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米陸軍訓練センターがウクライナ教訓生かした演習 [Joint・統合参謀本部]

敵役部隊はSNSにすぐ映像を上げ印象操作
都市制圧に無差別都市攻撃を行う敵部隊を想定
1350名の敵役部隊が4500名の精鋭訓練部隊を鍛える

National Training Center.jpg4月17日付Military.com記事は、米陸軍が加州の「National Training Center」でウクライナの教訓を生かした6000名規模の演習を実施している様子を取り上げ、敵側がSNSへの迅速な画像映像投稿で印象操作を行ったり、初期段階で侵略計画が破綻した敵側が無差別都市攻撃に出る想定の訓練を紹介しています

Christine Wormuth陸軍長官が2日間に渡って同訓練センターを視察し、「国防省等で将来戦について過去約5年間議論してきたが、今まさにウクライナで生起している事象から米陸軍は必死に学んでいる」、「世界中が目撃しているSNSなど情報ドメインの重要性(ロシア側とゼレンスキー大統領の毎日の発信などを例示)」や「装備近代化方向へのフィードバックの必要性」に言及しています

National Training4.jpg同記事は、米陸軍精鋭部隊4500名が2週間に渡り訓練する様子を紹介していますが、その後はすぐに別の部隊が入れ替わりで訓練センターを訪れ、ロシア語を使用する敵役の1350名規模部隊と、更に新たな戦訓を取り入れた演習を行うことになっているようです。

予算案の議会審議のタイミングでもあり、米陸軍による国民や議会向けアピールの入った対外情報発信の一環でしょうが、6000名規模の演習には長期間の準備が必要であり、記事からはロシアや北朝鮮を意識した寒冷地訓練を実施しているとの記載もあり、興味深いのでご紹介してきます

4月17日付Military.com記事によれば
National Training6.jpg●同訓練センター司令官Curt Taylor准将は、同訓練センタースタッフはロシア軍の教科書を擦り切れるほど読み込み、米軍兵士がロシア軍などと戦っても勝利できるよう日々努力していると語り、情勢に応じて迅速にカリキュラムを変更すると説明した
●例えば、同訓練センターやルイジアナ州にある訓練センターでは、イラクやアフガンでの活動が盛んな時は対テロ重視にシフトし、米軍の焦点変化に伴い、ロシアや北朝鮮を意識して寒冷地での行動訓練にも焦点をあて、ウクライナの緊張が高まるといち早く様々な新たな想定を訓練に取り入れている

National Training7.jpg●現在は第1騎兵師団の4500名が訓練部隊で、対抗部隊を同センター所属の第11機甲化騎兵連隊Blackhorseなど1350名が演じている。しかし対抗部隊は実際の敵がやりそうなことは全て展示可能で、通信妨害、電子妨害から非正規作戦やプロパガンダ作戦まであらゆる手法を駆使して敵を演じ、スマホ片手に利用可能な場面や映像を素早くSNS上にアップする体制でも臨んでいる
●訓練部隊指揮官の一人である大佐は、演習では敵味方とも多数の無人機を偵察&攻撃用に使用しており、上空の無人機から発見されないように部隊を隠すことに神経を使うと語り、その他さまざまなトラブルが発生する前線でSNSやツイッターを気にする余裕はないと語っている

National Training2.jpg●Taylor訓練センター司令官は、現在のウクライナの情勢を踏まえ、無差別に火砲を発射して社会インフラを破壊する敵を相手の都市戦闘シナリオを米軍訓練に提供しており、どのような状況にあっても、味方の他部隊と連携を図って行動する重要性を強調していると説明している
●Wormuth陸軍長官は別の視点で、例えば戦車の今後を考える際、欧州では地盤が柔らかく、中東で必要だった重戦車ではなく軽戦車が重宝しており、戦車に求める機動性や防御力や破壊力をどの程度にするかなどの論点も明らかになっている、と同センター視察時に語っている
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National Training5.jpg中東想定の対テロ作戦重視からロシアや北朝鮮想定の寒冷地作戦重視に移行し、今度は都市に無差別攻撃を行う敵を想定しての訓練を重視する・・・・そんなに次々と重視項目を変えられるのか???とも思いますが、実際にロシア軍を演じてみて疑問点を明らかにし、ウクライナ前線での情報活動に生かすのかもしれません

2014年当時の高度なハイブリッド戦を想定していたら、20世紀を想起させる地上戦が目の前で繰り広げらる様子に、米軍も興味津々なのでしょう。ロシア側の部隊通信も筒抜けで、驚くほどロシア軍の混乱ぶりや戦いぶりが把握されているのかもしれません。分析ネタがありすぎて困惑・・・ぐらいなのかもしれませんねぇ・・・

ウクライナ侵略に関する記事
「ウクライナ新緑は日本への警告だ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-25
「露空軍に対する米空軍幹部や専門家の見方」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「中国への影響は?CIAやDIAが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/
「なぜイスラエルが仲介に?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08
「ウ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍」→https://holylandtokyo.com/2022/03/05/2787/
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holylandtokyo.com/2022/03/03/2776/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/28/2763/

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グアム島配備の米潜水艦が2隻から5隻体制に [Joint・統合参謀本部]

2021年11月の2隻体制から、3月末には5隻体制へ増強完了
対中国で優越な数少ない分野の潜水艦力強化
バージニア級でなく旧式のロサンゼルス級3隻増ですが
バージニア級増強は施設整備もあり2026年とか・・・

Annapolis guam.JPG4月15日付Defense-Newsが、米海軍がアジア太平洋地域の潜水艦能力を強化するため、グアム島配備の潜水艦を、従来の2隻から5隻体制に増強完了したと報じています。

グアム島潜水艦体制の強化については、2021年11月にJeffrey Jablon太平洋海軍潜水艦隊司令官(少将)が表明していたものですが、表明時点で2隻のロサンゼルス級潜水艦体制だったものを、2021年12月にハワイから1隻増強し、追加で2022年3月にハワイと加州からの各1隻を加え、計5隻のロサンゼルス級潜水艦体制を確立しました

Springfield guam.jpg本当であれば、2000年代から導入が開始され、既に19隻が任務に就いているバージニア級潜水艦を増強したいところでしょうが、受け入れ施設等の関係もあり、バージニア級は2026年配備予定だそうです。

増強した3隻の内、2隻がハワイからグアムへの移動であり、その実際の効果がどの程度かは不明ですが、対中国で西側軍事力が優越状態にあると言い切れる数少ない分野でもあり、「AUKUS」で豪州に攻撃型原潜を提供する決断もあり、現時点で対応可能な所で手を打ったのでしょう

【ご参考事項】
対中国における潜水艦分野での米国や西側優位に関する発言など

元太平洋軍作戦部長(2022年3月)
Virginia-class2.jpg●中国は台湾の海上封鎖を試みるだろうが、西側は潜水艦戦力や戦術で優位な立場にあり、この利点を生かすため西太平洋への攻撃原潜配備数を増やす必要がある
●太平洋軍はグアムに3隻の攻撃原潜を配備しているが、これを6隻に増強するため、ロサンゼルス級の延命を進め、バージニア級の増産(年2隻から3隻へ)体制を構築する必要がある。また豪州に米潜水艦基地を設ける必要がある

米国防省「中国の軍事力2021」レポート(2021年11月)
Annapolis guam2.jpg●中国の西側潜水艦への対処能力(anti-submarine warfare)は、依然としてレベルが低く、アキレス腱となっている。
●中国はこの欠点を改善するため、中国空母や中国潜水艦防御のために水上艦艇を2030年までに460隻に増強する計画
●中国の現在の潜水艦戦力は、戦略原潜を4隻と攻撃型ディーゼル潜水艦50隻の体制

