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新戦略軍司令官がnon-kinetic兵器の統制に言及 [Joint・統合参謀本部]

Non-kineticとはサイバーや宇宙やEW戦
特に電子戦の統合レベルでの統制に言及
また5G普及に伴う周波数不足への懸念表明

Richard2.jpg24日、新戦略コマンド司令官候補であるChas Richard海軍中将(現在は海軍潜水艦隊司令官)が上院軍事委員会で証言し従来の核抑止だけで語れなくなりつつある戦略作戦の将来について、今後ますます重要になるサイバーや電子戦などの「非運動エネルギーnon-kinetic兵器」作戦の指揮統制を、戦略コマンドが実施すべきとの命題について、今後の統合演習で検証すると語りました

また「非運動エネルギーnon-kinetic兵器」の中でも電子戦EWの重要性と戦略コマンドによる統合作戦統制の必要性に言及し、更に電子戦訓練の環境整備が必要だと主張しつつ「5G」の導入などで民間分野での周波数需要が高まっているが、有事を考えて民生と軍事のバランスを良く考えて周波数配分を検討すべきと訴えました

「非運動エネルギーnon-kinetic兵器」の影響力が核兵器並みになる可能性も踏まえ、併せて各軍種がバラバラに運用している電子戦アセットを効率的に統合の視点で運用し、最大の効果を確保しようとの考え方を戦略コマンドが打ち出すとは意外でしたのでご紹介しておきます

24日付米空軍協会web記事によれば
electoric warfare.jpgRichard海軍中将は上院軍事委員会で、統合参謀本部がいくつかの演習や機上演習をリードして、誰が多様な「運動エネルギーkinetic兵器」と「非運動エネルギーnon-kinetic兵器」を管理監督するのかを整理したいと証言した
●これら演習の結果は、マルチドメインやクロスドメインと言われる今後の統合作戦のあり方や、サイバー空間や電磁スペクトラム等々での新たな兵器の活用法を考える上での貴重なデータとなると同中将は語り、戦略コマンドにとっても単純な核抑止の世界から変化しつつある戦略作戦に適応し、「非運動エネルギーnon-kinetic兵器」の調和使用を司るべきかを考えるための資となると説明した

●同中将は、「電子戦について、各軍種が独自に行っている作戦を統合の視点でまとめることを開始しており、より現状に適応した全てが統合される方向に導いている」と説明した
Richard.jpg●また同中将は、「非運動エネルギーnon-kinetic兵器」の効果を通常兵器の効果と結びつけたり、相互に代替可能な形も追求しているが、これは「運動エネルギーkinetic兵器」攻撃が必ずしも最適な効果をデジタル社会において生まないとの認識に基づいているとも説明した

米軍の電子戦能力はこれまで長年経験したことが無いほど厳しい挑戦を受けており、サイバー空間や宇宙でと同様に厳しい環境に置かれているが、これに対処する訓練環境は不十分で、電磁波の割り当てに余裕がないことから十分な試験や演習が難しくなっているとも訴えた
「先進EW技術を使用した試験や演習が可能な演習場はほとんどなく、試験等が可能なはずの演習場でも、しばしば外部への電波干渉等により訓練等が中止に追い込まれている」、「このような状況から統合部隊での訓練機会が悪影響を受けている」、「シミュレーション環境の重要性が指摘され、改善投資が計画される中でも、依然として極めて限定的だ」等々と訴え

electoric warfare2.jpgそんな中でも、DARPAがシミュレーション環境開発に取り組み、国防省としても新たな電磁波環境の把握や分析手法の導入を検討しているとも説明したが、
●ただ、最近民間機関が「5Gネットワーク」開発に力を入れ、電磁波割り当ての拡大に動いており、軍事に影響を与えかねない状況となっている。連邦政府は「5Gネットワーク」導入を巡って民間企業との連携を図り、軍事活動への影響が無いよう勤めるべきだと同中将は訴えた
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最近日本政府も、「5Gネットワーク」導入推進のため、周波数の割り当てを再検討するような発表をしていましたが、総務省と防衛省は国益の観点から、十分に意見のすり合わせを行うべきと考えます

Takaichi.jpg得てしてこの手の調整は、防衛省に相談なく総務省が業界団体と話をはじめ、後戻りできなくなってから防衛省に「事後報告のように」調整するような強姦的なアプローチが見られましたが、高市総務大臣に置かれては、そのあたりをよろしくお願いいたします

それにしても、戦略コマンドが電子戦EWの統合作戦統制に乗り出すとは・・・。電子戦が単なるレーダー妨害からサイバー空間にまで影響が及ぶ可能があるからでしょうか? 時代の急速な動きを感じます

米空軍電子戦部隊の動き
「米空軍電子戦改革の方向性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-21
「米空軍がサイバーとISRと電子戦部隊を融合」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「遅延中、ISRとサイバー部隊の合併」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-24
「米空軍がサイバー軍とISR軍統合へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3

EW関連の記事
アクセス数が多い記事ばかりです。是非チェックを
「ACC司令官が語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-19
「米空軍がサイバーとISRとEwを統合」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3
「電子戦検討の状況は?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-13
「エスコート方を早期導入へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27

「米空軍電子戦を荒野から」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-17-1
「ステルス機VS電子戦攻撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12

「EA-18Gで空軍の電子戦を担う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-08
「空軍用に海軍電子戦機が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-09
「緊縮耐乏の電子戦部隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-29-1
「MALDが作戦可能体制に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-29-1

ロシアの電子戦に驚愕の米軍
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02

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