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米国防省「中国の軍事力」レポート2021年版が核増強を [中国要人・軍事]

2020年版予想は2030年までに400弾頭
2021年の予想は2030年までに1000弾頭以上

2021 China report.jpg11月3日に米国防省が公表した2021年版「中国の軍事力」レポートで、中国の核戦力増強見積もりが、昨年のレポートの2.5倍になっていると話題ですので簡単にご紹介しておきます

このレポートは「Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China」とのタイトルの議会報告用のレポートで、過去記事にあるよう毎年公表されており、既に日本のメディアでも様々に取り上げられていますが、特に今回は核戦力増強に焦点が当たっています

China 100.jpg米国防予算が「良くて横ばい」と言われる中、老朽化したICBMミニットマンⅢの後継(GBSD)開発や極超音速兵器開発、更にはミサイル防衛用の予算確保に迫られている米国防省として、その必要性をアピールするため、核の脅威はロシアの核戦力だけでなく、中国も含めて考えるべきと世論に再考を促す狙いも感じられます

いずれにしても、昨年の同レポートで2030年時点での中国核弾頭数を400弾頭と見積もっていたものを、今年は1000弾頭以上と大きく上方修正しており、その中身を概観しておきましょう

3日付Defense-News記事によれば
China ICBM silo.jpg●(昨年の同レポートでは、中国軍の核弾頭数を現状200弾頭で、2030年までに400弾頭に増強と見積もっていたが、)2021年版レポートでは、中国は2027年までに700弾頭、2030年までに少なくとも1000弾頭の保有を目指していると記している
●米国はロシアとの戦略兵器削減条約の縛りもあり、2003年には1万発の核弾頭を保有していたが、現時点で3750弾頭まで削減しており、今後増強する計画はない

●2021年版レポートは2020年12月までの状況をまとめたもので、2021年8月に中国が試験し、最近Milley統合参謀本部議長が強い懸念を示した低高度軌道飛翔する極超音速核兵器FOBSと言われる兵器の試験については言及しておらず、中国がDF-17との米国のミサイル防衛網を回避する極超音速兵器を配備したとのみ記載している

H-6N 4.jpg●2021年版レポートは、中国版「核の3本柱」が急速に増強発展している分野だと紹介し、空中発射型、地上発射型、潜水艦発射型の開発増強について言及している
●空中発射型については、空中発射核弾道ミサイルを機体外部に搭載可能とする改修をH-6K大型爆撃機に施した「H-6N」の2020年部隊配備を通じて紹介し、H-6Nが空中受油能力を付与されて核ミサイルの攻撃可能範囲拡大を狙っている点や、各種戦術開発に取り組んでいると記載している

●地上発射型ICBMについては中国核戦力の柱であり、3つの場所で固体燃料ICBM用のサイロ群を建設開始しており、合計で数百のICBMサイロ増設になると見積もっている
●また、新たなICBMとして射程5000~8000㎞のDF-27が開発中としているが、以前から報道されていた「“intercontinental” glider system」との関係は不明である

Type 096.jpg●潜水艦発射型については、現在配備されている6隻のType094型戦略原潜(晋級(Jin Class))に加え、開発中のType096型戦略原潜(唐級(Tang Class))を合わせ、203年には8隻体制になると予想している。なお、096型のミサイル搭載数は、094型の2倍の24基になると言われている
●またType096型に搭載の潜水艦搭載核ミサイルも、現在の094型が搭載のJL-2(射程7200㎞)から、中国沿岸から米本土を攻撃可能な開発中のJL-3(射程12000㎞)になると分析している。なお潜水艦発射型ミサイルは、発射後に目標情報を受信して攻撃目標を変更可能で、それら目標情報は約200個の偵察衛星群から提供される(昨年時点の見積もりは衛星数80個)

