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F-16をAI無人機へ:CCA ソフト集大成開発&試験用に [米空軍]

6機を改修し Skyborg やX-62 VISTAの知見を総合試験
無人ウイングマン CCA の 2028 年初度導入に向け迅速試験へ
エグリンで開発と運用試験を同時並行で成熟促進
試験はあくまで「有人」で行うとAI 暴走懸念に配慮

F-16 VENOM-AFT.jpg4月2日米空軍が、2028年に初号機を導入開始する計画の無人ウイングマン機CCA(Collaborative Combat Aircraft) 開発を加速するため、6機の F-16 戦闘機を自立型 AI搭載無人機に改修し、 VENOM-AFT計画 (Viper Experimentation and Next-gen Operations Model - Autonomy Flying Testbed program) の名の下に、フロリダ州エグリン空軍基地で、開発チームと作戦運用 試験チームが同居して同時並行的に CCA 早期実現に向けた開発試験を行うと発表しました

本米空軍発表を紹介する 3 日付米空軍協会 web 記事も、元ソースの米空軍発表も、具体的な 「VENOM-AFT 計画」のスケジュール感について全く触れていませんが、ざっくり 1000 機導入 を想定しているCCA の初期型導入が2028年に設定されており、担当企業選定も現在の候補5社 から5月には2-3社に絞り込まれる勢いですから、

F-16 VENOM-AFT2.jpg4月1日に3機の改修予定 F-16 を受け入れた試験担当部隊の幹部から、「to ultimately speed up the development」とか,「focuses on speed-to-ramp」とか「go as fast as you can, safely, to ensure we get CCA flying as quickly as possible」と言った言葉がポンポン飛び出す状況となっており、2022年頃までは「CCA導入を2023年代前半に」との計画だっただけに、まんぐーすは「そんなに急いで大丈夫か?」、「中国完全崩壊前に片を付けたいのか?」との思いに駆られるほどです

3日付米空軍協会 web 記事は更に・・・
Skyborg2.jpg●VENOM-AFT 計画は、これまで CCA 実現のために積み上げてきた、自立型 AI無人機共通基盤 ソフト開発のための「XQ-57 Skyborg 計画」や、F-16 改造無人機「X-62 VISTA」を使用した最近数年間の無人機機動や戦術開発飛行試験成果を集大成(culmination of years of engineering and collaboration)するものである
●本計画に基づく開発試験及び作戦運用試験を行う飛行部隊長(中佐)は、「developmental test と operational test を行う操縦者が、同じエグリン基地で同時並行で各試験を行うことから、互いに情報共有して「縦割りによる情報の偏在」を防ぐことができる」と今回の開発&試験方式の利点を強調している

X-62A 2.jpg●また同担当飛行隊長は、無人機ソフトの試験であるが、あくまでパイロットが機体に搭乗して 試験飛行は行うと説明し、AI搭載兵器開発には人間が確実に介入(human-on-the-loop)して、試験中の AIアルゴリズムが指示する操作を何時でも中止できる体制を確保している点を強調した
●なお VENOM-AFT 計画単独では、2024 年度予算が約80億円、2025 年度は25億円となっているが、次期制空機 NGAD と CCA 開発を合わせると、2025-29年の間に約4兆5千億円の投入が準備されている
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F-16 VENOM-AFT3.jpg繰り返し申し上げますが、CCAに関しては、対中国正面である西太平洋の、どこに展開して、誰がどのように維持整備し、誰がどのようにコントロールして運用するのか・・・との大問題が残っていますので、その辺りを念頭に置きつつ、生暖かく引き続き見守っていきたいと思います

ただし、自立型AI搭載無人機技術は、官民間わず我々の世界に大きな変革をもたらす技術ですので、その開発の進捗を祈りたいと思います。個人的には、AI無人機開発の最終段階に、大ベテランF-16が登場する辺りに「胸熱」な思いがいたします

CCA 関連の記事
「CCA 原型候補 XQ-67 が初飛行」→https://holylandtokyo.com/2024/03/21/5652/
「第1弾候補企業を2-3社に」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/5595/
「あと6年で実用化する試験準備」→https://holylandtokyo.com/2023/11/08/5153/
「AIアルゴリズム集大成試験」→https://holylandtokyo.com/2023/08/08/4922/
「2020年代後半導入へ」→ https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「長官:NGAD 200機、CCA 1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
「関連技術を23年から本格開発へ』→ https://holylandtokyo.com/2022/11/22/3948/

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米空軍が空軍内意思疎通と搭乗員関連アンケート実施 [米空軍]

共に対象者数万名の大規模意識調査
継続実施で部内意思疎通と搭乗員退職防止策に反映

WAGGI.jpg3月26日付米空軍協会web記事が、米空軍が毎年約4万名の搭乗員全員に対して行っている「Aircrew Engagement Survey:搭乗員意識調査」と、州空軍兵全員と抽出した1万2千名の空軍正規兵士(全体の4.2%)に2年に一回行っている「Where Airmen and Guardians Get Information調査」(通称WAGGI調査:どこからどのように空軍の情報を得ているか調査)について取り上げているのでご紹介します

通称「WAGGI調査」は2011年から、「Aircrew Engagement Survey:搭乗員意識調査」は何時から開始されたか確認できませんでしたが、共に記事の雰囲気から継続的に実施されているアンケート調査で、「搭乗員意識調査」はあるのかもしれませんが、自衛隊で「WAGGI調査」の類が継続的に行われているとの話を聞いたことがありませんので、ご参考まで概要を紹介させていただきます

空軍内の情報共有や意思疎通を問う「WAGGI調査」
WAGGI3.jpg●2011年に開始された2年に1回の調査は、ほぼ全ての州空軍兵士とランダム抽出された正規兵の約4.2%に相当する1万2千名を対象に実施され、米空軍指導層が、兵士がどのような情報を、どのような手段で、どのような頻度で得ているか&求めているか等について調査し、兵士との意思疎通の改善に役立てるために実施されている
●担当する空軍省広報局のTadd Sholtis博士は「本調査は、空軍兵士や州軍兵士が空軍内での様々な意思疎通に関し、どんな部分に懸念を持っているか尋ね、意思疎通をより良い方向に導く対策を検討するためのもの」と説明しており、調査結果を踏まえ、情報伝達手段を紙媒体からデジタルメディアに変更したり、上級指揮官のSNSの使用法改善等につなげている

WAGGI4.jpg●前回2022年調査から、州空軍兵士と正規空軍兵士を対象とした調査を別々にし、よりそれぞれの対象者の特性や課題に焦点を当てた異なった質問内容の調査を行っている
●2022年WAGGI調査の結果、正規空軍兵は空軍内の各種意思疎通が「普通・おおむね良いmoderate」から「良いgood」と感じているが、州軍兵士は「意思疎通が効果的ではない」と感じていることが明らかになっている。また発足したばかりの宇宙軍では、発足当初の様々な業務のために、意思疎通が犠牲になっている部分があるとの結果も示されている

Aircrew Survey.jpg●調査結果を受け、前線兵士に情報を伝えるためのリードタイムを十分に確保する必要性と、対面での会議やミーティング、e-mail、SNS等の意志疎通ツールの適切な使い分けの理解や浸透の必要性が示され、改善が進んでいるかについても2024年調査の内容に含まれている
●2024年の調査は間もなく4週間の回答期限で開始されるが、回答は強制ではなく、自由に意見を記述可能な枠も設定されている。回答結果を踏まえ、より詳細な調査が必要と判断された場合には、回答者の匿名性に配慮しつつ、個別の面談調査が計画されており、2022年調査の際には正規兵157名と州軍兵22名が対象となっている

「Aircrew Engagement Survey:搭乗員意識調査」
WAGGI2.jpg●(本アンケート調査の開始年は不明だが、最近)毎年行われている全ての航空機搭乗員約4万名を対象とした今年の調査は、2月15日から回答が開始され、3月28日が回答期限となっている。15分間程度で回答完了可能なアンケートであり、回答は個人情報と紐づけて個人人事情報として保存されることはなく、アンケート分析部署のみで処理される
●アンケートの目的は、米空軍パイロットや搭乗員の離職が増える中、搭乗員の抱える悩みや離職につながる要因の把握により、離職を防止し、時間をかけて養成した搭乗員に任務継続契約してもらえるような人事施策を検討する資とすることにある

Aircrew Survey2.jpg●例えば昨年のアンケート結果からは、搭乗員が離職を考える理由として、(転勤や長期海外展開による)家庭生活の不安定、金銭的な不安、飛行任務から離れたスタッフ業務への不満があることが明らかになり、配置ポストに関し個人の希望を柔軟に反映する仕組みの導入やボーナス等支給面での修正等につなげている
●本アンケートを空軍司令部で担当するTravolis Simmons准将は、「長期的にデータを蓄積して調査結果を分析することで、搭乗員の採用や育成に役立て、契約延長者を増やすことにつなげたいと考えており、搭乗員の管理を包括的に検討する材料としても活用している」と説明している。
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Aircrew Survey3.jpg調査結果がどの程度公開(空軍内部と一般国民に対し)されているのか把握していませんが、「WAGGI調査」に関しては、世の中にSNS等を通じて誤情報があふれ、敵対国から「印象操作」や「情報戦」が仕掛けられている中、組織が構成員に伝えたい内容が、「部内広報」を通じて正しく伝わっているのかを確認する手段として、自衛隊でも一考の余地ありかもしれません

