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米軍衛星が地上局とのLink-16通信試験に成功 [サイバーと宇宙]

低高度軌道上の小型衛星3基とFive Eyes国の地上局が
衛星収集戦術データの即時ネットワーク共有へ大きな一歩
米SDAのProliferated Warfighter Space Architectureで

PWSA SDA4.jpg11月28日、米国防省の宇宙開発庁SDA(Space Development Agency)が、11月21-27日の間で実施したデモ試験で、高度1200マイル上空の低高度軌道上を周回する小型衛星3基と地上通信局間で、戦術データ情報リアルタイム共有用に航空機・艦艇・地上施設間で使用中の「Link-16」による通信テストに成功したと発表しました

「Link-16」は、例えば空飛ぶレーダーE-3やE-7や海軍のE-2Dが補足追尾する敵機情報を、リアルタイムで戦闘機に送信して戦闘機のレーダー画面に表示し、一刻を争う最前線での敵情報共有を支えるデータ通信手段で、弾道ミサイル防衛でもイージス艦補足の敵弾道ミサイル情報を、BMDシステムを経由して地上配備のパトリオットPAC-3ミサイル迎撃部隊と即時共有することにも利用されている最前線の情報命脈です

PWSA SDA5.jpg従来の衛星センサー情報の地上システムへの送信要領をまんぐーすは説明できませんが、現在の航空機・艦艇・地上部隊の戦術データ共有の中核を担っている「Link-16」を人工衛星が利用可能になることで、既存の航空機・艦艇・地上部隊の戦術データネットワークに、衛星情報をスムーズに取り込むことが可能となることから、「a significant milestone」とSDAトップのDerek Tournear氏が歓喜の声明を発表するのも理解できます

まだ基礎的な技術実証の段階で、「Link-16」信号を衛星軌道上から米本土地上に向け送信することに関し、連邦航空局(FAA:Federal Aviation Administration)の承認が得られておらず、今回のデモ試験は、米国以外のFive Eyes国(英豪加NZ)のどこかの地上局(非公開)を使用して行われたとのことです。なおFive Eyesは、米英豪加NZの5か国のみで構成される高度秘密情報共有のグループです

PWSA SDA2.jpg担当する宇宙開発庁SDAは2019年に創設された組織で、既存の大型&多機能&少数&高価な衛星で構成される衛星ネットワークに、小型&機能限定&安価&多数(hundreds)な低高度軌道衛星を加えて迅速に強化して「Proliferated Warfighter Space Architecture」を構築するための組織ですが、

現在までに「transport satellites」19機、「missile tracking satellites」8機で構成される「Tranche 0」の小型衛星網を構成し、今回のデモ試験もこの衛星の一部(Transport Layerの衛星)を使用したとのことですが、2024年から打ち上げを開始する「Tranche 1」では、「transport satellites」126機、「missile tracking satellites」35機を軌道投入する予定とのことです

Tournear SDA3.jpg前出のSDA長官Derek Tournear氏(SDA創設時から4年以上同ポスト)は声明文で、「今後もSDAはその任務であるProliferated Warfighter Space Architecture構築に尽力し、同Space Architectureが最前線の兵士たちに既存の戦術データネットワークを通じて兵器管制情報(fire control information)を提供可能なことを検証していく」と、衛星による「Link-16」使用技術の成熟への決意を新たにしています
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正直なところ、「Link-16」が衛星とのデータ通信に使用できていなかったことを初めて知りました。航空機・艦艇・地上部隊間の通信距離が長くても数百㎞のところ、衛星と地上の距離が1200マイル(約2000㎞)ともなれば、小型衛星で実現するには技術的ハードルも高いのでしょう。またコッソリFive Eyes内で協力して進めている辺りに、この技術の重要性や機密性を感じます

Tournear SDA2.jpgTournear長官は2019年10月の米陸軍協会総会で、「SDAは3分野に注力しており、一つは超超音速兵器や弾道ミサイルの追尾、2つ目は宇宙状況認識を高める取り組み、そして3つ目が一刻を争う地上脅威目標の探知追尾である」と語っており、3つ目の米陸軍と連携して進める衛星からの地上目標情報提供「Kestrel Eye計画」が「Link-16」と関連が深いものです。

E-8 JSTARS(退役間近)、E-3やE-7早期警戒管制機の役割の引継ぎが期待されている、衛星からの地上目標情報提供技術に関する取り組みのお話でした

米宇宙開発庁SDA関連の記事
「Kestrel Eye計画:衛星で目標情報をリアルタイムに地上部隊へ」→https://holylandtokyo.com/2019/11/05/2967/

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2024年夏に独仏西の戦闘機等が大挙アジア訓練ツアー計画 [安全保障全般]

他の戦闘機開発グループの英と伊も加わる可能性
RIMPAC→日→豪→ネシア→インドへ戦闘機30機以上で
アジアでの米国負担軽減で欧州関与を側面支援とか

German AF Asia6.jpg11月27日付Defense-Newsが独国防省や独空軍情報を基に、2024年の7月から8月にかけ、欧州主要国(FCAS次期戦闘機開発でチームを組む独仏スペインを中心に、英と伊も参加可能性大)が戦闘機30機以上と輸送機等で、中国と対峙するアジア太平洋諸国を巡回し、「RIMPAC2024」や豪での「Pitch Black」や印での「Tarang Shakti」演習に参加し、日本にも数日間立ち寄ると報じています

同報道の雰囲気や、2022年にドイツ空軍がアジア太平洋地域への24時間での緊急展開訓練として、6機のEurofighters、4機のA400M輸送機、3機のA330空中給油機でシンガポールにまず展開し、アジア諸国を回って日本にも飛来して空自機と共同訓練した実績からすると、2024年夏の大規模欧州諸国軍機のアジアツアーはドイツ空軍主導で計画されている模様です。

German AF Asia.jpg現時点で既に少なくとも30機の戦闘機(Eurofighters(独8機、スペイン4機)、トーネード独12機、ラファール仏6機)のほか、A400M輸送機8機(独4機、仏スペイン4機)、更にA330空中給油機7機(独3機、仏等3機)も含む大規模編成なっていますが、FCAS国以外からも、「アジア太平洋での米国負担軽減」と「欧州での米支援の支援」趣旨を受け、他の次期戦闘機GCAS開発グループ国(日本も参加!)である英や伊軍機の参加可能性大と、記事は伝えています

German AF Asia5.jpg独空軍によれば、2024年夏の展開に際しては、欧州航空戦力群は北大西洋と北米大陸を横断してアラスカにまず移動し、その後ハワイを中心に7月下旬に開催予定の環太平洋演習RIMPAC2024に参加して艦艇群との連携も演練し、次に日本に数日間立ち寄って日本編隊と飛行訓練を行い、その後は豪州に足を延ばして「Pitch Black」演習に参加予定となっています。

豪での演習後は、インドネシア又はマレーシアに展開して地域完熟訓練と展開国軍との連携を深め、最後にインドに移動して同国主催の国際演習「Tarang Shakti」への参加を調整中だとのことです
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German AF Asia2.jpg記事は、ドイツ空軍が次期戦闘機FCAS開発グループ国である仏スペインとともにアジア訓練ツアーを計画中で、「恐らく英軍とイタリア軍航空機も道中で参加するだろう:possibly also involving aircraft from the U.K. and Italy along the way」と表現しており、FCASグループでないGCAS開発グループである英や伊は、FCASグループが欧州大陸からアラスカへの移動時にのみ、「European face」との欧州諸国の取り組みの一環として参加するだけかもしれません

German AF Asia3.jpg次期戦闘機FCAS(Future Combat Air System)開発のアピールが背景にあると、なんとなく「うさん臭い」アジア訓練ツアー感も漂いますが、「RIMPAC2024」「Pitch Black」「Tarang Shakti」演習参加と日本への立ち寄りもある大変力の入った取り組みですので、歓迎したいと思います

ただドイツは現在、左翼系連合政権による「原発全廃」や「EV過剰推進」等の負の影響をもろに受け、エネルギー価格高騰や世界からの投資一斉撤退で経済が崩壊方向にまっしぐら状態です。ドイツ空軍の元気印「Ingo Gerhartz独空軍参謀総長(冒頭写真)」のご奮闘を祈るばかりです

2022年ドイツ空軍の初アジアツアーなど
「独戦闘機6機がアジア豪星日韓へ」→https://holylandtokyo.com/2022/08/18/3566/
「独で冷戦後最大の航空演習」→https://holylandtokyo.com/2023/05/01/4515/
「独が戦術核共有にF-35導入へ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/16/2920/

【ご参考:欧州の戦闘機開発2グループ】
●「独仏スペイン」のFCAS(Future Combat Air System)
→独Airbus, 仏Dassault, スペインIndra、仏Thales, 仏MBDA and 仏Safranなど

●「英伊スウェーデン+日本」のGCAS(Global Combat Air System)
「TEMPEST」計画とも呼ばれる
→英BAE、英ロールスロイス、スウェSaab、日MHI、伊Leonardoなど

仏独スペインのFCAS開発
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2
「ベルギーが関与希望か」→https://holylandtokyo.com/2023/06/26/4766/
英スウェ伊+日本のGCAS開発
「英伊が日本恫喝:逃げるなよ!」→https://holylandtokyo.com/2023/02/14/4299/
「伊が訪日し協議」→https://holylandtokyo.com/2022/09/27/3699/
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11

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中国経済崩壊に言及ゼロの防研「中国安保レポ2024」 [中国要人・軍事]

誰かが検閲したごとく「中国経済崩壊」に一切言及がない異様なレポートです

China Report20242.jpg11月24日金曜日、防衛研究所が2011年3月から毎年発刊している「中国安全保障レポート2024」を発表し、今回は「中国、ロシア、米国が織りなす新たな戦略環境」との副題が示すように、米国が維持してきた従来の国際秩序に挑む中露との構図で、現在の安保環境を従来と同じくあくまでも執筆研究者の個人的見解との位置づけで分析しています。

