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米空軍とボーイングがE-7価格交渉で激突 [米空軍]

KC-46とT-7とVC-25で既に1兆円自腹のB社
少しだけ豪英版と仕様を変えたい米空軍
最優先迅速化事業なのに7か月も交渉停滞か

E-7 NATO.jpg2月20日付米空軍協会web記事が米空軍幹部たちの話から、米空軍が最優先事業として稼働率2-3割とも言われるE-3早期警戒管制機の後継として導入決定したE-7 Wedgetailの価格交渉が、既に固定価格契約KC-46とT-7等のお陰で1兆円自腹支払いさせられているボーイング社の新CEOによる厳しい事業精査方針を受け、米空軍特別仕様部分(non-recurring engineering)の価格設定で当事者間に2倍の開きが双方にあり、契約が進まない状態だと報じました

E-7は既に豪、韓、トルコが導入済で、英も近く受領で、米国の後にNATOも発注した今や国際標準の空飛ぶレーダー&作戦指揮統制機ですが、米空軍幹部が「最終的には、ほとんど英空軍発注仕様の機体と変化ない」と主張しつつ、昨今の中国のサイバー戦力強化や重要航空アセット攻撃能力強化傾向から、「他国機と相互運用性を維持しながら、米空軍独自の仕様も要求」している部分に関し、ボーイング側の開発経費見積もりと空軍の想定がかけ離れている模様です

Calhoun Boeing.jpgボーイング社が契約に極めて慎重なのには理由があり、現ボーイングCEOのDavid Calhoun氏が就任した2020年4月以前に、前CEOが無謀な固定価格契約した「KC-46」「T-7練習機」等のコスト超過&自腹支払い分が1兆円($7 billion)に達するデタラメ振りで、Calhoun氏は厳正に契約を精査し、入札には積極性を控えるとたびたび発言しており、2022年4月に米空軍仕様機体の開発&製造契約を結んではいるものの、要求の細部を後で知らされ、その後の交渉に同社が極めて慎重に臨んでいるからだそうです

米空軍はE-7を可及的速やかに導入したいと考えており、2027年に初号機を受領し、2032年までに計26機を受け取る計画を持っていますが、いきなり入り口部分で大きな壁にぶつかっており、米空軍首脳も既に豪・韓・トルコで運用開始している機体であるだけに、最後の詰めの甘さに地団太踏んでいるようです

本件に関しKendall空軍長官(2月12日)
Kendall AFA5.jpg●ボーイング社と価格合意を得るのに苦労している
●地上移動目標を衛星や他センサーを総合的に組み合わせて探知追尾する方式が最終到達目標であり、E-7はそこへ向かう途中の「橋渡し役」であるが、中国がE-7の様な重要指揮中枢を攻撃する能力(ステルス機や長射程空対空ミサイル)を強化していることから、空軍として戦力は常に見直しながら前進しなければならない

Andrew Hunter調達担当次官補(2月13日)
●ボーイング社は、自分たちが期待される仕事の全範囲を、しっかり理解して検討しなければ入札しない。様々な状況を考えれば、合意内容に慎重になっているのは驚くべきことではない。
Hunter AF.jpg●米空軍仕様にE-7を最適化するための非定常的な設計開発部分(non-recurring engineering)に、予想を超えた開発作業が必要だと判断されたことが大きな驚きであった。我々は最終的には英空軍が調達するE-7と非常に極めて近い機体だと考えていたが、ボーイングが予想の2倍の費用を要求してきたことで、交渉が長期化している
●我々は協議を続けており、ボーイング社側の空軍要求の解釈とその具現方法、どの機能が最も重要で、どの部分を後送りできるか等について話し合い、双方の隔たりを埋めて問題を絞り込むことに取り組んでいる。入札プロセスをもう少し早く回転させたい
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E-7 Wedgetail3.jpg米空軍が2023年2月末にボーイング社と米軍仕様E-7開発契約を約1800億円で結んだ際は、青息吐息のE-3の稼働率が4割以下に落ち込んでいるとご紹介しましたが、今現在は5機のうち1機しか稼働状態にない惨状とのことです

しかしボーイング社は、民航機分野でも墜落事故から復調の兆しがみられると思っていたら、別の機体のドアが吹っ飛んだりして大混乱ですが、会社として大丈夫なんでしょうか? 現CEOには頑張って頂きたいと思います

米軍とE-7導入関連の記事
「今後の能力向上を米英豪共同で」→https://holylandtokyo.com/2023/07/21/4871/
「E-7とE-3違いを概観」→https://holylandtokyo.com/2023/03/30/4447/
「初号機を2027年納入契約」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/4358/
「導入を正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「E-3は2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/
「後継機検討のRFI」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711
「米空軍航空機は高齢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-27

「NATOもE-7」→https://holylandtokyo.com/2023/11/21/5262/

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突然グアムで実弾ARRW極超音速兵器使用の講習会 [米空軍]

緊急追加情報! 中国に見せつけるARRW発射試験
https://www.airandspaceforces.com/air-force-test-arrw-hypersonic-missile-pacific/
Kwajalein Atoll.jpg米空軍がARRW発射試験情報(航行危険情報)を公示
3月5日から3月10日の間に実施予定と
マーシャル諸島クェゼリン環礁(Kwajalein Atoll)試験場で
グアム基地の2500マイル南東から射程2100マイルで
最終試験を西太平洋で実施し、HW探知追尾能力も検証か
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23年3月に装備化断念発表のARRWをなぜ最前線基地に?
極超音速兵器全体の基礎を学ぶ講習会と説明も
突然のB-52HとARRWと受講者写真公開に波紋広がる

Guam ARRW2.jpg2月28日付米空軍WEB サイトが、アンダーセン基地([コピーライト]グアム島) 広報が配信した同基地で開催の「極超音速兵器講習会:Hypersonic Weapon Familiarization Training」の様子を、10枚の講習模様写真と短い説明文で掲載しましたが、米本土の開発基地から「門外不出」だった当該兵器が、いきなり最前線基地グアムに現れ、しかもそれが実弾で B-52H爆撃機に搭載されていたことで、軍事メディア や専門家らが大騒ぎとなっています

まず基礎情報として、米空軍の極超音速兵器(以後は HW と表記)開発は・・・ (なお米軍と米海軍は、共通部分が多い地上発射型と艦艇発射型を共同開発中で、隆軍は2023年に最終試験を行ってワシントン州の部隊で実配備開始予定だったが、2024 年に最終試験がずれ込み 遅延中。海軍の進払と合わせ、細部は末尾の過去記事等を参照)

●Kendall空軍長官は、中国はA2AD 戦路で米軍を遠ざけたいからHW を重視するが、米国は中国の高価値目標攻撃用(地上 C2 施設等)の一つの選択肢として保有し、、それは中国抑止のためだから、空軍内の優先度や重要性はそれほど大きくないと位置づけ

●爆撃機搭載の ARRW(Air-Launched Rapid-Response Weapon)
Guam ARRW3.jpg・ロッキード開発のブースト&グライド方式で、短射程
・当初開発不調で2回試験に失敗も、2022年 12月に初成功後、2023年8月と10月にも成功

・しかし2023年3月末、Kendall 長官とHunter 調達次官補が、ARRW は開発までで、調達はせず、HACM に注力と発言 (ただ2024年に地上目標攻撃を含めた ARRW 最終試験を実施し、データ等取りまとめ、後の開発案 件の資として残す)
・調達なし決定に際し Hunter 次官補は、「我々には計画があるが、公開の場では話せない」とのみ言及。2024年3月中旬議会提出の2025年度予算案には何らかの方向性が出る模様

●戦闘機タイプに搭載の HACM (Hypersonic Attack Cruise Missile)
・小型だがスクラム Jet エンジン等を搭載し長射程
・レイセオン主契約でエンジンはNG社
・2021年9月に3度目の正直で基礎試験に成功し、2022年 11月末にレイセオン社とプロトタイプ 開発契約を約180億円で締結

以上のような経緯の ARRWが、最前線グアムに突然登場でしかも実弾ということで、例えば3月4日付米空軍協会は驚きを表現し・・・・

Guam ARRW.jpg●過去の ARRW 開発試験はすべて加州エドワーズ空軍基地離発着で行われ、他の基地への展開など なかった開発中の兵器 ARRW が、対中国最前線のグアム島基地に突然現れ、、しかもそれが実弾を示す黄色いテープを巻かれている
●更にいきなりグアムで「極超音速兵器講習会:Hypersonic Weapon Familiarization Training」が開催&紹介され、約25名の兵士(第23爆撃飛行隊と第49 試験評価隊の兵士)が参加

Guam ARRW5.jpg●本講習の目的を空軍 web 記事は、「複数の航空機コミュニティーにHW(ARRW だけでなく、HACM や他のタイプも含め)の基礎知識を教育」、「HW 使用に関する討議を通じ作戦運用を考察」、「HWの兵站支援全般を理解」することと紹介。
●なぜ突然「HW 講習会」? 調達&部隊配備しない ARRW でなぜ? なぜグアムで?  なぜ実弾を? なぜこの配信をアンダーセン基地広報が? この後に試験発射を周辺で実施?・・・などなど、様々な疑問が飛び交う状況も、空軍からは一切追加情報なし

●B-52H には4発 ARRW が搭載可能だが、写真では1発しか確認できない。1発だけグアムへ?
●ちなみにARRWは、300発調達を前提とすると、1発あたり 22?26億円と推計され、隆海軍の地 上や艦艇発射用はその約3倍と言われている
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Guam ARRW4.jpgちなみに3月4日付米空軍協会 web 記事は、中国のHW である DF-17は「米海軍空母キラー」とか「グアムキラー」と呼ばれており、弾道ミサイルの先端に取り付けて射程延伸のオプションもあると 紹介しています

中国の不動産バブル崩壊やゼロコロナ政策に端を発する「中国経済崩壊」がますます顕在化する中、米軍も腰を据えて中国恫喝体制に入ったのでしょうか???

