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露がベラルーシに核ミサイルや航空機核搭載改修提供へ [安全保障全般]

昨年2月にベラルーシが憲法改正して着々準備
露の飛び地Kaliningrad地上輸送路閉鎖への報復的措置か
ベラルーシ利用のウクライナ空爆開始にあわせ

Belarus Russia3.JPG6月25日、ロシアのプーチン大統領はベラルーシ大統領とロシア第2の都市サンクトペテルブルクで会談後、ロシアがベラルーシに射程500㎞以下程度の短距離弾道&巡航ミサイル「Iskander-M」を提供し、更にベラルーシ軍保有のSu-25戦闘爆撃機を核兵器搭載可能に改修すると発表しました

ベラルーシは2021年2月、同国憲法の「nuclear-free zone:核保有しない国家」及び「中立的立場で」との表現を修正し、ロシア寄りの立場を鮮明にし、ロシアの核兵器受け入れ準備を進めていたと理解されていますが、ロシア飛び地領土「Kaliningrad」に続いて、NATOとの最前線にロシアの核を配備することになります

Kaliningrad.jpg先日ご紹介したように、ロシアは本土と「Kaliningrad」を結ぶ鉄道貨物輸送や石油パイプラインが隣国リトアニアによって制限されたことに反発を強めており、欧州NATO諸国に接するベラルーシへの各ミサイル配備等によって、欧米各国をけん制するねらいがあるとみられます

プーチン大統領は25日、「この決定はロシアによってなされたものだ。今後数か月以内に核弾頭と通常弾頭の両方が搭載可能なIskander-M戦術ミサイルをベラルーシに移送する」と明言し、

Belarus Russia.jpgベラルーシのLukashenko大統領は、同国Su-25に核兵器搭載可能となるような改修をロシアに要請し、露大統領から露国内で改修を請け負うとの回答を得たと述べ、「我々は米国やNATOによる核兵器訓練を見せつけられ懸念しており、ロシアに対し同様の対応が可能なよう検討を依頼した。過剰な対応をするつもりは無い(without overdoing it)」と会談後に語っています
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ベラルーシが67機保有するSU-25は、旧ソ連が米国製A-10の影響を受けて1970年代後半に開発した対地攻撃機で、戦車狩りなど最前線の敵軍を直接攻撃することを狙った低速ジェット攻撃機で、1300機以上が製造されたベストセラー機です。ですが、「フロッグフット」のNATO名のように航続距離が短く低速であることから、戦術核兵器搭載機として「適当」なのか「?」ではあります。

SU-25 Belarus.jpgSU-25は、攻撃精度が良く、搭載量が多く、強力な30mm機関砲を搭載し、安価で頑丈で整備性がよいことを特長とし、高価な戦闘爆撃機に手が出ない中小国や発展途上国にとって好都合で、ソ連崩壊後、ロシアから世界中に中古売却され、アジア、欧州、アフリカ、中東、南米等々、世界中の戦争(特に対テロ)で「常連」で「実戦で証明された機体」として評価をさらに高めた古い機体です。

ウクライナ軍によれば、6月26日にはロシア軍TU-22爆撃機がベラルーシから出撃してウクライナ首都などを攻撃しており、ロシア軍の態勢を立て直しをベラルーシが支援する形が強化され、西側に「ウクライナ疲れ」が見え始める中で、ロシアの陰鬱な粘りが世界全体に影を落としつつあります

ウクライナ関連
「露の飛び地Kaliningradへの陸路遮断」→https://holylandtokyo.com/2022/06/28/3410/
「ロシア侵略の第一撃は衛星通信に」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「アジア太平洋への教訓は兵站能力」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/

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米空軍が電動ヘリeVTOL導入に本格始動 [米空軍]

2023年度予算でまず5機導入から
低価格・低維持コスト・多様な機種が市場に登場
前線での空輸や救難救助など66の任務を検討中

Hexa Lift Airc.jpg6月16日付Defense-Newsが、米空軍が「Agility Prime」計画として推進する電動垂直離着陸ヘリ(eVTOL)の導入を本格化し、2023年年度予算で5機導入から最初の調達を開始すると報じ、最前線での物資人員輸送や救難救助などを含む多様な任務に、「低コスト・低維持費」「迅速な展開能力(空輸可能)」「燃料消費小」等の特徴を生かして挑戦すると紹介しています

この「Agility Prime」計画は2020年2月に始まった日進月歩の民生電動ヘリを活用しようとのプロジェクトで、従来の前線空輸を担っていたヘリが1機・数十億円なのに対し、まだまだ航続性能や搭載量に課題はあるものの、1機・数千万円から数億円の電動ヘリに注目したものです

ALIA Beta.jpgただし民間主導の競争に任せすぎると価格競争になり、結果として中国製部品や中国企業がサプライチェーンに大きく絡んで米国防省が採用できなくなる問題が「小型無人機」で生じた教訓を基に、米国防省による競争や柔軟な発想を妨げない「ほどほど」の関与で、米国内の電動ヘリ産業界を成長させつつ、米国内サプライチェーンも育成する姿勢で取り組んでいるようです。

更にこの分野は技術進歩が著しいことから、従来の国防省調達プロセスを辿っていると時間がかかりすぎ、装備導入時点で「陳腐化」している可能性が高く、調達プロセス改革の先駆者となることも狙っているようです

6月16日付Defense-News記事によれば
Agility Prime2.jpg●米空軍は企業アイディアを生かすため、厳格な要求性能を設けず、14企業から多様なタイプの「eVTOL」を評価用に入手する契約を既に結んでいる
●2023年度予算で約4.3億円を確保し、その中から1企業の機体選定して5機のeVTOLを導入予定。ただしその場合も他の13企業を排除するわけではなく、その後も、用途や優先順位を吟味し、他企業eVTOLの導入も続く予定

●用途としては、従来型ヘリでは危険な特殊部隊員の侵入・帰還輸送や敵領域での救難救助などが想定されるが、他にも66項目の将来想定任務がアイディアとして米空軍プロジェクトチーム内では検討されている
Hexa Lift Airc2.jpg●特に、米空軍が推進するACE(Agile Combat Employment concept)構想では、部隊を分散運用するため施設不十分な基地や被害を受けた施設に展開することが想定されるが、垂直離着陸能力を備えるeVTOLには初期の物資人員輸送や、その静粛性を活用した偵察任務も期待されている模様

●将来構想を語る一方で米空軍担当チームは、まず電動ヘリeVTOLに米空軍兵士が接してもらい、その現状と特徴を把握してもらうことが重要だと考えており、各地の航空ショーへの参加や演習へのデモ参加を積極的に計画している
●またeVTOL担当チームは、現有ヘリの後継機としてeVTOL導入を考えているわけではなく、基本的には現在装備の欠落機能を埋める役割を考えている
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ALIA Beta2.jpg2021年4月に「Agility Prime」計画をご紹介した時点では、タコのような形状の「Hexa」との機種では、C-130に1機を45分で搭載できたが、手順化すれば1機15分で3-5機搭載可能とか、現在は1名搭乗で15分程度の飛行可能時間とかの性能でしたが、特に飛行持続時間や搭載量はどうなったのでしょうか?

また米空軍は昨年時点で、「100nm先の場所に、3~8名を輸送でき、速度が100マイル/h程度の電動ヘリ(eVTOL)を、2023年までには実用可能なオプションにまで煮詰めたい」との目標を掲げていたようですが、その辺りもどうなっているのでしょうか? 引き続きフォローしていきたい「Agility Prime」計画でした

2021年の「Agility Prime」計画状況
「電動ヘリeVTOLでACE構想推進へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/13/105/

米空軍の将来作戦コンセプトACE関連記事
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「欧州米空軍がACE構想の確認演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「F-22が岩国展開訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-13
「電動ヘリeVTOLで構想推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-02
「F-15EにJDAM輸送任務を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-04
「GuamでF-35とF-16が不整地離着陸」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-28
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/
「中東派遣F-35部隊も」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「三沢で訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21
「太平洋空軍がACEに動く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-12
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08

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ロシアの飛び地「Kaliningrad」への陸路遮断 [安全保障全般]

露の同盟国ベラルーシからリトアニア経由の陸路封鎖
NATO加盟国リトアニアがEU加盟国義務として淡々と
ロシアは猛反発でリトアニアに報復示唆も

Kaliningrad 4.jpg6月21日付Defense-Newは、EUが定めたロシアのウクライナ侵略に対する制裁措置に従う形で、リトアニアがリトアニア領土を通過するロシアの飛び地領土「Kaliningrad」へのロシア製品の移動を禁止する措置をとったと報じています

