東京の郊外より・・・
https://holyland.blog.ss-blog.jp/
米国防省や米軍の動きを中心に安全保障の話題をフォロー。Cool Head, But Warm Heartで
まんぐーす
2024-03-19T05:00:00+09:00
ja
-
欧州議会は台湾を中国の一部だとは認めず
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-03-14
激論の末、中国が激怒する結論の報告書を議会で採択 (たぶん、中国代表部の採択阻止工作も功を奏せず・・) 極めて重要な中国への世界の動きも、日本メディアは報ぜず 2月28日、欧州議会が欧州連合 EUの「共通外交・安全保障政策」に関する年次実施報告書を議決するタイミングに併せ、台湾の地位と台湾情勢に関する「共通安全保障防衛政策」 との報告書も別途採決し、賛成 350票(得票率 65%)で報告書を決定しました。 本日は、世界の中国に対する姿勢の転換点になるかもしれない(呼び水となってほしい・・・)、この極めて意義深い内容の欧州議会の報告書について、中国研究の大家で中国共産党の崩壊をフォローする渋谷司氏の YouTube チャンネル (渋谷司の中国カフェ)からご紹介します ズバリこの台湾に関する報告書のエッセンスは、 ・中国共産党による台湾に対する領有権主張は根拠がなく、台湾と中国は対等な関係にあり、決して従属関係にはない ・台湾は、インド太平洋地域におけるEUの重要なパートナーであり、民主的な同盟国 である ・EU加盟国は、グローバル・サプライチェーンの強靭化強化に関し、台湾とより緊密 な関係を構築すべき ・欧州議会は、中国共産党が台湾の国際機関への参加を妨害し続けていることを非難し、世界保健機関 WHO や国際民間航空機関 ICADへの台湾の加盟を、EU加盟国やEU 執行理事会が支援するよう求める もちろん駐EU中国代表部は強く反論し ・この報告は、国際法と国際関係の基本規範に違反する。「一つの中国」原則は、国際 社会が普遍的に持っている国際関係の基本規範である ・「一つの中国」原則に反し、「一つの中国、一つの台湾」を提唱して台湾独立勢力の言い訳の役割を果たす ・中国の主権を侵害し、中国の内政に著しく干渉するものとして、中国は強い衝撃を受け、断固として反対し、強い言葉で非難する ////////////////////////////////////////////////////////////もともと2月 28 日の欧州議会の中心議題であった欧州連合 EU「共通外交・安全保障 政策」の年次実施報告書に関しても、賛成 338票(62%)、反対86票、棄権 122票との結果が示すように、決して「満場一致」の穏やかな議論ではなく、棄権が多数発生する甲論乙駁の議論だった模様で、台湾に関する報告書への賛成 65%との結果も..
安全保障全般
まんぐーす
2024-03-19T05:00:00+09:00
激論の末、中国が激怒する結論の報告書を議会で採択
(たぶん、中国代表部の採択阻止工作も功を奏せず・・)
極めて重要な中国への世界の動きも、日本メディアは報ぜず
2月28日、欧州議会が欧州連合 EUの「共通外交・安全保障政策」に関する年次実施報告書を議決するタイミングに併せ、台湾の地位と台湾情勢に関する「共通安全保障防衛政策」 との報告書も別途採決し、賛成 350票(得票率 65%)で報告書を決定しました。
本日は、世界の中国に対する姿勢の転換点になるかもしれない(呼び水となってほしい・・・)、この極めて意義深い内容の欧州議会の報告書について、中国研究の大家で中国共産党の崩壊をフォローする渋谷司氏の YouTube チャンネル (渋谷司の中国カフェ)からご紹介します
ズバリこの台湾に関する報告書のエッセンスは 、
・中国共産党による台湾に対する領有権主張は根拠がなく、台湾と中国は対等な関係にあり、決して従属関係にはない
・台湾は、インド太平洋地域におけるEUの重要なパートナーであり、民主的な同盟国 である
・EU加盟国は、グローバル・サプライチェーンの強靭化強化に関し、台湾とより緊密 な関係を構築すべき
・欧州議会は、中国共産党が台湾の国際機関への参加を妨害し続けていることを非難し、世界保健機関 WHO や国際民間航空機関 ICADへの台湾の加盟を、EU加盟国やEU 執行理事会が支援するよう求める
もちろん駐EU中国代表部は強く反論し
・この報告は、国際法と国際関係の基本規範に違反する。「一つの中国」原則は、国際 社会が普遍的に持っている国際関係の基本規範である
・「一つの中国」原則に反し、「一つの中国、一つの台湾」を提唱して台湾独立勢力の言い訳の役割を果たす
・中国の主権を侵害し、中国の内政に著しく干渉するものとして、中国は強い衝撃を受け、断固として反対し、強い言葉で非難する
////////////////////////////////////////////////////////////
もともと2月 28 日の欧州議会の中心議題であった欧州連合 EU「共通外交・安全保障 政策」の年次実施報告書に関しても、賛成 338票(62%)、反対86票、棄権 122票との結果が示すように、決して「満場一致」の穏やかな議論ではなく、棄権が多数発生する甲論乙駁の議論だった模様で、台湾に関する報告書への賛成 65%との結果も、中国側ロビイストや工作要員等による報告書否決に向けた裏工作や駆け引きがあった中での、画期的な内容の強行突破採決だったのだろうと邪推しております
今の欧州は、過去 10年に及ぶリベラルの口車に乗った「安易な移民受け入れ」や、耳障りの良い「環境政策重視」の結果、治安も経済も崩壊目前の状態にありますが、遠く離れた中国や台湾に関し、骨のある採決がなされたことに敬意を表したいと思うと同時に、渋谷氏も指摘するように、この重い決定に日本のメディアが「報じない自由」を発動している現状を嘆かわしく思います
台湾関連の記事
「台湾近傍フィリピン北端に米国支援で軍施設増強中」→ https://holylandtokyo.com/2024/02/15/5548/
「中国による台湾への非接触型・情報化戦争」→ https://holylandtokyo.com/2024/01/05/5398/
「中国は大規模な台湾侵攻を考える状態にはない」→ https://holylandtokyo.com/2023/12/08/5330/
「新型潜水艦が西側支援を受け完成」→ https://holylandtokyo.com/2023/10/04/5093/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
豪州海軍が水上攻撃艦艇規模を2倍強に増強へ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-29
有識者諮問会議提言を豪政府が基本採用へ 駆逐艦&フリゲート艦を現 11隻から 26隻体制へ32 発ミサイル搭載の無人艦艇6隻導入も提言に2月20日、豪州政府が委託した有識者諮問会議が豪海軍水上攻撃艦艇部隊(駆逐艦&フリゲート艦) の強化提言(Enhanced Lethality Surface Combatant Fleet)を発表し、現在の当該艦艇規模11隻を 26隻体制に拡大すべきとの答申を打ち出しました。またこの海軍部隊提言とは別に、豪州沿岸での水 上警察任務を遂行する艦艇を25隻導入すべきとの提言も含まれたとのことです 本答申に関し 28 日付 Defense-News 記事は、豪州政府が本答申を現有フリゲート艦(Anzac-class) の能力向上改修継続部分を除き受け入れたと報じており、現在の勢力がわずか 11 隻との実態にも驚くばかりですが、これを2倍以上に拡大する方向を打ち出した豪州の決意にも驚かされます専門家は約1兆円の水上艦艇増強答申を、予算的には今後の議会審議や国民世論の影響を受けることは当然としながらも、達成可能な経費規模だと論評し、人的戦力確保が困難な課題だとして昨今の豪軍の離職率の高さを指摘していますが、本答申の方向に進むことは間違いなさそうです なお、現在の豪海軍 11隻とはあくまで打撃能力保有の駆逐艦&フリゲートだけの隻数で、そのほかに強襲揚座艦2歳、哨戒艇4隻、掃海艇4 、補給艦2隻等を保有していますのでご注意ください。 それでもあれだけ大きな大陸国家が、この規模の海軍しか保有していないとは驚きですが・・・。以下では28日付 Defense-News 記事から豪海軍2倍以上増強提言の概要をご紹介します 豪水上攻撃艦艇(駆逐艦&フリゲート艦)の2倍強増強提言●大型の「Tier 1 駆逐艦およびフリゲート艦」を9隻に ・現在は3隻の「Hobart-class」対空駆逐艦のみだが、同艦艇にイージスシステムやトマホーク巡航ミサイル搭載改修を行う ・新しく現在3隻発注中の「Hunter-class」対潜フリゲート艦を、計6隻調達する ●より小型の「Tier 2 フリゲート艦」を11隻に ・現在 8隻保有の「Anzac-class」と同等以上の規模で、陸上及び海上攻撃能力を持ち、防空や援護能力を持つ「general-purpose frigates」を11隻調達する (なお現在8 隻保有のA..
安全保障全般
まんぐーす
2024-03-18T05:00:00+09:00
有識者諮問会議提言を豪政府が基本採用へ
駆逐艦&フリゲート艦を現 11隻から 26隻体制へ
32 発ミサイル搭載の無人艦艇6隻導入も提言に
2月20日、豪州政府が委託した有識者諮問会議が豪海軍水上攻撃艦艇部隊(駆逐艦&フリゲート艦) の強化提言(Enhanced Lethality Surface Combatant Fleet)を発表し、現在の当該艦艇規模11隻を 26隻体制に拡大すべきとの答申を打ち出しました。またこの海軍部隊提言とは別に、豪州沿岸での水 上警察任務を遂行する艦艇を25隻導入すべきとの提言も含まれたとのことです
本答申に関し 28 日付 Defense-News 記事は、豪州政府が本答申を現有フリゲート艦(Anzac-class) の能力向上改修継続部分を除き受け入れたと報じており、現在の勢力がわずか 11 隻との実態にも驚くばかりですが、これを2倍以上に拡大する方向を打ち出した豪州の決意にも驚かされます
専門家は約1兆円の水上艦艇増強答申を、予算的には今後の議会審議や国民世論の影響を受けることは当然としながらも、達成可能な経費規模だと論評し、人的戦力確保が困難な課題だとして昨今の豪軍の離職率の高さを指摘していますが、本答申の方向に進むことは間違いなさそうです
なお、現在の豪海軍 11隻とはあくまで打撃能力保有の駆逐艦&フリゲートだけの隻数で、そのほかに強襲揚座艦2歳、哨戒艇4隻、掃海艇4 、補給艦2隻等を保有していますのでご注意ください。 それでもあれだけ大きな大陸国家が、この規模の海軍しか保有していないとは驚きですが・・・。以下では28日付 Defense-News 記事から豪海軍2倍以上増強提言の概要をご紹介します
豪水上攻撃艦艇(駆逐艦&フリゲート艦)の2倍強増強提 言
●大型の「Tier 1 駆逐艦およびフリゲート艦」を9隻に
・現在は3隻の「Hobart-class」対空駆逐艦のみだが、同艦艇にイージスシステムやトマホーク巡航ミサイル搭載改修を行う
・新しく現在3隻発注中の「Hunter-class」対潜フリゲート艦を、計6隻調達する
●より小型の「Tier 2 フリゲート艦」を11隻に
・現在 8隻保有の「Anzac-class」と同等以上の規模で、陸上及び海上攻撃能力を持ち、防空や援護能力を持つ「general-purpose frigates」を11隻調達する (なお現在8 隻保有のAnzac-class は、1番艦はすでに非稼働状態で、2番艦も 2026 年退役予定の老朽艦)
・豪州海軍はこの最初の?妻の候補を、ドイツの MEKOA-200、日本のモガミ級、韓国のFFX Batch IT/ITI、スペインの Alfa 3000に絞り込み、来年機種選定を行い、初納入は2030年を予定
●有人運用もオプションの大型ミサイル搭載艦6隻
・米国設計で、32 個のミサイルセルを備える 6 隻の大型水上艦艇は、オプションで乗員搭乗可能な従来概念とは全く異なる艦艇を予定。豪州内の建造場所も実質決定しており、2030 年代半ばから就役予定
・豪国防相は同艦艇に乗員を配置すると述べているが、専門家は無人艦艇として将来運用される可能性があると予想している。ただ同専門家は「殺傷兵器を搭載した無人水上艦艇運用には法的環境が整備されていないため、豪政府は現時点でその可能性についてはあまり触れたくなかったはずだ」とコメントしている
●なお提言には、「打撃能力保有の駆逐艦&フリゲート艦」以外に関する提言も盛り込まれ、水上警察任務 (civil maritime security operations)のために 25隻の「小型艦艇」からなる部隊の整備も推奨している
●予算面では ・今後10年間で約1兆円(U.S.$7-3 billion)が必要とされ、今後4年間に約 1600億円(U.S.$1.1 bilion) を政府が割り当てる計画を持っている模様で、専門家は個々のプロジェクトの承認を得ていく必要があり、世論の理解も欠かせないが、支払い可能な範囲だと考えている
●人的資源が懸念材料 ・ただし2倍以上に膨らむ艦艇数を支える人的資源については懸念が強く、例えば豪国防省は2022年から 2023 年に軍人数を2,201人増強する計画を立ててが、増員どころか「1,38g 人」減少させており、この面での対策が最も困難ではないかとの見方が多い
/////////////////////////////////////////
専門家は、「2020年代後半に老朽艦退役に伴う能力低下のリスク増大時期がやってくることを問題視し、豪海軍はこの時期の対策を考える必要があると指摘」しているようですが、時代の要請とはいえ、豪州は大きく軍拡に踏み出し、記事によれば国防費のGDP比を、今の2.1%から2.4%に拡大するようです
米国からの「軍備増強圧力」もあるでしょうが、日本にはどのような要求が来ているのでしょうか? 中国の経済破綻に起因する混乱や国家体制の崩壊具合にもよりますが、様々なファクターが絡み合う、探り合いの今後数年になりそうですねぇ・・・
豪州関連の記事
「北部重要港湾の中国へのリース継続」→https://holylandtokyo.com/2023/10/25/5170/
「却下もB-21購入検討認める」→https://holylandtokyo.com/2023/05/15/4588/
「豪で過去最大の米軍兵站演習」→https://holylandtokyo.com/2023/04/14/4506/
「サイバー能力大拡大の10年計画推進」→https://holylandtokyo.com/2022/11/16/3911/
「米がMQ-9B輸出許可」→https://holylandtokyo.com/2021/04/29/119/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
米国で年始から話題の「朝鮮半島有事の蓋然性」議論
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-28
年初から米国で話題の2つの論考をご紹介「金正恩は戦争に出る戦路的な決断を下した」論と「朝鮮半島有事に至る可能性をシナリオ別に検討」論考2月27日付で防衛省防衛研究所が「NIDS コメンタリー」枠組みで、30代後半の若手研究者(戦史研究センターの国際紛争史研究室主任研究官 石田智範氏)による、実質2ページの「朝鮮半島有事の蓋然性を巡るアメリカ国内の議論」 との短くも異味深い論考を掲載し、「2024年の年明け早々、朝鮮半島有事の蓋然性というテーマが米国の安保政策コミュニティを賑わせた」として2本の論考(共に1月11日発表)を紹介していますので、つまみ食いでご紹介します最近関心が薄らいでいた北朝鮮問題ですが、経済的な破綻状態が深刻さを増し、最近では年初の能登半島地震発生時に金正恩から岸田首相に見舞い電報が送られたり、首領様の妹女史から岸田首相訪朝に関する発言が飛び出すなど、何やら動きがありそうな雰囲気もありますので、頭の体操としてご覧いただければと思い取り上げさせていただきます 石田主任研究官が取り上げた最初の論考は、核物理学者の Siegfried S. Hecker氏と1990 年代以降の米朝交渉に米国務省で深く携わったRobert L.Carlin 氏(元CIA 分析官)2名による、情報分析サイト「38 North」に掲載された「金正恩は戦争の準備をしているのか?」との連名寄稿で、「すでに金正恩は戦争に訴えるという戦路的な決断を下した」と主張し、朝鮮半島有事の危険性を真剣に訴え注目を集めたものです もう一つは、元米国務省の北朝鮮核問題担当特使として「米朝枠組み合意」を主導した Robert Gallucci 氏が発表した論考で、朝鮮半島有事に至る可能性をシナリオ別に検討したもので、少なくとも短期的に不安定化のトレンドにある朝鮮半島情勢を考える上で参考になると石田氏が取り上げています 「金正恩は戦争に出る戦路的な決断を下した」論 ●まず両氏は前提として、北にとって対話は「核開発の隠れ義に過ぎない」とする定型的な議論を退け、米国との国交正常化が過去30 年の北朝鮮外交の中心的な政策目標であったことを強調。 ●いわく、金日成、正日、正恩の三代にわたり北朝鮮は「中と露に対する緩衝材」として米国との国交正常化を真剣に追求してきており、2019年2月のトランプとの米朝首脳会談(@ハノイ)は、金正恩にとり先代達の渇望した偉業を..
