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民間海空輸送アセットを対中国で活用するために [Joint・統合参謀本部]

アフガン脱出作戦での民間輸送力動員の教訓踏まえ
対中国作戦での厳しい「最後の数千マイル」輸送問題

Van Ovost.jpg10月14日、米輸送コマンドの女性司令官Jacqueline Van Ovost空軍大将が記者団に対し、対中国作戦では西太平洋地域に分散して戦うコンセプトが追求され、膨大な兵員・装備・弾薬・補給物資等の輸送を行うには民間海空輸送力の活用が不可欠だが、それら民間輸送アセットが厳しい環境下で有効に活用できるような装備や人員の提供を検討していると語りました

同大将は2021年夏のアフガン退避作戦の教訓を例に、1952年創設の「Civil Reserve Air Fleet;民間予備航空隊」に対し湾岸戦争とイラク戦争に続く3回目の動員を行い、民間航空輸送アセットを避難民輸送に投入したが、これらアセットを軍用機と組み合わせ、どの民間アセットをどの区間で使用するか、どのように意思疎通を図るか等々の検討が極めて複雑で困難な作業となったと振り返り、

Civil Reserve Air.JPG対中国作戦時には遥かに膨大な輸送を可能にし、民間航空アセットだけでなく民間海運アセットを組み合わせ、中国からの攻撃被害を避けるために分散運用を追求している海空軍海兵隊部隊を支えなければならないが、現在の態勢や能力とのギャップを強く懸念していると認め、これまでの能力分析やWarGame等を通じて得た課題と検討中の解決策をテストする演習を来年から数年かけ実施していくと語りました

具体的には、民間の海空輸送アセットにLink-16通信用のキットを搭載することや、民間海運アセットに米海軍の予備役兵を派遣して危険な海域での行動についてサポートすること、民間燃料輸送船に海軍艦艇への給油装置を付加し、港ではなく洋上で給油可能にするオプション等を同司令官が語っていますが、どれもが更に検討や今後検証する段階です

Maritime Security P.jpgVan Ovost司令官は特に海軍海兵隊関連について、「(必要な能力と現状のギャップを把握するため、)米海軍や海兵隊の構想を詳細にフォローしており、今後の海洋作戦補給にどのようなニーズが生じるかや、どのような時程で検討が進むのかを今後数年間。特に注視していく」と述べているところです

また同司令官は、米海軍と海兵隊が次世代の輸送艦として検討している「Light Amphibious Warship」や「Next-Generation Logistics Ship計画」に期待を寄せ、現在は各軍種のアセットとして運用構想が検討されているが、もはや各軍種の枠組みで議論していては実作戦で機能しないとして、その想定能力から統合輸送能力として期待しているとも語っています

Van Ovost2.jpg更に同大将は、輸送力と言う米軍の弱点を中国がついてくると予期し、「中国は米軍の通信妨害に特化した能力を確保し、その範囲は陸海空ドメイン全てに渡っており、米軍による民間輸送力動員を拒否・遅延・低下させることを狙っている」として、北米コマンドやサイバーコマンドとも連携し、民間海空輸会社の拠点である空港や港湾施設へのサイバー妨害や関連調整への妨害を防止することにも言及しています

司令官発言を補足し、米輸送コマンド報道官は、定期的に見直しが行われる輸送ニーズ見積もり「Future Deployment and Distribution Assessment」の最新版をVan Ovost司令官が最終確認中だが、最新の脅威環境や西太平洋を中心とした分散運用を基礎とした作戦構想を踏まえれば、海空輸送に多様な輸送容量と輸送距離能力を持つアセットの適切な配分とチーム編成が不可欠だと説明しています
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Maritime Security P2.jpg米空軍は「ACE構想」を打ちだし、米海兵隊は「stand-in force構想」を打ち出していますが、西太平洋での拠点の確保、必要な弾薬の確保、救難救助体制の問題、そしてこの輸送能力の問題など、作戦運用の基礎に大きな課題が存在していることが次々と明らかになってきています

そんな中でも、空母や戦闘機や爆撃機に大きな予算が配分され、陸海空軍と海兵隊の統合作戦への取り組みは「生煮え」のままです。これだけ台湾などの危機が叫ばれる中ですが、これが現実です

対中国の作戦準備進まず
「統合作戦進まず」→https://holylandtokyo.com/2022/07/06/3396/
「統合指揮システム検討が軍種毎バラバラ」→https://holylandtokyo.com/2022/08/03/3524/
「Data Formatsの相違」→https://holylandtokyo.com/2020/11/24/394/
「米空軍戦術構想ACEの課題」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/
「比新大統領が中国との関係強化示唆」→https://holylandtokyo.com/2022/07/08/3450/

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米海軍と海兵隊が気候変動対処演習を強化 [Joint・統合参謀本部]

今夏に影響大なアジア太平洋対象の机上演習を実施
5月に発表の気候変動対処戦略を検証
米軍の中で海軍海兵隊が最も影響を受けると危機感

Navy Climate Action.JPG9月7日付Defense-Newsは、同日開催のイベントで米海軍施設環境担当次官補が、気候変動がもたらす海面上昇や干ばつや大型台風などの異常気象に対する危機感から、今年5月に発表した米海軍省の気候変動対処戦略「Climate Action 2030 strategy」を検証すべく、今夏に米議会や専門家や(恐らく)同盟国も交えアジア太平洋を対象とした机上演習を実施した教訓などを断片的ながら語ったと紹介しています

米海軍省の「Climate Action 2030 strategy」は、バイデン大統領による大統領令「通称:Tackling the Climate Crisis at Home and Abroad」が示した「気候変動は、我々の時代の最も大きな不安定要因の一つだ」との危機認識を受け、国防省が2021年10月に発表した「気候変動対処プランCAP(Climate Adaptation Plan)」に基づいて作成されたものと位置付けられます

Navy Climate Action2.jpg今夏にDCの「Marine Barracks Washington」で実施された机上演習には、米海軍海兵隊関係者のみならず、米議会、国防省、他政府機関、シンクタンク、産業界、非営利団体等々も参加した模様で、気候変動問題への対応が米軍や国防省の範囲では対応困難であることを示しています

演習で得られた成果や教訓としてMeredith Berger海軍次官補は、関係者間で、気候変動が任務遂行にどのような影響を与え、関係機関の協力により影響がどのように緩和できるかを共有できたことを上げ、更に、全体に影響を与える単一障害点(SPOF:single point of failure)を特定することや、関係する事項の計画段階から気候変動予想を組み込んでおくことの重要性等を上げています

Navy Climate Action3.jpg特に同次官補は、関係者間のパートナーシップの重要性を強調し、関係者の様々な視点を持ち寄ることで、様々な兵站上の懸念事項を浮き彫りにできたと、7日のイベントで語っています

5月に発表した米海軍省の対処戦略では、「我々は気候変動危機に狙われている:are in the crosshairs of the climate crisis」と、米軍の中で最も影響を受けるのが海軍と海兵隊との危機感が強く示され、Norfolk海軍基地やParris Island海兵隊基地などが米本土では海面上昇や風水害の影響を受ける高リスク拠点として挙げられているようです

また記事は、アジア太平洋地域を対象とした夏の机上演習シナリオには、台風に襲われ被害を受ける同盟国対応などが含まれていたと伝えています
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Navy Climate Action4.jpgこの夏にパキスタン国土の1/3が被害を受ける大水害は発生するなど、気候変動の安全保障環境への影響度は目に見えて大きくなっています。

ご紹介できたのは、米海軍と海兵隊が危機感を持ち、広く関係者を集めて夏に机上演習を行い、関係者の協力が重要だとの教訓を得た等々の部分的内容ですが、ここ最近の日本で見られる豪雨等から見ても、「今そこにある危機」になりつつあると考えるべきでしょう

「Climate Action 2030」の現物32ページ
https://www.navy.mil/Portals/1/Documents/Department%20of%20the%20Navy%20Climate%20Action%202030.pdf

2021年10月の国防省対処指針発表
「米国防省が気候変動対処構想発表」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/
「米空軍が世界中の作戦天候予報にAI導入推進」→https://holylandtokyo.com/2022/07/19/3385/ 

排出ゼロや気候変動への取組み関連
「米陸軍が前線での電力消費増に対応戦略検討」→https://holylandtokyo.com/2022/04/25/3138/  
「米空軍が航空燃料消費削減を開始」→https://holylandtokyo.com/2022/02/16/2691/
「米国防省は電気自動車&ハイブリット車導入推進」→https://holylandtokyo.com/2021/11/15/2423/
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holylandtokyo.com/2020/09/25/487/
「英空軍トップが熱く語る」→https://holylandtokyo.com/2021/12/03/2474/
「英空軍が非化石合成燃料でギネス認定初飛行」→https://holylandtokyo.com/2021/11/19/2444/
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07

