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次期ICBM事業のコスト超過対策は空軍では無理 [米空軍]

米空軍の年間予算に匹敵する5兆円超過
核抑止3本柱の2本を空軍予算で賄う不条理主張か
超過大半はサイロ・指揮所・通信インフラ施設建設費

Sentinel.jpg2月13日付米空軍協会web記事は、1月に米空軍が議会に通知して明らかになった、MinutemanⅢシステムの後継となる次期ICBM計画(Sentinel ICBM導入計画:GBSD計画とも)の37%予算超過と開発期間の最低2年延長見積もりに関し、米空軍協会Warfare Symposiumに参加した米空軍幹部の発言等から対応策検討の現状を報じていますが、米空軍の年間予算に匹敵する約5兆2千億円もの超過額を前に、事実上「米空軍だけでは、なすすべ無し」状態だと紹介しています

米空軍は国防省事業の適正管理を定めた「Nunn-McCurdy法」の規定に沿って、計画のコスト及び開発期間の両方で法令基準の15%以上超過&遅延することが明らかになったため、米議会に今年1月に事態を報告し、今後はコスト&開発期間の超過&遅延原因を明確にし、改善計画を立案し、その出直し計画を2024年夏頃までに国防長官に再承認してもらう必要があるのですが、

Sentinel4.jpgMinutemanⅢシステム構築後、約50年間誰も関心を持たず&顧みず&放置されてきたICBM関連施設(特に再利用可能と想定してきたICBM格納サイロ、指揮統制施設、各種指揮統制装置やケーブルなどの通信装置インフラ等々)が再利用不能であることが次々に判明し、日本の中国&四国地域程度の地理的範囲(それも交通インフラや人材確保が困難な辺鄙な場所だらけ)に分散配置されている関連施設整備コストが、莫大に膨らむことが明らかになってきたということです

AFA Warfare Symposium(2月12-14日)で・・・

Kendall空軍長官
●(どれも重要な)米空軍の他の戦略的な近代化予算から振り分けることはできない。仮に米空軍が超過分を出すことになると、他の全ての必要経費が制約を受けることになる
Kendall AFA2024 4.jpg●関連議論をまだ実施していないが、直ちに始める必要がある。ただ、通常の国防省予算編成の流れで扱える問題ではない。空軍の予算内で議論することは難しく、国防省全体予算で議論してほしいと思う

●米空軍の核抑止近代化計画にはSentinel計画(次期ICBM計画)の代替になるようなものはなく、Sentinel計画は必要不可欠なプロジェクトである。B-21爆撃機計画は1円たりとも削減することはできない(長官は核搭載のLong Range Stand-Off missileには言及せず)。

(なおKendall氏は、長官就任前にSentinel計画を受注しているNG社役員であったことから、法律により本計画への意思決定に関与できない。ただし空軍省の予算配分に関する意思決定には職責で関与する)

Kristyn Jones国防副長官臨時代理
Kristyn Jones.JPG●Sentinelミサイル開発自体に大きな問題は発生しておらず、大きな課題は関連施設整備面に存在する。つまり現有施設の再利用を見込んでいた、ミサイル格納サイロ、地下の指揮統制施設、各種指揮統制装置やケーブルなどの通信装置インフラ等々の問題だ
●加えて、昨今の世界的なインフレ、サプライチェーン問題、労働力コストアップが次期ICBM計画のコスト上昇につながっている。特に辺鄙な地域に分散する施設建設に必要な、秘密クリアランスを持つ労働者の確保や工事期間延長による人件費アップの影響も大きい

Andre Hunter調達担当次官
Hunter AF.jpg●米空軍は、次期ICBM計画ほどの巨大施設関連事業をMinuteman ICBM体制を構築した50年前から行っておらず、現状の施設状態に関するアセスメントが実施されるまで、必要な施設建設規模が把握できなかった
●アナログ回線を使用しているMinuteman ICBMの、地下&地上施設や指揮統制通信インフラの大部分を換装する必要が明らかになった
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「Minuteman ICBMの地上&地下インフラの大部分が再利用できないことがアセスメントの結果で判明した」との言い分が通用するとも思えませんが、米空軍だけで増額分を負担することが不可能なことも明らかで、ICBM部隊(海軍のSLBM部隊も同様)を「日陰者」「忘れ去られた部隊」「無視された部隊」扱いしてきた空軍と国防省と米国政府と米国民全てへの、「巨大なブーメラン&しっぺ返し」となっています。どうするんでしょうか・・・

超巨大プロジェクト次期ICBMシステム整備の苦悩
「コスト&期間超過で法抵触の議会通知」→https://holylandtokyo.com/2024/01/29/5478/
「次期ICBM開発の苦悩&不安を語る」→https://holylandtokyo.com/2023/11/22/5244/

米軍「核の傘」で内部崩壊
「ICBMサイト初のオーバーホール」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-15
「屋根崩壊:核兵器関連施設の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-23
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「唖然・国防長官が現場視察」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-18
「特別チームで核部隊調査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「剱持暢子氏論文:米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「米核運用部隊の暗部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-29

中国やロシアの核兵器運用部隊も心配
「中国ロケット軍汚職と部隊能力報道に思う」→https://holylandtokyo.com/2024/01/15/5436/

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