この措置に先立ち、EUは4月に空路によるロシア航空会社のEU通過を禁止して、「Kaliningrad」へのロシア製品の空路を絶ちましたが、今回は「Kaliningrad」への物資輸送の半分を担う陸路(露の同盟国ベラルーシと飛び地を結ぶ「Suwalki Gap」を通る鉄道が地上輸送の大部分を担う)を絶ち、更にロシアから石油を輸送する唯一のパイプライン(「Suwalki Gap」近傍を通過)も今回の措置で封鎖されます

Kaliningrad.jpgこの結果、ロシアから約680マイル(約1100㎞)、露の同盟国ベラルーシから約90㎞離れた「飛び地:Kaliningrad」へロシア製品を輸送する手段は、公海を使用する「海路」だけとなり、ロシアにとっては痛烈な一撃となります

リトアニアはNATOメンバーであり、ロシアがリトアニアに手を出せば、「NATO憲章5条」によりNATOとしてロシアに反撃するトリガーとなります。バイデン大統領も年頭教書で「一インチでもNATO領内に入ったら・・・」と明言しており、約1000名の米軍兵士を3月に同国へ派遣して覚悟を示しているところです

リトアニア外務省は、EUの一員として、EUの定めたロシアへの制裁措置を実行しただけ・・・との淡々したスタンスですが、地図でご覧いただく「Kaliningrad」の位置や、以下の紹介するその重要性からすると、NATOや西側の「かなり大きな一手」ですのでご紹介しておきます

ロシアと同飛地Kaliningradの歴史と重要性
Kaliningrad 2.jpg●WW2終結時にソ連が占領していた同地域を、ポスダム会談においてソ連領と承認。1991年のソ連崩壊時も、同地域の周辺国は独立して西側との関係を深めていくが、同地域は飛び地としてロシア領として引き継がれる。
●同飛び地の南部で国境を接するポーランド、及び東部と北部で国境を接する今回封鎖を宣言したリトアニアは、共にその後NATOに加盟した

●Kaliningradはバルト海に面するロシア唯一の港を有し、同港は不凍港である点でロシア艦隊の重要拠点。またNATO最前線に位置する海軍拠点としての意味を持つ
●ロシア本土から約680マイル(約1100㎞)NATOに食い込んだ位置にあることから、ロシアは核弾頭搭載可能な短&中距離弾道ミサイルを核弾頭と共にKaliningradに配備しているとリトアニアは主張しており、ウクライナ侵攻開始当初に核部隊の即応態勢を高めた際にも、西側はKaliningradを配備戦力を警戒している

リトアニアの地上ルート封鎖へのロシアの反応
Kaliningrad 3.jpg●リトアニアは今回の措置を、単にEUの一員として露のウクライナ侵略に対する制裁を実行したまでだと淡々と主張し、「リトアニアを経由する人や制裁対象外の物資の往来は問題なく継続されている」、「EU決定の制裁を実施しているだけで、リトアニア独自の措置は一切ない」とリトアニア外務省は主張している
●しかしロシアは強く反発し、国際法違反の「blockade」だと主張し、リトアニアが痛みを感じる装置を講ずると訴えている(効果ある具体策を提示することに失敗しているが・・・
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6月21日付Defense-News記事は、リトアニアの措置(EUの措置)にロシアが有効な「痛みを感じる報復措置」を執れないでいると紹介していますが、決して油断はできませんし、年月を経て報復を企てることも十分に考えられます。

Kaliningrad33.jpgウクライナ東部や北部で、ロシア軍がじわじわと態勢を立て直して反転攻勢に転じ、ウクライナ軍を過去数か月間支えたドローンや通信傍受を基にした攻撃も効果が低下し始めているところですが、今回の飛び地「Kaliningrad」を巡る西側の動きが、ロシアをどのように刺激してどのような影響を与えるのかが注目されるところです

ウクライナ関連の記事
「ロシア侵略の第一撃は衛星通信に」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「アジア太平洋への教訓は兵站能力」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「ロシアに迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「陸軍訓練センターに教訓反映」→https://holylandtokyo.com/2022/05/12/3156/

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米空軍5世代機を日付変更線より西に配備を [Joint・統合参謀本部]

太平洋軍司令官がグアムを示唆しつつ米空軍に要請中
そういえばアラスカF-35とハワイF-22だけ
岩国に海兵隊F-35があり、F-35艦載空母の出入りはあるが

F-22 F-35.jpg6月24日、Aquilino太平洋軍司令官が講演し、米空軍の第5世代機が日付変更線より西側に配備されていない現状に言及しつつ、配備を要請しているとグアム島を示唆しつつ語りました。

アジア太平洋軍担当エリアに配備されている第5世代機(F-22及びF-35)は、ハワイとアラスカ(Elmendorf–Richardson)に配備されている米空軍F-22と、アラスカ(Eielson)配備の米空軍F-35、更に岩国基地配備の米海兵隊F-35がありますが、米空軍の第5世代機は日付変更線(ハワイとグアムの中間)より西側に配備されていません

Aquilino FDD5.jpgまんぐーすは、中国やロシア近傍に米軍第5世代機を配備することで、電波情報収集などの「餌食」になることを米軍として避けているのか・・・とも考えていましたが、米海兵隊があっさりF-35Bを岩国に配備したことから、米空軍はどうするのかなぁ・・・とぼんやり考えておりました

米空軍に配備要請している第5世代機についてAquilino司令官は、具体的機種や場所について言葉を選んで言及しなかったようですが、司会者との対談形式講演の別の部分でグアム島の戦略的重要性を強調し、同島を360度の脅威から防御するミサイル防衛体制整備の重要性を訴えていたことから、24日付米空軍協会web記事は、配備先はグアム島だろうとの推測をしています

FDDでのAquilino司令官発言の状況


24日付米空軍協会web記事によれば同司令官は
●(5世代機の日付変更線より西側への配備の必要性についての質問に対し、)そのような能力強化については・・・・確かに望ましいことである。強固に防御された空域での作戦において必要な能力である。それがF-22であってもF-35であっても、抑止力強化のために極めて重要なことである
Aquilino FDD2.jpg●より前線に、恒久的な、突破力のある戦力の配備を要請しているところである。そしてその戦力が、地域派遣戦力として活動でき、情勢に応じて必要な場所に展開することをお願いしている。(Wilsbach太平洋空軍司令官は)素晴らしい対応をしてくれている

以上の発言では、具体的な5世代機の配備先について言及を避けていますが、講演全体ではグアム島の重要性と能力強化について強調し、記事はグアムへの配備が念頭にあると推察しています。同司令官は講演の別箇所で・・・

Western Pacific.jpg●グアムは戦力的に見て絶対に重要な要衝である。我々はグアムを拠点に作戦を遂行する必要があり、同時にグアムを防御する必要もある。グアムは多様な戦力の供給拠点であり、有事の作戦支援拠点としても重要な役割を担っている
●中国のロケット軍は継続的にその能力や射程を向上させており、グアムは360度から脅威を受けている。これらのドメインで攻撃を受けることを予期すべきである。

●我々がそれら脅威に対処しつつ作戦遂行する能力を確保することは極めて重要で、グアムの防御とグアムからの戦力投射能力を緊急に強化することは、私にとって極めて重要な任務である
●2023年度予算でペンタゴンは、一連の防御システム整備を提案しており、脅威が弾道や巡航ミサイルであっても、最終段階で回避機動するものであっても、それら脅威に対応できるものである必要がある
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F-22 F-35 2.jpg米空軍が初期型F-22の早期退役を2023年度予算で要望し、米議会調整が難航しているところですから、維持整備が大変で稼働率が低いF-22のグアム島などへの配備は今更考えにくいとすると、F-35をどこに配備するかです。

部隊編成をして配備を宣言しつつ、実質はローテーションを繰り返す「なんちゃって配備」の可能性もありますが、対中国有事の緒戦で作戦機能を喪失する可能性が高いグアムや日本の米軍基地に、5世代機を配備したくないと考えるのはべ軍事的合理性の観点から米空軍として当然のことであり、政治的レベルの判断としてやむなく従うことになるのでしょう。

Aquilino FDD3.jpg今現在、嘉手納や三沢に配備されている米空軍F-15やF-16が、対中国情勢緊迫時にそのまま「座して死を待つ」覚悟で留まるとはまんぐーすは思いません。しかしAquilino司令官の発言は重く、今後の展開に注目いたしましょう

在日米軍は有事にどうするのか?
「嘉手納で統合の航空機避難訓練」→https://holylandtokyo.com/2020/01/24/873/
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「岩田元陸幕長:在日米軍はグアムまで後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09 

沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13

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生みの親・太平洋空軍司令官がACE構想の現状を語る [米空軍]

