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中国国営軍需産業が初の軍用機国外ショー展示 [中国要人・軍事]

経済崩壊下、なりふり構わず資金調達か
AH64アパッチに似た輸出用国産戦闘ヘリZ-10展示
シンガポール航空ショーで会見も説明会もなく

Z-10ME CATIC3.jpg2月20日付Defense-Newsが、20日から25日にかけ開催のシンガポール航空ショーで、中国国営航空産業であるCATIC(中航技進出口有限責任公司:China National Aero-Technology Import & Export Corp)が、初めて中国外で軍用機の展示を行い、インタビュー対応も製品説明会もない「生煮え状態」で戦闘ヘリZ-10の輸出版(Changhe Z-10-ME-02)を会場に持ち込んでいると報じています

西側専門家はZ-10戦闘ヘリを「中国版AH-64アパッチ」と呼んでおり、IISSのミリバラ2023年版によると、中国軍は昌河飛機工業公司(Changhe Aircraft Industries)製の様々なバージョンの同ヘリを約200機導入し、最近は台湾周辺での威嚇演習やインドとの共同訓練で使用して対外露出を増やしているとのことです

Z-10ME CATIC.jpgなお、隔年開催のシンガポール航空ショー公式説明資料によれば、同ヘリは兵器として空対空ミサイル(CM-502KG and TY-9)、空対地ミサイル、対地ロケット発射機(GR5 guided rockets用)、23mm高性能焼夷弾を搭載可能で、前方監視レーダー、ミサイル警報装置、赤外線ミサイル回避装置を装備し、250㎏のドロップ燃料タンクが使用可能とのことです

中国外への同ヘリ輸出実績としては、2022年にパキスタンへの機数不明の輸出契約を結び、パキスタンは既に2023年から機体の受領を開始しているとのことです。なおパキスタンはトルコとのT129攻撃ヘリ購入契約を破棄して中国産Z-10MEに乗り換えたとのことで、トルコとパキスタン間で揉めているようです

C919.jpgまた、今年のシンガポール航空ショーでは、中国が初めて民間用旅客機C919を持ち込んで売込みを行っていることが大きな話題となっており、下にご紹介するシンガポール地元TVニュースでも同航空ショーでの一番の話題として紹介しています。

ただTVニュースで西側専門家が解説しているように、C919旅客機は中国以外での飛行承認を未取得で、C919を海外で運行するに必要な維持整備体制構築にも取り掛かったばかりの模様で、海外航空会社が関心を示す様な材料には乏しいようです(会場では、チベット航空とCATIC間で40機購入の契約書署名式が披露された様ですが・・・)
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china economy collapse.jpg中国不動産バブル崩壊が、政府や地方政府の財政破綻に飛び火し、更には金融危機に波及しつつあり、海外資本が猛烈な勢いで中国から逃避して中国経済完全崩壊へまっしぐらな中、中国企業のみならず、中国公務員や警察官や軍人への給与支払いまで滞っているとの情報が、各方面の多数なニュースソースから漏れ聞こえてくる今日この頃です

china economy collapse2.jpg勝手な邪推ですが、なんとなく準備不十分なままに見え、シンガポール航空ショーへの「初めて」の中国製旅客機出展や、国営軍需産業による「初めて」の軍用機展示など、中国政府による他の経済政策でも見られる「場当たり的」な対策が、中国製武器輸出でも見られるようになってきた・・・と解釈しております

中国による初の民航機C919売込みも話題
まだ中国以外の飛行承認がないのに・・
中国外でのメンテ体制構築もこれからなのに・・・

地元TVの航空ショー紹介ニュース(約4分:Z-10紹介なし)


中国製部品や中国製兵器の関連記事
「要注意な中露団体&研究機関リスト公開」→https://holylandtokyo.com/2023/07/07/4832/
「外国製ドローン購入規制」→https://holylandtokyo.com/2021/09/21/2240/
「軍需産業との情報共有に乗り出す」→https://holylandtokyo.com/2021/01/18/300/
「中国製部品排除に時間的猶予を」→https://holylandtokyo.com/2020/08/15/524/
「MTCR縛りの中、中国製が拡散」→https://holylandtokyo.com/2020/06/16/624/

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中国ロケット軍の幹部汚職と同部隊能力への報道に思う [中国要人・軍事]

1月6日のブルームバーグ報道に絡めて思うことを
米軍の例もあり、特に核戦力部隊の実態は気になる・・・
なお水混入可能な液体燃料ロケットの比率は1割未満

Rocket Force8.jpg1月6日付の米ブルームバーグ通信が、2023年12月末の中国全人代で理由不明のまま中国のロケット軍司令官や高級幹部5名が突然解任(汚職疑惑との報道あり)され、同部隊の後任司令官にロケット軍経験の全くない中国海軍将軍が任命される等の異例の状態になっていた中国軍ロケット部隊に関し、匿名の米情報機関関係者の分析結果だとして、同ロケット軍のとんでもない状況の一端を報じていますので、米軍の核戦略部隊の問題も絡め、まんぐーすの個人的意見満載でご紹介しておきます

ちなみに、2015年までは第2砲兵と呼ばれていた部隊を、2016年に陸海空軍と同等のロケット軍に改編して軍内での位置づけを強化したように、通常戦力で米国等の西側諸国に劣っていると認識している中国軍にとって、短距離弾道ミサイルからICBMまでを運用するロケット軍は対西側戦力の柱であり、実際に中国のA2AD戦略戦術は、対中国正面に拠点の少ない西太平洋地域の米軍にとって、現在でも答えのない極めて対応困難なものだと思います

まず1月6日付の米ブルームバーグ報道概要
Rocket Force.jpg●習近平国家主席による徹底的な軍幹部粛清の背景には、腐敗の広がりが軍近代化の取り組みを損ない、戦争する能力に疑問が生じたことがあったと、米情報機関の分析が示した。この分析について詳しい複数の関係者が明らかにした。
●関係者が匿名条件で語ったところによれば、人民解放軍ロケット軍内部および国防産業全体の腐敗は非常に広範囲に及んでおり、習主席が向こう数年間に大規模な軍事行動を検討する可能性は、そうした問題がなかった場合と比較すると低いと、米当局者は考えている。

Rocket Force2.jpg●そして関係者は汚職の影響の例を幾つか挙げ、燃料の代わりに水がミサイルに注入されていたり、ミサイル格納庫のふたが機能せず迅速に発射できない不備があったりしたと米情報当局が分析していると語った。
●米国は、人民解放軍、特にロケット軍内部の腐敗がその能力全体に対する信頼を失墜させ、習主席が掲げる近代化の最優先課題の一部を後退させたと分析している。過去6カ月間の腐敗捜査では軍高官十数人が対象となり、軍への取り締まりとしては現代中国で史上最大とみられている。

この報道への村野将氏(米ハドソン研究所研究員)のコメント
Murano.jpg●人民解放軍の腐敗の影響力を過小評価すべきではありませんが、これをもってその脅威を過小評価すべきではないでしょう。
●第一に、習近平がこれらの腐敗を発見して、人事刷新を行っているということは、彼らが本気で戦える体制を作ろうとしているということを意味します。
●第二に、中国が配備を続けている弾道ミサイルのほとんどは「固体燃料」ミサイルです。これらに使われているコンポジット燃料を製造過程で水に置き換えて誤魔化すなどということは、構造上不可能です。

●となると、水に置き換えられていたミサイルは「液体燃料」ミサイルになりますが、中国が現在運用している「液体燃料」ミサイルは旧式のDF-5と一部の巡航ミサイルだけで、これは中国保有のミサイル戦力の1割未満です。
●実際、中国は年に百数十回もの弾道ミサイル発射(訓練や威嚇射撃)を行っているわけで、これらは紛れもなく本物のミサイルです。

米軍の核運用部隊の惨状(今も本質に変化なしと推測)
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2014-11-18
Minuteman III 4.jpg●2010年ごろから米軍戦略核部隊の問題が表面化し始め、部隊能力点検時のペーパーテストでの士官による集団カンニング事案(海軍と空軍両方で。さかのぼれる範囲で過去7年間継続)、B-52が模擬核爆弾だと誤認識したまま複数回米大陸の横断飛行を行っていたことが判明等々の事案を受け、部隊に対する特別調査(ヘーゲル国防長官時)が2014年秋に行われた結果・・・

