次期大統領専用機は2024年予定から2-3年遅れ [米空軍]
下請け業者の能力不足が原因と米空軍は説明も
ボーイング幹部は「受けるべきではなかった仕事」と正直に
トランプ大統領が値切って売れ残り機を購入改修決めた案件
5月19日、米空軍省のAndrew Hunter技術調達担当次官補が下院軍事小委員会で証言し、2017年に導入決定し2024年納入を予定していた2機の次期大統領専用機「VC-25B」について、ボーイング下請け業者の業務遅延と業者変更などにより、納入が2-3年遅れると説明しました。これで次の大統領選挙後に納入されることとなり、バイデン大統領が使用できるかは不透明になりました。
同次官補は議会で「ボーイングは新たなスケジュールで機体を完成してくれると信じている」と証言していますが、
一方のボーイングCEO(Dave Calhoun 2020年1月就任)は本事業について、現在のインフレ状況や高い技術的要求事項、更にトランプ大統領との交渉経緯等を踏まえつつ、「極めてユニークなタイミングで、極めてユニークな交渉を経て、極めてユニークな一連のリスクを抱えた事業であり、ボーイングが受けるべきではなかった仕事だと思う」と本音をぶちまけており、「お先真っ暗」感が漂っています
まぁ、同社が国防分野で抱えるコスト超過額「約1500億円」の、約半分「約750億円」をこの大統領専用機事業が生み出しているのですから、同CEO就任前に決まったお荷物事業に「捨て台詞」を吐きたい気持ちもわからなくはありませんが・・・
現在の大統領専用機(通称Air Force One)はB747-200型機を改良し、核爆発による電磁パルス対処能力、ミサイル警報&対処装置、各種指揮通信設備等々を付加した「VC-25A」2機ですが、1990年に導入された老朽機であることから、オバマ政権時の2015年にB747-8型機改良型を3機導入することを決定しました
しかしその後、2017年8月にトランプ大統領が経費削減のためボーイングと得意の「ディール」を行い、3機の内の2機は、発注した航空会社の経営破綻でボーイングが保管していた機体を購入&改修する方向に改め、改修費込みで当初見積より1500億円程度安価な約4200億円で2機を獲得し、「VC-25B」として2024年に引き渡す契約を結びました
新しいB747-8型機改良型の「VC-25B」は、現在の「VC-25A」より全長が5.5m長い76.2mで、速度や燃費や航続距離面でも大きく改善されると言われていますが、大統領専用機としての細部設備の改良部分や新規付加能力については、あまり公表されていません
19日付Defense-News記事によればHunter次官補は議会で
●遅延の主な原因は、主担当企業ボーイングが機内仕様改修を依頼した下請け企業の能力不足で改修が完了しなかったことにあり、ボーイングは担当企業を入れ替え、一部を自社が担当することとして改修計画を練り直した。
●結果的に、老朽化して維持が難しくなりつつある現在の「VC-25A」を、より長期間運用する必要が生じるため、2024年度予算で関連経費をお願いすることになる
●(4月にWSJが改修遅延を初めて報じ、ボーイングは17か月遅れと説明したが、米空軍は2年遅延を予期しているとの記事が出たが、議会への説明が遅いとの関する下院議員からの指摘に対し、)下請け業者の問題は少し前から把握していたが、この種の問題の場合、全体スケジュールへの影響を把握して見積もるには時間が必要だった
///////////////////////////////////////////////
「VC-25B」の原型となるB747-8型旅客機の価格は、ググった結果の概算で1機300億円程度ですから、改修費を含めて2機で「約4200億円」とは、どれだけすごい大統領専用機用の装備を搭載するのか・・・と考えてしまいます。
4月後半にボーイング社と米空軍の間には、「空中給油機KC-46のRVS改修設計合意」や「KC-46をKC-YやZに」とのボーイングが喜びそうな発表が続き、追加でボーイング製「E-7 Wedgetail」の購入まで突然公表になるなど、ボーイング支援とも見える動きが重なり、直後にボーイングの業績不振発表が株式市場で話題となったところでした
そんな背景の一つに、800億円ものコスト負担増につながる次の大統領専用機「VC-25B」のトラブルが存在していると考えられます
最近のボーイングと米空軍
「E-3後継にE-7導入決定」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「KC-46のRVS改修に両社が合意」→https://holylandtokyo.com/2022/04/27/3181/
「KC-46をKC-YやKC-Zにも」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/
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ボーイング幹部は「受けるべきではなかった仕事」と正直に
トランプ大統領が値切って売れ残り機を購入改修決めた案件
5月19日、米空軍省のAndrew Hunter技術調達担当次官補が下院軍事小委員会で証言し、2017年に導入決定し2024年納入を予定していた2機の次期大統領専用機「VC-25B」について、ボーイング下請け業者の業務遅延と業者変更などにより、納入が2-3年遅れると説明しました。これで次の大統領選挙後に納入されることとなり、バイデン大統領が使用できるかは不透明になりました。
同次官補は議会で「ボーイングは新たなスケジュールで機体を完成してくれると信じている」と証言していますが、
一方のボーイングCEO(Dave Calhoun 2020年1月就任)は本事業について、現在のインフレ状況や高い技術的要求事項、更にトランプ大統領との交渉経緯等を踏まえつつ、「極めてユニークなタイミングで、極めてユニークな交渉を経て、極めてユニークな一連のリスクを抱えた事業であり、ボーイングが受けるべきではなかった仕事だと思う」と本音をぶちまけており、「お先真っ暗」感が漂っています
まぁ、同社が国防分野で抱えるコスト超過額「約1500億円」の、約半分「約750億円」をこの大統領専用機事業が生み出しているのですから、同CEO就任前に決まったお荷物事業に「捨て台詞」を吐きたい気持ちもわからなくはありませんが・・・
現在の大統領専用機(通称Air Force One)はB747-200型機を改良し、核爆発による電磁パルス対処能力、ミサイル警報&対処装置、各種指揮通信設備等々を付加した「VC-25A」2機ですが、1990年に導入された老朽機であることから、オバマ政権時の2015年にB747-8型機改良型を3機導入することを決定しました
しかしその後、2017年8月にトランプ大統領が経費削減のためボーイングと得意の「ディール」を行い、3機の内の2機は、発注した航空会社の経営破綻でボーイングが保管していた機体を購入&改修する方向に改め、改修費込みで当初見積より1500億円程度安価な約4200億円で2機を獲得し、「VC-25B」として2024年に引き渡す契約を結びました
新しいB747-8型機改良型の「VC-25B」は、現在の「VC-25A」より全長が5.5m長い76.2mで、速度や燃費や航続距離面でも大きく改善されると言われていますが、大統領専用機としての細部設備の改良部分や新規付加能力については、あまり公表されていません
19日付Defense-News記事によればHunter次官補は議会で
●遅延の主な原因は、主担当企業ボーイングが機内仕様改修を依頼した下請け企業の能力不足で改修が完了しなかったことにあり、ボーイングは担当企業を入れ替え、一部を自社が担当することとして改修計画を練り直した。
●結果的に、老朽化して維持が難しくなりつつある現在の「VC-25A」を、より長期間運用する必要が生じるため、2024年度予算で関連経費をお願いすることになる
●(4月にWSJが改修遅延を初めて報じ、ボーイングは17か月遅れと説明したが、米空軍は2年遅延を予期しているとの記事が出たが、議会への説明が遅いとの関する下院議員からの指摘に対し、)下請け業者の問題は少し前から把握していたが、この種の問題の場合、全体スケジュールへの影響を把握して見積もるには時間が必要だった
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「VC-25B」の原型となるB747-8型旅客機の価格は、ググった結果の概算で1機300億円程度ですから、改修費を含めて2機で「約4200億円」とは、どれだけすごい大統領専用機用の装備を搭載するのか・・・と考えてしまいます。
4月後半にボーイング社と米空軍の間には、「空中給油機KC-46のRVS改修設計合意」や「KC-46をKC-YやZに」とのボーイングが喜びそうな発表が続き、追加でボーイング製「E-7 Wedgetail」の購入まで突然公表になるなど、ボーイング支援とも見える動きが重なり、直後にボーイングの業績不振発表が株式市場で話題となったところでした
そんな背景の一つに、800億円ものコスト負担増につながる次の大統領専用機「VC-25B」のトラブルが存在していると考えられます
最近のボーイングと米空軍
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米陸軍が射程1000マイルの巨砲開発中止 [Joint・統合参謀本部]
東京から上海を攻撃可能な長射程砲構想だったが
他開発案件との重複回避や費用対効果の観点から
2021年3月から外部有識者評価待ち開発中断中
5月23日付Defense-Newsは、米陸軍が2019年1月に開発中と明らかにしていた射程1000nmの大砲「SLRC:Strategic Long-Range Cannon」プログラムについて、米陸軍報道官から「米議会からの指示や予算の最適分配や装備開発の重複を避けるため、開発中断を決断した」との連絡を受けたと報じました
この東京から上海の目標を攻撃可能な射程1000nmの大砲SLRC開発は、中国A2AD網の範囲拡大を受け、米陸軍の遠方攻撃能力強化のため当時のエスパー陸軍長官が明らかにしたものです。
ただ発表当時においてもMcConville米陸軍参謀総長は、「SLRCが開発成功すれば、(極超音速兵器のように)1発何億もせず、1発4-5000万円程度に収まると考えられる。コストがポイントで、そこが気になっている。コストが課題だ。陸軍は革新を追求しているが、段階ごとに成果を確認し、目標が達成できなければ進めない」と、費用対効果のトレードオフに着目していると語っていたところです
その後2021年の3月に米陸軍は、2021年中に外部有識者がまとめる予定だった「National Academy of Sciences report」におけるSLRCの実現可能性等に関する分析評価を待って、SLRC開発の継続を判断するとし、開発を一時中断すると発表しました。
ただ、2020年9月開始の「National Academy・・・」関連会議は、2021年1月に5回目の検討会議を行った後は動きがなく、2021年中予定だったレポートも発表されていない状態が続いていたようです
米陸軍は重視する長射程兵器開発において、SLRC以外にも2023年部隊配備を狙って4つのプロジェクト(Extended Range Cannon Artillery (ERCA)、Long-Range Hypersonic Weapon (LRHW),、Mid-Range anti-ship Missile (MRC) 、Precision Strike Missile (PrSM))を走らせており、米議会からも2022年度予算議論の過程でSLRCは中止すべきと勧告を受けていたところでした
また5月16日の週の下院予算関連委員会でも、米陸軍省の開発担当次官が、「装備品開発の重複」と「コスト予想」を踏まえてSLRC開発を中止すると証言していた模様です
5月23日付Defense-News記事によれば陸軍報道官は
(20日付の文書でDefense-Newsに回答)
●潜在的な装備の重複を避け、装備近代化に税金を効率的に使用すべきとの観点から、科学技術面からの検討で実現可能との判断が出た場合でも、当該装備の製造や調達や部隊編成に数千億円を投じる必要が生じるSLRCを中止することを決定した
●当初SLRCに予算配分されていた予算については、陸軍開発担当次官室との調整を経て、他の継続する科学技術開発プロジェクトに再配分する
●科学技術開発フェーズ段階では、必要総コストの詳細な見積もりまでは行わないが、SLRC計画を陸軍長官が中止判断するに必要なコスト見積もりは行われている
////////////////////////////////////////////////
米陸軍はSLRCの基礎技術調査や技術開発や関連試験に、2021年度に約75億円を使用した後、2022年以降は投資していないとのことです
2019年10月に、当時のMcConville米陸軍参謀総長による「(極超音速兵器のように)1発何億もせず、1発4-5000万円程度に収まると考えられる。コストがポイント」との発言から類推すれば、1発4-5000万円程度に収まらなかったのかなぁ・・・・と邪推いたしております
または、1発4-5000万円程度に収まったとしても、米陸軍予算全体のやりくりから、開発継続が困難になったものと推測いたします。これまでに開発&確認された技術が、いつかどこかで再利用されることを祈念しつつ・・・
米陸軍の夢?SLRC関連の記事
「射程1000nm砲に慎重姿勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-10
「射程1000nm砲の第一関門」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
「射程1000nmの砲開発」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
米陸軍の遠方攻撃志向
「INFの呪縛を解かれ米陸軍PrSMが射程500㎞越え」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-23
「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-14
「米陸軍トップが長射程攻撃やSEADに意欲満々」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-12
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「海兵隊も2つの長射程ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
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他開発案件との重複回避や費用対効果の観点から
2021年3月から外部有識者評価待ち開発中断中
5月23日付Defense-Newsは、米陸軍が2019年1月に開発中と明らかにしていた射程1000nmの大砲「SLRC:Strategic Long-Range Cannon」プログラムについて、米陸軍報道官から「米議会からの指示や予算の最適分配や装備開発の重複を避けるため、開発中断を決断した」との連絡を受けたと報じました
この東京から上海の目標を攻撃可能な射程1000nmの大砲SLRC開発は、中国A2AD網の範囲拡大を受け、米陸軍の遠方攻撃能力強化のため当時のエスパー陸軍長官が明らかにしたものです。
ただ発表当時においてもMcConville米陸軍参謀総長は、「SLRCが開発成功すれば、(極超音速兵器のように)1発何億もせず、1発4-5000万円程度に収まると考えられる。コストがポイントで、そこが気になっている。コストが課題だ。陸軍は革新を追求しているが、段階ごとに成果を確認し、目標が達成できなければ進めない」と、費用対効果のトレードオフに着目していると語っていたところです
その後2021年の3月に米陸軍は、2021年中に外部有識者がまとめる予定だった「National Academy of Sciences report」におけるSLRCの実現可能性等に関する分析評価を待って、SLRC開発の継続を判断するとし、開発を一時中断すると発表しました。
ただ、2020年9月開始の「National Academy・・・」関連会議は、2021年1月に5回目の検討会議を行った後は動きがなく、2021年中予定だったレポートも発表されていない状態が続いていたようです
米陸軍は重視する長射程兵器開発において、SLRC以外にも2023年部隊配備を狙って4つのプロジェクト(Extended Range Cannon Artillery (ERCA)、Long-Range Hypersonic Weapon (LRHW),、Mid-Range anti-ship Missile (MRC) 、Precision Strike Missile (PrSM))を走らせており、米議会からも2022年度予算議論の過程でSLRCは中止すべきと勧告を受けていたところでした
また5月16日の週の下院予算関連委員会でも、米陸軍省の開発担当次官が、「装備品開発の重複」と「コスト予想」を踏まえてSLRC開発を中止すると証言していた模様です
5月23日付Defense-News記事によれば陸軍報道官は
(20日付の文書でDefense-Newsに回答)
●潜在的な装備の重複を避け、装備近代化に税金を効率的に使用すべきとの観点から、科学技術面からの検討で実現可能との判断が出た場合でも、当該装備の製造や調達や部隊編成に数千億円を投じる必要が生じるSLRCを中止することを決定した
●当初SLRCに予算配分されていた予算については、陸軍開発担当次官室との調整を経て、他の継続する科学技術開発プロジェクトに再配分する
●科学技術開発フェーズ段階では、必要総コストの詳細な見積もりまでは行わないが、SLRC計画を陸軍長官が中止判断するに必要なコスト見積もりは行われている
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米陸軍はSLRCの基礎技術調査や技術開発や関連試験に、2021年度に約75億円を使用した後、2022年以降は投資していないとのことです
2019年10月に、当時のMcConville米陸軍参謀総長による「(極超音速兵器のように)1発何億もせず、1発4-5000万円程度に収まると考えられる。コストがポイント」との発言から類推すれば、1発4-5000万円程度に収まらなかったのかなぁ・・・・と邪推いたしております
または、1発4-5000万円程度に収まったとしても、米陸軍予算全体のやりくりから、開発継続が困難になったものと推測いたします。これまでに開発&確認された技術が、いつかどこかで再利用されることを祈念しつつ・・・
米陸軍の夢?SLRC関連の記事
「射程1000nm砲に慎重姿勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-10
「射程1000nm砲の第一関門」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
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米陸軍の遠方攻撃志向
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米空軍電子戦を担う海軍EA-18Gが2025年退役でどうする [米空軍]
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空軍は依然として自己防御用中心で
電子攻撃はEC-130Hと開発中EC-37Bのみで限定的
ウクライナ支援で再び浮き彫りの米空軍電子戦懸念
5月13日付米空軍協会web記事が、ウクライナ事態対応のため独空軍基地に3月から展開中の米海軍EA-18G電子戦機の存在を紹介し、これを機会に改めて顕在化している米空軍電子戦能力の問題点について専門家の意見を取り上げています。
EA-18Gは、戦闘機タイプの航空アセットで攻防両方の強力な電子戦能力を持つ米軍唯一のアセットで、米空軍の要請に応じて支援提供覚書まで結んでいる機体ですが、米海軍の2023年度予算案で、空母搭載機体は引き続き残るものの、空軍など他軍種支援用機体が2025年には退役する計画が明らかになり、米空軍OBから懸念する声が上がっているところです
米空軍の戦闘・戦闘爆撃機タイプ電子戦機は、ワイルドウィーゼルF-4G Phantomが 1996年に退役、戦闘爆撃機改良のEF-111 Ravenも1998年に退役し、その要員も経験もノウハウも実質的に失われてしまいました。
その後はプロペラ輸送機改良のEC-130が電子戦機として残るのみで、近年になってビジネスジェット機を改良したEC-37B Compass Call電子戦専用機の開発が、2023年5機配備に向け進んでいますが、「米空軍にはステルス戦闘機やステルス爆撃機があるから大丈夫」との理屈で、使い捨て電子戦用デコイMALDの開発配備はありましたが、F-4G PhantomとEF-111 Raven後継機導入は具体化していません
もちろん空軍内にも導入待望論はあり、第6世代戦闘機とも次期制空機NGADとも呼ばれる戦闘機開発に関連し、2017年2月に当時のカーライルACC司令官は、NGADよりも同機を原型とした突破型電子戦機PEA(Penetrating Electronic Attack)が早期に導入されるだろう・・・とまで発言していました。(その後、戦闘機型電子戦機やPEAに関する報道を目にしていませんが)
そんな状況の中、ウクライナ侵略事案を受け、日本へローテーション派遣予定だった米海軍EA-18G(1-2機程度?)がドイツのSpangdahlem基地に急遽展開し、ルーマニアFetesti基地に展開中の米空軍F-16戦闘機等と共に、戦闘行為には参加せず、電子戦装備は「オフ」にしたまま「just maintaining our air policing and that defensive posture」している模様です。
米軍は戦闘行為には参加しないとの大原則の下、何もせずプレゼンスを示す「任務」との説明ですが、この展開を通じてEA-18Gの能力や米空軍の欠落能力に改めて関係者の問題意識が高まっている模様で、以下では懸念意見を代表して米空軍協会ミッチェル研究所研究部長David A. Deptula退役中将の見解でご紹介します
5月13日付米空軍協会web記事によれば
●ACC司令官Mark D. Kelly大将は、中国やロシアの電子戦優位を考えると安心して寝付けないと述べており、他にも電子戦装備導入や作戦構想作成が遅いとの懸念が空軍内から聞こえてくる。2021年6月に第350 Spectrum Warfare航空団が電磁スペクトラム戦担当に創設されはしたが・・・
●第5世代機のF-22やF-35は当初から電子戦装備が内蔵されているが、F-16には自己防御用のポッドが装備されているのみで、F-15C戦闘機にはHARM用の電子戦センサーが能力向上された程度で、またF-15用にEPAWSS(Eagle Passive Active Warning Survivability System)開発に取り組んでいるが、大部分は自己防御用の装備である。米空軍は基本的に自己防御用装備の維持や更新を行っているのみだ
●米空軍戦闘アセットの中で最新の電子戦装備を備えている機体は25%以下で、海軍EA-18Gとの覚書による支援体制も有事に十分機能するかは疑問である。米空軍が電子戦専用にを導入しないのは、「あてにならない米海軍との約束に依存:comes from empty promise from the other services」しているからだ
●米空軍は、ビジネスジェット機を改良したEC-37B Compass Call電子戦専用機を開発中で、2023年までに5機導入する計画であるが、これは敵のレーダー等センサーに妨害をかけて味方機が発見されるのを妨害して味方機の生存性を高める「防御用能力」が主で、現有のEC-130と共に電子攻撃(EA:Electromagnetic Attack)能力は引き続き限定的である
●米海軍は2023年度予算案で、空母搭載用以外のEA-18Gを2025年度までに退役させる計画を明らかにしたが、ウクライナ侵略事案が再びスポットライトを当てたように、電子線攻撃能力を含めた航空アセットによるSEAD能力(敵防御網制圧能力:suppression of enemy air defenses)は、全てのレベルの紛争対処に不可欠である
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米空軍戦闘コマンド司令官が「寝つきが悪い」と懸念するなら、中国最前線の日本は「真っ青になって慌てふためく」必要があると思いますが、どんな状況なんでしょうか?
