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米空軍がE-7導入を正式発表:2027年に1番機 [米空軍]

機体年齢44歳のE-3 AWACSの後継として
2027年の1番機はあくまでプロトタイプとか
2023年度予算案には研究開発テスト評価費が約260億円

E-7 Wedgetail.jpg4月26日、米空軍はE-3早期警戒管制機AWACSの後継として、「E-7 Wedgetail」を導入すると正式発表しました。ただし、現在保有する31機のE-3の後継機として、E-7を何機導入するかについて米空軍は明らかにしておらず、プロトタイプ機を契約するとの発表らしく、奥歯に物が挟まったような感もいたします

3月25日にKendall空軍長官が、「(E-3後継機の)最有力候補はE-7だと思うが、最終決定までには細部にわたる慎重な検討や確認も必要だ。今後数か月で意思決定する」と語っていたところですが、あっさり発表になりました。

E-3 AWACS.jpgE-3の老朽化による稼働率低下は前線部隊と維持整備部隊にとって以前から大きな問題となっており、昨年2月末には太平洋空軍司令官が「E-3の最近の信頼性度合いから、早急に新たな代替機が必要だ。E-3は離陸するのがどんどん困難になっている」、「最新のE-7を早急に導入すべき」とフライング発言し、空軍参謀総長が翌日には発言の火消しに回るなど物議を醸していました

また2021年7月には、米本土の維持整備部隊のあるTinker基地兵士が士気が上がらない部隊状況をメディアに訴え、ゴタゴタの末に部隊指揮官が解任される事態も発生していたところです

26日付Defense-News記事によれば
E-7 2.jpg●米空軍の発表は、米空軍は市場調査によって、戦術戦闘管理、指揮統制、目標探知追尾能力などから判断して「E-7 Wedgetail」がE-3の後継となる唯一のプラットフォームだとの結論に至ったと説明している
●そして米空軍は、2023年度にE-7を製造するボーイングと契約を結ぶ予定になっている。なお米空軍の2023年度予算案には、後継機のための研究開発テスト評価費が約260億円計上されており、併せて31機保有のE-3の15機を退役させる計画も盛り込まれている

E-7 Wedgetail2.jpg●なお(2023年度契約を予定する)最初のプロトタイプ機(first rapid prototype)は2027年度に納入されることとなっており、2番目のプロトタイプ機(a second rapid prototype)予算は2024年度予算に含まれる予定となっている
●ただし、米空軍はE-7を何機導入する予定かについて今回の発表で言及していない

追加情報:26日付米空軍協会web記事によれば
●米空軍報道官は、「31機保有のE-3の一部の後継としてE-7A Wedgetailsを導入することを決定した。何機E-7を導入するかは評価した後に決定する」と明らかにした
●また「rapid prototypeの1番機は2027年以降に納入される。production decisionは(プロトタイプが納入される前の)2025年に行う」とも表明した

●豪州によりE-7は開発され、韓国、トルコ、英国が保有又は購入計画を持っている。ただし、米空軍が導入するE-7は、これら各国が導入する機体とは異なった装備やシステム構成をなる模
●ボーイング関係者は、「米空軍にはopen architectureバージョンを提供し、現在のE-7にはない、他企業のシステムを搭載可能な形にする」と語っている
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ABMS4.jpg4月1日の記事でもご紹介したように、元々米空軍はE-3後継機は導入せず、宇宙を含めた多様なセンサー情報を集約して迅速に指揮統制に使用可能にするABMS(Advanced Battle Management System)導入を急いでいましたが、技術的課題や予算制約もあり遅々として進まず、ABMS(最近報道等が全くない)導入までのギャップを埋めるE-3後継機導入が不可避となり、最近になって急に話題となった経緯があるようです

これもまんぐーすの完全な邪推ですが、3月25日に空軍長官が「慎重に検討する。今後数か月後で決定する」発言をした1か月後の4月26日に正式発表となっており、何かに「せかされて」いるような気がしてなりません。

KC-46 Flight.JPG「E-7 Wedgetail」はボーイング製ですが、先日は空中給油機関連でRVS改修設計合意やKC-46をKC-YやZに・・・とのボーイング寄りの発表が米空軍からあったところでもあり、ボーイングに何かあるのかなぁ・・・と邪推してしまいます

平均年齢44 歳のE-3関連話題
「予算案通過なら2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/
「後継機検討のRFI」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711/
「急にE-3後継機が大きな話題に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/31/2669/
「米空軍航空機は依然高齢です」→https://holylandtokyo.com/2021/12/08/2475/
「空軍長官が7つの優先事項を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-12
「PACAF司令官:E-7ほしい発言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-27

米空軍空中給油機の整備方針を大転換
「KC-XYZの再検討再整理表明」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/

将来戦に向けた指揮統制改革:JADC2、AIDA、ABMS関連
「国防副長官がAIDA開始発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-23
「具現化第1弾でKC-46に中継ポッド」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-22
「3回目はアジア太平洋設定で」→https://holylandtokyo.com/2020/10/05/425/
「2回目のJADC2又はABMS試験演習」→https://holylandtokyo.com/2020/09/09/476/
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「今後の統合連接C2演習は」→https://holylandtokyo.com/2020/05/14/671/
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28

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米空軍とボーイングがKC-46のRVS改修にようやく合意 [米空軍]

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給油操作を行う映像装置RVSの根本的改修
2020年春に検討開始し、2021年5月に一度交渉決裂も
空中給油機関連課題が急に整理されていく流れに疑念も

KC-46 Flight.JPG4月19日米空軍報道官が、ボーイング社との間で2020年春から協議を続けてきたKC-46空中給油機のRVS更新改修設計案について4月11日に合意し、基本契約に沿って改修費用を全額ボーイング社が負担して2024年中旬までにRVS更新改修を終了することになったと発表しました

KC-46は従来の給油機とは異なり、操縦席内にあるカメラ映像を見ながら給油装置を操作するシステムを導入しましたが、その映像システムRVS(Remote Vision System)が太陽の位置や夜間に見辛く、捜査員が給油ブームで対象機の機体をひっかいて傷つけたり、安全に操作できないとの問題が生じて2017年夏に「category I deficiency:第1級不具合」に指定されました

KC-46 RVS.jpgこの不具合にボーイングは小手先の「ソフト改修」で対処しましたが空軍側は納得せず、根本的ハード対策が必要だと主張し、延々と押し問答が続いて2019年には膠着状態に至りました。最終的には2020年2月に時の空軍参謀総長が新任ボーイングCEOを訪問して直談判するに至り、その後少し動きがあって2020年4月に「RVS 2.0」を開発して更新することで合意したものです

KC-46 RVS 2.0.jpg冒頭でご紹介したように、その後も2021年5月に「RVS 2.0」設計交渉が決裂するなど、2021年秋には合意するはずの予定が今年4月まで遅れた超難産ですが、KC-46契約全体を貫く「固定価格契約」原則を維持し、「RVS 2.0」開発導入も全てボーイング経費持ちになります

これまでの様々な不具合対処経費を含めると、約6500億円ボーイングが自腹を切って対応しており、「RVS 2.0」開発導入経費がどの程度が現時点で公表されていませんが、更なるボーイング負担となります

4月19日付Defense-News記事によれば
KC-46 RVS2.jpg●米空軍報道官の声明によれば、「RVS 2.0」は、新しい4K解像度ディスプレー、改良した複数の可視光&赤外線カメラ、給油操作員操作パネルの完全再設計、画像処理プロセッサーの再設計により課題に対処する。特に3組のパノラマ視野カメラにより、昼夜を問わず、切れ目ない必要な視界を操作員に提供する
●また声明は、今後数か月で正式契約を交わすことになるが、「RVS 2.0」導入により、RVS関連の2つの「category I deficiency:第1級不具合」と6個の「第2級不具合」が解消されると説明している

KC-46 RVS 2.0 2.jpg●ボーイング社は「今回の合意は、米空軍とボーイングの緊密な連携でKC-46Aをニーズに応じて能力向上していく事例であり、最新技術を製造ラインに落とし込む流れを示すものである」、「この改修により世界最高の給油機は更に能力を向上させ、何世代にもわたり空軍運用者に恩恵をもたらすだろう」とコメントしている

●なおKC-46給油機は、導入予定の177機のうち既に57機が米空軍に納入済で、米空軍は作戦空域での使用を認めないなど使用制限を課しつつも、最近許可したF-22とF-35を含む対象機の85%への空中給油を認めている
●なお同機は米空軍以外では、日本が4機導入予定で2機を受領済、イスラエルも今年に入り2機導入を発表している。
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Brown4.jpg4月11日に「RVS 2.0」について空軍とボーイングが合意し、翌4月12日にBrown米空軍参謀総長が空中給油機の今後の体制整備について、従来の「KC-X(KC-46)→KC-Y(つなぎ給油機)→KC-Z(ステルス給油機)」との考え方を再検討中で、「Y」や「Z」で特別な能力を追求せず、KC-46を改良して使用していく方向も検討しつつあると明らかにしている辺り、色々な裏がありそうで想像してしまいます

KC-XYZの再整理については、「機種選定のドロ沼を避けたい」及び「予算もないのでステルス給油機は断念」と邪推しておりますが、KC-46に関する妥協も含めて考えれば、コロナで民航機需要が激減し、B-787の事故もあり瀕死のボーイングを米国政府として支えるための一連の判断とも邪推できます

米空軍空中給油機の整備方針を大転換
「KC-XYZの再検討再整理表明」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/
「KC-Yにロッキードが名乗り」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
「つなぎ空中給油機KC-Yに着手へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-05
「2016年当時の空中給油機後継プラン」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-09-22

