中国安全保障レポート2022発刊 [安全保障全般]
これまでの共同執筆体制から単独執筆へ
冒頭8ページに図表多用の「要約」
11月26日、防衛省の防衛研究所が、2011年3月に創刊号が発刊され今年で12冊目となる毎年恒例の「中国安全保障レポート2022」を発表し、中国軍の動向に焦点をあてています。
今年のレポートは、1991年の湾岸戦争以降に中国が本格的に研究を始め、2000年代半ばから提唱した「統合作戦構想」に焦点を当てていますが、中国軍が長年研究してきた情報化を基盤とする統合作戦構想について、習近平国家主席が主導した軍改革によって「構想を実現し得る体制を整備した」と述べています。
「統合作戦構想」とは、陸海空の「伝統的安全保障領域」に、宇宙やサイバー電磁波、認知領域など「新型安全保障領域」を連動させるもので、レポートでは、習近平指導部が建国以来最大の軍改革を断行し、習氏の統制力・指揮権限が強化され、統合化を重視した軍上層部の人事が行われたことなどを挙げ、先ほどの「構想を実現し得る体制を整備した」との表現を選択したと説明しています
ただ「中国の軍改革は2020年に完成することになっていた」当初計画とは異なり、軍を巡る権限争い、統合意識の希薄さ、訓練の形式主義、人材確保の難しさ、政治委員の役割と能力など、様々な課題が残されていると指摘し、今後2027年、2035年、そして2050年を一つの節目として課題克服に取り組むだろうと分析しています
もう一つ「レポート2022」の特徴は、これまで防衛研究所所員の共同執筆だったのが、今回は杉浦康之主席研究官単独の執筆となったことです。また冒頭8ページを使って図表が6-7割を占める「要約」部分を設け、ビジュアルに訴える手法を導入していることも新たな取り組みです。
以下では、「要約」部分の「結論」をほとんどそのまま、ちょっとだけ補足してご紹介します
中国安全保障レポート2022の「要約」の「結論」部分より
●人民解放軍は1990年代以降、米国の軍事理論や科学技術の発展に柔軟に対応するため、広範性を有する概念である「一体化統合作戦」構想を提唱した。
●そして伝統性(三戦、軍民融合、東軍関係の維持・強化)と新規性(長距離精密打撃能力の重視、新型安全保障領域へのシフト、智能化作戦の提唱など)を加味した独自性を追求することで「一体化統合作戦」構想の進化を目指した
●習近平の強いイニシアティブの下、軍改革により、人民解放軍は「一体化統合作戦」構想を実現し得る統合作戦体制を整備した。それに合わせて、統合作戦訓練・人材育成体制を発展させるとともに、「一体化統合作戦」構想と東軍関係の維持強化の両立を目指した
●軍改革において、人民解放軍はその統合作戦能力の進化に関し、多くの成果を獲得した。
●他方、軍改革を経ても、
1.中央軍事委員会・戦区・軍種における権限と役割の調整、
2.統合作戦意識の希薄さと軍種偏重主義、
3.統合作戦訓練の形式主義、戦区主体の統合作戦訓練と軍兵種訓練の連携、
4.高度科学技術人材の獲得・育成・維持の難しさ、
5.政治委員の指揮権限と指揮能力の在り方など、
なお多くの課題が残されており、その克服には時間がかかると目される
●人民解放軍の近代化のタイムスケジュールでは、一連の課題に対し、
2027年を短期的な目標:「建軍100年の奮闘目標を確保する年」に
2035年までに課題を基本的に克服し、国防と軍隊建設の近代化を実現
2050年までに、米軍に伍す、あるいは上回る能力を獲得することを目指す
●上記3つの年が節目の年として設定されている。これらの節目の年に、国防費の増額、新装備の導入、対外発言・対外行動の強化のみならず、統合作戦構想、組織機構改革とそれに伴う組織文化の形成、教育訓練と人材の質的向上、党軍関係などに注目することで、人民解放軍の統合作戦能力を多角的に見積もることが今後も重要となる
//////////////////////////////////////////////
「要約」の「結論」部分だけでは「よくわからない・・・」と感じた方、ぜひ「要約」8ページをご覧ください。そうすると益々「?」が生じて、約100ページの本文をのぞいて見たくなると思います。
それだけ、いろんな構想や言葉が出てきて、初めての方には難解だと思います。まんぐーすもその一人です
中国も西側軍隊の例の漏れず、いろんな構想を打ち出し、前言を軽々に否定できない中で修正を加えて「つじつま」を合わせながら、北京政府内での予算争いを戦っているようです
防衛研究所webサイトの「中国安全保障レポート」ページ
→http://www.nids.mod.go.jp/publication/chinareport/index.html
防研の「中国安全保障レポート」紹介記事
1回:中国全般→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-19
2回:中国海軍→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-17-1
3回:軍は党の統制下か?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-23-1
4回:中国の危機管理→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-01
5回:非伝統的軍事分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-22
6回:PLA活動範囲拡大→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-09
7回:中台関係→サボって取り上げてません
8回:米中関係→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-2
9回:一帯一路→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-11
10回:ユーラシア→サボって取り上げてません
11回:サイバー宇宙情報軍民→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-15
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
冒頭8ページに図表多用の「要約」
11月26日、防衛省の防衛研究所が、2011年3月に創刊号が発刊され今年で12冊目となる毎年恒例の「中国安全保障レポート2022」を発表し、中国軍の動向に焦点をあてています。
今年のレポートは、1991年の湾岸戦争以降に中国が本格的に研究を始め、2000年代半ばから提唱した「統合作戦構想」に焦点を当てていますが、中国軍が長年研究してきた情報化を基盤とする統合作戦構想について、習近平国家主席が主導した軍改革によって「構想を実現し得る体制を整備した」と述べています。
「統合作戦構想」とは、陸海空の「伝統的安全保障領域」に、宇宙やサイバー電磁波、認知領域など「新型安全保障領域」を連動させるもので、レポートでは、習近平指導部が建国以来最大の軍改革を断行し、習氏の統制力・指揮権限が強化され、統合化を重視した軍上層部の人事が行われたことなどを挙げ、先ほどの「構想を実現し得る体制を整備した」との表現を選択したと説明しています
ただ「中国の軍改革は2020年に完成することになっていた」当初計画とは異なり、軍を巡る権限争い、統合意識の希薄さ、訓練の形式主義、人材確保の難しさ、政治委員の役割と能力など、様々な課題が残されていると指摘し、今後2027年、2035年、そして2050年を一つの節目として課題克服に取り組むだろうと分析しています
もう一つ「レポート2022」の特徴は、これまで防衛研究所所員の共同執筆だったのが、今回は杉浦康之主席研究官単独の執筆となったことです。また冒頭8ページを使って図表が6-7割を占める「要約」部分を設け、ビジュアルに訴える手法を導入していることも新たな取り組みです。
以下では、「要約」部分の「結論」をほとんどそのまま、ちょっとだけ補足してご紹介します
中国安全保障レポート2022の「要約」の「結論」部分より
●人民解放軍は1990年代以降、米国の軍事理論や科学技術の発展に柔軟に対応するため、広範性を有する概念である「一体化統合作戦」構想を提唱した。
●そして伝統性(三戦、軍民融合、東軍関係の維持・強化)と新規性(長距離精密打撃能力の重視、新型安全保障領域へのシフト、智能化作戦の提唱など)を加味した独自性を追求することで「一体化統合作戦」構想の進化を目指した
●習近平の強いイニシアティブの下、軍改革により、人民解放軍は「一体化統合作戦」構想を実現し得る統合作戦体制を整備した。それに合わせて、統合作戦訓練・人材育成体制を発展させるとともに、「一体化統合作戦」構想と東軍関係の維持強化の両立を目指した
●軍改革において、人民解放軍はその統合作戦能力の進化に関し、多くの成果を獲得した。
●他方、軍改革を経ても、
1.中央軍事委員会・戦区・軍種における権限と役割の調整、
2.統合作戦意識の希薄さと軍種偏重主義、
3.統合作戦訓練の形式主義、戦区主体の統合作戦訓練と軍兵種訓練の連携、
4.高度科学技術人材の獲得・育成・維持の難しさ、
5.政治委員の指揮権限と指揮能力の在り方など、
なお多くの課題が残されており、その克服には時間がかかると目される
●人民解放軍の近代化のタイムスケジュールでは、一連の課題に対し、
2027年を短期的な目標:「建軍100年の奮闘目標を確保する年」に
2035年までに課題を基本的に克服し、国防と軍隊建設の近代化を実現
2050年までに、米軍に伍す、あるいは上回る能力を獲得することを目指す
●上記3つの年が節目の年として設定されている。これらの節目の年に、国防費の増額、新装備の導入、対外発言・対外行動の強化のみならず、統合作戦構想、組織機構改革とそれに伴う組織文化の形成、教育訓練と人材の質的向上、党軍関係などに注目することで、人民解放軍の統合作戦能力を多角的に見積もることが今後も重要となる
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「要約」の「結論」部分だけでは「よくわからない・・・」と感じた方、ぜひ「要約」8ページをご覧ください。そうすると益々「?」が生じて、約100ページの本文をのぞいて見たくなると思います。
それだけ、いろんな構想や言葉が出てきて、初めての方には難解だと思います。まんぐーすもその一人です
中国も西側軍隊の例の漏れず、いろんな構想を打ち出し、前言を軽々に否定できない中で修正を加えて「つじつま」を合わせながら、北京政府内での予算争いを戦っているようです
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防研の「中国安全保障レポート」紹介記事
1回:中国全般→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-19
2回:中国海軍→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-17-1
3回:軍は党の統制下か?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-23-1
4回:中国の危機管理→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-01
5回:非伝統的軍事分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-22
6回:PLA活動範囲拡大→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-09
7回:中台関係→サボって取り上げてません
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9回:一帯一路→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-11
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4大シンクタンクがMQ-9の継続活用要望 [米空軍]
米空軍は2035年でMQ-9を完全退役計画も
空軍最高の費用対効果アセットを広範囲で有効活用せよ!
11月19日、米空軍協会ミッチェル研究所が「無人偵察攻撃機MQ-9の役割をもう一度考えよう」とのイベントを開催し、4つのシンクタンクの著名研究者が、米空軍が引退を考え始めている約290機保有のMQ-9の高い費用対効果と様々な応用可能性を訴え、更なる有効活用の必要性を主張しました
オンライン討議を行ったのはお馴染みの、CSISのTodd Harrison研究員、ハドソンのBryan Clark研究員、RANDのCaitlin Lee研究員、そして主催者であるミッチェル研究所の研究部長デプチューラ退役空軍中将と関連レポートまとめ役のLawrence A. Stutzriem退役空軍少将で、かなり強力なメンバーです
米空軍は対中国シフトのため、老朽装備の早期退役を促進して維持整備費を削減し、浮いた予算で将来の戦いに備えた新装備(戦闘機、爆撃機、空中給油機、ICBM、指揮統制システム等々)への投資を考えており、中東域で大活躍したものの、ステルス性が無く脆弱な無人機MQ-9を2030年から退役を開始し、2035年には完全退役の方向で考えています
しかし4名の専門家は、「北京中心部の上空」で作戦運用可能とは言わないが、平時からグレーゾーン事態で世界中から要望が高いISR任務を効率的に行うには、運用コストが最も低いMQ-9の継続活用は不可欠だと主張し、更に有事においても、有人早期警戒機AWACSやE-2では埋められない空域でのISRや早期警戒など、様々な応用が可能だと訴えています
19日付米空軍協会web記事によれば
●CSISのTodd Harrison研究員は、「コスト面で考えれば、米空軍が早期退役を考えるアセットのリストには、MQ-9が含まれてはダメだ。MQ-9はスラムダンク並みに必要不可欠なアセットである」と端的にその重要性を訴えた
●ミッチェル研究所のStutzriem退役少将は、米空軍は予算の伸びが期待できない中で装備の近代化を迫られており、その解決策としてMQ-9を含む老朽装備の早期退役を打ち出しているが、「MQ-9がずば抜けたコストパフォーマンスで実施可能な任務が多数あることを忘れてはならない」と訴えた
●また同退役少将は、ステルス性のないMQ-9の生存性が低いことが問題視される点について、世界中の戦闘コマンド司令官から日々求められ、今も増加の一途をたどる現場ニーズの実態を無視していると、足元を見る重要性を主張し、そのニーズは中央軍だけでなく、大平洋軍や南米軍やアフリカ軍からも寄せられ、増加していると語った
●更にMQ-9の新たな任務への応用可能性についても同退役少将は触れ、限定予算の中では老朽装備も使用中装備も、将来装備も組み合わせて活用するアイディアも革新の一つだと訴え、以下7つの分野でのMQ-9の活用可能性を示した
• Wide area surveillance in regions of strategic competition.
• Air and missile defense.
• Maritime and littoral operations.
• Communications relays.
• Arctic domain awareness.
• Cruise missile defense of the homeland.
• Defense support of civil authorities.
●ハドソン研のBryan Clark研究員は新たなMQ-9の活用について、例えば中国大陸沿岸と、E-3AWACSやE-2D早期警戒機がカバーできる監視域との広大なギャップを埋める「passive surveillance platform」としての可能性を提唱し、飛来する敵ミサイルや爆撃機の早期警戒任務への応用を提案した
●RANDのCaitlin Lee研究員は、MQ-9部隊の兵士は様々な現場要求に対応し、不便な島しょ地域への展開法を検討したり、迅速に展開可能な運用支援装備を考えたり、日々のイノベーションに取り組んでおり、空軍の中で最も革新的で活性化された兵士たちであると訴え、彼らの能力を信じて支援すべきだと主張した
////////////////////////////////////////////////////
ミッチェル研究所主催のイベント映像(62分)
研究レポートや説明スライド
→https://mitchellaerospacepower.org/event/reimagining-the-mq-9-reaper/
ミッチェル研究所と4名の専門家がまとめたレポートの結論を確認していませんが、約290機保有のMQ-9にどれだけ投資し、何機ぐらいを何時まで運用しようと考えているのか気になるところです。また、横ばいの予算総額を前提に、MQ-9継続保有のためにどの予算を削減せよと具体的に言及しているのであれば素晴らしいのですが・・・そこまではないでしょう
また、日本の環境を考えれば、旧式のRQ-4なんかじゃなくて、MQ-9で良かったんじゃないかとつくづく思いますが、後の祭りと言えましょう
MQ-9関連の記事
「2回目の対中国応用演習」→https://holylandtokyo.com/2021/05/01/211/
「豪州へ12機輸出承認」→https://holylandtokyo.com/2021/04/29/119/
「本格紛争用に約1/4を改修&延命へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/28/118/
「JDAM完成弾運搬役も」→https://holylandtokyo.com/2021/03/09/156/
「無人機MQ-9の対中国海上作戦への応用演習」→https://holylandtokyo.com/2020/10/02/424/
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→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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空軍最高の費用対効果アセットを広範囲で有効活用せよ!
11月19日、米空軍協会ミッチェル研究所が「無人偵察攻撃機MQ-9の役割をもう一度考えよう」とのイベントを開催し、4つのシンクタンクの著名研究者が、米空軍が引退を考え始めている約290機保有のMQ-9の高い費用対効果と様々な応用可能性を訴え、更なる有効活用の必要性を主張しました
オンライン討議を行ったのはお馴染みの、CSISのTodd Harrison研究員、ハドソンのBryan Clark研究員、RANDのCaitlin Lee研究員、そして主催者であるミッチェル研究所の研究部長デプチューラ退役空軍中将と関連レポートまとめ役のLawrence A. Stutzriem退役空軍少将で、かなり強力なメンバーです
米空軍は対中国シフトのため、老朽装備の早期退役を促進して維持整備費を削減し、浮いた予算で将来の戦いに備えた新装備(戦闘機、爆撃機、空中給油機、ICBM、指揮統制システム等々)への投資を考えており、中東域で大活躍したものの、ステルス性が無く脆弱な無人機MQ-9を2030年から退役を開始し、2035年には完全退役の方向で考えています
しかし4名の専門家は、「北京中心部の上空」で作戦運用可能とは言わないが、平時からグレーゾーン事態で世界中から要望が高いISR任務を効率的に行うには、運用コストが最も低いMQ-9の継続活用は不可欠だと主張し、更に有事においても、有人早期警戒機AWACSやE-2では埋められない空域でのISRや早期警戒など、様々な応用が可能だと訴えています
19日付米空軍協会web記事によれば
●CSISのTodd Harrison研究員は、「コスト面で考えれば、米空軍が早期退役を考えるアセットのリストには、MQ-9が含まれてはダメだ。MQ-9はスラムダンク並みに必要不可欠なアセットである」と端的にその重要性を訴えた
●ミッチェル研究所のStutzriem退役少将は、米空軍は予算の伸びが期待できない中で装備の近代化を迫られており、その解決策としてMQ-9を含む老朽装備の早期退役を打ち出しているが、「MQ-9がずば抜けたコストパフォーマンスで実施可能な任務が多数あることを忘れてはならない」と訴えた
●また同退役少将は、ステルス性のないMQ-9の生存性が低いことが問題視される点について、世界中の戦闘コマンド司令官から日々求められ、今も増加の一途をたどる現場ニーズの実態を無視していると、足元を見る重要性を主張し、そのニーズは中央軍だけでなく、大平洋軍や南米軍やアフリカ軍からも寄せられ、増加していると語った
●更にMQ-9の新たな任務への応用可能性についても同退役少将は触れ、限定予算の中では老朽装備も使用中装備も、将来装備も組み合わせて活用するアイディアも革新の一つだと訴え、以下7つの分野でのMQ-9の活用可能性を示した
• Wide area surveillance in regions of strategic competition.
• Air and missile defense.
• Maritime and littoral operations.
• Communications relays.
• Arctic domain awareness.
• Cruise missile defense of the homeland.
