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米陸軍が位置航法時刻PNT演習をFive Eyesと強化 [Joint・統合参謀本部]

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妨害下での Positioning, Navigation, Timing 重視
専門チーム CFTを拡大強化編成して
9月の演習では 130組織が150新技術評価

PNTAX Army.jpg10月16日付 Defense-News が、米陸軍が特別チーム CFT(Cross Functional Team)を改編強化し、最も緊密な同盟国 Five Eyes(米英加豪NZ)と共に能力強化に注力している位置航法時刻(Positioning, Navigation and Timing)の確実な把握と部隊利用に関する取り組みを、PNTAX 特別演習等への取り組みを通じて紹介しています

正直なところまんぐーすは、「位置航法時刻(PNT:Positioning, Navigation and Timing)の確実な把握と部隊利用」の重要性を身に染みて理解できていませんが、精密誘導兵器や無人機が戦場の主役となり、各種センサーや指揮統制情報をリアルタイムで共有する必要がある現代戦では、敵の電磁スペクトラムやサイバー領域等での妨害下でも強靭に機能するPNT が不可欠だということでしょう

PNTAX Army2.jpg同記事が伝えているのは、PNTに焦点を絞った年次演習 PNTAXの6回目を9月に実施し、同盟国 Five Eyes(米英加豪NZ)から600名の参加を得て、130以上の組織が150以上の新技術評価を3週間かけて行ったこと、同演習を企画運営する陸軍司令部の特別チーム CFTが、従来の Assured Positioning, Navigation and Timing/Space CFT から、All-Domain Sensing CFT へ編成も強化され本格的に機能開始した点です

また、細部については言及できないとしながらも、「他に類を見ない」現実的な脅威環境を提供している演習 PNTAXが今後数年間で規模を拡大し、米陸軍の他の実験や演習や活動と統合してPNTAXが実施される可能性が高いと、同CFT リーダーMichael Monteleone 氏が取材に対し説明しています

PNTAX Army3.jpgMonteleone氏は更にPNTAX年次演習の方向性に関し、「本格紛争を想定した厳しい環境での部隊評価のため、従来とは異なったものとなる。宇宙から地上の全てを含む、人間と機械が融合したシステム編成を通じ、より強靭なアーキテクチャーへ向かう。より多くのロボットや無人機機能を導入する」、「搭載型および非搭載型の PNT システム配備が成功しつつあるが、全ドメインセンシングに向けてはまだまだ実施すべきことが残されている」と語っています
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PNTAX Army4.jpg極めて抽象的な記事紹介で終わり、補足情報も提供できず申し訳ありませんが、「PNT」や「PNTAX」との言葉に接していただくと共に、米国を中心とした同盟関係の中核をなす FiveEyes だけで大規模に演習を行っている点から、その重要性や米軍の力の入れようを感じていただければと思います

PNT 関連の記事
「地磁気航法を試験」→https://holylandtokyo.com/2023/06/13/4731/
「陸軍がGPS無し訓練に苦労」→https://holylandtokyo.com/2022/12/22/4077/
「同CFT 太陽光無人機64日飛行」→https://holylandtokyo.com/2022/08/30/3585/
「なぜ露はGPS妨害を・・・」→https://holylandtokyo.com/2022/07/26/3497/

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太平洋軍トップ:中国との偶発的事案への懸念なし [Joint・統合参謀本部]

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かつて主張の「2027年台湾侵略想定」も引っ込める
代わりに「ウ」や「イ」関連の弾葉不足を懸念

Paparo Brookings.jpg11月19日、有事に対中国作戦の指揮を執る米太平洋軍司令官のPaparo 海車大将がブルッキングス研究所で講演し、中国軍事に関する過去数年の米軍幹部の表現ぶりを大きく転換し、「2027年」は中国による台湾侵攻の期限だとは考えていないし、また挑発的な中国軍行動や演習が増加している中でも、米国との偶発的な衝突が大きな紛争に発展する懸念は低いと語りました

2027年や2026年との年次は、例えばグアム島のミサイル防衛態勢完成の期限とされ、MDA 長官は期限前の態勢確立を最優先事項だと度々発言し、また有事には大統領直属の軍事作戦指揮官として対中国作戦をつかさどる前任からの太平洋軍司令官や米軍幹部が何度も、「2027年までに中国は・・」との表現で繰り返し危機感を訴えてきたところでした

Paparo Brookings4.jpg代表的なシンクタンクである CSISも、2026年を想定した様々な前提で24回もの台湾有事 Wargameを実施して 2023年1月に結果を公表し、「甚大な被害想定を国民にも知らせ心の準備と抑止を」、「米軍は空母2隻を含む数名の損失と莫大な装備被害で当面弱体化」、「日本も平均 122機の航空機、26の艦船を損失」等のショッキングな中身で世の緊張感を高めたところです

そんな最近の米軍幹部の横並び姿勢を突然大転換する驚きのPaparo司令官講演ですが、以下では19日付米空車協会web記事から、4つの部分「2027年の意味について」、「偶発的事案への懸念程度」、「北朝鮮の最近の動向関連」、「武器備蓄量への不満」に区分してご紹介します。 北朝鮮や弾薬備に関しても、普通は言及しない部分まで触れている気がします

2027年の意味について
Paparo Brookings2.jpg●2027年に近づくにつれ、日付の意味は薄れていくが、我々はより一層準備を整えていかなければならない。
●それは決して『販売期限』ではなかったし、中国が『出荷期限』と宣言した日付でもなかった。これは、我々が細心の注意を払うべき基準だった。
●2027年という日付の本当の意味は、中国軍の侵攻の可能性に備えなければならない時期が2035年から早まったことだ

Paparo Brookings5.jpg●中国の反国家分製法(2005年制定)は台湾を対象とし、以下の3事態でのみ力に訴えるとしているが、この条件に合致する状況にはない。また中国は軍事的征服ではなく、他の手段による強制によって目的を達成することを好む

・台湾が中国からの独立を宣言
・第三勢力が紛争に介入
・中国政府が「他のいかなる手段でも、不可逆的に統一が不可能である」と判断した場合

偶発的事実への懸念程度
Paparo Brookings7.jpg●最近増えつつある、中国が自国の船舶や航空機を米国の航空機や艦艇に異常接近させるような挑発的な行動をとった場合でも、事態が急激にエスカレートするとは懸念していない
●米軍部隊は安全に規則を遵守するよう訓練されているので、夜眠れないほどではない。米軍に2つの選択肢があれば、安全な方を選ぶよう訓練されている。公海上での一時的な名誉のため、3000億円の軍艦で「原胸試し」を行うことはない。衝突が起こっても、冷静な頭で事に臨むだろうと自信を持っている
●衝突がより大きな紛争につながる可能性はゼロではないが、そうなる可能性は極めて低いと考えている

北朝鮮の最近の動向関連
●(最近試験を行った北朝鮮 ICBMは、複数弾頭を個々に精密誘導する技術を備えているか?・・・との質問に対し、)まだである。
●ウクライナ戦争への北朝鮮武器と兵士供給の見返りとして、北朝鮮は「潜水艦技術と推進技術 propulsion technology」の入手を期待している。

武器備蓄への不満
Paparo Brookings3.jpg●武器備蓄が減少しており、アジア太平洋地域の即応体制を懸念している。これは特に最近数か月間で、緊張が高まるウクライナやイスラエルへの武器提供が急増しているからだ。防空をサイルPAC-3や空対空ミサイルが特に心配であり、この懸念について沈黙を守るのは不誠実だ
●アジア太平洋地域は中国との大きな潜在脅威を抱えており、弾菜の量と質の両面で負荷大の地域である。私は2つの紛争発前から弾薬備の少なさに不満を持っており、幸直に協議すべき時を迎えている
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Paparo Brookings6.jpgなぜ今になって「表現ぶり」を大転換したのか?・・・について記事は何も触れていませんが、まんぐーすは以下のような要因が絡まって背景にあると考えています

