B-2から艦艇剛撃用 GPS 誘導JDAM試験か [Joint・統合参謀本部]
7月に「QUICKSINK」試験と米空軍発表
ただし使用兵器の細部には言及せず
8月8日、空軍研究所AFRLが、7月に艦艇攻撃用GPS誘導JDAM と推定される「QUICKSINK」構想の兵器試験を実施し、メキシコ湾上の廃棄貨物船 Monarch Countess を目標にして、B-2 爆撃機から兵器の投下したと発表しました
「QUICKSINK」構想は、米軍が対中国作戦で多数の艦艇を攻撃目標とする必要がある中、高価な魚雷や対艦ミサイルだけでは対処が難しいことから、より安価な攻撃兵器としてJDAM の艦艇攻撃用バージョン具現化を目指したものと言われています
ただ、敵艦艇の防空能力が飛躍的に向上する中、目標命中まで発射母機が目標にレーザー照射を継続する必要があるレーザー誘導型 JDAM (GBU-24)ではJDAM運搬母機のリスクが大きいことから、自ら目標に向かう GPS 誘導型(GBU-31)の改良を追求することになり、2022年4月実施のF-15Eでの「QUICKSINK」構想試験では、艦艇攻撃用に改良されたGPS誘導のGBU-31 JDAM が用いられました。
GPS 誘導型は、レーザー誘導型のように雲や雨に影響されない全天候対応型であることが特長ですが、レーザー誘導型が具体的命中個所を指定しやすいのに対し、GPS誘導で目標艦艇の「艦橋」「推進機関」「弾薬庫」「燃料タンク」などの具体的部分を狙って攻撃できるのかは不明で、米空軍側は 2021年夏の第1回「QUICKSINK」試験から、目標ポイント選択精度への言及は避けています。
しかし空軍研究所は、「QUICKSINK」構想試験を開始した 2021年時点から、標的船の上部、喫水線、水面直下など、標的船の特定の地点に兵器を狙い撃ちしたい語り、2022年4月の試験時にも開発担当幹部が、「JDAMの先端部分を再設計し、水面で爆弾がはじかれずに水面下の目標地点に到達できるよう検討している」と説明しており、2024年7月の試験では何らかの新たな改良がテストされた可能性があります
なお米空軍は、「QUICKSINK」が大型魚雷よりも安価で、更に「Open Systems Architecture」を追求して多様な企業の部品供給競争でコスト低減と性能向上を図っているとアピールし、米空軍のほとんどの戦闘機から発射できる柔軟性も「売り」にしています。
//////////////////////////////////////////////////
米空軍は「QUICKSINK」構想実現に向け、米海軍が進める「Maritime Weapon Program」との連携を図っているようですが、米海軍も中国艦艇攻撃能力の向上を、7月実施の RIMPAC 演習(環太平洋合同演習)でも主要な訓練項目としています。
具体的には、退役した輸送ドック型艦「ドゥビューク」と強襲揚陸艦「タラワ」を、ハワイ沖で米豪蘭韓&マレーシアの航空機と艦船が協力し、長距離対艦ミサイルやRGM-84ハープーンミサイルなどで攻撃し撃沈したようです。
QUICKSINK 計画の関連記事
「艦艇攻撃用に改良の GPS 誘導JDAM」→https://holylandtokyo.com/2022/05/13/3219/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
ただし使用兵器の細部には言及せず
8月8日、空軍研究所AFRLが、7月に艦艇攻撃用GPS誘導JDAM と推定される「QUICKSINK」構想の兵器試験を実施し、メキシコ湾上の廃棄貨物船 Monarch Countess を目標にして、B-2 爆撃機から兵器の投下したと発表しました
「QUICKSINK」構想は、米軍が対中国作戦で多数の艦艇を攻撃目標とする必要がある中、高価な魚雷や対艦ミサイルだけでは対処が難しいことから、より安価な攻撃兵器としてJDAM の艦艇攻撃用バージョン具現化を目指したものと言われています
ただ、敵艦艇の防空能力が飛躍的に向上する中、目標命中まで発射母機が目標にレーザー照射を継続する必要があるレーザー誘導型 JDAM (GBU-24)ではJDAM運搬母機のリスクが大きいことから、自ら目標に向かう GPS 誘導型(GBU-31)の改良を追求することになり、2022年4月実施のF-15Eでの「QUICKSINK」構想試験では、艦艇攻撃用に改良されたGPS誘導のGBU-31 JDAM が用いられました。
GPS 誘導型は、レーザー誘導型のように雲や雨に影響されない全天候対応型であることが特長ですが、レーザー誘導型が具体的命中個所を指定しやすいのに対し、GPS誘導で目標艦艇の「艦橋」「推進機関」「弾薬庫」「燃料タンク」などの具体的部分を狙って攻撃できるのかは不明で、米空軍側は 2021年夏の第1回「QUICKSINK」試験から、目標ポイント選択精度への言及は避けています。
しかし空軍研究所は、「QUICKSINK」構想試験を開始した 2021年時点から、標的船の上部、喫水線、水面直下など、標的船の特定の地点に兵器を狙い撃ちしたい語り、2022年4月の試験時にも開発担当幹部が、「JDAMの先端部分を再設計し、水面で爆弾がはじかれずに水面下の目標地点に到達できるよう検討している」と説明しており、2024年7月の試験では何らかの新たな改良がテストされた可能性があります
なお米空軍は、「QUICKSINK」が大型魚雷よりも安価で、更に「Open Systems Architecture」を追求して多様な企業の部品供給競争でコスト低減と性能向上を図っているとアピールし、米空軍のほとんどの戦闘機から発射できる柔軟性も「売り」にしています。
//////////////////////////////////////////////////
米空軍は「QUICKSINK」構想実現に向け、米海軍が進める「Maritime Weapon Program」との連携を図っているようですが、米海軍も中国艦艇攻撃能力の向上を、7月実施の RIMPAC 演習(環太平洋合同演習)でも主要な訓練項目としています。
具体的には、退役した輸送ドック型艦「ドゥビューク」と強襲揚陸艦「タラワ」を、ハワイ沖で米豪蘭韓&マレーシアの航空機と艦船が協力し、長距離対艦ミサイルやRGM-84ハープーンミサイルなどで攻撃し撃沈したようです。
QUICKSINK 計画の関連記事
「艦艇攻撃用に改良の GPS 誘導JDAM」→https://holylandtokyo.com/2022/05/13/3219/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
米陸軍は極超音速「155mm砲弾」開発を目指す [Joint・統合参謀本部]
2025年からの本格評価試験に向け研究開発
「極超音速ミサイルに比し桁違いに安価」
「安価な標的を排除」を目的に開発
8月9日付Defense-News 記事は、米陸軍の Robert Rasch迅速能力開発室長(陸軍中将:Director, Rapid Capabilities and Critical Technologies Office)が、155 mm砲から発射可能な「極超音速砲弾:a hypervelocity projectile」開発に着手し、基礎的な研究や試作を経て2025年から評価試験を行い、2028年度中には作戦運用試験を目指すと明らかにしたと報じています
Rasch 室長は8月8日の Space and Missile Defense Symposiumで記者に、米陸軍は敵攻撃用の極超音速ミサイル開発とは異なり、「桁違いに安価」だが、「非常に高速に飛翔して目標に接近できる」として、極超音速砲弾を「より安価な標的を排除するための潜在的な兵器として」活用すべく開発したい、と狙いを語った模様です。
また同中将は、米陸軍はオクラホマ州 Fort Sil の Fires Center of Excellenceで155mm極超音速砲弾の開発試作を計画しており、砲弾の物理的性質を約3年かけて研究する予定だと明らかにし、「大砲にかかる物理的な圧力はさまざまで、テストを通じて学ばなければならない」と未知への挑戦であることを示唆しています。
更に米陸軍は 155 mm極超音速砲弾に対応する自動装填装置の開発や、センサーと射撃手をつなぐ統合戦闘指揮システムを通じた運用を想定しており、一連の研究開発の一環として行うことを目指しているようです
///////////////////////////////////////////////////
同中将は「これは素晴らしい能力だ」、「これを陸軍プラットフォームに導入するのが楽しみだ」と Defense-News 記者に語っていますが、これから2025年開始構想の評価試験などを含む3年かけて基礎を固め、2028年度中には作戦運用試験を目指すとの「先の長いーーい」お話で、陸軍らしいな・・・と思いました。
安価な標的を迎撃するために、極超音速砲弾へのニーズがどれだけあるのかよく理解していませんが、作戦運用試験を予定していた2028年頃になって、ニーズが変化したから「やーめた」となりそうな気がしております
死屍累々の米陸軍プロジェクト
「混迷:ヘリ精密兵器や射出型無人機」→https://holylandtokyo.com/2024/07/01/6019/
「3千億円投入済のヘリ FARA 開発中止」→https://holylandtokyo.com/2024/02/22/5567/
「M1E3 構想が急遽加速化」→https://holylandtokyo.com/2024/06/19/5977/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
「極超音速ミサイルに比し桁違いに安価」
「安価な標的を排除」を目的に開発
8月9日付Defense-News 記事は、米陸軍の Robert Rasch迅速能力開発室長(陸軍中将:Director, Rapid Capabilities and Critical Technologies Office)が、155 mm砲から発射可能な「極超音速砲弾:a hypervelocity projectile」開発に着手し、基礎的な研究や試作を経て2025年から評価試験を行い、2028年度中には作戦運用試験を目指すと明らかにしたと報じています
Rasch 室長は8月8日の Space and Missile Defense Symposiumで記者に、米陸軍は敵攻撃用の極超音速ミサイル開発とは異なり、「桁違いに安価」だが、「非常に高速に飛翔して目標に接近できる」として、極超音速砲弾を「より安価な標的を排除するための潜在的な兵器として」活用すべく開発したい、と狙いを語った模様です。
また同中将は、米陸軍はオクラホマ州 Fort Sil の Fires Center of Excellenceで155mm極超音速砲弾の開発試作を計画しており、砲弾の物理的性質を約3年かけて研究する予定だと明らかにし、「大砲にかかる物理的な圧力はさまざまで、テストを通じて学ばなければならない」と未知への挑戦であることを示唆しています。
更に米陸軍は 155 mm極超音速砲弾に対応する自動装填装置の開発や、センサーと射撃手をつなぐ統合戦闘指揮システムを通じた運用を想定しており、一連の研究開発の一環として行うことを目指しているようです
///////////////////////////////////////////////////
同中将は「これは素晴らしい能力だ」、「これを陸軍プラットフォームに導入するのが楽しみだ」と Defense-News 記者に語っていますが、これから2025年開始構想の評価試験などを含む3年かけて基礎を固め、2028年度中には作戦運用試験を目指すとの「先の長いーーい」お話で、陸軍らしいな・・・と思いました。
安価な標的を迎撃するために、極超音速砲弾へのニーズがどれだけあるのかよく理解していませんが、作戦運用試験を予定していた2028年頃になって、ニーズが変化したから「やーめた」となりそうな気がしております
死屍累々の米陸軍プロジェクト
「混迷:ヘリ精密兵器や射出型無人機」→https://holylandtokyo.com/2024/07/01/6019/
「3千億円投入済のヘリ FARA 開発中止」→https://holylandtokyo.com/2024/02/22/5567/
「M1E3 構想が急遽加速化」→https://holylandtokyo.com/2024/06/19/5977/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
企業幹部:米海軍第6世代機計画変更の知らせはない [Joint・統合参謀本部]
NG社CEO、海軍はまだFA-XXの勝者を選考中と発言
「米海軍の予算削減検討は承知も、FA-XX計画変更の連絡なし」
7月25日、Northrop Grumman社CEOのKathy Warden氏が四半期決算説明会の席で、米海軍が 2025年度予算案で第6世代戦闘機FA-XX計画予算を削減していることに関し、米海軍が2025年にFA-XX製造会社を選定する予定までも変更したとは聞いていない、と述べました
具体的には同CEOは、「米海軍がアプローチ方針を変更したことを示すような知らせは受けていない。 我々は 2025年に結論が出る(FA-XX開発&製造企業の)選定に向けて現在競争中だ」と語った、と7月25日付 DefenseOne記事は紹介しています。
また同CEOは、「全般状況からして、わが社は国防省が6世代機を推進すると引き続き信じている。予算の優先順位整理のため、タイミングはやや流動的だが、彼らが前進する時、そしもし前進するならば、我々は良い位置にいると確信している」とも語った模様です。
//////////////////////////////////////
Northrop Grumman 社は2023年、米空軍の次世代制空機NGAD 計画への選定競争に参加しないと発表し、ボーイングとロッキード・マーティンのみが空軍計画受注を争っていますが、FA-18 スーパーホーネットの後継機となる米海軍のFA-XX 計画では競争を続ける意向を示しています。
現在、戦闘機を製造している米国企業はロッキード社とボーイング社の 2社のみですが、Northrop Grumman社は米空軍のB-21爆撃機を製造し、ロッキードのF-35 やボーイングのFA-18にも多くの部品を供給しており、自社の戦闘機製造ウハウ継承のためにも、FA-XXへの思いは相当のものがある模様です。
ただ米海軍に関して言えば、2024年に入って2025年度予算案で FIA-XX関連部分を既に10億ドル削減していますが、議員からは更なる削減要求が出ているところです。