• Defense support of civil authorities.
●ハドソン研のBryan Clark研究員は新たなMQ-9の活用について、例えば中国大陸沿岸と、E-3AWACSやE-2D早期警戒機がカバーできる監視域との広大なギャップを埋める「passive surveillance platform」としての可能性を提唱し、飛来する敵ミサイルや爆撃機の早期警戒任務への応用を提案した
●RANDのCaitlin Lee研究員は、MQ-9部隊の兵士は様々な現場要求に対応し、不便な島しょ地域への展開法を検討したり、迅速に展開可能な運用支援装備を考えたり、日々のイノベーションに取り組んでおり、空軍の中で最も革新的で活性化された兵士たちであると訴え、彼らの能力を信じて支援すべきだと主張した
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ミッチェル研究所主催のイベント映像(62分)
研究レポートや説明スライド
→https://mitchellaerospacepower.org/event/reimagining-the-mq-9-reaper/
ミッチェル研究所と4名の専門家がまとめたレポートの結論を確認していませんが、約290機保有のMQ-9にどれだけ投資し、何機ぐらいを何時まで運用しようと考えているのか気になるところです。また、横ばいの予算総額を前提に、MQ-9継続保有のためにどの予算を削減せよと具体的に言及しているのであれば素晴らしいのですが・・・そこまではないでしょう
また、日本の環境を考えれば、旧式のRQ-4なんかじゃなくて、MQ-9で良かったんじゃないかとつくづく思いますが、後の祭りと言えましょう
MQ-9関連の記事
「2回目の対中国応用演習」→https://holylandtokyo.com/2021/05/01/211/
「豪州へ12機輸出承認」→https://holylandtokyo.com/2021/04/29/119/
「本格紛争用に約1/4を改修&延命へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/28/118/
「JDAM完成弾運搬役も」→https://holylandtokyo.com/2021/03/09/156/
「無人機MQ-9の対中国海上作戦への応用演習」→https://holylandtokyo.com/2020/10/02/424/
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米海軍潜水艦への極超音速兵器は2028年 [Joint・統合参謀本部]
当初はオハイオ級原潜に2025年、Virginia級に2028年計画も
予算不足でオハイオ級GN原潜への搭載を断念
11月18日、米海軍戦略システム計画部長Johnny Wolfe海軍中将が講演で、2025年予定だったオハイオ級誘導ミサイル原潜(戦略原潜を巡航ミサイル原潜に改修)への極超音速兵器搭載について、試験機材導入予算不足のため断念し、ヴァージニア級攻撃原潜への2028年搭載まで潜水艦への搭載は遅れると明らかにしました。
Wolfe海軍中将は講演で、米陸軍と海軍が強力なタッグを組み、初速ゼロから発射する極超音速兵器開発で最近3回連続試験成功の成果を上げ、軍需産業基盤の育成でも施策が進んでいる等々と強調しましたが、米軍全体にとっても優先度の高い潜水艦への極著音速兵器搭載遅延は、苦しい説明とならざるを得ません
米海軍の当初計画では、米陸軍とともに極超音速ミサイル開発に全力を注ぎつつ、並行して潜水艦からの極超音速ミサイル「cold launch」発射技術(潜水艦から空気圧射出後にロケットに点火)の開発に海軍として取り組み、オハイオ級GN原潜に2025年、その後Virginia級に2028年搭載予定でした
しかし、オハイオ級誘導ミサイル原潜の退役時期が迫っていることもあり、米海軍が総合的に判断し、搭載テストに必要な「underwater launch test facility」予算確保を断念したとのことです。
これにより米潜水艦への極超音速兵器の搭載はVirginia級攻撃原潜への搭載まで待つこととなり、具体的には、同級潜水艦Block V用の「Virginia Payload Module」に同兵器搭載可能タイプを準備し、2026年に最初のモジュール提供を受けて試験を開始し、2028年運用開始を目指すようです
18日付Defense-News記事によれば
●Wolfe海軍中将は米海軍潜水艦協会の総会で講演し、「米陸軍と協力して進めている極超音速兵器開発は、米陸軍が2023年に最初の地上発射部隊を立ち上げ、米海軍は2025年にZumwalt級駆逐艦の1隻目に搭載する」、「ただ潜水艦については、オハイオ級ではなく、ヴァージニア級に2028年に搭載するのが最初になる。ただ2028年との時期については前倒しできないか検討している」と述べた
●オハイオ級への搭載断念については、潜水艦にこの規模の新兵器を搭載するには「underwater launch test facility」で事前確認するのが不可欠であるが、オハイオ級SSGNの退役時期に鑑み、米海軍として同test facility調達予算確保は困難との結論に至ったと説明した
●また同中将は、結果として、潜水艦より水上艦艇への搭載が先になるが、これは水上艦艇への搭載が潜水艦への搭載より技術的ハードルが低い、つまり陸軍の地上発射装置と似た部分が多いと考えたからだと説明した。またZumwalt級艦艇への搭載経験をバージニア級搭載に生かしたいためだとも述べた
●一方で同中将は、陸軍と海軍の開発協力体制は強固で成果を生んでいると強調し、最近3回の試験に連続成功している点や、米海軍が潜水艦用に進める「cold launch」テストにも成功したこと、2022年にはハワイ周辺の射爆場で一連の性能や安全試験を計画しており、準備が着実に進んでいるとも力説した
●更に、新たに立ち上げる必要がある極超音速兵器の産業基盤育成について、現在国防省のSandia研究所のみが保有するミサイル製造技術を、選定した企業Dynetics社員を研究所に派遣して学ばせ、アラバマ工場立ち上げにも助言していると説明した
//////////////////////////////////////////////////////
ロシアは既に、潜水艦発射の極超音速ミサイルの発射試験を行っています
しっかりやっており成果も出ているし、協力体制もばっちりだ。予算の関連で潜水艦配備は遅れるが、前倒しも検討中であり、空いた時間は技術的成熟に活用して最先端兵器開発に全力対応中だと・・・と熱く語る様子は感じられるのですが、必死さを感じるほど不安感が深まるのはまんぐーすだけでしょうか?
米海軍の汚名挽回にはまだまだ時間がかかりそうです
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「ボディー試験に成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-22
「空軍開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-16
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1
「宇宙センサー整備が急務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31
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予算不足でオハイオ級GN原潜への搭載を断念
11月18日、米海軍戦略システム計画部長Johnny Wolfe海軍中将が講演で、2025年予定だったオハイオ級誘導ミサイル原潜(戦略原潜を巡航ミサイル原潜に改修)への極超音速兵器搭載について、試験機材導入予算不足のため断念し、ヴァージニア級攻撃原潜への2028年搭載まで潜水艦への搭載は遅れると明らかにしました。
Wolfe海軍中将は講演で、米陸軍と海軍が強力なタッグを組み、初速ゼロから発射する極超音速兵器開発で最近3回連続試験成功の成果を上げ、軍需産業基盤の育成でも施策が進んでいる等々と強調しましたが、米軍全体にとっても優先度の高い潜水艦への極著音速兵器搭載遅延は、苦しい説明とならざるを得ません
米海軍の当初計画では、米陸軍とともに極超音速ミサイル開発に全力を注ぎつつ、並行して潜水艦からの極超音速ミサイル「cold launch」発射技術(潜水艦から空気圧射出後にロケットに点火)の開発に海軍として取り組み、オハイオ級GN原潜に2025年、その後Virginia級に2028年搭載予定でした
しかし、オハイオ級誘導ミサイル原潜の退役時期が迫っていることもあり、米海軍が総合的に判断し、搭載テストに必要な「underwater launch test facility」予算確保を断念したとのことです。
これにより米潜水艦への極超音速兵器の搭載はVirginia級攻撃原潜への搭載まで待つこととなり、具体的には、同級潜水艦Block V用の「Virginia Payload Module」に同兵器搭載可能タイプを準備し、2026年に最初のモジュール提供を受けて試験を開始し、2028年運用開始を目指すようです
18日付Defense-News記事によれば
●Wolfe海軍中将は米海軍潜水艦協会の総会で講演し、「米陸軍と協力して進めている極超音速兵器開発は、米陸軍が2023年に最初の地上発射部隊を立ち上げ、米海軍は2025年にZumwalt級駆逐艦の1隻目に搭載する」、「ただ潜水艦については、オハイオ級ではなく、ヴァージニア級に2028年に搭載するのが最初になる。ただ2028年との時期については前倒しできないか検討している」と述べた
●オハイオ級への搭載断念については、潜水艦にこの規模の新兵器を搭載するには「underwater launch test facility」で事前確認するのが不可欠であるが、オハイオ級SSGNの退役時期に鑑み、米海軍として同test facility調達予算確保は困難との結論に至ったと説明した
●また同中将は、結果として、潜水艦より水上艦艇への搭載が先になるが、これは水上艦艇への搭載が潜水艦への搭載より技術的ハードルが低い、つまり陸軍の地上発射装置と似た部分が多いと考えたからだと説明した。またZumwalt級艦艇への搭載経験をバージニア級搭載に生かしたいためだとも述べた
●一方で同中将は、陸軍と海軍の開発協力体制は強固で成果を生んでいると強調し、最近3回の試験に連続成功している点や、米海軍が潜水艦用に進める「cold launch」テストにも成功したこと、2022年にはハワイ周辺の射爆場で一連の性能や安全試験を計画しており、準備が着実に進んでいるとも力説した
●更に、新たに立ち上げる必要がある極超音速兵器の産業基盤育成について、現在国防省のSandia研究所のみが保有するミサイル製造技術を、選定した企業Dynetics社員を研究所に派遣して学ばせ、アラバマ工場立ち上げにも助言していると説明した
//////////////////////////////////////////////////////
ロシアは既に、潜水艦発射の極超音速ミサイルの発射試験を行っています
しっかりやっており成果も出ているし、協力体制もばっちりだ。予算の関連で潜水艦配備は遅れるが、前倒しも検討中であり、空いた時間は技術的成熟に活用して最先端兵器開発に全力対応中だと・・・と熱く語る様子は感じられるのですが、必死さを感じるほど不安感が深まるのはまんぐーすだけでしょうか?
米海軍の汚名挽回にはまだまだ時間がかかりそうです
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米軍の極超音速兵器開発
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「エアシーバトル」から「智能化戦争」への流れを振り返る [安全保障全般]
防衛研究所の関連「NDISコメンタリ」をご紹介
11月11日付で防衛省防衛研究所が、大谷弘毅3等海佐による「シリーズ湾岸戦争 30 周年 ⑦ 海軍戦略と情報技術のマトリクス展開としての湾岸戦争」との論文を「NIDS Commentary」として公開し、タイトル通り湾岸戦争の影響を受け、米海軍や中国等の海軍戦略がどのように変遷してきたのかや、RMA が展開され新たな戦争形態(智能化戦争)が提唱されている様子を紹介しています
特に、総花的で何でもアリ感が漂う湾岸戦争後のAIなど情報科学の軍事への導入を、「情報学の理論的視座」を活用して紹介しようと取り組んでいる点が特徴だそうですが、その辺りには頭が追随できておりません。
ただ、この論文の中の「4.第3のオフセットと智能化戦争」で、懐かしの「エアシーバトル」や「第 3 のオフセット戦略」、そして中国の「智能化戦争」を一連の流れの中で説明し、関連の日本語文献も原文には添えられていますのでご紹介いたします
正直なところ、まんぐーすはこの部分にも十分追随できていませんが、たまには少し硬いアプローチで行きたいと思います
「4.第3のオフセットと智能化戦争」によれば
●湾岸戦争後の対抗国の海軍戦略具現化により、米海軍の制海局地的には脅かされることとなり、米国防省総合評価室のアンドリュー・クレピネヴィッチが2003 年のレポート「『A2/AD』による挑戦への対応」で「A2/AD」として脅威を概念化した。
●彼は、対抗国が弾道&巡航ミサイル・高性能航空機などの遠距離投射武器を掌握するようになれば、米軍の前線基地が弱点に転じる可能性を指摘していたが、2000 年代以降に現実の懸念となった。
●A2/AD の脅威認識より、米海軍戦略は大きな転換を迫られ、「エアシー・バトル」(2010年、対中国)や「アウトサイド・イン」(2012 年、対イラン)、「オフショア・コントロール」(2012 年)といった一連の対 A2/AD 戦略が矢継ぎ早に生み出された。
●ただ、これらの一連の構想の実効性は、敵 A2/AD 領域打開に掛かっており、それは範囲外からの長距離戦力投射(スタンドオフ)能力獲得が前提で、かつ敵 A2/AD 領域における自身の被害軽減がカギとなる。長距離戦力投射能力と自身の脆弱性の克服の 2 点が達成されなければ、対 A2/AD 戦略は実現性を有しない
●この問題解決のため、 2014 年にヘーゲル国防長官(実際にはWork国防副長官)により「第 3 のオフセット戦略(Third Offset Strategy)」が提唱された。オフセットとは、敵対者の数的優位を、自身の質的優位で相殺し優位に立つとの意味で、過去2回(「核兵器」と「情報化の実現による RMA」)のオフセットに続く、 3 度目のオフセットとして位置付けられたものである
●「エアシー・バトル」「アウトサイド・イン」双方の提言元であるCSBAは、「第 3 のオフセット戦略」の提言で、「世界各地に展開する基地の敵攻撃に対する脆弱性」「陸上からの長距離攻撃に対する大型水上艦及び空母の脆弱性」「非ステルス機の統合防空システムに対する脆弱性」「宇宙空間の被攻撃に対する脆弱性」との米軍が抱える脆弱性に対処するため、
●「無人機作戦」「長距離航空作戦」「ステルス航空作戦」「水中における戦闘」「複合的なシステムエンジニアリング・統合・運用」の 5 つの分野について対敵優位を保つ必要性を主張し、そのために「13 の分野」における取組みが必要であるとした
●「5 つの分野」や下部の「13 の分野」は一見、次世代技術の総花的列挙との印象を受けるが、レールガンや指向性エネルギーシステム、無人機運用の拡大は、敵 A2/AD 領域を打開するものであった。特に「無人機作戦」を支えるのはロボットの自律化であり、AI 技術により可能となるものである
●この「第 3 のオフセット戦略」に対し中露両国は、AI 分野に集中投資し、自律型無人航空機や陸上戦闘車両の開発を進め、2030 年までに同分野における主導的地位を確立することを戦略目標として掲げている。
●特に、中国は 2019 年版国防白書において、「情報化戦争」から「智能化戦争」への推移という将来展望を示し、中国産業構造の転換による経済発展の質的向上を達成し、イノベーション型国家を建設する核心技術として AI が位置づけられている大きな国の方針の一部をなす形が明らかになった
●つまり中国は、一般的軍事技術の基盤となるメタ技術の遅れを自覚し、メタ技術部分に資源を集中させることで、より効率的な追い上げを推進しているといえる。
●この智能化戦争を巡っては、高度な AI 技術活用で飛躍的に能力向上を図った無人機を戦場の主役にすることや、量子コンピュータ技術等で優れた情報分析能力を獲得した機械が人間指揮官の意思決定を補助する「人機共同決定」を柱にすること、更に戦争領域として「認知領域」(関知、理解、信念、価値観といった意識が構成するバーチャルな空間)が重要になるとの指摘がなされている
////////////////////////////////////////////
NDISコメンタリー紹介ページ
→http://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/comme_index.html
大谷3佐のNDISコメンタリ原文FDF11ページ
→http://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary197.pdf
このような、A2ADやエアシーバトル等から、現在までの流れを整理する試みはいろんな形で行われているのでしょうが、たまたま目に入った小論から抜粋ご紹介しました
防衛研究所や陸海空自衛隊の幹部学校でも、米国の軍事戦略や戦術に関する検討が普通に行われるようになってきています。
まんぐーすは勝手に、ブログ「東京の郊外より」でCSBAの「エアシーバトル」や当時のゲーツ国防長官の考え方を紹介したことで、この分野に関する日本国内の関心が一気に高まったと自惚れています。
「エアシーバトル」関連記事100本
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/archive/c2301176212-1
オフショア・コントロールの概要
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-13
「第3の相殺戦略」関連の記事
「マティス長官と同戦略」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-01-19
「この戦略は万能薬ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11-1
「CSISが相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「相殺戦略を如何に次期政権に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
「小野田治の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-05
「慶応神保氏の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26
「第3のOffset Strategy発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-06-1
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→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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特に、総花的で何でもアリ感が漂う湾岸戦争後のAIなど情報科学の軍事への導入を、「情報学の理論的視座」を活用して紹介しようと取り組んでいる点が特徴だそうですが、その辺りには頭が追随できておりません。
ただ、この論文の中の「4.第3のオフセットと智能化戦争」で、懐かしの「エアシーバトル」や「第 3 のオフセット戦略」、そして中国の「智能化戦争」を一連の流れの中で説明し、関連の日本語文献も原文には添えられていますのでご紹介いたします
正直なところ、まんぐーすはこの部分にも十分追随できていませんが、たまには少し硬いアプローチで行きたいと思います
「4.第3のオフセットと智能化戦争」によれば
●湾岸戦争後の対抗国の海軍戦略具現化により、米海軍の制海局地的には脅かされることとなり、米国防省総合評価室のアンドリュー・クレピネヴィッチが2003 年のレポート「『A2/AD』による挑戦への対応」で「A2/AD」として脅威を概念化した。
●彼は、対抗国が弾道&巡航ミサイル・高性能航空機などの遠距離投射武器を掌握するようになれば、米軍の前線基地が弱点に転じる可能性を指摘していたが、2000 年代以降に現実の懸念となった。
●A2/AD の脅威認識より、米海軍戦略は大きな転換を迫られ、「エアシー・バトル」(2010年、対中国)や「アウトサイド・イン」(2012 年、対イラン)、「オフショア・コントロール」(2012 年)といった一連の対 A2/AD 戦略が矢継ぎ早に生み出された。
●ただ、これらの一連の構想の実効性は、敵 A2/AD 領域打開に掛かっており、それは範囲外からの長距離戦力投射(スタンドオフ)能力獲得が前提で、かつ敵 A2/AD 領域における自身の被害軽減がカギとなる。長距離戦力投射能力と自身の脆弱性の克服の 2 点が達成されなければ、対 A2/AD 戦略は実現性を有しない
●この問題解決のため、 2014 年にヘーゲル国防長官(実際にはWork国防副長官)により「第 3 のオフセット戦略(Third Offset Strategy)」が提唱された。オフセットとは、敵対者の数的優位を、自身の質的優位で相殺し優位に立つとの意味で、過去2回(「核兵器」と「情報化の実現による RMA」)のオフセットに続く、 3 度目のオフセットとして位置付けられたものである
