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大転換:KC-YとZはKC-46の改修型へ? [米空軍]

つなぎ給油機KC-Y機種選定の可能性は低下しKC-46活用へ
KC-Zでステルス機を追求する従来構想見直し
要求性能精査やKC-46の状況確認が理由らしいが・・・
機種選定のドロ沼回避と予算不足が原因では

Brown4.jpg4月12日、Brown米空軍参謀総長が記者団と懇談し、空中給油機の今後の体制整備について、従来の「KC-X(KC-46)→KC-Y(つなぎ給油機)→KC-Z(ステルス給油機)」との考え方を再検討しつつあり、特別な能力を追加で要求するのではなく、KC-46を適宜改良して使用していく方向も検討しつつあると語りました

この「方針大転換」の理由についてBrown大将は、KC-46が不具合を依然抱えながらも十分使えそうなこと、イラクやアフガン等での中東ニーズが減少したこと、従来ホワイトボードで行っていた給油機運行管理を効率よく実施する「new tools」を導入したからだと、「?」が花火のごとく飛散するほど意味不明な説明していますが、まんぐーすは「ドロ沼の機種選定回避」と「予算確保難」が真の理由だと強く邪推しております

Kendall air.jpg2023年度予算案公表時にKendall空軍長官が、「本件については透明性が極めて重要だと考えており、競争的機種選定の可能性も残ってはいるが、我々の要求事項を精査する中で、KC-Y やKC-Z計画における機種選定実施の可能性は低下しつつある」と語っており、この発言を補足する形でBrown参謀総長は語っています。

まず従来の給油機整備の考え方
KC-Xとして、(ドロ沼機種選定の末に決定した)KC-46を179機2027年までに導入し、老朽KC-135等の後継に

LMXT.jpgKC-Yには、老朽給油機の穴埋めとして、戦闘空域での使用を想定せず米国内訓練や海外への機動展開支援を担う「つなぎ給油機:bridge tanker」を選定導入。KC-46製造修了の2027年頃から、本格ステルス給油機KC-Zまでの間を「つなぐ」機体として導入
(なおKC-Y機種選定は、ボーイングのKC-46改良型と、ロッキードが提案するMRTT(KC-46とドロ沼機種選定を戦った機体)改良型であるLMXTの対決が予期されていた)

KC-Zは将来作戦環境に備え、次期制空機NGADとともに強固に防御された敵空域にエスコート侵攻可能なステルス性を備え、自立性(無人機)追求可能性がある従来給油機より大型の、全く新しいタイプの新型給油機を想定。これが過去3代の米空軍輸送コマンド司令官が継続して主張してきたKC-Z

ところが14日の記者懇談会でBrown参謀総長は
(15日付米空軍協会web記事によれば)
Brown nomination.jpg●先日のKendall長官発言にある程度同意で(do somewhat agree with him)、新たにKC-Yを開発するには時間と資金も必要になるが、そのようなやり方は不要だと考えている。なぜならKC-46は未だに不具合を抱えて改修中であるが、かなり良い仕事(is doing fairly well)をしているからだ
●KC-46はKC-135等より同じ機数で多くの任務を遂行可能なことを示しつつあり、KC-YやZには、KC-46を最新技術で改修近代化することで対応できるのではないかと考え始めている

●KC-Zはどうなるのかとの質問になろうが、次期制空機NGADに追随して敵空域まで侵入する従来語られてきた運用構想を今は持っていない。KC-Zをエスコート型給油機と呼ばないことにした。
KC-46 Flight2.jpg●米空軍はKC-Zについて再検討している。給油オペレーターを廃止して自動化する議論も再検討対象である。ただしKC-46とは異なり、KC-YとKC-Zは自己防御能力を保有し、通信中継ノードとしての役割を担う方向で追求する

●(まだ重大不具合を抱えつつ、要求対象機の7割への給油が可能になっている)KC-46はあまり目立たないが約1か月間欧州に派遣されており、4月22日頃まで現地の作戦を支援して経験を積んでいる
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この空中給油機整備構想の「どんでん返し」「ちゃぶ台返し」は大きな波紋を呼ぶのではないでしょうか? LMXTをエアバス社と組んでやる気満々準備してきたロッキードは、法的な手段に出る可能性も否定できません

KC-46 RVS2.jpgそれに、未だ第1級不具合を抱え、その改修の道筋さえも固まらず戦闘空域で使用できないKC-46を、つい最近まで酷評してきたはずなのに、突然「can likely do the job」とか「is doing fairly well」と表現し、「欧州で経験を積んでいる」とフォローする米空軍首脳陣の「豹変ふり」にただただ驚くばかりです

大きな改革を進めるためには、細事にこだわってられないとの決断の末の発言でしょうから受け止めるとして、真の変更理由は「ドロ沼の機種選定回避」と「予算確保難」だと再度まんぐーすの邪推をご披露しておきます

KC-X,Y,Zの従来の考え方
「つなぎ給油機KC-YにロッキードがLMXTで名乗り」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
「つなぎ空中給油機KC-Yに着手へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-05
「2016年当時の空中給油機後継プラン」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-09-22

KC-46関連の記事
「恒久対策は今も未定」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-11
「50機目受領も恒久対策未定」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-11
「KC-YもXと同じ対決へ」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
「KC-46空中給油機に更に2件の最高度不具合発覚」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-18
「F-22とF-35のデータ中継装置を搭載へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-22
「KC-46空中給油機を一部の任務に投入開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-25
「恒久対策は2023-24年から」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-30
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「重大不具合について3月に手打ち!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-21
「空軍トップが新CEOに改善要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

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