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ウクライナで戦闘機による制空の時代は終わる [米空軍]

輸送コマンド米空軍大佐が戦闘機族に挑戦状寄稿文
「低高度域:air littoral」を制する露が有利に
無人機の多用や携帯SAMで露が西側を圧倒する
戦闘機による制空の概念とは異なる戦いとなる
NATOは近接航空支援CASが出来ずに苦労する
低高度制空に強気な露を抑止するのは困難
CAS不足を補う地上火砲数でNATOは露に劣る
NATOも無人機を大量調達し火砲を増強すべし
そして戦闘機による制空の概念を再検討せよ

Russian drones.jpg2月7日付Defense-Newsが、米輸送コマンドに所属する空軍大佐と元空軍大学教官の寄稿文を紹介し、ウクライナでの戦いでNATOが前提にしている制空と近接地上支援CASによる侵攻ロシア軍の制圧は非常に危うく、逆に大量の無人機や携帯SAMや電子戦で、通常の制空高度より低い「低高度域:air littoral」を制するロシアが圧倒的に有利だと主張し、NATO側も無人機の導入やCAS不足を補う火砲を早急に増強すべきだと訴えています

寄稿文は冒頭から、欧州米空軍司令官による「同盟国や地上攻撃統制官との連携強化により、NATOの近接航空支援CAS能力に自信を持っている」との発言を「誤った自信だ:such confidence is misplaced」とバッサリ切り捨て、ウクライナでのロシアとの紛争では、ロシア軍の融合された無人機、低高度防空ミサイル、電子戦、在空無人兵器による「低高度域:air littoral」支配が戦いの趨勢を左右し、従来の高高度域の戦闘機等による制空は地上戦闘に十分な影響を与えないと主張しています

Russian drones2.jpgまた寄稿文は、ロシアのゲラシモフ参謀総長が2018年に「近代戦は無人機なしで考えられない。無人機は歩兵、偵察兵、パイロットにも使用される」と語り、ロシアの大量の無人機がレーザー誘導対空火器や短射程SAMや携帯SAMとともに、「低高度域:air littoral」を危険な空間に仕立てるとの構想を示したことを取り上げ、

ロシアが「低高度域:air littoral」を支配すれば、NATOは航空戦力を敵地上部隊に接近させることが困難となり近接航空支援に苦労し、例えF-35を投入しても高高度からしか攻撃できず、ロシア地上部隊に対処余裕時間を与えることになる、と指摘しています

Russian drones3.jpg更に近接航空支援の不足を補うのは地上部隊の火砲だが、NATOは地上支援火力の8割を航空攻撃に依存しているが、ロシア軍は65%を地上火砲で遂行する戦力構成となっており、この点でもロシア軍に有利であると説明しています

もちろんNATO側も、2020年のアゼルバイジャンとアルメニアの「Nagorno-Karabakh紛争」から、無人機が大きな役割を果たす近代戦の変化を学んでいるが、無人機の群れや短射程ミサイルに対する対処能力は不十分であり、低価格で大きな効果を生み出す「低高度域:air littoral」の戦いに適合できていないと喝破しています

Russian drones4.jpg実際、ペンタゴンは無人機対処技術の発掘や開発に懸命に取り組み始めているが、最新の技術を組み合わせても、侵攻する無人機の6割を探知できないのが現状だそうです。

更に重要な点として寄稿文は、ロシアが「低高度域:air littoral」戦法による戦い全体の「a quick victory」に自信を持っているとしたら、NATOが描く従来戦力差での「抑止」が機能しない可能性が高く、極めて危険状態を生み出すとも主張しています

Russian drones5.jpgこの変化に対しNATOが取るべき対応は、CAS不足を補う重火砲と防空システムの緊急増強だがそれには時間が必要であり、現実的な対応は大量に安価な無人機を大量導入したり地上火砲の導入で局所的な航空優勢を確保することであろうと寄稿文は述べています。

ただ、それにもまして、NATO側は「低高度域:air littoral」の重要性を認識していないコンセプトを改め、「航空優勢」や「制空」の考え方を再構築すべきであると寄稿文は訴え、容易ではないがNATOは重要な「低高度域:air littoral」制圧に向かって態勢を整えるとともに、戦闘機や空中戦が輝いた栄光の時代が完全に過ぎ去らないにしても、もはや唯一の重要な要素でないことに気づくべきだ・・・と強烈に結んでいます
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Russian drones6.jpgこの寄稿文が米輸送コマンド所属の大佐(つまり戦闘機パイロットでない幹部からの投稿)と元空軍大学教官によるものであることがポイントです

つまり、非戦闘機族から世界の空軍を支配する戦闘機族に対する「挑戦状」だと認識すべきです。うまく訳せていませんが、この寄稿文の最後の一文が全てを表現しています

「The glory days of fighter planes and swirling dog fights may or may not have passed, but they are no longer the only or most important fights in the sky.」

「ドローン使用作戦の一里塚:アゼルバイジャン大勝利」
https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/

小泉悠氏によるウクライナ情勢分析
2月2日https://holylandtokyo.com/2022/02/07/2698/
12月中旬https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-22

くたばれ戦闘機命派
「広中雅之は対領空侵効果に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-18-1
「小野田治も戦闘機に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-05
「織田邦男の戦闘機命論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-06 
「F-3開発の動きと日本への提言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
「戦闘機の呪縛から脱せよ」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
「大局を見誤るな:J-20初公開に思う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-02 

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