アンダーセン基地広報の写真10枚付き発表
https://www.andersen.af.mil/News/Features/Article/3690368/andersen-afb-hosts-hypersonic-weapon-familiarization-training/

米軍の極超音速兵器開発
「米陸軍の最終テスト&配備は24年に持ち越し」→https://holylandtokyo.com/2023/11/15/5224/
「ウで次々撃墜:同兵器を過信するな」→https://holylandtokyo.com/2023/06/01/4695/
「空軍がARRW配備断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「Zumwaltへの極超音速兵器契約」→https://holylandtokyo.com/2023/02/22/4313/
「バカ高い極超音速兵器」→https://holylandtokyo.com/2023/02/08/4261/
「陸軍はあと2回試験」→https://holylandtokyo.com/2023/01/17/4107/
「3回連続ARRW試験に成功」→https://holylandtokyo.com/2022/12/16/4061/
「高価な兵器は少数保有で」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「空軍長官:重要性は中国と米国では異なる」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
「潜水艦へは2028年」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-19

迎撃兵器システム開発関連
「迎撃兵器を日米共同開発で」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/

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一味違う新戦闘機族のボスACC司令官誕生 [米空軍]

ペンタゴン経験なきACC司令官に太平洋空軍司令官が
ACE構想生みの親であるWilsbach大将が就任
前任Kelly大将より年上の司令官誕生の異例人事

Wilsbach ACC3.jpg2月29日、米空軍最大の正規兵人員規模(約8万名)と戦闘アセットを保有する米空軍戦闘コマンドACCの新司令官に、直近約3年間を太平洋空軍司令官として勤務し、かつ米空軍勤務の85%の期間を太平洋軍部隊(嘉手納、アラスカ、ハワイ、韓国以外は、中東3年、米本土3.5年のみ)で過ごし、驚くことにペンタゴンでの勤務経験皆無の異例の大将で、それでいて今や米空軍の中核作戦コンセプトであるACE(Agile Combat Employment)構想の生みの親でもあるKenneth S. Wilsbach大将が就任しました

Wilsbach ACC.jpg冒頭でご紹介したように、2020年8月から約3年半ACC司令官を務めた前任のKelly大将より、1歳年上のWilsbach大将が新司令官に就任するとの軍隊制服高官では極めて異例の「年齢逆転」人事ですが、背景には米空軍勤務期間の大半をアジア太平洋軍戦域で過ごした対中国専門家で、「ACE構想の提唱者でけん引役」で、更にペンタゴン勤務が無い事を逆手に取った「型にはまらない改革への推進力」を持つ同大将への期待の表れと、まんぐーすは解釈しております

3月1日付米空軍協会web記事は太平洋空軍司令官として功績を
Wilsbach ACC2.jpg●長い太平洋軍勤務で着想したACE構想を太平洋空軍に普及し、その着想は全米軍の基本作戦運用指針として採用された
●ACE構想に基づき、第5世代戦闘機を分散運用先候補でもあるマリアナ諸島テニアン島や、政治情勢の変化を見据えたフィリピンに機を見て初展開させた
●地域の中心的同盟国である日本と韓国に大型爆撃機を展開して日韓戦闘機との共同訓練を実施する等、米日韓3か国の同盟関係が強固で緊密なことを中国や北朝鮮等に示した

記事が挙げたWilsbach新司令官が取り組む事業
●前線戦闘機部隊をF-35部隊への換装推進
●F-15EXの前線部隊での運用方針を固め展開態勢を確立すること
●A-10とF-22の段階的退役を円滑に進める事
●全世界で1000機導入を仮置きしているCCA(Collaborative Combat Aircraft)の開発を支援し、部隊導入&運用に向けてコンセプト固めと受け入れ諸準備を推進すること

2月29日の司令官交代式でWilsbach新司令官は・・・
Wilsbach ACC4.jpg●台湾の人々は現状に相当程度満足しているにもかかわらず、中国はその台湾に対する(台湾国民の思いに反する方向性を持つ)意図や姿勢を極めて明確に示し続けている。我が空軍の任務は、地域の紛争を抑止し、その安定を守ることである
●我々は中国に(作戦遂行上の)ジレンマを与えるべく取り組んでいる。空軍戦闘コマンドACCとして、どのようにジレンマを与えるか? まず第一に我の即応態勢を確立維持すること、次に戦力の近代化に取り組み、そしてそれら戦力をACE構想にも続き運用可能に鍛えることである。これら全てに前司令官のKelly大将は注力してこられたが、我々はその思いを継ぎ、全ての関係能力の拡大実現に向け前進していく

Wilsbach ACC5.jpg更に同司令官が就任式典で強調したのは
●ACC戦力発揮の中核は「米空軍の下士官」であり、その任務遂行を基礎で支える「必要なもの」を確保し、彼らが成すべきことを遂行できるように注力していく。(家族の住居や生活環境や子弟教育環境など広範にわたる勤務環境の整備や、給与や手当や引っ越し費用等の金銭面での処遇改善を示すものと思料)
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Wilsbach ACC7.jpgAllvin空軍参謀総長はACCへの期待を2月中旬に、「我々は大国との紛争に備え、再・最適化を目指している」、「その再・最適化の多くの鍵となる項目がACCに根差したものであり、ACCが実現した形を全米空軍に普及して行きたい」と、米空軍大改革を進めるにあたってのACCへの大きな期待を語っていたところです

前提となる2月12日発表の空軍大改革方針発表
https://holylandtokyo.com/2024/02/16/5579/

Kenneth Wilsbach大将の公式経歴表
https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/108478/kenneth-s-wilsbach/

Wilsbach大将関連
「ACE運用態勢にはない」→https://holylandtokyo.com/2023/09/19/5048/
「経歴紹介:次期ACC司令官候補に」→https://holylandtokyo.com/2023/05/11/4614/
「ACE構想の生みの親が語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「欧州米空軍がACE演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「F-35とF-16が不整地離着陸」→https://holylandtokyo.com/2021/01/29/310/
「若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/

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数か月後にCCA第1次募集企業を2-3社に絞る [米空軍]

米空軍無人ウイングマン計画が第1次募集佳境に
更に第2次募集も予定しソフト&アイディア勝負か
2-3年後の量産体制入りを狙い様々なタイプを模索中

CCA NGAD4.jpg2月13日、Kendall空軍長官がAFA Warfare Symposiumでの記者懇談会で、現在進めている無人ウイングマン機CCA(collaborative combat aircraft)の第1次募集審査で比較検討中の5社の提案について、数か月後には2-3社(予算上の制約で2社になる可能性が高い)に絞り込むと明らかにし、

更に2025予算年度での有人機との連携飛行運用開始に向けた第2次募集も予定しており、第1次募集が機体のハードウェア議論が中心だったのに対し、機体ハード比較検討中心からCCA自立飛行を左右する極めて重要で難しい分野であるソフトウェアも含めた新たな提案募集も開始する予定で、そこには「最も緊密で最も戦略的な複数の同盟国:closest and most strategic international partners」も加わるだろうと語りました

Kendall AFA2024 5.jpg同空軍長官はまた、CCA開発は5か年計画でまとめ上げる「緊急性:sense of urgency」を持ったプロジェクトで、遅れて参加を募る第2次募集企業と契約を結ぶ際には、作戦運用コンセプトと初期設計を含めた相当に煮詰まった契約となる予定だ、とも語っています

そして米空軍としてCCA量産に今後は焦点を向ける予定で、今後2-3年で更に関係企業を絞り込み、最終的にいくつの企業が本格生産に入るか未定だが、少なくとも2社体制は確保したいとの考えも示しました

CCA NGAD2.jpg第1次募集審査で比較検討中の5社には、Lockheed Martin, Boeing, Northrop Grumman, General AtomicsとAnduril社が含まれており、米空軍は約1000機を調達するアバウトな想定を提示し、複数の能力や生存性が異なるタイプのCCAデモ機を作成し、攻撃・偵察・電磁波妨害・デコイなど多様な任務遂行の可能性を試したい意向を持っており、

同Symposiumの別の場でHunter空軍調達担当次官補は、空軍戦闘コマンドACCのみならず、幅広い分野の産業界から多数の提案やアイディアなどのフィードバックを受けていると語っており、また第1次募集で5社に入れなかった複数の企業が、更にアイディアを具体的に煮詰め、ある意味でハードよりCCA運用には重要な自律的運用ソフトを「売り」にして応募準備をしていると活発な開発状況を示唆しています

CCA NGAD3.jpgそして同次官補は、第1次募集企業提案でも有用な自立化運用可能なデモ機が完成するだろうが、その先にはより高度に進化したCCA提案機が新たなソフトと共に登場することが予期されるとも語っています
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AFA Warfare Symposiumは、現役空軍幹部やOB、軍需産業関係者や専門家が一堂に関して「夢やビジョン」を語る場ですので、ステージ上の演出やスライド表示もそれにふさわしい華やかなものになっており、そこで語られる内容も「問題点や課題」よりも、それを乗り越えた先にある「夢」中心になります

CCAに関しては、対中国正面である西太平洋の、どこに展開して、誰がどのように維持整備し、誰がどのようにコントロールして運用するのか・・・との大問題が残っていますので、その辺りを念頭に置きつつ、生暖かく引き続き見守っていきたいと思います

CCA関連の記事
「CCAに空中受油能力搭載か」→https://holylandtokyo.com/2023/12/04/5255/
「あと6年で実用化する試験準備」→https://holylandtokyo.com/2023/11/08/5153/
「AIアルゴリズム集大成試験」→https://holylandtokyo.com/2023/08/08/4922/
「2020年代後半導入へ」→ https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「長官:NGAD 200機、CCA 1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
「関連技術を23年から本格開発へ」→ https://holylandtokyo.com/2022/11/22/3948/

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次期ICBM事業のコスト超過対策は空軍では無理 [米空軍]

米空軍の年間予算に匹敵する5兆円超過
核抑止3本柱の2本を空軍予算で賄う不条理主張か
超過大半はサイロ・指揮所・通信インフラ施設建設費

Sentinel.jpg2月13日付米空軍協会web記事は、1月に米空軍が議会に通知して明らかになった、MinutemanⅢシステムの後継となる次期ICBM計画(Sentinel ICBM導入計画:GBSD計画とも)の37%予算超過と開発期間の最低2年延長見積もりに関し、米空軍協会Warfare Symposiumに参加した米空軍幹部の発言等から対応策検討の現状を報じていますが、米空軍の年間予算に匹敵する約5兆2千億円もの超過額を前に、事実上「米空軍だけでは、なすすべ無し」状態だと紹介しています