●2014年11月の調査報告書は、単に戦略核運用部隊の問題ではなく、海軍や空軍による戦略核運用部隊の扱いに関する悪しき染みついた文化の問題だと断罪し、「過去数年間に発生した事案の深さや幅は、関連部隊への国防省や軍幹部の無関心や問題分野への薄い関心を明示している」、「指導層が語り信じている兵士のレベルと、実際の任務に就いている兵士のレベルの大きな差異が極めて深刻」、
●「継続して誰も核運用部隊に注目せず、資源配分もされなかった結果、核運用部隊の士官に、将来の伸展や昇進の見込みがない無視された分野に配属されたとの意識が染みついている」、「ICBM部隊は組織改編の度に、空軍内のメジャーコマンド間をたらい回しにされ、予算も人的施策も後回しにされ続け、部隊から誇りも気概も消え失せた」、

Minuteman III 5.jpg●「米空軍の核運用部隊には、意味ある能力評価の基準が無く、過度に完璧を求めて100名もの士官のカンニングを誘発している」、「インフラの老朽化により、装備の維持が益々困難で時間も経費もかさむ傾向にあり、部隊兵士の無力感に拍車をかけている」、「ICBM基地であるMinot基地勤務は、人里離れた僻地にある分散したICBMサイトを転々とし、買い物も満足に出来無い度を超して過酷な状況で、士気を低下させている」
●「海軍SLBM部隊でのカンニング事案で34名が免職になったケースでは、事案が7年間も続いていた。その試験は地上勤務である原子力推進機関の教育部隊に勤務するための資格と関係しており、(つまらないSLBM潜水艦勤務を避け、)地上部隊である教育部隊勤務を求めた結果であった」

Hagel icbm.jpg●装備品老朽化と部品不足への無関心状態を示す例として報告書は、「装備不足も深刻で、分散した3つのICBM基地に弾頭を固定する工具が1個しか無く、3個基地で使い回しするしかなく、しかもその輸送に民間宅急便を使用している状態」、「装備老朽化により、上級軍曹がミサイルや航空機の維持整備にのみ集中せざるを得ず、若手のスキルアップへの取り組みが不十分」などの事例が報告され、
●そして、組織的な投資配分、所属兵士の昇任、指導者、当該部隊への査察等の問題を指摘した報告書に、予算の増額を含む約100個の提言が盛り込まれた

Hagel icbm2.jpg●この報告書を受け、2014年当時のヘーゲル国防長官は、米空軍の要求であったGSC(Global Strike Command)司令官の大将への格上げや核兵器運用部隊の司令官の中将格上げを認め、国防省に海空軍の核兵器運用部隊部隊の予算を、2016年度予算案から5年間10%づつ増加させるよう要求するよう指示
●また人的側面では、米空軍が検討している人員削減から核兵器運用部隊4000名は除外し、GSCの整備、運用、警備分野に1100名を増員するよう指示している。海軍に対しては、2500名を工廠や教育機関に増員する予算案が指示された

まんぐーすが思うこと・・・
Rocket Force9.jpg●戦略核抑止任務を担うICBMやSLBM部隊(活躍の場が訪れる可能性は極めて低く、士気が低下しやすく、軍上層部や文民指導者の関心が薄い部隊)だけでなく、数百キロ射程からグアムやハワイを射程に収めそうな長射程弾道ミサイルを保有する中国ロケット軍と、米国の海軍SLBM潜水艦部隊や空軍ICBM部隊とを単純に比べることに無理があるとは思いますが、
●米軍のSLBM潜水艦やICBM部隊と同様に、更に加えて中国の軍人を含む中国公務員社会に根付く汚職体質も加わって、中国ロケット軍部隊が現場士気や運用能力面で大きな問題を抱えている可能性は十分考えられます

Rocket Force7.jpg●例えば2022年10月に米空軍大学の中国航空宇宙研究所(China Aerospace Studies Institute)が、中国ロケット軍の組織や部隊配備や部隊指揮官名簿や運用思想や訓練状況等に関する極めて詳細な内容を含む250ページ以上の報告書をWeb上で公開発表しましたが、その内容があまりにも詳細すぎ、中国軍内部からのリーク情報を基に作成されたものに違いないと西側専門家の多くが推測しています
●情報を外にリークするぐらいなら日本にリスクはなくメリットですが、核兵器や核物質を闇市場を通じて怪しげな過激派組織やテロ組織や「悪の帝国」に密売されるようなことがあればたまったものではありません。ロシアと共に、とても心配です

Rocket Force6.jpg●「PLA Rocket Force」でググってみると、ロケット軍をアピールするTV連続ドラマが制作&大宣伝されていたり、新しいロケット軍の制服が出来ましたとか、ロケット軍の部隊ワッペンや制服徽章が制定されましたとか、女性ロケット軍兵士が笑顔で談笑する写真が何枚も表示されるなど、部隊のイメージ刷新に中国が必死で取り組んでいる様子が伺えます。・・・その背景は・・・

米空軍大学China Aerospace Studies Instituteによる
中国ロケット軍レポート約250ページ(2022年10月)
https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CASI/documents/Research/PLARF/2022-10-24%20PLARF%20Organization.pdf

米空軍大学China Aerospace Studies Instituteのwebサイト
https://www.airuniversity.af.edu/CASI/Articles/Tag/196622/pla-rocket-force/

米軍「核の傘」で内部崩壊
「ICBMサイト初のオーバーホール」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-15
「屋根崩壊:核兵器関連施設の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-23
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「唖然・国防長官が現場視察」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-18
「特別チームで核部隊調査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「剱持暢子氏の論文:米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「米核運用部隊の暗部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-29

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米本土を横断した中国気球は米商用ネット利用 [中国要人・軍事]

細部は引き続き非公開も主に進路指示入手か
米商用ネットを通じ短時間に高密度情報やり取りか
米政府は早期撃墜より監視から情報入手選択か

spy balloon5.jpg12月29日付米NBC放送web記事は、2023年2月初旬に米大陸を横断し、2月4日に米空軍F-22戦闘機によりサウスカロライナ州沖の大西洋上で撃墜され、海上に落下した中国製のバルーンを米当局が回収&分析した結果の一端について、複数の現役及び元米政府関係者の証言を基に、中国製バルーンが中国との通信のため、米国企業が提供する商用インターネット回線を利用していたと報じています

匿名の2名の現役米政府関係者と元関係者によれば、当時バイデン政権は非公開で司法当局に、当該企業提供のネット通信のモニター権限を請求して許可され、あえて中国製バルーンを早期に撃墜することなく、米本土を西海岸側から東海岸まで横断させてバルーンの行動や中国との情報のやり取りを監視&情報収集することを選択したとのことです。

spy balloon2.jpgそして当該バルーンは、多数のアンテナと搭載機器を積み、更にそれら機器を駆動させるに必要な電力を確保するに十分な太陽光発電パネルを具備していたが、バルーンが米本土横断中に直接中国と通信をする能力はなかったと、匿名証言者は語ったとしています

ただし、情報通信や自身の位置情報を得るためバルーンが装備していた多数のアンテナ活用し、短時間で大量の情報を送信するための高周波通信が可能な能力を保有し、主に中国から飛行進路に関する指示信号を入手していた模様だが、気球が収集した電子信号には基地職員間の通信や兵器システムからの信号が含まれていた可能性があるとも語った模様です

spy balloon3.jpgまた同バルーンが米本土を横断する間の米軍の対応について、NBCは2023年12月に米空軍北米防空司令部NORAD司令官のGlen VanHerck大将にインタビューし、「米軍核戦力の運用を担う米戦略コマンドと連携し、核兵器の運用に関する重要事項を世界各地の核兵器担任部隊に指示する等の、秘匿度の極めて高い情報を含むEAM(Emergency action messages)の発信を、バルーン飛行中は制限して傍受されることを避けるよう関係部署に徹底した」との情報を得ています