安全保障全般
まんぐーす
2024-03-15T05:00:00+09:00
年初から米国で話題の2つの論考をご紹介
「金正恩は戦争に出る戦路的な決断を下した」論と
「朝鮮半島有事に至る可能性をシナリオ別に検討」論考
2月27日付で防衛省防衛研究所が「NIDS コメンタリー」枠組みで、30代後半の若手研究者(戦史研究センターの国際紛争史研究室主任研究官 石田智範氏)による、実質2ページの「朝鮮半島有事の蓋然性を巡るアメリカ国内の議論」 との短くも異味深い論考を掲載し、「2024年の年明け早々、朝鮮半島有事の蓋然性というテーマが米国の安保政策コミュニティを賑わせた」として2本の論考(共に1月11日発表)を紹介していますので、つまみ食いでご紹介します
最近関心が薄らいでいた北朝鮮問題ですが、経済的な破綻状態が深刻さを増し、最近では年初の能登半島地震発生時に金正恩から岸田首相に見舞い電報が送られたり、首領様の妹女史から岸田首相訪朝に関する発言が飛び出すなど、何やら動きがありそうな雰囲気もありますので、頭の体操としてご覧いただければと思い取り上げさせていただきます
石田主任研究官が取り上げた最初の論考は、核物理学者の Siegfried S. Hecker氏と1990 年代以降の米朝交渉に米国務省で深く携わったRobert L.Carlin 氏(元CIA 分析官)2名による、情報分析サイト「38 North」に掲載された「金正恩は戦争の準備をしているのか?」との連名寄稿で、「すでに金正恩は戦争に訴えるという戦路的な決断を下した」と主張し、朝鮮半島有事の危険性を真剣に訴え注目を集めたものです
もう一つは、元米国務省の北朝鮮核問題担当特使として「米朝枠組み合意」を主導した Robert Gallucci 氏が発表した論考で、朝鮮半島有事に至る可能性をシナリオ別に検討したもので、少なくとも短期的に不安定化のトレンドにある朝鮮半島情勢を考える上で参考になると石田氏が取り上げていま す
「金正恩は戦争に出る戦路的な決断を下した」論
●まず両氏は前提として、北にとって対話は「核開発の隠れ義に過ぎない」とする定型的な議論を退け、米国との国交正常化が過去30 年の北朝鮮外交の中心的な政策目標であったことを強調。
●いわく、金日成、正日、正恩の三代にわたり北朝鮮は「中と露に対する緩衝材」として米国との国交正常化を真剣に追求してきており、2019年2月のトランプとの米朝首脳会談(@ハノイ)は、金正恩にとり先代達の渇望した偉業を成し、国内的権威確立に向けた乾坤一擲の大勝負だった。
●そのため、ハノイ会談の決裂を受けて「トラウマ的な面目の失壁」を味わった金正恩は、過去 30年の政策方針を破棄し、中露との関係強化へと外交の舵を切り直した
●アフガンからの米軍撤退等の情勢変化を受け、北は米国が世界から勢力を後退させていると認識し、「朝鮮問題の軍事的な解決」を図る好機が到来したと判断するに至った。韓国に対する統一政策の放棄は、軍事力行使の対象として韓国を明確に位置づけ直したものであり、全般的な戦路転換の結果である。
●そして両氏はこの流れから、抑止力強化での戦争防止で十分と考えるのは危険だと主張。ただし両氏の議論は、北問題に十分政策資源を配分していない近年の米国に再考を促すことを求めているが、既存の政策枠組みに対する代替案でも提示してはいない。
●「金正恩は戦争に訴える戦路的決断を下した」との核心部分についても、両氏も認めているようにあくまで状況証拠に基づく推論の域を出ず、反論の余地は多分に残されている。両氏の論考が米国の対北政策に及ぼす影響は限定的で、米国は引き続き日米協力の推進を基軸とした 朝鮮半島政策を展開すると考えられる。
●ただ、少なくとも短期的に、北が低烈度の軍事行動を活発化させると予想する点で専門家の見方は概ね一致してい 最近の日米韓による連携強化の動きを受け、金正恩は自らの「強さ」を内外に示す必要に迫られているはずで、また仮に金正恩がトランプ前大統領の再選に米朝交渉再開の望み持つならば、その布石として予め対外的な緊張を高めておくことはむしろ合理的だろう。
「半島有事の可能性を3つのシナリオ別に検討」論考
●ガルーチが提示するのは大きく3 つのシナリオである。
●第一に、台湾有事が朝鮮半島に波及するシナリオ。台湾をめぐって米中が事を構えれば、北は核保有国として中国支援の役回りを買って出るはずであるから、北朝鮮による核の威嚇を前にして、日本や韓国といった地域の同盟国が機会主義的な行動に走る可能性を米国として懸念。
●第二に、北が自らの核抑止力で米国同盟の信頼性が低下したと誤認し、核の威嚇で韓国に政治的意思を強要するシナリオ。ここで事の帰趨を決定的に左右するのは、抑止をめぐる北朝鮮指導者の主観的な計算であり、客観的には非合理的な決断が下される可能性があり懸念。
●第三に、偶発的事態が戦争へエスカレーションするシナリオ。特に核兵器運用に経験の浅い北が、現場レベルで想定外の行動をとる可能性を懸念。
////////////////////////////////////////////
石田主任研究官は、地震関連の金正恩から岸田首相への見舞いの電報や、首領様の妹女帝による岸田総理の訪朝に関する発言から、現時点では日本に対し北朝鮮は、米国や韓国とは一線を画した対応をとっているとし、日本として日米韓連携を深め北朝鮮の抑止に万全を期すことは無論だが、その先の北朝鮮との関わり方についても、広い視野をもつ必要があるだろう・・・と結んでいます。
日本の地上波や新聞の報道を見ると、「つまらない」を遥かに通り越し、「怒りがわいてくる」方が激増中だと聞き及びましたが、本当ならきわめて健全なことで素晴らしいことだと思います。ご興味のある方は、実質2ページの論考原文を是非ご覧ください
現物「半島有事の蓋然性をめぐる米国内の議論 」
→ https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary301.pdf
防衛研究所「NIDS コメンタリー」
「安全保障としての半導体投資」→https://holylandtokyo.com/2024/02/28/5534/
「サイバー傭兵の動向」→https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/
「真の注目は台湾立法院長選出」→https://holylandtokyo.com/2024/01/23/5460/
防衛研究所の「異様な」対中国姿勢がわかる公刊物
「中国による台湾への非接触型・情報化戦争」→https://holylandtokyo.com/2024/01/05/5398/
「中国の影響工作/概要解説」→https://holylandtokyo.com/2023/12/21/5362/
「異様な中国安全保障レポート2024」→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
米軍史上初、海兵隊が財務監査by部会機関に初合格
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-27
国防省や陸海空軍は過去に合格歴無し2010年の初監査から不合格を重ねた末に合格歴のない国防省や他軍種への圧力強まる2月23日付Defense-Newsは、米海兵隊が同日、国防省や他軍種が未だに合格したことがない第3者機関による財務監査に、史上初めて合格したと報じています記事によれば、法律により、米国防省と陸海空軍と海兵隊は1990年代に財務監査を受けることになっていた模様ですが、例えば海兵隊は監査の本格準備を始めたのが2006年になってからで、実際に初めて行われた2010年監査では、多くの要改善事項が指摘され不合格となっていますその後海兵隊は、2012年度の限定された範囲の監査に合格したと2013年末に一度は発表しましたが、2015年3月に多くの財務及び監査関係者から結果は信頼性が低く合格判定を取り消すべきとの声が上がり結果が修正され、その後は今回の2023年度監査まで毎年不合格を繰り返しており、国防省や他軍種も同様な連続不合格を続けている状態にありました海兵隊の財務監査は、Ernst and Young社との第三者監査法人機関によって実施され、財務諸表に記載されている全ての資産を精査し、全ての物品が海兵隊が指定の場所にあることを確認する作業が行われました。監査チームが米国および世界各地で70か所以上の現場を訪問、土地や建物など7800件以上の不動産資産、軍需装備品5900点、スペア部品等190万個、更に2400万個の弾薬等を、陸軍や海軍保管庫等を借用して保管しているものも含めて調査&照合したとのことですまた、原則として監査は単年度で終了するものですが、あまりにも膨大な不動産や物品をチェックする必要があるため、2023年度だけでは終了させることができなかったようですが、「海兵隊の信頼性を議会や納税者に示すため、海兵隊司令官の目標だった」との米海兵隊の強い要望で期間を延長し、2023年度監査を終了させ、合格を勝ち取ったとのことですもちろん、合格ながら要改善箇所の指摘もあり、例えば人事システムと財務データシステム間の情報共有には、人為的エラーを防ぐため統合された自動化システムを追求すべき等の助言が監査結果には記載されているようですが、アーンスト・アンド・ヤング社とは別に監査を行った国防省会計監査官のマッコード氏は、「私は海兵隊、特にエリック・スミス海兵隊司令官のリーダーシップと努力を賞賛したい」、「財務諸表全体に対す..
Joint・統合参謀本部
まんぐーす
2024-03-14T05:00:00+09:00
国防省や陸海空軍は過去に合格歴無し
2010年の初監査から不合格を重ねた末に
合格歴のない国防省や他軍種への圧力強まる
2月23日付Defense-Newsは、米海兵隊が同日、国防省や他軍種が未だに合格したことがない第3者機関による財務監査に、史上初めて合格したと報じています
記事によれば、法律により、米国防省と陸海空軍と海兵隊は1990年代に財務監査を受けることになっていた模様ですが、例えば海兵隊は監査の本格準備を始めたのが2006年になってからで、実際に初めて行われた2010年監査では、多くの要改善事項が指摘され不合格となっています
その後海兵隊は、2012年度の限定された範囲の監査に合格したと2013年末に一度は発表しましたが、2015年3月に多くの財務及び監査関係者から結果は信頼性が低く合格判定を取り消すべきとの声が上がり結果が修正され、その後は今回の2023年度監査まで毎年不合格を繰り返しており、国防省や他軍種も同様な連続不合格を続けている状態にありました
海兵隊の財務監査は、Ernst and Young社との第三者監査法人機関によって実施され、財務諸表に記載されている全ての資産を精査し、全ての物品が海兵隊が指定の場所にあることを確認する作業が行われました。
監査チームが米国および世界各地で70か所以上の現場を訪問、土地や建物など7800件以上の不動産資産、軍需装備品5900点、スペア部品等190万個、更に2400万個の弾薬等を、陸軍や海軍保管庫等を借用して保管しているものも含めて調査&照合したとのことです
また、原則として監査は単年度で終了するものですが、あまりにも膨大な不動産や物品をチェックする必要があるため、2023年度だけでは終了させることができなかったようですが、「海兵隊の信頼性を議会や納税者に示すため、海兵隊司令官の目標だった」との米海兵隊の強い要望で期間を延長し、2023年度監査を終了させ、合格を勝ち取ったとのことです
もちろん、合格ながら要改善箇所の指摘もあり、例えば人事システムと財務データシステム間の情報共有には、人為的エラーを防ぐため統合された自動化システムを追求すべき等の助言が監査結果には記載されているようですが、アーンスト・アンド・ヤング社とは別に監査を行った国防省会計監査官のマッコード氏は、
「私は海兵隊、特にエリック・スミス海兵隊司令官のリーダーシップと努力を賞賛したい」、「財務諸表全体に対する最高レベルに厳しい監査に合格した取り組みは、国防省や他軍種の取り組みを促進させるだろう」と率直に高く評価しています
/////////////////////////////////////////////////////
国防省や各軍種に対する財務監査の仕組みが良くわかっていませんが、記事から察すると、国防省や各軍種があまりにも巨大な組織で、監査対象物件や装備が広範囲多数に及ぶことから、法律はおそらく、「国防省や各軍種は、第三者機関である信頼のおける監査法人に、自らの予算で監査を依頼し、健全であることの合格証をゲットして国民に示せ」と要求しているのでしょう
国防省監察官のマッコード氏は「国防省や他軍種の取り組みを促進させるだろう」と毎年同じようなコメントを出していると記事は揶揄していますが、国防省自身は2018年から海兵隊と同様の手法で外部監査法人による監査を受け、2023年11月には6回連続で不合格となっている有様で、襟を正し、反を示す姿勢が求められるでしょう。それにしてもねぇ・・・・、ひどい。
2018年度の国防省への初監査は当然不合格
国防副長官「誰も合格するとは思っていなかった」
外部監査会社から1000名の派遣受け600か所を監査
「2018年史上初の国防省部外監査」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-17
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
ミクロネシア3国と米の協定COFAピンチ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-26
人口20万ながら米本土や日本より広いEEZ対中国に不可欠な米国の独占的軍事アクセスが予算問題で政府間の協定延長交渉は合意も、米議会が予算未承認2月23日付Defense-Newsが、西太平洋で日本より35%も広いEEZ(排他的経済水域)を擁し、現在は米国との自由連合協定(COFA:Compacts of Free Association)により米国から種々の援助を受ける代わりに、米国の独占的な軍事アクセスを許可しているミクロネシア3国(パラオ共和国、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国)とのCOFA協定延長に関し、2024年9月末で完全失効するCOFA協定の米国と3国政府間の延長交渉は、今後20年間に渡り米国が合計約1兆円の支援を3国に行うことで2023年中に合意しているが、その資金を裏付ける法案を米議会が未だ承認しておらず、この間に、3国の内の2か国との現行協定が失効し、2023年末から現在は臨時支出法案により何とかギリギリ資金を捻出している綱渡り状態にあると報じ、このすき間に中国が進出する可能性等を懸念しています。国防省のJedidiah Royalアジア太平洋政策担当次官補代理は、パラオ政府が既に予算不足に陥っており、3か国政府関係者からの「米国は本当にこの地域に留まるつもりがあるのか?」との疑念と戦っていると述べ、2019年に3か国近隣のソロモン諸島が外交承認を台湾から中国に切り替え、後に実質的に中国軍や治安部隊を受け入れる協定を結んだことや、2024年1月に島国ナウルも中国との国交を回復している点を例に懸念を表明していますDefense-News記事は3つの視点で懸念を整理し、●まずはソロモン諸島やナウルの例から明白なように、中国との勢力争い。米国にとって、ミクロネシア3国は、米国領土のグアムと北マリアナ諸島、およびパプアニューギニアや豪州などの米国の同盟国等と近接し、米安全保障や国防関係者にとって不可欠な領域である●朝鮮半島や台湾での不測事態の際、ミクロネシア3国やその近接国は、アクセス確保の点から全ての計画の「大前提」になっている存在で、ミクロネシア3国に関してCOFAで米国は、領土への独占的アクセス権を持ち、米国船舶の領海侵入や、米航空機の領空飛行が可能な状態を確保し、同時に、米国は敵対者、特に中国の同様のアクセスを拒否することが可能となっている●2つ目の懸念は、3か国の島々に現存する米国既存の..
安全保障全般
まんぐーす
2024-03-13T05:00:00+09:00
人口20万ながら米本土や日本より広いEEZ
対中国に不可欠な米国の独占的軍事アクセスが予算問題で
政府間の協定延長交渉は合意も、米議会が予算未承認
2月23日付Defense-Newsが、西太平洋で日本より35%も広いEEZ(排他的経済水域)を擁し、現在は米国との自由連合協定(COFA:Compacts of Free Association)により米国から種々の援助を受ける代わりに、米国の独占的な軍事アクセスを許可しているミクロネシア3国(パラオ共和国、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国)とのCOFA協定延長に関し、
2024年9月末で完全失効するCOFA協定の米国と3国政府間の延長交渉は、今後20年間に渡り米国が合計約1兆円の支援を3国に行うことで2023年中に合意しているが、その資金を裏付ける法案を米議会が未だ承認しておらず、この間に、3国の内の2か国との現行協定が失効し、2023年末から現在は臨時支出法案により何とかギリギリ資金を捻出している綱渡り状態にあると報じ、このすき間に中国が進出する可能性等を懸念しています。
国防省のJedidiah Royalアジア太平洋政策担当次官補代理は、パラオ政府が既に予算不足に陥っており、3か国政府関係者からの「米国は本当にこの地域に留まるつもりがあるのか?」との疑念と戦っていると述べ、2019年に3か国近隣のソロモン諸島が外交承認を台湾から中国に切り替え、後に実質的に中国軍や治安部隊を受け入れる協定を結んだことや、2024年1月に島国ナウルも中国との国交を回復している点を例に懸念を表明しています
Defense-News記事は3つの視点で懸念を整理し、
●まずはソロモン諸島やナウルの例から明白なように、中国との勢力争い。米国にとって、ミクロネシア3国は、米国領土のグアムと北マリアナ諸島、およびパプアニューギニアや豪州などの米国の同盟国等と近接し、米安全保障や国防関係者にとって不可欠な領域である
●朝鮮半島や台湾での不測事態の際、ミクロネシア3国やその近接国は、アクセス確保の点から全ての計画の「大前提」になっている存在で、ミクロネシア3国に関してCOFAで米国は、領土への独占的アクセス権を持ち、米国船舶の領海侵入や、米航空機の領空飛行が可能な状態を確保し、同時に、米国は敵対者、特に中国の同様のアクセスを拒否することが可能となっている
●2つ目の懸念は、3か国の島々に現存する米国既存の軍事施設の存在で、マーシャル諸島の「Ronald Reagan Ballistic Missile Defense Test Site」実験場や、パラオに米国が建設中のレーダー施設がこれに当たる
●仮にこれら施設の移設を迫られた場合の必要経費をRoyal次官補代理を把握していないとしているが、外部専門家には「hundreds of billions of dollars(数十兆円)」と見積もる者もいる
●3つ目は、アジア太平洋地域全体における米国政府への信頼度低下の懸念である。ミクロネシア3国との協定延長が円滑に進んでいない現実をアジア太平洋諸国は目にしており、西太平洋地域での対中国作戦で「分散運用」を掲げ、分散拠点を切望している米軍や米国防省にとっては、他国との交渉上の大きなブレーキとなっている
なぜ米議会は予算承認していないのか?