米空軍は国防省事業の適正管理を定めた「Nunn-McCurdy法」の規定に沿って、計画のコスト及び開発期間の両方で法令基準の15%以上超過&遅延することが明らかになったため、米議会に今年1月に事態を報告し、今後はコスト&開発期間の超過&遅延原因を明確にし、改善計画を立案し、その出直し計画を2024年夏頃までに国防長官に再承認してもらう必要があるのですが、

Sentinel4.jpgMinutemanⅢシステム構築後、約50年間誰も関心を持たず&顧みず&放置されてきたICBM関連施設(特に再利用可能と想定してきたICBM格納サイロ、指揮統制施設、各種指揮統制装置やケーブルなどの通信装置インフラ等々)が再利用不能であることが次々に判明し、日本の中国&四国地域程度の地理的範囲(それも交通インフラや人材確保が困難な辺鄙な場所だらけ)に分散配置されている関連施設整備コストが、莫大に膨らむことが明らかになってきたということです

AFA Warfare Symposium(2月12-14日)で・・・

Kendall空軍長官
●(どれも重要な)米空軍の他の戦略的な近代化予算から振り分けることはできない。仮に米空軍が超過分を出すことになると、他の全ての必要経費が制約を受けることになる
Kendall AFA2024 4.jpg●関連議論をまだ実施していないが、直ちに始める必要がある。ただ、通常の国防省予算編成の流れで扱える問題ではない。空軍の予算内で議論することは難しく、国防省全体予算で議論してほしいと思う

●米空軍の核抑止近代化計画にはSentinel計画(次期ICBM計画)の代替になるようなものはなく、Sentinel計画は必要不可欠なプロジェクトである。B-21爆撃機計画は1円たりとも削減することはできない(長官は核搭載のLong Range Stand-Off missileには言及せず)。

(なおKendall氏は、長官就任前にSentinel計画を受注しているNG社役員であったことから、法律により本計画への意思決定に関与できない。ただし空軍省の予算配分に関する意思決定には職責で関与する)

Kristyn Jones国防副長官臨時代理
Kristyn Jones.JPG●Sentinelミサイル開発自体に大きな問題は発生しておらず、大きな課題は関連施設整備面に存在する。つまり現有施設の再利用を見込んでいた、ミサイル格納サイロ、地下の指揮統制施設、各種指揮統制装置やケーブルなどの通信装置インフラ等々の問題だ
●加えて、昨今の世界的なインフレ、サプライチェーン問題、労働力コストアップが次期ICBM計画のコスト上昇につながっている。特に辺鄙な地域に分散する施設建設に必要な、秘密クリアランスを持つ労働者の確保や工事期間延長による人件費アップの影響も大きい

Andre Hunter調達担当次官
Hunter AF.jpg●米空軍は、次期ICBM計画ほどの巨大施設関連事業をMinuteman ICBM体制を構築した50年前から行っておらず、現状の施設状態に関するアセスメントが実施されるまで、必要な施設建設規模が把握できなかった
●アナログ回線を使用しているMinuteman ICBMの、地下&地上施設や指揮統制通信インフラの大部分を換装する必要が明らかになった
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「Minuteman ICBMの地上&地下インフラの大部分が再利用できないことがアセスメントの結果で判明した」との言い分が通用するとも思えませんが、米空軍だけで増額分を負担することが不可能なことも明らかで、ICBM部隊(海軍のSLBM部隊も同様)を「日陰者」「忘れ去られた部隊」「無視された部隊」扱いしてきた空軍と国防省と米国政府と米国民全てへの、「巨大なブーメラン&しっぺ返し」となっています。どうするんでしょうか・・・

超巨大プロジェクト次期ICBMシステム整備の苦悩
「コスト&期間超過で法抵触の議会通知」→https://holylandtokyo.com/2024/01/29/5478/
「次期ICBM開発の苦悩&不安を語る」→https://holylandtokyo.com/2023/11/22/5244/

米軍「核の傘」で内部崩壊
「ICBMサイト初のオーバーホール」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-15
「屋根崩壊:核兵器関連施設の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-23
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「唖然・国防長官が現場視察」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-18
「特別チームで核部隊調査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「剱持暢子氏論文:米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「米核運用部隊の暗部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-29

中国やロシアの核兵器運用部隊も心配
「中国ロケット軍汚職と部隊能力報道に思う」→https://holylandtokyo.com/2024/01/15/5436/

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米空軍改革発表受け太平洋空軍演習強化のお話 [米空軍]

2024年10月以降の実戦的な連続大規模演習へ
新太平洋空軍司令官や同参謀長が語る
空自の宇宙作戦群司令:杉山1空佐もご登壇!

Schneider PACAF.jpg2月14日、コロラド州で開催のAFA Warfare Symposiumで新任の太平洋空軍司令官Kevin B. Schneider大将(元在日米軍司令官&第5空軍司令官)と同軍参謀長David Berkland大佐が、12日に同イベントでKendall空軍長官とAllvin空軍参謀総長が発表した米空軍改革アクション項目の目玉の一つ「戦闘・空輸・CSコマンドの実戦能力強化のため、(対中国の)冷戦期仕様の大規模演習実施」について早速発言し、その検討の方向性を語っていますのでご紹介します

12日にAllvin空軍参謀総長は「我々は2025予算年度から、複数の戦闘コマンドの支援を受けた初の大規模演習実施を計画しており、インド太平洋戦域での実施を想定している」と明らかにしましたが、これを受けてSchneider新太平洋空軍司令官は、「米空軍省がその重要性を認識し、資源配分を含めて実現にコミットしてくれていることに力を得ている」、「この規模の演習実施には空軍省や米空軍全体のテコ入れが欠かせないからだ」と語り、

Berkland AFA.jpg「米軍が直面する危機や緊急事態を考える時、インド太平洋軍や太平洋空軍への期待は巨大であり、他軍種や統合部隊からの要求も、人・物・能力全ての面で驚くほど大きい中、このような必ずしも安価に収まらない大演習を計画出来ることは抑止面でも大変重要だ」と責任の重さと新思考の大演習への期待をにじませています

また、同シンポジウムの太平洋地域の同盟国との連携強化を語る別イベントで、太平洋空軍参謀長David Berkland大佐は航空自衛隊の宇宙防衛群司令杉山キミトシ1空佐と共に登壇し、計画中の大規模空軍演習について以下のように語っています

Berkland PACAF.jpg●我々は、より実戦的でより複雑で、高い緊迫度を想定した演習の計画を開始しており、単一のイベント演習ではなく、年間を通じて数えきれないほどの訓練機会を設ける方向だ
●ハイエンド紛争を大前提に、従来より大規模で、より苛烈で、より効果的なものを想定しており、我々が高いレベルの即応態勢を確立&維持するにふさわしいものとなろう
●この大規模演習では、近年急激に強化されつつある複数の国との協力関係を、他国空軍部隊とのより長期間でより密度高い訓練を通じて深化することも大きな目的となる

ちなみに同参謀長と登壇した空自の宇宙作戦群司令・杉山1空佐(パイロットではない点に胸熱!)は
●「米空軍によるこの種の取り組みは、航空自衛隊にとっても極めて重要であり、我々を正しい方向に導いてくれるものだ」と語ったと報じられています
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Berkland AFA 3.jpg2月12日に打ち出された米空軍改革の24アクション項目には、兵器開発要求や資源配分など米空軍の将来に関する計画を、戦闘コマンドや輸送コマンド等から事実上取り上げ、新設の中将率いる「Integrated Capabilities Command」に権限を集中させる点などにおいて、「官僚組織抵抗」や「(目に見えない)組織内の流血事案」も予期されますが、

戦闘コマンドや輸送コマンドやGlobal Strike Commandの演習を強化して実戦的&大規模化し、部隊評価点検を強化する点において部隊は正面から取り組む以外に選択肢はなく、兵器開発や資源配分問題への口出し権利はく奪について文句を言う暇もない前向きな忙しさを与える副次的効果も期待されます

sakanashi JapanSET.jpgところで、航空自衛隊幹部の本ブログ登場は、2023年7月26日付記事で空幕防衛部長の坂梨弘明空将補(パイロットでない防衛部長!)をご紹介して以来ですが、今日また偶然にも「パイロットでない」宇宙防衛群司令杉山キミトシ1空佐をご紹介することができてうれしいです。戦闘機の編隊飛行写真を公式webサイトやSNS上で拡散して広報活動して喜んでいる時代ではないですからねぇ・・・。高校生の募集活動は別として、実質的な戦力強化の面では・・・

米空軍の大改革アクション項目発表
「2月12日のKendall長官らによる発表」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/5579/
「米空軍総レビュー実施発表」→https://holylandtokyo.com/2023/09/07/5012/

空幕防衛部長の坂梨弘明空将補のご活躍
「日米宇宙部隊の本格協議SETスタート」→https://holylandtokyo.com/2023/07/26/4884/

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あと36年、100歳まで頑張るB-52Jを語る [米空軍]

トラブル2-3個が常態の運用&訓練現状
過去10年間で稼働率が2割低下する中
最新機体が1962年製の同機を2060年まで活躍させるために

B-52J 2.jpg2月12日付Defense-Newsが、現在保有する76機の機体年齢が60歳を超えているB-52爆撃機部隊の現状と、延命&近代化改修の内容から課題までを紹介しながら、後輩であるB-1及びB-2爆撃機が2030年頃に引退後も、機体年齢が100歳となる2060年代まで、ステルス爆撃機B-21との2機種体制で頑張ることを求められているB-52に「寄り添うような」特集記事を掲載していますので、ご紹介したいと思います