また、米空軍はここ数力月、1機あたり450億円との概算価格を前に、自らの次世代戦闘機計画に疑問を投げかけ、空軍長官や参謀総長は要求性能や任務分担の根本的見直しの必要性を示唆するなど、近未来での前進が困難な雰囲気を漂わせています。
米海軍も米空軍も、そろそろ戦闘機に関して「年の納め時」なのかもしれません・・・。しみじみ思います
米空軍は次世代制空機 NGADに弱気
「価格低減が必須」→https://holylandtokyo.com/2024/07/19/6083/
「NGADの将来は不透明」→https://holylandtokyo.com/2024/06/18/6040/
米海軍の FIA-XX関連(2020年の記事ですが)
「FA-XXの構想進まず」→https://holylandtokyo.com/2020/06/30/634/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
「米海軍の予算削減検討は承知も、FA-XX計画変更の連絡なし」
7月25日、Northrop Grumman社CEOのKathy Warden氏が四半期決算説明会の席で、米海軍が 2025年度予算案で第6世代戦闘機FA-XX計画予算を削減していることに関し、米海軍が2025年にFA-XX製造会社を選定する予定までも変更したとは聞いていない、と述べました
具体的には同CEOは、「米海軍がアプローチ方針を変更したことを示すような知らせは受けていない。 我々は 2025年に結論が出る(FA-XX開発&製造企業の)選定に向けて現在競争中だ」と語った、と7月25日付 DefenseOne記事は紹介しています。
また同CEOは、「全般状況からして、わが社は国防省が6世代機を推進すると引き続き信じている。予算の優先順位整理のため、タイミングはやや流動的だが、彼らが前進する時、そしもし前進するならば、我々は良い位置にいると確信している」とも語った模様です。
//////////////////////////////////////
Northrop Grumman 社は2023年、米空軍の次世代制空機NGAD 計画への選定競争に参加しないと発表し、ボーイングとロッキード・マーティンのみが空軍計画受注を争っていますが、FA-18 スーパーホーネットの後継機となる米海軍のFA-XX 計画では競争を続ける意向を示しています。
現在、戦闘機を製造している米国企業はロッキード社とボーイング社の 2社のみですが、Northrop Grumman社は米空軍のB-21爆撃機を製造し、ロッキードのF-35 やボーイングのFA-18にも多くの部品を供給しており、自社の戦闘機製造ウハウ継承のためにも、FA-XXへの思いは相当のものがある模様です。
ただ米海軍に関して言えば、2024年に入って2025年度予算案で FIA-XX関連部分を既に10億ドル削減していますが、議員からは更なる削減要求が出ているところです。
また、米空軍はここ数力月、1機あたり450億円との概算価格を前に、自らの次世代戦闘機計画に疑問を投げかけ、空軍長官や参謀総長は要求性能や任務分担の根本的見直しの必要性を示唆するなど、近未来での前進が困難な雰囲気を漂わせています。
米海軍も米空軍も、そろそろ戦闘機に関して「年の納め時」なのかもしれません・・・。しみじみ思います
米空軍は次世代制空機 NGADに弱気
「価格低減が必須」→https://holylandtokyo.com/2024/07/19/6083/
「NGADの将来は不透明」→https://holylandtokyo.com/2024/06/18/6040/
米海軍の FIA-XX関連(2020年の記事ですが)
「FA-XXの構想進まず」→https://holylandtokyo.com/2020/06/30/634/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
米陸軍レーダー情報で米海軍ミサイルが迎撃成功 [Joint・統合参謀本部]
パラオ周辺で実施中の演習 Vallant Shield 24で試験
陸軍のLTAMDS データで海軍SM-6ミサイルが
グアム島のミサイル防衛網構築に朗報とか
7月18日レイセオン社が、米陸軍の新型ミサイル防衛レーダーLTAMDS と指揮統制システム IBCSによって誘導された米海軍 SM-6が、アジア太平洋で実施中の演習Valiant Shield 24の一環として行われた試験で、目標迎撃に成功したと発表しました
グアムの防空&MDシステム試験は2023年後半から個別装備単位で始まり、徐々にシステム関連説や融合試験に入っており、今後このような関連試験やテストのニュースが増えると予期されます。全体像については末尾の過去記事をご確認ください
シュミレーションと実機材を組み合わせて実施された本試験は、センサー(LTAMDS : Lower-Tier Air and Missile Defense Sensor)のシミュレーターが提供する迎撃対象目標データと、SM-6交戦制御ソフトからのミサイル制御指令を、陸軍の統合戦闘指揮システム(IBCS)にインプットする形で実施されました
レイセオン社は、本試験により、米海軍ミサイルSM-6が米陸軍防空ミサイルシステムIBCS 内で機能可能なことを証明でき、多様な脅威への対処選択肢を増やすことが出来ると成果を表現し、同社ミサイル部門社長は具体的に「インド太平洋軍にとっての実現可能な選択肢であることを確認できた」とも語っています
また同社長は、本試験は、国防省最優先事業としてグアムで構築中の防空&ミサイル防衛網の機能確認にも極めて重要な意味を持ち、対中国作戦の重要拠点となるグアム島の防衛を担う陸軍のMRC (Mid-Range Capability)発射装置、LTAMDS、IBCSと、SM-3およびSM- 6を運用するイージスシステムが一体運用可能なことを証明するものだとアピールしました
////////////////////////////////////////////
西太平洋の島々を機敏に移動し、中国軍と対することを念頭に置く米軍にとって、西太平洋の島影に配備された陸軍地上レーダーの情報を活用し、陸軍の地上攻撃部隊からだけでなく、米海軍艦艇からも敵を攻撃(や迎撃)できれば好都合ですし、戦力投射範囲の拡大も期待できるでししょう。
グアムの防衛網整備につながるのであれば、大いに期待したいと思います
グアムのミサイル防衛関連
「グアムMD本格試験を2024年開始」→https://holylandtokyo.com/2023/08/22/4937/
「グアムMDを再び語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/
「整備の状況と困難」→https://holylandtokyo.com/2022/04/05/3082/
「分散&機動展開可能型へ」→https://holylandtokyo.com/2021/08/23/2146/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
陸軍のLTAMDS データで海軍SM-6ミサイルが
グアム島のミサイル防衛網構築に朗報とか
7月18日レイセオン社が、米陸軍の新型ミサイル防衛レーダーLTAMDS と指揮統制システム IBCSによって誘導された米海軍 SM-6が、アジア太平洋で実施中の演習Valiant Shield 24の一環として行われた試験で、目標迎撃に成功したと発表しました
グアムの防空&MDシステム試験は2023年後半から個別装備単位で始まり、徐々にシステム関連説や融合試験に入っており、今後このような関連試験やテストのニュースが増えると予期されます。全体像については末尾の過去記事をご確認ください
シュミレーションと実機材を組み合わせて実施された本試験は、センサー(LTAMDS : Lower-Tier Air and Missile Defense Sensor)のシミュレーターが提供する迎撃対象目標データと、SM-6交戦制御ソフトからのミサイル制御指令を、陸軍の統合戦闘指揮システム(IBCS)にインプットする形で実施されました
レイセオン社は、本試験により、米海軍ミサイルSM-6が米陸軍防空ミサイルシステムIBCS 内で機能可能なことを証明でき、多様な脅威への対処選択肢を増やすことが出来ると成果を表現し、同社ミサイル部門社長は具体的に「インド太平洋軍にとっての実現可能な選択肢であることを確認できた」とも語っています
また同社長は、本試験は、国防省最優先事業としてグアムで構築中の防空&ミサイル防衛網の機能確認にも極めて重要な意味を持ち、対中国作戦の重要拠点となるグアム島の防衛を担う陸軍のMRC (Mid-Range Capability)発射装置、LTAMDS、IBCSと、SM-3およびSM- 6を運用するイージスシステムが一体運用可能なことを証明するものだとアピールしました
////////////////////////////////////////////
西太平洋の島々を機敏に移動し、中国軍と対することを念頭に置く米軍にとって、西太平洋の島影に配備された陸軍地上レーダーの情報を活用し、陸軍の地上攻撃部隊からだけでなく、米海軍艦艇からも敵を攻撃(や迎撃)できれば好都合ですし、戦力投射範囲の拡大も期待できるでししょう。
グアムの防衛網整備につながるのであれば、大いに期待したいと思います
グアムのミサイル防衛関連
「グアムMD本格試験を2024年開始」→https://holylandtokyo.com/2023/08/22/4937/
「グアムMDを再び語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/
「整備の状況と困難」→https://holylandtokyo.com/2022/04/05/3082/
「分散&機動展開可能型へ」→https://holylandtokyo.com/2021/08/23/2146/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
米海軍がイラン支援のフーシ派とWW2以来の長期激戦に [Joint・統合参謀本部]
中露との本格紛争に備えるはずが
フーシ派の無尽蔵無人機や巡航&弾道ミサイル対処に忙殺
フーシ派に対する地上攻撃は制約下に?
紅海やスエズ運河交通量は激減で終わり見えず
6月14日付 Military.com 記事が、イスラエルとハマス戦争やウクライナ戦争の陰に隠れて注目度が低下気味だが、紅海周辺で米軍主導で実施している対フーシ派作戦は、米海軍が直面しているWW2以降で最も激しい海戦になっている、との米海軍幹部や専門家の意見を紹介しています
2023年11月から始まった、フーシ派が「パレスチナ人支援が目的」だと主張する、紅海を航行する西側艦艇や船舶に対するドローンや巡航&弾道ミサイル攻撃への西側対処作戦は、イランから支援を受け、無尽蔵ともいえる上記兵器を保有するフーシ派との戦いとなっており、米海軍艦艇は休みない対応を迫られています
ラマダン期間の攻撃低下期間を除き、フーシ派はほぼ毎日、紅海・アデン湾や近傍の水路でミサイルやドローン(水中・水上を含む)攻撃等を仕掛けており、例えば1月9日の1回の攻撃への対処は、米イージス艦や空母艦載FA-18で、フーシ派発射のドローン18機、対艦巡航ミサイル2発、弾道ミサイル1発を撃墜する激しい戦闘として記録されています
Hudson 上級研究員(元海軍士官)Brian Clerk 氏は危機感を
●疑いの余地なく、米海軍がWW2以降で経験した最も長期にわたる激しい戦闘である
●フーシ派は、イラン提供兵器を使用した実戦経験を積み重ねて能力を高めており、米軍が阻止できないレベルになる寸前だ。フーシ派は有能で、豊富な経験を能力向上につなげている
米海軍空母戦闘群を率いるミゲス海軍少将は
●イランが資金援助だけでなくインテリジェンス支援も行ってることに、相当な確信をもっている。少なくともフーシ派が、海上輸送船や米軍艦を標的にする訓練も受けていることは事実だ
●(イランがフーシ派攻撃の標的を選定しているのかとの質問に対し、)イラン政府とフーシ派は協力関係にある。国連決議でワーシ派への武器供与が禁止されているにもかかわらず、イランはフーシ派に武器供給し続けている
●5月30日の米英によるフーシ派一斉攻撃は、350発以上の爆弾とミサイル50発以上を投入したものだったが、米海軍幹部は「フーシ派の地対空戦闘能力を大幅に低下させたが、彼らはまだ存在している」、「我々は常にフーシ派からの攻撃に備えている」とコメントしている
●フーシ派への攻撃をなぜもっと強めないのか、との不満の声が米海軍乗組員の間で上がっていることを海軍幹部も認めている
●ただ、国際情勢は単純ではなく、欧米海軍が周辺海域で防御態勢をとっている一方で、サウジはフーシ派との和平協定を模索し、ほぼ沈黙を守っている。報道では一部の中東諸国は米国に、自国領土からフーシ派攻撃を行わないよう要請しており、米空母の存在に依存している
●また、米国政府もフーシ派の行動を、イスラエルVSハマス戦争と同レベルで議論しておらず、イランがイスラエルに大規模なドローンとミサイル攻撃を行っても、間接的にイランとの緊張を緩和しようと努めているように見える
米海軍部隊の負担とエジプト等への影響
●現地で踏ん張る空母アイゼンハワー戦闘群は、10月7日のハマスによるイスラエル攻撃の 1週間後の展開以来、たった1回寄港しただけで作戦を継続しており、イージス艦は7日の内6日間は緊張を強いられる即時体制を継続している
●フーン派の攻撃で、この地域の船舶輸送は停滞しており、エジプトの低迷する経済にとって重要な外貸獲得源であるスエス連河収入は、攻撃開始以来半減している
///////////////////////////////////////////////////
ボディーブローのように、米海軍を中心とした米軍の能力を奪っている・・・と考えてよいと思います
定性的な記事内容の紹介しかできませんが、イスラエルとハマス戦争から派生する世界の動きは、皆の感覚がマヒしていく中で、大きなうねりとなっているような気がします
最近の中東やフーシ派関連の記事
「イスラエルVS イランを防研が速攻解説」→htps://holylandtokyo.com/2024/04/25/5847/
「フーチ派対処で防御態勢迅速改修改善」→https://holylandtokyo.com/2024/04/15/5741/
「出来すぎのイラン攻撃への迎撃作戦」→https://halylandtokyo.com/2024/04/16/581
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
フーシ派の無尽蔵無人機や巡航&弾道ミサイル対処に忙殺
フーシ派に対する地上攻撃は制約下に?