自身がアラスカ基地司令官だった5年前に発想
マリアナ諸島、ハワイ周辺、日本と韓国でも
専門家は地域国全体への拡大が不可欠と

ACE3.JPG6月17日付米空軍協会webは、太平洋空軍司令官Kenneth Wilsbach空軍大将へのインタビュー記事を掲載し、同司令官がアラスカ基地司令官時代の2017年頃に発想してパワポスライドにまとめたACE(agile combat employment)が、米空軍全体に普及しつつある状況を感慨深く語り、太平洋空軍の配下部隊や同盟国日本や韓国にも少しづつ浸透し始めている様子と課題に触れています

ACE構想は、敵からの弾道・巡航ミサイル攻撃等で我の大規模作戦根拠飛行場が被害を受けることを想定し、戦力を施設不十分な地域内の基地に分散して柔軟に強靭に戦いを継続する考え方で、分散運用先の辺鄙な基地で、少人数で作戦機の再発進準備や燃料&弾薬の補給を行う体制が必要で、燃料弾薬の輸送や事前集積、必要な人員機材の輸送、少人数で対処するための多能力兵士育成、分散運用状態の迅速な把握と指揮統制などが求められる戦い方です

Wilsbach5.jpg具体的には、グアム島周辺であれば、アンダーセンを離陸した作戦機が施設不十分なテニアン島の飛行場に展開し、緊急空輸や事前集積された再発進用の燃料や弾薬を補給し、パイロット自身も給油や作業を手伝って再び離陸する訓練が行われています。地上要員として派遣される兵士は、本来の職種以外の任務も兼務し、複数の役割を果たすことが求められま

現状としてACE構想は、欧州米空軍が一応ながら初期運用態勢IOC確立を宣言していますが、太平洋空軍はまだの状態で、グアム島のアンダーセン基地を中心としたテニアン島やサイパン島を含む北マリアナ諸島で訓練検証が進められ、最近の「Valiant Shield」演習ではパラウに第5世代機を展開させる実績を積み上げているようです

ACE.JPGまたWilsbach司令官によれば、ハワイのヒッカム基地を中心に、周辺のハワイ諸島の島の飛行場や海兵隊航空基地に展開する訓練をF-22などを用いて行っているようです。

更に地域の同盟国にも範囲を広げ、日本の嘉手納・横田・三沢基地でも訓練やACE構想を意識した運用が日常ベースで導入されつつあり、航空自衛隊の部隊も同様の取り組みに着手していると同司令官はインタビューで語っています。また在韓米空軍については、北朝鮮問題もあり着手したばかりだが、オーサン基地を中心に周辺基地での再発進準備訓練を行っていると同司令官は説明しています

ただし、専門家からするとまだまだ不十分で、空軍協会ミッチェル研究所のDeptula所長は、「グアム周辺の北マリアナ諸島以外はどうするんだ? 中国のターゲティングを困難にするためには、より多くの西太平洋地域に分散拠点を確保する必要があるはずだ」と率直に指摘しています

Cooper 2.jpgまたAEIのZack Cooper研究員は、例えばフィリピン新大統領の安全保障面での米国との協力姿勢は不明確であり、他の東南アジア諸国との協力関係も現状では限定的で、中国は積極的にこれら国々への浸透を図っており、今後の米軍との連携強化は予断を許さない状況だと警戒しています

このように、決してACE構想の進展は満足できる状況ではありませんが、Wilsbach司令官はそれでも、5年前にはパワポ資料の構想だったACEが世界の米空軍の標準的考え方となり、アジア太平洋地域では全ての航空部隊がレベルの差はあるがACEの基礎を構築し、兵士の教育訓練も着実に進みつつあると評価しています
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ACE2.JPGACE構想の課題は以下の米空軍若手幹部の分析にあるように、空輸能力、兵士の多能化の限界、分散運用基地の確保、必要装備や燃料弾薬の事前集積準備予算などなど複雑多岐にわたっており、ACE生みの親Wilsbach大将の思惑通りに進めることは容易ではありません

「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/

Wilsbach司令官も、ハワイの島々にヒッカム基地から分散運用するだけでも、戦力の状況把握や維持整備の手配が大変で指揮統制が課題だと認めています。ただ、この方向は完全でなくても進めるべき方向であり、航空自衛隊は対中国最前線の航空戦力部隊として積極的に取り組んでいただきたいと思います

Wilsbach7.jpg同じインタビューでWilsbach司令官は、中露爆撃機による日本周辺の編隊飛行など脅威ではなく、「今のタイミングでロシアを支援する姿勢を見せることは、中国の国際社会での立場を悪くするだけの悪手だ」と語っています。
別記事ですのでご興味のある方はこちらを 

PACAF司令官はペンタゴン勤務がない異例の大将
日本ハワイ中東アラスカ韓国のみ勤務
「今すぐE-7ほしい発言」→https://holylandtokyo.com/2021/03/01/150/
「F-35はF-35らしく:F-22の失敗に学べ」→https://holylandtokyo.com/2020/11/05/379/
「Wilsbach太平洋空軍司令官の紹介」→https://holylandtokyo.com/2020/05/18/674/

米空軍の将来作戦コンセプトACE関連記事
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「欧州米空軍がACE構想の確認演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「F-22が岩国展開訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-13
「電動ヘリeVTOLで構想推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-02
「F-15EにJDAM輸送任務を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-04
「GuamでF-35とF-16が不整地離着陸」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-28
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/
「中東派遣F-35部隊も」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「三沢で訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21
「太平洋空軍がACEに動く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-12
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08

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ウクライナ侵略は衛星通信へのサイバー攻撃で始まっていた [サイバーと宇宙]

昨年11月の露の衛星破壊実験と共に「侵略の兆候」だったと
仏軍宇宙軍司令官が欧州の事前予想を証明したと

Viasat2.jpg6月15日、フランス軍宇宙コマンド司令官Michel Friedling少将がパリ郊外の軍事見本市で講演し、ロシアのウクライナ侵略は「地上軍の侵攻に先立って、サイバーや宇宙ドメインで開始された」と語り、「長く欧州軍首脳が想定してきたことが現実になった。大きな教訓だ」と表現しました

Friedling.jpg具体的にFriedling少将は、「ロシア地上部隊の進軍に先立つ2月24日、民間衛星通信会社Viasatに対してサイバー攻撃が大規模に行われたが、これは極めて興味深い大きな出来事だった」と述べ、米国加州に拠点を置く高速大容量衛星通信サービスを軍民両方に提供していた「Viasat」への大規模攻撃は、ウクライナの国家指揮統制をロシア侵攻を前に混乱させることを意図したものだった語りました

また、侵攻に先立つ数か月前の2021年11月15日、ロシア衛星「Cosmos 1408」を標的としてロシアが強行した地上発射型兵器による衛星破壊実験は、1500以上の宇宙ゴミを生み出し、ロシアも関与する国際宇宙ステーションにまで防御態勢を強いることになったが、

Viasat.jpg「ロシアが米国宇宙アセットを拒否する準備を完了していることを示す狙いがあったものと考えている」、「宇宙デブリにより、ロシア自身の宇宙アセット使用が妨げられても、必要なら衛星攻撃を実施する覚悟を示したと考えている」との評価をFriedling仏少将は披露した

更に同少将は、「Viasat」だけでなく、ロシア軍の装備や活動状況を衛星写真で提供してきた民間企業「Maxar Technologies」や、衛星インターネットをウクライナに提供してロシアの電子妨害からも守った企業「SpaceX」も、日々のウクライナ情勢に密接に絡むようになっており、敵にとってその役割はますます複雑曖昧に(blurry)なってきていると表現し、そして「これは将来への問いかけである」と話を結んでいます
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Friedling2.jpg「Viasat」への地上侵攻直前の大規模サイバー攻撃ついては、米英高官も5月中旬に明らかにしていたようですが、ロシアの脅威をより身近に感じる欧州大陸の大国軍人によって語られることに意味アリとしてご紹介いたしました

民間企業の国家間の軍事作戦に重要な役割を果たす・・・・。もちろん歴史上の戦いでも、民間企業が輸送や兵站支援を担ったこともあるでしょうし、兵器製造は民間企業が担っているのでしょうが、最前線の戦いに直結する情報や通信の中核を担うとなると事情は違ってきそうです

何をどこまで期待してよいのか、情報保全や平時の関係は如何にあるべきか・・・など、仏将軍ならずとも、経験のない課題に直面しそうです

関連の記事
「ロシアの電子戦に迅速対処したSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「ウクライナ侵略最初の一撃は宇宙で!?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/18/2732/
「露の衛星兵器試験で国際宇宙S危険に」→https://holylandtokyo.com/2021/11/17/2435/