本件に関し、在ワシントン中国大使館の報道官は、以前からの中国の立場を繰り返し、「当該バルーンは気象観測用であり、偏西風と自力航法能力の限界から、意図せず米本土を飛行することになったものだ」との主張をNBC放送や米メディアに繰り返している模様です

spy balloon4.jpgまた複数の米政府関係者によれば、過去に中国情報機関関係者が様々な国での活動において、隠れて商用インターネット回線をバックアップ回線として使用したことが確認されているが、中国関係者は一般的には、暗号により秘匿化された情報漏洩の可能性の低い回線の利用を指向している模様です
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NBC放送は当該記事において、中国製バルーンが利用したネット回線提供の米企業名を明らかにしていませんが、当該企業の「わが社の調査や米当局者との協議から、我が社提供の回線が同バルーンによってに使用された事実はない」との主張を紹介しています

spy balloon6.jpg別報道機関は、2023年夏に情報漏洩で逮捕された21歳の州空軍兵士によってリークされた米国防省文書も元に、同バルーンが電磁データを使用して高解像度画像を作成する合成開口レーダーを搭載していた可能性がある、と報じた模様です

2023年2月4日に撃墜された同バルーンに関しては、FBIを中心とした調査チームが非公開の調査報告書を出していますが、中身は秘匿され、限定された人にしか公開されていないようです。

中国の経済崩壊が、中国共産党支配の中国体制を崩壊させるのでは・・・との憶測も飛び交い始めた今日この頃ですが、2023年2月の奇妙なバルーン事件が、後世においてどのように位置づけられるのか興味深いところです

防衛研究所の対中国姿勢がわかる公刊物
「中国の台湾への接触型「情報化戦争」」→https://holylandtokyo.com/2024/01/05/5398/
「「中国の影響工作」概要解説」→https://holylandtokyo.com/2023/12/21/5362/
「異様な中国安全保障レポート2024」→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/

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中国経済崩壊に言及ゼロの防研「中国安保レポ2024」 [中国要人・軍事]

誰かが検閲したごとく「中国経済崩壊」に一切言及がない異様なレポートです

China Report20242.jpg11月24日金曜日、防衛研究所が2011年3月から毎年発刊している「中国安全保障レポート2024」を発表し、今回は「中国、ロシア、米国が織りなす新たな戦略環境」との副題が示すように、米国が維持してきた従来の国際秩序に挑む中露との構図で、現在の安保環境を従来と同じくあくまでも執筆研究者の個人的見解との位置づけで分析しています。

本日はこの80ページの冊子の「概要の概要」を、ロシア関連の「第2章」を省略し、かつ「つまみ食い」してご紹介するわけですが、まんぐーすからはまず最初に声を大にして、既に顕在化している中国経済の崩壊について一切言及せず、「国際秩序をめぐる米国と中露の対立は加速し、米国中心の既存秩序の現状維持勢力と、中露中心の現状変更勢力の間の対立拡大」が大きな注目点だ・・・と結ぶ本レポートに大きな失望を覚えたことを強調させていただきます

ChinaReport20244.jpgまだまだ序の口の中国経済崩壊で中国側の情報統制も厳しいですが、2023年11月末に発表する中国安保分析文書であれば、直接的に「中国GDPの3割を占める不動産経済の崩壊」、「不動産経済崩壊から金融危機への波及の兆し」、「誤ったゼロコロナ政策や恣意的運用に懸念が広まる反スパイ法に起因する外国企業の中国脱出」、「失業率の急上昇」、「中国経済への先行き不安から急速に進む人民元下落」、「習近平の経済原則を無視した毛沢東思想復活を思わせる国家運営」、これらを受けた「今後数十年の中国経済低迷の可能性大」などに言及しなくても、

同レポートで中国関連分析を行っている「第1章」の中の「おわりに」部分や、レポートのまとめに当たる「終章:本レポートの結論」部分で、経済的混乱の兆候があることや、ロケット軍の幹部粛清や国防相の更迭などの中国指導層人事に異例の動きが見られることにも簡単に触れつつ、「今後はこれら中国経済の混乱・混迷がもたらす影響についても、重大な関心を払う必要がある」程度の記述が不可欠だと思います。

「中国経済」との言葉の使用を、防衛省や日本政府による「検閲」で削除したかのような、「極めて異様な」今回のレポートの「概要の概要」は、以下の通りです

●「2024レポート」の狙い
ChinaReport20243.jpg冷戦後の国際社会に安定と繁栄をもたらしてきた既存のルールの維持を目指す米国と、ルールの変更を目指す中国およびロシアとの深刻な競争に直面。本レポートでは、米国、中国、ロシアについて将来の国際秩序についてどのような構想を有しており、どのようにその実現を目指しているのかを分析する。また、軍事・安全保障を中心に世界各国の中露に対する姿勢も概観。この分析から最後に米中露の 3大国の相互作用が織りなす今後の国際秩序の方向性について検討

●既存秩序の変革を目指す「中国の戦略」
習近平 愛される国.jpg---習近平政権は、米国に中国の「核心的利益」を尊重し、中国を対等に扱う「新型大国関係」受入れを要求。同時に既存の国際秩序を明確に拒否し、中国や発展途上国が大きな発言力を持つ「新型国際関係」と「人類運命共同体」を新たな国際秩序のモデルとして推進
---中国は A2/AD 能力を中心に軍事力強化。中国は周辺地域でも米軍行動を物理的に妨害し、ロシア軍との連携行動を強化。中国は核戦力も急速に強化し、これは将来安保おける中国の発言力を高める
---今後中国は、核を含む軍事力を強化し、国際秩序観を共有するロシアとの戦略的協力を深化させ、既存の国際秩序の改変を進めるだろう

●省略:露・ウ戦争とプーチン体制生存戦略

●国際秩序の維持に向けた「米国の軍事戦略」
China-USA.jpg---中露との競争上の米国の軍事的課題は、①武力紛争に至らない段階における活動、②米軍の戦力投射・作戦行動、キルチェーンに対する脅威、③将来的な核戦力バランスの変化。
---①に対して米軍は、「航行の自由作戦」や情報・サイバー空間での作戦行動に加え、全ての段階で米軍が一定活動を行う「競争連続体モデル」との新概念枠組みで対応。

---②に対し、A2/AD および米軍のキルチェーンに対する脅威に関して、米軍は新たなコンセプトの開発を継続させている。
---③の、米国と同レベル核戦力保有の「中露との同時対峙」という、将来的な「同格の二大核保有国」問題に対し、バイデン政権は米抑止力強化と軍備管理での核使用リスク低減に取り組む姿勢を示す

●本レポートの結論
ChinaReport20245.jpg---今後 10 年程度の見通し得る将来において、ロシアで急激な政治変動が生じない限り、国際秩序をめぐる米国と中露の対立は加速し、グローバル・サウスも巻き込みながら、米国を中心とした既存秩序の現状維持勢力と、中露を中心とした現状変更勢力の間の対立へと拡大していく。
---他方より長期的視点では、露のウ侵攻が国際秩序の変更に至る見込みは極めて小さい。一方で中国は、南シナ海や台湾海峡などで現状変更の既成事実を積み重ねている。今後、このような中国の力による一方的な現状変更を防止できるか否かが、国際秩序をめぐる競争の行方を決定づける最も重要な要因である
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China Report2024.jpg最近お行儀が悪いまんぐーすから、再度ひとこと・・・検閲削除されたごとく、中国経済崩壊に一切触れず、上記のような「本レポートの結論」で締めくくる2024年度版「中国安全保障レポート」には、研究者の危機感が感じられないばかりか、中国経済崩壊が導く可能性が相当程度存在する、中国軍事脅威の崩壊を「隠したい」「避けたい」「触れたくない」思いが透けて見えるようです

過去からの同レポート紹介防研webページ
https://www.nids.mod.go.jp/publication/chinareport/index.html#

同レポート日本語版
https://www.nids.mod.go.jp/publication/chinareport/pdf/china_report_JP_web_2024_A01.pdf

過去の防研「中国安全保障レポート」紹介記事
1回:中国全般→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-19
2回:中国海軍→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-17-1
3回:軍は党の統制下か?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-23-1
4回:中国の危機管理→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-01
5回:非伝統的軍事分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-22
6回:PLA活動範囲拡大→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-09
7回:中台関係→サボって取り上げてません
8回:米中関係→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-2
9回:一帯一路→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-11
10回:ユーラシア→サボって取り上げてません
11回:サイバー宇宙情報軍民→ https://holylandtokyo.com/2020/11/16/388/
12回:統合作戦能力の深化→ https://holylandtokyo.com/2021/11/30/2481/
13回:認知領域とグレーゾーン事態掌握→サボって取り上げてません  