記事は機体年齢が100歳になるまで特定機種が生き残ることの「すごさ」を説明するため、今から100年前の1924年当時の航空機を振り返り、「WW1時代の機体を改良した航空機の時代で、複葉機、操縦者の操作を直にワイヤーで操舵面に伝達、コックピットはまだ閉じた空間ではないBoeing P-26やCurtiss JN-3の時代」と紹介し、計774機が1954-62年まで製造され、その1割程度が「生き残っている」B-52の生命力を紹介しています

B-52J 3.jpgただ一方でB-52生き残りの背景には、やはり「戦闘機が空軍の中心で、爆撃機への投資が2の次の時代背景」や、「べらぼうなコスト高騰や開発遅延で製造機数が100機削減されたB-2」や「低空高速侵入思想から冷戦後の時代に放置されたB-1」の影響を受け、「消去法」で生き残ってきた経緯があるとも記事は示唆しています

以下では同記事からつまみ食いピックアップで、「現在のB-52部隊運用の状況」、「エンジン換装など総額7兆円強の延命&近代化策」、「延命&近代化改修の懸念点」についてご紹介いたします

お馴染みのYouTube番組でも解説


現在のB-52部隊運用の状況
●60年前に製造された機体の部品確保は困難を極め、2012年に稼働率78%だったものが2022年には59%にまで低下し、今後向上する見込みはない。大きな機体は屋外駐機せざるを得ない場合が多く、中東の日差しや太平洋域の潮風や寒冷地の風雪が機体に与える影響は大きい
B-52J 4.jpg●Barksdale空軍基地のB-52部隊を取材した1月、とある約6時間の訓練飛行への搭乗機会を得たが、エンジンを駆動させ離陸予定時間を30分以上経過しても整備員は3つの故障と格闘していた。3つは電波高度計、Targetting POD、そしてデジタルMap上で作戦行動や航法をサポートするCONECT(Combat Network Communications Technology)で、機長判断で電波高度計とTargetting PODは故障のまま訓練を行うこととなった

●最後のCONECTは2010年代に導入された装備で、カラーデジタル地図画面上で兵器運用担当や電子戦担当が敵情を把握しながら機体システムを操作する重要なものだが、最終的に機長はCONECTなしで、バックアップのアナログ器材で代替して訓練に臨むことを選択した
●機長は、エンジンと油圧システムと機体そのものに問題があれば飛行を断念するが、それ以外であれば故障を抱えたまま飛行することはよくあることで、機長に判断は任されており、5名の搭乗員は与えられたアセットで任務遂行に全力を尽くすことに慣れていると語っている

エンジン換装など総額7兆円強の延命&近代化策
B-52J 7.jpg●100機以上調達する計画のB-21ステルス爆撃機と、現有76機のB-52で米軍の爆撃機需要にこたえるため、エンジン換装(Commercial Engine Replacement Program)、AESAレーダーへの換装、搭載アビオ換装、グラスコックピット化、長射程核搭載ミサイル(Long Range Standoff weapon)搭載改修、通信システム換装、車輪とブレーキ換装等々を、2028年に初号機テスト開始から2030年代にかけ実施し、「B-52J」を導入する

●特にエンジン換装は、商用機エンジンをベースとして部品調達が世界各地で容易なロールスロイス製F130導入により、燃費3割向上や信頼性&静粛性向上の他、機体寿命のある2060年までオーバーホール修理不要となることが期待されている
●レーダとアビオと通信とコックピット換装により、戦術航法、目標照準、自己防御能力の大幅改善と操作性の向上が期待でき、ステルス性がないB-52の本格紛争での任務遂行範囲を拡大することを目指している

延命&近代化改修の懸念点
B-52J 8.jpg●60年以上も使用してきた機体に改修を施すことのリスクは当然低くはなく、米空軍は事前にB-52の機体状況を調査した上で延命&近代化計画を推進しているが、2010年代に実施されたC-5輸送機のエンジン換装を伴う近代化改修では、実際の作業過程で次々と機体に想定外の「経年劣化や金属疲労」が見つかって改修経費が増大し、結局計画機数の半分の機体にしか改修を実施できなかった黒歴史もあり不安はぬぐえない
●また、これだけ盛りだくさんの改修を一度に行うスケジュール管理や導入装備間の干渉的なものなど、様々な不安を指摘する声は各所から上がっている。仮に改修スケジュールが遅延することになれば、既に維持が難しくなっているB-2やB-1に加え、B-52Hへの手当ても検討する必要があり、非常にリスクの高い綱渡りとの指摘もある
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B-52J.jpg現在運用中の最も新しい機体が1962年製とのことで、同世代のまんぐーすにとっては何とも感傷的な気分にさせてくれるB-52と「B-52J」プロジェクトです

グラスコックピット化されたB-52J型の雄姿を、ぜひこの目で確認したいものです・・・

B-52関連の記事
「B-52Jへの熱い取り組み」→https://holylandtokyo.com/2023/10/19/5134/
「インドネシアにも2機展開」→https://holylandtokyo.com/2023/06/23/4785/
「極超音速兵器ARRW導入を断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「B-21導入による米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/
「重力投下核爆弾の任務除外」→https://holylandtokyo.com/2020/01/29/877/

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米空軍が大規模改革アクションを発表 [米空軍]

具体的な実施スケジュールには触れず
将来装備検討や開発専従の新コマンド創設
戦闘・空輸・CSコマンドは戦いと態勢維持に集中
ACE構想を全ての基準として一貫した教育体系を
Kendall長官の任期切れまでに間に合うか・・・

Kendall AFA2024 4.jpg2月12日、米航空宇宙協会Warfare SymposiumでKendall空軍長官とAllvin空軍参謀総長と宇宙軍トップのSaltzman宇宙作戦部長が登壇し、昨年秋から空軍省が検討してきた間近に迫った本格紛争で任務遂行可能な体制を早急に整備するための、冷戦後最大級の組織的改革24アクションが発表されました

基本的には既存の予算内で実施可能なコストで、新規事業に必要な予算措置は予算作成サイクルに組み込み可能な2026年度予算案からと説明されたアクションについて、大きな組織改革を含めてその具体的実施時期が明らかにされない「迅速に検討中」状態での発表ながら、Kendall長官がプレゼンで「We are out of time」「do so with a sense of urgency」と繰り返し言及する勢いだった模様です。まんぐーすの考える重要ポイントは・・・

Kendall AFA2024 2.jpg●装備品の導入構想や要求性能や開発管理専従の「将来体制を検討する専門コマンド」を中将トップで創設し、戦闘・輸送・CSコマンドは日々の作戦運用とそのための即応態勢維持に集中させ、戦闘機や輸送機や爆撃機の将来構想検討の中心から距離を置く

●戦闘・輸送・CSコマンドの戦闘能力強化のため、冷戦期の手引きを復活させ、コマンドの枠を超えた大規模演習や事前通告なしの戦闘能力点検を復活させるなどに取り組み、部隊航空団を前方展開即応部隊や基地機能維持部隊等に明確に区分してその求めるところを明確に区分し態勢維持状態を確認する

Kendall AFA2024 5.jpg●教育訓練では、ACE構想遂行可能な多能力を備えた兵士育成に空軍全体の基準として取り組み、新兵教育から上級教育までを含めた一貫した体系で実現する・・・との方向に整理できると考えましたが、理解不十分な点はご容赦いただき、12日付Defense-News記事からアクションの細部についてご紹介いたします

中将司令官のIntegrated Capabilities Command創設
Kendall AFA2024 6.jpg●今回発表された空軍改革の中で、他の改革と比較して格段に大きな変革は、Kendall空軍長官の2年半に渡る長官経験と50年近くの国防省での装備要求構想作成や兵器開発管理経験を踏まえた集大成的改革であり、兵器開発における要求性能取りまとめと開発管理を戦闘・空輸・CSコマンドから切り離し、長期的視点から専従で行う新設の「Integrated Capabilities Command」に権限を集中して実施させる決断である
●同コマンドは、例えば従来空軍戦闘コマンドACCが担ってきた戦闘機開発性能要求策定任務や、輸送コマンドの輸送機要求性能作成任務を引き継ぎ、ACCや輸送コマンドの意見聞き取りや議論はともに行うものの、空軍省内の全ての能力開発計画や要求性能取りまとめ、資源配分を中央集権的に采配する役割を担う
●Kendall長官は「前線部隊の兵士や運用者(ACCや輸送コマンド等)には部隊の即応態勢獲得や維持に集中してもらい、空軍の将来像を考えることは別の組織に専従で行わせたい」と表現

戦闘・輸送・CSコマンドの戦闘能力強化
Allvin AFA.jpg●米空軍の中心的戦力発揮組織である「Air Combat Command」、「Air Mobility Command」、「Global Strike Command」は、配下部隊の即応態勢維持により焦点を当てた取り組みを強化するため、空軍長官と参謀総長が自ら冷戦時代の「playbook:手引書」に立ち返り、過去30年間の中東での作戦支援の継続で記憶から失われた、大規模作戦演習や事前通告なしの戦闘能力点検や査察を再び導入する
●空軍長官は本件に関し、「前線派遣態勢が整っているはずの航空団が、本当に必要な全ての任務遂行能力を具備していることを確実にする。きちんと訓練する機会を設け、その上で部隊の能力を評価していく」とインタビューで語っている

●作戦運用を担う航空団「Wing」は、その役割に応じて3つに区分され、作戦遂行部隊と作戦運用航空団を支えたり基地運営を担う航空団との違いを明確に表現した名称を付与し、「Deployable Combat Wing」、「In-Place Combat Wing」、「Combat Generation Wing」とする
●現在空軍戦闘コマンドACCの配下にあり、情報戦と電子戦を担当する第16空軍は、空軍長官と参謀総長に直属する「Air Forces Cyber」に格上げされる。指揮官は現在と同じ少将