KC-46関連の記事
「恒久対策は今も未定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-11
「50機目受領も恒久対策未定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-11
「KC-YもXと同じ対決へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
「KC-46空中給油機に更に2件の最高度不具合発覚」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-18
「F-22とF-35のデータ中継装置を搭載へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-22
「KC-46空中給油機を一部の任務に投入開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-25
「恒久対策は2023-24年から」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-30
「今度は燃料漏れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-31-1
「やっぱりだめで更に1年遅れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-04
「重大不具合について3月に手打ち!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-21
「空軍トップが新CEOに改善要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

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グアム島配備の米潜水艦が2隻から5隻体制に [Joint・統合参謀本部]

2021年11月の2隻体制から、3月末には5隻体制へ増強完了
対中国で優越な数少ない分野の潜水艦力強化
バージニア級でなく旧式のロサンゼルス級3隻増ですが
バージニア級増強は施設整備もあり2026年とか・・・

Annapolis guam.JPG4月15日付Defense-Newsが、米海軍がアジア太平洋地域の潜水艦能力を強化するため、グアム島配備の潜水艦を、従来の2隻から5隻体制に増強完了したと報じています。

グアム島潜水艦体制の強化については、2021年11月にJeffrey Jablon太平洋海軍潜水艦隊司令官(少将)が表明していたものですが、表明時点で2隻のロサンゼルス級潜水艦体制だったものを、2021年12月にハワイから1隻増強し、追加で2022年3月にハワイと加州からの各1隻を加え、計5隻のロサンゼルス級潜水艦体制を確立しました

Springfield guam.jpg本当であれば、2000年代から導入が開始され、既に19隻が任務に就いているバージニア級潜水艦を増強したいところでしょうが、受け入れ施設等の関係もあり、バージニア級は2026年配備予定だそうです。

増強した3隻の内、2隻がハワイからグアムへの移動であり、その実際の効果がどの程度かは不明ですが、対中国で西側軍事力が優越状態にあると言い切れる数少ない分野でもあり、「AUKUS」で豪州に攻撃型原潜を提供する決断もあり、現時点で対応可能な所で手を打ったのでしょう

【ご参考事項】
対中国における潜水艦分野での米国や西側優位に関する発言など

元太平洋軍作戦部長(2022年3月)
Virginia-class2.jpg●中国は台湾の海上封鎖を試みるだろうが、西側は潜水艦戦力や戦術で優位な立場にあり、この利点を生かすため西太平洋への攻撃原潜配備数を増やす必要がある
●太平洋軍はグアムに3隻の攻撃原潜を配備しているが、これを6隻に増強するため、ロサンゼルス級の延命を進め、バージニア級の増産(年2隻から3隻へ)体制を構築する必要がある。また豪州に米潜水艦基地を設ける必要がある

米国防省「中国の軍事力2021」レポート(2021年11月)
Annapolis guam2.jpg●中国の西側潜水艦への対処能力(anti-submarine warfare)は、依然としてレベルが低く、アキレス腱となっている。
●中国はこの欠点を改善するため、中国空母や中国潜水艦防御のために水上艦艇を2030年までに460隻に増強する計画
●中国の現在の潜水艦戦力は、戦略原潜を4隻と攻撃型ディーゼル潜水艦50隻の体制

戦略家エドワード・ルトワック氏
(「ラストエンペラー習近平」2021年7月刊 奥山真司訳より)
Luttwak5.jpg●ISRやAI情報処理能力の発展で、水上艦艇の脆弱性は過去20年間で20倍になったと考えるべき。平時からグレーゾーン事態では水上艦にも役割は残されているが、戦闘状態に入ったら格好の潜水艦の餌食である
●対中国の軍事作戦を考える時、中国の大規模艦隊は世界最大の「標的」となるともいえる。米海軍の攻撃型原潜が一つの鍵になる。西側の優位性を最大限に生かすべきである

日米が協力すべき軍事技術分野4つ
Los Angeles-class2.jpg(Atlantic Councilレポート2020年4月)
●中国は過去10年にわたり、有人及び無人潜水艦へ膨大な投資を行っている。
●米国も本分野への投資を始め、日本ではIHIが独自に無人水中艇開発を行ったが、防衛省としてこの分野への参画決断はない状態である。論理的に見て協力が望まれる分野である

CSBA報告書
米海軍に提言:大型艦艇中心では戦えない(2020年1月)
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Los Angeles-class.jpg上記の「元太平洋軍作戦部長」が要望している「6隻」体制なら、常に南シナ海も含む第一列島線内に、米海軍攻撃型原子力潜水艦を1隻ローテーション配備できるのかもしれません。(基礎知識皆無ですので完全な邪推です

最新の「中国の軍事力2021」レポートが、「中国の西側潜水艦への対処能力は、依然としてレベルが低く、アキレス腱だ」と言うのですから、水中無人艇への投資も含めて日本も協力し、この分野を「梃子」に対中国抑止力を高めたいものです。 

既に始まっている攻撃原潜の後継検討
「戦略原潜設計チームを次期攻撃原潜にも投入へ」→https://holylandtokyo.com/2021/11/04/2333/

攻撃原潜への極超音速兵器の搭載時期は
「バージニア級へは2028年以降」→https://holylandtokyo.com/2021/11/26/2450/

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米陸軍が前線での電力消費増に対応戦略検討 [Joint・統合参謀本部]

「Operational Energy戦略」を年末までに
前線兵士や前線指揮所での電子デバイス増に対応
気候変動対処に電気自動車導入推進などのため

Energy strategy.jpg4月12日付Defense-Newsが、米陸軍が前線での電力消費量増加や気候変動対処のための電気自動車導入に対処するため、2022年末までに「作戦運用エネルギー戦略:Operational Energy Strategy」をまとめて産業界とも共有し、最新技術導入を促進し、技術革新方向を示して協力を得ようとしていると紹介しています

米国防省の気候変動対処戦略CAPを受け、2月8日に米陸軍も「climate strategy」を発表し、2035年までに全陸軍基地に「自給自足のミニ総合発電施設:microgrids」を設置し、また同年に戦術車両にハイブリッド車を、そして2050年までに全電動戦術車両を導入する方針を明らかにしています

Energy strategy2.jpg米陸軍「climate strategy」を受け、前線の作戦運用部隊でのより具体的なエネルギー調達や分配や管理要領や技術開発方針を打ち出す「作戦運用エネルギー戦略:Operational Energy Strategy」を、2022年末までに作成することになっており、その概要方向を記事は紹介しています

考え方が古いまんぐーすにとって、前線で各兵士が持ち運ぶ電子デバイス増に対応する電源確保は理解できるにしても、戦闘車両の電動化については燃料輸送や維持整備負担軽減、更に車両静粛化とのメリットがあるとは理解しつつも、本当に施策を推進する動機が働くのか「?」です

Wormuth7.jpgですがChristine Wormuth陸軍長官(女性・前政策担当国防次官)は、「多くの資源を投入したくなる取り組みであり、このシステム改革を前線に届けるために必要な労力を忘れるほどの強い魅力がある」と語って米陸軍としてのやる気をアピールしています

そんな「Operational Energy戦略」が包含する分野は幅広く、従来の化石燃料から再生可能エネルギーへの移行や、展開先同盟国等からのエネルギー調達までを含む内容になるそうですが、本日は記事が断片的に取り上げている、ミニ総合発電施設Microgrids、バッテリー、バッテリー充電、産業界の動向等についてご紹介します

4月12日付Defense-News記事によれば
Energy strategy4.jpg●ミニ総合発電施設Microgrids
米海軍が加州ミラマー航空基地で導入しているシステムを、米陸軍基地に導入する企業提案の検討などが行われている
また前線や機動展開先で利用可能な、移動式発電機とも呼べる「mobile microgrid system」の検討も進められており、装置の更なる小型化が追求されている

●発電機
既に、発電効率を高めつつ信頼性を向上させ、かつ多様な発電機との部品相互融通性を高めた発電機の部隊配備が始まっているが、これに蓄電能力を加えて前線での有効性を高める挑戦が続いている
また兵士が着用可能な「wearable solar panels」や、持ち運び可能な「燃料電池fuel cells」の開発動向に注目している
ミニ総合発電施設Microgridsも発電機も、前線兵士が個々に保有して使用する電子デバイス用の「wearable batteries」充電や電動車両の充電に不可欠な装備である

●バッテリー
Energy strategy5.jpgリチウムイオンバッテリーの持続性や迅速な充電を求めた改良に取り組んでおり、「silicon anode」技術の活用などを検討している。
また、使用機材個々に特化した多様なバッテリーが前線に混在し、ロジ面での大きな負担となっている現状を改善するため、バッテリーの共通化標準化に取り組んでい

●バッテリー充電
バッテリーの共通化標準化に合わせ、バッテリー充電機の共通化標準化にも取り組んでいる
また、戦闘車両BradleyやStryker内に充電装置を付加し、移動中に兵士着用の「CWB:conformal wearable battery」や電子デバイスに充電可能にする試験が昨年夏から行われている
トレーラーの荷台に積載可能なコンテナサイズの充電器開発及び更なる小型化にも取り組んでいる

●産業界との連携
Energy strategy3.jpgバッテリーの蓄電量増加や前線でのバッテリー充電能力確保は依然として大きな課題であり、産業界からは米陸軍のインフラが圧倒的に不足しているとの指摘もあるが、数年前と比較して、社会全体での電気自動車普及の動きもあり、商用ベースでの充電設備の研究開発は飛躍的に進んでいる

