米陸軍トップが長射程攻撃やSEADに意欲満々 [Joint・統合参謀本部]
従来この任務を担ってきた米空軍との対立激化へ
統合参謀本部など誰か交通整理してください
内輪もめしている場合じゃないですよ・・・
11日、James McConville米陸軍参謀総長が記者団に、米陸軍による極超音速兵器や長射程精密誘導兵器導入に伴い、遠方攻撃やSEAD(敵の防空網制圧)、更に米国版A2AD網構成によって米海空軍の作戦を支援することができるようになる等と述べ、将来の統合作戦により広い分野で貢献していくと語りました
対中国作戦で米陸軍の役割と存在感を確保する生き残り戦術ですが、従来米空軍が担ってきた遠方攻撃やSEADや航空阻止任務に、他軍種が乗り出すことに米空軍は批判的で、前空軍参謀総長時代から「高価な遠方攻撃頼みでは米軍が破産する」、「予算厳しき折、軍種間の能力重複は避けるべき」、「軍種間の任務見直しはきちんと議論すべき」等と主張してきました。
McConville米陸軍参謀総長は、SEAD任務に米陸軍はかねてから取り組んできたと主張し、「30年前の湾岸戦争開戦時に、アパッチ攻撃ヘリで敵の前線レーダー基地を粉砕し、米空軍の侵攻ルートを切り開いた」と繰り返し語ったようですが、米空軍協会web記事は、同作戦で米空軍がステルス機や巡航ミサイルや戦闘爆撃機でSEAD任務のほとんどを担ってきたことに陸軍参謀総長が触れていないことを批判的に伝えています
こんな時こそ、統合参謀本部が将来の作戦コンセプトを打ち出し、4軍の役割や予算配分を仕切る役割を果たすべきだと思いますが、予算厳しき中で、各軍種の生き残りと予算確保の動きは「仁義なき戦い」の様相を示しています。Milly統合参謀本部議長は、「予算の伸びは期待できない。せいぜい現状維持が現実の世界だ」と4軍間の争いを戒めていますが・・・・。これが現状であり実態です。
11日付米空軍協会web記事によれば
●11日McConville米陸軍参謀総長は「Defense Writers Group」のバーチャルイベントで、極超音速兵器開発を強力に推進して敵にジレンマを与え、また統合作戦の中でSEAD任務や敵奥地への攻撃(deep strike)にも乗り出していくと語った
●そして「長射程精密攻撃能力は、地域コマンド司令官に複数の作戦オプションを提供する」、「海軍と空軍も敵奥地攻撃に大きな能力を保有しているが、共に統合戦力として任務に取り組んでいく」と表現した
●同参謀総長は、このような能力を担う部隊組織として「multi-domain task force」を編成し、太平洋軍エリアに2個、欧州に1個配置する方向だと述べたが、具体的な配備場所については、オースチン国防長官がアジア太平洋を初訪問するタイミングで、地域諸国との話し合いが行われている段階なので、これ以上は言及できないと発言を控えた
●また、「task force」を現在アジア太平洋地域で試験中だと述べ、極超音速での精密攻撃能力に加え、防空機能や、情報、サイバー、電子戦、宇宙等の能力を備えた部隊だと語った
●米陸軍は新たな任務に挑むのか・・・との質問を受けることもあるが、決してそうではない。米陸軍は30年前の湾岸戦争開戦時、アパッチ攻撃ヘリで2つのイラク防空システムを無効化し、米空軍アセットの侵攻ルートを確保した実績があると、同大将は繰り返し強調した
●更に、「現在は当時のような手法ではなく、異なったやり方で行うことになろう」、「陸軍がSEADを担うことは将来必要なことであり、我々は戦略的な距離の遠方から行い、敵の対処をより困難にする」とも表現した
●そして、「陸軍の長射程能力で米軍のA2AD網を設定し、敵の海上戦力に圧力をかける」とも表現した
●米陸軍戦力が従来空軍が担ってきた遠方攻撃になぜ乗り出すのかとの質問に対しては、沈没する恐れの無い機動力を備えた地上戦力は、24時間、常時利用可能な安定した戦力であり、海空軍戦力が機動展開する間を支えるオプションになると説明した
●海兵隊と並ぶ陸軍のこのような姿勢に対し、Brown空軍参謀総長は昨年5月議会で、宇宙軍が立ち上がったばかりで、国家防衛戦略NDSに取り組む初年度の今、4軍の任務担当について見直すのは適切なタイミングとは思えないとの意見を述べている
/////////////////////////////////////////////////////
更に、昨年4月に当時のGoldfein空軍参謀総長は、「現在の厳しい予算状況を勘案すれば、米軍内に重複投資はないか? より4軍が協力して必要能力を獲得維持する方法はないかと考えることが強く求められている」と訴え、
将来戦に関する多くのウォーゲームの結果を引き合いに出し、長射程兵器(standoff missiles)と使い捨て無人機(attritable aircraft)で構成される「outside force」では勝利できていない、と説明し、最も厳しいシナリオでも勝利できたのは、長射程兵器と従来兵器を組み合わせたハイブリッド戦力(hybrid force of both stand-off and stand-in systems)だけだと主張しています。
また同参謀総長は「長射程兵器のみ戦力推奨派」に対し、そう主張したいのなら分析結果を示せ、国家防衛の責任を負うなら、勢いだけで主張するなと厳しく表現し、将来戦において勝利できるとの証拠を示すべきだと強く訴えていたところです
「米軍人トップ:現実を見よ、予算増加は見込めない!」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-03
遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
米陸軍の目指す長距離攻撃能力
「射程1000nmの砲開発」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「射程1000nm砲の第一関門」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