本日はこの80ページの冊子の「概要の概要」を、ロシア関連の「第2章」を省略し、かつ「つまみ食い」してご紹介するわけですが、まんぐーすからはまず最初に声を大にして、既に顕在化している中国経済の崩壊について一切言及せず、「国際秩序をめぐる米国と中露の対立は加速し、米国中心の既存秩序の現状維持勢力と、中露中心の現状変更勢力の間の対立拡大」が大きな注目点だ・・・と結ぶ本レポートに大きな失望を覚えたことを強調させていただきます

ChinaReport20244.jpgまだまだ序の口の中国経済崩壊で中国側の情報統制も厳しいですが、2023年11月末に発表する中国安保分析文書であれば、直接的に「中国GDPの3割を占める不動産経済の崩壊」、「不動産経済崩壊から金融危機への波及の兆し」、「誤ったゼロコロナ政策や恣意的運用に懸念が広まる反スパイ法に起因する外国企業の中国脱出」、「失業率の急上昇」、「中国経済への先行き不安から急速に進む人民元下落」、「習近平の経済原則を無視した毛沢東思想復活を思わせる国家運営」、これらを受けた「今後数十年の中国経済低迷の可能性大」などに言及しなくても、

同レポートで中国関連分析を行っている「第1章」の中の「おわりに」部分や、レポートのまとめに当たる「終章:本レポートの結論」部分で、経済的混乱の兆候があることや、ロケット軍の幹部粛清や国防相の更迭などの中国指導層人事に異例の動きが見られることにも簡単に触れつつ、「今後はこれら中国経済の混乱・混迷がもたらす影響についても、重大な関心を払う必要がある」程度の記述が不可欠だと思います。

「中国経済」との言葉の使用を、防衛省や日本政府による「検閲」で削除したかのような、「極めて異様な」今回のレポートの「概要の概要」は、以下の通りです

●「2024レポート」の狙い
ChinaReport20243.jpg冷戦後の国際社会に安定と繁栄をもたらしてきた既存のルールの維持を目指す米国と、ルールの変更を目指す中国およびロシアとの深刻な競争に直面。本レポートでは、米国、中国、ロシアについて将来の国際秩序についてどのような構想を有しており、どのようにその実現を目指しているのかを分析する。また、軍事・安全保障を中心に世界各国の中露に対する姿勢も概観。この分析から最後に米中露の 3大国の相互作用が織りなす今後の国際秩序の方向性について検討

●既存秩序の変革を目指す「中国の戦略」
習近平 愛される国.jpg---習近平政権は、米国に中国の「核心的利益」を尊重し、中国を対等に扱う「新型大国関係」受入れを要求。同時に既存の国際秩序を明確に拒否し、中国や発展途上国が大きな発言力を持つ「新型国際関係」と「人類運命共同体」を新たな国際秩序のモデルとして推進
---中国は A2/AD 能力を中心に軍事力強化。中国は周辺地域でも米軍行動を物理的に妨害し、ロシア軍との連携行動を強化。中国は核戦力も急速に強化し、これは将来安保おける中国の発言力を高める
---今後中国は、核を含む軍事力を強化し、国際秩序観を共有するロシアとの戦略的協力を深化させ、既存の国際秩序の改変を進めるだろう

●省略:露・ウ戦争とプーチン体制生存戦略

●国際秩序の維持に向けた「米国の軍事戦略」
China-USA.jpg---中露との競争上の米国の軍事的課題は、①武力紛争に至らない段階における活動、②米軍の戦力投射・作戦行動、キルチェーンに対する脅威、③将来的な核戦力バランスの変化。
---①に対して米軍は、「航行の自由作戦」や情報・サイバー空間での作戦行動に加え、全ての段階で米軍が一定活動を行う「競争連続体モデル」との新概念枠組みで対応。

---②に対し、A2/AD および米軍のキルチェーンに対する脅威に関して、米軍は新たなコンセプトの開発を継続させている。
---③の、米国と同レベル核戦力保有の「中露との同時対峙」という、将来的な「同格の二大核保有国」問題に対し、バイデン政権は米抑止力強化と軍備管理での核使用リスク低減に取り組む姿勢を示す

●本レポートの結論
ChinaReport20245.jpg---今後 10 年程度の見通し得る将来において、ロシアで急激な政治変動が生じない限り、国際秩序をめぐる米国と中露の対立は加速し、グローバル・サウスも巻き込みながら、米国を中心とした既存秩序の現状維持勢力と、中露を中心とした現状変更勢力の間の対立へと拡大していく。
---他方より長期的視点では、露のウ侵攻が国際秩序の変更に至る見込みは極めて小さい。一方で中国は、南シナ海や台湾海峡などで現状変更の既成事実を積み重ねている。今後、このような中国の力による一方的な現状変更を防止できるか否かが、国際秩序をめぐる競争の行方を決定づける最も重要な要因である
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China Report2024.jpg最近お行儀が悪いまんぐーすから、再度ひとこと・・・検閲削除されたごとく、中国経済崩壊に一切触れず、上記のような「本レポートの結論」で締めくくる2024年度版「中国安全保障レポート」には、研究者の危機感が感じられないばかりか、中国経済崩壊が導く可能性が相当程度存在する、中国軍事脅威の崩壊を「隠したい」「避けたい」「触れたくない」思いが透けて見えるようです

過去からの同レポート紹介防研webページ
https://www.nids.mod.go.jp/publication/chinareport/index.html#

同レポート日本語版
https://www.nids.mod.go.jp/publication/chinareport/pdf/china_report_JP_web_2024_A01.pdf

過去の防研「中国安全保障レポート」紹介記事
1回:中国全般→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-19
2回:中国海軍→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-17-1
3回:軍は党の統制下か?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-23-1
4回:中国の危機管理→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-01
5回:非伝統的軍事分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-22
6回:PLA活動範囲拡大→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-09
7回:中台関係→サボって取り上げてません
8回:米中関係→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-2
9回:一帯一路→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-11
10回:ユーラシア→サボって取り上げてません
11回:サイバー宇宙情報軍民→ https://holylandtokyo.com/2020/11/16/388/
12回:統合作戦能力の深化→ https://holylandtokyo.com/2021/11/30/2481/
13回:認知領域とグレーゾーン事態掌握→サボって取り上げてません  

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中国関与TikTok等の米軍兵士への情報戦影響を局限せよ [サイバーと宇宙]

サイバー&ISR任務を持つ第16空軍の取り組み
最先任軍曹が中国等の情報戦に注意喚起も

Kennedy Jr5.jpg2019年10月に米空軍内の第24空軍(サイバー担当部隊)と第25空軍(ISR+EW電子戦担当部隊)が合併して編成され、サイバー&ISR&電子戦任務を併せ持った「情報制圧組織:“information dominance” organization」として誕生した第16空軍司令官のKevin B. Kennedy空軍中将が、米空軍協会ミッチェル研究所のイベントで11月13日に講演し、中国やロシアによる米軍兵士の意識偏向操作を狙う「情報戦:information warfare」への対処について語りました

Kennedy Jr3.jpg第16空軍は編制以来、2020年3月には従来のサイバー戦指揮センター(第624作戦センター)とISR作戦センター(第625・・)を融合して第616作戦センターを立ち上げ、2021年7月には電子戦専門部隊として第350航空団を独立編制する等に取り組んできましたが、Kennedy司令官は兵士が直接接するネットやSNS情報を利用した敵からの情報戦(反政府思想の流布や活動気運醸成)への取り組みについて語っています

誰もがスマホを保有し、自由にネットやSNS情報にアクセス可能な今の時代に、中国起源TikTokアプリの活用にも踏み込んだ脅威認識が同司令官から示され、最先任上級軍曹など下士官組織のリーダーも巻き込んだ取り組みが興味深いことから、きわめて抽象的で具体的内容が不明確なお話ですが、とりあえずご紹介いたします

Kennedy第16空軍司令官はイベント講演で
Kennedy Jr.jpg●第16空軍には、(敵の情報戦に対処するため、)米国国民のみならず世界の人々に適切なメッセージを発信する訓練や準備をしている対外広報担当兵士が所属し、またサイバー空間に関する専門知識を備えた専門家兵士もいる。またISR任務に従事するエキスパートもそろっている
●ただし、我々が現在取り組んでいるのは、これら各分野の専門性強化に資する新兵器の活用ではなく、これら第16空軍内の各分野の専門性を一体的に行動させ、空軍内の全組織が「(敵の仕掛けてくる情報戦に関する)ベースラインとなる脅威認識」を共有状態にする取り組みである

●我々の部隊任務の特殊性から、第16空軍は「competition-based framework」の考え方に基づき、戦況に応じて各作戦部隊の人員や情報を我が部隊で活用し、例えば太平洋軍や欧州軍の要員を第16空軍の任務である「reveal, conceal, expose, or disruption’ type of activities」のために動いてもらう枠組みになっている
●最近の取り組みの一つとして、中国やロシア航空機や艦艇による、米軍や同国軍艦艇や航空機への極めて危険な行動を記録した映像や画像を、全世界に向けてまとめて公開している

Kennedy Jr4.jpg●また第16空軍は米サイバーコマンドやFBIや他の政府機関と協力しつつ、SNS上などに大量に誤情報や偏向情報を流布させる敵の情報戦の狙いを破砕する取り組みも行っている
●米国メディアでこのような情報戦目的の偏向情報を見つけた場合、米国のメディア規定に沿って違反行為として対処可能だが、大きな影響力を持ち中国当局とのつながりが確認されているTikTok等による世論操作やデータ収集狙いの活動への対処は単純ではない