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バーチャルでMQ-25がE-2DやP-8とのISR任務連携成功 [Joint・統合参謀本部]

約1年ぶりに米海軍無人給油機MQ-25をご紹介
昨年FA-18、E-2D、F-35Cへの空中給油試験に成功
2025年の初期運用態勢IOC確立めざし

MQ-25 6.jpg米海軍の無人空中給油機MQ-25に関しボーイング開発担当責任者が、今年5月に米海軍や空軍関係者約100名に対し、バーチャル環境でMQ-25がFA-18やP-8やE-2Dからの指示を受けつつ、ISR任務を遂行可能なことを披露していたと明らかにした、と9月16日付Defense-Newsが報じました

MQ-25は米海軍が空母に初めて搭載予定の無人機で、構想検討当初の2014年頃には無人攻撃機が想定されていましたが、2016年には空中給油主任務で開発が始まった機体で、2021年6月にFA-18、8月にはE-2C早期警戒機、そして9月にはF-35Cへの空中給油試験に成功し、12月には空母ブッシュで甲板上取り回し試験の第1弾を行って2025年の初期運用態勢IOCに向けた準備が進んでいます

MQ-25 refuel.jpg米海軍とボーイングは、まず空中給油機としての空母運用を確立することを第一目標としていますが、ボーイング内ではISR任務や更なる任務、他機との連携に向けた技術成熟の試みが並行して行われており、そのアピールの一環として「5月」に実施のデモ披露会の様子が今ごろになって公開されてたようです。なぜ4か月遅れの情報公開なのかは不明です

5月に4日間に渡り約100名の米海空軍関係者に披露された「virtual demonstration」では、ボーイングが製造するFA-18シミュレータ実物を披露会場に持ち込んで、MQ-25との連携や他機とMQ-25の連携飛行の可能性を証明して見せたようです

バーチャルデモの概要
MQ-25 E-2D.jpg●空母から空母管制装置の指示に従って離陸後、指定された地点まで飛行したMQ-25は、その後飛行中のFA-18やE-2D早期警戒機やP-8対潜哨戒機にから飛行指示や任務指示を受ける
●FA-18等からMQ-25への指示には、ISR任務飛行に関する飛行ルートや飛行諸元、飛行制限や禁止区域情報等が含まれた。

MQ-25 F-35C.jpg●指示を受けたMQ-25が収集したISR情報は、リアルタイムで飛行中のFA-18等と共有され、必要に応じてFA-18等から追加の任務指示を受け作戦を遂行した。任務終了後はFA-18等の指示により空母周辺まで飛行し、空母への着艦時は空母管制室からの管制を受けた
●MQ-25と空母や他機との通信には、「周波数形式が特定困難な通信方式:waveform-agnostic communications architecture」が使用可能であることが立証されていることや、対潜哨戒機P-8とMQ-25間の連携は300NM離れていても可能であることなどがデモでは紹介された

ボーイングのBD Gaddis開発担当責任者は・・・
●空中給油機としての運用態勢確立予定の2025年までを見据えた計画を優先して進めているが、同時にISR任務や他の任務へのMQ-25の応用までを視野に入れた技術成熟にも着手している
MQ-25.jpg●例えば、MQ-25操縦権限を空母から他機に移管する際のサーバーセキュリティ確保や、任務遂行プランの自動立案、更には他の米海軍アセットとの連携や相互運用性強化に向けた技術成熟にも取り組んでいる

●我々はこれまでの開発経緯を踏まえつつ、南シナ海での戦略的飛行任務を見据えた、開発要求性能を超えた応用にも目を向けて取り組む必要があると考えている
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MQ-25 F-35C 2.jpg記事は冒頭に「virtual demonstrationでFA-18等との連携ISR任務遂行が可能なことを証明した」と記載されていますが、「P-8と300NM離れていても連携可能」や、「周波数形式が特定困難な通信方式」が機能するとの話など、バーチャルでなさそうな話も含まれており、約100名への披露がFA-18シミュレータを使用した点がバーチャルだったのかもしれません・・・

いずれにしても、MQ-25は米海軍で数少ない順調なプロジェクトそうで、何と言っても空中給油機は対中国に非常に重要なアセットですので、生暖かくフォローしてまいります

MQ-25関連の記事
「F-35Cへの給油に成功」→https://holylandtokyo.com/2021/09/17/2250/
「着艦誘導装置JPALS導入中」→https://holylandtokyo.com/2021/09/10/2210/
「FA-18への給油に初成功」→https://holylandtokyo.com/2021/06/10/1897/
「MQ-25操縦者は准尉で処遇」→https://holylandtokyo.com/2021/01/04/290/
「試験用空母確保難で3年遅れか?」→https://holylandtokyo.com/2020/06/18/626/
「空母艦載機の2/3を無人機に」→https://holylandtokyo.com/2021/04/06/100/
「MQ-25地上から初飛行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-20
「2019年6月の状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-04
「MQ-25もボーイングに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-01-1
「NG社が撤退の衝撃」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-29-1
「提案要求書を発出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-13
「MQ-25でFA-18活動が倍に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-03
「MQ-25のステルス性は後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-27 
「CBARSの名称はMQ-25Aに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-17
「UCLASSはCBARSへ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-02
「UCLASS選定延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-05-1

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米潜水艦の最先任軍曹に初の女性 [Joint・統合参謀本部]

米潜水艦への女性乗艦は2011年に士官でスタート
戦略原潜ルイジアナの先任軍曹に海軍勤務20年の女性が
潜水艦内で女性シャワー室を盗撮する事案等問題も発生する中

Koogler.jpg8月29日付米国防省広報サイトdvids記事は、女性初の潜水艦先任軍曹(COB:Chief of the Boat)に、8月22日付で「Angela Koogler」Master Chief Information Systems Technicianが就任したと報じました。

米海軍の潜水艦に女性の乗艦が認められたのは、士官が2011年、下士官は2016年であり、2002年に米海軍に入隊したKoogler先任軍曹は、女性下士官潜水艦搭乗員の第1期として巡航ミサイル潜水艦USS Michiganに2016年5月に乗り込み潜水艦勤務を始め、戦略ミサイル原子力潜水艦USS Louisianaで潜水艦先任軍曹「COB」としての勤務を開始したということです。

USS Louisiana2.jpg同記事によれば、Koogler先任軍曹の潜水艦乗艦経験は「36か月間」と言うことで、2016年にUSS Michigan乗艦を開始後、継続して潜水艦に乗艦していたわけではなく、今回戦略原潜USS Louisianaに勤務を命ぜられる直前は、USS MichiganとLouisianaの両潜水艦を保有する「Submarine Squadron 19」で地上勤務をしていますが、計20年の海軍勤務実績から今回の女性初の任命に至ったと記事は報じています

ご本人は同記事で、母親が米空軍Wright-Patterson基地で33年間文民職員として働き、その姿を見て成長する過程で米軍人として勤務したいと思うようになり、高校卒業後すぐに米軍に入隊したかったが、高校時代にサッカーで足首を痛めて一度は断念し、大学卒業後に23歳で再びチャレンジして海軍に下士官として入隊して軍人キャリアをスタートしたとのことです

Koogler2.JPGその後2016年に女性下士官に潜水艦乗艦の道が開かれた際は、同僚からの勧めもあり、迷いなく潜水艦乗員に手を上げたとのことです。

Koogler先任軍曹は初の女性「COB」就任に当たり、「与えられた仕事を成し遂げたものは誰でも、組織の一員として一体的で融合された扱いを受けるべきである」、「我々は継続して見えないバリアーを崩し、全ての海軍兵士がその恩恵を受けるようになるべきだ」と述べ、

USS Louisiana.jpg更に今後の目標は、「米海軍に入隊した時に接した最初のCMO(所属コマンドの先任軍曹:command master chief)であったFloyd O’Neill氏であり、彼のように部隊の下士官たちが何をしたいか、何を言いたいかを理解して兵士に接し、彼らの成長を応援するような存在を目指し、更に自分を成長させるため新たな任務に挑戦していきたい」と力強く語っています

このような生い立ちと、純粋な思いで米海軍での勤務に邁進するKoogler先任軍曹の今後の活躍を、心から祈念して応援したいと思いますが、女性に潜水艦勤務の門戸が開かれた2011年以降の受け入れが、順調だったわけではありません。

