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米軍史上初、海兵隊が財務監査by部会機関に初合格 [Joint・統合参謀本部]

国防省や陸海空軍は過去に合格歴無し
2010年の初監査から不合格を重ねた末に
合格歴のない国防省や他軍種への圧力強まる

Marine financial audit3.jpg2月23日付Defense-Newsは、米海兵隊が同日、国防省や他軍種が未だに合格したことがない第3者機関による財務監査に、史上初めて合格したと報じています

記事によれば、法律により、米国防省と陸海空軍と海兵隊は1990年代に財務監査を受けることになっていた模様ですが、例えば海兵隊は監査の本格準備を始めたのが2006年になってからで、実際に初めて行われた2010年監査では、多くの要改善事項が指摘され不合格となっています

Marine financial audit2.jpgその後海兵隊は、2012年度の限定された範囲の監査に合格したと2013年末に一度は発表しましたが、2015年3月に多くの財務及び監査関係者から結果は信頼性が低く合格判定を取り消すべきとの声が上がり結果が修正され、その後は今回の2023年度監査まで毎年不合格を繰り返しており、国防省や他軍種も同様な連続不合格を続けている状態にありました

海兵隊の財務監査は、Ernst and Young社との第三者監査法人機関によって実施され、財務諸表に記載されている全ての資産を精査し、全ての物品が海兵隊が指定の場所にあることを確認する作業が行われました。

Marine financial audit.jpg監査チームが米国および世界各地で70か所以上の現場を訪問、土地や建物など7800件以上の不動産資産、軍需装備品5900点、スペア部品等190万個、更に2400万個の弾薬等を、陸軍や海軍保管庫等を借用して保管しているものも含めて調査&照合したとのことです

また、原則として監査は単年度で終了するものですが、あまりにも膨大な不動産や物品をチェックする必要があるため、2023年度だけでは終了させることができなかったようですが、「海兵隊の信頼性を議会や納税者に示すため、海兵隊司令官の目標だった」との米海兵隊の強い要望で期間を延長し、2023年度監査を終了させ、合格を勝ち取ったとのことです

Marine financial audit7.jpgもちろん、合格ながら要改善箇所の指摘もあり、例えば人事システムと財務データシステム間の情報共有には、人為的エラーを防ぐため統合された自動化システムを追求すべき等の助言が監査結果には記載されているようですが、アーンスト・アンド・ヤング社とは別に監査を行った国防省会計監査官のマッコード氏は、

「私は海兵隊、特にエリック・スミス海兵隊司令官のリーダーシップと努力を賞賛したい」、「財務諸表全体に対する最高レベルに厳しい監査に合格した取り組みは、国防省や他軍種の取り組みを促進させるだろう」と率直に高く評価しています
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Marine financial audit6.jpg国防省や各軍種に対する財務監査の仕組みが良くわかっていませんが、記事から察すると、国防省や各軍種があまりにも巨大な組織で、監査対象物件や装備が広範囲多数に及ぶことから、法律はおそらく、「国防省や各軍種は、第三者機関である信頼のおける監査法人に、自らの予算で監査を依頼し、健全であることの合格証をゲットして国民に示せ」と要求しているのでしょう

国防省監察官のマッコード氏は「国防省や他軍種の取り組みを促進させるだろう」と毎年同じようなコメントを出していると記事は揶揄していますが、国防省自身は2018年から海兵隊と同様の手法で外部監査法人による監査を受け、2023年11月には6回連続で不合格となっている有様で、襟を正し、反を示す姿勢が求められるでしょう。それにしてもねぇ・・・・、ひどい。

2018年度の国防省への初監査は当然不合格
国防副長官「誰も合格するとは思っていなかった」
外部監査会社から1000名の派遣受け600か所を監査
「2018年史上初の国防省部外監査」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-17

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海自がMQ-9Bを東シナ海で試験運用実施へ [Joint・統合参謀本部]

製造企業によるCo-Co方式試験運用中の機体で
対潜哨戒機P-1やP-3Cの代替活用を目指して
海保や米空軍MQ-9の話題もご紹介

MQ-9B JMSDF.jpg2月16日、木原防衛相が定例会見で、2023年5月から今年9月までの予定で海上自衛隊が青森県八戸基地で試験運用している1機の無人偵察機MQ-9B(Sea Guardian:米空軍が運用するMQ-9無人偵察攻撃機を、海洋監視用に改良した無人偵察機)について、今年7月から9月にかけ東シナ海での警戒監視飛行試験を3回計画していると明らかにしました

なお同機の東シナ海での試験は7~9月ですが、4月から事前に八戸から鹿児島県鹿屋基地に展開訓練等を行い、7月以降の本格展開訓練に向けた準備を行うとのことです

MQ-9B JMSDF5.jpg海上自衛隊は、有人機である対潜哨戒機P-1やP-3Cの任務代替に、将来MQ-9Bを活用できないかを確認するため、2023年5月からCo-Co方式(Company Owned Company Operated:民間企業General Atomics 社が保有する機体を同社が運航する海自初の方式)で試験運用しており、2024年9月までに2000時間の試験飛行を予定しているところです

あくまでCo-Co方式での「お試し使用」ですが、海自側が要求した飛行ルートを週2回ペース(1回に6~24時間連続飛行)で飛行し、飛行間に入手した各種センサー情報(センサーはRaytheon製:可視光&赤外線カメラ、海洋監視レーダー等)を海自側で確認して性能評価を行っているとのことです

MQ-9B JMSDF4.jpgこれを契機に日本とかかわりのあるMQ-9運用についてご紹介すると、鹿屋基地では、2022年11月から「米空軍」のMQ-9部隊(8機で展開)が1年間の期間限定で配備され、東シナ海等を中心とした警戒監視飛行を行っていましたが、2023年10月13日に任務終了&移転式を行い、同年11月から(戦闘機F-15Cが帰国しつつある)沖縄の嘉手納基地で運用を開始しています

MQ-9B JMSDF3.jpgもう一つMQ-9B関連でご紹介すると、海上自衛隊に先立ち、海上保安庁が2機のMQ-9Bを2022年10月に同じ八戸基地に導入し、Coast Guard任務に本格活動を既に開始しています。現在八戸基地内に設置されたMQ-9B運用管制センターであるSGOP(Sea Guardian Operation Center)は、海保用と海自用に区分されていますが、同じ建物内でGA社の操縦スタッフと海保と海自の運用統制&センサーモニター要員が同機の運航を行っているとのことです
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MQ-9は、元々米空軍が中東での対テロ作戦を念頭に330機以上を導入し、偵察と攻撃任務に大活躍した機体ですが、対テロ作戦への米軍関与の低下と本格紛争では使用しにくいMQ-9の脆弱性もあり、現在は280機ほどに保有数が減少していますが、何とか対中国作戦にも通信中継や特殊作戦用で活用できないか模索が続いているところです

MQ-9B JMSDF2.jpg海洋監視用に改修されたMQ-9Bは、空軍用MQ-9とは異なり海上低空飛行が増えることから、海面監視センサー搭載の他、航空機の衝突防止装置の強化、機体表面への氷付着防止装置や塩害防止措置強化等の改善が施されており、豪州軍にも12機輸出されていると思います

それにしても、MQ-9B試験の目的を「有人機である対潜哨戒機P-1やP-3Cの任務代替に将来MQ-9Bを活用できないかを確認し、哨戒機の機数や関連人員の削減が可能か検討するため」と、明確に打ち出している海上自衛隊は偉いです! 