「搭乗員意識調査」の方は、搭乗員の金銭面での不満にこたえ、ボーナスを増額したと記事は伝えていますが、他の職種の兵士は当然不満を持つと思いますよねぇ・・・「なんでパイロットだけが・・・」と。脅威が変化しているのに、「パイロットだけが重視され、ボーナス貰えるのかよ・・」と。

米空軍パイロット不足関連
「コロナ後の民間との争奪戦に備え」→https://holylandtokyo.com/2021/10/17/2271/
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holylandtokyo.com/2020/08/26/533/
「ヘリ操縦者養成から固定翼削除試行」→https://holylandtokyo.com/2020/08/07/517/
「身長基準を廃止」→https://holylandtokyo.com/2020/05/27/682/
「Fly-only管理の募集中止」→https://holylandtokyo.com/2020/03/25/789/
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holylandtokyo.com/2020/02/27/838/
「採用の身長基準を緩和」→https://holylandtokyo.com/2019/11/29/2985/

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グアム南西900㎞のヤップ島飛行場整備に600億円 [米空軍]

グアム、テニアン、パラオ、比のBasa飛行場に続き
ミクロネシア3国との協定COFA予算がピンチな中
太平洋戦争の日本軍基地跡の飛行場に

Yap island2.jpg3月14日付米空軍協会web記事は、米空軍がミクロネシア連邦ヤップ島(Yap島)飛行場の滑走路延長や誘導路や飛行場設備整備のための総額600億円のプロジェクトの初年度として、2025年度予算案に予算130億円を盛り込んで、グアム、テニアン、パラオ(陸軍が主導)、比のBasa飛行場に続くACE(Agile Combat Employment)構想の分散運用先として活用しようとしていると報じています

ヤップ島(Yap島)は4つの島で構成され合計面積約100平方キロの大きさで、グアム島の南西920㎞、パラオの北東470㎞に位置し、比のマニラまで1900㎞、台湾まで2350㎞の位置にあるミクロネシア連邦の島で、太平洋戦争時は日本軍の飛行場が置かれた場所である西太平洋戦域での要衝です

yap airport.jpg先日の記事でミクロネシア3国(パラオ共和国、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国)と米国の自由連合協定(COFA:Compacts of Free Association)延長に関し、米議内での予算承認が難航している件をご紹介しましたが、COFAで3国の国民は「米国に住み、働き、米軍に入隊することができ、米国政府が米国民に提供している様々なプログラムとサービスを受けることが可能な」特権を享受できる代わりに、米軍が自由に出入りできる権利を確保している極めて重要な西太平洋の拠点です

yap airport3.jpg繰り返しご紹介してきたように、ACE構想では、戦力を分散配備して敵攻撃を難しくすると同時に被害を局限し、強靭な我の態勢を確保して本格的な敵と戦おうとしており、米空軍は兵士の教育訓練から作戦コンセプトから演習に至るまで、全てをこの構想に沿ったものに変革しようとしています。

例えば昨年の「Cope North 23」演習では、グアム、ヤップ、テニアン、サイパン、パラオのほか、ロタ島や硫黄島などの島々でも作戦行動訓練を行って、大規模基地との比較で各種支援体制や設備が不十分な場所からの作戦発起能力向上を目指していることです

2025年8月工事開始計画の予算説明資料には・・・
Yap island4.jpg・ヤップ空港は、インド太平洋戦域で活動する航空機にとって、重要な展開先となる可能性を持つ
・そのためには大型機の離着陸が必要だが、滑走路が短すぎ、航空機停止装置(arresting systems)など重要な設備が不足。
・滑走路延長は大型航空機の迅速かつ安全な離着陸を可能にし、航空機駐機能力の追加や滑走路へのアクセス改善は、飛行場能力全体の拡大に不可欠
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yap airport2.jpgミクロネシア3国と米国との自由連合協定(COFA)の20年延長に必要な約1兆円の米議会承認と、このヤップ飛行場の整備費用約600億円の確保がうまくいきますよう、祈念申し上げます

でもですねぇ・・・戦力を分散して敵の攻撃を困難にすると言っても、両手の指で十分にカウント可能な程度の数の飛行場ですから、それぞれに数発弾道ミサイルを撃ち込めば、それなりの期間機能停止にすることは容易でしょうし、分散に必要な輸送力や人員配置を考えるとなかなか厳しい戦いです

ミクロネシア3国とのCOFA協定延長難航
https://holylandtokyo.com/2024/03/13/5623/

米空軍のACE構想関連記事
「初のACE構想統合&多国間演習」→https://holylandtokyo.com/2024/02/13/5529/
「PACAFはACE運用態勢未確立」→https://holylandtokyo.com/2023/09/19/5048/
「生みの親が現状語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「欧州米空軍がACE確認演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「GuamでF-35等が不整地離着陸訓練」→https://holylandtokyo.com/2021/01/29/310/
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/

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更にKC-46 給油機とT-7 練習機開発は遅れます [米空軍]

既に3年以上遅れている両機種ですが、更に1年遅れが確実に
共にB社が前CEO時代に契約獲得のため背伸び提案した案件
共に固定価格契約で、ボーイング社の自腹開発費 1兆円に近付く

KC-46 RVS.jpg3月11日に2025 年度の国防予算案が米議会に提出され、要求予算説明のため、米国防省&米軍高官による説明が様々な場所で始まっていますが、契約時に画期的な固定価格契約や、デジタル設計など最新技術を利用した効率的かっ開発リスクの低い新機種開発を大宣伝していた 2機種が、どろ沼から抜け出せずボーイング社を苦しめています (身から出た錆ですが・・・)

T-7 練習機の運用体制確立は更に1年遅れ 2028年に
T-7A 8.jpg米空軍が老朽化が進むT-38 練習機の後継機として、当初計画では 2024 年に初期運用態勢 IOC を確立するはずだった T-7 練習機は、デジタル設計を取り入れ開発期間や経費を抑制する手法で話題を集め 2018 年に契約が結ばれましたが デジタル設計は「万能ではなく」、ロックウイング問題、射出座席の不具合、部品の欠陥等が次々と露呈し、一度I0Cを2027年に遅らせましたが、諸問題の改善が進まず、更に2028年までずれ込むことが明らかになりました

この開発の遅れにより、2025年度に14機導入を予定(計 351機購入計画)していたところ、予算案では7機にまで削減されています。

米空軍の悩みパイロット不足がさらに悪化
T-7A 7.jpg●T-7 開発の遅れにより、稼働率低下が著しい T-38 練習機を使用した米空軍パイロット養成計画は大きく後れ、パイロット不足を加速させています。
●パイロット養成を担当する第 19空軍司令官は、「エンジン維持整備問題からT-38 飛行時間が制限され、年間 1500名の操縦者養成計画がとん挫している。900人以上が飛行訓練に入る前に立ち往生していると述べ、200 人以上が飛行訓練開始までに 9 カ月以上待つことになっている」と厳しい状況を訴えています

KC-46 の給油操作システム RVS 改修がさらに遅延
KC-46 RVS 2.0.jpg3月12日に下院議員の質問に対応した米空軍ハンター調達担当次官補は、KC-46 の改良型RVS (Remote Vision System:RVS2.0 と呼ばれる)の導入が、米空軍とボーイング社が 2022年に約束した2025年10月には間に合わず、「恐らく2026年にずれ込むことになる。詳細な計画は後ほどお知らせする」と述べ、遅延要因として「スケジュールのプレッシャー(意味不明!)」と「FAA 承認手続き」を挙げ説明しました。

この問題を2020 年ころから延々と取り上げていますが、2020 年にボーイングと米空軍が合意した 2024年3月の提供開始が、サプライチェーンや FAA 承認遅れで25年10月まで再延期され、更に今回延期された「ドロ沼」案件です

KC-46 RVS 2.0 2.jpg米空軍は2022年9月、米空軍輸送コマンド司令官が男気を見せ、「我々が明日の戦いに敗北すれば 10年後はない。私には今KC-46 が必要なのだ」とリスク覚悟で運用制限付きで作戦投入開始宣言を行っていますが、そんな現場の苦労を知ってか知らずか、ボーイングは我が道を進んでおり、連保航空局 FAA の信頼も失って承認手続きに時間がかかる悪循環に陥っています(ボーイング製民間機の各種トラブルも含めた悪名が轟いている状態です)
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Calhoun Boeing.jpgDavid Calhounボーイング現CEOは、前CEOが契約獲得のため無理な価格や納期条件でKC-46とT-7を固定価格で引き受けたつけを払わされ、すでに1兆円近い開発遅延費用を自腹支出している状態にあることから、E-3 早期警戒管制機の後継 E-7 契約に関し極めて慎重な価格見積もり(高めの設定)で、米空軍と折り合えない状態が続いています

空中給油機は対中国本格紛争対処のカギであり、パイロット不足は航空機運用だけでなく組織運営面(司令部やペンタゴン等での幕僚不足)で大きな足かせとなっており、両機種の度重なる納期遅延は米空軍に重くのしかかっていますが、加えて同じく米空軍最優先案件 E-7 でもボーイングが「悪目立ち」しています

KC-46A 関連記事
「RVS2.0導入2025年まで更に遅延」→https://holylandtokyo.com/2022/10/14/3741
「ゴール動かして運用開始宣言」→https://holylandtokyo.com/2022/09/21/3688/
「空軍長官:KC-46の固定価格契約は誤り」→https://holylandtokyo.com/2022/06/06/3323/
「KC-XYZの再検討再整理表明」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/31511
「RVS 改修案に合意」→https://holylandtokyo.com/2022/04/27/31811
「恒久対策は今も未定」→https://holylandtokyo.com/2022/01/13/2605/
「50機目受領も恒久対策未定」→https://holylandtokyo.com/2021/11/22/2424