Saltzman AFA.jpg●宇宙軍も新たに現代の厳しい脅威下を踏まえた部隊即応態勢の基準を設定し、新たな体系の演習を導入して部隊能力を強化する。宇宙軍トップのSaltzman大将は「現在の宇宙軍は商船運用会社のようなものであり、その組織を米海軍のように鍛える必要がある」と厳しい表現を用い、「我々が成し遂げるべき改革革新を理解する必要がある」と現実を直視した
●ローテーションで統合の宇宙コマンドを支援する新たな「Space Force Combat Squadrons」を立ち上げる。また統合の地域コマンド(インド太平洋軍や中央軍など)や機能コマンド(サイバーコマンドや輸送コマンドなど)を支援する役割を、既存の宇宙軍組織を再整理して「Space Force component commands」として立ち上げる

教育訓練体系の再整理
Kendall AFA2024 7.jpg●教育訓練コマンド(Air Education and Training Command)を「Airman Development Command」に改編し、ACE構想(Agile Combat Development)を作戦運用の基準として掲げ、これまでの「多能力兵士Multi-Capable Airmen」養成との認識でなく、多能力兵士が標準との認識を表現する「Mission-Ready Airmen」養成を目指し、新兵教育から上級者レベル教育まで一貫して取り組み体制を構築する
●IT分野とサイバー分野にとりあえず限定し、空軍内で最初に上級レベルの高い練度を保有する兵士に「Warrant Officer:准尉」の階級を創設して、能力相応の給与水準向上を目指すだけでなく、専門技能分野に特化した高い技量を伴う専門家のキャリアパスを、通常の士官養成とは異なるルートで設定可能にする

●Air Force Materiel Commandは内部再編し、以下の3つのセンターとオフィスに役割を再整理して業務の円滑推進を目指す
Information Dominance Centerは、C3BM(Battle Management)とサイバー、電子戦、空軍全体の情報システム&インフラの側面から、空軍と宇宙軍を支援
Air Force Nuclear Systems Centerは、現存のNuclear Weapons Centerを拡充して核兵器管理の改善を担い、ICBM計画担当少将のICBM再構築を監督する
Air Dominance Systems Centerは、Life Cycle Management Centerを改編し、航空機と兵器開発の同期を図ることに焦点を絞る
・•Integration Development Officeは、新たな運用構想や技術導入が、技術的成熟度や全体のバランスから見て適切かどうかを見積もり評価する役割を担う
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Kendall AFA2024.jpg5 か月の集中検討の成果として公開された内容ですが、Kendall長官は様々な提案を審議する中で、例えば陸軍や海軍のように複数の 主要コマンドをを単一の軍司令部に統合する等のより劇的な提案のいくつかは破棄され、洗練されたと説明しています

また発表した内容は空軍長官の権限で実施可能だが、事前に国防長官や副長官、更に他軍種の長官にも事前説明し、改革の方向性について一切の疑念なく「正しい道を歩んでいる」との評価を頂いているとも語った上で、今後について、「方向性を決定したので、その詳細に取り組む」、「詰めるべき詳細が多数あり、大変な作業になるが、やり遂げる準備は出来ている。私たちは官僚的な抵抗を克服するアプローチを採用している」と会場に列席の空軍主要幹部と空軍OBや軍需産業関係者と専門家ににらみを利かせたようです

政治任用者であるKendall空軍長官の任期は、11月の大統領選挙に伴う新政権誕生までと考えるのが普通で、時間が限られた中での本改革が可能なのか、様々な議論を既に巻き起こしていますが、まんぐーすはその意気込みに素直に感動しましたし、その使命感と熱意を学びたいと思いました。今後に注目したいと思います

Kendall空軍長官が宣言
「米空軍総レビュー実施」→https://holylandtokyo.com/2023/09/07/5012/

この改革に向けたAllvin参謀総長の推薦図書など
「米空軍制服トップが推薦図書等を公表」→https://holylandtokyo.com/2024/01/31/5473/
「Kendall空軍長官の推薦図書19冊」→https://holylandtokyo.com/2023/06/19/4736/

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米空軍が電動固定翼機の3か月間のお試し試験終了 [米空軍]

Joby Aviation社電動ヘリ試験に続き固定翼Aliaでも
負傷者搬送やF-35部品輸送の低コスト運用
トラック車両輸送より「早くて安い」とアピール

Alia BETA3.jpg1月28日、電動固定翼機「Alia」を開発したBETA Technologies社が、米空軍と共に10月末からフロリダ州Duke飛行場(Tyndall空軍基地から約120㎞)を拠点として取り組んできた同機(機体はBETA社保有)の3か月間に及ぶお試し試行運用を終了し、従来C-130輸送機が行ってきた負傷者の高度医療機関近傍への空輸や、設備不十分な飛行場に着陸したF-35に修理用部品を空輸する試験飛行などを行ったと発表しました

米空軍は2020年2月から、日進月歩の民生電動ヘリ&航空機を活用するプロジェクト「Agility Prime」を本格的に立ち上げ、空軍研究所のAFWERXチームが主導で10社以上の企業と様々なレベルの契約を締結して「民間活力活用」を図っており、2023年年9月には「電動ヘリeVTOL」として、トヨタ自動車も600億円出資しているJoby Aviation社から初号機を入手し、加州エドワーズ空軍基地で同じく3か月間のお試し使用試験を行ったところです

Alia BETA4.jpg電動ヘリ&電動固定翼機の用途を空軍は多様な側面から検討中ですが、従来型ヘリでは危険な特殊部隊員の侵入・帰還輸送や敵領域での救難救助、静粛性を活用した偵察、最前線の分散運用基地での輸送任務、広大な演習や試験場での移動用など、66項目の将来想定任務がアイディアとして米空軍プロジェクトチーム内で検討されているとのことです。

また「無人機」開発の教訓から、民間主導の競争に任せすぎると価格競争になり、結果として中国製部品や中国企業がサプライチェーンに大きく絡んで米国防省が採用できなくなる問題の再発を防ぐため、民間企業の競争や柔軟な発想を妨げない「ほどほど」の米国防省による関与で、米国内の電動ヘリ&航空機産業を成長させつつ、米国内サプライチェーンも育成する姿勢で取り組んでいるようです。

電動固定翼機「Alia」の3か月お試し試験では
Alia BETA5.jpg●まず「Alia」は、幅約50フィート(15m)、航続距離250マイル(450㎞)、最大速度138ノット(時速250㎞)でペイロードは1000ポンド(約450㎏)、騒音レベルは通常ヘリの10%程度レベル。
●「Alia」には、垂直離着陸可能なティルローター形式の型もあるが、空軍は通常離着陸型をお試し。機体の受け入れ前に、3基のシュミレータ(うち1台は移動可能型)と2機の充電設備を入手済で、2023年10月に米国防省初の充電設備としてDuke飛行場に設置

●1月11日実施の患者輸送試験の概要
・救難救助ヘリHH-60Wが、患者を最前線基地想定のジョージア州Moody空軍基地から、安全な後方基地を想定したフロリダ州Eglin基地に空輸。その後Eglin基地に待機していた「Alia」機内にストレッチャー毎患者を移し、高度医療施設近傍をイメージした約120㎞先のDuke飛行場へ、従来のC-130輸送機ではなくAliaで移送

ALIA Beta2.jpg・BETA Technologies社は、「僅か10分でのHH-60ヘリからAliaへの乗り換えは、一刻を争う患者輸送にとって重要なポイント」(C-130の場合、機体への患者の固定、エンジン始動から離陸までの時間もより多く必要)、「この120㎞飛行にC-130は乗員3名と燃料費約1600ドルが必要だが、Aliaは乗員2名と燃料費わずか5ドルで可能」(エンジン推進航空機と比較し、単純な構造の電動航空機は、維持整備費も安価)とアピール
・米空軍の試験飛行担当部隊指揮官は、「Aliaの様な低コスト輸送アセットを導入することで、前線での空輸任務に必要なC-130の負担軽減が可能」と電動航空機の利点をアピール

●F-35部品の輸送試験
・「Maintenance Recovery Team (MRT) mission」として、Duke飛行場に緊急着陸したF-35の修理に必要な部品を、Eglin基地との間を往復してAliaが空輸
・BETA Technologies社は、「この任務を車両による陸上輸送で行うと、4時間とガソリン代45ドルが必要だが、Aliaだと1時間と燃料代25ドルで可能」とアピール
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Archer Aviation.jpg米空軍は上記でご紹介したJoby社とBETA Technologies社製の電動ヘリや航空機の「お試し試験」の他に、既にArcher Aviation社と約210億円で6機の電動eVTOL機購入契約を結んでいるとのことで、「まず電動ヘリや電動固定翼機の特性を米空軍内に周知する」フェーズから、徐々に「本格的な任務アサインと部隊戦力化」フェーズに進んでいる模様です

どの機体もデザインが洗練されており、既存の軍需産業が生み出す航空機とは一味違いますねぇ・・・・。完全に素人目線ですが・・・

米空軍の「Agility Prime」計画
「電動固定翼機Aliaの試験開始」→https://holylandtokyo.com/2023/12/05/5267/
「Joby社電動ヘリで本格試験開始」→https://holylandtokyo.com/2023/10/05/5076/
「米空軍が電動ヘリ導入検討開始」→https://holylandtokyo.com/2022/06/29/3370/
「電動ヘリeVTOLでACE構想推進へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/13/105/

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B-21次期爆撃機は既に低レート量産入り [米空軍]

残念な追記です・・・
(1月25日の報道を踏まえて)

Warden CEO.jpg1月25日開催のNG社CEO会見(四半期決算説明会)で、B-21開発製造事業について、米空軍との初期開発&5ロット製造契約(2015年)は「固定経費」契約で1機あたり「$550 million」となっているが、諸物価の高騰等により現在は「$778 million」となっており、1機あたりの差額「$75 million」(約110億円)の損失を生じることとなっていると語り、初期5ロット製造(推定21機)で約2300億円の損失を抱えると明らかにしました

CEOのKathy Warden女史は、2015年契約段階で米空軍幹部が「少なくとも100機調達」と述べ、最近では運用担当のGSコマンドが「150-200機必要」と主張していること等を背景に、トータルのB-21計画ではNG社にしっかりした利益をもたらすことになろうと株主に説明していますが、同時に「今後は固定価格契約にはより慎重に臨む所存だ」とも説明しています