●COFA協定延長に必要な約1兆円($7 billion)は、2024年度国防授権法案に含まれていたが、米下院指導部が約3400億円($2.3 billion)分は他の国防省予算を削減して拠出するよう要求し、2月の期限までに政府と妥協できず、法案に盛り込めなかった経緯がある
●Royal次官補代理は事の重要性に鑑み、事態打開に向け議会への説明を頻繁に行い「立法に向け24時間体制で取り組んでいる」と説明しており、約50人の下院議員からなる超党派のグループも下院議長に書簡を送り、合意形成に努力するよう要請しているが、合意案作成は2月20日時点では行き詰っている
//////////////////////////////////////////
この分野に関し全く基礎知識が欠落しているので「ググって」見つけたのが、ご紹介している外務省など作成の地域のEEZ地図と、以下にURLをご紹介する「日本財団」のミクロネシア3国解説web記事です。
太平洋戦争時の悲惨な記憶を乗り越え、親日的な国も多いことから、日本国民としても関心を持ち、関係強化に努力したいものです
外務省作成の「太平洋の島々」解説スライド
→https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ps_summit/palm_06/pdfs/map.pdf
「日本財団」の解説web記事
→ ここをクリック
太平洋の島々関連の記事
「中国とソロモン諸島の安保協定案リーク」→https://holylandtokyo.com/2022/04/11/3119/
「日本戦前の南洋諸島進出を学ぶ」→https://holylandtokyo.com/2020/08/14/523/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
緊急衛星打上げの次のステップ「Victus Haze」へ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-24
昨年9月成功の「Victus Nox」計画を終了し2025年打上予定で数週間後に「Victus Haze」契約発表へご認識や誤訳にはご容赦を・・・・2月20日付で米宇宙軍が声明を発表し、対衛星兵器の導入に向け中露が国際規範無視の兵器開発に突き進む中、仮に友軍衛星が被害を受けた際の代替衛星を迅速に補填するための「緊急衛星打ち上げ」能力開発に関し、2023年9月に第1弾「Victus Nox」計画で発射命令から27時間での打ち上げに成功したとご紹介しましたが、宇宙軍が同計画を終了し、第2弾計画「Victus Haze」の企業との契約を数週間後には発表予定だと明らかにしました2月13日に宇宙軍トップのSaltzman大将が、「(Victus Noxで成し遂げた、)衛星やロケットを格納庫から持ち出して、5日目に打ち上げできたことは画期的だったが、地球が秒速30㎞で回転している事を考えれば、5日はまだ長く、5日間で多くのことが起こる可能性があり、私は関係者に何日単位ではなく、時間を縮めて数時間単位に短縮するよう強く求めるつもりだ」と空軍宇宙軍幹部やOB、軍需産業界や専門家の前で宣言しているところです第2弾計画「Victus Haze」の企業選定については、2023年8月中旬に提案要求書類を9月4日回答期限で発行し、その後応募企業からの聞き取りや提出提案の中身を精査してきた模様ですが、その結果を数週間後に発表して2025年の同計画による緊急打ち上げに挑む予定です「Victus Nox」と第2弾「Victus Haze」計画の違いは・・・●(第2弾Hazeから要求追加)衛星準備は、要請から1~1.5年以内に実施。同サイズで異なる任務用装置を搭載する衛星を準備●(第1弾Noxから要求アップ)宇宙軍からの「hot standby態勢」指示で、ロケット提供者と衛星製造企業と地上管制施設(地上施設はHazeで追加)は、まず48時間(Noxでは60時間以内要求で57時間で打上げ)で打ち上げ可能な待機態勢に入る。●(第2弾Hazeから要求追加)続く「alert態勢」指示で、「hot standby態勢」を30日間維持できる態勢に入る●(第1弾Noxと同レベル要求)その後に出される「notice to launch」指示で、24時間以内に打上げ可能な態勢を確立する●(第1弾Noxと同レベル要求)軌道上に到着後48時間以内に任務遂行可能態勢を..
サイバーと宇宙
まんぐーす
2024-03-12T05:00:00+09:00
昨年9月成功の「Victus Nox」計画を終了し
2025年打上予定で数週間後に「Victus Haze」契約発表へ
ご認識や誤訳にはご容赦を・・・・
2月20日付で米宇宙軍が声明を発表し、対衛星兵器の導入に向け中露が国際規範無視の兵器開発に突き進む中、仮に友軍衛星が被害を受けた際の代替衛星を迅速に補填するための「緊急衛星打ち上げ」能力開発に関し、2023年9月に第1弾「Victus Nox」計画で発射命令から27時間での打ち上げに成功したとご紹介しましたが、宇宙軍が同計画を終了し、第2弾計画「Victus Haze」の企業との契約を数週間後には発表予定だと明らかにしました
2月13日に宇宙軍トップのSaltzman大将が、「(Victus Noxで成し遂げた、)衛星やロケットを格納庫から持ち出して、5日目に打ち上げできたことは画期的だったが、地球が秒速30㎞で回転している事を考えれば、5日はまだ長く、5日間で多くのことが起こる可能性があり、私は関係者に何日単位ではなく、時間を縮めて数時間単位に短縮するよう強く求めるつもりだ」と空軍宇宙軍幹部やOB、軍需産業界や専門家の前で宣言しているところです
第2弾計画「Victus Haze」の企業選定については、2023年8月中旬に提案要求書類を9月4日回答期限で発行し、その後応募企業からの聞き取りや提出提案の中身を精査してきた模様ですが、その結果を数週間後に発表して2025年の同計画による緊急打ち上げに挑む予定です
「Victus Nox」と第2弾「Victus Haze」計画の違いは・・ ・
●(第2弾Hazeから要求追加)衛星準備は、要請から1~1.5年以内に実施。同サイズで異なる任務用装置を搭載する衛星を準備
●(第1弾Noxから要求アップ)宇宙軍からの「hot standby態勢」指示で、ロケット提供者と衛星製造企業と地上管制施設(地上施設はHazeで追加)は、まず48時間(Noxでは60時間以内要求で57時間で打上げ)で打ち上げ可能な待機態勢に入る。
●(第2弾Hazeから要求追加)続く「alert態勢」指示で、「hot standby態勢」を30日間維持できる態勢に入る
●(第1弾Noxと同レベル要求)その後に出される「notice to launch」指示で、24時間以内に打上げ可能な態勢を確立する
●(第1弾Noxと同レベル要求)軌道上に到着後48時間以内に任務遂行可能態勢を確立(Noxでは37時間で確立)
●(第2弾Hazeから要求追加)他衛星に接近して当該衛星を査察&分析(rendezvous and proximity operations)する能力要求
●(第2弾Hazeから要求追加)第1弾では2022年9月に2社選定(衛星担当Millennium Space Systemsと打ち上げ担当Firefly Aerospace)したが、Hazeでは一企業として一体的な活動が可能な体制を要求
//////////////////////////////////
宇宙軍トップのSaltzman大将が理想として掲げた「数時間」は、まだ遠い夢物語かもしれませんが、これが衛星緊急打ち上げ技術確立の「現在位置」であることを理解しておきましょう。
第1弾「Victus Nox」と第2弾「Victus Haze」計画に関してや、昨年9月14日の「Victus Nox」計画の打ち上げについては、以下の過去記事でもご紹介していますので、ご興味のある方はご覧ください。小さなことからコツコツやっております
衛星バックアップ用に緊急打ち上げ能力
「第1弾Victus Nox打ち上げ成功」→https://holylandtokyo.com/2023/09/22/5057/
「第2弾Victus Haze計画の企業募集」→https://holylandtokyo.com/2023/08/30/4992/
「2019年頃の検討状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-01
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
米空軍とボーイングがE-7価格交渉で激突
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-23
KC-46とT-7とVC-25で既に1兆円自腹のB社少しだけ豪英版と仕様を変えたい米空軍最優先迅速化事業なのに7か月も交渉停滞か2月20日付米空軍協会web記事が米空軍幹部たちの話から、米空軍が最優先事業として稼働率2-3割とも言われるE-3早期警戒管制機の後継として導入決定したE-7 Wedgetailの価格交渉が、既に固定価格契約KC-46とT-7等のお陰で1兆円自腹支払いさせられているボーイング社の新CEOによる厳しい事業精査方針を受け、米空軍特別仕様部分(non-recurring engineering)の価格設定で当事者間に2倍の開きが双方にあり、契約が進まない状態だと報じましたE-7は既に豪、韓、トルコが導入済で、英も近く受領で、米国の後にNATOも発注した今や国際標準の空飛ぶレーダー&作戦指揮統制機ですが、米空軍幹部が「最終的には、ほとんど英空軍発注仕様の機体と変化ない」と主張しつつ、昨今の中国のサイバー戦力強化や重要航空アセット攻撃能力強化傾向から、「他国機と相互運用性を維持しながら、米空軍独自の仕様も要求」している部分に関し、ボーイング側の開発経費見積もりと空軍の想定がかけ離れている模様ですボーイング社が契約に極めて慎重なのには理由があり、現ボーイングCEOのDavid Calhoun氏が就任した2020年4月以前に、前CEOが無謀な固定価格契約した「KC-46」「T-7練習機」等のコスト超過&自腹支払い分が1兆円($7 billion)に達するデタラメ振りで、Calhoun氏は厳正に契約を精査し、入札には積極性を控えるとたびたび発言しており、2022年4月に米空軍仕様機体の開発&製造契約を結んではいるものの、要求の細部を後で知らされ、その後の交渉に同社が極めて慎重に臨んでいるからだそうです米空軍はE-7を可及的速やかに導入したいと考えており、2027年に初号機を受領し、2032年までに計26機を受け取る計画を持っていますが、いきなり入り口部分で大きな壁にぶつかっており、米空軍首脳も既に豪・韓・トルコで運用開始している機体であるだけに、最後の詰めの甘さに地団太踏んでいるようです本件に関しKendall空軍長官(2月12日)●ボーイング社と価格合意を得るのに苦労している●地上移動目標を衛星や他センサーを総合的に組み合わせて探知追尾する方式が最終到達目標であり、E-7はそこへ向かう途中の「橋渡し役..
米空軍
まんぐーす
2024-03-11T05:00:00+09:00
KC-46とT-7とVC-25で既に1兆円自腹のB社
少しだけ豪英版と仕様を変えたい米空軍
最優先迅速化事業なのに7か月も交渉停滞か
2月20日付米空軍協会web記事が米空軍幹部たちの話から、米空軍が最優先事業として稼働率2-3割とも言われるE-3早期警戒管制機の後継として導入決定したE-7 Wedgetailの価格交渉が、既に固定価格契約KC-46とT-7等のお陰で1兆円自腹支払いさせられているボーイング社の新CEOによる厳しい事業精査方針を受け、米空軍特別仕様部分(non-recurring engineering)の価格設定で当事者間に2倍の開きが双方にあり、契約が進まない状態だと報じました
E-7は既に豪、韓、トルコが導入済で、英も近く受領で、米国の後にNATOも発注した今や国際標準の空飛ぶレーダー&作戦指揮統制機ですが、米空軍幹部が「最終的には、ほとんど英空軍発注仕様の機体と変化ない」と主張しつつ、昨今の中国のサイバー戦力強化や重要航空アセット攻撃能力強化傾向から、「他国機と相互運用性を維持しながら、米空軍独自の仕様も要求」している部分に関し、ボーイング側の開発経費見積もりと空軍の想定がかけ離れている模様です
ボーイング社が契約に極めて慎重なのには理由があり、現ボーイングCEOのDavid Calhoun氏が就任した2020年4月以前に、前CEOが無謀な固定価格契約した「KC-46」「T-7練習機」等のコスト超過&自腹支払い分が1兆円($7 billion)に達するデタラメ振りで、Calhoun氏は厳正に契約を精査し、入札には積極性を控えるとたびたび発言しており、2022年4月に米空軍仕様機体の開発&製造契約を結んではいるものの、要求の細部を後で知らされ、その後の交渉に同社が極めて慎重に臨んでいるからだそうです
米空軍はE-7を可及的速やかに導入したいと考えており、2027年に初号機を受領し、2032年までに計26機を受け取る計画を持っていますが、いきなり入り口部分で大きな壁にぶつかっており、米空軍首脳も既に豪・韓・トルコで運用開始している機体であるだけに、最後の詰めの甘さに地団太踏んでいるようです
本件に関しKendall空軍長官(2月12日)
●ボーイング社と価格合意を得るのに苦労している
●地上移動目標を衛星や他センサーを総合的に組み合わせて探知追尾する方式が最終到達目標であり、E-7はそこへ向かう途中の「橋渡し役」であるが、中国がE-7の様な重要指揮中枢を攻撃する能力(ステルス機や長射程空対空ミサイル)を強化していることから、空軍として戦力は常に見直しながら前進しなければならない
Andrew Hunter調達担当次官補(2月13日)
●ボーイング社は、自分たちが期待される仕事の全範囲を、しっかり理解して検討しなければ入札しない。様々な状況を考えれば、合意内容に慎重になっているのは驚くべきことではない。
●米空軍仕様にE-7を最適化するための非定常的な設計開発部分(non-recurring engineering)に、予想を超えた開発作業が必要だと判断されたことが大きな驚きであった。我々は最終的には英空軍が調達するE-7と非常に極めて近い機体だと考えていたが、ボーイングが予想の2倍の費用を要求してきたことで、交渉が長期化している
●我々は協議を続けており、ボーイング社側の空軍要求の解釈とその具現方法、どの機能が最も重要で、どの部分を後送りできるか等について話し合い、双方の隔たりを埋めて問題を絞り込むことに取り組んでいる。入札プロセスをもう少し早く回転させたい
///////////////////////////////////////////////////////////////
米空軍が2023年2月末にボーイング社と米軍仕様E-7開発契約を約1800億円で結んだ際は、青息吐息のE-3の稼働率が4割以下に落ち込んでいるとご紹介しましたが、今現在は5機のうち1機しか稼働状態にない惨状とのことです
しかしボーイング社は、民航機分野でも墜落事故から復調の兆しがみられると思っていたら、別の機体のドアが吹っ飛んだりして大混乱ですが、会社として大丈夫なんでしょうか? 現CEOには頑張って頂きたいと思います
米軍とE-7導入関連の記事
「今後の能力向上を米英豪共同で」→https://holylandtokyo.com/2023/07/21/4871/
「E-7とE-3違いを概観」→https://holylandtokyo.com/2023/03/30/4447/
「初号機を2027年納入契約」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/4358/
「導入を正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「E-3は2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/
「後継機検討のRFI」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711
「米空軍航空機は高齢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-27
「NATOもE-7」→https://holylandtokyo.com/2023/11/21/5262/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
突然グアムで実弾ARRW極超音速兵器使用の講習会
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-03-06
緊急追加情報! 中国に見せつけるARRW発射試験https://www.airandspaceforces.com/air-force-test-arrw-hypersonic-missile-pacific/米空軍がARRW発射試験情報(航行危険情報)を公示3月5日から3月10日の間に実施予定とマーシャル諸島クェゼリン環礁(Kwajalein Atoll)試験場でグアム基地の2500マイル南東から射程2100マイルで最終試験を西太平洋で実施し、HW探知追尾能力も検証か////////////////////////////////////////////////23年3月に装備化断念発表のARRWをなぜ最前線基地に?極超音速兵器全体の基礎を学ぶ講習会と説明も突然のB-52HとARRWと受講者写真公開に波紋広がる2月28日付米空軍WEB サイトが、アンダーセン基地(グアム島) 広報が配信した同基地で開催の「極超音速兵器講習会:Hypersonic Weapon Familiarization Training」の様子を、10枚の講習模様写真と短い説明文で掲載しましたが、米本土の開発基地から「門外不出」だった当該兵器が、いきなり最前線基地グアムに現れ、しかもそれが実弾で B-52H爆撃機に搭載されていたことで、軍事メディア や専門家らが大騒ぎとなっています まず基礎情報として、米空軍の極超音速兵器(以後は HW と表記)開発は・・・(なお米軍と米海軍は、共通部分が多い地上発射型と艦艇発射型を共同開発中で、隆軍は2023年に最終試験を行ってワシントン州の部隊で実配備開始予定だったが、2024 年に最終試験がずれ込み 遅延中。海軍の進払と合わせ、細部は末尾の過去記事等を参照) ●Kendall空軍長官は、中国はA2AD 戦路で米軍を遠ざけたいからHW を重視するが、米国は中国の高価値目標攻撃用(地上 C2 施設等)の一つの選択肢として保有し、、それは中国抑止のためだから、空軍内の優先度や重要性はそれほど大きくないと位置づけ ●爆撃機搭載の ARRW(Air-Launched Rapid-Response Weapon) ・ロッキード開発のブースト&グライド方式で、短射程 ・当初開発不調で2回試験に失敗も、2022年 12月に初成功後、2023年8月と10月にも成功・しかし2023年3月末、Kendall 長官とHun..
米空軍
まんぐーす
2024-03-08T05:00:00+09:00
緊急追加情報! 中国に見せつけるARRW発射試験
https://www.airandspaceforces.com/air-force-test-arrw-hypersonic-missile-pacific/
米空軍がARRW発射試験情報(航行危険情報)を公示
3月5日から3月10日の間に実施予定と
マーシャル諸島クェゼリン環礁(Kwajalein Atoll)試験場で
グアム基地の2500マイル南東から射程2100マイルで
最終試験を西太平洋で実施し、HW探知追尾能力も検証か
////////////////////////////////////////////////
23年3月に装備化断念発表のARRWをなぜ最前線基地に?
極超音速兵器全体の基礎を学ぶ講習会と説明も
突然のB-52HとARRWと受講者写真公開に波紋広がる
2月28日付米空軍WEB サイトが、アンダーセン基地(グアム島) 広報が配信した同基地で開催の「極超音速兵器講習会:Hypersonic Weapon Familiarization Training」の様子を、10枚の講習模様写真と短い説明文で掲載しましたが、米本土の開発基地から「門外不出」だった当該兵器が、いきなり最前線基地グアムに現れ、しかもそれが実弾で B-52H爆撃機に搭載されていたことで、軍事メディア や専門家らが大騒ぎとなっています
まず基礎情報として、米空軍の極超音速兵器(以後は HW と表記)開発は・・・
(なお米軍と米海軍は、共通部分が多い地上発射型と艦艇発射型を共同開発中で、隆軍は2023年に最終試験を行ってワシントン州の部隊で実配備開始予定だったが、2024 年に最終試験がずれ込み 遅延中。海軍の進払と合わせ、細部は末尾の過去記事等を参照)
●Kendall空軍長官は、中国はA2AD 戦路で米軍を遠ざけたいからHW を重視するが、米国は中国の高価値目標攻撃用(地上 C2 施設等)の一つの選択肢として保有し、、それは中国抑止のためだから、空軍内の優先度や重要性はそれほど大きくないと位置づけ
●爆撃機搭載の ARRW(Air-Launched Rapid-Response Weapon)
・ロッキード開発のブースト&グライド方式で、短射程
・当初開発不調で2回試験に失敗も、2022年 12月に初成功後、2023年8月と10月にも成功
・しかし2023年3月末、Kendall 長官とHunter 調達次官補が、ARRW は開発までで、調達はせず、HACM に注力と発言 (ただ2024年に地上目標攻撃を含めた ARRW 最終試験を実施し、データ等取りまとめ、後の開発案 件の資として残す)
・調達なし決定に際し Hunter 次官補は、「我々には計画があるが、公開の場では話せない」とのみ言及。2024年3月中旬議会提出の2025年度予算案には何らかの方向性が出る模様
●戦闘機タイプに搭載の HACM (Hypersonic Attack Cruise Missile)
・小型だがスクラム Jet エンジン等を搭載し長射程
・レイセオン主契約でエンジンはNG社
・2021年9月に3度目の正直で基礎試験に成功し、2022年 11月末にレイセオン社とプロトタイプ 開発契約を約180億円で締結
以上のような経緯の ARRWが、最前線グアムに突然登場でしかも実弾ということで、例えば3月4日付米空軍協会は驚きを表現し・・・・
●過去の ARRW 開発試験はすべて加州エドワーズ空軍基地離発着で行われ、他の基地への展開など なかった開発中の兵器 ARRW が、対中国最前線のグアム島基地に突然現れ、、しかもそれが実弾を示す黄色いテープを巻かれている
●更にいきなりグアムで「極超音速兵器講習会:Hypersonic Weapon Familiarization Training」が開催&紹介され、約25名の兵士(第23爆撃飛行隊と第49 試験評価隊の兵士)が参加
●本講習の目的を空軍 web 記事は、「複数の航空機コミュニティーにHW(ARRW だけでなく、HACM や他のタイプも含め)の基礎知識を教育」、「HW 使用に関する討議を通じ作戦運用を考察」、「HWの兵站支援全般を理解」することと紹介。
●なぜ突然「HW 講習会」? 調達&部隊配備しない ARRW でなぜ? なぜグアムで? なぜ実弾を? なぜこの配信をアンダーセン基地広報が? この後に試験発射を周辺で実施?・・・などなど、様々な疑問が飛び交う状況も、空軍からは一切追加情報なし
●B-52H には4発 ARRW が搭載可能だが、写真では1発しか確認できない。1発だけグアムへ?