●一方で2021年版レポートは、中国の西側潜水艦への対処能力(anti-submarine warfare)が依然としてレベルが低くアキレス腱となっていると表現し、中国がこの欠点を改善するために中国空母や潜水艦防御のため水上艦艇を2030年までに460隻に増強する計画だとレポートしている
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JL-3.jpgとりあえず「核戦力」について、3本柱の近代化&増強の視点からご紹介しておきます。

ちらっと中身を見ましたが、図や表が少なく、文字がびっしりの印象です。余力があれば、その他の分野も追記するかもしれません・・・気力があれば・・・

現物:2021年版「中国の軍事力」レポート192ページ
9-18ページが「EXECUTIVE SUMMARY」です
https://www.airforcemag.com/app/uploads/2021/11/2020-China-Report.pdf

米国防省「中国の軍事力」レポート関連
「2020年版」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-02
「2019年版」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-06
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-18
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-08
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1

中国空軍のH-6大型爆撃機
「中国空軍H-6Nが極超音速兵器試験?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-20
「H-6Kのグアム島ミサイル攻撃模擬映像」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23

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米空軍が5000ポンド新型貫通弾投下試験に成功 [米空軍]

1990年代開発の4000ポンドGBU-28の後継
とりあえずF-15Eでの使用試験成功
3万ポンドの巨大貫通弾の小型軽量型か

F-15E GBU-72.jpg12日、米空軍が新型貫通弾(bunker-buster)である5000ポンド爆弾(約23000㎏)GBU-72の投下試験を、7日にフロリダ州エグリン基地近傍の試験場でF-15Eから実施し、成功したと発表しました。試験は着弾地点地下に爆発圧力や破片効果を測定する各種センサーでモニターされ、所要の結果が得られたようです

F-15E GBU-72 3.jpgこのGBU-72は、1990年代にイラク地下指揮所攻撃用に開発されたGBU-28(4000ポンド:約18000㎏)の後継貫通弾となるもので、現在保有する巨大貫通弾(3万ポンド:GBU-57:MOP:B-2のみに搭載可)の小型汎用型ともみられています

5000ポンド級の自由落下爆弾に、BLU-138貫通弾頭を装着し、誘導装置として2000ポンド用のGPS誘導JDAM尾部誘導キットを改良して装着した構造となっており、2021年7月には第1段階として2000ポンド爆弾にこれら弾頭と誘導キットを装着し、F-15Eとの適応性を確認していたということです

F-15E GBU-72 2.jpg最新のデジタル技術を用いた設計やシミュレーション手法で開発が効率的に行われ、GBU-72は一応完成した状態のようですが、今後は他機種への搭載や高度な運用法を想定した各種試験や、本格製造に向けた各種検討が進められるようです

米空軍は、戦闘爆撃機と爆撃機の両方に搭載可能な新型GBU-72をどの機体で使用するか明らかにしていませんが、2022年度予算には125発分が計上されており、最終的には2000発程度を調達する構想と言われているようです

MOP3.jpg兄貴分に当たる巨大貫通弾(3万ポンド:GBU-57:MOP:B-2のみに搭載可)は、イランの地下核施設が想定攻撃対象ではないかと言われていますが、GBU-72は北朝鮮の地下施設など、より広範な対象国の地下施設を対象にしているのではないかと推測されています

MOAB.jpg米空軍は末尾の過去記事でご紹介してきたように、本格紛争対処を意識し、より小型の貫通能力もある高機能新型爆弾GPAW(Global Precision Attack Weapon)開発に着手しているほか、「爆弾の母」MOAB(mother of all bomb)と呼ばれる2万ポンド級の巨大爆弾も保有しており、地味な分野ですが、今後もチマチマとフォローしていきます

イラン地下核施設狙いか:3万ポンドGBU-57:MOP関連
MOP(Massive Ordnance Penetrator)
「超巨大貫通弾MOP完成か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-18
「シリア化学兵器に?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-27
「イラン核施設の完全破壊は困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-02
「対イラン?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-16-1

最近では本格紛争意識の小型貫通弾開発も
操縦席から多様な設定変更可能で自立的群れ行動も目指す
「GPAW開発に企業からの情報募集」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-21