T-7練習機(T-X 計画)関連の記事
「デジタル設計の優等生 T-7が3年遅れに」→https://holylandtokyo.com/2023104/24/4539/
「1年遅れ:女性意識の射出座席が」→https://holylandtokyo.com/2022/12/19/4065/
「デ設計技術で審査短縮や新規参入促進」→https://holylandtokyo.com/2022/08/23/3550/

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バクテリアで簡易滑走路舗装を4日間で [米空軍]

大量のセメントや舗装用機器の輸送不要
西太平洋の島々へのインフラ整備に
既にへり離着隆パッドで試行使用が

Biocement.jpg2月29日付米空軍協会 web 記事が、2月中旬開催の AFA Wartare Symposium で展示された風味深い最新技術から、大量のセメントを持ち込んで使用することなく、自然の大地に「農業用噴霧器」である種のバクテリアを撒くことで、4日間以内(整地の時間は除く)に航空機や重量車両が滑走や走行可能な硬い表面を構築可能な技術を紹介しています。

記事によれば、民間企業は従来のセメント製造で排出される CO2 を削減する方法として、数十年前からバイオセメント(Biocement)を研究しており、今回展示されたのは自然発生細菌である「S. バストゥリ菌(S. pasteuri)」を活用した手法で、空輸で持ち込み、または現場増殖させた菌を土壌に噴霧することで地表を強固にすることが可能とのことです。

Biocement6.jpg具体的には、「S. パストゥリ菌」を地表に蒔さ、人が塩化カルンウムと有機化合物である尿素を追加すると、菌がこれらの成分を炭酸カルシウムに変換し、土壌粒子を結合させて硬化した表面を形成し、航空機や重量車両が滑走や走行可能な硬い表面を構築するそうで、上記全プロセスに必要な時間はわずか96時間未満だとのことです。

もちろん土壌の性質やバクテリアに「餌を与える」頻度等々によって、完成表面の状態に違いが生まれ、今も様々な条件でより良いバイオセメントを求めた研究が官民を挙げて続いているとのことですが ちなみにセメント舗装の場合は、大量のセメントを現場に持ち込み、セメント製造施設を現場に構築し、更に工事用の重機を持ち込み、作業員の宿泊施設などのインフラを整えるなどして、少なくとも数か月は工事が必要とのことです。

Biocement2.jpgまた、バイオセメントは恒久的な飛行場施設構築を目的としたものではなく、あくまで一時的な施設用と考えられていますが、撤去する際は耕転機等でバイオセメント舗装を砕くことで自然に還り、塩化カルシウムは溶解しませんが、撤去に多くの労力を要しない点でも優れています。一方でコンクリート舗装の場合だと、完成した施設を砕し、地面から掘り返し。 その場所から「セメントくず」を搬出輸送+処分する必要が生じます。

米空軍は少なくとも 2019 年からバイオセメントの活用に向けた検討を行っており、担当少佐が「基本的に必要なのは農業用噴霧器と貯水タンクだけなので、現場に持ち込む資材はほとんど不要」と語る利便性を追求し、CV-22や海軍 MH-60Sへり用の着隆バッドがすでに設置され、実用性確認が行われているようです。
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Biocement3.jpg記事は担当少佐が、「私がよく聞かれる質問の一つは、このバクテリアを地面に撒くと、(バクテリアが自然増殖して制御不能になり)島全体がセメントになってしまうのでは? 世界がバクテリアに征服されてしまうのでは?、との問いです」とインタビューで述べ、「(バクテリアは「餌を与える」等の世話を必要としており、自然増殖して世界を征服することはない」と回答しているとのことです。皆様、ご心配なく・・・

米空軍の ACE(Agile Compat Employmen)構想など、「分散展開地や輸送能力や複数の技量を保持する人員や機材や弾薬の確保等々の観点から実戦での活用は困難だろう・・・」と斜に構え、「生暖かく」見守っているつもりのまんぐーすですが、実際に一歩でも半歩でも前進しようと努力されている現場の姿を見聞さすると、背筋が伸びる思いがいたします。

米空軍の ACE構想関連記事
「初の ACE 統合&多国間演習」→htps:holylanatokyo.com/2024/02/13/5529/
「PACAFはACE運用態勢未確立」→https://holylandtokyo.com/2023/09/19/5048/
「生みの親が現状語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397

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米空軍が人手不足に退役者の限定期間再雇用 [米空軍]

1000名を元の階級で4年間限定
士官も下士官も。2017-21年以来の措置
募集重点職域は士官23職種、下士官11職種

VRRAD3.jpg2月7日付米空軍協会web記事は、webサイト上で入手した資料(米空軍に真偽を確認の後、米空軍が後追いで公式発表)を基に、米空軍が2月8日から2026年1月31日までの約4年間、募集難や退職者増が原因で生じている人手不足に対処するため、除隊者を元の階級で4年間限定で約1000名採用するVRRAD(Voluntary Retired Return to Active Duty Program)計画を開始すると報じています

VRRAD.jpg米空軍は2023年度、募集目標を24年ぶりに達成できず、11%も目標を下回ったことを受けた「苦肉の策」ですが、記事によると末尾に示す士官23職種、下士官11職種を「重点募集職種」とし、以下の様な募集要項で2月8日から応募を受け付けるようです

●士官は除隊時に大尉から中佐、下士官は最上級軍曹(E-9)から二等軍曹(E-5)の経験者を、除隊時と同じ階級で採用
●採用する場合は、応募から4-6か月後に採用

●航空ボーナスや昇任の対象外。SkillBridgeや除隊後の民間への移行を支援するプログラムは対象外
●VRRAD応募者は、自主的に志願するか、戦闘準備態勢にある部隊に配属された場合にのみ、前線に展開する可能性があるが、その際は配属基地や任務が変更される可能性があ

VRRAD4.jpg2023年度の募集目標を達成できないと判明した際、米空軍省の人的戦力計画担当次官補のAlex Wagner氏は、「(2024年度の募集目標達見通しについては、米国全体の労働市場の状況から見て、)注意深く見守る必要があるが、楽観的に見ている」とコメントしていましたが、「募集難や退職者増」で現場に穴が開いており、「4年間限定」ながら応急措置が必要な状態とのことです

VRRAD計画の開始に関し、米空軍司令部人事計画部長のCaroline Miller中将は、「同計画は、経験を有する退役者人材を正規兵として受け入れ歓迎することで、本格紛争に備えて準備に取り組む部隊に生じている「ギャップ」を埋めるための戦略的な戦力増強策(strategic enabler)である」と説明しています
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VRRAD2.jpg記事は、VRRADに対する「初動における評判」が「低い:unimpressed」とし、原因は応募に対するボーナスや特典がないからだとしており、前途多難な模様です。下に示す「重点職域」は広範にわたっており、民間でも通用しそうな「職域」が並んでいることから、さもありなん・・・です

下の過去記事でご紹介しているように、最近空軍は「募集対象年齢上限を39歳から42歳に引き上げ(5軍で最高齢)」、「下士官の勤務期間機会を2年延長」、「搭乗員への新ボーナス試行」等を行っていますが、「とりあえず何でもやってみよう」的な状態にあるようです。この状態は世界の軍隊で同様でしょうし、少子化の進む日本でも「対岸の火事」ではありません

士官の「重点募集職域」
• 11X – Pilot
• 12X – Combat Systems
• 13B – Air Battle Manager
• 13H – Aerospace Physiologist航空宇宙生理学者
• 13M – Airfield Operations
• 13N – Nuclear and Missile Operations
• 14X – Information Operations/Intelligence
• 15X – Operations Analysis and Weather
• 16X – Operations Support
• 17X – Cyber Operations
• 18X – Remotely Piloted Aircraft
• 19Z – Special Warfare
• 21X – Logistics
• 31P – Security Forces
• 32E – Civil Engineering
• 35P – Public Affairs
• 38F – Force Support Officer
• 61X – Scientific/Research
• 62X –Developmental Engineering
• 63X – Acquisition
• 64P – Contracting
• 65X – Finance
• 71S – Special Investigations

下士官の「重点募集職域」
• 1C171 – Air Traffic Control航空交通管制官
• 2G071 – Logistics Plans
• 2T377 – Fleet Management & Analysis
• 3F071 – Personnel
• 3P071 – Security Forces
• 4A271 – Biomedical Equipment生物医療機器
• 4E071 – Public Health
• 4N071 – Aerospace Medical Service航空宇宙医療サービス
• 4R071 – Diagnostic Imaging
• 7S071 – Special Investigations
• 8R000/8R200 – Recruiter

新兵募集難&離職者増への対応
「海軍が募集で高卒資格撤廃」→https://holylandtokyo.com/2024/02/07/5522/
「空軍が募集年齢上限を42歳に」→https://holylandtokyo.com/2023/10/31/5184/
「空軍が24年ぶりに募集10%未達へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/25/5035/
「入隊学力試験に電卓持ち込み可へ」→https://holylandtokyo.com/2023/08/29/4976/
「募集難に合法移民へ猛烈アプローチ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/16/4743/
「兵士慰留に職種変更容易化へ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/12/4608/
「米空軍が体脂肪基準緩和へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/07/4494/
「歩きスマホやポケットハンドOK」→https://holylandtokyo.com/2021/12/16/2519/