超優等生だったB-21開発に「けち」がついて残念ですが、NG社にとってはそれよりも問題なのが、Kendall空軍長官も頭を抱える「GBSDプロジェクト(ICBM:ミニットマンⅢ)」で、2020年契約時から2029年運用開始を目指す計画で、既に37%のコスト増(約4.5兆円アップ)見積りの「超難事業」となっていると1月29日付の記事(https://holylandtokyo.com/2024/01/29/5478/)でご紹介したところです。核抑止3本柱の維持は難しいかもしれません・・・
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(以下は、1月18日付の報道を基にしたベースの記事です)

昨秋に調達担当次官が承認と明かす
試験機を量産ラインで製造し成熟度を確認済と
当初計画2020年代半ばに運用態勢確立に向け着々

B-21 low-rate2.jpg1月22日、米国防省のWilliam LaPlante調達担当次官(元空軍副長官)が声明を発表し、昨年11月10日に初飛行に成功した次期ステルス爆撃機B-21に関し、地上試験や飛行試験の順調な進み具合や、試験用機体を量産機製造ラインで組み立てる等、製造設備や製造ライン技術者&作業従事者の技量を十分に成熟したレベルに高めていることが確認できたことから、2023年秋に「低レート量産:low-rate production」の承認を出していた、と明らかにしました。

B-21は、2022年12月2日に限定された形での機体お披露目式典が行われ、2023年11月10日に初飛行(製造拠点の加州Palmdale工場から、同州内Edwards空軍基地)が確認され、その後は同空軍基地で地上滑走など本格的な地上確認試験が継続されていたところ、2024年1月17日には同空軍基地での初飛行も目撃(空軍報道官も認める)されていました

LaPlante B-21 2.jpg2023年秋に同次官が承認したという「低レート量産:low-rate production」が、どの程度の製造ペースを指すのか不明ですが、計画では「2020年代半ばに初期運用態勢確立」、「2030年代には老朽化が進むB-1およびB-2爆撃機の後継機となり、エンジン更新を含む近代化改修を終えた76機のB-52Jと共に、米空軍爆撃機2機種体制を構築」、「少なくとも100機調達」と米空軍は発信を続けており、

B-21の持つステルス性能を生かし、強固な防空網を持つ本格的な敵対国に対しても、「通常兵器と核兵器の両方を搭載&使用可能な機体仕様」で「penetrating deep strike missions」が遂行可能な能力を米空軍に提供するアセットだとも説明されてきています。なお同爆撃機の調達&運用&維持整備に関する30年間の総コストは$203 billion(約30.0兆円)で、機体1機の平均価格は$692 million(1020億円)と見積もられています

B-21 low-rate.jpg複数の米空軍高官は2023年下旬時点で、「初披露した初号機を含め、現在6機が様々な製造段階にある」と述べ、これらの機体は様々な初期試験用の特別仕様や計測機材搭載の形態となっているが、所要の試験終了後は部隊配備用に機体改修して実戦部隊に提供されると説明しており、従来の新型機体開発&製造の流れと比べ、「開発試作&試験段階から、効率的な量産態勢確立への円滑な移行」を強く意識した計画が極めて順調に実行されている様子が伺えます

またNorthrop Grumman社関係者は、「米空軍と協力し、B-21の全ライフサイクルをカバーするdigital ecosystem構築に取り組んでおり、個々の機体の製造段階から部隊提供後の維持整備や各種運用データを一括管理することで、現場の整備員や空軍技術者と弊社開発関係者が一体となって、B-21の効率的な製造・使用・維持につなげる体制を構築しつつある」ともアピールしています
///////////////////////////////////////////

B-21 low-rate3.jpgB-21爆撃機の開発が順調な理由について以前米空軍関係者が、「計画が開始された後は、要求性能を一切変更しなかった。設計や技術審査がある程度順調に進むと、様々な方面から、様々なコネやルートを経て、この能力も付加してはどうかとか、新たに開発や研究が始まっているこの技術をB-21で試してみないか・・・等々の話が持ち込まれたが、一切受け付けなかった」と話していましたが、高官や政治的な「横やり」が「グダグダ開発」の一番の原因かもしれません

米軍や米国防省が取り組む様々な新規開発案件の中で、「唯一」と断言しても良いくらい信じがたいレベルで順調なB-21開発計画の、今後の「武運長久」を心から祈念申し上げます

B-21関連記事
「初飛行を12の視点で分析」→https://holylandtokyo.com/2023/12/01/5284/ 
「11月10日早朝の初飛行」→https://holylandtokyo.com/2023/11/13/5238/
「Taxi Tests開始」→https://holylandtokyo.com/2023/10/30/5180/
「エンジン稼働試験開始&屋外写真」→https://holylandtokyo.com/2023/09/15/5041/
「最近power on試験実施」→https://holylandtokyo.com/2023/08/03/4911/
「豪州も購入検討した」→https://holylandtokyo.com/2023/05/15/4588/
「B-21導入で米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「初披露のメディア扱い」→https://holylandtokyo.com/2022/12/14/4027/
「映像:B-21初披露式典」→https://holylandtokyo.com/2022/12/05/4015/
「10の視点で:NG社事前リリース」→https://holylandtokyo.com/2022/12/01/4004/
「12月2日に初披露」→https://holylandtokyo.com/2022/10/24/3796
(これ以前に2011年から25本の記事アリ)

米空軍の爆撃機体制
「B-21導入で爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/

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米空軍制服トップが推薦図書等を公表 [米空軍]

「組織改革や挑戦」に関する4アイテムの簡明さ
書籍2冊、Podcast1本、論文1本
推薦図書等に関する空軍兵士の意見を募るとか

Leadership Lib.jpg1月17日付米空軍協会web記事が、昨年11月に就任したDavid W. Allvin新空軍参謀総長が推薦する書籍等4アイテムを紹介しています

従来は推薦図書を公表するのがお決まりでしたが、統合参謀本部議長に就任したBrown空軍大将が空軍参謀総長時に、「書籍だけでなく、映画やPodcastや他のメディア(論文等を含む)も対象にする」と時代に沿った変更を行い、Allvin新参謀総長は冒頭の4アイテムを選定したとのことです

Allvin16.jpg昨年6月にKendall空軍長官が推薦図書(この時はまだ書籍縛り)を発表した際は、ロシアのウクライナ侵略の真っただ中でしたが、普段から自身の業務の優先事項を3つ挙げろと言われたら、「1にChina、2にChina、3にChinaだ」と公言していたそのままに、約10冊の推薦図書は全て中国に関するもので話題を集めました

Leadership Lib4.jpg今回Allvin新参謀総長が推薦した4アイテムは、いずれも「不確実性の中での組織改革と挑戦」に関するもので、Kendall空軍長官の命で昨年9月から検討が開始され、今年2月12日に発表予定の「米空軍の組織構造、訓練、兵器開発等々」全体に及ぶ改革の「初期実施計画」(最最適化:re-optimization計画)を強く意識したものとなっています

なおAllvin大将は新たな試みとして、推薦書籍等に対する空軍兵士からの意見を求めると明らかにし、「皆からの意見は重要で、組織として何を重視し、皆のリーダーシップ探求の旅に何が不可欠なのかを定義するうえで極めて大切だ」とその理由を説明しています

推薦された4アイテムを、同大将の推薦の弁と共にご紹介

●書籍「One Mission」 by Chris Fussell
元海軍SEALsによるこの本は、「大規模な組織に革命を起こすための重要事項」とともに、「組織改革成功の実例から得られる教訓を学ぶ生々しいテキスト」

Leadership Lib3.jpg●書籍「Analogies at War」 by Yuen Foong Khong
この本はベトナム戦争について考察し、「歴史上の類似事象が政治的意思決定にどのように影響したか」を描いたもので、「政策選択に作用する認知プロセスを明らかにし、仮定に疑問を投げかけ、現代の意思決定における認知の罠を回避するリソースとして役に立つ」と推薦

●論文(Foreign Affairs誌掲載)「The Path to AI Arms Control: America and China Must Work Together to Avert Catastrophe」 by Henry Kissinger and Graham Allison
「AI軍備管理への道:米国と中国は大惨事を回避するため協力すべき」とのタイトルの論考は、「規制無きAI開発がもたらす影響に対処するため、迅速な行動と協力の必要性を訴えている」と推薦

●Podcast「How to Excel When Everything Is Changing」 by Brad Stulberg
4Pアプローチ(Pause, Process, Plan, Proceed)で、「衝動的な反応ではなく、思慮深い対応をするための秘訣」について詳しく説明
/////////////////////////////////////////////

Leadership Lib5.jpg記事は、公表されたリストは今後追加される可能性があると記していますが、過去の参謀総長が7-12冊程度の書籍をリストアップしていたことと比較すると、まず4つに絞り込んできたAllvin大将の姿勢に、仕事人&実務家として名をはせてきた人柄がにじんでいるように感じます

2月12日の米空軍&宇宙協会主催の航空宇宙戦シンポジウムで、Kendall空軍長官がどのような空軍の改革「初期実施計画」(最最適化:re-optimization計画)を持ち出すのか大変気になりますが、剛腕Kendall長官の決定を実行に移すAllvin参謀総長の手腕にも期待です

Kendall空軍長官が宣言
「来年1月までに米空軍総レビュー実施」→https://holylandtokyo.com/2023/09/07/5012/

全てが中国関連の書籍です!!!
「Kendall空軍長官の推薦図書19冊」→https://holylandtokyo.com/2023/06/19/4736/

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次期ICBM開発はコスト&期間増大で法令に抵触 [米空軍]

「Nunn-McCurdy法」要求の国防長官再検討案件に
既にコスト37%増&開発期間2年以上超過の惨状
空軍長官が昨年苦悩吐露した実態の一端が・・・

GBSD.jpg1月18日付の米空軍協会web記事は、2020年に米空軍がNorthrop Grumman社と契約して推進中のGBSD(Ground Based Strategic Deterrent:ICBMミニットマンⅢの後継ミサイルとなるLGM-35A Sentinel や指揮統制システムや通信システムや維持整備施設等々を包括した大規模計画)プロジェクトに関し、米空軍やNG社関係者からの聞き取りを踏まえ、