地表目標を広範に破壊:2万ポンド級MOABの記事
2017年4月、アフガンでISの拠点制圧に使用
「試験映像と共に:GBU-43B」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-04-14

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戦略原潜設計チームを次期攻撃原潜にも投入へ [Joint・統合参謀本部]

Columbia級SSBNが落ち着いたら知見を活かしてSSN-Xへ
Seawolf級とVirginia級とColumbia級の良いとこ取り
2031年1番艦調達を目指して

SSN(X).jpg10月12日付Military.com記事は、米海軍がバージニア級攻撃原潜の後継SSN-X検討を開始し、対中国など本格紛争を意識した重視事項を念頭に置いていることや、現在の潜水艦3種類の「良いとこ取り」を考えている様子を紹介しています

また米海軍首脳の話として、設計開発が佳境を迎えているコロンビア級次期戦略原潜の設計チームを、その知見を活用するため、そのままSSN-X設計チームとして再投入する方向にあると報じています

この記事は最新の話題ではなく、今年7月ごろに各所で発言された内容をまとめた「Business Insider」の記事(10月11日付)を転載したもののようですが、豪州がAUKUS枠組みで攻撃原潜導入を決定したタイミングでもあり、ご紹介いたします

12日付Military.com記事によれば
Houston.JPG●7月の米海軍協会イベントで米海軍のBill Houston潜水艦隊司令官は、「海洋ドメインにおける究極の最終捕食者(apex predator)となるような次期攻撃型原潜の検討作業に入っている」と語り、設計はまだ固まっていないが、3種類の米海軍潜水艦(Seawolf級SSNとVirginia級SSNとColumbia級SSBN)の良いところを集めた潜水艦にしたいと語った
●そして「最新のノウハウや良い点をどのように組み合わせて一体化するかについて議論している」と述べ、Seawolf級の搭載量と速度、Virginia級の電子搭載機器、Columbia級の無修理での長期運用能力などの特長を生かしたいと語った

SSN(X) 2.jpg●同司令官は、ロサンゼルス級設計時にはソ連後の大国との対峙は念頭になかったが、SSN-X検討は中国の台頭懸念の中で進めるとし、「大規模紛争に備えた艦である必要がある」と述べた
●また「SSN-Xには、敵の活動エリア内に潜入して打撃を加え、我の優位を勝ち取る能力が必要」、「敵が彼らの要塞エリア内に所在しても、敵対能力を拒否することが必要」、「多数の優れた敵潜水艦に対する対潜水艦作戦能力を、新たな優先要求事項に設計することになろう」と要求性能に関して検討状況を語った

SSN(X) 3.jpg●同司令官はSSN-Xの設計要員に関し、コロンビア級SSBN計画の設計開発が山場を越えて生産段階に移行するタイミングと重なることから、米海軍の資産であるコロンビア級SSBN設計チームの知見を活かして、引き続きSSN-Xの設計にも取り組んでもらうと語った

●この発言を受け、米海軍の全ての潜水艦建造に携わってきたGeneral Dynamics Electric BoatのKevin Graney会長は、「新潜水艦への要求事項が固まれば、わが社との協力体制がより強固になる。更に一体となった日々を米海軍と共に過ごすことになろう」とコメントしている

ご参考:3種類の潜水艦の概要は
●Seawolf級SSN
・ソ連の潜水艦発達を受け、ロサンゼルス級後継として1980年代に設計。しかし冷戦終結と高価格なため、わずか3隻で計画中止。米海軍史上最大のパワーと搭載量の攻撃原潜
・8つの魚雷発射管保有で、50発の魚雷や巡航ミサイル搭載可能。25ノット以上の速度で航行可能。就航後、最新のソナーやセンサーに改修更新
・3番艦のJimmy Carterは、約30m延伸して「Multi-Mission Platform」を搭載し、ISRやSEAL用無人艇などを搭載可能に