Koogler3.jpg8月31日付Military.com記事によれば、2014年にはUSS Wyomingで女性士官がシャワーを浴びる様子を盗撮した水兵が逮捕されたり、2019年にはUSS Florida乗員女性兵士の名前が入った卑猥なコメント入りレイプ対象候補リストが艦内で出回ったことで艦長等が更迭される事態も発生しており、閉鎖社会である潜水艦での女性受け入れがそう単純でないことを物語っています
 
ただただ、Koogler先任軍曹の「武運長久」を願う次第です

軍での女性を考える記事
「米海軍Blue Angelsに初の女性パイロット」→https://holylandtokyo.com/2022/07/21/3484/
「沿岸警備隊司令官に女性が」→https://holylandtokyo.com/2022/04/07/3112/
「初の女性空母艦長が出撃」→https://holylandtokyo.com/2022/01/07/2587/
「技術開発担当国防次官に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/26/2649/
「初の女性月面着陸目指す」→https://holylandtokyo.com/2021/07/05/1935/
「黒人女性が初の海軍戦闘操縦コース卒業」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
「初の米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「上院議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19
「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11

女性徴兵制度がある国
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等目指し:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉業務選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

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米空軍オスプレイ飛行停止も海軍海兵隊は継続運用中:9月2日に飛行再開指示 [Joint・統合参謀本部]

米空軍特殊作戦軍がオスプレイ飛行再開指示

飛行停止から約18日後の9月2日(金)に、3日又は4日に飛行再開と発表
離陸後すぐにフルパワーにするのではなく、クラッチ滑りがないことを確認するため 2 秒間のホバリング確認を指示
飛行停止にしていない米海兵隊が以前から行っていたと同様の確認手順を追加して飛行再開へ
クラッチにスリップが発生する根本原因は依然不明も・・・
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エンジンとプロペラを繋ぐクラッチのスリップ問題
2010年以降15件の同事案発生も、最近6週間で2件空軍で
過去大事故や負傷者なしで、10件発生の海兵隊は対処徹底済と

osprey v-22.jpg8月17日に米空軍が空軍特殊作戦軍保有のオスプレイ(CV-22)全52機に対し、エンジン動力をプロペラに伝える「クラッチ:clutch」関連のスリップ(slip)トラブルが過去6週間で2件連続して発生したことを受け、飛行停止を命じたのに対し、

オスプレイ(MV-22)を296機保有する米海兵隊は、同問題を2020年から把握して対応要領を十分教育等しているので飛行停止にはしないと同18日に明らかにしました。なお、同トラブル発生経験がない米海軍(約40機輸送機CMV-22Bとして保有)も継続飛行すると明らかにしています

Osprey V-22 2.JPGこのオスプレイのクラッチトラブルは、エンジンの回転をプロペラに伝えるギアボックス内のクラッチにスリップが発生して動力が十分にプロペラに伝わらない現象で、発生時にはもう一つの正常なエンジンに動力源が自動的に切り替わって墜落を防止するように設計されていますが、トラブル発生時には直ちに安全な場所に緊急着陸するよう運用マニュアルが定めています

18日の発表で米海兵隊は、2010年から同事案を把握しており、米軍全体で過去に15件同事案が発生して内10件が海兵隊保有機で発生していると明らかにしましたが、いずれも緊急着陸して対処し、機体の破損や死傷者の発生はありません

Osprey V-22 3.jpgオスプレイの米軍全体での総飛行時間は約68万時間で、その内53万時間を米海兵隊機が占めており、海兵隊はこれまでの経験から「同事象の2/3は離陸直後に発生」「米海兵隊が定める、離陸直後に高度約10mのホバリング状態で行う機体チェックで兆候察知が重要」「事象発生時の対処要領を十分教育訓練している」とし、

更に「海兵隊機(海軍機も)は、離陸後直ちに艦艇や空母周辺の比較的安全な地域での洋上飛行になることが多く、空軍特殊作戦軍機が脅威に近接した地域で運用されるのとは使用環境が異なる」等の理由で飛行停止にしないと海軍報道官等が説明しているようです

Osprey V-22 4.JPG一方の米空軍は、17日の飛行停止発表で「2017年以降、同事象を把握している」と述べ、米海兵隊の認識(2010年から把握)とずれていると記者団から突っ込まれているようですが、何時まで飛行停止するのか? 飛行停止をしてどのような措置を行うか等について明らかにしていません。

ただ、飛行継続を決定した海兵隊も同事象を放置しているわけではなく、追加で同事象発生を早期に搭乗員に知らせるアラームを今後数年かけて装備する検討を進めており、海空軍とも以前から緊密にオスプレイの状況については情報共有を図っているとしています

ちなみに同事象が発生した場合、トラブル程度によりギアボックスやエンジンの交換を行う必要があり、最低でも3億円が修理に必要になるということです。
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Osprey V-22 5.jpg垂直離着陸を行う回転翼機は、機体振動が大く、機体にねじれトルクがかかることもあり極めてデリケートです。本事象の陸上自衛隊保有機(現状9機、計17機導入予定)への影響が気になるところです

導入時にあれだけ「空飛ぶ棺桶」等と揶揄されたオスプレイですが、運用開始後は安定した飛行を継続しており、今年3月に4名、6月に5名の死亡事故が発生して海兵隊は1日飛行停止にして安全教育を再徹底したところですが、人的ミスが原因らしく、装備安全性の面では「優等生」だと思います。

既に計400機以上が納入され、68万時間以上の飛行実績があるオスプレイですから、そろそろ「クラッチのスリップ」問題にも根本的対策が打たれるよう願うところです。

2015年以前のオスプレイ関連記事
「海兵隊:オスプレイ需要急増」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2015-08-19
「オスプレイと空中給油」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-12
「空軍は救難には活用せず」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-03
「海軍もオスプレイ導入へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-17-1
「ミサイル発射試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-14
「日本がオスプレイ導入決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-19
「オスプレイ整備拠点で日韓対決」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-14
「イスラエルへ海外初輸出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-02
「少なくとも100機海外で売る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-19

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米海兵隊stand-in force構想実現に3MLRが奮闘中 [Joint・統合参謀本部]

2023年9月の運用態勢確立に向けRIMPACで訓練
センサー、通信機能、対空兵器、打撃力等をセットで「In」
米空母打撃軍の進出を支援するため敵艦艇を撃破など
約2000名体制で任務に応じて派遣部隊をチョイス

3rd MLR.jpg8月10日付Defense-Newsは、2021年12月発表の「A Concept for Stand-In Forces」に基づき米海兵隊が新たに編成した「Stand-In」部隊3MLR(第3沿岸海兵旅団:3rd Marine Littoral Regiment)が、2023年9月の初期運用態勢確立IOCに向け、組織編制や装備品選定や運用要領確立のための訓練や検討を精力的に進めている様子を紹介しています

3rd MLR6.jpgこの「Stand-In Forces」構想に基づく第3MLRは、通常の海兵隊部隊が有事に一番乗りで敵の戦力域内WEZ(weapons engagement zone)に乗り込む構想なのに対し、第一列島線上を想定した敵WEZ内に存在して敵情をリアルタイムで味方と共有するほか、「sea-denialやsea-control」作戦を行い、味方統合戦力部隊の進出を助けるイメージの部隊です

記事は典型的な運用例として、米空母戦闘群CSGが通峡するような場合に、第3MLRからの派遣部隊がWEZ内の島の沿岸部に位置し、自ら探知又はネットワークから入手した敵艦艇を攻撃するパターンを、6月末から8月4日まで実施されていたRIMPACで訓練したと伝えています

3rd MLR2.JPG2022年3月に約2000名で仮編制されたばかりの第3MLRは、この任務を遂行するため多様な機能を指揮官である大佐の下に機能的に編成することを目指していますが、検討すべき事項も多く残されており、どの機能にどの程度の装備と人員を保有するかや、どのような新装備を導入すべきか、またどのような状況でどの程度の派遣部隊を編成するかを今後の演習とを通じて検証していくとのことです。

対中国作戦で、遠方からの極超音速兵器や長射程精密誘導ミサイルや巡航ミサイルなどの攻撃能力強化ばかりが話題になる米軍にあって、数少ない前線密着部隊ですので、近況を断点的ながらご紹介しておきます

8月10日付Defense-News記事によれば
3rd MLR3.JPG●第3MLR 内に、2022年2月に対空監視から味方部隊の航空管制までも担当する「対空大隊」を編成し、6月には攻撃能力を担う「第3沿岸戦闘チーム」や文字通りの「戦闘兵站大隊」が再編成され、RIMPACでも訓練に参加した
●2023年9月の初期運用態勢確立に向けては、軽着上陸用艦艇の「stern landing vessel」や、長距離運航が可能な「unmanned surface vessel」導入が重要なカギとなるが、無人艦艇に関しては検討チームの調査が夏に開始される。このように「stand-in force」の迅速かつ適時の機動展開に向けた検討も佳境を迎える