●TikTok上での情報収集活動はそれほど懸念していないが、反政府思想の流布や活動気運醸成につながるような主張の繰り返し発信には注意や対応が求められる
Bass6.JPG●米空軍の最先任上級下士官であるJoAnne S. Bass軍曹は、9月の空軍協会航空宇宙サーバー会議でこの問題を取り上げてくれ、「誤情報や偏向情報を集中してSNS上で発信する組織、SNS上での炎上やあおりを引き起こすグループ、特定の話題を集中投稿して世間の注目を集める操り人形集団などの存在は、物理的な破壊行為は伴わないが、無秩序無制限な戦いの一形態と認識されるべき」と下士官団に注意喚起を行っている

●第16空軍は、他のナンバー空軍に要員を常駐派遣し、各ナンバー空軍内で確認できる我が情報戦の成果や敵情報戦の各部隊への影響を迅速に把握できるよう取り組みを開始し、前線部隊の情報戦関連の現状を踏まえ、有るべき状態「ベースライン」達成に向け必要な取り組みを部隊指揮官と議論共有できるようにしたいと考えている
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Kennedy Jr6.jpg同司令官が言うところの第16空軍が行う任務「reveal, conceal, expose, or disruption’ type of activities」が具体的にイメージできておらず、女性初の米空軍最先任軍曹であるJoAnne S. Bass軍曹の言葉も感覚的にしか理解できませんが、自衛隊での下士官組織による服務指導が「飲酒」「金銭管理」「交通安全」「各種ハラスメント」等を重視しているところに加え、「情報戦」分野も対象にして組織全体で対応しようとの米空軍の姿勢に興味を覚えました

人材募集難の中、皆がスマホで自分の世界に没入しやすい社会で、SNSの影響を局限する難しさは計り知れませんが、対処が必要な「影の戦線」であることを確認させていただきます

第16空軍の関連記事
「電子戦専門第350航空団発足」→https://holylandtokyo.com/2021/07/09/1967/
「電子戦専門航空団編制へ」→https://holylandtokyo.com/2020/11/17/389/ 
「第16空軍の編成完結」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「遅延中、ISRとサイバー部隊の合併」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-24
「米空軍がサイバー軍とISR軍統合へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3

JoAnne S. Bass米空軍最先任軍曹の関連
「グアム島基地通信死守の一等兵を讃える」→
「兵士慰留に職種変更容易化へ」→https://holylandtokyo.com/2023/10/27/5149/
「米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holylandtokyo.com/2020/06/22/628/

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嘉手納基地にユタ州からF-35追加ローテーション派遣 [米空軍]

【前座情報】
まんぐーすがチマチマと米軍嘉手納基地航空戦力の空白を指摘するので、米空軍が11月21日に、海空軍機33機を集めて戦力誇示Show Of Forceイベント「Elephant Walk」を実施しました

Kadena ElephantNov21.jpgKadena ElephantNov212.jpg米空軍の参加機
14 F-35s(米本土と三沢から)
10 F-15s(F-15C/DにE型含む)
Two HH-60G helicopters
One RC-135 Rivet Joint
One KC-135 tanker
One MQ-9 drone(鹿屋から)
One E-3 AWACS

米海軍の参加機
One P-8A Poseidon
Two E/A-18G Growlers
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【以下が本題のF-35ローテーション派遣機の追加】
昨年10月発表のF-15C/D段階撤退の穴埋め展開
アラスカから派遣中の別部隊のF-35に合流
展開機数は相変わらず非公表で、他の派遣機種も不明

F-35 Kadena Hill4.jpg11月20日、米空軍嘉手納基地の第18空軍が、昨年10月に段階的撤退開始を発表している48機のF-15C/D型の一時的ローテーション代替機として、ユタ州Hill空軍基地第4戦闘飛行隊所属のF-35戦闘機(機数非公開)が嘉手納基地に到着し、2023年3月から展開中のアラスカEielson空軍基地第356戦闘飛行隊F-35戦闘機(機数非公開)と合流したと発表しました

この戦闘機ローテーション派遣は、嘉手納基地に約40年間所在してきたF-15Cを「(2022年10月の空軍発表では)今後2年間で段階的に」米本土へ撤退&退役させるため、12月に第一弾として(写真から)推定8機のF-15を米本土に帰還させ、2023年10月時点報道では「少なくとも18機は嘉手納から撤退した模様」との状況を受けた対応です。

F-35 Kadena Hill3.jpgただ米空軍は、「ローテーション派遣は、米国政府がF-15Cの恒久後継機を決定し、完全運用態勢を確立するまで嘉手納基地で継続される。この派遣は、転換期にある戦略的に極めて緊要な位置にある基地で、戦闘機の空白が生じさせないためのものである」としつつも、「作戦運用と戦力配備に関わることであり、展開機数等については言及しない」との姿勢で、残置のF-15C/D機数とともに、派遣戦闘機機種や機数の全体像を秘匿しています

春には「F-22,35,16,15,15Eが勢ぞろい」と米空軍からアピールがあり、その後F-22とF-16の帰国発表があったものの、現時点で今年4月に展開してきたF-15Eや10月展開州空軍F-15Cの状況は報道ベースでも不明で、2つの米本土飛行隊からF-35が派遣されている事しかわかりません

まんぐーすの今後の予想は・・・
●(現時点で既にそうなっている可能性も高いが、)ローテーション派遣戦闘機の機種毎の派遣機数単位が、次第に最小単位の「2機」にまで縮小される
●最小単位での派遣がしばらく続いた後、忘れた頃にヒッソリと、「嘉手納F-15C/Dの後継機は配備しない。アジア太平洋地域に関わる有人無人の様々な戦力の総合力で代替する。Family of Systemでの対応だ」との説明ぶりに切り替えられる・・です

F-35 Kadena Hill2.jpgその心は、例えば2021年2月に当時の米空軍戦闘コマンド司令官(Mike Holmes大将)が米空軍主要幹部や軍需産業関係者を前に、「今の戦闘機の航続距離、搭載兵器、展開距離等は、欧州線域ではそのまま将来も通用するが、太平洋線域では距離の問題が克服できない」、「太平洋戦域では、次世代制空機(NGAD)検討において従来の戦闘機のような装備のニーズは必ずしも生まれない」と課題の本質を明確に述べたり、

関連ウォーゲームに何度も関与しているミッチェル研究所長のデプチューラ退役空軍中将が、嘉手納F-15C/D撤退開始発表時に「嘉手納は対中国有事の際、疑いなく数百の中国軍の精密誘導ミサイル攻撃を受けるので、嘉手納基地の航空機は危機が迫れば他基地に避難する可能性が高い」、「前方プレゼンス維持、同盟国への関与維持、ISR活動の必要性等から嘉手納を捨てることはないだろうが・・」と語っているように、

F-35 Kadena Hill.jpg軍事的合理性から考えて、嘉手納基地に戦闘機を配備しても「座して死を待つだけ」になるからです。

別の側面からの状況証拠として、グアム島への弾道&巡航ミサイル対処体制構築に米ミサイル防衛庁が全力対処している一方で、嘉手納基地や沖縄本島への追加防御投資がなされていない点もご紹介しておきます。

【ご参考:嘉手納F-15C/D撤退と代替機派遣の経緯
●2022年10月28日、約40年間展開してきた48機のF-15C型戦闘機を「今後2年間で」段階的に米本土へ撤退&退役させると発表

●2022年11月4-5日にかけ、アラスカ配備の8機のF-22が嘉手納に展開
●2022年12月1日、第一弾として(恐らく)8機のF-15が米本土に帰還

●2023年1月17日、ドイツの米空軍基地から16機のF-16が展開
●2023年3月28日、アラスカEielson基地第355戦闘飛行隊所属のF-35が展開
(この時点で、各機種の機数は不明ながらF-22やF-16も嘉手納に所在)

●2023年4月8日 F-22アラスカへ帰還、同10日F-16ドイツへ帰還
●2023年4月8日、米本土からF-15Eが嘉手納に展開

●2023年10月3日、加州とルイジアナ州の州空軍F-15Cが展開
●2023年11月20日、ユタ州Hill基地からF-35展開

嘉手納基地F-15撤退と代替戦力派遣
「加州とルイジアナ州空軍F-15C到着」→https://holylandtokyo.com/2023/10/10/5113/
「F-15E展開、F-22とF-16が帰還」→https://holylandtokyo.com/2023/04/12/4511/
「空軍F-35が嘉手納基地に展開」→https://holylandtokyo.com/2023/04/04/4482/
「ドイツからF-16展開」→https://holylandtokyo.com/2023/01/19/4178/
「第1陣の8機米へ帰還」→https://holylandtokyo.com/2022/12/06/4021/
「米空軍幹部発言から大きな流れを学ぶ」→https://holylandtokyo.com/2022/11/09/3904/
「衝撃、11月1日から段階的撤退」→https://holylandtokyo.com/2022/10/31/3817/

米空軍幹部やOB専門家の「極東で戦闘機無力発言」
「嘉手納からの米空軍F-15撤退を軍事的合理性から考える」→https://holylandtokyo.com/2022/11/09/3904/  
「米軍F-35調達機数削減の予兆を指摘」→https://holylandtokyo.com/2023/07/18/4823/
「新空軍2トップはF-35調達数削減派」(米軍事メディア報道)→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/

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空軍長官が次期ICBM開発の苦悩&不安を語る [米空軍]

B-21と並び核抑止3本柱で失敗不可の開発案件も
老朽ミニットマンⅢ開発から半世紀でノウハウ散逸
「未知の未知」に次々遭遇:コスト増大懸念で決断に苦悩

Sentinel.jpg11月13日、Kendall空軍長官がシンクタンクCNACSで講演し、核抑止3本柱の2本を担う米空軍で、B-21爆撃機開発は10日に初飛行を終えてほぼ計画通りであるが、Minuteman IIIの後継ICBM開発(LGM-35A Sentinel開発)は、開発を進めるほど「未知の未知」に遭遇し、