米空軍パイロット不足関連
「コロナ後の操縦者争奪戦に備え」→https://holylandtokyo.com/2021/10/17/2271/
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-20
「ヘリ操縦者養成から固定翼削除試行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-06
「米空軍がパイロット募集の身長基準を廃止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-23
「Fly-only管理の募集中止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-15
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-19
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18

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米空軍2025年度予算案で250機削減で史上最少機数へ [米空軍]

250機削減で91機新規購入の予算案11日議会へ提出
F-35は前年48機から更に42機へペースダウン
削減機には32機F-22、65機F-15C/D、56機A-10など既定方針で

2025 AirForce Budget.jpg3月11日、米国防省が米議会に2025年度予算案(2024年10月から使用予算案)を提出し、物価インフレ率を考慮しない段階で前年度比1.6%増で、インフレを考慮すると実質マイナスとなる予算案(宇宙軍は名目2%減で、インフレ考慮だと4%近い減額)となっており、2023年夏に成立した財政責任法(Fiscal Responsibility Act)のあおりを受け、厳しい内容となっています

米空軍は元々、2025年度から本格的に旧型の航空アセットを積極的に早期退役させ、浮いた維持費や整備費を新しい装備導入に振り向ける近代化優先方針を示しており、米空軍省の予算担当次官補Greiner少将は、「我々は近代化に重点を置いており、旧型航空機を退役させることで節約&確保可能となる約3000億円を、新たな航空機開発導入などに充当する」と空軍の自助努力の姿勢をアピールして予算案を語っており、

2025 AirForce Budget5.jpgKendall空軍長官も予算案提出の会見で「米空軍は許容できるリスクレベル範囲内で、空軍の能力を何とか守れると考えている」と説明していますが、予算支出を厳しく制限する「財政責任法」が成立したのは空軍内での2025年度予算案骨格議論が終わった後だったことから、厳しい追加削減を迫られた結果であることは間違いありません

仮にこの予算案がそのまま成立したとすると、米空軍の保有する航空機数の総計は、半世紀をさかのぼっても史上最低規模となり、5000機を割り込む4903機となる模様だと米軍事メディアは報じており、その機種別削減計画数と新規導入機数は下の2つの表でご覧いただくとして、本日はその内訳に関する米空軍幹部の説明ぶりや米メディアの見方を合算して、11日付米空軍協会web記事からご紹介いたします

左が削減機種&機数 右が調達機種&機数
2025 Cut.jpg2025 Add.jpg

















●F-35Aを42機(前年48機から減少)、F-15EXを18機(前年24機から減少+打ち止め)、合計60機の新型戦闘機導入を考えているが、新戦闘機を毎年72機導入したいとの空軍長期目標には達していない。この背景には無人ウイングマン機CCA導入に際し、米空軍の戦闘機部隊を「再定義したい」との空軍参謀総長の3月上旬の発言もあり、今後の推移を見守る必要がある。
2025 AirForce Budget6.jpg●Jones空軍副長官は「戦闘機数は短期的には減少するが、CCAにより長期的には計算結果が変わるだろう」「F-35の調達遅延は新ソフトTR-3開発導入遅延によるもの」と説明している

●2025年度には、老朽化してほとんど飛行できない機体もある65機のF-15C/Dや、2029年までに完全退役を予定する56機のA-10の退役を計画し、出力の弱い旧式エンジンを搭載している26機のF-15Eも廃止を希望している。ただ自己防御装置を強化している一部の改修済F-15Eは、アップグレードして継続活用を考えている

2025 AirForce Budget3.jpg●議会等で強い物議を醸しているのは際も古いタイプの「ブロック20」F-22戦闘機32機の退役で、空軍は「ブロック 30/35」機体の能力向上予算確保のためにも、また次世代制空機(NGAD)の開発検討費用捻出のためにも、戦闘に耐えられない「ブロック20」機体の退役を要求している。なお空軍は過去数年で、F-22 保有機数を 185 機から 153 機に削減している
●第4世代戦闘機の新規導入で様々な議論を巻き起こしたF-15EXについては、当初144機の導入を計画していたが、2025年度の要求18機を最後として、計98機で調達を打ち切ると空軍は発表している

2025 AirForce Budget7.jpg●T-38練習機の後継機T-7練習機に関しては、射出座席開発などの重要な問題に直面しているが、老朽化で維持整備負担や経費が激増しているT-38維持の負担を軽減して飛行時間を確保すべく、7機を導入してパイロット養成需要に宛てたい
●1950年代から使用して老朽化が著しく維持整備費が急増している16機のKC-135を退役させ、KC-46A空中給油機を15機調達を計画している。また本格紛争に備えた次世代空中給油アセットNGAS開発のため、同開発専従のオフィスを立ち上げ必要な投資を行う、とも空軍は説明している

別報道からその他の予算部分について
2025 AirForce Budget2.jpg●「財政責任法FRA」により米空軍が追加削減を迫られたのは約3000億円である
●ミニットマンⅢ・ICBM後継のGBSD計画は、2026年度に大きな選択を迫られるが、どのような対応が可能か検討している

●F-35やF-15Eの調達機数は削減しているが、次期制空機NGADや無人ウイングマン機CCAの開発費は維持している
2025 AirForce Budget4.jpg●空対空ミサイルAIM-120 AMRAAMや空対地ミサイルJASSM-ERについては、米議会の承認を得て是非とも複数年契約をお願いしたい。複数年に渡る大きな規模の発注を準備しなければ、材料調達や生産ラインが非効率になるなど、多くの不具合が生じる事を説明したい

●パイロット不足については、機体の操縦席を埋めることに問題はないが、パイロットが就くべき幕僚ポストに配置する要員が不足している。操縦者養成に関しては、T-38稼働率が急落する中、T-7開発が数年遅れることがボトルネックになっている
///////////////////////////////////////

もう少し国防省全体の大きな視点から2025年度予算案を説明し、次に各軍種予算を概観し、最後に細かな部分を見ていくのが王道ですが、複雑に問題が入り組んで頭の整理がつかず、米空軍の枝葉末節である「航空機購入と退役」の話題紹介から入ってしまいました。

GBSD8.jpg米空軍で一番大きい問題(国防省全体での最上位級)は、次期ICBM(ミニットマンⅢシステム全体の後継)開発予算で、特に地下サイロや指揮統制施設や通信施設関連の予算見積もりが爆発的に膨らみ、米空軍の年間予算を遥かに超える5兆8000億円規模となっている問題です。空軍は実質さじを投げた形で、誰がどうこの事業を裁くのかさえ見当がつかない状況になっている現状から、核抑止3本柱の見直しもあり得そうな気がしております

米空軍幹部やOB専門家の「極東で戦闘機無力発言」
「嘉手納からの米空軍F-15撤退を軍事的合理性から考える」→https://holylandtokyo.com/2022/11/09/3904/
「米軍F-35調達機数削減の予兆を指摘」→https://holylandtokyo.com/2023/07/18/4823/
「新空軍2トップはF-35調達数削減派」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/

今はどうなってるんでしょうか?
米空軍の戦闘機構成議論
「戦闘機の近未来体制は」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/

超巨大プロジェクト次期ICBMシステム整備の苦悩
「空軍だけでは実質無理」→https://holylandtokyo.com/2024/03/01/5591/
「法抵触の議会通知」→https://holylandtokyo.com/2024/01/29/5478/
「長官が苦悩&不安を語る」→https://holylandtokyo.com/2023/11/22/5244/

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センサー搭載型CCA原型候補XQ-67が初飛行 [米空軍]

XQ-58踏まえ第2世代センサー型CCA共通基礎機体とか
あくまでGeneral Atomics社の候補機体ですが
センサー型OBSSとは別に兵器型OBWS構想も披露

XQ-67A.jpg2月28日、米空軍の最優先事業で2020年代中の導入を目指す無人ウイングマン機CCA(collaborative combat aircraft)に関し、センサー型CCA機体候補のGeneral Atomics社「XQ-67A」が初飛行に成功したことを契機に、同機をGA社と開発してきた米空軍研究所AFRL関係者が、CCAの開発方向性について語っていますので、理解不十分なところはありますが、頭の整理を兼ね概要をご紹介しておきます

強固な防空網を備える敵を想定した本格紛争に備えて、有人機損耗による人的被害を押さえ、有人アセット不足を補完するため米空軍が開発中のCCA計画は、約1000機を導入する仮設定で開発が加速されていますが、2月中旬にKendall空軍長官が、第1弾企業選定で現在候補の5社(ボーイング、ロッキード、Nグラマン、AndurilとGA社)から数か月後に2-3社に絞り込むと発言していたところです。

XQ-67A 2.jpgその発言と今回のXQ-67A初飛行の関係が良く把握できていませんが、初飛行を報じる3月1日付米空軍協会web記事から察すると、「第2世代CCAプラットフォーム」と呼ばれているXQ-67Aは、CCA計画で導入される2種類のCCA、つまりセンサー搭載型OBSS(Off-Board Sensing Station)と兵器搭載型OBWS(Off-Board Weapons Station)の共有部分(自動車の共有シャーシーのイメージ)を、

「第1世代CCAプラットフォーム」であったXQ-58 Valkyrie等の実績を基に製造されたもので、OBSSとOBWS両方の共通基礎部分を設定することで、搭載するセンサーや通信機材や電子戦機材や攻撃兵器を変更するだけでより安価に開発リスクを下げたCCA開発&導入が可能にすることを狙っており、第1弾企業選定対象の5社にも基礎的成果が共有される性格を持っているようでようです