F-2戦闘機の後継開発を、エンジンは英ロールスロイスと、ミサイルシステムなど電子戦分野も絡めて英BAE社と共同開発で行う方向らしいですが、統合レベルでの電子戦(電磁スペクトラム戦との呼称が最近の用語)についてもよくよく考えて進めて頂きたいと思います
米空軍とEA-18G関連の記事
「ステルス機VS EA-18G」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「米空軍電子戦を荒野から救出する」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-17-1
「米空軍の電子戦文化を担う」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-09-08
「空軍用に海軍電子戦機が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-09
「緊縮耐乏の電子戦部隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-29-1
「なぜ空母に8機必要か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2014-03-13
米国防省EW関連の記事
「SpaceXのウクライナ対処に学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「電子戦とサイバーと情報戦を融合目指す」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-03
「国防省EW責任者が辞任」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-19
「ACC司令官が語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-19
「米空軍がサイバーとISRとEwを統合」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3
「電子戦検討の状況は?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-13
「エスコート方を早期導入へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27
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空軍は依然として自己防御用中心で
電子攻撃はEC-130Hと開発中EC-37Bのみで限定的
ウクライナ支援で再び浮き彫りの米空軍電子戦懸念
5月13日付米空軍協会web記事が、ウクライナ事態対応のため独空軍基地に3月から展開中の米海軍EA-18G電子戦機の存在を紹介し、これを機会に改めて顕在化している米空軍電子戦能力の問題点について専門家の意見を取り上げています。
EA-18Gは、戦闘機タイプの航空アセットで攻防両方の強力な電子戦能力を持つ米軍唯一のアセットで、米空軍の要請に応じて支援提供覚書まで結んでいる機体ですが、米海軍の2023年度予算案で、空母搭載機体は引き続き残るものの、空軍など他軍種支援用機体が2025年には退役する計画が明らかになり、米空軍OBから懸念する声が上がっているところです
米空軍の戦闘・戦闘爆撃機タイプ電子戦機は、ワイルドウィーゼルF-4G Phantomが 1996年に退役、戦闘爆撃機改良のEF-111 Ravenも1998年に退役し、その要員も経験もノウハウも実質的に失われてしまいました。
その後はプロペラ輸送機改良のEC-130が電子戦機として残るのみで、近年になってビジネスジェット機を改良したEC-37B Compass Call電子戦専用機の開発が、2023年5機配備に向け進んでいますが、「米空軍にはステルス戦闘機やステルス爆撃機があるから大丈夫」との理屈で、使い捨て電子戦用デコイMALDの開発配備はありましたが、F-4G PhantomとEF-111 Raven後継機導入は具体化していません
もちろん空軍内にも導入待望論はあり、第6世代戦闘機とも次期制空機NGADとも呼ばれる戦闘機開発に関連し、2017年2月に当時のカーライルACC司令官は、NGADよりも同機を原型とした突破型電子戦機PEA(Penetrating Electronic Attack)が早期に導入されるだろう・・・とまで発言していました。(その後、戦闘機型電子戦機やPEAに関する報道を目にしていませんが)
そんな状況の中、ウクライナ侵略事案を受け、日本へローテーション派遣予定だった米海軍EA-18G(1-2機程度?)がドイツのSpangdahlem基地に急遽展開し、ルーマニアFetesti基地に展開中の米空軍F-16戦闘機等と共に、戦闘行為には参加せず、電子戦装備は「オフ」にしたまま「just maintaining our air policing and that defensive posture」している模様です。
米軍は戦闘行為には参加しないとの大原則の下、何もせずプレゼンスを示す「任務」との説明ですが、この展開を通じてEA-18Gの能力や米空軍の欠落能力に改めて関係者の問題意識が高まっている模様で、以下では懸念意見を代表して米空軍協会ミッチェル研究所研究部長David A. Deptula退役中将の見解でご紹介します
5月13日付米空軍協会web記事によれば
●ACC司令官Mark D. Kelly大将は、中国やロシアの電子戦優位を考えると安心して寝付けないと述べており、他にも電子戦装備導入や作戦構想作成が遅いとの懸念が空軍内から聞こえてくる。2021年6月に第350 Spectrum Warfare航空団が電磁スペクトラム戦担当に創設されはしたが・・・
●第5世代機のF-22やF-35は当初から電子戦装備が内蔵されているが、F-16には自己防御用のポッドが装備されているのみで、F-15C戦闘機にはHARM用の電子戦センサーが能力向上された程度で、またF-15用にEPAWSS(Eagle Passive Active Warning Survivability System)開発に取り組んでいるが、大部分は自己防御用の装備である。米空軍は基本的に自己防御用装備の維持や更新を行っているのみだ
●米空軍戦闘アセットの中で最新の電子戦装備を備えている機体は25%以下で、海軍EA-18Gとの覚書による支援体制も有事に十分機能するかは疑問である。米空軍が電子戦専用にを導入しないのは、「あてにならない米海軍との約束に依存:comes from empty promise from the other services」しているからだ
●米空軍は、ビジネスジェット機を改良したEC-37B Compass Call電子戦専用機を開発中で、2023年までに5機導入する計画であるが、これは敵のレーダー等センサーに妨害をかけて味方機が発見されるのを妨害して味方機の生存性を高める「防御用能力」が主で、現有のEC-130と共に電子攻撃(EA:Electromagnetic Attack)能力は引き続き限定的である
●米海軍は2023年度予算案で、空母搭載用以外のEA-18Gを2025年度までに退役させる計画を明らかにしたが、ウクライナ侵略事案が再びスポットライトを当てたように、電子線攻撃能力を含めた航空アセットによるSEAD能力(敵防御網制圧能力:suppression of enemy air defenses)は、全てのレベルの紛争対処に不可欠である
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米空軍戦闘コマンド司令官が「寝つきが悪い」と懸念するなら、中国最前線の日本は「真っ青になって慌てふためく」必要があると思いますが、どんな状況なんでしょうか?
F-2戦闘機の後継開発を、エンジンは英ロールスロイスと、ミサイルシステムなど電子戦分野も絡めて英BAE社と共同開発で行う方向らしいですが、統合レベルでの電子戦(電磁スペクトラム戦との呼称が最近の用語)についてもよくよく考えて進めて頂きたいと思います
米空軍とEA-18G関連の記事
「ステルス機VS EA-18G」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「米空軍電子戦を荒野から救出する」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-17-1
「米空軍の電子戦文化を担う」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-09-08
「空軍用に海軍電子戦機が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-09
「緊縮耐乏の電子戦部隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-29-1
「なぜ空母に8機必要か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2014-03-13
米国防省EW関連の記事
「SpaceXのウクライナ対処に学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「電子戦とサイバーと情報戦を融合目指す」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-03
「国防省EW責任者が辞任」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-19
「ACC司令官が語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-19
「米空軍がサイバーとISRとEwを統合」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-3
「電子戦検討の状況は?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-13
「エスコート方を早期導入へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27
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今後数か月でF-35エンジン換装是非に結論出す [亡国のF-35]
Kendall空軍長官が2024年度予算案検討過程で決定すると
米空軍レベルではなく国防省レベルの決定が必要と語る
現F135エンジン改修か、次世代AETP搭載か
NGAD用に開発の高価なAETPには他軍種も同盟国もしり込み
5月17日、Kendall空軍長官が上院予算関連委員会で証言し、エンジンブレードの早期劣化が発覚して故障が頻発しているF-35戦闘機のF135エンジン(Pratt & Whitney製)対策に関し、F135改修型導入か、次世代制空機NGAD用に開発中のAETP(Adaptive Engine Transition Program :GE AviationとP&W社が競いが開発中)を導入するか、他オプションを追求するか等の決定を、国防省レベルで2024年度予算案を取りまとめる今後数か月で決定する必要があると述べました
「問題は相当に複雑な状況にある」と慎重な表現を用いた同空軍長官は、具体的なコスト等には言及しませんでしたが、いかなる手段を選択しようとも、「従来と異なるものを求めるなら、そのコストは使用者が負担する必要がる」と国防省は明言しており、開発中のAETPなら「開発経費を含むコスト」を導入者が負担することになります
F135改修型導入、次世代制空機NGAD用に開発中のAETP導入、他オプションの特徴やコストについて、関連報道は触れていませんが、少なくとも最も高価と言われる開発中AETPについては、垂直離着陸B型には搭載できず、空母用C型用には更なる改修(+αの費用発生)が必要で、意向確認は行っていないようですが、米海軍や米海兵隊はもちろん、他のF-35導入国でも、現時点でAETP導入に同意した国はないと空軍長官は証言しています
最近数か月間、関係議員、空軍幹部、エンジン製造企業及び国防省F-35計画室はF-35エンジン問題と改修案について精力的に協議か行われていると記事は伝えていますが、細部はよくわかりません
記事はKendall長官が「空軍単独で進むことは考えない」と示唆したと紹介しつつも、現状について「米空軍と議会は興味を示している」、「一部議員が2027年からAETPを導入する法案を準備した」とも紹介しており、空軍の「腹の中」もよくわかりません
以下では「2024年度予算の国防省案を固める今後数か月で検討する必要がある」、「国防省レベルで判断してもらう必要がある」との意味深な発言をしているKendall長官の議会証言ぶりをご紹介します
17日付米空軍協会web記事によれば同長官は上院で
●F-35用エンジンのパフォーマンスを改善するオプションがいくつか存在するが、相当に複雑な状況にある
●(Susan Collins上院議員の質問に応え、)米軍の他軍種からも、他のF-35購入国からも、AETPエンジン導入の必要性については同意を得ていない
●米軍の他軍種も、他のF-35購入国も、それぞれの懐事情があり、要求性能も異なっている。米空軍は他の運用者や国と比較して、圧倒的に多くの機体を保有しており、本件に関する関心が高い
●一方で新型エンジン導入は、開発費を含めて大きなコスト負担を伴う。現在使用しているF135エンジン改修案は、より安価にエンジン性能を改善できる手段である。また中間的な他のオプションも存在している
●考慮・検討して判断すべき多くの要素があり、判断には広い視点からの熟慮が必要であり、いかなる現有F135エンジンからの変更も国防長官室が最終判断すべきと考えているが、我々が2024年度国防省予算案をまとめる今後数か月で判断が行われると予期している
●米空軍は次期制空機NGAD用にAETP技術開発に取り組んでおり、必要な予算を確保しているが、F-35エンジンの更新や改修判断は、極めて複雑な状況を踏まえより高いレベルでの判断が求められる
/////////////////////////////////////////
記事は、Kendall長官が「空軍単独で進むことは考えない」と示唆した(seemingly hinting that the Air Force won’t look to “go it alone” with their own separate effort)と描いていますが、米空軍の本音はどのあたりにあるのでしょうか?
AETPを米海軍や他国も含めて導入してくれれば、AETP開発費負担が分散でき、次期制空機NGADの価格(1機数百億になると同長官が)を少しでも抑えられるから、何とかF-35にAETPを搭載するオプションを追求出来ればと、米空軍は考えているかもしれません。
または、F-35にこれ以上資金投入は望まず、NGADや無人随伴機やB-21ステルス爆撃機や核抑止分野に資金を投入したいので、AETP派にも配慮してよいエンジンだと表現しつつも、国防省側で不採用決定してほしい・・との考えかもしれません
F-35のエンジン問題
「上院でエンジンとODIN議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「民間監視団体が酷評」→https://holylandtokyo.com/2022/03/25/2933/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/
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米空軍レベルではなく国防省レベルの決定が必要と語る
現F135エンジン改修か、次世代AETP搭載か
NGAD用に開発の高価なAETPには他軍種も同盟国もしり込み
5月17日、Kendall空軍長官が上院予算関連委員会で証言し、エンジンブレードの早期劣化が発覚して故障が頻発しているF-35戦闘機のF135エンジン(Pratt & Whitney製)対策に関し、F135改修型導入か、次世代制空機NGAD用に開発中のAETP(Adaptive Engine Transition Program :GE AviationとP&W社が競いが開発中)を導入するか、他オプションを追求するか等の決定を、国防省レベルで2024年度予算案を取りまとめる今後数か月で決定する必要があると述べました
「問題は相当に複雑な状況にある」と慎重な表現を用いた同空軍長官は、具体的なコスト等には言及しませんでしたが、いかなる手段を選択しようとも、「従来と異なるものを求めるなら、そのコストは使用者が負担する必要がる」と国防省は明言しており、開発中のAETPなら「開発経費を含むコスト」を導入者が負担することになります
F135改修型導入、次世代制空機NGAD用に開発中のAETP導入、他オプションの特徴やコストについて、関連報道は触れていませんが、少なくとも最も高価と言われる開発中AETPについては、垂直離着陸B型には搭載できず、空母用C型用には更なる改修(+αの費用発生)が必要で、意向確認は行っていないようですが、米海軍や米海兵隊はもちろん、他のF-35導入国でも、現時点でAETP導入に同意した国はないと空軍長官は証言しています
最近数か月間、関係議員、空軍幹部、エンジン製造企業及び国防省F-35計画室はF-35エンジン問題と改修案について精力的に協議か行われていると記事は伝えていますが、細部はよくわかりません
記事はKendall長官が「空軍単独で進むことは考えない」と示唆したと紹介しつつも、現状について「米空軍と議会は興味を示している」、「一部議員が2027年からAETPを導入する法案を準備した」とも紹介しており、空軍の「腹の中」もよくわかりません
以下では「2024年度予算の国防省案を固める今後数か月で検討する必要がある」、「国防省レベルで判断してもらう必要がある」との意味深な発言をしているKendall長官の議会証言ぶりをご紹介します
17日付米空軍協会web記事によれば同長官は上院で
●F-35用エンジンのパフォーマンスを改善するオプションがいくつか存在するが、相当に複雑な状況にある
●(Susan Collins上院議員の質問に応え、)米軍の他軍種からも、他のF-35購入国からも、AETPエンジン導入の必要性については同意を得ていない
●米軍の他軍種も、他のF-35購入国も、それぞれの懐事情があり、要求性能も異なっている。米空軍は他の運用者や国と比較して、圧倒的に多くの機体を保有しており、本件に関する関心が高い
●一方で新型エンジン導入は、開発費を含めて大きなコスト負担を伴う。現在使用しているF135エンジン改修案は、より安価にエンジン性能を改善できる手段である。また中間的な他のオプションも存在している
●考慮・検討して判断すべき多くの要素があり、判断には広い視点からの熟慮が必要であり、いかなる現有F135エンジンからの変更も国防長官室が最終判断すべきと考えているが、我々が2024年度国防省予算案をまとめる今後数か月で判断が行われると予期している
●米空軍は次期制空機NGAD用にAETP技術開発に取り組んでおり、必要な予算を確保しているが、F-35エンジンの更新や改修判断は、極めて複雑な状況を踏まえより高いレベルでの判断が求められる
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記事は、Kendall長官が「空軍単独で進むことは考えない」と示唆した(seemingly hinting that the Air Force won’t look to “go it alone” with their own separate effort)と描いていますが、米空軍の本音はどのあたりにあるのでしょうか?