Microgridsやバッテリー開発も企業側での競争原理も働いており、国防省や陸軍の気候変動対処戦略発表を受け、国防分野での需要拡大への期待感も企業側で膨らんでおり、win-win関係を構築する機運が高まっている

米陸軍幹部は、企業との取り組みのベクトルをそろえるためにも「Operational Energy戦略」が重要だとしており、産業界側にも同戦略の必要性重要性を語る関係者が多い。特に新たな参入企業を期待する場合には、要求を明確にすることが重要である
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Wormuth3.jpg過去記事でご紹介している米国や英国の取り組みは本格的なもので、なかなか「腹落ちしない」まんぐーすの時代追随能力の限界を感じております

ウクライナ侵略でエネルギーコストや消費財全般の価格が上昇しており、国防予算を圧迫しており、本政策の優先順位をどうするかで米国防省や各軍種の本気度を見てまいりましょう

排出ゼロや気候変動への取組み関連
「米空軍が航空燃料消費削減を開始」→https://holylandtokyo.com/2022/02/16/2691/
「米国防省は電気自動車&ハイブリット車導入推進」→https://holylandtokyo.com/2021/11/15/2423/
「米国防省が気候変動対処構想発表」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holylandtokyo.com/2020/09/25/487/

「英空軍トップが熱く語る」→https://holylandtokyo.com/2021/12/03/2474/
「英空軍が非化石合成燃料でギネス認定初飛行」→https://holylandtokyo.com/2021/11/19/2444/
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07

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ロシアの電子戦に迅速対処したSpaceXに学べ [米国防省高官]

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ウクライナでのロシアの電子戦に触れつつ
ウ国に提供したStarlinkを防御したSpaceXの対処に驚嘆
国防省専門家「目を見張るほど」「涙が出るほど」素晴らしい

Starlink spaceX.jpg4月20日のイベントで国防省や米空軍の幹部が、ロシアの電子妨害に対処してウクライナのインターネット接続を確保したSpaceX社の迅速で見事な対応を取り上げ、国防省をはじめとする政府機関もこの柔軟で迅速な対処を学ぶべきだと訴えました

イーロン・マスクが率いるSpaceX社は、ロシアのウクライナ侵略開始直後に、31歳のウクライナ副首長兼ねてデジタル相からの要請を受け、48時間以内に衛星利用インターネットサービス「Starlink」をウクライナに提供し、同時に関連端末を多量にウクライナに届けました。

Starlink spaceX2.jpgこれを受け、ロシアもウクライナをインターネットから遮断すべく直ちに電子戦(EW:electromagnetic warfare)を開始したようですが、翌日にはSpaceXが「Starlink」ソフトの妨害対象部分を見つけ出し、直ちに修復してロシアの妨害を無効化し、ウクライナのネット接続を今日まで確保し続けているとのことです

20日付Defense-News記事によれば
●米国防長官室のDave Tremper電子戦室長は、「SpaceXのElon Musk社長は、開戦時に数千のスターリンク端末を届けてウクライナを支援したが、ロシアの電子妨害にも迅速に対処して翌日には無効化している」、「電子戦において理想的な素晴らしい対処であり、その様子は涙が出るほど素晴らしい」と讃えた
Tremper.jpg●そして同時に同室長は、「仮にこれを政府機関が行っていたら、このようなコード修正に多くの手間をかけた分析を行い、意思決定に時間を要し、契約と実行まで含まると途方もない時間が必要だったろう」と語り、「我々にはこのような機敏さが必要で、電磁スペクトラム戦に向き合う姿勢や大胆に挑戦して変革することを可能にしなければならない」と訴えた

●また同室長は、システムの2重化・複数化の重要性を強調し、一つが被害を受けても、生き残ったもう一つで機能を維持する重要性を訴えた。そしてEW装置を更新する際には、単なる更新ではなく、システムの強靭性アップを図るべきだと主張した
●更に、AIや機械学習の導入による装備の処理速度向上や、デジタル設計活用による調達の迅速性追求も重要だと述べ、開発中の電子戦機EC-37B(Compass Call)がこの技術を活用し、地上で様々な新たな電子妨害手法を運用者と煮詰めている様子を紹介した

electromagnetic war.jpg●ウクライナにおけるロシアの電子戦について同室長は、米国防省が予期していたほど強力ではない(Pentagon expected a much stronger EW showing from Russia)と述べつつも、侵攻部隊を前進させながら電子戦を同時進行するロシア軍の同期された活動と、高度で洗練されたEW装備から多くを学んでいると語った
●また、ロシア軍のような電子戦を実戦で行うには、電子戦担当部隊や兵士の教育訓練が極めて重要で、士官から下士官レベルに至る全ての関係者が理解するまでの徹底した準備訓練と知識の浸透が欠かせないと表現した

electromagnetic war4.jpg●米空軍電磁スペクトラム課長のTad Clark准将は、今後の戦いは電磁波を絡める比率が一層高まると予想され、特に緒戦において電磁波領域を支配することが、戦い全体を優位に進める上で不可欠になると語った
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民間から改革の「旗手」や「担い手」として招かれながら、2-3年勤務後に国防省や各軍種の「硬直性」「改革意欲欠如」「複雑怪奇な手続き」「様々な抵抗」などに不満をぶちまけつつ去っていく事例が続いています。

不満をつづった文書をネット上に公開して昨年9月に辞任した国防省CSOに続き、2019年から空軍省CAO(chief architect officer)を務めていたPreston Dunlap氏が、web上に「国防省官僚制を改革するため成すべきこと」との8ページもの文書を投稿して数週間後に辞任することを明らかにしました

Conley.jpgDave Tremper電子戦室長の前任者であるWilliam Conley氏は「車いす上の改革者」と呼ばれましたが、この方も道半ばにして辞任しており、その際各方面から「電子戦の改善改革を考え抜き、民間の革新的技術の早期導入を推進し、敵に負担を強いる戦略を思慮していた人物」で、「新たなセンサー技術や電磁スペクトラム兵器のアイディアを膨らましていた人物」として惜しむ声が上がった方でした。軍の改革は難しいということです

ウクライナにおけるサイバー&電子戦
「露VSウのサイバー戦とFedorov副首相」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-22

最近のEW関連記事
「米空軍が電子戦専門航空団創設」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-30
「Electronic Protection超重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-03
「2021年春完成の電子戦戦略を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-30
「米陸軍は2027年までに前線電子戦部隊整備」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-04
「電子戦専門の航空団創設へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-03
「さわり国防省電子戦戦略」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-03
「国防省の電子戦担当少将が語る:道遠し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-19

原点:ロシアの電子戦に驚愕の米軍
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02

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イスラエルがレーザー防御兵器の試験成功発表 [安全保障全般]

昨年5月にロケット4000発撃ち込まれ対応迫られる
首相は2月「年内配備」、国防相「as soon as possible」と
100kw程度で無人機や短距離ロケット対処から
迎撃ミサイル「Iron Dome」では費用がかさみ過ぎ

Gantz2.jpg4月14日イスラエルのBenny Gantz国防相が、イスラエル製のレーザー防御兵器(名称は「laser wall」か「Iron Beam」)が最近のテストで、迫撃弾やロケット弾や対戦車ミサイルや無人機の迎撃に成功したと発表し、「as soon as possible」で国境周辺に配備したいと語りました

イスラエルは以前から、北部国境でヒズボラから、ガザ地区からはハマスから、イランの支援を受けているとイスラエルが主張する射程数㎞から数十㎞のロケット攻撃を受け、周辺イスラエル国民に被害が出るなど喫緊の安全保障課題となっていましたが、2021年5月にはハマスとの対立が激化し、僅か11日間で4000発もの攻撃を受けイスラエル国民12名が死亡する事態となりました。

laser wall.jpgイスラエルは、このようなロケット攻撃対処に「Iron Dome」との迎撃ミサイルシステムを米国の援助も得て開発導入し、9割の迎撃成功率を誇ると誇示していますが、ハマス等のロケットが1発コスト数万円程度なのに、「Iron Dome」ミサイル1発は数千から数億円とも言われ、イスラエル首相が「経済の方程式が成立しない」と表現する状態です

もちろん、物理的に短期間に数千ものロケット弾に迎撃ミサイルシステムで対処することは難しく、そこでイスラエルが注力してきたのがレーザー迎撃兵器の開発です。

Bennett.jpgイスラエル首相や国防省はその性能細部について言及していませんが、2月にBennett首相は「レーザービーム1回発射は数ドル程度のコスト」「イランが後ろ盾の同時攻撃も無効化できる」「2022年度中に配備する」と語り、首相と国防省はともに、地上だけでなく海上と空中にも配備すると語っています

以下では、発表当日4月14日にイスラエルで放映された関連TVニュース映像と、開発状況に詳しいTV出演専門家の解説から、テスト成功が報じられたレーザー防御兵器(名称は「laser wall」か「Iron Beam」)について断片情報をご紹介します

4月14日ニュース映像等によれば
laser wall2.jpg●試験したレーザー防御兵器は出力100kw程度で、米国が現時点で開発に手を伸ばしている300kwレベルよりは低い。レーザー出力は、イスラエルの限定的な試験環境にも制約を受けている
●開発に関する米国との協力はあるが、細部は説明できない

●イスラエルは、弾道ミサイルに対して「Arrow-1,2,3」やパトリオットミサイル、短距離のロケットに対しては「Iron Dome」など、センサーと迎撃兵器を重層的に配備してきているが、今回のレーザー兵器はこれらを補完するものであり、とってかわるものではない
laser wall5.jpg●例えばイスラエル北部国境では、雲や雨で年間60-80日程度はレーザー兵器使用に適さない気象条件となることから、全てをレーザー兵器で賄うことはできない

