米陸軍射程1000nmの砲開発の第一関門間近 [Joint・統合参謀本部]
砲弾1発が5000万円程度以下ならOK
2023年にプロトタイプ完成目指して
16日付Defense-Newsが、中国等のA2AD網突破を企図した米陸軍の「射程1000nmの戦略cannon」開発について、米陸軍の担当幹部や米陸軍参謀総長の発言を取り上げ、2023年にプロトタイプによるデモで装備化を最終判断するという計画の一環として、近々第一関門の試験を行うと紹介しています
担当の米陸軍幹部によれば、日進月歩で進化して脅威が大きくなる中国などのA2AD能力を突破する能力として、米陸軍は「超超音速兵器:Hypersonic Weapon」と「射程1000nmの戦略cannon」の研究開発に取り組んでいるが、「超超音速兵器」は成功しても高価になることが予想され、一発の価格がそれほどでもない「戦略cannon」に期待することろ大ということらしいです
近々試験を実施する第一関門(first gate)の試験(early ballistic tests)の他にも、いくつも関門があり、米陸軍が破産しない程度のコストに収まり、かつ期待する効果が得られるかは現時点で見えないようですが、対中国やロシアにおける米陸軍の存在を示す意味でも、マルチドメイン作戦での米陸軍の地位を確保するためにも、極めて重要な位置づけを担う米陸軍の「top priority」事業となっているようです
今年1月にご紹介した本件の記事第一弾に続く続報です
「射程1000nmの砲開発」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
16日付Defense-News記事によれば
●米陸軍の長射程精密攻撃近代化の責任者John Rafferty大佐は、中国やロシアが防御技術に多くの投資を行い、長射程防空システムや沿岸防御システムなど多重多層な防御兵器と、隙間の無い見通し線外を含む遠方監視レーダーシステムを整備する中、その対処はますます困難になりつつあると現状認識を述べ、
●「米軍の最も高性能の航空機や艦艇でさえも、アクセスの困難に直面しつつある」、「このような多層な敵の長射程防御能力は根本的な問題を突き付けているが、対処法の一つに、敵のA2AD網を突破して敵のネットワークを破砕し、我が統合戦力に対処の機会を提供するする地対地火力が考えられる」、「射程距離が最も重要になる」と説明した
●そして同大佐は、米陸軍が最優先事業の一つとして取り組む射程1000nmの「戦略的長射程Cannon」の第一関門の試験である「early ballistic tests」を、間もなくバージニア州にある米海軍Dahlgren試験場で行うと語った
●また、「戦略的長射程Cannon」は2023年にプロトタイプによるデモンストレーションを予定し、その結果をもって正式な事業化を決定する計画だと同大佐は説明した
●米陸軍は長射程能力獲得のため、「超超音速兵器:Hypersonic Weapon」にも取り組んでいるが、極めて高い技術を要することから、恐らく十分な数量を確保できないと考えられており、そこで短納期でも20発調達可能であろう「戦略的長射程Cannon」が重要になるとも同大佐は述べ、
●更に米陸軍にとっては、今後の開発の幾つかの関門において、その破壊力とコスト面において目標を達成出来るかを吟味することになるとし、「量と価格と破壊力が最も重要な評価側面となる」とコメントしている
●10月1日に就任したばかりのJames McConville米陸軍参謀総長は就任後のインタビューで、「戦略的長射程Cannonが開発できれば、1発何億もせず、1発4-5000万円程度に収まると考えられる。コストがポイントで、そこが気になっている。性能とトレードオフの関係にあるコストが課題だ」、「米陸軍は革新に挑むが、段階ごとに成果を確認し、目標が達成できなければ進めない」と語っている
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ちなみに射程1000nm(1852㎞)と言うと、おおよそ東京から上海までの距離になります。
第一列島戦から中国大陸が約900㎞の500nmですから、第一列島戦の倍の距離、南シナ海でいうと・・・フィリピンのマニラとベトナムの最短距離が1200㎞、バンコクからシンガポールが1500㎞くらいの感覚です
何段階も関門があるようですが、技術的にどの様な物かよくわかっていないので、これ以上のコメントはできません。悪しからず。
統合参謀本部での期待がどの程度なのか聞きたいところです。
1発の価格に関して陸軍参謀総長が語った原文は、「If we are able to develop the strategic, long-range cannon system, the rounds may be only $400,000 or $500,000 compared to multimillion-dollar rounds. Cost does matter, and we are concerned about cost. There are some, definitely, physics challenges in doing these types of things, and that is the trade-off」です。
本件の記事第一弾
「射程1000nmの砲開発」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
米陸軍関連の記事
「米陸軍が欧州で2020年大規模機動演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08-1
「米陸軍は南シナ海でも大規模機動展開演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-30
「米国防省2トップが陸軍出身に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-20
「3軍長官が士官学校問題議論」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「RIMPACで日米陸軍が訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
地上部隊にA2AD網を期待
「RIMPACで日米陸軍が訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14
2023年にプロトタイプ完成目指して