紅海やスエズ運河交通量は激減で終わり見えず
6月14日付 Military.com 記事が、イスラエルとハマス戦争やウクライナ戦争の陰に隠れて注目度が低下気味だが、紅海周辺で米軍主導で実施している対フーシ派作戦は、米海軍が直面しているWW2以降で最も激しい海戦になっている、との米海軍幹部や専門家の意見を紹介しています
2023年11月から始まった、フーシ派が「パレスチナ人支援が目的」だと主張する、紅海を航行する西側艦艇や船舶に対するドローンや巡航&弾道ミサイル攻撃への西側対処作戦は、イランから支援を受け、無尽蔵ともいえる上記兵器を保有するフーシ派との戦いとなっており、米海軍艦艇は休みない対応を迫られています
ラマダン期間の攻撃低下期間を除き、フーシ派はほぼ毎日、紅海・アデン湾や近傍の水路でミサイルやドローン(水中・水上を含む)攻撃等を仕掛けており、例えば1月9日の1回の攻撃への対処は、米イージス艦や空母艦載FA-18で、フーシ派発射のドローン18機、対艦巡航ミサイル2発、弾道ミサイル1発を撃墜する激しい戦闘として記録されています
Hudson 上級研究員(元海軍士官)Brian Clerk 氏は危機感を
●疑いの余地なく、米海軍がWW2以降で経験した最も長期にわたる激しい戦闘である
●フーシ派は、イラン提供兵器を使用した実戦経験を積み重ねて能力を高めており、米軍が阻止できないレベルになる寸前だ。フーシ派は有能で、豊富な経験を能力向上につなげている
米海軍空母戦闘群を率いるミゲス海軍少将は
●イランが資金援助だけでなくインテリジェンス支援も行ってることに、相当な確信をもっている。少なくともフーシ派が、海上輸送船や米軍艦を標的にする訓練も受けていることは事実だ
●(イランがフーシ派攻撃の標的を選定しているのかとの質問に対し、)イラン政府とフーシ派は協力関係にある。国連決議でワーシ派への武器供与が禁止されているにもかかわらず、イランはフーシ派に武器供給し続けている
●5月30日の米英によるフーシ派一斉攻撃は、350発以上の爆弾とミサイル50発以上を投入したものだったが、米海軍幹部は「フーシ派の地対空戦闘能力を大幅に低下させたが、彼らはまだ存在している」、「我々は常にフーシ派からの攻撃に備えている」とコメントしている
●フーシ派への攻撃をなぜもっと強めないのか、との不満の声が米海軍乗組員の間で上がっていることを海軍幹部も認めている
●ただ、国際情勢は単純ではなく、欧米海軍が周辺海域で防御態勢をとっている一方で、サウジはフーシ派との和平協定を模索し、ほぼ沈黙を守っている。報道では一部の中東諸国は米国に、自国領土からフーシ派攻撃を行わないよう要請しており、米空母の存在に依存している
●また、米国政府もフーシ派の行動を、イスラエルVSハマス戦争と同レベルで議論しておらず、イランがイスラエルに大規模なドローンとミサイル攻撃を行っても、間接的にイランとの緊張を緩和しようと努めているように見える
米海軍部隊の負担とエジプト等への影響
●現地で踏ん張る空母アイゼンハワー戦闘群は、10月7日のハマスによるイスラエル攻撃の 1週間後の展開以来、たった1回寄港しただけで作戦を継続しており、イージス艦は7日の内6日間は緊張を強いられる即時体制を継続している
●フーン派の攻撃で、この地域の船舶輸送は停滞しており、エジプトの低迷する経済にとって重要な外貸獲得源であるスエス連河収入は、攻撃開始以来半減している
///////////////////////////////////////////////////
ボディーブローのように、米海軍を中心とした米軍の能力を奪っている・・・と考えてよいと思います
定性的な記事内容の紹介しかできませんが、イスラエルとハマス戦争から派生する世界の動きは、皆の感覚がマヒしていく中で、大きなうねりとなっているような気がします
最近の中東やフーシ派関連の記事
「イスラエルVS イランを防研が速攻解説」→htps://holylandtokyo.com/2024/04/25/5847/
「フーチ派対処で防御態勢迅速改修改善」→https://holylandtokyo.com/2024/04/15/5741/
「出来すぎのイラン攻撃への迎撃作戦」→https://halylandtokyo.com/2024/04/16/581
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
米宇宙軍がSpaceX衛星の計画的軌道離脱で監視訓練 [Joint・統合参謀本部]
同社が古いStarlink衛星100基を計画的に大気突入破棄
その様子を米宇宙軍が監視訓練材料として各種センサーで
様々な衛星大気突入監視を若手兵士の能力向上に
6月28日、SpaceX社がインターネット回線を提供するStarlink衛星の中で、初期に打ち上げた古い衛星約100機を、今後数か月間で計画的に廃棄するため軌道高度を下げて大気圏突入させると発表しましたが、米宇宙軍(正確には宇宙コマンド)は、このSpaceX社の計画的で制御された衛星軌道変更と大気圏突入管理を、整備充実させつつある宇宙監視センサー網運用の絶好の訓練機会と捉え、若手宇宙軍兵士の育成等に最大限活用する(又は既に活用開始している)模様です
米国の連邦通信委員会(Federal Communications Commission)は、混雑が激しくなる宇宙空間の現状に鑑み、衛星が任務終了後は、商業事業者に5年以内に衛星を軌道から除外すること求める規則を採択していますが、低軌道に数千基の小型衛星を配置する「メガコンステレーション」構築に民間宇宙企業が次々乗り出す中、Starlink衛星だけでも5000基以上もある現状から、米宇宙軍の宇宙空間認識能力向上は喫緊の課題となっています
ベテランの宇宙軍兵士は長年の経験から、様々な衛星や宇宙デブリの種類や軌道状況により、当該物体が軌道を変えたり、大気圏再突入する際の「センサーシステム上での見え方」の「微妙な違い」を体感して理解していますが、この微妙な「監視システム上での見え方の違い」を言葉で説明するのは難しく、今回の計画的に制御された衛星軌道変更と大気圏突入は、最近急速に整備されつつある宇宙軍センサーシステムの確認や兵士育成に極めて有用な機会だと専門家は説明しています
本件を紹介する7月1日付米空軍協会web記事は、SpaceX社と米宇宙軍が協力して100基の衛星破棄情報を活用するとしか報じていませんが、米国以外の衛星運用者へも、SpaceX社は安全上の配慮から破棄衛星関連の情報を提供するでしょうし、また同盟国等との連携協力を重視する米宇宙軍も、同盟国軍の能力向上のために関連情報を提供すると思われますので、自衛隊の宇宙関連部隊などの訓練や試験にも活用されるのでしょう
また同記事は、「Starlink衛星の計画的に制御された軌道離脱を利用し、(米宇宙軍兵士は)ミサイル警戒スキルを磨くこともできる。ミサイル発射の赤外線放射と同様に、大気圏に再突入する衛星も独自の赤外線を放射するからだ」と紹介しており、地上でミサイル発射時に出る赤外線、弾道ミサイルが大気圏再突入する際の赤外線、衛星が破棄時に大気圏突入する際の赤外線を「見分ける」訓練になるのかも(?)しれません
////////////////////////////////////////////////
「Starlink衛星だけでも5000基以上もある現状」・・・だそうですが、どうやって把握するんでしょうか・・・・
先日は「商業宇宙戦争」との言葉絡みの論考(NIDSコメンタリー)をご紹介しましたが、これだけ民間企業活動が宇宙で活発になってくると、航空交通と同様に、一般政府機関の監督官庁が国際連携を図る必要がありそうです。もうあるのかもしれませんが・・・
宇宙監視関連の記事
「宇宙軍が部外委託拡大を」→https://holylandtokyo.com/2024/04/23/5771/
「AUKUS 3か国で宇宙監視レーダー」→https://holylandtokyo.com/2023/12/11/5338/
「衛星衝突防止を担う18SDS」→https://holylandtokyo.com/2023/12/07/5292/
「地球観測衛星を宇宙監視用へ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/22/2825/
「アラスカに新型レーダLRDR」→https://holylandtokyo.com/2021/12/15/2505/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
その様子を米宇宙軍が監視訓練材料として各種センサーで
様々な衛星大気突入監視を若手兵士の能力向上に
6月28日、SpaceX社がインターネット回線を提供するStarlink衛星の中で、初期に打ち上げた古い衛星約100機を、今後数か月間で計画的に廃棄するため軌道高度を下げて大気圏突入させると発表しましたが、米宇宙軍(正確には宇宙コマンド)は、このSpaceX社の計画的で制御された衛星軌道変更と大気圏突入管理を、整備充実させつつある宇宙監視センサー網運用の絶好の訓練機会と捉え、若手宇宙軍兵士の育成等に最大限活用する(又は既に活用開始している)模様です
米国の連邦通信委員会(Federal Communications Commission)は、混雑が激しくなる宇宙空間の現状に鑑み、衛星が任務終了後は、商業事業者に5年以内に衛星を軌道から除外すること求める規則を採択していますが、低軌道に数千基の小型衛星を配置する「メガコンステレーション」構築に民間宇宙企業が次々乗り出す中、Starlink衛星だけでも5000基以上もある現状から、米宇宙軍の宇宙空間認識能力向上は喫緊の課題となっています
ベテランの宇宙軍兵士は長年の経験から、様々な衛星や宇宙デブリの種類や軌道状況により、当該物体が軌道を変えたり、大気圏再突入する際の「センサーシステム上での見え方」の「微妙な違い」を体感して理解していますが、この微妙な「監視システム上での見え方の違い」を言葉で説明するのは難しく、今回の計画的に制御された衛星軌道変更と大気圏突入は、最近急速に整備されつつある宇宙軍センサーシステムの確認や兵士育成に極めて有用な機会だと専門家は説明しています
本件を紹介する7月1日付米空軍協会web記事は、SpaceX社と米宇宙軍が協力して100基の衛星破棄情報を活用するとしか報じていませんが、米国以外の衛星運用者へも、SpaceX社は安全上の配慮から破棄衛星関連の情報を提供するでしょうし、また同盟国等との連携協力を重視する米宇宙軍も、同盟国軍の能力向上のために関連情報を提供すると思われますので、自衛隊の宇宙関連部隊などの訓練や試験にも活用されるのでしょう
また同記事は、「Starlink衛星の計画的に制御された軌道離脱を利用し、(米宇宙軍兵士は)ミサイル警戒スキルを磨くこともできる。ミサイル発射の赤外線放射と同様に、大気圏に再突入する衛星も独自の赤外線を放射するからだ」と紹介しており、地上でミサイル発射時に出る赤外線、弾道ミサイルが大気圏再突入する際の赤外線、衛星が破棄時に大気圏突入する際の赤外線を「見分ける」訓練になるのかも(?)しれません
////////////////////////////////////////////////
「Starlink衛星だけでも5000基以上もある現状」・・・だそうですが、どうやって把握するんでしょうか・・・・
先日は「商業宇宙戦争」との言葉絡みの論考(NIDSコメンタリー)をご紹介しましたが、これだけ民間企業活動が宇宙で活発になってくると、航空交通と同様に、一般政府機関の監督官庁が国際連携を図る必要がありそうです。もうあるのかもしれませんが・・・
宇宙監視関連の記事
「宇宙軍が部外委託拡大を」→https://holylandtokyo.com/2024/04/23/5771/
「AUKUS 3か国で宇宙監視レーダー」→https://holylandtokyo.com/2023/12/11/5338/
「衛星衝突防止を担う18SDS」→https://holylandtokyo.com/2023/12/07/5292/
「地球観測衛星を宇宙監視用へ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/22/2825/
「アラスカに新型レーダLRDR」→https://holylandtokyo.com/2021/12/15/2505/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
速報!米国防省が日本配備の米軍戦闘機変更を発表 [Joint・統合参謀本部]
嘉手納F-15Cを36機のF-15EXへ
三沢F-16を48機のF-35Aへ
岩国海兵隊F-35Bの「機数調整:Modify」
「over the next several years」でと具体的時程なし
7月3日、米国防省が在日米軍配備の戦闘機変更計画を発表し、機種変更スケジュールは「over the next several years」と曖昧な表現になっていますが、嘉手納には新型第4世代機「F-15EX」を、三沢には最新5世代機「F-35A」を配備すると明らかにしました。
更に、岩国海兵隊に配備しているF-35B型(2022年5月から32機体制)に関し、「米海兵隊全体の戦力配備の近代化推進に伴い、F-35B配備機数を変更する:will modify the number of F-35B aircraft to support the Service's force design modernization implementation」と微妙な表現の発表を同時に行っています
なお嘉手納と三沢への具体的な配備機数も発表!
●嘉手納基地:48機のF-15C → 36機のF-15EX
●三沢基地:36機のF-16 → 48機のF-35A
ちなみに、沖縄の航空自衛隊那覇基地には日本のF-15Jが配備され、航空自衛隊三沢基地には日本のF-35Aが配備されており、維持整備面での連携や部隊訓練や運用面での日米連携がさらに深化しそうです。
嘉手納基地のF-15C日本撤退&母国で退役が2022年10月に突然発表され、その後様々な米軍機がローテーション派遣で「穴埋め代替」を行ってきたわけですが、まんぐーすの予想(後継機の配備はなく、自然消滅的にローテーション配備終了)とは異なり、最新型第4世代機が配備されることとなりました
また三沢基地への配備が決まったF-35Aですが、米空軍が海外に配備しているのは現時点で英国のLakenheath英空軍基地のみであり、三沢は世界で2番目の米空軍F-35配備基地となります
なお、現時点での米空軍F-15EXとF-35A配備状況と将来配備計画は、以下の7月3日付米空軍協会web記事でご確認ください
→ https://www.airandspaceforces.com/air-force-f-15ex-f-35-japan-kadena-misawa/
とりあえず速報でお伝えしました!