ついでに水上艦艇部隊にもその発想を横展開して頂き、更に航空自衛隊の戦闘機部隊にも教えてあげて頂きたいと思います。

米空軍MQ-9関連の記事
「小型ドローン射出しNet構成試験へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/26/5061/
「鹿屋に部隊編成とMQ-9の将来」→https://holylandtokyo.com/2022/10/27/3811/
「2022年秋に日本に配備!?」→https://holylandtokyo.com/2022/08/08/3538/
「一般公道で離発着訓練」→https://holylandtokyo.com/2022/07/12/3426/
「4大研究機関が継続活用要望」→https://holylandtokyo.com/2021/11/29/2464/
「2回目の対中国応用演習」→https://holylandtokyo.com/2021/05/01/211/
「本格紛争用に約1/4を改修&延命へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/28/118/
「JDAM完成弾運搬役も」→https://holylandtokyo.com/2021/03/09/156/
「無人機MQ-9の対中国海上作戦への応用演習」→https://holylandtokyo.com/2020/10/02/424/

MQ-9Bについて
「豪州へ12機輸出承認」→https://holylandtokyo.com/2021/04/29/119/

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米陸軍迷走:3千億円投入済のヘリFARA開発中止 [Joint・統合参謀本部]

今年後半に候補2機種の攻撃&偵察ヘリ飛行評価予定も
もう有人機偵察中心の時代ではない・ウの教訓から
過去10年で最大の開発中止案件に

同時に旧式の現有無人機2機種2万機破棄、新型HH60Vも導入中止
UH-60s, AH-64エンジン更新も停止
現有Black Hawks M型とCH-47F Block II、FLRAAに集中

FARA.jpg2月8日、米陸軍がなんと、過去約20年に渡り運用構想や要求性能を練り、2回にわたり企業提案募集やプロトタイプ製造に進みながら計画中断を繰り返し、2018年から3回目のトライとして3000億円を投入して2企業2機種のプロトタイプを製造して今年飛行評価テストを行う予定だった将来偵察攻撃ヘリFARA計画(Future Attack Reconnaissance Aircraft)を、ウクライナの教訓や無人機や宇宙アセットの偵察能力向上を背景に中止すると発表しました

また同時に米陸軍は、現有のUH60やCH47ヘリの能力向上機導入計画や、UH60やAH64アパッチヘリの能力向上エンジン導入計画の中止または停止、更に陳腐化から本格紛争用には不十分として現有の小型無人機ShadowやRavenを計2万機破棄するなど、無人機等の最新技術を生かしつつ、厳しい予算化で実現可能な能力向上策を追求すると明らかにしました

FARA2.jpgまんぐーすは米陸軍の決定を評価したいと思いますが、2022年12月に機種選定が難産の末に終了した2000機のUH60後継機で「米陸軍で過去40年間で最大のヘリ調達案件」「米陸軍航空部隊の歴史上、最も大規模で複雑な機種選定であった」と陸軍が表現したFLRAA(Future Long-Range Assault Aircraft)選定でも露呈した、「対中国等本格紛争での米陸軍の役割や任務の迷走」問題が再び顕在化したといって良いでしょう

以下では、FARA構想の過去約20年間のグダグダや今回の中止決定に関する米陸軍の説明等を、2月9日付Defense-Newsからご紹介いたします

FARA検討のグダグダ経緯
FARA3.jpg●ベトナム戦争時に偵察&攻撃任務になっていたOH-58 Kiowaが退役後、陸軍は任務の重要性を強調しつつもその後継機を決められず、性能的にはToo MuchなAH64アパッチに担わせてきた
●この状況を打開するため、21世紀に入って陸軍は「Comanche program」を立ち上げ、1兆円以上を投入して2企業に2つのプロトタイプ製造までさせたが、うまくいかず2004年に計画を中止。更に4年後の2008年にも仕切り直して進めた「Armed Reconnaissance Helicopter」計画を再び中止

●その後陸軍は、既存の商用ヘリから偵察任務ヘリ(commercial off-the-shelf aircraft)から選定することを試み、複数の提案機の飛行評価「fly-off」まで行ったが、最終的に2013年に所望の性能を持つ機体が見つからなかったとして計画をまたも中止
●2018年、陸軍は新設した将来検討専門組織「Army Futures Command」にFARA構想推進を託し、鳴り物入りで「高価装備品の新たな調達モデルの見本を示す」と豪語して2030年までに部隊導入すると宣言してプロジェクトを開始し、これまでに約3000億円を使用し、今後5年間で更に7400億円の予算計画を立て、今年2機種のプロトタイプ(Bell TextronとLockheed Martin Sikorsky)の飛行評価を予定していた

今回のFARA計画中止の理由
Shadow UAS.jpg●FARA計画の責任者であるJames Rainey陸軍大将は、「この決定は失敗を意味するものではなく、ヘリ近代化計画のオーバーホールを通じて、より大きな進歩を目指すものだ」と語り、「ウクライナの教訓や、無人機や宇宙センサーの技術的成熟や急速な普及に伴い、高性能な装備が安価に導入可能となってきている事などを踏まえ、偵察攻撃任務を有人ヘリだけに頼るのではなく、有人機と無人アセットの融合をどうすべきか考えることが重要」だとFARA中止の背景に言及
●さらに踏み込んで同大将は、「ウクライナでの戦いの様相に米陸軍は影響を受けた。航空偵察は根本的に変化したのだ。無人機搭載のセンサーや兵器、そして軌道上の衛星は、より広範囲をカバーして活用が容易になり、かつてないほど急速にコストも低下している」とも表現
●そして3000億円を投入したFARA計画については、「これまでの成果を他のプログラムで利活用可能にするため、2024年度末までに開発技術等を取りまとめて終結させる」と説明

今後の米陸軍ヘリへの投資方向性
Raven UAS.jpg●FARA中止によりどの程度の資源が陸軍ヘリ全体や航空偵察任務に再投資可能かは判然としないが、米陸軍は高性能で残存性が高く、人命への懸念が少ない無人偵察機開発により大きな投資をし、2022年に契約した「Jump20 System」に加え、更に2023年9月には5社の候補提案から2社に絞り、現在は2025年度中に部隊配備開始ができるようにプロトタイプ製造段階にある

●垂直離着陸型の有人機開発がFLRAA1機種のみになった現状から、現有ヘリUH60やCH47への投資方向も大きく変更。UH60L型の後継として開発中のV型については、コストアップでL型更新に15年以上必要な見通しとなっているため、V型開発を中止し、現有で最新型のM型を継続製造してL型の後継とする
UH60V.jpg●FLRAAやFARA計画推進予算確保のため、2018年にCH-47F Block IIの正規部隊への導入を見送ったが、この決定を見直し正式に量産体制に入る
●また陸軍は、FARAやUH60やAH64用を想定した6種類の次世代エンジンを現在テスト中で、更に5月には追加で2つのエンジンがUH60での試験を予定しているが、既に数年の遅れが出ているこれらエンジンの本格調達は無期限延期する

●以前から性能の陳腐化等から本格紛争での能力発揮が疑問視されていた、約570機保有の小型無人機Shadowと約19000機保有のRavenについてはこれを全廃し、本格紛争を生き延びて任務遂行可能な高性能将来無人機FTUAS導入に注力する
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CH-47F Block II.jpg2022年12月、FLRAA(Future Long-Range Assault Aircraft)をBell社のティルロータ型「V-280 Valor」に決定した後から、米陸軍は何度となく、議会やメディアや専門家から、FLRAAとFARAを同時推進は可能なのかと繰り返し問われ続け、そのたびに「可能か否かの問題ではなく、必要不可欠な避けられない調達案件だ」と浪花節説明してきたわけですが、ついにウクライナの現実や予算の現実を直視し、大幅方針転換に踏み切った模様です

これが世界の軍隊における、ウクライナ教訓を反映した各種方針や構想の大転換の「呼び水」になるような気がします。もちろん陸軍だけでなく、空軍戦闘機もそうだと思いますし、対中国最前線の自衛隊への風当たりもつようくなろうと予想いたします

40年間決められなかった米陸軍がやっと・・
「Black Hawk 2000機の後継FLRAA選定」→https://holylandtokyo.com/2022/12/09/4043/
「陸軍UH-60後継の選定開始」→https://holylandtokyo.com/2021/07/16/2009/
「米陸軍ヘリは無人化でなく自動化推進!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-11
「UH-60後継を意識した候補機開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-06-16

対中国を想定した太平洋陸軍の演習
「対中国で分散作戦演習JPMRC」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/

米陸軍ウクライナの教訓
「米陸軍は2024年に部隊の大幅削減含む改編不可避」→https://holylandtokyo.com/2024/01/04/5394/
「米陸軍が評価中の様々な教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/10/13/5129/
「22年6月:米陸軍首脳が教訓を」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245

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辛口の国防省評価局が陸軍GPS改良品を高評価 [Joint・統合参謀本部]

GPS外情報と妨害下のGPS信号を融合して地上航法に
第1と第1.2世代を改良の第2世代DAPS GEN IIが高評価
先ず700台を米陸軍がTRX Systemsと21億円で契約済