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米国防省が2023年「中国の軍事力」レポート [中国要人・軍事]

核弾頭が毎年100発急増ペース維持
通常弾頭ICBM開発が物議
空対空ミサイルやJ-20やH-20爆撃機など

2023ChineReport90.jpg10月19日、米国防省が毎年恒例の「中国の軍事力」レポート(China Military Power Report)を発表し様々なメディアが取り上げていますが、本日は19日付米空軍協会webとDefense-News記事から、核戦力やロケット軍や空軍の動向を中心にご紹介します

中国はGDPの3割を占める不動産取引市場のバブル崩壊を契機とし、汚職と腐敗に満ちた国家及び地方行政の問題点が一気に噴出し、各方面でデタラメな財政運営が次々と明らかになっていますが、これに対する習近平の毛沢東的とも言える共産党イデオロギーニーによる前時代的な思想に基づく指導や、習近平に「こびへつらう」イエスマンだけが残った党指導部の機能不全から生じるバブル崩壊への「無策」等々が重なり、

今後20-30年は「お先真っ暗」な経済状態が継続しそうですが、現時点で米国防省が中国経済崩壊の中国軍事力への影響を評価するのは困難でしょうから、2023年前半までの状況をまとめた内容からご紹介します

核弾頭の継続増強
ICBM conv.jpg●中国の核戦力増強が猛烈な勢いで続いている。2020年レポートでは「200発台前半(low 200)」と見積もられていた数量が、2022年には「約400発」、そして今年2023年レポートでは「500発」に増えており、以前から米国防省が推計していた2030年までに「1000発」、2035年までに「1500発」に向かって毎年100発ペースで急増している
●2022年には、3か所で固体燃料型ICBMサイトが完成して計300発が格納できる態勢が整い、同サイロへの核ミサイル配備が始まっており、迅速な発射態勢(launch on warning posture)作りが強化されている。またこれら急増する核弾頭を維持整備するための施設にも投資が拡大している

(以下は19日付Defense-News記事から) 
ICBM conv4.jpg●2023年9月、米国防省は「大量破壊兵器対処戦略」を2014年以来初めて改訂した。改定前戦略はテロ組織やならず者国家(NKやイラン等)が核兵器を入手したケースに備える対策を重視していたが、改訂版戦略は中国やロシアの猛烈な核戦力増強を一番の脅威として捉えたものとなっている
●また、核軍備管理枠組みとして存在していたINF全廃条約やオープンスカイズ条約が無効となり、ロシアがウクライナ侵略で「核使用をチラつかせる恫喝」を行っていることから、核抑止の枠組みが変化しつつある点にも留意している

●国防省関係高官は、露が5900発、米が5200発と合計で世界の9割を占める核弾頭保有国である現状から、比較して少数の核弾頭しか保有しない中国は、核戦力の透明性確保に消極的であるが、その保有数が増えるにつれて議論の場に姿を見せる可能性に言及している

ロケット軍の通常弾頭ICBM開発
ICBM conv3.jpg●中国のロケット軍はこれまで、短・中・長距離弾道ミサイルの開発&大量配備に注力してきたが、ハワイやアラスカや米本土を通常弾頭で攻撃可能なミサイルを開発中である。これはロケット軍の発展最終形とも考えられ、中国軍として初めて通常兵器での米本土攻撃力保有を意味し、戦略的安定性の観点から疑念を生むことになる
(as we see them maybe exploring the development of those conventionally-armed ICBMs, it raises some questions about risks to strategic stability)

中国空軍関連
PL-21.jpg●戦闘機が搭載する空対空ミサイルに関し、2021年レポートでは中国のPL-15が米空軍のAIM-120 AMRAAMと同等の性能を持つと紹介され注目を集めたが、2023年レポートでは追加情報はなく、会見でも担当高官は細部への言及を避けた
●一方、会見で高官は、中国が赤外線誘導とレーダー誘導の両方の能力を備えた次世代ミサイルを開発している可能性に言及し、報道で「PL-XXまたはPL-21と言及される次世代空対空ミサイル開発を行っている」と未確認情報が紹介された事との関連が噂されている

●ステルス戦闘機とか重要目標要撃機とも評されるJ-20戦闘機の能力向上開発が行われている
●核と通常兵器両用のH-20爆撃機開発が行われており、別に中距離用と長距離用のステルス爆撃機開発も進められている

y-20u tanker4.jpg●Y-20輸送機の改良派生型としてY-20U空中給油機が配備された。また同派生型として早期警戒管制機型も開発されている模様
●中国空軍の運用面での変化として、米軍機や米同盟国機に対する中国軍機の過激な接近飛行が過去2年間で激増しており、米国防省は10月16日の週に、中国機による危険で威嚇的な飛行を記録した画像や映像を数十点を公開した
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現物2023年版レポート(約210ページ)
https://www.airandspaceforces.com/app/uploads/2023/10/2023-MILITARY-AND-SECURITY-DEVELOPMENTS-INVOLVING-THE-PEOPLES-REPUBLIC-OF-CHINA.pdf

習近平 愛される国.jpg中国軍関連では、習近平によってロケット軍幹部がトップを含め大量に更迭され、中国海軍出身の「ロケット軍門外漢」がトップに就任するなど異様な人事が断行され、最近では国防相が消息不明から更迭されるなど、これまでとは明らかに異なる事態が発生しています

また英国発の「黄海での原潜沈没・搭乗員全員死亡事故」情報など、水面下で中国軍を巡る情報の駆け引きも行われているようでもあり、その辺りの2023年レポートでの扱いも気になります

過去の中国の軍事力レポート
「2021年版」→https://holylandtokyo.com/2021/11/08/2409/ 
「2020年版」→https://holylandtokyo.com/2020/09/03/472/
「2019年版」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-06
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-18
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17

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中国産軍用航空機エンジン続々も合金調達に課題 [中国要人・軍事]

WS-19とWS-20開発に目途もサプライチェーンに
その他のエンジンについても少し整理

WS-19 China.jpg3月17日、中国の国産軍用航空機エンジンを担う研究機関「Beijing Institute of Aeronautical Materials」のZhang Yongプロジェクト責任者が天津市で講演し、次世代エンジンWS-19とWS-20開発が困難を克服して成功したが、大量生産を開始するにはエンジン生産に必要な合金関連のサプライチェーン問題解決が必要だと語りました。サプライチェン問題の細部には言及していませんが・・・

不動産バブル崩壊で中国経済の足元が揺らいでいると見られる中、「開発完了」とか「量産準備よし」の話をどこまで真に受けてよいのか半信半疑ですが、27日付Defense-Newsが次世代エンジンと呼ぶWS-19やWS-20エンジンの他、WS-15やWC-10シリーズについても断片的にZhang Yong氏が語ったようなので、頭の整理のためご紹介しておきます

開発完了の次世代エンジンWS-19やWS-20は・・
WS-20 China2.jpg・WS-19はアフターバーナー付きターボファンエンジンで、次世代空母艦載機であるJ-35への搭載を目指しているもの
・WS-20は高バイパスターボファンエンジンは、中国製大型輸送機Y-20への搭載を狙っているエンジン。現在同機はロシア製D-30KP-2ターボファンエンジン(H-6爆撃機H-6J/K/Nにも搭載)を搭載している

スパークルーズ可能なWS-15が量産可能に
WS-15 China2.jpg・WS-15は現在国産のWS-10Cエンジンを搭載しているが、スパークルーズ可能と言われるWS-15が完成して量産可能となったので、最近製造された(今後生産される?)J-20に搭載する

WC-10Cが98%自国産に
・ステルス戦闘機攻撃機J-20に現在搭載されているWS-10C(181キロニュートン)が98%自国産(98% localization)を達成。残り2%については語らず。

以下は関連報道情報ですが、
WS-15 China.jpgWS-10シリーズは、10年ほど前から陸上基地配備で双発の「J-11B要撃機」や「J-16攻撃機」、最近では「J-20ステルス機(攻撃機)」の量産型に搭載開始とのニュースが伝えられるようになってきた中国製戦闘機エンジンの本流