XQ-67A 3.jpgちなみにセンサー搭載型OBSSと兵器搭載型OBWSの違いは「読んで字のごとく」ですが、センサー搭載型OBSSが「速度は遅く、長い在空時間」を追求する一方で、兵器搭載型OBWSは「より高速で機動性も備え、行動半径は求めるが在空時間は短い」機体を求めるようで、初飛行のXQ-67Aは共通機体基礎を基にセンサー搭載型OBSS仕様の機体だそうです

なお、米空軍研究所AFRLとのXA-67A共同開発を、Kratos(XQ-58 Valkyrie製造企業)と争って2023年2月に獲得したGA社は、XA-67Aを含む同社のCCA関連開発(Gambit計画)において、共通機体基礎部分の価格が全体の7割を占め、残りの3割が搭載するセンサーや通信機材や電子戦機材や攻撃兵器キット価格になる見通しを明らかにしています
/////////////////////////////////////////

XQ-67A 4.jpgCCA計画の全体像把握が不十分なまんぐーすですので、上記記事にご認識や誤解がある可能性がありますが、ご勘弁ください。

米空軍は、関連企業の競争を促しつつ、共通部分を明確にしてして企業競争をより本質的な部分に絞り込み、同時にコスト低下にも配慮するアプローチをCCAで採っているようで、共通部分を成熟させる検討を「XQ-58 Valkyrie」や「UTAP-22 Mako」、更には豪州も巻き込んで行ってきた・・・と整理できそうです(確信はありませんが)

CCA関連の記事
「第1弾候補企業を2-3社に」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/5595/
「あと6年で実用化する試験準備」→https://holylandtokyo.com/2023/11/08/5153/
「AIアルゴリズム集大成試験」→https://holylandtokyo.com/2023/08/08/4922/
「2020年代後半導入へ」→ https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「長官:NGAD 200機、CCA 1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
「関連技術を23年から本格開発へ」→ https://holylandtokyo.com/2022/11/22/3948/

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米空軍とボーイングがE-7価格交渉で激突 [米空軍]

KC-46とT-7とVC-25で既に1兆円自腹のB社
少しだけ豪英版と仕様を変えたい米空軍
最優先迅速化事業なのに7か月も交渉停滞か

E-7 NATO.jpg2月20日付米空軍協会web記事が米空軍幹部たちの話から、米空軍が最優先事業として稼働率2-3割とも言われるE-3早期警戒管制機の後継として導入決定したE-7 Wedgetailの価格交渉が、既に固定価格契約KC-46とT-7等のお陰で1兆円自腹支払いさせられているボーイング社の新CEOによる厳しい事業精査方針を受け、米空軍特別仕様部分(non-recurring engineering)の価格設定で当事者間に2倍の開きが双方にあり、契約が進まない状態だと報じました

E-7は既に豪、韓、トルコが導入済で、英も近く受領で、米国の後にNATOも発注した今や国際標準の空飛ぶレーダー&作戦指揮統制機ですが、米空軍幹部が「最終的には、ほとんど英空軍発注仕様の機体と変化ない」と主張しつつ、昨今の中国のサイバー戦力強化や重要航空アセット攻撃能力強化傾向から、「他国機と相互運用性を維持しながら、米空軍独自の仕様も要求」している部分に関し、ボーイング側の開発経費見積もりと空軍の想定がかけ離れている模様です

Calhoun Boeing.jpgボーイング社が契約に極めて慎重なのには理由があり、現ボーイングCEOのDavid Calhoun氏が就任した2020年4月以前に、前CEOが無謀な固定価格契約した「KC-46」「T-7練習機」等のコスト超過&自腹支払い分が1兆円($7 billion)に達するデタラメ振りで、Calhoun氏は厳正に契約を精査し、入札には積極性を控えるとたびたび発言しており、2022年4月に米空軍仕様機体の開発&製造契約を結んではいるものの、要求の細部を後で知らされ、その後の交渉に同社が極めて慎重に臨んでいるからだそうです

米空軍はE-7を可及的速やかに導入したいと考えており、2027年に初号機を受領し、2032年までに計26機を受け取る計画を持っていますが、いきなり入り口部分で大きな壁にぶつかっており、米空軍首脳も既に豪・韓・トルコで運用開始している機体であるだけに、最後の詰めの甘さに地団太踏んでいるようです

本件に関しKendall空軍長官(2月12日)
Kendall AFA5.jpg●ボーイング社と価格合意を得るのに苦労している
●地上移動目標を衛星や他センサーを総合的に組み合わせて探知追尾する方式が最終到達目標であり、E-7はそこへ向かう途中の「橋渡し役」であるが、中国がE-7の様な重要指揮中枢を攻撃する能力(ステルス機や長射程空対空ミサイル)を強化していることから、空軍として戦力は常に見直しながら前進しなければならない

Andrew Hunter調達担当次官補(2月13日)
●ボーイング社は、自分たちが期待される仕事の全範囲を、しっかり理解して検討しなければ入札しない。様々な状況を考えれば、合意内容に慎重になっているのは驚くべきことではない。
Hunter AF.jpg●米空軍仕様にE-7を最適化するための非定常的な設計開発部分(non-recurring engineering)に、予想を超えた開発作業が必要だと判断されたことが大きな驚きであった。我々は最終的には英空軍が調達するE-7と非常に極めて近い機体だと考えていたが、ボーイングが予想の2倍の費用を要求してきたことで、交渉が長期化している
●我々は協議を続けており、ボーイング社側の空軍要求の解釈とその具現方法、どの機能が最も重要で、どの部分を後送りできるか等について話し合い、双方の隔たりを埋めて問題を絞り込むことに取り組んでいる。入札プロセスをもう少し早く回転させたい
///////////////////////////////////////////////////////////////

E-7 Wedgetail3.jpg米空軍が2023年2月末にボーイング社と米軍仕様E-7開発契約を約1800億円で結んだ際は、青息吐息のE-3の稼働率が4割以下に落ち込んでいるとご紹介しましたが、今現在は5機のうち1機しか稼働状態にない惨状とのことです

しかしボーイング社は、民航機分野でも墜落事故から復調の兆しがみられると思っていたら、別の機体のドアが吹っ飛んだりして大混乱ですが、会社として大丈夫なんでしょうか? 現CEOには頑張って頂きたいと思います

米軍とE-7導入関連の記事
「今後の能力向上を米英豪共同で」→https://holylandtokyo.com/2023/07/21/4871/
「E-7とE-3違いを概観」→https://holylandtokyo.com/2023/03/30/4447/
「初号機を2027年納入契約」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/4358/
「導入を正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「E-3は2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/
「後継機検討のRFI」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711
「米空軍航空機は高齢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-27

「NATOもE-7」→https://holylandtokyo.com/2023/11/21/5262/

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突然グアムで実弾ARRW極超音速兵器使用の講習会 [米空軍]

3月17日に試験実施
試験の成否や結果に関する細部発表はなく、「関連能力に関する貴重な知見が得られた」とのみ声明
https://www.defensenews.com/air/2024/03/19/us-air-force-conducts-final-test-of-lockheeds-hypersonic-missile/
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緊急追加情報! 中国に見せつけるARRW発射試験
https://www.airandspaceforces.com/air-force-test-arrw-hypersonic-missile-pacific/
Kwajalein Atoll.jpg米空軍がARRW発射試験情報(航行危険情報)を公示
3月5日から3月10日の間に実施予定と
マーシャル諸島クェゼリン環礁(Kwajalein Atoll)試験場で
グアム基地の2500マイル南東から射程2100マイルで
最終試験を西太平洋で実施し、HW探知追尾能力も検証か
////////////////////////////////////////////////

23年3月に装備化断念発表のARRWをなぜ最前線基地に?
極超音速兵器全体の基礎を学ぶ講習会と説明も
突然のB-52HとARRWと受講者写真公開に波紋広がる

Guam ARRW2.jpg2月28日付米空軍WEB サイトが、アンダーセン基地([コピーライト]グアム島) 広報が配信した同基地で開催の「極超音速兵器講習会:Hypersonic Weapon Familiarization Training」の様子を、10枚の講習模様写真と短い説明文で掲載しましたが、米本土の開発基地から「門外不出」だった当該兵器が、いきなり最前線基地グアムに現れ、しかもそれが実弾で B-52H爆撃機に搭載されていたことで、軍事メディア や専門家らが大騒ぎとなっています

まず基礎情報として、米空軍の極超音速兵器(以後は HW と表記)開発は・・・ (なお米軍と米海軍は、共通部分が多い地上発射型と艦艇発射型を共同開発中で、隆軍は2023年に最終試験を行ってワシントン州の部隊で実配備開始予定だったが、2024 年に最終試験がずれ込み 遅延中。海軍の進払と合わせ、細部は末尾の過去記事等を参照)

●Kendall空軍長官は、中国はA2AD 戦路で米軍を遠ざけたいからHW を重視するが、米国は中国の高価値目標攻撃用(地上 C2 施設等)の一つの選択肢として保有し、、それは中国抑止のためだから、空軍内の優先度や重要性はそれほど大きくないと位置づけ

●爆撃機搭載の ARRW(Air-Launched Rapid-Response Weapon)
Guam ARRW3.jpg・ロッキード開発のブースト&グライド方式で、短射程
・当初開発不調で2回試験に失敗も、2022年 12月に初成功後、2023年8月と10月にも成功