統合参謀本部など誰か交通整理してください
内輪もめしている場合じゃないですよ・・・
11日、James McConville米陸軍参謀総長が記者団に、米陸軍による極超音速兵器や長射程精密誘導兵器導入に伴い、遠方攻撃やSEAD(敵の防空網制圧)、更に米国版A2AD網構成によって米海空軍の作戦を支援することができるようになる等と述べ、将来の統合作戦により広い分野で貢献していくと語りました
対中国作戦で米陸軍の役割と存在感を確保する生き残り戦術ですが、従来米空軍が担ってきた遠方攻撃やSEADや航空阻止任務に、他軍種が乗り出すことに米空軍は批判的で、前空軍参謀総長時代から「高価な遠方攻撃頼みでは米軍が破産する」、「予算厳しき折、軍種間の能力重複は避けるべき」、「軍種間の任務見直しはきちんと議論すべき」等と主張してきました。
McConville米陸軍参謀総長は、SEAD任務に米陸軍はかねてから取り組んできたと主張し、「30年前の湾岸戦争開戦時に、アパッチ攻撃ヘリで敵の前線レーダー基地を粉砕し、米空軍の侵攻ルートを切り開いた」と繰り返し語ったようですが、米空軍協会web記事は、同作戦で米空軍がステルス機や巡航ミサイルや戦闘爆撃機でSEAD任務のほとんどを担ってきたことに陸軍参謀総長が触れていないことを批判的に伝えています
こんな時こそ、統合参謀本部が将来の作戦コンセプトを打ち出し、4軍の役割や予算配分を仕切る役割を果たすべきだと思いますが、予算厳しき中で、各軍種の生き残りと予算確保の動きは「仁義なき戦い」の様相を示しています。Milly統合参謀本部議長は、「予算の伸びは期待できない。せいぜい現状維持が現実の世界だ」と4軍間の争いを戒めていますが・・・・。これが現状であり実態です。
11日付米空軍協会web記事によれば
●11日McConville米陸軍参謀総長は「Defense Writers Group」のバーチャルイベントで、極超音速兵器開発を強力に推進して敵にジレンマを与え、また統合作戦の中でSEAD任務や敵奥地への攻撃(deep strike)にも乗り出していくと語った
●そして「長射程精密攻撃能力は、地域コマンド司令官に複数の作戦オプションを提供する」、「海軍と空軍も敵奥地攻撃に大きな能力を保有しているが、共に統合戦力として任務に取り組んでいく」と表現した
●同参謀総長は、このような能力を担う部隊組織として「multi-domain task force」を編成し、太平洋軍エリアに2個、欧州に1個配置する方向だと述べたが、具体的な配備場所については、オースチン国防長官がアジア太平洋を初訪問するタイミングで、地域諸国との話し合いが行われている段階なので、これ以上は言及できないと発言を控えた
●また、「task force」を現在アジア太平洋地域で試験中だと述べ、極超音速での精密攻撃能力に加え、防空機能や、情報、サイバー、電子戦、宇宙等の能力を備えた部隊だと語った
●米陸軍は新たな任務に挑むのか・・・との質問を受けることもあるが、決してそうではない。米陸軍は30年前の湾岸戦争開戦時、アパッチ攻撃ヘリで2つのイラク防空システムを無効化し、米空軍アセットの侵攻ルートを確保した実績があると、同大将は繰り返し強調した
●更に、「現在は当時のような手法ではなく、異なったやり方で行うことになろう」、「陸軍がSEADを担うことは将来必要なことであり、我々は戦略的な距離の遠方から行い、敵の対処をより困難にする」とも表現した
●そして、「陸軍の長射程能力で米軍のA2AD網を設定し、敵の海上戦力に圧力をかける」とも表現した
●米陸軍戦力が従来空軍が担ってきた遠方攻撃になぜ乗り出すのかとの質問に対しては、沈没する恐れの無い機動力を備えた地上戦力は、24時間、常時利用可能な安定した戦力であり、海空軍戦力が機動展開する間を支えるオプションになると説明した
●海兵隊と並ぶ陸軍のこのような姿勢に対し、Brown空軍参謀総長は昨年5月議会で、宇宙軍が立ち上がったばかりで、国家防衛戦略NDSに取り組む初年度の今、4軍の任務担当について見直すのは適切なタイミングとは思えないとの意見を述べている
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更に、昨年4月に当時のGoldfein空軍参謀総長は、「現在の厳しい予算状況を勘案すれば、米軍内に重複投資はないか? より4軍が協力して必要能力を獲得維持する方法はないかと考えることが強く求められている」と訴え、
将来戦に関する多くのウォーゲームの結果を引き合いに出し、長射程兵器(standoff missiles)と使い捨て無人機(attritable aircraft)で構成される「outside force」では勝利できていない、と説明し、最も厳しいシナリオでも勝利できたのは、長射程兵器と従来兵器を組み合わせたハイブリッド戦力(hybrid force of both stand-off and stand-in systems)だけだと主張しています。
また同参謀総長は「長射程兵器のみ戦力推奨派」に対し、そう主張したいのなら分析結果を示せ、国家防衛の責任を負うなら、勢いだけで主張するなと厳しく表現し、将来戦において勝利できるとの証拠を示すべきだと強く訴えていたところです
「米軍人トップ:現実を見よ、予算増加は見込めない!」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-03
遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
米陸軍の目指す長距離攻撃能力
「射程1000nmの砲開発」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「射程1000nm砲の第一関門」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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