その中でWS-10B形に注目が・・・
WS-10B China.jpg・WS-10Bは排気ノズル構造等からステルス性が高いと言われ、J-10Bに試験搭載される様子が確認されていましたが、2021年5月に中国国営ラジオwebサイトが、中国空軍の単発J-10C戦闘機に同エンジン搭載の映像を公開し、米軍事メディアが「ついに中国製エンジンが信頼性を高め、量産型単発戦闘機に搭載された」と配信。単発機エンジンには特に高い信頼性が求められるが、WS-10Bがそのレベルに達したとの証左

中国輸送機と空母艦載機エンジン関連の最近の記事
「中国空軍がY-20U空中給油機を量産開始か?」→https://holylandtokyo.com/2021/02/24/268/
「国産エンジンを空母艦載機J-15に搭載か」→https://holylandtokyo.com/2022/12/07/3999/

WS-10エンジンが登場する過去記事
「単発J-10CにWS-10B搭載」→https://holylandtokyo.com/2021/05/14/1497/
「中国航空ショーでのJ-20を評価する」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-10-1
「J-20が初の海上行動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-05-12-1
「報道官が戦闘能力発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-1

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中国国産エンジンを空母艦載機J-15に搭載か [中国要人・軍事]

徐々に双発機から単発機に搭載機種拡大の中
ついに国産WS-10エンジンを高リスクの空母艦載機に?
中国国営テレビCCTVがちらりと放映の模様

J-15 WS-10.jpg11月17日中国国営テレビCCTVが、製造工場でテスト飛行準備を行う中国製空母艦載機J-15の映像を放映し、これを受け28日付米軍事メディアが、運用リスクが高く安全性が厳しく精査される空母艦載機J-15に、中国産エンジンWS-10が搭載される模様だと取り上げています

28日付Defense-Newsは、CCTVがどのような目的でJ-15空母艦載戦闘機の映像(画像?)を放映したのか説明していませんが、「エンジン尾部のアフターバーナーノズルの形状等から、WS-10と思われるエンジンが、テスト飛行に向けて調整作業を受けている」と紹介しています。

J-15 WS-10 5.jpgJ-15中国産空母艦載機は、機体の開発段階でWS-10エンジン搭載の試みがなされたと記録されていますが、製造段階に入ってからはロシア製のAL-31Fを搭載しており、エンジンの不調がそのまま操縦者の命に係わる空母艦載機のJ-15への国産エンジン搭載は、J-10で約10年の実績を積んだ中国製エンジンの成熟度を示すリトマス試験紙と考えられてきました

そもそもジェットエンジンは、「その国の総合工業力レベル」を示すバロメーターと言われ、中国軍は中国製エンジンの作戦機への搭載を数十年前から追求してきましたが、その試みはなかなか実を結びませんでした。結果としてロシア製エンジンを中国製コピー機体に搭載する形が長く続き、国産と呼ばれるJ-15空母艦載機も、ロシアの空母艦載機Su-33 Flankerのコピーと言われてきました

J-15 WS-10 2.jpg少なくとも10年位前までは、○○戦闘機に国産エンジンが試験搭載されたが、量産型にはロシア製エンジンが搭載された・・との報道ばかりでしたが、10年くらい前から中国製WS-10エンジンが陸上基地配備で双発のJ-11b要撃機やJ-16攻撃機やJ-20ステルス形状戦闘機(攻撃機)の量産型に搭載開始とのニュースが伝えられるようになってきました

より最近では、例えば2018年のZhuhai航空ショーでJ-10B試験機にステルス性の高いWS-10Bを搭載して披露したり、双発のステルス形状攻撃機J-20に国産WS-15エンジンを、また4発のY-20輸送機にWS-10ターボファンエンジンを搭載開始したことが確認されていたところです

J-15 WS-10 3.jpgまた2021年5月には、中国国営ラジオwebサイトが、中国空軍部隊に配備されている単発J-10C戦闘機にWS-10Bエンジンが搭載されていると確認できる映像を公開し、Defense-Newsらが「ついに中国製エンジンが信頼性を高め、量産型単発戦闘機に搭載された」と配信したところでした

そして今回、中国国産エンジンの最後の挑戦とも言われる「空母艦載機」J-15への搭載が、本格的に試験されることが確認されたということです。
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J-15 WS-10 4.jpg中国情勢は、厳しすぎるコロナ対策に対する反対運動が中国各地で発生し、経済の急収縮も背景として「風雲急」を告げています。

そんな中で「最新技術の窃盗」で急速なキャッチアップに成功した中国軍事技術が、今後どこまで「追いつけ・追い越せ」を継続できるのか、とっても気になります

WS-10エンジンが登場する過去記事
「単発J-10CにWS-10B搭載」→https://holylandtokyo.com/2021/05/14/1497/
「中国航空ショーでのJ-20を評価する」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-10-1
「J-20が初の海上行動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-05-12-1
「報道官が戦闘能力発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-1

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海南島近くのSuixi中国空軍基地が大増強中 [中国要人・軍事]

南海艦隊拠点とバシー海峡をにらむ
新滑走路に大型機受け入れ用の巨大エプロン

Suixi AB.jpg11月2日付Defense-Newsが衛星画像会社Planet Labsから提供された9月中旬撮影の画像を紹介し、台湾侵略や南シナ海の「海洋要塞化」の拠点となる海南島の南海艦隊基地近傍の、広東省湛江市の北約30kmに位置する「Suixi空軍基地」の大増強ぶりを解説しています

海南島の南海艦隊基地は中国海軍戦略原潜の一大拠点であり、空母山東の母港化も予定され中国海軍が着上陸戦力の拠点化も狙う優先増強基地ですが、ふ頭の増設や修理ドックの増強の様子を先日の記事でご紹介したところです

Suixi AB2.jpgその海軍拠点をカバーする北方近傍に位置する広東省Suixiの空軍基地は、これまで中国空軍南方方面軍第6航空旅団の基地で、ロシア製のSU-30MKKや中国製SU-35、更にRQ-4そっくりの中国製高高度無人機WZ-7が配備されていた基地ですが、衛星画像の分析によると・・・(冒頭写真は9月18日撮影、直上写真は新旧比較)

●既存の北側滑走路が3500mに延長され、追加で南側に2800mの滑走路が新設
●滑走路への誘導路が、従来の幅18mから34mに大幅拡大され大型機使用を想定している模様

SU-35 China.jpg●南北2本の滑走路の間に、2つの大きな駐機場が新設され、北側駐機場上のペイントされた駐機位置を示すマークから、小型機41機と大型機4機の駐機を想定していることが判明
●2本の滑走路の南には、ミサイルや爆弾などの弾薬組立&点検用の施設が建設中であることが伺える。また滑走路南側には、以前から存在した長射程地対空ミサイルHQ-9部隊が運用中であることが確認できる

●画像からは新たな航空機の配備や、新たな航空機用シェルターは確認できないが、従来からある航空機掩体はそのまま残されており、滑走路の東西2箇所に建設用コンクリ―製造施設が稼働しており、今後も増強工事が続くと予期される

WZ-7 China.jpg新設や延長された滑走路や拡張された駐機場から推定すると、大型爆撃機H-6やY-20空中給油機・輸送機の配備や展開拠点になることも予想され、南シナ海やバシー海峡(台湾とフィリピンの間)などの戦略的な要衝ににらみを利かせる航空拠点の増強と見られています。
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中国経済の急速な減速が伝えられ、併せて習近平の独裁体制が強化されたことを受け、中国による台湾侵攻時期が早まるのではないかとの懸念が高まっていますが、そんな懸念を裏付ける施設の増強ぶりです。

10月上旬にご紹介した海南島での中国海軍施設大増強のご紹介記事も合わせ、ご覧ください

「南シナ海の海南島で中国海軍基地増殖中」
https://holylandtokyo.com/2022/10/06/3720/

南シナ海関連の中国記事
「Shang級の新型巡航ミサイル原潜か?」→https://holylandtokyo.com/2022/05/19/3254/
「カンボジア海軍基地へ進出」→https://holylandtokyo.com/2022/06/15/3354/
「海没のF-35Cを37日で回収」→https://holylandtokyo.com/2022/03/07/2794/
「中国の軍事力レポート2021年版」→https://holylandtokyo.com/2021/11/08/2409/