戦略家エドワード・ルトワック氏
(「ラストエンペラー習近平」2021年7月刊 奥山真司訳より)
Luttwak5.jpg●ISRやAI情報処理能力の発展で、水上艦艇の脆弱性は過去20年間で20倍になったと考えるべき。平時からグレーゾーン事態では水上艦にも役割は残されているが、戦闘状態に入ったら格好の潜水艦の餌食である
●対中国の軍事作戦を考える時、中国の大規模艦隊は世界最大の「標的」となるともいえる。米海軍の攻撃型原潜が一つの鍵になる。西側の優位性を最大限に生かすべきである

日米が協力すべき軍事技術分野4つ
Los Angeles-class2.jpg(Atlantic Councilレポート2020年4月)
●中国は過去10年にわたり、有人及び無人潜水艦へ膨大な投資を行っている。
●米国も本分野への投資を始め、日本ではIHIが独自に無人水中艇開発を行ったが、防衛省としてこの分野への参画決断はない状態である。論理的に見て協力が望まれる分野である

CSBA報告書
米海軍に提言:大型艦艇中心では戦えない(2020年1月)
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Los Angeles-class.jpg上記の「元太平洋軍作戦部長」が要望している「6隻」体制なら、常に南シナ海も含む第一列島線内に、米海軍攻撃型原子力潜水艦を1隻ローテーション配備できるのかもしれません。(基礎知識皆無ですので完全な邪推です

最新の「中国の軍事力2021」レポートが、「中国の西側潜水艦への対処能力は、依然としてレベルが低く、アキレス腱だ」と言うのですから、水中無人艇への投資も含めて日本も協力し、この分野を「梃子」に対中国抑止力を高めたいものです。 

既に始まっている攻撃原潜の後継検討
「戦略原潜設計チームを次期攻撃原潜にも投入へ」→https://holylandtokyo.com/2021/11/04/2333/

攻撃原潜への極超音速兵器の搭載時期は
「バージニア級へは2028年以降」→https://holylandtokyo.com/2021/11/26/2450/

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米陸軍が前線での電力消費増に対応戦略検討 [Joint・統合参謀本部]

「Operational Energy戦略」を年末までに
前線兵士や前線指揮所での電子デバイス増に対応
気候変動対処に電気自動車導入推進などのため

Energy strategy.jpg4月12日付Defense-Newsが、米陸軍が前線での電力消費量増加や気候変動対処のための電気自動車導入に対処するため、2022年末までに「作戦運用エネルギー戦略:Operational Energy Strategy」をまとめて産業界とも共有し、最新技術導入を促進し、技術革新方向を示して協力を得ようとしていると紹介しています

米国防省の気候変動対処戦略CAPを受け、2月8日に米陸軍も「climate strategy」を発表し、2035年までに全陸軍基地に「自給自足のミニ総合発電施設:microgrids」を設置し、また同年に戦術車両にハイブリッド車を、そして2050年までに全電動戦術車両を導入する方針を明らかにしています

Energy strategy2.jpg米陸軍「climate strategy」を受け、前線の作戦運用部隊でのより具体的なエネルギー調達や分配や管理要領や技術開発方針を打ち出す「作戦運用エネルギー戦略:Operational Energy Strategy」を、2022年末までに作成することになっており、その概要方向を記事は紹介しています

考え方が古いまんぐーすにとって、前線で各兵士が持ち運ぶ電子デバイス増に対応する電源確保は理解できるにしても、戦闘車両の電動化については燃料輸送や維持整備負担軽減、更に車両静粛化とのメリットがあるとは理解しつつも、本当に施策を推進する動機が働くのか「?」です

Wormuth7.jpgですがChristine Wormuth陸軍長官(女性・前政策担当国防次官)は、「多くの資源を投入したくなる取り組みであり、このシステム改革を前線に届けるために必要な労力を忘れるほどの強い魅力がある」と語って米陸軍としてのやる気をアピールしています

そんな「Operational Energy戦略」が包含する分野は幅広く、従来の化石燃料から再生可能エネルギーへの移行や、展開先同盟国等からのエネルギー調達までを含む内容になるそうですが、本日は記事が断片的に取り上げている、ミニ総合発電施設Microgrids、バッテリー、バッテリー充電、産業界の動向等についてご紹介します

4月12日付Defense-News記事によれば
Energy strategy4.jpg●ミニ総合発電施設Microgrids
米海軍が加州ミラマー航空基地で導入しているシステムを、米陸軍基地に導入する企業提案の検討などが行われている
また前線や機動展開先で利用可能な、移動式発電機とも呼べる「mobile microgrid system」の検討も進められており、装置の更なる小型化が追求されている

●発電機
既に、発電効率を高めつつ信頼性を向上させ、かつ多様な発電機との部品相互融通性を高めた発電機の部隊配備が始まっているが、これに蓄電能力を加えて前線での有効性を高める挑戦が続いている
また兵士が着用可能な「wearable solar panels」や、持ち運び可能な「燃料電池fuel cells」の開発動向に注目している
ミニ総合発電施設Microgridsも発電機も、前線兵士が個々に保有して使用する電子デバイス用の「wearable batteries」充電や電動車両の充電に不可欠な装備である

●バッテリー
Energy strategy5.jpgリチウムイオンバッテリーの持続性や迅速な充電を求めた改良に取り組んでおり、「silicon anode」技術の活用などを検討している。
また、使用機材個々に特化した多様なバッテリーが前線に混在し、ロジ面での大きな負担となっている現状を改善するため、バッテリーの共通化標準化に取り組んでい

●バッテリー充電
バッテリーの共通化標準化に合わせ、バッテリー充電機の共通化標準化にも取り組んでいる
また、戦闘車両BradleyやStryker内に充電装置を付加し、移動中に兵士着用の「CWB:conformal wearable battery」や電子デバイスに充電可能にする試験が昨年夏から行われている
トレーラーの荷台に積載可能なコンテナサイズの充電器開発及び更なる小型化にも取り組んでいる

●産業界との連携
Energy strategy3.jpgバッテリーの蓄電量増加や前線でのバッテリー充電能力確保は依然として大きな課題であり、産業界からは米陸軍のインフラが圧倒的に不足しているとの指摘もあるが、数年前と比較して、社会全体での電気自動車普及の動きもあり、商用ベースでの充電設備の研究開発は飛躍的に進んでいる

Microgridsやバッテリー開発も企業側での競争原理も働いており、国防省や陸軍の気候変動対処戦略発表を受け、国防分野での需要拡大への期待感も企業側で膨らんでおり、win-win関係を構築する機運が高まっている

米陸軍幹部は、企業との取り組みのベクトルをそろえるためにも「Operational Energy戦略」が重要だとしており、産業界側にも同戦略の必要性重要性を語る関係者が多い。特に新たな参入企業を期待する場合には、要求を明確にすることが重要である
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Wormuth3.jpg過去記事でご紹介している米国や英国の取り組みは本格的なもので、なかなか「腹落ちしない」まんぐーすの時代追随能力の限界を感じております

ウクライナ侵略でエネルギーコストや消費財全般の価格が上昇しており、国防予算を圧迫しており、本政策の優先順位をどうするかで米国防省や各軍種の本気度を見てまいりましょう

排出ゼロや気候変動への取組み関連
「米空軍が航空燃料消費削減を開始」→https://holylandtokyo.com/2022/02/16/2691/
「米国防省は電気自動車&ハイブリット車導入推進」→https://holylandtokyo.com/2021/11/15/2423/
「米国防省が気候変動対処構想発表」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holylandtokyo.com/2020/09/25/487/

「英空軍トップが熱く語る」→https://holylandtokyo.com/2021/12/03/2474/
「英空軍が非化石合成燃料でギネス認定初飛行」→https://holylandtokyo.com/2021/11/19/2444/
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07

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大活躍スティンガー携帯防空ミサイルの後継選定 [Joint・統合参謀本部]