●Virginia級SSN
Virginia-class submarine2.jpg・高価なSeawolf級に代わり、より安価なロサンゼルス級後継として2011年から調達開始し、現在19隻が就航し、11隻が建造中で、更に4隻が契約済(計34隻)
・4つの魚雷発射管保有で、37発の魚雷や巡航ミサイル搭載可能。特長はミサイル等の垂直発射管と先進潜望鏡
・またVirginia級Block V型は、約24m延伸して「Virginia Payload Module」を増設。4つの垂直発射管(各7発ミサイル搭載可)を追加し、計65発搭載可能に

●Columbia級SSBN
・オハイオ級SSBN後継として2020年に発注され、米海軍史上最大の潜水艦となる予定で、一番艦が建造中も配備は早くとも2031年
・艦寿命42年の間に中間大規模修理が不要
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対中国の軍事作戦を考える時、戦略家ルトワック氏は攻撃型原潜が一つの鍵になると述べ、西側の優位性を最大限に生かせと主張(「ラストエンペラー習近平」奥山真司訳)していますが、強引な豪州への攻撃原潜導入も絡んで、大変ホットな話題になってきました

SSN(X) 4.jpgただ、米海軍の「お財布」の中は心もとなく、6月には当時の海軍長官が、「次期イージス艦、次期攻撃原潜、FA-18後継に優先順位をつけよ。予算不足で同時進行は不可能だ。優先順位を明確にして1つに絞り込め」と2023年度予算編成に向け、米海軍内に指示を出しているところです

そんな6月の海軍長官発言を受け、潜水艦族が水上艦艇族や空母艦載機族に対する「戦いののろし」を上げた形の7月の上記発言です。「中国と戦う前に、陸海空軍が互いに戦う」・・・という、いつか来た道ですが、これが米軍の現状です

それから、無人の攻撃潜水艦を50隻導入との検討も、昨年の春頃には当時のエスパー長官の下であったように記憶していますが、どうなったのでしょうか???

大型無人攻撃潜水艦にも注力を
「エスパー長官の構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-03
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇案!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22 

コロンビア級SSBNの関連
「1番艦契約」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-07-1
「NKのおかげSSBNに勢い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-2
「コロンビア級の予定概要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-27
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13

米海軍の課題&問題の一端
「新海軍長官が4つのCを重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-20
「3大近代化事業から1つを選べ」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-09
「第1艦隊復活を検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-20
「F-35搭載用強襲揚陸艦火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15
「コロナで艦長と海軍長官更迭の空母」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-27
「空母や艦艇修理の3/4が遅延」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-22
「空母フォード責任者更迭」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-08
「NGADの検討進まず」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-17
「米海軍トップ確定者が急きょ辞退退役へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-09

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米国防省がアフガン人が写る画像映像記録公開停止 [米国防省高官]

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12万枚以上の写真と1.7万本の映像を当面の間
米国に協力したアフガニスタン人をタリバンから守るため

Kirby4.jpg11月1日、米国防省のJohn Kirby報道官が会見で、米国に協力したアフガニスタン人をタリバンから守るため、米国防省や米軍の活動を画像&映像で公開しているDVIDS(Defense Visual Information Distribution Service)で当面の間、アフガニスタン人が写った写真や映像を公開しない措置をとると明らかにしました

膨大な画像や映像から、関連画像や映像を非公開にする作業はアフガニスタンがタリバンの手に落ちた8月中から開始され、2か月以上を経た今も継続していると同報道官は語っており、過去約20年間の記録から、既に12万枚以上の写真と1.7万本の映像を非公開にしたと説明しています

DVIDS.jpgあくまでも当面の間の「非公開」であり、適当なタイミングで再び公開する予定で、あくまでも非公開措置であり削除するわけではないと同報道官は強調していますが、数年で再び公開されるとも考えにくく、軍の展開と撤収に伴う難しい問題の一つとして記憶にとどめるべく、ご紹介しておきます