●今後ますます中国経済破綻の影響が顕在化し、中国軍の活動低下や土気の低下が表面化する可能性が高く、従来の「2027年までに中国は台湾を・・」的な発言を続けていると、米軍への信頼性が損なわれるため
●米国防省や米軍予算が厳しく、「2027年までに・・」的に中国脅威を声高に訴えても、米軍自身のずさんな装備品開発導入計画の影響もあり、それまでに装備や兵器の拡大充実が見込める可能性がないため

●トランプ次期大統領が、ウクライナや中東への軍事力提供を抑え、対中国に集中する姿勢を明確に打ち出していることから、太平洋軍が中国脅威を従来同様に(過剰に)アピールしていると、世界全体での軍事力提供バランスを欠くことになる懸念が米車や国防省内にあるため

それにしても、「手のひら返し」が過ぎるような気がします・・・-何の理屈もない浪花節的な「ベタ」な説明ぶりにも驚くばかりです。

中国の台湾侵略を2026-27年と想定していた頃
「CSISのWargame結果」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/
「2025年に中国と戦う」→https://holylandtokyo.com/2023/01/31/4241/
「グアムMD態勢は2026年までに」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/
「6年以内に中国は台湾を併合」→https://holylandtokyo.com/2021/03/19/165/

台湾の前総統は正直に
「中国は台湾侵攻を考える状態にない」→https://holylandtokyo.com/2023/12/08/5330/

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PAC-3迎撃ミサイルが360度センサーとの試験成功 [Joint・統合参謀本部]

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3台で360度カバーのセンサーLTAMDSを利用し
コスト削減ミサイル(CRI)での迎撃も成功
陸軍の統合戦闘指揮システム(IBCS)を中核として

LTAMDS PAC-3.jpg11月7日付Defense-Newsは、米陸軍が9月から12月にかけ実施している大規模な防御兵器試験の一環として、従来120度範囲だったレーダー捜索範囲を360度にまで拡大する等の能力強化を図った新型防空センサーLTAMDS(Lower-Tier Air and Missile Defense Sensor)と、パトリオットPAC-3 MSEを連接統合した形態で、戦術弾道ミサイル(TBM target)迎撃試験に成功し、PAC-3 MSEと併せてコスト削減ミサイル(CRI:Cost Reduction Interceptor)試験も行ったと報じました

これらシステム開発を担うロッキード社は、以前から実施してきた、360度センサーLTAMDSやPAC-3等を、戦場のあらゆるセンサーをあらゆる射撃装置とリンクする統合戦闘指揮システムIBCS(Northrop Grumman社製:Integrated Battle Command Systems)を利用して運用する試験成果を基礎に今回の試験を実施したとコメントしており、IBCSを中核とする防御態勢整備が成熟してきたことを示唆しています

LTAMDS PAC-33.jpgこの成功を受けRandy George米陸軍参謀総長も、更なる実戦的評価と試験のため、新型レーダーLTAMDSを早期に運用部隊に配備することを検討していると記事は併せて報じており、今年夏に3回の試験に成功して部隊配備を開始するドローン、巡航ミサイル、ロケット、大砲、迫撃砲など、前線部隊の多様な経空脅威を撃退できる間接射撃防御システム(IFPC:Indirect Fire Protection Capability)と併せ、本格的紛争に対する能力強化を進めています

更に陸軍は、来年新しいSentinel radar (Version 4)を導入し、その翌年にも新たな能力強化要素の追加を計画しており、上記で紹介したIBCSを中心としたLTAMDSレーダー、PAC-3、CRI、IFPSを含めた全てを、国防省が最優先課題の一つで早期運用開始を目指しているグアム島のミサイル防衛能力強化に投入する予定だと、米陸軍担当のFrank Lozano少将が説明しています
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LTAMDS PAC-35.jpgこの分野は様々なセンサーや迎撃兵器や指揮統制システムの略号が飛び交い、実務に関与していないまんぐーすにとっては「睡魔を誘う」分野なのですが、重要な分野ですので略号やシステム全体への理解を助けるため、記事を取り上げました

以下の関連過去記事と併せてご覧いただき、全体像に迫っていただきたいと思います

グアムのミサイル防衛関連
「初期能力試験を今年後半に」→https://holylandtokyo.com/2024/09/11/6260/
「陸軍LTAMDSで海軍SM-6を」→https://holylandtokyo.com/2024/08/08/6151/
「グアムMDを再び語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/
「整備の状況と困難」→https://holylandtokyo.com/2022/04/05/3082/

その他の関連記事
「パトリオット復活と継続生産」→https://holylandtokyo.com/2024/05/01/5796/
「分散&機動展開可能型へ」→https://holylandtokyo.com/2021/08/23/2146/
「本格試験を2024年開始」→https://holylandtokyo.com/2023/08/22/4937/
「陸軍と空軍で無人機対処」→https://holylandtokyo.com/2021/06/02/1708/

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空軍長官が空軍基地防衛を陸から空軍へ移せと要望 [Joint・統合参謀本部]

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対中国の空軍基地防衛に消極的な米陸軍に苛立ち
「国防省は人と資源を空軍に与えるべき」「空軍は喜んで」と
空軍長官と参謀総長がキャンペーン開始か

air base defense2.jpg11月1日、Kendall空軍長官が講演し、中国が太平洋地域の米空軍基地攻撃用に大量の長距離精密誘導ミサイルを蓄える中、我々は空軍基地防衛を今すぐ強化する必要があり、この任務は1948年の協定(Key West agreements)で陸軍が主担当になっているが、(陸軍の動きが鈍いため、)国防省は空軍に同防衛任務遂行可能な人や資源を提供すべきだし、空軍は同任務を引き受けることに躊躇はないと述べました

具体的にKendall長官は、「迅速に取り組まねばならない課題が一つある。敵の脅威が急増している基地攻撃への対処が急務で、陸軍の仲間と取り組んできたが、空軍はこれを加速させたい」、「率直に述べるなら、必要な人的資源や資金等が利用可能になれば、空軍が空軍基地防衛任務を喜んで引き受ける(be comfortable with)」と表現しています

air base defense.jpg米空軍は敵攻撃能力の増強に対応するため、部隊を小規模単位に分割し、施設等が不十分であって小規模戦力を機敏に移動させ中国が攻撃すべき目標数を増やして混乱させ、米空軍戦力が決定的な打撃を受ける可能性を減らす運用構想(ACE構想)に全軍で取り組んでいますが、

米陸軍はこれに答えるような基地防衛力強化努力が不十分で、パトリオットPAC-3やTHAAD部隊の増強に消極的な一方で、逆に効果が限定的と空軍が指摘する極超音速兵器開発に陸軍が重点投資し、空軍が担ってきた長距離攻撃分野に「侵入」する動きを見せて空軍をいら立たせてきたところです。

air base defense4.jpgもちろん、基地防衛のためのレーザー兵器や指向性エネルギー兵器(directed energy weapons)の実験を、それなりに連携しつつ陸空軍を含め米国防省全体で取り組んではいるものの、米空軍は米空軍独自に予算等を獲得して前進したいとのアピールを開始した模様で、

上記のKendall長官講演の前日には、Allvin空軍参謀総長も有力シンクタンクAEIで講演し、「中国のミサイル同時攻撃を受けた際に、装備や人員を守って生き残りつつ、状況把握を絶やさず、指揮統制用の接続性を失わないためには、強化シェルターやカモフラージュ、隠蔽、欺瞞対策のほか、強靭な情報&指揮統制システムや、何よりも強固な防御兵器が不可欠だ」と訴えています
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air base defense3.jpg統合での作戦運用が常態となり、統合ポストでの勤務経験が各軍種での立身出世に不可欠なピースとして確立された米軍にあっても、各軍種の生き残りをかけた人と組織と予算を巡る「せめぎあい」は、何ら変わりなく脈々と受け継がれているようです。

中国経済の崩壊が、中国共産党体制の崩壊へと繋がりそうな時勢ではありますが、世界の軍の先頭を行く米軍には、中国の脅威を生かして「一皮むけて」いただきたいと思います

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「海兵隊はStand-Inか」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「米陸軍は遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦兵器を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06