・しかし2023年3月末、Kendall 長官とHunter 調達次官補が、ARRW は開発までで、調達はせず、HACM に注力と発言 (ただ2024年に地上目標攻撃を含めた ARRW 最終試験を実施し、データ等取りまとめ、後の開発案 件の資として残す)
・調達なし決定に際し Hunter 次官補は、「我々には計画があるが、公開の場では話せない」とのみ言及。2024年3月中旬議会提出の2025年度予算案には何らかの方向性が出る模様

●戦闘機タイプに搭載の HACM (Hypersonic Attack Cruise Missile)
・小型だがスクラム Jet エンジン等を搭載し長射程
・レイセオン主契約でエンジンはNG社
・2021年9月に3度目の正直で基礎試験に成功し、2022年 11月末にレイセオン社とプロトタイプ 開発契約を約180億円で締結

以上のような経緯の ARRWが、最前線グアムに突然登場でしかも実弾ということで、例えば3月4日付米空軍協会は驚きを表現し・・・・

Guam ARRW.jpg●過去の ARRW 開発試験はすべて加州エドワーズ空軍基地離発着で行われ、他の基地への展開など なかった開発中の兵器 ARRW が、対中国最前線のグアム島基地に突然現れ、、しかもそれが実弾を示す黄色いテープを巻かれている
●更にいきなりグアムで「極超音速兵器講習会:Hypersonic Weapon Familiarization Training」が開催&紹介され、約25名の兵士(第23爆撃飛行隊と第49 試験評価隊の兵士)が参加

Guam ARRW5.jpg●本講習の目的を空軍 web 記事は、「複数の航空機コミュニティーにHW(ARRW だけでなく、HACM や他のタイプも含め)の基礎知識を教育」、「HW 使用に関する討議を通じ作戦運用を考察」、「HWの兵站支援全般を理解」することと紹介。
●なぜ突然「HW 講習会」? 調達&部隊配備しない ARRW でなぜ? なぜグアムで?  なぜ実弾を? なぜこの配信をアンダーセン基地広報が? この後に試験発射を周辺で実施?・・・などなど、様々な疑問が飛び交う状況も、空軍からは一切追加情報なし

●B-52H には4発 ARRW が搭載可能だが、写真では1発しか確認できない。1発だけグアムへ?
●ちなみにARRWは、300発調達を前提とすると、1発あたり 22?26億円と推計され、隆海軍の地 上や艦艇発射用はその約3倍と言われている
/////////////////////////////////////////////////////

Guam ARRW4.jpgちなみに3月4日付米空軍協会 web 記事は、中国のHW である DF-17は「米海軍空母キラー」とか「グアムキラー」と呼ばれており、弾道ミサイルの先端に取り付けて射程延伸のオプションもあると 紹介しています

中国の不動産バブル崩壊やゼロコロナ政策に端を発する「中国経済崩壊」がますます顕在化する中、米軍も腰を据えて中国恫喝体制に入ったのでしょうか???

アンダーセン基地広報の写真10枚付き発表
https://www.andersen.af.mil/News/Features/Article/3690368/andersen-afb-hosts-hypersonic-weapon-familiarization-training/

米軍の極超音速兵器開発
「米陸軍の最終テスト&配備は24年に持ち越し」→https://holylandtokyo.com/2023/11/15/5224/
「ウで次々撃墜:同兵器を過信するな」→https://holylandtokyo.com/2023/06/01/4695/
「空軍がARRW配備断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「Zumwaltへの極超音速兵器契約」→https://holylandtokyo.com/2023/02/22/4313/
「バカ高い極超音速兵器」→https://holylandtokyo.com/2023/02/08/4261/
「陸軍はあと2回試験」→https://holylandtokyo.com/2023/01/17/4107/
「3回連続ARRW試験に成功」→https://holylandtokyo.com/2022/12/16/4061/
「高価な兵器は少数保有で」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「空軍長官:重要性は中国と米国では異なる」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
「潜水艦へは2028年」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-19

迎撃兵器システム開発関連
「迎撃兵器を日米共同開発で」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/

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一味違う新戦闘機族のボスACC司令官誕生 [米空軍]

ペンタゴン経験なきACC司令官に太平洋空軍司令官が
ACE構想生みの親であるWilsbach大将が就任
前任Kelly大将より年上の司令官誕生の異例人事

Wilsbach ACC3.jpg2月29日、米空軍最大の正規兵人員規模(約8万名)と戦闘アセットを保有する米空軍戦闘コマンドACCの新司令官に、直近約3年間を太平洋空軍司令官として勤務し、かつ米空軍勤務の85%の期間を太平洋軍部隊(嘉手納、アラスカ、ハワイ、韓国以外は、中東3年、米本土3.5年のみ)で過ごし、驚くことにペンタゴンでの勤務経験皆無の異例の大将で、それでいて今や米空軍の中核作戦コンセプトであるACE(Agile Combat Employment)構想の生みの親でもあるKenneth S. Wilsbach大将が就任しました

Wilsbach ACC.jpg冒頭でご紹介したように、2020年8月から約3年半ACC司令官を務めた前任のKelly大将より、1歳年上のWilsbach大将が新司令官に就任するとの軍隊制服高官では極めて異例の「年齢逆転」人事ですが、背景には米空軍勤務期間の大半をアジア太平洋軍戦域で過ごした対中国専門家で、「ACE構想の提唱者でけん引役」で、更にペンタゴン勤務が無い事を逆手に取った「型にはまらない改革への推進力」を持つ同大将への期待の表れと、まんぐーすは解釈しております

3月1日付米空軍協会web記事は太平洋空軍司令官として功績を
Wilsbach ACC2.jpg●長い太平洋軍勤務で着想したACE構想を太平洋空軍に普及し、その着想は全米軍の基本作戦運用指針として採用された
●ACE構想に基づき、第5世代戦闘機を分散運用先候補でもあるマリアナ諸島テニアン島や、政治情勢の変化を見据えたフィリピンに機を見て初展開させた
●地域の中心的同盟国である日本と韓国に大型爆撃機を展開して日韓戦闘機との共同訓練を実施する等、米日韓3か国の同盟関係が強固で緊密なことを中国や北朝鮮等に示した

記事が挙げたWilsbach新司令官が取り組む事業
●前線戦闘機部隊をF-35部隊への換装推進
●F-15EXの前線部隊での運用方針を固め展開態勢を確立すること
●A-10とF-22の段階的退役を円滑に進める事
●全世界で1000機導入を仮置きしているCCA(Collaborative Combat Aircraft)の開発を支援し、部隊導入&運用に向けてコンセプト固めと受け入れ諸準備を推進すること

2月29日の司令官交代式でWilsbach新司令官は・・・
Wilsbach ACC4.jpg●台湾の人々は現状に相当程度満足しているにもかかわらず、中国はその台湾に対する(台湾国民の思いに反する方向性を持つ)意図や姿勢を極めて明確に示し続けている。我が空軍の任務は、地域の紛争を抑止し、その安定を守ることである
●我々は中国に(作戦遂行上の)ジレンマを与えるべく取り組んでいる。空軍戦闘コマンドACCとして、どのようにジレンマを与えるか? まず第一に我の即応態勢を確立維持すること、次に戦力の近代化に取り組み、そしてそれら戦力をACE構想にも続き運用可能に鍛えることである。これら全てに前司令官のKelly大将は注力してこられたが、我々はその思いを継ぎ、全ての関係能力の拡大実現に向け前進していく

Wilsbach ACC5.jpg更に同司令官が就任式典で強調したのは
●ACC戦力発揮の中核は「米空軍の下士官」であり、その任務遂行を基礎で支える「必要なもの」を確保し、彼らが成すべきことを遂行できるように注力していく。(家族の住居や生活環境や子弟教育環境など広範にわたる勤務環境の整備や、給与や手当や引っ越し費用等の金銭面での処遇改善を示すものと思料)
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Wilsbach ACC7.jpgAllvin空軍参謀総長はACCへの期待を2月中旬に、「我々は大国との紛争に備え、再・最適化を目指している」、「その再・最適化の多くの鍵となる項目がACCに根差したものであり、ACCが実現した形を全米空軍に普及して行きたい」と、米空軍大改革を進めるにあたってのACCへの大きな期待を語っていたところです

前提となる2月12日発表の空軍大改革方針発表
https://holylandtokyo.com/2024/02/16/5579/

Kenneth Wilsbach大将の公式経歴表
https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/108478/kenneth-s-wilsbach/

Wilsbach大将関連
「ACE運用態勢にはない」→https://holylandtokyo.com/2023/09/19/5048/
「経歴紹介:次期ACC司令官候補に」→https://holylandtokyo.com/2023/05/11/4614/
「ACE構想の生みの親が語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「欧州米空軍がACE演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「F-35とF-16が不整地離着陸」→https://holylandtokyo.com/2021/01/29/310/
「若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/

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数か月後にCCA第1次募集企業を2-3社に絞る [米空軍]

米空軍無人ウイングマン計画が第1次募集佳境に
更に第2次募集も予定しソフト&アイディア勝負か
2-3年後の量産体制入りを狙い様々なタイプを模索中

CCA NGAD4.jpg2月13日、Kendall空軍長官がAFA Warfare Symposiumでの記者懇談会で、現在進めている無人ウイングマン機CCA(collaborative combat aircraft)の第1次募集審査で比較検討中の5社の提案について、数か月後には2-3社(予算上の制約で2社になる可能性が高い)に絞り込むと明らかにし、