後継機開発とスティンガー増産との兼ね合いが悩み
選定・試用・修正経て2027年に製造開始
無人機対処重視で関連兵器やレーザー兵器に関心の中

Stinger SAM.jpg4月7日付Defense-Newsが、世界各国がウクライナ支援のため多数提供している大活躍中の携帯型対空ミサイルStingerについて、米陸軍が延命措置も行いつつ計画通りに企業に情報要求書RFIを最近発出し、後継選定作業を本格開始したと報じています

Stingerミサイルは1981年から使用されている兵器で、米陸軍は約5900セットの同兵器を有効活用すべく、2019年度予算から内臓半導体や経年劣化する部材を交換等する延命措置を開始しており、2022年6月には終了する予定になっていますが、後継機種選定計画を2022年度予算案に盛り込んで今次発出したRFIの準備を進めていたところです

Stinger SAM2.jpgStingerは、主目標を低空低速飛行のヘリや対地攻撃機、低空飛行中の戦闘機や輸送機や巡航ミサイルなどとする赤外線追尾方式の兵器で、射程も数km範囲の限定的能力の兵器で、ウクライナ情勢緊迫からストライカー戦闘車両への搭載改修も急遽行われていますが、米軍の考える「大国との本格紛争」想定では、重視されている兵器ではありません

米陸軍など地上部隊にとっては、近年急速に発展し、安価なため様々な国が開発し導入している「無人機」対策が一番大きな課題と認識され、そのためのレーザー兵器や電子妨害装置、飛行場や市街地でも使用可能な非破壊性の捕獲ネットなど様々な「新兵器」アイディアを評価している段階で、正直なところウクライナ事案でStingerに急に注目が集まっていることに困惑もありましょう

実際議会からは、ウクライナの要請で縮小傾向にあったStinger製造ラインの拡大投資を始めたばかりの中、同時に後継兵器開発への投資が増加することに対し、優先順位をよく考えるべきとの「一旦停止」意見も出ており、微妙な立ち位置にある後継兵器開発でもあります

4月7日付Defense-Newsによれば
SHORAD.jpg●短射程防空能力(SHORAD:Short-Range Air Defense capability)システム開発の一環として、2022年度予算から本格化したStingerミサイル後継検討に関する情報提供要求書RFIによれば、次期システムには「目標補足能力」「破壊力」「射程距離」向上が求められており、戦闘車両用に搭載可能な発射機にも引きつづき対応可能なことも要求されている

●開発・導入の時程としては
・ 2022年末に候補機種等を絞り込んで契約
・ 2023年度に技術確認デモンストレーションを行い、2026年度の実射による能力確認等の作戦運用デモンストレーションを経て、2027年度には計1万セットの製造を段階的に開始して、2028年夏まで製造品の完成度合いを継続アセスメントすることになっている

Stinger SAM3.jpg●また、先ほど述べた「目標補足能力」「破壊力」「射程距離」向上以外にも、技術開発状況に応じて近接信管能力(Proximity Fuze (PROX) capability)付与も考えられており、様々な空からの脅威対処に能力強化を狙っている後継選定である
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ロシアによるウクライナ侵略が発生したとしたら、高度なハイブリッド戦が宇宙ドメインも巻き込んで生起し・・・と言った予想はことごとく外れ、20世紀的な地上部隊の作戦が主流の中、突然脚光を浴びることになったStingerミサイルや対戦車ミサイルですが、2023年度予算案を議会に説明する米軍幹部にとっては、正直なところ「困ったスポットライト」なのでしょう

Ukrainian forces2.jpgKendall空軍長官以下の米空軍幹部が、ロシア軍のことを聞かれても「China」脅威を訴える対応を繰り返す中、ウクライナ侵略が2023年度予算案にどのような影響を与えるかを見る一つの試金石事業がStinger後継事業です

米陸軍の短射程防空能力(SHORAD)整備
「米議会がレーザー兵器開発に懸念で調査要求へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-08
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器搭載装甲車両契約」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-05

ロシア脅威認識は変化なし。本丸は依然中国だ
「米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る」→https://holylandtokyo.com/2022/03/17/2929/

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沿岸警備隊司令官候補に初の女性推挙 [Joint・統合参謀本部]

米国の6軍トップに初の女性誕生へ
1985年沿岸警備隊アカデミー卒の現副司令官
娘さんも沿岸警備隊の若手士官とか

Fagan.jpg4月5日、米国政府は次の沿岸警備隊司令官に、現在副司令官を務めるLinda Fagan沿岸警備隊大将を推挙すると発表しました。5月に退官するKarl Schultz現司令官の後任者として上院で承認されれば、女性初の米6軍(陸海空宇宙軍、海兵隊、沿岸警備隊)トップとなります

ただ、沿岸警備隊司令官は5軍のトップの一人ですが、「Joint Chiefs of Staff:統合参謀本部」構成員ながら完全な「投票権」を保有していないメンバーです。また6軍の中では唯一、国防省ではなく、国土安全保障省(Department of Homeland Security)管轄の組織トップとの位置づけになります

Fagan4.jpg近年の米本土安全保障の重要性と任務増大から、沿岸警備隊司令官を投票権のある正式な「Joint Chiefs of Staff」にするべく法改正案が昨年超党派の議員団から提出され、残念ながら成立しませんでしたが、法改正は時間の問題だろうとの雰囲気にあるようです

以下では、推挙発表が国土安全保障省からあったLinda Fagan沿岸警備隊大将について、ご紹介します

4月5日付Military.com記事から候補者をご紹介
Fagan3.JPG●1985年沿岸警備隊士官学校卒(推定60歳)(現司令官は83年卒)で、2021年7月に女性として初めて沿岸警備隊大将に昇進し、同時に副司令官に就任。女性として副司令官に就任したのは3例目(沿岸警備隊の任務拡充等により、5年前に副司令官ポストが大将に格上げ)

●沿岸警備隊では「Marine Safety Officer」としてキャリアをスタートさせ、海上事故調査、商用洋上交通の監視監督、航海支援設備管理、海洋運航者へのライセンス付与、海洋安全施策推進などの業務で若手から中堅時代の経験を積む
●また、40年近いキャリアの中で海洋監察官職を15年勤め、大型砕氷艦Polar Starでの勤務も経験している。末尾の経歴表によれば、東京勤務もある模様

Fagan2.jpg●副司令官就任時に「CBS This Morning」に出演して沿岸警備隊の任務説明した際は、「homeland security」, 「maintaining a global presence」, 「supporting and training the coast guards of other countries」, 「enforcing drug laws and fishing regulations」,「protecting the supply chain」を上げている
●そして特に強調して、「沿岸警備隊は世界中で活動している。人々は誤解している。沿岸警備隊は沿岸でのみ活動していると考えがちだ。米海軍の仲間がプレゼンスを示し、法を執行するために武器使用を議論するのと同じように、我々は米本土防衛のために存在している」と表現している

Fagan5.jpg●Fagan大将は同インタビューで沿岸警備隊の変革にも触れ、「diversityとinclusion」や「女性の活躍」について語り、「我々が使える米国社会を表現するような人的戦力構成を目指し、女性の登用などdiversityとinclusionに焦点を当てて変革に取り組んでいる」と述べ、マイノリティー採用を増やしていると説明している
●ちなみにFagan大将の娘の一人であるAileen Faganは、沿岸警備隊の士官(少尉)としてキャリアをスタートさせている

●現司令官のKarl Schultz大将は次期司令官候補のFagan大将を表し、「沿岸警備隊の作戦運用、政策策定、他軍種との統合運用や他政府機関との連携経験が豊富で、歴史的転換点にある沿岸警備隊をリードするにふさわしい人物だ」と語っている
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Fagan6.jpg米国の沿岸警備隊について取り上げたことがほとんどありませんが、「グレーゾーン」事案への対応がより重要になる最近の安全保障環境の中で、「平時の第一線」であることは間違いありません。