前回のミニットマン開発から50年以上が経過して知見(各種設計図や製造ノウハウや技術者等)が失われ、450個のICBM格納サイロが広範な土地に分散配置されているなど、知れば知るほど「複雑で大きな課題」となっていると語り、不確かな部分が多数残され、コスト激増の恐れをはらんだ非常に決断が難しいプログラムになっていると苦悩を吐露しました

Kendall AFA5.jpgMinuteman IIIの後継ICBM(LGM-35A Sentinel)は、GBSD(Ground Based Strategic Deterrent)とも呼ばれてきましたが、この難しさやコスト問題から、戦略原潜後継検討を含めた「3本柱」後継開発検討時の約10年前から「ICBM廃止議論」がくすぶっていますが、2020年には米空軍がB-21開発と同じNorthrop Grumman社と契約し、2029年配備を目指してLGM-35A Sentinel開発を開始しています

ただ、米空軍ICBMは約400発が450個の地中サイロで運用されており、サイロは面積32000平方マイル(日本の中国四国地方を合わせた面積:イメージで縦横130㎞×640㎞)に分散配置されている状態で、多くの部品調達が不能になっているミニットマンミサイル後継開発だけでなく、同様に資料散逸のサイロと土地再開発調整、サイロと指揮所を結ぶ指揮統制システム開発&建設などなども含み、ざっくりと総額15兆円プロジェクトと言われてきましたが、

Sentinel2.jpg検討を進めれば進めるほど「未知の未知」が見つかり、米国防省での長年の勤務歴と剛腕で知られるKendall長官が、「Sentinel開発は、最も大きく複雑なプログラムで、恐らく米空軍が担った中である意味最も巨大なものであろう」と講演で表現しているほどです

例えば同空軍長官は、「開発を進め課題を理解するほど、より多くのコストが掛かることが判明し、その都度インパクトがどの程度になるか、計画の修正で対応可能かどうかをアセスメントしている状況だ」、「指揮統制装置もその一つで、幾つかの分野でコスト上昇は避けられない」と、「不確かさ」山盛りの状態に直面している様子を表現しています

Sentinel5.jpgもう一つ厄介な問題は、調達担当国防次官だったKendall氏が一端国防省の職から離れ、現職である空軍長官に就任するまでの間に、Northrop Grumman社とコンサルタント業務でかかわりがあったことから、米国の法律で、同社が絡む国防省プロジェクトの意思決定に距離を置くことが規定され、「剛腕」が十分発揮できない点です

2023年度予算案には、核抑止3本柱の近代化に34.4Bドル(5兆1000億円)が投入され、6.3Bドル(9500億円)をコロンビア級戦略原潜に、5Bドル(7500億円)をB-21ステルス爆撃機に、3.6Bドル(5400億円)を次期ICBM(GBSD)、4.8Bドル(7200億円)が核抑止指揮統制システムに投入されており、それぞれ各計画への支出は今後膨らみます

LGM-35A Sentinel概要紹介(約8分半)


米会計検査院GAOは6月発表のSentinel開発に関するレポートで、スタッフ不足・サプライチェーンの喪失混乱・ソフト開発の知見喪失等々を問題とし、少なくとも2029年完成は難しく、2030年中盤以降にずれ込むと指摘している模様です。戦略原潜・大型爆撃機・ICBMの「3本柱」を維持可能かどうかの議論は、必ず近い将来再燃すると思います

次期ICBM(GBSD)開発関連
「2023年予算案では」→https://holylandtokyo.com/2022/03/30/3066/
「次期ICBM中止なら爆撃機待機再開主張」→https://holylandtokyo.com/2021/04/23/114/
「米戦略軍司令官が延命論に怒り」→https://holylandtokyo.com/2021/01/21/303/
「提案要求書RFP発出」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-18
「次期ICBM(GBSD)企業選定」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-27-1

米軍核兵器の惨状
「初のオーバーホール」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-15
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1

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NATOもE-3後継にE-7導入決定 [安全保障全般]

2031年までに6機で運用態勢確立へ:追加可能性も
2月導入決定の米に続き、豪、韓、トルコ、英と運用仲間に
現保有14機のE-3は2035年までに退役予定

E-7 NATO.jpg11月15日、NATOが現在14機保有(独空軍基地を拠点に運用)して加盟国で共同運用しているE-3早期警戒管制機の後継機としてボーイング製のE-7を選定し、2031年までにとりあえず初度の6機をFMS契約で導入して、運用態勢を確立すると発表しました

NATOは高価なアセットを加盟国で共同購入し、運用要員を各国から差し出して混合編成で運用する方式をE-3や輸送機で実施しており、今回のE-7購入はNSPA(NATO Support and Procurement Agency:7か国:ベルギー、独、ルクセンブルグ、蘭、ノルウェー、ルーマニア、米で構成)により、Saab Global EyeとBombardier Global 6500とNorthrop Grumman E-2Dを比較対象として、2022年下旬から選定作業を行ってきた結果とのことです

E-7 NATO2.jpgNATOが独Geilenkirchen基地を主拠点に14機運用中のE-3は、1980年代に導入されNATOの主要作戦で活躍中で、2011年の911同時多発テロ時には7機が7か月間米本土に派遣され多国籍搭乗クルー編成で運用されたほか、中東での対ISIS作戦や最近のロシアによるウクライナ侵略でも東欧国境の監視に投入されています

E-7はB-737をベースとした機体にNorthrop Grumman製レーダーを搭載したボーイング製で、2010年に豪州で運用を開始し、韓国、トルコ、英国が運用中または発注済です。最近では2023年2月に米空軍が26機導入決定を発表し、2025年のプロトタイプ機を経て、27年に初号機を受領し、32年までに26機全機での運用態勢確立を予定している「世界標準の早期警戒管制機」となりつつある機体です

E-7 NATO3.jpgNATO関係者はE-7選出理由として、(米、英、豪、トルコなど)NATO関係国で既に運用され相互運用性があり、基本的な性能に加え将来的な能力拡張性があるほか、製造ラインが稼働中で入手容易、航続距離や在空性能、搭乗人員数等々の設計面でNATO側の要求を満たし、新規開発リスクが無い点を挙げています

NATOは米軍と同様に、E-3が担っていた空中&地上移動目標監視追尾任務を、将来的には宇宙アセットを中心に、RQ-4無人ISR機や地上&海上配備レーダーで補完しつつ、クラウド使用のマルチドメイン指揮統制システムで連携統制運用する姿を描いていますが、実現にはまだまだ時間と経費が必要なことから、E-7導入機数が「とりあえず」導入決定の6機から増加する可能性を示唆しているようです
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E-767.jpg下の過去記事でご紹介しているように、E-7の今後の能力向上や効率的維持整備のため、米英豪がタッグを組むことを今夏に発表しており、「宇宙アセットによる監視体制確立の夢」はあるものの、実態的には今後数十年間はE-7が「世界標準の空中&地上移動目標監視追尾アセット」となることが確実でしょう。

つまり、日本しか運用していないE-767は今後の維持に益々苦労が増えるということです・・・残念ながら。F-35大量「引き受け」導入や、RQ-4やオスプレイ強制導入などと並び、「日米同盟の負の側面」を象徴する装備品となる可能性大です。KC-46もかな・・・

11月15日のNATO発表
https://www.nato.int/cps/en/natohq/news_219907.htm?selectedLocale=en

米軍とE-7導入関連の記事
「今後の能力向上を米英豪共同で」→https://holylandtokyo.com/2023/07/21/4871/
「E-7とE-3違いを概観」→https://holylandtokyo.com/2023/03/30/4447/
「初号機を2027年納入契約」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/4358/
「導入を正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「E-3は2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/
「後継機検討のRFI」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711

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米陸軍がマイクロ波無人機対処兵器を本格試験へ [Joint・統合参謀本部]

国防省JCOが絞り込んだ防御兵器を本格確認へ
無人機・砲弾・迫撃砲・ロケット弾対処IFPCの一貫
製造Epirus社がマイクロ波制御技術の成熟に自信

Epirus HPM2.jpg11月1日、高出力マイクロ波(HPM:high-power microwave)を利用したEpirus社製の小型無人機の群れ対処兵器が、初期段階の受入テストを通過し、契約を結ぶ米陸軍に納入されたと同社が発表しました。

ウクライナで大きな注目を集め、イスラエルーハマス戦争でも地上部隊の大きな脅威となっている無人機への防御策は喫緊の課題ですが、無人機対処と言っても海外の最前線展開拠点から一般社会と共存する国内基地まで運用環境は様々で、スタートアップを含めた多数の企業が参入して多様な手法(ハードキルからソフトキルまで)を提案している「玉石混交」状態です。

Epirus HPM3.jpgこれら「玉石混交」提案の能力評価や運用法確立は米軍各軍種がバラバラでは非効率なため、米国防省JCO(Joint Counter small UAS office:陸軍が中核で主導)が設置され、2021年頃から「副次的被害小な兵器」「安価で携帯可能な兵器」「高出力マイクロ波兵器」の3分野に分けて候補機種を評価試験し、並行して米軍共通の「運用ドクトリンや運用&訓練手法」基準の検討や、「指揮統制システムや既存システムとの連携」検討にも取り組んできたところです

もちろん各軍種もJCOと連携を図りつつ、JCO検討と並行して各軍種の運用要求を反映した対処技術検討と選定を進めており、米空軍は同じマイクロ波使用でもLeido社と協力し装備名「Mjolnir」とのTHOR(Tactical High-power Operational Responder)開発を進めており、2024年本格デモ機完成に向け2023年4月に「史上最大の試験」を実施したと米空軍研究所AFRLが発表しているところです