DAPS GEN II3.jpg2月7日付Defense-Newsは、米陸軍が妨害電波に脆弱なGPS地上航法装置の代替品(正確には改良&性能強化装置?)として、TRX Systems社(ACR Groupの配下企業)と検討してきた個人携帯型のDAPS(Dismounted Assured Positioning, Navigation and Timing System)に関し、辛口の厳しい評価で知られる米国防省のOT&E局(試験&評価局)が「最新GPS装置よりも優れ効果的だ」と今年1月の報告書で評価していると紹介しています

DAPS GEN II2.jpgDAPSの細部仕組みや性能をまんぐーすは把握していませんが、2023年4月12日付Defense-Newsの関連記事は、米陸軍とTRX Systems社との第2世代DAPS GEN II製造契約発表(23年4月11日)に際し、「米陸軍のDAPS開発責任者Mike Trzeciak氏が『(敵の妨害下でも、)軍事GPS信号にアクセスを確保し、更に他の航法技術から得た時刻等の関連情報と融合する技術を活用』」と説明した、と紹介しています

DAPS GEN II.jpg米陸軍とTRX Systems社が何時頃からDAPS開発に着手したのか記事からは不明ですが、今回OT&E局(試験&評価局: Office of the Director of Operational Test and Evaluation)が高く評価した「第2世代DAPS GEN II」の前段階で、DAPSの第1と第1.2世代である「GEN Iや1.2」が2023年9月末までに数百台米陸軍内に試験配布され、現場からの「改善提案」を基に生まれたのが「DAPS GEN II」とのことです

米陸軍は昨年4月11日にTRX Systems社と約590億円の「DAPS GEN II」製造契約を結び、その中で初期納入700台分と関連支援サービスを約21.5億円で調達することになってる模様で、21.5億円を単純に700台で割ると、「DAPS GEN II」1台当たりの価格は約309万円と計算可能です

DAPS GEN II4.jpg以前、米陸軍がGPS妨害対処訓練の一環として、スマホを使い慣れた世代の新兵教育の中で、GPSを使用しない「地図とコンパス」による地上航法訓練を取り入れ始めたところ、基本的な「地図とコンパス」航法をマスターできない不合格者が続出して対応に苦慮・・・とご紹介したことがありましたが、「DAPS GEN II」が救世主になれるのでしょうか?

DAPSの細部仕組みや性能細部が不明ですが、チマチマとフォローしていきたいと思います

敵のGPS電波妨害対処訓練は若者には高いハードル
「米陸軍兵士がGPS無しの訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/

被害状況下での戦いを想定せよ
「陸軍兵士がGPS無し訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/
「基本的な防御手段を復習せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-10
「米海軍将軍:妨害対処を徹底する」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-21
「空軍OBも被害対処を重視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23-1
「被害状況下で訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-23

本格紛争に向けた地上部隊の備え
「米陸軍が対中国の分散演習」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
「機動性&生存性の高い前線指揮所を」→https://holylandtokyo.com/2022/08/01/3519/
「米海兵隊が歩兵の多兵器習熟を試行中」→https://holylandtokyo.com/2021/05/07/1490/
「歩兵の多能兵士化を推進中」→https://holylandtokyo.com/2021/04/27/117/
「海兵隊で歩兵が砲兵を支援する新形態演習」→https://holylandtokyo.com/2021/04/15/107/
「米陸軍の前線電子戦部隊構想」→https://holylandtokyo.com/2021/03/11/158/
「米海兵隊は戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「無人機に偵察されたら」→https://holylandtokyo.com/2020/08/06/516/

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太平洋軍司令官候補が議会で燃料と兵站の重要性を [Joint・統合参謀本部]

議会承認を得るため上院軍事委員会で所信を語る
空中給油や輸送コマンドとの連携兵站重視と
昨年6月には一時次の米海軍制服トップと報じられた方

Paparo6.jpg2月1日、現在の米太平洋海軍司令官で、次のアジア太平洋軍司令官(正確にIndo-Pacific Command司令官)候補にノミネートされているSamuel J. Paparo Jr海軍大将が、上院軍事委員会で承認を得るための質疑に臨み、中国の台湾侵攻に関しては慎重な回答をしつつ、対中国作戦に向けては「more forward, more distributed posture:より前方に、より分散した戦力配備態勢で」との基本方針を語り、

Paparo5.jpg更に脅威情勢に対応し、兵站支援面で「効率」より「効力効果:effectiveness」を重視した準備の必要性を主張し、具体的に西太平洋での燃料不足を取り上げ、空中給油能力の不足や無人空中給油機の開発の必要性を示唆するような発言までしています。また太平洋軍と輸送コマンドとのメジャーコマンド連携が極めて重要になるとも語っています

まずはPaparo海軍大将のご経歴概要を
●1964年生まれ。米海軍士官学校出身「ではない」空母艦載戦闘機パイロットで、F-14やFA-18やF-15Cで飛行時間6千時間以上・着艦1100回以上のトップガンスクール出身者。
●海軍パイロットながら、米空軍戦闘機部隊への交換操縦者として空軍F-15C部隊に配属され、サウジに展開して実任務を遂行した経験もあるほか、米空軍指揮幕僚大学ACSCやAWCコースも履修し、空軍との人的つながりも太い

Paparo7.jpg●横須賀配属空母のF-14操縦者として勤務を開始し、艦載機飛行隊長や空母航空団司令官や空母戦闘群司令官を歴任し、中東担当の第5艦隊司令官も務め、米中央軍海軍と米太平洋軍海軍司令官(現在ポスト)を経験している
●統合職として、米中央軍の作戦部長(J3)経験のほか、珍しい職歴として、アフガニスタンの「Nuristan Province」復興担当指揮官として、米陸軍第10山岳師団第3旅団や第173空挺旅団と共に活動した経歴アリ

Franchetti5.jpg●何と言っても最近では、昨年6月12日に全米各種メディアが「次の米海軍制服トップ候補に国防長官がPaparo海軍大将を推薦」と複数の匿名海軍や国防省幹部の証言付きで報じながら、同7月21日には当初から大本命とされてきた女性のLisa Franchetti大将の正式候補推薦がバイデン大統領から発表されるとのドタバタに巻き込まれた人物

(太平洋海軍司令官が、一段上の太平洋軍司令官に就任するのは、現在のJohn Aquilino司令官など多くの実績があるルートであり、米空軍とのパイプもある点からも、順当で適切な人事だと上院でも全く反対意見はないようです)

Paparo海軍大将は議会で証言し・・・
Paparo.jpg●(中国による台湾侵攻の可能性について問われ、)習近平主席の考え方や行動予測は語れないが、中国が軍事力を背景に国境を再設定を狙い、復興主義者、修正主義者、拡張主義国家として侵略を拡大する大胆な動きを目にしており、ますます無秩序&混沌に向かう世界情勢を体感している
●このような情勢を受け米太平洋軍は、「more forward, more distributed posture:より前方により分散した戦力配備態勢」に転換する必要がある

●またこのような体制と作戦運用を支えるため、「効率性efficiency」の原則を基に構築されてきた兵站態勢を、「効力効果effectiveness」の原則で再検討すべきと考えている
●(未だ要求性能を満たせない状態で正式運用を開始したKC-46空中給油機に対する評価と問われ、)統合戦闘力を発揮するうえで、ダイナミックに機動する必要がある航空作戦構想から、空中給油能力を懸念している。統合戦力として(空中給油のために)足の長い、無人の、multi-domain platformsが、作戦機と輸送機用に必要だ

Paparo2.jpg●また(分散運用を支えるだけの)地域全体への燃料供給も極めて重要だ。抑止面で、競争面で、危機紛争対処面で、米輸送コマンドとのメジャーコマンド間協力(COCOM-to-COCOM relationship)が最も重要だ。2つのコマンドが常続的に顔を突き合わせるように作戦計画を煮詰め、有事に備えている

(ご参考:昨年夏に、米本土とハワイ・グアム、豪州、日本の拠点を巻き込み、航空機70機と3000名以上が参加し、空軍輸送コマンドと米輸送コマンドが連携して史上最大のMobility Guardian演習が実施され、「more forward, more distributed posture」体制を支える準備が実施されている)