●レーザーは電力が確保できれば発射でき、迎撃ミサイルのように「弾切れ」や「ミサイル製造や輸送」の心配がない。また連続発射が可能で、多数同時目標対処にも向いている
laser wall4.jpgただし映画「スターウォーズ」のように、一瞬のレーザー照射で目標が破壊されるわけではなく、敵ミサイルや無人機を無効化するには一定時間レーザーを照射し続ける必要がある

国防省が公開したテスト映像にもあるように、装置自体は比較的小型で、電源部分を合わせてもトラックで輸送可能である
/////////////////////////////////////////////////////////

「laser wall」とか「Iron Beam」と呼ばれるこの装備は、その出力等から世界最先端とまでは言い切れない気がしますが、2021年5月にハマスから4000発もロケットを撃ち込まれて国民から厳しい視線を浴びているイスラエル政府とイスラエル軍ですから、あらゆるアイディアを投入して改良を進めると思います。

laser wall3.jpg弾道及び巡航ミサイル対処、砲弾やロケット弾対処、そして無人機対処まで、「いつまでたっても完成まであと5年」と揶揄されながらも、レーザーに対する期待は非常に大きいので、ハイテク産業で世界有数のイスラエルに大いに期待したいと思います

ちなみに・・・
遅れがちな米国防省「Directed Energy Roadmap」の目標設定

●2022年までに、150-300KW級の兵器化
 100Kwでドローン、小型ボート、ロケット、迫撃砲に対処可能
 300kwで巡航ミサイルに対処可能
●2024年までに、500KW級の兵器化
●2030年までに、1GW級の兵器化 

紹介映像1(6分30秒:2022年4月14日)


紹介映像2(3分:2022年4月14日)


紹介映像3(2分19秒:2022年2月)
  

開発の長い歴史と脅威背景の紹介映像(11分30秒:2022年1月)


エネルギー兵器関連
「陸軍が50KWレーザー装備の装甲車3台導入へ 」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-15
「AC-130用兵器の企業地上試験終了で空軍へ提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-12
「米議会がレーザー兵器開発に懸念で調査要求へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-08
「戦闘機防御用から撤退へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-01
「米空軍が無人機撃退用の電磁波兵器を試験投入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24
「F-15用自己防御レーザー試験」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-04
「エネルギー兵器での国際協力」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-27
「エネルギー兵器とMD」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「レーザーは米海軍が先行」[→]https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24
「無人機に弾道ミサイル追尾レーザー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-17-1
「私は楽観主義だ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23
「レーザーにはまだ長い道が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-18
「AC-130に20年までにレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-06

国防省高官がレーザーに慎重姿勢
「国防次官がレーザー兵器に冷水」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-12
「米空軍大将も慎重」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24

夢見ていた頃
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「米企業30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1

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山東省に新たな日本&韓国方面向きMD大型レーダー [中国要人・軍事]

標高750mに2019年11月以降に建設か?
同敷地には台湾方面監視レーダーが既に存在
日本全域を監視範囲に収め、宇宙状況把握にも使用可能か
日本は弾道ミサイルを保有していませんが・・・

Large Phased Array3.jpg4月18日付Defense-Newsが、商用衛星で2022年2月に撮影された写真を用い、山東省(山東半島やチンタオがある)中心部の標高750m付近に大型の弾道ミサイル監視レーダーが新設されていると報じ(上写真左が2018年6月、右が2022年2月撮影)、台湾方向を向く既存同型レーダーと共に監視体制を強化していると紹介しています

Shandong Province.jpg記事は当該弾道ミサイル探知追尾用レーダーを「LPAR:Large Phased Array Radar」と呼び、性能の細部は不明ながら、同形状で同規模の米軍AN/FPS-115はレーダー正面120度範囲を3000nm(5600㎞)監視できると紹介しています

Shandong Province2.jpgちなみに新レーダーのある山東省中心部から、ソウルが約800㎞、福岡市と台北市が共に約1100㎞、東京やフィリピンのルソン島北部までが2000㎞で、朝鮮半島と日本列島4島全域を物理法則からするとカバーできることになります

また米軍AN/FPS-115レーダーと同程度の傾きを持って設置されていることから、宇宙監視にも応用可能だろうと記事は推測しています

Heilongjiang Province.jpg新レーダーと同じ場所に隣接設置されてる既存の台湾方面向きレーダーは2013-2014年に建設されており、その他にも同種レーダーが、北朝鮮北方でロシアに接する黒竜江省(上の図)に朝鮮半島と日本方面向きに、台湾北方の浙江省にも台湾向きに設置済だそうです。更に新疆ウイグル自治区には、インド向きで同種レーダーが存在しているとか

確か中国は、米軍が韓国にTHAAD用レーダーを配備しようとした際、中国本土が監視範囲に入って許せないと韓国に嫌がらせしていますが、中国自身もしっかりやることをやっております

それにしても、日本は弾道ミサイルを保有していないのに、中国はいろいろ考えているのでしょうか?

Large Phased Array2.jpgちなみに、台湾でも米国の援助を受け、AN/FPS-115レーダーを発展させた「世界最強」級のミサイル監視レーダーが2013年頃には稼働し始めています。台湾の「Hsinchu」近郊「Leshan Mountain」に設置されたレーダーで、目標の大きさにもよりますが、巡航ミサイルや弾道ミサイルを3000km遠方から探知できるとの米軍需産業関係者の話が当時報道されています

山東省中央部に設置の新レーダーは、「北緯36°01′30″」「東経118°05′31″」で標高2300フィートに所在しているとのこと、ご興味のなる方は、ぜひ公開情報で現物をご確認ください

AN/FPS-115発展型の台湾「世界最強」級ミサイル監視レーダー
「台湾の巨大な中国監視レーダー」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2013-11-28

アラスカに2021年末に設置で試験中の巨大BMDレーダー
「BMD用の巨大新型レーダーLRDR完成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-08

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米国防省が航空輸送可能なミニ原発配備へ [米国防省高官]

僻地基地での使用を想定し、数か月で企業選定
2025年にデモ運用開始を目指し
C-17輸送機に搭載可能で1-5メガワット発電目指す
1960-70年代の失敗を教訓に
敵攻撃への脆弱性懸念の反対予期も

Portable nuclear3.jpg4月13日米国防省戦略能力開発室(SCO:Strategic Capabilities Office)が、人里離れた僻地基地で使用するC-17輸送機で空輸可能なミニ原発を開発し、2025年にはデモ運用を開始すると発表しました。

ミニ原発は重量40トンで、輸送機の貨物室に搭載可能なコンテナに収まるサイズに設計され、1-5メガワットの発電が可能ながら3年間は燃料補給が不要なものを想定しているとのことです。

portable nuclear2.jpg今後数か月以内に2つの候補企業「BWXT Advanced Technologies」と「X-energy」から一つを選び、SCOによる環境影響評価を行い、2024年にテスト評価、2025年にデモ運用開始を計画しています

4月15日付Defense-Newsからは、具体的な初号機の配備場所が決まっているのか、ミニ原発用の新型核燃料開発が行われている「Idaho国立研究所」でデモするのか、環境影響評価の結果によってアラスカやグアムやDiego Garciなど11の候補地から選ぶのか不明確ですが、過去の構想にあった「展開先の前線基地」での使用ではなく、「不便な僻地基地」で使用するとの説明ぶりになっています

microreactors.jpg米軍のミニ原発への取り組みは、以下のように冷戦時に一度ピークを迎えていますが、「信頼性が低く高コスト」であったことや、敵から攻撃を受けた際の放射能汚染が懸念され、計画は頓挫しています

Army Nuclear Power Program(1954 ~ 1977)
●8つの右原発が製造され、5基がワイオミング州、グリーンランド、南極、パナマ運河地域で4-12年運用(1962-1977年)された。
●上記場所に設置運用される前の1961年に、「Idaho国立研究所」で3名が死亡するメルトダウン事故を起こしている

以下では4月15日付Defense-News記事から、「Project Pele」担当責任者と反対派研究者の主張を簡単にご紹介しておきます

「Project Pele」担当責任者Jeff Waksman博士
waksman.jpg●「Project Pele」で使用される技術は、軍用だけでなく商用利用にも活用できる画期的な技術である。1970年代当時より安全性が向上した「3構造低濃縮ウラン」燃料を使用した「高温ガス炉」方式で計画している
●核燃料は直径1㎜以下の小さなカプセル梱包された形状に準備され、小さな単位で防御された形で使用される

●従来の重油仕様の発電機は、燃料輸送や発電施設維持補修に多くの兵站支援が必要だったが、ミニ原発は3年間燃料補給が不要である
●冷戦期の経験、2010年頃からの基礎研究、更に2019年年度からの関連投資で必要な要素技術は格段に成熟しており、2025年のデモ運用開始は十分に可能である

反対論者のテキサス大学Alan J. Kuperman教授らは
Kuperman.jpg●敵攻撃に脆弱なミニ原発への反発を避けるため、「展開先の前線基地」配備構想を引っ込め、「不便な僻地基地」での使用を打ち出しているが、技術的ハードルが高く高コストの航空機輸送可能な設計を行うなど、有事に「展開先の前線基地」配備を狙ったものであることは明らかで、敵攻撃を受ける危険なプロジェクトだ

●小型カプセル化した核燃料は、攻撃を受けた場合周辺に飛散し、放射能汚染を拡散させることになる
●2019年度に約50億円、2020年度の85億円規模の投資を国防省は行っているが、未だにしっかりした設計は完成しておらず、実際の部品準備も未着手な中、2025年に運用開始とは極めてリスクが高い無謀な計画だ