1日付米空軍協会記事によればKirby報道官は会見で
●私は、過去20年間の戦いを通じて蓄積されてきた、(米国を支援した)個人やその家族が特定されるような画像や映像を、当面の間、非公開にするよう指示した。私の提案であるこの措置は、NSCや今もアフガン人の国外脱出を手助けしている国務省と相談の上で実施している
afgan interpreters3.jpg●膨大な労力を要するこの作業は、8月から9月にかけて行われたアフガニスタン人の国外避難作戦の間も静かに進められていたが、2か月以上経過した今も続いている

●我々は、タリバンが(米国活動を支援したアフガニスタンの人々を)親戚や家族を含めて見つけ出すことを懸念している。
●これまでのところ、タリバンがDVIDSを使用して、アフガニスタン人を特定したり標的にする特別の情報や兆候は察知していないが、このような懸念は明らかであり、非公開のする判断に躊躇はない

afgan interpreters.jpg●私はこの非公開措置が正しい判断であると信じており、我々はこの措置をお世話になったアフガニスタン人へのリスペクトと注意深さから実施している
●非公開にした画像や映像が消去されることはない。再び公開する適当な時期が来たら再公開する
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Defense Visual Information Distribution Service
https://www.dvidshub.net/

いろんな意味で、海外で軍隊が活動することの深い意味とその後々への影響を考えさせられます

アフガン避難民関連の記事
「米本土米軍基地にアフガン避難民5.3万人」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-26
「アフガン避難者輸送作戦最初の10日」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-24
「C-17輸送機1機に823名も」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-22
「アフガン語通訳1.8万人を特別移民認定へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-26
「タリバンに渡った米国製兵器」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-30

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中国ステルス機J-20の新型と新型艦載機写真か? [中国要人・軍事]

J-20新型は2人乗りで無人僚機操作かNetWork管理機か
J-31改良型には空母艦載機の特徴が・・・

J-20 two seats2.jpg10月29日付Defense-Newsは、中国で撮影された2つの写真を取り上げ、以前から噂されていた「J-20ステルス戦闘機」の2人乗り改良型と、空母艦載用に改良されたJ-31(Shenyang FC-31)だと紹介しています

Defense-Newsは最近、「中国軍がステルス機の大増産を計画中で、2025年までに650機を超え米国を上回る可能性あり」や、「中国軍需産業や海軍関係者が、新型空母艦載機を年内に披露予定と発言」と相次いで報じており、これら報道をフォローする内容となっています(過去記事も参照ください)

2つの新型機をとらえた写真は鮮明ではなく、それぞれ1枚限りで細部までは確認できませんが、J-20改良型は軍需産業の開発拠点で撮影され、J-31改良型は撮影場所不明となっており、塗装も仮塗装状態で「開発中」の雰囲気が伺える写真です

J-20ステルス攻撃機の2人乗り型?
J-20 Two Seats.jpg●10月26日に四川省成都市の成都飛機工業公司(Chengdu Aircraft factory) で撮影された写真は、以前から改良型の開発が噂されていたJ-20ステルス戦闘機の「2人乗り」バージョンが地上走行中のもので、まだ仮塗装状態の機体である
●追加された「後席」搭乗員の役割は不明だが、(米国のF-4やF-15Eがそうであるように、)後席搭乗員はセンサーや搭載兵器の運用を担当する兵器システム操作員WSO(weapons system officer)の可能性がある

●また、西側各国が開発を進める無人ウイングマン機を中国も開発しているであろうから、J-20複座型が無人ウイングマン機を束ねる有人母機の役割を果たす可能性もあり、その場合、後席搭乗員が無人機を操作する要員の可能性もある
●更に可能性としては、中国航空産業関係者が以前言及していた、J-20をステルス型早期警戒機&センサーNetwork管理機として活用する可能性も考えられる