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不足するミサイル推進装置を3Dプリント大量生産へ [Joint・統合参謀本部]

参入企業が60年変化ない固体ロケットモーター製造の革新へ
3Dプリント技術で新規投資極限し大量&迅速かつ安価に
パーツ自社生産でSupplyチェーン問題も回避へ

Ursa Major.jpg11月1日付 DefenseOne 記事が、ウクライナや中東紛争で需要が急増して製造が追いつかない各種ミサイルやロケットの推進装置・固体ロケットモーター製造に、3Dプリント技術を導入して新規設備投資を局限しつつ、大量迅速かつ安価な製造に挑戦するコロラド州の企業「Ursa Major社」を、同社製造責任者へのインタビューを交え紹介しています

Ursa Major社 は僅か18ヵ月前にこのプロジェクトを着想し、段階的に製造技術を確立しつつある企業ですが、既に今年試作したロケットモーター300基以上を試験燃焼させ、製造技術の確立と品質の安定に自信を深めていると、同社の製造責任者であるBill Murray氏は取材にアピールしています

Ursa Major6.jpgMurray 氏は、実質上この市場を独占してきた2社 Aerojet Rocketdyne と Northrop Grumman では、柔軟性に欠けたロケットモーター生産方法が60年以上変わっておらず、長い納期の工具に依存し、部品不足に陥りやすい高価な生産ラインを使用していると現状の問題点を厳しく評価し、

例えば米海軍は、敵ミサイル迎撃に使用しているSM-3ミサイルの在庫を、過去1年間の中東方面での戦闘で使い果たしており、既に「持続不可能」な状態にあるが、世界的紛争により既存の生産ラインが圧迫されているため、国防総省が新たな生産ラインの育成に迫られていると状況を語っています

Ursa Major3.jpgそこで Ursa Major社は、民間投資家の資金を活用して技術開発を促進する米国防省創設の枠組みから約 18億円の資金援助を受け、3Dプリント技術で高価な再設備投資を必要とせず、多様多種なロケットモーター製造を可能にする「Lynx」と呼ぶ新しい製造プロセス構築に取り組んで今に至っています。

また Murray氏は、既に大量の受注を抱えて余力のない関連サプライチェーンへの依存度を下げるため、多くの部品をコロラド州とオハイオ州で拡張中の自社工場で来年から 2026年かけ 段階的に「Lynx」方式で製造開始し、Stinger, Javelin, GMLRS や迎撃ミサイル用など、直径 2~22インチの多様なロケットモーターを大規模に製造開始する予定で準備を進めているとアピールしています

一方で同氏は、ロケットモーター需要は拡大を続けており、近未来で需要を満たせる見込みがない現状から、Ursa Major 社だけでなく、X-Bow や Anduril 等の新興企業も固体ロケット分野への参入を試みており、他にも多くの企業に参入余地がある激しい競争環境が続くとも予想し、油断はできないと語っています
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Ursa Major5.jpg需要の高まりを受け、お金の匂いに誘われ競争が激化し、技術革新が起こって良質なものが安価に提供されるようになれば最高ですが、上で紹介した記事は「良い側面だけを切り取った営業トーク」のような感じもするので、今後は別の側面から本件を取り上げられるように考えます

とりあえず、「Ursa Major社」「Lynx」「3Dプリント」との言葉を Take Note しておきましょう。X-Bow や Anduri との企業名と共に・

弾薬の圧倒的不足間題
「英国は挽回に10年必要」→https://holylandtokyo.com/2023/03/23/4395/
「空軍は弾業調達の効率性優先を変更」→https://holylandtokyo.com/2023/02/24/4304/
「CSIS レポート」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/4212/
「弾薬が最大教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/02/10/4288/
「弾菜ロードマップ検討」→https://holylandtokyo.com/2023/02/09/4208/
「もっと予算を」→https://holylandtokyo.com/2022/12/02/3990/
「産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
「ウに学ぶ台湾への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/

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F-35B 操縦者が脱出後 11分飛行して100km先に墜落 [Joint・統合参謀本部]

海兵隊精鋭テスト飛行部隊の大佐指揮官が操縦
部隊調査後に任務復帰で指揮官就任も海兵隊司令官が更迭指示
「緊急脱出判断」の基準があいまいと調査報告指摘

F-35B Col. Pizzo.jpeg10月31日付 Defense-News が、2023年9月に発生した着陸時の機体異常で操縦者がF-35B 機から射出座席で緊急脱出し、機体が11分間無人飛行の後に約 110km離れた林に墜落し、けが人や地上に損害は発生しなかっものの F-35B が全損した事故と操縦者に対する措置について報じ、

2024年1月の事故調査報告書は、操縦者は職務怠慢ではなく操作手順書に基づいて緊急脱出したが、機体の予備系統は機能しており継続飛行は可能であったとして、脱出の判断は誤りだったと結論付けたものの、事故後、操縦者は調査委員会の勧告に従って対応し、2024年6月に操縦資格を回復して6月21日から名門の海兵隊試験評価飛行隊(VMX-1)の司令官に就任していたが、

F-35B Col. Pizzo2.jpg指揮官就任から 3か月以上経過した10月2日に、海兵隊司令官が事故報告書を確認した結果として、当該操縦者は「指揮責任を遂行する能力に対する信頼を失った」として、VMX-1指揮官職を解任され、後継司令官が指名されたと取り上げています

解任された Charles Del Pizzo 大佐 49歳は、1997年に土官任官後、1999年から海兵隊パイロットとしてAV-8B ハリアーを中心に中東派道6回で飛行時間2800時間の円熟パイロットで、F-35B、MV-22オスプレイ、CH-53Eを有する試験評価部隊 VMX-1で海兵隊航空部隊の戦術や手順の開発改良を担う部隊指揮官の重責を担っていたパイロットでした

F-35B Col. Pizzo3.jpg事故はVMX-1指揮官就任の前の部隊での訓練飛行後、雨で「極めて困難な認知および飛行条件下」で着陸態勢に入った後、F-35B が故障し主要な機内表示装置と通信が機能不全となったため、高度約 600mで緊急脱出して民家の裏庭にパラシュートで着地したというものです。(幸い大したけがはなく、翌日退院)

問題はパイロットを失った機体で、バックアップ機能が生きており、Pizzo 大佐が最後まで操縦を試みてインプットされた操作に基づき自動操縦で高度を一時は 3000mにまで回復し、11分間以上も飛行して車で2時間ほどの森林の中に墜落したのですが、約 11分間の飛行中は大半がレーダーに映らない低空飛行だったこともあり、墜落現場が見つかったのは翌日の夕方になったとのことです

F-35B Col. Pizzo4.jpegメディアやSNS上では、「ステルス機がパイロットを失って行方不明」との情報が飛び交い、米海兵隊には当然厳しい声が各方面から届いたようです

10月2日に更迭されたPizzo 大佐は、海兵隊を通さずに「VMX-1の海兵隊員や文民職員を率いる機会を得られたことは、この上ない栄誉だった」、「この予期せぬ任務変更に適応するにあたり、友人や家族のサポートに深く感謝している」との声明を発表したとのことです

F-35B Col. Pizzo5.jpegなお、F-35B の飛行手順書には、パイロット操作に適切に反応しない航空機は制御不能とみなされ、高度 6,000 フィート以下の航空機ではパイロットは脱出しなければならないと記載されており、

事故調査報告書は Pizzo 大佐が、「高度6,000フィート以下で航空機の制御が失われたと認識し、適切な緊急手順を適用した」と指摘し、「飛行手順書の制御不能飛行時の定義がぼんやりと広範すぎることが今回の事故の一因となった」とも指摘しているようです
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記事原文には、もっと詳細に事故時の機体の状況や Pizzo 大佐の操作や判断を公開された事故報告書から紹介していますので、ご興味のある方は記事原文や海兵隊の公開情報ライブラリー (https://www.hamc.marines.miAgencies/USMC-FOIAVFRRI)で報告書をご確認ください