3rd MLR5.JPG●2022年秋には、第3MLRの打撃力強化の大きな柱である、前述の「第3沿岸戦闘チーム」の下に「Medium Missile部隊」が編成される予定である
●2023年2月には、米海兵隊が第3MLRのための大規模演習を南部加州で計画し、その成果を踏まえてフィリピンでの「Balikatan演習」に臨む予定である。フィリピンは西太平洋の同盟国の中でも第3MLRに関心の高い国の一つで、似たような機能の部隊を自国で編成しており、同盟国との連携強化面でも米国として重要な演習となる

●そして2023年秋には太平洋軍米海兵隊として大規模な演習を行い、第3MLR以外の米海兵隊の多様な能力との連携も披露し、第3MLRの初期運用態勢確立につなげる計画となっている
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3rd MLR4.jpg記事では上で紹介した以外に、目標情報をはじめとする各種情報のリアルタイム共有方法や、同盟国等も含めたセンサー情報や攻撃力の融合運用など、様々な課題の存在を示唆しています。

「stand-in force」なのですが、任務に応じて適切な派遣部隊を編成して展開させる・・・とのイメージで説明されており、また、3MLR(第3沿岸海兵旅団:3rd Marine Littoral Regiment)の部隊や本部がハワイに所在する実態からも、「stand-in force」の意味するところを慎重に理解する必要がありそうです

自衛隊との連携も密になると考えられる部隊ですので、「3rd Marine Littoral Regiment」をよく覚えておきましょう

2022年5月時点でのstand-in force構想進捗
「米海兵隊のstand-in force構想」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/

「A Concept for Stand-In Forces」の現物32ページ
https://www.hqmc.marines.mil/Portals/142/Users/183/35/4535/211201_A%20Concept%20for%20Stand-In%20Forces.pdf?ver=EIdvoO4fwI2OaJDSB5gDDA%3d%3d

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06

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米陸軍が機動性&生存性の高い前線指揮所を求め [Joint・統合参謀本部]

MASCP:Mobile And Survivable Command Post project本格化
機動性、アンテナ性能、強靭データ貯蔵、隠蔽性、発電力など追

MASCP2.jpg7月27日付Defense-Newsが、米陸軍が開始した将来前線指揮所の在り方検討MASCP(Mobile And Survivable Command Post)projectについてレポートし、本格紛争に備え、様々な専門家や技術者と新たな候補装備品を今年夏にも試験している様子を紹介しています。

米陸軍はこの前線指揮所改革を陸軍の指揮統制改革プロジェクト「Project Convergence」と連携させ、最終的には国防省のJADC2(統合全ドメイン指揮統制プロジェクト)との一体化も2026-27年頃に目指したいとする取り組みですが、現状の前線指揮所が持つ、輸送が大変で、多量の熱や音や電磁波を放出して敵に発見されやすく脆弱で、通信能力が限定的で、最新デジタル技術に追随不十分だ等々の弱点を改善する方向を目指しているようです

MASCP.jpg技術分野で革新を目指している分野には、機動性改善、より遠方と接続可能なアンテナ性能、強靭なデータ貯蔵能力、指揮所のカモフラージュ技術や素材開発、自立可能な自家発電力確保、指揮所全体の物理的防御要領(banking)などが含まれ、プロジェクト責任者Tyler Barton氏は「現状の脆弱性を克服し、本格的脅威に対峙する生存性確保が大きな課題だ」と語っています

今年の夏には、New Jersey州で実施されたNetModX (Network Modernization Experiment)に、MASCP project用の新装備候補がいくつも持ち込まれ、特に今年は機動性確保と熱・音・電磁波放射の抑制に主眼が置かれたテストだったようで、来年は更に対象を拡大して数週間のNetModXに臨む計画だそうです

MASCP3.jpgBarton氏は「送信機やセンサーを高所に配置するタワーなどなど、様々な新インフラ試行導入でチャレンジングなテストを行うことができたが、様々な関係者のチームワークが素晴らしかった」と、様々な産業界の専門家や技術者の支援も得てテストが行われた様子を紹介し、MASCP project初期段階の成果に手ごたえを感じていると語っています
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極めて地道な取り組みながら、極めて重要なプロジェクトだと思います。対テロ戦から本格紛争への頭の切り替えに際し、とても大事なパーツです。以下の話が良くその点を表現しています。

2016年8月の講演で当時のNeller海兵隊司令官は自虐的に
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-16
Neller6.jpg●最近のある海兵隊演習で、展開先での前線司令部設置訓練を行い、仮設指揮所に大きなカモフラージュ用ネットが被せられた。敵の航空攻撃を想定する必要が無かった最近の実戦では、あまりやらなかった訓練だ。
●ネットの偽装効果確認のため上空からの映像で検証すると、仮設指揮所の周りの様々な通信ケーブルやワイヤーが太陽光を反射し、敵なら容易に重要な施設が中心に隠されていることが発見できる状態だった。そしてその欠陥に部隊の誰も気付いていなかったのだ
●これまでの対テロ戦の敵とは、異なる相手と本格紛争では対峙する現実を直視し、自分自身の姿を見直し、考え方を変えなければダメだと教育している

米海兵隊の前線指揮所カモフラージュ能力低下の衝撃
「海兵隊司令官が嘆く現状」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-16

Project Convergenceについて
「2021年末までの教訓」→https://holylandtokyo.com/2021/12/21/2514/
「米陸軍と海兵隊F-35が情報共有演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-13

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米海軍Blue Angelsに初の女性パイロット [Joint・統合参謀本部]

76年の歴史を持つアクロバット飛行チームに
下士官から士官に、そして海軍操縦者になった異色の経歴
Amanda Lee大尉のご活躍に期待

Amanda Lee2.jpg7月18日、米海軍アクロバット飛行チームBlue Angelsが、9月から同飛行隊に所属する新メンバーを発表し、同飛行隊が1946年に編制されて以来初めて、演技飛行を行う機体(FA-18 Super Hornets)のパイロットに女性が選ばれたことが明らかになりました。

Blue Angels2.jpgBlue Angelsは、米海軍航空部隊の存在を広く世に知らしめるため、当時米海軍トップだったChester Nimitz提督により1946年に編成され76年の歴史を誇っていますが、55年前に地上勤務要員として同飛行隊への女性受け入れが始まり、2015年にはKatie Cook少佐が同部隊所属の空中給油機KC-130パイロットとしてBlue Angels所属となっていましたが、主役のアクロバット機パイロットへの女性配置は初めてとなるようです

Amanda Lee.jpg史上初として選ばれたのはAmanda Lee大尉で、少し変わったご経歴です。2007年に下士官として米海軍に入隊し、航空機搭載電子機器整備員としてキャリアをスタートしますが、下士官から士官を登用する制度(通称:水兵を提督に計画:Seaman-to-Admiral program (STA-21))により2013年に士官になり、操縦教育カリキュラムを経て2016年4月に米海軍操縦者に認定された経歴の持ち主です

米海軍初の女性パイロットは、1974年に当時のRosemary Mariner大尉ら6名が選ばれていますが、1993年までは戦闘任務部隊への配属は認められず飛行教育部隊のみの配置でした

Mariner2.jpgしかし同大尉はその後1982年に女性初の空母艦載機パイロットとなり、艦上攻撃機A-7コルセアなどを操縦、1992年からの湾岸戦争時には女性初の空母艦載飛行隊長(VAQ-34)として活躍しています。なおMariner氏は24年の米海軍勤務を終え、1997年に大佐で退役されています(故人)
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米海軍Blue Angelsは、高度なアクロバット飛行や編隊飛行を披露する部隊ですので、パイロットとして操縦技量が高くないと選ばれることはありませんが、米海軍のみならず米軍全体でパイロット志願者が激減し、軍操縦者の民間航空会社への流出が止まらない中、Amanda Lee大尉が選抜された背景には、「下士官から士官への登用制度出身者」&「女性初」とのアピールポイントがあるのだろうと邪推しています

Blue Angels.jpg映画「トップガン・マーベリック」の大ヒットで、1986年公開の初代「トップガン」当時に米海軍パイロット志願者が10倍になった「2匹目のどじょう」を狙う米海軍ですが、Blue Angelsへの「女性初」のインパクトはいかほどでしょうか。

誤解なきよう、最後に申し上げますが、下士官から花形ポストBlue Angelsメンバーに選ばれたAmanda Lee大尉には、敬意と尊敬と称賛の思いしかありません。ご活躍と飛行安全を心よりご祈念申し上げます