空母艦載型のJ-31改良機?
J-31 CV.jpg●10月上旬のZhuhai航空ショーで航空産業や海軍関係者が示唆していた、2021年末までに新型空母艦載機を披露するとの発言を裏付けるような写真が、29日に現れた
●空母艦載用に改良されたJ-31(Shenyang FC-31)と思われる機体が飛行している様子を撮影した、初めての写真である

●写真は、飛行中の機体が空母艦載機特有の特徴を有していることを示している。一つは前方の車輪部分にカタパルトと結び付けるバーが確認できることで、もう一つは翼が折りたためるように改造されている様子がうかがえる点である

J-31 CV2.jpg●中国の就航済みの2隻の空母はカタパルトを装備していないが、現在上海で建造中の第3の空母は、米海軍の新型空母フォード級と同サイズで、カタパルトを3基搭載すると見られており、艦載機がカタパルト用装備を備えている点と一致する
●また空母艦載機は、狭い空母艦内スペースを効率的に活用するため、翼を折りたたんで格納することが一般的であり、この点でも写真が出回った機体は空母艦載機の特徴を備えている
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中国による軍備強化のための猛烈な投資の成果と考えられます。米国をはじめとする西側関係者は一般に、自国の国防予算を確保するため、敵の脅威をアピールしますが、中国の軍備増強は強調しても強調しきれないくらい「猛烈」です

「話し合い」や「対話」で解決レベルではなく、協議の場に臨む前に相手を威圧する体制の整備が着実に進んでいると見るべきです

最近の中国航空戦力記事
「中国軍ステルス機数が2025年までに米軍越え!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-10
「中国版EA-18Gが中国航空ショーに」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-29

J-20関連の記事
「2018年航空ショーでの評価」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-10-1
「報道官が戦闘能力発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-1
「中国国防省が運用開始と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-30-1
「中国報道:J-20が運用開始?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-14
「大局を見誤るな:J-20初公開に思う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-02

J-31関連記事
「新しい艦載機をまもなく披露する」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-05
「中国海軍の新型艦載機開発?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-10
「輸出用の中国製ステルス機J-31改良型初飛行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-12-27

単発で初:中国国産エンジン搭載
「単発J-10CにWS-10B搭載」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-12

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異例:米軍人NO2ポスト後任候補が未定 [Joint・統合参謀本部]

現職Hyten統合参謀副議長の退役が11月21日
現議長退役までに後任の議会承認が間に合わないのは確実
過去40年間で前例のない後任候補未定の理由は不明
新兵器開発「米国が9回試験に対し、中国は数百回挑戦」

Hyten.jpg米軍事メディアが相次いで、11月21日に退役が決まっている米軍人NO2のHyten統合参謀本部副議長の後任候補が未だバイデン政権から示されない異例の状態にあり、今後直ちに後任候補が推薦されても、上院での承認審議に必要な期間を考えれば、国防省内の重要な予算や将来計画等々検討の「要」である「副議長」ポストに空白が生じかねないと、関係者の危機感を伝えています

確かに、現在のHyten副議長就任の際も、上院での承認プロセスの途中でHyten大将のセクハラ疑惑が持ち上がり、前任者退役後に3か月ほど空席期間が生じた過去がありますが、当時も後任候補は適時に推挙され、申し送りなども水面下で進められた実態があることから、なぜ候補者の推挙が遅れているのか、各所から「?」の声が上がっているようです

Milley.jpg各種メディアも、過去40年間でもなかった後任推挙の遅れついて確たる理由をつかめないでいるようですが、上院のベテラン議員は「国防省での人選が遅れているとは考えにくく、ホワイトハウスの中の誰かがネックとなって推挙が停滞しているのでは」と推測しています

ガッチリとした官僚機構である統合参謀本部ですから、副議長の脇を固める中将クラスがフォローし、Milley議長が「空白」の間は副議長の職責を担う心づもりを固めているようですが、予算配分や各軍種の開発計画や将来構想について細かく議長が差配する余裕はなく、中将レベルが各軍種トップやメジャーコマンド司令官と交渉できるはずもなく、懸念される状況です