AETPを米海軍や他国も含めて導入してくれれば、AETP開発費負担が分散でき、次期制空機NGADの価格(1機数百億になると同長官が)を少しでも抑えられるから、何とかF-35にAETPを搭載するオプションを追求出来ればと、米空軍は考えているかもしれません。
または、F-35にこれ以上資金投入は望まず、NGADや無人随伴機やB-21ステルス爆撃機や核抑止分野に資金を投入したいので、AETP派にも配慮してよいエンジンだと表現しつつも、国防省側で不採用決定してほしい・・との考えかもしれません
F-35のエンジン問題
「上院でエンジンとODIN議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「民間監視団体が酷評」→https://holylandtokyo.com/2022/03/25/2933/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/
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感涙:極東米海兵隊は「stand-in force」作戦を検討中 [Joint・統合参謀本部]
2021年12月発表「A Concept for Stand-In Forces」基に
同盟国等と共に中国A2AD域内で頑張る姿勢をセミナーで語る
まんぐーすは知りませんでした。てっきり長射程兵器のみ重視かと
でも構想の「Stand-in Forces」の実態からすると・・
5月11日、米海兵隊関連イベントで太平洋軍海兵隊や日本に拠点を置く第3海兵機動展開部隊(III MEF)幹部が、米軍の他軍種が「Stand-off Forces」的に中国A2AD圏外の安全な場所からの長距離攻撃に注力する中でも、アジア太平洋の海兵隊部隊は「Stand-in Forces」だと語り、様々な取り組みと装備品要望を行い、大きなカギとなる地域同盟国との協力強化も重要と語っています
まんぐーすは知りませんでしたが、米海兵隊は2021年12月に「A Concept for Stand-In Forces」を発表し、アジア太平洋地域の海兵隊が取り組んできた第1列島線内部に陣取り作戦を遂行するスタイルや、開発導入すべき新技術や新装備を明確に示したようです。
具体的イメージとしては、中国A2AD領域内に進出又は強靭に陣取り、隠密裏に行動する海兵隊兵士が中国艦艇の位置を特定し、ネットワーク化されたタブレット等の情報端末で1000マイル離れて陣取る味方の長距離攻撃部隊に伝えるというもので、豪州やフィリピン軍を巻き込んでの訓練も始まっているようです
米空軍は言うに及ばず、米陸軍も海兵隊もこぞって「遠方攻撃兵器」に注力する現実に、軍事的合理性から致し方ないと思いつつも、暗い気分になっていたまんぐーすは、記事のタイトルを見て単純に「目頭が熱くなった」わけですが、よく読むと「Stand-in Forces」は敵情を把握する「ほんの一部」であるような雰囲気も漂っており、同盟国対策のアピールかとも勘繰りたくなりますが、以下では関連海兵隊幹部のイベントでの発言を紹介いたします
5月18日付Defense-New記事によれば
●太平洋軍海兵隊のStephen Fiscus副戦力開発チーム長(大佐)は、「過去約20年間、中国が造成した強力なA2AD能力を前に、米軍の多くはA2AD圏外の安全な場所からのstand off攻撃で対処しようとしている。しかし太平洋軍の海兵隊部隊はstand inだ。その配置、体制、能力、地域国との関係などを最大限に活用して中国から守る。中国のWEZ内(weapons engagement zone)で我らのWEZを構築する方程式を取り戻す」と熱く語り、
●同大佐はまた「日本が拠点の「III MEF」は既にstand in戦力で、フィリピンや韓国で訓練を行っている。しかしstand inコンセプトは更に、地上や海上目標情報を、時間や空間的余裕を確保しつつ米統合戦力に伝達して海上戦を遂行することを求めており、追加の新規装備を必要としている」と訴えた
●Joseph Clearfield太平洋軍海兵隊副司令官(准将)は将来像の具体的イメージを表現し、「ヘリコプターからタブレットを持った兵士が展開潜入し、見晴らしの良い半島の先端に設けた隠蔽された拠点から敵の動きを監視する。敵を発見したらタブレットを使用し、その位置や関連情報を1000マイル離れた統合の長距離攻撃部隊に知らせるのだ」と説明した
●新設された「第3沿岸連隊」は今年後半に、上記のようなデジタル化作戦遂行に不足する能力(ギャップ)を特定する任務を付与されている。通信能力、キルチェーンweb連接、センサーとの連接等が課題である
●具体的取り組み例では、Naval Strike Missileを無人発射車両に搭載して艦艇から発射するNMESIS system(Navy/Marine Corps Expeditionary Ship Interdiction System)試験が4月に実施され、2023年から配備が予定されている
●また沿岸戦闘艦LCSから、地上目標攻撃のため「AGM-114L Longbow Hellfire missiles」を発射する試験が5月12日にLCS- Montgomeryから実施され、この際は無人機MQ-9からの目標情報を基に数マイル先の目標攻撃であったが、構想では前述の「第3沿岸連隊」のような部隊が目標情報を収集・発信することが期待されている。海上配備兵器で地上目標を攻撃することで火力支援能力を強化する方向である
●前述の副司令官(准将)は、このコンセプトを前進させ膨大なアジア太平洋地域をカバーするには同盟国等との協力が重要なカギだと語り、豪州とフィリピンが既に「第3沿岸連隊」のような敵情を収集して敵を妨害する部隊を編成したと語っている
●米軍内でも、例えば加州所在で長年中東での作戦に従事し、中東任務撤退後に縮小されていた「Southern California Marines」を再充足し、「Marine Air-Ground Task Force」として再編しつつあり、その一つの部隊を既に豪州ダーウィンに展開させていると同准将は説明している
●副司令官はまた、日本が拠点の「III MEF」が第1列島線でのstand in作戦を担う一方で、加州を拠点とする「I MEF:第1海兵機動展開部隊」は「outer regions of Southeast Asia」を担当し、伝統的な着上陸や新たな沿岸からの作戦手法を用い、迅速な機動展開で作戦支援する部隊と考えていると説明した
●また日本駐留の「III MEF」が在ダーウィンのローテーション部隊を構成するのに対し、「I MEF」は豪州が乾季の6か月間は北部豪州にローテーション展開し、残りの半年をアジアの他の同盟国等で活動する可能性を検討して模索しているとも同副司令官は語った
////////////////////////////////////////////////
記事のタイトル「Pacific Marines move to formalize role as the stand-in force」を目にし、記事の太平洋軍海兵隊幹部の皆さんの発言を一読した時点で、最近涙もろいまんぐーすは海兵隊の皆さんの心意気に「目頭が熱く」なりましたが、結局「III MEF」のstand in戦力は打撃力を行使しない少数の隠密偵察部隊なのかな??・・・と思い始め、涙も乾いてしまいました。
もちろん、本国から遠く離れた極東の地で、リスクを負って前線に身を投じる覚悟の米海兵隊の皆様に何ら不満はなく感謝の言葉しかありませんし、軍事的合理性に基づき作戦コンセプトを練り、同盟国等への配慮一杯に抑止力向上のため同コンセプトと遂行状況を対外アピールされる姿には崇高なものさえ感じますが、ウクライナ東部住民の心境に少し近づいた気も致します
ついでに在日米海兵隊の「削減」に関する防衛省の説明ぶりを防衛白書内で探してみると、令和3年版285ページに「沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊(ⅢMEF)の司令部要素をグアムへ移転する計画だったが、2012年4月に変更し、司令部・陸空&後方支援部隊で構成される海兵空地任務部隊(M Marine Air Ground Task ForceAGTF)を日本、グアム及びハワイに置くとともに豪州へローテーション展開させることとした」と訳の分からない説明になっています
「A Concept for Stand-In Forces」の現物32ページ
→https://www.hqmc.marines.mil/Portals/142/Users/183/35/4535/211201_A%20Concept%20for%20Stand-In%20Forces.pdf?ver=EIdvoO4fwI2OaJDSB5gDDA%3d%3d
遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
令和3年版防衛白書のPDF
→https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2021/pdf/wp2021_JP_Full_01.pdf
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
同盟国等と共に中国A2AD域内で頑張る姿勢をセミナーで語る
まんぐーすは知りませんでした。てっきり長射程兵器のみ重視かと
でも構想の「Stand-in Forces」の実態からすると・・
5月11日、米海兵隊関連イベントで太平洋軍海兵隊や日本に拠点を置く第3海兵機動展開部隊(III MEF)幹部が、米軍の他軍種が「Stand-off Forces」的に中国A2AD圏外の安全な場所からの長距離攻撃に注力する中でも、アジア太平洋の海兵隊部隊は「Stand-in Forces」だと語り、様々な取り組みと装備品要望を行い、大きなカギとなる地域同盟国との協力強化も重要と語っています
まんぐーすは知りませんでしたが、米海兵隊は2021年12月に「A Concept for Stand-In Forces」を発表し、アジア太平洋地域の海兵隊が取り組んできた第1列島線内部に陣取り作戦を遂行するスタイルや、開発導入すべき新技術や新装備を明確に示したようです。
具体的イメージとしては、中国A2AD領域内に進出又は強靭に陣取り、隠密裏に行動する海兵隊兵士が中国艦艇の位置を特定し、ネットワーク化されたタブレット等の情報端末で1000マイル離れて陣取る味方の長距離攻撃部隊に伝えるというもので、豪州やフィリピン軍を巻き込んでの訓練も始まっているようです
米空軍は言うに及ばず、米陸軍も海兵隊もこぞって「遠方攻撃兵器」に注力する現実に、軍事的合理性から致し方ないと思いつつも、暗い気分になっていたまんぐーすは、記事のタイトルを見て単純に「目頭が熱くなった」わけですが、よく読むと「Stand-in Forces」は敵情を把握する「ほんの一部」であるような雰囲気も漂っており、同盟国対策のアピールかとも勘繰りたくなりますが、以下では関連海兵隊幹部のイベントでの発言を紹介いたします
5月18日付Defense-New記事によれば
●太平洋軍海兵隊のStephen Fiscus副戦力開発チーム長(大佐)は、「過去約20年間、中国が造成した強力なA2AD能力を前に、米軍の多くはA2AD圏外の安全な場所からのstand off攻撃で対処しようとしている。しかし太平洋軍の海兵隊部隊はstand inだ。その配置、体制、能力、地域国との関係などを最大限に活用して中国から守る。中国のWEZ内(weapons engagement zone)で我らのWEZを構築する方程式を取り戻す」と熱く語り、
●同大佐はまた「日本が拠点の「III MEF」は既にstand in戦力で、フィリピンや韓国で訓練を行っている。しかしstand inコンセプトは更に、地上や海上目標情報を、時間や空間的余裕を確保しつつ米統合戦力に伝達して海上戦を遂行することを求めており、追加の新規装備を必要としている」と訴えた
●Joseph Clearfield太平洋軍海兵隊副司令官(准将)は将来像の具体的イメージを表現し、「ヘリコプターからタブレットを持った兵士が展開潜入し、見晴らしの良い半島の先端に設けた隠蔽された拠点から敵の動きを監視する。敵を発見したらタブレットを使用し、その位置や関連情報を1000マイル離れた統合の長距離攻撃部隊に知らせるのだ」と説明した
●新設された「第3沿岸連隊」は今年後半に、上記のようなデジタル化作戦遂行に不足する能力(ギャップ)を特定する任務を付与されている。通信能力、キルチェーンweb連接、センサーとの連接等が課題である
●具体的取り組み例では、Naval Strike Missileを無人発射車両に搭載して艦艇から発射するNMESIS system(Navy/Marine Corps Expeditionary Ship Interdiction System)試験が4月に実施され、2023年から配備が予定されている
●また沿岸戦闘艦LCSから、地上目標攻撃のため「AGM-114L Longbow Hellfire missiles」を発射する試験が5月12日にLCS- Montgomeryから実施され、この際は無人機MQ-9からの目標情報を基に数マイル先の目標攻撃であったが、構想では前述の「第3沿岸連隊」のような部隊が目標情報を収集・発信することが期待されている。海上配備兵器で地上目標を攻撃することで火力支援能力を強化する方向である
●前述の副司令官(准将)は、このコンセプトを前進させ膨大なアジア太平洋地域をカバーするには同盟国等との協力が重要なカギだと語り、豪州とフィリピンが既に「第3沿岸連隊」のような敵情を収集して敵を妨害する部隊を編成したと語っている
●米軍内でも、例えば加州所在で長年中東での作戦に従事し、中東任務撤退後に縮小されていた「Southern California Marines」を再充足し、「Marine Air-Ground Task Force」として再編しつつあり、その一つの部隊を既に豪州ダーウィンに展開させていると同准将は説明している
●副司令官はまた、日本が拠点の「III MEF」が第1列島線でのstand in作戦を担う一方で、加州を拠点とする「I MEF:第1海兵機動展開部隊」は「outer regions of Southeast Asia」を担当し、伝統的な着上陸や新たな沿岸からの作戦手法を用い、迅速な機動展開で作戦支援する部隊と考えていると説明した
●また日本駐留の「III MEF」が在ダーウィンのローテーション部隊を構成するのに対し、「I MEF」は豪州が乾季の6か月間は北部豪州にローテーション展開し、残りの半年をアジアの他の同盟国等で活動する可能性を検討して模索しているとも同副司令官は語った
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記事のタイトル「Pacific Marines move to formalize role as the stand-in force」を目にし、記事の太平洋軍海兵隊幹部の皆さんの発言を一読した時点で、最近涙もろいまんぐーすは海兵隊の皆さんの心意気に「目頭が熱く」なりましたが、結局「III MEF」のstand in戦力は打撃力を行使しない少数の隠密偵察部隊なのかな??・・・と思い始め、涙も乾いてしまいました。
もちろん、本国から遠く離れた極東の地で、リスクを負って前線に身を投じる覚悟の米海兵隊の皆様に何ら不満はなく感謝の言葉しかありませんし、軍事的合理性に基づき作戦コンセプトを練り、同盟国等への配慮一杯に抑止力向上のため同コンセプトと遂行状況を対外アピールされる姿には崇高なものさえ感じますが、ウクライナ東部住民の心境に少し近づいた気も致します
ついでに在日米海兵隊の「削減」に関する防衛省の説明ぶりを防衛白書内で探してみると、令和3年版285ページに「沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊(ⅢMEF)の司令部要素をグアムへ移転する計画だったが、2012年4月に変更し、司令部・陸空&後方支援部隊で構成される海兵空地任務部隊(M Marine Air Ground Task ForceAGTF)を日本、グアム及びハワイに置くとともに豪州へローテーション展開させることとした」と訳の分からない説明になっています
「A Concept for Stand-In Forces」の現物32ページ
→https://www.hqmc.marines.mil/Portals/142/Users/183/35/4535/211201_A%20Concept%20for%20Stand-In%20Forces.pdf?ver=EIdvoO4fwI2OaJDSB5gDDA%3d%3d
遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
令和3年版防衛白書のPDF
→https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2021/pdf/wp2021_JP_Full_01.pdf
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Kirby国防省報道官が米大統領府NSC戦略広報官へ [米国防省高官]
初の黒人移民女性同性愛者報道官Jean-Pierre女史を支援
米海軍+国務省+国防省(2回)の報道官経験者
5月20日バイデン大統領は、国防省のJohn Kirby報道官がホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)の戦略広報調整官に就くと発表しました。バイデン政権の安全保障政策に関する情報発信を強化する狙いがあると見られています。
ホワイトハウスの報道官ポストは、バイデン氏が大統領就任時から務めていたJen Psaki女史が5月13日に退任し、後任には「黒人」「同性愛者」「移民女性」の3側面で初の大統領府報道官だと16日の就任時に自己紹介したKarine Jean-Pierre女史(前副報道官)が就任しています
しかし、激務の大統領府報道官職の後任選定過程では、常にJohn Kirby氏が有力候補としてホワイトハウス内で検討&議論されてきたと報じられています
いかにもバイデン政権らしいJean-Pierre新報道官の指名でしたが、安全保障政策や軍事問題に関しては経験不足との懸念もあり、米海軍士官経験があり、報道官職(spokesman)を米海軍(2021年から)→国防省(2013年12月から)→国務省(2015年5月~2017年1月)→国防省(2021年1月~)と歴任して百戦錬磨のJohn Kirby氏が、新設の戦略広報調整官ポストに迎えられた模様です
「百戦錬磨」とご紹介したJohn Kirby氏ですが、特にバイデン政権下では、大混乱の中で行われた米軍のアフガニスタン撤収や、現在も続くロシアによるウクライナ侵攻についての厳しい記者団からの質問にも、的確に粘りずよく対応&情報発信を続け、国防省からバイデン政権の姿勢を落ち着いて広報したとして一段と評価を高め、今回の起用に至ったと20日付で各社が報じています
ホワイトハウスへ移籍後は、通常の記者会見はKarine Jean-Pierre新報道官が担うものの、時にはJohn Kirby氏も会見を担当するとのことです。
////////////////////////////////////////////
最近のウクライナ情勢に関する国防省会見で、Kirby氏が「ウクライナから伝えられる現場映像は、その悲惨な状況から見るに堪えない」と述べて言葉に詰まる場面が広く報じられましたが、どこからも批判的な声は上がらず、逆に普段から丁寧に誠実に報道機関対応に臨んできたJohn Kirby氏の人柄を評価するコメントが多くみられました
米海軍+国務省+国防省(2回)の報道官経験者は極めて異例で、途中で民間報道機関や広報コンサル会社への転身の誘いも多数あったと思いますが、ストレスフルで一般には平均勤務期間が短い「公務」報道官に長期間従事する姿勢にも頭が下がります。
バイデン政権の姿勢には、個人的に「?」な部分も多いのですが、推定59歳、フロリダ出身で元海軍少将であるJohn Kirby氏の益々のご活躍を祈念申し上げます
追伸・・・Psaki前大統領府報道官とKirby氏は、国務省報道官の前任と後任(Kirby氏)だったようです。激務でかつ世間に顔が知られるポストとなると、成り手が限定されるのかもです
Kirby国防省報道官関連
「アフガン人が写る国防省映像公開停止」→https://holylandtokyo.com/2021/11/03/2400/
「苦悩深くアフガン避難民の米国受け入れ」→https://holylandtokyo.com/2021/10/28/2375/
米国防省報道官(海軍少将時代)関連
「マケイン議員が報道官に激怒」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-24
「国防省がHumint強化へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-27
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ホワイトハウスの報道官ポストは、バイデン氏が大統領就任時から務めていたJen Psaki女史が5月13日に退任し、後任には「黒人」「同性愛者」「移民女性」の3側面で初の大統領府報道官だと16日の就任時に自己紹介したKarine Jean-Pierre女史(前副報道官)が就任しています
しかし、激務の大統領府報道官職の後任選定過程では、常にJohn Kirby氏が有力候補としてホワイトハウス内で検討&議論されてきたと報じられています
いかにもバイデン政権らしいJean-Pierre新報道官の指名でしたが、安全保障政策や軍事問題に関しては経験不足との懸念もあり、米海軍士官経験があり、報道官職(spokesman)を米海軍(2021年から)→国防省(2013年12月から)→国務省(2015年5月~2017年1月)→国防省(2021年1月~)と歴任して百戦錬磨のJohn Kirby氏が、新設の戦略広報調整官ポストに迎えられた模様です
「百戦錬磨」とご紹介したJohn Kirby氏ですが、特にバイデン政権下では、大混乱の中で行われた米軍のアフガニスタン撤収や、現在も続くロシアによるウクライナ侵攻についての厳しい記者団からの質問にも、的確に粘りずよく対応&情報発信を続け、国防省からバイデン政権の姿勢を落ち着いて広報したとして一段と評価を高め、今回の起用に至ったと20日付で各社が報じています
ホワイトハウスへ移籍後は、通常の記者会見はKarine Jean-Pierre新報道官が担うものの、時にはJohn Kirby氏も会見を担当するとのことです。
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最近のウクライナ情勢に関する国防省会見で、Kirby氏が「ウクライナから伝えられる現場映像は、その悲惨な状況から見るに堪えない」と述べて言葉に詰まる場面が広く報じられましたが、どこからも批判的な声は上がらず、逆に普段から丁寧に誠実に報道機関対応に臨んできたJohn Kirby氏の人柄を評価するコメントが多くみられました
米海軍+国務省+国防省(2回)の報道官経験者は極めて異例で、途中で民間報道機関や広報コンサル会社への転身の誘いも多数あったと思いますが、ストレスフルで一般には平均勤務期間が短い「公務」報道官に長期間従事する姿勢にも頭が下がります。
バイデン政権の姿勢には、個人的に「?」な部分も多いのですが、推定59歳、フロリダ出身で元海軍少将であるJohn Kirby氏の益々のご活躍を祈念申し上げます
追伸・・・Psaki前大統領府報道官とKirby氏は、国務省報道官の前任と後任(Kirby氏)だったようです。激務でかつ世間に顔が知られるポストとなると、成り手が限定されるのかもです
Kirby国防省報道官関連
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暗雲:B-21の初飛行は2023年に延期 [米空軍]
5月25日付Defense-News追加情報
●5月25日Northrop Grumman社は、2022年後半に機体披露を行い、通常であればその後数か月後の2023年に初飛行を行うとの声明を発表した
●地上試験の第1段階で、非常に重要な様々な機体構造への負荷を想定した「calibration test」は、成功裏に終了した。
●今後は次の地上試験である、エンジン稼働試験、サブシステム試験、ステルス塗装&コーティングに進むことになっている。
●そしてその後の初飛行では、現在組み立てや地上試験が行われている加州Palmdale米空軍第42工場(Air Force Plant 42)から、同じ加州のEdwards空軍基地に移動し、そこで公式飛行試験を行う予定となっている
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米空軍が突然5月20日に理由説明なく発表
つい最近幹部がサプライチェーンには問題はないと
今年の初飛行後、加州工場から出てエンジン等の各種試験予定が
5月20日、米空軍報道官が一切の理由説明なく、「B-21爆撃機初飛行の新たな予定時期は来年2023年となる」、「最近の開発プログラム状況を反映したもので、空軍は計画の透明性が高くあるよう努めている」と突然発表し、内外に波紋を呼んでいます
B-21爆撃機計画は、新規開発プログラムの「お手本」「モデルケース」と米空軍や議会が絶賛する順調さをこれまで示しており、4月末には開発製造企業Northrop Grumman社CEOが「空軍から(優秀な開発ぶりが評価され)報奨金約80億円を授与される」と自慢していたほどでしたが、ここにきて急に暗雲が立ち込めてきました
B-21については2021年初期から「機体を初披露後、2022年中頃に初飛行予定」「お披露目儀式はそれなりに行う」「ただ、重要装備でもあり多くの情報を公開するつもりは無い」等々と、2022年初飛行は揺ぎ無い前提で空軍幹部が語っており、監督する米空軍緊急能力室RCOのRandall Walden室長も3月に、初飛行用初号機も「ほぼ組み立てられ、振動試験などを実施中で、今後地上滑走を経て初飛行に進む予定」と述べていたところでした
また複数の米空軍や軍需産業関係者も、同CEOが4月末に発表した「各種試験と並行し、2023年には低レート初期生産LRIPに入る」ためには、初飛行後は現在組み立てが実施中のNorthrop Grumman社の加州Palmdale工場から移動し、エンジン試験や各種試験を行う必要があると述べていたところでした。
遅れの原因は不明ですが、最近、サプライチェーン部品供給や労働者不足を理由にT-7A練習機開発が遅れると米空軍とボーイングが明らかにした中で、同RCO室長は3月に、B-21はサプライチェーン問題に大きな影響を受けていないと発言していたことから、外部的な要因が遅れの背景とは考えにくいとの見方が一般的なようです。
