米陸軍の前線電子戦部隊構想:2027年までに [Joint・統合参謀本部]
前線レベルの部隊整備だけでは対中露には不十分だが
2027年までを目途に各旅団に専門小隊を
1月1日付C4ISRnetが、対テロに専念してきた過去20年間で「忘れられ、置き去りにされてきた」米陸軍の電子戦部隊整備について、担当大佐の語る将来構想を紹介しています
過去20年間の対テロ作戦では、イスラム武装集団やテロ組織が相手だったことから「電子戦」を意識する必要がなく、米陸軍だけでなく、米軍全体から「電子戦」のノウハウや経験が失われ、前線兵士から中堅幹部は経験や知識が実質「ゼロ」で、将官クラスでも冷戦時の記憶が微かに残る程度の惨状です
この危機感が本格的に米軍内で共有されたのは、2014年のロシアによるウクライナへの侵攻時で、ロシア側による最新の情報戦(サイバーやメディア戦を絡めた手法)と電子戦の組み合わせた「ハイブリッド戦」を前に、米軍は茫然と立ちすくす他なく、むしろ米軍が支援に赴いたウクライナ軍から電子戦の基礎を学ぶ羽目になった米軍部隊の教訓からでした
その後、国防省を上げて「電子戦」能力の再構築に取り組み始め、例えば米空軍は「情報戦」と「電子戦」を担当部隊を融合した第16空軍を立ち上げる等の動きを見せていますが、中露を相手にすることへの意識改革も道半ばで、かつ米軍を取り巻く予算不足も重くのしかかり、なかなか体制整備が進まないのが現実です
以下で紹介する米陸軍の取り組みは、あくまでも前線部隊レベルの話で、対中露となれば必要な軍団(Corps)レベルの整備構想が欠如した状態ですが、小さなことからコツコツと・・・の姿勢で、とりあえずご紹介しておきます
1日付C4ISRnet記事によれば
●米陸軍司令部で電子戦能力担当マメージャーを務めるDaniel Holland大佐が、C4ISRNETに書面で電子戦への取り組みについて説明してくれた
●米陸軍の戦闘単位の中核として機能してきた旅団戦闘チーム(BCT:Brigade Combat Team)に、2027年までを目途に、電子戦専従の「小隊:electronic warfare platoon」を整備し、併せて各種電子戦情報を他部隊と共有して総合戦闘力発揮につなげるネットワーク構成部隊「signals intelligence network support team」も新設する
●これら電子戦小隊やネットワークチームは、今後、Strykers戦闘装甲車に搭載した形で導入されるTLS-BCT(Terrestrial Layer System Brigade Combat Team)との電子戦・電子情報収集・サイバー戦プラットフォームを活用して行動する
●TLS-BCT開発は、開発リスクを低減するため2つの企業(Lockheed MartinとDigital Receiver Technology)が並行してプロトタイプ作成に取り組んでおり、その中から一つを選択する予定である
●現時点までに米陸軍は、太平洋と欧州戦線への配備を念頭に、2つの電子戦用プロトタイプを開発している。一つは電子戦支援と電子攻撃用のTEWS(Tactical Electronic Warfare System)、もう一つはFlyer72搭載用のより小型のTEWL(Tactical Electronic Warfare Light)である
●各旅団に新編成される電子戦小隊やネットワークチームは、旅団内に分散して配置されていた要員を一つのまとめて編成される方向である
●ハードの整備と並行し、部隊に対する電子戦訓練として米陸軍は、CEMA(cyber and electromagnetic activities)セッションとの電子戦訓練を、大部分の部隊に2022年までに受けさせる計画である
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2つの企業が並行して開発している電子戦装備と、TEWSとTEWLとの装備の関係が良くわかりませんが、とりあえず言葉だけご紹介しておきます
また記事では、第1機甲師団の第3戦闘旅団(BCT)がモデル部隊として、上記の新装備や新編成導入に先行して取り組むと紹介しています
対中国で、米陸軍がどのような役割を果たそうとしているのかよくわかりませんが、米海兵隊が機動力を生かして太平洋の島々を機敏に移動しつつ、敵艦艇撃破に注力する方向に取り組むイメージを頭に浮かべつつ、お手並みを拝見したいと思います。そんな悠長な状況にはない日本ではありますが・・・
ロシアの電子戦に驚愕の米軍
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02
EW関連の記事
「国防省EW責任者が辞任」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-19
「ACC司令官が語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-19
「米空軍がサイバーとISRとEwを統合」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3
「電子戦検討の状況は?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-13
「エスコート方を早期導入へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27
「米空軍電子戦を荒野から」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-17-1
「ステルス機VS電子戦攻撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12
第16空軍の関連記事
「電子戦(spectrum戦)専門の航空団創設へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-03
「新設第16空軍の重要任務は2020年大統領選挙対策」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「遅延中、ISRとサイバー部隊の合併」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-24
「米空軍がサイバー軍とISR軍統合へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