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米陸軍はStryker装輪装甲車にAPSを導入するか? [Joint・統合参謀本部]

2014年の露によるクリミア併合に続き議論再び
対戦車砲や対戦車ミサイルから装甲車を守る防御兵器

APS.jpg6月2日、米陸軍の装甲車両(戦車・兵員装甲車)の防御システム関連イベントで米陸軍の担当大佐が、ウクライナ侵攻事案を受け欧州米陸軍からStryker装輪装甲車用のAPS(Active Protection Systems)装備についての問い合わせが来ており、脅威や最新装備について情報収集や分析を行っていると述べつつも、緊急限定導入は不可能ではないが様々な運用制限が必要で、本格導入にはより詳細で高度な評価分析が必要だと慎重姿勢を示しています

APS(Active Protection Systems)は、装甲車両(戦車・兵員装甲車)を対戦車砲や対戦車ミサイル攻撃から防御する装備で、高速で接近する砲弾やミサイルをミリ波等のセンサーで探知し、装甲車両から迎撃体を射出して装甲車両を防御する装備で、以下のYouTube映像でご紹介するように露米イスラエルなど複数の国や企業が実用化しています

市場にある各国のHard-Kill APS解説動画5分半
アブラハム戦車搭載のイスラエル製Trophy APS systemを含む


米陸軍は2014年のロシアのクリミア半島併合受け、2016年から19年にかけ、M1 Abrams 戦車とBradley歩兵戦闘車両とStryker装輪装甲車に対するAPS(Active Protection Systems)導入を検討しましたが、結局M1 Abrams戦車にイスラエル製Trophyを導入決定しただけで、他の候補装備を含め検討した結果、Bradley歩兵戦闘車両とStryker装輪装甲車には装備化しないことを2019年に決定しています

APS4.jpg当時Stryker装輪装甲車用で検討対象となったのは米国のArtis Corporation社製「Iron Curtain」で、最近はRheinmetall’社製のActive Defense System やM1戦車に装備化されたイスラエルRafael社製Trophy VPSも検討したようですが、どれも装甲車両のすぐそばで迎撃する装備であり、装甲車両周辺を移動する兵士や車両自体へのダメージが大きな懸念材料の一つとなり採用には至っていないと担当大佐が説明しています

その他にも、対処余裕時間がないため全自動で運用することになるAPSの車両による操作システムの成熟度や、APSが攻撃兵器を探知するために発するミリ波などが敵に察知される恐れ、鳥などの誤目標へのAPS作動等も指摘されており、最近米陸軍はレーザーによる飛来脅威探知センサー開発を目指し、ロッキード社と2021年2月に契約を結び、上記3車両等への搭載を構想しているようです

Jane’s社作成のAPS解説動画4分半(語り解説)


いずれにしても米陸軍の現在のAPSに対する基本スタンスは、上で述べた「装甲車両周辺を移動する兵士や車両自体へのダメージ」等々の課題が完全に解決されなくとも、前線からのニーズが強ければ、何らかの運用制限をかけたり、関連の対策を行って限定的に部隊配備することは可能であるが、全車両に標準装備する決定を下すためには、より詳細な評価や様々な場面を想定した試験が必要だ、とSBCT(ストライカー戦闘旅団チーム)担当のWilliam Venable大佐は講演で説明したようです

また米陸軍として、2022年には20億円程度の予算を確保していたが、2023年度予算案にAPS評価やテスト用の予算は含まれていないとのことです
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APS6.jpg重箱の隅をつつくような話題でしたが、高度で安価な攻撃用兵器が拡散する世界において、信頼に足る防御装備を開発することは難しいこと、そして、様々な限界を抱える一般的に高価な防御装備を搭載する防備は絞り込まざるを得ず、無人機を含む多様なセンサー情報を融合し、先手を打って敵を撃破し、攻撃を受けないような作戦運用を目指す方向にあると無理やり理解してかまわないのでは・・・とも考えております

ウクライナ侵略関連で話題の兵器
「大活躍スティンガー携帯防空ミサイルの後継選定」→https://holylandtokyo.com/2022/04/14/3123/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/

ウクライナの教訓関連
「米陸軍首脳が証言」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/
「陸軍訓練センターに教訓反映」→https://holylandtokyo.com/2022/05/12/3156/
「ウクライナ侵略は日本への警告」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-25
「露空軍に対する米空軍幹部や専門家の見方」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「中国への影響は?CIAやDIAが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/

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米議会が希少金属アンチモン国防備蓄増に動く [安全保障全般]

太平洋戦争時に日本が中国産を米に禁輸した悪夢再び
レアメタル一時は5兆円備蓄も、今や1千億円程度に
米国が国家備蓄や国内リサイクル強化に乗り出すも
2025年には備蓄が破産状態の危機感

antimony.jpg6月8日付Defense-Newsは、米国製兵器や国防装備品に不可欠な希少金属を中国やロシアからの輸入に大きく依存している現状に、米議会や国防省がウクライナ侵略を契機に動き始めた状況を報じ、特に太平洋戦争時に日本も中国産の米国への禁輸措置を行ったアンチモン(antimony)に危機感が高まっていると紹介しています

もちろん、チタンやタングステンやコバルトやリチウムにも危機感が高いようですが、貫通弾や爆弾から暗視眼鏡や核兵器まで、多様な国防装備品に不可欠なアンチモンへの危機感が高い模様で、下院軍事委員会が6月8日に関連法案を提出し、政府担当部署に対し、10月までに米議会に国防装備関連のアンチモン備蓄状況と、今後5年間の希少金属やレアアース(希土類)調達先に関する見通し説明会開催を要求したようです

antimony2.jpgまた米国防省に対しても、使用済み装備品やバッテーリーからの希少金属やレアアース(希土類)をリサイクルする政策立案を要求する法案になっている模様で、法案は6月末には国防授権法に組み込まれる予定となっているようです

法案提出に際し下院軍事委員会は、「委員会は、最近のロシアや中国を巡る地政学的な動向から、アンチモンの調達ルートが混乱・断然することをを懸念している」と記載したレポートを添付し、国防関連に不可欠な希少金属やレアアーズがこのままだと2025年度までに「破産状態」に陥ると危機感を訴えているようです

antimony5.jpgこのようなアンチモンへの危機感の背景には、太平洋戦争時に日本が中国産アンチモンの米国輸出を閉ざした歴史があり、米国がその当時はアイダホ州の鉱山からアンチモン抽出を行ったものの、同鉱山が1997年に閉鎖されて米国内で産出ゼロの現実もあるようです

また米国は、冷戦期にも希少金属やレアアース不測の危機感を持ち、1952年時点では合計5兆円規模の戦略備蓄を確保していたようですが、その後危機感が薄れるにつれ関連備蓄予算は削減され、2021年時点では備蓄総額が1千億円規模に大幅縮小している現実も危機感を増長しています

antimony6.jpg過去記事でもご紹介していますが、米議会が動く以前から、米国防省は5月に300億円規模の関連備蓄増強予算を要求し、超党派の議員グループが国防省の動きを支援する活動を議会内で開始しています。

ご参考まで、2020年の米政府機関報告書によると、アンチモン市場は中国が供給量一位で、ロシアとタジキスタンが2位と3位で続いているが、ロシアとタジクの追い上げで中国が車を奪われつつある状況にあるようです

ロシアによるウクライナ侵攻は、改めて様々な方面に潜む「国家の脆弱性」をあぶりだす形になっていますが、日本でも当然、このような問題がいくつもあるはずです・・・

希少金属レアアース関連記事
「中国依存脱却に米国企業への投資強化」→https://holylandtokyo.com/2021/02/25/269/ 
「レアアース確保に米国が大統領令:中国依存脱却へ」→https://holylandtokyo.com/2020/10/07/427/
「中国がレアアース輸出規制へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-06

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空輸可能なミニ原発デモ機製造企業決定 [安全保障全般]

約360億円契約で2024年度にプロトタイプ納入
その後アイダホ州の国立研究所で3年間の信頼性テストへ
「前線基地」とは言わず「不便な僻地基地」での使用を想定

Project Pele4.jpg6月9日、米国防省SCO(Strategic Capabilities Office)が推進している空輸可能なミニ原発開発「Project Pele」について、1~5メガワット級デザイン設計を競っていた2社の中から「BWXT Advanced Technologies」が選ばれたと同社が発表し、約360億円で2024年度に約40トンのミニ原発デモ機を納入する契約を結ぶと明らかにしました