嘉手納基地F-15C撤退発表後の動き
「代替ローテーション戦闘機の状況」→https://holylandtokyo.com/2024/05/22/5868/
「F-35とF-15C→F-22とF-16へ」→https://holylandtokyo.com/2024/05/02/5803/
「ユタ州からF-35派遣」→https://holylandtokyo.com/2023/11/24/5271/
懸念されていた三沢空軍部隊
「事故続き三沢F-16部隊」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-22
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
三沢F-16を48機のF-35Aへ
岩国海兵隊F-35Bの「機数調整:Modify」
「over the next several years」でと具体的時程なし
7月3日、米国防省が在日米軍配備の戦闘機変更計画を発表し、機種変更スケジュールは「over the next several years」と曖昧な表現になっていますが、嘉手納には新型第4世代機「F-15EX」を、三沢には最新5世代機「F-35A」を配備すると明らかにしました。
更に、岩国海兵隊に配備しているF-35B型(2022年5月から32機体制)に関し、「米海兵隊全体の戦力配備の近代化推進に伴い、F-35B配備機数を変更する:will modify the number of F-35B aircraft to support the Service's force design modernization implementation」と微妙な表現の発表を同時に行っています
なお嘉手納と三沢への具体的な配備機数も発表!
●嘉手納基地:48機のF-15C → 36機のF-15EX
●三沢基地:36機のF-16 → 48機のF-35A
ちなみに、沖縄の航空自衛隊那覇基地には日本のF-15Jが配備され、航空自衛隊三沢基地には日本のF-35Aが配備されており、維持整備面での連携や部隊訓練や運用面での日米連携がさらに深化しそうです。
嘉手納基地のF-15C日本撤退&母国で退役が2022年10月に突然発表され、その後様々な米軍機がローテーション派遣で「穴埋め代替」を行ってきたわけですが、まんぐーすの予想(後継機の配備はなく、自然消滅的にローテーション配備終了)とは異なり、最新型第4世代機が配備されることとなりました
また三沢基地への配備が決まったF-35Aですが、米空軍が海外に配備しているのは現時点で英国のLakenheath英空軍基地のみであり、三沢は世界で2番目の米空軍F-35配備基地となります
なお、現時点での米空軍F-15EXとF-35A配備状況と将来配備計画は、以下の7月3日付米空軍協会web記事でご確認ください
→ https://www.airandspaceforces.com/air-force-f-15ex-f-35-japan-kadena-misawa/
とりあえず速報でお伝えしました!
嘉手納基地F-15C撤退発表後の動き
「代替ローテーション戦闘機の状況」→https://holylandtokyo.com/2024/05/22/5868/
「F-35とF-15C→F-22とF-16へ」→https://holylandtokyo.com/2024/05/02/5803/
「ユタ州からF-35派遣」→https://holylandtokyo.com/2023/11/24/5271/
懸念されていた三沢空軍部隊
「事故続き三沢F-16部隊」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-22
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
米比演習で米支援で強化中の対中国拠点を活用 [Joint・統合参謀本部]
Balikatan演習と事前訓練で米陸軍が比軍強化に尽力
米比防衛協力合意EDCAでテコ入れ3施設を活用
「HIMARS」の新拠点への持ち込みが話題に
米陸軍訓練施設「JPMRC X」をアジアへ初持ち込み
5月12日付Defense-Newsが、対中国を念頭に置いたフィリピンと米国間の防衛協力合意(2014年締結:EDCA:Enhanced Defense Cooperation Agreement)に基づき、米軍が対中国で「戦力の分散運用」を目指す中で、分散展開先や物資集積場所等になりそうな基盤確保を積極的に進め始め、2014年のEDCA締結後に5か所、2023年には追加で4か所の港湾や空港や倉庫や兵舎等の整備増強プロジェクトが進んでいますが、
4月中旬から5月9日まで実施された米比演習「Balikatan」で、2023年に追加強化が始まった4か所のうち、3か所が重点拠点として米比訓練で使用され、公にはフィリピン防衛力の強化との名目ながら、強く対中国作戦を意識した想定となっている同演習で重要な役割を果たしていると紹介しています
また同記事は、米陸軍が対中国を想定した西太平洋の島々等での「分散作戦運用」や「地域同盟国等との連携作戦」を意識し、数十年ぶりに新規設定した「combat training center」演習を、対中国用のJPMRC(Joint Pacific Multinational Readiness Center)として2022年からハワイで、東南アジア国(フィリピン、インドネシア、タイ陸軍)等と開始している中、
対テロや対反政府過激派対策から対中国フィリピン国土防衛強化への転換に着手した比政府のニーズと合致する形で、対中国用のJPMRCを初めて日付変更線より西に展開して、「Balikatan」演習前後にフィリピンで行い、本格演習「Balikatan」前に比軍の射撃能力強化等の底上げに取り組んだとも紹介していますので、概要をつまみ食い紹介いたします。
米比Balikatan演習での米支援施設の重点活用
●まず、中国が第2トーマス礁を力で支配することに対抗するため、南シナ海に突き出したBalabac島で、WW2時に座礁した戦車揚陸艦「シエラの母」を活用したフィリピン海兵隊が死守している拠点を利用した活動
●次に、ルソン島の北部中央に位置するLa-Lo飛行場を、台湾とフィリピンの間のバシー海峡の台湾寄りにあるフィリピン領「Batanes province」のBasco島に展開した米陸軍タスクフォースへのC-130輸送機によるHIMARS(High Mobility Artillery Rocket System)空輸や、CH-47やUN-60Mによる展開戦力支援の拠点基地として活用
●更に、ルソン島北部のNaval Base Camilo Osiasも細部非公開ながら同演習で使用。ただし、4つ目の拠点Camp Melchor Dela Cruz in Gamuは、米比演習「Balikatan」では不使用
対中国用JPMRCの西半球初展開
●歩兵旅団戦闘チームを検証する戦闘訓練センターのローテーション派遣として、JPMRCを西半球に初めて展開し、 陸軍第25歩兵師団が計器システム、運動統制グループを持ち込み、仮設敵を演じてフィリピン軍の射撃能力向上に取り組んだ。
●結果として、「Balikatan」演習でフィリピン軍の火砲攻撃射距離が延伸し、「Balikatan」で重要な海洋水路防御作戦に参加&貢献した
////////////////////////////////////////////
特にフィリピンは、2022年7月に就任したマルコスJr大統領が対中国を意識して米国との連携強化に大きくかじを取り、米国もドゥテルテ大統領時代の麻薬撲滅作戦を「人道的に問題」などと非難してフィリピン支援を停止した5年前からの姿勢を改め、米比関係は急激に右肩上がりの改善を見せています
まんぐーすはこの急激な米比軍事協力改善&発展の背景には、米国やフィリピン情報機関による「中国経済崩壊」の早期「見極め」があったと想像をたくましくしていますが、日本は政府としてどのように中国経済崩壊状況を見ているのでしょうか? 防衛研究所をして「中国経済崩壊」からは目を背ける姿勢を強固に貫いており、いわゆる日本政府として中国に忖度する姿勢をコッソリ打ち出していたかのような予想を呈しています。今でも・・・
フィリピンと米が対中国で協力強化
「台湾近傍フィリピン北端に米国支援で軍施設増強中」→https://holylandtokyo.com/2024/02/15/5548/
「米空軍F-22が初展開」→https://holylandtokyo.com/2023/03/24/4442/
「JPMRCでアジア太平洋協力強化」→https://holylandtokyo.com/2023/02/20/4294/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
米比防衛協力合意EDCAでテコ入れ3施設を活用
「HIMARS」の新拠点への持ち込みが話題に
米陸軍訓練施設「JPMRC X」をアジアへ初持ち込み
5月12日付Defense-Newsが、対中国を念頭に置いたフィリピンと米国間の防衛協力合意(2014年締結:EDCA:Enhanced Defense Cooperation Agreement)に基づき、米軍が対中国で「戦力の分散運用」を目指す中で、分散展開先や物資集積場所等になりそうな基盤確保を積極的に進め始め、2014年のEDCA締結後に5か所、2023年には追加で4か所の港湾や空港や倉庫や兵舎等の整備増強プロジェクトが進んでいますが、
4月中旬から5月9日まで実施された米比演習「Balikatan」で、2023年に追加強化が始まった4か所のうち、3か所が重点拠点として米比訓練で使用され、公にはフィリピン防衛力の強化との名目ながら、強く対中国作戦を意識した想定となっている同演習で重要な役割を果たしていると紹介しています
また同記事は、米陸軍が対中国を想定した西太平洋の島々等での「分散作戦運用」や「地域同盟国等との連携作戦」を意識し、数十年ぶりに新規設定した「combat training center」演習を、対中国用のJPMRC(Joint Pacific Multinational Readiness Center)として2022年からハワイで、東南アジア国(フィリピン、インドネシア、タイ陸軍)等と開始している中、
対テロや対反政府過激派対策から対中国フィリピン国土防衛強化への転換に着手した比政府のニーズと合致する形で、対中国用のJPMRCを初めて日付変更線より西に展開して、「Balikatan」演習前後にフィリピンで行い、本格演習「Balikatan」前に比軍の射撃能力強化等の底上げに取り組んだとも紹介していますので、概要をつまみ食い紹介いたします。
米比Balikatan演習での米支援施設の重点活用
●まず、中国が第2トーマス礁を力で支配することに対抗するため、南シナ海に突き出したBalabac島で、WW2時に座礁した戦車揚陸艦「シエラの母」を活用したフィリピン海兵隊が死守している拠点を利用した活動
●次に、ルソン島の北部中央に位置するLa-Lo飛行場を、台湾とフィリピンの間のバシー海峡の台湾寄りにあるフィリピン領「Batanes province」のBasco島に展開した米陸軍タスクフォースへのC-130輸送機によるHIMARS(High Mobility Artillery Rocket System)空輸や、CH-47やUN-60Mによる展開戦力支援の拠点基地として活用
●更に、ルソン島北部のNaval Base Camilo Osiasも細部非公開ながら同演習で使用。ただし、4つ目の拠点Camp Melchor Dela Cruz in Gamuは、米比演習「Balikatan」では不使用
対中国用JPMRCの西半球初展開
●歩兵旅団戦闘チームを検証する戦闘訓練センターのローテーション派遣として、JPMRCを西半球に初めて展開し、 陸軍第25歩兵師団が計器システム、運動統制グループを持ち込み、仮設敵を演じてフィリピン軍の射撃能力向上に取り組んだ。
●結果として、「Balikatan」演習でフィリピン軍の火砲攻撃射距離が延伸し、「Balikatan」で重要な海洋水路防御作戦に参加&貢献した
////////////////////////////////////////////
特にフィリピンは、2022年7月に就任したマルコスJr大統領が対中国を意識して米国との連携強化に大きくかじを取り、米国もドゥテルテ大統領時代の麻薬撲滅作戦を「人道的に問題」などと非難してフィリピン支援を停止した5年前からの姿勢を改め、米比関係は急激に右肩上がりの改善を見せています
まんぐーすはこの急激な米比軍事協力改善&発展の背景には、米国やフィリピン情報機関による「中国経済崩壊」の早期「見極め」があったと想像をたくましくしていますが、日本は政府としてどのように中国経済崩壊状況を見ているのでしょうか? 防衛研究所をして「中国経済崩壊」からは目を背ける姿勢を強固に貫いており、いわゆる日本政府として中国に忖度する姿勢をコッソリ打ち出していたかのような予想を呈しています。今でも・・・
フィリピンと米が対中国で協力強化
「台湾近傍フィリピン北端に米国支援で軍施設増強中」→https://holylandtokyo.com/2024/02/15/5548/
「米空軍F-22が初展開」→https://holylandtokyo.com/2023/03/24/4442/
「JPMRCでアジア太平洋協力強化」→https://holylandtokyo.com/2023/02/20/4294/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
更に米陸軍混迷:ヘリ精密兵器や射出型無人機検討 [Joint・統合参謀本部]
5年検討のヘリ用精密誘導ミサイル混沌
射出無人機「Launched Effect」の検討進捗で
両兵器の役割オーバーラップで選択紛糾
6月7日付や3月26日付 Defense-News等が、昨年あたりから米陸軍検討が本格化してきた「Launched Effect」(地上及び空中から射出される無人機で、偵察、通信中継、目標照準、攻撃等の役割担う)の影響もあり、5年前から陸軍が検討してきたAH-64 アパッチへリ等に搭載する精密誘導ミサイル LRPM 選定が振出しに戻ってたと報じています
米陸軍内では、ウクライナの教訓等々を踏まえ、2月に20年にわたり 3000億円以上を投入して行われてきた値察&攻撃へリ計画(FARA)が中止となり、無人機の導入活用を含め、UH-60やAH-64やCH-47の改修やエンジン更新計画の大幅見直しが始まったり、
地上装備でも、様々な紆余曲折を既に経ているM1A2 戦車の最新型検討が2023年秋に中止になったと思ったら、突然「M1E3 構想」なるものが浮上し、ブラッドレー兵員装甲車後継導入と同時期に大幅前倒し導入できないかとバタバタの検討が開始されたりしていますが、どの兵器も2026-28年頃までじっくり検討するとの時間感覚で、前に進みそうな雰囲気が感じられない状況です
まず 5年前から検討のヘリ用精密誘導兵器LRPM
●米陸軍は5年前からLRPM (長距離精密兵器 Long-Range Precision Munition)検討を行い、イスラエルのRafael 社製 Spike ミサイルを試行調達してLRPM用途の適用確認を行ったが、決定は延期されている。陸軍は HellfireやJAGM(Joint Air-to-Ground Missile)を保有しているが、Spikeミサイルが後継に適当なのか納得できていない。
●LPRMと、別途討が行われている中距離部門の「Launched Efrect」とは似た機能を持っており、「Launched Effect」がLPRMの役割が果たせる可能性もあり、もう少し見極める必要があると陸軍幹部は説明している
では、「Launched Effect」の検討状況は
●短射程「Launched Effect」は、2024年3月中旬に提案要求書を発出し、2025年度始めに試作段階に進み、26年度後半から生産を実現したい意向
●中射程「Launched Effect」は、5企業が共同開発したプロトタイプ評価を陸軍が9月までに終え、その後多様な選択肢を検討する予定
●長射程「Launched Effect」は、2024年3月に入って予算確保の目途が立ったばかりだが、 2025年度末には機能開発のための試作を始め、2027年度初めに生産開始を追求
////////////////////////////////////////////////
上で紹介している LRPM や Launched Effect の射程距離がはっきりしませんが、ヘリ搭載LRPMの「長距離」でも Spike やJAGMの射程距離からすると10km超程度のイメージで、Launched Effectの短中長射程も、1から 10km程度のイメージでよいと思います。
無人機である「Launched Effect」の提案募集には、新興企業を多数含む企業が応じている模様で、米陸軍としては歓迎姿勢ですが、多くのアイディアが乱れ飛ぶ状況で、これまでの経緯からして米陸軍が選べるのか「?」です
FARAやM1A2戦車改良等の話題も含め、米陸軍だけを「ディスっている」ように見えるかもしれませんが、米海空軍も同じであり、西側諸国軍も今後混迷を追随することになるでしょう。それだけ無人機の役割や、サイバー・宇宙・電子戦ドメインの比重が急速に高まって戦いの様相が変化しているからです
一つ米陸軍の英断を讃えるなら、攻撃&偵察へリFARA 計画をスクラップしたことで、まとまった資金を新分野に投入可能にしたことです。余剰資金をうまく再利用できるかは別問題ですが・・・
20年間横討の末に
「3千億円投入済のヘリ FARA 開発中止」→https://holylandtokyo.com/2024/02/22/5567/
M1A2 戦車の最新版検討が突然加速!?