Samuel Paparo海軍大将の公式経歴
祖父・父も米海軍勤務の筋金入りです
→ https://www.cpf.navy.mil/Leaders/Article/2628260/admiral-samuel-j-paparo/

Paparo大将も巻き込まれた人事ゴタゴタ
「大統領は初の女性トップ指名」→https://holylandtokyo.com/2023/07/24/4888/
「Paparo大将を国防長官が推薦報道」→https://holylandtokyo.com/2023/06/13/4747/

2023年の史上最大の空輸演習@西太平洋
「Mobility Guardian演習が初めて海外で」→https://holylandtokyo.com/2023/07/13/4852/

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Bamboo Eagle:初のACE構想統合&多国間演習 [Joint・統合参謀本部]

Red Flag 24-1演習(1月15-26日)に引き続き26日から8日間
米空軍主催で英豪空軍、米海軍海兵隊航空機も参加し
加州の5基地での分散運用で対中国ACE作戦訓練

Bamboo Eagle.jpg1月30日付米空軍協会web記事が、初めてのACE構想に基づく分散基地運用(practicing the hub-and-spoke concept along with Agile Combat Employment)演習「Bamboo Eagle」が、「Red Flag 24-1演習」最終日1月26日とオーバーラップする日程で2月2日まで(推定)実施されると紹介しています。

なお、「Red Flag 24-1」がラスベガス近傍のネリス空軍基地で行われたので、「Red Flag 24-1」参加機の大部分が、「Bamboo Eagle」参加のため、ネリスから加州5つの(想定)分散運用基地への機動展開を含むACE構想の実戦的演習に取り組んでいるということです

Bamboo Eagle3.jpgACE構想(Agile Combat Employment)は米空軍が対中国を強く意識し、米空軍全体で運用能力向上を図っている構想で、従来のように設備充実の大規模根拠飛行場を中心とした航空作戦では、中国の弾道&巡航ミサイル攻撃により運用不能に陥る懸念があることから、不便で設備不十分でも残存性が少しでも高い基地に戦力を分散しつつも、指揮統制や兵站面をしっかりやって強靭で生存性の高い戦力運用を目指す構想です

初の本格的統合&多国間ACE構想演習となっている「Bamboo Eagle」では、米空軍航空戦術(空対空や空対地航空作戦が主体)演習「Red Flag 24-1」の演習項目に加え、(台湾有事をたぶんに想定した)対艦攻撃訓練や、ACE構想の重要要素となる不便な分散基地への迅速な展開と現地での兵站や指揮統制を含む態勢確立が、実戦とバーチャル訓練を交えて実施されるとのことです

参加者は米軍全軍種から兵員3000名と航空機約150機、そして英空軍と豪州空軍から300名が参加する大規模なものとなった模様で、その内訳は・・・

Bamboo Eagle4.jpg●米空軍→B-2爆撃機、F-35、F-22, F-15E, and F-16 戦闘機、 C-130 and C-17 輸送機、KC-135 and KC-46空中給油機、EC-130電子戦機、HC-130特殊作戦機(兵員投入回収機)、HH-60救難ヘリ
●米海兵隊→F-35B、MQ-9無人偵察攻撃機
●米海軍→EA-18電子戦攻撃機

●英空軍→ユーロファイターとA330空中給油機
●豪州空軍→F-35A ・・・・です。

初の「Bamboo Eagle」演習で、分散運用基地(practicing the hub-and-spoke concept)に設定された5基地は全て加州の5基地

●米海軍のNaval Air Station North Island,
●米空軍のBeale Air Force Base, Travis Air Force Base, Edwards Air Force Base
●海兵隊のCamp Pendleton

Bamboo Eagle5.jpgBamboo Eagle演習を計画運用する米空軍Warfare Centerの公式発表は演習を・・・

「東太平洋の海洋と空域を作戦空域に見立て、海洋ドメイン作戦も組み入れた実戦的な全ドメイン訓練環境を設定し、訓練参加者が米本土西部の複数の(分散運用)基地から作戦行動を開始し、分散基地の指揮統制や兵站運用や空中給油等も含めた訓練を行った」と紹介しています
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Bamboo Eagle6.jpg台湾有事の対中国作戦では、西太平洋の島々や第1&第2列島線上の同盟国等の分散運用基地に展開し、指揮統制や兵站支援体制も確立して作戦運用することを前提とし、その実行力獲得を狙った初の「Bamboo Eagle」演習ですが、陸続きの加州の5つの基地と、環境が整わない西太平洋に分散する島や国々の基地とでは大きな違いがあります。

それでもこれだけの米空軍の参加規模で、海軍や海兵隊も主旨に賛同し、英軍や豪州軍も馳せ参じての演習は大きな一歩だと思います。「Bamboo Eagle」との演習名は、竹(Bamboo)の「しなやかさ」や外部からの力への「対応力や強靭性」を期待しての表現かな・・・

米空軍のACE構想関連記事
「PACAFはACE運用態勢未確立」→https://holylandtokyo.com/2023/09/19/5048/
「生みの親が現状語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「欧州米空軍がACE確認演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「GuamでF-35等が不整地離着陸訓練」→https://holylandtokyo.com/2021/01/29/310/
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/

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米海軍が募集難を受け「高卒」条件を撤廃へ [Joint・統合参謀本部]

米海軍は2000年に一年間だけ緩和した過去が
陸空海兵宇宙軍はそこまでの緩和を許容せず
「コックや甲板長など」可能な仕事がある・・・と

Navy recruits2.jpg1月27日付Military.com記事が、米海軍司令部人事計画部長であるRick Cheeseman海軍中将へのAPによるインタビュー記事を引用しつつ、新兵募集難に苦しむ米海軍が、採用学力テストで一定の成績を納めれば、高校卒業資格の無い若者を24年ぶりに採用に踏み切ると報じています。陸空海兵隊宇宙軍が「最後の一線として」原則維持している「高卒以上」採用の原則を断念する決定に、波紋が広がっています

コロナ感染予防対策として、高校や各種イベントでの採用活動自粛を強いられ、コロナ後は一般企業の好条件を武器にした旺盛な採用活動の後塵を拝して人材集めに苦悩する米軍全体にあって、2023年度目標の3万7700名の募集目標数に対し、31800名(目標の84%)しか採用できなかった米海軍は、前線の人手不足を賄うため、2024年度は4万600名の採用目標を掲げています。ちなみに2024年度の米海軍予算定員は33万8000名で、募集目標の占める大きさが衝撃的です

Navy recruits6.jpgこの2024年度採用目標について同中将は、「我々はこれだけの新人が必要で、募集担当官に4万600名かき集めて来いとはっぱをかけている。完全に達成可能な数字だとは考えていないが、この目標に向かっていく」と語っており、単なる悲壮感を超えた、どうしようもない現実へ、底なしの対応を迫られている感さえ漂っています。

ただ昨年の募集目標達成率で米海軍の84%より低い米陸軍(75%)は、「高卒」基準の放棄まで踏み込んでおらず、同じく目標を達成できなかった米空軍も含め、これまでの採用期間を延長したり、採用前に数週間から数か月の準備教育を「高卒以上」の入隊希望者に行い、入隊者の質確保に取り組んだりしているところです

Navy recruits5.jpg記事によると、米海軍は2023年度に「高卒以上」資格が無い入隊希望者2442名を「門前払い」したということですが、今回の「高卒資格以上」の条件撤廃決定に伴い、決定後72時間以内に2442名全てに当該決定を伝え、改めて米海軍への入隊意思確認の接触を図ったと同中将は語っています

厳密にいえば、例えば米空軍も入隊採用試験で100点満点の65点以上取れば、「高卒以上」の資格が無くても採用しているようですが、その比率は0.5%以下で、例外的に優秀な場合のみに受け入れているようです。

Navy recruits4.jpg募集目標未達で目標の75%しか採用できなかった米陸軍は、米海軍のように採用学力試験で50点以上取れば「高卒以上」の資格が無くても採用との方針で進むと、採用後の新兵教育部隊で脱落者が増えるだけだ・・・との問題意識から「高卒以上」条件を崩すつもりは無いようです

この懸念に関して米海軍人事部長Cheeseman中将は、「学力が低い新入兵士の初期教育機関での脱落率は11.4%で、学力の高いグループの脱落率6.5%より高いが、それほど大きな差だとは考えていない」、「コックや甲板長(cook or boatswain mate)等の役割を期待する新兵にそれほど高い学力は必要ない。必要な教育を行えば任務を十分果たしてくれる」、

「米海軍は並行して人材確保策を検討しているが、学力レベルを下げて採用する手法もリスクをとって試してみたい。我々は決断した。やってみようと・・・」と、実に正直に語っています
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Navy recruits.jpg2024年度の目標数に関し「完全に達成可能な数字だとは考えていないが、この目標に向かっていく」・・と語る同中将の目には、現在の米海軍最前線部隊の様子はどう映っているのでしょうか? 

