SSブログ
Joint・統合参謀本部 ブログトップ
前の15件 | -

米陸軍がマイクロ波無人機対処兵器を本格試験へ [Joint・統合参謀本部]

国防省JCOが絞り込んだ防御兵器を本格確認へ
無人機・砲弾・迫撃砲・ロケット弾対処IFPCの一貫
製造Epirus社がマイクロ波制御技術の成熟に自信

Epirus HPM2.jpg11月1日、高出力マイクロ波(HPM:high-power microwave)を利用したEpirus社製の小型無人機の群れ対処兵器が、初期段階の受入テストを通過し、契約を結ぶ米陸軍に納入されたと同社が発表しました。

ウクライナで大きな注目を集め、イスラエルーハマス戦争でも地上部隊の大きな脅威となっている無人機への防御策は喫緊の課題ですが、無人機対処と言っても海外の最前線展開拠点から一般社会と共存する国内基地まで運用環境は様々で、スタートアップを含めた多数の企業が参入して多様な手法(ハードキルからソフトキルまで)を提案している「玉石混交」状態です。

Epirus HPM3.jpgこれら「玉石混交」提案の能力評価や運用法確立は米軍各軍種がバラバラでは非効率なため、米国防省JCO(Joint Counter small UAS office:陸軍が中核で主導)が設置され、2021年頃から「副次的被害小な兵器」「安価で携帯可能な兵器」「高出力マイクロ波兵器」の3分野に分けて候補機種を評価試験し、並行して米軍共通の「運用ドクトリンや運用&訓練手法」基準の検討や、「指揮統制システムや既存システムとの連携」検討にも取り組んできたところです

もちろん各軍種もJCOと連携を図りつつ、JCO検討と並行して各軍種の運用要求を反映した対処技術検討と選定を進めており、米空軍は同じマイクロ波使用でもLeido社と協力し装備名「Mjolnir」とのTHOR(Tactical High-power Operational Responder)開発を進めており、2024年本格デモ機完成に向け2023年4月に「史上最大の試験」を実施したと米空軍研究所AFRLが発表しているところです

Epirus HPM.jpg本日ご紹介している米陸軍は、無人機だけでなく砲弾・迫撃砲・ロケット弾対処も含めた大きなIFPC(Indirect Fire Protection Capability)構想の一環で無人機対処用高出力マイクロ波兵器開発にも取り組んでおり、国防省JCOの評価試験結果も踏まえて2022年12月にEpirus社と契約してマイクロ波装備の出来栄えを確認しているところです(なお別のハードキル手法兵器として12台のIFPC発射機(Dynetics社製)を受領して2024年に作戦試験開始)

製品納入に際しEpirus社は、「納入した高出力マイクロ波兵器は、無人機やその群れ対処に際し、周辺の脅威環境に応じた、精密かつ安全な電磁波制御を可能としたもの」、「初期の製品Leonidasをベースとした同兵器は、ネバダ試験場での様々な負荷を課せられた多様なシナリオ下の初期試験を突破し、信頼性と能力を実証した」、「今後より本格的な評価試験や作戦環境試験に臨むが、その結果を兵器の更なる成熟や戦術技術手順検討に生かす所存である」とコメントしています
///////////////////////////////////////////

Epirus HPM4.jpgEpirus社の技術には大手軍需産業である「Northrop Grumman」や「General Dynamics」も投資をしている模様で、今回陸軍に提供された製品への期待も高まっているようです。電磁波兵器は対象に対する即効性があり、電力さえあれば連続して継続対処が可能な点で大きな可能性を秘めており、米空軍がLeido社と進める「THOR」とともに今後も注目して行きたいと思います

レーザー兵器のように、「いつまでたっても完成まであと5年・・・」と揶揄されることが無いよう祈っております

米国防省JCO(Joint Counter small UAS office)関連
「3回目:高出力マイクロ波使用」→https://holylandtokyo.com/2022/05/17/3233/
「2回目:安価で携帯可能な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/10/08/2280/
「1回目:副次的被害小な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「米国防省が小型無人機対処戦略」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/

米空軍のマイクロ波兵器THOR
「群れ対処試験に成功」→https://holylandtokyo.com/2023/05/26/4663/
「装備名Mjölnirで24年にプロトタイプ」→https://holylandtokyo.com/2022/07/14/3432/
「M波で小型無人機の群れ無効化」→https://holylandtokyo.com/2021/07/06/1942/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米陸軍の極超音速兵器テスト&配備は来年に持ち越し [Joint・統合参謀本部]

2023年予定の最終テスト2回がいずれも直前中止
米陸軍は2021年に受け入れ部隊編成し準備進めてきたが

Hypersonic Glide B2.jpg11月8日、米陸軍のDoug Bush開発&調達担当次官補が記者会見で、2023年3月に続き、本年10月末に計画していた陸海軍共同開発の極超音速兵器C-HGB(Common Hypersonic Glide Body)発射試験が、テスト直前の機材チェック段階での不具合発覚で2回連続中止となっており、懸命に原因探求を行っているが、2023年中に再試験を実施して当初計画に沿って同兵器を部隊配備することは「highly unlikely:極めて難しい」と明らかにしました

Hypersonic Glide B3.jpg陸海軍共同開発の極超音速兵器C-HGBは、陸軍が両軍共用の「hypersonic glide body」を担当し、海軍が「two-stage hypersonic missile booster」開発を担う形で、国防省による積極的な仲介もあり3年前くらいから開発が加速し、2020年初めにハワイでの試験に成功、2021年後半にはmissile booster試験に失敗したものの、2022年6月に仕切り直し試験で成功していたところです

米陸軍は比較的順調な開発状況を踏まえ、2021年5月にワシントン州の米陸軍第1軍団(5th Battalion, 3rd Field Artillery Regiment, 17th Field Artillery Brigade unit)に極超音速兵器(LRHW:Long-Range Hypersonic Weapon:通称「Dark Eagle」)の受け入れ部隊を編成し、実ミサイルを除く地上管制装置や発射機や輸送トラック等を2022年9月末に配備完了、2023年運用開始に向け、本格的な部隊運用細部手順検討を開始していました

Hypersonic Glide B.jpgそして2023年1月、米陸軍の迅速能力造成室長(Rapid Capabilities and Critical Technologies Office)Robert Rasch中将が、予定している米陸軍部隊への2023年「末」極超音速兵器の配備前に、時期は非公表ながら陸海軍共同での同兵器のフル装備試験を2023年中に2回実施すると語っていたところでした(なお当初計画では、2023年9月末までに部隊配備完了でした)

Bush Army2.jpg今年に入って2回連続の試験中止の原因は一切公表されておらず、8日に会見したBush担当次官補は「関係者が全力で原因究明に取り組んでおり、もう少しで解明できると思う」、「陸軍はLRHW(Long-Range Hypersonic Weapon)に引き続き関与し、配備を完了する。そのタイミングが少し遅れるだけだ」とのみ語っています
/////////////////////////////////////////

Hypersonic Glide B4.jpg下の過去記事にあるように、極超音速兵器は中露が米国に先んじて開発&配備を行っており、米国防省は米議会からの厳しい指摘を受け最優先開発案件として同兵器開発に取り組んでいますが、ウクライナでロシア製同兵器が飛翔速度が落ちる目標到達直前の段階でウクライナ軍に迎撃される事例が相次ぎ、研究者からは同兵器の費用対効果について疑問呈する意見も出始めています

また陸海軍とは別に、航空機からの発射型を開発する米空軍も同兵器開発に苦労しており、4月には大型爆撃機搭載型ARRWの開発試験不調を受け、Kendall空軍長官がARRWタイプの装備化断念を表明し、戦闘機クラスから発射のHACM型に絞り込むことになっています