Portable nuclear3.jpg2024年度の納入後、デモ機は「Idaho National Laboratory」で3年間にわたる信頼性等確認試験に臨み、「拡大するエネルギー需要とカーボンフリー削減に立ち向かう先進原子炉の重要性を、関係企業と共に認識している」と同社は声明文で述べており、Northrop Grumman, Aerojet Rocketdyne, Rolls-Royce and Torch Technologiesと協力して取り組むことが明らかにされています

ただ国防省SCOは、ミニ原子炉が敵の標的になる危険性や安全性を危惧する声が根強くあることが背景なのか、このデモ機開発&試験を行う「Project Pele」後に、追加でミニ原発を調達する予定や本格的導入する戦略を明確にはしておらず、企業選定開始時のミニ原発の能力説明や、国防省として化石燃料消費や商用電力依存量を削減する一般的な長期ビジョンが存在しているだけです

Project Pele.jpg一つの例として、2019年国防授権法の関連文書では、「2~10メガワット級を想定」「商業ベースで開発を進め、基地内で運用開始後は、運用民間会社から電力を購入する形式」「2027年までに米本土の米軍基地で1号機の固定デモ運用」「約9割の米本土米軍基地の電力は40メガワット級の発電所でまかなえるが、サイバー攻撃停電に備え、ミニ原発で2-10メガワット程度を確保したい」と構想が描かれていたようですが、

今では一般の基地での運用や前線基地での使用には言及しなくなり、「不便な僻地の基地」で使用との表現に限定するようになっています。

反対意見としてこれまで、ハドソン研のBryan Clark氏テキサス大学Alan J. Kuperman教授の考えを過去記事で紹介してきましたが、その概要は
●精密誘導兵器が発達・拡散する時代に、軍がミニ原発を使用すると初度攻撃の対象になり危険
●前線への化石燃料輸送負担が減る等のメリットはあっても、攻撃に脆弱なミニ原発の前線配備を受け入れる同盟国等があるか?

Project Pele2.jpg●「ミニ原発」でも放射性廃棄物等は出るので、その措置・輸送に大きな手間が
●NASAやエネルギー省が、極地や惑星探査用に開発するなら一案だが、国防省には不適切

●「不便な僻地の基地」で使用なら、なぜ「空輸可能」等の機動性にこだわり高価な開発をするのか?ごまかしだ!
●安全だと推進派が主張する小型カプセル化核燃料は、攻撃を受けた場合周辺に飛散して放射能汚染を拡散させる
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日本では、夏の電力需給ひっ迫で「原発再稼働」を求める声が高まっていますが、目立たないながら日本企業による「ミニ原発」(基本固定式:東芝など)の開発本格化ニュースも目にするようになっています

Project Pele5.jpg日本の国情を考えると何とか利用できないかと思いますし、山間部にトンネル掘って(廃線のトンネルを利用して)安全に利用できないものかと素人ながら妄想しております

でも米軍が日本に持ち込むとなると、パヨクの皆様から途方もない声が上がりそうなので、壁は高いだろうな・・・と思います

ミニ原発関連の記事
「米国防省が航空輸送可能なミニ原発配備へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/19/3147/
「ミニ原発反対論」→https://holylandtokyo.com/2021/06/29/1960/
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holylandtokyo.com/2020/03/11/779/
「米陸軍が前線での電力消費増に対応戦略検討」→https://holylandtokyo.com/2022/04/25/3138/
「国防省の気候変動対策」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/

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ウクライナのアジア太平洋への教訓は兵站能力 [Joint・統合参謀本部]

隣国へ侵攻の露が苦労も、西太平洋で米国はより困難
ハワイの巨大燃料貯蔵施設が閉鎖決定で危機感更に

Hicks3.jpg6月13日、Kathleen Hicks国防副長官がDefenseOneのイベントで講演し、露のウクライナ侵攻がアジア太平洋地域に改めて突き付けた極めて大きな課題(very hard lesson)は、米本土から離れた西太平洋戦域への燃料、水、食料、弾薬、部品等の物資輸送と事前集積などの兵站問題だと危機感を訴えました

そして同副長官は、「ロシアは自らが国境を接している国を侵略したにもかかわらず、大きな兵站支援問題に直面している。米国が太平洋をまたいで活動しようとするなら、より一層大きな兵站上の課題を抱えることになり、化石燃料への依存がそれを更に悪化させるだろう」、「ロシアの教訓から兵站の課題を理解し、それを西太平洋に移して立ち向かわねばならない」と述べています

PACOM logi.jpg副長官は「グアムやハワイや南洋諸島には、米軍戦力が作戦遂行に必要な化石燃料資源は全く存在せず、西太平洋で米軍基地を受け入れているホスト国も輸入原油に依存している状態だ」と現状を憂い、大平洋軍指揮官も「太平洋戦域で有事に、弾薬補給や燃料補給を行う能力が不足している」と警鐘を鳴らしています

このような状態を受け、国防省も太平洋軍要望として、2027年までを対象とした兵站や装備の維持整備能力強化や装備の事前集積強化のため、PDI(Pacific Deterrence Initiative)構想実現のため3.2兆円規模の予算要求を2023年度予算要求として持ち出し、「兵站態勢や前線の作戦を支援する体制が、強固に防御された戦域を支えるには不十分だ」と訴えています

Red Hill Bulk.jpgこの現状について、元太平洋軍上級顧問でAEI研究員であるEric Sayers氏は、貯蔵燃料の地下水汚染問題で閉鎖が決定したハワイ真珠湾の「Red Hill Bulk」燃料貯蔵所の代替施設構想もない状態で、西太平洋戦域の兵站事情は悪化し続けていると懸念し、

「ウクライナ侵略は我々に、米国艦隊や大規模空輸を支える給油能力なしでは、米軍戦力の投射が単純に不可能なことを改めて思い知ららせてくれた」、「端的に言えば、米議会は艦艇規模や戦闘機数の増強を考えるなら、同レベルでアジア太平洋地域での燃料供給など兵站問題にも目を向けるべきだ」と訴えています
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PACOM logi2.jpg中国の台湾侵攻など中国の西太平洋進出に際しては、「容易に回復できない既成事実化:a fait accompli」を許さないように米国や日本は対処する必要があると言われ、そのような作戦構想がWar-Game等を通じて検討されていると認識しているのですが、米国や西側諸国はどの程度戦いを継続可能なのでしょうか?

また仮に、中国がロシアのように、前線兵士の犠牲を苦にせず、3か月以上のネバネバ中期戦に出た場合、どのような状態になるのでしょうか? ウクライナではドイツやポーランドなど陸続きの周辺国が支援物資の輸送拠点になりますが、西太平洋ではどうなるのでしょうか・・・・・? 不安しかありません

兵站支援関連の記事
「ウクライナへの補給物資輸送拠点」→https://holylandtokyo.com/2022/05/11/3197/
「米空軍改善提案の最優秀:燃料と水輸送負担軽減策」→https://holylandtokyo.com/2022/05/06/2781/
「ウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/

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Asia/Africaへの中国無人機の売込みに警鐘 [安全保障全般]

ロシアの市場を乗っ取って東南&南中アジアへ
アフリカ市場は言うに及ばず
米国が人道懸念で売却を制限する中、低価格を武器に

Wing Loong II.jpg中国による精力的な無人機開発と、低価格と使用制限なしを武器にしたアジアやアフリカ諸国への猛烈な売込みが、まもなく米空軍にとっても大きな問題として立ちはだかることになろうと、米国防大学や米空軍大学のイベントで専門家が訴えています

米国は以前からこの問題に気づいており、トランプ政権時に「人道主義」を前面に出したオバマ政権時の方針を大きく転換し、武器輸出に積極的な姿勢を見せ、「MTCR(ミサイル技術管理レジーム)」解釈変更による攻撃型無人機輸出への道を進んでいました

Wing Loong II2.jpgしかしバイデン政権は、発足当初こそ中国やトルコ等による中東などへの無人機輸出攻勢などを意識し、武器輸出に関するトランプ政権の方向性を維持する姿勢と報じられたものの、全く動きがみられない状況が続いています

米国の武器輸出に慎重な勢力は、イエメン等の紛争地域で民間人が犠牲になる恐れや地域の軍事バランスを不安定化させる懸念、軍事技術の海外流出を懸念材料としていますが、米国防省で武器輸出を取り仕切るDSCA(Defense Security Cooperation Agency)トップだったHeidi Grant氏は、米国が進出しなければ他の競争者(中国など)が進出するだけだと警鐘を鳴らし続けながら、状況が改善しない中で昨年11月に怒りの辞任をしています

