米陸軍訓練センターがウクライナ教訓生かした演習 [Joint・統合参謀本部]
敵役部隊はSNSにすぐ映像を上げ印象操作
都市制圧に無差別都市攻撃を行う敵部隊を想定
1350名の敵役部隊が4500名の精鋭訓練部隊を鍛える
4月17日付Military.com記事は、米陸軍が加州の「National Training Center」でウクライナの教訓を生かした6000名規模の演習を実施している様子を取り上げ、敵側がSNSへの迅速な画像映像投稿で印象操作を行ったり、初期段階で侵略計画が破綻した敵側が無差別都市攻撃に出る想定の訓練を紹介しています。
Christine Wormuth陸軍長官が2日間に渡って同訓練センターを視察し、「国防省等で将来戦について過去約5年間議論してきたが、今まさにウクライナで生起している事象から米陸軍は必死に学んでいる」、「世界中が目撃しているSNSなど情報ドメインの重要性(ロシア側とゼレンスキー大統領の毎日の発信などを例示)」や「装備近代化方向へのフィードバックの必要性」に言及しています
同記事は、米陸軍精鋭部隊4500名が2週間に渡り訓練する様子を紹介していますが、その後はすぐに別の部隊が入れ替わりで訓練センターを訪れ、ロシア語を使用する敵役の1350名規模部隊と、更に新たな戦訓を取り入れた演習を行うことになっているようです。
予算案の議会審議のタイミングでもあり、米陸軍による国民や議会向けアピールの入った対外情報発信の一環でしょうが、6000名規模の演習には長期間の準備が必要であり、記事からはロシアや北朝鮮を意識した寒冷地訓練を実施しているとの記載もあり、興味深いのでご紹介してきます
4月17日付Military.com記事によれば
●同訓練センター司令官Curt Taylor准将は、同訓練センタースタッフはロシア軍の教科書を擦り切れるほど読み込み、米軍兵士がロシア軍などと戦っても勝利できるよう日々努力していると語り、情勢に応じて迅速にカリキュラムを変更すると説明した
●例えば、同訓練センターやルイジアナ州にある訓練センターでは、イラクやアフガンでの活動が盛んな時は対テロ重視にシフトし、米軍の焦点変化に伴い、ロシアや北朝鮮を意識して寒冷地での行動訓練にも焦点をあて、ウクライナの緊張が高まるといち早く様々な新たな想定を訓練に取り入れている
●現在は第1騎兵師団の4500名が訓練部隊で、対抗部隊を同センター所属の第11機甲化騎兵連隊Blackhorseなど1350名が演じている。しかし対抗部隊は実際の敵がやりそうなことは全て展示可能で、通信妨害、電子妨害から非正規作戦やプロパガンダ作戦まであらゆる手法を駆使して敵を演じ、スマホ片手に利用可能な場面や映像を素早くSNS上にアップする体制でも臨んでいる
●訓練部隊指揮官の一人である大佐は、演習では敵味方とも多数の無人機を偵察&攻撃用に使用しており、上空の無人機から発見されないように部隊を隠すことに神経を使うと語り、その他さまざまなトラブルが発生する前線でSNSやツイッターを気にする余裕はないと語っている
●Taylor訓練センター司令官は、現在のウクライナの情勢を踏まえ、無差別に火砲を発射して社会インフラを破壊する敵を相手の都市戦闘シナリオを米軍訓練に提供しており、どのような状況にあっても、味方の他部隊と連携を図って行動する重要性を強調していると説明している
●Wormuth陸軍長官は別の視点で、例えば戦車の今後を考える際、欧州では地盤が柔らかく、中東で必要だった重戦車ではなく軽戦車が重宝しており、戦車に求める機動性や防御力や破壊力をどの程度にするかなどの論点も明らかになっている、と同センター視察時に語っている
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中東想定の対テロ作戦重視からロシアや北朝鮮想定の寒冷地作戦重視に移行し、今度は都市に無差別攻撃を行う敵を想定しての訓練を重視する・・・・そんなに次々と重視項目を変えられるのか???とも思いますが、実際にロシア軍を演じてみて疑問点を明らかにし、ウクライナ前線での情報活動に生かすのかもしれません。
2014年当時の高度なハイブリッド戦を想定していたら、20世紀を想起させる地上戦が目の前で繰り広げらる様子に、米軍も興味津々なのでしょう。ロシア側の部隊通信も筒抜けで、驚くほどロシア軍の混乱ぶりや戦いぶりが把握されているのかもしれません。分析ネタがありすぎて困惑・・・ぐらいなのかもしれませんねぇ・・・
ウクライナ侵略に関する記事
「ウクライナ新緑は日本への警告だ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-25
「露空軍に対する米空軍幹部や専門家の見方」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「中国への影響は?CIAやDIAが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/
「なぜイスラエルが仲介に?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08
「ウ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍」→https://holylandtokyo.com/2022/03/05/2787/
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holylandtokyo.com/2022/03/03/2776/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/28/2763/