Epirus HPM.jpg本日ご紹介している米陸軍は、無人機だけでなく砲弾・迫撃砲・ロケット弾対処も含めた大きなIFPC(Indirect Fire Protection Capability)構想の一環で無人機対処用高出力マイクロ波兵器開発にも取り組んでおり、国防省JCOの評価試験結果も踏まえて2022年12月にEpirus社と契約してマイクロ波装備の出来栄えを確認しているところです(なお別のハードキル手法兵器として12台のIFPC発射機(Dynetics社製)を受領して2024年に作戦試験開始)

製品納入に際しEpirus社は、「納入した高出力マイクロ波兵器は、無人機やその群れ対処に際し、周辺の脅威環境に応じた、精密かつ安全な電磁波制御を可能としたもの」、「初期の製品Leonidasをベースとした同兵器は、ネバダ試験場での様々な負荷を課せられた多様なシナリオ下の初期試験を突破し、信頼性と能力を実証した」、「今後より本格的な評価試験や作戦環境試験に臨むが、その結果を兵器の更なる成熟や戦術技術手順検討に生かす所存である」とコメントしています
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Epirus HPM4.jpgEpirus社の技術には大手軍需産業である「Northrop Grumman」や「General Dynamics」も投資をしている模様で、今回陸軍に提供された製品への期待も高まっているようです。電磁波兵器は対象に対する即効性があり、電力さえあれば連続して継続対処が可能な点で大きな可能性を秘めており、米空軍がLeido社と進める「THOR」とともに今後も注目して行きたいと思います

レーザー兵器のように、「いつまでたっても完成まであと5年・・・」と揶揄されることが無いよう祈っております

米国防省JCO(Joint Counter small UAS office)関連
「3回目:高出力マイクロ波使用」→https://holylandtokyo.com/2022/05/17/3233/
「2回目:安価で携帯可能な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/10/08/2280/
「1回目:副次的被害小な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「米国防省が小型無人機対処戦略」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/

米空軍のマイクロ波兵器THOR
「群れ対処試験に成功」→https://holylandtokyo.com/2023/05/26/4663/
「装備名Mjölnirで24年にプロトタイプ」→https://holylandtokyo.com/2022/07/14/3432/
「M波で小型無人機の群れ無効化」→https://holylandtokyo.com/2021/07/06/1942/

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Microgridでホスト国から海外基地をエネルギー独立に [米国防省高官]

国防省の担当特別補佐官中佐が論文
再生可能エネルギーや蓄電や管制施設完備で
米陸軍は2035年目標に全基地に基盤整備目指す

Olsen microgrids.jpg10月31日付米空軍協会web記事が、米国防省のNathan Olsen担当特別補佐官(中佐:開発研究次官の配下)による秋号「Air & Space Operations Review」誌への投稿論文「Microgrid」を取り上げ、米軍の海外駐留基地がホスト国の電力供給に依存している現状に危機感を訴え、海外基地がホスト国に依存しない独自の再生可能エネルギー発電装置やミニ原発、蓄電能力や制御装置を備えた「Microgrid」を早急に整備すべきだと訴えています

軍事基地にとっての電力の重要性は言わずもがなですが、ウクライナでのロシアによる電力施設集中攻撃による社会危機や、ハリケーンなど自然災害で電力会社からの電力供給が停止して基地機能が停止した米本土基地事例が最近増加しており、多くの米軍基地が保有する1週間程度の化石燃料使用の現状の自家発電能力では、本格紛争は戦い抜けないとの危機感を同中佐は訴えています

Olsen microgrids3.jpg米軍の海外基地がホスト国から「電力面で独立」するためにOlsen中佐が主張している「Microgrid」整備とは、海外基地の地理的な特性に応じた再生可能エネルギー発電(太陽光、風力、バイオマス、地熱発電)やコンテナサイズの「ミニ原発」を蓄電装置とセットで整備し、

それら多様な発電源を基地ニーズに応じて最適制御する管制装置でコントロール可能な仕組みの確立を意味しており簡単ではありませんが、「脅威の最前線」にありながらほとんど自衛隊基地に関して議論されていない分野ですので、注意喚起の意味を込めご紹介させていただきます 

同中佐が紹介の具体的事例の一部
Olsen microgrids4.jpg●再生可能エネルギー発電(太陽光、風力、バイオマス、地熱発電)については、「気候変動対処戦略」に沿って、各軍種や各基地で少しづつ取り組みが始まっているが、期待の高いコンテナ1台で基地一戸全ての電力を提供可能な「ミニ原発」は技術進歩も著しく、2027年にはアラスカのEielson空軍基地で先行試行使用が開始される計画
●同中佐の基準で既に「Microgrid」が導入されているのは、(中国脅威最前線の)米空軍横田基地、(ハリケーンで大打撃を受けた)フロリダ州のTyndall空軍基地、そして様々な代替電力の組み合わせで3週間の運用可能な体制を構築している海兵隊Miramar航空基地(映画トップガンの舞台@加州)のみで、より積極的な投資が国防省や米議会には期待される

Olsen microgrids5.jpg●米軍の中では陸軍が最も積極的で、ミサイル防衛装備やロケット開発発射試験場に活用されている南太平洋マーシャル諸島の「Kwajalein Island」で、太陽光発電や他の発電設備による「Microgrid」運用を行っているほか、陸軍全体で2035年までに「Microgrid」を全基地に導入完了し、2040年までに再生可能エネルギー発電と蓄電設備で主要な任務活動をすべて賄える態勢整備完了する目標を掲げている
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Olsen論文掲載の「Air & Space Operations Review」秋号
https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/ASOR/Journals/Volume-2_Number-3/ASOR_Volume_2_Number_3..pdf

再生可能エネルギー発電(太陽光、風力、バイオマス、地熱発電)は、不安定、量的に不十分、特定地域でのみ可能な発電手段で、基地レベルの電力安定確保には「ミニ原発」しか方法はないように思いますが、精密誘導兵器大拡散の現状で普及が難しいのが現状です。ではありますが・・・まずは防衛省・自衛隊でも議論を立ち上げて頂きたいと思います

Olsen microgrids6.jpgOlsen中佐が取り上げた米空軍横田基地の「Microgrid」はどの程度のレベルのものでしょうか? 論文のいい加減な斜め読みでは「Yokota」「Tyndall」「Miramar」の名前を発見できず、ご紹介できないのですが、空自の横田基地勤務の皆様でご存じの方にご教授いただければ幸いです

ミニ原発や気候変動の記事
「空輸可能ミニ原発を契約」→https://holylandtokyo.com/2022/06/20/3344/
「航空輸送可能なミニ原発配備へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/19/3147/
「ミニ原発反対論」→https://holylandtokyo.com/2021/06/29/1960/
「サイバー停電に備えミニ原発」→https://holylandtokyo.com/2020/03/11/779/
「国防省の気候変動対策」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/

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米空軍戦闘機が初めて民間機から空中給油受ける [米空軍]

「あくまで訓練への移動給油用」に民間給油機使用
空軍保有の空中給油機は実作戦で主に使用で住み分け
年初にE-3とRC-135に空軍として民間給油機初使用

Omega Air Refuel.jpg米空軍が11月9日、シンガポール空軍との共同演習(Commando Sling 23)のため、所属する韓国Osan基地からシンガポールへ移動する米空軍F-16戦闘機が、米空軍戦闘機として初めて民間空中給油会社のKDC-10給油機から11月6日に空中給油を受けたと発表し、空中給油中の写真を公開しました。

また同時に米空軍は、2023年年初の空軍戦闘コマンドACC演習の中で、E-3早期警戒管制機とRC-135電磁波情報収集機に対して、米空軍として初めて民間空中給油会社による空中給油を行ったと明らかにしました。

Omega Air Refuel2.jpgシンガポールへ移動する米空軍F-16に空中給油を行ったのは、バージニア州に拠点を置く「Omega Air Refueling社」との企業保有のKDC-10で、同社は既に2004年から給油事業を開始しており、米海軍とは2009年に契約締結済で、ネット上ではFA-18・E-2D・X-47(デモ開発された幻の空母艦載ステルス無人攻撃機)やオスプレイに給油する写真が確認できます

また「Omega社」は、米軍機以外にも豪州空軍やNATO諸国の軍用機に空中給油サービス実績のある企業だそうです。なおKDC-10との名称から推定すると、民航機DC-10を改良した給油機で、米空軍がまもなく退役させるKC-10と似た機体とその形状からも考えられます。

Omega Air Refuel4.jpg民間給油機による米空軍戦闘機への給油実施について太平洋空軍司令部のCurtis Holtman空輸任務担当中佐は、民間空中給油機で演習参加や訓練のために移動する空軍作戦機に空中給油することで、「空軍保有の空中給油機を、緊急事態対処など実際の作戦運用に投入したり、有事対処用に即応態勢待機につけるとの作戦コンセプトの実証(proof of concept)のため実施した」、「保有戦力の即応態勢を向上させる仕組みづくりの一貫である」と説明しています

Omega Air Refuel3.jpgなお同中佐は、シンガポール空軍との「Commando Sling 23」演習間に、米空軍F-15CとF-22にも民間給油機からの空中給油を計画していると明らかにしています。

また同中佐は、「Omega Air Refueling社」保有のKDC-10について、最大約25万ポンドの燃料を給油用に搭載でき、輸送機としても40名の乗客とパレット4個分の貨物を搭載可能で、最大搭載重量は10万ポンドだと(アピール)紹介しています
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以下の2019年12月の過去記事でご紹介しているように、同様から米空軍は同様の運用コンセプトで民間空中給油機の利用を検討しており、候補となる企業も「Omega社」以外に複数存在し、機首選定でKC-46のライバル機であったA330ベースの給油機を使用する企業も有料候補だったと報じられていたところです