一昔前では考えられなかったような、様々な問題や異常事態が前線部隊では起こっているのでしょうが、日本にとっても、決して「対岸の火事」ではないはずです。

新兵募集難&離職者増への対応
「空軍が募集年齢上限を42歳に」→https://holylandtokyo.com/2023/10/31/5184/
「空軍が24年ぶりに募集10%未達へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/25/5035/
「入隊学力試験に電卓持ち込み可へ」→https://holylandtokyo.com/2023/08/29/4976/
「募集難に合法移民へ猛烈アプローチ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/16/4743/
「兵士慰留に職種変更容易化へ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/12/4608/
「米空軍が体脂肪基準緩和へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/07/4494/
「歩きスマホやポケットハンドOK」→https://holylandtokyo.com/2021/12/16/2519/

米空軍パイロット不足関連
「コロナ後の操縦者争奪戦に備え」→https://holylandtokyo.com/2021/10/17/2271/
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-20
「ヘリ操縦者養成から固定翼削除試行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-06
「米空軍がパイロット募集の身長基準を廃止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-23
「Fly-only管理の募集中止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-15
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-19
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18
「操縦者不足緩和?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-12
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3

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女性陸軍大佐が男性部下への性的襲撃で解任 [Joint・統合参謀本部]

アジア太平洋同盟国への支援協力担当部隊長
女性が加害者の性的襲撃は約6%との米国防省統計
襲撃複数回のほか、あそこを握るとかも・・

Sullivan.jpg1月23日付Military.comが、昨年10月13日に第5安全保障支援旅団(5th SFAB : 5th Security Force Assistance Brigade)の第5工兵大隊長(5th Brigade Engineer Battalion)だったMeghann Sullivan大佐(女性)を、男性部下に性的襲撃(sexual assault)で同ポストから解任していたことを、米陸軍報道官が最近になって公表したと報じました

解任されたSullivan大佐はまだ米陸軍に所属しているものの、現在は異なる基地(5th SFABはワシントン州のLewis-McChord統合基地所在)の第1軍団隷下部隊に異動しており、弁護士を付けて係争中なのか等、それ以上の細部は明らかになっていませんが、5th SFSBに対しては電子メールや音声記録等々を含む部隊調査が行われ、結果として解任されたSullivan大佐の上司たる5th SFSB司令官Jonathan Chun大佐も解任され、後に米陸軍を離職しているとのことです

Sullivan5.jpg同事案に関与した一人の匿名情報源によれば、解任されたSullivan大佐は、少なくとも2名の男性部下を性的襲撃し、他に数名の男性隊員にセクハラ行為を行い、右事案のいくつかは飲酒強要などアルコールにも絡むもので、中には男性部下に無理やりキスしたり、相手の同意なく男性兵士のベルトの下部分を手でつかんだりしたとの容疑がかけられていたとのことです。

なお、第5安全保障支援旅団のようなSFAB(Security Force Assistance Brigade)は、2017年から2020年にかけ、同盟国軍の訓練や能力向上を支援するために新設された部隊で、5th SFABはアジア太平洋地域の中でも豪州、日本、モンゴルなど対中国で重要な同盟国を主担当にしており、Sullivan大佐は同旅団で最初の女性大隊長だったとのことです

性的襲撃関連の米国防省2022年対象調査によれば
Sullivan2.jpg●性的襲撃被害者の中で、男性兵士の占める割合は約10%であるが、被害者が恥ずかしくて上司等への報告を控えているケースが相当数あるのではないか、と国防省は考えている
●また性的襲撃の中で、女性が加害者である件数は約6%であるが、この場合も同じく被害者が訴え出ていないケースが多数あるのではないか、と国防省は見ている
●男性の上級士官が加害者であるケースは8%を占めているが、女性上級士官が加害者のケースは極めて稀で、国防省の統計の中でほとんど確認できない(加害者を性別で区分していない報告も多い)
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Sullivan3.jpg以前、華やかな経歴の米空軍女性戦闘機パイロット少将が、「部下を罵倒する」「会議で不規則発言を繰り返す」「電話で喚き散らす」などの行為を繰り返し、職務を解任され退職したケースをご紹介したことがありましたが、男性の部下をレイプする大佐のケースは初めて見聞きしました。米軍のような大きな組織は社会の縮図ですから、中にはそんな人が紛れ込んでいるのでしょう・・・

ただ2022年を対象とした米国防省の性的襲撃関連調査で、「男性兵士の被害者は約10%」「女性が加害者である件数は約6%」との部分について、国防省が「周囲からの偏見を恐れ、未報告の事案が(相当数)存在している:is seen by the Pentagon as underreported due to societal stigma」と分析している点は興味深いところです

女性士官に関するいろいろ案件
「超優秀なはずの女性少将Pがクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「女性上院議員が空軍P時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08

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今春PAC-3をイージス垂直発射管から発射試験へ [Joint・統合参謀本部]

脅威切迫にロッキードが独自資金開発をアピール
今春試験では地上設置垂直発射VLSから試射
更なる試験等に国防省や海軍からの資金提供を期待

PAC-3 VLS.jpg1月18日付Defense-Newsは、ロッキード社が脅威の変化に迅速に対処するため、既存ミサイル防衛システムの改良&融合により防御能力を改善する自社独自の取り組みとして、2024年末までに自己資金約150億円を投じて、PAC-3最新型ミサイル(PAC-3 MSE)をイージス垂直発射管(VLS)から発射する開発に取り組んでおり、今春に地上設置の垂直発射管VLSからのPAC-3 MSE試射を計画していると報じています

同社は、現在運用されている各種ミサイル防衛システムの隙間「ギャップ」を迅速に埋めるには、高コストと長期間が必要な新規システム開発でなく、従来システムの改良や融合で対処すべきと2017年に決断し、それ以降、主に自己資金でシステム融合に取り組み、例えば2022年初頭には、アジア太平洋戦域の切迫する脅威対処への提案として、THAADシステムからPAC-3ミサイルを発射する試験をWhite Sands試験発射場で成功させているとのことです

PAC-3 VLS2.jpg今春の地上設置VLSからのPAC-3 MSE試射に向けては、米ミサイル防衛庁MDAから限定的な資金提供を受け、太平洋上の発射試験場で実射を伴わないPAC-3 MSEとイージスシステムの連接融合試験「hardware-in-the-loop test」が行われた様ですが、その後同社は独自資金を投入し、2023年夏には米海軍が約艦艇100隻に搭載しているイージスSPY-1レーダーシステムとPAC-3 MSEとの融合が可能なことを確認したとアピールしています

ロッキード社は2024年春に予定している地上設置イージス艦垂直発射管VLSからの試射試験予定発表に際し、仮に試射に成功した場合には、実際のイージス艦VLSからの発射試験等の実現に向けた国防省や米海軍からの予算配分や艦艇利用協力をお願いしたいと訴えています

PAC-3 VLS4.jpgなお、2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻を受け、重要が急増しているPAC-3ミサイルに関し同社は、現在同社アーカンソー州Camdenの製造ラインで年間550発ペースでフル稼働生産されているが、更なる増産に向け設備強化に取り組んでいるとのことです
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弾道ミサイル対処を念頭に始まったミサイル防衛は、巡航ミサイルの拡散に伴い対処脅威の拡大を迫られ、現在は極超音速兵器への対応を検討する段階に至っています。同時に大小各種無人機の急速な普及に伴い、これらへの対処兵器との接細部の扱いも議論の俎上に上がり始めています

PAC-3 VLS3.jpg様々に防御システム開発が進む中で、軍側の防御兵器開発における要求性能の「ふらつき」「混迷」や投資予算の限界もあり、「PAC-3ミサイルのVLS発射」についても、今となっては「なんで今までやってこなかったの?」的な印象を持ちますが、これが現実かもしれませんし、軍と企業の両方に色々と教訓がありそうな気も致します