F-35B Col. Pizzo6.jpeg焦点の絞れていない概要のみのご紹介となりましたが、読者のご関心の視点により、パイロットの厳しさ(F-35B操縦時間30数時間)、ハイテク戦闘機F-35B の設計、海兵隊の事案への対処要領等々、様々な方面から考えさせられる事案だと思います。

Pizzo 大佐は現在、「今後の任務について選択肢を提示されており、現在、彼と家族は次のステップを検討している」とのこと、新たな道でのご活躍を祈らずにはおれません

航空機事故関連の記事
「やっと操縦者の飛行中身体データ測定装置」→https://holylandtokyo.com/2024/05/10/5827/
「空自訓練生の米国での墜落事故から2年」→https://holylandtokyo.com/2023/04/19/4533/
「当該事故調査報告」→https://holylandtokyo.com/2021/10/12/2328/

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米陸軍が太陽光無人機をアジア太平洋に投入 [Joint・統合参謀本部]

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70時間以上太陽光のみで連続飛行可能
走行する車両の屋根から離陸し胴体着陸式
搭載量不明もISR、通信中継、電子戦等に
比でBalikatan演習や指揮統制実戦演習にも

K1000 Kraus.jpg10月30日付Defense-Newsは、米陸軍のアジア太平洋部隊である1st Multi-Domain Task Forceに、70時間以上の連続飛行が可能な長期在空型太陽光無人機K1000(Kraus Hamdani Aerospace製)が既に導入され、過去数年間にわたりフィリピンで実施されたBalikatan演習やProject Convergence指揮統制演習など各種実験演習等で目撃されていると紹介し、米海軍も導入している模様の同無人機を紹介しています

なお同無人機は、米国防省が2022年に創設した革新的技術の調達および配備の促進プログラム(APFIT:Accelerate the Procurement and Fielding of Innovative Technologies)の基金から、これまでで最高額となる約30億円の拠出を受け、同Task Forceと特殊作戦部隊用に追加発注されているとのことです

同記事からK1000無人機の特徴等をPick-Up
K1000 Kraus5.jpg●同機は無人機カテゴリー2(重量約9~25kgクラス)の連続在空記録76時間を更新
●離陸は走行する車両の屋根から。着陸装置がなく、胴体着陸で機体底部が摩耗した場合は、3Dプリントの機体部品を交換

●搭載人工知能を利用し、自然界の鳥の動きを模倣して静かに空を滑空するため、K1000は大半のセンサーやレーダーが鳥と誤認し探知が困難
●機体は準備された運搬用のケースに収まり、荷降ろし、組み立て、離陸までの時間は約10分

K1000 Kraus6.jpegなお米陸軍はShadow無人機を既に廃止しており、Kraus社製のK1000が後継機の有力候補であるとコメントしているようです。

Kraus Hamdani Aerospace社の女性CEOであるFatema Hamdani氏は、「当社は米軍の要求に合わせて技術を成熟させ、時間をかけ、動的に変化する環境での戦闘員ニーズを満たすためにK1000を調整し続けています」とコメントしています
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Kraus Hamdani Aerospace K1000の紹介映像(3分)


「過去数年間にわたり演習等で使用されてきた」にも関わらず、これまでご紹介できず申し訳ありませんでした。

上に掲載したプロモーション映像は、K1000の民生分野での活用を意識した構成となっており、様々な新興企業がこの分野に挑戦していることが伺えます。無人機の分野は正に「日進月歩」で目が離せません。

太陽光利用に関する記事
「大型無人機64日間連続飛行」→https://holylandtokyo.com/2022/08/30/3585/
「世界記録更新し飛行中」→https://holylandtokyo.com/2022/08/02/3503/
「宇宙太陽光発電エネルギーの電磁波伝送」→https://holylandtokyo.com/2021/12/27/2567/

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謎の実験宇宙船X-37Bの本格試験に初言及 [Joint・統合参謀本部]

7回目の飛行で初めて具体的任務に言及

X-37B 908 3.jpg10月10日、米宇宙軍トップの Chance Saltzman 大将(Chief of Space Operations)が、2023年 12月に打ち上げられた「謎の実験宇宙船X-37B」の7回目の飛行で以下の試験を行うと突然発表し、「謎」だった✕-37Bの具体的任務への初言及に界隈へさざ波が広がっています

第7回目となる今回の特徴は、出力が巨大な「Falcon Heavyロケット」で打ち上げられたことです。6回目までの打ち上げは低高度軌道(高度 110-150マイル)でしたが、計算上は高度22000マイルの静止軌道にも投入可能な能力を持つロケットで、可能ペイロードも格段に増えており、試験内容の拡大が予期されていたところでした

その試験とは・・
Saltzman7.jpg●「燃料を節約しながら機動性を高めるという宇宙軍の取り組みの一環として、軌道を急速に変更する新しい方法をテストする。地球の大気を利用して減速し、軌道を切り替えるエアロブレーキングの実験を行う予定だ」
●「NASAはこの操作を実施したことがあるが、X-37Bにとっては新たな挑戦である」

●「エアロブレーキ操作試験が完了すると、X-37Bは他のテストと実験を再開し、目的が達成された時点で機体は軌道から外れ、これまでの6回のミッションと同様に安全に帰還する」
●「X-37B によるこの種の初挑戦は、困難な領域で能力拡大を追求している米軍にとって、非常に重要な節目だ。この成功はチームの献身と忍耐の証となる」

あらためてX-37Bとは・・・
X-37B4.jpgX-37Bは「9m x 4.5m x 3m」とマイクロバス弱程度の大きさで、ロケットの先端に取り付けて打ち上げられ、帰還時は滑走路に着陸する無人宇宙船です。OTV(Orbital Test Vehicle)が正式名称の実験船ですが、宇宙でどんな実験を行っているのか非公開部分が多く「謎の宇宙船」とも言われ、追跡マニアが「中露の衛星を追跡している」等々の「噂」や「推測」を流して時に話題になったりしています

それでも時代の流れでしょうか、第6回目からは「差しさわりのない」実験の一部(空軍士官学校学生提案の装置試験など)が公開され始め、今回7回目でも以下の実験が任務の一部だと公開されています(細部は過去記事参照)
●前回に引き続き NASAによる植物の種子実験「Seeds-2」
●細部は不明ながら「future space domain awareness technologies」の実験

X-37B.jpg今回7回目の飛行も宇宙空間滞在期間は非公開ですが、2010年4月打ち上げの1回目の宇宙滞在が224日間、2回目が468日間、3回目が675日、2017年5月に帰還の4回目は718日間、2019年10月帰還の5回目は780日と任務の度に滞在日数を更新しており、最長記録は 6回目の908日間となっています

X-37B 関連の記事
「7回目の任務開始」→https://holylandtokyo.com/2024/01/12/5407/
「6回目=記録更新の908日滞在」→https://holylandtokyo.com/2022/11/24/3952
「宇宙滞在記録を更新中」→https://holylandtokyo.com/2022/07/29/3458/
「6回目打上:少しソフトに?」→https://holylandtokyo.com/2020/05/15/672/
「ちょっと明らかに?」→https://holyland.blog.ss-blogjp/2017-05-11
「中国版X-37B?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-15
「中国衛星を追跡?」→http://holyland blog.so-net.ne.jp/2012-01-07
「Sシャトルの代替?」→http://halyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
「米が宇宙アセット防護計画」→http://nolyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-16
「関連小ネタ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-04
「X-37Bをご存じですか」→http://halyland blog.so-net.ne.jp/2010-04-20

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米陸軍長官:軍人の頻繁な転勤を再考すべき [Joint・統合参謀本部]

将来募集困難が深刻化、定着率低下、志願制維持困難

army move.jpg10月17日付 Defense-News は、10月中旬の米陸軍協会総会でChristine Wormuth陸軍長官が、陸軍土官とその家族を犠牲にした現在の「数年に一度の転勤」は、陸軍と各兵士のために本当に必要なのか?新兵募集が困難になり、兵士の定着率が低下する中で続けることが可能なのか?志願制の維持が可能なのか?・・・について真剣に考えるべきだと高級幹部に訴えたと報じています