16日付Defense-Newsが、中国等のA2AD網突破を企図した米陸軍の「射程1000nmの戦略cannon」開発について、米陸軍の担当幹部や米陸軍参謀総長の発言を取り上げ、2023年にプロトタイプによるデモで装備化を最終判断するという計画の一環として、近々第一関門の試験を行うと紹介しています
担当の米陸軍幹部によれば、日進月歩で進化して脅威が大きくなる中国などのA2AD能力を突破する能力として、米陸軍は「超超音速兵器:Hypersonic Weapon」と「射程1000nmの戦略cannon」の研究開発に取り組んでいるが、「超超音速兵器」は成功しても高価になることが予想され、一発の価格がそれほどでもない「戦略cannon」に期待することろ大ということらしいです
近々試験を実施する第一関門(first gate)の試験(early ballistic tests)の他にも、いくつも関門があり、米陸軍が破産しない程度のコストに収まり、かつ期待する効果が得られるかは現時点で見えないようですが、対中国やロシアにおける米陸軍の存在を示す意味でも、マルチドメイン作戦での米陸軍の地位を確保するためにも、極めて重要な位置づけを担う米陸軍の「top priority」事業となっているようです
今年1月にご紹介した本件の記事第一弾に続く続報です
「射程1000nmの砲開発」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
16日付Defense-News記事によれば
●米陸軍の長射程精密攻撃近代化の責任者John Rafferty大佐は、中国やロシアが防御技術に多くの投資を行い、長射程防空システムや沿岸防御システムなど多重多層な防御兵器と、隙間の無い見通し線外を含む遠方監視レーダーシステムを整備する中、その対処はますます困難になりつつあると現状認識を述べ、
●「米軍の最も高性能の航空機や艦艇でさえも、アクセスの困難に直面しつつある」、「このような多層な敵の長射程防御能力は根本的な問題を突き付けているが、対処法の一つに、敵のA2AD網を突破して敵のネットワークを破砕し、我が統合戦力に対処の機会を提供するする地対地火力が考えられる」、「射程距離が最も重要になる」と説明した
●そして同大佐は、米陸軍が最優先事業の一つとして取り組む射程1000nmの「戦略的長射程Cannon」の第一関門の試験である「early ballistic tests」を、間もなくバージニア州にある米海軍Dahlgren試験場で行うと語った
●また、「戦略的長射程Cannon」は2023年にプロトタイプによるデモンストレーションを予定し、その結果をもって正式な事業化を決定する計画だと同大佐は説明した
●米陸軍は長射程能力獲得のため、「超超音速兵器:Hypersonic Weapon」にも取り組んでいるが、極めて高い技術を要することから、恐らく十分な数量を確保できないと考えられており、そこで短納期でも20発調達可能であろう「戦略的長射程Cannon」が重要になるとも同大佐は述べ、
●更に米陸軍にとっては、今後の開発の幾つかの関門において、その破壊力とコスト面において目標を達成出来るかを吟味することになるとし、「量と価格と破壊力が最も重要な評価側面となる」とコメントしている
●10月1日に就任したばかりのJames McConville米陸軍参謀総長は就任後のインタビューで、「戦略的長射程Cannonが開発できれば、1発何億もせず、1発4-5000万円程度に収まると考えられる。コストがポイントで、そこが気になっている。性能とトレードオフの関係にあるコストが課題だ」、「米陸軍は革新に挑むが、段階ごとに成果を確認し、目標が達成できなければ進めない」と語っている
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ちなみに射程1000nm(1852㎞)と言うと、おおよそ東京から上海までの距離になります。
第一列島戦から中国大陸が約900㎞の500nmですから、第一列島戦の倍の距離、南シナ海でいうと・・・フィリピンのマニラとベトナムの最短距離が1200㎞、バンコクからシンガポールが1500㎞くらいの感覚です
何段階も関門があるようですが、技術的にどの様な物かよくわかっていないので、これ以上のコメントはできません。悪しからず。
統合参謀本部での期待がどの程度なのか聞きたいところです。
1発の価格に関して陸軍参謀総長が語った原文は、「If we are able to develop the strategic, long-range cannon system, the rounds may be only $400,000 or $500,000 compared to multimillion-dollar rounds. Cost does matter, and we are concerned about cost. There are some, definitely, physics challenges in doing these types of things, and that is the trade-off」です。
本件の記事第一弾
「射程1000nmの砲開発」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
米陸軍関連の記事
「米陸軍が欧州で2020年大規模機動演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08-1
「米陸軍は南シナ海でも大規模機動展開演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-30
「米国防省2トップが陸軍出身に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-20
「3軍長官が士官学校問題議論」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「RIMPACで日米陸軍が訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
地上部隊にA2AD網を期待
「RIMPACで日米陸軍が訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14
第一に思い付いたのがイラクの多薬室砲スーパーガン計画。あれは確か射程700〜800kmでしたか。弾道ミサイルと組み合わせてさらなる射程延長を狙ったものでした。
次いでエースコンバットに出てくる電磁・火薬複合砲ストーンヘンジ。設定上では射程1200kmだと。空想の産物かと思いきや、現実にそれを遥かに上回る大砲がつくられるとは想像だにしなかった。とても興味深い。野心的なプロジェクトですね。
by archange (2019-10-17 19:06)