10月21日付Military.com記事によれば
Grady.jpg●政治情報サイトPoliticoは、副議長の後任候補には米海軍艦隊司令官Christopher Grady大将が有力で、米戦略コマンド司令官のCharles Richard海軍大将の可能性もある、と報じている。ただ(21日の時点で)数日以内に候補が推挙されても、上院の承認は11月21日までに間に合わないだろうと見ている
●米国防工業会会長(元米空軍戦闘コマンド司令官)のHerbert Carlisle退役大将は、「副議長に空白が生じることは、国防省業務遂行に多大な害悪をもたらす可能性がある」と予算検討の山場に当たる時期の重要性を懸念している

Carlisle.jpg●例えば副議長は、Hicks国防副長官と共に「Defense Management Council」の共同議長として2023年度予算の骨子決定の山場を担っており、また「Joint Requirements Oversight Council」のトップとして、各軍種の様々な装備品要求値の精査や軍種間の調整を仕切る立場にある
●また、同Councilは、宇宙軍の立ち上げ&充実、サイバー能力の強化&改善、中露対処を念頭に置いた諸計画の継続見直しの推進役でもあり、Carlisle会長は時間的余裕のない引継ぎを懸念している

10月28日付Defense-News記事によれば
Kirby.jpg●28日、国防省のKirby報道官は「副議長職は重要なポストであり、空席は望ましいことではない」、「ただ法律の規定上、副議長ポストに、文民ポストのような臨時代理者を置くことはできない」と説明した
●同報道官はなぜ候補推挙が遅れているのかには言及せず、オースチン国防長官がバイデン大統領に後任候補者を伝え、大統領が適切なタイミングで発表し、承認手続きへと進むことになる、と会見で説明するにとどまった

●推薦された候補者を審議する上院軍事委員会のJack Reed委員長は、「大統領から推薦者が示されれば、委員会はそのポストの重要性に鑑み、迅速に審議を行う用意がある」、「その職にふさわしい候補者が選ばれることを期待し、上院は超党派の体制で厳正に速やかに承認手続きを進める」とコメントしている

Hyten New Concept.jpeg●28日、現副議長のHyten大将は記者団に、「後任者と直接申し送りを進めたいが、後任推挙も行われていない状態であり、書面での申し送りを準備することになろう」と述べた

●また同副議長は、中国が猛烈な勢いで軍備近代化を進めている中で、米軍のそれが極めて遅く長期間を要する状況に強い不満を示し、「必要な能力獲得の進捗をフォローしているが、ほとんどがその実現に10-15年必要な状態にある」と嘆いた
●「例えば現有のICBMは、1960年代に800発のICBMと格納サイロと管制施設がわずか5年で完成できたのに、次期ICBMは2015年に着手して態勢確立が2035年との見通しになるありさまだ」と語った

●また懸念が高まる中国の極超音速兵器開発に関連し、中国は失敗を恐れず開発に果敢に取り組んでいると説明し、「米国は過去5年間で9回の同兵器試験を行っただけだが、中国は、細部には言及できないが、数百回(the Chinese have done hundreds)も挑戦している」と実態を明らかにした
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Hyten2.jpgHyten副議長は、パイロットでないにも関わらず米空軍参謀総長の有力候補と言われた人物でしたが、最終的には初の黒人Brown大将が空軍トップに収まり、副議長職に就いた経緯のある大将です。つまり、過去記事からにじみ出ているように、軍事メディアもかねてから注目してきた高い見識で持ち主だということです

それだけに、後任人事が難航しているのかもしれません。時間を置かず、後任候補が異例の遅さで示されるのでしょうが、こんな状況も念頭に、後任候補者を眺めていきましょう

それにしても極超音速兵器開発に関し、「米軍が過去5年間に試験が9回に対し、中国は数百回も失敗を恐れず挑戦」とは衝撃的な話です。こんな話が他の装備品開発でもたくさんありそうで心配です

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