Omega Air Refuel5.jpg不思議なのは、既に他軍種や同盟国への実績十分な空中給油企業が複数存在しながら、2023年に入るまで米空軍が民間給油機を使用しなかった点ですが、その辺りについてはまんぐーすは把握しておりません。KC-26の不具合対処がボーイングと米空軍間で揉めていた時期であり、コロナ感染期間でもあったことから、様々な大人の事情が重なったのが原因かもしれません。中国脅威を背景に、今後も民間会社利用を進めたい意向が、同中佐の発言に滲んでいますが。。。

2019年当時の検討状況
KC-46に機種選定で敗れたA330改修給油機活用も検討
多くの企業が空中給油サービスを提供中とか
「米空軍が空中給油民間委託を検討」→https://holylandtokyo.com/2019/12/16/2844/

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米陸軍の極超音速兵器テスト&配備は来年に持ち越し [Joint・統合参謀本部]

2023年予定の最終テスト2回がいずれも直前中止
米陸軍は2021年に受け入れ部隊編成し準備進めてきたが

Hypersonic Glide B2.jpg11月8日、米陸軍のDoug Bush開発&調達担当次官補が記者会見で、2023年3月に続き、本年10月末に計画していた陸海軍共同開発の極超音速兵器C-HGB(Common Hypersonic Glide Body)発射試験が、テスト直前の機材チェック段階での不具合発覚で2回連続中止となっており、懸命に原因探求を行っているが、2023年中に再試験を実施して当初計画に沿って同兵器を部隊配備することは「highly unlikely:極めて難しい」と明らかにしました

Hypersonic Glide B3.jpg陸海軍共同開発の極超音速兵器C-HGBは、陸軍が両軍共用の「hypersonic glide body」を担当し、海軍が「two-stage hypersonic missile booster」開発を担う形で、国防省による積極的な仲介もあり3年前くらいから開発が加速し、2020年初めにハワイでの試験に成功、2021年後半にはmissile booster試験に失敗したものの、2022年6月に仕切り直し試験で成功していたところです

米陸軍は比較的順調な開発状況を踏まえ、2021年5月にワシントン州の米陸軍第1軍団(5th Battalion, 3rd Field Artillery Regiment, 17th Field Artillery Brigade unit)に極超音速兵器(LRHW:Long-Range Hypersonic Weapon:通称「Dark Eagle」)の受け入れ部隊を編成し、実ミサイルを除く地上管制装置や発射機や輸送トラック等を2022年9月末に配備完了、2023年運用開始に向け、本格的な部隊運用細部手順検討を開始していました

Hypersonic Glide B.jpgそして2023年1月、米陸軍の迅速能力造成室長(Rapid Capabilities and Critical Technologies Office)Robert Rasch中将が、予定している米陸軍部隊への2023年「末」極超音速兵器の配備前に、時期は非公表ながら陸海軍共同での同兵器のフル装備試験を2023年中に2回実施すると語っていたところでした(なお当初計画では、2023年9月末までに部隊配備完了でした)

Bush Army2.jpg今年に入って2回連続の試験中止の原因は一切公表されておらず、8日に会見したBush担当次官補は「関係者が全力で原因究明に取り組んでおり、もう少しで解明できると思う」、「陸軍はLRHW(Long-Range Hypersonic Weapon)に引き続き関与し、配備を完了する。そのタイミングが少し遅れるだけだ」とのみ語っています
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Hypersonic Glide B4.jpg下の過去記事にあるように、極超音速兵器は中露が米国に先んじて開発&配備を行っており、米国防省は米議会からの厳しい指摘を受け最優先開発案件として同兵器開発に取り組んでいますが、ウクライナでロシア製同兵器が飛翔速度が落ちる目標到達直前の段階でウクライナ軍に迎撃される事例が相次ぎ、研究者からは同兵器の費用対効果について疑問呈する意見も出始めています

また陸海軍とは別に、航空機からの発射型を開発する米空軍も同兵器開発に苦労しており、4月には大型爆撃機搭載型ARRWの開発試験不調を受け、Kendall空軍長官がARRWタイプの装備化断念を表明し、戦闘機クラスから発射のHACM型に絞り込むことになっています

Kendall SASC5.jpg空軍長官はまた、「米国を遠ざけたい中国と、中国抑止用に同兵器を考えている米国とでは、同兵器の位置づけは異なり、中国と同様に米国が追求する必要は必ずしもない」「同兵器は近い将来価格が低下する見通しはなく、少なくとも初期型の同兵器は固定目標に適している面もあり、保有してもsmall小規模になろう」とも語っており、同兵器の特徴や用途等も踏まえ、日本も関与しそうな迎撃兵器も含め、慎重に見守る必要があると思います

米軍の極超音速兵器開発
「ウで次々撃墜:同兵器を過信するな」→https://holylandtokyo.com/2023/06/01/4695/
「空軍がARRW配備断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「Zumwaltへの極超音速兵器契約」→https://holylandtokyo.com/2023/02/22/4313/
「バカ高い極超音速兵器」→https://holylandtokyo.com/2023/02/08/4261/
「陸軍はあと2回試験」→https://holylandtokyo.com/2023/01/17/4107/
「3回連続ARRW試験に成功」→https://holylandtokyo.com/2022/12/16/4061/
「高価な兵器は少数保有で」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「空軍長官:重要性は中国と米国では異なる」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
「潜水艦へは2028年」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-19

迎撃兵器システム開発関連
「迎撃兵器を日米共同開発で」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/

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米海軍が世界各地で空母2隻集結Show Of Force [Joint・統合参謀本部]

地中海とフィリピン東方海上で同盟国艦艇と
比東方では今年2回目で「いずも級」護衛艦と共に

Multi-Large Deck.jpg11月4日から8日にかけ、米海軍空母Ronald Reagan(横須賀が母港)とサンディエゴから駆け付けた空母Carl Vinsonに、海上自衛隊の空母のような形状の「ヘリコプター搭載護衛艦 ひゅうが」が合流し、フィリピン東方約800㎞付近の海上で大型甲板を持つ艦艇による共同訓練「Multi-Large Deck Event」が実施され、複数の軍事メディアが同行取材を行いました

フィリピン周辺での同種の訓練は6月に続いて今年2回目とのことで、6月時には空母Ronald Reaganのほかに、空母ニミッツと海自の空母形状「ヘリコプター搭載護衛艦 いずも」が参加する形で中国ににらみを利かせた訓練を行っています

Multi-Large Deck3.jpg米空母を2隻集めて「迅速に大規模戦力を特定地域に集結させる能力」を誇示する同様の海軍演習は、10月最終週にも東地中海で空母Gerald R. Fordと空母Dwight D. Eisenhowerが実施し、イスラエルーハマス戦争を受けた地域情勢不安定化への抑止効果を狙った動きを見せていたところです

11月のフィリピン海(Philippine Sea)での演習に内容について空母カールビンソン艦長は、「防空、海上海中監視、防御航空作戦、艦隊連携機動などの訓練を参加艦艇と航空機で実施している」と乗艦記者団に説明し、

Multi-Large Deck4.jpgRonald Reagan空母戦闘軍司令官のCarlos Sardiello少将は、「いかに迅速に危機発生地域に展開し、他の友軍や同盟国戦力と協力して作戦行動を遂行可能かを示す狙いを持って演習を行っている」と述べ、サンディエゴから急遽出港(報道情報10月12日出発)して中国正面に展開した空母Carl Vinsonの行動や海上自衛隊との緊密な関係をアピールしています

なお米海軍の招待で本演習を乗艦取材したメディア関係者は、沖縄の嘉手納米空軍基地からフィリピン東方の米空母の間の往復移動を、CMV-22B OspreyとC-2A艦載輸送機を使用して行ったとのことです
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Franchetti5.jpg米軍の5つの軍種(陸海空海兵隊&宇宙軍)で、史上初めて女性が軍人トップに就任(11月2日)した米海軍の活動を久々にご紹介しました。

グダグダの装備品開発(フォード級空母、LCS、コロンビア級戦略原潜等々)、艦艇や潜水艦修理の遅延と工廠の能力低下、止まらない艦艇の衝突事故や火災事故、港湾業者絡みの収賄事件等々で「何をやってもダメな米海軍」と揶揄され続けている米海軍への「風向き」が変わることを期待しつつ・・・

女性初の米軍種トップLisa Franchetti海軍大将のご経歴
https://www.navy.mil/Leadership/Flag-Officer-Biographies/BioDisplay/Article/3148210/admiral-lisa-franchetti/

米海軍軍人トップ人事関連
「女性大将が米海軍トップに就任へ!」→https://holylandtokyo.com/2023/07/24/4888/
「またゴタゴタ?米海軍トップ人事」→https://holylandtokyo.com/2023/06/13/4747/

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初飛行に成功!B-21ステルス爆撃機が90分間も [米空軍]

11月10日金曜日の早朝夜明け直後に
朝日の中を飛ぶ美しい映像や写真と共にご紹介!