●「エアシー・バトル」「アウトサイド・イン」双方の提言元であるCSBAは、「第 3 のオフセット戦略」の提言で、「世界各地に展開する基地の敵攻撃に対する脆弱性」「陸上からの長距離攻撃に対する大型水上艦及び空母の脆弱性」「非ステルス機の統合防空システムに対する脆弱性」「宇宙空間の被攻撃に対する脆弱性」との米軍が抱える脆弱性に対処するため、
●「無人機作戦」「長距離航空作戦」「ステルス航空作戦」「水中における戦闘」「複合的なシステムエンジニアリング・統合・運用」の 5 つの分野について対敵優位を保つ必要性を主張し、そのために「13 の分野」における取組みが必要であるとした
●「5 つの分野」や下部の「13 の分野」は一見、次世代技術の総花的列挙との印象を受けるが、レールガンや指向性エネルギーシステム、無人機運用の拡大は、敵 A2/AD 領域を打開するものであった。特に「無人機作戦」を支えるのはロボットの自律化であり、AI 技術により可能となるものである
●この「第 3 のオフセット戦略」に対し中露両国は、AI 分野に集中投資し、自律型無人航空機や陸上戦闘車両の開発を進め、2030 年までに同分野における主導的地位を確立することを戦略目標として掲げている。
●特に、中国は 2019 年版国防白書において、「情報化戦争」から「智能化戦争」への推移という将来展望を示し、中国産業構造の転換による経済発展の質的向上を達成し、イノベーション型国家を建設する核心技術として AI が位置づけられている大きな国の方針の一部をなす形が明らかになった
●つまり中国は、一般的軍事技術の基盤となるメタ技術の遅れを自覚し、メタ技術部分に資源を集中させることで、より効率的な追い上げを推進しているといえる。
●この智能化戦争を巡っては、高度な AI 技術活用で飛躍的に能力向上を図った無人機を戦場の主役にすることや、量子コンピュータ技術等で優れた情報分析能力を獲得した機械が人間指揮官の意思決定を補助する「人機共同決定」を柱にすること、更に戦争領域として「認知領域」(関知、理解、信念、価値観といった意識が構成するバーチャルな空間)が重要になるとの指摘がなされている
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米高官:UAEへのF-35輸出に完全コミットも協議中 [安全保障全般]
ドバイ航空ショー会場で米国務省担当次官補代理が語る
ロシア代表団がUAE皇太子にSu-75売込みの中
11月16日、米国務省の政軍関係や武器輸出担当のMira Resnick次官補代理がドバイ航空ショーの会場で、バイデン政権誕生以降、トランプ前政権が合意したUAEへのF-35輸出の手続きが停滞していると言われる中、「米国は輸出合意に完全にコミットしている」と語りました
またサウジへの精密誘導兵器等の輸出については、反サウジ姿勢のジャーナリストが殺害された2018年の事案や人道状況が深刻なイエメンに対する米国製武器使用に関する問題など困難な面があるが、協議を行っていると説明しています
14日から18日の間で開催された同航空ショーは、コロナ感染拡大後では初の大規模国際航空ショーで、事前登録者数等から5日間で8万人以上の来場が見込まれたイベントですが、2020年にUAEなどと国交を正常化したイスラエルの国防省や防衛企業も初めて参加する中東イベントとしても関心を集めています
UAEやサウジへの米国製武器輸出に関しては、イエメンでの人道的な懸念の他、例えばUAEが中国やロシア軍需企業とも関係を持っていることから、米国製武器の最新技術や情報が流出する恐れも指摘されており、その辺りの懸念を払しょくするための約束を明確にする作業が続いているようです
なお、米国が足踏みしている隙を見て、16日にはロシアの「ハイレベル(売込み)代表団」が、UAEの実権に近い皇太子に航空ショー会場で面談しており、F-35の対抗馬だとロシアが主張するSU-57を売り込んだとも噂されていますが、その件についてもResnick次官補代理はコメントしています
16日付Defense-News記事によれば
●16日、米国務省政軍関係局で地域安全保障と武器輸出を担当するMira Resnick次官補代理がAP通信の質問に対し、「米国は、UAEにとってgame changerとなるF-35輸出に完全にコミットしており、前政権時にUAEが約束した様々な条件が守られることを明確にするための協議を行っている」と説明した
●また「イスラエル軍や米軍のF-35が既に当地域で飛行しているが、米国はUAEにもF-35を運用してもらい、我々のパートナーとして、イランを含む地域の脅威抑止に加わってほしいと考えている」とも述べた
●トランプ前政権は、イスラエルとUAEの国交樹立を受け、UAEに50機のF-35と18機のMQ-9無人攻撃機や最新の空対空&空対地ミサイル等を約2兆5千億円で提供することで合意したが、バイデン政権になってUAEやサウジのイエメンへの武器使用批判などから手続きが遅れている
●なお同次官補はF-35売却に際し、どのような事項を明確にするようUAEに求め、UAEがどのような回答をしているかについて言及を避け、UAE側も契約条件については語っていない
●また同次官補はロシアの兵器売込みの動きに関する質問に対し、「我々は米国の地域における役割を満たすような戦略的競争者を目にしていない」と述べた
●サウジへの武器売却交渉について同次官補は、「サウジが自国防衛を果たせる状態にあるか確認するため協議をしている。米サウジ間に困難な面があることを両国は承知している。しかし米国は引き続き、サウジに再投資し、また彼らが防衛のために投資することを可能にしていく」と表現し、「米国製の武器が米国の安全保障向上に寄与するように使用されることを確保していく」と語った
/////////////////////////////////////////////////
UAEやサウジが中国やロシアとどの程度密接な関係にあり、どれだけ情報漏洩のリスクがあるのか良くわかりませんが、イスラエルとUAEやバーレーン等との国交樹立を謳った「アブラハム合意」の勢いが失われないことを切に願います
米空軍省で長年武器輸出を担当して各国関係者と太いパイプがあり、国防省の武器輸出所管DSCAトップだったHeidi Grant長官が11月7日に辞任し、背景にUAE&サウジ案件や、中国に武器輸出で先を越されていることへの不満があったと報じられています。真相は定かではありませんが、これが米国防省や米国政府の状態です
中東への武器輸出関連
「米国防省の武器輸出担当DSCA長官が怒りの辞任」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-15
中東やイスラエル関連の記事
「UAE空軍司令官視察:イスラエル最大の多国間空軍演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-04
「国防省武器輸出担当が怒りの辞任」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-15
「米中央軍で対イランの動き2つ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-09
アブラハム合意の関連記事
「イスラエルが欧州軍から中央軍管轄に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-16
「政権交代前にUAEへのF-35契約署名へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-11
「イスラエルがUAEへのF-35に事実上合意」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-26
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
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ロシア代表団がUAE皇太子にSu-75売込みの中
11月16日、米国務省の政軍関係や武器輸出担当のMira Resnick次官補代理がドバイ航空ショーの会場で、バイデン政権誕生以降、トランプ前政権が合意したUAEへのF-35輸出の手続きが停滞していると言われる中、「米国は輸出合意に完全にコミットしている」と語りました
またサウジへの精密誘導兵器等の輸出については、反サウジ姿勢のジャーナリストが殺害された2018年の事案や人道状況が深刻なイエメンに対する米国製武器使用に関する問題など困難な面があるが、協議を行っていると説明しています
14日から18日の間で開催された同航空ショーは、コロナ感染拡大後では初の大規模国際航空ショーで、事前登録者数等から5日間で8万人以上の来場が見込まれたイベントですが、2020年にUAEなどと国交を正常化したイスラエルの国防省や防衛企業も初めて参加する中東イベントとしても関心を集めています
UAEやサウジへの米国製武器輸出に関しては、イエメンでの人道的な懸念の他、例えばUAEが中国やロシア軍需企業とも関係を持っていることから、米国製武器の最新技術や情報が流出する恐れも指摘されており、その辺りの懸念を払しょくするための約束を明確にする作業が続いているようです
なお、米国が足踏みしている隙を見て、16日にはロシアの「ハイレベル(売込み)代表団」が、UAEの実権に近い皇太子に航空ショー会場で面談しており、F-35の対抗馬だとロシアが主張するSU-57を売り込んだとも噂されていますが、その件についてもResnick次官補代理はコメントしています
16日付Defense-News記事によれば
●16日、米国務省政軍関係局で地域安全保障と武器輸出を担当するMira Resnick次官補代理がAP通信の質問に対し、「米国は、UAEにとってgame changerとなるF-35輸出に完全にコミットしており、前政権時にUAEが約束した様々な条件が守られることを明確にするための協議を行っている」と説明した
●また「イスラエル軍や米軍のF-35が既に当地域で飛行しているが、米国はUAEにもF-35を運用してもらい、我々のパートナーとして、イランを含む地域の脅威抑止に加わってほしいと考えている」とも述べた
●トランプ前政権は、イスラエルとUAEの国交樹立を受け、UAEに50機のF-35と18機のMQ-9無人攻撃機や最新の空対空&空対地ミサイル等を約2兆5千億円で提供することで合意したが、バイデン政権になってUAEやサウジのイエメンへの武器使用批判などから手続きが遅れている
●なお同次官補はF-35売却に際し、どのような事項を明確にするようUAEに求め、UAEがどのような回答をしているかについて言及を避け、UAE側も契約条件については語っていない
●また同次官補はロシアの兵器売込みの動きに関する質問に対し、「我々は米国の地域における役割を満たすような戦略的競争者を目にしていない」と述べた
●サウジへの武器売却交渉について同次官補は、「サウジが自国防衛を果たせる状態にあるか確認するため協議をしている。米サウジ間に困難な面があることを両国は承知している。しかし米国は引き続き、サウジに再投資し、また彼らが防衛のために投資することを可能にしていく」と表現し、「米国製の武器が米国の安全保障向上に寄与するように使用されることを確保していく」と語った
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UAEやサウジが中国やロシアとどの程度密接な関係にあり、どれだけ情報漏洩のリスクがあるのか良くわかりませんが、イスラエルとUAEやバーレーン等との国交樹立を謳った「アブラハム合意」の勢いが失われないことを切に願います
米空軍省で長年武器輸出を担当して各国関係者と太いパイプがあり、国防省の武器輸出所管DSCAトップだったHeidi Grant長官が11月7日に辞任し、背景にUAE&サウジ案件や、中国に武器輸出で先を越されていることへの不満があったと報じられています。真相は定かではありませんが、これが米国防省や米国政府の状態です
中東への武器輸出関連
「米国防省の武器輸出担当DSCA長官が怒りの辞任」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-15
中東やイスラエル関連の記事
「UAE空軍司令官視察:イスラエル最大の多国間空軍演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-04
「国防省武器輸出担当が怒りの辞任」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-15
「米中央軍で対イランの動き2つ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-09
アブラハム合意の関連記事
「イスラエルが欧州軍から中央軍管轄に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-16
「政権交代前にUAEへのF-35契約署名へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-11
「イスラエルがUAEへのF-35に事実上合意」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-26
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再掲載:温故知新:ロバート・ゲーツ語録100選一部 [ゲーツ前国防長官]
まんぐーすがブログ「東京の郊外より・・・」を本格的に始めることにしたのは、ロバート・ゲーツ(Robert Michael Gates、1943年9月25日生)第22代国防長官(2006年12月18日~2011年6月30日)の考え方や発言に触れ、是非広く紹介したいと考えたからです。
その発言やメッセージは、圧倒的な知力や史実や国際政治の裏側に接した経験に裏打ちされ、非常に味わい深いものとなっています。是非ご覧いただき、参考にしていただければ幸いです。
完全版は長いので、兄弟ブログ「輪になって踊らず」に掲載
↓ ↓ ↓ ↓
「ゲーツ元長官語録100選」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19
ロバート・ゲーツ語録100選の一部をご紹介する前に・・・
まず、ゲーツ氏退任式でのオバマ大統領のスピーチを
「私は知っている。彼が真に困難な議論や決断に直面した時、人間の真の姿が問われる時にどのような態度を取ったか。大統領執務室で、機密会議室で、最前線で」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-23
次に、ゲーツ氏の功績を讃える各方面の声を
米大学生が選ぶ2010 Man of the Year
「大学生は、自分たちが社会システムを変革する力や能力を持つと信じる者たちである。その彼らがtrue role model(真の生きた模範)として選んだのがゲーツ国防長官である」
「ゲーツ長官が正しい事のために敢然と立ち上がり、議論紛糾の困難な2つの戦争の最中にあっても、政党間の誤魔化しでなく、現実の問題に焦点を当てて歴史的なシステムの変革を成し遂げた事を讃えて本賞を贈ることとした」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-24
日立財団の表彰理由
「イラクとアフガニスタンにおける2つの戦争の時代に優れた業績を挙げた。また、彼は、米国史上で唯一、政権交代時に新大統領から留任を要請を受けた国防長官である」
「米国史において下級職の連邦政府公務員から閣僚にまで上りつめた人物は2人だけしかおらず、ゲーツ氏はそのうちの1人である」
→http://www.hitachifoundation.org/news-ja/news-releases/420-robert-m-gates-receives-2012-richardson-award-j
以下では、ロバート・ゲーツ語録100選の一部18個を
ロバート・ゲーツ語録1
→外交文書漏洩で外交に影響は?と問われ→「米国と関係を持つ国は、国益のためにそうするのであって、米国が好きだからではなく、米国を信用しているからでもなく、また米国が秘密を守ると信じているからでもない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-02
ロバート・ゲーツ語録2
→海軍は空母が支配し、戦闘機と爆撃機が空軍を支配し、戦車が陸軍を、そして着上陸用車両が海兵隊を支配しているのが実態である。→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-09
ロバート・ゲーツ語録3
→皆に気づいて欲しい。空軍の歴史の大部分は空中戦と爆撃機の能力で彩られているが、ベトナム戦争以来、空軍パイロットは空中戦で相手を撃墜していない→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-09
ロバート・ゲーツ語録5
→次の本格紛争には主に海軍と空軍が関与するであろう現実に、陸軍は向き合うべき。 アジアや中東へ大規模地上部隊を派遣するよう大統領に進言する国防長官が仮に現れたら、頭の検査を受けさせるべきだと思う→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
ロバート・ゲーツ語録10
→米軍には20世紀の世界観が根強く残っており、変化を妨げている。米軍は戦闘で40年間航空機を失っておらず、朝鮮戦争以来、敵の攻撃を受けていない。しかし、21世紀の制空権は米軍の従来の想定とは全く異なるであろう→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
ロバート・ゲーツ語録11
→米空軍は、空対空戦闘と戦略爆撃に捕らわれすぎており、他の重要な任務や能力を無視しがちである。ある意味で空軍は、その成功の犠牲者とも言える→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
ロバート・ゲーツ語録12
→私がCIA長官の時、イスラエルが無人機を有効使用することを知った。そこで米空軍と共同出資で無人機の導入を働きかけたが1992年に米空軍は拒否した。私は3年前、今度は無人機導入のため牙をむいて4軍と立ち向かった→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
ロバート・ゲーツ語録18
→海空軍のため、米軍のため、我が国のため、キャリア指向や旧思考をやめよ。規律正しく、創造的で、改革指向であれ。誠実なリーダーであれ。どのポストに就きたいではなく、何を成し遂げたいかを語れ→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-10
ロバート・ゲーツ語録21
→国防省で制服幹部をたしなめている。陸軍は未だにフルダ・ギャップでの戦いを望むのか? 海軍はまだミッドウェー海戦を夢見ているのか? 海兵隊は仁川上陸作戦をもう一度なのか? 空軍は単に飛んでいたいのか?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02
ロバート・ゲーツ語録30
→上品さとは、周りの人、特に部下とどのように接するかで測られる。公平さと敬意を持って接することである。トルーマン大統領は「君たちに反論できない人達とどのように接するか」と表現した→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-28
ロバート・ゲーツ語録33
→全ての潜在的敵対者、つまりテログループ、ならず者国家、ライジングパワー、これら全てが共通に学び得たものは、米国と通常戦の手法で正面から対峙するのは賢明ではないとの認識である→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-27
ロバート・ゲーツ語録50
→私は歴代のどの国防長官よりも、外交や開発支援等、ソフトパワーの重要性を訴えた。でも間違ってはならない。20世紀のように21世紀でも、侵略者や独裁者やテロリストへの対処を究極で保障するのはハードパワーだ→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-24-1
ロバート・ゲーツ語録56
→私が2006年にこの職について政府の仕事に戻っ際、(貿易摩擦が激化した1992年頃のCIA長官時代と比べ)最も驚いたことが2つある。一つはインドとの関係改善であり、もう一つは日本との関係改善である→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
ロバート・ゲーツ語録62
→ベトナム戦争以来、次にどこで軍事力を使用するかの予想において、我が国の指導者は完璧な記録を更新している。つまり完璧に外し続けている→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-07-1
ロバート・ゲーツ語録65
→米国は他国を厳しく批判する前に、自身が現在に至るまでの長い道のりを振り返らねばならない。フランス革命に背を向け、奴隷制度を維持した国が、アフリカ系米国人大統領を持つまでに至った長い道のりを→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-16
ロバート・ゲーツ語録77
→胡錦濤主席を含め、同席の中国側文民関係者は誰一人J-20初飛行の件について知らないようだった。これが軍人と政府の両方と会談した一つの理由である。軍人と文民が共にテーブルを囲む戦略対話の必要性が高い→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-09-1
ロバート・ゲーツ語録93
→2つの戦争が継続中で、多くの若者が日々命を落としていた。このような状況で、もし続投を要請されたらYesと答えるしかなかった。だから私は要請されないように早い段階から「続投しない」と発言してきたのだ→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-17-1