ミサイル自体の開発はそれほど問題ないが、地上サイロなど発射システムや通信インフラを含む指揮投資システムの開発関連で次々と難題が発覚し、少なくともコストが37%高騰し、開発期間が2年以上遅延する見込みとなっており、グダグダ装備品開発を防止する「Nunn-McCurdy法」の規定に抵触(コストが15%以上増加)することから、プロジェクトの廃止、又は問題や改善方法の明確化、コストやスケジュールに関する国防長官による再審議&承認が必要な事態に陥っていると報じました

まずGBSDプロジェクト概要は・・・
GBSD6.jpg(当初計画では約$96B(約14兆円:研究開発25.5B,各種調達61.6B、各種建設費8.7B)だったものが、少なくとも$125B(18.5兆円)に膨らむ模様)
●約400個の地下発射サイロ再整備(膨大な環境影響調査や地権者や自治体等との調整を含む)と、LGM-35A Sentinel ミサイル634発の開発&調達(450発をミニットマンⅢ後継として約400個の地下サイロに。約160発は定期発射訓練や抑止力アピール用、25発は試験開発用)

●3か所の中核IICBM発射管制センター(F. E. Warren, Malmstrom, and Minot Air Force Bases)、10数か所の発射管制施設、兵器貯蔵庫、維持整備施設等など整備
●上記各施設と上級司令部や大統領等国家要人を結ぶ指揮統制システム(通信ケーブルだけで1万2千㎞以上)、ミサイル運搬用等車両56両など

Kendall SASC.jpg国防省としてGBSDプロジェクト廃止は選択肢にないことから、「Nunn-McCurdy法」の条件を満たす「出直し計画&コスト見積もり」を2024年夏までに準備して各方面の理解を得る必要があるのですが、昨年11月に剛腕&強気で知られるKendall空軍長官までもが、「恐らく空軍が担当した各種開発計画の中でも、最も複雑で困難なプロジェクト」だと語り、その困難さの源泉を、

●ミニットマン開発から50年以上が経過し、知見(各種設計図や製造ノウハウや技術者等)が散逸し、専門家がもはや存命でなく、前進するほど次々と諸問題が表面化
●450個のICBM格納サイロが広範な土地に分散配置されている(日本の中国四国地方を合わせた面積:イメージで縦横130㎞×640㎞)
●資料散逸のサイロと土地再開発調整、サイロと指揮所を結ぶ指揮統制システム開発&建設(通信ケーブルだけでも総延長1万2000㎞以上)などなども含む、総額約14兆円プロジェクト
・・・だと、陰鬱な表情で講演で吐露していたほどでした

「Nunn-McCurdy法」抵触でも事業継続の条件5つ
GBSD7.jpg●国家安全保障上で不可欠な装備品であることの説明
●問題の原因と対策が明確に調査され対策が練られている事
●出直し計画が国防省の監査機関(Cost Assessment and Program Evaluation局)に承認されること
●出直し計画より低コストの代替案が存在しないこと
●他プロジェクト予算を削減しても優先すべきもの

18日付同記事によればコスト増と遅延原因は
●後継ミサイル開発(LGM-35A Sentinel)は大きなコスト増と遅延原因とはなっておらず、おおむね順調でGBSDプロジェクト全体への影響は軽微
GBSD4.jpg●問題の多くは指揮統制システムと発射用地下サイロに関するものが大半を占める。指揮統制システムは現有システムを再利用をベースに考えていたが、装備が旧式すぎて現在必要な周波数帯に適合不能など、根本的見直しを迫られている

●地下サイロ改修も知見散逸(各種設計図や製造ノウハウや技術者等)で根本見直しを迫られ、同時に(辺鄙な場所に分散配置されていること等々から、)必要なセキュリティークリアランスを取得可能な作業員確保が難しい
●現ミニットマンⅢと次期LGM-35A Sentinelの並行運用期間の対応が想定以上に難しい
●世界的なインフレによる物価上昇
////////////////////////////////////////

GBSD8.jpg米空軍省のAndrew Hunter技術開発&兵站担当次官補は、本プロジェクトは通常のビックプロジェクトを5つ合算したようなメガプロジェクトだと語り、国防省の開発&調達次官経験者であるKendall空軍長官が「恐らく空軍が担当した各種開発計画の中でも、最も複雑で困難なプロジェクト」と呼ぶGBSDですが、長年に渡り「放置」してきた戦略核部隊からの「つけ」でしょうか・・・。核兵器と言う最終兵器が持つ悲しい運命なのでしょうか・・・

Rocket Force8.jpg記事「中国ロケット軍の幹部汚職と同部隊能力への報道に思う」でもご紹介しましたが、米戦略核部隊は種々問題が表面化した2014年国防省調査で、「忘れ去られた部隊」「インフラの老朽化で部隊の無力感増大」「国防省や米軍幹部の期待レベルと現場の実態の格差が著しい」「予算も手当ても後回し」「兵士の昇任や福利厚生は多職種優先で、現場部隊の士気は士官クラスも含め崩壊」等々と表現され、根本的解決は今もまだ・・・が実態でしょう。どうするんでしょうか?

昨年11月にKendall空軍長官が不安吐露
巨大プロジェクトGBSDへの苦悩隠さず
「次期ICBM開発の苦悩&不安を語る」→https://holylandtokyo.com/2023/11/22/5244/

中国やロシアの核兵器運用部隊も心配
「中国ロケット軍汚職と部隊能力報道に思う」→https://holylandtokyo.com/2024/01/15/5436/

米軍「核の傘」で内部崩壊
「ICBMサイト初のオーバーホール」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-15
「屋根崩壊:核兵器関連施設の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-23
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「唖然・国防長官が現場視察」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-18
「特別チームで核部隊調査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「剱持暢子氏の論文:米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「米核運用部隊の暗部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-29

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E-4B:国家危機空中指揮機 (NEACP)をご紹介 [米空軍]

VR訓練機材を充実し多忙な中で人員要請強化中との報道あり
これを機会にE-4B:国家危機空中指揮機NEACPをお勉強

E-4B4.jpg1月11日付米空軍協会web記事が、米空軍が4機保有するE-4B:国家危機空中指揮機 (NEACP:通称NightWatch)に関し、常に緊急事態用に大統領に寄り添って緊急発進態勢にあるほか、大規模災害対処にも出動する忙しさの中で要員養成を計画的に実施するため、機体運用要員と整備要員を対象としたバーチャルリアリティーVR訓練機材導入に、空軍Global Strike Commandと連携して、機体運用&管理を担う第55航空団が取り組む様子を報じています

本日は、VR訓練機材の積極導入に関してご紹介するとともに、今まで本ブログで取り上げたことのないE-4B:国家危機空中指揮機 (NEACP)について、ネット情報をかき集めてご紹介いたします

先ず同機部隊へのVR訓練機材の積極導入に関して
E-4B5.jpg●機体への需要が極めて高い中、4機しか保有機が無いため、機体の定期修理や部品交換なども考慮すると、搭乗員や整備員が技量維持や能力向上のために機体を使用する機会が限定されるため、2021年からVR訓練機材の導入に取り組み、現在は初期型4台で、操縦者、搭乗員、整備員が訓練を行っている
●このVR訓練環境をさらに充実させるため、3次元機体スキャン機能を活用し、E-4B機体の内部と外部を仮想空間上で再現可能なシステムを現在開発中で、7台導入予定の初号機が2月に納入予定である他、整備員用に特化した別のVR訓練装置14台開発予算も確保済で、3月から開発が本格化する

●また整備員用VR機材の開発本格開始に先立ち、Global Strike Comman主導の開発プログラムから生まれたプロトタイプの「Weapon System Maintenance Trainer」が既に導入されており、実機体を使用しないで、機体トラブル時の故障個所探求や対処訓練が実施でき、要員の整備資格維持や技量向上に活用されており、更なる改良への部隊意見の聴取にも活用されている
●これらVR機材は、仮想空間利用の中でもレベルの一段高い「XR:extended reality」で作成されており、より現実の運用や整備環境に近い環境が仮想空間内で再現可能な設計となっている

以下では、このE-4Bについて概要をご紹介

E-4B・NightWatchについて
E-4B6.jpg●同機は、Boeing製B747-200Bを改造し、米国の国家空中作戦センター(NAOC:National Airborne Operations Center)として使用されている航空機で、4機保有し、第55航空団に所属する
●冷戦後の戦略環境の変化を受け、核戦争だけでなく、大規模災害対応のため、FEMA長官の要請で被災地域支援にも活用されるようになっている。そのため、現在の国家緊急空中指揮所 (NEACP National Emergency Airborne Command Post) との呼称へ名称が変更された

●核戦争・大規模災害などに際し、大統領や国防長官などの国家指揮権限(NCA)保持者および指揮幕僚が、地上で指揮が取れない場合に搭乗し、米軍を空中から指揮する。特に搭載通信機器を介し、米軍ICBM部隊・SLBM部隊・戦略爆撃部隊の指揮任務が重視される。
●米大統領の近くには必ず1機以上のE-4Bが待機し、大統領がエアフォースワン(VC-25)で外遊する場合などでも必ず随行。現在では国防長官の外国訪問にも使用され、飛行中に同行した記者団との会見も行われている

E-4B3.jpg●当初はEC-135を同任務に宛てていたが、より機体の大きいB747-200Bベースの機体にEC-135と同様の装備を搭載してE-4A型機とし、1973年6月に初飛行して4機が調達された
●その後、空中指揮センターとしての機能充実が求められ、EC-135より搭載容量が大きいE-4Aの特徴を生かし、空中給油機能や核戦争に備えたEMP対策強化等々を含む搭載装備の充実が図られ、改修型E-4Bとして1979年12月から導入が始まり、4機体制で現在に至る

●第55航空団が運用や維持整備を担っている模様だが、普段の所在地や動静は公開されていない。しかしネブラスカ州オファット空軍基地が2017年6月23日に竜巻被害を受けた際に、軍用機10機も被害を受けたが、その中の2機がE-4Bであったことが明らかになり、注目を集めた