一方でB-21に関しては、同CEOが4月末に、開発段階(EMD)の緊要システム融合を含むテスト段階に入っていると述べ、最新のデジタル設計と先端製造技術の活用で初飛行前に様々な角度からリスク分析を行っているとも語っていたこともあり、T-7A練習機とは異なり、B-21爆撃機の機体事態に不具合が見つかったのではないかとの憶測が飛び交う事態となっているようです
初飛行遅延の原因について空軍報道官は一切触れず、「(初飛行などの)イベント時期先行ではなく、データや開発実態優先で物事を進める」と表現し、米空軍として準備万端の態勢が確認できなければ初飛行を行わない姿勢を再確認していますが、
F-35戦闘機やKC-46A空中給油機開発がグダグダな中にあって、これら2つの開発案件を辛らつに繰り返し非難してきた上下院軍事委員会メンバーまでもが、「極めて素晴らしく運営されている開発案件」と讃えてきたB-21が、ここにきて初めての遅延発表とは残念です。続報を待ちましょう・・・
////////////////////////////////////////////
米国防省や米軍に明るい話題が少ない中、B-21は唯一といって良いほど順調な開発案件でしたから、少し関係者全員が少しはしゃぎすぎたかもしれません。2019年7月末に時の空軍副参謀総長が「開発順調なB-21爆撃機の初飛行は、今日から863日後の2021年12月3日に予定されている」と豪語したことなどが頭をよぎりました。
同時に昨年6月、当時の空軍長官が「なぜ遅れが生じないのか」と報道陣から問われ、「要求性能の変更を拒否しているからだ」、「必要なことに焦点を当て、ゴールすることに注力している」と答えていたことも思い出されます。
このように新規開発事業に際しては、当初の目的やねらいを忘れず、「100里の道は、99里を持って半ばとせよ」との言葉をかみしめ、最後まで慎重に進めていただきましょう。「2020年代半ばに作戦投入可能状態に」との当初計画を達成するためにも・・・
B-21爆撃機の関連記事
「製造企業CEOが80億円ゲットと」→https://holylandtokyo.com/2022/05/16/3202/
「無人随伴機も鋭意検討中」→https://holylandtokyo.com/2022/03/24/2938/
「6機製造中」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711/
「B-21を5機製造中」→https://holylandtokyo.com/2021/09/27/2270/
「下院軍事委員長も絶賛」→https://holylandtokyo.com/2021/06/23/1896/
「格納庫写真から大きさを推定する」→https://holylandtokyo.com/2021/04/07/101/
「初飛行は2022年半ばか」→https://holylandtokyo.com/2021/01/20/302/
「開発状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「2021年12月3日初飛行予告」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-29
「初期設計段階終了」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-30
「米空軍の爆撃機体制計画」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2
「2017年3月の状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-20
「B-21に名称決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-27
「敗者の訴え却下」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-17
「敗者がGAOに不服申し立て」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-07
「結果発表と分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-28
米空軍爆撃機の話題
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/
「B-52から重力投下核任務除外」→https://holylandtokyo.com/2020/01/29/877/
「B-1早期引退でB-21推進?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-19
「B-1とB-2の早期引退に変化なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-19
「2018年春時点の爆撃機構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2
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→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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●5月25日Northrop Grumman社は、2022年後半に機体披露を行い、通常であればその後数か月後の2023年に初飛行を行うとの声明を発表した
●地上試験の第1段階で、非常に重要な様々な機体構造への負荷を想定した「calibration test」は、成功裏に終了した。
●今後は次の地上試験である、エンジン稼働試験、サブシステム試験、ステルス塗装&コーティングに進むことになっている。
●そしてその後の初飛行では、現在組み立てや地上試験が行われている加州Palmdale米空軍第42工場(Air Force Plant 42)から、同じ加州のEdwards空軍基地に移動し、そこで公式飛行試験を行う予定となっている
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米空軍が突然5月20日に理由説明なく発表
つい最近幹部がサプライチェーンには問題はないと
今年の初飛行後、加州工場から出てエンジン等の各種試験予定が
5月20日、米空軍報道官が一切の理由説明なく、「B-21爆撃機初飛行の新たな予定時期は来年2023年となる」、「最近の開発プログラム状況を反映したもので、空軍は計画の透明性が高くあるよう努めている」と突然発表し、内外に波紋を呼んでいます
B-21爆撃機計画は、新規開発プログラムの「お手本」「モデルケース」と米空軍や議会が絶賛する順調さをこれまで示しており、4月末には開発製造企業Northrop Grumman社CEOが「空軍から(優秀な開発ぶりが評価され)報奨金約80億円を授与される」と自慢していたほどでしたが、ここにきて急に暗雲が立ち込めてきました
B-21については2021年初期から「機体を初披露後、2022年中頃に初飛行予定」「お披露目儀式はそれなりに行う」「ただ、重要装備でもあり多くの情報を公開するつもりは無い」等々と、2022年初飛行は揺ぎ無い前提で空軍幹部が語っており、監督する米空軍緊急能力室RCOのRandall Walden室長も3月に、初飛行用初号機も「ほぼ組み立てられ、振動試験などを実施中で、今後地上滑走を経て初飛行に進む予定」と述べていたところでした
また複数の米空軍や軍需産業関係者も、同CEOが4月末に発表した「各種試験と並行し、2023年には低レート初期生産LRIPに入る」ためには、初飛行後は現在組み立てが実施中のNorthrop Grumman社の加州Palmdale工場から移動し、エンジン試験や各種試験を行う必要があると述べていたところでした。
遅れの原因は不明ですが、最近、サプライチェーン部品供給や労働者不足を理由にT-7A練習機開発が遅れると米空軍とボーイングが明らかにした中で、同RCO室長は3月に、B-21はサプライチェーン問題に大きな影響を受けていないと発言していたことから、外部的な要因が遅れの背景とは考えにくいとの見方が一般的なようです。
一方でB-21に関しては、同CEOが4月末に、開発段階(EMD)の緊要システム融合を含むテスト段階に入っていると述べ、最新のデジタル設計と先端製造技術の活用で初飛行前に様々な角度からリスク分析を行っているとも語っていたこともあり、T-7A練習機とは異なり、B-21爆撃機の機体事態に不具合が見つかったのではないかとの憶測が飛び交う事態となっているようです
初飛行遅延の原因について空軍報道官は一切触れず、「(初飛行などの)イベント時期先行ではなく、データや開発実態優先で物事を進める」と表現し、米空軍として準備万端の態勢が確認できなければ初飛行を行わない姿勢を再確認していますが、
F-35戦闘機やKC-46A空中給油機開発がグダグダな中にあって、これら2つの開発案件を辛らつに繰り返し非難してきた上下院軍事委員会メンバーまでもが、「極めて素晴らしく運営されている開発案件」と讃えてきたB-21が、ここにきて初めての遅延発表とは残念です。続報を待ちましょう・・・
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米国防省や米軍に明るい話題が少ない中、B-21は唯一といって良いほど順調な開発案件でしたから、少し関係者全員が少しはしゃぎすぎたかもしれません。2019年7月末に時の空軍副参謀総長が「開発順調なB-21爆撃機の初飛行は、今日から863日後の2021年12月3日に予定されている」と豪語したことなどが頭をよぎりました。
同時に昨年6月、当時の空軍長官が「なぜ遅れが生じないのか」と報道陣から問われ、「要求性能の変更を拒否しているからだ」、「必要なことに焦点を当て、ゴールすることに注力している」と答えていたことも思い出されます。
このように新規開発事業に際しては、当初の目的やねらいを忘れず、「100里の道は、99里を持って半ばとせよ」との言葉をかみしめ、最後まで慎重に進めていただきましょう。「2020年代半ばに作戦投入可能状態に」との当初計画を達成するためにも・・・
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「無人随伴機も鋭意検討中」→https://holylandtokyo.com/2022/03/24/2938/
「6機製造中」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711/
「B-21を5機製造中」→https://holylandtokyo.com/2021/09/27/2270/
「下院軍事委員長も絶賛」→https://holylandtokyo.com/2021/06/23/1896/
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「初飛行は2022年半ばか」→https://holylandtokyo.com/2021/01/20/302/
「開発状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「2021年12月3日初飛行予告」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-29
「初期設計段階終了」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-30
「米空軍の爆撃機体制計画」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2
「2017年3月の状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-20
「B-21に名称決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-27
「敗者の訴え却下」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-17
「敗者がGAOに不服申し立て」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-07
「結果発表と分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-28
米空軍爆撃機の話題
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/
「B-52から重力投下核任務除外」→https://holylandtokyo.com/2020/01/29/877/
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「B-1とB-2の早期引退に変化なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-19
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空軍長官が空軍戦力造成のビジョン語る [米空軍]
386飛行隊は目指さず、質を追求
中国のようにリスクをとっても迅速な開発を
B-21導入機数は必ずしも増やす必要なし
インフレや燃料費高騰は2500億円不足を予想
4月2日と3日、Kendall空軍長官とBrown空軍参謀総長が講演(2日@ Brookings)や上院軍事委員会(3日)で証言し、冒頭でご紹介したような2023年度予算案の背景にある今後の米空軍戦力構築のビジョンのようなものを語っています。
もちろん語られた内容はあくまでも空軍幹部の考え方であり、「ウクライナ侵略」によってもたらされたインフレや燃料価格高騰の影響への対処もあり、予算案議会審議の中で国防省や米議会との調整から修正を迫られる可能性があるような気がしますが、「リスクをとっても迅速な開発目指す。中国のように」のように興味深い内容が含まれていますのでご紹介しておきます
現312から386飛行隊への増強は目指さない
●2018年当時のWilson空軍長官とGoldfein参謀総長が表明していた386飛行隊への空軍戦力増強構想は、我々の焦点ではない。私が望むのは、敵を抑止可能な戦力であり、侵略事態発生時に敵を撃破できる戦力である。ウクライナで見られるような、大規模戦力で長引く戦いを遂行するイメージはない
●より戦力の質にこだわっていきたい。より能力が高く、強靭で、厳しい敵の脅威下でも生き延びて戦いに参加し、そして帰還する戦力が必要であり、私の優先リストにはそのような戦力がある。
●マティス国防長官は優れた人物であったが、現有戦力の能力向上で対処しようとする考え方には賛同できない。将来の戦いの環境に適した戦力導入を優先し、機体の平均年齢が30歳を超える米空軍では、高齢機の早期退役と投資の再配分が重要である
●2023年度予算案では将来のための研究開発費を確保し、B-21爆撃機、次期制空機NGAD、次期空対空ミサイルJATMなどに資源投入し、高齢装備の早期退役を計画している。そして2024年度予算案では、早期退役の方針はさらに大胆に加速する方向にあることを予期していただきたい
E-7はE-3と同規模に必要ではない
●老朽機の早期退役と将来装備導入の例として、E-3早期退役とE-7導入があるが、E-7はE-3に比して優れた能力を提供してくれる。この質の向上は量では補えない。E-7に関しては、規模はそれほど重要ではない。迅速に優れた質を前線に届けることが重要。
●更に、E-7導入により維持整備費がE-3より劇的に抑えられる。
B-21は100機以上を必ずしも追求しない
●ロシアや中国からの脅威が顕在化しているが、これにより自動的にB-21次期ステルス爆撃機の要求機数が100機を超えることはない。
●現在米空軍では、B-21を何機導入すべきか分析を行っているが、(100機以上)より多くB-21を導入するオプションの他に、B-21に随伴するエスコート無人機の活用も併せて検討しており、単純にB-21機数増を考えているわけではない
●B-21開発は順調で、維持整備や乗員の訓練必要時間を短縮可能な機体に仕上がりつつあり、高い稼働率が期待できる点からも必要機数を検討している。またB-21を無人随伴機と共に「family of systems」と捉え、作戦運用構想を検討している
必要装備の迅速導入に「デモ試験」省略を
●必要な装備を迅速に前線部隊に届けるため、関連技術が十分に成熟しているなら、デモ装備による確認フェーズを省略し、リスクを冒しても直接設計製造フェーズに進む方式を追求したい
●理想としては、予算獲得から3年で作戦運用に投入できるようでありたいと考えている。このような攻めの開発は失敗のリスクを伴うが、中国が失敗を重ねつつもアグレッシブに開発する現状に対応するには、リスクをとる姿勢が必要だ
●旧ソ連は米国が装備化するまでは導入しようとしなかったが、中国は異なる。中国の新装備開発管理は米国ほど上手ではないが、中国は米国よりも早く取り掛かり、アグレッシブに失敗を恐れず大規模に開発を進め、旧ソ連時代とは異なる困難な課題を米国に突き付けている
インフレによる燃料価格上昇の影響
●ウクライナ侵略等の影響を受けた物価上昇の影響が懸念されるが、「最も大きく、喫緊の課題は」航空機の維持整備運用経費を直撃する航空燃料価格の高騰である。
●現在の見積もりでは、燃料価格上昇により、必要な作戦任務を遂行するために必要な燃料費が、今年1年間で約2500億円不足する。インフレの行方は予想が難しいこともあり、米議会とは緊密に協議させていただきたい
////////////////////////////////////////////////
米国防省としての優先開発事項なのに、米空軍の熱意が今一つの極超音速兵器開発に関しては、「AGM-183(ARRW)は今度数か月で2回ほど試験を予定しているが、成功しなければ前へ進めない」と淡々と語るのみで、引き続き国防省との温度差はそのままです。
上院軍事委員会では、初期型33機の早期退役を提案しているF-22について「導入時は2060年まで使用する」と説明したではないか、維持整備費が高どまりのF-35については「開発と製造を同時進行したからだ。導入試験を疎かにするな」等々と厳しい批判を浴びていますが、Kendall空軍長官ら空軍幹部は「前進あるのみ」の姿勢です
米空軍を巡る将来構想の激動振り
「次期制空機NGADは1機が数百億円」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-034-28
「B-21とNGAD用の無人随伴機開発」→https://holylandtokyo.com/2022/03/24/2938/
「アムラーム後継JATM開発」→https://holylandtokyo.com/2022/04/04/3088/
「E-7導入正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「空中給油機整備方針を大転換」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/
「ウクライナ侵略も米空軍幹部は対中国優先」→https://holylandtokyo.com/2022/03/17/2929/
「2023年度国防省予算案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-29-1
「E-3・AWACSが2023年から退役へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-30
「極超音速兵器の重要性は中国と米国では異なる」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
「空軍長官:高価な極超音速兵器は少数保有で」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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中国のようにリスクをとっても迅速な開発を
B-21導入機数は必ずしも増やす必要なし
インフレや燃料費高騰は2500億円不足を予想
4月2日と3日、Kendall空軍長官とBrown空軍参謀総長が講演(2日@ Brookings)や上院軍事委員会(3日)で証言し、冒頭でご紹介したような2023年度予算案の背景にある今後の米空軍戦力構築のビジョンのようなものを語っています。
もちろん語られた内容はあくまでも空軍幹部の考え方であり、「ウクライナ侵略」によってもたらされたインフレや燃料価格高騰の影響への対処もあり、予算案議会審議の中で国防省や米議会との調整から修正を迫られる可能性があるような気がしますが、「リスクをとっても迅速な開発目指す。中国のように」のように興味深い内容が含まれていますのでご紹介しておきます
現312から386飛行隊への増強は目指さない
●2018年当時のWilson空軍長官とGoldfein参謀総長が表明していた386飛行隊への空軍戦力増強構想は、我々の焦点ではない。私が望むのは、敵を抑止可能な戦力であり、侵略事態発生時に敵を撃破できる戦力である。ウクライナで見られるような、大規模戦力で長引く戦いを遂行するイメージはない
●より戦力の質にこだわっていきたい。より能力が高く、強靭で、厳しい敵の脅威下でも生き延びて戦いに参加し、そして帰還する戦力が必要であり、私の優先リストにはそのような戦力がある。
●マティス国防長官は優れた人物であったが、現有戦力の能力向上で対処しようとする考え方には賛同できない。将来の戦いの環境に適した戦力導入を優先し、機体の平均年齢が30歳を超える米空軍では、高齢機の早期退役と投資の再配分が重要である
●2023年度予算案では将来のための研究開発費を確保し、B-21爆撃機、次期制空機NGAD、次期空対空ミサイルJATMなどに資源投入し、高齢装備の早期退役を計画している。そして2024年度予算案では、早期退役の方針はさらに大胆に加速する方向にあることを予期していただきたい
E-7はE-3と同規模に必要ではない
●老朽機の早期退役と将来装備導入の例として、E-3早期退役とE-7導入があるが、E-7はE-3に比して優れた能力を提供してくれる。この質の向上は量では補えない。E-7に関しては、規模はそれほど重要ではない。迅速に優れた質を前線に届けることが重要。
●更に、E-7導入により維持整備費がE-3より劇的に抑えられる。
B-21は100機以上を必ずしも追求しない
●ロシアや中国からの脅威が顕在化しているが、これにより自動的にB-21次期ステルス爆撃機の要求機数が100機を超えることはない。
●現在米空軍では、B-21を何機導入すべきか分析を行っているが、(100機以上)より多くB-21を導入するオプションの他に、B-21に随伴するエスコート無人機の活用も併せて検討しており、単純にB-21機数増を考えているわけではない
●B-21開発は順調で、維持整備や乗員の訓練必要時間を短縮可能な機体に仕上がりつつあり、高い稼働率が期待できる点からも必要機数を検討している。またB-21を無人随伴機と共に「family of systems」と捉え、作戦運用構想を検討している
必要装備の迅速導入に「デモ試験」省略を
●必要な装備を迅速に前線部隊に届けるため、関連技術が十分に成熟しているなら、デモ装備による確認フェーズを省略し、リスクを冒しても直接設計製造フェーズに進む方式を追求したい
●理想としては、予算獲得から3年で作戦運用に投入できるようでありたいと考えている。このような攻めの開発は失敗のリスクを伴うが、中国が失敗を重ねつつもアグレッシブに開発する現状に対応するには、リスクをとる姿勢が必要だ
●旧ソ連は米国が装備化するまでは導入しようとしなかったが、中国は異なる。中国の新装備開発管理は米国ほど上手ではないが、中国は米国よりも早く取り掛かり、アグレッシブに失敗を恐れず大規模に開発を進め、旧ソ連時代とは異なる困難な課題を米国に突き付けている
インフレによる燃料価格上昇の影響
●ウクライナ侵略等の影響を受けた物価上昇の影響が懸念されるが、「最も大きく、喫緊の課題は」航空機の維持整備運用経費を直撃する航空燃料価格の高騰である。
●現在の見積もりでは、燃料価格上昇により、必要な作戦任務を遂行するために必要な燃料費が、今年1年間で約2500億円不足する。インフレの行方は予想が難しいこともあり、米議会とは緊密に協議させていただきたい
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米国防省としての優先開発事項なのに、米空軍の熱意が今一つの極超音速兵器開発に関しては、「AGM-183(ARRW)は今度数か月で2回ほど試験を予定しているが、成功しなければ前へ進めない」と淡々と語るのみで、引き続き国防省との温度差はそのままです。
上院軍事委員会では、初期型33機の早期退役を提案しているF-22について「導入時は2060年まで使用する」と説明したではないか、維持整備費が高どまりのF-35については「開発と製造を同時進行したからだ。導入試験を疎かにするな」等々と厳しい批判を浴びていますが、Kendall空軍長官ら空軍幹部は「前進あるのみ」の姿勢です
米空軍を巡る将来構想の激動振り
「次期制空機NGADは1機が数百億円」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-034-28
「B-21とNGAD用の無人随伴機開発」→https://holylandtokyo.com/2022/03/24/2938/
「アムラーム後継JATM開発」→https://holylandtokyo.com/2022/04/04/3088/
「E-7導入正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「空中給油機整備方針を大転換」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/
「ウクライナ侵略も米空軍幹部は対中国優先」→https://holylandtokyo.com/2022/03/17/2929/
「2023年度国防省予算案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-29-1
「E-3・AWACSが2023年から退役へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-30
「極超音速兵器の重要性は中国と米国では異なる」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
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中国のType 093 Shang級の新型巡航ミサイル原潜か? [中国要人・軍事]
遼寧省葫芦島市の造船所の衛星写真より
米国防省2021年「中国の軍事力」が記載した新型?