ロバート・ゲーツ語録100
→日本と韓国は、米国のパートナーとして適当であるよう調整を続けてきた。しかし依然として、パートナーとして準備し、全ての、くり返すが同盟国としての全ての義務を果たすことができるパートナーでなければならない→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-29
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改めてご紹介! あと82語録は下記に
「ゲーツ元長官語録100選」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19
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ロバート・ゲーツ語録100選の一部をご紹介する前に・・・
まず、ゲーツ氏退任式でのオバマ大統領のスピーチを
「私は知っている。彼が真に困難な議論や決断に直面した時、人間の真の姿が問われる時にどのような態度を取ったか。大統領執務室で、機密会議室で、最前線で」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-23
次に、ゲーツ氏の功績を讃える各方面の声を
米大学生が選ぶ2010 Man of the Year
「大学生は、自分たちが社会システムを変革する力や能力を持つと信じる者たちである。その彼らがtrue role model(真の生きた模範)として選んだのがゲーツ国防長官である」
「ゲーツ長官が正しい事のために敢然と立ち上がり、議論紛糾の困難な2つの戦争の最中にあっても、政党間の誤魔化しでなく、現実の問題に焦点を当てて歴史的なシステムの変革を成し遂げた事を讃えて本賞を贈ることとした」
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「イラクとアフガニスタンにおける2つの戦争の時代に優れた業績を挙げた。また、彼は、米国史上で唯一、政権交代時に新大統領から留任を要請を受けた国防長官である」
「米国史において下級職の連邦政府公務員から閣僚にまで上りつめた人物は2人だけしかおらず、ゲーツ氏はそのうちの1人である」
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以下では、ロバート・ゲーツ語録100選の一部18個を
ロバート・ゲーツ語録1
→外交文書漏洩で外交に影響は?と問われ→「米国と関係を持つ国は、国益のためにそうするのであって、米国が好きだからではなく、米国を信用しているからでもなく、また米国が秘密を守ると信じているからでもない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-02
ロバート・ゲーツ語録2
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→皆に気づいて欲しい。空軍の歴史の大部分は空中戦と爆撃機の能力で彩られているが、ベトナム戦争以来、空軍パイロットは空中戦で相手を撃墜していない→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-09
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→次の本格紛争には主に海軍と空軍が関与するであろう現実に、陸軍は向き合うべき。 アジアや中東へ大規模地上部隊を派遣するよう大統領に進言する国防長官が仮に現れたら、頭の検査を受けさせるべきだと思う→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
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→米軍には20世紀の世界観が根強く残っており、変化を妨げている。米軍は戦闘で40年間航空機を失っておらず、朝鮮戦争以来、敵の攻撃を受けていない。しかし、21世紀の制空権は米軍の従来の想定とは全く異なるであろう→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
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ロバート・ゲーツ語録12
→私がCIA長官の時、イスラエルが無人機を有効使用することを知った。そこで米空軍と共同出資で無人機の導入を働きかけたが1992年に米空軍は拒否した。私は3年前、今度は無人機導入のため牙をむいて4軍と立ち向かった→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
ロバート・ゲーツ語録18
→海空軍のため、米軍のため、我が国のため、キャリア指向や旧思考をやめよ。規律正しく、創造的で、改革指向であれ。誠実なリーダーであれ。どのポストに就きたいではなく、何を成し遂げたいかを語れ→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-10
ロバート・ゲーツ語録21
→国防省で制服幹部をたしなめている。陸軍は未だにフルダ・ギャップでの戦いを望むのか? 海軍はまだミッドウェー海戦を夢見ているのか? 海兵隊は仁川上陸作戦をもう一度なのか? 空軍は単に飛んでいたいのか?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02
ロバート・ゲーツ語録30
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ロバート・ゲーツ語録33
→全ての潜在的敵対者、つまりテログループ、ならず者国家、ライジングパワー、これら全てが共通に学び得たものは、米国と通常戦の手法で正面から対峙するのは賢明ではないとの認識である→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-27
ロバート・ゲーツ語録50
→私は歴代のどの国防長官よりも、外交や開発支援等、ソフトパワーの重要性を訴えた。でも間違ってはならない。20世紀のように21世紀でも、侵略者や独裁者やテロリストへの対処を究極で保障するのはハードパワーだ→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-24-1
ロバート・ゲーツ語録56
→私が2006年にこの職について政府の仕事に戻っ際、(貿易摩擦が激化した1992年頃のCIA長官時代と比べ)最も驚いたことが2つある。一つはインドとの関係改善であり、もう一つは日本との関係改善である→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
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→ベトナム戦争以来、次にどこで軍事力を使用するかの予想において、我が国の指導者は完璧な記録を更新している。つまり完璧に外し続けている→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-07-1
ロバート・ゲーツ語録65
→米国は他国を厳しく批判する前に、自身が現在に至るまでの長い道のりを振り返らねばならない。フランス革命に背を向け、奴隷制度を維持した国が、アフリカ系米国人大統領を持つまでに至った長い道のりを→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-16
ロバート・ゲーツ語録77
→胡錦濤主席を含め、同席の中国側文民関係者は誰一人J-20初飛行の件について知らないようだった。これが軍人と政府の両方と会談した一つの理由である。軍人と文民が共にテーブルを囲む戦略対話の必要性が高い→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-09-1
ロバート・ゲーツ語録93
→2つの戦争が継続中で、多くの若者が日々命を落としていた。このような状況で、もし続投を要請されたらYesと答えるしかなかった。だから私は要請されないように早い段階から「続投しない」と発言してきたのだ→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-17-1
ロバート・ゲーツ語録100
→日本と韓国は、米国のパートナーとして適当であるよう調整を続けてきた。しかし依然として、パートナーとして準備し、全ての、くり返すが同盟国としての全ての義務を果たすことができるパートナーでなければならない→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-29
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50機目のKC-46受領し、対象機62%に給油任務許可も・・・ [米空軍]
完全に要求性能を満たすのは2024年以降なのに
戦闘地域の本格作戦には投入できない状態なのに
11月9日、米空軍が50機目となるKC-46空中給油機を受領し、現時点での総製造機数177機の28%を受領しました。また10月にF-15とF-16への空中給油を許可したことから、給油対象機の62%に給油可能となっています
ただKC-46は約3割を受領した現時点でも完全な状態ではなく、要求性能を満たせない状態で、その解消の目途が立っていない状態です
操縦席後方の給油操作員が使用する給油操作表示装置(RVS:remote vision system)が給油対象機を必要なレベルで表示できず、不具合解消対策もとりあえずの「当面のソフト改修」でしのいでいる状況で、2023-24年から実施予定の恒久対策(RVS2.0の搭載)はまだ内容が詰まっていない状態です
そんな中でもKC-135やKC-10の老朽化は進み、維持整備費の高騰と整備員への負荷増大で部隊運用を圧迫しており、作戦地域での活動でない優しい任務にKC-46を投入可能とすることで「その場をしのぐ」苦肉の策に米空軍は出ています
2021年7月に米海軍機に多いセンターラインdrogueシステム使用の給油を許可し、8月にはB-52とC-17輸送機、更にKC-46に対する給油任務を許可しました。
そして10月には対象機の多いF-15とF-16への給油を許可することで、空中受油可能機の62%に空中給油可能なまでになり、KC-135とKC-10への負荷軽減に寄与できることになっています
その場しのぎの対策で、どんどん機体を製造し、先日日本の美保基地にも日本用の1番機が到着したわけです。
これまでのグダグダの経緯は過去記事をご覧いただくとして、引き続き、生暖かく見守りたいと思います
KC-46関連の記事
「KC-46空中給油機に更に2件の最高度不具合発覚」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-18
「F-22とF-35のデータ中継装置を搭載へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-22
「KC-46空中給油機を一部の任務に投入開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-25
「恒久対策は2023-24年から」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-30
「今度は燃料漏れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-31-1
「やっぱりだめで更に1年遅れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-04
「重大不具合について3月に手打ち!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-21
「空軍トップが新CEOに改善要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03
「ついに空中給油の民間委託検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-15
「貨物ロックに新たな重大不具合」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-12
「海外売り込みに必死なボーイング」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-22-1
「米空軍2度目の受領拒否」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-1
「機体受領再開も不信感・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-1
「米空軍がKC-46受け入れ中断」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-3
「不具合付きの初号機受領」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-12-2
「初号機納入が更に遅れ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20
「10月納入直前に不具合2つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19
「10月に初号機納入を発表」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-22
「開発が更に遅れ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-11-1
KC-X,Y,Zの考え方と整備
「つなぎ給油機KC-YにロッキードがLMXTで名乗り」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
「つなぎ空中給油機KC-Yに着手へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-05
「2016年当時の空中給油機後継プラン」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-09-22
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
戦闘地域の本格作戦には投入できない状態なのに
11月9日、米空軍が50機目となるKC-46空中給油機を受領し、現時点での総製造機数177機の28%を受領しました。また10月にF-15とF-16への空中給油を許可したことから、給油対象機の62%に給油可能となっています
ただKC-46は約3割を受領した現時点でも完全な状態ではなく、要求性能を満たせない状態で、その解消の目途が立っていない状態です
操縦席後方の給油操作員が使用する給油操作表示装置(RVS:remote vision system)が給油対象機を必要なレベルで表示できず、不具合解消対策もとりあえずの「当面のソフト改修」でしのいでいる状況で、2023-24年から実施予定の恒久対策(RVS2.0の搭載)はまだ内容が詰まっていない状態です
そんな中でもKC-135やKC-10の老朽化は進み、維持整備費の高騰と整備員への負荷増大で部隊運用を圧迫しており、作戦地域での活動でない優しい任務にKC-46を投入可能とすることで「その場をしのぐ」苦肉の策に米空軍は出ています
2021年7月に米海軍機に多いセンターラインdrogueシステム使用の給油を許可し、8月にはB-52とC-17輸送機、更にKC-46に対する給油任務を許可しました。
そして10月には対象機の多いF-15とF-16への給油を許可することで、空中受油可能機の62%に空中給油可能なまでになり、KC-135とKC-10への負荷軽減に寄与できることになっています
その場しのぎの対策で、どんどん機体を製造し、先日日本の美保基地にも日本用の1番機が到着したわけです。
これまでのグダグダの経緯は過去記事をご覧いただくとして、引き続き、生暖かく見守りたいと思います
KC-46関連の記事
「KC-46空中給油機に更に2件の最高度不具合発覚」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-18
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「米空軍2度目の受領拒否」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-1
「機体受領再開も不信感・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-1
「米空軍がKC-46受け入れ中断」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-3
「不具合付きの初号機受領」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-12-2
「初号機納入が更に遅れ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20
「10月納入直前に不具合2つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19
「10月に初号機納入を発表」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-22
「開発が更に遅れ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-11-1
KC-X,Y,Zの考え方と整備
「つなぎ給油機KC-YにロッキードがLMXTで名乗り」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
「つなぎ空中給油機KC-Yに着手へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-05
「2016年当時の空中給油機後継プラン」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-09-22
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タグ:KC-46
英空軍が非化石合成燃料でギネス認定初飛行 [ふと考えること]
英空軍は本気です。2040年までに温室効果ガス排出ゼロ目標
まず2025年には初等練習機基地でゼロ排出達成目標
11月2日のギネス認定飛行は英空軍も資金提供
11月17日、英空軍テストパイロットが操縦する小型プロペラ機が、水や大気から原料を抽出し、自然エネルギーを用いて製造した非化石の100%人工合成燃料(synthetic fuel)で、世界初の飛行に成功(11月2日)したとして、ギネスブックから認定を受けたと英空軍が発表しました。
この人工合成燃料(製品名UL91 fuel、通称ZERO SynAvGas)を開発したのは、自動車レースF-1で成功したエンジニアPaddy Lowe氏と王立ロンドンカレッジの化学工学部長Nilay Shah氏が経営する「Zero Petroleum」社で、同燃料はスコットランドの特設工場(後にOrkney Islands)で製造されたものをそのまま特殊加工せず、既存のセスナ機に使用したとのことです
初飛行で操縦した英空軍テストパイロットPeter Hackett大佐の操縦後の感想や、同セスナ機にエンジンを提供している企業Rotax社の計測から、通常の化石燃料使用時と比較しても、エンジン出力や一般パフォーマンスに全く影響がないことが示されたようです
ここまで報道を読んで、へそ曲がりなまんぐーすは、世の中の風を読んだ、又は英国で開催されたCOP26に合わせたパフォーマンスか・・・・と斜に構え、途中で記事を読むのを止めようかと思ったのですが、記事末尾の文字を見て驚きました
「英空軍は、2025年までに最初のゼロエミッション基地を実現し、2040年までに英空軍として温室効果ガス排出ゼロを達成するとの計画を立てており、11月23日にMike Wigston空軍参謀総長が、ゼロ排出に向けた英空軍計画を発表する」・・・・びっくりです
17日付Defense-News記事によれば
●この世界初の飛行を実現した「Project Martin」は、英空軍の温室化効果ガス削減をリードする英空軍緊急能力改善室(Rapid Capabilities Office)が取りまとめて英空軍予算もその一部を支え、「Zero Petroleum」社の全面的協力の下で行われている
●英空軍は初飛行成功を受け、「この技術は飛行中のCO2排出量を8-9割削減する可能性を秘めており、このような人工合成燃料で将来のジェット機を飛ばそうとする英空軍ビジョンを支えるものとなる」との声明を出している
●英空軍は以前から、石油ベース航空燃料からの転換開始の意志を示しており、初等練習機である「Grob Aircraft T1」を温室効果ガス排出ゼロ燃料で運用させる英空軍最初の機体にする検討を進めている
●「Zero Petroleum」社によって開発され提供された人工合成燃料(製品名UL91 fuel、通称ZERO SynAvGas)は、水から「水素」を、大気から「炭素」を抽出して原料とし、燃料製造過程で必要なエネルギーは、太陽光や風力由来の電力で作られている
●Jeremy Quin英国防調達相はこれら取り組みについて、「英国軍が作戦任務遂行に並行して、「ゼロ排出」を達成するとの決意を示すものである。そのために高性能な航空機には代替のUL91のような液体燃料が不可欠だ」、「航空機パフォーマンスに影響を与えない有効な合成燃料を研究開発する多くの取り組みの最初の成果だ」と本プロジェクトの意義を説明した