また、ほとんど顧みられなかった「砕氷船」が北極海の氷減少でにわかに脚光を浴びる中、実質的な稼働席数が「わずか1隻」との厳しい現実にも向き合っていただくことになるのでしょう。ご検討を祈念申し上げます

Linda Fagan沿岸警備隊大将のご経歴
https://www.uscg.mil/Biographies/Display/Article/1391225/admiral-linda-l-fagan/

女性徴兵制度がある国
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等目指し:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉業務選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

沿岸警備隊関連(砕氷艦)の記事
「唯一の大型稼働砕氷艦が火災で運行不能」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-26
「大統領が米砕氷艦計画の再評価指示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-15
「トランプ:空母削って砕氷艦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02

軍での女性を考える記事
「初の女性空母艦長が出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-05
「技術開発担当国防次官に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-23
「初の女性月面着陸目指す」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-20
「黒人女性が初めて米海軍戦闘操縦コース卒業」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
「初の米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「上院議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19
「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11

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MDA長官がグアムMD整備の状況と困難を語る [Joint・統合参謀本部]

注ぎ込んでも限界のあるミサイル防衛にどこまで投資するか?
グアムのミサイル防衛体制整備の現在位置

Hill.jpg2023年度国防予算案公表に伴い、米ミサイル防衛庁MDA長官のJon Hill海軍中将などが、太平洋軍最優先要求事項の一つで「2026年までに絶対運用開始」の「グアム島のミサイル防衛強化」について発言していますので、現在の大まかな状況と課題部分についてご紹介します

グアム島は、改めて申し上げるまでもなく対中国作戦の起点となる西太平洋の数少ない作戦基盤であり、海軍艦艇・潜水艦への弾薬補給、空軍作戦機の一大発進基地&燃料弾薬補給などなど、重要な役割を担っています

Guam MD.jpg中国も米軍にとっての重要性を認識し、グアム島攻撃用の航空機発射巡航ミサイルや弾道ミサイルの整備を着々と進めていますが、ご丁寧に最新型H-6大型爆撃機に搭載した巡航ミサイルで、グアムのアンダーセン基地を攻撃するシュミレーション映像まで公開しています

米太平洋軍は2013年にTHAADミサイル防衛システムをグアムに配備していますが、太平洋軍は更なるMD装備の拡充を優先要望事項にあげており、要望を受けたミサイル防衛庁が2026年配備完了に向け、完成形態の最終設計を2023年度中に終了すべく予算要求をしています

ちなみに2022年度予算では約95億円の設計&調査費と約50億円の先行調達費を当初要求しましたが、米議会が追加で約90億円を上乗せしています

3月30日付Defense-News記事によれば
Guam MD2.JPG●2023年度予算案でMDAは、グアムのMD整備用に約660億円を要求し、多層なミサイル防衛体制に必要なシステムや配備装備設計の検討、配備場所の調査、レーダーや兵器用部品調達費用にしたい考えである
●28日にMDA幹部は予算案説明会で、「現状のMDシステムは北朝鮮からの弾道ミサイル対処能力はあるが、中国からのミサイルを含む脅威は日進月歩の勢いで変化している」と予算への理解を求めた

●MDAのHill長官は、ルーマニアやポーランド配備のAegis Ashoreのような固定システムだけではなく、分散型システムも検討しており、移動式ランチャー活用にも関心を持っていると語った
●そして、能力が現時点で確認されている米海軍のSM-3やSM-6、PAC-3、そして現有のTHAADの組み合わせを基本とするが、米陸軍が2023年に配備予定の「Mid-Range Capability missile」などの将来装備も可能になったタイミングで組み入れることも検討すると述べた

Guam MD3.jpg●また、上述のシステムは指揮統制システムとして米陸軍の「Integrated Battle Command System」で連接されるが、「イージスシステムの火器管制能力」も活用するとも同長官は語っている
●現時点では、弾道ミサイルと極超音速兵器対処に取り組んでいるが、その後にPAC-3の持つ優れた巡航ミサイル対処能力を米陸軍C2システムを通して融合させる

●同長官は課題として、グアム島でミサイル防衛システムに使用可能な土地が限られていることを上げ、「高低の変化が激しいグアム島の中の、利用可能な限られた地籍に大きなAegis Ashoreシステムや関連センサー用の場所を見出し、他システムとの連接を確保する事は、他の場所での知見を活かせるような単純な作業ではない」、「この課題のため、過去数年間に膨大な検討を行ってきた」と語った

Guam MD4.jpg●また例えば、グアムで検討している巡航ミサイル対処要領については、米本土防衛用にも応用可能となろう。既存センサーの活用は、宇宙センサーを含めた融合にも発展させる方向で、発射機も同様に、新たなミサイルが導入されればMDシステムへの取り込みを考え、進化発展を考えていくと同長官は説明している
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グアム島各所に先住民の方にとっての「神聖な場所」が存在し、その場所を米軍施設や観光開発から隔離することが大前提となっています

ミサイル防衛整備以前から、米海空軍受け入れ能力強化のための施設工事が色々と進んでいますが、その度に先住民の方々との調整が難航しています

Hill MDA.jpgそれでなくても、サンゴ礁でできた島ですので、MD用に適当なまとまった土地を見つけてレーダーやセンサー覆域等々を考えると、非常に難しいパズルを解く必要があるのでしょう。

「2026年運用開始がマスト」との厳しい事業ですが、その進捗を見守りましょう

関連の記事
「イージスアショアは分散&機動展開可能型へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-21
「太平洋軍司令官がグアムミサイル防衛一押し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-23
「上下院軍事委員長が対中国抑止PDI推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-29
「太平洋軍が今年も追加要望事項レポート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-03

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米陸軍が軽戦車MPFの選定ほぼ終了 [Joint・統合参謀本部]

MPF:Mobile Protected Firepowerとの歩兵用軽戦車
General DynamicsがBAEに勝利との報道あり

MPF GD3.jpg3月11日付Defense-Newsは、3月のJanes Defense誌が報じた米陸軍軽戦車(正確にはMPF:Mobile Protected Firepower)機種選定で「General DynamicsがBAEに勝利した」との情報をフォローする記事を掲載し、関連米陸軍幹部の「機種選定に満足している」との言葉を紹介しつつ、7月予定の正式発表にサプライズは無いとの感触を伝えています

この米陸軍軽戦車MPFは、歩兵部隊に「防護プラットフォーム」、「圧倒的な精密火力」、「様々な地形条件での高い機動力」提供を目的とするもので、「現在の欠落能力を補完」するため2026年夏に最初の部隊への配備を予定しています

MPF GD.jpg2018年12月に最終候補をBAE Systems社(緑色)とGeneral Dynamics Land Systems(GDLS:茶色)社の2社に絞り、各社に12両のプロトタイプを製造させ、まず米陸軍で全ての基本性能が要求値を満たしているかを試験し、

その後、MPFの基本運用コンセプトを作成した第82空挺師団の選抜兵士による「ユーザー確認試験」が行われ、現場の様々な角度からの意見が聴取され、製造企業側にもフィードバックされ、現在最終結果取りまとめが行われている段階にあるようです

MPF BAE2.jpg2つの提案は、同じ提案要求書から作成されたものですが、2社の提案は大きく異なっており、GD社は軽量車体に高性能装甲装置と先進サスペンションを搭載し、火器管制装置やタレットにはM1A!戦車の最新型バージョンのシステムを搭載している模様です

一方でBAE社は、コロナの影響でプロトタイプ提供がGD社より1か月遅れたようですが、M8 Buford装甲ガンシステムに新たな能力やサブシステムを搭載したデザインで選定に臨み、2021年8月にはおおむね終了した模様です。「ユーザー確認試験」を経た第82空挺師団兵士からのフィードバックには、両社とも「非常に貴重な現場意見が得られた」と感謝の意を表しています

MPF BAE.jpg機種選定と並行し、米陸軍内では量産に向けた「Requirements Oversight Council による審査」も行われ、具体的な配備先部隊を調達数にまで踏み込んだ議論が複数回行われ、煮詰まってきているようです