PAC-3やミサイル防衛関連の記事
「米陸軍がPAC-3部隊増強へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/04/4932/
「THAADにPAC-3連接迎撃に成功」→https://holylandtokyo.com/2022/03/18/2820/
「グアム防衛をMDA長官が語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/
「THAADが初実戦迎撃成功」→https://holylandtokyo.com/2022/01/24/2640/

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米海軍無人艦艇4隻がアジアで5か月間の試験終了 [Joint・統合参謀本部]

対中国「Stand-In」戦力の海兵隊や第7艦隊大歓迎
日本にも昨年9月MarinerとRangerが寄港
今後は何を搭載しシステム連接をどうするか精査

USV Ranger3.jpg1月16日、米海軍の無人水上艦艇導入担当Jeremiah Daley中佐が記者会見し、2022年8月7日から2024年1月15日までの間、アジア太平洋軍担当エリアに約5か月間試験展開していた4隻の無人艦艇(USV:Unmanned Surface Vessel)が、ほぼ完全自立運航モードにて4隻合計約47000NMの航海(各艦艇が約50日間の水上運用実施)を経て、日本と豪州にも寄港し、(恐らく出発地のSouthern Californiaの基地に)帰還したと成果を語りました

4隻は、主にDARPAが開発主導の「Sea Hunter」「Sea Hawk」(全長約40m 140トン級)と、国防省Strategic Capabilities Office主導の「Mariner」「Ranger」(全長60mで複数コンテナ搭載可)で、

Sea Hawk2.jpg・「Sea Hunter」「Sea Hawk」は、入出港時の有人操作用装置が狭いエリアにあるだけで、無人運用が基本ベースの構造
・「Mariner」「Ranger」は、大部分を自立航行するが、有人運用も可能な構造とスペース確保・・・となっています

5か月間の航海は、加州Port Huenemeに所在する「Unmanned Operations Center」または、他の水上艦艇からUSVの運行状況を監視&コントロール形式で実施され、試験航海中には、USV監督運用要領の試行(様々な監視&操作人数、管制用コンソールの使用台数、監視&管制人員あたりの監視対象隻数のデータ収集等々)が行われたとのことです

USV Mariner2.jpg今回の5か月間は基本的な航海に関する確認が多かった模様ですが、今後は米海軍が最も重要と考える、「USVに何を搭載するか?」「どのようにセンサーやShooterと連携させるか?」「今後全ての水上艦艇に搭載予定で開発中の「Integrated Combat System」のUSVでの活用法」などが焦点となる試験や試行が予定されているようで、

今回も米太平洋軍の「PACOM Joint Fire Network」との連接も試みられたようですが、僅かに「Mariner」が「virtualized Aegis Combat System」を搭載して使用したとDaley中佐が触れただけで、4隻のUSVが5か月間に何を搭載して試験運行したかには同中佐は言及を避けたとのことです

USV Ranger2.jpg今回4隻のUSVを試行的に受け入れ、試験に協力したアジア太平洋軍の米海軍第7艦隊や米海兵隊第3海兵遠征軍関係者は、将来の活用法や運用要領に関する想像を「興奮しながら」膨らませたとDaley中佐は記者会見で説明し、

「特にStand-in Forceとして活動する海兵隊の着上陸作戦部隊や関連する第7艦隊関係者からは非常にポジティブな反応が得られ、様々な参加メンバー間のsynergyとenergyを生み出しながら、多くの将来に向けての発展的な提案や改善意見を得られた」と説明しています
//////////////////////////////////////////////

Sea Hawk.jpg人不足が大きな問題となっている昨今、日本や海上自衛隊でも積極的にUSV(Unmanned Surface Vessel)導入を検討してはどうでしょうか? 空では既に「RQ-4」や「MQ-9」などが三沢や鹿屋基地等を拠点に日本周辺を飛び回っているのですから、艦艇分野での遅れが目立つような気がします

米海軍の無人艦艇を巡る動向
「中東から西海岸までの航海」→https://holylandtokyo.com/2021/06/22/1908/
「海軍の無人システム計画が議会から猛批判」→https://holylandtokyo.com/2021/03/30/173/
「21年初に本格無人システム演習を太平洋で」→https://holylandtokyo.com/2020/09/18/483/
「Sea Train:無人艦艇を電車のように連結」→https://holylandtokyo.com/2020/06/12/622/
「潜水艦も無人化を強力推進」→https://holylandtokyo.com/2020/06/04/614/
「空母2隻削減と無人艦艇推進案」→https://holylandtokyo.com/2020/04/23/733/
「CSBA:大型艦艇中心では戦えない」→https://holylandtokyo.com/2020/01/14/865/

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米議員団が太平洋軍への「ミニ原発」導入プッシュ [Joint・統合参謀本部]

2025年度予算に更に「追加」して予算確保すべきだと議員団
対中国作戦を支えるに必要な燃料輸送の負担軽減を目指し
議員さんはミニ原発のリスクをどうお考えなのか???

Portable nuclear3.jpg1月9日付米空軍協会web記事は、共和党有力下院議員2名が公開書簡をAquilino太平洋軍司令官に送り、(対中国)本格紛争準備の中で大きな課題として浮き上がっている西太平洋の米軍根拠基地の電源確保に関し、国防省も検討を進めている「ミニ原発」導入をより加速すべきか等について太平洋軍で検討し、

その必要性が認められたならば、2025年度予算案で関連予算を増額するよう行動すべきと要求し、実質的には同書簡で、対中国作戦基地での電力確保と、現状では大きな負担となり解決のめどが立っていない発電用燃料輸送問題を解決すべく、「ミニ原発」導入を積極的に米軍として要求すべきだと訴えています

portable nuclear.jpg米国防省は現在、Strategic Capabilities Officeが「Project Pele」との旗の下、ミニ原発開発企業の「BWX Technologies」と2022年に契約し、米空軍とDefense Logistics Agencyが協力して、アラスカ州アイルソン空軍基地で2027年までに「ミニ原発」を稼働状態にすべく取り組んでおり、同基地が必要な15-megawattの石炭火力発電能力に、ミニ原発で5-megawattを追加供給することを目指しています

書簡の中で両議員は「ミニ原発」の重要性について
(Rob Wittman軍事小委員長と元海軍ヘリパイのJen Kiggans議員)

Kiggans Wittman.jpg●米太平洋軍が使用しようとしている緊要な前線基地や分散運用基地は、燃料輸送の目途が立っていないにもかかわらず、輸入燃料に大きく依存する計画となっている点が問題だ。この問題は太平洋軍に限らず、本格紛争を戦ううえで、他の地域軍でも今後避けて通れない問題である
●この問題を容易に解決しうる極めて優れた代替案(ミニ原発)が存在するのに、この利用を考慮しないことほど、馬鹿げたことはない。今後の戦いでは、ミサイル防衛や作戦指揮所でのIT装備品の電力需要が高まる一方だが、敵の攻撃可能圏内では燃料輸送リスクも高まる一方である。この点「ミニ原発」は、戦略戦術面で極めて価値の高いシステムだ

portable nuclear2.jpgこの種の議員団の動きが、直ちに米軍を動かすとは考えにくいですが、国防省のミニ原発プロジェクト「Project Pele」説明では、ミニ原発が敵の攻撃を受けた際の安全性等の問題がクローズアップされ、検討が入り口でとん挫させられことを避けるため、使用先として北極圏や山間部など送電施設維持が負担となる辺鄙な基地や、ICBMサイロ等への電力供給を例に挙げ、ミニ原発の検討必要性を説明していたと記憶しています

Kiggans Wittman2.jpgですので米国防省や米空軍の本音としては、「頼むから、当面の間はProject Peleの件はそっとしておいてくれ」、「ミニ原発への懸念の声が、西太平洋の島国国家フィリピンや日本やインドネシアから今の段階で上がるようになると、今後のプロジェクト推進が相当困難になる」でしょうから、「追い風で前に倒れそう」との懸念の声で渦巻いているのでしょう 

ミニ原発関連の記事
「デモ機製造企業決定」→https://holylandtokyo.com/2022/06/20/3344/
「航空輸送可能なミニ原発配備へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/19/3147/
「ミニ原発反対論」→https://holylandtokyo.com/2021/06/29/1960/
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holylandtokyo.com/2020/03/11/779/
「米陸軍が前線での電力消費増に対応戦略検討」→https://holylandtokyo.com/2022/04/25/3138/
「国防省の気候変動対策」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/