垂直発射管VLS18基と新型ポンプジェット推進を装備か?
5月16日付Defense-Newsが、民間会社Planet Labsによって5月3日に撮影された衛星写真を取り上げ、米国防省が可能性を予言していたType 093 Shang級の新たなタイプ「Type 093B」誘導ミサイル搭載型原潜ではないかと紹介しています
衛星画像は遼寧省葫芦島市の造船所のドライデッキで撮影されたもので、最初は4月29日に撮影された別の衛星写真で、地理空間情報インテリジェンス会社のAllSourceAnalysisが見つけたようです
5月3日や4月29日撮影の写真とは別に、中国のSNS上に5月上旬、撮影場所不明の6本のミサイル管×3列の18個VLSセルを備えた潜水艦映像が流布され、新型のType 093 Shang級ではないかとネット上で噂されていたタイミングでもありました
米国防省は「中国の軍事力2021」で、中国が「093B誘導ミサイル原子力潜水艦」を建造し始めていると評価していましたが、5月3日の写真には潜水艦司令塔のすぐ後ろにVLSらしき緑色の部分があり、幕がかけられた推進システムらしき様子がうかがえ、海軍専門家は「潜水艦発射ミサイル用のVLS垂直発射システムセルの列と、ポンプジェット推進装置と高い確率で推測できる」と写真を評価しています
またシンガポールの専門家は、中国が潜水艦のポンプジェット推進の研究を行っていることを、過去の科学論文を基にDefense-Newsに説明し、艦対地攻撃と対艦任務のために巡航ミサイルを発射可能な原子力潜水艦を保有することは、中国の長距離攻撃能力追求に一致し、グアム島やハワイ島など米軍の重要拠点や施設攻撃を狙ったものであろうと語ったようです
5月3日の写真からは、潜水艦がType 093 Shang級潜水艦(排水量6100トン:全長約110m)とほぼ同じ大きさであり、この点からもType 093 Shang級シリーズの改良型である可能性が高いと記事は推測しています
2006年に最初のA型が就航しているType 093 Shang級原潜は、現時点で6種類が確認されていますが、前述の米国防省「中国の軍事力2021」レポートでは「Type 093B」と表現しています
/////////////////////////////////////////////
対中国軍事力について、西側が有利な数少ない分野は「潜水艦戦」だと以前の記事でご紹介し、米海軍がグアム島配備の潜水艦を2隻から5隻に増強したことを最近記事にしたところですが、中国も黙っているはずがありません。
仮に取り上げた潜水艦が巡航ミサイル搭載の新型Type 093 Shang級潜水艦だとして、どれくらいのペースで、何隻ぐらい中国は導入する予定なのでしょうか。
グアム島やハワイ米軍基地を攻撃する以前に、日本の米軍基地や自衛隊の基地が、潜水艦搭載巡航ミサイルの一番の標的になりうることを念頭に、ウォッチしていく必要がありましょう
対中国軍事力で、西側が有利な数少ない分野は「潜水艦戦」
「グアム島潜水艦増強:2→5隻へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/26/3166/
「戦略原潜設計チームを攻撃原潜にも投入へ」→https://holylandtokyo.com/2021/11/04/2333/
「極超音速兵器:バージニア級へは2028年以降」→https://holylandtokyo.com/2021/11/26/2450/
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米国防省2021年「中国の軍事力」が記載した新型?
垂直発射管VLS18基と新型ポンプジェット推進を装備か?
5月16日付Defense-Newsが、民間会社Planet Labsによって5月3日に撮影された衛星写真を取り上げ、米国防省が可能性を予言していたType 093 Shang級の新たなタイプ「Type 093B」誘導ミサイル搭載型原潜ではないかと紹介しています
衛星画像は遼寧省葫芦島市の造船所のドライデッキで撮影されたもので、最初は4月29日に撮影された別の衛星写真で、地理空間情報インテリジェンス会社のAllSourceAnalysisが見つけたようです
5月3日や4月29日撮影の写真とは別に、中国のSNS上に5月上旬、撮影場所不明の6本のミサイル管×3列の18個VLSセルを備えた潜水艦映像が流布され、新型のType 093 Shang級ではないかとネット上で噂されていたタイミングでもありました
米国防省は「中国の軍事力2021」で、中国が「093B誘導ミサイル原子力潜水艦」を建造し始めていると評価していましたが、5月3日の写真には潜水艦司令塔のすぐ後ろにVLSらしき緑色の部分があり、幕がかけられた推進システムらしき様子がうかがえ、海軍専門家は「潜水艦発射ミサイル用のVLS垂直発射システムセルの列と、ポンプジェット推進装置と高い確率で推測できる」と写真を評価しています
またシンガポールの専門家は、中国が潜水艦のポンプジェット推進の研究を行っていることを、過去の科学論文を基にDefense-Newsに説明し、艦対地攻撃と対艦任務のために巡航ミサイルを発射可能な原子力潜水艦を保有することは、中国の長距離攻撃能力追求に一致し、グアム島やハワイ島など米軍の重要拠点や施設攻撃を狙ったものであろうと語ったようです
5月3日の写真からは、潜水艦がType 093 Shang級潜水艦(排水量6100トン:全長約110m)とほぼ同じ大きさであり、この点からもType 093 Shang級シリーズの改良型である可能性が高いと記事は推測しています
2006年に最初のA型が就航しているType 093 Shang級原潜は、現時点で6種類が確認されていますが、前述の米国防省「中国の軍事力2021」レポートでは「Type 093B」と表現しています
/////////////////////////////////////////////
対中国軍事力について、西側が有利な数少ない分野は「潜水艦戦」だと以前の記事でご紹介し、米海軍がグアム島配備の潜水艦を2隻から5隻に増強したことを最近記事にしたところですが、中国も黙っているはずがありません。
仮に取り上げた潜水艦が巡航ミサイル搭載の新型Type 093 Shang級潜水艦だとして、どれくらいのペースで、何隻ぐらい中国は導入する予定なのでしょうか。
グアム島やハワイ米軍基地を攻撃する以前に、日本の米軍基地や自衛隊の基地が、潜水艦搭載巡航ミサイルの一番の標的になりうることを念頭に、ウォッチしていく必要がありましょう
対中国軍事力で、西側が有利な数少ない分野は「潜水艦戦」
「グアム島潜水艦増強:2→5隻へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/26/3166/
「戦略原潜設計チームを攻撃原潜にも投入へ」→https://holylandtokyo.com/2021/11/04/2333/
「極超音速兵器:バージニア級へは2028年以降」→https://holylandtokyo.com/2021/11/26/2450/
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F-35のエンジン問題とODINへの現場の声 [亡国のF-35]
GAO最新報告書がエンジン問題を酷評も
国防省F-35計画室はいつものように対処中と
導入開始のODINについて現場は「ストレス依然高い」
4月28日、下院軍事委員会でF-35の維持費高止まり問題が取り上げられ、議員からは「維持費問題を無視したF-35導入は止めよ」「F-35はロッキードは金づるになってしまっている」等々と厳しい批判が国防省F-35計画室長や調達担当国防次官に投げつけられ、特にエンジンブレードの耐久性問題が表面化しているF135エンジンや、兵站情報システムALISの後継であるODINへの疑問が噴出しています
2020年に発覚したF135エンジン問題は、タービンブレードの耐久性が想定より低くエンジン故障が頻発し、修理能力限界を超え、40~50機のF-35が搭載エンジン不足から飛行不能に陥っている問題です。
これに対し国防省F-35計画室長は3つのアプローチで対処すると述べ、修理に必要な時間短縮、修理施設の増設、他の修理サイクルを調整しエンジンの前線部隊所在時間延長に取り組むと言い続けてきましたが、実際には修理能力強化以上に故障が頻発し、例えば2021年5月には38機がエンジン待ち非稼働でしたが、9月末には52機に同様機体が急増していることが暴露されています
また兵站情報システムALISの後継システムODIN(Operational Data Integrated Network)については、2022年1月末に14セットを米国の各軍種用基地や英国とイタリアのF-35拠点基地に提供したとの発表がありましたが、その後について会計検査院が配備先を訪問して聴取した現場の声を記事が取り上げているのでご紹介しておきます
4月28日付米空軍協会web記事によれば
●国防省は2021年1月にF-35稼働率が70%に達したと宣伝したが、そこをピークに2021年9月には53%にまで低下しており、2021年全体では目標の65%を下回る61%であった。
●そして4月28日に米会計検査院が発表したレポートでは、F-35の稼働率は68%以下と報告されており、同軍事委員会の議員は口々に「受け入れがたい数値だ」と不満を口にし、このような稼働率や維持費高止まりの問題を放置したまま、新たな機体を導入することは許容しがたいとF-35計画室長や国防次官を非難した
●エンジン修理待ちによる非稼働機は2022年2月で36機にのぼり、何か月も30機以上の状態が続いており改善の兆しが見えないとも、同委員会の委員は非難した
●F-35計画室長(Eric T. Fick空軍中将)は前述の3つのアプローチにより、F135エンジン修理能力は向上しつつあり、2021年の77個エンジン修理から、2022年には122個まで修理能力を高める予定だと説明した
●そして同室長は、米会計検査院GAOが4月末の報告書で「このままでは、2030年のF-35非稼働機の43%はエンジン問題に起因することになる」指摘した件に関し、必要な対策をとっており、GAOの指摘の様にはならないと反論した
●しかし議員らはGAOが指摘したように、F-35計画室の将来見通しが楽観的な予算配分見通しや故障発生見積もりの前提で導かれている点を懸念しており、この点に関し議論は平行線のままだった
●GAOレポート執筆のDiana MaurerはF-35計画室の説明に関し、同計画室の計画が完全に遂行されることを期待するしかないが、(現実には、これまで様々な課題に関し、)同計画室の計画はその一部が実行されたにすぎない・・・とコメントしている
ALISからODINへの移行について
●F-35計画室長は、ALISからODINへの移行によって、スイッチを切り替えるように従来の不具合が解消されると説明したことを反省していると述べた
●同室長は、実際にはF-35の兵站情報システム生態系が、徐々に変化していき、部屋の照明が次第に明るくなるように変化が見えてくるのが現在の状況だと説明した
●このような説明に対し、ODINが導入された前線部隊を視察したGAOのDiana Maurer氏は、前線の維持整備担当兵士は、依然として相当レベルのフラストレーションをODINになっても感じており、改善されているとは思うが、前線兵士が望むレベルにはないと感じていると指摘した。
●また同氏は、ODINが目指す改善のレベルとその評価をどのように実施するのかを明確にし、改善をしっかり把握して資源投入すべきだとかねてから主張していると訴えている
///////////////////////////////////////
米会計検査院GAOがF-35の問題点を指摘すると、国防省F-35計画室は「GAOの指摘は目新しいものではない」「その点は既に把握済で、対処している」と常に答えてきましたが、最終的にはGAOの指摘したとおりに問題が大きく顕在化し、小手先だけの対処措置しか行われなかったことが白日の下にさらされる結果を繰り返してきました
「F135エンジン問題」はさらに悪化の一途をたどるでしょうし、、「ODIN導入」にしても、最終的なしわ寄せは現場の整備員が背負ってカバーすることになるのでしょう・・・・。
これが多かれ少なかれ産軍複合体によって生み出された国防装備品の実態ではありますが、F-35クラスの史上最大の国防装備品ともなると、「亡国のF-35」と呼ぶほどの威力を発揮することになります。担当する皆様は本当にかわいそうです
F-35のエンジン問題
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/
F-35のALISをODINへ
「ODINまず14セット提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-02
「ODINの開発中断」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-24
「ODIN提供開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-24
「元凶:ALISとその後継ODINの現在位置」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-17
「ALISを断念しODINへ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-22
「ALIS問題を議会で証言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-15
「ALISは依然大きな障害」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-02
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
国防省F-35計画室はいつものように対処中と
導入開始のODINについて現場は「ストレス依然高い」
4月28日、下院軍事委員会でF-35の維持費高止まり問題が取り上げられ、議員からは「維持費問題を無視したF-35導入は止めよ」「F-35はロッキードは金づるになってしまっている」等々と厳しい批判が国防省F-35計画室長や調達担当国防次官に投げつけられ、特にエンジンブレードの耐久性問題が表面化しているF135エンジンや、兵站情報システムALISの後継であるODINへの疑問が噴出しています
2020年に発覚したF135エンジン問題は、タービンブレードの耐久性が想定より低くエンジン故障が頻発し、修理能力限界を超え、40~50機のF-35が搭載エンジン不足から飛行不能に陥っている問題です。
これに対し国防省F-35計画室長は3つのアプローチで対処すると述べ、修理に必要な時間短縮、修理施設の増設、他の修理サイクルを調整しエンジンの前線部隊所在時間延長に取り組むと言い続けてきましたが、実際には修理能力強化以上に故障が頻発し、例えば2021年5月には38機がエンジン待ち非稼働でしたが、9月末には52機に同様機体が急増していることが暴露されています
また兵站情報システムALISの後継システムODIN(Operational Data Integrated Network)については、2022年1月末に14セットを米国の各軍種用基地や英国とイタリアのF-35拠点基地に提供したとの発表がありましたが、その後について会計検査院が配備先を訪問して聴取した現場の声を記事が取り上げているのでご紹介しておきます
4月28日付米空軍協会web記事によれば
●国防省は2021年1月にF-35稼働率が70%に達したと宣伝したが、そこをピークに2021年9月には53%にまで低下しており、2021年全体では目標の65%を下回る61%であった。
●そして4月28日に米会計検査院が発表したレポートでは、F-35の稼働率は68%以下と報告されており、同軍事委員会の議員は口々に「受け入れがたい数値だ」と不満を口にし、このような稼働率や維持費高止まりの問題を放置したまま、新たな機体を導入することは許容しがたいとF-35計画室長や国防次官を非難した
●エンジン修理待ちによる非稼働機は2022年2月で36機にのぼり、何か月も30機以上の状態が続いており改善の兆しが見えないとも、同委員会の委員は非難した
●F-35計画室長(Eric T. Fick空軍中将)は前述の3つのアプローチにより、F135エンジン修理能力は向上しつつあり、2021年の77個エンジン修理から、2022年には122個まで修理能力を高める予定だと説明した
●そして同室長は、米会計検査院GAOが4月末の報告書で「このままでは、2030年のF-35非稼働機の43%はエンジン問題に起因することになる」指摘した件に関し、必要な対策をとっており、GAOの指摘の様にはならないと反論した
●しかし議員らはGAOが指摘したように、F-35計画室の将来見通しが楽観的な予算配分見通しや故障発生見積もりの前提で導かれている点を懸念しており、この点に関し議論は平行線のままだった
●GAOレポート執筆のDiana MaurerはF-35計画室の説明に関し、同計画室の計画が完全に遂行されることを期待するしかないが、(現実には、これまで様々な課題に関し、)同計画室の計画はその一部が実行されたにすぎない・・・とコメントしている
ALISからODINへの移行について
●F-35計画室長は、ALISからODINへの移行によって、スイッチを切り替えるように従来の不具合が解消されると説明したことを反省していると述べた
●同室長は、実際にはF-35の兵站情報システム生態系が、徐々に変化していき、部屋の照明が次第に明るくなるように変化が見えてくるのが現在の状況だと説明した
●このような説明に対し、ODINが導入された前線部隊を視察したGAOのDiana Maurer氏は、前線の維持整備担当兵士は、依然として相当レベルのフラストレーションをODINになっても感じており、改善されているとは思うが、前線兵士が望むレベルにはないと感じていると指摘した。
●また同氏は、ODINが目指す改善のレベルとその評価をどのように実施するのかを明確にし、改善をしっかり把握して資源投入すべきだとかねてから主張していると訴えている
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米会計検査院GAOがF-35の問題点を指摘すると、国防省F-35計画室は「GAOの指摘は目新しいものではない」「その点は既に把握済で、対処している」と常に答えてきましたが、最終的にはGAOの指摘したとおりに問題が大きく顕在化し、小手先だけの対処措置しか行われなかったことが白日の下にさらされる結果を繰り返してきました
「F135エンジン問題」はさらに悪化の一途をたどるでしょうし、、「ODIN導入」にしても、最終的なしわ寄せは現場の整備員が背負ってカバーすることになるのでしょう・・・・。
これが多かれ少なかれ産軍複合体によって生み出された国防装備品の実態ではありますが、F-35クラスの史上最大の国防装備品ともなると、「亡国のF-35」と呼ぶほどの威力を発揮することになります。担当する皆様は本当にかわいそうです
F-35のエンジン問題
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
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F-35のALISをODINへ
「ODINまず14セット提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-02
「ODINの開発中断」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-24
「ODIN提供開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-24
「元凶:ALISとその後継ODINの現在位置」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-17
「ALISを断念しODINへ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-22
「ALIS問題を議会で証言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-15
「ALISは依然大きな障害」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-02
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国防省JCOが小型無人機対処エネルギー兵器3機種吟味 [米国防省高官]
JCO(統合小型無人機対処検討室)主導で3回目の検証
高出力マイクロ波使用でEMP効果等で無人機無効化狙う
昨年は「副次的被害小」と「安価で携帯可能」な対処兵器検証
5月11日、米国防省で小型無人機対処を検討するJCO(統合小型無人機対処検討室:Joint Counter-Small Unmanned Aircraft Systems Office)が記者懇談会を行い、4月に「高出力マイクロ波」を使用した小型無人機対処装備3機種の確認試験を実施したと説明しました
JCOは、無人機の脅威の高まりを受け、前線部隊や米本土基地等を防御する手段を専門に検討する組織として2019年末に設置され、2021年1月には小型無人機対処戦略(Counter-Small Unmanned Aircraft Systems Strategy)を発表して「情報収集分析」、「防御体制確立」、「他との協力体制構築」の3本柱で取り組みを加速すると宣言している組織です
その後、2021年4月には第1回目の確認試験として「周辺への副次的被害の少ない対処兵器」を対象に復習機種の評価試験を実施し、同年9月には2回目として「安価で携帯可能な対処兵器」の評価テストを実施しており、「高出力マイクロ波」使用兵器の試験は3回目の分野別評価テストでした
「高出力マイクロ波」使用兵器の試験概要
●4月4~22日にアリゾナ州Yuma Proving Groundで実施
●3企業提案の装備を評価。小型無人機を3つのカテゴリーに重量で区分(G1は20ポンド以下、G2は20-55、G3は55-1320ポンド)し、各カテゴリーの小型無人機に対し、各対処兵器が「どのくらいの距離から」、「どのくらいの対処時間」で無効化が可能か評価