正式には今年7月(2022年度第4四半期)と言われる選定結果発表後は、勝者が26両を製造(オプションで26両追加製造)し、更に米陸軍内の様々な意見を踏まえ、量産用最終改良型を8両製造して量産形態を確定する予定となっています
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2018年に2企業に絞られた際、米陸軍担当幹部はMPFについて、「歩兵が徒歩や簡易装甲車両ハンヴィーで移動していた際に、敵の拠点や車両に出くわした場合、今は全て停止を余儀なくされている」、「しかしもしMPFがあれば、米陸軍部隊はそれらを突破することができるだろう」とその必要性を語っています。

MPF GD4.jpg要求性能でMPFは105mm砲と7.62mm同軸機銃で武装し、重量はM1AI戦車より軽量な40トン以下、そして機動力もM!A!戦車を超えることを目指しており、この点で「欠落能力の補完」と言うことなのでしょう

中東での対テロ戦では用途がありそうですし、ウクライナ軍に提供してあげたい装備ですが、対中国で活躍の場があるとは考えにくく、どの程度の数量が調達されるのか気になるところです

米陸軍の話題
「50KW防空レーザー装備の装甲車導入へ」→https://holylandtokyo.com/2022/01/21/2623/
「Project Convergence5つの教訓」→https://holylandtokyo.com/2021/12/21/2514/
「大国との本格紛争で近接戦闘も重視」→https://holylandtokyo.com/2021/11/09/2388/

「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holylandtokyo.com/2021/10/18/2342/
「2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holylandtokyo.com/2020/09/11/478/
「射程1000nmの砲開発に慎重姿勢見せる」→https://holylandtokyo.com/2021/03/17/163/

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THAADシステムに最新型PAC-3発射機連接し迎撃成功 [Joint・統合参謀本部]

THAAD高性能レーダー情報でPAC-3使用可
PAC-3の指揮統制システム不要、発射機のみ連接
きっかけは朝鮮半島の移動部隊からの緊急要請

THAAD PAC-3.jpg3月9日ロッキード社が声明を発表し、2月24日に米ミサイル防衛庁MDAがTHAADシステムに最新型PAC-3のMSE(Missile Segment Enhanced)を連接した射撃試験をホワイトサンズ射撃場で実施し、THAADシステムのレーダーで捕捉した目標を、PAC-3MSE発射機から発射されたミサイルで迎撃に成功(実際はヒット直前で迎撃体を自爆措置)したと明らかにしました

この試験は、THAADのレーダーと指揮等統制装置にPAC-3MSE発射機を繋いで行われ、PAC-3システムより捜索範囲の広いTHAADレーダーで捕捉した目標に対し、THAAD指揮統制装置から出された指示に従ってPAC-3MSE発射機から迎撃ミサイルを発射する形で行われました

THAAD PAC-34.jpgつまり、THAADシステムに、THAADミサイル発射機とPAC-3MSE発射機を同時に接続し、目標の飛行諸元や脅威度や友軍の応戦状況に応じて、迎撃手段を前線の指揮統制装置内で高高度広範囲対応のTHAADミサイルと低高度拠点対応のPAC-3MSEから選択可能になるということです

米陸軍とミサイル防衛庁MDAは、朝鮮半島展開の移動部隊からの差し迫った要求に応えるため、数年前から重層的なミサイル防衛網構築を目指してTHAADとPAC-3融合に急いで取り組んできた模様で

THAAD PAC-35.jpg融合試験当初は、THAADシステムにPAC-3指揮統制装置を含む全システムを連接していたようですが、よりシンプルな形を追求し、2月24日のPAC-3発射機のみを連接する形にまで深化させた様です

米軍内でPAC-3を運用する陸軍は、将来的にPAC-3を「new integrated air and missile defense system」に置き換える計画を進めているようですが、残ったPAC-3発射機と迎撃ミサイルを、THAADシステムに連接して重層的な防御網構築をオプションとして持つ方向なのかもしれません(邪推です)

9日、発表同日にワシントンDCで講演したMDA長官のJon Hill海軍中将は、「作戦運用上の緊急要請に応え、間もなく成果を前線に届けることができることに喜びを感じ興奮している」と語っています
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Hill MDA.jpgTHAADシステムとPAC-3発射機との連接要領がよくわかりませんが、THAADレーダーとPAC-3システムの連接組み合わせは可能なのでしょうか?

ニーズはともかくとして、日本にあるTHAADレーダーとPAC-3システムが遠隔連接できれば、青森県や京都府の日本海側になる米軍のTHAADレーダー情報を、日本各地に展開するPAC-3部隊に提供できれば、広範囲の戦況を把握できて良いことがあるかもしれません(ないかな? JADGEシステムとの連接で十分かな?)

THAAD関連の記事
「UAEでTHAADが初実戦迎撃成功」→https://holylandtokyo.com/2022/01/24/2640/
「グアムには陸上配備イージスアショアが必要」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-23
「CSISが時代遅れの米国IAMDに提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-01-27-2

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南シナ海海没のF-35Cを僅か37日で回収完了 [Joint・統合参謀本部]

第7艦隊が総力を挙げ、中国に盗まれないよう早期回収
水深約4000mの深海から無人水中艇を使用し
昨年の地中海でのF-35B回収経験も活かした模様

F-35C Sink2.jpg3月3日付米海軍協会研究所web記事等は、1月24日に空母カールビンソンへの着艦に失敗してフィリピン沖の南シナ海に海没したF-35C型機を、米海軍第7艦隊や海軍システムコマンドが総力を挙げ、3月2日に水深約4000m(12,400 feet)の海底から引き揚げることに成功したと報じました。

同機はカールビンソンが空母リンカーンと同海域で共同訓練中に着艦に失敗したもので、同空母乗員(士官1名、下士官4名)が流出させ処分を受けた事故時の映像や写真によれば、高度不足で着艦アプローチに失敗して空母端に胴体を接触させ、甲板上を180度回転しながら滑って海中に落下したようです

F-35C salvage.jpg回収作業は、第7艦隊の水中特殊任務を担当する「CTF75:Task Force 75」と、海軍Sea Systems Commandのサルベージ専門官のチームで行われ、水中作業支援船「Picasso」から発進した約3トンの遠隔操作水中作業艇「CURV-21」が海底のF-35に引き揚げ用ワイヤーを取り付け、支援船「Picasso」のクレーンで引き揚げたようです

同様の引き揚げ作業は、昨年、地中海で英空母エリザベスからの離陸に失敗して海没した英軍F-35B型機にも行われた様で、米英伊軍の協力で実施されたその際のノウハウも、南シナ海での迅速な引き上げ作業につながったようです

めでたし・めでたしですが、本件絡みで要観察事項2つ

Carl Vinson.jpg●1月24日の海没事故の際、短期間で5件連続事故続きだった空母カールビンソン艦長が「わずか45分で着艦を再開できた。共に訓練していた空母リンカーにも一部艦載機を緊急着艦させるなど、不足事態への乗員の対応は素晴らしかった」と強気の発言を行っていましたが、
●「空母艦載機増加で運用リスク増」「緊張を強いられる対中国示威任務」「コロナ対策で乗員のストレス蓄積」などが事故多発や、乗員による事故映像リークの背景では・・・と、米空母の将来を勝手にまんぐーすは心配しております

「対中国特化米空母の苦悩」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15

F-35C Sink4.jpg●もう一つ気になっているのは、この引き上げ成功を最初に報じた3月3日付米海軍協会研究所web記事が、「米海軍は中国やロシアへの情報漏洩を恐れ、F-35Cの海没&改修作業場所を非公開としていたのに、日本の海上保安庁が公示した」と批判的に報じている点です
●海上保安庁は、国際機関から当該海域における航海注意情報を世界に発信する役割を命じられており、「淡々と」サルベージ作業地点情報を事務的に世界に向け公示しただけですが、「配慮不足」を指摘される形となっています。海上保安庁が日本政府と事前に相談したとは思えず、このあたりの対応には今後注意が必要かもしれません