「M1E3 構想が急遽加速化」→https://holylandtokyo.com/2024/06/19/5977/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
射出無人機「Launched Effect」の検討進捗で
両兵器の役割オーバーラップで選択紛糾
6月7日付や3月26日付 Defense-News等が、昨年あたりから米陸軍検討が本格化してきた「Launched Effect」(地上及び空中から射出される無人機で、偵察、通信中継、目標照準、攻撃等の役割担う)の影響もあり、5年前から陸軍が検討してきたAH-64 アパッチへリ等に搭載する精密誘導ミサイル LRPM 選定が振出しに戻ってたと報じています
米陸軍内では、ウクライナの教訓等々を踏まえ、2月に20年にわたり 3000億円以上を投入して行われてきた値察&攻撃へリ計画(FARA)が中止となり、無人機の導入活用を含め、UH-60やAH-64やCH-47の改修やエンジン更新計画の大幅見直しが始まったり、
地上装備でも、様々な紆余曲折を既に経ているM1A2 戦車の最新型検討が2023年秋に中止になったと思ったら、突然「M1E3 構想」なるものが浮上し、ブラッドレー兵員装甲車後継導入と同時期に大幅前倒し導入できないかとバタバタの検討が開始されたりしていますが、どの兵器も2026-28年頃までじっくり検討するとの時間感覚で、前に進みそうな雰囲気が感じられない状況です
まず 5年前から検討のヘリ用精密誘導兵器LRPM
●米陸軍は5年前からLRPM (長距離精密兵器 Long-Range Precision Munition)検討を行い、イスラエルのRafael 社製 Spike ミサイルを試行調達してLRPM用途の適用確認を行ったが、決定は延期されている。陸軍は HellfireやJAGM(Joint Air-to-Ground Missile)を保有しているが、Spikeミサイルが後継に適当なのか納得できていない。
●LPRMと、別途討が行われている中距離部門の「Launched Efrect」とは似た機能を持っており、「Launched Effect」がLPRMの役割が果たせる可能性もあり、もう少し見極める必要があると陸軍幹部は説明している
では、「Launched Effect」の検討状況は
●短射程「Launched Effect」は、2024年3月中旬に提案要求書を発出し、2025年度始めに試作段階に進み、26年度後半から生産を実現したい意向
●中射程「Launched Effect」は、5企業が共同開発したプロトタイプ評価を陸軍が9月までに終え、その後多様な選択肢を検討する予定
●長射程「Launched Effect」は、2024年3月に入って予算確保の目途が立ったばかりだが、 2025年度末には機能開発のための試作を始め、2027年度初めに生産開始を追求
////////////////////////////////////////////////
上で紹介している LRPM や Launched Effect の射程距離がはっきりしませんが、ヘリ搭載LRPMの「長距離」でも Spike やJAGMの射程距離からすると10km超程度のイメージで、Launched Effectの短中長射程も、1から 10km程度のイメージでよいと思います。
無人機である「Launched Effect」の提案募集には、新興企業を多数含む企業が応じている模様で、米陸軍としては歓迎姿勢ですが、多くのアイディアが乱れ飛ぶ状況で、これまでの経緯からして米陸軍が選べるのか「?」です
FARAやM1A2戦車改良等の話題も含め、米陸軍だけを「ディスっている」ように見えるかもしれませんが、米海空軍も同じであり、西側諸国軍も今後混迷を追随することになるでしょう。それだけ無人機の役割や、サイバー・宇宙・電子戦ドメインの比重が急速に高まって戦いの様相が変化しているからです
一つ米陸軍の英断を讃えるなら、攻撃&偵察へリFARA 計画をスクラップしたことで、まとまった資金を新分野に投入可能にしたことです。余剰資金をうまく再利用できるかは別問題ですが・・・
20年間横討の末に
「3千億円投入済のヘリ FARA 開発中止」→https://holylandtokyo.com/2024/02/22/5567/
M1A2 戦車の最新版検討が突然加速!?
「M1E3 構想が急遽加速化」→https://holylandtokyo.com/2024/06/19/5977/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
低性能でも大量のEW兵器連携に圧倒される現実 [Joint・統合参謀本部]
米軍幹部がロシア・ハマス・フーチ派EWを語る
また友軍EW装備の相互連携性を高める必要性主張
調達段階から前線との密な連携不可欠と
6月5日付Defense-Newsが、同日開催された「2024 C4ISRNET Conference」で米軍幹部が語った、最近のロシアやハマスやフーチ派との戦いから得られた電子戦EW(EMS:electromagnetic spectrumでの戦い)分野での教訓を取り上げ、ウクライナやガザや紅海で相手は、EW分野で「手ごわい」電子戦ツールを展開しており、「大量の、それほど精巧ではない能力だが、時には、その大量さが、非常に圧倒的になることもある」と語ったと紹介しています
そして本格紛争への備えを強化しつつある米軍は、同時に「このような多様な種類の脅威に対処ために、基本的に全域にわたって電子戦兵器を構築する必要がある」と述べると同時に、(ロシアやハマスやフーチ派のEWから学び、)米軍や西側は、主要な兵器システムへの重点を減らしても、保有する低コストのEW兵器システム間の相互運用性や相互連携能力を高めることがが電子戦に役立つだろう」とまで主張しています。
例えば米陸軍EW担当のEd Barker准将は
●本格紛争で対峙する可能性のある大国(中露)だけでなく、ハマスの様な勢力が強力なEW能力を持っている事を肝に銘じるべき。そして米軍EWシステムはこのような益々厳しさを増すEMS環境でも、指揮官や部隊がEMS世界で行動の自由を確保できるよう準備する必要がある
●(米軍が)少数の高能力EW装備を保有していても、「大量の、それほど精巧ではない敵のEW能力と対峙し、時には、その大量さが、非常に圧倒的になる」こともあり、我々は様々な脅威に備える必要がある
米空軍第350 Spectrum Warfare航空団司令官のKoslov大佐は
●(現有装備で、)今夜本格紛争を戦うことになれば、現有システムの相互運用性を高め、現有装備間のデータ共有能力を高める事を考えなければならない
●このように友軍装備品の相互運用性や情報共有能力を高めるには、前線作戦運用要員と調達部門が極めて緊密(super close)に連携し、相互運用性を推進する要件を最初から明確にしておく必要がある。
●ウクライナとガザ地区で、敵は「戦略的かつ作戦上の影響を及ぼすような」低コストのツールの使用に成功しており、米国はこうしたアプローチに対抗可能なシステム開発が必要
●さらに踏み込んでいえば、「主要な兵器システムへの重点を減らし、それらの兵器システムが使用するデータに重点を置くこと:a reduced focus on major weapon systems, and more of a focus on the data that those weapon systems use」も考えるべき
///////////////////////////////////////
非常に短い記事で、ご紹介した米軍幹部の発言全体のトーンや流れが不明確ですが、想像をたくましくすると、「旧式のEW装備を巧みに連携して使用する敵は極めて大きな脅威で圧倒的」、「これら脅威に、少数の高能力EW装備で対抗しようとしても対応困難」「EWの基本を踏まえた、緊密な部隊間連携やそれが可能な装備調達が米軍には不可欠」とも解釈できます
対テロ作戦に注力した20数年間で米軍内(西側軍でも)のEW基礎能力は失われ、いまその回復に着手し始めたばかりでしょうが、いまや対テロの相手だった敵まで、米軍を上回るEW能力を身に着けつつあるということです。恐ろしい時代です
EW能力再構築への取り組み
「宇宙軍が電子戦EW演習拡大」→https://holylandtokyo.com/2023/11/02/5124/
「空軍が新電子戦機EC-37B受領」→https://holylandtokyo.com/2023/09/20/5052/
「EA-18G他軍種支援用が2025年退役」→https://holylandtokyo.com/2022/05/27/3249/
「陸軍戦闘車両へ電子戦装備TLS」→https://holylandtokyo.com/2023/08/24/4947/
「SpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「空軍が電子戦専門Wing創設」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-30
原点:ロシアの電子戦に驚愕の米軍
「東欧と中東でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
また友軍EW装備の相互連携性を高める必要性主張
調達段階から前線との密な連携不可欠と
6月5日付Defense-Newsが、同日開催された「2024 C4ISRNET Conference」で米軍幹部が語った、最近のロシアやハマスやフーチ派との戦いから得られた電子戦EW(EMS:electromagnetic spectrumでの戦い)分野での教訓を取り上げ、ウクライナやガザや紅海で相手は、EW分野で「手ごわい」電子戦ツールを展開しており、「大量の、それほど精巧ではない能力だが、時には、その大量さが、非常に圧倒的になることもある」と語ったと紹介しています
そして本格紛争への備えを強化しつつある米軍は、同時に「このような多様な種類の脅威に対処ために、基本的に全域にわたって電子戦兵器を構築する必要がある」と述べると同時に、(ロシアやハマスやフーチ派のEWから学び、)米軍や西側は、主要な兵器システムへの重点を減らしても、保有する低コストのEW兵器システム間の相互運用性や相互連携能力を高めることがが電子戦に役立つだろう」とまで主張しています。
例えば米陸軍EW担当のEd Barker准将は
●本格紛争で対峙する可能性のある大国(中露)だけでなく、ハマスの様な勢力が強力なEW能力を持っている事を肝に銘じるべき。そして米軍EWシステムはこのような益々厳しさを増すEMS環境でも、指揮官や部隊がEMS世界で行動の自由を確保できるよう準備する必要がある
●(米軍が)少数の高能力EW装備を保有していても、「大量の、それほど精巧ではない敵のEW能力と対峙し、時には、その大量さが、非常に圧倒的になる」こともあり、我々は様々な脅威に備える必要がある
米空軍第350 Spectrum Warfare航空団司令官のKoslov大佐は
●(現有装備で、)今夜本格紛争を戦うことになれば、現有システムの相互運用性を高め、現有装備間のデータ共有能力を高める事を考えなければならない
●このように友軍装備品の相互運用性や情報共有能力を高めるには、前線作戦運用要員と調達部門が極めて緊密(super close)に連携し、相互運用性を推進する要件を最初から明確にしておく必要がある。
●ウクライナとガザ地区で、敵は「戦略的かつ作戦上の影響を及ぼすような」低コストのツールの使用に成功しており、米国はこうしたアプローチに対抗可能なシステム開発が必要
●さらに踏み込んでいえば、「主要な兵器システムへの重点を減らし、それらの兵器システムが使用するデータに重点を置くこと:a reduced focus on major weapon systems, and more of a focus on the data that those weapon systems use」も考えるべき
///////////////////////////////////////
非常に短い記事で、ご紹介した米軍幹部の発言全体のトーンや流れが不明確ですが、想像をたくましくすると、「旧式のEW装備を巧みに連携して使用する敵は極めて大きな脅威で圧倒的」、「これら脅威に、少数の高能力EW装備で対抗しようとしても対応困難」「EWの基本を踏まえた、緊密な部隊間連携やそれが可能な装備調達が米軍には不可欠」とも解釈できます
対テロ作戦に注力した20数年間で米軍内(西側軍でも)のEW基礎能力は失われ、いまその回復に着手し始めたばかりでしょうが、いまや対テロの相手だった敵まで、米軍を上回るEW能力を身に着けつつあるということです。恐ろしい時代です
EW能力再構築への取り組み
「宇宙軍が電子戦EW演習拡大」→https://holylandtokyo.com/2023/11/02/5124/
「空軍が新電子戦機EC-37B受領」→https://holylandtokyo.com/2023/09/20/5052/
「EA-18G他軍種支援用が2025年退役」→https://holylandtokyo.com/2022/05/27/3249/
「陸軍戦闘車両へ電子戦装備TLS」→https://holylandtokyo.com/2023/08/24/4947/
「SpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「空軍が電子戦専門Wing創設」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-30
原点:ロシアの電子戦に驚愕の米軍
「東欧と中東でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
4企業が候補:CCA補完の安価高生産性ETV無人機 [Joint・統合参謀本部]
新興企業が「Enterprise Test Vehicles」試作し秋に試験
モジュール式・off the-shelf・readily-available部品で
6月3日、米国防省DIU(Defense Innovation Unit)と米空軍が、本格紛争で既存兵器や無人ウイングマン機CCA等を補完するため、ETV(Enterprise Test Vehicles)との「試験用機体:test platforms」を導入し、安価で既存成熟した部品を使用し高効率大量生産可能な無人機を開発につなげると発表し、100以上の候補企業から既に4社を選定済で、2024年秋頃に試作機体の評価飛行試験を行って量産調達する少なくとも1社を決定すると発表しました