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都市制圧に無差別都市攻撃を行う敵部隊を想定
1350名の敵役部隊が4500名の精鋭訓練部隊を鍛える
4月17日付Military.com記事は、米陸軍が加州の「National Training Center」でウクライナの教訓を生かした6000名規模の演習を実施している様子を取り上げ、敵側がSNSへの迅速な画像映像投稿で印象操作を行ったり、初期段階で侵略計画が破綻した敵側が無差別都市攻撃に出る想定の訓練を紹介しています。
Christine Wormuth陸軍長官が2日間に渡って同訓練センターを視察し、「国防省等で将来戦について過去約5年間議論してきたが、今まさにウクライナで生起している事象から米陸軍は必死に学んでいる」、「世界中が目撃しているSNSなど情報ドメインの重要性(ロシア側とゼレンスキー大統領の毎日の発信などを例示)」や「装備近代化方向へのフィードバックの必要性」に言及しています
同記事は、米陸軍精鋭部隊4500名が2週間に渡り訓練する様子を紹介していますが、その後はすぐに別の部隊が入れ替わりで訓練センターを訪れ、ロシア語を使用する敵役の1350名規模部隊と、更に新たな戦訓を取り入れた演習を行うことになっているようです。
予算案の議会審議のタイミングでもあり、米陸軍による国民や議会向けアピールの入った対外情報発信の一環でしょうが、6000名規模の演習には長期間の準備が必要であり、記事からはロシアや北朝鮮を意識した寒冷地訓練を実施しているとの記載もあり、興味深いのでご紹介してきます
4月17日付Military.com記事によれば
●同訓練センター司令官Curt Taylor准将は、同訓練センタースタッフはロシア軍の教科書を擦り切れるほど読み込み、米軍兵士がロシア軍などと戦っても勝利できるよう日々努力していると語り、情勢に応じて迅速にカリキュラムを変更すると説明した
●例えば、同訓練センターやルイジアナ州にある訓練センターでは、イラクやアフガンでの活動が盛んな時は対テロ重視にシフトし、米軍の焦点変化に伴い、ロシアや北朝鮮を意識して寒冷地での行動訓練にも焦点をあて、ウクライナの緊張が高まるといち早く様々な新たな想定を訓練に取り入れている
●現在は第1騎兵師団の4500名が訓練部隊で、対抗部隊を同センター所属の第11機甲化騎兵連隊Blackhorseなど1350名が演じている。しかし対抗部隊は実際の敵がやりそうなことは全て展示可能で、通信妨害、電子妨害から非正規作戦やプロパガンダ作戦まであらゆる手法を駆使して敵を演じ、スマホ片手に利用可能な場面や映像を素早くSNS上にアップする体制でも臨んでいる
●訓練部隊指揮官の一人である大佐は、演習では敵味方とも多数の無人機を偵察&攻撃用に使用しており、上空の無人機から発見されないように部隊を隠すことに神経を使うと語り、その他さまざまなトラブルが発生する前線でSNSやツイッターを気にする余裕はないと語っている
●Taylor訓練センター司令官は、現在のウクライナの情勢を踏まえ、無差別に火砲を発射して社会インフラを破壊する敵を相手の都市戦闘シナリオを米軍訓練に提供しており、どのような状況にあっても、味方の他部隊と連携を図って行動する重要性を強調していると説明している
●Wormuth陸軍長官は別の視点で、例えば戦車の今後を考える際、欧州では地盤が柔らかく、中東で必要だった重戦車ではなく軽戦車が重宝しており、戦車に求める機動性や防御力や破壊力をどの程度にするかなどの論点も明らかになっている、と同センター視察時に語っている
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中東想定の対テロ作戦重視からロシアや北朝鮮想定の寒冷地作戦重視に移行し、今度は都市に無差別攻撃を行う敵を想定しての訓練を重視する・・・・そんなに次々と重視項目を変えられるのか???とも思いますが、実際にロシア軍を演じてみて疑問点を明らかにし、ウクライナ前線での情報活動に生かすのかもしれません。
2014年当時の高度なハイブリッド戦を想定していたら、20世紀を想起させる地上戦が目の前で繰り広げらる様子に、米軍も興味津々なのでしょう。ロシア側の部隊通信も筒抜けで、驚くほどロシア軍の混乱ぶりや戦いぶりが把握されているのかもしれません。分析ネタがありすぎて困惑・・・ぐらいなのかもしれませんねぇ・・・
ウクライナ侵略に関する記事
「ウクライナ新緑は日本への警告だ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-25
「露空軍に対する米空軍幹部や専門家の見方」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「中国への影響は?CIAやDIAが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/
「なぜイスラエルが仲介に?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08
「ウ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍」→https://holylandtokyo.com/2022/03/05/2787/
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holylandtokyo.com/2022/03/03/2776/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/28/2763/
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