ちなみに、2018年米陸軍研究レポートで配備候補11か所とは
• Thule, Greenland
• Kwajalein Atoll
• Guantanamo Bay, Cuba
• Diego Garcia
• Guam
• Ascension Island
• Fort Buchanan, Puerto Rico
• Bagram Air Base, Afghanistan
• Camp Buehring, Kuwait
• Fort Greely, Alaska
• Lajes Field, Azores
/////////////////////////////////////////////////

microreactors2.jpg米国防省と反対派の主張のどちらに分があるのか判断できませんが、大型の原子力発電所とは異なり、ミニ原発は敵の攻撃の目標になりそうな気がするので懸念の声があるのは理解できます

一方で、米軍が進める気候変動対策や陸軍の電動戦闘車両導入、前線への兵站輸送の負担軽減などなどを考えると、ミニ原発の魅力は捨てがたく、研究は止められないのでしょう

展開候補地に日本は入っていませんが、グアムが含まれるぐらいですから、硫黄島や第2列島線上には可能性がありそうですのでフォローしておきましょう。ちなみに「Project Pele」の「Pele」は、ハワイの火山や炎の神様からとった名前だそうです

ミニ原発関連の記事
「ミニ原発反対論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-16
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07
「米陸軍が前線での電力消費増に対応戦略検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-04-13
「国防省の気候変動対策」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-08

「米国防省は電気自動車&ハイブリット車導入推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-10
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23-1

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大転換:KC-YとZはKC-46の改修型へ? [米空軍]

つなぎ給油機KC-Y機種選定の可能性は低下しKC-46活用へ
KC-Zでステルス機を追求する従来構想見直し
要求性能精査やKC-46の状況確認が理由らしいが・・・
機種選定のドロ沼回避と予算不足が原因では

Brown4.jpg4月12日、Brown米空軍参謀総長が記者団と懇談し、空中給油機の今後の体制整備について、従来の「KC-X(KC-46)→KC-Y(つなぎ給油機)→KC-Z(ステルス給油機)」との考え方を再検討しつつあり、特別な能力を追加で要求するのではなく、KC-46を適宜改良して使用していく方向も検討しつつあると語りました

この「方針大転換」の理由についてBrown大将は、KC-46が不具合を依然抱えながらも十分使えそうなこと、イラクやアフガン等での中東ニーズが減少したこと、従来ホワイトボードで行っていた給油機運行管理を効率よく実施する「new tools」を導入したからだと、「?」が花火のごとく飛散するほど意味不明な説明していますが、まんぐーすは「ドロ沼の機種選定回避」と「予算確保難」が真の理由だと強く邪推しております

Kendall air.jpg2023年度予算案公表時にKendall空軍長官が、「本件については透明性が極めて重要だと考えており、競争的機種選定の可能性も残ってはいるが、我々の要求事項を精査する中で、KC-Y やKC-Z計画における機種選定実施の可能性は低下しつつある」と語っており、この発言を補足する形でBrown参謀総長は語っています。

まず従来の給油機整備の考え方
KC-Xとして、(ドロ沼機種選定の末に決定した)KC-46を179機2027年までに導入し、老朽KC-135等の後継に

LMXT.jpgKC-Yには、老朽給油機の穴埋めとして、戦闘空域での使用を想定せず米国内訓練や海外への機動展開支援を担う「つなぎ給油機:bridge tanker」を選定導入。KC-46製造修了の2027年頃から、本格ステルス給油機KC-Zまでの間を「つなぐ」機体として導入
(なおKC-Y機種選定は、ボーイングのKC-46改良型と、ロッキードが提案するMRTT(KC-46とドロ沼機種選定を戦った機体)改良型であるLMXTの対決が予期されていた)

KC-Zは将来作戦環境に備え、次期制空機NGADとともに強固に防御された敵空域にエスコート侵攻可能なステルス性を備え、自立性(無人機)追求可能性がある従来給油機より大型の、全く新しいタイプの新型給油機を想定。これが過去3代の米空軍輸送コマンド司令官が継続して主張してきたKC-Z

ところが14日の記者懇談会でBrown参謀総長は
(15日付米空軍協会web記事によれば)
Brown nomination.jpg●先日のKendall長官発言にある程度同意で(do somewhat agree with him)、新たにKC-Yを開発するには時間と資金も必要になるが、そのようなやり方は不要だと考えている。なぜならKC-46は未だに不具合を抱えて改修中であるが、かなり良い仕事(is doing fairly well)をしているからだ
●KC-46はKC-135等より同じ機数で多くの任務を遂行可能なことを示しつつあり、KC-YやZには、KC-46を最新技術で改修近代化することで対応できるのではないかと考え始めている

●KC-Zはどうなるのかとの質問になろうが、次期制空機NGADに追随して敵空域まで侵入する従来語られてきた運用構想を今は持っていない。KC-Zをエスコート型給油機と呼ばないことにした。
KC-46 Flight2.jpg●米空軍はKC-Zについて再検討している。給油オペレーターを廃止して自動化する議論も再検討対象である。ただしKC-46とは異なり、KC-YとKC-Zは自己防御能力を保有し、通信中継ノードとしての役割を担う方向で追求する

●(まだ重大不具合を抱えつつ、要求対象機の7割への給油が可能になっている)KC-46はあまり目立たないが約1か月間欧州に派遣されており、4月22日頃まで現地の作戦を支援して経験を積んでいる
/////////////////////////////////////////

この空中給油機整備構想の「どんでん返し」「ちゃぶ台返し」は大きな波紋を呼ぶのではないでしょうか? LMXTをエアバス社と組んでやる気満々準備してきたロッキードは、法的な手段に出る可能性も否定できません

KC-46 RVS2.jpgそれに、未だ第1級不具合を抱え、その改修の道筋さえも固まらず戦闘空域で使用できないKC-46を、つい最近まで酷評してきたはずなのに、突然「can likely do the job」とか「is doing fairly well」と表現し、「欧州で経験を積んでいる」とフォローする米空軍首脳陣の「豹変ふり」にただただ驚くばかりです

大きな改革を進めるためには、細事にこだわってられないとの決断の末の発言でしょうから受け止めるとして、真の変更理由は「ドロ沼の機種選定回避」と「予算確保難」だと再度まんぐーすの邪推をご披露しておきます

KC-X,Y,Zの従来の考え方
「つなぎ給油機KC-YにロッキードがLMXTで名乗り」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
「つなぎ空中給油機KC-Yに着手へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-05
「2016年当時の空中給油機後継プラン」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-09-22

KC-46関連の記事
「恒久対策は今も未定」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-11
「50機目受領も恒久対策未定」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-11
「KC-YもXと同じ対決へ」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
「KC-46空中給油機に更に2件の最高度不具合発覚」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-18
「F-22とF-35のデータ中継装置を搭載へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-22
「KC-46空中給油機を一部の任務に投入開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-25
「恒久対策は2023-24年から」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-30
「今度は燃料漏れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-31-1
「やっぱりだめで更に1年遅れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-04
「重大不具合について3月に手打ち!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-21
「空軍トップが新CEOに改善要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

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米空軍2023年度の弾薬調達予算案を考察 [米空軍]

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米空軍の弾薬要求を3カテゴリーから概観

JASSM-ER10.jpg4月1日付米空軍協会web記事が、米空軍の2023年度予算案から、「射程の長い精密誘導兵器」「射程の短い精密誘導兵器」「空中戦用のミサイル」の3カテゴリーの弾薬要求数と、2年前からの推移を紹介していますのでご紹介します

中東での対テロ戦争支援縮小と、対中国を念頭に置いた本格紛争への備え強化の流れから、「射程の短い精密誘導兵器」の調達減少と「射程の長い精密誘導兵器」調達の大幅増が予期されるところですが、担当する軍需産業の能力限界と予算的制約もあり、調達増は緩やかな変化の範囲にとどまっています

JASSM-ER5.jpgちなみに先日、元太平洋軍作戦部長らによる提言「米軍が台湾対処準備で直ちに行うべき9項目」をご紹介し、「いの一番」に空対艦ミサイルLRASMの増産と海空軍による調達増(「米海軍と空軍は、それぞれLRASMを毎年50-75発調達せよ」)が上がっていましたが、米空軍は「28発」要求にとどまっています

「射程の長い精密誘導兵器」

●JASSM-ER(空対地ミサイル:投資額が弾薬で最大の750億円)
射程は900㎞以上で、第一列島線から中国本土攻撃可能
21年度400発→22年525発→23年550発
Mark Gunzingerミッチェル研究所航空宇宙研究部長→「JASSM-ER調達増は喜ばしいが、製造企業の能力限界を如実に示し、戦時増産能力の不足を露呈した形だ」

●LRASM(JASSMの空対艦ミサイル版)
21年度?発→22年0発→23年28発 

●JDAM
JDAM-New.jpg2022年に前年から大幅減となったのは、シリアやイラクでの作戦終了によるもの
21年度16800発→22年1919発→23年4200発
Gunzinger研究部長→「小型のロケット推進装置等を装着し、長距離爆撃機から発射すれば、アジア太平洋紛争シナリオで要対処の目標数千個に対する最も安価な攻撃手段

●通常弾頭での地上精密攻撃兵器(JAASM-ER、LRASM、JDAM)調達予算額は、LRASMとJDAMの調達量回復により
22年1300億円→23年1700億円

