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米空軍とボーイングがE-7価格交渉で激突 [米空軍]

KC-46とT-7とVC-25で既に1兆円自腹のB社
少しだけ豪英版と仕様を変えたい米空軍
最優先迅速化事業なのに7か月も交渉停滞か

E-7 NATO.jpg2月20日付米空軍協会web記事が米空軍幹部たちの話から、米空軍が最優先事業として稼働率2-3割とも言われるE-3早期警戒管制機の後継として導入決定したE-7 Wedgetailの価格交渉が、既に固定価格契約KC-46とT-7等のお陰で1兆円自腹支払いさせられているボーイング社の新CEOによる厳しい事業精査方針を受け、米空軍特別仕様部分(non-recurring engineering)の価格設定で当事者間に2倍の開きが双方にあり、契約が進まない状態だと報じました

E-7は既に豪、韓、トルコが導入済で、英も近く受領で、米国の後にNATOも発注した今や国際標準の空飛ぶレーダー&作戦指揮統制機ですが、米空軍幹部が「最終的には、ほとんど英空軍発注仕様の機体と変化ない」と主張しつつ、昨今の中国のサイバー戦力強化や重要航空アセット攻撃能力強化傾向から、「他国機と相互運用性を維持しながら、米空軍独自の仕様も要求」している部分に関し、ボーイング側の開発経費見積もりと空軍の想定がかけ離れている模様です

Calhoun Boeing.jpgボーイング社が契約に極めて慎重なのには理由があり、現ボーイングCEOのDavid Calhoun氏が就任した2020年4月以前に、前CEOが無謀な固定価格契約した「KC-46」「T-7練習機」等のコスト超過&自腹支払い分が1兆円($7 billion)に達するデタラメ振りで、Calhoun氏は厳正に契約を精査し、入札には積極性を控えるとたびたび発言しており、2022年4月に米空軍仕様機体の開発&製造契約を結んではいるものの、要求の細部を後で知らされ、その後の交渉に同社が極めて慎重に臨んでいるからだそうです

米空軍はE-7を可及的速やかに導入したいと考えており、2027年に初号機を受領し、2032年までに計26機を受け取る計画を持っていますが、いきなり入り口部分で大きな壁にぶつかっており、米空軍首脳も既に豪・韓・トルコで運用開始している機体であるだけに、最後の詰めの甘さに地団太踏んでいるようです

本件に関しKendall空軍長官(2月12日)
Kendall AFA5.jpg●ボーイング社と価格合意を得るのに苦労している
●地上移動目標を衛星や他センサーを総合的に組み合わせて探知追尾する方式が最終到達目標であり、E-7はそこへ向かう途中の「橋渡し役」であるが、中国がE-7の様な重要指揮中枢を攻撃する能力(ステルス機や長射程空対空ミサイル)を強化していることから、空軍として戦力は常に見直しながら前進しなければならない

Andrew Hunter調達担当次官補(2月13日)
●ボーイング社は、自分たちが期待される仕事の全範囲を、しっかり理解して検討しなければ入札しない。様々な状況を考えれば、合意内容に慎重になっているのは驚くべきことではない。
Hunter AF.jpg●米空軍仕様にE-7を最適化するための非定常的な設計開発部分(non-recurring engineering)に、予想を超えた開発作業が必要だと判断されたことが大きな驚きであった。我々は最終的には英空軍が調達するE-7と非常に極めて近い機体だと考えていたが、ボーイングが予想の2倍の費用を要求してきたことで、交渉が長期化している
●我々は協議を続けており、ボーイング社側の空軍要求の解釈とその具現方法、どの機能が最も重要で、どの部分を後送りできるか等について話し合い、双方の隔たりを埋めて問題を絞り込むことに取り組んでいる。入札プロセスをもう少し早く回転させたい
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E-7 Wedgetail3.jpg米空軍が2023年2月末にボーイング社と米軍仕様E-7開発契約を約1800億円で結んだ際は、青息吐息のE-3の稼働率が4割以下に落ち込んでいるとご紹介しましたが、今現在は5機のうち1機しか稼働状態にない惨状とのことです

しかしボーイング社は、民航機分野でも墜落事故から復調の兆しがみられると思っていたら、別の機体のドアが吹っ飛んだりして大混乱ですが、会社として大丈夫なんでしょうか? 現CEOには頑張って頂きたいと思います

米軍とE-7導入関連の記事
「今後の能力向上を米英豪共同で」→https://holylandtokyo.com/2023/07/21/4871/
「E-7とE-3違いを概観」→https://holylandtokyo.com/2023/03/30/4447/
「初号機を2027年納入契約」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/4358/
「導入を正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「E-3は2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/
「後継機検討のRFI」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711
「米空軍航空機は高齢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-27

「NATOもE-7」→https://holylandtokyo.com/2023/11/21/5262/

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