種々の情報を総合して推測すると、DIUは2023年9月に航続距離は500nm(930㎞)で巡航速度が時速100nm以上等の条件で企業募集を行い、国防省や空軍が狙っていた既存軍需産業でない企業を多数含む100社以上の中から選ばれた4社(「Anduril Industries」 「Integrated Solutions for Systems」「Leidos Dynetics」「Zone 5 Technologies」)と、どうやら今年1月に契約締結していた模様ですが、契約金額や内容は非公開で、ETV全体のスケジュール感もよくわかりません
冒頭でご紹介したようなETVの特徴から、2023年8月にヒックス国防副長官が発表した「大量導入&投入効果を発揮するために低コストで高性能なシステムを大規模に生産」することに重点を置いた「Replicator構想」の一角をなすものと推測されており、よく耳にする最近はやりの「モジュール式で随時アップグレード可能で、Off the-shelf・Readily-available部品で価格を抑え、高効率安定生産可能な」設計開発&&調達を目指すものとなっています
3日のDIU発表や関係企業声明を拾っていくと
●高価な材料使用を最小限に抑え、手頃なコストで安定的に大量生産できるモジュール式ドローンの試作品開発のため4企業を選定
●業界の有望なアイデアを活用し、適切な時程で生産可能で改良する機会を提供
●コスト、スケジュール、生産量の目標を達成するために、非伝統的な航空宇宙企業にさらなる機会を提供することが重要
●DIUと空軍は、ETVを大量配備し、多様な発射方法を使用して「防御側の敵に圧倒的なジレンマを生み出す」ことを狙う
●「数十年ではなく数年で機能を提供し、適切なタイムラインで重要機能ギャップを埋める」
●「モジュール式サブシステムで更新可能とし、On-Demandの大規模製造を可能にし、手頃な価格で大量生産を実現」
//////////////////////////////////////////
まんぐーすにとって「初耳」のETVプロジェクトですが、ご紹介したDIUや米空軍開発調達部門の他、空軍研究所 (AFRL)、特殊作戦司令部 (SOCOM)、海軍航空システム司令部 (NAVAIR)、および太平洋軍 (USINDOPACOM) が関与しているようで、皆が関心を持ち必要としているプロジェクトです。
選定された4企業発表の各社候補機体コンセプト図には、「モジュール式・off the-shelf・readily-available部品・・・」重視の結果生まれる「既視感」のあるイメージの案が並んでいますが、官民の知恵を結集した完成品が生まれることを期待したいと思います
小型安価自立型ドローン大量導入をぶち上げ
「再びReplicator語る」→https://holylandtokyo.com/2023/09/08/5016/
「副長官がReplicator構想を発表」→https://holylandtokyo.com/2023/08/31/4997/
関連のCCA計画関連
「2029年までにまず100機」→https://holylandtokyo.com/2024/05/21/5863/
「大手3社がCCA一次選考漏れ」→https://holylandtokyo.com/2024/05/17/5851/
「あと6年で実用化に試験準備」→https://holylandtokyo.com/2023/11/08/5153/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
モジュール式・off the-shelf・readily-available部品で
6月3日、米国防省DIU(Defense Innovation Unit)と米空軍が、本格紛争で既存兵器や無人ウイングマン機CCA等を補完するため、ETV(Enterprise Test Vehicles)との「試験用機体:test platforms」を導入し、安価で既存成熟した部品を使用し高効率大量生産可能な無人機を開発につなげると発表し、100以上の候補企業から既に4社を選定済で、2024年秋頃に試作機体の評価飛行試験を行って量産調達する少なくとも1社を決定すると発表しました
種々の情報を総合して推測すると、DIUは2023年9月に航続距離は500nm(930㎞)で巡航速度が時速100nm以上等の条件で企業募集を行い、国防省や空軍が狙っていた既存軍需産業でない企業を多数含む100社以上の中から選ばれた4社(「Anduril Industries」 「Integrated Solutions for Systems」「Leidos Dynetics」「Zone 5 Technologies」)と、どうやら今年1月に契約締結していた模様ですが、契約金額や内容は非公開で、ETV全体のスケジュール感もよくわかりません
冒頭でご紹介したようなETVの特徴から、2023年8月にヒックス国防副長官が発表した「大量導入&投入効果を発揮するために低コストで高性能なシステムを大規模に生産」することに重点を置いた「Replicator構想」の一角をなすものと推測されており、よく耳にする最近はやりの「モジュール式で随時アップグレード可能で、Off the-shelf・Readily-available部品で価格を抑え、高効率安定生産可能な」設計開発&&調達を目指すものとなっています
3日のDIU発表や関係企業声明を拾っていくと
●高価な材料使用を最小限に抑え、手頃なコストで安定的に大量生産できるモジュール式ドローンの試作品開発のため4企業を選定
●業界の有望なアイデアを活用し、適切な時程で生産可能で改良する機会を提供
●コスト、スケジュール、生産量の目標を達成するために、非伝統的な航空宇宙企業にさらなる機会を提供することが重要
●DIUと空軍は、ETVを大量配備し、多様な発射方法を使用して「防御側の敵に圧倒的なジレンマを生み出す」ことを狙う
●「数十年ではなく数年で機能を提供し、適切なタイムラインで重要機能ギャップを埋める」
●「モジュール式サブシステムで更新可能とし、On-Demandの大規模製造を可能にし、手頃な価格で大量生産を実現」
//////////////////////////////////////////
まんぐーすにとって「初耳」のETVプロジェクトですが、ご紹介したDIUや米空軍開発調達部門の他、空軍研究所 (AFRL)、特殊作戦司令部 (SOCOM)、海軍航空システム司令部 (NAVAIR)、および太平洋軍 (USINDOPACOM) が関与しているようで、皆が関心を持ち必要としているプロジェクトです。
選定された4企業発表の各社候補機体コンセプト図には、「モジュール式・off the-shelf・readily-available部品・・・」重視の結果生まれる「既視感」のあるイメージの案が並んでいますが、官民の知恵を結集した完成品が生まれることを期待したいと思います
小型安価自立型ドローン大量導入をぶち上げ
「再びReplicator語る」→https://holylandtokyo.com/2023/09/08/5016/
「副長官がReplicator構想を発表」→https://holylandtokyo.com/2023/08/31/4997/
関連のCCA計画関連
「2029年までにまず100機」→https://holylandtokyo.com/2024/05/21/5863/
「大手3社がCCA一次選考漏れ」→https://holylandtokyo.com/2024/05/17/5851/
「あと6年で実用化に試験準備」→https://holylandtokyo.com/2023/11/08/5153/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
迷走する米陸軍 M1戦車の新発展型に「M1E3」浮上 [Joint・統合参謀本部]
昨年秋に「M1A2」改修計画がキャンセルしたばかり
2022年頃までは軽戦車MPF 構想もあったような・・・
突然上層部が Bradley 後継M30と同時投入が望ましいと
5月31日付 Defense-News は、米陸軍がM1戦車の新たな発展型(new tank variant)として、2転3転した挙句に 2023年9月に構想を打ち出した「M1E3」新型エイプラハム戦車に関し、General Dynamics Land Systems 社と契約し具体的な要求性能を検討することになったと報じています
M1戦車の最新型?「M1A2」は1998年のコンボ紛争から投入され今や大ベテラン装備品で、1985年導入の初期型「M1A1」も21世紀のイラクやアフガン戦争で使用され、ウクライナ軍にも 2023年9月に提供されたと伝えられていますが、基本的にはメーカー生産は終了し、米軍は車両を修理しながら共食いリサイクル活用している模様です。
この米陸軍戦車については、歩兵部隊に「防護プラットフォーム」、「圧倒的な精密火力」、「様々な地形条件での高い機動力」提供目的で軽戦車(MPF: Mobile Protected Firepower) を2026年に部隊提供する計画があったりもしましたが(現在も存続するのか未確認)、
大ベテラン M1の最新型M1A2に関しては、迷走を重ねつつも煮詰められきた「M1A2 System Enhancement Package」計画を2023年秋に突然中止決定し、戦車の機動性や生存性をより本格的に追及する「近代化」計画を別途追求する方針に転換するなど、米陸軍の「存在意義をめぐる迷走」の象徴とも「やゆ」される状況にあります
昨年秋に突然中止の「M1A2 System Enhancement Package」計画の後に、これまた昨年 9月6日に突然打ち出された戦車の機動性や生存性を本格的に追及する計画が今日ご紹介する「M1E3」ですが、それも以下に記事からご紹介するように、「何が可能か確認する」的な「場当たり」感漂う検討となっています
5月31日付 Defense-Newsは1M1E3」検討について
(担当の Geoffrey Norman 准将が語る)
●米陸軍上層部から、Bradley 歩兵戦闘車両の後継として2社が構想を競っている「M30 機械化戦闘車両」(2027年度末頃に選定結果公表)と、同時期に何とか「M1E3」を部隊配備したいとの要望があり、(M1戦車製造企業) General Dynamics 社と何が可能かを本契約で煮詰めていく。
●必要技術の成熟度合いと、更なる技術成熟に必要な予算確保が「M1E3」部隊配備時期を左右することになろうが、2024年秋ごろまでに、諸要素を加味した現実的なスケジュールを固めたいと思う
●また米陸軍は今後18か月間をかけ、「戦車内の自動装てん装置」「新たな駆動機関(powertrains) 」「active protection systems」等の技術成熟度を確認して高め、「M1E3」に搭載したいと考えている
●また機動性向上の点から、車体重量を現在の73トンから 60トン程度に抑える野心的な構想を持っており、無人や遠隔操作タレットも検討対象となっている
●駆動機関に関しては、燃費改善や静粛性追求のためハイブリッド機関も検討対象となっているが、瞬発力も同時追求している
●(ウクライナ戦争が浮き彫りにした兵土保護の必要性や無人機脅威等を踏まえ、)「Active Protection System」は最も重視される要素の一つとなっている
//////////////////////////////////////////////////
2024年2月に「少なくとも 3000億円を投入し、数十年検討を重ねた末に中止になった」陸軍へリ FARA計画と同様に、「戦車」も迷走を続けています。
「M1E3」が同時投入を目指す Bradley 戦闘車両後継の「M30 機械化戦闘車両」機種選定発表が、2027年度末から28年度初頭との「ゆったりさ」にも「?」感が漂いますが、「M1E3」がどのような運命をたどるのか、生暖かく見つめたいと思います
将来像が描けない米陸軍の迷走
「陸軍2024年に部隊大幅削減含む改編不可避」→https://holylandtokyo.com/2024/01/04/5394/
「3000億円投入済もFARA中止」→https://holylandtokyo.com/2024/02/22/5567/
「とん挫済:軽戦車MPF」→https://holylandtokyo.com/2022/03/29/2914/
「やり直し歩兵戦闘車Bradley後継選定」→https://holylandtokyo.com/2020/07/21/577/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
2022年頃までは軽戦車MPF 構想もあったような・・・
突然上層部が Bradley 後継M30と同時投入が望ましいと
5月31日付 Defense-News は、米陸軍がM1戦車の新たな発展型(new tank variant)として、2転3転した挙句に 2023年9月に構想を打ち出した「M1E3」新型エイプラハム戦車に関し、General Dynamics Land Systems 社と契約し具体的な要求性能を検討することになったと報じています
M1戦車の最新型?「M1A2」は1998年のコンボ紛争から投入され今や大ベテラン装備品で、1985年導入の初期型「M1A1」も21世紀のイラクやアフガン戦争で使用され、ウクライナ軍にも 2023年9月に提供されたと伝えられていますが、基本的にはメーカー生産は終了し、米軍は車両を修理しながら共食いリサイクル活用している模様です。
この米陸軍戦車については、歩兵部隊に「防護プラットフォーム」、「圧倒的な精密火力」、「様々な地形条件での高い機動力」提供目的で軽戦車(MPF: Mobile Protected Firepower) を2026年に部隊提供する計画があったりもしましたが(現在も存続するのか未確認)、
大ベテラン M1の最新型M1A2に関しては、迷走を重ねつつも煮詰められきた「M1A2 System Enhancement Package」計画を2023年秋に突然中止決定し、戦車の機動性や生存性をより本格的に追及する「近代化」計画を別途追求する方針に転換するなど、米陸軍の「存在意義をめぐる迷走」の象徴とも「やゆ」される状況にあります
昨年秋に突然中止の「M1A2 System Enhancement Package」計画の後に、これまた昨年 9月6日に突然打ち出された戦車の機動性や生存性を本格的に追及する計画が今日ご紹介する「M1E3」ですが、それも以下に記事からご紹介するように、「何が可能か確認する」的な「場当たり」感漂う検討となっています
5月31日付 Defense-Newsは1M1E3」検討について
(担当の Geoffrey Norman 准将が語る)