Kendall SASC5.jpg空軍長官はまた、「米国を遠ざけたい中国と、中国抑止用に同兵器を考えている米国とでは、同兵器の位置づけは異なり、中国と同様に米国が追求する必要は必ずしもない」「同兵器は近い将来価格が低下する見通しはなく、少なくとも初期型の同兵器は固定目標に適している面もあり、保有してもsmall小規模になろう」とも語っており、同兵器の特徴や用途等も踏まえ、日本も関与しそうな迎撃兵器も含め、慎重に見守る必要があると思います

米軍の極超音速兵器開発
「ウで次々撃墜:同兵器を過信するな」→https://holylandtokyo.com/2023/06/01/4695/
「空軍がARRW配備断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「Zumwaltへの極超音速兵器契約」→https://holylandtokyo.com/2023/02/22/4313/
「バカ高い極超音速兵器」→https://holylandtokyo.com/2023/02/08/4261/
「陸軍はあと2回試験」→https://holylandtokyo.com/2023/01/17/4107/
「3回連続ARRW試験に成功」→https://holylandtokyo.com/2022/12/16/4061/
「高価な兵器は少数保有で」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「空軍長官:重要性は中国と米国では異なる」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
「潜水艦へは2028年」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-19

迎撃兵器システム開発関連
「迎撃兵器を日米共同開発で」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米海軍が世界各地で空母2隻集結Show Of Force [Joint・統合参謀本部]

地中海とフィリピン東方海上で同盟国艦艇と
比東方では今年2回目で「いずも級」護衛艦と共に

Multi-Large Deck.jpg11月4日から8日にかけ、米海軍空母Ronald Reagan(横須賀が母港)とサンディエゴから駆け付けた空母Carl Vinsonに、海上自衛隊の空母のような形状の「ヘリコプター搭載護衛艦 ひゅうが」が合流し、フィリピン東方約800㎞付近の海上で大型甲板を持つ艦艇による共同訓練「Multi-Large Deck Event」が実施され、複数の軍事メディアが同行取材を行いました

フィリピン周辺での同種の訓練は6月に続いて今年2回目とのことで、6月時には空母Ronald Reaganのほかに、空母ニミッツと海自の空母形状「ヘリコプター搭載護衛艦 いずも」が参加する形で中国ににらみを利かせた訓練を行っています

Multi-Large Deck3.jpg米空母を2隻集めて「迅速に大規模戦力を特定地域に集結させる能力」を誇示する同様の海軍演習は、10月最終週にも東地中海で空母Gerald R. Fordと空母Dwight D. Eisenhowerが実施し、イスラエルーハマス戦争を受けた地域情勢不安定化への抑止効果を狙った動きを見せていたところです

11月のフィリピン海(Philippine Sea)での演習に内容について空母カールビンソン艦長は、「防空、海上海中監視、防御航空作戦、艦隊連携機動などの訓練を参加艦艇と航空機で実施している」と乗艦記者団に説明し、

Multi-Large Deck4.jpgRonald Reagan空母戦闘軍司令官のCarlos Sardiello少将は、「いかに迅速に危機発生地域に展開し、他の友軍や同盟国戦力と協力して作戦行動を遂行可能かを示す狙いを持って演習を行っている」と述べ、サンディエゴから急遽出港(報道情報10月12日出発)して中国正面に展開した空母Carl Vinsonの行動や海上自衛隊との緊密な関係をアピールしています

なお米海軍の招待で本演習を乗艦取材したメディア関係者は、沖縄の嘉手納米空軍基地からフィリピン東方の米空母の間の往復移動を、CMV-22B OspreyとC-2A艦載輸送機を使用して行ったとのことです
/////////////////////////////////////////////

Franchetti5.jpg米軍の5つの軍種(陸海空海兵隊&宇宙軍)で、史上初めて女性が軍人トップに就任(11月2日)した米海軍の活動を久々にご紹介しました。

グダグダの装備品開発(フォード級空母、LCS、コロンビア級戦略原潜等々)、艦艇や潜水艦修理の遅延と工廠の能力低下、止まらない艦艇の衝突事故や火災事故、港湾業者絡みの収賄事件等々で「何をやってもダメな米海軍」と揶揄され続けている米海軍への「風向き」が変わることを期待しつつ・・・

女性初の米軍種トップLisa Franchetti海軍大将のご経歴
https://www.navy.mil/Leadership/Flag-Officer-Biographies/BioDisplay/Article/3148210/admiral-lisa-franchetti/

米海軍軍人トップ人事関連
「女性大将が米海軍トップに就任へ!」→https://holylandtokyo.com/2023/07/24/4888/
「またゴタゴタ?米海軍トップ人事」→https://holylandtokyo.com/2023/06/13/4747/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米海兵隊司令官が心臓発作で倒れNo2も空席の3日間 [Joint・統合参謀本部]

某上院議員による米軍将官人事承認阻止で370ポスト空席続く
米海軍と空軍トップ不在が2か月ぶり解消も

smith.jpg11月2日、米議会上院は米海軍トップに初の女性であるLisa Franchetti大将を、また空軍トップにDavid Allvin大将を配置することを承認し、2か月以上No2だった両大将が「臨時」で務めていた職務に正式就任することとなりました。(陸軍トップ不在は10月に何とか解消済)

また同時に、9月下旬から海兵隊司令官の任についていたEric Smith海兵隊大将が10月29日に「心臓発作:heart attack」で緊急入院して現在も治療中の中、「臨時代理」を務めるはずの副司令官ポストが9月から空席だった件に関しても緊急承認手続きが行われ、Christopher Mahoney中将(海兵隊司令部のprograms and resources部長)の大将昇任と副司令官就任も認められました

Mahoney.JPG米海兵隊は、イスラエル―ハマス戦争で緊急派遣部隊を細部非公開ながらイスラエル周辺に展開させる命令を出している最中ですが、10月29日(日)にEric Smith海兵隊司令官が倒れた時点では「臨時代理」が存在せず、急遽、海兵隊司令部内で「最先任」であったKarsten Heckl部隊派遣&編制部長(中将)が海兵隊司令官職務を行うことが政府から指示されていたとのことです

上記で名前の挙がった新たなポスト就任が認められた将官は全て、6月から7月に大統領から米議会に承認依頼がなされていたもので、通常であれば8月から9月には上院承認手続きが完了し、新体制で10月1日からの新予算年度を迎えるのが期待された例年の流れですが、

Tuberville2.jpg今年は「米本土での妊娠中絶を希望する海外派遣中の女性兵士への旅費や休暇付与」に反対するTommy Tuberville上院議員(共和党:アラバマ州選出)によって人事承認がほとんど停滞しており、上記の海空軍トップや海兵隊No2に承認された幹部の「後任者」は未承認のままで、その他も含めた未承認将官ポスト数が「378ポスト」にもなる異常事態が続いています

10月29日に倒れたSmith海兵隊司令官は、Berger前司令官が退役した7月10日から、副司令官として「司令官代理」を務め、9月21日から正式な司令官(海兵隊司令官空白は約100年ぶり)に就任していますが、7月10日からは司令官と未承認副司令官の両方の職務を行っており、倒れる1週間ほど前にはインタビューで「朝6時から夜11時まで仕事をしており、睡眠時間は5時間だ。私は頑張るが、重要な判断をするポストには適切な状態とは言い難い」とコメントしており、

smith2.jpgJack Reed上院軍事委員長(共和党)は「Smith海兵隊司令官が身体不調に陥ったのは、難癖をつけて人事「一括」承認を拒否しているTuberville議員のせいだ」と厳しく批判していますが、これに対しTuberville上院議員は「私は「一括」承認を拒否しているだけで、個別審査を求めているのだ。また私も睡眠5時間程度で何年も継続して仕事しており、そのこと自体が原因とは言えない」と反論しています