●英空軍は、2025年までに最初のゼロエミッション基地を実現し、2040年までに英空軍として温室効果ガス排出ゼロを達成するとの計画を立てており、11月23日にMike Wigston空軍参謀総長が、ゼロ排出に向けた空軍の計画を発表する予定である
////////////////////////////////////////////////////
意地悪なまんぐーすは、この人工合成燃料(製品名UL91 fuel、通称ZERO SynAvGas)の価格に関する情報を記事内で探しましたが、見当たりませんでした。恐らく相当高価であることは間違いないでしょう。
それでもです。英空軍による「2040年までにゼロエミッション」との目標設定と、英空軍参謀総長自ら行う計画発表プレゼン(23日予定)の決意には、衷心から敬意を表したいと思います
先日は、米国防省が電気自動車やハイブリッド車導入を推進するとの記事をご紹介しましたが、空軍が航空機について言及するのは英国が世界で初めてだと思います。
排出ゼロや気候変動への取組み関連
「米国防省は電気自動車&ハイブリット車導入推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-10
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23-1
「米国防省が気候変動対処構想CAP(Climate Adaptation Plan)発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-08
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07
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まず2025年には初等練習機基地でゼロ排出達成目標
11月2日のギネス認定飛行は英空軍も資金提供
11月17日、英空軍テストパイロットが操縦する小型プロペラ機が、水や大気から原料を抽出し、自然エネルギーを用いて製造した非化石の100%人工合成燃料(synthetic fuel)で、世界初の飛行に成功(11月2日)したとして、ギネスブックから認定を受けたと英空軍が発表しました。
この人工合成燃料(製品名UL91 fuel、通称ZERO SynAvGas)を開発したのは、自動車レースF-1で成功したエンジニアPaddy Lowe氏と王立ロンドンカレッジの化学工学部長Nilay Shah氏が経営する「Zero Petroleum」社で、同燃料はスコットランドの特設工場(後にOrkney Islands)で製造されたものをそのまま特殊加工せず、既存のセスナ機に使用したとのことです
初飛行で操縦した英空軍テストパイロットPeter Hackett大佐の操縦後の感想や、同セスナ機にエンジンを提供している企業Rotax社の計測から、通常の化石燃料使用時と比較しても、エンジン出力や一般パフォーマンスに全く影響がないことが示されたようです
ここまで報道を読んで、へそ曲がりなまんぐーすは、世の中の風を読んだ、又は英国で開催されたCOP26に合わせたパフォーマンスか・・・・と斜に構え、途中で記事を読むのを止めようかと思ったのですが、記事末尾の文字を見て驚きました
「英空軍は、2025年までに最初のゼロエミッション基地を実現し、2040年までに英空軍として温室効果ガス排出ゼロを達成するとの計画を立てており、11月23日にMike Wigston空軍参謀総長が、ゼロ排出に向けた英空軍計画を発表する」・・・・びっくりです
17日付Defense-News記事によれば
●この世界初の飛行を実現した「Project Martin」は、英空軍の温室化効果ガス削減をリードする英空軍緊急能力改善室(Rapid Capabilities Office)が取りまとめて英空軍予算もその一部を支え、「Zero Petroleum」社の全面的協力の下で行われている
●英空軍は初飛行成功を受け、「この技術は飛行中のCO2排出量を8-9割削減する可能性を秘めており、このような人工合成燃料で将来のジェット機を飛ばそうとする英空軍ビジョンを支えるものとなる」との声明を出している
●英空軍は以前から、石油ベース航空燃料からの転換開始の意志を示しており、初等練習機である「Grob Aircraft T1」を温室効果ガス排出ゼロ燃料で運用させる英空軍最初の機体にする検討を進めている
●「Zero Petroleum」社によって開発され提供された人工合成燃料(製品名UL91 fuel、通称ZERO SynAvGas)は、水から「水素」を、大気から「炭素」を抽出して原料とし、燃料製造過程で必要なエネルギーは、太陽光や風力由来の電力で作られている
●Jeremy Quin英国防調達相はこれら取り組みについて、「英国軍が作戦任務遂行に並行して、「ゼロ排出」を達成するとの決意を示すものである。そのために高性能な航空機には代替のUL91のような液体燃料が不可欠だ」、「航空機パフォーマンスに影響を与えない有効な合成燃料を研究開発する多くの取り組みの最初の成果だ」と本プロジェクトの意義を説明した
●英空軍は、2025年までに最初のゼロエミッション基地を実現し、2040年までに英空軍として温室効果ガス排出ゼロを達成するとの計画を立てており、11月23日にMike Wigston空軍参謀総長が、ゼロ排出に向けた空軍の計画を発表する予定である
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意地悪なまんぐーすは、この人工合成燃料(製品名UL91 fuel、通称ZERO SynAvGas)の価格に関する情報を記事内で探しましたが、見当たりませんでした。恐らく相当高価であることは間違いないでしょう。
それでもです。英空軍による「2040年までにゼロエミッション」との目標設定と、英空軍参謀総長自ら行う計画発表プレゼン(23日予定)の決意には、衷心から敬意を表したいと思います
先日は、米国防省が電気自動車やハイブリッド車導入を推進するとの記事をご紹介しましたが、空軍が航空機について言及するのは英国が世界で初めてだと思います。
排出ゼロや気候変動への取組み関連
「米国防省は電気自動車&ハイブリット車導入推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-10
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23-1
「米国防省が気候変動対処構想CAP(Climate Adaptation Plan)発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-08
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無人機X-61をC-130輸送機が空中発進&回収成功 [米国防省高官]
X-61 Gremlins Air Vehiclesとの全長4mの多用途無人機
飛行中のC-130輸送機がマジックハンドでつかみ取る
11月5日、米国防省最高位の研究開発機関DARPAが、C-130の翼下から発進した多用途無人機X-61 Gremlins Air Vehiclesを、同じC-130輸送機のマジックハンドで飛翔中に回収することに成功したと発表しました
このX-61 Gremlinsは、2016年から第1段階デモ開発が始まり、2018年に第3段階開発プログラムを開始したターボファン推進の無人機で、光学センサーや赤外線カメラ、電子戦装備や兵器など多様な装備兵器を搭載可能で、最高速度マック0.6、航続距離560㎞の性能を有すると言われています
また、既存の航空機の兵器搭載ポイントに装着輸送&発進可能に設計されており、半自立飛行が可能で有人母機や地上管制施設1か所から同時に8機をコントロールできることから、「無人機の群れ」として行動する技術開発実証を狙っているようです
X-61の概要
・全長4.2m、Wingspan 3.5m、幅高さ各約50cm、重さ680㎏
以下のYouTube映像でご覧いただけるように、X-61は自立飛行でC-130に近接して編隊飛行し、マジックハンドで回収されやすい位置を維持して飛行しており、DARPAが発表声明で述べたように「長年に渡るハードワークの成果」と思われます
X-61のC-130による空中回収
5日付米空軍協会web記事によれば
●DARPAのX-61責任者Paul Calhoun中佐は、「回収実験により、安全で信頼に足る空中回収技術を証明できた」、「回収した機体を修復し、24時間以内に再飛行させることが可能なことも実証した」と試験飛行を説明し、
●「空中発進可能な自立型無人機が空中回収可能となれば、劇的に無人機の活動距離が延伸でき、その可能性が広がる」とその意義を語った
●5機製造されたX-61は、2021年1月に初めての飛行試験を行ってデータリンクや飛行性能など無人機としての基本性能を確認した以降、電気系統の故障等により2機を失っているが、現有3機で試験開発を継続し、30分以内に4機を空中回収可能なことを実証することは可能だとDARPAは説明している
///////////////////////////////////////////
米国防省の無人機開発について久々にご紹介したような気がしますが、無人機開発の動き全体がどうなっているのかさっぱり表に出てきません。無人機からの防御については色々話が出ていますが・・・
無人機の群れ関連
「優先項目の無人機の群れ苦戦」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-30
「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26
「無人機の群れに空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30
「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1
無人機ウイングマン構想
「頭脳ACSを2機種目で試験成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-02
「Skyborg構想の頭脳ACSで初飛行2時間」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-06
「多用途ドローン投下試験成功」→https://holylandtokyo.com/2021/04/09/103/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「無人ウイングマンのデモ機選定開始」→https://holylandtokyo.com/2020/05/24/679/
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1
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飛行中のC-130輸送機がマジックハンドでつかみ取る
11月5日、米国防省最高位の研究開発機関DARPAが、C-130の翼下から発進した多用途無人機X-61 Gremlins Air Vehiclesを、同じC-130輸送機のマジックハンドで飛翔中に回収することに成功したと発表しました
このX-61 Gremlinsは、2016年から第1段階デモ開発が始まり、2018年に第3段階開発プログラムを開始したターボファン推進の無人機で、光学センサーや赤外線カメラ、電子戦装備や兵器など多様な装備兵器を搭載可能で、最高速度マック0.6、航続距離560㎞の性能を有すると言われています
また、既存の航空機の兵器搭載ポイントに装着輸送&発進可能に設計されており、半自立飛行が可能で有人母機や地上管制施設1か所から同時に8機をコントロールできることから、「無人機の群れ」として行動する技術開発実証を狙っているようです
X-61の概要
・全長4.2m、Wingspan 3.5m、幅高さ各約50cm、重さ680㎏
以下のYouTube映像でご覧いただけるように、X-61は自立飛行でC-130に近接して編隊飛行し、マジックハンドで回収されやすい位置を維持して飛行しており、DARPAが発表声明で述べたように「長年に渡るハードワークの成果」と思われます
X-61のC-130による空中回収
5日付米空軍協会web記事によれば
●DARPAのX-61責任者Paul Calhoun中佐は、「回収実験により、安全で信頼に足る空中回収技術を証明できた」、「回収した機体を修復し、24時間以内に再飛行させることが可能なことも実証した」と試験飛行を説明し、
●「空中発進可能な自立型無人機が空中回収可能となれば、劇的に無人機の活動距離が延伸でき、その可能性が広がる」とその意義を語った
●5機製造されたX-61は、2021年1月に初めての飛行試験を行ってデータリンクや飛行性能など無人機としての基本性能を確認した以降、電気系統の故障等により2機を失っているが、現有3機で試験開発を継続し、30分以内に4機を空中回収可能なことを実証することは可能だとDARPAは説明している
///////////////////////////////////////////
米国防省の無人機開発について久々にご紹介したような気がしますが、無人機開発の動き全体がどうなっているのかさっぱり表に出てきません。無人機からの防御については色々話が出ていますが・・・
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「無人機の群れ第7世代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-26
「無人機の群れに空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30
「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1
無人機ウイングマン構想
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「多用途ドローン投下試験成功」→https://holylandtokyo.com/2021/04/09/103/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「無人ウイングマンのデモ機選定開始」→https://holylandtokyo.com/2020/05/24/679/
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1
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露の衛星兵器試験で発生のデブリで国際宇宙S危険に [サイバーと宇宙]
11月15日にロシアが無通告で衛星破壊兵器試験
少なくとも1500のデブリ拡散
国際宇宙ステーションが退避動作
11月15日にロシアが衛星破壊兵器のテストで自国の衛星を破壊し、破壊された衛星の破片(デブリ)が周辺に拡散して国際宇宙ステーション(ISS)が当該軌道周辺を通過する90分ごとに退避(take cover)を余儀なくされていると米国務省が明らかにしました
破壊されたロシア衛星は「Cosmos 1408」らしく、高度500㎞の軌道を周回していたもので、国際宇宙ステーション(ISS)軌道の上空80㎞の軌道を周回の衛星らしいですが、ロシア衛星破壊ミサイルの直撃で、確認できる大きさのデブリだけで1300以上のデブリが拡散しており、ISSが当該デブリ近傍を通過するごとにISS退避&防護行動を強いられている模様です
衛星破壊兵器実験とデブリ問題は、2007年に中国が行った気象衛星での実験で大きな問題として取り上げられ、当時発生した追尾可能なデブリ約3500個の内、今でも3000個近くが宇宙空間に漂っていることが示すように、、影響が長期にわたる深刻な課題です。なおこの際は、中国指導層が実験の実施を承知しておらず、国際的に問題になって初めて知らされた可能性が高いことでも物議をかもしました
最近では、2019年にインドが衛星破壊兵器の実験を行いましたが、この際インド側は低高度軌道の衛星が破壊対象であり、全てのデブリは数週間で大気圏に突入等すると主張していました
ロシアは衛星破壊兵器の試験を最近でも行っていますが、攻撃目標に衝突する直前で迎撃を止めたり、デブリが生じないような形でのテストを実施してきており、なぜこのようなデブリを宇宙にばらまく実験を行ったのか意図不明です。「間違ってぶつけてしまった説」も出てきそうな予感です
15日付Defense-News記事によれば
●15日、米国務省のNed Price報道官は会見で、「15日、ロシアが無謀な地上発射ミサイルによる衛星破壊実験を行い、現在までに1500以上の追跡可能なデブリが宇宙に拡散され、より小さなデブリも含めて、全世界の利害を損ねる結果になっている」と訴え、ISSもデブリが漂う空間近傍を通過する90分ごとに退避行動に迫られているとロシアを非難した
●また同報道官は「ロシアによる危険で無責任な行為は、宇宙空間の状態を長期にわたり悪化させるものであり、宇宙空間の兵器利用に反対するロシアの姿勢が如何に偽善的でいい加減なものかを示すものでもある」と非難した
●国防省のJohn Kirby報道官は、本実験についてロシアから事前の通知等は一切なかったと述べ、「国防省は国務省と今朝の実験について強い懸念を共有しており、多数のデブリの影響が国際宇宙ステーションにまで及んでいる事態を憂慮している」、「本件は米国のみならず、宇宙を利用する全ての国々にとっての脅威である」、「改めて全ての関係国が責任を果たすような規範が必要だとの米国の立場を確認しておく」と会見で言及した
////////////////////////////////////////////////////
ロシアも参画し、ロシア人宇宙飛行士も利用している国際宇宙ステーション(ISS)活動にも影響が出るような実験を、なぜロシアが行う必要があったのか「?」です
観測が進むにつれ、デブリの量が増えそうで心配です。ロシア側の対応や、より詳細な専門家の分析を待ちたいと思います
ロシアの宇宙兵器疑惑
「ロシア衛星がなどの物体射出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-24
「4月中旬のロシア衛星破壊兵器試験を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-17
「怪しげなロシア衛星問題提起」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-04
「再び同高官が指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-26
宇宙兵器問題への取り組み
「国防宇宙戦略を発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19
「提案:宇宙兵器の6分類」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-28
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少なくとも1500のデブリ拡散
国際宇宙ステーションが退避動作
11月15日にロシアが衛星破壊兵器のテストで自国の衛星を破壊し、破壊された衛星の破片(デブリ)が周辺に拡散して国際宇宙ステーション(ISS)が当該軌道周辺を通過する90分ごとに退避(take cover)を余儀なくされていると米国務省が明らかにしました
破壊されたロシア衛星は「Cosmos 1408」らしく、高度500㎞の軌道を周回していたもので、国際宇宙ステーション(ISS)軌道の上空80㎞の軌道を周回の衛星らしいですが、ロシア衛星破壊ミサイルの直撃で、確認できる大きさのデブリだけで1300以上のデブリが拡散しており、ISSが当該デブリ近傍を通過するごとにISS退避&防護行動を強いられている模様です
衛星破壊兵器実験とデブリ問題は、2007年に中国が行った気象衛星での実験で大きな問題として取り上げられ、当時発生した追尾可能なデブリ約3500個の内、今でも3000個近くが宇宙空間に漂っていることが示すように、、影響が長期にわたる深刻な課題です。なおこの際は、中国指導層が実験の実施を承知しておらず、国際的に問題になって初めて知らされた可能性が高いことでも物議をかもしました
最近では、2019年にインドが衛星破壊兵器の実験を行いましたが、この際インド側は低高度軌道の衛星が破壊対象であり、全てのデブリは数週間で大気圏に突入等すると主張していました
ロシアは衛星破壊兵器の試験を最近でも行っていますが、攻撃目標に衝突する直前で迎撃を止めたり、デブリが生じないような形でのテストを実施してきており、なぜこのようなデブリを宇宙にばらまく実験を行ったのか意図不明です。「間違ってぶつけてしまった説」も出てきそうな予感です
15日付Defense-News記事によれば
●15日、米国務省のNed Price報道官は会見で、「15日、ロシアが無謀な地上発射ミサイルによる衛星破壊実験を行い、現在までに1500以上の追跡可能なデブリが宇宙に拡散され、より小さなデブリも含めて、全世界の利害を損ねる結果になっている」と訴え、ISSもデブリが漂う空間近傍を通過する90分ごとに退避行動に迫られているとロシアを非難した
●また同報道官は「ロシアによる危険で無責任な行為は、宇宙空間の状態を長期にわたり悪化させるものであり、宇宙空間の兵器利用に反対するロシアの姿勢が如何に偽善的でいい加減なものかを示すものでもある」と非難した
●国防省のJohn Kirby報道官は、本実験についてロシアから事前の通知等は一切なかったと述べ、「国防省は国務省と今朝の実験について強い懸念を共有しており、多数のデブリの影響が国際宇宙ステーションにまで及んでいる事態を憂慮している」、「本件は米国のみならず、宇宙を利用する全ての国々にとっての脅威である」、「改めて全ての関係国が責任を果たすような規範が必要だとの米国の立場を確認しておく」と会見で言及した