●米陸軍上層部から、Bradley 歩兵戦闘車両の後継として2社が構想を競っている「M30 機械化戦闘車両」(2027年度末頃に選定結果公表)と、同時期に何とか「M1E3」を部隊配備したいとの要望があり、(M1戦車製造企業) General Dynamics 社と何が可能かを本契約で煮詰めていく。
●必要技術の成熟度合いと、更なる技術成熟に必要な予算確保が「M1E3」部隊配備時期を左右することになろうが、2024年秋ごろまでに、諸要素を加味した現実的なスケジュールを固めたいと思う
●また米陸軍は今後18か月間をかけ、「戦車内の自動装てん装置」「新たな駆動機関(powertrains) 」「active protection systems」等の技術成熟度を確認して高め、「M1E3」に搭載したいと考えている
●また機動性向上の点から、車体重量を現在の73トンから 60トン程度に抑える野心的な構想を持っており、無人や遠隔操作タレットも検討対象となっている
●駆動機関に関しては、燃費改善や静粛性追求のためハイブリッド機関も検討対象となっているが、瞬発力も同時追求している
●(ウクライナ戦争が浮き彫りにした兵土保護の必要性や無人機脅威等を踏まえ、)「Active Protection System」は最も重視される要素の一つとなっている
//////////////////////////////////////////////////
2024年2月に「少なくとも 3000億円を投入し、数十年検討を重ねた末に中止になった」陸軍へリ FARA計画と同様に、「戦車」も迷走を続けています。
「M1E3」が同時投入を目指す Bradley 戦闘車両後継の「M30 機械化戦闘車両」機種選定発表が、2027年度末から28年度初頭との「ゆったりさ」にも「?」感が漂いますが、「M1E3」がどのような運命をたどるのか、生暖かく見つめたいと思います
将来像が描けない米陸軍の迷走
「陸軍2024年に部隊大幅削減含む改編不可避」→https://holylandtokyo.com/2024/01/04/5394/
「3000億円投入済もFARA中止」→https://holylandtokyo.com/2024/02/22/5567/
「とん挫済:軽戦車MPF」→https://holylandtokyo.com/2022/03/29/2914/
「やり直し歩兵戦闘車Bradley後継選定」→https://holylandtokyo.com/2020/07/21/577/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
ロッキード独自挑戦:VLSから PAC-3発射迎撃試験に成功 [Joint・統合参謀本部]
陸上の White Sands 試験場で模擬巡航ミサイル迎撃
「自腹」で約 150億円を投入
国防省と米海軍に本事業推進を催促
敵の弾道&巡航ミサイル、更に極超音速兵器の発達を受け、既存ミサイル防衛システムの改良&融合により、脅威の変化に迅速に対処し、国防省の取り組むIAMD(統合航空&ミサイル防衛)に貢献しようと、2017年からロッキード社が「自腹」で取り組む海軍艦艇のミサイル垂直発射管VLSからパトリオット PAC-3を発射する検討に関し、
5月20日ロッキード社が、ニューメキシコ州ホワイトサンズ試験場で、陸上に設置した艦艇 VLS 想定の発射機から、MK-70コンテナキャニスターに納されたパトリオットPAC-3 MSE 型を発射し、模擬巡航ミサイルの迎撃に成功したと発表しました
「白紙」からの防空ミサイル開発には長期間を要することから、同社は2024年末までに「自腹」で約150億円を本プロジェクトに投入して、既に実戦経験豊富で改良を重ねている「Battle Tested and Proven」なPAC-3最新型を利用し、現在の米海軍艦艇ミサイル防衛能力の「すき間:ギャップ」を迅速かつ効率的に補填することを狙い、国防省や米海軍の予算化を待つことなく取り組んでいると、繰り返しアピールしています
実際、今次の実射に向けては、地上配備版のイージス・アショア(ポーランドとルーマニアで近日初期運用開始)との初期的なハード連接確認を、MDA 要請を受け2022年秋に実施済で、2023年夏にはPAC-3と米海軍 SPY-1レーダー(約100隻の米海軍艦艇に搭載)との連接試験も行ってデータ融合可能を確認するなど、計画的に既存システム融合に同社は組んできています。
今年1月に「2024年春に、地上設置の垂直発射管 VLSからPAC-3MSE試射を計画」と発表した際も、「試射に成功した場合には、実際のイージス艦 VLSからの発射試験実現に向けた国防省や米海軍からの予算配分や艦艇活用協力をお願いしたい」と訴えていましたが、
5月20日の試験成功を受け、「この実射試験成功で、最新脅威へのわが社の継続的な挑戦と貢献姿勢を証明することができた」、「試験に成功したこのシステムは、機能証明済みのIAMD 能力強化策として国防に貢献できる」、「海軍艦艇での試験への協力や必要予算の確保を、米海軍や国防省が選択することを希望しているが、現時点ではその動きが確認できない」と同社担当責任者は不満をにじませています
/////////////////////////////////////////////////
米軍や国防省の名誉のため補足説明しておくと、今回のホワイトサンズでの試験には、複数の米軍種が協力しているとのことで、完全に100%ロッキードだけでプロジェクトを進めているわけではありません。
ただ、日進月歩のミサイル技術や極超音速兵器技術の進歩、ウクライナでも猛威を振るう無人機の脅威など、従来の「航空優勢」概念の見直しを迫られるほどの変化の中で、限られた予算の配分の中で、事業の優先順位をつける判断が追い付かないのが現状だろうと思います。米国だけでなく、西側主要国はすべて・・・
PAC-3やミサイル防衛関連の記事
「春にPAC-3を VLSから」→https://holylandtokyo.com/2024/01/25/5487/
「米陸軍がPAC-3部隊増強へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/04/4932/
「THAAD に PAC-3 連接迎撃に成功」→https://holylandtokyo.com/2022/03/18/2820/
「グアム防衛を MDA 長官が語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/
「THAAD が初実戦迎撃成功」→https://holylandtokyo.com/2022/01/24/2640/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
「自腹」で約 150億円を投入
国防省と米海軍に本事業推進を催促
敵の弾道&巡航ミサイル、更に極超音速兵器の発達を受け、既存ミサイル防衛システムの改良&融合により、脅威の変化に迅速に対処し、国防省の取り組むIAMD(統合航空&ミサイル防衛)に貢献しようと、2017年からロッキード社が「自腹」で取り組む海軍艦艇のミサイル垂直発射管VLSからパトリオット PAC-3を発射する検討に関し、
5月20日ロッキード社が、ニューメキシコ州ホワイトサンズ試験場で、陸上に設置した艦艇 VLS 想定の発射機から、MK-70コンテナキャニスターに納されたパトリオットPAC-3 MSE 型を発射し、模擬巡航ミサイルの迎撃に成功したと発表しました
「白紙」からの防空ミサイル開発には長期間を要することから、同社は2024年末までに「自腹」で約150億円を本プロジェクトに投入して、既に実戦経験豊富で改良を重ねている「Battle Tested and Proven」なPAC-3最新型を利用し、現在の米海軍艦艇ミサイル防衛能力の「すき間:ギャップ」を迅速かつ効率的に補填することを狙い、国防省や米海軍の予算化を待つことなく取り組んでいると、繰り返しアピールしています
実際、今次の実射に向けては、地上配備版のイージス・アショア(ポーランドとルーマニアで近日初期運用開始)との初期的なハード連接確認を、MDA 要請を受け2022年秋に実施済で、2023年夏にはPAC-3と米海軍 SPY-1レーダー(約100隻の米海軍艦艇に搭載)との連接試験も行ってデータ融合可能を確認するなど、計画的に既存システム融合に同社は組んできています。
今年1月に「2024年春に、地上設置の垂直発射管 VLSからPAC-3MSE試射を計画」と発表した際も、「試射に成功した場合には、実際のイージス艦 VLSからの発射試験実現に向けた国防省や米海軍からの予算配分や艦艇活用協力をお願いしたい」と訴えていましたが、
5月20日の試験成功を受け、「この実射試験成功で、最新脅威へのわが社の継続的な挑戦と貢献姿勢を証明することができた」、「試験に成功したこのシステムは、機能証明済みのIAMD 能力強化策として国防に貢献できる」、「海軍艦艇での試験への協力や必要予算の確保を、米海軍や国防省が選択することを希望しているが、現時点ではその動きが確認できない」と同社担当責任者は不満をにじませています
/////////////////////////////////////////////////
米軍や国防省の名誉のため補足説明しておくと、今回のホワイトサンズでの試験には、複数の米軍種が協力しているとのことで、完全に100%ロッキードだけでプロジェクトを進めているわけではありません。
ただ、日進月歩のミサイル技術や極超音速兵器技術の進歩、ウクライナでも猛威を振るう無人機の脅威など、従来の「航空優勢」概念の見直しを迫られるほどの変化の中で、限られた予算の配分の中で、事業の優先順位をつける判断が追い付かないのが現状だろうと思います。米国だけでなく、西側主要国はすべて・・・
PAC-3やミサイル防衛関連の記事
「春にPAC-3を VLSから」→https://holylandtokyo.com/2024/01/25/5487/
「米陸軍がPAC-3部隊増強へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/04/4932/
「THAAD に PAC-3 連接迎撃に成功」→https://holylandtokyo.com/2022/03/18/2820/
「グアム防衛を MDA 長官が語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/
「THAAD が初実戦迎撃成功」→https://holylandtokyo.com/2022/01/24/2640/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
国防省が大型水上離着陸輸送機の候補1社に絞る [Joint・統合参謀本部]
対中国作戦の輸送力不足補填に「Liberty Lifter」構想
どの軍種が運用を担うか不透明なまま
ビーチに接岸して荷下ろし構想で
2028年初頭の初飛行目指し2社から1社に
C-17級の搭載力と「地面効果」低空飛行可な機体
エンジン8基とかの巨大機体です
5月9日、米国防省の研究機関DARPAが(対中国を想定して)提案募集し、2023年2月に2社に候補を絞り込んでいた海面離着陸とビーチ接岸可能な大型輸送機(Liberty Lifter Seaplane Wing-in-Ground Effect)について、「Phase 1」契約(10億円程度)で1年半の検討で煮詰めた技術成熟や機体設計やデモ機製造の計画を審査し、「General Atomics」と「(ボーイング傘下の)Aurora Flight Sciences」の候補2社から、Aurora社を継続検討契約対象とすることを発表しました。
今後は約15億円程度の「Phase 2」契約に進んで更に機体設計や細部仕様を煮詰め、その後搭載量C-130程度のデモ機製造を行い、最終的には搭載量がC-130の約4倍のC-17輸送機レベルの機体として、米軍の「どこかの軍種」と連携し、2025年には設計審査を終え、2027年末から28年初の初飛行に向け開発を進める予定になっているようです
まず大型水上離着陸輸送機(通称Liberty Lifter)とは
●(細部要求レベル未確定も、報道によれば、)対中国作戦での西太平洋上の分散拠点への輸送力強化策を狙いとした、海面離着陸可能でビーチ接岸して荷下ろし可能な、全く新タイプの革新的な輸送機で、C-17輸送機並みの搭載量100トン程度(M1戦車69トン、フル装備空挺兵士100名、担架上の患者34名)を追求
●荒れた海での運用も目指し、小型ボートの運用限界である「sea state 3(波高4 feet)」より厳しい、「sea state 4(波高8 feet)」で離着水可能で、補給艦から戦闘艦への海上補給が困難になる「sea state 5(波高13 feet)」でも海上活動が可能なレベルを追求
またこのLiberty Lifter構想は、以前ご紹介したMC-130米空軍特殊作戦機用に水上離着陸可能なフロートを開発するプロジェクトや、GPS誘導JDAMを艦艇攻撃用に改良するプロジェクトと同じ流れで、対中国作戦を想定し、従来空軍が活用してきた作戦能力を、海と島々で構成される西太平洋戦域で活用するための検討(adapt traditionally air-related capabilities to a maritime environment)の一つだ・・・、とも報道では紹介されているようです
今回Aurora Flight Sciences案の方向が採用されましたが、DARPA担当責任者は、「我々は効率的に革新的なものを生み出そうとしており、攻めた厳しいスケジュールや技術目標を掲げ、迅速に戦力化することを追求しているが、General Atomics案はこのような野心的な目標レベルに到達しなかった」との極めてストレートな表現の声明で選定結果を説明しています
ちなみに2社の提案概要(概念図も参照)は・・・、
Aurora Flight Sciences社の提案
・単胴、高位置翼、幅広い水平尾翼
・8つのターボプロップエンジン
・機体尾部に開いて貨物積み下ろし
・Gibbs & Cox社&ReconCraft社と設計協力
General Atomics社の提案
・海上での安定を2つの胴体と翼で確保
・12基のターボシャフトエンジン
・機体前方が上に開いて貨物積み下ろし
・Maritime Applied Physics社と設計協力
//////////////////////////////////////////////////
2023年2月に候補2社との「Phase 1」契約が発表された際に、DARPAが検討の進捗をみて「少なくと一つの軍種とチームを組んで」と微妙な表現で説明していたように、運用担当軍種が海か空かぼんやりした、つまり、陸上飛行場が母基地になるのか、湖や海に面した港が母基地になるのかが判然としない、今後大いに議論が紛糾しそうな輸送アセットです。