「射程の短い精密誘導兵器」

●SDB(Small Diameter Bomb)Ⅰ
副次的被害を抑える小型爆弾は、対テロ戦縮小で調達減
21年度2462発→22年988発→23年356発

●StormBreaker(旧姓SDBⅡ)
SDBの中でも新しいSDBⅡも減少傾向に
21年度?発→22年985発→23年761発

●AGM-114 Hellfireミサイル(多くはMQ-9に搭載)は調達数非公開
2023年度予算案で、100機が他省庁に移管される計画が明らかに

「空中戦用のミサイル」

●AIM-120D(AMRAAM)
次期空対空ミサイルJATM開発で、「120」は2026年で製造終了
21年度268発→22年168発→23年271発

●AIM-9X Sidewinder
空中戦の様相がより遠距離攻撃志向となり減少傾向
21年度331発→22年243発→23年255発
////////////////////////////////////////////////////////

GBU-53B StormBreaker.jpgもう少し記事に背景説明が含まれていればよかったのですが、舌足らずの中途半端な紹介になってしまいました。

ただ、米軍と言えども弾薬の緊急増産調達は容易ではないのが現実だということです

米軍が早急になすべき9項目を元太平洋軍作戦部長が語る
「米軍に必要な台湾事態対処準備」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-09

超極秘開発中のAMRAAM後継ミサイル:2022年中にIOC予定
「JATM AIM-260について」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-04-03

JASSM-ER関連記事
「高市議員のCHAMPはJASSM搭載」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-11
「JASSMまだまだ射程延伸」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-15
「更なる射程延伸開発契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-09
「ポーランドに70発輸出承認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-30
「B-52をJASSM搭載に改良」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-13
「JASSM-ERを本格生産へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-17-1

LRASM関連の記事
「LRASM開発状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17-1
「米軍は対艦ミサイル開発に力点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-18
「ASB検討室の重視10項」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-04
「LRASMの試験開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-23
「新対艦ミサイルLRASM」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19

JDAM関連
「艦艇攻撃用に改良中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-13
「F-15Eを完成弾JDAM運搬用に改良試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-04

空自F-35に長射程ミサイル搭載計画
「JASSMに加えJSMも契約」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-17

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大活躍スティンガー携帯防空ミサイルの後継選定 [Joint・統合参謀本部]

後継機開発とスティンガー増産との兼ね合いが悩み
選定・試用・修正経て2027年に製造開始
無人機対処重視で関連兵器やレーザー兵器に関心の中

Stinger SAM.jpg4月7日付Defense-Newsが、世界各国がウクライナ支援のため多数提供している大活躍中の携帯型対空ミサイルStingerについて、米陸軍が延命措置も行いつつ計画通りに企業に情報要求書RFIを最近発出し、後継選定作業を本格開始したと報じています

Stingerミサイルは1981年から使用されている兵器で、米陸軍は約5900セットの同兵器を有効活用すべく、2019年度予算から内臓半導体や経年劣化する部材を交換等する延命措置を開始しており、2022年6月には終了する予定になっていますが、後継機種選定計画を2022年度予算案に盛り込んで今次発出したRFIの準備を進めていたところです

Stinger SAM2.jpgStingerは、主目標を低空低速飛行のヘリや対地攻撃機、低空飛行中の戦闘機や輸送機や巡航ミサイルなどとする赤外線追尾方式の兵器で、射程も数km範囲の限定的能力の兵器で、ウクライナ情勢緊迫からストライカー戦闘車両への搭載改修も急遽行われていますが、米軍の考える「大国との本格紛争」想定では、重視されている兵器ではありません

米陸軍など地上部隊にとっては、近年急速に発展し、安価なため様々な国が開発し導入している「無人機」対策が一番大きな課題と認識され、そのためのレーザー兵器や電子妨害装置、飛行場や市街地でも使用可能な非破壊性の捕獲ネットなど様々な「新兵器」アイディアを評価している段階で、正直なところウクライナ事案でStingerに急に注目が集まっていることに困惑もありましょう

実際議会からは、ウクライナの要請で縮小傾向にあったStinger製造ラインの拡大投資を始めたばかりの中、同時に後継兵器開発への投資が増加することに対し、優先順位をよく考えるべきとの「一旦停止」意見も出ており、微妙な立ち位置にある後継兵器開発でもあります

4月7日付Defense-Newsによれば
SHORAD.jpg●短射程防空能力(SHORAD:Short-Range Air Defense capability)システム開発の一環として、2022年度予算から本格化したStingerミサイル後継検討に関する情報提供要求書RFIによれば、次期システムには「目標補足能力」「破壊力」「射程距離」向上が求められており、戦闘車両用に搭載可能な発射機にも引きつづき対応可能なことも要求されている

●開発・導入の時程としては
・ 2022年末に候補機種等を絞り込んで契約
・ 2023年度に技術確認デモンストレーションを行い、2026年度の実射による能力確認等の作戦運用デモンストレーションを経て、2027年度には計1万セットの製造を段階的に開始して、2028年夏まで製造品の完成度合いを継続アセスメントすることになっている

Stinger SAM3.jpg●また、先ほど述べた「目標補足能力」「破壊力」「射程距離」向上以外にも、技術開発状況に応じて近接信管能力(Proximity Fuze (PROX) capability)付与も考えられており、様々な空からの脅威対処に能力強化を狙っている後継選定である
//////////////////////////////////////////////

ロシアによるウクライナ侵略が発生したとしたら、高度なハイブリッド戦が宇宙ドメインも巻き込んで生起し・・・と言った予想はことごとく外れ、20世紀的な地上部隊の作戦が主流の中、突然脚光を浴びることになったStingerミサイルや対戦車ミサイルですが、2023年度予算案を議会に説明する米軍幹部にとっては、正直なところ「困ったスポットライト」なのでしょう

Ukrainian forces2.jpgKendall空軍長官以下の米空軍幹部が、ロシア軍のことを聞かれても「China」脅威を訴える対応を繰り返す中、ウクライナ侵略が2023年度予算案にどのような影響を与えるかを見る一つの試金石事業がStinger後継事業です

米陸軍の短射程防空能力(SHORAD)整備
「米議会がレーザー兵器開発に懸念で調査要求へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-08
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器搭載装甲車両契約」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-05

ロシア脅威認識は変化なし。本丸は依然中国だ
「米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る」→https://holylandtokyo.com/2022/03/17/2929/

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米空軍は今後5年間で1000機削減を計画 [米空軍]

上院議員が未公開情報を持ち出し問いただす
国防長官も統合参謀本部も否定せず将来のためと原則論

Fischer.jpg4月7日、上院軍事委員会で共和党Deb Fischer議員が、未公開の2023年度予算案関連情報を持ち出し、国防長官と統合参謀本部議長に対し、今後5年間で空軍機を1000機削減する計画があるが本当に大丈夫なのかと問いただすとともに、国家安全保障戦略NSSやNDS、核体制見直しNPR、ミサイル防衛見直しMDRなど重要政策文書や、予算関連構想や資料提示が遅いことを厳しく問いただしていま

2023年度予算案公表時に米空軍幹部は、約150機の航空機を早期退役させ、MQ-9無人機100機を他省庁に譲渡し、新規に82機購入して約160機の総機数削減になると全体計画の一部を説明していた模様で、実際には369機を退役させ、87機を新規購入する282機削減案であることが同上院議員から明らかにされました

Fischer2.jpgまた同上院議員は、今後5年間の計画では、1468機を早期退役させ、467機を新規導入し、全体で1001機の削減となる計画を米空軍が持っていると指摘し、kendall空軍長官が予算案公表前後に語っていた「2024年度予算案では、より一層厳しい選択を行う」と表現していた厳しさの一端を暴露しました

通常は次年度予算案提出時に「J-books」と呼ばれる細部説明資料が同時に国防省から提供されるのですが、今年はひと月遅れになる模様で、このあたりも米議会で非常に不評な模様です

更に、バイデン政権の安全保障戦略を示す「国家安全保障戦略NSSやNDS」、「核体制見直しNPR」、「ミサイル防衛見直しMDR」など重要政策文書が、やっと先週議員に、しかも扱いにくい「秘密文書」として提供されたばかりで、安全保障関連予算の議会審議を困難にしているとFischer議員は厳しく指摘しています

Fischer3.jpgこの上院軍事委員会に出席していたオースチン国防長官とMilley統合参謀本部議長は、米空軍の大規模航空機削減計画を否定せず、米空軍も委員会後のメディアからの矢のような問い合わせにも「J-books」で説明するとの姿勢を貫いており、米国防省と米軍による、維持費のかかる旧装備を早期に退役させ、将来戦に必要な新装備導入に資源配分する姿勢は強固なようです

以下では、同委員会におけるFischer上院議員の厳しい質問に対する、国防長官と統合参謀本部議長の対応をご紹介しておきます。特に目新しい発言ではありませんが

7日付米空軍協会web記事によれば
Milley Senate.jpg●(作戦運用上の戦力ニーズは、国防省や米軍が計画している戦力削減に応じて低下すると予想しているのか?) 国防長官→米国防省は将来戦において決定的な勝利を収めるための投資を継続しており、将来戦で生き残れない戦力は早期退役させるべきと考えている。退役予定の装備は維持経費が高騰しているもので、その維持費を将来装備に振り向けたい。これが我々の戦略だ

●統合参謀本部議長→早期退役を考えている装備の大部分は米海軍と空軍の装備である。長期的なコスト分析結果では、早期退役がより効率的である。我々は2030年以降の将来環境に対応する戦力投資を行いたい

Milley Senate2.jpg●(バイデン政権のNSSなど政策文書策定が遅いとの指摘に関連し)国防長官→予算案や「J-books」に示される資源配分計画は、全て政府の戦略文書やレビュー文書と整合が執れており、米国民の民意に沿うものである
///////////////////////////////////////////////