本件と報じる2日付Defense-Newsは、「Tuberville議員の求める人事案の個別審議をしていては、1日8時間審議しても100日以上審議(378ポストなら150日程度)に要し、実現性の無い話だ」と批判しています。なお、11月2日の海空軍トップ等の承認審議は、民主党議員の提案により個別審議で緊急処理されたとのことです

共和党内でも同じ共和党のTuberville議員による昇任阻止を問題視する声は次第に高まっており、11月1日の夜には共和党の退役軍人上院議員2名により、特に国家安全保障上緊急で重要な67ポストの一括審議案が出され4時間以上審議されましたが、Tuberville議員は妥協に応じなかったようです
/////////////////////////////////////////

Tuberville.jpgTuberville上院議員は、米国大学フットボールの監督(ヘッドコーチ)として著名な人物で、2005年にはアーバン大学監督として年度無敗を記録して5つの異なる年間最優秀監督賞を受け、2015年には全米アメフト監督協会会長を務めた人物です。またアラバマ州では、アーバン大学監督として宿敵アラバマ大学に6年連続で勝利した「伝説の人」として根強い人気があるようです

政治の世界ではトランプ前大統領と強いつながりを持つ人物で、2020年の選挙で上院議員に初当選した後は、トランプ氏が大統領選挙でバイデン氏に敗北した選挙の不正を主張し続けた人物でもあります。
軍人高官人事の停滞が何時まで続くのかよく見えませんが、共和党内の混乱を示す象徴的な状態が続いています

停滞していた軍種トップ人事
「海兵隊トップ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/06/4711/
「海軍トップ」→https://holylandtokyo.com/2023/07/24/4888/
「空軍トップ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/

まだ未承認の空軍重要人事
「空軍戦闘コマンド司令官候補」→https://holylandtokyo.com/2023/05/11/4614/
「太平洋空軍司令官候補」→https://holylandtokyo.com/2023/04/26/4567/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

2年前倒しで沖縄海兵隊部隊が12MLRへ [Joint・統合参謀本部]

11月に規模縮小の「海兵沿岸旅団 Marine littoral regiment」へ
歩兵&火砲中心から沿岸偵察部隊へ
海兵隊改編構想「Force Design 2030」の流れ

12MLR5.jpg10月17日、今年1月の日米「2+2」で合意された3200名規模の「第12海兵旅団」を2000名規模の「第12海兵沿岸旅団:MLR:Marine littoral regiment」に2025年までに改編し、対中国作戦により適合した部隊に変更する件について、前倒しして今年2023年11月15日に改編を行うと発表しました

米海兵隊は2020年発表の「Force Design 2030」で、7つ保有する「海兵旅団:MEU:Marine expeditionary unit」の中の3部隊を、対中国作戦を意識し、歩兵や砲兵中心の構成から、中国艦艇を沿岸から監視&攻撃部隊に通報するISRや防空部隊を中心とした小ぶりで軽快に西太平洋の島々を移動する「飛び石作戦」可能な「MLR:Marine littoral regiment」へ改編することを打ち出しました。

12MLR.jpg従来の「海兵旅団:MEU」が世界中の何処へでも一番乗りで展開対処する作戦任務を担っているのに対し、「沿岸海兵旅団MLR」は、「Force Design 2030」構想が示す「stand-in force」として脅威正面地域に当初から配置され、

歩兵小隊を増強した規模の複数の情報偵察部隊(LCT:littoral combat team)を沿岸地域に展開して敵艦艇を監視させ、防空大隊(LAAB:littoral anti-air battalion)でLCTを防御しつつ、兵站大隊(CLB:combat logistics battalion)が活動を支える3個部隊編成で任務遂行する新旅団です

12MLR3.jpg既に在ハワイの3MLRが最初の改編部隊として昨年秋に初期態勢を確立し、2番目の部隊として沖縄のキャンプバトラー所在の「第12海兵旅団」が前倒しで最終準備段階にあり、最後の3つ目は(恐らく)未発表ながら(辺野古埋め立て工事で注目の)沖縄キャンプシュワブ所在の「第4海兵旅団」が改編対象だと言われています

「Force Design 2030」構想発表時には、当時のDavid Berger海兵隊司令官が「日本に最初のMLRを設置する予定」と語っていましたが、地元調整のむつかしさ等から(推測)、まずハワイで最初の第3MLRが創設(2022年3月)され、2023年1月に日米「2+2」とのステップを踏みつつ、「ロープロファイル(米軍事メディアの表現):目立たないように」に種々準備が進められてきた模様です

12MLR2.jpg11月16日付Military.com記事は、11月中旬に「第12海兵沿岸旅団:12MLR」となる部隊は現在、「海兵沿岸旅団」としての態勢確立に向けた訓練を、同盟国日本の攻撃能力を含めた統合打撃火力と連携しつつ、10月末まで日本の南西諸島から北海道にかけての各地の演習場を西太平洋の島々に見立てて実施中だと報じています。
////////////////////////////////////////

米海兵隊が2020年3月発表の「Force Design 2030構想」は、当時の海兵隊副司令官Eric Smith大将(今年10月から司令官就任!)を中心に取りまとめられ、当時のDavid Berger司令官が海兵隊内部やOBからの猛烈な反対を押し切って完成させたもので、

12MLR4.jpg一部MEUのMLRへの改編のほか、戦車部隊の廃止、歩兵部隊や回転翼部隊の削減、総兵数の削減、ロケット部隊や対艦部隊や無人システムの増加や電子戦の強化などを柱に、小規模だが軽快な部隊に再編し、海軍と連携して制海に力点を置く将来海兵隊像を明確に打ち出したもので、他軍種にも少なからず影響を与えた海兵隊の生き残りをかけた大改革構想です

そんな大きな海兵隊改革の一環である沖縄での「12MLR」誕生前倒しのニュースで、かつ対中国真正面の極めて脆弱な沖縄駐留米軍を削減し、豪州を含む西太平洋全体での分散運用を追求する「軍事的合理性追求」の米軍動向の一端を示すものですが、日本では未だに、左翼対策の一環である「沖縄の負担軽減策」としてマスゴミが報道する、ため息ものの状態が続いています

米海兵隊の主力海兵旅団改革
「削減沖縄海兵隊の転進先」→https://holylandtokyo.com/2023/02/01/4230/
「沖縄に12MLR設置で日米合意」→https://holylandtokyo.com/2023/01/13/4148/
「ハワイで初創設のMLR」→https://holylandtokyo.com/2022/08/19/3546/
「米海兵隊のstand-in force構想」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「MLRを日本にも」→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/726/
「Force Design 2030構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米陸軍が国防省最高出力レーザー兵器を契約 [Joint・統合参謀本部]

300kwの「IFPC-HEL」通称Valkyrie
巡航ミサイル対処には出力不足も2025年夏納入
「Directed Energy Roadmap」には既に遅れが

IFPC-HEL2.jpg10月10日、米陸軍が米軍全体で最高出力となる300kw級のレーザー兵器(車両でけん引するタイプ)を小隊レベル装備用に4基購入する契約を締結し、2025年夏に納入する計画だと担当企業のロッキード社が発表しました。

その装備は、米陸軍が「IFPC-HEL:Indirect Fire Protection Capability-High Energy Laser」計画で開発中の通称「Valkyrie」とのレーザー兵器で、「額面上」は無人機、ロケット弾や砲弾や迫撃弾(RAM)の他、巡航ミサイルにも対処可能な装備と予算要求資料ではなっており、電力さえ確保できれば無限に発射でき、極めて精密な目標照準が可能な防御兵器と期待されています。

