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イスラエルがレーザー防御兵器の試験成功発表 [安全保障全般]

昨年5月にロケット4000発撃ち込まれ対応迫られる
首相は2月「年内配備」、国防相「as soon as possible」と
100kw程度で無人機や短距離ロケット対処から
迎撃ミサイル「Iron Dome」では費用がかさみ過ぎ

Gantz2.jpg4月14日イスラエルのBenny Gantz国防相が、イスラエル製のレーザー防御兵器(名称は「laser wall」か「Iron Beam」)が最近のテストで、迫撃弾やロケット弾や対戦車ミサイルや無人機の迎撃に成功したと発表し、「as soon as possible」で国境周辺に配備したいと語りました

イスラエルは以前から、北部国境でヒズボラから、ガザ地区からはハマスから、イランの支援を受けているとイスラエルが主張する射程数㎞から数十㎞のロケット攻撃を受け、周辺イスラエル国民に被害が出るなど喫緊の安全保障課題となっていましたが、2021年5月にはハマスとの対立が激化し、僅か11日間で4000発もの攻撃を受けイスラエル国民12名が死亡する事態となりました。

laser wall.jpgイスラエルは、このようなロケット攻撃対処に「Iron Dome」との迎撃ミサイルシステムを米国の援助も得て開発導入し、9割の迎撃成功率を誇ると誇示していますが、ハマス等のロケットが1発コスト数万円程度なのに、「Iron Dome」ミサイル1発は数千から数億円とも言われ、イスラエル首相が「経済の方程式が成立しない」と表現する状態です

もちろん、物理的に短期間に数千ものロケット弾に迎撃ミサイルシステムで対処することは難しく、そこでイスラエルが注力してきたのがレーザー迎撃兵器の開発です。

Bennett.jpgイスラエル首相や国防省はその性能細部について言及していませんが、2月にBennett首相は「レーザービーム1回発射は数ドル程度のコスト」「イランが後ろ盾の同時攻撃も無効化できる」「2022年度中に配備する」と語り、首相と国防省はともに、地上だけでなく海上と空中にも配備すると語っています

以下では、発表当日4月14日にイスラエルで放映された関連TVニュース映像と、開発状況に詳しいTV出演専門家の解説から、テスト成功が報じられたレーザー防御兵器(名称は「laser wall」か「Iron Beam」)について断片情報をご紹介します

4月14日ニュース映像等によれば
laser wall2.jpg●試験したレーザー防御兵器は出力100kw程度で、米国が現時点で開発に手を伸ばしている300kwレベルよりは低い。レーザー出力は、イスラエルの限定的な試験環境にも制約を受けている
●開発に関する米国との協力はあるが、細部は説明できない

●イスラエルは、弾道ミサイルに対して「Arrow-1,2,3」やパトリオットミサイル、短距離のロケットに対しては「Iron Dome」など、センサーと迎撃兵器を重層的に配備してきているが、今回のレーザー兵器はこれらを補完するものであり、とってかわるものではない
laser wall5.jpg●例えばイスラエル北部国境では、雲や雨で年間60-80日程度はレーザー兵器使用に適さない気象条件となることから、全てをレーザー兵器で賄うことはできない

●レーザーは電力が確保できれば発射でき、迎撃ミサイルのように「弾切れ」や「ミサイル製造や輸送」の心配がない。また連続発射が可能で、多数同時目標対処にも向いている
laser wall4.jpgただし映画「スターウォーズ」のように、一瞬のレーザー照射で目標が破壊されるわけではなく、敵ミサイルや無人機を無効化するには一定時間レーザーを照射し続ける必要がある

国防省が公開したテスト映像にもあるように、装置自体は比較的小型で、電源部分を合わせてもトラックで輸送可能である
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「laser wall」とか「Iron Beam」と呼ばれるこの装備は、その出力等から世界最先端とまでは言い切れない気がしますが、2021年5月にハマスから4000発もロケットを撃ち込まれて国民から厳しい視線を浴びているイスラエル政府とイスラエル軍ですから、あらゆるアイディアを投入して改良を進めると思います。

laser wall3.jpg弾道及び巡航ミサイル対処、砲弾やロケット弾対処、そして無人機対処まで、「いつまでたっても完成まであと5年」と揶揄されながらも、レーザーに対する期待は非常に大きいので、ハイテク産業で世界有数のイスラエルに大いに期待したいと思います

ちなみに・・・
遅れがちな米国防省「Directed Energy Roadmap」の目標設定

●2022年までに、150-300KW級の兵器化
 100Kwでドローン、小型ボート、ロケット、迫撃砲に対処可能
 300kwで巡航ミサイルに対処可能
●2024年までに、500KW級の兵器化
●2030年までに、1GW級の兵器化 

紹介映像1(6分30秒:2022年4月14日)


紹介映像2(3分:2022年4月14日)


紹介映像3(2分19秒:2022年2月)
  

開発の長い歴史と脅威背景の紹介映像(11分30秒:2022年1月)


エネルギー兵器関連
「陸軍が50KWレーザー装備の装甲車3台導入へ 」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-15
「AC-130用兵器の企業地上試験終了で空軍へ提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-12
「米議会がレーザー兵器開発に懸念で調査要求へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-08
「戦闘機防御用から撤退へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-01
「米空軍が無人機撃退用の電磁波兵器を試験投入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24
「F-15用自己防御レーザー試験」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-04
「エネルギー兵器での国際協力」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-27
「エネルギー兵器とMD」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「レーザーは米海軍が先行」[→]https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24
「無人機に弾道ミサイル追尾レーザー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-17-1
「私は楽観主義だ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23
「レーザーにはまだ長い道が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-18
「AC-130に20年までにレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-06

国防省高官がレーザーに慎重姿勢
「国防次官がレーザー兵器に冷水」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-12
「米空軍大将も慎重」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24

夢見ていた頃
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「米企業30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1

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