●ちなみにARRWは、300発調達を前提とすると、1発あたり 22?26億円と推計され、隆海軍の地 上や艦艇発射用はその約3倍と言われている
/////////////////////////////////////////////////////
ちなみに3月4日付米空軍協会 web 記事は、中国のHW である DF-17は「米海軍空母キラー」とか「グアムキラー」と呼ばれており、弾道ミサイルの先端に取り付けて射程延伸のオプションもあると 紹介しています
中国の不動産バブル崩壊やゼロコロナ政策に端を発する「中国経済崩壊」がますます顕在化する中、米軍も腰を据えて中国恫喝体制に入ったのでしょうか???
アンダーセン基地広報の写真10枚付き発表
→https://www.andersen.af.mil/News/Features/Article/3690368/andersen-afb-hosts-hypersonic-weapon-familiarization-training/
米軍の極超音速兵器開発
「米陸軍の最終テスト&配備は24年に持ち越し」→https://holylandtokyo.com/2023/11/15/5224/
「ウで次々撃墜:同兵器を過信するな」→https://holylandtokyo.com/2023/06/01/4695/
「空軍がARRW配備断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「Zumwaltへの極超音速兵器契約」→https://holylandtokyo.com/2023/02/22/4313/
「バカ高い極超音速兵器」→https://holylandtokyo.com/2023/02/08/4261/
「陸軍はあと2回試験」→https://holylandtokyo.com/2023/01/17/4107/
「3回連続ARRW試験に成功」→https://holylandtokyo.com/2022/12/16/4061/
「高価な兵器は少数保有で」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「空軍長官:重要性は中国と米国では異なる」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
「潜水艦へは2028年」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-19
迎撃兵器システム開発関連
「迎撃兵器を日米共同開発で」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
一味違う新戦闘機族のボスACC司令官誕生
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-03-03-1
ペンタゴン経験なきACC司令官に太平洋空軍司令官がACE構想生みの親であるWilsbach大将が就任前任Kelly大将より年上の司令官誕生の異例人事2月29日、米空軍最大の正規兵人員規模(約8万名)と戦闘アセットを保有する米空軍戦闘コマンドACCの新司令官に、直近約3年間を太平洋空軍司令官として勤務し、かつ米空軍勤務の85%の期間を太平洋軍部隊(嘉手納、アラスカ、ハワイ、韓国以外は、中東3年、米本土3.5年のみ)で過ごし、驚くことにペンタゴンでの勤務経験皆無の異例の大将で、それでいて今や米空軍の中核作戦コンセプトであるACE(Agile Combat Employment)構想の生みの親でもあるKenneth S. Wilsbach大将が就任しました冒頭でご紹介したように、2020年8月から約3年半ACC司令官を務めた前任のKelly大将より、1歳年上のWilsbach大将が新司令官に就任するとの軍隊制服高官では極めて異例の「年齢逆転」人事ですが、背景には米空軍勤務期間の大半をアジア太平洋軍戦域で過ごした対中国専門家で、「ACE構想の提唱者でけん引役」で、更にペンタゴン勤務が無い事を逆手に取った「型にはまらない改革への推進力」を持つ同大将への期待の表れと、まんぐーすは解釈しております3月1日付米空軍協会web記事は太平洋空軍司令官として功績を●長い太平洋軍勤務で着想したACE構想を太平洋空軍に普及し、その着想は全米軍の基本作戦運用指針として採用された●ACE構想に基づき、第5世代戦闘機を分散運用先候補でもあるマリアナ諸島テニアン島や、政治情勢の変化を見据えたフィリピンに機を見て初展開させた●地域の中心的同盟国である日本と韓国に大型爆撃機を展開して日韓戦闘機との共同訓練を実施する等、米日韓3か国の同盟関係が強固で緊密なことを中国や北朝鮮等に示した記事が挙げたWilsbach新司令官が取り組む事業●前線戦闘機部隊をF-35部隊への換装推進●F-15EXの前線部隊での運用方針を固め展開態勢を確立すること●A-10とF-22の段階的退役を円滑に進める事●全世界で1000機導入を仮置きしているCCA(Collaborative Combat Aircraft)の開発を支援し、部隊導入&運用に向けてコンセプト固めと受け入れ諸準備を推進すること2月29日の司令官交代式でWilsbach新司令官は・・・●台湾の人々は現状に相当程..
米空軍
まんぐーす
2024-03-07T05:00:00+09:00
ペンタゴン経験なきACC司令官に太平洋空軍司令官が
ACE構想生みの親であるWilsbach大将が就任
前任Kelly大将より年上の司令官誕生の異例人事
2月29日、米空軍最大の正規兵人員規模(約8万名)と戦闘アセットを保有する米空軍戦闘コマンドACCの新司令官に、直近約3年間を太平洋空軍司令官として勤務し、かつ米空軍勤務の85%の期間を太平洋軍部隊(嘉手納、アラスカ、ハワイ、韓国以外は、中東3年、米本土3.5年のみ)で過ごし、驚くことにペンタゴンでの勤務経験皆無の異例の大将で、それでいて今や米空軍の中核作戦コンセプトであるACE(Agile Combat Employment)構想の生みの親でもあるKenneth S. Wilsbach大将が就任しました
冒頭でご紹介したように、2020年8月から約3年半ACC司令官を務めた前任のKelly大将より、1歳年上のWilsbach大将が新司令官に就任するとの軍隊制服高官では極めて異例の「年齢逆転」人事ですが、背景には米空軍勤務期間の大半をアジア太平洋軍戦域で過ごした対中国専門家で、「ACE構想の提唱者でけん引役」で、更にペンタゴン勤務が無い事を逆手に取った「型にはまらない改革への推進力」を持つ同大将への期待の表れと、まんぐーすは解釈しております
3月1日付米空軍協会web記事は太平洋空軍司令官として功績を
●長い太平洋軍勤務で着想したACE構想を太平洋空軍に普及し、その着想は全米軍の基本作戦運用指針として採用された
●ACE構想に基づき、第5世代戦闘機を分散運用先候補でもあるマリアナ諸島テニアン島や、政治情勢の変化を見据えたフィリピンに機を見て初展開させた
●地域の中心的同盟国である日本と韓国に大型爆撃機を展開して日韓戦闘機との共同訓練を実施する等、米日韓3か国の同盟関係が強固で緊密なことを中国や北朝鮮等に示した
記事が挙げたWilsbach新司令官が取り組む事業
●前線戦闘機部隊をF-35部隊への換装推進
●F-15EXの前線部隊での運用方針を固め展開態勢を確立すること
●A-10とF-22の段階的退役を円滑に進める事
●全世界で1000機導入を仮置きしているCCA(Collaborative Combat Aircraft)の開発を支援し、部隊導入&運用に向けてコンセプト固めと受け入れ諸準備を推進すること
2月29日の司令官交代式でWilsbach新司令官は・・・
●台湾の人々は現状に相当程度満足しているにもかかわらず、中国はその台湾に対する(台湾国民の思いに反する方向性を持つ)意図や姿勢を極めて明確に示し続けている。我が空軍の任務は、地域の紛争を抑止し、その安定を守ることである
●我々は中国に(作戦遂行上の)ジレンマを与えるべく取り組んでいる。空軍戦闘コマンドACCとして、どのようにジレンマを与えるか? まず第一に我の即応態勢を確立維持すること、次に戦力の近代化に取り組み、そしてそれら戦力をACE構想にも続き運用可能に鍛えることである。これら全てに前司令官のKelly大将は注力してこられたが、我々はその思いを継ぎ、全ての関係能力の拡大実現に向け前進していく
更に同司令官が就任式典で強調したのは
●ACC戦力発揮の中核は「米空軍の下士官」であり、その任務遂行を基礎で支える「必要なもの」を確保し、彼らが成すべきことを遂行できるように注力していく。(家族の住居や生活環境や子弟教育環境など広範にわたる勤務環境の整備や、給与や手当や引っ越し費用等の金銭面での処遇改善を示すものと思料)
//////////////////////////////////
Allvin空軍参謀総長はACCへの期待を2月中旬に、「我々は大国との紛争に備え、再・最適化を目指している」、「その再・最適化の多くの鍵となる項目がACCに根差したものであり、ACCが実現した形を全米空軍に普及して行きたい」と、米空軍大改革を進めるにあたってのACCへの大きな期待を語っていたところです
前提となる2月12日発表の空軍大改革方針発表
→https://holylandtokyo.com/2024/02/16/5579/
Kenneth Wilsbach大将の公式経歴表
→ https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/108478/kenneth-s-wilsbach/
Wilsbach大将関連
「ACE運用態勢にはない」→https://holylandtokyo.com/2023/09/19/5048/
「経歴紹介:次期ACC司令官候補に」→https://holylandtokyo.com/2023/05/11/4614/
「ACE構想の生みの親が語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「欧州米空軍がACE演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「F-35とF-16が不整地離着陸」→https://holylandtokyo.com/2021/01/29/310/
「若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
数か月後にCCA第1次募集企業を2-3社に絞る
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-16-1
米空軍無人ウイングマン計画が第1次募集佳境に更に第2次募集も予定しソフト&アイディア勝負か2-3年後の量産体制入りを狙い様々なタイプを模索中2月13日、Kendall空軍長官がAFA Warfare Symposiumでの記者懇談会で、現在進めている無人ウイングマン機CCA(collaborative combat aircraft)の第1次募集審査で比較検討中の5社の提案について、数か月後には2-3社(予算上の制約で2社になる可能性が高い)に絞り込むと明らかにし、更に2025予算年度での有人機との連携飛行運用開始に向けた第2次募集も予定しており、第1次募集が機体のハードウェア議論が中心だったのに対し、機体ハード比較検討中心からCCA自立飛行を左右する極めて重要で難しい分野であるソフトウェアも含めた新たな提案募集も開始する予定で、そこには「最も緊密で最も戦略的な複数の同盟国:closest and most strategic international partners」も加わるだろうと語りました同空軍長官はまた、CCA開発は5か年計画でまとめ上げる「緊急性:sense of urgency」を持ったプロジェクトで、遅れて参加を募る第2次募集企業と契約を結ぶ際には、作戦運用コンセプトと初期設計を含めた相当に煮詰まった契約となる予定だ、とも語っていますそして米空軍としてCCA量産に今後は焦点を向ける予定で、今後2-3年で更に関係企業を絞り込み、最終的にいくつの企業が本格生産に入るか未定だが、少なくとも2社体制は確保したいとの考えも示しました第1次募集審査で比較検討中の5社には、Lockheed Martin, Boeing, Northrop Grumman, General AtomicsとAnduril社が含まれており、米空軍は約1000機を調達するアバウトな想定を提示し、複数の能力や生存性が異なるタイプのCCAデモ機を作成し、攻撃・偵察・電磁波妨害・デコイなど多様な任務遂行の可能性を試したい意向を持っており、同Symposiumの別の場でHunter空軍調達担当次官補は、空軍戦闘コマンドACCのみならず、幅広い分野の産業界から多数の提案やアイディアなどのフィードバックを受けていると語っており、また第1次募集で5社に入れなかった複数の企業が、更にアイディアを具体的に煮詰め、ある意味でハードよりCCA運用には重..
米空軍
まんぐーす
2024-03-06T05:00:00+09:00
米空軍無人ウイングマン計画が第1次募集佳境に
更に第2次募集も予定しソフト&アイディア勝負か
2-3年後の量産体制入りを狙い様々なタイプを模索中
2月13日、Kendall空軍長官がAFA Warfare Symposiumでの記者懇談会で、現在進めている無人ウイングマン機CCA(collaborative combat aircraft)の第1次募集審査で比較検討中の5社の提案について、数か月後には2-3社(予算上の制約で2社になる可能性が高い)に絞り込むと明らかにし、
更に2025予算年度での有人機との連携飛行運用開始に向けた第2次募集も予定しており、第1次募集が機体のハードウェア議論が中心だったのに対し、機体ハード比較検討中心からCCA自立飛行を左右する極めて重要で難しい分野であるソフトウェアも含めた新たな提案募集も開始する予定で、そこには「最も緊密で最も戦略的な複数の同盟国:closest and most strategic international partners」も加わるだろうと語りました
同空軍長官はまた、CCA開発は5か年計画でまとめ上げる「緊急性:sense of urgency」を持ったプロジェクトで、遅れて参加を募る第2次募集企業と契約を結ぶ際には、作戦運用コンセプトと初期設計を含めた相当に煮詰まった契約となる予定だ、とも語っています
そして米空軍としてCCA量産に今後は焦点を向ける予定で、今後2-3年で更に関係企業を絞り込み、最終的にいくつの企業が本格生産に入るか未定だが、少なくとも2社体制は確保したいとの考えも示しました
第1次募集審査で比較検討中の5社には、Lockheed Martin, Boeing, Northrop Grumman, General AtomicsとAnduril社が含まれており、米空軍は約1000機を調達するアバウトな想定を提示し、複数の能力や生存性が異なるタイプのCCAデモ機を作成し、攻撃・偵察・電磁波妨害・デコイなど多様な任務遂行の可能性を試したい意向を持っており、
同Symposiumの別の場でHunter空軍調達担当次官補は、空軍戦闘コマンドACCのみならず、幅広い分野の産業界から多数の提案やアイディアなどのフィードバックを受けていると語っており、また第1次募集で5社に入れなかった複数の企業が、更にアイディアを具体的に煮詰め、ある意味でハードよりCCA運用には重要な自律的運用ソフトを「売り」にして応募準備をしていると活発な開発状況を示唆しています
そして同次官補は、第1次募集企業提案でも有用な自立化運用可能なデモ機が完成するだろうが、その先にはより高度に進化したCCA提案機が新たなソフトと共に登場することが予期されるとも語っています
//////////////////////////////////////
AFA Warfare Symposiumは、現役空軍幹部やOB、軍需産業関係者や専門家が一堂に関して「夢やビジョン」を語る場ですので、ステージ上の演出やスライド表示もそれにふさわしい華やかなものになっており、そこで語られる内容も「問題点や課題」よりも、それを乗り越えた先にある「夢」中心になります
CCAに関しては、対中国正面である西太平洋の、どこに展開して、誰がどのように維持整備し、誰がどのようにコントロールして運用するのか・・・との大問題が残っていますので、その辺りを念頭に置きつつ、生暖かく引き続き見守っていきたいと思います
CCA関連の記事
「CCAに空中受油能力搭載か」→https://holylandtokyo.com/2023/12/04/5255/
「あと6年で実用化する試験準備」→https://holylandtokyo.com/2023/11/08/5153/
「AIアルゴリズム集大成試験」→https://holylandtokyo.com/2023/08/08/4922/
「2020年代後半導入へ」→ https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「長官:NGAD 200機、CCA 1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
「関連技術を23年から本格開発へ」→ https://holylandtokyo.com/2022/11/22/3948/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
中国国営軍需産業が初の軍用機国外ショー展示
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-21
経済崩壊下、なりふり構わず資金調達かAH64アパッチに似た輸出用国産戦闘ヘリZ-10展示シンガポール航空ショーで会見も説明会もなく2月20日付Defense-Newsが、20日から25日にかけ開催のシンガポール航空ショーで、中国国営航空産業であるCATIC(中航技進出口有限責任公司:China National Aero-Technology Import & Export Corp)が、初めて中国外で軍用機の展示を行い、インタビュー対応も製品説明会もない「生煮え状態」で戦闘ヘリZ-10の輸出版(Changhe Z-10-ME-02)を会場に持ち込んでいると報じています西側専門家はZ-10戦闘ヘリを「中国版AH-64アパッチ」と呼んでおり、IISSのミリバラ2023年版によると、中国軍は昌河飛機工業公司(Changhe Aircraft Industries)製の様々なバージョンの同ヘリを約200機導入し、最近は台湾周辺での威嚇演習やインドとの共同訓練で使用して対外露出を増やしているとのことですなお、隔年開催のシンガポール航空ショー公式説明資料によれば、同ヘリは兵器として空対空ミサイル(CM-502KG and TY-9)、空対地ミサイル、対地ロケット発射機(GR5 guided rockets用)、23mm高性能焼夷弾を搭載可能で、前方監視レーダー、ミサイル警報装置、赤外線ミサイル回避装置を装備し、250㎏のドロップ燃料タンクが使用可能とのことです中国外への同ヘリ輸出実績としては、2022年にパキスタンへの機数不明の輸出契約を結び、パキスタンは既に2023年から機体の受領を開始しているとのことです。なおパキスタンはトルコとのT129攻撃ヘリ購入契約を破棄して中国産Z-10MEに乗り換えたとのことで、トルコとパキスタン間で揉めているようですまた、今年のシンガポール航空ショーでは、中国が初めて民間用旅客機C919を持ち込んで売込みを行っていることが大きな話題となっており、下にご紹介するシンガポール地元TVニュースでも同航空ショーでの一番の話題として紹介しています。ただTVニュースで西側専門家が解説しているように、C919旅客機は中国以外での飛行承認を未取得で、C919を海外で運行するに必要な維持整備体制構築にも取り掛かったばかりの模様で、海外航空会社が関心を示す様な材料には乏しいようです(会場では、チベット航空とC..