●3企業は「Epirus」「Raytheon Technologies」「Leonardo DRS」で印象は・・・
・「Leonardo DRS」--- vector inversion generatorと呼ばれる放射アンテナの無い特殊な形状で評価が難しかったが、工夫して必要な評価データを得ることができた
・「Raytheon Technologies」--- まだ開発中の段階と言えるが、将来の伸びしろを感じる。対処有効距離は多少短い印象
・「Epirus」--- 現在前線部隊等で行われている対処程度の対処有効距離は確保できているし、将来的な延伸の可能性を秘めている
このほか、3回目までに評価試験を行った分野とは異なる、固定装置による対処兵器分野「countering small UAS as a service, or CaaS」でも並行して候補の絞り込みを行っており、25個の提案から5つに絞り込んでデモ試験を行う方向で進んでいるようです
「CaaS」は展開先の運用拠点基地の防御用を想定した対処兵器で、「候補装置はそれぞれに異なった探知、識別、追尾、破壊能力や仕組みを持っており、様々な角度から分析中であるが、来週には国防省内に限定展開して本格的に評価に入っていく」、「様々な要素後術を既存のシステムと組み合わせる等、企業とJCOの頭の体操が多くなるプロセスだ」とJCO幹部は説明しています
またJCOは、昨年1回目及び2回目の評価テストに参加した企業のいくつかと、具体的装備化に向けた契約締結段階に向かいつつあると記者団に述べ、2022年秋に予定する4回目の分野別評価に向けた準備も進めていると説明しましたが、具体的な中身については言及を避けました
////////////////////////////////////////////
JCOは、各軍種がバラバラに取り組んでいた小型無人機対処兵器開発&調達を、取りまとめて効率的に行うため設立された組織で、米陸軍少将がトップで陸軍が主導的な役割を果たしている組織です
ご紹介した装備の絞り込みだけでなく、運用ドクトリンや運用&訓練手法などにも統一した基準を示し、米軍として一体的な取り組みを推進することも担っています。また指揮統制システムや既存システムとの連携も重要な課題で、報道では、最も進んだTHAAD指揮統制システムとの連接が極めて重要とのGainey少将の発言も紹介されており、広がりの大きな事業であることを伺わせます
更に、無人機対処と言っても海外展開拠点から国内基地まで環境は様々で、同盟国と協力した海外敵対勢力の無人機脅威分析から、米連邦航空局と連携した米国内で使用される小型無人機の把握などまでの多様な課題を抱え、加えてJCOが2021年1月作成の小型無人機対処戦略は「国内技術開発への投資政策」や「対処装備の海外への売込み」までを視野においており、課題山盛り状態です
JCO(Joint Counter small UAS office)関連の記事
「2回目:安価で携帯可能な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/10/08/2280/
「1回目:副次的被害小な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「米国防省が小型無人機対処戦略」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/
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高出力マイクロ波使用でEMP効果等で無人機無効化狙う
昨年は「副次的被害小」と「安価で携帯可能」な対処兵器検証
5月11日、米国防省で小型無人機対処を検討するJCO(統合小型無人機対処検討室:Joint Counter-Small Unmanned Aircraft Systems Office)が記者懇談会を行い、4月に「高出力マイクロ波」を使用した小型無人機対処装備3機種の確認試験を実施したと説明しました
JCOは、無人機の脅威の高まりを受け、前線部隊や米本土基地等を防御する手段を専門に検討する組織として2019年末に設置され、2021年1月には小型無人機対処戦略(Counter-Small Unmanned Aircraft Systems Strategy)を発表して「情報収集分析」、「防御体制確立」、「他との協力体制構築」の3本柱で取り組みを加速すると宣言している組織です
その後、2021年4月には第1回目の確認試験として「周辺への副次的被害の少ない対処兵器」を対象に復習機種の評価試験を実施し、同年9月には2回目として「安価で携帯可能な対処兵器」の評価テストを実施しており、「高出力マイクロ波」使用兵器の試験は3回目の分野別評価テストでした
「高出力マイクロ波」使用兵器の試験概要
●4月4~22日にアリゾナ州Yuma Proving Groundで実施
●3企業提案の装備を評価。小型無人機を3つのカテゴリーに重量で区分(G1は20ポンド以下、G2は20-55、G3は55-1320ポンド)し、各カテゴリーの小型無人機に対し、各対処兵器が「どのくらいの距離から」、「どのくらいの対処時間」で無効化が可能か評価
●3企業は「Epirus」「Raytheon Technologies」「Leonardo DRS」で印象は・・・
・「Leonardo DRS」--- vector inversion generatorと呼ばれる放射アンテナの無い特殊な形状で評価が難しかったが、工夫して必要な評価データを得ることができた
・「Raytheon Technologies」--- まだ開発中の段階と言えるが、将来の伸びしろを感じる。対処有効距離は多少短い印象
・「Epirus」--- 現在前線部隊等で行われている対処程度の対処有効距離は確保できているし、将来的な延伸の可能性を秘めている
このほか、3回目までに評価試験を行った分野とは異なる、固定装置による対処兵器分野「countering small UAS as a service, or CaaS」でも並行して候補の絞り込みを行っており、25個の提案から5つに絞り込んでデモ試験を行う方向で進んでいるようです
「CaaS」は展開先の運用拠点基地の防御用を想定した対処兵器で、「候補装置はそれぞれに異なった探知、識別、追尾、破壊能力や仕組みを持っており、様々な角度から分析中であるが、来週には国防省内に限定展開して本格的に評価に入っていく」、「様々な要素後術を既存のシステムと組み合わせる等、企業とJCOの頭の体操が多くなるプロセスだ」とJCO幹部は説明しています
またJCOは、昨年1回目及び2回目の評価テストに参加した企業のいくつかと、具体的装備化に向けた契約締結段階に向かいつつあると記者団に述べ、2022年秋に予定する4回目の分野別評価に向けた準備も進めていると説明しましたが、具体的な中身については言及を避けました
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JCOは、各軍種がバラバラに取り組んでいた小型無人機対処兵器開発&調達を、取りまとめて効率的に行うため設立された組織で、米陸軍少将がトップで陸軍が主導的な役割を果たしている組織です
ご紹介した装備の絞り込みだけでなく、運用ドクトリンや運用&訓練手法などにも統一した基準を示し、米軍として一体的な取り組みを推進することも担っています。また指揮統制システムや既存システムとの連携も重要な課題で、報道では、最も進んだTHAAD指揮統制システムとの連接が極めて重要とのGainey少将の発言も紹介されており、広がりの大きな事業であることを伺わせます
更に、無人機対処と言っても海外展開拠点から国内基地まで環境は様々で、同盟国と協力した海外敵対勢力の無人機脅威分析から、米連邦航空局と連携した米国内で使用される小型無人機の把握などまでの多様な課題を抱え、加えてJCOが2021年1月作成の小型無人機対処戦略は「国内技術開発への投資政策」や「対処装備の海外への売込み」までを視野においており、課題山盛り状態です
JCO(Joint Counter small UAS office)関連の記事
「2回目:安価で携帯可能な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/10/08/2280/
「1回目:副次的被害小な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「米国防省が小型無人機対処戦略」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/
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製造企業幹部がB-21ステルス爆撃機を語り始める [米空軍]
超極秘プロジェクトを語ることを米空軍が少し許可か?
四半期決算発表会なので価格やインフレ影響が話題の中心
インフレを加味すると現在1機880億円です・・・
4月28日、今年初飛行が予期されている超極秘プロジェクトB-21次期ステルス爆撃機開発について、四半期決算発表の場でNorthrop Grumman社女性CEOのKathy Warden氏が語り、順調な開発状況を米空軍から評価され、報奨金約80億円を臨時収入として計上する予定だと述べ、一方で最近の物価上昇の影響を数年後に始まる本格製造段階の懸念事項としました
製造企業幹部がB-21について語るのは初ではないかと思いますが、性能や製造ペースについては一切触れず、開発段階(EMD:engineering and manufacturing development)の緊要システム融合を含むテスト段階に入っているが、2023年には開発段階EMDと並行して、21機製造する低レート生産段階LRIP(low-rate initial production)に入ると説明しました
また、本格製造段階(production phase)には2024-25年に移行する見通しだと言及しましたが、本格生産時の機体価格については交渉に入っていないと言及を避け、最近の急速なインフレで懸念されているだろうが、効率的製造法を検討しながら開発を進めており、インフレも沈静化するだろうから同社としての利益は安定して伸びるだろうと自信を示しています
まぁ・・・決算発表会なので「お金」の話中心ですが、今後5年間で2兆5000億円が投入される米軍の巨大かつ数少ない順調プロジェクトですので、剛腕女性CEOのお話をご紹介しておきます
28日付米空軍協会web記事によれば
●米空軍が認めているように、B-21(の初号機)は初飛行に向けた緊要なシステム融合を含む地上テスト段階に入っており、更に他に5機が様々な用途のための組み立て段階にある
●この開発プロジェクトは、最新のデジタル設計と先端製造技術の活用により、初飛行前に様々な角度からリスク分析を行ってリスク低減措置をとっており、同時に製造の効率性分析を徹底し、固定価格契約となっている21機の低レート製造単価を満たすよう取り組んでいる
●結果として現在見通せる範囲では、開発段階EMDと低レート製造段階LRIPを同時並行で進める2023年の収入は横ばいで、2024年には上昇に転じて10年間は上昇傾向を維持する見込みとなっている
●なお、機種選定時の価格要求は2010年物価基準で1機「$550 million」、米空軍による2019年の物価勘案再計算では「$600 million」、そして今日時点での弊社試算では「$741.69 million」となる。本格生産価格を決定する数年後には、現在のインフレ状態が緩和されると予期しているが。
●低レート製造段階21機の価格は固定契約だが、2025-26年からと予期される本格製造段階(production phase)に入るまでには2-3年の検討時間が残されており、物価インフレも落ち着くと予期されるところ、更に経験を踏まえて製造効率性を高めて政府の期待に応えつつ収益性を高めていく所存である
//////////////////////////////////////////////
2015年に米空軍が機種選定を行った際の前提では、B-21の総調達機数は80-100機とされましたが、その後米空軍はじわじわと様々な理由をつけて導入機数増を主張してきており、「80-100機」が「100機」となり、いつの間にか「少なくとも100機」が普通になり、今では米空軍GSコマンドは「145機」必要だと言い始めています。
今後の初飛行披露や性能をアピールしていく過程で、この機数も米空軍はふくらましていくのでしょう。
B-21爆撃機の関連記事
「無人随伴機も鋭意検討中」→https://holylandtokyo.com/2022/03/24/2938/
「6機製造中」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711/
「B-21を5機製造中」→https://holylandtokyo.com/2021/09/27/2270/
「下院軍事委員長も絶賛」→https://holylandtokyo.com/2021/06/23/1896/
「格納庫写真から大きさを推定する」→https://holylandtokyo.com/2021/04/07/101/
「初飛行は2022年半ばか」→https://holylandtokyo.com/2021/01/20/302/
「開発状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「2021年12月3日初飛行予告」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-29
「初期設計段階終了」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-30
「米空軍の爆撃機体制計画」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2
「2017年3月の状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-20
「B-21に名称決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-27
「敗者の訴え却下」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-17
「敗者がGAOに不服申し立て」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-07
「結果発表と分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-28
米空軍爆撃機の話題
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-19-1
「B-52から重力投下核任務除外」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-20
「B-1早期引退でB-21推進?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-19
「B-1とB-2の早期引退に変化なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-19
「2018年春時点の爆撃機構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2
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四半期決算発表会なので価格やインフレ影響が話題の中心
インフレを加味すると現在1機880億円です・・・
4月28日、今年初飛行が予期されている超極秘プロジェクトB-21次期ステルス爆撃機開発について、四半期決算発表の場でNorthrop Grumman社女性CEOのKathy Warden氏が語り、順調な開発状況を米空軍から評価され、報奨金約80億円を臨時収入として計上する予定だと述べ、一方で最近の物価上昇の影響を数年後に始まる本格製造段階の懸念事項としました
製造企業幹部がB-21について語るのは初ではないかと思いますが、性能や製造ペースについては一切触れず、開発段階(EMD:engineering and manufacturing development)の緊要システム融合を含むテスト段階に入っているが、2023年には開発段階EMDと並行して、21機製造する低レート生産段階LRIP(low-rate initial production)に入ると説明しました
また、本格製造段階(production phase)には2024-25年に移行する見通しだと言及しましたが、本格生産時の機体価格については交渉に入っていないと言及を避け、最近の急速なインフレで懸念されているだろうが、効率的製造法を検討しながら開発を進めており、インフレも沈静化するだろうから同社としての利益は安定して伸びるだろうと自信を示しています
まぁ・・・決算発表会なので「お金」の話中心ですが、今後5年間で2兆5000億円が投入される米軍の巨大かつ数少ない順調プロジェクトですので、剛腕女性CEOのお話をご紹介しておきます
28日付米空軍協会web記事によれば
●米空軍が認めているように、B-21(の初号機)は初飛行に向けた緊要なシステム融合を含む地上テスト段階に入っており、更に他に5機が様々な用途のための組み立て段階にある
●この開発プロジェクトは、最新のデジタル設計と先端製造技術の活用により、初飛行前に様々な角度からリスク分析を行ってリスク低減措置をとっており、同時に製造の効率性分析を徹底し、固定価格契約となっている21機の低レート製造単価を満たすよう取り組んでいる
●結果として現在見通せる範囲では、開発段階EMDと低レート製造段階LRIPを同時並行で進める2023年の収入は横ばいで、2024年には上昇に転じて10年間は上昇傾向を維持する見込みとなっている
●なお、機種選定時の価格要求は2010年物価基準で1機「$550 million」、米空軍による2019年の物価勘案再計算では「$600 million」、そして今日時点での弊社試算では「$741.69 million」となる。本格生産価格を決定する数年後には、現在のインフレ状態が緩和されると予期しているが。
●低レート製造段階21機の価格は固定契約だが、2025-26年からと予期される本格製造段階(production phase)に入るまでには2-3年の検討時間が残されており、物価インフレも落ち着くと予期されるところ、更に経験を踏まえて製造効率性を高めて政府の期待に応えつつ収益性を高めていく所存である
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2015年に米空軍が機種選定を行った際の前提では、B-21の総調達機数は80-100機とされましたが、その後米空軍はじわじわと様々な理由をつけて導入機数増を主張してきており、「80-100機」が「100機」となり、いつの間にか「少なくとも100機」が普通になり、今では米空軍GSコマンドは「145機」必要だと言い始めています。
今後の初飛行披露や性能をアピールしていく過程で、この機数も米空軍はふくらましていくのでしょう。
B-21爆撃機の関連記事
「無人随伴機も鋭意検討中」→https://holylandtokyo.com/2022/03/24/2938/
「6機製造中」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711/
「B-21を5機製造中」→https://holylandtokyo.com/2021/09/27/2270/
「下院軍事委員長も絶賛」→https://holylandtokyo.com/2021/06/23/1896/
「格納庫写真から大きさを推定する」→https://holylandtokyo.com/2021/04/07/101/
「初飛行は2022年半ばか」→https://holylandtokyo.com/2021/01/20/302/
「開発状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「2021年12月3日初飛行予告」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-29
「初期設計段階終了」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-30
「米空軍の爆撃機体制計画」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2
「2017年3月の状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-20
「B-21に名称決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-27
「敗者の訴え却下」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-17
「敗者がGAOに不服申し立て」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-07
「結果発表と分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-28
米空軍爆撃機の話題
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-19-1
「B-52から重力投下核任務除外」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-20
「B-1早期引退でB-21推進?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-19
「B-1とB-2の早期引退に変化なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-19
「2018年春時点の爆撃機構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2
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艦艇攻撃用に改良のGPS誘導JDAMが実弾試験 [米空軍]
昨年8月のGPS誘導模擬弾に続き実弾で
「QUICKSINK」との名称も細部は不明
GPS誘導で艦艇剛撃ポイントを細部指定可能なのか?