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謎の実験宇宙船X-37B:7回目の任務開始 [Joint・統合参謀本部]

前回6回目は908日の最長宇宙空間滞在を記録
大半の実験内容は秘密も「Falcon Heavy」で高高度に?
12月14日には中国も同様の「神龍」を3回目の打ち上げ

X-37B2.jpg12月28日、米宇宙軍が運用する再利用可能な「謎の」実験無人宇宙船X-37Bが、7回目の実験任務のため、SpaceX社の「Falcon Heavy」ロケットで打ち上げられました。ちなみにX-37Bの打ち上げは、当初5回はULA社の「Altas V」でおこなわれ、2022年11月12日に終了した6回目は、2020年5月にSpaceX社の「Falcon 9」ロケットで打ち上げられています

X-37B4.jpgX-37Bは「9m×4.5m×3m」とマイクロバス弱程度の大きさで、ロケットの先端に取り付けて打ち上げられ、帰還時は滑走路に着陸する無人宇宙船です。OTV(Orbital Test Vehicle)が正式名称の実験船ですが、宇宙でどんな実験を行っているのか非公開部分が多く「謎の宇宙船」とも言われ、追跡マニアが「中露の衛星を追跡している」等々の「噂」や「推測」を流して時に話題になったりしています

それでも6回目の任務時には、一部の試験内容が公開されました。
●米空軍士官学校の教授や学生が運用する実験小型衛星「FalconSat-8」の運搬放出
●米海軍研究所の太陽光発電エネルギーを電磁波送信するアンテナ試験
●NASAによる素材研究実験「METIS-2」→耐熱コーティング、放射線シールド素材等の試験、及び「植物の種子実験」→宇宙環境が植物の種子に与える影響を、将来の惑星間飛行や他惑星への移住計画に備え確認

今回7回目でも任務の一部が公開され
X-37B 908.jpg●前回に引き続きNASAによる植物の種子実験「Seeds-2」
●細部は不明ながら「future space domain awareness technologies」の実験・・・が発表されています

今回7回目の飛行も宇宙空間滞在期間は非公開ですが、2010年4月打ち上げの1回目の宇宙滞在が224日間、2回目が468日間、3回目が675日、2017年5月に帰還の4回目は718日間、2019年10月帰還の5回目は780日と任務の度に滞在日数を更新しており、最長記録は6回目の908日間となっています

Shenlong3.jpeg今回の特徴は出力が巨大な「Falcon Heavy」で打ち上げられたことです。6回目までの打ち上げは低高度軌道(高度110-150マイル)でしたが、計算上は高度22000マイルの静止軌道にも投入可能な能力を持つロケットで、可能ペイロードも格段に増えており、試験内容の拡大が予期されるところです

もう一つ、X-37B打ち上げに先立つ12月14日、中国がX-37Bそっくりの「神龍:Shenlong」なる実験宇宙船の3回目の打ち上げ(初回は2020年)を行っており、既に6つの物体を軌道上に投入したということでアマチュアを含めた観測家の注目を集めています
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Dream Chaser5.jpg仮に7回目の飛行で908日間を更新するとなると、2026年6月末に達成が見積もられますが、もしこのブログが続いていればご紹介したいと思います。

なお米宇宙軍は、X-37Bが今後あと何回宇宙飛行実験を行うか等について明確にしていませんが、3年前からX-37Bの後継検討「実験宇宙船」の必要性を宇宙軍は発信し始めており、折しも民間企業Sierra Spaceの「Dream Chaser」とのX-37Bとそっくりの宇宙船が、国際宇宙ステーションへの物資輸送に向け、2023年11月に完成したと発表されたところです

このX-37Bを最初にブログでご紹介したのが2010年4月で、あれから間もなく14年・・・。2024年に新年の空を見上げ、しみじみしております。

X-37B関連の記事
「6回目:記録更新の908日宇宙滞在」→https://holylandtokyo.com/2022/11/24/3952/
「宇宙滞在記録を更新中」→https://holylandtokyo.com/2022/07/29/3458/
「6回目打ち上げ:少しソフト路線に?」→https://holylandtokyo.com/2020/05/15/672/
「ちょっと明らかに?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-11
「中国版X-37B?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-15
「中国衛星を追跡?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-07
「Sシャトルの代替?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
「米が宇宙アセット防護計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-16
「関連小ネタ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-04
「X-37Bをご存じですか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-20

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米陸軍は2024年に部隊の大幅削減含む改編不可避 [Joint・統合参謀本部]

陸軍長官と制服軍人上層部との対立表面化
対テロで2倍に膨らんだ特殊作戦部隊等が対象か
新兵募集難で既にWW2以降の最小規模にある陸軍
「空虚な部隊」か「大幅組織削減」かの決断を迫られる

BCT3.jpg12月28日付Defense-Newsは、米軍2024年の課題を取り上げる記事で、新兵募集難に直面し、現時点で正規兵数がWW2以降で史上最低の45.2万名規模にまで縮小している米陸軍が、対テロ戦から本格紛争対処に備えた組織改編検討を行う中で、その方向性を巡ってChristine Wormuth陸軍長官と制服陸軍人の間の対立が先鋭化しているが、2024年は決断が避けられないと紹介しています

米陸軍の組織改革は内部検討中の流動的状態で詳細は不明ですが、「2024年は大変だ」と紹介している同記事と、Wormuth陸軍長官にインタビューした2023年6月28日付記事「Exclusive: Army secretary talks force structure cuts, SOF ‘reform’」の内容から、ベトナム戦後の米陸軍削減と同様の難しい削減を伴う改編に向かう米陸軍の様子を取り上げたいと思います

Wormuth陸軍長官の基本的考え方
Wormuth7.jpg●対テロから本格紛争対処への体制変革を追求する大方針の基、新たに「short-range air defense部隊」や「indirect fires protection部隊」や「multidomain operations対応部隊」などの新たな能力部隊の編制&増強要求に対応する必要があるが、兵士募集が困難に直面している中、即応態勢を維持できない「空虚な部隊:hollow formations(人員充足率が低い中身の伴わない書類上の部隊)」を維持することはできない
●我々は現在、31個BCT(brigade combat teams:戦闘旅団)体制を基本体制とし、その維持には48.5万名が必要だが、募集難の中、2023予算年度末で米陸軍はWW2以降で最小規模の45.2万人にまで正規兵数が落ち込んでおり、今後も募集目標達成に全力で取り組むものの、現体制の維持は難しいと認めざるを得ない

BCT.jpg●態勢見直しに当たっては、部隊のどの部分を維持して「緊急即応部隊(Immediate Response Force)」として引き続き即応態勢を高く維持させるか、どの部分部隊に手を加える必要かに関し、過去の前線派遣頻度や期間、最近の活動状況なども元に評価して基準(guidance)を明確にしたい。
●特殊作戦部隊は911同時多発テロ以降に約2倍規模となっているが、そのいくつかの部分は対テロや対反乱作戦専用の部隊編成となっており、現時点ではそれほどニーズがあるわけではない

陸軍OBのシンクタンク研究員
BCT2.jpg●最近においても、陸軍の中で最も頻繁に作戦投入されている部隊は、特殊作戦部隊内の部隊である
●ベトナム戦争後、米陸軍は「このような戦いを2度と遂行することはない」との前提に立ち、ベトナム戦で活躍した対反乱作戦部隊やそのノウハウを持つ部署を削減し、(911以降の戦いを通じて、)その失敗を繰り返さないと言い聞かせ来たはずではないか
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2023年10月にWSJ紙が、米陸軍特殊作戦部隊から約3000名削減しようとの案が米陸軍省内で検討されているが、特殊作戦部隊や陸軍制服組からの反対で議論が紛糾しており、オースチン国防長官が仲介に入って対立の鎮静化を行っていると報じ、23年夏ごろから議論が停滞している様子が伺えますが、2024年にはどのような方向性が打ち出されるのでしょうか

Wormuth6.jpgChristine Wormuth陸軍長官はベトナム戦後に使用された「空虚な部隊:hollow formations」との言葉をあえて多用し、募集難の現実を踏まえ、本格紛争に適した部隊編成への改革を強く打ち出し、特殊作戦部隊の任務の一部は通常の陸軍部隊でも担うことが可能だとの認識を示しており、ウクライナでの教訓も踏まえた米陸軍の動向が注目されます

米陸軍ウクライナの教訓
「米陸軍が評価中の様々な教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/10/13/5129/
「22年6月:米陸軍首脳が教訓を」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245

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米陸軍が来年新ライフルM7と新機関銃M250導入 [Joint・統合参謀本部]

少なくとも、来年1月4日までは定期更新は行いません。
皆さま、良いお年をお迎えください!

