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マティス新国防長官と「第3の相殺戦略」 [マティス長官]

Third offset.jpg19日付Defense-News記事が「C4ISRNET」を引用し、マティス新国防長官の「第3の相殺戦略」に関する議会証言を紹介しつつ、新政権における同戦略の行く末を推測しています。

これと言った決定的な根拠や言質に基づく記事ではありませんが、トランプ新大統領とは異なり穏当なマティス新国防長官のご発言で「箸休め」して頂き、併せて「第3の相殺戦略」を取り巻く現状を理解する一助なればと考え、幾人かの専門家の見方をご紹介します

マティス氏の「第3の相殺戦略」への考え方
(上院軍事委員会からの質問への回答)
Mattis12.jpg●全般として、第3の相殺戦略検討の中で見いだされている分野は、投資に値するものと考えている。国防省の同戦略への取り組みは、米軍戦闘力を必要な場所と時間で発揮するに事に焦点を当てた取り組みだと理解している
●国防長官に承認して頂けたなら、現在行われている研究開発投資の分野をレビューし、国家に長期的な技術優位性をもたらすものかどうかを確認する

●国防長官に就任したなら、私の職務遂行における優先事項を、より詳細に上院軍事委員会にお知らせしたいと考えている
●私は、技術革新と技術の飛躍的発展のために、リスクに対しては寛容であるべきだと基本的に考えている

専門家等の見方
Shanahan.jpg国防情報部長のJack Shanahan中将は、「まだ新政権についてはよく分からないが、(政治任用の)主要幹部の推進力が第3の相殺戦略遂行に重要なことは国防省組織にも言えることだ」と慎重に語った
●一方で同中将は「強制削減法の下での苦肉の策である暫定予算(continuing resolution)の有効期間が4月に終わり、その後に新着任者は新たな暫定予算編制を迫られ、第3の相殺戦略用に前任者が配分していた予算の継続可否の選択を迫られることになる」と語り、その時点で強い意志や考え方を共有していないと「第3の相殺戦略」が消えゆく可能性を示唆した

CNASのBen FitzGerald研究員も、カーター長官やWork副長官が大きな「political capital」を使用して議会等に「第3の相殺戦略」推進を働きかけていたことを取り上げ、「人工知能」や「自立化:autonomy」等は大丈夫だろうが、その他の分野には不安もあると示唆した
●そして新政権下での「第3の相殺戦略」の運命について、「明確に中断はしないが、積極的な支援を行わず、管理されたネグレクト状態になる」可能性が最も高いと予想した

Eaglen AEI3.jpgAEIのMackenzie Eaglen研究員は、政権の引き継ぎ間、Work副長官がしばらく職務を継続するする事になったが、同副長官が仮に2ヶ月間職務を継続したら、2017年9月末まで(2017会計年度内)の相殺戦略関連事業を支えるだろうと見ている
●更にEaglen女史は、Work氏が今後半年間職務を継続する事になれば、2017年10月以降の2018会計年度予算に大きな影響を与えることになろうと予想した
●また同女史は、新政権が当面の対ISILを重視し、(対中国や対ロシアを想定した)国家間の本格紛争を後回しにすると、「第3の相殺戦略」の推進力は失われるだろうと述べた

一方で米海軍研究所(ONR)のThomas Killion研究部長は、「第3の相殺戦略の関連技術には、自立化、センサー能力、意志決定支援のための新アルゴリズム、製造の新手法等々が含まれているが、これら技術には既に投資が開始されており、継続投資される」「ONRが既に発表した研究戦略にも、相殺戦略関連の多くの分野が含まれており、海軍は投資を進める」と説明し、新政権でも急激の変化は想定しがたいことを示唆している

FitzGerald.jpg前述のFitzGerald研究員も、カーター長官が肝いりで始めた、先端技術取り込み事務所DIUx、国防省の戦略能力造成室SOC、また「Defense Digital Service」などの組織は、政治任用でない職員で運用されており、事業運用が多少変化するにしても、継続して業務するだろうと見ており、単に1980年代導入の老朽装備品更新を行うような政策との決別を期待している
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トランプ大統領の就任式関連の行事で、各軍種の士官候補生が大統領を観閲官にしてパレードを行う事が恒例になっているらしいのですが、これまでは大統領の前を通過する際、一貫して「頭右」となるように観閲台が設けられていたのに、今回は警備の都合上か観閲台の位置が変更され、「頭左」をしなければならなくなったようです。

某軍事メディアがこの件を取り上げ、「早くもこれまでの慣習や発想からの転換を迫られている」と皮肉めいた表現で紹介していました。

間違いなく、日本はより本質的な国防議論を迫られるでしょうし、そんな時の一助に「東京の郊外より・・・」がなればと考えています

「第3の相殺戦略」関連の記事
「この戦略は万能薬ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11-1
「CSISが相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「相殺戦略を如何に次期政権に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04

「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12

「小野田治の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-05
「慶応神保氏の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26
「第3のOffset Strategy発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-06-1

同じ記者による「第3の相殺戦略」現状解説
http://www.c4isrnet.com/articles/third-offset-strategy-challenges

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