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ロシアも参画し、ロシア人宇宙飛行士も利用している国際宇宙ステーション(ISS)活動にも影響が出るような実験を、なぜロシアが行う必要があったのか「?」です
観測が進むにつれ、デブリの量が増えそうで心配です。ロシア側の対応や、より詳細な専門家の分析を待ちたいと思います
ロシアの宇宙兵器疑惑
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「再び同高官が指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-26
宇宙兵器問題への取り組み
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米空軍がF-22能力向上近代化の1兆円契約発表 [米空軍]
全ての契約完了予定は2031年10月末
F-22は2030年から退役開始との構想との関係不明
11月5日、米空軍はロッキード社と、約1兆2000億円規模のF-22能力向上近代化プログラムARES(Advanced Raptor Enhancement and Sustainment)契約を結んだと発表しました。
国防省発表によれば、契約はF-22製造企業であるロッキード社単体と結ばれ、F-22の能力向上、アップグレード、改修修理が含まれ、関連する兵站支援や関連パーツの調達も同社に依頼する形になっているようです
機体の改修はテキサス州Fort Worth工場で実施され、全ての契約事項が履行されれば、2031年10月31日までに完了することになっているとのことです
ただ、2021年5月頃にBrown空軍参謀総長などの主要幹部が語っていた、2022年度予算要求の背景にある「近未来戦闘機構想」によれば、次期制空機NGADが導入開始となる2030年頃からF-22は退役開始することとなっており、現在186機を保有するF-22の何機に対しどの程度の能力向上改修を行うのか不明です
単純に1兆2000億円を186機で割ると1機あたり約64億円を投入することとなり、米議会の理解が得られているのか等、色々な「?」が浮かぶところです
今年5月にBrown参謀総長は「F-22はNGADが導入&運用されるまでの橋渡し役(bridge)だ」と表現し、同時期にClinton Hinote空軍司令部計画部長は「F-22は1991年に開発が始まった機体で、増大しつつある中国脅威から台湾や日本やフィリピン等を守るには適切な装備ではなくなるだろう」と語っていたところです
高価になると言われているNGADの開発&導入タイミングや、米国防省全体での予算配分優先順位に左右される将来の戦闘機体系構想ですが、以下では背景として押さえておくべき5月時点での近未来の戦闘機構想を、5月に米空軍協会が報じた記事から復習しておきます
米空軍2022年度予算要求を説明するための「論点ペーパー」の内容抜粋として報じられた、米空軍の描いている「近未来の戦闘機構想」です
2021年5月14日付米空軍協会web記事
●米空軍が旧式アセット早期引退を急ぐ背景
--- 航空アセットの44%が当初の運用寿命オーバーで使用中
--- 米空軍航空機の平均年齢は28.6歳 老朽化
--- ちなみに米陸軍は15.3歳、海軍は14.4歳
--- 豪空軍は8.9歳、英空軍は16.6歳
●以下の早期引退進め、近代化加速でも、年間7-8千億円資金不足
●米空軍が2026年までに退役させたい戦闘機421機
(以下の退役規模は2010年初頭の250機以来の規模)
--- F-15C/Dを234機、F-16を124機(残り812機に)
--- A-10を63機 (ただし2023年までに:現281機)
●一方で2026年までに新規導入希望304機
--- F-35Aを220機、F-15EXを84機
●F-22は2030年から退役開始
--- NGADが後継となる方向
--- 今も近代化改修中も、20年後はハイエンドで戦えない
●F-15EXの方向性
--- 2022年に11機、23年に14機、その後年19機導入
--- 遠方からハイエンド紛争に参画、それ以外では制空任務も
--- 極超音速兵器や、空対地ミサイルAGM-183A・ARRW搭載へ
--- また中国の長射程空対空ミサイルPL-15に対抗
長射程空対空ミサイルAIM-260搭載か
●維持費高止まりのF-35調達ペースは
--- 2022年度は48機要求も、以後2023-26年は年43機ペースに落とす
--- これにより2023-26年調達機数を240機から220機に削減
--- 当初の年間1機維持費見積4.5億円だったが、現時点では2036年でも8.5億円
--- F-16とA-10全ての後継機のはずが、維持費下がらず方向転換へ
--- 一応空軍は「Block4」が完成したら調達ペース上げると言い訳
●2035年頃から導入MR-X(malti-role Fighter)
--- 約600機のF-16後継をイメージ。6-8年後から検討開始
--- デジタル設計技術導入で、開発期間短く、短期間使用で維持費抑制
--- 早いサイクルで次世代機導入で陳腐化避ける
--- ハイエンド紛争には限定的役割も、多用途で任務あり
////////////////////////////////////////////////////////////
ご紹介した5月頃の米空軍幹部の発言や構想報道以後、戦闘機族のボスと言われるKelly空軍戦闘コマンド司令官が9月に、「高度に情報管理されたNGADについて、何時、どの程度まで情報を公開できるかは私にもわからない。その要求性能や能力について広く知ってもらえれば、より多くのご支援やご理解を頂けると思っているが、その段階にはない」、
また「今我々は欧州戦線思考や80-90年代思考やシングルバンドセンサー思考を超える必要がある。ロシアは依然として脅威だが、我々は新たな脅威に直面しており、NGADはアジア太平洋地域における距離克服やより広い電磁スペクトラム活用や対処の課題に向き合う必要がある。より遠方を監視し、戦い、勝ち抜く必要があるからだ」と語っていますが、他の戦闘機との関係にまで言及していません
今後の展開を引き続き生暖かく見守りましょう
戦闘機構成検討TacAir study関連
「近未来の戦闘機構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-16
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
「戦闘機混合比や5世代マイナス機検討」→https://holylandtokyo.com/2021/02/22/266/
F-22の次?:次期制空機NGAD関連の記事
「戦闘機族ボスが再び現状を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-07
「戦闘機族ボスがNGADへの危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/05/154/
「SCIF使用困難で戦闘機開発危機」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-12
「次期制空機のデモ機を既に初飛行済」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-16
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F-22は2030年から退役開始との構想との関係不明
11月5日、米空軍はロッキード社と、約1兆2000億円規模のF-22能力向上近代化プログラムARES(Advanced Raptor Enhancement and Sustainment)契約を結んだと発表しました。
国防省発表によれば、契約はF-22製造企業であるロッキード社単体と結ばれ、F-22の能力向上、アップグレード、改修修理が含まれ、関連する兵站支援や関連パーツの調達も同社に依頼する形になっているようです
機体の改修はテキサス州Fort Worth工場で実施され、全ての契約事項が履行されれば、2031年10月31日までに完了することになっているとのことです
ただ、2021年5月頃にBrown空軍参謀総長などの主要幹部が語っていた、2022年度予算要求の背景にある「近未来戦闘機構想」によれば、次期制空機NGADが導入開始となる2030年頃からF-22は退役開始することとなっており、現在186機を保有するF-22の何機に対しどの程度の能力向上改修を行うのか不明です
単純に1兆2000億円を186機で割ると1機あたり約64億円を投入することとなり、米議会の理解が得られているのか等、色々な「?」が浮かぶところです
今年5月にBrown参謀総長は「F-22はNGADが導入&運用されるまでの橋渡し役(bridge)だ」と表現し、同時期にClinton Hinote空軍司令部計画部長は「F-22は1991年に開発が始まった機体で、増大しつつある中国脅威から台湾や日本やフィリピン等を守るには適切な装備ではなくなるだろう」と語っていたところです
高価になると言われているNGADの開発&導入タイミングや、米国防省全体での予算配分優先順位に左右される将来の戦闘機体系構想ですが、以下では背景として押さえておくべき5月時点での近未来の戦闘機構想を、5月に米空軍協会が報じた記事から復習しておきます
米空軍2022年度予算要求を説明するための「論点ペーパー」の内容抜粋として報じられた、米空軍の描いている「近未来の戦闘機構想」です
2021年5月14日付米空軍協会web記事
●米空軍が旧式アセット早期引退を急ぐ背景
--- 航空アセットの44%が当初の運用寿命オーバーで使用中
--- 米空軍航空機の平均年齢は28.6歳 老朽化
--- ちなみに米陸軍は15.3歳、海軍は14.4歳
--- 豪空軍は8.9歳、英空軍は16.6歳
●以下の早期引退進め、近代化加速でも、年間7-8千億円資金不足
●米空軍が2026年までに退役させたい戦闘機421機
(以下の退役規模は2010年初頭の250機以来の規模)
--- F-15C/Dを234機、F-16を124機(残り812機に)
--- A-10を63機 (ただし2023年までに:現281機)
●一方で2026年までに新規導入希望304機
--- F-35Aを220機、F-15EXを84機
●F-22は2030年から退役開始
--- NGADが後継となる方向
--- 今も近代化改修中も、20年後はハイエンドで戦えない
●F-15EXの方向性
--- 2022年に11機、23年に14機、その後年19機導入
--- 遠方からハイエンド紛争に参画、それ以外では制空任務も
--- 極超音速兵器や、空対地ミサイルAGM-183A・ARRW搭載へ
--- また中国の長射程空対空ミサイルPL-15に対抗
長射程空対空ミサイルAIM-260搭載か
●維持費高止まりのF-35調達ペースは
--- 2022年度は48機要求も、以後2023-26年は年43機ペースに落とす
--- これにより2023-26年調達機数を240機から220機に削減
--- 当初の年間1機維持費見積4.5億円だったが、現時点では2036年でも8.5億円
--- F-16とA-10全ての後継機のはずが、維持費下がらず方向転換へ
--- 一応空軍は「Block4」が完成したら調達ペース上げると言い訳
●2035年頃から導入MR-X(malti-role Fighter)
--- 約600機のF-16後継をイメージ。6-8年後から検討開始
--- デジタル設計技術導入で、開発期間短く、短期間使用で維持費抑制
--- 早いサイクルで次世代機導入で陳腐化避ける
--- ハイエンド紛争には限定的役割も、多用途で任務あり
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ご紹介した5月頃の米空軍幹部の発言や構想報道以後、戦闘機族のボスと言われるKelly空軍戦闘コマンド司令官が9月に、「高度に情報管理されたNGADについて、何時、どの程度まで情報を公開できるかは私にもわからない。その要求性能や能力について広く知ってもらえれば、より多くのご支援やご理解を頂けると思っているが、その段階にはない」、
また「今我々は欧州戦線思考や80-90年代思考やシングルバンドセンサー思考を超える必要がある。ロシアは依然として脅威だが、我々は新たな脅威に直面しており、NGADはアジア太平洋地域における距離克服やより広い電磁スペクトラム活用や対処の課題に向き合う必要がある。より遠方を監視し、戦い、勝ち抜く必要があるからだ」と語っていますが、他の戦闘機との関係にまで言及していません
今後の展開を引き続き生暖かく見守りましょう
戦闘機構成検討TacAir study関連
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F-22の次?:次期制空機NGAD関連の記事
「戦闘機族ボスが再び現状を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-07
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国防副長官がハイブリッドや電気自動車の導入推進と [米国防省高官]
戦術車両はまずハイブリッド車へ
基地内使用の非戦闘車両は直接電気自動車へ
ただ、カギとなるバッテリー生産の2/3が中国とのジレンマ
11月8日、Hicks国防副長官が講演で、バイデン政権の温室効果ガス削減方針に沿って、政府機関で最大の化石燃料使用組織である国防省は、ハイブリット車や電気自動車の導入を積極的に進めると語り、17万両の基地内利用非戦闘車両は電気自動車に、戦術車両はまずハイブリッド車化を目指すと語りました
米政府機関の中で最大の車両保有組織は米国郵政サービスだそうですが、化石燃料使用量はダントツで国防省がトップで、原因は燃費の良くないHumveeのような戦術車両を陸軍だけで24万両以上も保有しているからです。
オバマ政権時にも化石燃料消費削減への取り組みがあり、特に当時のMabus海軍長官は熱心で、2009年に発表したプランでは、2020年までに海軍と海兵隊の化石燃料消費量を5割削減するとの高い目標を掲げ、トウモロコシや動物の脂肪や排泄物から代替燃料を得る計画をぶち上げました
しかし、その後の原油価格の下落や代替燃料確保の困難から計画は行き詰まり、オバマ政権の終わりと共に計画は消えてしまいました。
Hicks副長官のハイブリッド車や電気自動車導入促進は、オバマ政権当時の動きと重なるイメージがありますが、当時と同様にその実現は容易ではありません。
9日付Military.comは記事はHicks副長官構想の課題として、ハイブリッド車や電気自動車導入のカギを握るリチウムイオン電池の2/3を中国が供給している点や、戦場での電力供給手法の確立を上げていますが、どちらも重い課題で、米国産業界など民間の知恵も動員して取り組みたいと副長官は語っていますが「道遠し」の印象です
9日付Military.com記事によれば
●Hicks副長官は電気自動車導入メリットを、「電気自動車は静かで、熱発生量が少なく赤外線で捉えにくい一方で、信じられないレベルのトルクを確保できる。また車両の構成部品が少なく済むことから、車両維持整備のための兵站負担を軽減することが可能になる」と強調した
●同時に副長官は、このように電気自動車導入は軍事力拡大に寄与するが、民間企業の力を借りないと乗り越えられないハードルにも直面していると認めつつ、最先端の国防技術開発と自動車業界の技術革新が国防省プラン実現の鍵だと訴えた
●例えば米陸軍は、将来戦場での電力供給網を確保するため「new micro-grid technology」開発に取り組んでおり、米国自動車業界でもGMは2035年までにガソリン車を廃止するなど、ハイブリッド車や電気自動車への動きが業界全体で加速しており、そのような動きに期待している
●ただし、ここで重要なリチウムイオン電池は2つの問題を抱えている。一つは中国が世界の生産量の2/3を占めており、米国の計画はこのままだと中国に依存しなければならない点と、同電池が廃棄時に毒物になり環境に悪影響を与える可能性がある点である
●米国は同電池の生産量を固めるための施策を打ち始めているが、中国が10年に渡る莫大な投資で獲得した地位を超えることは容易ではない
●副長官は「市場にシグナルを送り、必要なプロセスが進むようにすることが必要だ」、「国防省としても国家安全保障の点からその重要性を訴え、米国で産業界を含めた動きが加速するように取り組んでいく」と語った
////////////////////////////////////////////
このような改革構想発表の際は、「・・・initiative」とか「・・・vision」との名称やキャッチフレーズが飛び出したりするのですが、少なくとも記事にはそのような言葉は出てきません
ところで、トヨタ自動車の豊田社長が訴えていた、電気自動車導入には電力を確保する必要があり、単純に温室効果ガス削減にはつながらない・・・との正論に、米国防省はどのように答えてくれるのでしょうか?
「熱発生量が少なく赤外線で捉えにくく、車両の構成部品が少なく済むことから、車両維持整備のための兵站負担を軽減することが可能」・・・とのメリットで突っ走るのでしょうか?
電気自動車導入など関連記事
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23-1
「米国防省が気候変動対処構想CAP(Climate Adaptation Plan)発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-08
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07
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基地内使用の非戦闘車両は直接電気自動車へ
ただ、カギとなるバッテリー生産の2/3が中国とのジレンマ
11月8日、Hicks国防副長官が講演で、バイデン政権の温室効果ガス削減方針に沿って、政府機関で最大の化石燃料使用組織である国防省は、ハイブリット車や電気自動車の導入を積極的に進めると語り、17万両の基地内利用非戦闘車両は電気自動車に、戦術車両はまずハイブリッド車化を目指すと語りました
米政府機関の中で最大の車両保有組織は米国郵政サービスだそうですが、化石燃料使用量はダントツで国防省がトップで、原因は燃費の良くないHumveeのような戦術車両を陸軍だけで24万両以上も保有しているからです。
オバマ政権時にも化石燃料消費削減への取り組みがあり、特に当時のMabus海軍長官は熱心で、2009年に発表したプランでは、2020年までに海軍と海兵隊の化石燃料消費量を5割削減するとの高い目標を掲げ、トウモロコシや動物の脂肪や排泄物から代替燃料を得る計画をぶち上げました
しかし、その後の原油価格の下落や代替燃料確保の困難から計画は行き詰まり、オバマ政権の終わりと共に計画は消えてしまいました。
Hicks副長官のハイブリッド車や電気自動車導入促進は、オバマ政権当時の動きと重なるイメージがありますが、当時と同様にその実現は容易ではありません。
9日付Military.comは記事はHicks副長官構想の課題として、ハイブリッド車や電気自動車導入のカギを握るリチウムイオン電池の2/3を中国が供給している点や、戦場での電力供給手法の確立を上げていますが、どちらも重い課題で、米国産業界など民間の知恵も動員して取り組みたいと副長官は語っていますが「道遠し」の印象です
9日付Military.com記事によれば
●Hicks副長官は電気自動車導入メリットを、「電気自動車は静かで、熱発生量が少なく赤外線で捉えにくい一方で、信じられないレベルのトルクを確保できる。また車両の構成部品が少なく済むことから、車両維持整備のための兵站負担を軽減することが可能になる」と強調した
●同時に副長官は、このように電気自動車導入は軍事力拡大に寄与するが、民間企業の力を借りないと乗り越えられないハードルにも直面していると認めつつ、最先端の国防技術開発と自動車業界の技術革新が国防省プラン実現の鍵だと訴えた
●例えば米陸軍は、将来戦場での電力供給網を確保するため「new micro-grid technology」開発に取り組んでおり、米国自動車業界でもGMは2035年までにガソリン車を廃止するなど、ハイブリッド車や電気自動車への動きが業界全体で加速しており、そのような動きに期待している
●ただし、ここで重要なリチウムイオン電池は2つの問題を抱えている。一つは中国が世界の生産量の2/3を占めており、米国の計画はこのままだと中国に依存しなければならない点と、同電池が廃棄時に毒物になり環境に悪影響を与える可能性がある点である
●米国は同電池の生産量を固めるための施策を打ち始めているが、中国が10年に渡る莫大な投資で獲得した地位を超えることは容易ではない
●副長官は「市場にシグナルを送り、必要なプロセスが進むようにすることが必要だ」、「国防省としても国家安全保障の点からその重要性を訴え、米国で産業界を含めた動きが加速するように取り組んでいく」と語った
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このような改革構想発表の際は、「・・・initiative」とか「・・・vision」との名称やキャッチフレーズが飛び出したりするのですが、少なくとも記事にはそのような言葉は出てきません
ところで、トヨタ自動車の豊田社長が訴えていた、電気自動車導入には電力を確保する必要があり、単純に温室効果ガス削減にはつながらない・・・との正論に、米国防省はどのように答えてくれるのでしょうか?
「熱発生量が少なく赤外線で捉えにくく、車両の構成部品が少なく済むことから、車両維持整備のための兵站負担を軽減することが可能」・・・とのメリットで突っ走るのでしょうか?