IFPC-HEL.jpgなおロッキード社は、今回陸軍と契約した「Valkyrie」の初期デモ機を2022年9月に米陸軍に参考提供していますが、同社ではこれを300kw級から500kw級に能力アップするプロジェクトを進めている模様です

このように12日付Military.com記事で「Valkyrie購入契約」ニュースをご紹介すると、非常に順調な印象を受けるかもしれませんが、レーザー兵器は「いつになっても完成まであと5年」と揶揄され続けている「永遠の期待のホープ」で、無人機の台頭や精密誘導兵器の拡散により、前線部隊の防空用を中心に期待が高まって久しいのですが、必ずしも順調ではありません。

Directed Energy Roadmap.jpg例えば2021年に国防省が「Directed Energy Roadmap」を作成し、以下のような目標を掲げましたが、本日ご紹介しているように、300kw級の小隊規模でのお試し配備が2025年夏ごろまで大幅に遅れているのが現状です

●2022年までに、150-300KW級の兵器化
 100Kwでドローン、小型ボート、ロケット、迫撃砲に対処可能
 300kwで巡航ミサイルに対処可能
●2024年までに、極超音速兵器対処を目指す500KW級実現
●2030年までに大陸間弾道弾対処を目指す1GW級実現 

各軍種毎に見ても、例えば米陸軍は、
DE M-SHORAD.jpg●2023年9月、Stryker戦闘車両に搭載する50kw級の通称「Guardian」の「DE M-SHORAD:Directed Energy Maneuver-Short Range Air Defense」を4セット導入
●また、歩兵部隊の車両搭載用に20kw級「ISV:Infantry Squad Vehicle」を導入する計画が進行中

米海軍では、
HELIOS Navy.jpg●数隻のアーレイバーク級イージス艦に、60kw級の防御用レーザー兵器「HELIOS:High Energy Laser with Integrated Optical-dazzler and Surveillance system」を装備しているが、小型艇対処には有効も、弾頭を貫通出来ないため巡航ミサイル対処には出力不足

米空軍では
●2020年7月、戦闘機自己防御用レーザー兵器開発を断念
●2021年10月、AC-130用地上攻撃用レーザー兵器(50-100kw?)が試験のため空軍に提供。その後は良い知らせ無し・・・

統合レベルでは・・・
Drone Kill Drone.jpg●2023年8月、統合参謀本部の無人機対処担当少将が、中央軍、アフリカ軍、アジア太平洋軍に10kw級の機種名不明の無人機対処用レーザー兵器を「作戦適合性確認」のため支給していると発言

最後にご紹介した統合参謀本部のSean Gainey陸軍少将によれば、世界各地の部隊に提供しての確認試験状況から、前線兵士が設備不十分な最前線地域での同兵器の維持整備に苦労している点が大きなネックとして普及の妨げになっている模様で、「広く部隊に配分して有効に活用していくには、維持整備面で改善すべき点が残されている」と同少将が語る現実のようです
///////////////////////////////////////////////

Laser NG2.jpgレーザー兵器の利点は、電力が確保できる限り無限に発射可能で弾薬運搬&補給の負担なし、光速で目標に破壊作用が到達可能で多数目標への対処がより容易、光速到達可能で目標照準が容易、弾の装填時間が不要で連続発射が可能などが挙げられています。

一方で困難な点として、大電力の確保が必要(航空機や小型車両での出力確保が難しい)、精密機材であり航空機や車両の振動の中での運用が容易でない、雨や雲などの大気現象の影響を受けるなどが挙げられており、大きな期待を集めながらも「いつになっても完成まであと5年」と揶揄され続ける状態が今も続いています(まんぐーすの知る限りでは・・・)

なお、X(旧ツイッター)などSNS上に、イスラエルが開発中のレーザーC-RAM(100kw級:対rockets, artillery and mortarsと無人機)兵器「Iron Beam」がハマスのロケットを迎撃するフェイク映像等が多数アップされているようですが、同兵器は2024-25年の運用開始を目指して開発中であり、フェイク映像はビデオゲーム「Arma 3」画面を加工したものだと、チェコの同ゲーム開発企業「Bohemia Interactiv」が注意喚起しています。ご注意ください!

米陸軍の取り組み
「50KW防空レーザー装備の装甲車3台導入へ」→https://holylandtokyo.com/2022/01/21/2623/
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1

海軍や空軍の取り組み
「AC-130用レーザー兵器の企業地上試験終了で空軍へ提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-12
「戦闘機防御用から撤退へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-01
「空軍が無人機用の電磁波兵器を試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24
「F-15用自己防御レーザー試験」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-04
「レーザーは米海軍が先行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24
「米空軍大将も慎重」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24

夢見ていた頃
「AC-130に20年までにレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-06
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「米企業、30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1

懸念の声が何時も付きまとい
「米議会がレーザー兵器開発に懸念で調査要求へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-08
「エネルギー兵器での国際協力」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-27
「レーザーにはまだ長い道が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-18
「国防次官がレーザー兵器に冷水」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-12

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米陸軍が評価中の様々な「ウ」の教訓 [Joint・統合参謀本部]

米陸軍協会総会で様々な検討状況を取材&紹介
航空戦力が活躍できなかった「ウ」の戦場ですが

ukraine war lesson2.jpg10月9日付Defense-Newsが、10月9日から開催された米陸軍協会総会の場で地上部隊担当Jen Judson記者が取材した、米陸軍が整理検討中の様々な「ウクライナの教訓」を取り上げ、「大砲」「戦車」「指揮所」「兵站」等の視点から紹介していますので、断片的ながらご紹介します

現在進行形のウクライナでの戦いで、まだまだ米陸軍も整理中の段階であり、また有人航空戦力の活躍の場がほとんどない環境で、かつ対中国のアジア太平洋地域とは全く異なる戦域状況ではありますが、陸軍長官や米陸軍参謀総長や将来戦闘コマンド司令官を始め、各専門分野を担当する高官の発言を基に構成されており、様々な示唆に富む内容ですのでご参考に供します(発言者名は省略しています。原文をご確認ください)

砲兵部隊は死活的に重要
artillery.jpg●「ウ」戦線で最も破壊力を提供しているのは通常兵器の砲兵部隊であり、砲兵部隊の精密攻撃が極めて重要であることを関係者は痛感している。これらを受け米陸軍は、2023年末までに「通常火力戦略」を新たに作成する準備を進めている
●「通常火力戦略」では、様々な現場部隊の教訓を基に、火砲のけん引式、自走式、車載型の利点や不利点、また推進薬の進歩により射程が伸びた砲弾特性を踏まえ、従来長射程砲が担ってきた分野を迫撃砲や榴弾砲で代替する等の検討や検証が行われている

●また「ウ」に提供された米国以外の国の火砲や砲弾の優秀さや優れた特性にも注目が集まっており、米陸軍が新規開発するより、外国製を輸入すべきではないかとの意見も強くなっている
●大砲への自動給弾装置など、前線兵士の負担軽減装備の重要性も再認識されている

戦車を巡る議論が活発化
tank damage.jpg●ロシア軍が開戦2か月間で400両以上の戦車を失ったことや、安価な無人機による戦車上空上方からの単純な攻撃による被害が極めて大きかったことから、大きくなりすぎて機動性に課題がある戦車に対する風当たりが強くなっている。これに対し陸軍長官は、まだ結論を出すのは尚早で、ドローンなど滞空型脅威への対策は可能だと語っている

●それでも米陸軍は、以前から進めていたM1戦車近代化改修計画を9月に破棄し、「ウ」の教訓も踏まえ、重くなり過ぎた車体の軽量化(機動性や回収の容易性)、最前線での維持整備負担の軽減、側方攻撃を意識した自己防御システムの再検討等を念頭に、新たな「M1E3」戦車追求に方向転換している
●「ウ」にまず31両のM1戦車が提供開始されているが、その前線での評価を米陸軍は注視している