同長官は、「今、軍を去る土官の大半が、より安定し、予測可能で、より良い家庭生活を求めている」、「配偶者を無給の陸軍労働力として扱い、そのキャリア形成の犠牲の上に成り立っている。子息に降りかかる教育の機会喪失等の犠牲も見過ごせない」等と現状の問題点に触れ、

Wormuth6.jpg「米陸軍は、兵士とその家族のキャリアの柔軟性、安定性、予測可能性を高めるアイデアを真剣に検討する必要があり、それには異動の頻度を減らすことも含まれる可能性がある」と語っています

更に同長官は、「テレワークで戦争せよと言っているのではない」、「軍生活すべてを一か所で過ごすモデルを考えよと言っているのではない」と前置きしつつ・・・この問題を過去数年間かけ調査し、議論してきた中で出た様々な対策オプション例を挙げ、陸軍全体で考えるべきだと訴えました

●移動を3年毎ではなく5年毎に減らす
●適切な将校を選抜し続けながら、任務を広げる柔軟性を持たせるために、将校のキャリア基準と昇進基準を修正

●職種変更の選択肢を増やし、軍を離れずに新しいキャリアパスを追求しやすくする
●階級在籍期間に厳密に基づくのではなく、責任、資格、仕事の成果と金銭的報酬をよりよく一致させる方法追及

Wormuth7.jpg軍側は「作戦上のニーズを満たし、空きポスト埋めるため現在の転勤制度が必要」との主張を過去から展開しているようですが、米国防省と軍人家族の両方にコストを課す「頻繁な移動」が本当に必要かは長年疑問視され、最近ではメンタルヘルス面を含む健康面から、軍医療関係者からも疑問の声が上がっているようです

もちろん同長官も「改革の多くは複雑で、追加的な資金と議会の協力も必要になる」と認めていますが、「陸軍が直ちに検討しなければ、10~15年後には募集課題が深刻化し、定着率が低下し、志願兵制の存続が脅かされることになる」と強い懸念を訴えています
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army move2.jpg軍人、特に指揮官たる土官の育成は、様々なポストを経験させることが柱となっており、地理的に分散して配置することが求められる軍部隊の特性もあり、「転勤」は避けがたいと考えられています。

これは世界の軍隊共通の認識だと思います。 同長官は「陸軍が提供するライフスタイルは、インターネットが発明される前からあまり変わっていない」とも表現し、意識改革を軍人指導層に求めたようですが、認識を変えるには時間がかかりそうです。しかし、志願者が減り、定着率の低下も待ったなしとなれば・・・。全世界の軍の課題です

最近の募集難対策あれこれ
「新兵基礎訓練間のスマホ許可へ」→https://holylandtokyo.com/2024/04/22/5766/
「米海軍が採用の高卒条件撤廃」→https://holylandtokyo.com/2024/02/0715522/
「慰留に職種変更容易化へ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/12/4608/
「空軍が募集年齢上限を42歳に」→https://holylandtokyo.com/2023/10/31/5184/
「合法移民へ猛烈アプローチ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/16/4743/

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米海兵隊がエアバス社と無人自律貨物ヘリ開発デモ [Joint・統合参謀本部]

Aerial Logistics Connector:分散先への輸送目指す
操縦席なくし、前方からフォークリフトで搭載可
25年までデモ飛行、29年末までに製造型決定へ

Aerial Logi Connect.jpg10月16日付Defense-Newsが、米陸軍協会総会でエアバス社(Airbus U.S. Space and Defense)が公表した、米海兵隊との契約に基づき進めるUH-72 Lakotaヘリの自律型無人バージョン開発について取り上げ、時期非公開ながら既にデモ初飛行を終え、今後海兵隊の運用ニーズへの適合具合や要改善点確認のため2025年までデモ飛行を実施し、その後海兵隊は本計画を誰とどのように進めるか決定するとの同社説明を紹介しています

「Aerial Logistics Connector」と呼ばれる本計画は、本格紛争における分散展開拠点への物流支援能力向上を目指す米国防省計画の一つで、海兵隊はデモ飛行を通じて得た要改善点や必要な要求性能レベルを反映し、2028年か29年に「Aerial Logistics Connector」プログラムの飛行プロトタイプを手に入れ、2029年末までに生産を決定することを目指しているとのことです

Aerial Logi Connect2.jpg初飛行を終えた現時点でのUH-72 Lakota自律型無人バージョンは、操縦席を無くしたスペースも貨物搭載用として活用する設計となっており、機体前方部を開閉し、側面ドアからでは積載困難な標準的な海兵隊貨物大型コンテナや機器をフォークリフト使用で前方から積み下ろしが可能なことを既に確認済みで、更にデモを通じて現場海兵隊兵士の意見も早い段階で聴取開始して現場ニーズに答える体制で臨んでいると同社幹部は説明しています

また同社は、本プログラムがまだまだ設計段階にあり、へりとしてのリスク低減作業段階にあり、自律飛行機能の基礎確立段階にあると表現しつつ、米海兵隊が要求していない有人型や兵器発射能力を求める他の顧客が現れた場合も念頭に、オープンシステムアーキテクチャ方式を基礎としてヘリコプターを改造する可能性にも備えていると説明したようです

Aerial Logi Connect3.jpg更に同社は、無人自律型UH-72ヘリの完成価格や、標準的な有人Lakotaとの推定価格比較を議論するのは時期尚早だと述べ、同社がこの自律無人型について他軍腫や諸外国と協議したかどうかについてもコメントを控えたようですが、他軍腫や同盟国にも展開可能だと語っています
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Aerial Logi Connect4.jpg当然といえば当然の流れですが、変化への対応に、部隊装備体系の改革に積極的な米海兵隊が先頭に立って取り組んでいる点をご紹介したく取り上げました。

もちろん米陸軍や米空軍でも検討や構想はあるのでしょうが、既存の有人ヘリ部隊への配慮等々もあり、目立った動きがないような気がします。(米海軍は艦艇への端末物資空輸に無人ヘリを導入開始済ですが・・・)

ヘリの将来を考える記事
「ドローンで攻撃へリ撃墜の衝撃」→https://holylandtokyo.com/2024/08/29/6213/
「米空軍の対中国救難検討は引き続き迷走」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/

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ドローンへの自律AI搭載の限界を探る [Joint・統合参謀本部]

米国防省のAI兵器倫理規定の変化を想定し
米軍ニーズの変化を予期し
操作員の負担軽減や妨害電波下での自律性どこまで

Bolt-M Anduril.jpg10月10日付DefenseOneが、同日Anduril社が発表した高い自律性を追求した人工知能AI搭載クワッドドローン「Bolt-M」と、これまた同社が開発している「Lattice」との多様なセンサーやソースの目標情報等データを統合できるプラットフォーム(他社製ドローンも活用可能な方向を追求中)と組み合わせ、ドローン操作員の負担や事前訓練負担を軽減しつつ、更に敵の誘導電波妨害時にも自律的に目標攻撃が可能なシステム開発を取り上げ、

Bolt-M Anduril5.jpgウクライナ戦などで日進月歩のドローン技術とドローン対処技術の進歩の中で、また戦場状況が急速な変化や、国ごとに異なる自律性AI殺傷兵器使用指針の世界的変化に伴い、AIの兵器活用を制限している米国防省の倫理規定「AI ethical principles」(人間は適切なレベルの判断を下し、AI搭載兵器の開発、配備、使用に責任を持ち続けなければならないと規定)も、変化せざるを得ない可能性が高いとの前提のもと、ユーザーニーズの変化に備えた同社の取り組みとして紹介しています。

なお「Bolt-M」開発を、OPF-L計画(Organic Precision Fires – Light)の一環として進めている米海兵隊は、今後約6か月間、「Bolt-M」の派生型を厳しい環境下で試験して評価する予定だということです。ちなみに「Bolt-M」は、重量2.4kgでバックパックに収まるサイズで、5分以内で展開可能ながら、飛行時間は45分もあり約20km飛行可能とのことです

