5年連続で米空軍はパイロット養成目標未達成 [米空軍]
昨年6月に空軍トップは不足状況悪化は下げ止まり発言も
専門家は目標達成は当面無理と
18日付Military.comは米空軍発表情報として、米空軍が目標としているパイロット養成数を5年連続で達成できなかったと報じ、専門家の見方として、当面目標数を達成できる見込みはないとも伝えています
米空軍は、給与面や海外派遣が長期化していることなどを背景に、パイロット需要が旺盛な民間航空会社への空軍操縦者の流出が止まらず、パイロットポストの約2割と言われる約2000名の操縦者が不足する厳しい状態にあり、数年前から多様な対策に取り組んでいるところです
米空軍参謀総長は昨年6月に具体的数値には触れずに、パイロット希望者の身体検査基準緩和、継続勤務者へのボーナス増額、司令部等の幕僚勤務削減による飛行機会の増加、パイロット勤務基地内外の学校の質向上(子弟教育環境の改善)、民間航空会社への引き抜き自粛要請などなどの対策により、課題が「leveled offした」とか「slightly uphillな方向だ」との表現で、改善の兆しが見えてきたと発言していました
しかし今回明らかになった具体的数字によれば、確かに改善の方向にあると言えなくもないが、明るい見通しとはいえない実態が伺えます
18日付Military.com記事によれば
●米空軍が明らかにしたところによれば、米空軍が2020年度末(2020年9月末)までに計画していた年間の操縦者育成目標数1480名は達成が困難となり、およそ1300名となる模様である。米空軍は約1300名の機種別の数など細部は明らかにしていない
●パイロット不足に対応するため、パイロット養成数を拡大すると当時のWillson空軍長官は2018年10月に議会で証言し、2019年度には前年の養成数1160名から1311名に養成数を増やすと宣言したが、結果として1279名養成に終わっている。今年度も1300名程度とすれば、養成数を2022年までに1500名にするとの目標の達成は困難と言わざるを得ない
●米空軍は、2016年度末の時点で1279名操縦者が不足していると明らかにし、2017年度末にはその不足数が約2000名に増加し、種々の対策にもかかわらず2019年度末時点でも1937名の不足状態にあるとしてきた
●米空軍報道官は、「引き続き複数の対策で操縦者養成数増加に取り組むとともに、現在所属している操縦者の慰留に努め、健全な操縦者数への回復を図る。米空軍は操縦者不足数の拡大を食い止めたが、パイロット不足を解消するため、今後数年にわたって取り組んでいく」とコメントしている
●一方で、外部の専門家は、2022年までに年間1500名操縦者を養成するとの米空軍の目標は、難しいとみている
●官民の操縦者養成と融合に世界規模で対応してきた企業CAEの社長経験者であるGene Colabatistto氏は、「操縦者希望者や候補者となりえる母体が十分に存在しない現状では、操縦者養成数や米空軍のパイロット不足を劇的に改善する環境にはない」と述べ、
●更に、「良い航空機や良いシミュレータを導入したり、良い教官を準備しても、問題の解決にはならないだろう。操縦者が使用する航空機や技術の問題ではない」、「システムの問題だ。人を引き付けなくてはならない。一般的にパイロットになりたいと考えている人はいるはずだ。人を引きつkられなければ成功しない」とコメントしている
PTN(Pilot Training Next)について
●米空軍は2018年から、新たな操縦者トレーニング法(PTN:Pilot Training Next)に取り組み始めており、そこではバーチャル環境での訓練を重視し、操縦者を目指す訓練生だけでなく、米空軍全体として今後重視する「virtual reality and simulator」訓練技術に習熟することも狙っている
●2021年度予算では、このPTNに関する予算が約30億円案に計上されており、更なる質の向上に向けた研究開発と評価に投入される予定だ
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Gene Colabatistto氏の発言の真意が不明ですが、人の募集要領が悪いと言いたいのかもしれません。原文は「"It's a system issue," he said. "You have to attract people, and they want to become pilots in general. Otherwise ... you'll never succeed."」です
昨年6月空軍参謀総長は、パイロット不足の最大の問題は、「quality of service:勤務の質」改善が不十分な点だと表現し、「勤務の質を如何に改善し、パイロットの期待にこたえられるかにかかっている」、「パイロットは飛ぶために空軍に所属しているが、軍の航空部隊に所属する要員にふさわしい戦う能力と、最大限に能力を伸ばし鍛える場を如何に与えるかを考えねばならない」、「各飛行隊が部隊のメンバー一人一人を巻き込んで活動し、各構成員が組織内で役に立っているとか、存在意義を感じられるような組織になるよう取り組んでいる」とも表現し、飛行隊長クラスのリーダーシップの重要性を強調しています
でも・・・、それも大事でしょうけど・・・。パイロットの代表格で、パイロット志願者のほとんどが目指す戦闘機パイロットが夢見る空中戦は、ベトナム戦争が最後で、あとは偶発的な事案程度です。
前線での「戦闘機の役割」がなくなり、単に空中で待機や哨戒して爆撃機や偵察機を援護する退屈な任務ばかりになっていることも大きな背景ではないでしょうか。戦い方が変化し、戦闘機の役割が低下していることも、大きな要因ではないかと思います
米空軍パイロット不足関連
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18
「操縦者不足緩和?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-12
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3
「下士官パイロット任務拡大?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-22
「仮想敵機部隊も民間委託へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-09-1
「さらに深刻化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-10
「世も末:幕僚勤務無し管理検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-20
