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米国防省はF-35兵站システムALISを断念しODINへ [亡国のF-35]

新システムODIN対応装備は2020年末から提供
2022年12月までにODINで完全運用体制確立を目指す

F-35.jpg21日、米国防省F-35計画室が、大問題となっているF-35維持整備経費高止まりの元凶である「ALIS:自動兵站情報システム」の運用を諦め新たなシステムODIN(Operational Data Integrated Network)の導入を目指すと発表し、関連装備の導入を2020年末までに開始すると明らかにしました。これは大きな決断です

F-35はその構想の大きな目玉として、米軍が使用するF-35のみならず、世界各国が使用するF-35の維持整備に係るデータをALISで一元管理し、前線整備員が現場でタブレット入力する最新情報を基に、全世界規模での部品の在庫や生産や品質管理を行って部品調達コストを低減し、機体故障データから故障を未然に防止してコストを削減する予測整備を推進し、また故障箇所の自動診断機能で整備員の負担を軽減し、更に部品調達や管理に伴う事務手続きを大幅削減する等の狙いでALISを導入しました

しかしALISはその導入当初からトラブルが多発し、誤った故障アラーム、間違った部品発注、時代遅れで融通の利かない入力端末、ソフト改善が難しく不具合修正が進まないなどの問題が多発頻発し、F-35の維持整備よりALISの世話に時間がとられる等の不満が前線部隊で爆発、ALISを使用しないF-35維持整備の「裏手順」が広く部隊に普及するなど大きな問題となり、会計検査院も繰り返しその問題を指摘する事態となっていました

F-35 2.jpgこのような度重なる各所からの問題指摘にも十分な対応ができないロッキード社に業を煮やし、米国防省F-35計画室はソフト改善特別チーム「Kessel Run」を編成し、米海空軍の関連部署とも連携して、抜本的な改善に昨年あたりから取り組み始めたところでした

しかし昨年11月にはALISに蓄積される全世界のF-35データに関するアクセス権や知的財産権を巡って、ロッキードと国防省側が対立していると空軍長官等らが米議会で訴え根本的な部分で相互信頼がない状況が明らかになりお先真っ暗感が全世界の空軍に広がっていたところです

今回発表されたODINと言うシステムは、ALISを「re-branded as ODIN」と記事は表現していますが、ALISを改良したものなのか、根本から設計したものなのか細部は不明です。

2019年5月にF-35計画室長が飛行時間当たりの維持費の現状を$44000と語り、2024年時点で$34000にまで低下させる見込みだと述べ、目標である2025年の目標である$25000まで抑えることは極めて難しいと証言しましたが、どうなるんでしょうか?

ちなみにF-15やF-16など第4世代機の時間当たり維持費は15000~18000ドルで、米空軍参謀総長も「ステルス性や高度な機能を持つ第5世代機を、第4世代機レベルの維持費で稼働させるのは難しい」と「諦め」発言を昨年行っており、ODIN導入による効果については、「誤作動なく機能する」程度と考えていた方が良いのでは・・・と個人的には思いますが・・・

21日付米空軍協会web記事によれば
F-35 3.jpg●21日、米国防省F-35計画室は、ALIS(Autonomic Information Logistics System)に替えて、2020年末から、より誤作動が少なく、ユーザーフレンドリーで、サイバー攻撃に強いODINを導入すると発表した
●また発表は「ODINが新たなデータ環境を提供する」、「ODINを活用できるハードをF-35部隊に2020年末に提供し、2022年12月までにはODINによる完全運用態勢を確立する」、「ODIN導入により、F-35部隊の即応態勢と維持整備体制は大きく改善する」、「現場勤務者の労力を削減する」、「現場使用者の要望に応え、ソフト作成・改修担当者が迅速にソフト開発可能な体制が整う」とODIN導入の利点を説明している

ただし、「F-35ユーザーにODINを展開するスケジュール調整は今後行う」、「機動展開中の部隊や空母で使用されているALISのODINへの更新については、部隊が帰還してからになるだろう」とF-35計画室は説明している
●またF-35計画室は、「ODINで最も注意しているのは提供データの質であり、そのために我々は、新たなデータ融合環境を優先して整えようとしている」、「そのために、民間企業の優れたデータ管理手法を活用し、シンプルで明確な要求のもとに、信頼できるデータ収集管理を追求する」等とも説明している

F-35 4.jpgF-35計画室長のEric Fick空軍中将は、「ODINの開発は、ロッキード社の出資を受け、国防省のKessel Runチームがリードし、F-35の運用要求を満たして高い稼働率を達成するため、機敏なソフト開発と現場投入を意識して行う」とODIN発表に際してコメントし、
●更に、ALISに替えODINを導入することより、「機体状況データを自動的に収集整理蓄積し、必要な部品の在庫や調達状況を把握し、整備上の注意事項を最新に維持して迅速に提供し、世界のF-35の性能発揮を切れ目なくモニターすることが可能になる」とも説明している

Ellen Lord調達担当国防次官は、最近の記者会見で、F-35維持整備経費の削減がF-35関連の最優先課題だとし、2025年までに飛行時間当たりの維持整備費用を、現在の$35,000レベルから$25,000に削減することを目指すと述べている
ロッキード社は、$25,000にまで維持整備費を削減するするためには「performance-based logistics deal」を国防省と結び、1兆円以上の費用をロッキードが一時立て替えて取り組み、成果が出たら国防省が後に費用を出す方式は必要だと国防省に提案している
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F-35 5.jpg昨年5月に$44000とF-35計画室長が証言していた時間当たりの維持経費が、今の段階で記事が記述する$35,000レベルんい下がっているのか不確かです。ご注意を!

米国防省F-35計画室の発表は、ODINの信頼性が高く高性能と自信満々に説明しており、その出来栄えに期待したいものです。記事では、ALISがサイバー攻撃に脆弱で、国防省基準を満たすために改修が必要だったことも、ODIN導入の背景だと説明しています

記事は、ALISからODINへの変更を「re-branded as ODIN」と紹介しており、実質はALISの改修版なのかもしれませんが、「ハード」の変更がどれくらい必要なのか、誰がその費用を負担するのかが気になります

またこの辺りの予算が、航空自衛隊の来年度予算に含まれているのかも気になるところです・・・・お高いですからね・・・・

ALIS関連の記事
「ALIS問題を議会で証言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-15
「ALISは依然大きな障害」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-02

F-35維持費の削減は極めて困難
「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

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