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南シナ海の海南島で中国海軍基地増殖中 [中国要人・軍事]

新しい潜水艦桟橋が建設中
既に空母用桟橋完成でドライドックも建設中
南シナ海を核ミサイル原潜の聖域へ

Yulin naval base4.jpg9月21日付Defense-Newsが商用衛星画像(Maxar Technologies 7月31日撮影)を取り上げ、中国南端で南シナ海の入り口に浮かぶ「海南島:Hainan Island」で中国海軍施設の増強が進んでいると報じ、今年2月時点では確認できなかった潜水艦用桟橋2つが建造中だと紹介しています

衛星画像は、海南島の南端に位置する中国南海艦隊Yulin naval baseの様子を撮影したものですが、同基地には6隻のType 094, Jin級の戦略原潜のほか、Type 093, Shang級の攻撃原潜が配備されており、南シナ海を戦略原潜の「聖域」「海の要塞」にしようとする中国海軍の一大根拠基地です

Yulin naval base3.jpg写真では、既に存在する4本の桟橋に、3隻のJin級戦略原潜と1隻のShang級の攻撃原潜が停泊している様子が確認できるほか、4本の桟橋の上下(南北)には、今年2月の衛星画像では確認できなかった長さ約170m・幅約20mの桟橋が新たに2本建設中であることが確認できます。なお北の桟橋建設場所付近には浚渫船も写っているほか、既にや沿岸の山腹をくりぬいたトンネル潜水艦格納庫も完成しているようです

また記事によれば、同基地には空母も停泊可能な桟橋が既に建設済で、現在は空母や水上艦艇用ドックが建設中で、空母山東(Shandong)や空母群艦艇を迎え入れ母港とする準備が着実に進んでいるようです。

Yulin naval base5.jpg更に記事は、同基地の近傍都市周辺のヘリコプター基地が最近リノベーションされ、新しい駐機場や滑走路の新舗装工事が完了していると紹介しています。

なお南海艦隊は、中国が台湾に侵攻する際の中核戦力であり、急速に拡大しつつある強襲着上陸艦艇群(Type 075 helicopter carrier1番艦や大部分のType 071 landing platform docks)が配備されている部隊です
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Yulin naval base.jpg
日本のメディアが、国葬反対や旧統一教会の話ばかりを垂れ流している間にも、「中国バブル崩壊」との話が聞こえてくる中でも、粛々と着実に、中国軍は大増強を進めています

関連の中国記事
「Shang級の新型巡航ミサイル原潜か?」→https://holylandtokyo.com/2022/05/19/3254/
「カンボジア海軍基地へ進出」→https://holylandtokyo.com/2022/06/15/3354/
「海没のF-35Cを37日で回収」→https://holylandtokyo.com/2022/03/07/2794/
「中国の軍事力レポート2021年版」→https://holylandtokyo.com/2021/11/08/2409/

最近の中国関連カテゴリー記事25本
https://holylandtokyo.com/category/%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e8%a6%81%e4%ba%ba%e3%83%bb%e8%bb%8d%e4%ba%8b/

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進水間近?:中国第3の空母の新たな衛星写真 [中国要人・軍事]

米メディアが5月31日撮影衛星写真で報道
「間もなく進水」と報道もCSISは慎重な姿勢

Type 003 5.jpgAP通信やWSJ紙が、5月31日に撮影された商用衛星写真で中国第3の空母「Type 003」を紹介し、甲板上の建造機材などが整理撤収されつつあり、建造ドックに注水が始まっている様子などから、間もなく「進水」では・・・と報じているようです

4月には中国海軍が同空母プロモーション映像を公開してお披露目が近いことを示唆し、5月31日付中国国営英字紙「環球時報:Global Times」が、「間もなく進水するだろう」との同空母紹介記事を掲載したことからも、「Type 003」に新たな動きがありそうだと関心が集まっています

Type 003 2.jpg同空母は2018年から、上海北東部の「Jiangnan Shipyard:江南造船(集団)有限責任公司」で建造が進められており、2020年9月にカバーが外されて建造状況が衛星写真等で確認可能となり、1番艦「遼寧」や2番艦「山東」が装備しないカタパルト、それも米空母でもフォード級で初実現する「電磁カタパルト」を搭載する模様だと分析され、これにより艦載機の行動半径や搭載兵器量が大幅にアップすると注目されてきました

米国防省はこの「Type 003」について、様々な海上試験や艦載機を含めた運用訓練等の必要があり、また中国が空母開発において極めて慎重に技術確認を進めながら取り組んできた経緯があることから、運用開始は早くても2024年以降になるだろうと見積もっています

Type 003 4.jpg特にカタパルト(しかも射出パワーを調整しやすい電磁カタパルト)の運用は新たな作戦運用上の現場課題で、戦闘機クラスだけでなく、米海軍が実施している固定翼機(早期警戒機E-2Dなど)のカタパルト使用を中国が考えているのであれば、時間をかけた運用要領確立と技能普及が必要と考えられます

ただ、米一般メディアが建造ドックに注水が始まっている様子から「間もなく進水」等と報道している一方で、6月2日付CSIS「COMMENTARY」は、「建造中の空母周辺をよく見ると、はしごや足場、乾ドックを区切るケーソンも相当量残っており、ドックに海水を満たすだけでも、まだまだやるべき仕事は残されている」と分析しているようです
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中国空母の2番艦(国産空母の第1号)である「山東」は、2019年12月に就航し、様々な訓練や、南シナ海や台湾周回などで示威活動を行っているようですが、色々トラブルが発生しているとも伝えられています

Type 003 6.jpgまた4番艦と5番艦は原子力空母とする構想があったようですが、中国経済の停滞と予算不足により2020年に当面見送りとされ、空母6隻体制を目指す方向も凍結された模様です

米海軍の空母がそうであるように、精密誘導兵器が発達して拡散する世界において、中国空母が有事にどのような役割を期待されているのか、実行可能性があるのか中国関係者に聞いてみたいところですが、しばらくは「生暖かく」見守りたいと思います

CSISの関連分析webページ(6月2日付)
https://www.csis.org/analysis/china-gears-launch-its-third-aircraft-carrier

第3の空母関連の記事
「第3の空母の建造状況」→https://holylandtokyo.com/2021/06/15/1907/
「電磁カタパルト搭載か?」→https://holylandtokyo.com/2020/09/23/485/

中国の軍事動向関連
「新型巡航ミサイル潜水艦か」→https://holylandtokyo.com/2022/05/19/3254/
「山東省に日本向けBMDレーダー」→https://holylandtokyo.com/2022/04/20/3160/
「J-20ステルス機と新艦載機」→https://holylandtokyo.com/2021/11/02/2394/

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中国のType 093 Shang級の新型巡航ミサイル原潜か? [中国要人・軍事]

遼寧省葫芦島市の造船所の衛星写真より
米国防省2021年「中国の軍事力」が記載した新型?
垂直発射管VLS18基と新型ポンプジェット推進を装備か?