B-21 FirstFlight70.jpg11月10日金曜日の早朝7時頃、日の出直後の静寂を破り、米空軍が約35年ぶりに開発中の大型ステルス爆撃機B-21が、カリフォルニア州のNorthrop Grumman社Palmdale工場内の米空軍施設を離陸し、F-16戦闘機のエスコート(チェイス)を受けつつ、同じ加州の新規開発装備品テストの「メッカ」であるEdwards空軍基地までの約90分間の初飛行を行いました

B-21 FirstFlightOr.jpgPalmdale工場とEdwards空軍基地の直線距離からすると、10分間程度の飛行で十分到達できるはずですが、一般の「航空交通ウォッチャー」運営のツイッター「Thenewarea51」が掲載の航跡図によると、飛行場への離着陸パターンを何回も繰り返したようなレーストラック航跡のほか、周辺空域を何回も旋回する様子が捉えられており、「単に離陸して浮き上がった」だけに留まらず、既にテスト飛行科目をいくつかこなしているように見受けられます

Palmdale工場離陸直後、高度500 feetでF-16がチェイス中
https://twitter.com/i/status/1722993343485866184

「RAIDR02」がB-21と推定されます
Edwards空軍基地で「touch and go」まで試験したかも!?
https://twitter.com/i/status/1723051680030134444 

民間人ウォッチャーSNS投稿を受け米空軍報道官は、
B-21 FirstFlight F16.jpg●B-21によるテスト飛行を実施した。B-21は無事着陸している
●この飛行テストは、米空軍試験センターと第412試験航空団内のB-21連合試験組織(Combined Test Force)により運営されており、米国や同盟国等への侵略や戦略的攻撃を抑止するために必要な、生存性を確保しつつ長距離飛行で敵防空網を突破可能な攻撃能力を獲得するための、一連の試験の極めて重要な第一歩である
(米空軍からは、公式な初飛行画像や映像の提供は無し)

Northrop Grumman社報道官は声明で、
B-21 FirstFlightFront.jpg●米空軍が確認発表したように、B-21爆撃機は試験飛行段階に入った。厳格に管理された飛行試験は、我が社と米空軍要員で構成されたB-21 Combined Test Forceにより実施され、今後デジタル設計技術の有効性を検証し、初期運用態勢IOC確立に向けた更なるステップに進むことになる

初飛行を報じる各種報道によれば
B-21 FirstFlightBelUP.jpg●2015年にNG社と米空軍が契約し、2016年に「B-21 Raider」との正式名称が決定された同爆撃機は、最初の部隊がサウスダコタ州のEllsworth空軍基地に編制されることになっている
●また同爆撃機の維持整備については、オクラホマ州のTinker空軍基地が担うことも明らかにされており、当初計画時からの「2020年代半ばに運用開始」に向けた各種試験や運用手順確立準備が今後行われる

B-21 FirstFlightWEPBy2.jpg●B-21は、昨年2022年12月に機体の初披露(限定角度からのお披露目)が行われ、2023年7月にpower on試験(機体に電源を投入しての試験)、9月には地上試験の一環としてengine runs(エンジン稼働試験)を開始、そして10月25日に地上滑走試験を開始したと発表があったばかり。
●2023年3月にKendall空軍長官が「2023年内に初飛行を行う」と語っていたが、米空軍報道官はあくまで「試験の進捗状況により決定する」との姿勢で、初飛行時期については一切言及していなかった

B-21 FirstFlightCAS.jpg●(機種選定時の2015年頃の要求値では、1機が$550 million(700億円)以内であったが、)現在の物価状況を加味すると、 1機が$700 million(1000億円)と見積もられている
●初飛行をとらえた民間人撮影映像からは、機体左側後方のエンジン排気部分上方から、長いケーブルが伸びている様子が確認できる。また離陸直後であるためか、高度500フィートでF-16のチェイスを受けつつ、車輪を出したまま飛行している
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B-21 FirstFlightSunRise.jpg一般的な米国人思考からすれば、「クリスマス休暇前に一山超えて、ゆったり気分で休みに入りたい」だったでしょうが、あっさりと「初飛行」を90分間も実施してしまいました。

「順調すぎて心配になる」典型的な血液型A型のまんぐーすですが、数少ない明るい話題を週明けにお届けできてうれしいです!!!

B-21関連記事
「Taxi Tests開始」→https://holylandtokyo.com/2023/10/30/5180/
「エンジン稼働試験開始&屋外写真」→https://holylandtokyo.com/2023/09/15/5041/
「最近power on試験実施」→https://holylandtokyo.com/2023/08/03/4911/
「豪州も購入検討した」→https://holylandtokyo.com/2023/05/15/4588/
「B-21導入で米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「初披露のメディア扱い」→https://holylandtokyo.com/2022/12/14/4027/
「映像:B-21初披露式典」→https://holylandtokyo.com/2022/12/05/4015/
「10の視点で:NG社事前リリース」→https://holylandtokyo.com/2022/12/01/4004/
「12月2日に初披露」→https://holylandtokyo.com/2022/10/24/3796/

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「死の天使」AC-130から105㎜砲取り外し検討 [米空軍]

約30機保有のAC-130のシンボルが除去検討対象に
本格紛争でのAC-130運用を米空軍が再検討中
小型巡航ミサイルやAESAレーダー搭載等を視野に

AC-130J.jpg11月7日付Defense-Newsが、匿名の空軍関係者など複数からの聞き取りを基に、米空軍特殊作戦軍(AFSOC)所属でベトナム戦争以降の不正規戦や対テロ戦で大活躍してきた約30機保有の地上攻撃機AC-130J(Ghostrider)から、同機のシンボル的存在である105㎜砲(105mm cannon)を取り除き、強固な敵防空網が予期される本格紛争対応を念頭に、小型巡航ミサイルやAESAレーダーやネットワーク機器等を搭載する検討が行われている様子を伝えています

公式には、米空軍は予算化して2025年までAC-130の「在り方」検討中で、105㎜砲の除去や機体改修は全く予算化されていないことから、早くても機体改修は2026年以降にしか実現しない状況ですが、匿名の空軍特殊作戦軍関係者はDefense-Newsの取材に「(105㎜砲除去は)ほとんど決定事項。既成事実として除去後の部内検討が行われている」と述べており、約30機全機が対象になるのかも含め不明ですが、同機が大きな転換点にあるのは間違いなさそうです

11月7日付Defense-News記事によれば
AC-130J3.jpg●ベトナム戦争から実戦投入され、最近ではイラクやアフガニスタンでの対テロ戦争で大活躍し、今でもシリアで不可欠な戦力となっているAC-130Jは、味方が航空優勢を確保した敵拠点上空に約3-4時間連続在空し、30㎜機関砲と105㎜砲の2つの主力兵器のほか、対戦車ミサイルや対地精密誘導兵器(AGM-176 Griffin, AGM-114 Hellfire, GBU-39 Small Diameter Bomb、GBU-69 Small Glide Munition)で地上部隊の活動を援護する近接航空支援任務に従事してきた
●米国が2022年NDSで対中国を中心とした大規模紛争対処に焦点を当てる中でも、引き続き中東やアフリカ地域において、AC-130Jの活躍の場はなくならないだろうと考える者も多い

AC-130J4.jpg●AC-130JはAC-130シリーズの4代目で、37機保有していた旧型AC-130(H型 Spectre, U型 Spooky、W型 Stinger II)の後継機として2016年から導入開始されたが、予算や空軍の戦い方の変化を受け、2022年に30機で調達を終了することが決定された。ただし、新型の105㎜砲開発と導入が、17機を対象として2022年1月に完了したばかりでもある
●匿名の関係者の話を総合すると、105㎜砲を除去した後に搭載を検討されているのは、弾種不明ながら敵脅威の少ない遠方から発射可能な小型巡航ミサイルと、敵地上部隊の動向を把握可能なAESAレーダー、更に今後の統合戦力として不可欠なネットワーク通信機器等も模様である

AC-130J2.jpg●ただし、AC-130は主力兵器の30㎜機関砲や105㎜砲を機体左側のみに配置し、左旋回を継続しながら敵地上戦力を連続監視して運用する特殊なバランスの機体構造となっており、重く、大きな容積を占める105㎜砲を除去すれば、機体の重心や強度バランスの根本的見直し改修が必要となることから、1機約230億円の機体の扱いは単純には決められない課題となっている
●過去には「レーザー兵器」搭載が検討され、2016年当時の特殊作戦軍司令官が「搭載試験用の特別クルーや機体を準備し、試験機材の受け入れ準備は万全だ」、「2020年には搭載完了し試験的な実戦投入も」とまで発言していたが、機体の振動でレーダービームの生成が困難で、十分な出力確保も容易でないことから、米空軍として航空機搭載レーザー兵器開発全体が「引き続き検討中」ながら、実質的には停止しているのが現実

AC-130Jの紹介YouTube映像(約14分半)

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米空軍は本検討を、特殊作戦軍司令官だったJim Slife空軍作戦部長を中心に進めていますが、Slife中将は次期空軍副参謀総長として議会承認待ちの状態で、引き続き本検討を空軍の真ん中から采配していく事になります。

AC-130H.jpgAC-130という特殊作戦機の話ですが、米空軍が直面している「将来の戦いをどう見積もり、どう空軍を変化させていくのか」に直結する課題の一つとしてご紹介しておきます。なおAC-130Jについては、約14分の少し長いですが分かり易い動画を添付しております。ご興味がある方はご覧ください

AC-130関連の記事
「AC-130用レーザー兵器が大きく遅延中」→https://holylandtokyo.com/2021/10/21/2332/
「20年までにレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-06
「映像交えAC-130を紹介」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-06

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新たな米空軍トップが要望「既存方針&計画をやり通せ」 [米空軍]

過去3代の空軍参謀総長が練った指針や方針の実現目指す
「Follow Through:やりぬけ、行動に移せ」が合言葉
歴代トップの下で方針作成の実務家が具現化に挑む

Allvin13.jpg11月6日、2日に3か月半待たされてやっと第23代米空軍参謀総長就任の議会承認を得たDavid W. Allvin空軍大将(前副参謀総長)が、全ての米空軍勤務者に宛てた2ページのメッセージを発出し、過去3代の参謀総長が様々な検討や議論を経て定めた「21世紀の米空軍」を実現するための方針や指針やコンセプトを、「Follow Through:やりぬけ、行動に移せ、具現化せよ」との言葉を繰り返し用いて「実現」することを要望しました