軍での女性を考える記事
「沿岸警備隊司令官に女性が」→https://holylandtokyo.com/2022/04/07/3112/
「初の女性空母艦長が出撃」→https://holylandtokyo.com/2022/01/07/2587/
「技術開発担当国防次官に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/26/2649/
「初の女性月面着陸目指す」→https://holylandtokyo.com/2021/07/05/1935/
「黒人女性が初めて米海軍戦闘操縦コース卒業」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
「初の米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「上院議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19
「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11

女性徴兵制度がある国
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等目指し:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉業務選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

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大平洋軍に予算投入増も米軍の統合運用進まず [Joint・統合参謀本部]

グアムや周辺にインフラ予算急増も
移動艦艇攻撃能力や弾薬備蓄の不足は20年間変化なし
4軍は各軍の利害優先で統合作戦煮詰まらず

PACOM3.jpg6月23日付米空軍協会web記事が、2023年度予算に米議会で対中国予算の施設整備などが追加され、グアムかハワイにJTF(joint task force)を追加創設する検討が指示されるなどの動きがあり、大平洋軍部隊にも統合作戦訓練をアピールするなどの動きがみられるが、移動艦艇攻撃力や弾薬備蓄不足の課題は20年前から変わらず、各軍種の統合訓練意欲は低いままで各軍種が我が道を突き進んでいる状態だと専門家の強い懸念を紹介しています

今年10月以降の2023年度予算審議が米議会で山を迎える中、米軍各軍種首脳による「予算お願い」発言も活発化していますが、大平洋軍スタッフ経験者やシンクタンク研究者は、冷徹に実態が伴っていないことに警鐘を鳴らしています

先日の記事でも、分散運用準備がグアムやハワイ周辺だけでしか進まず、中国に傾きがちなアジア諸国との連携が進んでいない点や、燃料備蓄や貯蔵施設がハワイ施設の閉鎖にもかかわらずほとんど進んでいない点など深刻な状況を指摘しましたが、その続編のような内容です

まず前向きに見える報道
Gallagher.jpg●2023年度国防授権法に、ウクライナで抑止が失敗したことを教訓に、大平洋軍のインフラ整備や資材備蓄予算が約1200億円積み増しされる
●グアムかハワイにjoint task force (JTF)を増設する検討を議会が法令指示へ

●太平洋空軍司令官は、2022年度予算にもACE構想を支える事前集積資材調達費や分散運用飛行場の施設整備費が含まれており、
Wilsbach5.jpg●2023年度予算案にはチモール、Wake島などの施設整備が含まれ、特にテニアンには、離着陸・駐機支援、給油支援能力を新たに整備する計画が含まれていると説明

●米陸軍に対しては、グアム島などでの米空軍飛行場の防空体制を増強してほしいと太平洋空軍司令官は要望している
●6月3日には、ハワイの航空作戦センターで太平洋軍司令官を迎え、4軍の統合演習を行い、4軍が有機的に作戦遂行可能な能力を示した

強い懸念を持つミッチェル研究所Deptula退役中将
Deptula3.jpg●太平洋軍は本当に南シナ海で戦う備えを真剣に行っているか? 真の統合作戦を本当に追求している証拠はどこにあるのか? 
●20年前に太平洋軍幕僚として勤務した当時の問題、水上移動艦艇の攻撃能力や大規模作戦を遂行する弾薬の不足など、何も解決されていない現状に青ざめる

●グアムの航空機格納庫の強化が必要なのに、MDAによるミサイル防衛整備しか進んでいない
●Wilsbach太平洋空軍司令官はこれら問題を真剣に考えようとしているが、他軍種の首脳が同じように考えて行動しているとは言えない

統合への姿勢に疑問を持つCSISのJohn Schaus研究員
Schaus CSIS.jpg●各軍種がアジア太平洋地域での統合作戦運用を考えているとは言えない。どの軍種も自分たちの訓練ばかりを優先し、統合作戦にどのように貢献すべきかを考えていない
●統合演習が計画された場合も、自軍種の訓練になると思えば参加するが、他軍種の支援的な訓練ならば、極めて消極的な姿勢を見せている。こんなことばかりやっているから、統合運用が進まないのだ
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ミッチェル研究所Deptula退役中将は、湾岸戦争時の統合航空作戦を組み上げた中心人物で、対中国の作戦準備の状況や米軍統合作戦準備状況に、真に軍事合理性の観点から強い懸念を持っています。

Northwest Field2.JPG先日の記事では、分散運用準備がグアムやハワイ周辺だけでしか進まず、中国に傾きがちなアジア諸国との連携が進んでいない点を強く懸念するDeptula氏の発言をご紹介しましたが、状況は危ういようです

各軍種はパイが増えない中、熾烈な予算獲得競争をペンタゴン内で繰り広げているわけですが、前線司令部までその影響を受けてはいけませんねぇ・・・どの軍隊でも極めてありがちですが・・・

対中国軍事作戦準備に大きな懸念
「生みの親・太平洋空軍司令官がACE構想の現状を語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/

陸軍と海兵隊の遠方攻撃傾倒
「米陸軍トップが長射程攻撃やSEADに意欲満々」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-12
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「海兵隊も2つの長射程ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「射程1000nm砲に慎重姿勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-10
「射程1000nm砲の第一関門」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15

米空軍による陸&海兵隊批判
「米空軍トップが批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「空軍ACC司令官が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「空軍大将が米陸軍を厳しく批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-03

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米空軍5世代機を日付変更線より西に配備を [Joint・統合参謀本部]

太平洋軍司令官がグアムを示唆しつつ米空軍に要請中
そういえばアラスカF-35とハワイF-22だけ
岩国に海兵隊F-35があり、F-35艦載空母の出入りはあるが

F-22 F-35.jpg6月24日、Aquilino太平洋軍司令官が講演し、米空軍の第5世代機が日付変更線より西側に配備されていない現状に言及しつつ、配備を要請しているとグアム島を示唆しつつ語りました。

アジア太平洋軍担当エリアに配備されている第5世代機(F-22及びF-35)は、ハワイとアラスカ(Elmendorf–Richardson)に配備されている米空軍F-22と、アラスカ(Eielson)配備の米空軍F-35、更に岩国基地配備の米海兵隊F-35がありますが、米空軍の第5世代機は日付変更線(ハワイとグアムの中間)より西側に配備されていません

Aquilino FDD5.jpgまんぐーすは、中国やロシア近傍に米軍第5世代機を配備することで、電波情報収集などの「餌食」になることを米軍として避けているのか・・・とも考えていましたが、米海兵隊があっさりF-35Bを岩国に配備したことから、米空軍はどうするのかなぁ・・・とぼんやり考えておりました

米空軍に配備要請している第5世代機についてAquilino司令官は、具体的機種や場所について言葉を選んで言及しなかったようですが、司会者との対談形式講演の別の部分でグアム島の戦略的重要性を強調し、同島を360度の脅威から防御するミサイル防衛体制整備の重要性を訴えていたことから、24日付米空軍協会web記事は、配備先はグアム島だろうとの推測をしています

FDDでのAquilino司令官発言の状況


24日付米空軍協会web記事によれば同司令官は
●(5世代機の日付変更線より西側への配備の必要性についての質問に対し、)そのような能力強化については・・・・確かに望ましいことである。強固に防御された空域での作戦において必要な能力である。それがF-22であってもF-35であっても、抑止力強化のために極めて重要なことである
Aquilino FDD2.jpg●より前線に、恒久的な、突破力のある戦力の配備を要請しているところである。そしてその戦力が、地域派遣戦力として活動でき、情勢に応じて必要な場所に展開することをお願いしている。(Wilsbach太平洋空軍司令官は)素晴らしい対応をしてくれている

以上の発言では、具体的な5世代機の配備先について言及を避けていますが、講演全体ではグアム島の重要性と能力強化について強調し、記事はグアムへの配備が念頭にあると推察しています。同司令官は講演の別箇所で・・・

Western Pacific.jpg●グアムは戦力的に見て絶対に重要な要衝である。我々はグアムを拠点に作戦を遂行する必要があり、同時にグアムを防御する必要もある。グアムは多様な戦力の供給拠点であり、有事の作戦支援拠点としても重要な役割を担っている
●中国のロケット軍は継続的にその能力や射程を向上させており、グアムは360度から脅威を受けている。これらのドメインで攻撃を受けることを予期すべきである。

●我々がそれら脅威に対処しつつ作戦遂行する能力を確保することは極めて重要で、グアムの防御とグアムからの戦力投射能力を緊急に強化することは、私にとって極めて重要な任務である
●2023年度予算でペンタゴンは、一連の防御システム整備を提案しており、脅威が弾道や巡航ミサイルであっても、最終段階で回避機動するものであっても、それら脅威に対応できるものである必要がある
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F-22 F-35 2.jpg米空軍が初期型F-22の早期退役を2023年度予算で要望し、米議会調整が難航しているところですから、維持整備が大変で稼働率が低いF-22のグアム島などへの配備は今更考えにくいとすると、F-35をどこに配備するかです。