更に2025予算年度での有人機との連携飛行運用開始に向けた第2次募集も予定しており、第1次募集が機体のハードウェア議論が中心だったのに対し、機体ハード比較検討中心からCCA自立飛行を左右する極めて重要で難しい分野であるソフトウェアも含めた新たな提案募集も開始する予定で、そこには「最も緊密で最も戦略的な複数の同盟国:closest and most strategic international partners」も加わるだろうと語りました

Kendall AFA2024 5.jpg同空軍長官はまた、CCA開発は5か年計画でまとめ上げる「緊急性:sense of urgency」を持ったプロジェクトで、遅れて参加を募る第2次募集企業と契約を結ぶ際には、作戦運用コンセプトと初期設計を含めた相当に煮詰まった契約となる予定だ、とも語っています

そして米空軍としてCCA量産に今後は焦点を向ける予定で、今後2-3年で更に関係企業を絞り込み、最終的にいくつの企業が本格生産に入るか未定だが、少なくとも2社体制は確保したいとの考えも示しました

CCA NGAD2.jpg第1次募集審査で比較検討中の5社には、Lockheed Martin, Boeing, Northrop Grumman, General AtomicsとAnduril社が含まれており、米空軍は約1000機を調達するアバウトな想定を提示し、複数の能力や生存性が異なるタイプのCCAデモ機を作成し、攻撃・偵察・電磁波妨害・デコイなど多様な任務遂行の可能性を試したい意向を持っており、

同Symposiumの別の場でHunter空軍調達担当次官補は、空軍戦闘コマンドACCのみならず、幅広い分野の産業界から多数の提案やアイディアなどのフィードバックを受けていると語っており、また第1次募集で5社に入れなかった複数の企業が、更にアイディアを具体的に煮詰め、ある意味でハードよりCCA運用には重要な自律的運用ソフトを「売り」にして応募準備をしていると活発な開発状況を示唆しています

CCA NGAD3.jpgそして同次官補は、第1次募集企業提案でも有用な自立化運用可能なデモ機が完成するだろうが、その先にはより高度に進化したCCA提案機が新たなソフトと共に登場することが予期されるとも語っています
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AFA Warfare Symposiumは、現役空軍幹部やOB、軍需産業関係者や専門家が一堂に関して「夢やビジョン」を語る場ですので、ステージ上の演出やスライド表示もそれにふさわしい華やかなものになっており、そこで語られる内容も「問題点や課題」よりも、それを乗り越えた先にある「夢」中心になります

CCAに関しては、対中国正面である西太平洋の、どこに展開して、誰がどのように維持整備し、誰がどのようにコントロールして運用するのか・・・との大問題が残っていますので、その辺りを念頭に置きつつ、生暖かく引き続き見守っていきたいと思います

CCA関連の記事
「CCAに空中受油能力搭載か」→https://holylandtokyo.com/2023/12/04/5255/
「あと6年で実用化する試験準備」→https://holylandtokyo.com/2023/11/08/5153/
「AIアルゴリズム集大成試験」→https://holylandtokyo.com/2023/08/08/4922/
「2020年代後半導入へ」→ https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「長官:NGAD 200機、CCA 1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
「関連技術を23年から本格開発へ」→ https://holylandtokyo.com/2022/11/22/3948/

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次期ICBM事業のコスト超過対策は空軍では無理 [米空軍]

米空軍の年間予算に匹敵する5兆円超過
核抑止3本柱の2本を空軍予算で賄う不条理主張か
超過大半はサイロ・指揮所・通信インフラ施設建設費

Sentinel.jpg2月13日付米空軍協会web記事は、1月に米空軍が議会に通知して明らかになった、MinutemanⅢシステムの後継となる次期ICBM計画(Sentinel ICBM導入計画:GBSD計画とも)の37%予算超過と開発期間の最低2年延長見積もりに関し、米空軍協会Warfare Symposiumに参加した米空軍幹部の発言等から対応策検討の現状を報じていますが、米空軍の年間予算に匹敵する約5兆2千億円もの超過額を前に、事実上「米空軍だけでは、なすすべ無し」状態だと紹介しています

米空軍は国防省事業の適正管理を定めた「Nunn-McCurdy法」の規定に沿って、計画のコスト及び開発期間の両方で法令基準の15%以上超過&遅延することが明らかになったため、米議会に今年1月に事態を報告し、今後はコスト&開発期間の超過&遅延原因を明確にし、改善計画を立案し、その出直し計画を2024年夏頃までに国防長官に再承認してもらう必要があるのですが、

Sentinel4.jpgMinutemanⅢシステム構築後、約50年間誰も関心を持たず&顧みず&放置されてきたICBM関連施設(特に再利用可能と想定してきたICBM格納サイロ、指揮統制施設、各種指揮統制装置やケーブルなどの通信装置インフラ等々)が再利用不能であることが次々に判明し、日本の中国&四国地域程度の地理的範囲(それも交通インフラや人材確保が困難な辺鄙な場所だらけ)に分散配置されている関連施設整備コストが、莫大に膨らむことが明らかになってきたということです

AFA Warfare Symposium(2月12-14日)で・・・

Kendall空軍長官
●(どれも重要な)米空軍の他の戦略的な近代化予算から振り分けることはできない。仮に米空軍が超過分を出すことになると、他の全ての必要経費が制約を受けることになる
Kendall AFA2024 4.jpg●関連議論をまだ実施していないが、直ちに始める必要がある。ただ、通常の国防省予算編成の流れで扱える問題ではない。空軍の予算内で議論することは難しく、国防省全体予算で議論してほしいと思う

●米空軍の核抑止近代化計画にはSentinel計画(次期ICBM計画)の代替になるようなものはなく、Sentinel計画は必要不可欠なプロジェクトである。B-21爆撃機計画は1円たりとも削減することはできない(長官は核搭載のLong Range Stand-Off missileには言及せず)。

(なおKendall氏は、長官就任前にSentinel計画を受注しているNG社役員であったことから、法律により本計画への意思決定に関与できない。ただし空軍省の予算配分に関する意思決定には職責で関与する)

Kristyn Jones国防副長官臨時代理
Kristyn Jones.JPG●Sentinelミサイル開発自体に大きな問題は発生しておらず、大きな課題は関連施設整備面に存在する。つまり現有施設の再利用を見込んでいた、ミサイル格納サイロ、地下の指揮統制施設、各種指揮統制装置やケーブルなどの通信装置インフラ等々の問題だ
●加えて、昨今の世界的なインフレ、サプライチェーン問題、労働力コストアップが次期ICBM計画のコスト上昇につながっている。特に辺鄙な地域に分散する施設建設に必要な、秘密クリアランスを持つ労働者の確保や工事期間延長による人件費アップの影響も大きい

Andre Hunter調達担当次官
Hunter AF.jpg●米空軍は、次期ICBM計画ほどの巨大施設関連事業をMinuteman ICBM体制を構築した50年前から行っておらず、現状の施設状態に関するアセスメントが実施されるまで、必要な施設建設規模が把握できなかった
●アナログ回線を使用しているMinuteman ICBMの、地下&地上施設や指揮統制通信インフラの大部分を換装する必要が明らかになった
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「Minuteman ICBMの地上&地下インフラの大部分が再利用できないことがアセスメントの結果で判明した」との言い分が通用するとも思えませんが、米空軍だけで増額分を負担することが不可能なことも明らかで、ICBM部隊(海軍のSLBM部隊も同様)を「日陰者」「忘れ去られた部隊」「無視された部隊」扱いしてきた空軍と国防省と米国政府と米国民全てへの、「巨大なブーメラン&しっぺ返し」となっています。どうするんでしょうか・・・

超巨大プロジェクト次期ICBMシステム整備の苦悩
「コスト&期間超過で法抵触の議会通知」→https://holylandtokyo.com/2024/01/29/5478/
「次期ICBM開発の苦悩&不安を語る」→https://holylandtokyo.com/2023/11/22/5244/

米軍「核の傘」で内部崩壊
「ICBMサイト初のオーバーホール」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-15
「屋根崩壊:核兵器関連施設の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-23
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「唖然・国防長官が現場視察」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-18
「特別チームで核部隊調査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「剱持暢子氏論文:米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「米核運用部隊の暗部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-29

中国やロシアの核兵器運用部隊も心配
「中国ロケット軍汚職と部隊能力報道に思う」→https://holylandtokyo.com/2024/01/15/5436/

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米空軍改革発表受け太平洋空軍演習強化のお話 [米空軍]

2024年10月以降の実戦的な連続大規模演習へ
新太平洋空軍司令官や同参謀長が語る
空自の宇宙作戦群司令:杉山1空佐もご登壇!