本件に関し米国専門家は(6日付米空軍協会web記事より)
Mulvaney CASI.jpg●米空軍大学China Aerospace Studies InstituteのBrendan Mulvaney所長はインタビューに応え、「中国が精力的な研究開発に取り組む無人機は、低価格かつ使用制限がないことから発展途上国が大量に購入し、軍事的に優位なロシアにウクライナが巧みに使用して対抗しているようになろう」と述べ、
●「小規模国家が、米国が想像していなかったような方法で大量のドローンを使用し、米国を攻撃してくる可能性がある」と述べ、「米国は高出力マイクロ波による無人機の群れ対処法を研究し、有効性も確認されているが、いつどんなタイミングでもそのような対処兵器が使用可能とは限らない」とその脅威に警鐘を鳴らした

IDA.jpg●また国防分析研究所(Institute for Defense Analyses)のDavid R. Markov研究員は、5月17日の国防大学での「中露協力」に関するパネル討論で、「成長を続ける中国軍需産業が生み出す無人機は、低価格なうえに、誰に対してどのように使用できるか制限がなく、特定の地域の国にとっては魅力的な兵器となる」と説明した
china uav.jpg●そして同研究員は、「中国の目標は無人機の世界市場の大半を確保することであり、特にロシアが売り込んでいた「東南&南中アジア」や、反政府活動やテロリストで国が混乱しているアフリカ諸国で、ロシア製を抑え込んで無人機市場を支配しようとしていると語った

●更に同研究員は、「かつて中国が成功できなかった市場で、中国が巨大なマーケット獲得の可能性を目の前にしている」と分析し、まもなく米空軍の大きな問題としてのしかかってくるだろうと訴えた
●そして「低価格で運用コストが安い無人機を、それらの国が導入しない選択肢はない」、「我々はこの問題に対しほとんど何も対処していない。考えようとしているかも怪しいし、対処の策については全く考えていないと言い切れる」とまで述べた
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Grant3.jpgなお、昨年11月にDCSA長官を「怒りの辞任」したHeidi Grant女史は、辞任後すぐにボーイング社の「defense, space and government services sales teams」担当副社長に就任しています。KC-46やT-7Aや大統領専用機VC-25Bで多額の損失を出しているボーイングで、いかがお過ごしでしょうか?

米国の無人機輸出の障害だったMTCR(ミサイル技術管理レジーム)の縛りに関しては、「搭載能力500kg以上かつ射程300km以上の無人航空機」輸出を「原則禁止」としてきたMTCR規定の解釈を米国として2020年7月に変更し、同範囲の無人機でも「速度が時速800km/h以下の無人機」は輸出可能とすると発表したはずです。

「MTCR解釈変更で無人機輸出へ?」https://holylandtokyo.com/2020/07/27/581/

これで諸外国から要望が多いMQ-9 Reaper(巡航速度370 kph)やRQ-4 Global Hawk(同575 kph)が輸出可能になったはずですが、Grant女史が2021年11月に辞任したように、バイデン政権下で輸出話は停滞したままと認識しています。

米国の無人機&武器輸出の緩和問題
「兵器輸出責任者が怒りの辞任」→https://holylandtokyo.com/2021/10/19/2343/
「半年以内に武器輸出制限を緩和したい」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-18
「MTCR解釈変更で無人機輸出へ?」→https://holylandtokyo.com/2020/07/27/581/
「国防次官:半年で武器輸出規制緩和へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-18
「MTCRの縛りで中国に無人機輸出で負ける」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-04
「2018年の武器輸出促進策」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-10-2
「中国無人攻撃機が中東で増殖中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-10-06-2
「輸出手続きの迅速化措置」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21-1
「肩透かし無人機輸出緩和」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-3
「4月にも武器輸出新政策か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-18-1
「トランプが武器輸出促進ツイート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-06
「無人機輸出規制の見直し開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-04

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カンボジアが中国支援の港湾施設の中国使用否定 [安全保障全般]

昨年6月から西側が懸念する南シナ海沿岸施設
米豪支援の施設を取り壊した後に中国支援施設を
6月8日に起工式が行われ・・・

Ream Naval Base.jpg6月12日、3年ぶりに開催されたアジア安全保障会議(Shangri-La Dialogue@シンガポール)でカンボジア国防相が、南シナ海沿岸のカンボジア海軍基地内に中国の資金援助で建設が開始された港湾施設を、中国に「exclusive」に使用させることはないと強く否定し、カンボジア国内に外国軍基地が存在することを同国の憲法が認めないと主張しました

昨年6月の記事で取り上げたように、2021年6月頃から西側メディアや研究機関が衛星写真や入手した秘密協定案等を証拠に、カンボジアの「Ream Naval Base」に中国資金で港湾施設建設が計画されており、その準備に同基地内に米豪が2012年建設してカンボジアに提供した施設(海洋監視ボート用の保管&整備施設)を取り壊していると警告を発してきたところです

Ream Naval 7.jpgこれに対し、Shangri-La Dialogue 開催直前の6月8日に、中国支援施設の建設起工式典をメディアも招いて大々的に行う「大胆不敵」な行動に出たカンボジア国防相は、12日の会議「Q&Aセッション」で「Ream海軍基地内の施設建設は、カンボジア軍の施設近代化要求に基づき実施を決定したものであり、(中国による)排他的な使用などあり得ない」と述べ、米WP紙等の「中国が排他的に基地の一部を使用する」との報道を「侮辱的な報道だ」と批判しました

Ream Naval Base4.jpg西側専門家の視点の一つとして6月12日付Defense-News記事は、米海軍予備役でアジア太平洋軍事専門家のBlake Herzinger氏が「Foreign Policy誌」に寄稿した内容を取り上げ、「6月8日の式典で明らかにされた事実は、この建設案件が僅かな結果しかもたらさないことを示している」、「WP紙が中国に提供される指摘したエリアは、0.3平方㎞の小さな地籍で、カンボジア政府が中国のパワープロジェクションのために使用に同意したと考える理由はほとんど見当たらない」とのコメントを紹介しています

カンボジア国防相はShangri-La講演でこのほかに、国防能力の改善は地域や世界の安全保障環境変化に基づき全ての国が取り組んでいることであり、技術の発達に追随するため国防支出が増加することも予想されることである等と主張を展開したようです

Ream Naval 8.jpgその他Defense-News記事は、SNS上などで出回っている画像から、カンボジアの港で中国製の「AR2 long-rangeロケット」や「Type 90B multiple rocket launcher」、 「155mm SH-1 self-propelled howitzer」が、総数は不明ながら目撃されていると伝えています
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Blake Herzinger氏がどんな方かも存じ上げませんが、この雰囲気で上記のような発言を行う「勇気」に感心いたします。

Ream Naval Base5.jpg同カンボジア海軍基地周辺では、北京政府と関係が深い中国リゾート開発会社による沿岸地域での謎の「リゾート開発」が始まっており、その一つとして同基地5㎞北の湾内で目的不明の埋め立て工事が進んでいる様子もCSISによる衛星写真分析で確認されており、疑って見ておく必要があることは間違いなさそうです

2021年6月時点での関連記事
「カンボジア海軍基地への中国進出警戒感高まる」→https://holylandtokyo.com/2021/06/18/1921/

めっきり減った南シナ海の話題
「海没のF-35Cを37日で回収」→https://holylandtokyo.com/2022/03/07/2794/
「中国大型機16機がマレーシア威嚇飛行」→https://holylandtokyo.com/2021/06/03/1868/
「比に三菱製レーダー提供へ」→https://holylandtokyo.com/2020/08/31/536/
「航行の自由作戦活発化???」→https://holylandtokyo.com/2020/02/13/827/
「初のASEANと米国の海洋演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-03
「次期米軍トップが中国脅威を強調」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14-1
「海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13
「F-35搭載艦艇がFONOP」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-07
「中国艦艇が米艦艇に異常接近」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-10-06-1

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初期型F-35を活用して敵役を演じる部隊編成 [亡国のF-35]

実戦使用不可で、改修費が捻出できない初期型機体の有効活用

F-35 65th Aggres4.jpg6月9日、米空軍はF-35A戦闘機で構成する初めてのアグレッサー部隊(訓練演習で敵機部隊を演じる専門組織。敵の戦術等を普段から研究し米空軍を鍛える役割)として、「第65アグレッサー飛行隊:65th Aggressor Squadron」を航空戦術研究のメッカNellis空軍基地で再立ち上げし、再立ち上げ式典(reactivation ceremony)を行いました

式典には来賓として米空軍戦闘機族のボスであるMark D. Kelly空軍戦闘コマンド司令官も参加し、式典に先立って自らF-15Eに搭乗して新アグレッサー飛行隊長が操縦するF-35と空中戦を行って技量を確認したようです

F-35 65th Aggres3.jpg航空戦術研究のメッカとご紹介したNellis空軍基地は、米空軍の精鋭パイロットを養成する「Weapons School:通称トップガンスクール」が所在するほか、実戦同様の訓練環境を提供する大規模航空演習「Red Flag」を実施する基地でもあり、F-16戦闘機で敵機を演じる「第64アグレッサー飛行隊」も所属しています