機動性があり目立たない指揮所を求め
command posts.jpg●現在の戦場は、商用衛星、大小さまざまな無人機や電磁波センサーによって常時監視&偵察されており、従来の様な設営や撤収準備に半日も必要な前線指揮所では生き残れないことから、より小型で電磁波放出が少ない指揮所が求められている

●また、日進月歩の民生技術を迅速に取り入れるための「open architecture」仕様も不可欠である。最近の優れた例では、旅団戦闘チーム(BCT)の指揮機能をストライカー戦闘車両5台(35名)に集約し、市販のPCとタブレットをワイヤレス接続で活用して指揮統制機能を果たした部隊例が注目を集めている
●また通信途絶時や被害状況下での指揮統制活動を念頭に置いた準備にも、米陸軍は注目し、演習等で状況設定を増やしている

リモートによる維持整備支援が大幅拡大
remote mainte.jpg●「ウ」に大量に提供した兵器や装備品の維持整備をどうするかが当初大きな課題となったが、米陸軍がポーランド軍基地内の駐車場に設置した「リモート整備支援施設」から発信される、メールでの整備要領助言、録画映像での維持整備要領教育資料、ライブ映像でのリアルタイム支援の有効性が確認され、米軍提供装備だけでなく、欧州同盟国支援装備品にも同手法が幅広く導入された
●この手法はアジア太平洋戦域でも利用可能と考えられ、陸軍長官は「以前からそのようなアイディアは存在し、机上検討はあったが、実際に行ってノウハウを蓄積し、成果を上げた意義は極めて大きい」と高く評価している

より身近で手軽なドローン対処
counterdrone.jpg●米陸軍が5年前に作成した優先すべき近代化事業の多くはその方向性の正しさが確認されたが、新たな視点での気づきも見つかっている。防空&ミサイル防衛については、その重要性が対中国を意識して強調されてきたが、様々な脅威を念頭に重層的な防御システム構築の必要性が再認識され、柔軟に展開可能なパトリオット部隊の増強も加速しつつある

●小型ドローン対処も重要性が強く意識されてきた分野で、レーザーや電磁波利用の対処兵器開発や選定試験が行われているが、より現場に導入容易な、例えば既存の小銃に装着してすぐ使用可能な、AI活用のドローン照準用小型スコープなども「ウ」現場でニーズが高い事が確認されている
●また、前線に展開する全ての部隊が自己防御用に共通して装備するような、対ドローン兵器の提供も検討すべきとの声が上がっている
////////////////////////////////////////

ukraine war lesson.jpgそれぞれが断片的で検討中のものばかりですが、「大砲」「戦車」「指揮所」「兵站」「ドローン対処」の各分野で教訓とすべきある種の「エッセンス」を感じて頂けたと思います

また、別の観点から航空戦力に期待しにくい可能性がある西太平洋地域でも、参考になる点が多いようにあたらめて感じた次第です。ご参考になれば幸いです

2022年6月時点での・・・
「米陸軍首脳がウの教訓語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/

様々な視点からウの教訓
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「イラン製無人機が猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「アジア太平洋への教訓は兵站」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「SpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

18年ぶりに空軍から米軍人トップ誕生 [Joint・統合参謀本部]

黒人としてパウエル議長以来2人目のBrown空軍大将
「変化を加速せねば敗北する」との信念を統合世界へ

Brown Milley.jpg9月29日、2019年から米軍の統合参謀本部議長を務めたMark A. Milley陸軍大将の退役式典と、Charles Q. Brown Jr.空軍大将の同議長就任式が、バイデン大統領やオースチン国防長官出席のもと開催され、10月1日からBrown空軍参謀総長が米軍人最高位の統合参謀本部の議長として、米国大統領に軍事面での助言を行う責務を引き継ぐことになりました

Brown Milley2.jpgMilley陸軍大将は、当時のGoldfein空軍参謀総長が下馬評でダントツ候補No1だった中、トランプ大統領の好みによる「どんでん返し推薦」で2019年に同議長に就任したものの、2020年の大統領選挙のゴタゴタの中でトランプ大統領から敵視&公然と非難された不遇の議長ですが、退役式で「我々は特定の個人に宣誓して任務についているのではなく、米国憲法に宣誓し、米国の理念を守るため軍務に服している」と述べ気概を示しています

Brown milley5.jpgISISを崩壊に導く軍事作戦を成功に導いた米軍人トップであり、また一方でバイデン政権による突然のアフガニスタン作戦からの撤退と、それに起因するタリバン復活によるアフガニスタン大混乱を「戦略的失敗:strategic failure」と言い切る「歯に衣着せぬ」議長として知られ、任期最後までロシアのウクライナ侵略対応に紛争するなど「海外軍事危機と連続して向き合ってきた議長」と米メディアは伝えています

Brown milley4.jpg新議長に就任するBrown空軍大将は18年ぶりの空軍人議長となりますが、Milley氏とは対照的に「慎重な」姿勢と物言いで知られています。ただ強く熱い信念の持ち主で、末尾の過去記事にあるように、空軍トップ就任直前に、自らが黒人として軍内で感じてきた人種差別について発言したり、

「変化を加速せねば敗北する:Accelerate Change or Lose」との信念の下、Kendall空軍長官と一体となり、強力に現有装備の早期退役と戦力体系更新をセットで推進する姿勢は突出しており、29日の式典でも「私の信念は揺らいでいない」と、変革を追求する姿勢を静かに力強く強調しています

Brown Milley3.jpgなお、バイデン大統領は同式典で、「軍を指導者する者として、我々の決断がもたらす直接的影響と、世界の人々に与えるインパクトから、決して目をそらしてはならない」と語ったということです

ところで、某共和党議員による将官級軍人の人事案への抵抗で、引き続き米議会での軍人人事案承認が遅れており、Brown大将が空軍人トップを離れた後の後任人事は、David W. Allvin副参謀総長が引き続き代理として勤める状態が続いています

Brown太平洋空軍司令官の関連
「18年ぶり空軍から統参謀議長候補」→https://holylandtokyo.com/2023/05/09/4618/
「行動指針を小冊子で」→https://holylandtokyo.com/2020/09/02/471/
「Brown大将が次期空軍トップ候補に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-03
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21

黒人としての空軍勤務経験を赤裸々に語る
「空軍へ来たれ!募集映像が話題」→https://holylandtokyo.com/2021/08/10/2087/
「Brown大将が人種問題を経験から語る」→https://holylandtokyo.com/2020/06/07/617/

次の空軍人トップはAllvin副参謀総長
「次の米空軍トップ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米海兵隊が麻薬組織の知恵を生かして [Joint・統合参謀本部]

無人輸送艇で最前線にミサイル弾薬輸送を
「Naval Strike Missiles」2発搭載可な試験艇を
来年春の演習に投入してより実戦的な試験へ

marine Autonomous2.jpg9月7日付Defense-Newsは、米海兵隊が太平洋戦域での分散拠点への兵器弾薬輸送手段として、南米の麻薬犯罪組織が密輸に活用中で米国が取り締まりに苦慮している「発見されにくい無人水上艇」のアイディアを流用し、2発の「Naval Strike Missiles」を搭載可能な「Autonomous Low-Profile Vessels」を試験中で、来春の米陸軍演習にてより実戦的な環境での運用確認を実施予定だと報じています