ウクライナ東部や南部での緊張が高まっていますが、これまでの国防省や米軍幹部の発言等からすると、米国防省や米軍の将来投資計画は「対中国」中心で全くブレておらず、あくまで「ウクライナ事案関連のインフレ対策」をどうするか、「対中国」のどの部分を後回しにするかの検討しかないように感じています

Milley Senate3.jpg世界の安全保障認識や一般国民の軍事脅威への認識は変化しそうですが、少なくとも米国防省と米軍関係者の目は「対中国」で変化ないと思います。もちろん、F-35調達機数の削減も、維持費の将来見通し確定のタイミングで行う路線で変更ないと思います

米国防予算案の関連記事
「ウクライナ侵略も米空軍幹部は対中国優先」→https://holylandtokyo.com/2022/03/17/2929/
「2023年度国防省予算案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-29-1
「E-3・AWACSが2023年から退役へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-30
「民間監視団体がF-35酷評」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-17

「F-35調達機数は減少へ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/25/2933/
「空軍の戦闘機構想」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/

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NATO司令官:F-35は少数だが活躍、2030年までに550機 [亡国のF-35]

4-6機がポーランドとルーマニアに展開
16機F-15ポーランドや8機F-16ルーマニア展開と共に

Wolters7.jpg3月30日、NATO司令官で米欧州コマンド司令官を兼任するTod D. Wolters米空軍大将が下院軍事委員会に出席し、ロシアのウクライナ侵略に伴って米本土から東欧諸国に展開している4~6機の米空軍F-35が、ISR任務等に「エレガント」な働きをしていると証言し、現在欧州に100機F-35が存在するが、2030年には計画通り550機規模の戦力になることを期待していると語りました

ウクライナ情勢の緊迫を受け、
米空軍は以下のように米本土から航空戦力を東欧に増強中

●B-52:2月10日米本土から英国基地へ

●F-16:2月11日8機をドイツ基地からルーマニアFetestiへ
●F-15:2月上旬8機を英国基地からポーランドLaskへ
    追加で2月14日に8機米本土からポ国へ

●F-35:2月16日6機米本土からドイツSpangdahlemへ
    2月24日同機が独からポーランドとルーマニアへ更に展開
    3月30日下院軍事委員会でWolters大将「現在は4機が東欧に展開」と証言

3月30日にNATO司令官Wolters大将は議会で
Wolters5.jpg●(米本土Hill空軍基地から)東欧に展開している4機のF-35A型機は、ロシアによるウクライナ侵略に対するNATO対処の一環としてエレガントにISR任務を遂行しているが、将来、現在計画されている欧州へのF-35導入が完了したら、現在よりはるかに大きな戦力であることが明らかになるだろう

●これまで同機が今の情勢下で、抑止と安全保障に貢献してくれているように、今後もNATOの戦略能力、戦況把握と警報発令、指揮統制、ミッション指揮の改善に極めて大きな役割を果たしてくれるだろう
●F-35のNATO諸国への導入が劇的に進みつつあり、現段階で約100機が欧州に存在するが、私はこの数が計画通り増加し、2030年には約550機規模の素晴らしい戦力に成長することを願っている
////////////////////////////////////////

Wolter司令官が語った「2030年には約550機」とは以下の合計
Denmark(27機), Italy(90), Netherlands(37),
Norway(52), 英国(138)、Belgium(34)
ポーランド(32)、スイス(32)
フィンランド(64)、ドイツ(最大35)

F-35 Germany.jpgF-35のISR能力の優秀さは各所で語られていますが、同司令官が「550」との数字に言及する際、上記の各購入国が公式に発表している購入予定数の単純合計なのに、わざわざ「our hope is・・・」との表現で語っている点に注目です。

英国の国防相が昨年6月、F-35維持費の高止まりに怒りを爆発させ、英議会で「我々は白紙の小切手にサインするつもりは無い」と導入機数削減に公然と言及するなど、米国との関係からF-35購入を決定した国々も、米国防省のF-35調達機数削減検討を注視しています

まんぐーすのざっくり予想は、欧州全体で最高300機・・・です。200-250機で落ち着く可能性もあると思います。米軍だって半減の勢いですから。

F-35調達機数削減の動き
「米海兵隊も削減示唆」→https://holylandtokyo.com/2022/01/17/2586/
「米空軍2025年に調達上限設定を」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「英国は調達機数半減か」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/

「民間監視団体がF-35改善なしと」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-17
「英国防相がF-35企業に不満をぶちまける」→https://holylandtokyo.com/2021/06/25/1949/
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holylandtokyo.com/2021/03/10/157/

最近のF-35購入決定国
「カナダが第1候補に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-29
「ドイツが戦術核運搬用に16番目」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-15
「フィンランドが15番目」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-11
「スイスが14番目の購入国に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-01
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

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中国とソロモン諸島の安保協定案リーク [安全保障全般]

2019年に台湾との国交を絶ったソロモン
中国軍の活動や施設使用を認める安保協定案
中国がソロモンに守秘義務を求める条項も

solomon3.jpg3月末、ネット上に中国とソロモン諸島が交渉中と言われる安全保障協定案がリークされ、ウクライナ情勢に世界の注目が集まる間隙を縫い、中国がじわじわと南太平洋に足場を伸ばして、米・豪・日・印による「QUAD」や2021年9月に成立の米・英・豪の「AUKUS」といった中国包囲網に風穴をあける動きに変化がないことを示していると話題です

ソロモン諸島は、ニューギニア島の南東に大小さまざまな島で構成され、岩手県の2倍ほどの総面積に人口70万人弱の国家で、農業と漁業が主要産業で軍隊を持たず、警察が800名規模で存在する程度です

ソロモン諸島2.jpg立憲君主制で議会もありますが、部族支配が根強く中国マネー政治腐敗が年々激しくなり、貧富格差拡大も重なって若者によるデモや暴力行動が頻発しており、昨年11月のソガバレ首相退陣要求暴動の際には、豪州、NZ、フィジー、パプアニューギニアから平和維持部隊200人が派遣され鎮静化した混乱ぶりで、中国からすれは付け入るスキありありな国です。

実際中国はリークされた「安保協定」以前に、既に警察警務協力に関する協定をソロモンと調印しており、11月の暴動鎮圧には関与していませんが、その後に中国式の暴動鎮圧法を訓練する顧問団や武器供与を受け入れ、今年3月には研修講座も開講したようで、今年3月の民主化活動家取り締まり作戦では、催涙弾やゴム弾を使用する「中国式」の警察行動が見られたそうです

4月7日付福島香織氏のJBpress記事によれば
●3月末、ネット上に流布した「安保協定案」のポイント
solomon.jpg・ 中国はソロモン政府の要請に基づき、軍や警察など法執行機関を派遣し、治安維持、生命財産の保護、人道援助、災害救援を行う
・ 中国が求めれば、ソロモンの同意の下、ソロモン側はあらゆる必要施設を提供し、中国艦艇を寄港させ補給を行う。

・ 中国部隊は、ソロモンでの中国人および主要プロジェクトを守るために使用される
・ 中国はその他の任務にも協力し、ソロモンに守秘義務を求めることができ、両国の書面許可がない限り、その情報は第3者に公開できない

・ この枠組みを妨害する議論、争いが発生した場合、当事者同士で相談で解決する

solomon2.jpg●誰が見ても「怪しい」内容だが、この協定が成立すれば、警察教育どころか、ロモン諸島に人民解放軍が駐留することも可能になり、それが南太平洋の安全保障の枠組みを根本的に変える可能性がある
●しかし、ソロモン諸島のソガバレ首相は、3月29日に安保協定案があることを認めたうえで、国際社会がこれに批判的なことを「非常に侮辱的だ」と強い不快感を示し、4月1日には国内での中国軍基地の建設は容認しないと述べたる一方で、「政府は軍事基地の建設を受け入れる派生的な影響を意識している」と表現している

●この発言には、米国との関係が深いミクロネシア連邦のパヌエロ大統領が、この協定が結ばれれば、太平洋地域が「米中戦争」に巻き込まれかねないと重大な憂慮を示した
●周辺国の反対を意識し、4月2日に改めてソロモンのソガバレ政権は、「ソロモン諸島に中国の軍事基地を呼び込めば後々に影響を引き起こすことはわかっている。当局の管理のもと、そういうことにはならない」と、ソロモン諸島の中国軍事拠点を否定した

solomon4.jpg●しかし、ソロモン側が中国の軍事拠点化をどれほど否定したところで、オバマ政権時代の8年の間に南シナ海の軍事拠点化を実現した中国のやり方を世界中が目撃しており、説得力に欠ける
●更に協定案は、ソロモン側が中国が必要とする補給兵站を一切提供することになっているので、豪州が長年ソロモン諸島に安全保障目的で投資・整備したインフラを、中国軍が使用することになる可能性もある

●中国はチャイナマネーの威力で、2019年にソロモンに台湾との断交をさせている。2021年11月の首相退陣要求暴動の背景には、こうした中国との外交戦がソロモン諸島内政に反映した権力闘争があったとされている
●中国は「一帯一路」構想と海底ケーブル敷設事業を建前に浸透工作を続けていたが、近年になって、中国企業がこの事業に関わることの安全保障上のリスクに各国が気づき始め、中国企業を排除する動きも出てはきている

ソロモン諸島.jpg●また、ネット上に草案がリークされたということはソロモン諸島の政府や官僚内部にも、中国依存は良くないと考える勢力があるとも考えられる
●豪州は、パプアニューギニア、フィジーその他の太平洋島嶼国にも豪州の懸念を伝え、ソロモン諸島を説得するように呼び掛けているという
/////////////////////////////////////////////////////