「再立ち上げ」とご紹介した「65th Aggressor Squadron」は、WW2時の1942年にP-40プロペラ戦闘機で創設され、その後P-47に機種更新され、1969–1989年の間はF-5Eでソ連機の戦術を模擬しました。いったん閉鎖し再開後の2005–2014年の間はF-15で編成され、その後再び休眠状態になっていましたが、今回F-35Aで復活再立ち上げとなったものです

F-35 65th Aggres.JPGただ、おめでたいニュースにケチをつけるようで申し訳ないですが、フロリダのエグリン空軍基地から「65th Aggressor Squadron」に配属される9機のF-35は、F-35がまだ開発途中だった頃に製造された初期型の実戦投入不可な「non-combat-coded aircraft」で、実戦投入可能にするには多額の改修費が必要で米空軍が対応に苦慮していたものです

開発が大幅に遅れ、要員養成や部隊建設準備用に装備や完成度不十分と知りつつ製造した機体が、将来問題になると知りつつ見切り発車した「開発と製造を同時進行」の「負の遺産」ですが、このような形で表面上は「有効活用舞台」を準備できた・・・と米空軍は説明するのでしょう

Kelly2.jpg式典参加のKelly司令官は、「PRC(中国)が開発する第5及び第6世代戦闘機戦闘機の脅威を受け、我々はLangley, Elmendorf, Hill, Eielsonの各基地に配備された実戦部隊の最新鋭機を(敵機役として)使用しなければならなかったが、本日(戦術研究の拠点である)Nellis空軍基地に第5世代機の能力を演じることが可能な専門部隊を立ち上げた」、「確かな脅威が存在する中、第5世代能力を持つ敵機役が訓練で必要ならば、その役割は専門部隊が担う必要がある」と同飛行隊の重要性を訴えています

米空軍では前線部隊からの強い要求を受け、第5世代機を敵機役とした演習が2021年夏の「Red Flag 21-3」から実施されていたようですが、Kelly司令官が言及したように専門知識や能力が不足する空軍内5世代機部隊が「臨時の敵役」を務める形で実施され、訓練効果が「いまいち」だったようで、「負の遺産」の有効活用ですが米空軍作戦機部隊からは大きな期待が寄せられています

F-35 65th Aggres5.jpgF-35アグレッサー部隊「65th Aggressor Squadron」の初代隊長はBrandon Nauta中佐で、お写真から拝見すると東洋系のようなお顔立ちですが、2020年4月の「Red Flag アラスカ」にF-16アグレッサー部隊員として参加された記録があるので、航空自衛隊の中にもご存じの方がおられるかも・・・
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30数年ぶりに続編が公開されたトム・クルーズ主演の「トップガン・マーベリック」が大ヒット中で、ハリウッド映画の王道を行く娯楽大作としてまんぐーすも音響の良い映画館で大いに楽しませていただきました。

topgun maverick.jpgこの映画の撮影に全面協力してパイロット不足解消に必死な米海軍に負けじと、米空軍も「Weapons School:通称トップガンスクール」所在のNellis空軍基地とアグレッサー部隊のアピールに懸命な模様です

初代の映画「トップガン」公開時には、米海軍パイロットへの志願者が10倍以上になったらしいですが、続編大ヒットの勢いに乗って、米軍のパイロット志願者不足がどこまで解消されるかにも注目です

米空軍パイロット不足関連
「コロナ後の民間との操縦者争奪戦」→https://holylandtokyo.com/2021/10/17/2271/
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-20
「ヘリ操縦者養成から固定翼削除試行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-06
「米空軍がパイロット募集の身長基準を廃止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-23
「Fly-only管理の募集中止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-15
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-19
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3
「下士官パイロット任務拡大?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-22
「仮想敵機部隊も民間委託へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-09-1
「不足さらに深刻化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-10

トップガン関連の記事
「太平洋軍司令官はトップガンパイロット」→https://holylandtokyo.com/2020/12/07/337/
「さらに公開延期でも」→https://holylandtokyo.com/2020/04/12/722/
「予告編第2弾」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-18
「予告編公開:映画トップガンの続編」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-20-1

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米空軍が空中給油機のミニマム必要数を削減へ [米空軍]

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2019年国防授権法での479機を455機へ削減要望
優先任務と予算状況から「全てを常に実施できるわけではない」

KC-Z 2.jpg6月1日、Kendall空軍長官がヘリテージ財団で講演し、従来479機ミニマム必要だと主張していた空中給油機について、財政状況も踏まえて優先任務を再考した結果、ミニマム必要機数を5%削減して455機にするよう要望すると述べました。なお米空軍は、2021年末現在で給油機を各機種合計で490機を保有しています

この479機とのミニマム必要機数は2019年国防授権法で規定されており、削減には米議会の了解が必要になりますが、米空軍は空中給油機の重要性を訴え続けてきており、「中国からの脅威を勘案してもミニマム455機で適当」と同長官が突然言い切って削減案を出され、「財政状況も踏まえて優先任務を再生した結果」と言われると、本当に大丈夫なのか? 何が変化して削減可能と判断できたの?・・・と問いたくなります

Kendall air 2.JPG同講演の流れ全体を概要報道からは把握できませんが、kendall長官はまた、「現状の脅威を考えると、大規模戦争を戦いつつ、同時発生する緊急事態にも対処可能な態勢を確保するのは、現状精一杯である」、「米空軍は全てを常に実施できるわけではない」と厳しい脅威環境と戦力のやりくりを訴えていますが、そんな中でも、ミニマム機数削減を直球でぶつける論理展開に国情の違いを感じます

同講演を報じる1日付Defense-News記事は、2021年11月にハドソン研究所が実施した研究が、米空軍の空中給油機戦力は高齢化して脆く、新たな任務に対応する余地はほとんどないと指摘し、大規模戦争の遂行能力確保は怪しくなっていると警鐘を鳴らしていると併せて紹介していますが、同記事の記者もKendall長官発言をどのように理解して紹介すべきか困惑しているように思えます

Kendall SASC.jpgまた空軍長官は空中給油機の将来について、空中給油機が紛争時に撃墜される恐れが高まっている点を懸念しているとも述べ、戦闘時の生存性が高い給油機を将来KC-Zで具現化する検討を開始したところだとも語っていますが、答えを見つけるまでには時間が必要だろうとも語っています

KC-46に続く「KC-Y」と「KC-Z」については、4月中旬に相次いで空軍長官とBrown空軍参謀総長が両方とも機種選定の可能性は小さいだろうと語り、更にBrown大将は「KC-YやZには、KC-46を最新技術で改修近代化することで対応できるのではないかと考え始めている」、「KC-Zに関し、次期制空機NGADに追随して敵空域まで侵入する従来運用構想は、今は持っていない」と言い切っており、今更「生存性」議論を蒸し返す空軍長官の頭の中が見えなくなってきました

KC-Z.jpgこのヘリテージ財団講演からは、次期制空機NGADに関する「EMD phase入り」発言を先日ご紹介しましたが、今後の展開に注目する必要がある発言が空中給油機関連でも飛び出しています

米空軍空中給油機の整備方針を大転換
「KC-XYZの再検討再整理表明」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/
「KC-Yにロッキードが名乗り」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
「つなぎ空中給油機KC-Yに着手へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-05
「2016年当時の空中給油機後継プラン」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-09-22

KC-46関連の記事
「RVS改修案に合意」→https://holylandtokyo.com/2022/04/27/3181/
「恒久対策は今も未定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-11
「50機目受領も恒久対策未定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-11
「KC-YもXと同じ対決へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
「KC-46に更に2件の最高度不具合発覚」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-18
「F-22とF-35のデータ中継装置を搭載へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-22
「KC-46空中給油機を一部の任務に投入開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-25
「恒久対策は2023-24年から」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-30

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F-2後継開発仲間?:英国がTyphoonレーダー換装推進 [安全保障全般]

2022年末プロトタイプ納入で第1弾予算終了
更なるハード&ソフト開発予算確保で2030年部隊運用狙う
英はスウェーデンと次世代TEMPEST戦闘機開発と並行して

ECRS Mk2 3.jpg5月25日までに英国防省幹部が記者団に、Typfoon戦闘機搭載の機械走査式レーダーを電子走査式AESAレーダー(ECRS Mk2:European Common Radar System)に換装するための追加予算を英国政府に要望しており、まもなくBAE社&Leonardo社と契約を締結することになろうと明らかにしました