ドローン「Bolt-M」を「Lattice」使用の作戦イメージ
●ドローン「Bolt-M」はカメラを搭載した「first-person-view strike drones」で、専門の操縦者を必要とせず操縦者の負担が少なく機能する。「Bolt-M」操作員は、表示ディスプレイ上で飛行可能領域やいくつかの飛行諸元を指定するだけで同ドローンを使用可能で、かつより多くの情報を提供できる
Bolt-M Anduril2.jpg●目標情報等融合プラットフォーム「Lattice」で攻撃目標を特定すると、操作員は敵攻撃から視覚や音響探知範囲外のスタンドオフ待機位置を「Bolt-M」に指定し、攻撃のタイミングを待つ。

●目標が移動したり隠されたりしても、「Lattice」により目標追尾は継続されており、総合的見地から判断された攻撃実施命令を受けたのち、操作員は「Bolt-M」の目標への最終突入ルートや角度等を指示し、攻撃に移る
●敵からの誘導電波やリンク妨害により操作員との接続が失われても、またGPS妨害を受けても、「Bolt-M」はアルゴリズムに従い自律的に目標への最終突入を継続する

同社開発責任者の説明
Bolt-M Anduril3.jpg●「Bolt-M」は「Lattice」との自律的なやり取りを通じ、戦場の状況、「Lattice」把握目標、自身の搭載センサー捕捉の目標を把握し、操作員が「Lattice」融合情報を基礎に判断した目標に向かい、実際に自信が捕捉した目標と照合しつつ交戦する
●我々が「Lattice」をベースに行っているのは、人間をオンザループに置きつつ、キルチェーン全体に最大の自律性を提供し、より迅速により適切な決定を下せるようにすること

●我社は米国AI兵器倫理規定の変化を予期しており、その場合に備えニーズに対応可能な準備を整えておきたい。システムを可能な限り高性能にすることを重点に置き、政策や規定の変化があった場合に、ユーザーニーズにこたえられるオプションを準備し、選択権をユーザーに提供したい
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Anduril作成のBolt-M紹介映像(2分13秒)


米国が致死的兵器へのAI使用に厳格な規定を設定して順守していても、そんな倫理など「くそくらえ」と考えそうな国が世界にはごろごろ転がっています。

われわれ日本人は、ドローン攻撃の恐ろしさや、AI搭載自律型兵器の脅威を体感していませんが、既にウクライナやイスラエルはその脅威下で日常を過ごす状態となっています。頭が追いつきませんが、これが現実です

ドローン関連の記事あれこれ
「ドローンで攻撃へリ撃墜の衝撃」→https://holylandtokyo.com/2024/08/29/6213/
「寒冷地でのニーズ高まり」→https://holylandtokyo.com/2023/09/05/4956/
「台湾製ドローンレーダー人気」→https://holylandtokyo.com/2023/03/13/4335/
「対処用のエネルギー兵器動向」→https://holylandtokyo.com/2022/07/14/3432/

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JASSM-ERの2倍の射程JASSM-XRを開発中 [Joint・統合参謀本部]

JASSM-ERは500nmも、JASSM-XRは推測1000mm射程
ロッキードが独自開発中で2026年に試験飛行か
背景には米空軍の「大幅射程延伸」要望が・・・

JASSM-XR5.jpg9月30日付米空軍協会 web 記事が、9月27日に米国防省が発表した長射程空対地ミサイル JASSM (空対艦LRASMも若干含む)購入の約5300億円大型契約を紹介するとともに、9月 16日の空軍協会「Air, Space & Cyber Conference」でロッキード社が独自開発を発表した、JASSM-ER (Extended Range)の射程を大幅アップする「JASSM-XR(Extreme Range)」を紹介していますので取り上げます

JASSM-XR4.jpg長射程空対地ミサイル JASSM や空対艦ミサイルLRASM は、兄弟関係にあるステルス形状の兄弟巡航ミサイルで、1000ポンドの弾頭を搭載して射程延長ER 型で約500mm(約900km)の射程を持つ兵器ですが、強固な防空網を持つ中国との戦いで最も需要が高いと想定されており、例えば現在年間約720発製造のJASSM は、年1,100発まで増産予定だとロッキー ドが明らかにしています

今回発表約5300億円契約の4800億円分はJASSM用で、6割が2032年までに製造する米空軍分、約3割がFMS用で日本、オランダ、フィンランド、ポーランド向けのJASSMだと公表されており、約540億円がLRASM用とのことですが、具体的なミサイル数と配分先(軍種や国)までは公表されていないようです。以上がJASSMとLRASM 大型契約についてです

JASSM-XR (Extreme Range)の独自開発発表について
JASSM-XR.jpg●9月16日にロッキード社のMichael Rothstein 副社長は、JASSM 本体を数フィート延伸して追加燃料を搭載可能にすることで、従来型より射程距離を大幅にアップ可能な「JASSM-XR」を独自開発中と発表したが、正確なミサイルの大きさや射程距離は語らなかった
●ただ同副社長は、射程はERに比し「大幅に拡大され、その増加は小さなものではない」と付け加えた。なお業界筋は、XRの追加燃料容量から推測してERの2倍の射程約1,000mmになる可能性があると述べている。

JASSM-XR2.jpg●同社広報担当者は、XR はJASSM-ERやLRASMと共通性があり、爆撃機、F-35、F-15、FIA-18に搭載できるが、F-16には搭載できないと説明している。同副社長はこの点に関し、XRは標準的JASSMに比し重量が増すため、戦闘機に搭載すると航空機の航続距離は短くなるが、ミサイル射程延伸で相殺されると説明している。
●また同副社長は、まだ政府の承認も資金提供もないが、米空軍が JASSMとLRASMに何を求めるかを予測し、要請があれば直ちに対応でるよう準備していると語り、別の関係者は、より長い射程距離は「当然の要請」で、空軍は漸進的な改善ではなく「ステップ的な変化」に関心があると述べた

●なおXR 開発状況について同副社長は、2026年に試験飛行が可能だが、量産準備が整うのはまだ「数年先」になると述べた
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JASSM-XR3.jpg射程1000nm(約1800km)とは、第一列島線を構成する沖縄など南西諸島と中国大陸との距離の約2倍を意味します。

遠方からの長距離攻撃は米空軍の任務で、地上部隊や米海軍は他の分野で頑張るべき・・・と空軍はかねてから主張していますが、一方で、それだけ遠方から兵器を発射するような戦いでないと、米軍兵士を派遣できないと、米国防省や米軍は考えているということです。単純に言えば・・・

JASSM 関連の記事
「LRASMとJASSM増産ライン開設」→https://holylandtokyo.com/2023/04/13/4498/

LRASM不足問題の関連
「CSIS が台湾有事War-Games」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/
「CSISも弾業調達問題レポート」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/4212/

米空軍にとって遠方攻撃は「存在意義」です
「米空軍が陸海海兵隊を批判」→https.//holylandtokyo.com/2020/05/25/680/
「誰の任務なのか?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02

遠方攻撃に傾く米軍地上部隊
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「射程 1000kmの砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1

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米輸送軍が「ウ」や「イ」や対フーシ派作戦の教訓語る [Joint・統合参謀本部]

ウクライナとイスラエルとフーチ派関連です
兵站の基礎である輸送任務の様々な事例で
派手な内容ではないが基本を振り返る機会に

Ovost7.jpg9月17日、Jacqueline D. Van Ovost米輸送コマンド司令官が米空軍協会「Air, Space and Cyber Conference」で講演し、昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲攻撃後の対応、フーシ派との戦いでの取り組み、そしてウクライナへの弾薬輸送の教訓等を断片的ながら語っているので取り上げます