「日本の海保がF-35C海没場所公示」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-01

3月13日の北京冬季パラリンピック終了までは、南シナ海や東シナ海は少し静かでしょうが、その後には不安しかない今日この頃です・・・

事故続発・米空母カールビンソンの苦しい航海
「対中国特化米空母の苦悩」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15
「南シナ海の米空母でF-35着陸失敗等事故5件相次ぐ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-26
「日本の海保がF-35C海没場所公示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-01

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空母フォードの初任務航海はフル体制ではなく [Joint・統合参謀本部]

どうやら艦載機部隊が間に合わない模様
地域コマンド指揮下でなく、海軍指揮下でお披露目航海に

Ford CV.JPG2月3日付Defense-Newsは米海軍幹部の発言から、6年遅れで各種不具合修復が完了した新型空母フォードの2022年後半の初任務航海について、地域コマンド司令官の指揮下に投入する通常の作戦任務航海でなく、米海軍(第2艦隊)管理下の能力お披露目航海になるだろうと報じ、艦載機数も完全な数量を確保できないだろうと厳しい米海軍の台所を紹介しています

新型フォード級空母の一番艦空母フォードは、昨年末に最後まで残っていた兵器運搬エレベータの不具合改修を終了し、現在は残った装備品の搭載作業と各種試験後の艦艇修理に入っています

Ford CV2.jpg今後について同記事は関係幹部の話を総合し、2022年後半に本格任務投入ではなく、約3か月ほどのお披露目初任務航海を大西洋からカリブ海エリアで行って沿岸各国軍との連携確認を行い、その後再び修理&訓練期間を経て、2023年末または2024年上旬から、地域コマンド指揮下の本格任務行動に投入されることになりそうだと分析しています。

6年も遅れてまだ「よちよち歩き」かよ・・・と突っ込みたくなりますが、どうやら背景には、米海軍全体で空母戦闘群を支える艦載機部隊を十分用意できないほどの予算や維持整備上の問題があるようです

Meier.jpg例えば、大西洋海軍航空部隊司令官John Meier少将は、「空母フォードでは2020年から21年にかけ8200回の離発着訓練を行い、艦載機部隊の態勢は出来つつあるが、弾薬搭載を含む最終段階訓練を含めると、必要な艦載航空団を完全に準備できていない」と現状を語り、

「2022年秋ごろからの初任務航海は、短期間に濃縮した要員要請も兼ねた任務展開となる」、「完全な空母艦載航空団より小ぶりな態勢とならざるを得ない。コストと配分可能な資源のバランスを考慮した上での現状である」と説明しています

そして同少将は、空母フォードにどれだけ資源配分するかについて、米海軍全体で統合部隊からのニーズを踏まえて議論が行われているとも説明しています

Kitchener5.jpgまた1月に米海軍水上艦艇司令官のRoy Kitchener中将は、地域統合コマンドのニーズや保有資源や予算を総合的に勘案し、米海軍として艦艇を何隻運用可能な態勢で提供するかを「賢明に」判断していく必要がある。その際準備する艦艇には、完全な態勢の艦艇と低レベルの態勢の艦艇が混在することも前提として考えねばならない、と台所の厳しさを示唆していたところです

それでも2022年秋の3か月間程度の仮運用初任務展開(@大西洋)に向け、担当する第2艦隊は準備を進めており、同盟国との共同訓練招待状を出したり、同空母の能力を示す機会を作為する準備に忙しいようです。

本当に米海軍の今後は多難です。

フォード級空母関連の記事
「6年遅れ空母フォード不具合修復完了」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-26
「新型空母フォードの計画責任者更迭」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-08
「お披露目演習でEMALS故障」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-12
「空母フォード:3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「米海軍真っ青?トランプ「EMALSはだめ」」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-13
「空母を値切って砕氷艦を!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19
「フォード級空母を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20
「解説:電磁カタパルトEMALS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10

空母の存在意義を巡る議論
「対中国専従空母の厳しさ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇案!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「半年かけて空母の将来像を至急検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-12
「レーザー兵器搭載に自信」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-05
「国防次官が空母1隻とミサイル2000発の効果比較」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-20

艦艇建造&修理の大問題
「空母や艦艇修理の3/4が遅延」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-22
「空母故障で空母なしで出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-16
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09

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無人機は目指さないがUH-60が無人飛行に成功 [Joint・統合参謀本部]

あくまでも自動化技術獲得が狙い
状況に応じ無人飛行も含めた多様なレベルの自動操縦を選択使用
操縦者はより高次元の意思決定に専念可能に
ヘリの事故に悪天候時の人的ミスが多い教訓も背景に

UH-60A unmanned4.jpgロッキード社傘下のヘリ企業Sikorskyが、米国防省のDARPAとの共同研究(ALIAS)の成果として、2月5日と7日にUH-60 Black Hawkヘリを完全無人で飛行させることに成功したと発表しました。

DARPAやSikorsky社は、必ずしも無人多用途ヘリを開発しようとしているわけではなく、「目的は操縦者が任務に集中できるよう多様な自動操縦オプションを提供すること。自動化システムが操縦者にとって代わることではない」、「今後のカギは、100%有人操縦から、100%自動操縦までの段階的な自動化レベル移行を円滑に行うこと」と表現しているように、へり操縦者負担を軽減し、より高度な作戦判断に集中することが可能な自動操縦システムを追求することのようです

UH-60A unmanned.jpg背景には、ヘリが飛行する低高度域は障害物が多く、敵からの脅威も高く任務遂行に関わる判断事項が多いため、短絡的に無人化追求は難しく、多様な状況に応じて様々な自動操縦オプションを確保しておきたいとのニーズが、米陸軍や特殊部隊、更に救難救助部隊で強いことがあるようです。(もちろん、へり操縦者のポストを確保したいとの職域エゴもあるとは思うが・・・)

またヘリ関連の事故の多くが、悪天候時の人的ミスによって引き起こされていることから、悪天候時に人間の判断をサポートする自動操縦への期待も大きい模様で、現在は有人操縦で運行不可能な天候下での自動運行を可能にする技術開発も目的の一つになっているようです

Cherepinsky.jpg2019年10月にSikorsky社のIgor Cherepinsky自動化部長にインタビューした際は、「我が社は世界に向け、地上からの無人自立飛行を2020年に披露する」と語っていましたが、コロナの影響もあってか、2022年2月まで初の「無人自立飛行」は遅れた模様です

ただし延長期間を無駄にはしていないと主張するためか、実際の飛行はケンタッキー州の陸軍基地で行われた様ですが、自動操縦システムにはマンハッタンの摩天楼を複雑に避けて飛行する場の設定がヴァーチャルで付与され、無人UH-60Hは高度の上げ下げや進路変更を繰り返して仮想高層ビル街での試験飛行に挑戦して成功させた様です

UH-60A unmanned2.jpg今回の試験はDARPAとの共同研究(ALIAS:Aircrew Labor In-Cockpit Automation System)の一環ですが、Sikorsky社は民間ヘリへの応用を視野に置いたSARA(Sikorsky Autonomy Research Aircraft)計画も進めており、そこで開発している「MATRIX」自動操縦システムをALIASでも使用したとのことです。ネット上では「ヘリの操縦が45分でマスターできる」とのキャッチフレーズを同社が使っているようです

UH-60.jpg多様なレベルの自動操縦をニーズに応じて実現する目的の一つは、既存の米軍ヘリにも軽易に費用対効果に見合った自動操縦システムを付加可能なハード&ソフト開発であり、DARPAとSikorsky社の約180億円をかけた6年間の共同研究は、その面でも着実に成果を上げているようです

これら多様な自動操縦技術は、UH-60後継ヘリの開発にも当然活用され、「将来長距離攻撃ヘリ:FLRAA:future long-range assault aircraft」(過去記事参照)などにも組み込まれると考えられています

UH-60後継検討について
「米陸軍UH-60後継の長距離攻撃ヘリの選定開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-13
「米陸軍ヘリは無人化でなく自動化推進の方向か!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-11
「UH-60後継を意識した候補機開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-06-16

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対中国行動特化の空母カールビンソンを分析 [Joint・統合参謀本部]

対中東から対中国に変化した空母の状況を概観する
“air wing of the future.”空母の先駆者としての視点でも
11月末から5件連続事故の背景は?