E-4Bの特徴
E-4B2.jpg●キャビン内には国家指揮権限作業区画、会議室、ブリーフィングルーム、戦闘幕僚作業室、通信管制センター、休憩室、記者会見室などが設けられている。
●空中給油受油装置の付与→任務から長時間在空が求められることからE-4B導入時に空中受油装備を備える。しかし、エンジンオイルは空中で補充出来ない為、連続航続時間はエンジンオイルがなくなるまでの72時間に限られる。受油口は機首に設置された。なお、無給油では12時間の航続能力を持つ。
●各種電子機器の追加→機体搭載の電子機器は核爆発によるEMP対処のシールド措置済。EHF(ミリ波)通信による衛星通信能力、VLF(超長波)通信による対潜水艦通信能力なども備える。機体上部の出っ張りはSHF/EHFアンテナ。LF/VLFアンテナは長さ6kmで、機体尾部から曳航する。

E-4B後継機の検討開始
E-4B SACO Survivable.jpg●大統領専用機(VC-25 その後継機も検討中)の充実を受け、2000年頃からE-4Bの廃止が検討されたこともあったが、2030年代初期に機体寿命からE-4Bが退役することから、2020年に「SACO:Survivable Airborne Operations Center」計画としてE-4B後継機計画が本格スタート

●「E-4Bと同等の機体サイズを持つ、民間機ベースの機体を最高で4機調達する。中古機体も検討対象(up to four potentially used)」との前提で、2020年に関連企業に提案を要請。ボーイングとSierra Nevada Corpが手を上げたが、2020年12月にボーイングが撤退(Boeing confirmed that it has been excluded from the competition)したことを認め、現在は1社のみが残っているが、正式決定発表には至っていない
●同計画用予算として、2023年度予算には約140億円だったが、2024年度には約1300億円が盛り込まれている

米空軍のE-4B公式解説webページ
https://www.af.mil/About-Us/Fact-Sheets/Display/Article/104503/e-4b/

大統領専用機(VC-25)の後継機問題
ボーイングのいい加減さが再び露呈
バイデン政権が方向転換した可能性もありますが・・・
「2024年予定から2-3年遅」→https://holylandtokyo.com/2022/05/31/3291/

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米空軍がアラビア語やアフガン語専門家を中国語へ急速転換 [米空軍]

暗号分析官が語学転換に挑戦
急速多数養成のため軍語学学校ではなく都会のBerlitzで
14か月間の集中コースとのことですが・・・

Berlitz Odenton.jpg1月8日付米空軍協会web記事は、米空軍第70 ISR航空団が、国家防衛戦略NDSにより示された対テロから本格紛争対処体制への米軍の移行に伴い、もはや部隊で需要が激減しつつあるアラビア語やアフガニスタン地域で使用されているパシュトゥン語の言語分析専門家(正確には暗号言語分析官 CLA:cryptologic language analysts)を、中国語の同職専門家に転換させる14か月の教育コースが、民間企業ベルリッツの運営で、8名に対して開始されていると伝えています

同専門家CLAは、NSA(National Security Agency)と連携し、地上や電磁波情報収集機(RC-135シリーズやEC-130H)で集めた言語や信号による通信情報を分析する任務を持っていますが、アラビア語やアフガン語の専門家は軍内で職を失いつつあり、管理的なポストや別の業務の責任者業務就いていることが多く、中国語専門家へのニーズが急増する中で、言語専門家としての経験を生かすため、中国語への転換教育開始を空軍として決定したとのことです

Berlitz Odenton3.jpg米空軍第70 ISR航空団で同教育を担当する軍曹は正直に、「言語をマスターすることは容易ではなく、私はこの転換コース参加者をうらやましいとは思わない」と語っていますが、中東言語への需要が激減し、ロシア語や中国語専門化への需要が急速に高まる中で、他言語であってもCLAであった専門家の知見を、空軍として無駄にはできないとしています

従来米空軍の言語教育コースは、加州Montereyの「Defense Learning Institute Foreign Language Center」や、ペンタゴン近傍の「Defense Language Institute-East」で行われてきましたが、中国語需要が養成能力限界を超えたことから、第70 ISR航空団所在のメリーランド州で、語学教育会社ベルリッツの力を借りて中国語習得コースを立ち上げることになったとのことです

Berlitz Odenton2.jpg担当軍曹はその利点を、民間教育リソースを利用することで、転勤旅費や教育予算を節約でき、かつ生活の質の高いメリーランド州に所在する同航空団基地内に居住することで兵士の福利厚生面での向上にもつながると強調し、このような教育手法をアピール材料に、中国語専門家を希望する一般空軍兵士も募り、言語専門家需要の急増に応え養成数を増やしたいとの意向を示しているようです
/////////////////////////////////////////

記事はベルリッツの教室で中国語に取り組む受講生数名の様子をとらえた写真を掲載していますが、中東言語の専門家として相応の年齢であり、「中国語専門家のニーズが高い」とはいっても、中国語への興味だけでは職責を果たせるレベルに14か月間で達することは容易ではないでしょう

Berlitz Odenton4.jpg中国語への転換教育を受けている8名は、5名がアラビア語の様々な方言の専門家で、3名がアフガン地域語パシュツゥン語で貢献してきたCLAとのことで、担当軍曹の「参加者をうらやましいとは思わない」発言は、正直すぎる率直な感想と言えましょう

中国経済の崩壊が不動産バブル崩壊から金融システム崩壊に飛び火し、習近平が経済の苦境を認めるに至っていますが、まだまだ中国の混乱は序の口で、中国共産党政権は国民の預金に手を付けようとしている模様だとの気配も報じられています。

様々な意味で中国語へのニーズが高まっているとのことは理解しますが、アラビア語から漢字世界への転換とは・・、苦行以外の何物でもないと思いますが・・・

中国に関する記事31本
https://holylandtokyo.com/category/%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e8%a6%81%e4%ba%ba%e3%83%bb%e8%bb%8d%e4%ba%8b/

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3機目の核実験監視用WC-135Rを受領 [米空軍]

1964年製造のKC-135を改造して
念願のWC-135R 3機体制で核兵器拡散に備え
「後継機は検討せず」のRC/WC-135だが2050年代まで

WC-135R2.jpg12月4日、米空軍Offutt空軍基地の第55航空団第45偵察飛行隊が、大気中の核物質を探知&検知するWC-135「R型」の3機目を受領し、2020年10月から始まった、旧式WC-135「C/W型」の2機体制から新型WC-135「R型」3機体制への転換が完了しました。

大気中の核物質を探知検知して核実験実施の有無を確認するWC-135は、核兵器保有を狙う潜在的国家が増加傾向にある中で非常に貴重で、2機体制から3機体制への移行は、航空機の定期整備や故障発生を考えると、同航空機運用の柔軟性や即応態勢維持に極めて大きな意味を持ち、運用部隊長が「史上初めて、任務遂行の質低下なく、同時に複数場所で活動が可能になる」と表現しているところです

WC-135R3.jpg旧式WC-135「C/W型」の2機体制から新型WC-135「R型」3機体制への転換は、まず2機の旧式WC-135「C/W型」を順次「R型」へ改修することで2機の「R型」を確保し、次に1964年にKC-135として導入され2019年まで空中給油機として運用されていた機体を、約4年かけ新しいWC-135「R型」に改修して3機目として受領し完結したとのことです。

ちなみに、2機の旧式WC-135「C/W型」を順次「R型」へ改修した2020年10月から2023年5月の31か月間には、1機しか運用可能なWC-135が存在しない期間が29か月間もあり、北朝鮮やイランがコロナ下のどさくさに紛れて核開発を進めた可能性があった中、監視の目が脆弱な状態を甘受していたことになります

WC-135R.jpg特殊情報収集機であるRC(各種電波情報収集機)やWC-135については9月の記事で取り上げた通り、機体は50歳以上で老朽化が進んでいるものの、搭載観測機器は様々な手法を用いて数年に1回「近代化改修や更新」が図られており、最新技術を反映した観測機材を操作する搭乗員は「勉強することが多数あり、飽きることが無い環境」に置かれているとのことです

今回受領した3機目は、KC-135を改修してWC-135として必要な観測装置を搭載し、核汚染されたエリアを飛行しても搭乗員に影響がない措置を施すだけでなく、WC-135用の最新型コックピットへの改修や、他のWC-135「R型」と同じCFM-56 turbofanエンジンへの換装を行って、機体維持整備の容易性にも配慮したとのことです

WC-135W.jpg米空軍は2019年頃に「RC,WC,OC-135の後継機は調達せず」、「空中・宇宙・地上に配備された多様なアセットに搭載されているセンサーをネットワーク化して活用し、そこから得られる情報全体で代替する」との方針を固めていますが、単純に見積もっても代替体制が確立しそうなのは2050年代以降であり、計28機保有のWCやRC-135はまだまだ活躍の機会が豊富にありそうです

【ご参考:Offutt基地所属RCやWC-135】
●RC-135U Combat Sent 2機 シグナル情報収集機
●RC-135V/W Rivet Joint 17機 U型を改良した同情報収集機
(敵のレーダー、ミサイル等のレーダー電波情報や位置等を収集分析し、敵の戦力分布や新兵器の配備を把握。また味方機の自己防御用警報装置に敵電波情報をアップデート)

●RC-135S Cobra Ball 3機 弾道ミサイル光学電子情報収集(北朝鮮の弾道ミサイル試験が迫ると日本周辺に飛来)
●WC-135 Constant Phoenik 2機 大気収集機(北朝鮮の核実験報道があると日本海で待機を収集し、核実験の真偽を判定)

※OC-135B Open Skies機 2機 米露のオープンスカイズ条約遂行のための機体だが、トランプ政権が露の姿勢に反発し、2020年に条約破棄を通告。2021年に機体も破棄

米空軍ISR関連の記事
「久々にRC,WC-135部隊ご紹介」→https://holylandtokyo.com/2023/09/27/5066/
「RC,WC,OC,NC-135は後継機なしの方向」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-28-1
「米空軍が新ISRロードマップ決定」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-04-3
「情報部長が中露のAI脅威を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-28
「RC-135シリーズがピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-08-1

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