Van Ovost大将の話は、派手な作戦事例やヒーローを紹介するような内容ではなく、事前に定めた基本手順が存在しても、有事の現場では様々な事情の影響を受けることを示す事例や、民間輸送企業との連携事例、更に危険物である「弾薬」輸送の難しさに関する事例等で、輸送現場の苦労や汗を感じさせる貴重な中身だと思います

ハマスによるイスラエル奇製直後の対応
C-17 Gaza airdrop2.jpg●奇襲後に米輸送軍は、中東の米軍を守りながら、ガザ地区への支援物資の空中投下作戦を遂行し、並行してイスラエルを妨害するイエメンの反政府組織フーシ派による攻撃から地域の船舶移動を維持するため活動した。このような危機発生時に私が考えるのは3つ。事態に対する自身の立場の確認、事態に対応可能な部隊能力、そして統合指揮官ニーズに応えるための指揮統制の在り方である
●初動の重要任務は PAC-3 防空ミサイル部隊の空輸だったが、行動基準では12機のC-17 輸送機が必要になるが、展開先の状況等を踏まえ最終段階で再評価してみると重要性の高い装備は7機で輸送可能で、発電機等の装備は追送でOKと判明した。輸送要求が錯綜する初動時に、状況に応じた「再評価」を行う重要性を痛感した事例で、空軍全体で取り組む ACE構想 (agile combat employment) での機動展開輸送を考える大きな教訓となった

フーシ派からの攻撃対処で民間輸送業者と連携
houthi rebels7.jfif●現在も続くフーシ派との戦いでは、米軍が輸送を委託している民間船舶の安全確保が急務となった。我々はまず、商業海上輸送企業との定期会合を開始し、戦術顧問団をバーレーンの中東海軍司令部に派遣した。そして海運業者全てに情報提供するための危機管理センターを設置し、スエズ運河経由か喜望峰経由かの助言、ペルシャ湾航行の安全情報提供、そして脅威の種類や特徴等々について情報共有を行った
●その後、商船まとめて船団を編成し、海軍艦艇で護衛する作戦を開始した。また標的になりにくくする防御行動として、商船に海上ジグザグ航行を助言した。これら助言は以前から決められていた行動基準に基づくものだが、これだけ大規模に行うことで貴重な経験となっている。 また商船に海軍の戦術顧問と通信装備を提供し、海軍艦艇との意思疎通を円滑するよう手配している
●今も続くフーシ派との戦いであるが、長期間脅威が持続すれば、物資輸送に多くの資源が必要になることを、我々は身に染みて学んでいるところである

ウクライナへの弾薬輸送
Ukrainian forces2.jpg●ウクライナへの支援物資輸送で最も難しいものは「弾薬輸送」である。これまで約10万発の長距離砲と約25万発の対戦車砲弾、約3.8兆円相当の武器、航空機、戦車等々を輸送したが、誰も危険性から保管したくない危険物を、米本土の倉庫→港→港→列車→道路等の経路で輸送する場合、点と点を結び付ける調整がいかに困難かを、現在も組織全体で痛感し続けている
●弾薬という危険物の爆発事故を避けるため、一度に集積可能な弾薬量は制限され、その基準は通過国によって異なり、列車や船舶の遅れで計画の修正が頻発し、更に軍事的脅威レベルも場所により変化する中での諸調整は、忍耐の限界を試される試練である

●ただ同時に、毎日ロシアから攻撃を受けつつも柔軟に対応し、国内での軍事物資輸送を巧みに粘り強く行っているウクライナの取り組みは、米軍兵士に大きな刺激と教訓を与えてくれている

米輸送コマンド共通の課題
Ukraine Air defense3.jpg●輸送する人員装備の位置や状態、燃料や弾薬の危険度や各種制限に関する情報を、サプライチェーンに沿って指揮官にリアルタイムに提供可能なデータ処理および通信ツールへの投資強化が必要だ。
●我がコマンドは「25 in 25 initiative」構想で、2025年までに輸送部隊の 25%に通信キットを装備することを目標としているが、実現は難しいのが現状だ。しかし極めて重要な投資であり継続して要求していく
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兵站の重要性を考える意重なお話だと思います。どれも戦史の教訓として学んだことがある軍事輸送のポイントかもしれませんが、最新の実例を通じ学ぶことで、頭に刻むチャンスとなれば幸いです。

輸送コマンド関連の記事
「Van Ovost 女性司令官が語る」→https://holylandtokyo.com/2023/06/15/4727/
「輸送機による燃料輸送にも取り組むが」→https://holylandtokyo.com/2023/04/11/4490/
「米空軍若手が ACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/

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米海軍トップ:次期艦載戦闘機FA-XX計画に変更なし [Joint・統合参謀本部]

米海軍初の女性トップLisa Franchetti大将が語る
淡々と「3社からの提案を評価中」と・・・
米議会が関連予算を削減し、専門家の目も厳しい中

FA-XX3.jpg10月2日、2023年夏から米海軍トップ(Chief of Naval Operations)に女性として初めて就いているLisa Franchetti大将が次期艦載戦闘機FA-XX計画について軍事記者団に、米空軍が見積価格の「バカ高さ」等から次期制空機NGAD計画ダウングレード見直しを迫られる中でも、またFA-XXに対し議会やOBから批判がある中でも、「空軍の取り組みからその必要性を学んだ」「3社の提案から調達先を選定している」と淡々と語っています

米海軍のF/A-XX は、F/A-18多用途戦闘機と E/A-18電子戦攻撃機の後継機となる予定で、米海軍が導入途中の第5世代戦闘機 F-35Cでは最新の脅威に対し能力不足と想定されている、「航続距離」「センサー能力」「電子戦機能」面等々で能力向上を狙っている機体で、3社(Boeing, Lockheed Martin, Northrop Grumman)の提案から2025年には1つに絞り込む予定とされています

会見でFranchetti大将は・・・
Franchetti5.jpg●第6世代の機体は、高度なセンサーと殺傷力、より優れた航続距離を持ち、有人アセットとして無人アセットを巧みに融合して戦力化できるものと期待している。米空軍の次世代制空機NGAD計画から学んだことの一つは、我々が将来必要とする能力獲得のために、計画を実行する必要があるということだ
●米海軍の航空アセットは、潜水艦戦力と並んで、我が海軍が保有する戦略的優位性の1つである。(FA-XXに関しては、)3社から提案があり、現在調達先を選定しているところだ

●(米空軍のNGAD計画一時停止&再検討は懸念材料か、との質問に対し、)各軍種の将来航空機計画を何らかの形で一致させることは理にかなっているが、空軍の決定がどうなれ、F/A-XXを妨げるほどではない。
FA-XX2.jpg●一般的な視点で述べると、各軍種が相互に学んで相互に補完する関係にあることが大切で、「互いに何を学べるか?」「各軍種が共通性を持つことで、どの分野で互いの能力を固めることが出来るか」を考えることは常に大切

本会見を紹介する2日付米空軍協会web記事は、2024年初め、米海軍は目の前の海軍全体の即応性維持に重点を置くため、F/A-XX への投資約1500億円延期を決定したが、米議会は F/A-XX予算の更なる削減を追求していると紹介しています。そしてその背景には、以下に紹介する専門家や海軍OBが指摘する問題があります(2020年6月30日の記事より)

専門家や海軍OBのFA-XXへの辛らつ批判
Clark.jpg●ハドソン研究所Bryan Clark研究員(海軍OB)の米下院で証言 → 米海軍の財政上の厳しい現実からすれば、新しい機体を開発導入することは事実上難しく、現有航空機の派生形にならざるを得ない。従って、生産ラインを維持するためにも、FA-18調達をゼロにする米海軍案は不適切で、F/A-XXオプションを残す意味でもFA-18製造ラインを維持すべき

Work-Reagan3.jpg●前海軍次官Bob Work氏 → 海軍と海兵隊がF-35のB型とC型、更にFA-18の3機種運用になって維持整備面を含めて既に難しい問題となっているにもかかわらず、4機種目のFA-XXに進む判断に大きな懸念を持っている。、航続距離が必要なら無人機が必要なことは各種分析から明白であり、焦点を絞って無人機へ早く進むべきだ