この記事は9月6日の米海兵隊Karsten Heckl中将による記者懇談会の内容を紹介したもので、米軍全体で対中国作戦の大きな課題となっている、西太平洋の島々で分散運用を目指す米軍部隊への補給や兵站輸送のために、人命へのリスクと敵に発見されるリスクを下げる方策として検討が進んでいる手法です

marine Autonomous.jpgALPV(Autonomous Low-Profile Vessels)は、推進が4フィート(約1.2m)の浅瀬まで到達でき、それ以降は事前に展開している兵士が対応して2発の「Naval Strike Missiles」を陸揚げする仕組みで、基本的に低価格なALPVは「使い捨て(they’re almost expendable)」を想定されているようです。

Heckl中将は、来春に計画されている米陸軍演習「Project Convergence Capstone 4 event」にALPVを持ち込んで試験運用すると説明し、現在の2発搭載が適切なのか、より大きなタイプが効率的なのか等々を検討している段階で、どの程度の数量を導入すべきかも併せて今後見積もることになると記者団に語りました

Apalachicola.jpg更に同中将は、敵による厳しい防御環境での兵站輸送任務を遂行するため、積極的に自立型無人システムの導入を検討していると語り、現在の有人艦艇や水上艇から人間用の換気呼吸用システムを除去するだけで、大幅なコスト削減&効率性向上&単純化が可能になると語っています

ALPV以外の具体的例として、Austal USA社製の高速無人輸送艇「Apalachicola」を同中将は取り上げ、30日間連続で人間の関与なく運用可能で、実際には操作に関与しない人間を緊急事態用に同乗させ貨物を搭載した状態で、通常の海軍輸送船より早い速度45ノットで、既に1500nm(2700㎞)の自立運航を成功させてている、と説明しました
///////////////////////////////////////////

Apalachicola2.jpg以下の過去記事でご紹介しているように、米海軍も無人艦艇の利用拡大に取り組んでおり、海兵隊との連携を深めて頂きたいところですが、2021年の米海軍「無人システム構想」が「言葉の遊びで中身がない」、「実施中の事項の説明ばかりで、具体的将来計画がない」、「最近の数々の米海軍研究開発の失敗事例との差が感じられない」等々、米議会や研究者から辛らつな言葉の集中砲火を浴びた後、どうなっているのか把握しておりません

兵站支援の輸送だけでなく、空母やイージス艦に代表される現在の主力戦闘システムの役割を担う側面からも、よりシンプル構造で低コスト、人命へのリスクが低い無人システムの活用に、米議会や世間の関心は向かっているということです。

米海軍の無人艦艇を巡る動向
「100隻規模の無人艇部隊を中東で」→ https://holylandtokyo.com/2023/01/06/4118/
「中東から西海岸までの航海に成功」→ https://holylandtokyo.com/2021/06/22/1908/ 
「無人システム構想が酷評受ける」→ https://holylandtokyo.com/2021/03/30/173/
「Sea Train:無人艦艇を電車のように連結し」→ https://holylandtokyo.com/2020/06/12/622/ 
 
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

5世代機用のターゲットドローン開発再開 [Joint・統合参謀本部]

2020年の初飛行で墜落の「5GAT」を国防省と陸軍が再開
より高い要求の米空軍も支援し、停滞気味「NGAT」に活用か

5GAT Sierra.jpg9月7日付米空軍協会web記事が、米空軍と米陸軍がそれぞれ異なる要求性能を持ち、3~5年前から開発に着手したものの、事故や(恐らく)コンセプト&技術未成熟や(恐らく)予算制約などで開発が中断や停滞している「次世代無人標的機:Aerial Target」開発に関し、米国防省と陸軍が8月4日に民間企業と開発契約を結んで再スタートを切ったと報じ、空軍も協力していると紹介しています

経緯を振り返ると、まず米陸軍が「5GAT:5th Generation Aerial Target」プロジェクトを2017年に開始して「Sierra Technical Services社」と契約し、2020年には初飛行を迎えましたが同飛行での墜落事故で計画がとん挫し、2022年4月に企業募集から仕切り直しましたが、今年8月に再び「Sierra・・」と「Advanced Technology International Inc.」と契約発表するまで大きな動きはありませんでした

5GAT Sierra2.jpg8月の再契約に際し、陸軍と共にプロジェクトを推進する国防省は、「(2020年に初飛行で墜落した)当時の5GAT機体は、全体設計や機器の組み合わせは今振り返っても良くできており、今回の契約で機体の能力や価格妥当性が確認できれば、製造契約に進む方向だ」と明らかにしています

一方で米空軍は、中国のJ-20ステルス戦闘攻撃機やロシアのSu-57ステルス戦闘機を模擬する狙いで、国防省と陸軍が取り組む「5GAT」よりも高い要求性能を追求する「NGAT:Next Generation Aerial Target」計画を2021年に開始して企業にアイディアを募り、翌2022年には超音速飛行が可能な無人敵機の運用と整備までを委託可能な企業がないかを問いかけていたところです

5GAT Sierra3.jpgしかしその後は空軍NGATも動きが無く、2024年度予算案には具体的なNGAT予算は見当たらず、担当開発部署も「NGATは依然として調達前段階にある」と述べるにとどまっています。ただ「技術的リスクを見極め、搭載装備の適応性を見極める設計分析は継続されており、電子戦装備の適応などが検討されている」、「これら検討結果は、NGATコンセプト固めや次の段階の詳細設計やその後の試験内容にも使用される予定だ」と関連文書に記載されているようです

ただ5GAT関連で国防省報道官は、「5GAT計画は空軍のNGAT計画の道しるべの役割を果たすだろうし、5GAT計画は米空軍と連携を図りつつ進めている」と表現する一方で、「5GATは、NGAT計画のニーズを満たし、とって代わるようなものではない」と明確に述べており、J-20やSu-57を模擬する高性能な無人敵機を目指すNGATと、5GATには相当な性能差が存在する模様です

5GAT Fury.jpg話は戻って、8月に国防省と陸軍が契約した5GAT契約ですが、契約企業が「本プロジェクトの成果(であるプロトタイプ)は、必要な装備搭載など生産段階に移行するため、各個別の軍種に直接移管される(may be transitioned directly to the individual service branches)」と声明を出しており、複数軍種への提供が示唆されていますので、空軍も提供先に含まれているのでしょう

また8月の国防省&陸軍の契約対象となった2社以外に、米空軍研究所AFRLが「Blue Force Technologies社」と「仮設敵としての使用を想定した高性能ドローン」製造契約を2022年に結んで「Fury計画」を本格化していたところ、9月7日にソフト会社「Anduril」が「Blue社」を買収して同計画に大きな投資を行うと発表するなど、「ドローンAerial Target」分野は、急速な盛り上がりを見せています
////////////////////////////////////////////////

5GAT Fury2.jpg中国のJ-20やロシアのSu-57を模した高性能無人ドローンと、米空軍のF-35やNGADが空中戦訓練を行うつもりなのでしょうか? 