中国要人・軍事
まんぐーす
2024-03-05T05:00:00+09:00
経済崩壊下、なりふり構わず資金調達か
AH64アパッチに似た輸出用国産戦闘ヘリZ-10展示
シンガポール航空ショーで会見も説明会もなく
2月20日付Defense-Newsが、20日から25日にかけ開催のシンガポール航空ショーで、中国国営航空産業であるCATIC(中航技進出口有限責任公司:China National Aero-Technology Import & Export Corp)が、初めて中国外で軍用機の展示を行い、インタビュー対応も製品説明会もない「生煮え状態」で戦闘ヘリZ-10の輸出版(Changhe Z-10-ME-02)を会場に持ち込んでいると報じています
西側専門家はZ-10戦闘ヘリを「中国版AH-64アパッチ」と呼んでおり、IISSのミリバラ2023年版によると、中国軍は昌河飛機工業公司(Changhe Aircraft Industries)製の様々なバージョンの同ヘリを約200機導入し、最近は台湾周辺での威嚇演習やインドとの共同訓練で使用して対外露出を増やしているとのことです
なお、隔年開催のシンガポール航空ショー公式説明資料によれば、同ヘリは兵器として空対空ミサイル(CM-502KG and TY-9)、空対地ミサイル、対地ロケット発射機(GR5 guided rockets用)、23mm高性能焼夷弾を搭載可能で、前方監視レーダー、ミサイル警報装置、赤外線ミサイル回避装置を装備し、250㎏のドロップ燃料タンクが使用可能とのことです
中国外への同ヘリ輸出実績としては、2022年にパキスタンへの機数不明の輸出契約を結び、パキスタンは既に2023年から機体の受領を開始しているとのことです。なおパキスタンはトルコとのT129攻撃ヘリ購入契約を破棄して中国産Z-10MEに乗り換えたとのことで、トルコとパキスタン間で揉めているようです
また、今年のシンガポール航空ショーでは、中国が初めて民間用旅客機C919を持ち込んで売込みを行っていることが大きな話題となっており、下にご紹介するシンガポール地元TVニュースでも同航空ショーでの一番の話題として紹介しています。
ただTVニュースで西側専門家が解説しているように、C919旅客機は中国以外での飛行承認を未取得で、C919を海外で運行するに必要な維持整備体制構築にも取り掛かったばかりの模様で、海外航空会社が関心を示す様な材料には乏しいようです(会場では、チベット航空とCATIC間で40機購入の契約書署名式が披露された様ですが・・・)
///////////////////////////////////////
中国不動産バブル崩壊が、政府や地方政府の財政破綻に飛び火し、更には金融危機に波及しつつあり、海外資本が猛烈な勢いで中国から逃避して中国経済完全崩壊へまっしぐらな中、中国企業のみならず、中国公務員や警察官や軍人への給与支払いまで滞っているとの情報が、各方面の多数なニュースソースから漏れ聞こえてくる今日この頃です
勝手な邪推ですが、なんとなく準備不十分なままに見え、シンガポール航空ショーへの「初めて」の中国製旅客機出展や、国営軍需産業による「初めて」の軍用機展示など、中国政府による他の経済政策でも見られる「場当たり的」な対策が、中国製武器輸出でも見られるようになってきた・・・と解釈しております
中国による初の民航機C919売込みも話題
まだ中国以外の飛行承認がないのに・・ ・
中国外でのメンテ体制構築もこれからなのに・・・
地元TVの航空ショー紹介ニュース(約4分:Z-10紹介なし)
VIDEO
中国製部品や中国製兵器の関連記事
「要注意な中露団体&研究機関リスト公開」→https://holylandtokyo.com/2023/07/07/4832/
「外国製ドローン購入規制」→https://holylandtokyo.com/2021/09/21/2240/
「軍需産業との情報共有に乗り出す」→https://holylandtokyo.com/2021/01/18/300/
「中国製部品排除に時間的猶予を」→https://holylandtokyo.com/2020/08/15/524/
「MTCR縛りの中、中国製が拡散」→https://holylandtokyo.com/2020/06/16/624/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
海自がMQ-9Bを東シナ海で試験運用実施へ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-19
製造企業によるCo-Co方式試験運用中の機体で対潜哨戒機P-1やP-3Cの代替活用を目指して海保や米空軍MQ-9の話題もご紹介2月16日、木原防衛相が定例会見で、2023年5月から今年9月までの予定で海上自衛隊が青森県八戸基地で試験運用している1機の無人偵察機MQ-9B(Sea Guardian:米空軍が運用するMQ-9無人偵察攻撃機を、海洋監視用に改良した無人偵察機)について、今年7月から9月にかけ東シナ海での警戒監視飛行試験を3回計画していると明らかにしましたなお同機の東シナ海での試験は7~9月ですが、4月から事前に八戸から鹿児島県鹿屋基地に展開訓練等を行い、7月以降の本格展開訓練に向けた準備を行うとのことです海上自衛隊は、有人機である対潜哨戒機P-1やP-3Cの任務代替に、将来MQ-9Bを活用できないかを確認するため、2023年5月からCo-Co方式(Company Owned Company Operated:民間企業General Atomics 社が保有する機体を同社が運航する海自初の方式)で試験運用しており、2024年9月までに2000時間の試験飛行を予定しているところですあくまでCo-Co方式での「お試し使用」ですが、海自側が要求した飛行ルートを週2回ペース(1回に6~24時間連続飛行)で飛行し、飛行間に入手した各種センサー情報(センサーはRaytheon製:可視光&赤外線カメラ、海洋監視レーダー等)を海自側で確認して性能評価を行っているとのことですこれを契機に日本とかかわりのあるMQ-9運用についてご紹介すると、鹿屋基地では、2022年11月から「米空軍」のMQ-9部隊(8機で展開)が1年間の期間限定で配備され、東シナ海等を中心とした警戒監視飛行を行っていましたが、2023年10月13日に任務終了&移転式を行い、同年11月から(戦闘機F-15Cが帰国しつつある)沖縄の嘉手納基地で運用を開始していますもう一つMQ-9B関連でご紹介すると、海上自衛隊に先立ち、海上保安庁が2機のMQ-9Bを2022年10月に同じ八戸基地に導入し、Coast Guard任務に本格活動を既に開始しています。現在八戸基地内に設置されたMQ-9B運用管制センターであるSGOP(Sea Guardian Operation Center)は、海保用と海自用に区分されていますが、同じ建物内でGA社の操縦スタッフと海保と海自の運用..
Joint・統合参謀本部
まんぐーす
2024-03-04T05:00:00+09:00
製造企業によるCo-Co方式試験運用中の機体で
対潜哨戒機P-1やP-3Cの代替活用を目指して
海保や米空軍MQ-9の話題もご紹介
2月16日、木原防衛相が定例会見で、2023年5月から今年9月までの予定で海上自衛隊が青森県八戸基地で試験運用している1機の無人偵察機MQ-9B(Sea Guardian:米空軍が運用するMQ-9無人偵察攻撃機を、海洋監視用に改良した無人偵察機)について、今年7月から9月にかけ東シナ海での警戒監視飛行試験を3回計画していると明らかにしました
なお同機の東シナ海での試験は7~9月ですが、4月から事前に八戸から鹿児島県鹿屋基地に展開訓練等を行い、7月以降の本格展開訓練に向けた準備を行うとのことです
海上自衛隊は、有人機である対潜哨戒機P-1やP-3Cの任務代替に、将来MQ-9Bを活用できないかを確認するため、2023年5月からCo-Co方式(Company Owned Company Operated:民間企業General Atomics 社が保有する機体を同社が運航する海自初の方式)で試験運用しており、2024年9月までに2000時間の試験飛行を予定しているところです
あくまでCo-Co方式での「お試し使用」ですが、海自側が要求した飛行ルートを週2回ペース(1回に6~24時間連続飛行)で飛行し、飛行間に入手した各種センサー情報(センサーはRaytheon製:可視光&赤外線カメラ、海洋監視レーダー等)を海自側で確認して性能評価を行っているとのことです
これを契機に日本とかかわりのあるMQ-9運用についてご紹介すると、鹿屋基地では、2022年11月から「米空軍」のMQ-9部隊(8機で展開)が1年間の期間限定で配備され、東シナ海等を中心とした警戒監視飛行を行っていましたが、2023年10月13日に任務終了&移転式を行い、同年11月から(戦闘機F-15Cが帰国しつつある)沖縄の嘉手納基地で運用を開始しています
もう一つMQ-9B関連でご紹介すると、海上自衛隊に先立ち、海上保安庁が2機のMQ-9Bを2022年10月に同じ八戸基地に導入し、Coast Guard任務に本格活動を既に開始しています。現在八戸基地内に設置されたMQ-9B運用管制センターであるSGOP(Sea Guardian Operation Center)は、海保用と海自用に区分されていますが、同じ建物内でGA社の操縦スタッフと海保と海自の運用統制&センサーモニター要員が同機の運航を行っているとのことです
/////////////////////////////////////////////
MQ-9は、元々米空軍が中東での対テロ作戦を念頭に330機以上を導入し、偵察と攻撃任務に大活躍した機体ですが、対テロ作戦への米軍関与の低下と本格紛争では使用しにくいMQ-9の脆弱性もあり、現在は280機ほどに保有数が減少していますが、何とか対中国作戦にも通信中継や特殊作戦用で活用できないか模索が続いているところです
海洋監視用に改修されたMQ-9Bは、空軍用MQ-9とは異なり海上低空飛行が増えることから、海面監視センサー搭載の他、航空機の衝突防止装置の強化、機体表面への氷付着防止装置や塩害防止措置強化等の改善が施されており、豪州軍にも12機輸出されていると思います
それにしても、MQ-9B試験の目的を「有人機である対潜哨戒機P-1やP-3Cの任務代替に将来MQ-9Bを活用できないかを確認し、哨戒機の機数や関連人員の削減が可能か検討するため」と、明確に打ち出している海上自衛隊は偉いです!
ついでに水上艦艇部隊にもその発想を横展開して頂き、更に航空自衛隊の戦闘機部隊にも教えてあげて頂きたいと思います。
米空軍MQ-9関連の記事
「小型ドローン射出しNet構成試験へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/26/5061/
「鹿屋に部隊編成とMQ-9の将来」→https://holylandtokyo.com/2022/10/27/3811/
「2022年秋に日本に配備!?」→https://holylandtokyo.com/2022/08/08/3538/
「一般公道で離発着訓練」→https://holylandtokyo.com/2022/07/12/3426/
「4大研究機関が継続活用要望」→https://holylandtokyo.com/2021/11/29/2464/
「2回目の対中国応用演習」→https://holylandtokyo.com/2021/05/01/211/
「本格紛争用に約1/4を改修&延命へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/28/118/
「JDAM完成弾運搬役も」→https://holylandtokyo.com/2021/03/09/156/
「無人機MQ-9の対中国海上作戦への応用演習」→https://holylandtokyo.com/2020/10/02/424/
MQ-9Bについて
「豪州へ12機輸出承認」→https://holylandtokyo.com/2021/04/29/119/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
次期ICBM事業のコスト超過対策は空軍では無理
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-16
米空軍の年間予算に匹敵する5兆円超過核抑止3本柱の2本を空軍予算で賄う不条理主張か超過大半はサイロ・指揮所・通信インフラ施設建設費2月13日付米空軍協会web記事は、1月に米空軍が議会に通知して明らかになった、MinutemanⅢシステムの後継となる次期ICBM計画(Sentinel ICBM導入計画:GBSD計画とも)の37%予算超過と開発期間の最低2年延長見積もりに関し、米空軍協会Warfare Symposiumに参加した米空軍幹部の発言等から対応策検討の現状を報じていますが、米空軍の年間予算に匹敵する約5兆2千億円もの超過額を前に、事実上「米空軍だけでは、なすすべ無し」状態だと紹介しています米空軍は国防省事業の適正管理を定めた「Nunn-McCurdy法」の規定に沿って、計画のコスト及び開発期間の両方で法令基準の15%以上超過&遅延することが明らかになったため、米議会に今年1月に事態を報告し、今後はコスト&開発期間の超過&遅延原因を明確にし、改善計画を立案し、その出直し計画を2024年夏頃までに国防長官に再承認してもらう必要があるのですが、MinutemanⅢシステム構築後、約50年間誰も関心を持たず&顧みず&放置されてきたICBM関連施設(特に再利用可能と想定してきたICBM格納サイロ、指揮統制施設、各種指揮統制装置やケーブルなどの通信装置インフラ等々)が再利用不能であることが次々に判明し、日本の中国&四国地域程度の地理的範囲(それも交通インフラや人材確保が困難な辺鄙な場所だらけ)に分散配置されている関連施設整備コストが、莫大に膨らむことが明らかになってきたということですAFA Warfare Symposium(2月12-14日)で・・・Kendall空軍長官●(どれも重要な)米空軍の他の戦略的な近代化予算から振り分けることはできない。仮に米空軍が超過分を出すことになると、他の全ての必要経費が制約を受けることになる●関連議論をまだ実施していないが、直ちに始める必要がある。ただ、通常の国防省予算編成の流れで扱える問題ではない。空軍の予算内で議論することは難しく、国防省全体予算で議論してほしいと思う●米空軍の核抑止近代化計画にはSentinel計画(次期ICBM計画)の代替になるようなものはなく、Sentinel計画は必要不可欠なプロジェクトである。B-21爆撃機計画は1円たりとも削減することはできない(..
米空軍
まんぐーす
2024-03-01T05:00:00+09:00
米空軍の年間予算に匹敵する5兆円超過
核抑止3本柱の2本を空軍予算で賄う不条理主張か
超過大半はサイロ・指揮所・通信インフラ施設建設費
2月13日付米空軍協会web記事は、1月に米空軍が議会に通知して明らかになった、MinutemanⅢシステムの後継となる次期ICBM計画(Sentinel ICBM導入計画:GBSD計画とも)の37%予算超過と開発期間の最低2年延長見積もりに関し、米空軍協会Warfare Symposiumに参加した米空軍幹部の発言等から対応策検討の現状を報じていますが、米空軍の年間予算に匹敵する約5兆2千億円もの超過額を前に、事実上「米空軍だけでは、なすすべ無し」状態だと紹介しています
米空軍は国防省事業の適正管理を定めた「Nunn-McCurdy法」の規定に沿って、計画のコスト及び開発期間の両方で法令基準の15%以上超過&遅延することが明らかになったため、米議会に今年1月に事態を報告し、今後はコスト&開発期間の超過&遅延原因を明確にし、改善計画を立案し、その出直し計画を2024年夏頃までに国防長官に再承認してもらう必要があるのですが、
MinutemanⅢシステム構築後、約50年間誰も関心を持たず&顧みず&放置されてきたICBM関連施設(特に再利用可能と想定してきたICBM格納サイロ、指揮統制施設、各種指揮統制装置やケーブルなどの通信装置インフラ等々)が再利用不能であることが次々に判明し、日本の中国&四国地域程度の地理的範囲(それも交通インフラや人材確保が困難な辺鄙な場所だらけ)に分散配置されている関連施設整備コストが、莫大に膨らむことが明らかになってきたということです
AFA Warfare Symposium(2月12-14日)で・・・
Kendall空軍長官
●(どれも重要な)米空軍の他の戦略的な近代化予算から振り分けることはできない。仮に米空軍が超過分を出すことになると、他の全ての必要経費が制約を受けることになる
●関連議論をまだ実施していないが、直ちに始める必要がある。ただ、通常の国防省予算編成の流れで扱える問題ではない。空軍の予算内で議論することは難しく、国防省全体予算で議論してほしいと思う
●米空軍の核抑止近代化計画にはSentinel計画(次期ICBM計画)の代替になるようなものはなく、Sentinel計画は必要不可欠なプロジェクトである。B-21爆撃機計画は1円たりとも削減することはできない(長官は核搭載のLong Range Stand-Off missileには言及せず)。
(なおKendall氏は、長官就任前にSentinel計画を受注しているNG社役員であったことから、法律により本計画への意思決定に関与できない。ただし空軍省の予算配分に関する意思決定には職責で関与する)
Kristyn Jones国防副長官臨時代理
●Sentinelミサイル開発自体に大きな問題は発生しておらず、大きな課題は関連施設整備面に存在する。つまり現有施設の再利用を見込んでいた、ミサイル格納サイロ、地下の指揮統制施設、各種指揮統制装置やケーブルなどの通信装置インフラ等々の問題だ
●加えて、昨今の世界的なインフレ、サプライチェーン問題、労働力コストアップが次期ICBM計画のコスト上昇につながっている。特に辺鄙な地域に分散する施設建設に必要な、秘密クリアランスを持つ労働者の確保や工事期間延長による人件費アップの影響も大きい
Andre Hunter調達担当次官
●米空軍は、次期ICBM計画ほどの巨大施設関連事業をMinuteman ICBM体制を構築した50年前から行っておらず、現状の施設状態に関するアセスメントが実施されるまで、必要な施設建設規模が把握できなかった
●アナログ回線を使用しているMinuteman ICBMの、地下&地上施設や指揮統制通信インフラの大部分を換装する必要が明らかになった
//////////////////////////////////////////
「Minuteman ICBMの地上&地下インフラの大部分が再利用できないことがアセスメントの結果で判明した」との言い分が通用するとも思えませんが、米空軍だけで増額分を負担することが不可能なことも明らかで、ICBM部隊(海軍のSLBM部隊も同様)を「日陰者」「忘れ去られた部隊」「無視された部隊」扱いしてきた空軍と国防省と米国政府と米国民全てへの、「巨大なブーメラン&しっぺ返し」となっています。どうするんでしょうか・・・
超巨大プロジェクト次期ICBMシステム整備の苦悩
「コスト&期間超過で法抵触の議会通知」→https://holylandtokyo.com/2024/01/29/5478/
「次期ICBM開発の苦悩&不安を語る」→https://holylandtokyo.com/2023/11/22/5244/
米軍「核の傘」で内部崩壊
「ICBMサイト初のオーバーホール」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-15
「屋根崩壊:核兵器関連施設の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-23
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「唖然・国防長官が現場視察」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-18
「特別チームで核部隊調査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「剱持暢子氏論文:米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「米核運用部隊の暗部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-29
中国やロシアの核兵器運用部隊も心配
「中国ロケット軍汚職と部隊能力報道に思う」→https://holylandtokyo.com/2024/01/15/5436/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
米空軍改革発表受け太平洋空軍演習強化のお話
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-15-1
2024年10月以降の実戦的な連続大規模演習へ新太平洋空軍司令官や同参謀長が語る空自の宇宙作戦群司令:杉山1空佐もご登壇!2月14日、コロラド州で開催のAFA Warfare Symposiumで新任の太平洋空軍司令官Kevin B. Schneider大将(元在日米軍司令官&第5空軍司令官)と同軍参謀長David Berkland大佐が、12日に同イベントでKendall空軍長官とAllvin空軍参謀総長が発表した米空軍改革アクション項目の目玉の一つ「戦闘・空輸・CSコマンドの実戦能力強化のため、(対中国の)冷戦期仕様の大規模演習実施」について早速発言し、その検討の方向性を語っていますのでご紹介します12日にAllvin空軍参謀総長は「我々は2025予算年度から、複数の戦闘コマンドの支援を受けた初の大規模演習実施を計画しており、インド太平洋戦域での実施を想定している」と明らかにしましたが、これを受けてSchneider新太平洋空軍司令官は、「米空軍省がその重要性を認識し、資源配分を含めて実現にコミットしてくれていることに力を得ている」、「この規模の演習実施には空軍省や米空軍全体のテコ入れが欠かせないからだ」と語り、「米軍が直面する危機や緊急事態を考える時、インド太平洋軍や太平洋空軍への期待は巨大であり、他軍種や統合部隊からの要求も、人・物・能力全ての面で驚くほど大きい中、このような必ずしも安価に収まらない大演習を計画出来ることは抑止面でも大変重要だ」と責任の重さと新思考の大演習への期待をにじませていますまた、同シンポジウムの太平洋地域の同盟国との連携強化を語る別イベントで、太平洋空軍参謀長David Berkland大佐は航空自衛隊の宇宙防衛群司令杉山キミトシ1空佐と共に登壇し、計画中の大規模空軍演習について以下のように語っています●我々は、より実戦的でより複雑で、高い緊迫度を想定した演習の計画を開始しており、単一のイベント演習ではなく、年間を通じて数えきれないほどの訓練機会を設ける方向だ●ハイエンド紛争を大前提に、従来より大規模で、より苛烈で、より効果的なものを想定しており、我々が高いレベルの即応態勢を確立&維持するにふさわしいものとなろう●この大規模演習では、近年急激に強化されつつある複数の国との協力関係を、他国空軍部隊とのより長期間でより密度高い訓練を通じて深化することも大きな目的となるちなみに同参謀長と..