Carl Vinson4.jpg2月14日付Defense-Newsが、2月14日に8か月の航海を終えサンディエゴに帰港した空母カールビンソンの活動を振り返り、対中国に特化した米空母の活動の特徴と、同時に初のF-35C搭載など“air wing of the future.”先駆者として位置付けられた同空母の様子を紹介しています

同空母は、昨年11月末から5件連続で艦載機関連の事故を起こした「心配な空母」としても軍事メディアが取り上げていましたが、その活動や艦載機の新たな取り組みに「様々なストレス」の原因があったようなことを示唆する記事となっていますので、3つの視点「艦載機数の増加」「対中国任務の特異性」「コロナ対策」からご紹介いたします

Carl Vinson3.jpgなお同空母は、出撃準備訓練を終了する直前の2021年6月に突然、ハワイ近海に出現したロシア艦隊対処のため同海域に急遽出動を命ぜられ、その対処後に改めて出撃準備訓練と練度チェックを受け8月に中東に向かいました。しかし途中で急遽米軍アフガン撤退があり、引き返す形で初の対中国任務専従として南シナ海やフィリピン海で6か月半継続活動することになった空母で、ハワイ出撃からカウントすると8か月240日余りの活動を行った空母です

記事は「昨年11月末から5件連続の艦載機事故」には一切触れず、3つの視点「艦載機数の増加」「対中国任務の特異性」「コロナ対策」から“air wing of the future.”たる同空母の任務航海を振り返るもので、「連続事故」と「様々なストレス」と「同空母のおかれた環境」を無理やり結び付けているのは、まんぐーすの完全な邪推ですのでご注意ください

1つ目の視点「艦載機数の増加」
F-35C.jpg●同空母にはF-35Cが初艦載されたが、1個飛行隊当たりの機数は14機と、従来の10機から増えており、将来これを20機する検討も海軍内で行われている。そのほかEA-18G電子戦機も2機増、E-2Dも1機増で、かつオスプレイCMB-22部隊も搭載されていた。将来的には艦載ヘリ機数削減を海軍は検討しているが、同空母艦長は必ずしも賛成ではないようだ
●F-35CはFA-18よりも小型だが、地上支援機材が大きく数量も必要で、甲板上の機体の取り回しは複雑になった。空母戦闘軍司令官や空母艦長は、「甲板での機体接触0件の滅多にない優秀な航海だった」と振り返ったが、攻撃能力強化を目指す中、艦載機増加方向で甲板上の運用は難しくなる

2つ目の視点「対中国任務の特殊性」
South China Sea.jpg●中東での戦いを空母が支援してきた過去20年間は、地上の陸軍や海兵隊部隊を艦載機からの地上攻撃で支援する任務が大半だったが、対中国任務は「プレゼンス」を示す行動と有事に備えた訓練が中心になる。空中や海上や水中に脅威の無い環境での対地攻撃任務が、脅威度の高いエリアでの緊張するプレゼンス飛行に変化したことは、乗員の心理的には大きな変化でありストレス源であろう
●同空母は南シナ海やフィリピン海で多くの時間を過ごしたが、特に南シナ海に入ると中国艦艇がすぐにエスコート監視に密着し、空母群艦艇は24時間の監視体制を強いられる。また25ノット以上の高速で航行を原則とし、中国艦艇に行動を読まれないよう不意の方向転換なども頻繁に行う点も、中東での行動と全く異なる

3つ目の視点「コロナ対処」
COVID-19.jpeg●同空母は約8か月間の任務行動の間に、コロナ感染を防ぐため、港に立ち寄っての乗員の休息と物資補給はわずか2回(グアムと横須賀各1回)しか行わなかった
●それでも2回の寄港後は、コロナ患者が艦内で急増し、2-3週間後には沈静化するとのパターンを繰り返したが、任務に支障をきたすほど感染者は増加しなかった
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中東での任務は脅威度も低く難しくない地上攻撃任務が中心で、かつ空母の戻れば比較的ゆったりとした航海がほとんどだったが、対中国派遣は常に緊張感を強いられ、これと言った具体的な任務があるわけではない「宙ぶらりんな毎日」で、かつ艦載機数が増えた甲板はストレスフルで・・・と言ったところでしょうか

ASBM DF-21D.jpg中東での対テロ作戦から、大国間の大規模紛争を予期した態勢への変換は、現場のストレスを増幅させ事故等の原因を生む出す点で、要注意な環境とも言えるでしょう

せめてコロナが収まって、東南アジアの寄港地での楽しみが戻らなければ、米海軍艦艇勤務希望者はますます少なくなるかもしれません

昨年11月末から5件連続で艦載機事故の同空母関連
1月24日には南シナ海でF-35C海没事故も
「南シナ海の米空母でF-35着陸失敗等事故5件相次ぐ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-26
「日本の海保がF-35C海没場所公示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-01

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2022年も米空軍輸送機で陸自空挺団540名が降下訓練 [Joint・統合参謀本部]

昨年の「Airborne 21」に続いてご紹介
今年は映像付きです!!!
日米共同の力を示し「抑止力」強化に地道な努力

Airborne 22.jpg1月31日付米空軍公式webサイトが、1月25日から26日に日本で実施された「Airborne 22」演習を取り上げ、米空軍横田基地所属のC-130輸送機など13機が、陸上自衛隊第1空挺団の大規模空挺降下訓練を支援し、陸自空挺隊員540名と100個の梱包装備品パッケージを、横田基地から富士演習場に無事輸送&投下したと紹介しています

昨年「Airborne 21」として3月上旬に実施され、米空軍公式webサイトが「日米間で行われた史上最大の兵員&物資空挺投下」、横田基地第374空輸航空団が数か月前から機体整備計画を調整し「最大出撃態勢」で支援したと紹介した日米共同訓練のビックイベントでしたが、2022年もウクライナで国際情勢が緊迫する中、昨年とほぼ同規模で実施されています

Airborne 22 3.JPG細部を見れば、2021年は横田基地所属機12機のみで空挺降下を支援しましたが、2022年は横田基地所属機11機に加え、テキサス州Dyess空軍基地所属機2機が応援に駆け付け、計13機体制でこの空挺訓練支援を遂行しています

演習の流れも昨年と同様で、1日目の1月25日に約540名の陸自第1空挺隊員を横田基地から「Camp Fuji」の降下ゾーンに輸送&投下し、翌26日には「水・燃料・食料・弾薬」を想定した補給物資パッケージ約100個を同じエリアに投下しています

「USA Military Channel 2」が紹介の13分半の映像


今年の「Airborne 22」について記事は参加部隊の声を報じていませんが、昨年は「保有機の80%以上の12機を出撃可能態勢」とするため相当入念な準備を要した横田輸送機部隊にとっての1大イベントで、「この演習を通じ、多数機を数日間にわたり連続出撃させる経験を積むことができた。しかも日本との共同演習で、比類なき抑止力能力を示すことができた」と指揮官の言葉を伝えていました

Airborne 22 4.jpg日米間の作戦計画に、米空軍C-130部隊による陸自空挺団の輸送支援が含まれているとは考えにくく、また日本を取り巻く戦略&戦術環境で、第1空挺団が空挺降下して活躍する場面が思い浮かばないのですが、西太平洋地域で中国に押されっぱなしの日米両軍ですから、抑止力強化のため・・・との表現になるのでしょう

