Lord次官:半年以内に武器輸出制限を緩和したい [米国防省高官]
あくまで「hope to」で実現可能性は未知数
最新兵器の輸出緩和に踏み込めるか、技術保護と利益のはざま?
16日、Lord調達担当国防次官が講演し、米国製兵器の輸出規制を今後半年以内に見直し、米国が諸外国にとって引き続き最新兵器の提供国であり続けるよう取り組みたいと「熱く」語りました。
背景には、米国が技術漏洩への懸念や人道的配慮などから兵器輸出を自己規制する中、またMTCRのような兵器技術拡散防止枠組みに縛られている間に、中国がコピー兵器を遠慮容赦なく中東や第3諸国(古い)と呼ばれる米国の友好国に売り込んでいる現実があり、同時に米国防予算が頭打ちの中、米産業界から国内市場がこの状況では軍需部門を維持できないと泣きつかれている現状があります
この問題は国家予算を絞り始めたオバマ政権時代から顕在化し、トランプ政権になってからの2018年には、「輸出手続きの迅速化」や「最新技術でない兵器の規制緩和」などが行われてきましたが、Lord次官は最新兵器についても、先端技術の保護措置を講じつつ輸出を可能にし、厳しさを増す軍需産業の商売を助けたいとの意向のようです
16日付Defense-News記事によれば
●共和党系のReagan Foundationで講演したLord次官は、「(兵器の)輸出制限に、最近数か月熱くなって(passionate)取り組んでいる」、「今後6か月以内に、特に輸出可能な兵器技術の範囲をよりオープンにして拡大したいと強く希望している」と語った
●そして「我々が兵器技術を向上させている一方で、輸出可能な範囲を拡大していないことで、兵器輸出の国際市場において競争力を失いつつあることを懸念している」、「典型的な例として、これまで顧客であり、将来においても有望な顧客であったはずの中東諸国が、中国やロシアから兵器を輸入し始めており、インドもその方向に向かいつつある」と強い懸念を示した
●この兵器輸出制限改革は以前から何度も議論されてきた話題で、2018年にトランプ政権が新たな方針を示した際も、「戦略的に考える必要がある」とLord次官の講演での発言と同様の言葉を使用し、21種類の弾薬やミサイル、複数の技術範囲について政府の許可なしで輸出可能とした経緯がある
●しかし、当時新たに許可された品目は、既に米国が技術を独占したものではなく、広く一般市場に流通し始めていたもので、輸出許可しなければ米国産業の市場を狭める恐れのある兵器や装備品であった。Lord次官は今回、従来の範囲では不十分だと考えているようだ
●一方で同次官は、「焦点を絞った議論を続けている。多くの最新兵器は最新技術や最新データを搭載しており、我々はそれら最新技術が輸出した兵器から簡単に取り出されないように細心の注意を払う必要がある」と課題を語っている
●更に同次官は、カナダ、英国、豪州を含めて米国軍需産業基盤と見なす「NTIB:National Technology and Industrial Base」との枠組みの関係強化も追求したいと述べ、より軽易に産業基盤として協力できる体制にしたいと意欲を示した
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剛腕で名の知れた同次官でさえ「hope to」との表現で語っているように、実現可能性については未知数で、コロナで混乱する世界経済の中で様々なプレーヤーがうごめく中、すんなりと事が進む雰囲気ではないようです
MTCRに縛られ、一定規模以上の無人機がミサイルとみなされ輸出自粛を迫られている様子や、輸出した先で民間人被害を発生させるとの人道上の懸念から輸出に踏み出せない西側諸国と、何の縛りも心の痛みも感じない中国やロシア・・・。
「良貨は悪貨に駆逐される」との言葉を思い出しました。でもこの間SNS上で、「世界から羨望や憧れの念を持たれない国が、覇権国になった例はない」との言葉を目にし、そうであってほしいと願う次第です
米国の武器輸出管理の緩和問題
「MTCRの縛りで中国に無人機輸出で負ける」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-04
「2018年の武器輸出促進策」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-10-2
「輸出手続きの迅速化措置」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21-1
「4月にも武器輸出新政策か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-18-1
「トランプが武器輸出促進ツイート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-06
「無人機輸出方針は期待外れ?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-3
「違法?サウジに緊急武器輸出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-25
ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
最新兵器の輸出緩和に踏み込めるか、技術保護と利益のはざま?