米空軍
まんぐーす
2024-02-29T05:00:00+09:00
2024年10月以降の実戦的な連続大規模演習へ
新太平洋空軍司令官や同参謀長が語る
空自の宇宙作戦群司令:杉山1空佐もご登壇!
2月14日、コロラド州で開催のAFA Warfare Symposiumで新任の太平洋空軍司令官Kevin B. Schneider大将(元在日米軍司令官&第5空軍司令官)と同軍参謀長David Berkland大佐が、12日に同イベントでKendall空軍長官とAllvin空軍参謀総長が発表した米空軍改革アクション項目の目玉の一つ「戦闘・空輸・CSコマンドの実戦能力強化のため、(対中国の)冷戦期仕様の大規模演習実施」について早速発言し、その検討の方向性を語っていますのでご紹介します
12日にAllvin空軍参謀総長は「我々は2025予算年度から、複数の戦闘コマンドの支援を受けた初の大規模演習実施を計画しており、インド太平洋戦域での実施を想定している」と明らかにしましたが、これを受けてSchneider新太平洋空軍司令官は、「米空軍省がその重要性を認識し、資源配分を含めて実現にコミットしてくれていることに力を得ている」、「この規模の演習実施には空軍省や米空軍全体のテコ入れが欠かせないからだ」と語り、
「米軍が直面する危機や緊急事態を考える時、インド太平洋軍や太平洋空軍への期待は巨大であり、他軍種や統合部隊からの要求も、人・物・能力全ての面で驚くほど大きい中、このような必ずしも安価に収まらない大演習を計画出来ることは抑止面でも大変重要だ」と責任の重さと新思考の大演習への期待をにじませています
また、同シンポジウムの太平洋地域の同盟国との連携強化を語る別イベントで、太平洋空軍参謀長David Berkland大佐は航空自衛隊の宇宙防衛群司令杉山キミトシ1空佐と共に登壇し、計画中の大規模空軍演習について以下のように語っています
●我々は、より実戦的でより複雑で、高い緊迫度を想定した演習の計画を開始しており、単一のイベント演習ではなく、年間を通じて数えきれないほどの訓練機会を設ける方向だ
●ハイエンド紛争を大前提に、従来より大規模で、より苛烈で、より効果的なものを想定しており、我々が高いレベルの即応態勢を確立&維持するにふさわしいものとなろう
●この大規模演習では、近年急激に強化されつつある複数の国との協力関係を、他国空軍部隊とのより長期間でより密度高い訓練を通じて深化することも大きな目的となる
ちなみに同参謀長と登壇した空自の宇宙作戦群司令・杉山1空佐(パイロットではない点に胸熱!)は
●「米空軍によるこの種の取り組みは、航空自衛隊にとっても極めて重要であり、我々を正しい方向に導いてくれるものだ」と語ったと報じられています
//////////////////////////////////////////
2月12日に打ち出された米空軍改革の24アクション項目には、兵器開発要求や資源配分など米空軍の将来に関する計画を、戦闘コマンドや輸送コマンド等から事実上取り上げ、新設の中将率いる「Integrated Capabilities Command」に権限を集中させる点などにおいて、「官僚組織抵抗」や「(目に見えない)組織内の流血事案」も予期されますが、
戦闘コマンドや輸送コマンドやGlobal Strike Commandの演習を強化して実戦的&大規模化し、部隊評価点検を強化する点において部隊は正面から取り組む以外に選択肢はなく、兵器開発や資源配分問題への口出し権利はく奪について文句を言う暇もない前向きな忙しさを与える副次的効果も期待されます
ところで、航空自衛隊幹部の本ブログ登場は、2023年7月26日付記事で空幕防衛部長の坂梨弘明空将補(パイロットでない防衛部長!)をご紹介して以来ですが、今日また偶然にも「パイロットでない」宇宙防衛群司令杉山キミトシ1空佐をご紹介することができてうれしいです。戦闘機の編隊飛行写真を公式webサイトやSNS上で拡散して広報活動して喜んでいる時代ではないですからねぇ・・・。高校生の募集活動は別として、実質的な戦力強化の面では・・・
米空軍の大改革アクション項目発表
「2月12日のKendall長官らによる発表」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/5579/
「米空軍総レビュー実施発表」→https://holylandtokyo.com/2023/09/07/5012/
空幕防衛部長の坂梨弘明空将補のご活躍
「日米宇宙部隊の本格協議SETスタート」→https://holylandtokyo.com/2023/07/26/4884/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
防衛研究所の論考「安全保障としての半導体投資」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-02
半導体不足問題の概要を分かり易く包括的にさすが「特別研究官」。肩ひじ張らず多忙な一般人向け1月19日付で防衛省防衛研究所が「NIDSコメンタリー」の枠組みで、小野圭司・特別研究官による7ページの解説論考「安全保障としての半導体投資」を公開し、様々な要因で世界中で不足状態となっている「半導体」について、まんぐーすの勝手な解釈によると、「日本の半導体産業栄枯盛衰」「現代社会における半導体の重要性」「地政学リスク・生産拠点の偏り」「露のウクライナ侵略があぶりだしたもの」「製造装置の視点」「日本の現状や日本の利不利」の視点で解説されています小野圭司・特別研究官による小論をご紹介するのは2回目で、2020年8月に今は存在しない防衛研究所の「ブリーフィングメモ」の枠組みで公開された「サイバー傭兵の動向」(←https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/)を取り上げ、非常に多くのアクセスを頂きました。決して文章をこね回して偉そうに語るのではなく、日々の業務に忙殺されている若手自衛官や安全保障を志す若者や、一般社会を支える働き盛り世代が平易に理解できることを意識した「書きぶり」に「特別研究官」の人間性がにじみ出ているように思うのはまんぐーすだけでしょうか前置きはこれくらいにして、半導体に関する幅広い話題や視点を概説した小野氏による「NIDSコメンタリー」を、まんぐーすの勝手な理解と再構成に基づき、項目建てや記載順序や表現ぶりを変更してご紹介いたします「日本の半導体産業栄枯盛衰史」●WW2時から米国がリードし、1960-70年代のアポロ計画で半導体技術を向上させた米国の技術覇権は揺ぎ無きものであったが、1980年代に入り日本が急速に追い上げ、1988年には半導体売上で世界上位3社を日本企業が独占し、10位以内に6社が占める勢いを見せた●しかし、日本企業が総合電機メーカーの1分野として半導体事業を扱い、変化の激しいい急激な「シリコンサイクル」への対応の意思決定で後れを取り、更にプラザ合意を受けた急激な円高、日米貿易摩擦が生んだ日米半導体協定による米国製購入の強制、日本企業による米国企業買収の政治圧力阻止等で弱体化した日本企業は、「失われた30年」に突入して今日に至っている「半導体の重要性と需給ひっ迫」●センサー多用による半導体需要急増→普通自動車1台に500個→電気自動車は1500個に→更にAI自..
安全保障全般
まんぐーす
2024-02-28T05:00:00+09:00
半導体不足問題の概要を分かり易く包括的に
さすが「特別研究官」。肩ひじ張らず多忙な一般人向け
1月19日付で防衛省防衛研究所が「NIDSコメンタリー」の枠組みで、小野圭司・特別研究官による7ページの解説論考「安全保障としての半導体投資」を公開し、様々な要因で世界中で不足状態となっている「半導体」について、まんぐーすの勝手な解釈によると、「日本の半導体産業栄枯盛衰」「現代社会における半導体の重要性」「地政学リスク・生産拠点の偏り」「露のウクライナ侵略があぶりだしたもの」「製造装置の視点」「日本の現状や日本の利不利」の視点で解説されています
小野圭司・特別研究官による小論をご紹介するのは2回目で、2020年8月に今は存在しない防衛研究所の「ブリーフィングメモ」の枠組みで公開された
「サイバー傭兵の動向」(←https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/ )を取り上げ、非常に多くのアクセスを頂きました。決して文章をこね回して偉そうに語るのではなく、日々の業務に忙殺されている若手自衛官や安全保障を志す若者や、一般社会を支える働き盛り世代が平易に理解できることを意識した「書きぶり」に「特別研究官」の人間性がにじみ出ているように思うのはまんぐーすだけでしょうか
前置きはこれくらいにして、半導体に関する幅広い話題や視点を概説した小野氏による「NIDSコメンタリー」を、まんぐーすの勝手な理解と再構成に基づき、項目建てや記載順序や表現ぶりを変更してご紹介いたします
「日本の半導体産業栄枯盛衰史」
●WW2時から米国がリードし、1960-70年代のアポロ計画で半導体技術を向上させた米国の技術覇権は揺ぎ無きものであったが、1980年代に入り日本が急速に追い上げ、1988年には半導体売上で世界上位3社を日本企業が独占し、10位以内に6社が占める勢いを見せた
●しかし、日本企業が総合電機メーカーの1分野として半導体事業を扱い、変化の激しいい急激な「シリコンサイクル」への対応の意思決定で後れを取り、更にプラザ合意を受けた急激な円高、日米貿易摩擦が生んだ日米半導体協定による米国製購入の強制、日本企業による米国企業買収の政治圧力阻止等で弱体化した日本企業は、「失われた30年」に突入して今日に至っている
「半導体の重要性と需給ひっ迫」
●センサー多用による半導体需要急増→普通自動車1台に500個→電気自動車は1500個に→更にAI自動運転車両となると3000個以上の半導体が必要に。ジェットエンジンや艦艇ガスタービンエンジン制御にも1基につき5000個など需要急増
●5Gやデータセンタ需要の拡大、コロナによる在宅勤務や巣ごもり需要によるPCなど情報家電の需要増、生成AIの開発に必要な画像処理半導体の需要急増、米中対立による中国製半導体の市場からの排除、日本の半導体工場の連続火災、米国半導体工場の停電事故による製造停止などの需給ひっ迫要 因
「地政学リスク・生産拠点の偏り」
●今や最も軍事的緊張が高い朝鮮半島や台湾海峡に関連する台湾・韓国・中国が、世界の半導体の60%以上を製造しているという、いびつな生産拠点分布が抱える地政学リスク
●米国は、米国企業による半導体製造占有率は54%あるが、米国内製造はわずか11%で、非常時の半導体確保面で大きなリスクを抱えていると認識し、1980年代の日本企業たたきに見られた「半導体ナショナリズム」ではなく、米国企業でなくてもよいから米国内で製造してくれる企業を求める「半導体の地産地消」を追求しようとしている
●米国は台湾TSMC等に米本土での生産拠点設置を求めているが、台湾は「米軍向け半導体供給」との自国安全保障上の切り札として、簡単には米本土での工場建設を受け入れないだろう
●日本の千歳市に建設中の国家プロジェクト「ラビダス」工場建設も、5兆円以上の投資を計画しているが、日本企業や日本政府による4兆円以上だけでなく、台湾TSMCや米企業など外資系企業からも1兆円以上の投資を受け入れる形態をとっている
「露のウクライナ侵略があぶりだしたもの」
●ロシアは半導体の9割以上を海外に依存しており、露への半導体経済制裁は露の戦争継続能力を削ぐであろうと期待されたが、期待されたほどの成果は上がっていない
●露やウクライナが使用しているハイテク兵器でも、最先端のロジック半導体やメモリーを多数使用しているわけではなく、信号をデジタル変換するアナログ半導体や、電力制御用のパワー半導体が大半を占めている
●また露もウクライナも多数の無人機を投入しており、どんなに単純な小型無人機でも半導体は不可欠だが、これも最先端の半導体が使用されているわけではない
●西側による露への半導体輸出規制は半年で効力を失ったとされている。経済制裁に加わっていない中国香港、トルコ、UAE、カザフスタンなどを経由して、「半導体ロンダリング」されて西側から流出しているのが実態。
●家電製品もロシアに迂回輸出され、「ロシアは冷蔵庫や食洗器から半導体を取り出し、軍装備の修理に充当している」とEU委員長が指摘したケースもある
●半導体製造に重要な役割を果たす露光装置に必要な「ネオンガス」は、ウクライナが世界の供給量の7割を算出しており、価格が一時10倍に跳ね上がった。同じく露光工程に必要なパラジウムもロシアが世界生産の4割を占め価格が2倍に
「製造装置の視点」
●2022年10月にバイデン政権は、先端半導体やその製造装置・技術の中国向け輸出を事実上禁じ、半導体製造装置に強いオランダと日本にも同調を求めた
●ところが多く使用されているパワー半導体は先端品でない為、輸出規制対象外の装置で製造可能で、中国企業が内製化に取り組んでおり、中国の半導体製造大手SMICは輸出規制対象外の装置で先端半導体に当たる7ナノメートルの半導体製造に成功したとも報じられている
「日本の現状や日本にとっての利不利」
●ハイテク兵器でも使用され、需要が大きいパワー半導体は日本企業の得意分野でもあるが、次世代パワー半導体SiC(炭化ケイ素)パワー半導体では日本は劣勢である
●半導体製造装置では、日本が強みを発揮している部分もあるが、市場規模が大きい装置では、米国やオランダ企業が社の大半を抑えている
●半導体製造の全側面を押さえた「純国産」は現実的ではない。日本には強みを有する部分での競争力を維持・拡大して、他の機材・部材の交渉力に結び付ける努力が求められ、そのための人材育成は不可欠。バブル崩壊後のその場凌ぎの対応で、半導体人材や脳を流出させた愚は繰り返してはならない 。
●日本は半導体製造に重要な水確保面で優位である。半導体の生産拠点である中国沿岸部・欧州のほぼ全域、米国・韓国の広い範囲で水資源が危機に直面しており、台湾も台湾島中南部では慢性的な水不足である。他方、日本については、概ね水資源のリスクは低い
●半導体製造に大量に必要な電力確保は日本にとってのアキレス腱。TSMC、サムスン電子、SK ハイニックスが消費する電力は、各社が台湾・韓国の総発電量の 5~6%に達する。韓国では政策的に電気料金が抑えられており、これは半導体産業にとっては「見えない補助金」に等しい
●日本では東日本大震災以降、火力発電比率が上昇し電気料金も上がっている。最近では、生成 AI利用が各方面で始まっているが、生成 AI は開発&利用は相当量の電力が必要。日本でも国産生成 AI 開発が進められているが、これは半導体需要を促す一方で、電力消費面で半導体製造業と競合する。
●火力発電の比率を引き下げて、安価で安定した電力供給の体制を整備することは、エネルギー安全保 障や地球温暖化対策だけではなく、「戦略物資」としての半導体確保の上でも重要である。
特にコメントはありませんが、いつものように、まんぐーすによる「つまみ食い」記事ですので、ご興味のある方もない方も、ぜひ一度原文をご覧いただければ・・・と思います
7ページの論考現物
→ https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary293.pdf
小野圭司・特別研究官による解説論考
「サイバー傭兵の動向」→https://holylandtokyo.com/2020/08/05/515/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
あと36年、100歳まで頑張るB-52Jを語る
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-13
トラブル2-3個が常態の運用&訓練現状過去10年間で稼働率が2割低下する中最新機体が1962年製の同機を2060年まで活躍させるために2月12日付Defense-Newsが、現在保有する76機の機体年齢が60歳を超えているB-52爆撃機部隊の現状と、延命&近代化改修の内容から課題までを紹介しながら、後輩であるB-1及びB-2爆撃機が2030年頃に引退後も、機体年齢が100歳となる2060年代まで、ステルス爆撃機B-21との2機種体制で頑張ることを求められているB-52に「寄り添うような」特集記事を掲載していますので、ご紹介したいと思います記事は機体年齢が100歳になるまで特定機種が生き残ることの「すごさ」を説明するため、今から100年前の1924年当時の航空機を振り返り、「WW1時代の機体を改良した航空機の時代で、複葉機、操縦者の操作を直にワイヤーで操舵面に伝達、コックピットはまだ閉じた空間ではないBoeing P-26やCurtiss JN-3の時代」と紹介し、計774機が1954-62年まで製造され、その1割程度が「生き残っている」B-52の生命力を紹介していますただ一方でB-52生き残りの背景には、やはり「戦闘機が空軍の中心で、爆撃機への投資が2の次の時代背景」や、「べらぼうなコスト高騰や開発遅延で製造機数が100機削減されたB-2」や「低空高速侵入思想から冷戦後の時代に放置されたB-1」の影響を受け、「消去法」で生き残ってきた経緯があるとも記事は示唆しています以下では同記事からつまみ食いピックアップで、「現在のB-52部隊運用の状況」、「エンジン換装など総額7兆円強の延命&近代化策」、「延命&近代化改修の懸念点」についてご紹介いたしますお馴染みのYouTube番組でも解説現在のB-52部隊運用の状況●60年前に製造された機体の部品確保は困難を極め、2012年に稼働率78%だったものが2022年には59%にまで低下し、今後向上する見込みはない。大きな機体は屋外駐機せざるを得ない場合が多く、中東の日差しや太平洋域の潮風や寒冷地の風雪が機体に与える影響は大きい●Barksdale空軍基地のB-52部隊を取材した1月、とある約6時間の訓練飛行への搭乗機会を得たが、エンジンを駆動させ離陸予定時間を30分以上経過しても整備員は3つの故障と格闘していた。3つは電波高度計、Targetting POD、そしてデジタルMa..