部隊編成をして配備を宣言しつつ、実質はローテーションを繰り返す「なんちゃって配備」の可能性もありますが、対中国有事の緒戦で作戦機能を喪失する可能性が高いグアムや日本の米軍基地に、5世代機を配備したくないと考えるのはべ軍事的合理性の観点から米空軍として当然のことであり、政治的レベルの判断としてやむなく従うことになるのでしょう。

Aquilino FDD3.jpg今現在、嘉手納や三沢に配備されている米空軍F-15やF-16が、対中国情勢緊迫時にそのまま「座して死を待つ」覚悟で留まるとはまんぐーすは思いません。しかしAquilino司令官の発言は重く、今後の展開に注目いたしましょう

在日米軍は有事にどうするのか?
「嘉手納で統合の航空機避難訓練」→https://holylandtokyo.com/2020/01/24/873/
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「岩田元陸幕長:在日米軍はグアムまで後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09 

沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13

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米陸軍はStryker装輪装甲車にAPSを導入するか? [Joint・統合参謀本部]

2014年の露によるクリミア併合に続き議論再び
対戦車砲や対戦車ミサイルから装甲車を守る防御兵器

APS.jpg6月2日、米陸軍の装甲車両(戦車・兵員装甲車)の防御システム関連イベントで米陸軍の担当大佐が、ウクライナ侵攻事案を受け欧州米陸軍からStryker装輪装甲車用のAPS(Active Protection Systems)装備についての問い合わせが来ており、脅威や最新装備について情報収集や分析を行っていると述べつつも、緊急限定導入は不可能ではないが様々な運用制限が必要で、本格導入にはより詳細で高度な評価分析が必要だと慎重姿勢を示しています

APS(Active Protection Systems)は、装甲車両(戦車・兵員装甲車)を対戦車砲や対戦車ミサイル攻撃から防御する装備で、高速で接近する砲弾やミサイルをミリ波等のセンサーで探知し、装甲車両から迎撃体を射出して装甲車両を防御する装備で、以下のYouTube映像でご紹介するように露米イスラエルなど複数の国や企業が実用化しています

市場にある各国のHard-Kill APS解説動画5分半
アブラハム戦車搭載のイスラエル製Trophy APS systemを含む


米陸軍は2014年のロシアのクリミア半島併合受け、2016年から19年にかけ、M1 Abrams 戦車とBradley歩兵戦闘車両とStryker装輪装甲車に対するAPS(Active Protection Systems)導入を検討しましたが、結局M1 Abrams戦車にイスラエル製Trophyを導入決定しただけで、他の候補装備を含め検討した結果、Bradley歩兵戦闘車両とStryker装輪装甲車には装備化しないことを2019年に決定しています

APS4.jpg当時Stryker装輪装甲車用で検討対象となったのは米国のArtis Corporation社製「Iron Curtain」で、最近はRheinmetall’社製のActive Defense System やM1戦車に装備化されたイスラエルRafael社製Trophy VPSも検討したようですが、どれも装甲車両のすぐそばで迎撃する装備であり、装甲車両周辺を移動する兵士や車両自体へのダメージが大きな懸念材料の一つとなり採用には至っていないと担当大佐が説明しています

その他にも、対処余裕時間がないため全自動で運用することになるAPSの車両による操作システムの成熟度や、APSが攻撃兵器を探知するために発するミリ波などが敵に察知される恐れ、鳥などの誤目標へのAPS作動等も指摘されており、最近米陸軍はレーザーによる飛来脅威探知センサー開発を目指し、ロッキード社と2021年2月に契約を結び、上記3車両等への搭載を構想しているようです

Jane’s社作成のAPS解説動画4分半(語り解説)


いずれにしても米陸軍の現在のAPSに対する基本スタンスは、上で述べた「装甲車両周辺を移動する兵士や車両自体へのダメージ」等々の課題が完全に解決されなくとも、前線からのニーズが強ければ、何らかの運用制限をかけたり、関連の対策を行って限定的に部隊配備することは可能であるが、全車両に標準装備する決定を下すためには、より詳細な評価や様々な場面を想定した試験が必要だ、とSBCT(ストライカー戦闘旅団チーム)担当のWilliam Venable大佐は講演で説明したようです

また米陸軍として、2022年には20億円程度の予算を確保していたが、2023年度予算案にAPS評価やテスト用の予算は含まれていないとのことです
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APS6.jpg重箱の隅をつつくような話題でしたが、高度で安価な攻撃用兵器が拡散する世界において、信頼に足る防御装備を開発することは難しいこと、そして、様々な限界を抱える一般的に高価な防御装備を搭載する防備は絞り込まざるを得ず、無人機を含む多様なセンサー情報を融合し、先手を打って敵を撃破し、攻撃を受けないような作戦運用を目指す方向にあると無理やり理解してかまわないのでは・・・とも考えております

ウクライナ侵略関連で話題の兵器
「大活躍スティンガー携帯防空ミサイルの後継選定」→https://holylandtokyo.com/2022/04/14/3123/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/

ウクライナの教訓関連
「米陸軍首脳が証言」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/
「陸軍訓練センターに教訓反映」→https://holylandtokyo.com/2022/05/12/3156/
「ウクライナ侵略は日本への警告」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-25
「露空軍に対する米空軍幹部や専門家の見方」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「中国への影響は?CIAやDIAが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/

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ウクライナのアジア太平洋への教訓は兵站能力 [Joint・統合参謀本部]

隣国へ侵攻の露が苦労も、西太平洋で米国はより困難
ハワイの巨大燃料貯蔵施設が閉鎖決定で危機感更に

Hicks3.jpg6月13日、Kathleen Hicks国防副長官がDefenseOneのイベントで講演し、露のウクライナ侵攻がアジア太平洋地域に改めて突き付けた極めて大きな課題(very hard lesson)は、米本土から離れた西太平洋戦域への燃料、水、食料、弾薬、部品等の物資輸送と事前集積などの兵站問題だと危機感を訴えました

そして同副長官は、「ロシアは自らが国境を接している国を侵略したにもかかわらず、大きな兵站支援問題に直面している。米国が太平洋をまたいで活動しようとするなら、より一層大きな兵站上の課題を抱えることになり、化石燃料への依存がそれを更に悪化させるだろう」、「ロシアの教訓から兵站の課題を理解し、それを西太平洋に移して立ち向かわねばならない」と述べています

PACOM logi.jpg副長官は「グアムやハワイや南洋諸島には、米軍戦力が作戦遂行に必要な化石燃料資源は全く存在せず、西太平洋で米軍基地を受け入れているホスト国も輸入原油に依存している状態だ」と現状を憂い、大平洋軍指揮官も「太平洋戦域で有事に、弾薬補給や燃料補給を行う能力が不足している」と警鐘を鳴らしています

このような状態を受け、国防省も太平洋軍要望として、2027年までを対象とした兵站や装備の維持整備能力強化や装備の事前集積強化のため、PDI(Pacific Deterrence Initiative)構想実現のため3.2兆円規模の予算要求を2023年度予算要求として持ち出し、「兵站態勢や前線の作戦を支援する体制が、強固に防御された戦域を支えるには不十分だ」と訴えています

Red Hill Bulk.jpgこの現状について、元太平洋軍上級顧問でAEI研究員であるEric Sayers氏は、貯蔵燃料の地下水汚染問題で閉鎖が決定したハワイ真珠湾の「Red Hill Bulk」燃料貯蔵所の代替施設構想もない状態で、西太平洋戦域の兵站事情は悪化し続けていると懸念し、

「ウクライナ侵略は我々に、米国艦隊や大規模空輸を支える給油能力なしでは、米軍戦力の投射が単純に不可能なことを改めて思い知ららせてくれた」、「端的に言えば、米議会は艦艇規模や戦闘機数の増強を考えるなら、同レベルでアジア太平洋地域での燃料供給など兵站問題にも目を向けるべきだ」と訴えています
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PACOM logi2.jpg中国の台湾侵攻など中国の西太平洋進出に際しては、「容易に回復できない既成事実化:a fait accompli」を許さないように米国や日本は対処する必要があると言われ、そのような作戦構想がWar-Game等を通じて検討されていると認識しているのですが、米国や西側諸国はどの程度戦いを継続可能なのでしょうか?