Schneider PACAF.jpg2月14日、コロラド州で開催のAFA Warfare Symposiumで新任の太平洋空軍司令官Kevin B. Schneider大将(元在日米軍司令官&第5空軍司令官)と同軍参謀長David Berkland大佐が、12日に同イベントでKendall空軍長官とAllvin空軍参謀総長が発表した米空軍改革アクション項目の目玉の一つ「戦闘・空輸・CSコマンドの実戦能力強化のため、(対中国の)冷戦期仕様の大規模演習実施」について早速発言し、その検討の方向性を語っていますのでご紹介します

12日にAllvin空軍参謀総長は「我々は2025予算年度から、複数の戦闘コマンドの支援を受けた初の大規模演習実施を計画しており、インド太平洋戦域での実施を想定している」と明らかにしましたが、これを受けてSchneider新太平洋空軍司令官は、「米空軍省がその重要性を認識し、資源配分を含めて実現にコミットしてくれていることに力を得ている」、「この規模の演習実施には空軍省や米空軍全体のテコ入れが欠かせないからだ」と語り、

Berkland AFA.jpg「米軍が直面する危機や緊急事態を考える時、インド太平洋軍や太平洋空軍への期待は巨大であり、他軍種や統合部隊からの要求も、人・物・能力全ての面で驚くほど大きい中、このような必ずしも安価に収まらない大演習を計画出来ることは抑止面でも大変重要だ」と責任の重さと新思考の大演習への期待をにじませています

また、同シンポジウムの太平洋地域の同盟国との連携強化を語る別イベントで、太平洋空軍参謀長David Berkland大佐は航空自衛隊の宇宙防衛群司令杉山キミトシ1空佐と共に登壇し、計画中の大規模空軍演習について以下のように語っています

Berkland PACAF.jpg●我々は、より実戦的でより複雑で、高い緊迫度を想定した演習の計画を開始しており、単一のイベント演習ではなく、年間を通じて数えきれないほどの訓練機会を設ける方向だ
●ハイエンド紛争を大前提に、従来より大規模で、より苛烈で、より効果的なものを想定しており、我々が高いレベルの即応態勢を確立&維持するにふさわしいものとなろう
●この大規模演習では、近年急激に強化されつつある複数の国との協力関係を、他国空軍部隊とのより長期間でより密度高い訓練を通じて深化することも大きな目的となる

ちなみに同参謀長と登壇した空自の宇宙作戦群司令・杉山1空佐(パイロットではない点に胸熱!)は
●「米空軍によるこの種の取り組みは、航空自衛隊にとっても極めて重要であり、我々を正しい方向に導いてくれるものだ」と語ったと報じられています
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Berkland AFA 3.jpg2月12日に打ち出された米空軍改革の24アクション項目には、兵器開発要求や資源配分など米空軍の将来に関する計画を、戦闘コマンドや輸送コマンド等から事実上取り上げ、新設の中将率いる「Integrated Capabilities Command」に権限を集中させる点などにおいて、「官僚組織抵抗」や「(目に見えない)組織内の流血事案」も予期されますが、

戦闘コマンドや輸送コマンドやGlobal Strike Commandの演習を強化して実戦的&大規模化し、部隊評価点検を強化する点において部隊は正面から取り組む以外に選択肢はなく、兵器開発や資源配分問題への口出し権利はく奪について文句を言う暇もない前向きな忙しさを与える副次的効果も期待されます

sakanashi JapanSET.jpgところで、航空自衛隊幹部の本ブログ登場は、2023年7月26日付記事で空幕防衛部長の坂梨弘明空将補(パイロットでない防衛部長!)をご紹介して以来ですが、今日また偶然にも「パイロットでない」宇宙防衛群司令杉山キミトシ1空佐をご紹介することができてうれしいです。戦闘機の編隊飛行写真を公式webサイトやSNS上で拡散して広報活動して喜んでいる時代ではないですからねぇ・・・。高校生の募集活動は別として、実質的な戦力強化の面では・・・

米空軍の大改革アクション項目発表
「2月12日のKendall長官らによる発表」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/5579/
「米空軍総レビュー実施発表」→https://holylandtokyo.com/2023/09/07/5012/

空幕防衛部長の坂梨弘明空将補のご活躍
「日米宇宙部隊の本格協議SETスタート」→https://holylandtokyo.com/2023/07/26/4884/

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あと36年、100歳まで頑張るB-52Jを語る [米空軍]

トラブル2-3個が常態の運用&訓練現状
過去10年間で稼働率が2割低下する中
最新機体が1962年製の同機を2060年まで活躍させるために

B-52J 2.jpg2月12日付Defense-Newsが、現在保有する76機の機体年齢が60歳を超えているB-52爆撃機部隊の現状と、延命&近代化改修の内容から課題までを紹介しながら、後輩であるB-1及びB-2爆撃機が2030年頃に引退後も、機体年齢が100歳となる2060年代まで、ステルス爆撃機B-21との2機種体制で頑張ることを求められているB-52に「寄り添うような」特集記事を掲載していますので、ご紹介したいと思います

記事は機体年齢が100歳になるまで特定機種が生き残ることの「すごさ」を説明するため、今から100年前の1924年当時の航空機を振り返り、「WW1時代の機体を改良した航空機の時代で、複葉機、操縦者の操作を直にワイヤーで操舵面に伝達、コックピットはまだ閉じた空間ではないBoeing P-26やCurtiss JN-3の時代」と紹介し、計774機が1954-62年まで製造され、その1割程度が「生き残っている」B-52の生命力を紹介しています

B-52J 3.jpgただ一方でB-52生き残りの背景には、やはり「戦闘機が空軍の中心で、爆撃機への投資が2の次の時代背景」や、「べらぼうなコスト高騰や開発遅延で製造機数が100機削減されたB-2」や「低空高速侵入思想から冷戦後の時代に放置されたB-1」の影響を受け、「消去法」で生き残ってきた経緯があるとも記事は示唆しています

以下では同記事からつまみ食いピックアップで、「現在のB-52部隊運用の状況」、「エンジン換装など総額7兆円強の延命&近代化策」、「延命&近代化改修の懸念点」についてご紹介いたします

お馴染みのYouTube番組でも解説


現在のB-52部隊運用の状況
●60年前に製造された機体の部品確保は困難を極め、2012年に稼働率78%だったものが2022年には59%にまで低下し、今後向上する見込みはない。大きな機体は屋外駐機せざるを得ない場合が多く、中東の日差しや太平洋域の潮風や寒冷地の風雪が機体に与える影響は大きい
B-52J 4.jpg●Barksdale空軍基地のB-52部隊を取材した1月、とある約6時間の訓練飛行への搭乗機会を得たが、エンジンを駆動させ離陸予定時間を30分以上経過しても整備員は3つの故障と格闘していた。3つは電波高度計、Targetting POD、そしてデジタルMap上で作戦行動や航法をサポートするCONECT(Combat Network Communications Technology)で、機長判断で電波高度計とTargetting PODは故障のまま訓練を行うこととなった

●最後のCONECTは2010年代に導入された装備で、カラーデジタル地図画面上で兵器運用担当や電子戦担当が敵情を把握しながら機体システムを操作する重要なものだが、最終的に機長はCONECTなしで、バックアップのアナログ器材で代替して訓練に臨むことを選択した
●機長は、エンジンと油圧システムと機体そのものに問題があれば飛行を断念するが、それ以外であれば故障を抱えたまま飛行することはよくあることで、機長に判断は任されており、5名の搭乗員は与えられたアセットで任務遂行に全力を尽くすことに慣れていると語っている

エンジン換装など総額7兆円強の延命&近代化策
B-52J 7.jpg●100機以上調達する計画のB-21ステルス爆撃機と、現有76機のB-52で米軍の爆撃機需要にこたえるため、エンジン換装(Commercial Engine Replacement Program)、AESAレーダーへの換装、搭載アビオ換装、グラスコックピット化、長射程核搭載ミサイル(Long Range Standoff weapon)搭載改修、通信システム換装、車輪とブレーキ換装等々を、2028年に初号機テスト開始から2030年代にかけ実施し、「B-52J」を導入する

●特にエンジン換装は、商用機エンジンをベースとして部品調達が世界各地で容易なロールスロイス製F130導入により、燃費3割向上や信頼性&静粛性向上の他、機体寿命のある2060年までオーバーホール修理不要となることが期待されている
●レーダとアビオと通信とコックピット換装により、戦術航法、目標照準、自己防御能力の大幅改善と操作性の向上が期待でき、ステルス性がないB-52の本格紛争での任務遂行範囲を拡大することを目指している

延命&近代化改修の懸念点
B-52J 8.jpg●60年以上も使用してきた機体に改修を施すことのリスクは当然低くはなく、米空軍は事前にB-52の機体状況を調査した上で延命&近代化計画を推進しているが、2010年代に実施されたC-5輸送機のエンジン換装を伴う近代化改修では、実際の作業過程で次々と機体に想定外の「経年劣化や金属疲労」が見つかって改修経費が増大し、結局計画機数の半分の機体にしか改修を実施できなかった黒歴史もあり不安はぬぐえない
●また、これだけ盛りだくさんの改修を一度に行うスケジュール管理や導入装備間の干渉的なものなど、様々な不安を指摘する声は各所から上がっている。仮に改修スケジュールが遅延することになれば、既に維持が難しくなっているB-2やB-1に加え、B-52Hへの手当ても検討する必要があり、非常にリスクの高い綱渡りとの指摘もある
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B-52J.jpg現在運用中の最も新しい機体が1962年製とのことで、同世代のまんぐーすにとっては何とも感傷的な気分にさせてくれるB-52と「B-52J」プロジェクトです

グラスコックピット化されたB-52J型の雄姿を、ぜひこの目で確認したいものです・・・

B-52関連の記事
「B-52Jへの熱い取り組み」→https://holylandtokyo.com/2023/10/19/5134/
「インドネシアにも2機展開」→https://holylandtokyo.com/2023/06/23/4785/
「極超音速兵器ARRW導入を断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「B-21導入による米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/
「重力投下核爆弾の任務除外」→https://holylandtokyo.com/2020/01/29/877/

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