電気自動車導入など関連記事
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UAE空軍司令官視察:イスラエルで史上最大の多国間空軍演習 [安全保障全般]
米英仏伊独印ギリシャ&イスラエル戦闘機で
初の仏ラファエル、印ミラージュ、英戦闘機部隊@イスラエル
11月3日付Defense-Newsが、イスラエル応援団(一人は元イスラエルNSCトップ)寄稿のイスラエルとUAE等の関係強化に関する論考を掲載し、10月にイスラエルで実施された史上最大規模の多国間空軍演習「Blue Flag 2021」をUAE空軍司令官が視察した様子などを紹介しています
2020年秋にイスラエルとUAE&バーレーンの国交樹立文書「アブラハム合意」が署名され、対イランやイスラム過激派で利害が一致するイスラエルとアラブ諸国との関係改善が進み、イスラエルと以前から生暖かい国交があるエジプトやヨルダンに加え、モロッコやスーダンなどもイスラエルとの国交を開いた流れを受け継ぐ軍事協力強化の一環です
ご紹介する多国間空軍演習「Blue Flag 2021」の勢いに乗ってか、10月30日には、米空軍のB-1爆撃機がアラビア半島を周回する長距離飛行を行い、バーレーン、サウジアラビア、エジプトとイスラエルの戦闘機が交代交代でエスコートするような画期的なプレゼンス飛行も行ったようです
本日は、いろんな意味で時代の変化を感じる、10月開催の多国間空軍演習「Blue Flag 2021」の概要をご紹介しておきます
11月3日付Defense-Newsへの寄稿記事によれば
●多国間空軍演習「Blue Flag 2021」はイスラエルが開催された史上最大規模の多国間演習で、少なくとも8か国から数十機の戦闘機等と約1500名の各国空軍兵士が参加した。そして何よりも特筆されるべきは、UAE空軍司令官のIbrahim Nasser Mohammed al-Alawi空軍少将が演習視察にイスラエルを訪れたことである
●同演習への主要参加機は、イスラエルからF-35、F-15D、F-16C、仏空軍ラファエル、英空軍Tyhoon、イタリア空軍F-35とG550早期警戒機、独空軍Tyhoon、ギリシャ空軍F-16、そしてインド空軍ミラージュ2000である
●ちなみに、仏ラファエルと印ミラージュはイスラエル初展開であり、英空軍の戦闘機部隊がイスラエルに展開するのも初めてで、UAE空軍司令官視察だけでなく、色々な面で画期的な多国間演習となった。なお演習間、インドの外交担当大臣がイスラエルを訪問したことでも話題になった
●演習では、空対空戦闘や空対地攻撃の訓練が行われ、仮想敵役としてイスラエル空軍の第115アグレッサー部隊(F-16C)や無人機部隊やヘリ部隊、更にパトリオット防空ミサイル部隊も敵脅威を模擬するために参加した
●ギリシャやイタリアと言ったイスラエル近傍の国だけでなく、英仏軍機の参加は、複雑化する中東情勢にあって外交的なシグナルとしても重要であり、またドイツ軍機の傘下はホロコーストの歴史を超える関係強化の一つとして意義深い
/////////////////////////////////////
米中央軍はイスラエルと中東諸国との軍事関係強化を積極的に推進しており、米軍&エジプト&UAEで計画されている東地中海での海洋演習「Noble Dina」にイスラエル参加を模索したり、UAEでの陸軍演習「Iron Union」にイスラエルを招待するようUAEに働きかけると言われています
またギリシャが主催し、イスラエルも参加する空軍戦術演習「Iniochos exercise」に、エジプトやヨルダンをはじめ、UAE空軍を招くことも案として挙がっているようです
バイデン政権になって以降、「アブラハム合意」のモメーンタムが失われつつあるような気配があり、前政権が進めようと準備していた中東への無人機輸出や、UAEへのF-35輸出などが一向に進まず、米国防省の武器輸出担当官が「怒りの辞任」との報道もあり気になっていますが、現場の連携はどんどん進めていただきたいと思います
中東やイスラエル関連の記事
「国防省武器輸出担当が怒りの辞任」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-15
「米中央軍で対イランの動き2つ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-09
アブラハム合意の関連記事
「イスラエルが欧州軍から中央軍管轄に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-16
「政権交代前にUAEへのF-35契約署名へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-11
「イスラエルがUAEへのF-35に事実上合意」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-26
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初の仏ラファエル、印ミラージュ、英戦闘機部隊@イスラエル
11月3日付Defense-Newsが、イスラエル応援団(一人は元イスラエルNSCトップ)寄稿のイスラエルとUAE等の関係強化に関する論考を掲載し、10月にイスラエルで実施された史上最大規模の多国間空軍演習「Blue Flag 2021」をUAE空軍司令官が視察した様子などを紹介しています
2020年秋にイスラエルとUAE&バーレーンの国交樹立文書「アブラハム合意」が署名され、対イランやイスラム過激派で利害が一致するイスラエルとアラブ諸国との関係改善が進み、イスラエルと以前から生暖かい国交があるエジプトやヨルダンに加え、モロッコやスーダンなどもイスラエルとの国交を開いた流れを受け継ぐ軍事協力強化の一環です
ご紹介する多国間空軍演習「Blue Flag 2021」の勢いに乗ってか、10月30日には、米空軍のB-1爆撃機がアラビア半島を周回する長距離飛行を行い、バーレーン、サウジアラビア、エジプトとイスラエルの戦闘機が交代交代でエスコートするような画期的なプレゼンス飛行も行ったようです
本日は、いろんな意味で時代の変化を感じる、10月開催の多国間空軍演習「Blue Flag 2021」の概要をご紹介しておきます
11月3日付Defense-Newsへの寄稿記事によれば
●多国間空軍演習「Blue Flag 2021」はイスラエルが開催された史上最大規模の多国間演習で、少なくとも8か国から数十機の戦闘機等と約1500名の各国空軍兵士が参加した。そして何よりも特筆されるべきは、UAE空軍司令官のIbrahim Nasser Mohammed al-Alawi空軍少将が演習視察にイスラエルを訪れたことである
●同演習への主要参加機は、イスラエルからF-35、F-15D、F-16C、仏空軍ラファエル、英空軍Tyhoon、イタリア空軍F-35とG550早期警戒機、独空軍Tyhoon、ギリシャ空軍F-16、そしてインド空軍ミラージュ2000である
●ちなみに、仏ラファエルと印ミラージュはイスラエル初展開であり、英空軍の戦闘機部隊がイスラエルに展開するのも初めてで、UAE空軍司令官視察だけでなく、色々な面で画期的な多国間演習となった。なお演習間、インドの外交担当大臣がイスラエルを訪問したことでも話題になった
●演習では、空対空戦闘や空対地攻撃の訓練が行われ、仮想敵役としてイスラエル空軍の第115アグレッサー部隊(F-16C)や無人機部隊やヘリ部隊、更にパトリオット防空ミサイル部隊も敵脅威を模擬するために参加した
●ギリシャやイタリアと言ったイスラエル近傍の国だけでなく、英仏軍機の参加は、複雑化する中東情勢にあって外交的なシグナルとしても重要であり、またドイツ軍機の傘下はホロコーストの歴史を超える関係強化の一つとして意義深い
/////////////////////////////////////
米中央軍はイスラエルと中東諸国との軍事関係強化を積極的に推進しており、米軍&エジプト&UAEで計画されている東地中海での海洋演習「Noble Dina」にイスラエル参加を模索したり、UAEでの陸軍演習「Iron Union」にイスラエルを招待するようUAEに働きかけると言われています
またギリシャが主催し、イスラエルも参加する空軍戦術演習「Iniochos exercise」に、エジプトやヨルダンをはじめ、UAE空軍を招くことも案として挙がっているようです
バイデン政権になって以降、「アブラハム合意」のモメーンタムが失われつつあるような気配があり、前政権が進めようと準備していた中東への無人機輸出や、UAEへのF-35輸出などが一向に進まず、米国防省の武器輸出担当官が「怒りの辞任」との報道もあり気になっていますが、現場の連携はどんどん進めていただきたいと思います
中東やイスラエル関連の記事
「国防省武器輸出担当が怒りの辞任」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-15
「米中央軍で対イランの動き2つ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-09
アブラハム合意の関連記事
「イスラエルが欧州軍から中央軍管轄に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-16
「政権交代前にUAEへのF-35契約署名へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-11
「イスラエルがUAEへのF-35に事実上合意」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-26
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謎の次期制空機NGADについて発言相次ぐ [米空軍]
航続距離・多周波数ステルス・搭載量増を要望!?
米空軍ACC司令官と御用研究者が相次いで語る
10月25日、米空軍戦闘コマンドACC司令官(戦闘機族のボス)と米空軍協会ミッチェル研究所研究員(元F-16女性操縦者)が、異なる場で相次いで次期制空機NGAD(Next-Generation Air Dominance)について言及していますので、ご紹介しておきます
次期制空機NGADは2030年頃からの使用をイメージし、F-22の退役に沿って導入を進める構想が最近語られていますが、具体的な要求性能や特徴については闇の中で、謎だらけの機体です。
しかし2020年9月に突然、当時の空軍調達担当次官補が、既にプロトタイプが初飛行済だと公表し、大騒ぎとなりました。ただその後は再び「秘密の闇」に包まれ、重要だから予算が必要との抽象的な話しかきかかない状況が続いています
そんな中での、「米空軍戦闘機族のボス」と「米空軍応援団」である米空軍協会研究員からの発言ですので、極めて断片的ですが、米空軍の情勢認識を考える上で貴重ですので「Take Note」しておきましょう。また、NGAD以外にも言及があった部分も、箇条書き紹介いたします
ACC司令官Mark D. Kelly大将は
(ミッチェル研究所のオンラインイベントで)
●NGADはACCの最優先事項(No. 1 requirement)である。なぜなら、米空軍として、それなしで全ての軍事作戦の基礎となる「制空」を提供不能になるからである
●またNGADは全ての軍種からの要求(a multi-service requirement)でもある。なぜなら他軍種も、「制空」無しで、遠隔で作戦を遂行できるようには設計されていないからである
●第6世代の航空優勢獲得アセットには、長い行動能力・遠距離作戦能力が必要で、欧州戦線で想定される距離よりも長い行動半径が必要だ。
●また、マルチ周波数環境で生存性確保するため、現在のシングル周波数帯での設計思想を超えていかなくてはならない
●更に、戦闘空間を「sense」し、他の戦力を「connect」する能力も必要だ。そのような能力を備えたNGADを、敵領域の裏庭まで進出させ活動させたい
ACCのKelly司令官参加のイベント映像
その他にACC司令官は優先装備として
●戦闘機ロードマップの実行(F-35、各種F-15、F-16と、2030年頃まではA-10とF-22で戦う)
●「第5世代AMTI(移動目標追随能力:JSTARS後継イメージ)」の確保
●老朽E-3・AWACS後継機
●航空基地防御強化(レーザー等エネルギー兵器を含む)
●第5世代空軍に必要な「第5世代兵器開発」
●統合の全ドメイン指揮統制態勢整備への投資
ミッチェル研究所Heather Penney上級研究員はNGADを
「レポート:米国が必要な戦闘機戦力」の発表会で
●NGADには「航続距離とペイロード(搭載能力)」が必要だ
●将来戦闘機には、敵領土奥深くへ突破・侵入する能力が必要で、かつ十分な兵器能力を備え、敵の移動目標や攻撃困難な目標を攻撃可能な能力が不可欠
●遠距離からのスタンドオフ攻撃だけでは対処できない。スタンドオフ部隊を構築するのとはナンセンスだ。そのような部隊は高価すぎ、かつ作戦運用面で効果的ではない。
●突破力が不可欠であり、長引く軍事作戦を遂行する際には必ず、スタンドイン戦力が欠かせない
同上級研究員は他に「レポート:米国が必要な戦闘機戦力」で
●S-400など最新防空網に対応不可な非ステルスF-15EX投資を止め、F-35投資に集中すべき
●併せて、F-15CやDやE型、更にA-10も早期に全機退役させ、F-35投資を加速すべき
●F-16は敵脅威が厳しくない環境用に延命使用すべき
●NGAD導入まで、F-22は近代化改修しつつ維持
////////////////////////////////////////////////////
米空軍の本音(大声で訴えたい内容:繰り返し訴えてきたが議会等の反対でとん挫)は、Penney上級研究員がレポートにまとめて打ち出し、Kelly司令官は米空軍の公式見解の範囲内で戦闘コマンドの要望を訴えた形になっています
「航続距離」も「搭載量」もアップさせ、「マルチ周波数対応ステルス」なNGADとは、いったいどんな機体になるのでしょうか? 2020年9月に「プロトタイプが初飛行済」だと公表された機体は、どの程度要求を満たすものだったのでしょうか?
ちなみに現在のステルス戦闘機は、敵レーダーの周波数がC、X、Kuバンド帯であればステルスが有効ですが、それよりも周波数の低いSやLバンド帯の一部(例:航空交通管制レーダー)であれば、追尾は難しいかもしれないが探知は出来る可能性があり、複数の周波数でステルス機を捜索すれば、理論上はある程度対処可能になります
ドイツ企業が、ラジオやTV放送電波を活用したパッシブレーダーでF-35の追尾に成功したと「噂」されたのも、この原理によるものと考えられます。またレーダーの発信源と受信アンテナの位置を分けることで、ステルス機の反射波を探知できるとも言われており、中国が沿岸に整備途上とも言われています
対ステルス技術関連の記事
「独レーダーがF-35探知追尾?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-01
「新型レーダーを独軍が試験へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-17-1
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12
「ステルスVS電子戦機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「中国の対ステルスレーダー」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-24
「中国にステルス対処の受動レーダー出現」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-05
「米イージス艦のIAMD進歩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09
「バイスタティック無人機で対処」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-26
スタンドオフとインのバランスが重要との主張
「ミッチェル研究所研究員の主張」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
NGAD関連記事
「戦闘機族ボスが少し語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-07
「戦闘機族ボスがNGADへの危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/05/154/
「SCIF使用困難で戦闘機開発危機」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-12
「次期制空機のデモ機を既に初飛行済」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-16
戦闘機構成検討TacAir study関連
「近未来の戦闘機構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-16
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
「戦闘機混合比や5世代マイナス機検討」→https://holylandtokyo.com/2021/02/22/266/
Penny研究員の研究レポート
→https://mitchellaerospacepower.org/the-future-fighter-force-our-nation-requires-building-a-bridge/
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米空軍ACC司令官と御用研究者が相次いで語る
10月25日、米空軍戦闘コマンドACC司令官(戦闘機族のボス)と米空軍協会ミッチェル研究所研究員(元F-16女性操縦者)が、異なる場で相次いで次期制空機NGAD(Next-Generation Air Dominance)について言及していますので、ご紹介しておきます
次期制空機NGADは2030年頃からの使用をイメージし、F-22の退役に沿って導入を進める構想が最近語られていますが、具体的な要求性能や特徴については闇の中で、謎だらけの機体です。
しかし2020年9月に突然、当時の空軍調達担当次官補が、既にプロトタイプが初飛行済だと公表し、大騒ぎとなりました。ただその後は再び「秘密の闇」に包まれ、重要だから予算が必要との抽象的な話しかきかかない状況が続いています
そんな中での、「米空軍戦闘機族のボス」と「米空軍応援団」である米空軍協会研究員からの発言ですので、極めて断片的ですが、米空軍の情勢認識を考える上で貴重ですので「Take Note」しておきましょう。また、NGAD以外にも言及があった部分も、箇条書き紹介いたします
ACC司令官Mark D. Kelly大将は
(ミッチェル研究所のオンラインイベントで)
●NGADはACCの最優先事項(No. 1 requirement)である。なぜなら、米空軍として、それなしで全ての軍事作戦の基礎となる「制空」を提供不能になるからである
●またNGADは全ての軍種からの要求(a multi-service requirement)でもある。なぜなら他軍種も、「制空」無しで、遠隔で作戦を遂行できるようには設計されていないからである
●第6世代の航空優勢獲得アセットには、長い行動能力・遠距離作戦能力が必要で、欧州戦線で想定される距離よりも長い行動半径が必要だ。
●また、マルチ周波数環境で生存性確保するため、現在のシングル周波数帯での設計思想を超えていかなくてはならない
●更に、戦闘空間を「sense」し、他の戦力を「connect」する能力も必要だ。そのような能力を備えたNGADを、敵領域の裏庭まで進出させ活動させたい
ACCのKelly司令官参加のイベント映像
その他にACC司令官は優先装備として
●戦闘機ロードマップの実行(F-35、各種F-15、F-16と、2030年頃まではA-10とF-22で戦う)
●「第5世代AMTI(移動目標追随能力:JSTARS後継イメージ)」の確保
●老朽E-3・AWACS後継機
●航空基地防御強化(レーザー等エネルギー兵器を含む)
●第5世代空軍に必要な「第5世代兵器開発」
●統合の全ドメイン指揮統制態勢整備への投資
ミッチェル研究所Heather Penney上級研究員はNGADを
「レポート:米国が必要な戦闘機戦力」の発表会で
●NGADには「航続距離とペイロード(搭載能力)」が必要だ
●将来戦闘機には、敵領土奥深くへ突破・侵入する能力が必要で、かつ十分な兵器能力を備え、敵の移動目標や攻撃困難な目標を攻撃可能な能力が不可欠
●遠距離からのスタンドオフ攻撃だけでは対処できない。スタンドオフ部隊を構築するのとはナンセンスだ。そのような部隊は高価すぎ、かつ作戦運用面で効果的ではない。
●突破力が不可欠であり、長引く軍事作戦を遂行する際には必ず、スタンドイン戦力が欠かせない
同上級研究員は他に「レポート:米国が必要な戦闘機戦力」で
●S-400など最新防空網に対応不可な非ステルスF-15EX投資を止め、F-35投資に集中すべき
●併せて、F-15CやDやE型、更にA-10も早期に全機退役させ、F-35投資を加速すべき
●F-16は敵脅威が厳しくない環境用に延命使用すべき
●NGAD導入まで、F-22は近代化改修しつつ維持
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米空軍の本音(大声で訴えたい内容:繰り返し訴えてきたが議会等の反対でとん挫)は、Penney上級研究員がレポートにまとめて打ち出し、Kelly司令官は米空軍の公式見解の範囲内で戦闘コマンドの要望を訴えた形になっています
「航続距離」も「搭載量」もアップさせ、「マルチ周波数対応ステルス」なNGADとは、いったいどんな機体になるのでしょうか? 2020年9月に「プロトタイプが初飛行済」だと公表された機体は、どの程度要求を満たすものだったのでしょうか?