2027年までを目途に各旅団に専門小隊を
1月1日付C4ISRnetが、対テロに専念してきた過去20年間で「忘れられ、置き去りにされてきた」米陸軍の電子戦部隊整備について、担当大佐の語る将来構想を紹介しています
過去20年間の対テロ作戦では、イスラム武装集団やテロ組織が相手だったことから「電子戦」を意識する必要がなく、米陸軍だけでなく、米軍全体から「電子戦」のノウハウや経験が失われ、前線兵士から中堅幹部は経験や知識が実質「ゼロ」で、将官クラスでも冷戦時の記憶が微かに残る程度の惨状です
この危機感が本格的に米軍内で共有されたのは、2014年のロシアによるウクライナへの侵攻時で、ロシア側による最新の情報戦(サイバーやメディア戦を絡めた手法)と電子戦の組み合わせた「ハイブリッド戦」を前に、米軍は茫然と立ちすくす他なく、むしろ米軍が支援に赴いたウクライナ軍から電子戦の基礎を学ぶ羽目になった米軍部隊の教訓からでした
その後、国防省を上げて「電子戦」能力の再構築に取り組み始め、例えば米空軍は「情報戦」と「電子戦」を担当部隊を融合した第16空軍を立ち上げる等の動きを見せていますが、中露を相手にすることへの意識改革も道半ばで、かつ米軍を取り巻く予算不足も重くのしかかり、なかなか体制整備が進まないのが現実です
以下で紹介する米陸軍の取り組みは、あくまでも前線部隊レベルの話で、対中露となれば必要な軍団(Corps)レベルの整備構想が欠如した状態ですが、小さなことからコツコツと・・・の姿勢で、とりあえずご紹介しておきます
1日付C4ISRnet記事によれば
●米陸軍司令部で電子戦能力担当マメージャーを務めるDaniel Holland大佐が、C4ISRNETに書面で電子戦への取り組みについて説明してくれた
●米陸軍の戦闘単位の中核として機能してきた旅団戦闘チーム(BCT:Brigade Combat Team)に、2027年までを目途に、電子戦専従の「小隊:electronic warfare platoon」を整備し、併せて各種電子戦情報を他部隊と共有して総合戦闘力発揮につなげるネットワーク構成部隊「signals intelligence network support team」も新設する
●これら電子戦小隊やネットワークチームは、今後、Strykers戦闘装甲車に搭載した形で導入されるTLS-BCT(Terrestrial Layer System Brigade Combat Team)との電子戦・電子情報収集・サイバー戦プラットフォームを活用して行動する
●TLS-BCT開発は、開発リスクを低減するため2つの企業(Lockheed MartinとDigital Receiver Technology)が並行してプロトタイプ作成に取り組んでおり、その中から一つを選択する予定である
●現時点までに米陸軍は、太平洋と欧州戦線への配備を念頭に、2つの電子戦用プロトタイプを開発している。一つは電子戦支援と電子攻撃用のTEWS(Tactical Electronic Warfare System)、もう一つはFlyer72搭載用のより小型のTEWL(Tactical Electronic Warfare Light)である
●各旅団に新編成される電子戦小隊やネットワークチームは、旅団内に分散して配置されていた要員を一つのまとめて編成される方向である
●ハードの整備と並行し、部隊に対する電子戦訓練として米陸軍は、CEMA(cyber and electromagnetic activities)セッションとの電子戦訓練を、大部分の部隊に2022年までに受けさせる計画である
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2つの企業が並行して開発している電子戦装備と、TEWSとTEWLとの装備の関係が良くわかりませんが、とりあえず言葉だけご紹介しておきます
また記事では、第1機甲師団の第3戦闘旅団(BCT)がモデル部隊として、上記の新装備や新編成導入に先行して取り組むと紹介しています
対中国で、米陸軍がどのような役割を果たそうとしているのかよくわかりませんが、米海兵隊が機動力を生かして太平洋の島々を機敏に移動しつつ、敵艦艇撃破に注力する方向に取り組むイメージを頭に浮かべつつ、お手並みを拝見したいと思います。そんな悠長な状況にはない日本ではありますが・・・
ロシアの電子戦に驚愕の米軍
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02
EW関連の記事
「国防省EW責任者が辞任」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-19
「ACC司令官が語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-19
「米空軍がサイバーとISRとEwを統合」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3
「電子戦検討の状況は?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-13
「エスコート方を早期導入へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27
「米空軍電子戦を荒野から」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-17-1
「ステルス機VS電子戦攻撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12
第16空軍の関連記事
「電子戦(spectrum戦)専門の航空団創設へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-03
「新設第16空軍の重要任務は2020年大統領選挙対策」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「遅延中、ISRとサイバー部隊の合併」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-24
「米空軍がサイバー軍とISR軍統合へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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