このTypfoon用「ECRS Mk2」レーダーはAESA(active electronically scanned array radar)で、2022年末までにプロトタイプを英国防省に納入&量産用レーダー重要設計審査を通過する契約を約500億円で2020年に結んでいますが、それ以降の開発予算契約と資金確保が今話題になっているところです

ECRS Mk2 4.JPGTypfoon戦闘機は「英独伊スペイン」の共同開発戦闘機で、最近の海外売込みではF-35に連戦連敗ですが、欧州内では最低限の需要を確保して欧州の戦闘機開発技術伝承を担っている欧州の主力戦闘機です。まぁ・・・欧州の次世代戦闘機開発は「英スウェーデン」VS「仏独伊」の構図となって対決ムードではありますが・・・

この話題を取り上げたのは、最近日本で、最終的な落としどころは不明ながら米国を強くけん制する狙いもあり、F-2支援戦闘機(戦闘爆撃機の意味に近い)の後継開発を英国とタッグを組んで(エンジンはロールスロイスと、ミサイル等主要搭載品をBAE社と)行う方向で協議が行われていると報道されているからで、少し欧州の戦闘機パーツ開発状況を眺めておこうとの狙いからです

Typhoon5.jpgなおTyphoon共同開発国の「英独伊スペイン」はそれぞれにレーダーの換装に取り組んでおり、独とスペインは既に「MK2」よりも性能の劣る「MK1」への換装を進めめており、イタリアは英国からの誘いを受けて「MK2」検討チームを立ち上げたところのようです

5月25日付Defense-News記事によれば
●24日に国防省高官はBAE社Warton工場で「我々は大きな関連契約に向け進んでいる」と述べ、25日に英国防省報道官は「ECRS Mk2搭載に向けたしっかりした計画と予算案を英国政府に提出しており、最終決定を待っている」と記者団に語った
ECRS Mk2 2.jpg●「MK2」AESAレーダー開発をリードするLeonardo社報道官は、「MK2レーダーのハード及びソフト開発をさらに進化するには追加予算が必要で、英政府の認可が下り次第、Typhoon戦闘機へのレーダー融合に取り掛かりたい」と語っている

●英国防省は「MK2」を、保有するTyphoonの最新型「Tranche 3」40機に搭載する予定らしいが、資金が確保できれば「Tranche 2」機体にも換装して搭載したい模様である
●想定される「MK2」契約では、新レーダー搭載機体保有部隊の初期運用態勢確立が2030年と想定されている模様だが、それに先立って最初の「MK2」が何時英空軍に提供される予定なのかは情報がない

ECRS Mk2.JPG●搭載機数も導入時期も予算次第となっている模様で、英国防省高官は「誰もが、より多くのMK2を、より早くと望んでいるが、全てはよりハイレベルな戦略的決定に委ねられている」とコメントしている
●英国がリードする次世代戦闘機TEMPEST計画(2035-2040年導入開始構想)もスウェーデンと協力して進んでいるが、Typhoonを最新状態で維持することにも着意されており、MK2レーダー以外にも、より強力なコンピュータ搭載や、大型スクリーン導入の新コックピット等も検討されている
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Typhoon1.JPGGWの休み明け早々に飛び出した「F-2後継機開発は事実上の日英共同開発機となり、政府は年末までに開発の全容を決定する」報道ですが、どこまで本気なんでしょうか? 

全く状況をフォローしていませんが、グダグダのF-35維持管理に翻弄されながら、「道なき道」英国との戦闘機共同開発に投入する人材や諸資源の余裕が航空自衛隊にあるのでしょうか? そんなに戦闘機に資源投下して大丈夫なんでしょうか???

英国防予算計画「Defence in a competitive age」関連
「英空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2021/05/19/1493/
「英国の138機F-35購入計画は多くて60-72機へ!?」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/

欧州の戦闘機開発
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2

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米宇宙軍が地上移動目標情報収集技術を産業界に求める [サイバーと宇宙]

企業から関連情報を収集する「逆産業デー」開
宇宙からの送信データの秘匿化と情報分析のAI利用が焦点

Space tactical ISR4.jpg5月16日の週に米宇宙軍が、急速にニーズが高まる宇宙アセットでの地上移動目標情報収集&分析技術に関する最新情報を民間企業から聞き取る「逆産業デーreverse industry day」を開催し、特に「宇宙からのデータ送信時のデータ秘匿化」や「膨大な情報分析へのAI活用」に強い関心を持っていると宇宙軍幹部が説明しました

普通の「産業デー:industry day」は、米軍や国防省が兵器開発の構想や要求性能について関連企業を集めて説明を行い、企業側から実現可能性や課題に関する意見聴取を行う場ですが、今回は将来宇宙軍の重要な任務となることが明確になりつつある「戦術的ISR情報収集」、つまり「宇宙からの地上移動目標情報収集」に関し、最新技術を持つ企業から技術動向を収集しようとの試みが行われまし

Space tactical ISR.jpg宇宙軍は米空軍と連携し、過去1年間「宇宙からの地上移動目標情報収集」の可能性と関連技術についてレビューしてきており、この春に結果をまとめるようですが、その締めくくりのイベントとして「逆産業デー」が開催された模様です

宇宙軍は米空軍との協力の他、陸海海兵隊とも「宇宙からの地上移動目標情報収集」について検討するため特別チームを編成しており、各軍種からの情報ニーズを念頭に置きつつ、対処法検討に取り組んでいます。

以下では、この「逆産業デー」に」関する宇宙軍幹部の関連発言をご紹介いたします

5月19日付Defense-News記事によれば
Guetlein2.jpg●18日宇宙システムコマンド司令官Michael Guetlein中将はCSIS講演で、「宇宙軍の関連プロジェクト長やメンバーが部屋に陣取り、関連情報を開発したり、応用法を編み出した企業関係者の来訪を歓迎して話を聞いている」、「我々が知らないような、産業界の第一線で開発されつつある技術や関連情報を得る機会を設けた」と説明している
●また同中将は、従来米国政府の宇宙機関NROやNGIAは衛星画像入手やその分析に専従していたが、「宇宙からの地上移動目標情報収集」へのニーズの急速な高まりや、衛星打ち上げのコスト低下がパラダイムシフトをもたらしつつあるとも語った

●宇宙軍作戦・サイバー・核担当部長Chance Saltzman中将は19日の記者懇談会で、「産業界や情報分析コミュニティーとの意見交換を踏まえ、将来の宇宙からの地上移動目標情報収集がどのようにあるべきかを固めていきたい」と説明している

Saltzman2.jpg●Saltzman部長はまた、現在感じている「ギャップ」(技術不足分野)について、まず「宇宙から送信される情報のセキュリティ強化」だと述べ、「極めて重要ながら脆弱な情報を可能な限り保護する技術が必要だ」と強調した
●更に同部長は、「宇宙センサーから提供されるであろう膨大な情報処理に担当者が忙殺されないよう、当然のこととしてAIや機械学習技術が活用される手法に強い関心を持っている」と述べている
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米空軍がE-3を退役させてもE-7に期待する役割は限定的で、将来的には宇宙アセットからの移動目標情報も含めた各種センサー情報を融合して使用する構想をぶち上げていましたが、宇宙軍としての取り組みをご紹介するのは初めてとなりました。

Space tactical ISR2.jpg今になって必死に民間企業から情報取集していて「大丈夫か?」・・・とも思いますが、中国A2AD網の内部に従来のセンサー機を送り込むことが難しいとなれば、宇宙アセットに頼るほかありません。進展に期待いたしましょう

最近の宇宙軍関連の記事では、「宇宙状況把握のため衛星を地上観測から宇宙観測用へ」との取り組みを取り上げましたが、「戦術的ISR情報収集」、つまり「宇宙からの地上移動目標情報収集」との関係はどうなっているのでしょうか? まだまだ宇宙関連の話題には「疎い」まんぐーすです

最近の宇宙関連記事
「宇宙状況把握のため衛星を地上観測から宇宙観測用へ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/22/2825/
「7か国で宇宙作戦ビジョン制定」→https://holylandtokyo.com/2022/02/25/2753/
「ウクライナ紛争の最初の一撃は宇宙で!?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/18/2732/
「熱核推進システムを応援」→https://holylandtokyo.com/2022/01/27/2622/
「小型衛星核推進装置を求め企業募集」→https://holylandtokyo.com/2021/09/28/2233/
「同盟国から協力申し出急増中」→https://holylandtokyo.com/2021/08/04/2064/
「核熱推進システム設計を3企業と」→https://holylandtokyo.com/2021/04/20/111/
「衛星延命に企業と連携」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-17
「画期的:衛星が推進力衛星とドッキングで延命へ」→https://holylandtokyo.com/2020/02/28/839/

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