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F-35維持整備の大問題ALISの後継ODIN導入開始 [亡国のF-35]

2022年12月のODIN運用開始に向け
ロッキード依存やめ国防省主導の後継ODIN導入
まずは海兵隊F-35B部隊から

F-35B.jpg21日、米国防省F-35計画室が、F-35維持整備の最大の課題の一つである兵站自動情報システムALISの後継機種であるODIN(Operational Data Integrated Network)を、米海兵隊Yuma航空基地所属のF-35B部隊に提供開始したと発表しました

F-35兵站自動情報システムのALIS(Autonomic Logistics Information System)は本来、個々のF-35の状態をリアルタイムで把握して故障個所を整備員に知らせ、整備計画を自動立案して提案し、必要な自動部品を発注し、任務計画や訓練記録まで助けてくれるシステムのはずでした。

しかし2000年代前半の思想や技術で設計された同システムは、不格好で(物理的に)重く処理速度も遅く、スマホ操作に慣れた現場整備員には扱いにくく、おまけにソフト不具合が山ほどあり、正常な機体を異常と判断する誤警報が頻発し、部品自動発注も大混乱、必要な基礎データ入力にも長時間必要でスタックも頻発し、会計検査院GAOが訪問した部隊では週に400件も不具合が発生してALISの世話に余計な人員を割く必要があるなど、F-35稼働率が上がらない元凶のひとつとなってきました

ODIN2.jpg更に設計思想が古いALISは設備が大型で重く、機動展開に適さないことからトラブルにつながることも多く、F-35部隊指揮官が演習に参加する際は「ALIS不具合対処」を想定して時間的余裕を確保する必要がある情けない状態だと3月に会計検査院が指摘しているほどです

会計検査院は国防省に対し、ALISの不具合原因と要求性能未達成部分、F-35部隊の稼働率低下程度、それによる損失を明確に示し、1兆9000億円以上投入して開発してきたALISを捨ててODINを導入する説明を求めていますが、明確な回答がないままODINが進んでいる状況です

そんなALISとODINですが、21日の米国防省F-35計画室発表によれば、導入開始のODINは少しはマシなようですので、予定通り2022年12月にODINが運用開始となることを祈りつつ、また日本が余計な追加経費負担を迫られないことを願いつつ、アリゾナ州米海兵隊Yuma航空基地の様子をご紹介しておきます

23日付Defense-News記事によれば
F-35B2.jpg10月21日の米国防省F-35計画室発表によれば、米海兵隊Yuma航空基地に提供が開始されたODIN装備の一部は既に試験的に使用開始されており、9月29日と30日に計5回のODIN装備を活用した試験飛行が無事行われた模様である
搬入されたODINの装備は、ALISの最新ソフト(3.5.2.2 software)を使用して試験飛行を支援しており、今後2022年12月のODIN運用開始までの間で予定されているALISとODINの併用運用にも問題がないことを確認しながら導入が進められている

ALISのサーバーは人間の背丈ほどある大型のラックで提供されており、重量も400㎏程度あることから部隊の機動展開時に支障をきたしていたが、ODINの同装備は重量30㎏程度の旅行用キャリーケース2個ほどの大きさであり、持ち運びが格段に容易になっ
データ処理速度もODINでは改善が見られ、新たなODINハードはALISの約2倍の処理速度で、整備員や部品管理機関からの関連データ入力もALISの約2倍の速度で可能になっていることが確認されている

ODIN3.jpgまた、ALISと異なりODINはクラウド使用を前提として設計されており、システム使用中に見つかったソフトの不具合を修正したなら、オンライン環境で即座に提供して改善することが可能である
国防省幹部はALISとODINの最大の違いについて、「ALISをロッキード社が開発したのに対し、ODINは国防省内の専門チームが主導し、ロッキードや米空軍ソフト開発部署など各所の知見を集約して開発がすすめられている点である」と説明している

Yuma基地での今後の進め方について担当幹部は、「ALISからALISとODINの併用使用体制に移行するため、約1年後の2021年秋に当該F-35B部隊を一時運用休止状態にする。細部の時程については、F-35B部隊の運用スケジュールを優先して柔軟に今後検討する」と説明している
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ODIN4.jpg揚げ足を取るつもりはありませんが、これはあくまでも「米国防省F-35計画室」の発表であり、いわば大本営発表です

機体の状態判定に関する「誤警報」や部品誤発注の問題、現場整備員の使いやすさ等々について改善されたのかアピールがなく、「処理速度が2倍」とのコンピュータシステムとしては微妙な改善と、「今頃ですか」の機材サイズと軽量化の話だけです

今後に期待いたしましょう

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「元凶:ALISとその後継ODINの現在位置」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-17
「ALISを断念しODINへ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-22
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最近のF-35
「中東でかく戦えり」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
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「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

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