Type 093 Shang.jpg5月16日付Defense-Newsが、民間会社Planet Labsによって5月3日に撮影された衛星写真を取り上げ、米国防省が可能性を予言していたType 093 Shang級の新たなタイプ「Type 093B」誘導ミサイル搭載型原潜ではないかと紹介しています

Huludao  Liaoning.jpeg衛星画像は遼寧省葫芦島市の造船所のドライデッキで撮影されたもので、最初は4月29日に撮影された別の衛星写真で、地理空間情報インテリジェンス会社のAllSourceAnalysisが見つけたようです

5月3日や4月29日撮影の写真とは別に、中国のSNS上に5月上旬、撮影場所不明の6本のミサイル管×3列の18個VLSセルを備えた潜水艦映像が流布され、新型のType 093 Shang級ではないかとネット上で噂されていたタイミングでもありました

Type 093 Shang2.jpg米国防省は「中国の軍事力2021」で、中国が「093B誘導ミサイル原子力潜水艦」を建造し始めていると評価していましたが、5月3日の写真には潜水艦司令塔のすぐ後ろにVLSらしき緑色の部分があり、幕がかけられた推進システムらしき様子がうかがえ、海軍専門家は「潜水艦発射ミサイル用のVLS垂直発射システムセルの列と、ポンプジェット推進装置と高い確率で推測できる」と写真を評価しています

またシンガポールの専門家は、中国が潜水艦のポンプジェット推進の研究を行っていることを、過去の科学論文を基にDefense-Newsに説明し、艦対地攻撃と対艦任務のために巡航ミサイルを発射可能な原子力潜水艦を保有することは、中国の長距離攻撃能力追求に一致し、グアム島やハワイ島など米軍の重要拠点や施設攻撃を狙ったものであろうと語ったようです

Type 093 Shang5.jpg5月3日の写真からは、潜水艦がType 093 Shang級潜水艦(排水量6100トン:全長約110m)とほぼ同じ大きさであり、この点からもType 093 Shang級シリーズの改良型である可能性が高いと記事は推測しています

2006年に最初のA型が就航しているType 093 Shang級原潜は、現時点で6種類が確認されていますが、前述の米国防省「中国の軍事力2021」レポートでは「Type 093B」と表現しています
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対中国軍事力について、西側が有利な数少ない分野は「潜水艦戦」だと以前の記事でご紹介し、米海軍がグアム島配備の潜水艦を2隻から5隻に増強したことを最近記事にしたところですが、中国も黙っているはずがありません。

Type 093 Shang3.jpg仮に取り上げた潜水艦が巡航ミサイル搭載の新型Type 093 Shang級潜水艦だとして、どれくらいのペースで、何隻ぐらい中国は導入する予定なのでしょうか。

グアム島やハワイ米軍基地を攻撃する以前に、日本の米軍基地や自衛隊の基地が、潜水艦搭載巡航ミサイルの一番の標的になりうることを念頭に、ウォッチしていく必要がありましょう

対中国軍事力で、西側が有利な数少ない分野は「潜水艦戦」
「グアム島潜水艦増強:2→5隻へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/26/3166/
「戦略原潜設計チームを攻撃原潜にも投入へ」→https://holylandtokyo.com/2021/11/04/2333/
「極超音速兵器:バージニア級へは2028年以降」→https://holylandtokyo.com/2021/11/26/2450/

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山東省に新たな日本&韓国方面向きMD大型レーダー [中国要人・軍事]

標高750mに2019年11月以降に建設か?
同敷地には台湾方面監視レーダーが既に存在
日本全域を監視範囲に収め、宇宙状況把握にも使用可能か
日本は弾道ミサイルを保有していませんが・・・

Large Phased Array3.jpg4月18日付Defense-Newsが、商用衛星で2022年2月に撮影された写真を用い、山東省(山東半島やチンタオがある)中心部の標高750m付近に大型の弾道ミサイル監視レーダーが新設されていると報じ(上写真左が2018年6月、右が2022年2月撮影)、台湾方向を向く既存同型レーダーと共に監視体制を強化していると紹介しています

Shandong Province.jpg記事は当該弾道ミサイル探知追尾用レーダーを「LPAR:Large Phased Array Radar」と呼び、性能の細部は不明ながら、同形状で同規模の米軍AN/FPS-115はレーダー正面120度範囲を3000nm(5600㎞)監視できると紹介しています

Shandong Province2.jpgちなみに新レーダーのある山東省中心部から、ソウルが約800㎞、福岡市と台北市が共に約1100㎞、東京やフィリピンのルソン島北部までが2000㎞で、朝鮮半島と日本列島4島全域を物理法則からするとカバーできることになります

また米軍AN/FPS-115レーダーと同程度の傾きを持って設置されていることから、宇宙監視にも応用可能だろうと記事は推測しています

Heilongjiang Province.jpg新レーダーと同じ場所に隣接設置されてる既存の台湾方面向きレーダーは2013-2014年に建設されており、その他にも同種レーダーが、北朝鮮北方でロシアに接する黒竜江省(上の図)に朝鮮半島と日本方面向きに、台湾北方の浙江省にも台湾向きに設置済だそうです。更に新疆ウイグル自治区には、インド向きで同種レーダーが存在しているとか

確か中国は、米軍が韓国にTHAAD用レーダーを配備しようとした際、中国本土が監視範囲に入って許せないと韓国に嫌がらせしていますが、中国自身もしっかりやることをやっております

それにしても、日本は弾道ミサイルを保有していないのに、中国はいろいろ考えているのでしょうか?

Large Phased Array2.jpgちなみに、台湾でも米国の援助を受け、AN/FPS-115レーダーを発展させた「世界最強」級のミサイル監視レーダーが2013年頃には稼働し始めています。台湾の「Hsinchu」近郊「Leshan Mountain」に設置されたレーダーで、目標の大きさにもよりますが、巡航ミサイルや弾道ミサイルを3000km遠方から探知できるとの米軍需産業関係者の話が当時報道されています

山東省中央部に設置の新レーダーは、「北緯36°01′30″」「東経118°05′31″」で標高2300フィートに所在しているとのこと、ご興味のなる方は、ぜひ公開情報で現物をご確認ください

AN/FPS-115発展型の台湾「世界最強」級ミサイル監視レーダー
「台湾の巨大な中国監視レーダー」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2013-11-28

アラスカに2021年末に設置で試験中の巨大BMDレーダー
「BMD用の巨大新型レーダーLRDR完成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-08

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中国が台湾へ軍事支援する米企業に制裁発動 [中国要人・軍事]

台湾のミサイル防衛兵器支援する米2企業が対象
2021年成立の中国法令を根拠に
過去2010,、2015、2019、2020年にも
制裁の具体的内容は不明

Wenbin2.jpg2月21日、中国外務省報道官は定例会見の中で、台湾とミサイル防衛システムの維持整備契約(約110億円)を結んだレイセオンとロッキード社に対し、2021年に中国で成立した「Anti-Foreign Sanctions Law」に基づいて制裁を課すと発表しました

同報道官は会見で細部には言及せず、「中国は再び、米国政府と関係団体に対し、台湾への武器売却を止め、台湾との軍事関係を絶つよう促す」、「中国は国家の主権と安全保障利害を断固死守するため、状況に応じてあらゆる手段を今後もとっていく」とのみ述べています

Taiwan MD.jpg米企業による台湾への武器売却に対する中国の制裁発表は、過去2010,、2015、2019、2020年にもあり、2020年時は、同年10月24日に米国が台湾への大規模武器売却を発表した翌日にロッキード、ボーイング、レイセオン等の軍需部門に対する制裁を発表しています

ただ、いずれの場合も制裁の具体的内容は明らかになっておらず、今回も具体的な制裁内容は明らかになっていません。

同時に、ロッキード、ボーイング、レイセオン等の米国軍需産業は、官民両方の分野で巨大な中国市場を相手に商売を行っており、民需部門への影響も不明です。ちなみに2020年10月時には「軍需部門」のみが対象になっていました
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Boeing China.jpg米国企業と中国との関係は、それが軍需産業部門を保有する企業であっても微妙なものがあります。

Googleが中国に「AI開発拠点」を設けていることに米国防省幹部や米軍幹部が激怒していることは知られていますが、ボーイングが中国内に民間機生産拠点を保有している点でも微妙な関係です

中国経済の減速や不動産バブル崩壊の中、習近平政権が経済と国際社会との関係のバランスを、どのように取っていくかを見る一つの指標としてご紹介しておきます

2020年10月にも同様の制裁発表
「中国が台湾へ武器輸出する米企業に制裁へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-27

対中国関連の最近の記事
「対中国専属米空母の苦悩」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15
「米中では極超音速兵器の意味が異なる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-21
「中国が核兵器FOBS開発の可能性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-21
「2021年版・中国の軍事力レポート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-06

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中国高官が中国の核戦力急速増強を否定 [中国要人・軍事]

中国外務省の兵器管理局長が語る
米英仏中による核兵器共同声明の翌日ですから

Fu Cong.jpg1月4日、中国外務省の兵器管理局長(director general of the Foreign Ministry's arms control department)が、米国防省が2021年11月発表の「中国の軍事力」レポートで、前年見積もりを約2.5倍規模に上方修正した中国による核戦力大増強に関し、「米国の主張は事実と異なる。近代化を進めているだけだ」と主張しました