専門家は目標達成は当面無理と
18日付Military.comは米空軍発表情報として、米空軍が目標としているパイロット養成数を5年連続で達成できなかったと報じ、専門家の見方として、当面目標数を達成できる見込みはないとも伝えています
米空軍は、給与面や海外派遣が長期化していることなどを背景に、パイロット需要が旺盛な民間航空会社への空軍操縦者の流出が止まらず、パイロットポストの約2割と言われる約2000名の操縦者が不足する厳しい状態にあり、数年前から多様な対策に取り組んでいるところです
米空軍参謀総長は昨年6月に具体的数値には触れずに、パイロット希望者の身体検査基準緩和、継続勤務者へのボーナス増額、司令部等の幕僚勤務削減による飛行機会の増加、パイロット勤務基地内外の学校の質向上(子弟教育環境の改善)、民間航空会社への引き抜き自粛要請などなどの対策により、課題が「leveled offした」とか「slightly uphillな方向だ」との表現で、改善の兆しが見えてきたと発言していました
しかし今回明らかになった具体的数字によれば、確かに改善の方向にあると言えなくもないが、明るい見通しとはいえない実態が伺えます
18日付Military.com記事によれば
●米空軍が明らかにしたところによれば、米空軍が2020年度末(2020年9月末)までに計画していた年間の操縦者育成目標数1480名は達成が困難となり、およそ1300名となる模様である。米空軍は約1300名の機種別の数など細部は明らかにしていない
●パイロット不足に対応するため、パイロット養成数を拡大すると当時のWillson空軍長官は2018年10月に議会で証言し、2019年度には前年の養成数1160名から1311名に養成数を増やすと宣言したが、結果として1279名養成に終わっている。今年度も1300名程度とすれば、養成数を2022年までに1500名にするとの目標の達成は困難と言わざるを得ない
●米空軍は、2016年度末の時点で1279名操縦者が不足していると明らかにし、2017年度末にはその不足数が約2000名に増加し、種々の対策にもかかわらず2019年度末時点でも1937名の不足状態にあるとしてきた
●米空軍報道官は、「引き続き複数の対策で操縦者養成数増加に取り組むとともに、現在所属している操縦者の慰留に努め、健全な操縦者数への回復を図る。米空軍は操縦者不足数の拡大を食い止めたが、パイロット不足を解消するため、今後数年にわたって取り組んでいく」とコメントしている
●一方で、外部の専門家は、2022年までに年間1500名操縦者を養成するとの米空軍の目標は、難しいとみている
●官民の操縦者養成と融合に世界規模で対応してきた企業CAEの社長経験者であるGene Colabatistto氏は、「操縦者希望者や候補者となりえる母体が十分に存在しない現状では、操縦者養成数や米空軍のパイロット不足を劇的に改善する環境にはない」と述べ、
●更に、「良い航空機や良いシミュレータを導入したり、良い教官を準備しても、問題の解決にはならないだろう。操縦者が使用する航空機や技術の問題ではない」、「システムの問題だ。人を引き付けなくてはならない。一般的にパイロットになりたいと考えている人はいるはずだ。人を引きつkられなければ成功しない」とコメントしている
PTN(Pilot Training Next)について
●米空軍は2018年から、新たな操縦者トレーニング法(PTN:Pilot Training Next)に取り組み始めており、そこではバーチャル環境での訓練を重視し、操縦者を目指す訓練生だけでなく、米空軍全体として今後重視する「virtual reality and simulator」訓練技術に習熟することも狙っている
●2021年度予算では、このPTNに関する予算が約30億円案に計上されており、更なる質の向上に向けた研究開発と評価に投入される予定だ
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Gene Colabatistto氏の発言の真意が不明ですが、人の募集要領が悪いと言いたいのかもしれません。原文は「"It's a system issue," he said. "You have to attract people, and they want to become pilots in general. Otherwise ... you'll never succeed."」です
昨年6月空軍参謀総長は、パイロット不足の最大の問題は、「quality of service:勤務の質」改善が不十分な点だと表現し、「勤務の質を如何に改善し、パイロットの期待にこたえられるかにかかっている」、「パイロットは飛ぶために空軍に所属しているが、軍の航空部隊に所属する要員にふさわしい戦う能力と、最大限に能力を伸ばし鍛える場を如何に与えるかを考えねばならない」、「各飛行隊が部隊のメンバー一人一人を巻き込んで活動し、各構成員が組織内で役に立っているとか、存在意義を感じられるような組織になるよう取り組んでいる」とも表現し、飛行隊長クラスのリーダーシップの重要性を強調しています
でも・・・、それも大事でしょうけど・・・。パイロットの代表格で、パイロット志願者のほとんどが目指す戦闘機パイロットが夢見る空中戦は、ベトナム戦争が最後で、あとは偶発的な事案程度です。
前線での「戦闘機の役割」がなくなり、単に空中で待機や哨戒して爆撃機や偵察機を援護する退屈な任務ばかりになっていることも大きな背景ではないでしょうか。戦い方が変化し、戦闘機の役割が低下していることも、大きな要因ではないかと思います
米空軍パイロット不足関連
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18
「操縦者不足緩和?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-12
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3
「下士官パイロット任務拡大?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-22
「仮想敵機部隊も民間委託へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-09-1
「さらに深刻化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-10
「世も末:幕僚勤務無し管理検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-20
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