上記記事の最後の部分は、周辺国の警戒感の高まりや中国に対応する動きを期待する内容となっていますが、どちらに転ぶかは予断を許さないでしょう。本当に中国は油断も隙もありません

china Russia.jpgウクライナ事案で中国へ視線が厳しくなれば良いですが、中国市場や中国マネーの魅力は捨てがたく、裏でうごめく人たちの「欲」は簡単に収まりません

これを機会に、中国やロシアなどに肩入れする日本国内の人物の特定・見極めを致しましょう

米国の南洋諸島への視線
「日本戦前の南洋諸島進出を学び中国を警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-11-1
「アジア太平洋地域で基地増設を検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-28
「対中国で米軍配置再検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-16-1
「アジア認識を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-07

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米国防省の一大クラウド事業が更に8か月遅れ [サイバーと宇宙]

Amazon対Microsoftドロ沼訴訟でご破算のJEDI仕切直しJWCC
4月契約予定が4企業混合体制?で年末にずれ込み

Sherman CIO.jpg3月29日、米国防省CIO(Chief Information Officer)のJohn Sherman氏が説明会を行い、国防省&米軍データの8割を管理する一大クラウドサービス事業で、2021年7月に事業の仕切り直しで名称を「JEDI」から「JWCC」に変更したプロジェクトについて、今年4月に契約予定だったが、年末までしっかり検討してまとめることになったと遅延を記者団に説明しました

この国防省の大規模クライド事業は、国防省と米軍が扱う普通・秘密・機密情報全体の8割を扱うこれまでにない大規模な改革事業で、2017年からマイクロソフト、アマゾン、オラクルを対象に企業選定に入り、2019年10月にMicrosoftが勝者となりました

JWCC.jpgしかし、下馬評でアマゾン(Amazon Web Services)有利と言われていたのにMicrosoft が選ばれたのは、Jeff Bezos前アマゾンCEOと時のトランプ大統領が公開の場で口論するなど関係が悪化していた背景を受け、「政権が恣意的な介入をした」とアマゾン側が法廷闘争に持ち込んで長期ドロ沼が避けられない状況となり、「JEDI」は身動きできなくなりました

そこで国防省は、2021年7月に両社合意の上で「JEDI:Joint Enterprise Defense Infrastructure」を白紙に戻し、新事業「JWCC:Joint Warfighter Cloud Capability」として再立ちあげし、2社とも参画する方向で仕切り直すことにしました。ただ、2社体制+αとの寝技決着であり、「2025年以降の契約については、完全オープンな形で再度企業選定する」との前提を置いての仕切り直しでした

Sherman CIO3.jpgその後、2021年10月に提案要求を2社に提示して対応可能と返答した両社を採用し、同時に産業界にも問いかけ、条件を満たす企業があれば2022年4月に追加で参加企業を最終発表することになっていました

国防省は、マイクロソフトとアマゾン以外に、オラクルとグーグルに参加を呼び掛けており、Sherman米国防省CIOは、「ベンダー4社と協議しており、少し予定より遅れているが、秋には態勢を固め、12月には正式発表したい」、「4社より少ない体制でのスタートは想定していない」と説明会で語っており、関係国防高官も(4社による協議は、)実質的で前向きなものだと述べているようです

JWCC2.jpgまたSherman米国防省CIOは、事業経費についてJEDI時と同様に「$9 billion(約1.1兆円)がシーリングだ」と説明会で強調しており、JEDIより一段と成熟した形で、かつ経費面でも従来枠内で納めることで順調に進んでいると説明しました
/////////////////////////////////////////////////

マイクロソフトとアマゾンとオラクルとグーグルが共同参画し、米国防省の新時代にふさわしい一大クラウド事業に取り組む・・・・とは誠に素晴らしいお話ですが、心配ばかりが先に建つのは私だけでしょうか?

Sherman CIO2.jpg余計な心配なら良いのですが、例えば、4月にまとめようとしていたら、半導体など材料に等々の値上がりで、またウクライナ紛争優先の国防省ニーズもあり、Sherman米国防省CIOの「$9 billion(約1.1兆円)がシーリング」との前提が4社から猛反発を受けているとか、色々と悪い可能性ばかりが頭に浮かびます

それにしても、米空軍のABMSの話題が全く聞かれなくなりました

JEDIからJWCCへのゴタゴタ
「将来戦の鍵クラウド事業出直し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-09

将来戦に向けた指揮統制改革:JADC2、AIDA、ABMS関連
「国防副長官がAIDA開始発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-23
「具現化第1弾でKC-46に中継ポッド」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-22
「3回目はアジア太平洋設定で」→https://holylandtokyo.com/2020/10/05/425/
「2回目のJADC2又はABMS試験演習」→https://holylandtokyo.com/2020/09/09/476/
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「今後の統合連接C2演習は」→https://holylandtokyo.com/2020/05/14/671/
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
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沿岸警備隊司令官候補に初の女性推挙 [Joint・統合参謀本部]

米国の6軍トップに初の女性誕生へ
1985年沿岸警備隊アカデミー卒の現副司令官
娘さんも沿岸警備隊の若手士官とか

Fagan.jpg4月5日、米国政府は次の沿岸警備隊司令官に、現在副司令官を務めるLinda Fagan沿岸警備隊大将を推挙すると発表しました。5月に退官するKarl Schultz現司令官の後任者として上院で承認されれば、女性初の米6軍(陸海空宇宙軍、海兵隊、沿岸警備隊)トップとなります

ただ、沿岸警備隊司令官は5軍のトップの一人ですが、「Joint Chiefs of Staff:統合参謀本部」構成員ながら完全な「投票権」を保有していないメンバーです。また6軍の中では唯一、国防省ではなく、国土安全保障省(Department of Homeland Security)管轄の組織トップとの位置づけになります

Fagan4.jpg近年の米本土安全保障の重要性と任務増大から、沿岸警備隊司令官を投票権のある正式な「Joint Chiefs of Staff」にするべく法改正案が昨年超党派の議員団から提出され、残念ながら成立しませんでしたが、法改正は時間の問題だろうとの雰囲気にあるようです

以下では、推挙発表が国土安全保障省からあったLinda Fagan沿岸警備隊大将について、ご紹介します

4月5日付Military.com記事から候補者をご紹介
Fagan3.JPG●1985年沿岸警備隊士官学校卒(推定60歳)(現司令官は83年卒)で、2021年7月に女性として初めて沿岸警備隊大将に昇進し、同時に副司令官に就任。女性として副司令官に就任したのは3例目(沿岸警備隊の任務拡充等により、5年前に副司令官ポストが大将に格上げ)

●沿岸警備隊では「Marine Safety Officer」としてキャリアをスタートさせ、海上事故調査、商用洋上交通の監視監督、航海支援設備管理、海洋運航者へのライセンス付与、海洋安全施策推進などの業務で若手から中堅時代の経験を積む
●また、40年近いキャリアの中で海洋監察官職を15年勤め、大型砕氷艦Polar Starでの勤務も経験している。末尾の経歴表によれば、東京勤務もある模様

Fagan2.jpg●副司令官就任時に「CBS This Morning」に出演して沿岸警備隊の任務説明した際は、「homeland security」, 「maintaining a global presence」, 「supporting and training the coast guards of other countries」, 「enforcing drug laws and fishing regulations」,「protecting the supply chain」を上げている
●そして特に強調して、「沿岸警備隊は世界中で活動している。人々は誤解している。沿岸警備隊は沿岸でのみ活動していると考えがちだ。米海軍の仲間がプレゼンスを示し、法を執行するために武器使用を議論するのと同じように、我々は米本土防衛のために存在している」と表現している

Fagan5.jpg●Fagan大将は同インタビューで沿岸警備隊の変革にも触れ、「diversityとinclusion」や「女性の活躍」について語り、「我々が使える米国社会を表現するような人的戦力構成を目指し、女性の登用などdiversityとinclusionに焦点を当てて変革に取り組んでいる」と述べ、マイノリティー採用を増やしていると説明している
●ちなみにFagan大将の娘の一人であるAileen Faganは、沿岸警備隊の士官(少尉)としてキャリアをスタートさせている

●現司令官のKarl Schultz大将は次期司令官候補のFagan大将を表し、「沿岸警備隊の作戦運用、政策策定、他軍種との統合運用や他政府機関との連携経験が豊富で、歴史的転換点にある沿岸警備隊をリードするにふさわしい人物だ」と語っている
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Fagan6.jpg米国の沿岸警備隊について取り上げたことがほとんどありませんが、「グレーゾーン」事案への対応がより重要になる最近の安全保障環境の中で、「平時の第一線」であることは間違いありません。

また、ほとんど顧みられなかった「砕氷船」が北極海の氷減少でにわかに脚光を浴びる中、実質的な稼働席数が「わずか1隻」との厳しい現実にも向き合っていただくことになるのでしょう。ご検討を祈念申し上げます

Linda Fagan沿岸警備隊大将のご経歴
https://www.uscg.mil/Biographies/Display/Article/1391225/admiral-linda-l-fagan/

女性徴兵制度がある国
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等目指し:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉業務選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

沿岸警備隊関連(砕氷艦)の記事
「唯一の大型稼働砕氷艦が火災で運行不能」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-26
「大統領が米砕氷艦計画の再評価指示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-15
「トランプ:空母削って砕氷艦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02

軍での女性を考える記事
「初の女性空母艦長が出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-05
「技術開発担当国防次官に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-23
「初の女性月面着陸目指す」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-20
「黒人女性が初めて米海軍戦闘操縦コース卒業」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
「初の米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「上院議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19
「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11

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