また、機体が完成したとしても、目的地での荷下ろしや陸揚げ後の輸送運用などが相当に難しい印象の機体で、「革新」を追求と言われても、現時点では実際の運用の担い手も判然としない「実行可能性」が「?」なアセットのような気がしてなりません。裏を返せば、対中国作戦がそれほど兵站面、つまり物資輸送面で難しい問題を抱えており、あらゆるアイディアを試行錯誤で試している段階だ・・・とも見ることができます
Liberty Lifter Seaplane Wing-in-Ground Effec構想
「国防省が大型水上離着陸機の候補2社発表」→https://holylandtokyo.com/2023/02/15/4268/
Liberty Lifter構想と同じ流れの検討
「艦艇攻撃用に改良のGPS誘導JDAM試験」→https://holylandtokyo.com/2022/05/13/3219/
「対中国にC-130用水上着陸フロート開発」→https://holylandtokyo.com/2021/10/13/2296/
西太平洋では兵站確保が重要
「ウのアジア太平洋への教訓は兵站支援」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「ウは世界初の防空兵器の消耗戦に」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「台湾は非対称戦術を」→https://holylandtokyo.com/2023/01/16/4160/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
どの軍種が運用を担うか不透明なまま
ビーチに接岸して荷下ろし構想で
2028年初頭の初飛行目指し2社から1社に
C-17級の搭載力と「地面効果」低空飛行可な機体
エンジン8基とかの巨大機体です
5月9日、米国防省の研究機関DARPAが(対中国を想定して)提案募集し、2023年2月に2社に候補を絞り込んでいた海面離着陸とビーチ接岸可能な大型輸送機(Liberty Lifter Seaplane Wing-in-Ground Effect)について、「Phase 1」契約(10億円程度)で1年半の検討で煮詰めた技術成熟や機体設計やデモ機製造の計画を審査し、「General Atomics」と「(ボーイング傘下の)Aurora Flight Sciences」の候補2社から、Aurora社を継続検討契約対象とすることを発表しました。
今後は約15億円程度の「Phase 2」契約に進んで更に機体設計や細部仕様を煮詰め、その後搭載量C-130程度のデモ機製造を行い、最終的には搭載量がC-130の約4倍のC-17輸送機レベルの機体として、米軍の「どこかの軍種」と連携し、2025年には設計審査を終え、2027年末から28年初の初飛行に向け開発を進める予定になっているようです
まず大型水上離着陸輸送機(通称Liberty Lifter)とは
●(細部要求レベル未確定も、報道によれば、)対中国作戦での西太平洋上の分散拠点への輸送力強化策を狙いとした、海面離着陸可能でビーチ接岸して荷下ろし可能な、全く新タイプの革新的な輸送機で、C-17輸送機並みの搭載量100トン程度(M1戦車69トン、フル装備空挺兵士100名、担架上の患者34名)を追求
●荒れた海での運用も目指し、小型ボートの運用限界である「sea state 3(波高4 feet)」より厳しい、「sea state 4(波高8 feet)」で離着水可能で、補給艦から戦闘艦への海上補給が困難になる「sea state 5(波高13 feet)」でも海上活動が可能なレベルを追求
またこのLiberty Lifter構想は、以前ご紹介したMC-130米空軍特殊作戦機用に水上離着陸可能なフロートを開発するプロジェクトや、GPS誘導JDAMを艦艇攻撃用に改良するプロジェクトと同じ流れで、対中国作戦を想定し、従来空軍が活用してきた作戦能力を、海と島々で構成される西太平洋戦域で活用するための検討(adapt traditionally air-related capabilities to a maritime environment)の一つだ・・・、とも報道では紹介されているようです
今回Aurora Flight Sciences案の方向が採用されましたが、DARPA担当責任者は、「我々は効率的に革新的なものを生み出そうとしており、攻めた厳しいスケジュールや技術目標を掲げ、迅速に戦力化することを追求しているが、General Atomics案はこのような野心的な目標レベルに到達しなかった」との極めてストレートな表現の声明で選定結果を説明しています
ちなみに2社の提案概要(概念図も参照)は・・・、
Aurora Flight Sciences社の提案
・単胴、高位置翼、幅広い水平尾翼
・8つのターボプロップエンジン
・機体尾部に開いて貨物積み下ろし
・Gibbs & Cox社&ReconCraft社と設計協力
General Atomics社の提案
・海上での安定を2つの胴体と翼で確保
・12基のターボシャフトエンジン
・機体前方が上に開いて貨物積み下ろし
・Maritime Applied Physics社と設計協力
//////////////////////////////////////////////////
2023年2月に候補2社との「Phase 1」契約が発表された際に、DARPAが検討の進捗をみて「少なくと一つの軍種とチームを組んで」と微妙な表現で説明していたように、運用担当軍種が海か空かぼんやりした、つまり、陸上飛行場が母基地になるのか、湖や海に面した港が母基地になるのかが判然としない、今後大いに議論が紛糾しそうな輸送アセットです。
また、機体が完成したとしても、目的地での荷下ろしや陸揚げ後の輸送運用などが相当に難しい印象の機体で、「革新」を追求と言われても、現時点では実際の運用の担い手も判然としない「実行可能性」が「?」なアセットのような気がしてなりません。裏を返せば、対中国作戦がそれほど兵站面、つまり物資輸送面で難しい問題を抱えており、あらゆるアイディアを試行錯誤で試している段階だ・・・とも見ることができます
Liberty Lifter Seaplane Wing-in-Ground Effec構想
「国防省が大型水上離着陸機の候補2社発表」→https://holylandtokyo.com/2023/02/15/4268/
Liberty Lifter構想と同じ流れの検討
「艦艇攻撃用に改良のGPS誘導JDAM試験」→https://holylandtokyo.com/2022/05/13/3219/
「対中国にC-130用水上着陸フロート開発」→https://holylandtokyo.com/2021/10/13/2296/
西太平洋では兵站確保が重要
「ウのアジア太平洋への教訓は兵站支援」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「ウは世界初の防空兵器の消耗戦に」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「台湾は非対称戦術を」→https://holylandtokyo.com/2023/01/16/4160/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
宇宙監視も成功:次期イージスレーダーの日米共同試験 [Joint・統合参謀本部]
2028年3月就航の海自イージス艦から搭載予定
米宇宙軍がアラスカ設置のレーダーLRDRの小型版
4月12日付Defense-Newsは米ミサイル防衛庁MDA等の発表を受け、宇宙物体の監視追尾も可能な開発中の弾道ミサイル等監視用の新しいイージス艦用レーダーAN/SPY-7(V)1に関し、3月28日にMDAが主導して米海軍と海上自衛隊関係者も立ち会う中、ニュージャージー州のロッキード社試験センターでハードとソフトの初融合試験が行われ、宇宙空間物体の探知&追跡を含む所望の成果を得たと報じました
この新型SPY-7レーダーは、米宇宙軍が弾道ミサイル等の防空監視と宇宙空間物体の監視の両方を同時並行的に行って米本土防衛強化につなげるため、アラスカのClear宇宙軍基地に2021年に設置して開発試験中のLRDRレーダー(Long Range Discrimination Radar)と同じ技術を用いた小型版と言われ、2028年と2029年に就航予定の海上自衛隊イージス艦2隻の他、スペイン海軍のF-110フリゲート艦やカナダの水上戦闘艦にも派生版を搭載予定とのことです
3月28日の試験は、実際に海自イージス艦に特化したハードとソフトの組み合わせ初のライブ試験で、搭載時は4面搭載するレーダーの1面だけをまずテストした試験の第1歩だったようですが、宇宙空間物体の探知&追跡にも成功し、更にそのデータを戦闘システムに伝達&処理させることまで初めて行ったとのことです
海自イージス艦に搭載するハードを日本に輸送するまでに、レーダー面4面全てを使った地上試験までを同地で実施する予定とのことですが、宇宙軍のアラスカ設置レーダーよりは小型ながら、従来の艦載レーダーより大型のSPY-7(V)1は、基本的に従来のイージスレーダーと基礎的部分を共有しており、新ハードと新ソフトの融合作業のほとんどは完了しているとロッキード社は自信たっぷりのようです
SPY-7(V)1の原型である宇宙軍のLRDRは、全クラスの弾道ミサイルなど複数の小型物体を同時捜索&探知&追尾可能で、地上のミッドコースミサイル防衛指揮統制システムと連接可能な仕様となっており、NKやイランを含む潜在的なICBM脅威から米本土を防衛するように設計されていますが、MD能力に加え、軌道上の衛星や宇宙デブリを監視追尾可能にすることで宇宙軍の宇宙ドメイン認識向上にも供されます。
なお宇宙軍が2021年アラスカに設置のLRDRは、2023年末までに試験を終え宇宙軍に引き渡される予定でしたが、コロナによる試験中断の影響や試験用模擬弾道ミサイルの不調等の影響を受け、2024年末まで1年延期されています
なお現時点での要求には含まれていないようですが、ソフトのアップグレードで、極超音速兵器の探知&追尾能力の付加も可能とされているようです
//////////////////////////////////////
岸田総理が4月10日の日米首脳会談で合意し、日米「2+2」で細部が煮詰められる予定の日米軍事協力強化の一端を担う、イージス艦レーダー開発事業についてご紹介しました。
既に様々な作戦運用や兵器研究開発における日米協力の「芽」が出ているものと思いますが、少しづつ取り上げていきたいと思います。元気があれば・・・
イージス艦やLRDR等の関連記事
「アラスカに巨大LRDR完成」→https://holylandtokyo.com/2021/12/15/2505/
「極超音速兵器迎撃GPIの日米協力」→https://holylandtokyo.com/2024/04/11/5732/
「MDAがGPI日米協力前のめり」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
米宇宙軍がアラスカ設置のレーダーLRDRの小型版
4月12日付Defense-Newsは米ミサイル防衛庁MDA等の発表を受け、宇宙物体の監視追尾も可能な開発中の弾道ミサイル等監視用の新しいイージス艦用レーダーAN/SPY-7(V)1に関し、3月28日にMDAが主導して米海軍と海上自衛隊関係者も立ち会う中、ニュージャージー州のロッキード社試験センターでハードとソフトの初融合試験が行われ、宇宙空間物体の探知&追跡を含む所望の成果を得たと報じました
この新型SPY-7レーダーは、米宇宙軍が弾道ミサイル等の防空監視と宇宙空間物体の監視の両方を同時並行的に行って米本土防衛強化につなげるため、アラスカのClear宇宙軍基地に2021年に設置して開発試験中のLRDRレーダー(Long Range Discrimination Radar)と同じ技術を用いた小型版と言われ、2028年と2029年に就航予定の海上自衛隊イージス艦2隻の他、スペイン海軍のF-110フリゲート艦やカナダの水上戦闘艦にも派生版を搭載予定とのことです
3月28日の試験は、実際に海自イージス艦に特化したハードとソフトの組み合わせ初のライブ試験で、搭載時は4面搭載するレーダーの1面だけをまずテストした試験の第1歩だったようですが、宇宙空間物体の探知&追跡にも成功し、更にそのデータを戦闘システムに伝達&処理させることまで初めて行ったとのことです
海自イージス艦に搭載するハードを日本に輸送するまでに、レーダー面4面全てを使った地上試験までを同地で実施する予定とのことですが、宇宙軍のアラスカ設置レーダーよりは小型ながら、従来の艦載レーダーより大型のSPY-7(V)1は、基本的に従来のイージスレーダーと基礎的部分を共有しており、新ハードと新ソフトの融合作業のほとんどは完了しているとロッキード社は自信たっぷりのようです
SPY-7(V)1の原型である宇宙軍のLRDRは、全クラスの弾道ミサイルなど複数の小型物体を同時捜索&探知&追尾可能で、地上のミッドコースミサイル防衛指揮統制システムと連接可能な仕様となっており、NKやイランを含む潜在的なICBM脅威から米本土を防衛するように設計されていますが、MD能力に加え、軌道上の衛星や宇宙デブリを監視追尾可能にすることで宇宙軍の宇宙ドメイン認識向上にも供されます。
なお宇宙軍が2021年アラスカに設置のLRDRは、2023年末までに試験を終え宇宙軍に引き渡される予定でしたが、コロナによる試験中断の影響や試験用模擬弾道ミサイルの不調等の影響を受け、2024年末まで1年延期されています
なお現時点での要求には含まれていないようですが、ソフトのアップグレードで、極超音速兵器の探知&追尾能力の付加も可能とされているようです
//////////////////////////////////////
岸田総理が4月10日の日米首脳会談で合意し、日米「2+2」で細部が煮詰められる予定の日米軍事協力強化の一端を担う、イージス艦レーダー開発事業についてご紹介しました。
既に様々な作戦運用や兵器研究開発における日米協力の「芽」が出ているものと思いますが、少しづつ取り上げていきたいと思います。元気があれば・・・
イージス艦やLRDR等の関連記事
「アラスカに巨大LRDR完成」→https://holylandtokyo.com/2021/12/15/2505/
「極超音速兵器迎撃GPIの日米協力」→https://holylandtokyo.com/2024/04/11/5732/
「MDAがGPI日米協力前のめり」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/