ちなみに現在のステルス戦闘機は、敵レーダーの周波数がC、X、Kuバンド帯であればステルスが有効ですが、それよりも周波数の低いSやLバンド帯の一部(例:航空交通管制レーダー)であれば、追尾は難しいかもしれないが探知は出来る可能性があり、複数の周波数でステルス機を捜索すれば、理論上はある程度対処可能になります
ドイツ企業が、ラジオやTV放送電波を活用したパッシブレーダーでF-35の追尾に成功したと「噂」されたのも、この原理によるものと考えられます。またレーダーの発信源と受信アンテナの位置を分けることで、ステルス機の反射波を探知できるとも言われており、中国が沿岸に整備途上とも言われています
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Penny研究員の研究レポート
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米空軍研究所が衛星延命技術の民間企業と提携 [サイバーと宇宙]
DARPAとドッキング軌道上げSpaceLogistics社と協力に続き
軌道上燃料補給のOrbit Fabと技術共有合意契約を
日本人CEOのAstroscaleとも協議中らしいです
10月14日、宇宙軌道上で衛星とドッキングして「燃料補給」を行うOrbit Fab社が、米空軍研究所と研究開発合意契約(CRADA:Cooperative Research and Development Agreement)を結んだと発表し、同社が衛星とドッキングして燃料補給に使用する「バルブ」技術等について、軍用衛星への使用について確認改良に取り組むと明らかにしました
人工衛星は多くの場合、搭載燃料が枯渇することで搭載機材が動作停止に至ったり、軌道修正が出来ずに高度が低下して機能維持が不可能になることで寿命を終えるのですが、様々な手法で高価な衛星を延命して有効活用する試みを民間スタートアップ企業が開始し、国防省機関との協力が始まっています
2020年2月には、Northrop Grumman 傘下のSpaceLogistics社の衛星が、インテルサット通信衛星とドッキングして軌道高度を再浮上させて延命作戦に成功とのニュースが大きな話題となり、併せて、SpaceLogistics社と国防省DARPAが衛星の軌道上修理体制構築に向けた協力すると発表され、この分野が注目されているところです
本日はOrbit Fab社と米空軍研究所の契約の件と合わせ、日本人が創業者でCEOを務めるAstroscale社も近い将来に国防省と仕事を開始しそうなのでご紹介しておきます
12日付Defense-News記事でOrbit Fab社の件
●14日Orbit Fab社は、米空軍研究所のSpace Vehicles Directorateと研究開発合意を締結したと発表し、燃料を軌道上で提供するインターフェース技術等について、空軍と共有すると明らかにした
●同社は既に米空軍研究所と、補給に使用するバルブの宇宙飛行審査契約約3億円で協力関係にあり、空軍が同社の技術を確認し、軍用に必要な改修をするため、空軍施設を同社が利用することになっている
●米空軍研究所の担当責任者は、「同社は軌道上燃料補給のリーダー的企業で、大幅な衛星延命や機動性向上、更に新たな任務オプションを提供してくれる」、「空軍宇宙アセットの再利用を可能にすることで多大な恩恵を得ることを可能にしてくれる」と合意締結の意義を声明で述べている
●なお同社の技術は大きな期待を集めており、9月にはロッキードやNorthrop Grumman社等から、約10億円以上の投資を得ることができたと明らかにしている
日本人が創業者CEOのAstroscale社
(2020年6月のC4ISRnet記事より)
●日本を拠点として米国にもオフィスを持ち、日本人が創業者CEOのAstroscale社は、低高度軌道(LEO)の宇宙デブリ除去を行う企業として知られ、2020年にも同社衛星が宇宙デブリを捕まえて軌道から除去するデモを予定している
●そのAstroscale社が、静止軌道上の衛星の延命措置を行うイスラエルのスタートアップ企業Effective Space Solutions(ESS)を全従業員も含めて買収し、Astroscale Israel社として再スタートさせた
●これにより同社は、低高度軌道のデブリ除去技術と、静止軌道GEO上の衛星延命という2つの技術を融合し、全ての衛星軌道における総合サービス提供企業として、将来的には、軌道上での衛星への燃料補給、衛星修理、機能向上、軌道高度上昇、宇宙状況認識確保、軌道上での衛星製造までを含む総合宇宙兵站サービスを志向する
●ただ当面Astroscale社は、顧客衛星に同社衛星をドッキングさせ、推進力を与えて燃料切れ状態を補うことで衛星の延命を図る事業に専念する方向であり、買収したESS社の衛星(Space Drone platform)を衛星延命用プラットフォームとして使用する予定である
●同社米国法人のRon Lopez社長は、(2月にドッキングによる衛星延命に成功し、DARPAと衛星の軌道上補修検討を開始したSpaceLogistics社がライバルであるが、)複数の米国政府機関とも協議をし、国防省にも提案を行っている中で、国家機関の民間企業技術への関心が極めて高いことを感じている、と自信を示している
Astroscaleのwebサイト
(本社は錦糸町でCEOも日本人:のぶお・おかだ氏)
→https://astroscale.com/ja/#
///////////////////////////////////////////////////////
ググってみると、Orbit Fab社は2019年6月に国際宇宙ステーションISSで、水を燃料に見立てて衛星への燃料補給事実験に成功しているようです。そのほかこの分野には、インドのベンチャーも挑戦しているとか。
日本拠点のAstroscale社の件は、注目企業としてOrbit Fab社の記事の中でも紹介されており、米国防省や米軍で注目の企業であることは間違いありません。
同盟国として、民間企業からも協力関係を強化できればいいですね!
SpaceLogistics社がインテルサット衛星を革新的手法で
軍民両用の技術として大注目で、機動性付与にも
「画期的:衛星が推進力衛星とドッキングで延命へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-27
最近の宇宙関連記事
「小型衛星核推進装置を求め企業募集」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-12
「大型軍事衛星打ち上げの露依存脱却へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-04-1
「中国の宇宙脅威を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-15
「80トン物量を世界中に宇宙経由で1時間以内で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-08-1
「ロシア衛星がなどの物体射出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-24
「国防宇宙戦略を発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19
「提案:宇宙兵器の6分類」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-28
「航空機からロケット発射で衛星を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-14
「宇宙軍の最初の攻撃兵器」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-09
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
軌道上燃料補給のOrbit Fabと技術共有合意契約を
日本人CEOのAstroscaleとも協議中らしいです
10月14日、宇宙軌道上で衛星とドッキングして「燃料補給」を行うOrbit Fab社が、米空軍研究所と研究開発合意契約(CRADA:Cooperative Research and Development Agreement)を結んだと発表し、同社が衛星とドッキングして燃料補給に使用する「バルブ」技術等について、軍用衛星への使用について確認改良に取り組むと明らかにしました
人工衛星は多くの場合、搭載燃料が枯渇することで搭載機材が動作停止に至ったり、軌道修正が出来ずに高度が低下して機能維持が不可能になることで寿命を終えるのですが、様々な手法で高価な衛星を延命して有効活用する試みを民間スタートアップ企業が開始し、国防省機関との協力が始まっています
2020年2月には、Northrop Grumman 傘下のSpaceLogistics社の衛星が、インテルサット通信衛星とドッキングして軌道高度を再浮上させて延命作戦に成功とのニュースが大きな話題となり、併せて、SpaceLogistics社と国防省DARPAが衛星の軌道上修理体制構築に向けた協力すると発表され、この分野が注目されているところです
本日はOrbit Fab社と米空軍研究所の契約の件と合わせ、日本人が創業者でCEOを務めるAstroscale社も近い将来に国防省と仕事を開始しそうなのでご紹介しておきます
12日付Defense-News記事でOrbit Fab社の件
●14日Orbit Fab社は、米空軍研究所のSpace Vehicles Directorateと研究開発合意を締結したと発表し、燃料を軌道上で提供するインターフェース技術等について、空軍と共有すると明らかにした
●同社は既に米空軍研究所と、補給に使用するバルブの宇宙飛行審査契約約3億円で協力関係にあり、空軍が同社の技術を確認し、軍用に必要な改修をするため、空軍施設を同社が利用することになっている
●米空軍研究所の担当責任者は、「同社は軌道上燃料補給のリーダー的企業で、大幅な衛星延命や機動性向上、更に新たな任務オプションを提供してくれる」、「空軍宇宙アセットの再利用を可能にすることで多大な恩恵を得ることを可能にしてくれる」と合意締結の意義を声明で述べている
●なお同社の技術は大きな期待を集めており、9月にはロッキードやNorthrop Grumman社等から、約10億円以上の投資を得ることができたと明らかにしている
日本人が創業者CEOのAstroscale社
(2020年6月のC4ISRnet記事より)
●日本を拠点として米国にもオフィスを持ち、日本人が創業者CEOのAstroscale社は、低高度軌道(LEO)の宇宙デブリ除去を行う企業として知られ、2020年にも同社衛星が宇宙デブリを捕まえて軌道から除去するデモを予定している
●そのAstroscale社が、静止軌道上の衛星の延命措置を行うイスラエルのスタートアップ企業Effective Space Solutions(ESS)を全従業員も含めて買収し、Astroscale Israel社として再スタートさせた
●これにより同社は、低高度軌道のデブリ除去技術と、静止軌道GEO上の衛星延命という2つの技術を融合し、全ての衛星軌道における総合サービス提供企業として、将来的には、軌道上での衛星への燃料補給、衛星修理、機能向上、軌道高度上昇、宇宙状況認識確保、軌道上での衛星製造までを含む総合宇宙兵站サービスを志向する
●ただ当面Astroscale社は、顧客衛星に同社衛星をドッキングさせ、推進力を与えて燃料切れ状態を補うことで衛星の延命を図る事業に専念する方向であり、買収したESS社の衛星(Space Drone platform)を衛星延命用プラットフォームとして使用する予定である
●同社米国法人のRon Lopez社長は、(2月にドッキングによる衛星延命に成功し、DARPAと衛星の軌道上補修検討を開始したSpaceLogistics社がライバルであるが、)複数の米国政府機関とも協議をし、国防省にも提案を行っている中で、国家機関の民間企業技術への関心が極めて高いことを感じている、と自信を示している
Astroscaleのwebサイト
(本社は錦糸町でCEOも日本人:のぶお・おかだ氏)
→https://astroscale.com/ja/#
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ググってみると、Orbit Fab社は2019年6月に国際宇宙ステーションISSで、水を燃料に見立てて衛星への燃料補給事実験に成功しているようです。そのほかこの分野には、インドのベンチャーも挑戦しているとか。
日本拠点のAstroscale社の件は、注目企業としてOrbit Fab社の記事の中でも紹介されており、米国防省や米軍で注目の企業であることは間違いありません。
同盟国として、民間企業からも協力関係を強化できればいいですね!
SpaceLogistics社がインテルサット衛星を革新的手法で
軍民両用の技術として大注目で、機動性付与にも
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米陸軍は大国との本格紛争で近接戦闘も重視 [Joint・統合参謀本部]
「米陸軍の知的頭脳センター」トップの中将が語る
戦闘職種の基礎課程期間の延長や体力テスト厳格化も
10月28日付Military.comが、「米陸軍の頭脳」「米陸軍幹部の教育拠点」とも呼ばれるArmy Combined Arms Centerの司令官にインタビューし、米陸軍の極超音速兵器やPrSMなど長射程遠方攻撃ミサイル開発が話題になり、サイバー戦やAI技術に焦点が当たる中でも、敵が精密誘導兵器の使用をためらうような手りゅう弾が飛び交う近接戦が将来戦でも重要な柱だと強く主張する様子を紹介しています
またそのような原点回帰の中で、米陸軍が基本戦闘職種の基礎課程教育期間を延ばして新人兵士の個人戦闘能力を重視し、体力テストの内容や基準を見直して基礎体力を重視する改革の様子を紹介しています
過去20年以上のイラクやアフガニスタン等での対テロ作戦から、軍備の近代化を急速に進める中国やロシアとの本格紛争に向けた備えに米軍が切り替えを急ぐ中、米陸軍は上記の長射程兵器開発を重視する姿勢を鮮明にし、「(上記兵器が出そろう予定の)2023年に米陸軍は変わる」と担当将軍や陸軍長官が豪語していたところです
そんな中での「接近戦への回帰」発言でまんぐーすも驚きましたが、真に作戦環境分析から生まれたニーズなのか、巨大組織維持のための「方便」なのか今後見極める必要がありそうなので、「米陸軍の部脳・知性」を司る司令官等の発言をご紹介しておきます
10月28日付Military.com記事によれば
●28日のMilitary.comによるインタビューで、Army Combined Arms Center司令官のTed Martin中将は、将来の本格紛争は遠方からボタンを押して戦うような戦いにはならず、迅速に敵に近接する位置まで地上部隊が移動し、敵兵器を直接破砕するような血なまぐさい戦いになるだろうと語った
●同司令官は、スピードと機動力が敵の攻撃を回避するため死活的に重要であり、敵に迅速に接近することで、敵が友軍誤爆を恐れて攻撃を躊躇するような位置まで敵に接近することが緊要だと語った
●また同司令官は、アフガンでの戦いの様に、粗末な前線基地から、無線とライフル程度の武装のタリバンと戦う時代は過ぎ去ったと述べ、
●「我々は、敵対者がどのような兵器に投資し、どのようなドクトリンを持ち、どのように衛星を使用し、ISRを行い、遠方から精密誘導攻撃を行うかを注視しているが、その結果として、我々は迅速に移動して敵に近接する必要があるのだ」と主張した
●また同センターの基礎訓練課程責任者のJohn Kline准将は、「将来の戦いについて、戦線から遠く離れた民家の地下室で、飲み物を片手にサイバー攻撃を操るイメージで語る者がいるが、その認識を変えるべきだと強く主張したい」と27日のwebセミナーで訴えている
●米陸軍は将来のより混乱したカオスな地上戦闘に備えるため、幾つかの主要な地上戦闘職種の新兵基礎教育課程の期間を延長し、昨年は戦車や機甲職種の基礎課程を5-7週間延長して計22週間にしている
●また米陸軍は、長年そのままだった体力測定テストの内容や基準を見直し、より包括的なスピード力を重視する「Army Combat Fitness Test」として来年から正式に採用することになっているが、試行段階の現時点で、女性兵士や一部の兵士が対応に苦慮していると伝えられている
/////////////////////////////////////////////
Martin中将の説明は具体的な内容や結論に至った背景を詳しく述べていませんが、(サイバーやAIやミサイル関連などの最新技術が要注意なのはもちろんであるが、)「手りゅう弾を投げ合うような市街戦に行き着くこととなり、それを繰り返すことが求められるようになる。but it's going to come down to city fighting chucking grenades, and being able to do that over and over」と表現し、
「素早く敵に接近し、撃破する必要がある:We need to rapidly close in and destroy」と、極超音速兵器やPrSMなどの長射程兵器重視の流れとは別の、もう一つの流れも重視する姿勢を明確に示しています
奥深いというか、米陸軍全体の構想から聞いてみたいというか・・・・そんなところです。今後の展開を注視いたしましょう
最近の米陸軍関連の話題
「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-14
「2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「3月の極超音速兵器テストは誤差20㎝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-14
「3軍協力で極超音速兵器開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「射程1000nmの砲開発に慎重姿勢見せる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-10
「射程1000nm砲の第一関門」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
「2020年に南シナ海大規模機動展開演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-30
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戦闘職種の基礎課程期間の延長や体力テスト厳格化も
10月28日付Military.comが、「米陸軍の頭脳」「米陸軍幹部の教育拠点」とも呼ばれるArmy Combined Arms Centerの司令官にインタビューし、米陸軍の極超音速兵器やPrSMなど長射程遠方攻撃ミサイル開発が話題になり、サイバー戦やAI技術に焦点が当たる中でも、敵が精密誘導兵器の使用をためらうような手りゅう弾が飛び交う近接戦が将来戦でも重要な柱だと強く主張する様子を紹介しています
またそのような原点回帰の中で、米陸軍が基本戦闘職種の基礎課程教育期間を延ばして新人兵士の個人戦闘能力を重視し、体力テストの内容や基準を見直して基礎体力を重視する改革の様子を紹介しています
過去20年以上のイラクやアフガニスタン等での対テロ作戦から、軍備の近代化を急速に進める中国やロシアとの本格紛争に向けた備えに米軍が切り替えを急ぐ中、米陸軍は上記の長射程兵器開発を重視する姿勢を鮮明にし、「(上記兵器が出そろう予定の)2023年に米陸軍は変わる」と担当将軍や陸軍長官が豪語していたところです
そんな中での「接近戦への回帰」発言でまんぐーすも驚きましたが、真に作戦環境分析から生まれたニーズなのか、巨大組織維持のための「方便」なのか今後見極める必要がありそうなので、「米陸軍の部脳・知性」を司る司令官等の発言をご紹介しておきます
10月28日付Military.com記事によれば
●28日のMilitary.comによるインタビューで、Army Combined Arms Center司令官のTed Martin中将は、将来の本格紛争は遠方からボタンを押して戦うような戦いにはならず、迅速に敵に近接する位置まで地上部隊が移動し、敵兵器を直接破砕するような血なまぐさい戦いになるだろうと語った
●同司令官は、スピードと機動力が敵の攻撃を回避するため死活的に重要であり、敵に迅速に接近することで、敵が友軍誤爆を恐れて攻撃を躊躇するような位置まで敵に接近することが緊要だと語った
●また同司令官は、アフガンでの戦いの様に、粗末な前線基地から、無線とライフル程度の武装のタリバンと戦う時代は過ぎ去ったと述べ、
●「我々は、敵対者がどのような兵器に投資し、どのようなドクトリンを持ち、どのように衛星を使用し、ISRを行い、遠方から精密誘導攻撃を行うかを注視しているが、その結果として、我々は迅速に移動して敵に近接する必要があるのだ」と主張した
●また同センターの基礎訓練課程責任者のJohn Kline准将は、「将来の戦いについて、戦線から遠く離れた民家の地下室で、飲み物を片手にサイバー攻撃を操るイメージで語る者がいるが、その認識を変えるべきだと強く主張したい」と27日のwebセミナーで訴えている
●米陸軍は将来のより混乱したカオスな地上戦闘に備えるため、幾つかの主要な地上戦闘職種の新兵基礎教育課程の期間を延長し、昨年は戦車や機甲職種の基礎課程を5-7週間延長して計22週間にしている
●また米陸軍は、長年そのままだった体力測定テストの内容や基準を見直し、より包括的なスピード力を重視する「Army Combat Fitness Test」として来年から正式に採用することになっているが、試行段階の現時点で、女性兵士や一部の兵士が対応に苦慮していると伝えられている
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Martin中将の説明は具体的な内容や結論に至った背景を詳しく述べていませんが、(サイバーやAIやミサイル関連などの最新技術が要注意なのはもちろんであるが、)「手りゅう弾を投げ合うような市街戦に行き着くこととなり、それを繰り返すことが求められるようになる。but it's going to come down to city fighting chucking grenades, and being able to do that over and over」と表現し、
「素早く敵に接近し、撃破する必要がある:We need to rapidly close in and destroy」と、極超音速兵器やPrSMなどの長射程兵器重視の流れとは別の、もう一つの流れも重視する姿勢を明確に示しています
奥深いというか、米陸軍全体の構想から聞いてみたいというか・・・・そんなところです。今後の展開を注視いたしましょう
最近の米陸軍関連の話題
「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-14
「2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
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