相対的戦力では対中国で厳しい状態にある西太平洋地域ですが、地道な努力が続いていますので、現場の隊員の皆さんの努力に敬意を表し、今年も「Airborne 22」演習をご紹介しました

昨年の同演習と横田C-130関連記事
「米空軍C-130部隊が総力で陸自空挺団500名降下支援」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-14
「横田のC-130はH型からJ型へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-07-07
「横田C-130部隊も富士山が好き」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-06-12-1

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中東海域で60か国がAI活用海洋演習実施中 [Joint・統合参謀本部]

AIや機械学習や無人システムで海洋SA向上や救難救助に
中東、欧州、アフリカ、南米、アジア、日本、国際警察、国連機関、NATO期間から60海軍組織か

M-east EX2.jpg2月2日付Defense-Newsが、1月31日から2月17日まで中東海域で開催される「International Maritime Exercise 2022」&「Cutlass Express 2022」合同演習を紹介し、AIや機械学習技術に無人システムを活用した海洋状況掌握や捜索救難が主要訓練項目になると取り上げています

演習を主導するのは、第5艦隊隷下に最近設置された新設されAIや無人システムを海洋作戦に導入する任務を負った「Task Force 59」で、2020年12月にプランニングを開始した当初は、「無人システム」の取り込みを想定していなかったそうですが、昨年半ばから構想に取り入れたことで参加国の関心がより一層高まったと語っています

M-east EX3.jpg演習海域はペルシャ湾、アラビア海、紅海、オマーン湾、北インド洋で、第5と第6艦隊担当海域両方にまたがっており、これら海域を東西南北の4つのエリア「task group」に区分し、5つ目の「Task Force X」が一手にAIや機械学習や無人システム統制運用する編成で演習は進められるようです

参加60か国から、9000名と有人艦艇50隻、更には60機の無人システムが参加すると発表され、外交関係のないイスラエルとサウジが同時に参加することでも注目を集めているようです

演習の細部については、作戦運用上の非公開事項とされていますが、演習計画担当のTom McAndrew米海軍少佐は、演習の主要テーマを2つ掲げ、概要以下のように説明しています

●AIと機械学習を活用した海洋状況把握
例えば、1枚の写真からでは把握できる状況は限られているが、他のセンサーや艦艇や航空機やSNSからの情報、更に無人システムからの情報を加味すれば、そして情報をAIや機械学習を活用して取捨選別&整理&融合できれば、エリア担当指揮官の作戦運用に資するよりクリアーな情報として提供可能となる

●捜索救難
Saildrone.jpg無人システムをまとまった数で継続的に配置できれば、有人アセットのみでの捜索救難活動より迅速&正確に遂行可能と考えられ、特定の無人システムは有人アセット到着までの間の人命支援も可能となるだろう

●今回の演習には、全ての参加国が無人システムを持ち込むわけではないが、演習データは公開データとして参加国全てが共有可能とするので、全参加者が無人システムとAIと機械学習を組み合わせた効果を体感できるだろう。ちなみに10か国が無人の空・水上・水中アセットを参加させる予定
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参画国のリストは以下ですが、中東、欧州、アフリカ、南米、アジア(日本・韓国含む)、オセアニアの各国海軍のほか、インターポール(国際刑事機構)、国連機関、NATO下部組織、米援助機関など60団体の海軍組織が名を連ねています。
https://www.dvidshub.net/graphic/18822/imx-ce-22-participant-list

中東を舞台にする理由が良くわかりませんが、この手の能力を必要とする途上国が参加しやすいとか、天候が安定しているとか、無人システムを運用する太陽光が得られやすいからとか、そんな理由でしょうか? 「Task Force 59」が第5艦隊隷下で編成された理由が気になるところです

2021年12月に「Task Force 59」が開始した試験
「米海軍がセール(帆)で進む無人水上艇を吟味中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-14

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1年半遅れで約2年ぶりに攻撃原潜完成へ [Joint・統合参謀本部]

戦略原潜を優先し、攻撃原潜の建造を後回し
今後は新人や経験浅い作業員を鍛えて巻き返し目指すと
しかし強制削減の影響で優先の戦略原潜も万全ではなく

Graney.jpg1月24日、米海軍潜水艦を担当するGeneral Dynamics Electric Boat社のKevin Graney会長が、約1年半遅れでヴァージニア級攻撃原潜「Oregon」が2月に完成すると語り、米海軍の戦略原潜コロンビア級1番艦優先の方針のもとで「二の次」扱いされながらも、コロナ感染や人員不足や予算強制削減による各種制約を乗り越え、完成にこぎつけた造船所の現状を語りました

ヴァージニア級攻撃原潜「Oregon」は、もともとは2020年秋に米海軍へ引き渡し予定でしたが、それが16か月遅れで今年2月に実現する見通しが立ったとの同会長の発言です

Virginia-class2.jpg「Oregon」について同会長は、2021年12月に試験航海を行い、多少いくつかの細かな修正箇所が見つかったものの、最重要な推進装置は完璧な状態であることが確認できたと述べ、2月の引き渡しに自信を示しています

ただ約1年半の納入遅延については米海軍の方針に沿ったものだと言わんばかりに、「コロンビア級戦略原潜の1番艦建造を計画通りに遂行するため、幾らかの社内リソースをヴァージニア級攻撃原潜から引き揚げて投入した」、「現時点では(攻撃原潜計画が順調に進み、人手も充足できているので、)新たな人材等のリソースを攻撃原潜にも投入できると考えており、次の攻撃原潜Montanaにも取り組める」と語っています

Graney2.jpg攻撃原潜「Oregon」の遅延とコロナの関係について同会長は、現場従業員の86%が強制なしにワクチン接種2回を完了しているが、オミクロン株の影響もあり、11月の感謝祭以降の8週間で、コロナ感染者の4割が発生する事態となっており、特に監督者レベルの職員に影響が出て建造作業に遅れが出たが、状況は日々改善に向かっており、1-2週間で「森を抜けられる」と説明しています

一方で米海軍優先事業のコロンビア級戦略原潜ですが、2027年米海軍へ納入、2030年初の任務投入を目指し、現時点で計画より約15%先行的に進んでいると語っていますが、予算の強制削減枠のため、2021年度は5500億円要求したにもかかわらず5000億円しか予算が獲得できず、2022年度の積み残しが出ていると米海軍は訴えているところです
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Virginia-class submarine2.jpg最近、予算の強制削減枠についての発言が、国防長官以下の国防省高官から増えています。2023年度予算案議会提出に向けたアピールでしょうが、「良くて横ばい」となっている昨今の国防予算からすれば、国防省の悩みは深刻です

もちろん、新規装備の価格高騰と開発遅延による開発費の高騰など、悪しき伝統を引き継ぐ米軍側の責任も重いのですが、特に米海軍の問題は根深く、開発案件から、造船所の人員不足と練度低下、部隊での事故・火災、汚職問題などの規律維持問題など、オールラインアップの課題を抱えています

米海軍の関連記事
「女性艦長で空母初出撃!」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-05
「6年遅れで空母フォード完成へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-26
「潜水艦への極超音速兵器」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-19
「レールガン開発断念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-06
「3大近代化事業を一つに絞れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-09
「無人システム構想が酷評される」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-22
「米空母と潜水艦修理の75%が遅延」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-22
「潜水艦も無人化を強力推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-03
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇推進案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「F-35搭載用強襲揚陸艦火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15
「コロナで艦長と海軍長官更迭の空母」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-27
「NGADの検討進まず」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-17
「米海軍トップ確定者が急きょ辞退退役へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-09

艦艇建造&修理の大問題
「空母や艦艇修理の3/4が遅延」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-22
「空母故障で空母なしで出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-16
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09

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