近接戦闘職種の歩兵や特殊部隊等にのみ提供
M4ライフルとM249機関銃の後継として
弾薬もM4とM249の5.56㎜から6.8㎜へ大型化

M7 2.jpg12月20日付Defense-Newsは、米陸軍が近接戦闘職種である「歩兵」「特殊部隊」「combat engineers」部隊用に、5.58㎜弾薬使用のM4ライフルとM249機関銃に代わり、より威力を強化した新開発の6.8㎜弾薬を使用するM7ライフルとM250機関銃を9月から米海兵隊も関与して101空挺部隊で試験中で、2024年早々にも上記職種部隊へ提供を開始すると伝えています。

またほぼ全ての陸軍小火器に装着可能で、装着した小火器の機種に応じ、自動的に弾道計算を調整して最適な目標照準を可能とする新型照準スコープM157も併せて導入開始されると紹介しています

M7.jpgなお、広く米陸軍で現在使用されているM4ライフルとM249機関銃は、引き続き上記の近接戦闘部隊「以外」で引き続き使用されるとのことです。

米陸軍は2017年から、将来小火器の在り方を検討する「2017 Small Arms Ammunition Configuration Study」を開始し、近接戦闘職種部隊が保有すべき小銃や機関銃の具備すべき破壊力や射程について再評価を行い、最新の防弾チョッキを貫通可能で、5.56㎜弾薬では対処できない簡易陣地を構築するレンガブロックを破壊可能な威力、更に遠距離での威力や照準性能向上を狙った検討&開発を行い、

M250 2.jpgプロトタイプが製造されてからは、米海兵隊も積極的に関与し、様々なシナリオでの実射テストや評価検討会を重ね、従来の5.56㎜弾が跳ね返されていた標的を貫通可能な威力を持つ、新たな6.8㎜弾を使用可能なM7ライフルとM250機関銃の導入を決定したとのことです

2023年9月に記者団に公開されたデモ射撃では、新型のM250機関銃が連射でレンガブロックを突き破って人型標的に命中させる様子も公開され、従来の5.56㎜弾では不可能だったブロック対処が可能なことを示し、更に旧式の7.62㎜弾薬使用のM240機関銃よりも軽量で強い貫通力や破壊力を持っていると紹介された模様です

M157 2.jpgM7とM250導入のタイミングに併せ、新たに導入されるVortex Optics/Sheltered Wings 製のM157光学照準スコープ(M157 fire control)は、米陸軍が保有するほぼすべての小火器に装着可能で、ミニコンピュータ導入により、装着小火器と使用弾薬のマッチングを素早く自動計算して目標距離等に応じた弾道予測を行い、スコープ表示を瞬時に行って射手が素早く射撃可能な状態になると説明されています
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M250.jpg2017年から検討を開始したということは、アフガンやシリアやイラクなど中東での戦いの教訓を主に反映した小火器再検討が行われたものと推察しますが、ドローンが飛び交うウクライナ戦場での教訓も少しは反映されているのでしょうか。5.56㎜から6.8㎜弾への変更は、吉と出るのでしょうか?

確か、ドローン撃退のための特別なレーザーや電磁パルスや電波妨害や弾薬や捕獲網の様な新たな手法を用いた対処兵器も悪くわないが、現有の小銃に簡易に装着可能な「人工知能活用の手振れ補正機能(YouTube撮影用やスマホカメラに広く普及)」付の照準スコープをすぐに送ってくれ・・・とのウクライナ側からの要請があったと耳にしていますが・・・。

米陸軍ウクライナの教訓
「米陸軍が評価中の様々な教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/10/13/5129/
「22年6月:米陸軍首脳が教訓を」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/

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1年ぶりに米中軍事レベル対話再開 [Joint・統合参謀本部]

Brown統合参謀本部議長が中央軍事委員会統合参謀長と
成果を生む可能性低いも、接触から相手を読む機会

Brown Gen. Liu Zhenli.jpg12月21日、Brown統合参謀本部議長と劉振麗・中央軍事委員会統合参謀部参謀長(彼は中国共産党第 19 期中央委員会メンバー)が米中軍事高官レベル対話をTV会議方式で実施し、前年11月にオースチン国防長官が中国国防相(先日更迭され、今は空席)と会談して以来初めてとなる軍事交流が行われました

ご承知のように米中関係は悪化傾向にありますが、今年11月にサンフランシスコ郊外でバイデン大統領と習近平主席の会談が久々に行われ、軍事レベル対話の再開に合意したを受け実施されたものですが、今後、共に2021年から開始された、米国防省の中国担当次官補代理レベルが行う「Defense Policy Coordination talks」や、米太平洋軍の海空軍トップと中国軍東部&南部軍管区トップが行う「MMCA:Military Maritime Consultative Agreement talks」も再開されるとのことです

Brown Gen. Liu Zhenli2.jpg21日のTV協議を受け米統合豪参謀本部は、「Brown議長は、両国軍関係者がオープンで率直な対話を維持することで誤解や誤算を避け、互いの関係を双方が責任感を持って管理する必要があることを強調した」と声明を出しており、例えば11月には夜間飛行中のB-52爆撃機に中国戦闘機が3mにまで接近する等、過去2年間で180回以上の中国軍機による米軍機への危険で乱暴な嫌がらせ接近飛行事案が発生していることへの対応を協議した模様です

また米統合参謀本部報道官は、「(ほかにも)2名のリーダーは多くの世界及び地域情勢に関わる安全保障上の課題について議論した」とコメントを出しています
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gates-china.jpgこのような軍事レベル対話の再開については、米軍現場レベルでも継続的に中国サイドに呼びかけがなされてきており、例えばJohn Aquilino太平洋軍司令官は11月に、過去2年間に渡り、中国軍東部&南部軍管区トップと行う「MMCA」実施を中国側に要請してきたが、中国側が受け入れることはなかったと明らかにしていました

gates-china2.jpg中国国防相が音信不通の後に逮捕解任され、ロケット軍司令官以下幹部が大量に同時更迭される等の習近平による軍への監視&締め付け強化の中、中国軍幹部が米軍との対話での振る舞いで「内部からの監視」に引っかかることを恐れていた可能性があり、当然、今回の軍事レベル協議再開でも大きな成果は期待できないと考えられます。(まぁ、中国経済崩壊を受け、中国が米国への支援を求める過程で、国として米軍への対応を緩和する可能性はありますが・・・)

でも、このような外国との対話は、直接的な成果は生まなくても、対話から感じ取れる相手の態度や発言内容の変化や反応から、相手国内の動きや変化を感じとる貴重な機会であり、協議への準備が負担にならない範囲で継続することは意義深いことだとまんぐーすは思います

gates-china4.jpgゲーツ国防長官(当時)はよく言ってました。冷戦下のCIA勤務時代に具体的成果は生まなかったがソ連と戦略対話を中断をはさみつつも継続的に行い、例えばソ連側のICBM増強を衛星写真を示して指摘すると、ソ連の政府代表がその事実を全く把握しておらず、どうやらソ連軍独断の可能性が浮上してソ連政府代表から細かな説明を求められた思い出や、

gates-china3.jpg2011年頃の中国訪問では、胡錦濤主席を含め、中国側文民指導層は誰一人として(ゲーツ長官訪中期間に行われた)J-20ステルス戦闘爆撃機の初飛行を事前に把握していなかった模様で、その数年前のインペカブルへの対応、3年前の衛星破壊実験を事前に中国文民リーダーが把握していなかったと同様の状態が続いていることが感じ取れた・・・等と振り返り、間接的な収穫も極めて重要な成果だと強調していたところです

関連のゲーツ長官関連の記事
「慶応大学での講演」→→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-14
「2011年1月の訪中」→→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-09-1

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