●元米海軍トップGarry Roughead退役大将(無人艦載攻撃機X-47Bを開発推進していた現役時から、米海軍内の無人攻撃機に対する消極姿勢を問題視)→ 2012年に無人艦載機が初飛行や着艦試験を成功させた後の8年間、その成果は放置されたままだ。これほど重要な新技術に、これだけ怠惰な姿勢は許しがたい
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Franchetti4.jpg最近、Franchetti大将が乳がん闘病中であることが公表され、治療のため短期間職務を離れていたことも明らかになっています。他軍種と比較して、飛びぬけて問題が多い印象の米海軍のかじ取りは「ストレス満載」かと思いますが、頑張って頂きたいと思います

上でご紹介した専門家や海軍OBのご意見だけでなく、まんぐーすが最近見聞きする米海軍関連の艦艇維持整備や新規装備開発の問題、更には高級幹部も含む規律違反の問題等々を考え合わせると、FA-XX計画が計画通りに進むとは到底考えられませんが・・・

米海軍次期艦載戦闘機FA-XX関連の記事
「企業幹部:同計画変更の情報無し」→https://holylandtokyo.com/2024/08/19/6176/
「FA-XXの構想進まず」→https://holylandtokyo.com/2020/06/30/634/

空母艦載の無人攻撃機構想がしぼむ様子
「組織防衛VS無人機導入派」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2014-08-01
「哀愁漂うUCLASS議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-17
「UCLASSの要求性能復活?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-14
「夢しぼむUCLASS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-21

無人艦載攻撃機X-47Bの夢
「夏にRFP発出か:無人艦載機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-28-1
「映像:空母甲板上で試験中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-11
「映像:X-47B地上カタパルト発進」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-01
「X-47Bが空母搭載試験へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-28-1

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ヘリ重大事故率が3倍の米陸軍が根本見直し中 [Joint・統合参謀本部]

2023年度重大事故10件死者14名の惨状
2024年春は事故発生率が過去の3倍に
初級訓練用ヘリ機種の再検討やティルローター機対応も
コスト面からもVR訓練の在り方も含め再検討

US Army Heli all.jpg8月26日付Defense-Newsは、米陸軍でヘリコプター事故が激増し、2023年度は死亡率が2011年の米軍イラク撤退以降の最高となり、死者や装備被害4億円以上が出る「クラスA事故」10件で14人が死亡する深刻な状況で、2023年4月には全陸軍航空部隊が飛行を一斉に停止して安全確認や基本事項の再徹底を行うも、2024年も事故が止まず、2024年春には飛行時間当たりの事故発生率が過去平均の3倍に達する危機的状況だと報じています

対策として米陸軍は、「あらゆる選択肢を排除せず検討する」として多方面からアプローチを行っており、最近の事故の特徴や原因の細部分析と対策、ティルローター機訓練の再検討、初級練習機の再評価、シミュレーションやVR訓練の在り方検討、飛行を中止して安全教育に集中する時間の設定などなど、様々に議論されているようですので、「他山の石」としてご紹介させていただきます

8月26日付Defense-Newsによれば米陸軍は
McCurry.jpg●米陸軍将来コマンド参謀長のMac McCurry少将は、「過去2年間、事故率と原因要因を常に注視し、特に編隊飛行、つまり航空機同士が接近飛行する様子や任務を、任務のタスク毎に評価している。また最近では、環境条件に応じ操縦者がテールローター機をどのように操作するかに焦点を当てている」と述べた
●具体的に同参謀長は「1つの考慮点は、適切な基礎訓練用航空機を保有しているかである」と語り、陸軍が2013年後半にベル社のTH-67単発訓練用ヘリを退役させ、訓練機を双発のLUH-72Aラコタ軽多用途へリコプター約200機に置き換え、運用コストと操作の複雑さを巡り激論を呼んだ決定に言及した。そして「全てが検討の対象となっており、訓練用機首も訓練法も全てが検討されている」と語っている。

US Army Heli uh-60.jpg●また同少将は飛行部隊維持全体と安全確保の両立にも視点を広げ、「航空部隊運用にはコストが掛かる。操縦者訓練には多額の費用が必要で、そのため、コスト面、飛行の基礎面、そしてティルトローターを搭載した将来の航空機の導入による影響などから、現在、最適な前進方法について多くの分析を行っている」と語り、
●更に、「シミュレーションやVR技術の向上で、航空訓練に仮想現実や拡張現実が普及する中、実機に乗らなくても訓練効率を向上可能な部分はどこか? どの訓練項目が最新技術で最適化されるか?」を再確認すべきとも同少将は語っている。また最近まで陸軍航空運用検討センター司令官だった人物は、「ヘリ部隊が有人・無人アセットが混在する複雑な組織へ変化する中、搭乗員のための新たな組織的訓練モデルを検討している」と述べている。

US Army Heli FLRAA.jpg●米陸軍は今年初め、「Aviation Standup」と名付けた基本や基礎に立ち返る安全強化の取り組みを発表し、その狙いを「事故発生時に悪い流れを断ち切り、改めて部隊運用の基礎的な部分に焦点を当てる」と説明し、「必ず何らかの効果が出る」と同参謀長は説明している

●米陸軍は2022年12月に将来型長距離強要機(FLRAA)にベル製の次世代ティルトローター設計機を選択し、一方で今年初めに(既に3000億円以上開発に投入済だった)攻撃・偵察任務用有人ヘリ(FARA)開発を中止して、この役割に無人機投入を決定したが、同少将は本件に絡め「今後 1年以内に、陸軍航空の主要幹部を中心に、FLRAAが部隊投入される前に組織的訓練モデルをどうするか、いくつかの決定がなされる」と語っている
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US Army Heli uh-72.jpg上の記事では、将来導入のFLRAA関連でティルローター機への言及が多くなっていますが、今年7月初めにAH-64アパッチヘリが飛行訓練中に墜落して教官が死亡、訓練生が負傷した調査中の事故に見られるように、米陸軍のヘリ事故はAH-64やUH-60やCH-47や上記練習機LUH-72Aなどの既存機で発生しています

日本の陸上自衛隊でもそうですが、陸軍の主力は歩兵や砲兵や戦車部隊であり、それら部隊出身幹部が組織の本流として出世します。ヘリ部隊は近代戦で重要ですが、ヘリ操縦者が「飛行手当」をもらって歩兵等の本流幹部より「羽振りが良い」ことからイジメられ、昇任面で冷遇されています。(あまりに短絡的な表現ですが、本質はそうです)

US Army Heli ch-47.jpgまた、飛行運用と地上部隊である本流組織では作戦行動への考え方に大きな差もあり、組織文化の隔たりも大きく、飛行部隊に地上部隊幹部が口を出せない雰囲気があり、安全管理が飛行部隊で疎かになっていても、飛行部隊独自には改善が難しい閉鎖性もあります

それからもう一つ、以下の過去記事でも指摘したように、防空兵器やドローンの発達により、ウクライナや中東で顕著になり、各国軍の間で認識が広がりつつある前線での有人ヘリ運用の限界説と、そのような認識の現場部隊士気への負の影響への懸念です。航空優勢獲得に関する戦闘機の有効性への疑問と共に、ドローンによる「低高度の航空優勢確保」がもたらす、静かな、しかし大きな軍事変革の流れがもたらす影響です。

つまり、このような複雑な実態を踏まえると、陸軍ヘリ部隊の改善は容易ではありません。

前線での有人ヘリ運用の限界露呈
「小型ドローンで軍用へリ撃墜の衝撃」→https://holylandtokyo.com/2024/08/29/6213/

米陸軍迷走の象徴!? ヘリ選定のグダグダ
「3千億円投入済のFARAは中止」→https://holylandtokyo.com/2024/02/22/5567/
「Black Hawk 2000機の後継FLRAA選定」→https://holylandtokyo.com/2022/12/09/4043/
「UH-60後継の選定開始」→https://holylandtokyo.com/2021/07/16/2009/
「無人化でなく自動化推進!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-11

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