また仮に、中国がロシアのように、前線兵士の犠牲を苦にせず、3か月以上のネバネバ中期戦に出た場合、どのような状態になるのでしょうか? ウクライナではドイツやポーランドなど陸続きの周辺国が支援物資の輸送拠点になりますが、西太平洋ではどうなるのでしょうか・・・・・? 不安しかありません

兵站支援関連の記事
「ウクライナへの補給物資輸送拠点」→https://holylandtokyo.com/2022/05/11/3197/
「米空軍改善提案の最優秀:燃料と水輸送負担軽減策」→https://holylandtokyo.com/2022/05/06/2781/
「ウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/

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米陸軍首脳がウクライナの教訓を語る [Joint・統合参謀本部]

長射程兵器とインテル活動の統合レベル連携
無人機活用と対処兵器の開発導入
同盟国等との大規模な機動を伴う演習
歩兵と戦車&装甲車部隊の連携で対戦車兵器対処
米陸軍予算要求に役立つ部分を強調した感もあるが

Wormuth7.jpg5月12日、Christine Wormuth陸軍長官とJames McConville陸軍参謀総長が下院軍事委員会でウクライナの教訓と米陸軍能力向上策について証言し、冒頭で取り上げたテーマを中心に米陸軍がウクライナから学んで対処すべき事項について説明しています

我々が目にする報道からも断片的な話は聞こえてきていますが、数百キロにわたるウクライナ東部戦線の全体像をメディアがどこまで把握して描けているかは疑問で、このような形で軍首脳が議会で行う証言は貴重な情報源だと思います

以下では、米軍事メディアの短い記事から、冒頭にあげた項目に関する米陸軍幹部の証言概要をご紹介します

12日付Defense-News記事によれば同長官と参謀総長は
McConville4.jpg●長射程精密攻撃が極めて重要だと訴え、ウクライナ軍が敵情に関する戦術情報を有効に活用し、カギとなるロシア軍指揮官や指揮システム及び重要装備に打撃の大きい攻撃を与えている様子を間接的に示唆しつつ、「艦艇を撃沈したり、敵の指揮所を攻撃する能力の価値を再認識させられている」と語った
●米国防省は否定しているが、NYT紙は米側がウクライナにロシア軍指揮官や指揮所に関するリアルタイム情報を提供したことが、12名以上のロシア軍将軍の戦死につながっていると報じている

ukuraine UAV.jpg●無人機の重要性は強調しても強調しきれないほどで、軍用に開発された無人機の他、市販商用品を改良した無人機が入り乱れ、双方から爆撃のリアルな映像が提供されてウクライナの状況が如実に語っている。参謀総長は「速度、レンジ、カバー範囲など、様々な要素を組み合わせて統合で前線に投入され、極めて巧みな運用が日々改良されながら行われている」と証言している
●陸軍長官は無人機対処装備の重要性にも触れ、「米陸軍も無人機対処に投資している」と証言し、その重要性を強調している

●長官と参謀総長は共に、大規模な機動展開を含む同盟国等との統合演習の重要性を強調し、「ウクライナ軍の主力旅団の75%が米軍計画の大規模な演習を経験した部隊であり、その効果を目の当たりにしている」、「このような演習をやればやるほど、同盟国、パートナー国、友好国の能力は確実に向上する」と重要性を訴えた

Javelin FMG-148.jpg●ロシア軍が歩兵部隊と戦車や装甲車両部隊の連携を怠ったことで、ウクライナの対戦車ミサイルから大打撃を受けているが、これは前線における極めて重要な戦術的教訓である。
●参謀総長は「米陸軍は最高の戦車や装甲車を装備しているが、正しく運用することの重要性を再認識する必要がある。米陸軍は対戦車兵器に対応するactive protective systems導入に取り組んでおり、ロシア軍より進んでいる」と説明した
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National Training Center.jpg先日の記事では、米陸軍が加州の「National Training Center」で実施しているウクライナの教訓を生かした6000名規模の演習をご紹介し、敵側がSNSへの迅速な画像映像投稿で印象操作を行ったり、初期段階で侵略計画が破綻した敵側が無差別都市攻撃に出る想定などを取り込んだ訓練を取り上げましたが、実戦は教訓の宝庫です

日本でいえば、まず「無人機の導入&活用」でしょう。特に航空自衛隊の戦闘機命派の皆様には、よーーーーく考えて頂きたく、ゲーツ国防長官が米空軍と戦って無人機導入を推進した約15年前の模様を語った2011年の発言をご紹介しておきます

ロバート・ゲーツ語録12
(ゲーツ語録はhttps://holylandtokyo.com/2022/03/26/2046/
gates.jpg→私がCIA長官の時、イスラエルが無人機を有効使用することを知った。そこで米空軍と共同出資で無人機の導入を働きかけたが1992年に米空軍は拒否した。そして私は3年前、今度は無人機導入のため牙をむいて4軍と立ち向かった→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07

米陸軍の話題
「ウクライナの教訓で大演習」→https://holylandtokyo.com/2022/05/12/3156/
「軽戦車MPFの選定ほぼ終了」→https://holylandtokyo.com/2022/03/29/2914/
「50KW防空レーザー装備の装甲車導入へ」→https://holylandtokyo.com/2022/01/21/2623/
「Project Convergence5つの教訓」→https://holylandtokyo.com/2021/12/21/2514/
「大国との本格紛争で近接戦闘も重視」→https://holylandtokyo.com/2021/11/09/2388/
「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holylandtokyo.com/2021/10/18/2342/
「2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holylandtokyo.com/2020/09/11/478/
「射程1000nmの砲開発に慎重姿勢見せる」→https://holylandtokyo.com/2021/03/17/163/

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米陸軍が射程1000マイルの巨砲開発中止 [Joint・統合参謀本部]

東京から上海を攻撃可能な長射程砲構想だったが
他開発案件との重複回避や費用対効果の観点から
2021年3月から外部有識者評価待ち開発中断中

Strategic Long4.jpg5月23日付Defense-Newsは、米陸軍が2019年1月に開発中と明らかにしていた射程1000nmの大砲「SLRC:Strategic Long-Range Cannon」プログラムについて、米陸軍報道官から「米議会からの指示や予算の最適分配や装備開発の重複を避けるため、開発中断を決断した」との連絡を受けたと報じました

この東京から上海の目標を攻撃可能な射程1000nmの大砲SLRC開発は、中国A2AD網の範囲拡大を受け、米陸軍の遠方攻撃能力強化のため当時のエスパー陸軍長官が明らかにしたものです。

McConville2.jpgただ発表当時においてもMcConville米陸軍参謀総長は、「SLRCが開発成功すれば、(極超音速兵器のように)1発何億もせず、1発4-5000万円程度に収まると考えられる。コストがポイントで、そこが気になっている。コストが課題だ。陸軍は革新を追求しているが、段階ごとに成果を確認し、目標が達成できなければ進めない」と、費用対効果のトレードオフに着目していると語っていたところです

その後2021年の3月に米陸軍は、2021年中に外部有識者がまとめる予定だった「National Academy of Sciences report」におけるSLRCの実現可能性等に関する分析評価を待って、SLRC開発の継続を判断するとし、開発を一時中断すると発表しました。

PrSM3.jpgただ、2020年9月開始の「National Academy・・・」関連会議は、2021年1月に5回目の検討会議を行った後は動きがなく、2021年中予定だったレポートも発表されていない状態が続いていたようです

米陸軍は重視する長射程兵器開発において、SLRC以外にも2023年部隊配備を狙って4つのプロジェクト(Extended Range Cannon Artillery (ERCA)、Long-Range Hypersonic Weapon (LRHW),、Mid-Range anti-ship Missile (MRC) 、Precision Strike Missile (PrSM))を走らせており、米議会からも2022年度予算議論の過程でSLRCは中止すべきと勧告を受けていたところでした

また5月16日の週の下院予算関連委員会でも、米陸軍省の開発担当次官が、「装備品開発の重複」と「コスト予想」を踏まえてSLRC開発を中止すると証言していた模様です

5月23日付Defense-News記事によれば陸軍報道官は
(20日付の文書でDefense-Newsに回答)
Strategic Long.jpg●潜在的な装備の重複を避け、装備近代化に税金を効率的に使用すべきとの観点から、科学技術面からの検討で実現可能との判断が出た場合でも、当該装備の製造や調達や部隊編成に数千億円を投じる必要が生じるSLRCを中止することを決定した

●当初SLRCに予算配分されていた予算については、陸軍開発担当次官室との調整を経て、他の継続する科学技術開発プロジェクトに再配分する
●科学技術開発フェーズ段階では、必要総コストの詳細な見積もりまでは行わないが、SLRC計画を陸軍長官が中止判断するに必要なコスト見積もりは行われている
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Strategic Long2.jpg米陸軍はSLRCの基礎技術調査や技術開発や関連試験に、2021年度に約75億円を使用した後、2022年以降は投資していないとのことです