5月4日付Defense-Newsは、米空軍研究所が4月28日に実施した、艦艇攻撃用GPS誘導JDAM(2000ポンド)の実艦艇を目標とした試験が成功したと報じています。なおこの改良型GPS誘導型(GBU-31)JDAMは、「QUICKSINK Joint Capability Technology Demonstration」と呼ばれているようです
対中国作戦を想定するとき、中国軍の多数の艦艇を攻撃目標とする必要がある中、高価な魚雷や対艦ミサイルだけでは対処が難しいことから、より安価な攻撃兵器としてJDAMの艦艇攻撃用バージョンの検討が進められてきました。
ただ、想定する敵艦艇の防空能力が飛躍的に向上する中、JDAMの中でも、目標命中まで発射母機が目標周辺に在空して目標にレーザー照射を継続する必要があるレーザー誘導型JDAM(GBU-24)ではリスクが大きいことから、母機からリリース後は自ら目標に向かうGPS誘導型(GBU-31)の改良を追求することになったようです
GPS誘導型は、レーザー誘導型のように雲や雨に影響されない全天候対応能力を備えていることも特長ですが、更に「QUICKSINK」設計に際し米空軍研究所は、柔軟に多様な企業が部品供給に参加できるよう「open systems architecture」を追求し、企業間競争によるコスト低減と性能向上を狙っているとアピールしています
しかし、レーザー誘導型が艦艇のどの部分に命中させるか選択しやすいのに対し、GPS誘導で目標艦艇の「艦橋」「推進機関」「弾薬庫」「燃料タンク」などの具体的部分を狙って攻撃できるのかは、今回の実弾試験発表でも言及されていません
2021年8月に第1弾試験として模擬JDAM試験を行った際、米空軍研究所AFRLの担当大佐は、『「目標ポイント:aim points」に爆弾を投下可能かを確認するために試験を計画した』と説明していましたが、どの程度の精度で目標ポイントを選択できるかへの言及は避けていました
一方で同担当大佐は当時、『爆弾の先端部分を再設計し、水面で爆弾がはじかれずに水面下の目標地点に到達できるよう検討している。我々は水面にはじかれないように物理学や運動力学を学ぶ必要がある』と語っており、水面下の艦艇部分も攻撃対象箇所として設計思想に反映されている模様です
なお「QUICKSINK」は、従来のJDAMを搭載可能な航空機全ての搭載可能で、特別な機体改修は必要なく、試験を担当した第85試験評価飛行隊幹部は、地域戦闘コマンド司令官により多くの兵器オプションを提供できると説明しています
///////////////////////////////////////////////
艦艇剛撃用GPS誘導JDAM「QUICKSINK」の細部性能は今後少しずつ明らかになるでしょうが、対中国で米空軍航空アセットが活躍できるよう、米空軍自らの発案で始まった者でしょう。
いずれにしても、中国の艦艇対処は同盟国にとっても重要な任務ですので、米空軍から航空自衛隊への提供も前向きにご検討いただき、空自も早めにしっかりと首を突っ込んで、F-15やF-35の働き場所を見つけた方が良いかもしれません
米空軍の弾薬調達を考える記事
「2023年度米空軍の弾薬調達予算案を考察」→https://holylandtokyo.com/2022/04/15/3098/
「米空軍が艦艇攻撃用にJDAM改良中」→https://holylandtokyo.com/2021/09/29/2234/
「F-15Eで完成弾JDAMを運搬」→https://holylandtokyo.com/2021/03/09/156/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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「QUICKSINK」との名称も細部は不明
GPS誘導で艦艇剛撃ポイントを細部指定可能なのか?
5月4日付Defense-Newsは、米空軍研究所が4月28日に実施した、艦艇攻撃用GPS誘導JDAM(2000ポンド)の実艦艇を目標とした試験が成功したと報じています。なおこの改良型GPS誘導型(GBU-31)JDAMは、「QUICKSINK Joint Capability Technology Demonstration」と呼ばれているようです
対中国作戦を想定するとき、中国軍の多数の艦艇を攻撃目標とする必要がある中、高価な魚雷や対艦ミサイルだけでは対処が難しいことから、より安価な攻撃兵器としてJDAMの艦艇攻撃用バージョンの検討が進められてきました。
ただ、想定する敵艦艇の防空能力が飛躍的に向上する中、JDAMの中でも、目標命中まで発射母機が目標周辺に在空して目標にレーザー照射を継続する必要があるレーザー誘導型JDAM(GBU-24)ではリスクが大きいことから、母機からリリース後は自ら目標に向かうGPS誘導型(GBU-31)の改良を追求することになったようです
GPS誘導型は、レーザー誘導型のように雲や雨に影響されない全天候対応能力を備えていることも特長ですが、更に「QUICKSINK」設計に際し米空軍研究所は、柔軟に多様な企業が部品供給に参加できるよう「open systems architecture」を追求し、企業間競争によるコスト低減と性能向上を狙っているとアピールしています
しかし、レーザー誘導型が艦艇のどの部分に命中させるか選択しやすいのに対し、GPS誘導で目標艦艇の「艦橋」「推進機関」「弾薬庫」「燃料タンク」などの具体的部分を狙って攻撃できるのかは、今回の実弾試験発表でも言及されていません
2021年8月に第1弾試験として模擬JDAM試験を行った際、米空軍研究所AFRLの担当大佐は、『「目標ポイント:aim points」に爆弾を投下可能かを確認するために試験を計画した』と説明していましたが、どの程度の精度で目標ポイントを選択できるかへの言及は避けていました
一方で同担当大佐は当時、『爆弾の先端部分を再設計し、水面で爆弾がはじかれずに水面下の目標地点に到達できるよう検討している。我々は水面にはじかれないように物理学や運動力学を学ぶ必要がある』と語っており、水面下の艦艇部分も攻撃対象箇所として設計思想に反映されている模様です
なお「QUICKSINK」は、従来のJDAMを搭載可能な航空機全ての搭載可能で、特別な機体改修は必要なく、試験を担当した第85試験評価飛行隊幹部は、地域戦闘コマンド司令官により多くの兵器オプションを提供できると説明しています
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艦艇剛撃用GPS誘導JDAM「QUICKSINK」の細部性能は今後少しずつ明らかになるでしょうが、対中国で米空軍航空アセットが活躍できるよう、米空軍自らの発案で始まった者でしょう。
いずれにしても、中国の艦艇対処は同盟国にとっても重要な任務ですので、米空軍から航空自衛隊への提供も前向きにご検討いただき、空自も早めにしっかりと首を突っ込んで、F-15やF-35の働き場所を見つけた方が良いかもしれません
米空軍の弾薬調達を考える記事
「2023年度米空軍の弾薬調達予算案を考察」→https://holylandtokyo.com/2022/04/15/3098/
「米空軍が艦艇攻撃用にJDAM改良中」→https://holylandtokyo.com/2021/09/29/2234/
「F-15Eで完成弾JDAMを運搬」→https://holylandtokyo.com/2021/03/09/156/
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米陸軍訓練センターがウクライナ教訓生かした演習 [Joint・統合参謀本部]
敵役部隊はSNSにすぐ映像を上げ印象操作
都市制圧に無差別都市攻撃を行う敵部隊を想定
1350名の敵役部隊が4500名の精鋭訓練部隊を鍛える
4月17日付Military.com記事は、米陸軍が加州の「National Training Center」でウクライナの教訓を生かした6000名規模の演習を実施している様子を取り上げ、敵側がSNSへの迅速な画像映像投稿で印象操作を行ったり、初期段階で侵略計画が破綻した敵側が無差別都市攻撃に出る想定の訓練を紹介しています。
Christine Wormuth陸軍長官が2日間に渡って同訓練センターを視察し、「国防省等で将来戦について過去約5年間議論してきたが、今まさにウクライナで生起している事象から米陸軍は必死に学んでいる」、「世界中が目撃しているSNSなど情報ドメインの重要性(ロシア側とゼレンスキー大統領の毎日の発信などを例示)」や「装備近代化方向へのフィードバックの必要性」に言及しています
同記事は、米陸軍精鋭部隊4500名が2週間に渡り訓練する様子を紹介していますが、その後はすぐに別の部隊が入れ替わりで訓練センターを訪れ、ロシア語を使用する敵役の1350名規模部隊と、更に新たな戦訓を取り入れた演習を行うことになっているようです。
予算案の議会審議のタイミングでもあり、米陸軍による国民や議会向けアピールの入った対外情報発信の一環でしょうが、6000名規模の演習には長期間の準備が必要であり、記事からはロシアや北朝鮮を意識した寒冷地訓練を実施しているとの記載もあり、興味深いのでご紹介してきます
4月17日付Military.com記事によれば
●同訓練センター司令官Curt Taylor准将は、同訓練センタースタッフはロシア軍の教科書を擦り切れるほど読み込み、米軍兵士がロシア軍などと戦っても勝利できるよう日々努力していると語り、情勢に応じて迅速にカリキュラムを変更すると説明した
●例えば、同訓練センターやルイジアナ州にある訓練センターでは、イラクやアフガンでの活動が盛んな時は対テロ重視にシフトし、米軍の焦点変化に伴い、ロシアや北朝鮮を意識して寒冷地での行動訓練にも焦点をあて、ウクライナの緊張が高まるといち早く様々な新たな想定を訓練に取り入れている
●現在は第1騎兵師団の4500名が訓練部隊で、対抗部隊を同センター所属の第11機甲化騎兵連隊Blackhorseなど1350名が演じている。しかし対抗部隊は実際の敵がやりそうなことは全て展示可能で、通信妨害、電子妨害から非正規作戦やプロパガンダ作戦まであらゆる手法を駆使して敵を演じ、スマホ片手に利用可能な場面や映像を素早くSNS上にアップする体制でも臨んでいる
●訓練部隊指揮官の一人である大佐は、演習では敵味方とも多数の無人機を偵察&攻撃用に使用しており、上空の無人機から発見されないように部隊を隠すことに神経を使うと語り、その他さまざまなトラブルが発生する前線でSNSやツイッターを気にする余裕はないと語っている
●Taylor訓練センター司令官は、現在のウクライナの情勢を踏まえ、無差別に火砲を発射して社会インフラを破壊する敵を相手の都市戦闘シナリオを米軍訓練に提供しており、どのような状況にあっても、味方の他部隊と連携を図って行動する重要性を強調していると説明している
●Wormuth陸軍長官は別の視点で、例えば戦車の今後を考える際、欧州では地盤が柔らかく、中東で必要だった重戦車ではなく軽戦車が重宝しており、戦車に求める機動性や防御力や破壊力をどの程度にするかなどの論点も明らかになっている、と同センター視察時に語っている
/////////////////////////////////////////////
中東想定の対テロ作戦重視からロシアや北朝鮮想定の寒冷地作戦重視に移行し、今度は都市に無差別攻撃を行う敵を想定しての訓練を重視する・・・・そんなに次々と重視項目を変えられるのか???とも思いますが、実際にロシア軍を演じてみて疑問点を明らかにし、ウクライナ前線での情報活動に生かすのかもしれません。
2014年当時の高度なハイブリッド戦を想定していたら、20世紀を想起させる地上戦が目の前で繰り広げらる様子に、米軍も興味津々なのでしょう。ロシア側の部隊通信も筒抜けで、驚くほどロシア軍の混乱ぶりや戦いぶりが把握されているのかもしれません。分析ネタがありすぎて困惑・・・ぐらいなのかもしれませんねぇ・・・
ウクライナ侵略に関する記事
「ウクライナ新緑は日本への警告だ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-25
「露空軍に対する米空軍幹部や専門家の見方」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「中国への影響は?CIAやDIAが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/
「なぜイスラエルが仲介に?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08
「ウ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍」→https://holylandtokyo.com/2022/03/05/2787/
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holylandtokyo.com/2022/03/03/2776/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/28/2763/
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都市制圧に無差別都市攻撃を行う敵部隊を想定
1350名の敵役部隊が4500名の精鋭訓練部隊を鍛える
4月17日付Military.com記事は、米陸軍が加州の「National Training Center」でウクライナの教訓を生かした6000名規模の演習を実施している様子を取り上げ、敵側がSNSへの迅速な画像映像投稿で印象操作を行ったり、初期段階で侵略計画が破綻した敵側が無差別都市攻撃に出る想定の訓練を紹介しています。
Christine Wormuth陸軍長官が2日間に渡って同訓練センターを視察し、「国防省等で将来戦について過去約5年間議論してきたが、今まさにウクライナで生起している事象から米陸軍は必死に学んでいる」、「世界中が目撃しているSNSなど情報ドメインの重要性(ロシア側とゼレンスキー大統領の毎日の発信などを例示)」や「装備近代化方向へのフィードバックの必要性」に言及しています
同記事は、米陸軍精鋭部隊4500名が2週間に渡り訓練する様子を紹介していますが、その後はすぐに別の部隊が入れ替わりで訓練センターを訪れ、ロシア語を使用する敵役の1350名規模部隊と、更に新たな戦訓を取り入れた演習を行うことになっているようです。
予算案の議会審議のタイミングでもあり、米陸軍による国民や議会向けアピールの入った対外情報発信の一環でしょうが、6000名規模の演習には長期間の準備が必要であり、記事からはロシアや北朝鮮を意識した寒冷地訓練を実施しているとの記載もあり、興味深いのでご紹介してきます
4月17日付Military.com記事によれば
●同訓練センター司令官Curt Taylor准将は、同訓練センタースタッフはロシア軍の教科書を擦り切れるほど読み込み、米軍兵士がロシア軍などと戦っても勝利できるよう日々努力していると語り、情勢に応じて迅速にカリキュラムを変更すると説明した
●例えば、同訓練センターやルイジアナ州にある訓練センターでは、イラクやアフガンでの活動が盛んな時は対テロ重視にシフトし、米軍の焦点変化に伴い、ロシアや北朝鮮を意識して寒冷地での行動訓練にも焦点をあて、ウクライナの緊張が高まるといち早く様々な新たな想定を訓練に取り入れている
●現在は第1騎兵師団の4500名が訓練部隊で、対抗部隊を同センター所属の第11機甲化騎兵連隊Blackhorseなど1350名が演じている。しかし対抗部隊は実際の敵がやりそうなことは全て展示可能で、通信妨害、電子妨害から非正規作戦やプロパガンダ作戦まであらゆる手法を駆使して敵を演じ、スマホ片手に利用可能な場面や映像を素早くSNS上にアップする体制でも臨んでいる
●訓練部隊指揮官の一人である大佐は、演習では敵味方とも多数の無人機を偵察&攻撃用に使用しており、上空の無人機から発見されないように部隊を隠すことに神経を使うと語り、その他さまざまなトラブルが発生する前線でSNSやツイッターを気にする余裕はないと語っている
●Taylor訓練センター司令官は、現在のウクライナの情勢を踏まえ、無差別に火砲を発射して社会インフラを破壊する敵を相手の都市戦闘シナリオを米軍訓練に提供しており、どのような状況にあっても、味方の他部隊と連携を図って行動する重要性を強調していると説明している
●Wormuth陸軍長官は別の視点で、例えば戦車の今後を考える際、欧州では地盤が柔らかく、中東で必要だった重戦車ではなく軽戦車が重宝しており、戦車に求める機動性や防御力や破壊力をどの程度にするかなどの論点も明らかになっている、と同センター視察時に語っている
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中東想定の対テロ作戦重視からロシアや北朝鮮想定の寒冷地作戦重視に移行し、今度は都市に無差別攻撃を行う敵を想定しての訓練を重視する・・・・そんなに次々と重視項目を変えられるのか???とも思いますが、実際にロシア軍を演じてみて疑問点を明らかにし、ウクライナ前線での情報活動に生かすのかもしれません。
2014年当時の高度なハイブリッド戦を想定していたら、20世紀を想起させる地上戦が目の前で繰り広げらる様子に、米軍も興味津々なのでしょう。ロシア側の部隊通信も筒抜けで、驚くほどロシア軍の混乱ぶりや戦いぶりが把握されているのかもしれません。分析ネタがありすぎて困惑・・・ぐらいなのかもしれませんねぇ・・・
ウクライナ侵略に関する記事
「ウクライナ新緑は日本への警告だ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-25
「露空軍に対する米空軍幹部や専門家の見方」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「中国への影響は?CIAやDIAが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/
「なぜイスラエルが仲介に?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08
「ウ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍」→https://holylandtokyo.com/2022/03/05/2787/
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holylandtokyo.com/2022/03/03/2776/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/28/2763/
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ウ国への軍事支援輸送を支えるECCUをご紹介 [安全保障全般]
ドイツのStuttgartに米欧州コマンドがECCUを設置
ウ国要員も交え約50名規模で24時間支援輸送を采配
ウクライナ国内の輸送網は強靭で効率的
4月29日付米空軍協会web記事が、西側諸国からウクライナへの軍事物資支援輸送をコントロールするドイツのシュツットガルトStuttgartに設置された24時間運用態勢の「米軍欧州コマンド運用センター:ECCU:EUCOM Control Center Ukraine」の様子を紹介しています
ロシア侵略に対抗するウクライナを支える重要拠点ながら、これまで報じられることがなかったECCUですが、4月26日にオースチン国防長官とブリンケン国務長官がドイツ訪問して開催された「ウクライナ支援国協議:Ukraine Defense Consultative Workshop」の取材報道陣に対し、ECCU活動紹介ブリーフィングが行われた模様です
ウクライナへの支援は米国やNATO諸国を中心に増えていますが、一方で提供された装備等が本当にウクライナ東部前線に届いているのか?、混乱に乗じて「横流し」されていたりしないのか?、等の疑念の声もSNS]上では見られますが、記事によればウクライナ内の輸送網は多様な形で強靭に維持&再編成されており、外から心配する以上にしっかり機能していると記事は報じています
