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初期型F-35を活用して敵役を演じる部隊編成 [亡国のF-35]

実戦使用不可で、改修費が捻出できない初期型機体の有効活用

F-35 65th Aggres4.jpg6月9日、米空軍はF-35A戦闘機で構成する初めてのアグレッサー部隊(訓練演習で敵機部隊を演じる専門組織。敵の戦術等を普段から研究し米空軍を鍛える役割)として、「第65アグレッサー飛行隊:65th Aggressor Squadron」を航空戦術研究のメッカNellis空軍基地で再立ち上げし、再立ち上げ式典(reactivation ceremony)を行いました

式典には来賓として米空軍戦闘機族のボスであるMark D. Kelly空軍戦闘コマンド司令官も参加し、式典に先立って自らF-15Eに搭乗して新アグレッサー飛行隊長が操縦するF-35と空中戦を行って技量を確認したようです

F-35 65th Aggres3.jpg航空戦術研究のメッカとご紹介したNellis空軍基地は、米空軍の精鋭パイロットを養成する「Weapons School:通称トップガンスクール」が所在するほか、実戦同様の訓練環境を提供する大規模航空演習「Red Flag」を実施する基地でもあり、F-16戦闘機で敵機を演じる「第64アグレッサー飛行隊」も所属しています

「再立ち上げ」とご紹介した「65th Aggressor Squadron」は、WW2時の1942年にP-40プロペラ戦闘機で創設され、その後P-47に機種更新され、1969–1989年の間はF-5Eでソ連機の戦術を模擬しました。いったん閉鎖し再開後の2005–2014年の間はF-15で編成され、その後再び休眠状態になっていましたが、今回F-35Aで復活再立ち上げとなったものです

F-35 65th Aggres.JPGただ、おめでたいニュースにケチをつけるようで申し訳ないですが、フロリダのエグリン空軍基地から「65th Aggressor Squadron」に配属される9機のF-35は、F-35がまだ開発途中だった頃に製造された初期型の実戦投入不可な「non-combat-coded aircraft」で、実戦投入可能にするには多額の改修費が必要で米空軍が対応に苦慮していたものです

開発が大幅に遅れ、要員養成や部隊建設準備用に装備や完成度不十分と知りつつ製造した機体が、将来問題になると知りつつ見切り発車した「開発と製造を同時進行」の「負の遺産」ですが、このような形で表面上は「有効活用舞台」を準備できた・・・と米空軍は説明するのでしょう

Kelly2.jpg式典参加のKelly司令官は、「PRC(中国)が開発する第5及び第6世代戦闘機戦闘機の脅威を受け、我々はLangley, Elmendorf, Hill, Eielsonの各基地に配備された実戦部隊の最新鋭機を(敵機役として)使用しなければならなかったが、本日(戦術研究の拠点である)Nellis空軍基地に第5世代機の能力を演じることが可能な専門部隊を立ち上げた」、「確かな脅威が存在する中、第5世代能力を持つ敵機役が訓練で必要ならば、その役割は専門部隊が担う必要がある」と同飛行隊の重要性を訴えています

米空軍では前線部隊からの強い要求を受け、第5世代機を敵機役とした演習が2021年夏の「Red Flag 21-3」から実施されていたようですが、Kelly司令官が言及したように専門知識や能力が不足する空軍内5世代機部隊が「臨時の敵役」を務める形で実施され、訓練効果が「いまいち」だったようで、「負の遺産」の有効活用ですが米空軍作戦機部隊からは大きな期待が寄せられています

F-35 65th Aggres5.jpgF-35アグレッサー部隊「65th Aggressor Squadron」の初代隊長はBrandon Nauta中佐で、お写真から拝見すると東洋系のようなお顔立ちですが、2020年4月の「Red Flag アラスカ」にF-16アグレッサー部隊員として参加された記録があるので、航空自衛隊の中にもご存じの方がおられるかも・・・
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30数年ぶりに続編が公開されたトム・クルーズ主演の「トップガン・マーベリック」が大ヒット中で、ハリウッド映画の王道を行く娯楽大作としてまんぐーすも音響の良い映画館で大いに楽しませていただきました。

topgun maverick.jpgこの映画の撮影に全面協力してパイロット不足解消に必死な米海軍に負けじと、米空軍も「Weapons School:通称トップガンスクール」所在のNellis空軍基地とアグレッサー部隊のアピールに懸命な模様です

初代の映画「トップガン」公開時には、米海軍パイロットへの志願者が10倍以上になったらしいですが、続編大ヒットの勢いに乗って、米軍のパイロット志願者不足がどこまで解消されるかにも注目です

米空軍パイロット不足関連
「コロナ後の民間との操縦者争奪戦」→https://holylandtokyo.com/2021/10/17/2271/
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-20
「ヘリ操縦者養成から固定翼削除試行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-06
「米空軍がパイロット募集の身長基準を廃止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-23
「Fly-only管理の募集中止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-15
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-19
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3
「下士官パイロット任務拡大?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-22
「仮想敵機部隊も民間委託へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-09-1
「不足さらに深刻化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-10

トップガン関連の記事
「太平洋軍司令官はトップガンパイロット」→https://holylandtokyo.com/2020/12/07/337/
「さらに公開延期でも」→https://holylandtokyo.com/2020/04/12/722/
「予告編第2弾」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-18
「予告編公開:映画トップガンの続編」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-20-1

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