Allvin14.jpgメッセージの中でAllvin新参謀総長は、脅威環境の変化や世界の技術革新が米軍に求める変化を「Speed, tempo, range, agility, flexibility, precise lethality, and resilience」だと端的に表現し、もちろん「将来の不確かさambiguity」はあるものの、変化要素は本質的に米空軍の得意分野であり、過去数年で米空軍が練ってきた方向性に沿って「Follow Through」し、現状から「Move Out:変化&前進」することが重要で、立ち止まって検討する時ではないと訴えています

そしてこの「Follow Through」こそが、2022年NDSが掲げた中国を中心とする本格的脅威や露イランNK等々の不安定要因に対応し、またイスラエル―ハマス戦争で顕在化した「地域紛争が様々な世界のアクターを巻き込んで大きな不安定要因となる」現実への対応力や抑止力を高める最善の道であると米空軍に向け訴えています

具体的に7つの「Follow Through」分野を揚げ、
Allvin12.jpg●空軍兵士や文民職員やその家族が望む相応しい変化を成し遂げ、彼らの忠誠や犠牲に値するものを提供する変革
「Operational Imperatives:任務遂行上不可欠な作戦能力要素」を実践可能な行動能力として実現獲得するため、各部隊が団結し、深い思慮の踏まえて効率的に取り組み

「Air Force Future Operating Concept:空軍将来作戦コンセプト」が意図する戦力投射を実現するため、前線展開部隊が迅速に有効な戦力発揮できるよう、各部隊が部隊間連携を含め、示された作戦行動パラダイムに適応
●現時点で未受領の将来装備や予期される新たな獲得能力や技能を織り込み、適切な部隊編成や規模等を適切に設計し実現

Allvin16.jpg●大国との本格紛争に最適化した組織部隊編成の導入。各種能力の「融合」が求められる。部隊指揮官によっては訓練、即応態勢維持、作戦遂行が焦点になり、支援能力や維持整備が焦点になる指揮官もあろうが、全員が紛争や抑止のため、訓練面、装備面、即応態勢面全てで配慮することを重視

●各兵士等のパフォーマンス最大化を目指した訓練面での変革。新技術導入による革新の効果を確認してきた一方で、兵士個々人の経験や技量や特性に応じた学習機会や、迅速かつ効率的なスキル付与手法にも着目
Allvin11.jpg●米空軍兵士が潜在的に持っている必ずしも明らかになっていない能力やスキルを、米空軍が抱える課題と結び付け解決に導く。空軍構成員が秘めている輝く部分を米空軍全体で活用可能な「エコシステム」の確立

---全般を通じ「Follow Through」実現のため、空軍内の規律や規範を維持しつつ、組織内のバリアを取り除き、組織の上下だけでなく横断的かつ全方向の連携で、組織の持つ潜在能力を最大発揮させたい
//////////////////////////////////////////////

抽象的な表現や形容詞が頻出する官僚組織文書ですが、ご覧の皆様には「行間を読んで」Allvin新米空軍参謀総長の課題をお察し頂けば・・・と存じます。

Allvin15.jpg特に「人材の確保や兵士個々の能力アップ」に関する事項が多く挙げられており、兵士の離職率が高まり、新戦力募集が厳しい中で、兵士や家族の勤務環境を整えるとともに、各兵士個々人の能力アップに向けた教育訓練の充実重視が目立っているように感じました

まんぐーすの注目点は以下です
●対中国の西太平洋で活躍の場がない(足の短い)F-35の調達予定機数をどのタイミングで削減するか
●高額(1機1000億円?)な次期制空機NGADと無人ウイングマンCCAをどのように取り込むのか
●主に対中国作戦念頭のACE構想具現化の限界(輸送力や展開場所確保)にどう対処するか
●B-21導入や次期ICBM(GBSD)やABMS開発導入のかじ取り

〇(米空軍に限らず米国防省全体として、)中国経済崩壊で中国軍まで崩壊した場合の「将来脅威」をどう設定するか

Allvin新米空軍参謀総長の関連
「やっと議会承認」→https://holylandtokyo.com/2023/11/06/5205/
「Allvin大将をご紹介」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/

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あと6年で無人ウイングマンCCAを実用化する試験準備 [米空軍]

単体新装備の試験でなく連携能力を試験するため
試験人員の養成からスタートと語る
運用可能なのか目途が立っているのか?

CCA NGAD2.jpg10月16日付米空軍協会web記事が、Kendall空軍長官が2030年までに(2020年代後半に)運用開始し、1000機から2000機の導入を想定と語っている無人ウイングマン機CCA(Collaborative Combat Aircraft)の性能確認や作戦運用試験を担当する「米空軍テストセンター」長の少将や担当部隊指揮官大佐にインタビューし、前例のない試験に臨む準備について紹介しています

CCAは、2024年度予算案の説明で空軍司令部作戦部長や計画部長が、3つの任務「shooters」「electronic warfare platforms」「sensor-carrying aircraft」遂行を期待する一方で、手頃な価格での迅速な導入を最優先にする観点から、米空軍側が要求性能を出し企業に提案させる流れとは異なり、手頃な価格範囲で企業側に何が出来ると問いかけて進める等、異例の方針を打ち出し「完成時期をどんどん前倒し中」のプロジェクトです。

CCA NGAD.jpgその背景には、対中国作戦を「煮詰めれば煮詰めるほど」、既存の航空アセットだけでは多量の敵目標に対処しきれず、また中国に強固に防御された空域での戦いで味方有人機に多くの損害が出るリスク認識が、今ごろになって急速に高まっている現実があるとまんぐーすは理解していますが、

CCAに関する最も大きな問題は、中国最前線にCCA発進基地を確保し展開させ、敵の基地攻撃を逃れて無事離陸させ、更に航続距離を確保(空中給油?)して任務を遂行させることが可能なのか?、有人機の展開拠点や維持整備体制確保も危うい中で、多量のCCAを作戦投入可能なのか?・・・にあるとまんぐーすはネチネチと申し上げてきた次第です。

Wigston.jpg本課題については更に、2022年7月にWigston英空軍参謀総長が「(CCAより遥かに小型の)無人機の群れ研究に手ごたえを感じている」と発表した際に、正直に「依然として、無人機の群れを攻撃対象となる敵防空網内に運搬&投入する能力開発は、現在も継続中」と認めており、小型無人機でも前線投入が困難な現実と併せ、再度ご紹介させていただきます。

「英空軍参謀総長:無人機の群れ前線投入が課題」
https://holylandtokyo.com/2022/07/28/3474/

そんな中ではありますが、今日の本題戻って、CCA受領後の米空軍試験担当である「米空軍テストセンター」幹部へのインタビュー記事から概要をご紹介します

CCA NGAD4.jpg●CCA受領後にどのような試験が求められるか、その試験はそのような組織編制で行うべきかについて検討を重ねているが、CCA受領後の試験には、前例のない様々な技術者や多方面の運用者の連携融合が求められることは間違いない。例えば、無人機運用を知る者、AIや自立化技術活用の専門家、またCCAが連携する戦闘機や作戦機運用の専門家との連携が不可欠だが、その融合が試験成功のカギとなる
●また試験を行う試験空域の運用法、各種制限、手順等も改めて見直しが必要で、CCA運用試験に関連する様々な部署と連携しつつ、同機体試験の具体的計画を検討している

XQ-58 Valkyrie.jpg●CCAに進む前段階として複数のプロジェクトが基礎研究として行われてきたが、各研究参加者はCCA試験の重要な人材であり、例えばSkyborg計画でXQ-58 Valkyrie開発に携わった関係者には、データベースインフラ構築面や戦闘機や作戦機部隊との連携試験での貢献を期待している
●またF-16改修無人機X-62Aを使用した空中戦闘機動や自立化無人機の戦術開発プロジェクト「VISTA:X-62A Variable In-flight Simulation Test Aircraft」関係者には、CCAの高度な自立運用能力試験への貢献を期待している

X-62A 2.jpg●更に、有人機と無人機のチーム運用検討に6機程度のF-16を活用して取り組んできた「VENOM project」(Viper Experimentation and Next-gen Operations Model)関係者には、センサーを活用した自立型航空機の更なる発展や、複数の航空機が関与する場面での試験状況確認面での貢献を期待している
●CCAは指揮統制改革面で、米空軍のABMSや統合レベルのJADC2におけるノード的な役割も期待されており、その方面での実戦的な環境での試験にも取り組む予定である
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XQ-58A 4.jpg記事の前半でも触れましたが、CCAを対中国作戦が行われる西太平洋地域の何処に展開し、どのように維持整備し、どのように作戦地域に投入するのか・・・との最もベーシックな疑問への回答が示されない限り、CCAが納入されても、性能確認や作戦運用確認試験の基礎計画さえ立案困難だと思うのですが・・・

16日付米空軍協会web記事は有能な「John A. Tirpak」編集長の筆によるものですが、有能な米軍事メディアの皆様には、是非この点を米空軍幹部に問いかけて頂きたいと思います。

無人ウイングマン機CCA関連
「AIアルゴリズム集大成試験」→https://holylandtokyo.com/2023/08/08/4922/
「2020年代後半導入へ」→ https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「長官:NGAD 200機、CCA 1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
「関連技術を23年から本格開発へ」→ https://holylandtokyo.com/2022/11/22/3948/

2024-25年に安価で小型の無人システムを海空中心に大量導入
Replicator構想を国防副長官がぶち上げも・・・
「同構想を慎重に補足説明」→https://holylandtokyo.com/2023/09/08/5016/
「同構想を発表」→https://holylandtokyo.com/2023/08/31/4997/

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