同記事が紹介するECCUの概要など
●ウクライナへの迅速な軍事装備提供や支援物資輸送を調整するシュツットガルトStuttgart に設置されたECCUは、物流を支えるコールセンターと輸送状況監視センターと各種調整用会議室を組み合わせた施設である
●米海軍少将(欧州米軍J-4)をトップとするECCUには、24時間体制で支援国15か国からのスタッフが常時40-60名が勤務しているが、ウクライナからも数名が加わっている。英軍が准将をトップに運用するIDCC(International Donor Coordination Center)とも緊密に連携しつつ、全ての物流の計画、任務配分、指示、輸送状況モニター、不足事態等への対処を行っている。
●ECCUは米輸送コマンドと緊密に連携を取り、米国からの物資はC-17輸送機で独Ramstein飛行場に空輸され、その後小型のC-130に積み替えられウクライナ周辺国のウクライナ国境近辺飛行場に空輸される。C-17輸送は当初2日に1回だったが、今やウクライナの要請に迅速対応するため1日10回にまで増加している
●C-130によるウクライナ周辺国への空輸後は、トラックや鉄道網でウクライナ前線へ物資が輸送されていく。当初ECCUは空輸調整中心だったが、地上や鉄道輸送など多様なルートに調整範囲が急速に拡大している。物資が一端ウクライナ国内に入ると、ウクライナは多様な前線への補給ルートを確保しており、困難な情勢下でも極めて効率的な輸送路確保の働きを見せている
●米国防長官と国務長官がキエフに鉄道で移動したことを見たロシアが、ウクライナ鉄道網への攻撃を強化しているが、米国防省高官によれば鉄道網への影響は限定的な模様である。ウクライナへの支援ルートは、ポーランド経由を中心に、ルーマニア、スロバキアなどを経ているが、西側支援物資がどの国をどの程度経由しているかは公開されていない。
●ECCU関係者は当初、支援物資が「横流し」されたり、行方不明になる等を危惧していたが、物資の管理や防護は混乱の中でも期待以上にしっかりしており、前線へ確実に輸送されている。
●今後はより野戦砲など長射程の攻撃兵器が重視され、携帯型SAMスティンガー等は優先度が下がる方向にあり、ECCUは大型の野戦砲(72門の155mm Howitzerや砲弾)や装甲戦闘車両の輸送に取り組んでいる。多少到着が遅れるかもしれないが、提供した長射程砲が近くロシア側を攻撃開始するだろうとECCU関係者は楽観的である
●輸送支援関係高官は「ロシア軍のパフォーマンスがひどくても、ロシア軍の保有戦力は多量で余剰があり、ウクライナには引き続き我々の支援物資が必要だ」、「防御兵器から長射程攻撃兵器にニーズの変化があるように、今後も先を見越した柔軟な対応がECCUには求められる」と語っている
///////////////////////////////////////////////
バイデン大統領が4月28日に、追加で4兆円近いウクライナ支援パッケージを発表したこともあり、米国からの支援物資がウクライナ前線にしっかり提供され有効活用されていることをアピールするため、ECCU活動ブリーフィングが実施されたのかもしれません
でも、ウクライナが前線の戦いだけでなく、兵站補給路確保と管理においても、国家として極めてしっかり取り組んでいることに疑いはなさそうです。
ロシアのウクライナ侵攻を契機に、国防に関心の薄かった日本国民の間にも、安全保障に関する常識的な危機感や国防への認識が共有されればよいと思います。同時に、左寄りの皆さんの「お花畑思考」の問題点が、自然な形で国民に認識されればよいと思います
ウクライナ関連の記事
「ウ国を守ったSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「スティンガーの後継検討」→https://holylandtokyo.com/2022/04/14/3123/
「米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る」→https://holylandtokyo.com/2022/03/17/2929/
「ウクライナ侵略は日本への警告」→https://holylandtokyo.com/2022/03/28/2949/
「ウクライナのサイバー戦」→https://holylandtokyo.com/2022/03/23/2942/
「台湾への教訓」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/
「台湾への影響PACOM・CIA・DIAトップが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/
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「ウ紛争の最初の一撃は宇宙で!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-17
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-08
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ウ国要員も交え約50名規模で24時間支援輸送を采配
ウクライナ国内の輸送網は強靭で効率的
4月29日付米空軍協会web記事が、西側諸国からウクライナへの軍事物資支援輸送をコントロールするドイツのシュツットガルトStuttgartに設置された24時間運用態勢の「米軍欧州コマンド運用センター:ECCU:EUCOM Control Center Ukraine」の様子を紹介しています
ロシア侵略に対抗するウクライナを支える重要拠点ながら、これまで報じられることがなかったECCUですが、4月26日にオースチン国防長官とブリンケン国務長官がドイツ訪問して開催された「ウクライナ支援国協議:Ukraine Defense Consultative Workshop」の取材報道陣に対し、ECCU活動紹介ブリーフィングが行われた模様です
ウクライナへの支援は米国やNATO諸国を中心に増えていますが、一方で提供された装備等が本当にウクライナ東部前線に届いているのか?、混乱に乗じて「横流し」されていたりしないのか?、等の疑念の声もSNS]上では見られますが、記事によればウクライナ内の輸送網は多様な形で強靭に維持&再編成されており、外から心配する以上にしっかり機能していると記事は報じています
同記事が紹介するECCUの概要など
●ウクライナへの迅速な軍事装備提供や支援物資輸送を調整するシュツットガルトStuttgart に設置されたECCUは、物流を支えるコールセンターと輸送状況監視センターと各種調整用会議室を組み合わせた施設である
●米海軍少将(欧州米軍J-4)をトップとするECCUには、24時間体制で支援国15か国からのスタッフが常時40-60名が勤務しているが、ウクライナからも数名が加わっている。英軍が准将をトップに運用するIDCC(International Donor Coordination Center)とも緊密に連携しつつ、全ての物流の計画、任務配分、指示、輸送状況モニター、不足事態等への対処を行っている。
●ECCUは米輸送コマンドと緊密に連携を取り、米国からの物資はC-17輸送機で独Ramstein飛行場に空輸され、その後小型のC-130に積み替えられウクライナ周辺国のウクライナ国境近辺飛行場に空輸される。C-17輸送は当初2日に1回だったが、今やウクライナの要請に迅速対応するため1日10回にまで増加している
●C-130によるウクライナ周辺国への空輸後は、トラックや鉄道網でウクライナ前線へ物資が輸送されていく。当初ECCUは空輸調整中心だったが、地上や鉄道輸送など多様なルートに調整範囲が急速に拡大している。物資が一端ウクライナ国内に入ると、ウクライナは多様な前線への補給ルートを確保しており、困難な情勢下でも極めて効率的な輸送路確保の働きを見せている
●米国防長官と国務長官がキエフに鉄道で移動したことを見たロシアが、ウクライナ鉄道網への攻撃を強化しているが、米国防省高官によれば鉄道網への影響は限定的な模様である。ウクライナへの支援ルートは、ポーランド経由を中心に、ルーマニア、スロバキアなどを経ているが、西側支援物資がどの国をどの程度経由しているかは公開されていない。
●ECCU関係者は当初、支援物資が「横流し」されたり、行方不明になる等を危惧していたが、物資の管理や防護は混乱の中でも期待以上にしっかりしており、前線へ確実に輸送されている。
●今後はより野戦砲など長射程の攻撃兵器が重視され、携帯型SAMスティンガー等は優先度が下がる方向にあり、ECCUは大型の野戦砲(72門の155mm Howitzerや砲弾)や装甲戦闘車両の輸送に取り組んでいる。多少到着が遅れるかもしれないが、提供した長射程砲が近くロシア側を攻撃開始するだろうとECCU関係者は楽観的である
●輸送支援関係高官は「ロシア軍のパフォーマンスがひどくても、ロシア軍の保有戦力は多量で余剰があり、ウクライナには引き続き我々の支援物資が必要だ」、「防御兵器から長射程攻撃兵器にニーズの変化があるように、今後も先を見越した柔軟な対応がECCUには求められる」と語っている
///////////////////////////////////////////////
バイデン大統領が4月28日に、追加で4兆円近いウクライナ支援パッケージを発表したこともあり、米国からの支援物資がウクライナ前線にしっかり提供され有効活用されていることをアピールするため、ECCU活動ブリーフィングが実施されたのかもしれません
でも、ウクライナが前線の戦いだけでなく、兵站補給路確保と管理においても、国家として極めてしっかり取り組んでいることに疑いはなさそうです。
ロシアのウクライナ侵攻を契機に、国防に関心の薄かった日本国民の間にも、安全保障に関する常識的な危機感や国防への認識が共有されればよいと思います。同時に、左寄りの皆さんの「お花畑思考」の問題点が、自然な形で国民に認識されればよいと思います
ウクライナ関連の記事
「ウ国を守ったSpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「スティンガーの後継検討」→https://holylandtokyo.com/2022/04/14/3123/
「米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る」→https://holylandtokyo.com/2022/03/17/2929/
「ウクライナ侵略は日本への警告」→https://holylandtokyo.com/2022/03/28/2949/
「ウクライナのサイバー戦」→https://holylandtokyo.com/2022/03/23/2942/
「台湾への教訓」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/
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豪州KC-30A給油機と空自F-2の給油適合試験完了 [安全保障全般]
KC-30Aは世界ベストセラー給油機A330MRTTのことです
8月からの「Pitch Black 22」演習への参加準備完了
4月29日、豪州空軍は日本に派遣していたKC-30A空中給油機(A330型MRTTのこと)による、空自F-2への3週間にわたる空中給油適合性確認試験が終了したと発表しました。
この適合試験は、8月から9月にかけ北部豪州で実施される「Exercise Pitch Black 22」に空自機が参加するために必要な準備の一環で、3月28日に小牧基地に展開した豪空軍KC-30Aが、4月4日から27日にかけ、空自F-2機に計9回のフライトで空中給油を行うことで実施されました
参加したF-2はA型とB型各2機で、日本海と太平洋上の訓練空域で試験は実施された模様です。KC-30はブームシステム(ARBS)と3Dディスプレイシステムを活用し、日中・夕暮れ・夜間の様々な条件下で給油試験が行われ、F-2側も様々な搭載形態(最大兵装は4発の対艦ミサイルとAAM-3空対空ミサイル搭載)で適合性を確認したとのことです
空自機は2020年の「Pitch Black」演習に初参加を目指していましたが、コロナの影響で他の参加予定国(米国、カナダ、フランス、ドイツ、ニュージーランド、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア、韓国)との演習機会を逃していましたが、今回は満を持しての準備完了です
自衛隊と豪軍は、最近のトンガ火山爆発への災害対処&人道支援任務や、「Cope North in Guam」演習, 更に2019年に日本で行われた「Bushido Guardian」演習などを通じて関係を強化しています
豪空軍のDarren Goldie准将は本試験の意義について
●今回の適合試験の成功は、日本の飛行開発実験団と豪空軍ARDU(Aircraft Research and Development Unit)の2年間に及ぶ周到な準備の賜物である
●この試験プログラムの成功により、8月から9月に開催される「Exercise Pitch Black 22」への空自機の参加が可能になる
●初の豪給油機から空自機への空中給油及び適合試験終了は、豪日間の相互運用性を飛躍的に向上させるものであり、両国による作戦協力の高度化と複雑化を可能にすることを意味する
●そして更に、このような豪日の取り組みを通じ、我々は安全で包括的に強靭なインド太平洋地域を更に推進強化し続けることが可能になる
/////////////////////////////////////////////////////
日豪の関係強化面からの意義はもちろん大きいのですが、世界のベストセラー空中給油機であるKC-30A(A330型MRTTのこと)から、F-2だけでも空中受油可能になったことの重要性も忘れてはなりません。
KC-30A(A330型MRTTのこと)は、日米イスラエルだけが使用するKC-46より遥かに普及が進んでおり、自動給油システムなども成熟しています
●導入国がKC-46より多い
--- A330 MRTTは、豪州空軍が初導入後、英、サウジ、UAE、仏、シンガポール、韓国など13か国49機が運用中。25万飛行時間で6万回の空中給油実績実績
--- 更に、米軍機で空中給油認可済は10機種以上で、戦闘機ではF-35、F-22、F-16、F-15、A-10、爆撃機ではB-1、輸送機・哨戒機ではC-17、E-3、P-3及びP-8A対潜哨戒機、そのほかE-7にも給油可能
--- ベースとなるA330は世界で1600機以上使用され、部品調達など機体維持上の問題もない
●使用可能飛行場が3割増
--- 翼がKC-46より大きく揚力が大きいため、アジア太平洋地域で利用できる飛行場が3割増(現在150が196に増加)になる
●3か国が導入決定の自動給油装置アリ
--- 「fly-by-wire boom system」で全自動装置を試験中(既に330回給油試験済で今年中に昼間運用認証予定、夜間認証は2023年)
--- 高解像度高精彩3Dの画像システムを使用し、処理速度や反応速度が速い
KC-30A(A330型MRTTのこと)関連の記事
「A330型MRTT解説とLMXT」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
米空軍が空中給油機整備方針を大転換
「大転換:KC-YとZはKC-46の改修型へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-04-17
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8月からの「Pitch Black 22」演習への参加準備完了
4月29日、豪州空軍は日本に派遣していたKC-30A空中給油機(A330型MRTTのこと)による、空自F-2への3週間にわたる空中給油適合性確認試験が終了したと発表しました。
この適合試験は、8月から9月にかけ北部豪州で実施される「Exercise Pitch Black 22」に空自機が参加するために必要な準備の一環で、3月28日に小牧基地に展開した豪空軍KC-30Aが、4月4日から27日にかけ、空自F-2機に計9回のフライトで空中給油を行うことで実施されました
参加したF-2はA型とB型各2機で、日本海と太平洋上の訓練空域で試験は実施された模様です。KC-30はブームシステム(ARBS)と3Dディスプレイシステムを活用し、日中・夕暮れ・夜間の様々な条件下で給油試験が行われ、F-2側も様々な搭載形態(最大兵装は4発の対艦ミサイルとAAM-3空対空ミサイル搭載)で適合性を確認したとのことです
空自機は2020年の「Pitch Black」演習に初参加を目指していましたが、コロナの影響で他の参加予定国(米国、カナダ、フランス、ドイツ、ニュージーランド、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア、韓国)との演習機会を逃していましたが、今回は満を持しての準備完了です
自衛隊と豪軍は、最近のトンガ火山爆発への災害対処&人道支援任務や、「Cope North in Guam」演習, 更に2019年に日本で行われた「Bushido Guardian」演習などを通じて関係を強化しています
豪空軍のDarren Goldie准将は本試験の意義について
●今回の適合試験の成功は、日本の飛行開発実験団と豪空軍ARDU(Aircraft Research and Development Unit)の2年間に及ぶ周到な準備の賜物である
●この試験プログラムの成功により、8月から9月に開催される「Exercise Pitch Black 22」への空自機の参加が可能になる
●初の豪給油機から空自機への空中給油及び適合試験終了は、豪日間の相互運用性を飛躍的に向上させるものであり、両国による作戦協力の高度化と複雑化を可能にすることを意味する
●そして更に、このような豪日の取り組みを通じ、我々は安全で包括的に強靭なインド太平洋地域を更に推進強化し続けることが可能になる
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日豪の関係強化面からの意義はもちろん大きいのですが、世界のベストセラー空中給油機であるKC-30A(A330型MRTTのこと)から、F-2だけでも空中受油可能になったことの重要性も忘れてはなりません。
KC-30A(A330型MRTTのこと)は、日米イスラエルだけが使用するKC-46より遥かに普及が進んでおり、自動給油システムなども成熟しています
●導入国がKC-46より多い
--- A330 MRTTは、豪州空軍が初導入後、英、サウジ、UAE、仏、シンガポール、韓国など13か国49機が運用中。25万飛行時間で6万回の空中給油実績実績
--- 更に、米軍機で空中給油認可済は10機種以上で、戦闘機ではF-35、F-22、F-16、F-15、A-10、爆撃機ではB-1、輸送機・哨戒機ではC-17、E-3、P-3及びP-8A対潜哨戒機、そのほかE-7にも給油可能
--- ベースとなるA330は世界で1600機以上使用され、部品調達など機体維持上の問題もない
●使用可能飛行場が3割増
--- 翼がKC-46より大きく揚力が大きいため、アジア太平洋地域で利用できる飛行場が3割増(現在150が196に増加)になる
●3か国が導入決定の自動給油装置アリ
--- 「fly-by-wire boom system」で全自動装置を試験中(既に330回給油試験済で今年中に昼間運用認証予定、夜間認証は2023年)
--- 高解像度高精彩3Dの画像システムを使用し、処理速度や反応速度が速い
KC-30A(A330型MRTTのこと)関連の記事
「A330型MRTT解説とLMXT」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
米空軍が空中給油機整備方針を大転換
「大転換:KC-YとZはKC-46の改修型へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-04-17
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