長誕生へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-10
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-20
「米空軍がパイロット募集の身長基準を廃止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-23
「黒人女性が初めて米海軍戦闘操縦コース卒業」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
「初の米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「上院議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19

「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11

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