意味が全くないとは言いませんが、そこまで技術が成熟するなら、有人第5世代戦闘機や次世代戦闘機への投資を抑えて、「NGAT」をそのまま米軍の戦闘機や攻撃機として使用した方が早いような気がしますが・・・

仮設敵機部隊の話題
「米海軍が空軍F-16を仮設敵機に」→https://holylandtokyo.com/2021/06/17/1873/
「米空軍が19年ぶりに空対空戦闘競技会」→https://holylandtokyo.com/2023/06/12/4735/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

分散基地防空で米空軍と陸軍が協力深化中 [Joint・統合参謀本部]

空軍基地防空幹部が陸軍の小型対処兵器開発を高評価
空軍は電子戦・サイバー・エネルギー兵器等で防空に貢献
空軍の防空主担当は極超音速兵器や弾道ミサイル対処

Resilient Basing3.jpg8月29日、米空軍協会ミッチェル研究所でのイベントで、米空軍の基地防空体制整備を担当する幹部がパネル討議を行い、対中国の西太平洋での戦いに関し、米軍の各軍種が共通に抱える兵站支援問題で、過去例を見ない緊密&活発な軍種間協力で対策に取り組んでいるが、その一環で西太平洋の分散作戦拠点の防空強化についても、陸軍と空軍間で協力が強化されていると強調しています

前線基地防空の役割分担は、空軍が極超音速兵器や弾道&巡航ミサイル対処を発見段階からフォローし、陸軍がPatriotやTHAADで戦域防空を担う振り分けですが、PatriotやTHAADは保有数も限定的で、ACE構想(Agile Combat Employment)で展開先となる辺鄙な分散基地防空にまで手が回らないことから、陸軍が「追加的な積極防空能力の開発に当たっている:is developing additional capability and capacity for active air defense」と紹介し、

Resilient Basing4.jpg更に陸軍内での開発優先度が「最上位5項目に、下位の方だが入っている」ことや、PatriotやTHAADよりも小型でコスト面や輸送面で負担軽減を目指す優れた開発方向だと取り上げ、開発中の兵器について具体的には言及していないようですが、陸軍の取り組み姿勢を高く評価していると会場の空軍関係者や空軍担当メディアにアピールしています

また別の空軍担当開発官は、空軍も陸軍に依存しているだけでなく、米議会から陸空軍が協力して前進航空基地防衛に取り組むよう指示されることも受け、主に小型ドローンや巡航ミサイル対処を念頭に、「軽量・かさ張らない・持ち運びやすい」かつ「コスト負担が軽い」手段である電子戦やエネルギー兵器やサイバー手法を用いた対処技術の成熟に当たっており、陸軍との協力も一部では行っていると語っています
//////////////////////////////////////

同パネル討議の模様(約60分)


28日付米空軍協会web記事から、陸軍と空軍の協力面からご紹介を始めましたが、記事のタイトル「Collaborate on Air Defense That’s Smaller and Cheaper for the Indo-Pacific」が示すように、現状認識として「防空側が重いコスト負担を敵から強いられている」点を問題視し、「need to get on the right end of the cost curve」方向を目指す取り組みのアピールだと徐々に認識するに至りました

Resilient Basing.jpg「中国の経済と統治の崩壊」が驚くほどの速さで進む中、「中国国民の不満を逸らすため、海外に目を向けさせようとする中国指導部」に警戒は必要ですが、米国&同盟国側のコスト意識も重要です。もちろん、コストから必要な軍事力を考える前に、「惰性でなく、曇りのない目で」何が必要で有効なのかをしっかり見極めることから始めるべきですが・・・

こっちは大規模拠点グアムのミサイル防衛関連
「本格試験が来年に向け活発化へ」→https://holylandtokyo.com/2023/08/22/4937/
「グアムMDを再び語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/
「整備の状況と困難」→https://holylandtokyo.com/2022/04/05/3082/
「分散&機動展開可能型へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-21

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米陸軍がパトリオット防空ミサイル部隊増強へ [Joint・統合参謀本部]

現在の15個部隊から数不明ながら増強へ
採用難で人員確保が課題。他職域からの転職期待

Patriot missile2.jpg8月8日、米陸軍の宇宙&ミサイル防衛コマンド司令官が、アラバマ州で開催された「Space and Missile Defense Symposium」で記者団に対し、米陸軍保有のパトリオット防空ミサイル部隊への派遣需要が極めて高い事を米陸軍長官から陸軍参謀総長に至る全ての米陸軍首脳が認識しており、現在保有の15部隊からの増強方向で動いていると語りました。

現在の15個部隊から、既に追加で1個部隊増強する予算措置は完了しているようですが、米議会からも更に追加が必要なはずだから必要数を見積もるレポートを提出するよう、2023年度国防授権法で既に米陸軍は正式に命じられているところです。

Karbler 2.jpg同日の会見で同コマンド司令官のDaniel Karbler陸軍中将は、(予算措置が完了している+1個部隊増強に加え、)さらに何個部隊を増強する方向なのかについて具体的には言及せず、陸軍指導者に尋ねるべき質問だとかわしたようです

米陸軍の中でも、パトリオット防空ミサイル部隊は前線への派遣頻度が過去10年以上に渡り最も高い部隊で、更に、通常の陸軍部隊が設定されている6-9か月間派遣期間よりも長い派遣期間を命ぜられていることから、部隊所属兵器への負担の高さが問題となっています

Patriot missile.jpgこのため、新兵募集が厳しい米軍全体の中にあって、厳しい勤務環境が災いして、部隊増強を支える人員確保が年々難しくなっていることが、パトリオット装備増強のネックとなっている模様です

米陸軍は、パトリオット防空部隊に給与面でのインセンティブを提供したり、海外派遣期間に上限を設定して兵士への負担軽減に取り組み、新たな兵士確保や退職の防止に努めているようですが、今後は米陸軍兵士が勤務契約を延長するタイミング等で、他職域の兵士を防空ミサイル部隊要員に「転換」させる道にも注力する計画を持っているようです

また、防空兵器への需要急増の中にあって、海空海兵隊も合わせた統合枠組みでの防空能力強化や、同盟国の能力を融合することで、トータルの防空能力強化を図る方向にもより注力していくと同司令官は語ったようです
/////////////////////////////////////////////////

PAC-3 5.jpg米陸軍をで言えば、歩兵や戦車部隊などの伝統的な「前線部隊」の規模を含め、トータルな人員の中で防空部隊に振り分ける比率を再検討してはどうかと思いますが、日本でパトリオット防空部隊を保有している航空自衛隊で考えれば、

脅威や兵器技術が激変する中にあっても、半世紀以上に渡り全く変化が無い「戦闘機部隊の10個態勢」も、メスを入れるべき対象と言えるでしょう・・・

パトリオットなど防空部隊関連
「欧州空の盾計画に中立億が続々」→https://holylandtokyo.com/2023/07/12/4828/
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦に直面」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「グアム防衛をMDA長官が語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米陸軍戦闘車両への電子戦装備TLS搭載 [Joint・統合参謀本部]

旅団レベル用TLS-BCTと師団以上用TLS-EAB
ウクライナ教訓受け陸軍が全力で推進中
「Stryker」と「AMPV」へ搭載へ

TLS Stryker.jpg8月7日、米陸軍のDoug Bush技術開発調達担当次官補が記者団に対し、ウクライナでの教訓等々を受け、米陸軍が過去20年間の「テロとの戦い」で生じた電子戦空白時代を穴埋めするために、新たな電子戦装備の迅速導入に取り組んでいるとアピールしました

具体的には、陸軍部隊の重要装備である戦闘車両に、「cyber, electronic warfare and signals intelligence」の全てを総合的にカバーする電子戦装備を搭載する取り組みで、GD社製の「Stryker戦闘車両」とBAEシステム社製の「AMPV多用途車両:Armored Multi-Purpose Vehicle」がその対象となっており、ロッキード社が競争を勝ち抜いて2023年4月から本事業を担当しているようです

TLS Stryker 2.jpg搭載システムは、旅団規模以下で使用する小規模部隊用の「TLS-BCT:Terrestrial Layer System-Brigade Combat Team」システムと、師団や軍団レベル以上で使用する「TLS-EAB:Terrestrial Layer System-Echelons Above Brigade」で、ロッキードは約160億円規模の契約でまず「Stryker戦闘車両」の「TLS-BCT」から取り掛かっており、6月には「TLS-EAB」部門での企業選定にも勝利して具体的検討を深化させているようです

Armored Multi BAE.jpgBush担当次官補はこれら一連の電子戦事業について、「米陸軍は、過去20年間にわたり放置されてきた戦術的電子戦分野の、根本的な再構築のために再投資を行っている」と説明し、「ウクライナに提供できたのは限定的な数量の関連装備だが、露側のドローン攻撃対処等に極めて有効であることが実証されており、我々はこの戦訓から学ぶべきと考えている」とこの投資の重要性を強調しています
///////////////////////////////////////////