2019年10月に、当時のMcConville米陸軍参謀総長による「(極超音速兵器のように)1発何億もせず、1発4-5000万円程度に収まると考えられる。コストがポイント」との発言から類推すれば、1発4-5000万円程度に収まらなかったのかなぁ・・・・と邪推いたしております

Strategic Long3.jpgまたは、1発4-5000万円程度に収まったとしても、米陸軍予算全体のやりくりから、開発継続が困難になったものと推測いたします。これまでに開発&確認された技術が、いつかどこかで再利用されることを祈念しつつ・・・

米陸軍の夢?SLRC関連の記事
「射程1000nm砲に慎重姿勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-10
「射程1000nm砲の第一関門」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
「射程1000nmの砲開発」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1

米陸軍の遠方攻撃志向
「INFの呪縛を解かれ米陸軍PrSMが射程500㎞越え」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-23
「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-14
「米陸軍トップが長射程攻撃やSEADに意欲満々」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-12
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09

「海兵隊も2つの長射程ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06

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感涙:極東米海兵隊は「stand-in force」作戦を検討中 [Joint・統合参謀本部]

2021年12月発表「A Concept for Stand-In Forces」基に
同盟国等と共に中国A2AD域内で頑張る姿勢をセミナーで語る
まんぐーすは知りませんでした。てっきり長射程兵器のみ重視かと
でも構想の「Stand-in Forces」の実態からすると・・

Concept for Stand-In.jpg5月11日、米海兵隊関連イベントで太平洋軍海兵隊や日本に拠点を置く第3海兵機動展開部隊(III MEF)幹部が、米軍の他軍種が「Stand-off Forces」的に中国A2AD圏外の安全な場所からの長距離攻撃に注力する中でも、アジア太平洋の海兵隊部隊は「Stand-in Forces」だと語り、様々な取り組みと装備品要望を行い、大きなカギとなる地域同盟国との協力強化も重要と語っています

まんぐーすは知りませんでしたが、米海兵隊は2021年12月に「A Concept for Stand-In Forces」を発表し、アジア太平洋地域の海兵隊が取り組んできた第1列島線内部に陣取り作戦を遂行するスタイルや、開発導入すべき新技術や新装備を明確に示したようです。

Concept for Stand-In3.jpg具体的イメージとしては、中国A2AD領域内に進出又は強靭に陣取り、隠密裏に行動する海兵隊兵士が中国艦艇の位置を特定し、ネットワーク化されたタブレット等の情報端末で1000マイル離れて陣取る味方の長距離攻撃部隊に伝えるというもので、豪州やフィリピン軍を巻き込んでの訓練も始まっているようです

米空軍は言うに及ばず、米陸軍も海兵隊もこぞって「遠方攻撃兵器」に注力する現実に、軍事的合理性から致し方ないと思いつつも、暗い気分になっていたまんぐーすは、記事のタイトルを見て単純に「目頭が熱くなった」わけですが、よく読むと「Stand-in Forces」は敵情を把握する「ほんの一部」であるような雰囲気も漂っており、同盟国対策のアピールかとも勘繰りたくなりますが、以下では関連海兵隊幹部のイベントでの発言を紹介いたします

5月18日付Defense-New記事によれば
Concept for Stand-In6.jpg●太平洋軍海兵隊のStephen Fiscus副戦力開発チーム長(大佐)は、「過去約20年間、中国が造成した強力なA2AD能力を前に、米軍の多くはA2AD圏外の安全な場所からのstand off攻撃で対処しようとしている。しかし太平洋軍の海兵隊部隊はstand inだ。その配置、体制、能力、地域国との関係などを最大限に活用して中国から守る。中国のWEZ内(weapons engagement zone)で我らのWEZを構築する方程式を取り戻す」と熱く語り、
●同大佐はまた「日本が拠点の「III MEF」は既にstand in戦力で、フィリピンや韓国で訓練を行っている。しかしstand inコンセプトは更に、地上や海上目標情報を、時間や空間的余裕を確保しつつ米統合戦力に伝達して海上戦を遂行することを求めており、追加の新規装備を必要としている」と訴えた

Concept for Stand-In7.jpg●Joseph Clearfield太平洋軍海兵隊副司令官(准将)は将来像の具体的イメージを表現し、「ヘリコプターからタブレットを持った兵士が展開潜入し、見晴らしの良い半島の先端に設けた隠蔽された拠点から敵の動きを監視する。敵を発見したらタブレットを使用し、その位置や関連情報を1000マイル離れた統合の長距離攻撃部隊に知らせるのだ」と説明した
●新設された「第3沿岸連隊」は今年後半に、上記のようなデジタル化作戦遂行に不足する能力(ギャップ)を特定する任務を付与されている。通信能力、キルチェーンweb連接、センサーとの連接等が課題である

Concept for Stand-In4.jpg●具体的取り組み例では、Naval Strike Missileを無人発射車両に搭載して艦艇から発射するNMESIS system(Navy/Marine Corps Expeditionary Ship Interdiction System)試験が4月に実施され、2023年から配備が予定されている
●また沿岸戦闘艦LCSから、地上目標攻撃のため「AGM-114L Longbow Hellfire missiles」を発射する試験が5月12日にLCS- Montgomeryから実施され、この際は無人機MQ-9からの目標情報を基に数マイル先の目標攻撃であったが、構想では前述の「第3沿岸連隊」のような部隊が目標情報を収集・発信することが期待されている。海上配備兵器で地上目標を攻撃することで火力支援能力を強化する方向である

Concept for Stand-In5.jpg●前述の副司令官(准将)は、このコンセプトを前進させ膨大なアジア太平洋地域をカバーするには同盟国等との協力が重要なカギだと語り、豪州とフィリピンが既に「第3沿岸連隊」のような敵情を収集して敵を妨害する部隊を編成したと語っている
●米軍内でも、例えば加州所在で長年中東での作戦に従事し、中東任務撤退後に縮小されていた「Southern California Marines」を再充足し、「Marine Air-Ground Task Force」として再編しつつあり、その一つの部隊を既に豪州ダーウィンに展開させていると同准将は説明している

marine infantry2.jpg●副司令官はまた、日本が拠点の「III MEF」が第1列島線でのstand in作戦を担う一方で、加州を拠点とする「I MEF:第1海兵機動展開部隊」は「outer regions of Southeast Asia」を担当し、伝統的な着上陸や新たな沿岸からの作戦手法を用い、迅速な機動展開で作戦支援する部隊と考えていると説明した
●また日本駐留の「III MEF」が在ダーウィンのローテーション部隊を構成するのに対し、「I MEF」は豪州が乾季の6か月間は北部豪州にローテーション展開し、残りの半年をアジアの他の同盟国等で活動する可能性を検討して模索しているとも同副司令官は語った
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Marine-okinawa.jpg記事のタイトル「Pacific Marines move to formalize role as the stand-in force」を目にし、記事の太平洋軍海兵隊幹部の皆さんの発言を一読した時点で、最近涙もろいまんぐーすは海兵隊の皆さんの心意気に「目頭が熱く」なりましたが、結局「III MEF」のstand in戦力は打撃力を行使しない少数の隠密偵察部隊なのかな??・・・と思い始め、涙も乾いてしまいました。

もちろん、本国から遠く離れた極東の地で、リスクを負って前線に身を投じる覚悟の米海兵隊の皆様に何ら不満はなく感謝の言葉しかありませんし、軍事的合理性に基づき作戦コンセプトを練り、同盟国等への配慮一杯に抑止力向上のため同コンセプトと遂行状況を対外アピールされる姿には崇高なものさえ感じますが、ウクライナ東部住民の心境に少し近づいた気も致します

concept for stand-in9.jpgついでに在日米海兵隊の「削減」に関する防衛省の説明ぶりを防衛白書内で探してみると、令和3年版285ページに「沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊(ⅢMEF)の司令部要素をグアムへ移転する計画だったが、2012年4月に変更し、司令部・陸空&後方支援部隊で構成される海兵空地任務部隊(M Marine Air Ground Task ForceAGTF)を日本、グアム及びハワイに置くとともに豪州へローテーション展開させることとした」と訳の分からない説明になっています

「A Concept for Stand-In Forces」の現物32ページ
https://www.hqmc.marines.mil/Portals/142/Users/183/35/4535/211201_A%20Concept%20for%20Stand-In%20Forces.pdf?ver=EIdvoO4fwI2OaJDSB5gDDA%3d%3d

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06

令和3年版防衛白書のPDF
https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2021/pdf/wp2021_JP_Full_01.pdf

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