米国防省は同レポートで中国核戦力の増強を、2020年レポートでは2030年までに400弾頭と予想していたのに、2021年レポートでは1000弾頭以上と大幅上方修正しました

China ICBM silo.jpgそして具体的に、衛星写真で新しいICBMサイロが中国3か所で数百個建設中であることや新型ICBMが開発されていること、空中発射及び潜水艦発射開発型でも新兵器開発が着実に進められていること等を、同レポートで主張していたところです

以下で紹介する担当局長のコメントは、米英仏中が、NPT会合の代わりに発表した共同声明の翌日のもので、同声明のラインに沿った官僚の発言かもしれませんが、一応の公式スタンスですから確認しておきましょう

4日付Military.com記事によれば同局長は
Fu Cong2.jpg●Fu Cong中国外務省兵器管理局長は、中国は国家安全保障のために必要な最低限レベルの核抑止を確実なものにするため取り組んでいると主張し、「中国が核戦力を劇的に拡充していると米側は主張しているが、まず一番に、その主張は正しくないと言わせてもらう」と語った
●米側がICBMサイロ建設の衛星写真を証拠に中国の核戦力増強を主張している点に関し同局長は、ICBMサイロには言及せず、中国の核戦力を衛星写真で見積もるべきではないと反論した

●また同局長は、中国はアジアの安全保障環境の変化に対応するため、必要な措置をとる必要があると主張し、米国による中距離ミサイルのアジア配備計画や印パキスタンによる核兵器開発を事例として挙げた

DF-26B.jpg●米国が米露の戦略核削減条約に中国も加わるよう呼び掛けていることについて同局長は、世界の中でずば抜けた数の核弾頭を保有する米露両国が、まず大幅に核戦力を削減すべきだと主張した
●そして「もし米露が中国レベルにまで核弾頭数を削減したら、中国も喜んで同条約の枠組みに加わる準備がある」、「そして英国やフランスレベルにまで更に米露が削減すれば、他の核保有国も同条約に加わることができるだろう」と述べた

H-6N 3.jpg●バイデン政権は核体制見直しを検討中だが、中国が同局長の主張とは真逆の核増強に突き進む中で、米国として大きな方向転換は考えにくい
●同局長はイラン核合意について、米国にはイランへの制裁を解除、イランには核合意枠組みに復帰を要望した。イラン核合意については、米中英仏独がイランと同合意枠組み復活に向けた協議を続けている
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「中国の核戦力を衛星写真で見積もるべきではない」と堂々と主張する中国は、南シナ海を軍事基地にしないと主張し、ウイグル地区での人権侵害がないと言い続ける中国と同じです

JL-3.jpg中国外務省の兵器管理局長に事態を変える力はないのでしょうが、共産党指導層の意向を受け、ヘリクツを考え、主張を続ける役割を担っているのでしょうからご紹介しておきます

中国の核戦力大増強を指摘した米国防省レポート
「2021年版・中国の軍事力レポート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-06

中国空軍のH-6大型爆撃機
「中国空軍H-6Nが極超音速兵器試験?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-20
「H-6Kのグアム島ミサイル攻撃模擬映像」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23

新START期限切れ関連
「新STARTはとりあえず5年延長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-22-1
「ドタキャン後にまた受け入れ表明」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-17
「延長へ米露交渉始まる!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-18-1
「Esper新長官アジアへ中距離弾導入発言と新STARTの運命」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-04
「IISS:対中国軍備管理とミサイル導入は難しい」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-09

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米国防省「中国の軍事力」レポート2021年版が核増強を [中国要人・軍事]

2020年版予想は2030年までに400弾頭
2021年の予想は2030年までに1000弾頭以上

2021 China report.jpg11月3日に米国防省が公表した2021年版「中国の軍事力」レポートで、中国の核戦力増強見積もりが、昨年のレポートの2.5倍になっていると話題ですので簡単にご紹介しておきます

このレポートは「Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China」とのタイトルの議会報告用のレポートで、過去記事にあるよう毎年公表されており、既に日本のメディアでも様々に取り上げられていますが、特に今回は核戦力増強に焦点が当たっています

China 100.jpg米国防予算が「良くて横ばい」と言われる中、老朽化したICBMミニットマンⅢの後継(GBSD)開発や極超音速兵器開発、更にはミサイル防衛用の予算確保に迫られている米国防省として、その必要性をアピールするため、核の脅威はロシアの核戦力だけでなく、中国も含めて考えるべきと世論に再考を促す狙いも感じられます

いずれにしても、昨年の同レポートで2030年時点での中国核弾頭数を400弾頭と見積もっていたものを、今年は1000弾頭以上と大きく上方修正しており、その中身を概観しておきましょう

3日付Defense-News記事によれば
China ICBM silo.jpg●(昨年の同レポートでは、中国軍の核弾頭数を現状200弾頭で、2030年までに400弾頭に増強と見積もっていたが、)2021年版レポートでは、中国は2027年までに700弾頭、2030年までに少なくとも1000弾頭の保有を目指していると記している
●米国はロシアとの戦略兵器削減条約の縛りもあり、2003年には1万発の核弾頭を保有していたが、現時点で3750弾頭まで削減しており、今後増強する計画はない

●2021年版レポートは2020年12月までの状況をまとめたもので、2021年8月に中国が試験し、最近Milley統合参謀本部議長が強い懸念を示した低高度軌道飛翔する極超音速核兵器FOBSと言われる兵器の試験については言及しておらず、中国がDF-17との米国のミサイル防衛網を回避する極超音速兵器を配備したとのみ記載している

H-6N 4.jpg●2021年版レポートは、中国版「核の3本柱」が急速に増強発展している分野だと紹介し、空中発射型、地上発射型、潜水艦発射型の開発増強について言及している
●空中発射型については、空中発射核弾道ミサイルを機体外部に搭載可能とする改修をH-6K大型爆撃機に施した「H-6N」の2020年部隊配備を通じて紹介し、H-6Nが空中受油能力を付与されて核ミサイルの攻撃可能範囲拡大を狙っている点や、各種戦術開発に取り組んでいると記載している

●地上発射型ICBMについては中国核戦力の柱であり、3つの場所で固体燃料ICBM用のサイロ群を建設開始しており、合計で数百のICBMサイロ増設になると見積もっている
●また、新たなICBMとして射程5000~8000㎞のDF-27が開発中としているが、以前から報道されていた「“intercontinental” glider system」との関係は不明である

Type 096.jpg●潜水艦発射型については、現在配備されている6隻のType094型戦略原潜(晋級(Jin Class))に加え、開発中のType096型戦略原潜(唐級(Tang Class))を合わせ、203年には8隻体制になると予想している。なお、096型のミサイル搭載数は、094型の2倍の24基になると言われている
●またType096型に搭載の潜水艦搭載核ミサイルも、現在の094型が搭載のJL-2(射程7200㎞)から、中国沿岸から米本土を攻撃可能な開発中のJL-3(射程12000㎞)になると分析している。なお潜水艦発射型ミサイルは、発射後に目標情報を受信して攻撃目標を変更可能で、それら目標情報は約200個の偵察衛星群から提供される(昨年時点の見積もりは衛星数80個)

●一方で2021年版レポートは、中国の西側潜水艦への対処能力(anti-submarine warfare)が依然としてレベルが低くアキレス腱となっていると表現し、中国がこの欠点を改善するために中国空母や潜水艦防御のため水上艦艇を2030年までに460隻に増強する計画だとレポートしている
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JL-3.jpgとりあえず「核戦力」について、3本柱の近代化&増強の視点からご紹介しておきます。

ちらっと中身を見ましたが、図や表が少なく、文字がびっしりの印象です。余力があれば、その他の分野も追記するかもしれません・・・気力があれば・・・

現物:2021年版「中国の軍事力」レポート192ページ
9-18ページが「EXECUTIVE SUMMARY」です
https://www.airforcemag.com/app/uploads/2021/11/2020-China-Report.pdf

米国防省「中国の軍事力」レポート関連
「2020年版」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-02
「2019年版」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-06
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-18
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-08
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1

中国空軍のH-6大型爆撃機
「中国空軍H-6Nが極超音速兵器試験?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-20
「H-6Kのグアム島ミサイル攻撃模擬映像」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

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