「テロとの戦い」から対中国念頭の「本格紛争」準備へと切り替える中で浮上した「電子戦の空白」問題ですが、ウクライナ戦争を目の当たりにして米軍の危機感は、「ドローン対処」「地上戦闘」「情報収集」「指揮統制」等々の多様な分野で急速に高まったものと考えられます

Armored Multi BAE2.jpg日本もこの危機感を共有しているのでしょうか? 戦闘機を始めとした、航空機ばかりに投資し続けている航空自衛隊を見るにつけ、非パイロットである坂梨防衛部長でも「急には方向性を変えられない」日本の悪しき硬直性をしみじみと感じます

米陸軍の電子戦改革(道遠し)
「2027年までに前線電子戦部隊整備」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-04
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米海兵隊が「飛び石」沿岸偵察部隊MEU試行中 [Joint・統合参謀本部]

10日から17日まで夏休みを頂きます・・・

昨年11月から6月まで様々な試行を
30-50名が展開先で短期間センサー部隊
強襲揚陸艦や空母戦闘群とも試行演習を

13MEU5.jpg7月24日付Defense-Newsは、米海兵隊が将来部隊構想「Force Design 2030」実現に向け、米海軍の打撃部隊に西太平洋の最前線情報を収集&伝達する機動センサー部隊(MEU:Marine Expeditionary Unit)が、昨年11月から今年6月まで実験&試行運用を行った様子を紹介しています

機動センサー部隊(MEU:Marine Expeditionary Unit)は30-50名の単位で、西太平洋の島々や半島の沿岸部に航空機や小型艦艇等で隠密裏に展開し、数日から1週間程度の短期の展開間に、持ち込んだ各種センサーや無人機等で敵艦艇部隊の状況を収集し、米海軍打撃部隊や周辺友軍部隊に提供して、必要に応じ味方を誘導する部隊イメージです

13MEU.jpg昨年11月からの実験運用では、大佐が率いる第13MEUがアジア太平洋地域全般の様々な場所に様々な手段で展開し、2月にはMakin Island強襲揚陸艦率いる即応戦闘群ARGやニミッツ空母戦闘群とも連携して、空母艦載機を実際に飛ばしてMakin Islandが航空作戦指揮と行うパターンまで訓練した模様です

第13MEUは機動センサー部隊の運用構想(EAB作戦構想)「Expeditionary Advanced Base Operations concept」の検証を行ったと記事は説明しており、当該期間に具体的に行った実験運用試験の細部は不明ですが、「AI搭載無人機V-BATの活用」、「シンガポール派遣中の沿岸戦闘艦LCSとの複数回にわたる具体的作戦協議」、「同盟国関連部隊との調整」等々を行った模様です

13MEU2.jpg米海兵隊は、西太平洋の島々を構成する水深が浅いエリアでの作戦には、米海軍大型艦艇より小回りの利く海兵隊用の強襲揚陸艦や補給艦が適していると考えており、実際に強襲揚陸艦にF-35Bとオスプレイを各10機づつ搭載して既に運用実績を積んでいる点からも、海兵隊独自の自律性の高い運用が可能だとも考えている模様です

もちろん、より大きな打撃力を米統合部隊として発揮するため、長射程対艦ミサイルを操るNMESIS(Navy/Marine Corps Expeditionary Ship Interdiction System program)と一体化したセンサー部隊としての運用がMEUの目指すところですが、様々な状況に応じて柔軟に戦力発揮できることを海兵隊はアピールしています

13MEU4.jpg7か月間の実験&試行間に得られた教訓や課題について、現在保有の補給艦等では航空機可能スペースが不十分との記述がありますが、その他の具体的課題について記事は触れておらず、今後のMEU構想の動きも記載されていませんが、

間違いなく第一列島線上に陣取るであろう自衛隊との連携が重要となる運用コンセプトですので、今後の展開を注視したいと思います

米海兵隊関連の動向
「事前装備集積船を小型化へ」→https://holylandtokyo.com/2023/07/03/4806/
「次期司令官は改革派」→https://holylandtokyo.com/2023/06/06/4711/
「沖縄海兵隊4千名転進先」→https://holylandtokyo.com/2023/02/01/4230/
「ハワイに新MLR部隊」→https://holylandtokyo.com/2022/08/19/3546/
「Stand-in Force構想」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「Force Design 2030構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

アジア太平洋初の海兵隊MQ-9部隊が任務態勢確立 [Joint・統合参謀本部]

米海兵隊で2つ目のMQ-9部隊がハワイに
海兵隊の対中国の目玉、第3海兵沿岸旅団を支援

MQ-9 Marine3.jpg8月2日米海兵隊が、海兵隊2番目で、アジア太平洋では初のMQ-9運用部隊となる第3海兵無人機飛行隊(VMU-3:Marine Unmanned Aerial Vehicle Squadron 3,、愛称Phantoms)がハワイのKaneohe Bay海兵航空基地で初期運用態勢(IOC)を確立したと宣言しました

第3海兵無人機飛行隊(VMU-3)は、2008年からこれまで、RQ-7、ScanEagle、RQ-21Aなどの無人機の他、無人輸送用ヘリ・K-MAXの運用も担い、アフガニスタンでの実戦経験も豊富な部隊ですが、今年4月に最初のMQ-9を2機受領し、同年9月に初飛行を行い、その後訓練や人員の養成を行ってIOCを達成したとのことです

MQ-9 Marine.jpg米海兵隊におけるMQ-9運用部隊の先駆者は、アリゾナ州Yuma海兵隊航空基地のVMU-1ですが、VMU-3より1年早く初号機を受領しただけの「ほやほや部隊」で、VMU-1と3は、今後競い合ってその技量向上や戦果を追求していくと思われます

ハワイに創設されたVMU-3は、米海兵隊が対中国を想定し、同じくハワイの第3海兵旅団を2022年3月に改編して創設した3MLR(第3沿岸海兵旅団:3rd Marine Littoral Regiment)を支援することが主任務とされています。

MQ-9 Marine2.jpgこのVMU-3が支援する3MLRは、米海兵隊が対中国を想定して2021年12月発表の「A Concept for Stand-In Forces」に基づき、米海兵隊が新たに編成した「Stand-In」部隊であり、2023年9月の初期運用態勢確立IOCに向け、最後の準備を精力的に進めているところですが、準備の最後のピース「VMU-3」が無事収まった形となりました

米海兵隊無人機部隊を束ねる海兵飛行部隊群司令官のWilliam Heiken大佐は、「MQ-9部隊は、海兵隊の沿岸旅団における空中クォーターバックだ」と表現し、米海兵隊報道官は「多様な任務、すなわち、沿岸や国境監視、兵器移動追跡、禁輸措置行使、人道支援・被害復旧、平和維持支援、麻薬対処などの作戦を支援する」と説明しています
//////////////////////////////////////////

MQ-9 Marine4.jpg米軍内の軍種は異なりますが、鹿児島県の海上自衛隊鹿屋基地内に設置された米空軍のMQ-9部隊との関係など、ハワイからの運用や今後の機動展開訓練先が気になります。

高度25000フィートまでの高さで、連続20時間以上の飛行が可能なMQ-9部隊の今後の活動具合に今後も注目して行きたいと思います

VMU-3が支援する新型海兵旅団3MLRの関連記事
「米比2+2で連携強化を大推進」→https://holylandtokyo.com/2023/04/20/4524/
「米海兵隊stand-in force構想実現に3MLRが準備中」→https://holylandtokyo.com/2022/08/19/3546/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース
前の15件 | - Joint・統合参謀本部 ブログトップ