米空軍
まんぐーす
2024-02-27T05:00:00+09:00
トラブル2-3個が常態の運用&訓練現状
過去10年間で稼働率が2割低下する中
最新機体が1962年製の同機を2060年まで活躍させるために
2月12日付Defense-Newsが、現在保有する76機の機体年齢が60歳を超えているB-52爆撃機部隊の現状と、延命&近代化改修の内容から課題までを紹介しながら、後輩であるB-1及びB-2爆撃機が2030年頃に引退後も、機体年齢が100歳となる2060年代まで、ステルス爆撃機B-21との2機種体制で頑張ることを求められているB-52に「寄り添うような」特集記事を掲載していますので、ご紹介したいと思います
記事は機体年齢が100歳になるまで特定機種が生き残ることの「すごさ」を説明するため、今から100年前の1924年当時の航空機を振り返り、「WW1時代の機体を改良した航空機の時代で、複葉機、操縦者の操作を直にワイヤーで操舵面に伝達、コックピットはまだ閉じた空間ではないBoeing P-26やCurtiss JN-3の時代」と紹介し、計774機が1954-62年まで製造され、その1割程度が「生き残っている」B-52の生命力を紹介しています
ただ一方でB-52生き残りの背景には、やはり「戦闘機が空軍の中心で、爆撃機への投資が2の次の時代背景」や、「べらぼうなコスト高騰や開発遅延で製造機数が100機削減されたB-2」や「低空高速侵入思想から冷戦後の時代に放置されたB-1」の影響を受け、「消去法」で生き残ってきた経緯があるとも記事は示唆しています
以下では同記事からつまみ食いピックアップで、「現在のB-52部隊運用の状況」、「エンジン換装など総額7兆円強の延命&近代化策」、「延命&近代化改修の懸念点」についてご紹介いたします
お馴染みのYouTube番組でも解説
VIDEO
現在のB-52部隊運用の状況
●60年前に製造された機体の部品確保は困難を極め、2012年に稼働率78%だったものが2022年には59%にまで低下し、今後向上する見込みはない。大きな機体は屋外駐機せざるを得ない場合が多く、中東の日差しや太平洋域の潮風や寒冷地の風雪が機体に与える影響は大きい
●Barksdale空軍基地のB-52部隊を取材した1月、とある約6時間の訓練飛行への搭乗機会を得たが、エンジンを駆動させ離陸予定時間を30分以上経過しても整備員は3つの故障と格闘していた。3つは電波高度計、Targetting POD、そしてデジタルMap上で作戦行動や航法をサポートするCONECT(Combat Network Communications Technology)で、機長判断で電波高度計とTargetting PODは故障のまま訓練を行うこととなった
●最後のCONECTは2010年代に導入された装備で、カラーデジタル地図画面上で兵器運用担当や電子戦担当が敵情を把握しながら機体システムを操作する重要なものだが、最終的に機長はCONECTなしで、バックアップのアナログ器材で代替して訓練に臨むことを選択した
●機長は、エンジンと油圧システムと機体そのものに問題があれば飛行を断念するが、それ以外であれば故障を抱えたまま飛行することはよくあることで、機長に判断は任されており、5名の搭乗員は与えられたアセットで任務遂行に全力を尽くすことに慣れていると語っている
エンジン換装など総額7兆円強の延命&近代化策
●100機以上調達する計画のB-21ステルス爆撃機と、現有76機のB-52で米軍の爆撃機需要にこたえるため、エンジン換装(Commercial Engine Replacement Program)、AESAレーダーへの換装、搭載アビオ換装、グラスコックピット化、長射程核搭載ミサイル(Long Range Standoff weapon)搭載改修、通信システム換装、車輪とブレーキ換装等々を、2028年に初号機テスト開始から2030年代にかけ実施し、「B-52J」を導入する
●特にエンジン換装は、商用機エンジンをベースとして部品調達が世界各地で容易なロールスロイス製F130導入により、燃費3割向上や信頼性&静粛性向上の他、機体寿命のある2060年までオーバーホール修理不要となることが期待されている
●レーダとアビオと通信とコックピット換装により、戦術航法、目標照準、自己防御能力の大幅改善と操作性の向上が期待でき、ステルス性がないB-52の本格紛争での任務遂行範囲を拡大することを目指している
延命&近代化改修の懸念点
●60年以上も使用してきた機体に改修を施すことのリスクは当然低くはなく、米空軍は事前にB-52の機体状況を調査した上で延命&近代化計画を推進しているが、2010年代に実施されたC-5輸送機のエンジン換装を伴う近代化改修では、実際の作業過程で次々と機体に想定外の「経年劣化や金属疲労」が見つかって改修経費が増大し、結局計画機数の半分の機体にしか改修を実施できなかった黒歴史もあり不安はぬぐえない
●また、これだけ盛りだくさんの改修を一度に行うスケジュール管理や導入装備間の干渉的なものなど、様々な不安を指摘する声は各所から上がっている。仮に改修スケジュールが遅延することになれば、既に維持が難しくなっているB-2やB-1に加え、B-52Hへの手当ても検討する必要があり、非常にリスクの高い綱渡りとの指摘もある
////////////////////////////////////////
現在運用中の最も新しい機体が1962年製とのことで、同世代のまんぐーすにとっては何とも感傷的な気分にさせてくれるB-52と「B-52J」プロジェクトです
グラスコックピット化されたB-52J型の雄姿を、ぜひこの目で確認したいものです・・・
B-52関連の記事
「B-52Jへの熱い取り組み」→https://holylandtokyo.com/2023/10/19/5134/
「インドネシアにも2機展開」→https://holylandtokyo.com/2023/06/23/4785/
「極超音速兵器ARRW導入を断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「B-21導入による米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/
「重力投下核爆弾の任務除外」→https://holylandtokyo.com/2020/01/29/877/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
米宇宙軍による妨害に強いGPS衛星への取組
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-11
現在の状況や今後の取り組みを概観いろんな用語に親しみましょう!2月5日に米宇宙軍が関連企業に対し、GPS衛星の妨害対処能力向上や強靭性向上や能力早期配備やライフサイクルコスト削減を狙い、新興企業も含む多様なソースからの実験&デモ衛星のアイディア募集通知を発出したことを契機に、現在宇宙軍が保有するGPS衛星の状況や近未来の計画を概観し、更に5日に発出された提案募集の狙いを確認することで、まんぐーすが「特に疎い」宇宙分野への理解を深める一助としたいと思います。現在の宇宙軍GPS衛星の状況と近未来構想●現在宇宙軍は、新旧入り乱れる形で31機のGPS衛星を配備しており、最新型の「GPSⅢ」衛星は、従来型の約3倍の正確性とより優れた対妨害能力を備えており、加えて軍事ユーザー用により正確で安全(secure)な「M-code」信号を提供可能な能力を備えている●また宇宙軍は新たな衛星航法技術への取り組みとして、2024年末に米空軍研究所AFRLとL3Harris が協力し、技術実証試験衛星NTS-3(Navigation Technology Satellite-3)を打ち上げ予定で、デジタル信号により軌道上衛星のプログラムを変更更新する技術など、100個以上の試験を同衛星で行う計画である●更に宇宙軍はロッキード社と組み、「GPSⅢ」を基礎として正確性や妨害対処能力を向上させた「GPS IIIF」を現在開発しており、2027年からの打ち上げを予定している。なお「GPS IIIF」には、アップグレードされた核探知爆発システム(nuclear detection detonation system)と捜索救助ペイロードも搭載される予定●宇宙軍の商用技術導入専門部署(Commercial Space Office)は、革新技術導入を専門とするSpaceWERXチームと協力し、従来の軍需産業とは異なる技術を有する新興企業に「seed funding」を提供する試みを行っている5日に発出された提案募集の狙いと方向性●宇宙軍の開発&調達組織であるSpace Systems Command発出の提案要望は、まだ技術検討段階にある構想に関する情報収集目的で、明確にいつ頃具体的な打ち上げを目指すか等を示さない提案募集であるが、宇宙軍との契約から6か月以内の打ち上げが可能で、3-5年間の耐用年数を持つ低コストのデモ衛星に関する情報を求めるもの●背..
サイバーと宇宙
まんぐーす
2024-02-25T05:00:00+09:00
現在の状況や今後の取り組みを概観
いろんな用語に親しみましょう!
2月5日に米宇宙軍が関連企業に対し、GPS衛星の妨害対処能力向上や強靭性向上や能力早期配備やライフサイクルコスト削減を狙い、新興企業も含む多様なソースからの実験&デモ衛星のアイディア募集通知を発出したことを契機に、現在宇宙軍が保有するGPS衛星の状況や近未来の計画を概観し、更に5日に発出された提案募集の狙いを確認することで、まんぐーすが「特に疎い」宇宙分野への理解を深める一助としたいと思います。
現在の宇宙軍GPS衛星の状況と近未来構想
●現在宇宙軍は、新旧入り乱れる形で31機のGPS衛星を配備しており、最新型の「GPSⅢ」衛星は、従来型の約3倍の正確性とより優れた対妨害能力を備えており、加えて軍事ユーザー用により正確で安全(secure)な「M-code」信号を提供可能な能力を備えている
●また宇宙軍は新たな衛星航法技術への取り組みとして、2024年末に米空軍研究所AFRLとL3Harris が協力し、技術実証試験衛星NTS-3(Navigation Technology Satellite-3)を打ち上げ予定で、デジタル信号により軌道上衛星のプログラムを変更更新する技術など、100個以上の試験を同衛星で行う計画である
●更に宇宙軍はロッキード社と組み、「GPSⅢ」を基礎として正確性や妨害対処能力を向上させた「GPS IIIF」を現在開発しており、2027年からの打ち上げを予定している。なお「GPS IIIF」には、アップグレードされた核探知爆発システム(nuclear detection detonation system)と捜索救助ペイロードも搭載される予定
●宇宙軍の商用技術導入専門部署(Commercial Space Office)は、革新技術導入を専門とするSpaceWERXチームと協力し、従来の軍需産業とは異なる技術を有する新興企業に「seed funding」を提供する試みを行っている
5日に発出された提案募集の狙いと方向性
●宇宙軍の開発&調達組織であるSpace Systems Command発出の提案要望は、まだ技術検討段階にある構想に関する情報収集目的で、明確にいつ頃具体的な打ち上げを目指すか等を示さない提案募集であるが、宇宙軍との契約から6か月以内の打ち上げが可能で、3-5年間の耐用年数を持つ低コストのデモ衛星に関する情報を求めるもの
●背景には、米国政府として衛星のライフサイクルコスト低減とGPS衛星開発&配備ペースを上げたいとの思惑があり、より複雑な能力を搭載する衛星ビジョンを煮詰める狙いでの情報収集である
●宇宙軍は、GPS信号受信が容易でない厳しい環境での運用を想定した、安価で製造容易な小型衛星など、現GPS衛星の代替システムを検討しており、提案を募集している実験&デモ衛星は、関連技術の実証や早期配備を助けることを期待されている
●また本検討では、伝統的な宇宙技術提供企業だけでなく、新興企業の開拓も狙っており、現有地上管制システムなど運用装備との相互運用性が高く、現装備の改修を最低限に抑えつつ、迅速な能力向上につながる技術導入を期待している
/////////////////////////////////////////
特に後半の「提案募集の狙いと方向性」部分は、美辞麗句が並ぶ軍事官僚的文書となってしまいましたが、ぼんやりとでも「低コストで良い物を迅速に導入したい。新たなベンダーも開拓したい」との思いをくみ取って頂ければ幸いです
GPS衛星の対妨害能力や信号の正確性安全性向上が、敵の妨害技術にどの程度効果が期待できるのか等、細部は知識不足で語れませんが、この分野に関する理解を深める導入説明となれば幸いです
GPS等の被害を前提に訓練せよ
「米空軍機がGPS代替の地磁気航法で」→https://holylandtokyo.com/2023/06/13/4731/
「米陸軍兵士がGPS無しの訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/
「なぜ露はウでGPS妨害しない?」→https://holylandtokyo.com/2022/07/26/3497/
「米海軍将軍:妨害対処を徹底」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-21
「空軍OBも被害対処重視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23-1
「被害状況下で訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-23
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
米陸軍迷走:3千億円投入済のヘリFARA開発中止
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-10
今年後半に候補2機種の攻撃&偵察ヘリ飛行評価予定ももう有人機偵察中心の時代ではない・ウの教訓から過去10年で最大の開発中止案件に同時に旧式の現有無人機2機種2万機破棄、新型HH60Vも導入中止UH-60s, AH-64エンジン更新も停止現有Black Hawks M型とCH-47F Block II、FLRAAに集中2月8日、米陸軍がなんと、過去約20年に渡り運用構想や要求性能を練り、2回にわたり企業提案募集やプロトタイプ製造に進みながら計画中断を繰り返し、2018年から3回目のトライとして3000億円を投入して2企業2機種のプロトタイプを製造して今年飛行評価テストを行う予定だった将来偵察攻撃ヘリFARA計画(Future Attack Reconnaissance Aircraft)を、ウクライナの教訓や無人機や宇宙アセットの偵察能力向上を背景に中止すると発表しましたまた同時に米陸軍は、現有のUH60やCH47ヘリの能力向上機導入計画や、UH60やAH64アパッチヘリの能力向上エンジン導入計画の中止または停止、更に陳腐化から本格紛争用には不十分として現有の小型無人機ShadowやRavenを計2万機破棄するなど、無人機等の最新技術を生かしつつ、厳しい予算化で実現可能な能力向上策を追求すると明らかにしましたまんぐーすは米陸軍の決定を評価したいと思いますが、2022年12月に機種選定が難産の末に終了した2000機のUH60後継機で「米陸軍で過去40年間で最大のヘリ調達案件」「米陸軍航空部隊の歴史上、最も大規模で複雑な機種選定であった」と陸軍が表現したFLRAA(Future Long-Range Assault Aircraft)選定でも露呈した、「対中国等本格紛争での米陸軍の役割や任務の迷走」問題が再び顕在化したといって良いでしょう以下では、FARA構想の過去約20年間のグダグダや今回の中止決定に関する米陸軍の説明等を、2月9日付Defense-Newsからご紹介いたしますFARA検討のグダグダ経緯●ベトナム戦争時に偵察&攻撃任務になっていたOH-58 Kiowaが退役後、陸軍は任務の重要性を強調しつつもその後継機を決められず、性能的にはToo MuchなAH64アパッチに担わせてきた●この状況を打開するため、21世紀に入って陸軍は「Comanche program」を立ち上げ、1兆円以上を投入して2企業に2つの..