16日、Lord調達担当国防次官が講演し、米国製兵器の輸出規制を今後半年以内に見直し、米国が諸外国にとって引き続き最新兵器の提供国であり続けるよう取り組みたいと「熱く」語りました。
背景には、米国が技術漏洩への懸念や人道的配慮などから兵器輸出を自己規制する中、またMTCRのような兵器技術拡散防止枠組みに縛られている間に、中国がコピー兵器を遠慮容赦なく中東や第3諸国(古い)と呼ばれる米国の友好国に売り込んでいる現実があり、同時に米国防予算が頭打ちの中、米産業界から国内市場がこの状況では軍需部門を維持できないと泣きつかれている現状があります
この問題は国家予算を絞り始めたオバマ政権時代から顕在化し、トランプ政権になってからの2018年には、「輸出手続きの迅速化」や「最新技術でない兵器の規制緩和」などが行われてきましたが、Lord次官は最新兵器についても、先端技術の保護措置を講じつつ輸出を可能にし、厳しさを増す軍需産業の商売を助けたいとの意向のようです
16日付Defense-News記事によれば
●共和党系のReagan Foundationで講演したLord次官は、「(兵器の)輸出制限に、最近数か月熱くなって(passionate)取り組んでいる」、「今後6か月以内に、特に輸出可能な兵器技術の範囲をよりオープンにして拡大したいと強く希望している」と語った
●そして「我々が兵器技術を向上させている一方で、輸出可能な範囲を拡大していないことで、兵器輸出の国際市場において競争力を失いつつあることを懸念している」、「典型的な例として、これまで顧客であり、将来においても有望な顧客であったはずの中東諸国が、中国やロシアから兵器を輸入し始めており、インドもその方向に向かいつつある」と強い懸念を示した
●この兵器輸出制限改革は以前から何度も議論されてきた話題で、2018年にトランプ政権が新たな方針を示した際も、「戦略的に考える必要がある」とLord次官の講演での発言と同様の言葉を使用し、21種類の弾薬やミサイル、複数の技術範囲について政府の許可なしで輸出可能とした経緯がある
●しかし、当時新たに許可された品目は、既に米国が技術を独占したものではなく、広く一般市場に流通し始めていたもので、輸出許可しなければ米国産業の市場を狭める恐れのある兵器や装備品であった。Lord次官は今回、従来の範囲では不十分だと考えているようだ
●一方で同次官は、「焦点を絞った議論を続けている。多くの最新兵器は最新技術や最新データを搭載しており、我々はそれら最新技術が輸出した兵器から簡単に取り出されないように細心の注意を払う必要がある」と課題を語っている
●更に同次官は、カナダ、英国、豪州を含めて米国軍需産業基盤と見なす「NTIB:National Technology and Industrial Base」との枠組みの関係強化も追求したいと述べ、より軽易に産業基盤として協力できる体制にしたいと意欲を示した
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剛腕で名の知れた同次官でさえ「hope to」との表現で語っているように、実現可能性については未知数で、コロナで混乱する世界経済の中で様々なプレーヤーがうごめく中、すんなりと事が進む雰囲気ではないようです
MTCRに縛られ、一定規模以上の無人機がミサイルとみなされ輸出自粛を迫られている様子や、輸出した先で民間人被害を発生させるとの人道上の懸念から輸出に踏み出せない西側諸国と、何の縛りも心の痛みも感じない中国やロシア・・・。
「良貨は悪貨に駆逐される」との言葉を思い出しました。でもこの間SNS上で、「世界から羨望や憧れの念を持たれない国が、覇権国になった例はない」との言葉を目にし、そうであってほしいと願う次第です
米国の武器輸出管理の緩和問題
「MTCRの縛りで中国に無人機輸出で負ける」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-04
「2018年の武器輸出促進策」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-10-2
「輸出手続きの迅速化措置」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21-1
「4月にも武器輸出新政策か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-18-1
「トランプが武器輸出促進ツイート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-06
「無人機輸出方針は期待外れ?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-3
「違法?サウジに緊急武器輸出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-25
ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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