Joint・統合参謀本部
まんぐーす
2024-02-22T05:00:00+09:00
今年後半に候補2機種の攻撃&偵察ヘリ飛行評価予定も
もう有人機偵察中心の時代ではない・ウの教訓から
過去10年で最大の開発中止案件に
同時に旧式の現有無人機2機種2万機破棄、新型HH60Vも導入中止
UH-60s, AH-64エンジン更新も停止
現有Black Hawks M型とCH-47F Block II、FLRAAに集中
2月8日、米陸軍がなんと、過去約20年に渡り運用構想や要求性能を練り、2回にわたり企業提案募集やプロトタイプ製造に進みながら計画中断を繰り返し、2018年から3回目のトライとして3000億円を投入して2企業2機種のプロトタイプを製造して今年飛行評価テストを行う予定だった将来偵察攻撃ヘリFARA計画(Future Attack Reconnaissance Aircraft)を、ウクライナの教訓や無人機や宇宙アセットの偵察能力向上を背景に中止すると発表しました
また同時に米陸軍は、現有のUH60やCH47ヘリの能力向上機導入計画や、UH60やAH64アパッチヘリの能力向上エンジン導入計画の中止または停止、更に陳腐化から本格紛争用には不十分として現有の小型無人機ShadowやRavenを計2万機破棄するなど、無人機等の最新技術を生かしつつ、厳しい予算化で実現可能な能力向上策を追求すると明らかにしました
まんぐーすは米陸軍の決定を評価したいと思いますが、2022年12月に機種選定が難産の末に終了した2000機のUH60後継機で「米陸軍で過去40年間で最大のヘリ調達案件」「米陸軍航空部隊の歴史上、最も大規模で複雑な機種選定であった」と陸軍が表現したFLRAA(Future Long-Range Assault Aircraft)選定でも露呈した、「対中国等本格紛争での米陸軍の役割や任務の迷走」問題が再び顕在化したといって良いでしょう
以下では、FARA構想の過去約20年間のグダグダや今回の中止決定に関する米陸軍の説明等を、2月9日付Defense-Newsからご紹介いたします
FARA検討のグダグダ経緯
●ベトナム戦争時に偵察&攻撃任務になっていたOH-58 Kiowaが退役後、陸軍は任務の重要性を強調しつつもその後継機を決められず、性能的にはToo MuchなAH64アパッチに担わせてきた
●この状況を打開するため、21世紀に入って陸軍は「Comanche program」を立ち上げ、1兆円以上を投入して2企業に2つのプロトタイプ製造までさせたが、うまくいかず2004年に計画を中止。更に4年後の2008年にも仕切り直して進めた「Armed Reconnaissance Helicopter」計画を再び中止
●その後陸軍は、既存の商用ヘリから偵察任務ヘリ(commercial off-the-shelf aircraft)から選定することを試み、複数の提案機の飛行評価「fly-off」まで行ったが、最終的に2013年に所望の性能を持つ機体が見つからなかったとして計画をまたも中止
●2018年、陸軍は新設した将来検討専門組織「Army Futures Command」にFARA構想推進を託し、鳴り物入りで「高価装備品の新たな調達モデルの見本を示す」と豪語して2030年までに部隊導入すると宣言してプロジェクトを開始し、これまでに約3000億円を使用し、今後5年間で更に7400億円の予算計画を立て、今年2機種のプロトタイプ(Bell TextronとLockheed Martin Sikorsky)の飛行評価を予定していた
今回のFARA計画中止の理由
●FARA計画の責任者であるJames Rainey陸軍大将は、「この決定は失敗を意味するものではなく、ヘリ近代化計画のオーバーホールを通じて、より大きな進歩を目指すものだ」と語り、「ウクライナの教訓や、無人機や宇宙センサーの技術的成熟や急速な普及に伴い、高性能な装備が安価に導入可能となってきている事などを踏まえ、偵察攻撃任務を有人ヘリだけに頼るのではなく、有人機と無人アセットの融合をどうすべきか考えることが重要」だとFARA中止の背景に言及
●さらに踏み込んで同大将は、「ウクライナでの戦いの様相に米陸軍は影響を受けた。航空偵察は根本的に変化したのだ。無人機搭載のセンサーや兵器、そして軌道上の衛星は、より広範囲をカバーして活用が容易になり、かつてないほど急速にコストも低下している」とも表現
●そして3000億円を投入したFARA計画については、「これまでの成果を他のプログラムで利活用可能にするため、2024年度末までに開発技術等を取りまとめて終結させる」と説明
今後の米陸軍ヘリへの投資方向性
●FARA中止によりどの程度の資源が陸軍ヘリ全体や航空偵察任務に再投資可能かは判然としないが、米陸軍は高性能で残存性が高く、人命への懸念が少ない無人偵察機開発により大きな投資をし、2022年に契約した「Jump20 System」に加え、更に2023年9月には5社の候補提案から2社に絞り、現在は2025年度中に部隊配備開始ができるようにプロトタイプ製造段階にある
●垂直離着陸型の有人機開発がFLRAA1機種のみになった現状から、現有ヘリUH60やCH47への投資方向も大きく変更。UH60L型の後継として開発中のV型については、コストアップでL型更新に15年以上必要な見通しとなっているため、V型開発を中止し、現有で最新型のM型を継続製造してL型の後継とする
●FLRAAやFARA計画推進予算確保のため、2018年にCH-47F Block IIの正規部隊への導入を見送ったが、この決定を見直し正式に量産体制に入る
●また陸軍は、FARAやUH60やAH64用を想定した6種類の次世代エンジンを現在テスト中で、更に5月には追加で2つのエンジンがUH60での試験を予定しているが、既に数年の遅れが出ているこれらエンジンの本格調達は無期限延期する
●以前から性能の陳腐化等から本格紛争での能力発揮が疑問視されていた、約570機保有の小型無人機Shadowと約19000機保有のRavenについてはこれを全廃し、本格紛争を生き延びて任務遂行可能な高性能将来無人機FTUAS導入に注力する
///////////////////////////////////////////
2022年12月、FLRAA(Future Long-Range Assault Aircraft)をBell社のティルロータ型「V-280 Valor」に決定した後から、米陸軍は何度となく、議会やメディアや専門家から、FLRAAとFARAを同時推進は可能なのかと繰り返し問われ続け、そのたびに「可能か否かの問題ではなく、必要不可欠な避けられない調達案件だ」と浪花節説明してきたわけですが、ついにウクライナの現実や予算の現実を直視し、大幅方針転換に踏み切った模様です
これが世界の軍隊における、ウクライナ教訓を反映した各種方針や構想の大転換の「呼び水」になるような気がします。もちろん陸軍だけでなく、空軍戦闘機もそうだと思いますし、対中国最前線の自衛隊への風当たりもつようくなろうと予想いたします
40年間決められなかった米陸軍がやっと・・ ・
「Black Hawk 2000機の後継FLRAA選定」→https://holylandtokyo.com/2022/12/09/4043/
「陸軍UH-60後継の選定開始」→https://holylandtokyo.com/2021/07/16/2009/
「米陸軍ヘリは無人化でなく自動化推進!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-11
「UH-60後継を意識した候補機開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-06-16
対中国を想定した太平洋陸軍の演習
「対中国で分散作戦演習JPMRC」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
米陸軍ウクライナの教訓
「米陸軍は2024年に部隊の大幅削減含む改編不可避」→https://holylandtokyo.com/2024/01/04/5394/
「米陸軍が評価中の様々な教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/10/13/5129/
「22年6月:米陸軍首脳が教訓を」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
辛口の国防省評価局が陸軍GPS改良品を高評価
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-08-1
GPS外情報と妨害下のGPS信号を融合して地上航法に第1と第1.2世代を改良の第2世代DAPS GEN IIが高評価先ず700台を米陸軍がTRX Systemsと21億円で契約済2月7日付Defense-Newsは、米陸軍が妨害電波に脆弱なGPS地上航法装置の代替品(正確には改良&性能強化装置?)として、TRX Systems社(ACR Groupの配下企業)と検討してきた個人携帯型のDAPS(Dismounted Assured Positioning, Navigation and Timing System)に関し、辛口の厳しい評価で知られる米国防省のOT&E局(試験&評価局)が「最新GPS装置よりも優れ効果的だ」と今年1月の報告書で評価していると紹介していますDAPSの細部仕組みや性能をまんぐーすは把握していませんが、2023年4月12日付Defense-Newsの関連記事は、米陸軍とTRX Systems社との第2世代DAPS GEN II製造契約発表(23年4月11日)に際し、「米陸軍のDAPS開発責任者Mike Trzeciak氏が『(敵の妨害下でも、)軍事GPS信号にアクセスを確保し、更に他の航法技術から得た時刻等の関連情報と融合する技術を活用』」と説明した、と紹介しています米陸軍とTRX Systems社が何時頃からDAPS開発に着手したのか記事からは不明ですが、今回OT&E局(試験&評価局: Office of the Director of Operational Test and Evaluation)が高く評価した「第2世代DAPS GEN II」の前段階で、DAPSの第1と第1.2世代である「GEN Iや1.2」が2023年9月末までに数百台米陸軍内に試験配布され、現場からの「改善提案」を基に生まれたのが「DAPS GEN II」とのことです米陸軍は昨年4月11日にTRX Systems社と約590億円の「DAPS GEN II」製造契約を結び、その中で初期納入700台分と関連支援サービスを約21.5億円で調達することになってる模様で、21.5億円を単純に700台で割ると、「DAPS GEN II」1台当たりの価格は約309万円と計算可能です以前、米陸軍がGPS妨害対処訓練の一環として、スマホを使い慣れた世代の新兵教育の中で、GPSを使用しない「地図とコンパス」による地上航法訓練を取り..
Joint・統合参謀本部
まんぐーす
2024-02-21T05:00:00+09:00
GPS外情報と妨害下のGPS信号を融合して地上航法に
第1と第1.2世代を改良の第2世代DAPS GEN IIが高評価
先ず700台を米陸軍がTRX Systemsと21億円で契約済
2月7日付Defense-Newsは、米陸軍が妨害電波に脆弱なGPS地上航法装置の代替品(正確には改良&性能強化装置?)として、TRX Systems社(ACR Groupの配下企業)と検討してきた個人携帯型のDAPS(Dismounted Assured Positioning, Navigation and Timing System)に関し、辛口の厳しい評価で知られる米国防省のOT&E局(試験&評価局)が「最新GPS装置よりも優れ効果的だ」と今年1月の報告書で評価していると紹介しています
DAPSの細部仕組みや性能をまんぐーすは把握していませんが、2023年4月12日付Defense-Newsの関連記事は 、米陸軍とTRX Systems社との第2世代DAPS GEN II製造契約発表(23年4月11日)に際し、「米陸軍のDAPS開発責任者Mike Trzeciak氏が『(敵の妨害下でも、)軍事GPS信号にアクセスを確保し、更に他の航法技術から得た時刻等の関連情報と融合する技術を活用』」と説明した、と紹介しています
米陸軍とTRX Systems社が何時頃からDAPS開発に着手したのか記事からは不明ですが、今回OT&E局(試験&評価局: Office of the Director of Operational Test and Evaluation)が高く評価した「第2世代DAPS GEN II」の前段階で、DAPSの第1と第1.2世代である「GEN Iや1.2」が2023年9月末までに数百台米陸軍内に試験配布され、現場からの「改善提案」を基に生まれたのが「DAPS GEN II」とのことです
米陸軍は昨年4月11日にTRX Systems社と約590億円の「DAPS GEN II」製造契約を結び、その中で初期納入700台分と関連支援サービスを約21.5億円で調達することになってる模様で、21.5億円を単純に700台で割ると、「DAPS GEN II」1台当たりの価格は約309万円と計算可能です
以前、米陸軍がGPS妨害対処訓練の一環として、スマホを使い慣れた世代の新兵教育の中で、GPSを使用しない「地図とコンパス」による地上航法訓練を取り入れ始めたところ、基本的な「地図とコンパス」航法をマスターできない不合格者が続出して対応に苦慮・・・とご紹介したことがありましたが、「DAPS GEN II」が救世主になれるのでしょうか?
DAPSの細部仕組みや性能細部が不明ですが、チマチマとフォローしていきたいと思います
敵のGPS電波妨害対処訓練は若者には高いハードル
「米陸軍兵士がGPS無しの訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/
被害状況下での戦いを想定せよ
「陸軍兵士がGPS無し訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/
「基本的な防御手段を復習せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-10
「米海軍将軍:妨害対処を徹底する」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-21
「空軍OBも被害対処を重視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23-1
「被害状況下で訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-23
本格紛争に向けた地上部隊の備え
「米陸軍が対中国の分散演習」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
「機動性&生存性の高い前線指揮所を」→https://holylandtokyo.com/2022/08/01/3519/
「米海兵隊が歩兵の多兵器習熟を試行中」→https://holylandtokyo.com/2021/05/07/1490/
「歩兵の多能兵士化を推進中」→https://holylandtokyo.com/2021/04/27/117/
「海兵隊で歩兵が砲兵を支援する新形態演習」→https://holylandtokyo.com/2021/04/15/107/
「米陸軍の前線電子戦部隊構想」→https://holylandtokyo.com/2021/03/11/158/
「米海兵隊は戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「無人機に偵察されたら」→https://holylandtokyo.com/2020/08/06/516/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>
-
米宇宙軍が衛星への燃料補給方式異なる2企業と並行連携
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2024-02-07
NG社がまず認証:大型給油衛星方式ベンチャー企業は他衛星サービス企業と連携し2025-6年のサービス開始を目指す迅速さ2月5日付米空軍協会web記事は、1月29日にNorthrop Grumman社が米宇宙軍から、衛星が他の衛星から「宇宙給油」を受ける際に受け側衛星が装備すべき「ガスタンクへの注入口」「ガスタンクの蓋」仕様について、同社開発のPassive Refueling Module (PRM)が宇宙受油用インターフェースとして初の認証を得たと発表し、2025年までにPRM搭載衛星を打ち上げる予定だと報じるとともに、米宇宙軍はNG社だけでなく、スタートアップ企業Orbit Fab社が開発したRapidly Attachable Fluid Transfer Interface (RAFTI)を8個ほど空軍研究所AFRLが既に入手し、2024年から確認を行うとともに、Orbit Fab社は「宇宙給油」の早期実用化に向け、他スタートアップ企業「ClearSpace(宇宙でのAAAを目指す企業)」や「Astroscale」と連携し、宇宙軍の「Prototype Servicer for Refueling (APS-R)」プロジェクト推進に取り組んでいる伝えていますいきなり複数企業名が飛び交って恐縮ですが、従来は軌道上の衛星機器がまだ使用可能でも、姿勢制御や軌道維持&修正のための燃料枯渇により、衛星が役割を終える事を受け入れてきましたが、宇宙アセットの脆弱性重要性やコスト意識が高まる中、軌道上の衛星に燃料補給して延命したり、故障した衛星部品を「宇宙軌道上で修理」して長く活用する技術開発に注目が集まり、技術成熟もあり、宇宙軍は2020年代半ばに「衛星への宇宙での燃料補給」を実現したい意向ですNorthrop Grumman社の構想は●同社が宇宙軍から認証を受けたPRM方式の「燃料タンクへの注入口」を生かすため、宇宙軍とNG社は宇宙給油衛星GAS-T(Geosynchronous Auxiliary Support Tanker)の開発契約を既に締結。GAS-Tは十分な燃料を搭載して、燃料補給を求める衛星に自ら移動&接近し給油する方式●GAS-T自身の搭載燃料が少なくなった場合には、宇宙燃料補給所(Depot)に立ち寄り、GAS-T自身が給油を受けて他衛星への給油を続ける構想もNG社は持っているが、まずは複数の衛星へ..
サイバーと宇宙
まんぐーす
2024-02-20T05:00:00+09:00
NG社がまず認証:大型給油衛星方式
ベンチャー企業は他衛星サービス企業と連携し
2025-6年のサービス開始を目指す迅速さ
2月5日付米空軍協会web記事は、1月29日にNorthrop Grumman社が米宇宙軍から、衛星が他の衛星から「宇宙給油」を受ける際に受け側衛星が装備すべき「ガスタンクへの注入口」「ガスタンクの蓋」仕様について、同社開発のPassive Refueling Module (PRM)が宇宙受油用インターフェースとして初の認証を得たと発表し、2025年までにPRM搭載衛星を打ち上げる予定だと報じるとともに、
米宇宙軍はNG社だけでなく、スタートアップ企業Orbit Fab社が開発したRapidly Attachable Fluid Transfer Interface (RAFTI)を8個ほど空軍研究所AFRLが既に入手し、2024年から確認を行うとともに、Orbit Fab社は「宇宙給油」の早期実用化に向け、他スタートアップ企業「ClearSpace(宇宙でのAAAを目指す企業)」や「Astroscale」と連携し、宇宙軍の「Prototype Servicer for Refueling (APS-R)」プロジェクト推進に取り組んでいる伝えています
いきなり複数企業名が飛び交って恐縮ですが、従来は軌道上の衛星機器がまだ使用可能でも、姿勢制御や軌道維持&修正のための燃料枯渇により、衛星が役割を終える事を受け入れてきましたが、宇宙アセットの脆弱性重要性やコスト意識が高まる中、軌道上の衛星に燃料補給して延命したり、故障した衛星部品を「宇宙軌道上で修理」して長く活用する技術開発に注目が集まり、技術成熟もあり、宇宙軍は2020年代半ばに「衛星への宇宙での燃料補給」を実現したい意向です
Northrop Grumman社の構想は
●同社が宇宙軍から認証を受けたPRM方式の「燃料タンクへの注入口」を生かすため、宇宙軍とNG社は宇宙給油衛星GAS-T(Geosynchronous Auxiliary Support Tanker)の開発契約を既に締結。GAS-Tは十分な燃料を搭載して、燃料補給を求める衛星に自ら移動&接近し給油する方式
●GAS-T自身の搭載燃料が少なくなった場合には、宇宙燃料補給所(Depot)に立ち寄り、GAS-T自身が給油を受けて他衛星への給油を続ける構想もNG社は持っているが、まずは複数の衛星への給油可能な燃料搭載量を持つ、技術的にも十分に成熟しているGAS-Tの実現に取り組む。その後の判断は宇宙軍に委ねる
●なお、NG社はPRM方式の特許を既に確保済だが、開発費を宇宙軍から支援されており、宇宙軍が他衛星企業にPRM方式「燃料タンクへの注入口」搭載を要望する場合、当該衛星企業は特許使用料を支払う必要はない
Orbit Fab社の構想は
●同社は3万ドルの使用料でRAFTIを他企業に提供する事業形態を想定している
●同社は宇宙での給油を迅速に実現するため、今後数年以内に「宇宙ガスステーション:Gas Stations in Space」を宇宙空間に配備する計画だが、当該「宇宙ガスステーション」と給油を受けたい衛星の間を行き来するサービスは、他のベンチャー企業「ClearSpace(宇宙でのAAAを目指す企業)」や「Astroscale」に委託する方式を想定している
●例えば「ClearSpace社」は宇宙でのAAA(日本のJAFに相当)を目指す企業で、地上で故障して道路わきに停車した自動車にレッカー車を派遣して修理工場までけん引したり、故障現場で修理作業を提供する総合衛星サービス提供企業を目指しており、そのサービスの一つとしてOrbit Fab社のガソリンスタンドから燃料切れ衛星への燃料輸送担当を期待されている
●またOrbit Fab社は、別のベンチャー企業Astroscaleとも連携協議を進めている
////////////////////////////////////////////
引き続きこの分野で「ど素人」状態のまんぐーすは、衛星に給油する燃料ってどんな燃料(Fuel)? 「Gas Stations in Space」はどれくらいの規模の宇宙船になるの? どうやって燃料を運ぶの? どのくらいの頻度で? 等々の疑問が次々に浮かんできますが、少しづつ学んでいく事といたしましょう
それにしても、日本は戦闘機開発に人材や資金や時間を費やしている場合なんでしょうか?
衛星の機動性SM&ロジL重視
「衛星への軌道上補給に企業活用へ」→https://holylandtokyo.com/2023/03/01/4320/
「宇宙軍は衛星のSM&L重視」→https://holylandtokyo.com/2023/01/18/4130/
「衛星延命に企業と連携」→https://holylandtokyo.com/2021/11/10/2350/
「推進力衛星とドッキングで延命」→https://holylandtokyo.com/2020/02/28/839/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
]]>